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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】制御装置、通信装置、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3822 20150101AFI20240322BHJP
   H04W 92/08 20090101ALI20240322BHJP
   H04W 4/48 20180101ALI20240322BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20240322BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20240322BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
H04B1/3822
H04W92/08 110
H04W4/48
H04W24/08
B60R25/24
E05B49/00 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020126285
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023377
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】内木 一輝
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0007507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3822
H04W 92/08
H04W 4/48
H04W 24/08
B60R 25/24
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのアンテナ素子を有し、他の通信装置との間における無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信に基づいて推定された前記他の通信装置の方向に基づいて、被制御装置の制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部による前記他の通信装置からの信号の受信状況に基づいて前記無線通信のリトライ要否を判定し、前記無線通信のリトライが必要であると判定した場合、前記無線通信部に、前記無線通信に係るリトライ要求を、前記他の通信装置に対して送信させ、
前記リトライ要求は、前記他の通信装置が備える状態検出部により前記他の通信装置の状態が前記無線通信に適した規定の状態に遷移したことが検出された場合に前記他の通信装置の方向の推定に用いられる信号の再送信を行うよう要求する信号である、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、少なくとも2つの前記アンテナ素子の各々が受信した前記他の通信装置からの信号から推定されるチャネルインパルス応答に基づいて、前記無線通信のリトライ要否を判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、推定された前記チャネルインパルス応答におけるファーストパスに基づいて、前記無線通信のリトライ要否を判定する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ファーストパスの減衰が推定される場合に、前記無線通信のリトライが必要であると判定する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
移動体に搭載される、
請求項1から請求項までのうちいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
少なくとも2つの前記アンテナ素子は、前記移動体の中心から規定の範囲内に配置される、
請求項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記無線通信部は、前記他の通信装置との間において超広帯域無線通信を行う、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
ユーザにより携帯され、他の装置との間における無線通信を行う通信装置であって、
前記無線通信を行う無線通信部と、
当該通信装置の状態を検出する状態検出部と、
ユーザに対する通知を行う通知部と、
前記他の装置から送信されるリトライ要求に基づいて、前記無線通信のリトライを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部が前記リトライ要求を受信した場合、前記通知部に当該通信装置の状態の改善をユーザに促す通知を出力させ、
前記状態検出部が当該通信装置の状態が前記無線通信に適した規定の状態に遷移したことを検出した場合に、前記無線通信部に前記無線通信のリトライを指示する、
通信装置。
【請求項9】
制御装置および通信装置を備えるシステムであって、
前記制御装置は、
少なくとも2つのアンテナ素子を有し、前記通信装置との間における無線通信を行う第1の無線通信部と、
前記無線通信に基づいて推定された前記通信装置の方向に基づいて、被制御装置の制御を行う第1の制御部と、
を備え、
前記第1の制御部は、前記第1の無線通信部による前記通信装置からの信号の受信状況に基づいて前記無線通信のリトライ要否を判定し、
前記通信装置は、
前記制御装置との間における前記無線通信を行う第2の無線通信部と、
当該通信装置の状態を検出する状態検出部と、
ユーザに対する通知を行う通知部と、
前記制御装置から送信されるリトライ要求に基づいて、前記無線通信のリトライを制御する第2の制御部と、
を備え、
前記第2の制御部は、前記第2の無線通信部が前記リトライ要求を受信した場合、前記通知部に当該通信装置の状態の改善をユーザに促す通知を出力させ、
前記状態検出部が当該通信装置の状態が前記無線通信に適した規定の状態に遷移したことを検出した場合に、前記第2の無線通信部に前記無線通信のリトライを指示する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、通信装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、装置間で信号を送受信した結果に従って認証を行う技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、車載器が携帯機との間で信号を送受信することで携帯機の認証を行い、当該認証の結果に従って車両の制御を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-208419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなシステムでは、車載器および携帯機が正規の組み合わせである場合であっても、通信状況によっては認証が成立しない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、無線通信に係るリトライをより効率的に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、少なくとも2つのアンテナ素子を有し、他の通信装置との間における無線通信を行う無線通信部と、前記無線通信に基づいて推定された前記他の通信装置の方向に基づいて、被制御装置の制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記無線通信部による前記他の通信装置からの信号の受信状況に基づいて前記無線通信のリトライ要否を判定する、制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ユーザにより携帯され、他の装置との間における無線通信を行う通信装置であって、前記無線通信を行う無線通信部と、当該通信装置の状態を検出する状態検出部と、ユーザに対する通信を行う通知部と、前記他の装置から送信されるリトライ要求に基づいて、前記無線通信のリトライを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記無線通信部が前記リトライ要求を受信した場合、前記通知部に当該通信装置の状態の改善をユーザに促す通知を出力させ、前記状態検出部が当該通信装置の状態が前記無線通信に適した規定の状態に遷移したことを検出した場合に、前記無線通信部に前記無線通信のリトライを指示する、通信装置が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、制御装置および通信装置を備えるシステムであって、前記制御装置は、少なくとも2つのアンテナ素子を有し、前記通信装置との間における無線通信を行う第1の無線通信部と、前記無線通信に基づいて推定された前記通信装置の方向に基づいて、被制御装置の制御を行う第1の制御部と、を備え、前記第1の制御部は、前記第1の無線通信部による前記通信装置からの信号の受信状況に基づいて前記無線通信のリトライ要否を判定し、前記通信装置は、前記制御装置との間における前記無線通信を行う第2の無線通信部と、当該通信装置の状態を検出する状態検出部と、ユーザに対する通信を行う通知部と、前記制御装置から送信されるリトライ要求に基づいて、前記無線通信のリトライを制御する第2の制御部と、を備え、前記第2の制御部は、前記第2の無線通信部が前記リトライ要求を受信した場合、前記通知部に当該通信装置の状態の改善をユーザに促す通知を出力させ、前記状態検出部が当該通信装置の状態が前記無線通信に適した規定の状態に遷移したことを検出した場合に、前記第2の無線通信部に前記無線通信のリトライを指示する、システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、無線通信に係るリトライをより効率的に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る本実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係る車載器20による被制御装置の制御の一例について説明するための図である。
図3】同実施形態に係るシステム1による被制御装置の制御の流れの一例を示すシーケンス図である。
図4】同実施形態に係るシステム1によるリトライ制御の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
まず、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成例について説明する。図1は、本実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機10および車載器20を備える。
【0013】
(携帯機10)
本実施形態に係る携帯機10は、車載器20が搭載される移動体のユーザにより携帯される通信装置である。本実施形態に係る携帯機10は、例えば、スマートフォンや専用機器であってもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る携帯機10は、制御部110、無線通信部120、状態検出部130、および通知部140を備える。
【0015】
(制御部110)
本実施形態に係る制御部110は、携帯機10が備える各構成を制御する。また、制御部110は、無線通信部120と車載器20との間において行われる無線通信の結果に基づいて、携帯機10と車載器20との間の距離(より正確には、無線通信部120と車載器20が備える無線通信部220との間の距離)を算出する測距を行ってもよい。
【0016】
例えば、本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120が送信する第1の信号と、車載器20が第1の信号への応答として送信する第2の信号とに基づいて測距を行ってもよい。
【0017】
より具体的には、制御部110は、無線通信部120が第1の信号を送信した時刻から第2の信号の受信する時刻までの時間ΔT1と、車載器20が第1の信号を受信した時刻から第2の信号を送信するまでの時間ΔT2に基づいて測距を行う。
【0018】
制御部110は、ΔT1からΔT2を差し引くことにより測距用信号の往復の通信に要した時間が算出し、また当該時間を2で割ることにより測距用信号の片道の通信に要した時間が算出することができる。さらに、制御部110は、(ΔT1-ΔT2)/2の値に信号の速度を掛けることで、携帯機10と車載器20との間の距離(以下、測距値、とも称する)を得ることが可能である。
【0019】
なお、上記第1の信号および第2の信号としては、超広帯域(UWB:Ultra-Wide Band)の周波数を用いる信号が用いられてもよい。UWBによるインパルス方式の信号は、測位及び測距を高精度に行うことができるという特性を有する。すなわち、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測位及び測距を高精度に行うことができる。
【0020】
また、本実施形態に係る制御部110は、車載器20から送信されるリトライ要求に基づいて、無線通信のリトライを制御してよい。本実施形態に係る制御部110は、無線通信部120が上記リトライ要求を受信した場合、通知部140に、携帯機10の状態の改善をユーザに促す通知を出力させる。また、本実施形態に係る制御部110は、状態検出部130が携帯機10の状態が無線通信に適した規定の状態に遷移したことを検出した場合に、無線通信部120に無線通信のリトライを指示する。
【0021】
例えば、制御部110は、携帯機10がポケットや鞄などに収納されており遮蔽状態にあるなど、携帯機10の状態に依存して通信状況が悪い場合において、携帯機10が無線通信に適した規定の状態に遷移した場合に、無線通信部120に第1の信号の再送信を行わせることができる。
【0022】
なお、上記無線通信に適した規定の状態への遷移とは、例えば、携帯機10がポケットや鞄などから取り出され水平に近い状態となることなどが挙げられる。
【0023】
上記のような制御によれば、携帯機10が無線通信に適した規定の状態となったタイミングで第1の信号を再送信させることができ、通信状況が悪い中での不必要なリトライを回避し、無線通信に係るリトライをより効率的に実現することが可能となる。
【0024】
本実施形態に係る制御部110が有する機能は、各種のプロセッサにより実現される。
【0025】
(無線通信部120)
本実施形態に係る無線通信部120は、車載器20との間において無線通信を行う。このために、本実施形態に係る無線通信部120は、少なくとも1つのアンテナ素子125を備える。
【0026】
例えば、本実施形態に係る無線通信部120は、上述の第1の信号を送信し、第2の信号を受信する。また、無線通信部120は、制御部110が算出した測距値を車載器20に送信する。
【0027】
また、本実施形態に係る無線通信部120は、制御部110による制御に従い、車載器20との間における無線通信のリトライを行う。具体的には、無線通信部120は、制御部110による制御に従い、第1の信号の再送信を行ってもよい。
【0028】
(状態検出部130)
本実施形態に係る状態検出部130は、携帯機10の状態を検出する。
【0029】
例えば、本実施形態に係る状態検出部130は、制御部110による制御に従い、携帯機10の状態監視を行い、携帯機10が無線通信に適した規定の状態に遷移した場合に、制御部110にその旨を入力する。
【0030】
例えば、本実施形態に係る状態検出部130は、携帯機10がポケットや鞄などから取り出され水平に近い状態となったことを検出した場合に、制御部110にその旨を入力してもよい。
【0031】
本実施形態に係る状態検出部130は、上記のような水平状態を検出するために、加速度センサを備えてもよい。また、状態検出部130は、遮蔽状態および非遮蔽状態を検出するために照度センサを備えてもよい。また、状態検出部130は、上記の他、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサなどを備え得る。
【0032】
(通知部140)
本実施形態に係る通知部140は、制御部110による制御に従い、ユーザに対し各種の通知を行う。
【0033】
例えば、本実施形態に係る通知部140は、制御部110による制御に従い、携帯機10の状態の改善をユーザに促す通知を出力する。
【0034】
通知部140による上記の通知は、例えば、文字を含む画像、音声、または予めユーザとの間で共有された規定の振動や光などであってもよい。
【0035】
このために、本実施形態に係る通知部140は、ディスプレイ、スピーカ、振動素子、光源などを備える。
【0036】
以上、本実施形態に係る携帯機10の機能構成について述べた。なお、上記で説明した携帯機10の機能構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る携帯機10の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る携帯機10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0037】
(車載器20)
本実施形態に係る車載器20は、車両等の移動体Vに搭載される制御装置の一例である。図1に示すように、本実施形態に係る車載器20は、制御部210および無線通信部220を備える。
【0038】
(制御部210)
本実施形態に係る制御部210は、車載器20が備える各構成を制御する。また、制御部210は、移動体Vに搭載される少なくとも一つの被制御装置を制御する。
【0039】
また、本実施形態に係る制御部210は無線通信部220と携帯機10との間において行われる無線通信に基づいて推定された、移動体Vを基準とした携帯機の方向に基づいて、移動体Vに備えられる少なくとも一つの被制御装置を制御する。
【0040】
この際、本実施形態に係る制御部210は、携帯機の方向が規定の範囲内である場合に、被制御装置に所定の動作を実行させることを特徴の一つとする。
【0041】
なお、本実施形態に係る被制御装置としては、例えば、移動体Vが備えるドアの施錠および解錠を行う錠装置、エンジン、アクセル、ブレーキ、操舵装置、照明装置などが挙げられる。
【0042】
例えば、本実施形態に係る制御部210は、携帯機10の方向が規定の範囲内にある場合、錠装置にドアの解除を指示してもよい。
また、例えば、本実施形態に係る制御部210は、携帯機10の方向が規定の範囲内にある場合、エンジンの始動を許可してもよい。
【0043】
また、例えば、本実施形態に係る制御部210は、携帯機10の方向が規定の範囲内にある場合、移動体Vが自動で駐車スペースに駐車するよう制御を行ってもよい。
【0044】
また、例えば、本実施形態に係る制御部210は、携帯機10の方向が規定の範囲内にある場合、移動体Vが備えるドアの下方に設けられる照明装置を点灯させることで、ユーザの移動体Vへの搭乗を補助してもよい。
【0045】
上記のような制御によれば、ユーザにより携帯される携帯機10の方向に応じた各種の処理を制御することができ、利便性を高めることが可能となる。
【0046】
また、上記のような制御によれば、簡易な構成でセキュリティ性をより向上させることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る制御部210は、無線通信部220による携帯機10からの信号の受信状況に基づいて、無線通信のリトライ要否を判定することを特徴の一つとする。
【0048】
本実施形態に係る制御部210によれば、無線通信部220が有する少なくとも2つのアンテナ素子225による信号の受信状況に基づくリトライ要否の判定を行うことで、無線通信に係るリトライをより効率的に実現することが可能となる。
【0049】
例えば、本実施形態に係る制御部210は、無線通信のリトライが必要であると判定した場合、無線通信部220に、無線通信に係るリトライ要求を、携帯機10に対して送信させてもよい。
【0050】
なお、上記リトライ要求は、携帯機10の状態が無線通信に適した規定の状態に遷移した場合に携帯機10の方向の推定に用いられる信号、すなわち第1の信号の再送信を行うよう要求する信号であってもよい。
【0051】
上記のようなリトライ要求の送信制御によれば、実際にリトライが必要となった状況において、携帯機10に第1の信号の再送信を要求することができ、不必要なリトライの実行を回避し、効率的なリトライを実現することができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る制御部210は、例えば、少なくとも2つのアンテナ素子225の各々が受信した携帯機10からの信号(例えば、第1の信号)から推定されるチャネルインパルス応答(CIR:Channel Impulse Response)に基づいて、無線通信のリトライ要否を判定してもよい。
【0053】
例えば、本実施形態に係る制御部210は、推定されたCIRにおけるファーストパスに基づいて、無線通信のリトライ要否を判定してもよい。
【0054】
ここで、上記ファーストパスとは、携帯機10から送信された信号であって他の物体に反射されず直接的にアンテナ素子225により受信される信号を指す。
【0055】
例えば、制御部210は、CIRにおいて時系列にピークの検出を行い、時系列において初めて強度がある閾値を超えたピークに係る信号をファーストパスと見做してもよい。
【0056】
通常、通信状況が安定しており、マルチパスの影響を受けない環境においては、2つ以上のアンテナ素子225のそれぞれに係るファーストパスは、類似の特徴を示すことが想定される。
【0057】
このことから、本実施形態に係る制御部210は、いずれかのアンテナ素子225に係るファーストパスの減衰が推定される場合に、無線通信のリトライが必要である判定してもよい。
【0058】
例えば、いずれかのアンテナ素子225に係るファーストパスが検出できない場合、制御部210は、ファーストパスが減衰していると推定し、無線通信のリトライが必要である判定してもよい。
【0059】
また、例えば、アンテナ素子225間において、検出されたファーストパスに著しい時間差が生じている場合、本来のファーストパスが減衰したことにより、マルチパスがファーストパスとして誤検出されている可能性がある。このため、制御部210は、検出されたファーストパスに著しい時間差が生じている場合、無線通信のリトライが必要である判定してもよい。
【0060】
また、例えば、制御部210は、CIRの推定が困難である場合に、無線通信のリトライが必要である判定してもよい。
【0061】
このようなCIRに基づく判定によれば、より精度高く無線通信のリトライ要否を判定することができ、不必要なリトライの実行を回避し、効率的なリトライを実現することができる。
【0062】
(無線通信部220)
本実施形態に係る無線通信部220は、携帯機10との間における無線通信を行う。例えば、無線通信部220は、携帯機10から第1の信号を受信し、第1の信号への応答として第2の信号を送信してもよい。また、例えば、無線通信部220は、携帯機10から測距値等の測距情報を受信してもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る無線通信部220は、少なくとも2つのアンテナ素子225aおよび225bを備える。無線通信部220は、アンテナ素子225aおよび225bが受信した携帯機10からの信号の位相差に基づいて、当該信号の到来角(AoA:Angle of Arrival)を推定してもよい。
【0064】
この場合、制御部210は、無線通信部220が推定した到来角に基づいて、被制御装置を制御してもよい。具体的には、制御部210は、上記到来角が規定の範囲内にある場合に、被制御装置に所定の動作を実行させてもよい。
【0065】
上記のような制御によれば、少なくとも2つのアンテナ素子225aおよび225b含む簡易な構成で、携帯機10の方向に応じた制御を行うことができ、セキュリティ性を担保しつつ、消費電力を抑制することが可能となる。
【0066】
以上、本実施形態に係る車載器の機能構成例について述べた。なお、上記で説明した車載器20の機能構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る車載器20の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る車載器20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0067】
<<1.2.携帯機10の方向に基づく被制御装置の制御>>
次に、本実施形態に係る携帯機10の方向に基づく被制御装置の制御について詳細に説明する。
【0068】
従来、携帯機の認証を行う手段としては、LF(Low Frequency)帯およびUHF(Ultra High Frequency)帯の信号が広く用いられていた。しかし、LF帯やUHF帯の信号を用いる場合、セキュリティ性を担保するためには、携帯機の信号を中継し不正に認証を成立させるリレーアタック等に対する対策が求められる。
【0069】
上記の対策としては、例えば、車載器と携帯機との間において測距を行い、算出した測距値に基づく認証を行う方法も想定される。
【0070】
しかし、測距値に基づく認証を正確に行うためには、測距値を精度高く取得することが求められる。
【0071】
また、高精度の測距値を取得する手法としては、例えば、測距値を取得するための通信ユニットを車両に複数搭載し、通信ユニットごとに測距を行うことも想定される。しかし、この場合、車両に搭載する通ユニットの数だけ製造コストが増加することとなる。
【0072】
また、別の手法としては、単一の通信ユニットで複数回の測距を行うことが想定される。しかし、この場合であっても、測距の回数が増加するほど、消費電力が増大することとなる。
【0073】
このために、本実施形態に係る車載器20が備える制御部210は、携帯機10が送信する信号の到来角を推定し、当該到来角が所定の範囲内にある場合、携帯機10の方向が所定の範囲内にある場合に、被制御装置に所定の動作を実行させてもよい。
【0074】
上記の制御によれば、リレーアタックの懸念を排除するとともに、複数回の測距による電力消費の増大を防ぐことが可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係る車載器20の制御部210は、携帯機10の方向に基づく上記の制御に加え、無線通信に基づいて推定された携帯機10と車載器20との距離が規定の範囲内である場合に、前記被制御装置に所定の動作を実行させてもよい。
【0076】
すなわち、制御部210は、推定された到来角が規定の範囲内であり、かつ測距値が規定の範囲内である場合に、被制御装置に所定の動作を実行させてもよい。
【0077】
このような制御によれば、携帯機10の方向と距離に基づくよりセキュアな認証を行うとともに、方向および距離に応じたより綿密な機能提供を実現することが可能となる。
【0078】
なお、到来角の算出、および測距に用いられる信号は、上述したUWBの周波数を用いたものであってもよい。この場合、無線通信部220は、測距のために携帯機10が送信する第1の信号をアンテナ素子225aおよび225bで受信することで、第1の信号の到来角を推定することができ、より少ない通信回数で上記のような制御を実現することができる。
【0079】
一方、到来角の算出および測距には、互いに異なる無線通信規格に準拠した信号が用いられてもよい。これによれば、例えば、携帯機10がスマートフォンである場合などにおいて、当該スマートフォンに標準で利用可能なWi-Fi(登録商標)やBlueTooth(登録商標)などを用いて上記の制御を行うことも可能である。
【0080】
以下、本実施形態に係る車載器20による被制御装置の制御について具体例を挙げて説明する。図2は、本実施形態に係る車載器20による被制御装置の制御の一例について説明するための図である。
【0081】
図2には、移動体V、および移動体Vに搭載される無線通信部220が有する2つのアンテナ素子225aおよび225bの配置例が示されている。
【0082】
図2に示すように、本実施形態に係るアンテナ素子225aおよび225bは、移動体Vの中心付近において、移動体Vの進行方向に沿って規定の間隔を空けて配置されてもよい。なお、図2においては、移動体Vの進行方向が0°として示されている。
【0083】
このような配置によれば、2つのアンテナ素子225aおよび225bを用いて、移動体Vの側方、すなわち運転席、助手席、および後部座席のドア付近に存在する携帯機10の角度を精度高く推定することができ、移動体Vに搭乗しようとするユーザに対し、携帯機10の角度に応じた機能提供を効果的に行うことが可能となる。
【0084】
また、図2においては、車載器20の制御部210が、被制御装置に所定の動作を実行させるための条件が、ドットの背景により視覚的に示されている。
【0085】
本実施形態に係る制御部210は、例えば、図2に示すように、推定された到来角(すなわち、移動体Vを基準とした携帯機10の方向)が、45°~135°または225°~315°の範囲であり、かつ取得された測距値が1m~3mの範囲である場合に、被制御装置に所定の動作を実行させてもよい。
【0086】
このような制御によれば、被制御装置に所定の動作を行わせるための条件としての携帯機10の位置(方向および距離)を細かく限定することができ、セキュリティ性を高めるとともに、当該位置に適した各種の機能をユーザに提供することが可能となる。
【0087】
以上、本実施形態に係る携帯機10の方向に基づく被制御装置の制御について具体例を挙げて説明した。なお、上記で挙げた規定の範囲はあくまで一例であり、本実施形態に係る規定の範囲は仕様や運用に応じて適宜設定されてよい。
【0088】
また、上述したように、本実施形態に係るシステム1は、上記のような被制御装置の制御において、無線通信のリトライ要否を精度高く判定し、不必要なリトライを回避するとともに、効率的なリトライを実現するものである。
【0089】
以下、上記のリトライ制御の流れについて詳細に説明する。
【0090】
<<1.3.処理の流れ>>
本実施形態に係るリトライ制御の流れについて述べる前に、まず、システム1による被制御装置の制御の流れについて説明する。
【0091】
図3は、本実施形態に係るシステム1による被制御装置の制御の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0092】
図3に示す一例の場合、まず、携帯機10の無線通信部120が、第1の信号を送信する(S102)。第1の信号は、測距および到来角の推定に用いられる。
【0093】
また、第1の信号は、車載器20の無線通信部220が有する2つ以上のアンテナ素子225により受信される。
【0094】
次に、車載器20の無線通信部220が、ステップS102において受信した第1の信号への応答として、第2の信号を送信する(S104)。第2の信号は測距に用いられる。
【0095】
また、車載器20の無線通信部220は、ステップS102において少なくとも2つのアンテナ素子225により受信した第1の信号に係る位相差に基づいて到来角を推定する(S106)。
【0096】
一方、携帯機10の制御部110は、ステップS102において無線通信部120が送信した第1の信号、およびステップS104において無線通信部120が受信した第2の信号に基づく測距を行い、測距値を算出する(S108)。
【0097】
次に、無線通信部120が、ステップS108において算出された測距値を無線通信部220に送信する(S110)。
【0098】
次に、車載器20の制御部210が、ステップS106において推定された到来角、およびステップS110において受信した測距値基づく制御を実行する(S112)。
【0099】
以上、本実施形態に係る被制御装置の制御の流れについて一例を挙げて説明した。なお、上記で説明した流れはあくまで一例であり、システム1による処理は係る例に限定されない。
【0100】
例えば、上記では、携帯機10の制御部110が測距値の算出を行う場合を例示したが、本実施形態に係る測距値の算出は車載器20の制御部210により行われてもよい。
【0101】
この場合、例えば、携帯機10の無線通信部120が測距値を算出するための情報(上述したΔT1等)を無線通信部220に送信してもよい。また、無線通信部220が第1の信号を送信し、無線通信部120が当該第1の信号への応答として第2の信号を送信してもよい。
【0102】
また、例えば、移動体Vを基準とした携帯機10の方向の推定は携帯機10の無線通信部120が行ってもよい。この場合、車載器20の無線通信部220が、上記方向を推定するための情報(例えば、位相差や、位相差を取得するための各種情報)を無線通信部120に送信すればよい。無線通信部120は、推定された方向に関する情報を無線通信部220に返送する。
【0103】
このように、本実施形態に係る被制御装置の制御の流れは、柔軟に変形可能である。
【0104】
続いて、本実施形態に係る無線通信のリトライ制御の流れについて詳細に説明する。図4は、本実施形態に係るシステム1によるリトライ制御の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0105】
なお、図4においては、図3で示したステップS102における第1の信号の受信が行われた後、ステップS106における到来角の推定に付随してリトライ要否の判定を行う場合の一例が示されている。
【0106】
この場合、まず、車載器20の無線通信部220が、アンテナ素子225のそれぞれが受信した第1の信号に係るCIRの推定を行う(S202)。
【0107】
次に、車載器20の制御部210が、ステップS202において推定されたCIRに基づいて、無線通信のリトライ要否を判定する(S204)。
【0108】
この際、制御部210は、上述したようなファーストパスに基づいて無線通信のリトライ要否を判定してもよい。
【0109】
ステップS204において、無線通信のリトライが必要であると判定した場合、制御部210は、無線通信部220にリトライ要求を送信させる(S206)。
【0110】
ステップS206において携帯機10の無線通信部120がリトライ要求を受信すると、携帯機10の制御部10は、通知部140に、携帯機10の状態の改善を促す通知を出力させる(S208)。
【0111】
また、制御部110は、状態検出部130に、携帯機10の状態の監視を実行させる。
【0112】
その後、携帯機10の状態が改善したこと、すなわち携帯機10が無線通信に適した規定の状態に遷移したことを状態検出部130が検出した場合(S210)、制御部110は、無線通信部120に第1の信号を再送信される(S212)。
【0113】
以上、本実施形態に係る無線通信のリトライ制御の流れについて一例を挙げて説明した。なお、上記で説明した流れはあくまで一例であり、システム1による処理は係る例に限定されない。
【0114】
例えば、上記では、車載器20の制御部210が、CIRに基づいて無線通信のリトライ要否を判定する場合を例示した。一方、本実施形態に係る制御部210は、例えば、アンテナ素子225の各々に係る第1の信号の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)に基づいてリトライ要否の判定を行ってもよい。
【0115】
この場合、制御部210は、例えば、いずれかのアンテナ素子225に係るRSSIがある閾値を下回る場合に、リトライが必要であると判定してもよい。
【0116】
また、上記では、車載器20の制御部210が無線通信のリトライ要否を判定する場合を例示した。一方、本実施形態に係る無線通信のリトライ要否の判定は、携帯機10の制御部110により行われてもよいし、携帯機10の制御部110および車載器20の制御部210の両方により行われてもよい。
【0117】
この場合、例えば、携帯機10の制御部110は、アンテナ素子125により受信された第2の信号に係るCIRに基づいて、無線通信装置のリトライ要否判定を行ってもよい。
【0118】
このように、本実施形態に係る無線通信のリトライ制御の流れは、柔軟に変形可能である。
【0119】
<2.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0120】
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1:システム、10:携帯機、110:制御部、120:無線通信部、125:アンテナ素子、130:状態検出部、140:通知部、20:車載器、210:制御部、220:無線通信部、225:アンテナ素子
図1
図2
図3
図4