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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】液化ガスタンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240322BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F17C13/00 302E
B63B25/16 101A
B63B25/16 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020134971
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030753
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 徹也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】平沼 真衣
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206385(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0003327(KR,U)
【文献】特開昭62-064766(JP,A)
【文献】実開昭60-179691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B63B 25/16
B65D 90/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、液化ガスを貯留する貯蔵部と、
前記貯蔵部の底面から下方に向かって窪んでおり、前記液化ガスを吸引する吸引口が内部に位置するサクションウェルと、
平面視において前記サクションウェルを囲むように配置されているとともに、前記貯蔵部の底面から上方に向かって延び、前記貯蔵部の底面よりも上方に保護エリアを形成する側壁と、
前記サクションウェルの上方に隣接する前記保護エリアの少なくとも一部を覆う天板と、を備えている、液化ガスタンク。
【請求項2】
前記側壁には、前記液化ガスが流通可能な複数の流通孔が周方向に沿って形成されている、請求項1に記載の液化ガスタンク。
【請求項3】
前記天板には、作業者が前記保護エリアに侵入する際に通行可能であって、各流通孔よりも開口面積が大きい通行孔が形成されている、請求項2に記載の液化ガスタンク。
【請求項4】
前記天板には、前記吸引口を有するポンプが貫通可能なポンプ貫通孔が形成されており、
前記側壁には、作業者が前記保護エリアに侵入する際に通行可能であって、各流通孔よりも開口面積が大きい通行孔が形成されている、請求項2に記載の液化ガスタンク。
【請求項5】
前記通行孔は、前記側壁のうち前記保護エリアの中心から見て前記船舶の長手方向に相当する周方向位置にのみ形成されている、請求項4に記載の液化ガスタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、液化ガスを貯留する液化ガスタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスや水素ガスなどの可燃性ガスは冷却又は圧縮によって液化され、その状態で液化ガスタンクに貯留される。液化ガスタンクに貯留された液化ガス(液化された可燃性ガス)は、液化ガスタンク内のポンプによって吸引され、配管を介して外部に搬出される。液化ガスの液面がポンプの吸引口よりも一定以上高くなければ、ポンプは液化ガスを十分に吸引することができない。また、液化ガスの液面がポンプの吸引口よりも一時的に低くなれば、いわゆるエア噛みが発生する。
【0003】
このようなポンプの不具合を回避するために、液化ガスタンクの底面にサクションウェルを形成する場合がある(特許文献1参照)。サクションウェルは、液化ガスタンクの底面に形成された窪みである。サクションウェルの内部にポンプの吸引口を配置すれば、液化ガスの量がある程度減ったとしても、液化ガスの液面がポンプの吸引口よりも一定以上高い状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-279979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した液化ガスタンクは、船舶にも搭載される。液化ガスタンクを搭載する船舶では、液化ガスを貨物として運搬する場合、及び、液化ガスを燃料として使用する場合のいずれであっても、液化ガスタンク外部から加わる侵入熱によってボイルオフガスが発生することにより、又は、燃料ガスを燃料として使用することにより、液化ガスタンク内の液化ガスの量が変動する。液化ガスタンクを搭載する船舶では、液化ガスタンクが液化ガスで満たされていない場合には、航海中のローリング(横揺れ)などの動揺に起因して、液化ガスタンク内の液化ガスが大きく揺れる「スロッシング」という現象が発生することがある。
【0006】
スロッシングが発生すると、液化ガスが大きく揺れることから、特に液化ガスタンク内における液化ガスの量が少ない場合、サクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動し、サクションウェル内における液化ガスの液面が低下するおそれがある。つまり、液化ガスの液面がポンプの吸引口よりも一定以上高い状態を維持できなくなるおそれがある。
【0007】
本願は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、スロッシングが発生したときに、サクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動するのを抑制できる液化ガスタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の一態様に係る液化ガスタンクは、船舶に搭載され、液化ガスを貯留する貯蔵部と、前記貯蔵部の底面から下方に向かって窪んでおり、前記液化ガスを吸引する吸引口が内部に位置するサクションウェルと、前記サクションウェルの少なくとも一部を覆う、又は、前記サクションウェルの上方に隣接する保護エリアの少なくとも一部を覆う天板と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、サクションウェルの少なくとも一部又はサクションウェルの上方に隣接する保護エリアの少なくとも一部が天板によって覆われるため、サクションウェル内又はサクションウェル周辺における液化ガスの移動が抑制される。その結果、スロッシングが発生したとしても、サクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、スロッシングが発生したときに、サクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動するのを抑制できる液化ガスタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、液化ガスタンクが搭載された船舶の模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る液化ガスタンクの底面付近の断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る液化ガスタンクの底面付近の断面図である。
図4図4は、第3実施形態に係る液化ガスタンクの底面付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態に係る液化ガスタンク100について説明する。図1は、液化ガスタンク100が搭載された船舶101の模式図である。図1(a)は船舶101の平面図であり、図1(b)は船舶101の側面図である。以下では、図1(a)の紙面左右方向を「前後方向」と称し、図1(a)の紙面上下方向を「左右方向」と称して説明を行う。
【0013】
液化ガスタンク100には、天然ガスや水素ガスなどの可燃性ガスを冷却又は圧縮することで液化した液化ガスが貯留されている。本実施形態の船舶101は、液化ガスタンク100内の液化ガス(可燃性ガス)を主に燃料として使用する燃料船である。ただし、船舶101は、液化ガスを荷役として運搬する運搬船であってもよい。
【0014】
本実施形態では、液化ガスタンク100については左右方向が長手方向であり、船舶101については前後方向が長手方向である。つまり、液化ガスタンク100の長手方向と船舶101の長手方向が直交する「横置き」の状態で、液化ガスタンク100は船舶101に搭載されている。ただし、搭載の方向は上記のものに限定されない。
【0015】
液化ガスタンク100が液化ガスで満たされておらず、かつ、船舶101に航行による一定周期のローリング(横揺れ)が生じると、液化ガスタンク100内の液化ガスが左右方向などに大きく揺れる「スロッシング」という現象が発生する。特に、液化ガスタンク100が横置きの場合は、ローリング(横揺れ)によるスロッシングが発生しやすい。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る液化ガスタンク100の左右方向中央部分を前後方向に切断した断面図であって、液化ガスタンク100の底面付近を示している。図2に示すように、液化ガスタンク100は、貯蔵部10と、サクションウェル20と、天板30と、を備えている。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0017】
貯蔵部10は、液化ガスタンク100の外面を形成する部分であって、内部に液化ガスが貯留される。図1に示すように、貯蔵部10は、左右方向両端部分が半球状に形成され、左右方向中央部分が円筒状に形成されている。一例として、貯蔵部10の左右方向寸法は5~50mであり、直径は3~20mである。ただし、貯蔵部10の形状及び寸法は上記のものに限定されない。
【0018】
サクションウェル20は、貯蔵部10の底面に設けられた窪みである。つまり、サクションウェル20は、貯蔵部10の底面から下方に向かって窪んでいる。サクションウェル20は上方に開口する円筒状に形成されている。一例として、サクションウェル20の直径は0.2~2.0mである。ただし、サクションウェル20の形状及び寸法は上記のものに限定されない。例えば、サクションウェル20は、水平断面が左右方向を長径とする楕円である筒状の形状を有していてもよい。
【0019】
サクションウェル20は、その内部に液化ガスを吸引するポンプ102の吸引口が位置している。本実施形態では、サクションウェル20は、ポンプ102の一部を収容するが、ポンプ102の全部を収容してもよい。なお、サクションウェル20がポンプ102の一部を収容する場合には、ポンプ102の吸引口がサクションウェル20内に位置し、モータが貯蔵部10の外部に位置するような場合も含む。本実施形態のポンプ102は下面に吸引口が形成されており、この吸引口から液化ガスを吸引する。なお、ポンプ102の下面とサクションウェル20の底面は上下方向に一定距離離れている。ポンプ102で吸引した液化ガスは、ポンプ102から上方に向かって延びる配管103を介して、液化ガスタンク100の外部に搬出される。本実施形態では、サクションウェル20は1つのポンプ102を収容するが、複数のポンプ102を収容していてもよい。
【0020】
なお、液化ガスの液面がポンプ102の吸引口よりも一定以上高くない場合には、吸引口における液化ガスの圧力が足りず、ポンプ102は液化ガスを十分に吸引することができない。また、液化ガスの液面がポンプ102の吸引口よりも一時的に低くなれば、いわゆるエア噛みが発生する。このような不具合を回避すべく、液化ガスタンク100は天板30を備えている。
【0021】
天板30は、サクションウェル20を上方から覆う部材である。天板30は、サクションウェル20の上端付近に位置している。ただし、天板30は、サクションウェル20の内部に位置していてもよい。天板30の中央部分には、ポンプ102が貫通可能又はポンプ102を取外し可能な開口面積を有するポンプ貫通孔31が形成されている。天板30は円環状の形状を有しており、サクションウェル20の一部(サクションウェル20の中央部分を除く部分)を覆っている。また、ポンプ貫通孔31の中心とサクションウェル20の中心軸は一致せず、ずれていてもよい。なお、天板30は、ポンプ102の上端よりも下方に位置していてもよく、上方に位置していてもよい。
【0022】
ポンプ貫通孔31の直径はポンプ102の外径よりも大きく、ポンプ102と天板30の間には円環状の隙間が形成されている。貯蔵部10の液化ガスは、この隙間を介してサクションウェル20に流入する。一方、サクションウェル20に流入した液化ガスは、天板30によってサクションウェル20の外部への移動が制限される。そのため、上述したスロッシングが発生しても、サクションウェル20内の液化ガスがサクションウェル20の外部に移動するのを抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態では、天板30の上面を作業者の足場として使用することができる。天板30の上面を作業者の足場とすれば、足場はポンプ102に近く、作業者はポンプ102に対するメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る液化ガスタンク200について説明する。図3は、第2実施形態に係る液化ガスタンク200の左右方向中央部分を前後方向に切断した断面図であって、液化ガスタンク200の底面付近を示している。図3は、第1実施形態の図2に相当する。
【0025】
本実施形態に係る液化ガスタンク200は、側壁40を備えている点で第1実施形態に係る液化ガスタンク100と異なる。また、本実施形態の天板30は第1実施形態のものと異なる。一方、これら以外については、本実施形態に係る液化ガスタンク200は、第1実施形態に係る液化ガスタンク100と同じ構成を備えている。以下、本実施形態に係る液化ガスタンク200について、第1実施形態に係る液化ガスタンク100との相違点を中心に説明する。
【0026】
前述のとおり、本実施形態に係る液化ガスタンク200は、側壁40を備えている。側壁40は、平面視において、サクションウェル20を囲むように配置されている。側壁40は、円筒状の形状を有しており、貯蔵部10の底面から上方に向かって延びている。ここで、サクションウェル20の上方に隣接する空間を「保護エリア」とすると、側壁40はこの保護エリア41の内部と外部の間に位置している。つまり、側壁40は、保護エリア41を形成している(画している)。なお、貯蔵部10に複数のサクションウェル20が設けられている場合は、複数のサクションウェル20の上方に連続する1つの保護エリア41を形成してもよい。
【0027】
側壁40には、周方向に沿って複数の流通孔42が形成されている。流通孔42は、液化ガスが流通できるように形成されている。そのため、側壁40よりも外側に位置する液化ガスは、この流通孔42を介して保護エリア41に流入する。本実施形態の流通孔42は周方向を長径とする楕円状の形状を有している。一例として、流通孔42の周方向寸法は0.1~1.0mである。ただし、流通孔42の形状及び寸法は上記のものに限定されない。
【0028】
なお、保護エリア41に液化ガスが流入しやすいように、流通孔42は側壁40の下端付近に形成されるのが望ましい。また、本実施形態の側壁40は、周方向に連続する部材で形成されているが、これ以外の部材によって形成されていてもよい。
【0029】
続いて、天板30について説明する。本実施形態の天板30は、保護エリア41の上端に位置しており、保護エリア41を上方から覆っている。ただし、天板30の中央部分には、作業者が通行可能な通行孔32が形成されている。そのため、天板30は円環状の形状を有しており、保護エリア41の一部(保護エリア41の中央部分を除く部分)を覆っている。
【0030】
一例として通行孔32の直径は0.5~2.0mである。また、通行孔32は、流通孔42よりも開口面積が大きく、第1実施形態のポンプ貫通孔31(図2参照)よりも開口面積が大きい。本実施形態では、通行孔32はサクションウェル20と同じ直径となるように形成されている。なお、通行孔32の形状及び寸法は、上記のものに限定されない。
【0031】
前述のとおり、液化ガスは側壁40に形成された流通孔42を通過するが、短時間で通過できる量は限られている。そのため、保護エリア41に一旦流入した液化ガスは流通孔42を介して保護エリア41の外部へ速やかに移動することはできない。また、側壁40を乗り越えて保護エリア41の外部に移動しようとする液化ガスは、天板30によってその移動が制限される。そのため、スロッシングが発生したとしても、保護エリア41内の液化ガスが保護エリア41の外部に移動するのを抑制でき、ひいてはサクションウェル20内の液化ガスがサクションウェル20の外部に移動するのを抑制できる。
【0032】
また、本実施形態では、作業者が通行孔32を通って保護エリア41及びサクションウェル20に侵入することができる。作業者は通行孔32を通ってサクションウェル20に侵入することで、ポンプ102に対するメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。ただし、ポンプ102とサクションウェル20の隙間が狭い場合には、作業者は、サクションウェル20に侵入せずに作業を行ってもよい(この点は、第3実施形態の場合も同様)。
【0033】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る液化ガスタンク300について説明する。図4は、第3実施形態に係る液化ガスタンク300の左右方向中央部分を前後方向に切断した断面図であって、液化ガスタンク300の底面付近を示している。図4は、第1実施形態の図2及び第2実施形態の図3に相当する。
【0034】
本実施形態の天板30及び側壁40は第2実施形態のものと異なる。一方、これら以外については、本実施形態に係る液化ガスタンク300は、第2実施形態に係る液化ガスタンク200と同じ構成を備えている。以下、本実施形態に係る液化ガスタンク300について、第2実施形態に係る液化ガスタンク200との相違点を中心に説明する。
【0035】
本実施形態の側壁40は、第2実施形態のものに比べて上下方向寸法が大きい。また、側壁40には、流通孔42に加え、作業者が通行可能な通行孔43が形成されている。本実施形態の通行孔43は上下方向を長径とする楕円状の形状を有している。一例として、通行孔43の上下方向寸法は0.5~2.0mである。また、通行孔43は、流通孔42よりも開口面積が大きく、流通孔42よりも上方に位置している。なお、通行孔43の形状及び寸法は、上記のものに限定されない。
【0036】
さらに、通行孔43は、側壁40のうち保護エリア41の中心から見て前後方向(つまり船舶101の長手方向)に相当する周方向位置にのみ形成されている。本実施形態では、通行孔43は、側壁40のうち保護エリア41の中心から見て前方及び後方に相当する2つの周方向位置に形成されているが、いずれか一方の周方向位置にのみ形成されていてもよい。
【0037】
通行孔43は流通孔42よりも開口面積が大きくなるため、スロッシングが発生すると、保護エリア41内の液化ガスは通行孔43を介して保護エリア41の外部に移動しやすいようにも思える。ところが、スロッシングが発生したときの液化ガスの揺れの方向は左右方向である。そのため、通行孔43が、側壁40のうち保護エリア41の中心から見て前後方向に相当する周方向位置にのみ形成されていれば、通行孔43を介して保護エリア41の内部から外部に移動する液化ガスの量を抑えることができる。
【0038】
本実施形態の天板30は、第2実施形態のものと同様に、保護エリア41を上方から覆っている。ただし、天板30には通行孔32(図3参照)は形成されていない。これは、前述のとおり、側壁40に通行孔43が形成されており作業者はこの通行孔43を通って保護エリア41及びサクションウェル20に侵入することができるためである。なお、天板30には、ポンプ102が貫通可能なポンプ貫通孔31が形成されている。ポンプ貫通孔31は、通行孔32(図3参照)よりも開口面積が小さい。通行孔43は、メンテナンス時にポンプ102を搬出できるよう構成されていてもよい。
【0039】
本実施形態に係る液化ガスタンク300によれば、第2実施形態に係る液化ガスタンク200と同様に、スロッシングが発生したときに、保護エリア41内の液化ガスが保護エリア41の外部に移動するのを抑制でき、ひいてはサクションウェル20内の液化ガスがサクションウェル20の外部に移動するのを抑制できる。
【0040】
また、本実施形態では、作業者が通行孔43を通って保護エリア41及びサクションウェル20に侵入することができる。作業者が通行孔43を通ってサクションウェル20に侵入すれば、作業者はポンプ102に対してメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。
【0041】
なお、以上では、各実施形態に係る液化ガスタンク100、200、300について説明したが、各液化ガスタンク100、200、300の構成要素を組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態に係る液化ガスタンク100に、第2実施形態に係る液化ガスタンク200又は第3実施形態に係る液化ガスタンク300の側壁40を適用してもよい。
【0042】
(作用効果)
上記のとおり、実施形態に係る液化ガスタンクは、船舶に搭載され、液化ガスを貯留する貯蔵部と、前記貯蔵部の底面から下方に向かって窪んでおり、前記液化ガスを吸引する吸引口が内部に位置するサクションウェルと、前記サクションウェルの少なくとも一部を覆う、又は、前記サクションウェルの上方に隣接する保護エリアの少なくとも一部を覆う天板と、を備えている。
【0043】
この構成によれば、サクションウェルの少なくとも一部又はサクションウェルの上方に隣接する保護エリアの少なくとも一部が天板によって覆われるため、サクションウェル又はサクションウェル周辺における液化ガスの移動が抑制される。その結果、スロッシングが発生したとしても、サクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動するのを抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態に係る液化ガスタンクでは、前記吸引口を有するポンプの一部又は全部が前記サクションウェル内に収容されており、前記天板は、前記サクションウェルの上端付近又は内部に位置しており、前記天板には、前記ポンプが貫通可能なポンプ貫通孔が形成されている。
【0045】
この構成によれば、比較的単純な構造でありながら、スロッシングが発生したときに、サクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動するのを抑制することができる。また、作業者は天板を足場にすることで、ポンプに対するメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。
【0046】
また、第2実施形態及び第3実施形態に係る液化ガスタンクは、平面視において前記サクションウェルを囲むように配置されているとともに、前記貯蔵部の底面から上方に向かって延び、前記保護エリアを形成する側壁をさらに備え、前記側壁には、前記液化ガスが流通可能な複数の流通孔が周方向に沿って形成されている。
【0047】
この構成によれば、流通孔を介して保護エリア及びサクションウェル内に液化ガスを流入させることができる。しかも、スロッシングが発生したときには、保護壁によって保護エリア内の液化ガスが保護エリアの外部に移動するのを抑制でき、ひいてはサクションウェル内の液化ガスがサクションウェルの外部に移動するのを抑制することができる。
【0048】
また、第2実施形態に係る液化ガスタンクでは、前記天板には、作業者が前記保護エリアに侵入する際に通行可能であって、各流通孔よりも開口面積が大きい通行孔が形成されている。
【0049】
この構成によれば、作業者は天板に形成された通行孔を通って、保護エリア及びサクションウェルに侵入できる。そのため、作業者はポンプに対するメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、第3実施形態に係る液化ガスタンクでは、前記天板には、前記吸引口を有するポンプが貫通可能なポンプ貫通孔が形成されており、前記側壁には、作業者が前記保護エリアに侵入する際に通行可能であって、各流通孔よりも開口面積が大きい通行孔が形成されている。
【0051】
この構成によれば、作業者は側壁に形成された通行孔を通って、保護エリア及びサクションウェルに侵入できる。そのため、作業者はポンプに対するメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。
【0052】
さらに、第3実施形態に係る液化ガスタンクでは、前記通行孔は、前記側壁のうち前記保護エリアの中心から見て前記船舶の長手方向に相当する周方向位置にのみ形成されている。
【0053】
このように通行孔が側壁のうち保護エリアの中心から見て船舶の長手方向に相当する周方向位置にのみ形成されていれば、スロッシングが発生したときに、通行孔を介して保護エリアの内部から外部に移動する液化ガスの量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 貯蔵部
20 サクションウェル
30 天板
31 ポンプ貫通孔
32 通行孔
40 側壁
41 保護エリア
42 流通孔
43 通行孔
100 液化ガスタンク
101 船舶
102 ポンプ
103 配管
200 液化ガスタンク
300 液化ガスタンク
図1
図2
図3
図4