IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ドックスタンド 図1
  • 特許-ドックスタンド 図2
  • 特許-ドックスタンド 図3
  • 特許-ドックスタンド 図4
  • 特許-ドックスタンド 図5
  • 特許-ドックスタンド 図6
  • 特許-ドックスタンド 図7
  • 特許-ドックスタンド 図8
  • 特許-ドックスタンド 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ドックスタンド
(51)【国際特許分類】
   B64F 5/40 20170101AFI20240322BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B64F5/40
H01H35/00 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020217763
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102801
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雄大
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0392745(US,A1)
【文献】中国実用新案第211543932(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/40
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機体に沿って配置される本体床と、
前記本体床に収容された収容位置と前記本体床から突出した展開位置との間でスライドする複数のスライド床と、
平面視において各スライド床のスライド方向と交差する方向に検出光を投光し、前記複数のスライド床の全てが前記収容位置にあるとき、投光した前記検出光は遮られず、前記複数のスライド床のうち少なくとも1つのスライド床が前記展開位置にあるとき、投光した前記検出光は遮られる光電センサと、を備えている、ドックスタンド。
【請求項2】
各スライド床に対応して配置された遮蔽板をさらに備え、
各遮蔽板は、対応するスライド床のスライドに伴って変位し、対応するスライド床が前記展開位置にあるとき、前記光電センサから投光された検出光を遮る遮蔽位置に位置するとともに、対応するスライド床が前記収容位置にあるとき、前記光電センサから投光された検出光を遮らない非遮蔽位置に位置している、請求項1に記載のドックスタンド。
【請求項3】
各スライド床に固定された接触部材をさらに備え、
前記接触部材は、対応するスライド床が前記展開位置から前記収容位置へスライドするのに伴って、対応する遮蔽板に接触して当該遮蔽板を前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置へ変位させるように構成されている、請求項2に記載のドックスタンド。
【請求項4】
前記遮蔽板は、対応するスライド床が前記収容位置から前記展開位置へスライドする際、重力によって前記非遮蔽位置から前記遮蔽位置へ変位するように構成されている、請求項2又は3に記載のドックスタンド。
【請求項5】
各接触部材は加勢部を有しており、
前記加勢部は、対応するスライド床が前記収容位置から前記展開位置へスライドするのに伴って、対応する遮蔽板に接触して前記遮蔽位置に向かう方向へ力を加えるように構成されている、請求項4に記載のドックスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、航空機を整備する際の足場となるドックスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機を整備する際には、作業用の足場が必要となる(特許文献1参照)。作業用の足場として、スライド床を備えた移動式のドックスタンドを用いることができる。このドックスタンドでは、ドックスタンドを移動させて本体床を航空機の近くに位置させた後、本体床から航空機の機体に沿って並んだ複数のスライド床を航空機に向かってスライドさせる。これにより、ドックスタンドと航空機の隙間がわずかとなり、作業者は安全に作業を行うことができる。
【0003】
また、このドックスタンドでは、航空機の整備が終わると、全てのスライド床を本体床に収容し、全てのスライド床が収容されたことを確認してからドックスタンドを移動させる。従来、全てのスライド床が収容されたか否かの判定は、スライド床ごとに設けられた接触式のリミットスイッチを用いて行っていた。つまり、従来のドックスタンドでは、少なくともスライド床と同じ数のリミットスイッチが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-34704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来のドックスタンドでは、非常に多くのリミットスイッチ、つまり非常に多くのセンサが必要であった。センサの数が多いと、製造コストの増加、配線の複雑化、及び、点検作業の負担の増加につながる。
【0006】
このような事情に鑑みて、本願では、センサの数が少ないドックスタンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の一態様に係るドックスタンドは、航空機の機体に沿って配置される本体床と、前記本体床に収容された収容位置と前記本体床から突出した展開位置との間でスライドする複数のスライド床と、平面視において各スライド床のスライド方向と交差する方向に検出光を投光し、前記複数のスライド床の全てが前記収容位置にあるとき、投光した前記検出光は遮られず、前記複数のスライド床のうち少なくとも1つのスライド床が前記展開位置にあるとき、投光した前記検出光は遮られる光電センサと、を備えている。
【0008】
この構成では、1つの光電センサを用いて複数のスライド床が本体床に収容されたか否かを判定することができる。したがって、従来のドックスタンドに比べてセンサの数を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、センサの数が少ないドックスタンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、各スライド床が展開位置にあるときのドックスタンドの平面図である。
図2図2は、各スライド床が収容位置にあるときのドックスタンドの平面図である。
図3図3は、前方から見た本体床の拡大図である。
図4図4は、スライド床が展開位置にあるときの図3のA-A矢視断面図である。
図5図5は、スライド床が収容位置にあるときの図3のA-A矢視断面図である。
図6図6は、遮蔽板及び接触部材を右方から見た図である。
図7図7は、遮蔽板及び接触部材を前方から見た図である。
図8図8は、スライド床が展開位置から収容位置に向かって移動する際の遮蔽板及び接触部材の動作を示した図である。
図9図9は、スライド床が収容位置から展開位置に向かって移動する際の遮蔽板及び接触部材の動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ドックスタンドの概要>
以下、実施形態に係るドックスタンド100について説明する。はじめに、ドックスタンド100の概要について説明する。図1及び図2は、いずれもドックスタンド100の平面図である。ドックスタンド100は、航空機を整備する際に作業用の足場となる設備である。ドックスタンド100には例えば車輪が設けられており、移動することができる。大型の航空機を整備する場合には、複数のドックスタンド100が航空機の長手方向に並んで配置される。
【0012】
図1及び図2に示すように、ドックスタンド100は、本体床10と、複数のスライド床20と、光電センサ30と、を備えている。
【0013】
本体床10は、航空機を整備する際に航空機の機体101に沿って配置される。本体床10は階層状に配置することができる。この場合、整備する航空機の高さが高ければ、それに対応して本体床10の階層数は多くなる。本実施形態の本体床10は、機体101の形状に対応する形状を有しているが、本体床10の形状は特に限定されない。
【0014】
以下では本体床10から見て航空機の機体101が位置する方(図1の紙面上方)を「前方」と称し、前方とは反対の方(図1の紙面下方)を「後方」と称し、前方及び後方に沿う方向(図1の紙面上下方向)を「前後方向」と称する。また、前方を向いて右方(図1の紙面右方)を「右方」と称し、前方を向いて左方(図1の紙面左方)を「左方」と称し、右方及び左方に沿う方向(図1の紙面左右方向)を「幅方向」と称する。
【0015】
図3は、前方から見た本体床10の拡大図である。図3に示すように、本体床10は、幅方向に延びる床板11と、前後方向に延びて床板11を支持する複数の支持フレーム12と、各支持フレーム12に固定され前後方向に延びるガイド部材13と、を有している。支持フレーム12及びガイド部材13は、いわゆるC型チャンネルであって、一方の側面が開口する断面矩形枠状の形状を有している。
【0016】
スライド床20は、図1及び図2に示すように、幅方向に並んで互いに平行に配置されている。各スライド床20は、本体床10に対して前後方向にスライドする。航空機を整備する際には、図1に示すように全てのスライド床20を本体床10から突出させて作業を行う。このときの各スライド床20の位置を「展開位置」と称する。また、航空機の整備が終わると、図2に示すように全てのスライド床20を本体床10に収容してから、ドックスタンド100を移動させる。このときの各スライド床20の位置を「収容位置」と称する。つまり、各スライド床20は、収容位置と展開位置の間でスライドする。
【0017】
なお、ドックスタンド100は、全てのスライド床20が収容位置に位置したことが確認された後に移動させる。全てのスライド床20が収容位置に位置しているか否かは、後述する光電センサ30を用いて判定することができる。
【0018】
図3に示すように、各スライド床20は幅方向両端が本体床10のガイド部材13に支持されており、このガイド部材13に沿ってスライドする。また、各スライド床20は図外のアクチュエータによって駆動されてスライドする。アクチュエータの形式は特に限定されず、エアー式であってもよく、油圧式であってもよく、電動式であってもよい。また、1つのスライド床20を1つのアクチュエータで駆動してもよく、複数のスライド床20を1つのアクチュエータで駆動してもよい。さらに、各スライド床20は、手動で駆動してもよい。
【0019】
光電センサ30は、全てのスライド床20が収容位置に位置しているか否かを判定するための機器である。図1及び図2に示すように、本実施形態の光電センサ30は、検出光31を投光する投光器32と、投光器32から投光された検出光31を受光する受光器33とを有している。本実施形態では、投光器32が本体床10の幅方向一端(左方端)付近に配置されており、受光器33が本体床10の幅方向他端(右方端)付近に配置されている。
【0020】
また、本実施形態の投光器32及び受光器33は、本体床10の前方縁よりも後方であって、機体101から前後方向に一定以上(一例として、2m以上)離れた可燃性ガス濃度の低い非防爆エリアに位置している。そのため、投光器32及び受光器33を防爆仕様にする必要はない。なお、防爆エリアは、整備する航空機ごとに予め設定されている。
【0021】
また、投光器32は、平面視において各スライド床20のスライド方向(前後方向)と交差する方向に検出光31を投光している。本実施形態の投光器32は、幅方向に検出光31を投光している。ただし、投光器32は幅方向に対して傾斜する方向に検出光31を投光してもよい。さらに、本実施形態では、投光器32と受光器33が別々に配置されているが、投光器32と受光器33を一体に形成してもよい。この場合、例えば、反射板を本体床10の幅方向一端付近に設け、投光器32と受光器33を本体床10の幅方向他端付近に設けてもよい。
【0022】
図4及び図5は、図3のA-A矢視断面図である。ただし、図4はスライド床20が展開位置に位置しているときの状態を示しており、図5はスライド床20が収容位置に位置しているときの状態を示している。なお、図4及び図5では、投光器32から投光される検出光31の位置も図示している(図6乃至図9も同様)。
【0023】
図4に示すように、投光器32から投光される検出光31は、スライド床20よりも低い位置を通過している。そして、スライド床20が展開位置に位置しているとき、遮蔽板40によって検出光31は遮蔽される。このときの遮蔽板40の位置を「遮蔽位置」と称する。つまり、スライド床20が展開位置に位置しているとき、遮蔽板40は遮蔽位置に位置している。
【0024】
一方、図5に示すように、スライド床20が収容位置に位置しているときは、接触部材50が遮蔽板40と接触することにより、遮蔽板40が傾斜し、投光器32から投光された検出光31は遮蔽板40に遮蔽されない。このときの遮蔽板40の位置を「非遮蔽位置」と称する。つまり、スライド床20が収容位置に位置しているとき、遮蔽板40は非遮蔽位置に位置している。なお、遮蔽板40は全てのスライド床20に対応して配置されており、接触部材50は全てのスライド床20に固定されている。
【0025】
<遮蔽板>
次に、遮蔽板40について詳しく説明する。図6は、遮蔽板40及び接触部材50を右方から見た図である。図6の紙面右方が「前方」であり、紙面左方が「後方」である。図7は遮蔽板40及び接触部材50を前方から見た図である。図7の紙面右方が「左方」であり、紙面左方が「右方」である。図6及び図7において、遮蔽板40は遮蔽位置に位置している。
【0026】
図6で示すように、遮蔽板40は、本体部41と、横延長部42と、予備接触部43とを有している。
【0027】
本体部41は板状であって、幅方向に対して垂直に配置されている。本体部41の中央よりも上方の部分には保持孔44が形成されており、この保持孔44において本体部41は保持されている。より詳しくは、次のとおりである。
【0028】
図3に示すように、本体床10の支持フレーム12の下面には断面L字状の支持部材14が固定されている。図4に示すように、この支持部材14には、前後方向に延びる取付孔15が形成されている。さらに、本体部41の保持孔44(図6参照)及び支持部材14の取付孔15を貫通するようにボルト16が取り付けられている。このボルト16を介して、本体部41は支持部材14に回動可能に支持されている。
【0029】
したがって、本体部41は保持孔44を中心にして回動するようにして変位することができる。さらに、図6で示すように、本体部41は略台形状に形成されており、本体部41の重心は、保持孔44よりも下方に位置している。つまり、本体部41の重心は、本体部41の回動中心よりも下方に位置している。その結果、本体部41に外力が加わらない場合、本体部41の重心が保持孔44の真下に位置した状態(すなわち図6に示す状態)で本体部41は停止する。
【0030】
横延長部42は、図7に示すように、本体部41から本体部41に対して垂直に延びている。また、図6で示すように、横延長部42は、幅方向から見て本体部41の外縁よりも内側に位置している。
【0031】
予備接触部43は、図7に示すように、横延長部42の先端部に設けられている。そのため、予備接触部43は本体部41と幅方向に離間して配置されている。また、図6で示すように、遮蔽板40が遮蔽位置に位置しているとき、予備接触部43は、横延長部42から前方に向かって延びており、その先端部分は本体部41よりも前方に位置している。以上が、遮蔽板40の詳細である。
【0032】
<接触部材>
次に、接触部材50について詳しく説明する。図6で示すように、接触部材50は、固定部51と、接触板52と、縦延長部53と、加勢部54とを有している。
【0033】
固定部51は、上下方向に延びており、上方部分がスライド床20に固定されている。固定部51をスライド床20に固定する方法は特に限定されず、ボルトを用いて固定してもよく、溶接によって固定してもよい。また、固定部51の下方部分は、接触板52に連結されている。
【0034】
接触板52は、前後方向中央に位置する水平部55と、水平部55の前端部分から前方斜め上方に向かって延びる前方傾斜部56と、水平部55の後端部分から後方斜め上方に向かって延びる後方傾斜部57と、を有している。また、図7に示すように、接触板52は、幅方向において遮蔽板40の本体部41及び横延長部42とは重複する一方、予備接触部43とは重複していない。そのため、接触部材50が前後方向に移動しても、接触板52が予備接触部43と接触することはない。また、前述のとおり、遮蔽板40の横延長部42は、幅方向から見て本体部41の外縁よりも内側に位置している(図6参照)。そのため、接触部材50が前後方向に移動したとき、接触板52が遮蔽板40の本体部41と接触しても横延長部42と接触することはない。
【0035】
縦延長部53は、図6に示すように、接触板52の後方傾斜部57に設けられており、後方傾斜部57から後方斜め下方に向かって延びている。また、図7に示すように、縦延長部53は、幅方向において遮蔽板40の本体部41及び予備接触部43とは重複していない。そのため、接触部材50が前後方向に移動しても、縦延長部53が遮蔽板40の本体部41及び予備接触部43と接触することはない。さらに、接触部材50が前後方向に移動するときの縦延長部53の移動軌跡は、遮蔽板40の本体部41が回動するときの横延長部42の移動軌跡と交わっていない。そのため、接触部材50が前後方向に移動しても、縦延長部53が遮蔽板40の横延長部42と接触することはない。
【0036】
加勢部54は、図6に示すように、縦延長部53の先端部に設けられている。遮蔽板40が遮蔽位置にあるとき、加勢部54は、遮蔽板40の横延長部42及び予備接触部43よりも上方に位置している。また、図7に示すように、加勢部54は縦延長部53から左方に向かって延びている。さらに、接触部材50が前後方向に移動するときの加勢部54の移動軌跡は、遮蔽板40の本体部41が回動するときの横延長部42の移動軌跡と交わっていない。そのため、接触部材50が前後方向に移動しても、加勢部54が遮蔽板40の横延長部42と接触することはない。一方、接触部材50が前後方向に移動するときの加勢部54の移動軌跡は、遮蔽板40の本体部41が回動するときの予備接触部43の移動軌跡と交わっている。そのため、条件によっては、接触部材50が前後方向に移動する際に、加勢部54は遮蔽板40の予備接触部43と接触する。以上が、接触部材50の詳細である。
【0037】
<遮蔽板及び接触部材の動作>
次に、遮蔽板40及び接触部材50の動作について説明する。なお、以下で説明する動作は、全てのスライド床20に対応する遮蔽板40及び接触部材50で行われる。図8は、スライド床20が展開位置から収容位置に向かって移動する際の遮蔽板40及び接触部材50の動作を示した図である。図8において、紙面右方が前方(つまり、スライド床20の展開位置側)であり、紙面左方が後方(つまり、スライド床20の収容位置側)である。この点は、後述する図9も同様である。
【0038】
スライド床20が展開位置から収容位置に向かって移動すると、接触部材50が前方から遮蔽板40に近づく。図8(a)に示すように、接触部材50が遮蔽板40に接触するまでは、遮蔽板40は遮蔽位置に位置しており、検出光31を遮蔽する。
【0039】
スライド床20がさらに収容位置に向かって移動すると、接触部材50の接触板52が遮蔽板40の本体部41と接触することで、遮蔽板40に力が加わって遮蔽板40は変位する。具体的には、図8(b)に示すように、遮蔽板40は保持孔44を中心として回動する(図8(b)では反時計回り)。これにより、遮蔽板40は非遮蔽位置に位置することになり、検出光31は遮蔽板40により遮蔽されない。
【0040】
なお、前述のとおり、遮蔽板40が遮蔽位置にあるとき、加勢部54は、遮蔽板40の横延長部42及び予備接触部43よりも上方に位置している。そのため、接触部材50の接触板52が遮蔽板40の本体部41と接触する前に、接触部材50の加勢部54が遮蔽板40の本体部41及び予備接触部43と接触することはない。
【0041】
スライド床20が収容位置に達すると、図8(c)に示すように、遮蔽板40は接触部材50の接触板52に係止され、非遮蔽位置に位置する状態が維持される。つまり、検出光31が遮蔽されない状態が維持される。前述のとおり、以上で説明した動作は、全てのスライド床20に対応する遮蔽板40及び接触部材50で行われる。したがって、全てのスライド床20が収容位置にある場合、光電センサ30の投光器32から投光された検出光31は受光器33で受光される。一方、スライド床20の1つでも展開位置にある場合は、投光器32から投光された検出光31は受光器33で受光できない。このように、本実施形態に係るドックスタンド100によれば、1つの光電センサ30を用いて、全てのスライド床20が収容位置にあるか否かを判定することができる。
【0042】
なお、スライド床20が収容位置から展開位置へ向かって移動する場合の遮蔽板40及び接触部材50の動作は、上述したスライド床20が展開位置から収容位置へ移動する場合とは逆の動作を行う。つまり、図8(c)、図8(b)、図8(a)で図示する順で、遮蔽板40及び接触部材50は動作する。これにより、遮蔽板40は、非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位することになる。この場合、前述のとおり遮蔽板40の本体部41の重心が本体部41の回動中心(保持孔44)よりも下方に位置していることから、重力によって遮蔽板40は非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位する。
【0043】
<重力によって遮蔽板が変位しないときの動作>
上記のとおり、スライド床20が収容位置から展開位置へ向かって移動する際には、遮蔽板40は重力によって非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位する。ところが、遮蔽板40の一部が支持部材14に引っ掛かるなどして、重力によっても遮蔽板40が変位しない場合もあり得る。以下、この場合における遮蔽板40及び接触部材50の動作について説明する。
【0044】
図9は、スライド床20が収容位置から展開位置に向かって移動する際に、遮蔽板40が重力によって変位しないときの遮蔽板40及び接触部材50の動作を示した図である。図9(a)に示す状態から、スライド床20が展開位置(前方)に向かって移動すると、接触部材50も前方に向かって移動する。このとき、本来であれば、遮蔽板40は重力によって回動し、前述の図8(b)に示すように接触部材50と接触するはずである。
【0045】
ところが、重力によっても遮蔽板40が変位しない場合には、図9(b)に示すように、遮蔽板40は接触部材50と離間した状態となる。この状態において、さらにスライド床20が展開位置に向かって移動すると、接触部材50は前方へ移動し、接触部材50の加勢部54は遮蔽板40の予備接触部43に接触する。これにより、遮蔽板40は加勢部54から遮蔽位置に向かう方向への力が加わり、遮蔽板40は回動する(図9(c)では時計回り)。これにより、遮蔽板40は遮蔽位置に向かって変位することができる。
【0046】
このように、本実施形態に係るドックスタンド100によれば、スライド床20が収容位置から展開位置へ向かって移動する際に、遮蔽板40が重力で変位しない場合であっても、遮蔽板40を強制的に回動させることができる。
【0047】
<変形例>
次に、本実施形態に係るドックスタンド100の変形例について説明する。以上のとおり、本実施形態に係るドックスタンド100では、遮蔽板40を用いて光電センサ30の検出光31を遮蔽していたが、スライド床20が検出光31を直接遮蔽してもよい。この場合、例えば、本体床10の支持フレーム12及びガイド部材13に貫通孔を形成し、この貫通孔に向かって検出光31を投光してもよい。
【0048】
また、遮蔽板40の本体部41は全体にわたって厚みが一定であるが、遮蔽板40が重力によって回動しやすいように本体部41の下方部分を上方部分に比べて厚くしてもよい。また、本体部41の下方部分には、別途おもりを取り付けることができるように、おもりを取り付けるためのおもり取付孔を形成してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、重力を利用して遮蔽板40を非遮蔽位置から遮蔽位置へ変位させていたが、ばねなどの弾性材料の弾性力を利用して遮蔽板40を非遮蔽位置から遮蔽位置へ変位させてもよい。
【0050】
<まとめ>
上記のとおり、本実施形態に係るドックスタンドは、航空機の機体に沿って配置される本体床と、前記本体床に収容された収容位置と前記本体床から突出した展開位置との間でスライドする複数のスライド床と、平面視において各スライド床のスライド方向と交差する方向に検出光を投光し、前記複数のスライド床の全てが前記収容位置にあるとき、投光した前記検出光は遮られず、前記複数のスライド床のうち少なくとも1つのスライド床が前記展開位置にあるとき、投光した前記検出光は遮られる光電センサと、を備えている。
【0051】
この構成では、1つの光電センサを用いて複数のスライド床が本体床に収容されたか否かを判定することができる。したがって、従来のドックスタンドに比べてセンサの数を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るドックスタンドは、各スライド床に対応して配置された遮蔽板をさらに備え、各遮蔽板は、対応するスライド床のスライドに伴って変位し、対応するスライド床が前記展開位置にあるとき、前記光電センサから投光された検出光を遮る遮蔽位置に位置するとともに、対応するスライド床が前記収容位置にあるとき、前記光電センサから投光された検出光を遮らない非遮蔽位置に位置している。
【0053】
この構成では、遮蔽板を用いることで、単純な構成でありながら検出光を遮ることができる。
【0054】
また、本実施形態に係るドックスタンドは、各スライド床に固定された接触部材をさらに備え、前記接触部材は、対応するスライド床が前記展開位置から前記収容位置へスライドするのに伴って、対応する遮蔽板に接触して当該遮蔽板を前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置へ変位させるように構成されている。
【0055】
この構成では、スライド床に固定された接触部材によって遮蔽板を変位させるため、遮蔽板を容易に変位させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係るドックスタンドでは、前記遮蔽板は、対応するスライド床が前記収容位置から前記展開位置へスライドする際、重力によって前記非遮蔽位置から前記遮蔽位置へ変位するように構成されている。
【0057】
この構成では、複雑な機構を用いることなく、遮蔽板を非遮蔽位置から遮蔽位置へ変動させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るドックスタンドでは、各接触部材は加勢部を有しており、前記加勢部は、対応するスライド床が前記収容位置から前記展開位置へスライドするのに伴って、対応する遮蔽板に接触して前記遮蔽位置に向かう方向へ力を加えるように構成されている。
【0059】
スライド床が収容位置から展開位置へスライドする際には、例えば遮蔽板の一部が引っ掛かるなどして、重力によっても遮蔽板が変位しない場合がある。この場合であっても、上記の構成によれば、加勢部が遮蔽位置へ向かう方向に遮蔽板に力を加えるため、遮蔽板を遮蔽位置へ変位させることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 本体床
20 スライド床
30 光電センサ
31 検出光
40 遮蔽板
41 本体部
43 予備接触部
50 接触部材
54 加勢部
100 ドックスタンド
101 機体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9