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特許7458316同時撮像及びB0シミングのための磁気共鳴コイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】同時撮像及びB0シミングのための磁気共鳴コイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240322BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61B5/055 332
A61B5/055 350
A61B5/055 355
G01N24/00 610K
G01N24/00 610Y
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020517912
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018053434
(87)【国際公開番号】W WO2019067905
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】62/564,883
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハン フイ
(72)【発明者】
【氏名】リ デビアオ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/079487(WO,A1)
【文献】特開2009-121910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313426(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信または受信のうちの少なくとも1つに関して、無線周波数(RF)モードで作動するRFコイル要素と、
直流(DC)モードで作動する1つ以上のシムコイル要素を有する別個のシムコイルアレイであって、直流電流が前記シムコイル要素内を流れて、B0シミング、MRI空間的符号化、またはMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つのための局所B0磁場を生成する、前記別個のシムコイルアレイと
を含み、
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、少なくとも部分的に互いに重複し、
前記1つ以上のシムコイル要素が、前記シムコイルアレイにおける別個のRF遮断要素の存在なしに前記RFコイル要素から前記シムコイルアレイを減結合するのに十分な固有のインダクタンス、固有のキャパシタンス若しくはその両方を有する
コイルアレイシステムと;
対象物体を保持するMRIスキャナの磁石ボアであって、前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、前記対象物体の周りに配置される、前記MRIスキャナの磁石ボアと;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素に直流電流を供給するDC電源と;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイル要素に前記直流電流を供給するように前記DC電源に指示するように構成されたシムコイル回路と;
前記RFコイル要素と通信し、RF受信では前記物体から磁気共鳴(MR)信号を受信するように、またはRF送信では前記物体へRFパルスを送信するように構成された、RF回路と
を備える、磁気共鳴撮像(MRI)システム。
【請求項2】
前記RFコイル要素は、RFコイルアレイ内の複数のRFコイル要素のうちの1つであり、
前記シムコイル要素のうちのN個は、前記RFコイルアレイ内の前記複数のRFコイル要素のうちの1つに対応付けられる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
それぞれの前記N個のシムコイル要素のうちの1つは、前記シムループの周波数応答を前記MRIシステムのラーモア周波数付近で分割させるように構成された離調トラップを備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記N個のシムコイル要素のうちの少なくとも2つは、1対のDC遮断コンデンサを介して連続的に接続される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記DC電源は、前記シム回路により制御されるNチャネル回路を含み、前記Nチャネル回路のそれぞれは、前記N個のシムコイル要素のうちの1つに対応し、
前記シム回路は、前記N個のシムコイル要素のそれぞれにおける直流電流の個別調整を可能とする、
請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コイルアレイシステムは、前記RFコイルアレイの個別に作動可能な別々のRFコイル要素と、前記別個のシムコイルアレイとの、複数の密接に積み重ねられた層を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記シムコイル要素のうちの少なくとも1つはマルチターンループである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記シムコイル要素若しくは前記RFコイル要素、または前記シムコイル要素及び前記RF遮断要素の形状は、閉曲線、多角形、円形、正方形、長方形、菱形、または三角形のうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コイルアレイシステムは、頭部コイル、頭部頸部脊椎コイル、心臓コイル、身体コイル、胴部コイル、胸部コイル、筋骨格コイル、膝コイル、足/足首コイル、頸動脈コイル、手首コイル、及び頸部/胸部/腰部コイルのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記シム回路は、B0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの前記少なくとも1つのために生成された前記局所B0磁場に対応付けられたB0マップを生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記シム回路は、MRスキャナと通信し、
前記シムコイルアレイ内の前記1つ以上のシムコイル要素は、前記DC電源からの直流電流用に少なくとも1つのループを備え、
前記少なくとも1つのループは、少なくとも1つのインダクタ若しくは少なくとも1つのコンデンサ、または、少なくとも1つのインダクタ及び少なくとも1つのコンデンサを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記シム回路は、MRスキャナと通信し、
前記シムコイルアレイ内の前記1つ以上のシムコイル要素は、前記DC電源からの直流電流用に少なくとも1つのループを備え、
前記少なくとも1つのループは、インダクタンス若しくはキャパシタンス、またはインダクタンスおよびキャパシタンスの両方を有する回路を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記RFコイル要素は、RF信号を送信または受信するように構成され、
前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素は、個別に作動して、B0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの前記少なくとも1つのための前記局所B0磁場を同時に生成するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記RFコイル要素の少なくとも一部と前記別個のシムコイルアレイの少なくとも一部とが物理的に接触するように、前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの距離はほぼゼロである、または、前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの距離は、約0ミリメートル~約100ミリメートルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、前記システムの機械的保持構造の同じ層に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記別個のシムコイルアレイと前記RFコイル要素との相互インダクタンスが最小限に抑えられるように、前記RFコイル要素は、前記別個のシムコイルアレイから減結合される、または、前記RFコイル要素は、前記別個のシムコイルアレイから減結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記別個のシムコイルアレイ内の1つ以上のシムループ要素のサイズは、前記対象物体の対象解剖構造のサイズに合致させられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記対象解剖構造は、不均一な磁場を有し、前記対象解剖構造は、前頭前皮質、側頭葉、脊髄、前記対象物体内の金属製インプラント、心臓、胸部、腹部領域、または前記対象物体内の任意の他の微細な解剖構造である、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
磁気共鳴(MR)システムのシミング方法であって、
1つ以上のシムコイル要素を有するシムコイルアレイを提供することであって、前記1つ以上のシムコイル要素は、少なくとも1つのループを備える直流(DC)電流経路を伴う関連シムコイル回路を有する、前記1つ以上のシムコイル要素を有する前記シムコイルアレイを提供することと、
無線周波数(RF)コイル要素をRF送信モードまたはRF受信モードのうちの少なくとも1つで作動させることであって、前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは少なくとも部分的に互いに重複し、前記1つ以上のシムコイル要素は、別個のRF遮断要素の存在なしに前記RFコイル要素から前記シムコイルアレイを減結合するのに十分な固有のインダクタンス、固有のキャパシタンス若しくはその両方を有し、前記RFコイル要素を前記RF送信モードまたは前記RF受信モードのうちの少なくとも1つで作動させることと、
前記RFコイル要素の前記送信モードまたは前記受信モードと同時に、前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素の前記DC電流経路を通して、直流電流を流すことと、
前記シムコイル要素の前記DC電流経路を通る前記直流電流の前記流れに応じて、局所B0磁場を生成することであって、それにより、前記生成された局所B0磁場を使用して、前記MRシステムの磁石の撮像空間のB0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つが行われる、前記局所B0磁場を生成することと
を含む、前記方法。
【請求項20】
送信または受信のうちの少なくとも1つに関して、無線周波数(RF)モードで作動するRFコイル要素と、
直流(DC)モードで作動する1つ以上のシムコイル要素を有する別個のシムコイルアレイであって、直流電流が前記シムコイル要素内を流れて、B0シミング、MRI空間的符号化、またはMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つのための局所B0磁場を生成し、前記1つ以上のシムコイル要素が、1つ以上のシムコイル要素の第1のセットおよび前記1つ以上のシムコイル要素の第1のセットに1対のDC遮断コンデンサを介して連続的に接続される1つ以上のシムコイル要素の第2のセットを含み、前記1つ以上のシムコイル要素の第2のセットが、同心円状に前記1つ以上のシムコイル要素の第1のセットの内側に位置する、前記別個のシムコイルアレイと
を含み、
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは少なくとも部分的に互いに重複し、前記別個のシムコイルアレイは、前記RFコイル要素から前記別個のシムコイルアレイを減結合するための少なくとも1つのRF遮断要素を含
コイルアレイシステムと;
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイが、対象物体の周りに配置される、該対象物体を保持するMRIスキャナの磁石ボアと;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素に直流電流を供給するDC電源と;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイル要素に前記直流電流を供給するように前記DC電源に指示するように構成されたシムコイル回路と;
前記RFコイル要素と通信し、RF受信では前記物体から磁気共鳴信号を受信するように、またはRF送信では前記物体へRFパルスを送信するように構成された、RF回路と
を備える、磁気共鳴撮像(MRI)システム。
【請求項21】
前記1つ以上のシムコイル要素の第1のセットが、1つ以上のターンを有する第1の円形シムコイル要素を含み、前記1つ以上のシムコイル要素の第2のセットが、1つ以上のターンを有する第2の円形シムコイル要素を含み、前記第2の円形シムコイル要素が同心円状に前記第1の円形シムコイル要素の内側に位置する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記1つ以上のシムコイル要素の第1のセットが、1つ以上のターンを有する第1の長方形シムコイル要素を含み、前記1つ以上のシムコイル要素の第2のセットが、1つ以上のターンを有する第2の長方形シムコイル要素を含み、前記第2の長方形シムコイル要素が同心円状に前記第1の長方形シムコイル要素の内側に位置する、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記シムコイルアレイが、前記少なくとも1つのシムコイル要素と直列に形成されたトランス減結合コンデンサを含み、前記トランス減結合コンデンサが、MRIシステムのラーモア周波数の前記シムコイルアレイに高インピーダンスを生成するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記シムコイルアレイの前記1つ以上のシムコイル要素が、前記RFコイル要素に関して幾何学的非対称に配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記1つ以上のシムコイル要素が、単一のシムコイル要素を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記別個のシムコイルアレイは、少なくとも1対のDCワイヤを備え、
前記1対のDCワイヤのうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つのRF遮断要素を含む、
請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つにおける前記少なくとも1つのRF遮断要素は、直流または1MHz以下の周波数の電流のうちの少なくとも1つを通すように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つを結合する少なくとも1つのコンデンサをさらに備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つを結合する前記少なくとも1つのコンデンサは、100pF未満のキャパシタンスを有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのRF遮断要素は、前記磁気共鳴撮像システムのラーモア周波数の約85%から、前記磁気共鳴撮像システムのラーモア周波数の約115%の間の共鳴周波数を有する回路を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記少なくとも1つのRF遮断要素は、インダクタ若しくはコンデンサ、またはインダクタ及びコンデンサの両方を含む回路を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項32】
前記少なくとも1つのRF遮断要素は、インダクタンス若しくはキャパシタンス、またはインダクタンスおよびキャパシタンスの両方を有する回路を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
前記別個のシムコイルアレイの前記少なくとも1つのRF遮断要素は、1つ以上のRFチョークを含み、前記1つ以上のシムコイル要素のそれぞれは、前記1つ以上のRFチョークのうち1つを含む、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/564,883号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本開示は、磁気共鳴撮像のためのシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示は、別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイから成る統合コイル(UNIC)システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
過去数十年の間、磁気共鳴撮像(MRI)スキャナ技術の主要な発展は、一般的に10年前は1.5テスラ、現在は3テスラ、将来的にはおそらく7テスラという、より高い静磁場(B0)強度に対する増加傾向の需要により、推進されてきた。理解されているように、MRIは、このような強力な磁石を使用して、スキャンの関心領域にわたり磁場を生成する。MRIスキャナは、関心領域内に無線周波数(RF)波を生成する無線周波数(RF)コイルまたはコイルアレイを使用する。送信RFコイルを使用して、RF磁場が生成され、受信RFコイルを使用して、関心領域から、組織の組成を示すRF信号が受信される。静磁場(B0)の不均一性は常に、磁場強度の増大に伴う1つの大きな課題である。別の大きな課題は、無線周波数(RF)磁場(B1)の不均一性である。数多くのオフ共鳴撮像問題は、基本的にB0磁場の不均一性に起因し、これは残念なことに、B0磁場強度に比例する。例えば、特に3テスラ以上の磁場強度での、特に前頭前皮質及び側頭皮質の脳全体の機能撮像、及び心臓SSFP撮像では、画像アーチファクト及び信号ボイドにより劣化が生じる。シミング磁場を使用して、静磁場(B0)の均一性が調整され、よって静磁場(B0)の不均一性は改善される。
【0004】
現在のスキャナ設計におけるRFコイルは、関心領域の近くに配置される。例えば、静磁場を生成するための磁石は、患者の周りの管内に配置され、一方RFコイルは、管内の患者の胸部のより近くに配置される。シミング磁場を生成するために、シムコイルが管内に配置され得る。しかし、RFコイル及びシミングコイルの配置に関して、競合する懸念が存在する。RFコイルは、最大のRF感度または信号対雑音比(SNR)で対象物体の撮像データを実際に取得するために、対象物体の十分近くに配置される必要がある。同様に、シムコイルも通常、局所的なB0不均一静磁場に対し、より効果的な局所シミングを実際に提供するために、十分近くに配置される必要がある。しかし、シムコイルをRFコイルに近づけすぎると、RFコイルとシムコイルとの相互インダクタンスに起因して、RFコイルのRF感度が損なわれ、これにより、対象物体から受信するRF信号の信号対雑音比が低下する。従って、シムコイルアレイをRFコイルアレイの外側またはRFコイルアレイの内側に配置することにより、シミング性能の低下及び/または受信信号のRF感度の減衰に至るRF感度の損失を含む、特定の問題が生じ得る。RFコイル(RF受信コイルまたはデュアルRF送信/受信コイル)は、内部シムコイルから保護することができるが、通常これでは、RF信号を対象物体に送信することが困難となり、最新のMRIスキャナには望ましくない。
【0005】
静磁場(B0)の不均一性の課題を解決するために、2012年以降、「iPRES」コイルとして知られる新たなプラットフォームMRコイル技術が提案されてきた。「iPRES」は、統合、並列、受信、励起、及びシミングと定義される。iPRESコイルシステムは、統合されたRF及びB0シミングコイルアレイである。このようなシステムは、デューク大学医療センター(Duke University Medical Center)の発明者Hui Han、Trong-Kha Truong、及びAllen Songによる米国特許公開第2014/0002084号(特許文献1)に記載される。
【0006】
iPRESの概念は、並列RF受信/送信、及びB0磁場シミングのために、別個のコイルアレイではなく、単一のコイルアレイを使用する。これは、同じ物理的なコイルループまたは導体内で、励起/受信用の無線周波数電流と、B0シミング用の直流電流とが、独立して共存することを可能にする回路設計に依存する。異なる周波数の電流または波が、それらの間に望ましくない干渉を生じることなく、同じ導体または媒体内に独立して共存し得るという基礎原理は、単純であり、電気物理分野及び通信分野では広く知られている。
【0007】
iPRESシステムは現在、スキャナ内球面調和(SH)シムコイル、RFコイルアレイから離して配置された別個のシムコイル/要素を使用するマルチコイルシミング技術を含む全ての他の既存シミング技術と比較して、おそらく最も効率的で実装しやすいシミング技術とみなされている。同じRF/DCコイルループにより固有に提供される局所的マルチコイルシミング機能は、脳、心臓、及び筋骨格撮像における空気/骨/組織の磁化率差に起因する多数のオフ共鳴(off resonance)撮像問題に、前例のないレベルで対処することができ、従って、問題のある関心領域において、画像の忠実度及び解像度が大幅に向上する。iPRES技術は、頭部コイル、心臓コイル、筋骨格コイル、乳房コイル、及び膝コイルなどの様々なコイルに提供され得る。このような統合されたRF/シムアレイは、MRIシステムのハードウェアアーキテクチャの変更を最小限にとどめながら、電流生成RFコイルアレイに取って代わり得る。
【0008】
iPRESコイルは他の既存技術より大いに優れているが、iPRESコイルに固有の2つの重大な制限が依然として存在し、これらは特に、ほとんどの病院及び研究機関に普及している3T及び1.5T人体MRIスキャナ、並びに全ての動物MRIスキャナに関して存在する。第一に、RF電流及びDC電流の両方が同じ導体/ループ内を流れるため、DCシムループのサイズ、形状、及び位置は、RFループのものと同じに制限される。第二に、iPRESコイルのDCシムコイルループの数は、利用可能なRF受信器の数により制限され、すなわち、最新の3T人体スキャナでは32個のRF受信器の数により制限され(32個のシムコイルを有する)、多数の1.5T/3Tスキャナでは16または8個のRF受信器の数により制限され(16または8個のシムコイルを有する)、ほとんどの動物スキャナでは1~8個のRF受信器の数により制限される(1~8個のシムコイルを有する)。
【0009】
シムコイルの数の増加を阻むこれらの制限は、シミングの有効性を大きく制約する。シムコイルの数(すなわち自由度数)を増やすことで、シミングの有効性は劇的に向上することができる。同様に重要なこととして、シムコイルのサイズを、空気/骨/組織の磁化率差に起因する高次(2次を超える)磁場不均一性を有する解剖構造の寸法と必ず合致させることで、反対の高次シム磁場を生成し、これらの解剖構造内の不均一磁場を相殺することができる。
【0010】
より最近では、ほぼ全てのMRIコイル及びシステムに適用可能な統合RF及びB0シミングを提供するコイル設計概念が提案されている。このコイル設計は、物理的に別個のRFコイル及びシムコイルを幾何学的減結合方法と組み合わせて使用することを伴い、別個のシムループとRFループとの距離を最小化し、シムループがRFループから物理的に解放されることを可能にする。これは、発明者Hui Han及びDebaio Liによる国際特許公開WO2017/079847(特許文献2)に記載される。従って、RFコイル及びシムコイルの両方を、対象物の非常に近くに配置し、各機能の性能を最大化するように個別に設計することができる。しかし、このようなコイル設計概念はいくつかの点で有利ではあるが、必要な幾何学的減結合を提供するようにRFループ及びシムループを設計しなければならないため、設計は複雑さを増す。
【0011】
従って、シミングの有効性を向上させるために、RF受信器チャネルの数よりも多いシムコイルを可能にする磁気共鳴コイルシステムが求められている。別個のRFループアレイ及びシムループアレイが、シミングの有効性を向上させるために最小相互距離を保ちながら、重複し、機械的コイル支持構造体の同じ表面または層を共有することを可能にするコイルシステムも求められている。従来のRFアレイもしくはRFコイル、またはiPRESコイルもしくはiPRESアレイと比較して、MRI RFコイルの放射直径を大きくする必要のないコイルシステムも求められている。シミングコイルに必要なRFチョークの数を最小限に抑えるコイルアセンブリも求められている。さらに重要なことには、シミングコイルとRFコイルアレイとの相互インダクタンスに起因するそれらの相互作用を最小限に抑え、さらにまた、対象物の任意の部分を撮像するための撮像基準を満たすのに、設計上十分柔軟性に富むコイルシステムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許公開第2014/0002084号
【文献】WO2017/079847
【発明の概要】
【0013】
概要
一例は、機械的コイル支持構造体及びコイルアレイシステムを含む磁気共鳴撮像(MRI)システムである。コイルアレイシステムは、複数のコイル要素を有するRFコイルアレイを含む。コイル要素のそれぞれは、送信または受信のうちの少なくとも1つに関して、RFモードで作動する。別個のシムコイルアレイは、直流(DC)モードで作動する複数のコイル要素を有し、DCモードでは、DC電流がそれぞれのコイル要素を流れて、B0シミングのための局所B0磁場が生成される。2つの別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイは、機械的コイル支持構造体の同じ表面または層を共有する、または互いに近接する2つの別個の機械的コイル支持構造体に存在する。
【0014】
2つの別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイは、2つのコイルシステム間のRF相互作用を最小限に抑えるために、RFチョークなどの遮断要素をシムコイルアレイに統合することにより、互いにRF減結合される。重要なことには、この減結合は、RFコイルアレイ(例えばアンテナ)と、DC(直流)デバイスであるシムコイルアレイとの間で行われる。MRIスキャナの磁石ボアは、対象物体を保持する。機械的構造体は、対象物体の周りに配置する別個のRFコイル及びシムアレイを支持する。DC電源は、シムコイルアレイと通信して、シムコイルアレイのそれぞれのコイル要素にDC電流を供給する。シムコイル回路は、シムコイルアレイと通信し、B0シミング、スピンのMRI空間的符号化、またはスピンのMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つのための局所B0磁場を生成するために、それぞれのコイル要素にDC電流を供給するようにDC電源に指示するように構成される。RF回路は、別個のRFコイルアレイと通信し、RF受信では物体からMR信号を受信するように、またはRF送信では物体へRFパルスを送信するように、構成される。
【0015】
別の例は、磁気共鳴(MR)システムのシミング方法である。複数のコイル要素を有する少なくとも1つのシムコイルアレイが設けられる。コイル要素は、少なくとも1つのループを備える直流(DC)電流経路を伴う関連回路を有する。少なくとも1つのRFコイルアレイは、RF送信モードまたはRF受信モードのうちの少なくとも1つで作動する。RFコイルアレイは、少なくとも1つのシムコイルアレイから分離されている。2つの別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイは、機械的コイル支持機構体の同じ表面または層を共有する。2つの別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイは、2つのコイルシステム間のRF相互作用を最小限に抑えるために、RFチョークなどの遮断要素をシムコイルアレイに統合することにより、互いにRF減結合される。少なくとも1つのRFコイルアレイの送信モードまたは受信モードと同時に、少なくとも1つのシムコイルアレイのコイル要素のDC電流経路を通ってDC電流が流れる。コイル要素のDC電流経路を通るDC電流の流れに応じて、局所B0磁場が生成され、これにより、生成された局所B0磁場を使用して、MRシステムの磁石の撮像空間のB0シミングが行われる。
【0016】
[本発明1001]
送信または受信のうちの少なくとも1つに関して、RFモードで作動するRFコイル要素と、
直流(DC)モードで作動する1つ以上のシムコイル要素を有する別個のシムコイルアレイであって、DC電流が前記シムコイル要素内を流れて、B0シミング、MRI空間的符号化、またはMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つのための局所B0磁場を生成する、前記別個のシムコイルアレイと
を含み、
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、少なくとも部分的に互いに重複し、
前記別個のシムコイルアレイは、前記RFコイル要素から前記別個のシムコイルアレイを減結合するための少なくとも1つのRF遮断要素を含む、
コイルアレイシステムと;
対象物体を保持するMRIスキャナの磁石ボアであって、前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、前記対象物体の周りに配置される、前記MRIスキャナの磁石ボアと;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素にDC電流を供給するDC電源と;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイル要素に前記DC電流を供給するように前記DC電源に指示するように構成されたシムコイル回路と;
前記RFコイル要素と通信し、RF受信では前記物体からMR信号を受信するように、またはRF送信では前記物体へRFパルスを送信するように構成された、RF回路と
を備える、磁気共鳴撮像(MRI)システム。
[本発明1002]
前記RFコイル要素は、RFコイルアレイ内の複数のRFコイル要素のうちの1つであり、
前記シムコイル要素のうちのN個は、前記RFコイルアレイ内の前記複数のRFコイル要素のうちの1つに対応付けられる、
本発明1001のシステム。
[本発明1003]
前記別個のシムコイルアレイは、少なくとも1対のDCワイヤを備え、
前記1対のDCワイヤのうちの少なくとも1つは、RF遮断要素を含む、
本発明1002のシステム。
[本発明1004]
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つにおける前記RF遮断要素は、直流または1MHz以下の周波数の電流のうちの少なくとも1つを通すように構成される、本発明1003のシステム。
[本発明1005]
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つを結合する少なくとも1つのコンデンサをさらに備える、本発明1003のシステム。
[本発明1006]
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つを結合する前記少なくとも1つのコンデンサは、100pF未満のキャパシタンスを有する、本発明1005のシステム。
[本発明1007]
前記1対のDCワイヤのうちの前記少なくとも1つを結合する前記少なくとも1つのコンデンサは、11pF未満のキャパシタンスを有する、本発明1005のシステム。
[本発明1008]
前記遮断要素は、前記MRIシステムのラーモア周波数とほぼ等しい共鳴周波数を有する回路を備える、本発明1001のシステム。
[本発明1009]
前記回路は、インダクタ及びコンデンサのうちの少なくとも1つを備える、本発明1008のシステム。
[本発明1010]
前記回路は、コンデンサと並列のインダクタを備える、本発明1008のシステム。
[本発明1011]
前記回路は、100nHを超えるインダクタンスを有するインダクタを備える、本発明1005のシステム。
[本発明1012]
前記シムコイル要素のうちの少なくとも1つはマルチターンループである、本発明1001のシステム。
[本発明1013]
それぞれの前記N個のシムコイル要素のうちの1つは、前記シムループの周波数応答を前記MRシステムのラーモア周波数付近で分割させるように構成された離調トラップを備える、本発明1002のシステム。
[本発明1014]
前記N個のシムコイル要素のうちの少なくとも2つは、1対のDC遮断コンデンサを介して連続的に接続される、本発明1002のシステム。
[本発明1015]
前記DC電源は、前記シム回路により制御されるNチャネル回路を含み、前記Nチャネル回路のそれぞれは、前記N個のシムコイル要素のうちの1つに対応し、
前記シム回路は、前記N個のシムコイル要素のそれぞれにおけるDC電流の個別調整を可能とする、
本発明1002のシステム。
[本発明1016]
前記RFコイルアレイは、受信専用RFコイルアレイ、送信専用RFコイルアレイ、または送信/受信RFコイルアレイのうちの1つである、本発明1002のシステム。
[本発明1017]
前記シムコイル要素の形状は、閉曲線、多角形、円形、正方形、長方形、菱形、または三角形のうちの1つである、本発明1001のシステム。
[本発明1018]
前記RFコイル要素の形状は、閉曲線、多角形、円形、正方形、長方形、菱形、または三角形のうちの1つである、本発明1001のシステム。
[本発明1019]
前記コイルアレイシステムは、頭部コイル、頭部頸部脊椎コイル、心臓コイル、身体コイル、胴部コイル、胸部コイル、筋骨格コイル、膝コイル、足/足首コイル、頸動脈コイル、手首コイル、及び頸部/胸部/腰部コイルのうちの1つである、本発明1001のシステム。
[本発明1020]
前記MRIシステムは、非組織材料を撮像する、本発明1001のシステム。
[本発明1021]
前記MRIスキャナは、人間スキャナ、動物スキャナ、材料MRシステム、またはMRスペクトロメータのうちの1つである、本発明1001のシステム。
[本発明1022]
前記コイルアレイシステムは、前記RFコイルアレイの個別に作動可能な別々のRFコイル要素と、前記別個のシムコイルアレイとの、複数の密接に積み重ねられた層を含む、本発明1002のシステム。
[本発明1023]
前記シム回路は、B0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの前記少なくとも1つのために生成された前記局所B0磁場に対応付けられたB0マップを生成するように構成される、本発明1001のシステム。
[本発明1024]
前記シム回路は、前記シムコイルアレイの前記コイル要素内のDC電流を制御して、前記生成された局所B0磁場を測定するように構成される、本発明1001のシステム。
[本発明1025]
前記シム回路は、MRスキャナと通信し、
前記シムコイルアレイ内の前記シムコイル要素は、前記DC電源からのDC電流用に少なくとも1つのループを備え、
前記少なくとも1つのループはインダクタを含む、
本発明1001のシステム。
[本発明1026]
前記RFコイル要素は、単一の送受信RFコイル要素であり、
前記RF回路は、MRスキャナと通信して、前記RFコイルアレイに送受信を行わせ、一方前記シムコイルアレイには、前記シムコイルアレイから生成された前記局所B0磁場を使用して主磁場B0不均一性のシミングを行わせる、
本発明1001のシステム。
[本発明1027]
前記RFコイル要素は、RF信号を送信または受信するように構成され、
前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素は、個別に作動して、B0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの前記少なくとも1つのための前記局所B0磁場を同時に生成するように構成される、
本発明1001のシステム。
[本発明1028]
前記シムコイルアレイは、前記局所B0磁場を生成して、前記対象物体全体に均一な磁場を提供するように構成される、本発明1001のシステム。
[本発明1029]
前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの距離は最小限に抑えられる、本発明1001のシステム。
[本発明1030]
前記RFコイル要素の少なくとも一部と前記別個のシムコイルアレイの少なくとも一部とが物理的に接触するように、前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの前記距離はほぼゼロである、本発明1029のシステム。
[本発明1031]
前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの前記距離は、約0ミリメートル~約10ミリメートルである、本発明1029のシステム。
[本発明1032]
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、前記システムの機械的保持構造の同じ層に配置される、本発明1029のシステム。
[本発明1033]
前記別個のシムコイルアレイと前記RFコイル要素との相互インダクタンスが最小限に抑えられるように、前記RFコイル要素は、前記別個のシムコイルアレイから減結合される、本発明1001のシステム。
[本発明1034]
前記RFコイル要素は、RFシールドなしで前記別個のシムコイルアレイから減結合される、本発明1001のシステム。
[本発明1035]
前記別個のシムコイルアレイ内の1つ以上のシムループ要素のサイズは、前記対象物体の対象解剖構造のサイズに合致させられる、本発明1001のシステム。
[本発明1036]
前記対象解剖構造は、不均一な磁場を有する、本発明1035のシステム。
[本発明1037]
前記対象解剖構造は、前頭前皮質、側頭葉、脊髄、前記対象物体内の金属製インプラント、心臓、胸部、腹部領域、または前記対象物体内の任意の他の微細な解剖構造である、本発明1036のシステム。
[本発明1038]
前記別個のシムコイルアレイは、1つ以上のシムコイル要素を含み、
前記1つ以上のシムコイル要素のそれぞれと、前記対象物体の前記対象解剖構造との距離は、最小限に抑えられる、本発明1035のシステム。
[本発明1039]
磁気共鳴(MR)システムのシミング方法であって、
シムコイル要素を有する少なくとも1つのシムコイルアレイを提供することであって、前記コイル要素は、少なくとも1つのループを備える直流(DC)電流経路を伴う関連回路を有する、前記シムコイル要素を有する前記少なくとも1つのシムコイルアレイを提供することと、
RFコイル要素をRF送信モードまたはRF受信モードのうちの少なくとも1つで作動させることであって、前記RFコイル要素の少なくとも一部と別個のシムコイルアレイとは互いに重複する、前記RFコイル要素を前記RF送信モードまたは前記RF受信モードのうちの少なくとも1つで作動させることと、
前記RFコイル要素の前記送信モードまたは前記受信モードと同時に、前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素の前記DC電流経路を通して、DC電流を流すことと、
前記シムコイル要素の前記DC電流経路を通る前記DC電流の前記流れに応じて、局所B0磁場を生成することであって、それにより、前記生成された局所B0磁場を使用して、前記MRシステムの磁石の撮像空間のB0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つが行われる、前記局所B0磁場を生成することと
を含む、前記方法。
[本発明1040]
前記複数のシムコイル要素とそれぞれの前記RFコイル要素との前記相互インダクタンスは、最小限に抑えられる、本発明1039の方法。
[本発明1041]
前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの距離は最小限に抑えられる、本発明1039の方法。
[本発明1042]
前記RFコイル要素の少なくとも一部と前記別個のシムコイルアレイの少なくとも一部とが物理的に接触するように、前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの前記距離はほぼゼロである、本発明1040の方法。
[本発明1043]
前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの前記距離は、約0ミリメートル~約10ミリメートルである、本発明1040の方法。
[本発明1044]
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは、前記システムの機械的保持構造の同じ層に配置される、本発明1040の方法。
[本発明1045]
送信または受信のうちの少なくとも1つに関して、RFモードで作動するRFコイル要素と、
直流(DC)モードで作動する1つ以上のシムコイル要素を有する別個のシムコイルアレイであって、DC電流が前記シムコイル要素内を流れて、B0シミング、MRI空間的符号化、またはMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つのための局所B0磁場を生成する、前記別個のシムコイルアレイと
を含み、
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイは少なくとも部分的に互いに重複し、前記別個のシムコイルアレイは、前記RFコイル要素から前記別個のシムコイルアレイを減結合するための少なくとも1つのRF遮断要素を含み、
(i)前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの距離が約0ミリメートル~約10ミリメートルとなるように、(ii)前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイが、前記システムの機械的保持構造の同じ層に配置されるように、または(iii)(i)及び(ii)の両方となるように、前記RFコイル要素と前記別個のシムコイルアレイとの距離は、最小限に抑えられ、
前記RFコイル要素は、RFシールドなしで前記別個のシムコイルアレイから減結合される、
コイルアレイシステムと;
前記RFコイル要素及び前記別個のシムコイルアレイが、対象物体の周りに配置される、該対象物体を保持するMRIスキャナの磁石ボアと;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイルアレイの前記シムコイル要素にDC電流を供給するDC電源と;
前記シムコイルアレイと通信し、前記シムコイル要素に前記DC電流を供給するように前記DC電源に指示するように構成されたシムコイル回路と;
前記RFコイル要素と通信し、RF受信では前記物体からMR信号を受信するように、またはRF送信では前記物体へRFパルスを送信するように構成された、RF回路と
を備える、磁気共鳴撮像(MRI)システム。
本発明の追加態様は、図面を参照して行われる様々な実施形態の詳細な説明を考慮すれば、当業者には明らかであり、図面の簡単な説明が下記に提供される。
【0017】
例示的な実施形態が、参照される図に示される。本明細書に開示される実施形態及び図は、限定ではなく例示とみなされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】分離されたRFコイルとシミングコイルアレイとを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の回路図である。
図2】分離されたRFコイルと、2ターンシムコイルを有するシミングコイルアレイとを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の回路図である。
図3】シムループとRFループとの減結合のためにトランス減結合を使用する、分離されたRFコイルとシミングコイルアレイとを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の回路図である。
図4A】シムループとRFループとの減結合のために局所離調トラップを使用する、分離されたRFコイルとシミングコイルアレイとを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の回路図である。
図4B】シムループとRFループとの減結合のために局所離調トラップを使用する、分離されたRFコイルとシミングコイルアレイとを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の回路図である。
図5】シミングコイルアレイから分離されたRFコイルを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の異なる代替案である。
図6】シミングコイルアレイから分離されたRFコイルを備えるコイルアセンブリの例示的な要素設計の異なる代替案である。
図7】分離されたRFコイルアレイ及びシムコイルアレイを備えるコイルアセンブリを組み込んだMRIシステムのブロック図である。
図8図10のMRIシステムで使用される別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイを有する統合コイルアレイのブロック図である。
図9】脳撮像用の例示的なUCアレイの回路図である。
図10図9の回路を使用する脳撮像用の頭部コイルである。
図11】例示的なRFチョークの写真である。
図12】RFチョークを備える例示的なシングルターンシムコイルの写真である。
図13】RFチョークを備える例示的な2ターンシムコイルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
図1は、磁気共鳴システム用のRFコイル102とシムコイル104とを含むコイルアセンブリ100のブロック図である。RFコイル102は、従来のRF専用ループコイルを表す外側の円形ループである。以前のシステムでは、ループコイルは、定義上、受信専用RFコイルとして、組織または非組織材料のスピンからMR無線周波数(RF)信号を受信する、または送信専用RFコイルとして、組織または非組織材料のスピンを励起するためにRFパルスを送信する、または送信及び受信RFコイルとして両機能を実行する。コイル102は、コイル102の性能を安定させるいくつかの分散したコンデンサ110、112、114、及び116を含む。コンデンサ110、112、114、及び116などのコンデンサの数は、正の整数であるnである。この例では、n=4である。本明細書におけるこの例及び他の例では、従来のRF専用ループコイルは、別段の指定がない限り、同じ定義に従う。RFコイル102及びシムコイル104は、コイル支持構造体106に取り付けられ得る。機械的コイル支持構造体106は、コイルヘルメット、コイル筐体、または任意の他の機械的コイルアセンブリであり得る。
【0020】
この例では、RFコイル102のループの直径は、用途に応じて、1cm~100cmであり得る。例えば、心臓コイルアレイは、上部胸部構造体に、それぞれ直径が10~20cmである16個のループを含み、底部胸部構造体に、それぞれ直径が10~20cmである16個のループを含み得る。頭部コイルは、それぞれ直径が5~12cmの32個のループを有し得る。当然のことながら、他の種類のアレイには、他のサイズのループ及び他の数のループが使用されてもよい。RF信号の典型的な周波数は、1.5Tスキャナでは63.9MHzまたは63.6MHz、3Tスキャナでは128MHzまたは123.2MHz、7Tスキャナでは298MHzであり得る。
【0021】
シムコイル104は、RFコイル102に関して完全に分離したシムコイル104の一例を表す正方形のシムループ120を含む。RFコイル102及びシムループ120の両方とも、導体材料である。図1のシムコイル104は、DC電流がコントローラ130により制御される1チャネルシムコイルの一例である。この例では、コントローラ130は、DC電流供給を提供する電流源増幅器を含むDC電流源である。上記のように、シムコイルは、正方形のシムループ120を含む。
【0022】
様々な実施形態では、シムループ120などのシムループは、シムループへの高周波信号結合を遮断するために、統合された遮断要素を含むように構成され得る。例えば、高周波信号は、RFコイル102などの近くのRFループにより生成される。遮断要素は、直流電流の低周波電流の伝播を可能にしながら、シムループに沿った高周波電流の伝播を遮断する任意の種類の回路要素であり得る。下記に説明される様々な構成では、遮断要素は、シムループに沿って挿入されるRFチョークとして具現化されるが、これは単に例示を容易にするためである。同等の機能を有する任意の他の種類の回路が、シムループに統合されてもよいと考えられる。さらに、シムループの任意の固有のインダクタンスまたはキャパシタンスを利用して、遮断要素を完全にまたは部分的に定義することができると考えられる。
【0023】
シムループ120は、n個の分散RFチョークを有し得、nは、0または正の整数であり得る。この例では、シムループ120は、コンデンサ(C)と並列のインダクタ(L)の形態のRFチョーク140を有する。しかしながら、様々な実施態様では、インダクタ及び/またはコンデンサ及び/またはダイオードの任意の組み合わせが使用され得る。RFチョーク140は、RF電流を防止するが、シムループ120内のDC電流を許容する。
【0024】
様々な構成では、遮断要素は、RF電流を阻止するために様々な方法で構成され得る。いくつかの構成では、遮断要素の共鳴周波数がおよそMRIシステムのラーモア(Larmor)周波数となるように、シムループは構成され得る。例えば、RFチョーク140の共鳴周波数がMRIシステムのラーモア周波数の±15%となるように、RFチョーク140のコンデンサ値及びインダクタ値は選択され得る。他の構成では、インダクタンスは十分に高く、直流以外の全てを効果的に遮断するように作用する。
【0025】
上記に示されるように、シムコイル104は、コントローラ130により制御されるチャネルと対応付けられる。図1のチャネルCh1+-は、コントローラ130のDC電流源供給のDC電流供給端子150の正極性及び負極性を表す。シムコイル104用のDC電流は、コントローラ130内のチャネル電流増幅器を介して個別に制御され、1対のDC供給ワイヤ160を使用して、シムコイル104に提供される。ここでも不要なRF電流を除去するために、RFチョーク170及び172などの1つ以上のRFチョークが、DC供給ワイヤ160に挿入され得る。図1に示されるように、この例では、RFチョーク170及び172はそれぞれ、インダクタとコンデンサとの並列の組み合わせである。しかしながら、様々な実施態様では、RF電流を阻止するがDC電流を許容する任意の他の種類の回路が使用されてもよい。1対のDC供給ワイヤ160はまた、不要な追加局所磁場が生成されることを避けるために、ねじり合わせられ得る。
【0026】
図1の例は単に、理解を容易にする、本開示によるコイルアセンブリの基本的な実施態様を例示するために、提供される。すなわち、1つのRFコイルと1つのシムコイルである。しかし、本開示は、図1の例に適用できる様々な変更を考慮する。
【0027】
いくつかの実施態様では、シムコイルは、任意の数の遮断要素で構成され得る。例えば、図1を再び参照すると、3個のRFチョーク(140、170、及び172)の代わりに、単一のRFチョークを使用して、不要なRF電流が遮断され得る。さらに、いくつかの事例では、シムループは、十分な固有のインダクタンス及び/またはキャパシタンスを有するように設計され得、これによりRFチョークを追加する必要がなくなる。さらに、シムコイルのこれらの固有の特性は、いくつかの事例では、追加要素を使用して調整され得る。従って、シムコイルは、遮断要素として構成されたRFチョークを、ゼロまたは任意の正の整数の個数分、含み得る。
【0028】
いくつかの実施態様では、コイルアセンブリは、複数(例えば最大512個)のRFループ含むことができ、これらは共に従来のRF位相アレイコイルを形成することができる。RFループのうちの少なくとも1つに対し、少なくとも1つの別個のシムループ(例えば1~100個)が使用され得る。これらのシムループは、RFループの近くのどこかに、対応するRFループの下、上、または同じ表面に、RFループ及び他のシムループと重複してまたは部分的に重複して、配置され得る。
【0029】
いくつかの実施態様では、2つのDC電流供給ワイヤを有する各シムループに関して、シムループ及びDCワイヤにおけるRFチョークの数は、様々であり得る(例えば0~1000個)。さらに、RFチョークは、シムループ及びDCワイヤのどこにでも配置することができる。実際には、RFチョークは、MRシステムのラーモア周波数に近い不要な共鳴スペクトルモードを作り出さないように、配置されるべきである。
【0030】
いくつかの実施態様では、RFコイル及びシムコイルの形状は、様々であり得る。例えば、各シムループ及びRFループの形状は、正方形、円形、長方形、菱形、三角形、または任意の他の形状であり得る。さらに、図1に示されるように、同じコイルアセンブリ内の全ての要素の形状が、同一である必要はない。さらに、同一のシムループのサイズも、異なってもよい(すなわちより大きくても、より小さくてもよい)。
【0031】
いくつかの実施態様では、シムループの配置は、様々であり得る。つまり、シムアレイ内の別個のシムループと、RFループとの相対的位置は、柔軟に変更可能であり得る。例えば、シムアレイの半分は、RFループの外側にあり得、一方もう半分は、RFループの内側にあり得る。
【0032】
いくつかの実施態様では、シムコイル及びRFコイルは、物理的に分離している。シムコイルとRFコイルとの間には、直接の電気的接触があってはならない。例えば、シムコイル及びRFコイルを画定するいずれの導電性形体も、接触してはならない。いくつかの実施態様では、このような形体は、互いに交差して空間及び距離を最小限に抑えることができるが、電気的接触を防ぐために、電気的に絶縁しなければならない。
【0033】
いくつかの実施態様では、シムループは、一定のDC電流及び/または時変DC電流を含み得る。シムループ内のDC電流を変化させることにより、シムループは時変B0磁場を生成することができ、これは、関心領域(ROI)内の磁場を均一化する動的B0シミングのために、またはスピンのMRI空間的符号化及び/またはMRI時間的符号化のために、使用され得る。このような方法を使用して、B0磁場を空間的及び時間的に操作することにより、異なる場所での組織の分化が向上され得る、または同時に両方が行われる。
【0034】
図2は、2ループシムコイルを含むコイルアセンブリ200を示す。コイルアセンブリ200は、RFコイル202を含む。RFコイル202の円形ループは、従来のRF専用ループコイルを表す。コイルアセンブリ200は、2つの長方形のシムループ206A及び206Bを有するシムコイル204を含む。2つのシムループ206A及び206Bは、それぞれのRFチョーク214及び216を含む。1対のDC電流ワイヤ224はそれぞれ、RFチョークを含み、シムコイル204に電流を提供する。1対のDCワイヤ224並びにシムループ206A及び206Bのそれぞれに関するRFチョークの数は、ゼロまたは任意の正の整数であり得る。
【0035】
図1のコイルアセンブリ100と同様に、図2の外側の円形ループであるRFコイル202は、従来のRF専用ループコイルを表す。内側の1つの正方形のシムループ206A及び206Bは、2ターンを有する完全に「別個」のシムコイルの一例を表し、これは、直流(DC)モード(すなわちゼロまたは100KHz未満の低周波数)でのみ機能する。
【0036】
図2ではさらに、シムコイル204は、シムループ内のDC電流が1チャネルDC電流源または電流供給により個別に制御される1チャネルシムコイルループとして示される。図1(1つのシムループ)と比較すると、図2の2つのシムループ206A及び206Bは、同じDC電流振幅に対し、2倍のシム磁場強度を提供することができる。
【0037】
図2は、2つのRFチョーク(214、216)のみを示すが、他の実施態様も可能である。例えば、2つの正方形のシムループ設計では、n個の分散RFチョークが使用され得、nは0または正の整数であり得る。
【0038】
図1と同様に、図2のチャネルCh1+-は、1チャネルDC電流源のDC電流供給端子の正極性及び負極性を表す。図2のシムコイル204のDC電流は、DC電流増幅器/電流源の1つのチャネルにより、個別に制御されることに、留意されたい。また図1と同様に、不要なRF電流を除去するために、1つ以上のRFチョークがDC供給ワイヤ224に挿入され得る。例えば、図2では、1対のDC供給ワイヤ224のそれぞれに、RFチョーク226及び228が使用されていることが示される。1対のDC供給ワイヤ224は、不要な追加局所磁場が生成されることを避け、RFコイル202または存在する任意の他のRFループとの相互作用を最小化するために、ねじり合わせられ得る。ここで示される矢印は、DCシム電流の方向を意味し、これは正電流(時計回り)または負電流(反時計回り)であり得ることに、留意されたい。
【0039】
図1の例と同様に、図2の例では、RFコイル202(または他のRFループ)により潜在的に誘導される不要なRF電流を除去するために、シムループ206A及び206B並びにDC供給ワイヤ224に、任意の数のRFチョークが使用され得る。従って、RFループのみを有する場合と比較して、シムループとRFループとの間の相互作用の最小化が達成され、信号対雑音比(SNR)損失が最小限に抑えられる。
【0040】
図1に関して上記で論述された同じ変更及び変形は、図2のコイルアセンブリにも適用することができる。
【0041】
図3は、トランス減結合を実施するコイルアセンブリ300を示す。コイルアセンブリ300は、RFコイル302と、円形シムコイル304とを含む。1対のDC電流ワイヤ324はそれぞれ、RFチョークを含み、シムコイル304に電流を提供する。1対のDCワイヤ324及びシムコイル304のそれぞれに関するRFチョークの数は、ゼロまたは任意の正の整数であり得る。
【0042】
図1のコイルアセンブリ100と同様に、図3のRFコイル302の外側の長方形ループは、従来のRF専用ループコイルを表す。内側の円形シムコイル304は、完全に「別個」のシムコイルループの一例を表す。
【0043】
図3ではさらに、シムコイル304は、シムループ内のDC電流が1チャネルDC電流源または電流供給により個別に制御される1チャネルシムコイルループとして示される。
【0044】
図3は、1つのRFチョーク(314)のみを示すが、他の実施態様も可能である。例えば、円形のシムコイル設計では、n個の分散RFチョークが使用され得、nは0または正の整数であり得る。
【0045】
図1と同様に、図3のチャネルCh1+-は、1チャネルDC電流源のDC電流供給端子の正極性及び負極性を表す。図3のシムコイル304のDC電流は、DC電流増幅器/電流源の1つのチャネルにより、個別に制御されることに、留意されたい。また図1と同様に、不要なRF電流を除去するために、1つ以上のRFチョークがDC供給ワイヤ324に挿入され得る。例えば、図3では、1対のDC供給ワイヤ324のそれぞれに、RFチョーク326及び328が使用されていることが示される。1対のDC供給ワイヤ324は、不要な追加局所磁場が生成されることを避け、RFコイル302または存在する任意の他のRFループとの相互作用を最小化するために、ねじり合わせられ得る。ここで示される矢印は、DCシム電流の方向を意味し、これは正電流(時計回り)または負電流(反時計回り)であり得ることに、留意されたい。
【0046】
図1の例と同様に、図3の例では、RFコイル302(または他のRFループ)により潜在的に誘導される不要なRF電流を除去するために、シムコイル304及びDC供給ワイヤ324に、任意の数のRFチョークが使用され得る。従って、RFループのみを有する場合と比較して、シムコイルとRFループとの間の相互作用の最小化が達成され、信号対雑音比(SNR)損失が最小限に抑えられる。
【0047】
図3に示されるように、トランス減結合コンデンサであるコンデンサCが適用される。MRシステムのラーモア周波数のシムコイル304に高インピーダンスを生成するために、コンデンサCの値は、例えば1pf未満のように、小さくなるように選択され得る。これにより今度は、シムコイル304と存在する任意のRFループとの間に、より良いRF減結合が提供される。同様に、トランス減結合コンデンサCは、図2の事例、または複数のシムループを備えるシムコイルを使用する任意の他の構成にも、使用することができる。
【0048】
図1に関して上記で論述された同じ変更及び変形は、図3のコイルアセンブリにも適用することができる。
【0049】
図4A及び図4Bは、別個のシムループの設計の別例であるが、局所離調トラップ回路を使用する。例示を容易にするために、図4A及び図4Bのコイルアセンブリ400及び450はそれぞれ、コイルアセンブリ300と実質的に類似するように構成される。すなわち、コイルアセンブリ400及び450のそれぞれは、RFコイルを画定する外側の正方形ループと、別個のシムコイルを画定する内側の円形ループとを有する。構成要素及び説明の詳細は、図1図3で説明されたものと同様である。
【0050】
図4A及び図4Bの設計では、離調トラップが使用される。特に、シムコイルをMRシステムのラーモア周波数に同調させる同調周波数コンデンサCが設けられる。図4Aの設計では、調整可能なLC回路(調整可能なインダクタLと調整可能なコンデンサCとの組み合わせにより画定される)が、同調周波数コンデンサCと直列に設けられる。シムコイルの周波数応答が分割周波数でピークを有するように、LC回路の構成要素を調整して、LC回路をラーモア周波数で共鳴させることができる。1つのピークは、ラーモア周波数より高く、別のピークは、ラーモア周波数より低い。さらに、ピーク周波数に対して、ラーモア周波数は大きなディップを有する。その結果、シムループは、ラーモア周波数で共鳴するRFループから、強く減結合される。これは、従来のRF受信コイルで使用される離調回路と同様であり、離調回路は、RF送信パルス中にダイオードを通してバイアス電流を流すことにより有効化される。しかし、ここでの違いは、離調トラップは、B0シミング、スピンのMRI空間的符号化、またはスピンのMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つのために、シムコイルでのみ使用されることである。
【0051】
図4Bの設計では、調整可能なLC回路は、同調周波数コンデンサCと並列に設けられる。従って、離調回路は、L、C、及びCを備える。他の実施態様では、他の離調回路設計が使用されてもよい。さらに、離調トラップは、図2で示されるもののように複数のシムループを有するシムコイルにも使用することができる。
【0052】
図1に関して上記で論述された同じ変更及び変形は、図4A及び図4Bのコイルアセンブリにも適用することができる。
【0053】
図1図2図3図4A、及び図4Bのコイルアセンブリは、単一の制御チャネルに対応付けられたシムコイルから成るが、本開示は、複数のチャネルと共に使用するシムコイルを提供するために開示された設計方法を用いることを企図する。これは、図5及び図6に示される。
【0054】
図5は、2つの制御チャネルと共に使用するシムコイルアレイの一例であるコイルアセンブリ500を示す。図6は、2ループシムコイルアレイの別の例である別のコイルアセンブリ600を示す。両方のコイルアセンブリ500及び600において、シムコイルは、2つのチャネルを備えた電流コントローラにより制御される2チャネルシムコイルを表す。
【0055】
まず図5を参照すると、コイルアセンブリ500は、RFコイル502を含む。RFコイル502の円形ループは、従来のRF専用ループコイルを表す。コイルアセンブリ500はまた、2つの内側の長方形シムコイル504及び506を含む。これらのシムコイルのそれぞれは、図2のシムコイルと同様である。すなわち、シムコイル504及び506のそれぞれは、複数のターンを含む。図5では、2つのシムコイル504及び506は、0~10,000PFであり得る1対のDC遮断コンデンサ510及び512を介して接続される。シムコイル504及び506は、それぞれのRFチョーク514及び516を含む。1対のDC電流ワイヤ524及び526はそれぞれ、RFチョークを含み、それぞれのシムコイル504及び506に電流を提供する。DCワイヤ及びシムコイルそれぞれに関するRFチョークの数は、任意の正の整数であり得る。図5の例では、シムコイル504及び506は、RFコイル502に関して同心円状に配置される。しかしながら、他の配置を設けることもできる。例えば、シムコイル504及び506は、互いに隣接して、または重複するように、配置することができる。
【0056】
コイルアセンブリ500では、望ましくないRF電流(RFコイル502により潜在的に誘導される)が、シムコイル504及び506内を矢印の方向に経路に沿って流れる。ここで矢印は、RFコイル502により潜在的に誘導されるRF電流の方向を意味することに、留意されたい。この例では、シムコイル504は、1対のコンデンサCを介してシムコイル506に流れる反時計方向のRF電流を有する。よって、シムコイル506は、シムコイル504と同じ振幅を有する時計方向のRF電流を有する。RF電流が同じであるため、シムコイル504及び506の潜在的RF電流により生じる磁束は、互いに打ち消し合う。従って、シムコイル504及び506とRFコイル502との相互インダクタンスはゼロであり、シムコイル504及び506はよって、RFコイル502から本質的に減結合される。
【0057】
図2及び図5に示されるように、本開示で記載される全てのシムコイル構成は、2回、3回、またはそれより多くの回数などの複数のターンまたはループに拡張されてもよい。複数のターンにより、電流が減少し、シングルターンループと同じシム磁場を生成することが可能となる。あるいは、複数のターンにより、電流レベルが同じになり、シングルターンコイルと比較して増大したシム磁場強度を生成することが可能となる。マルチターン/ループシムコイルを有効にすることにより、シム磁場強度が増大され、超高(7T以上)の静磁場によりもたらされる課題に対応することができる。これらの超高磁場には、高シム強度が必要であり、高シム強度はまた、シム電流振幅を低減させて、熱放散を最小限に抑えることができる。
【0058】
図5のコイルアセンブリ500と同様に、図6のコイルアセンブリ600は、RFコイル602と、シムコイル604及びシムコイル606を含む2チャネルシムアレイとを備える。2つのシムコイル604及び606は、円形であり、互い及びRFコイル602に関して同心円状に配置される。シムコイル604及び606は、それぞれのRFチョーク614及び616を含む。1対のDC電流ワイヤ624及び626はそれぞれ、RFチョークを含み、それぞれのシムコイル604及び606に電流を提供する。DCワイヤ及びシムコイルそれぞれに関するRFチョークの数は、ゼロまたは任意の正の整数であり得る。
【0059】
2つのシムコイル604及び606は、1対のDC遮断コンデンサを介して接続され、それぞれがRFチョーク(rfc2)を含む。コイルアセンブリ500と同様に、RF専用コイル602により誘導される望ましくないRF電流が、矢印の方向に経路に沿って流れる。RF電流により生成される磁束は、2つの同一のシムコイル604及び606において反対の符号を有し、互いに打ち消し合う。シムコイル604及び606の2チャネルシムアレイとRFコイル602との相互インダクタンスはゼロであり、シムアレイはよって、RFコイル602から本質的に減結合される。
【0060】
図5及び図6では、Ch1+-及びCh2+-は、2チャネルDC電流源供給のDC電流供給端子の正極性及び負極性を表す。各シムチャネルのDC電流は、別個のチャネル電流増幅器により、個別に制御される。図5及び図6に示されるように、不要なRF電流を除去するために、1つ以上のRFチョーク(rfc1)がDC供給ワイヤに挿入され得る。しかし、上記のように、シムコイルの固有のキャパシタンス及び/またはインダクタンスが必要な遮断機能を提供する場合は、RFチョークを挿入する必要はない。
【0061】
さらに、本開示に記載されるシムコイル構成は、シムコイルアレイを形成するために使用され得る。このような構成では、同様のアレイを構成するシムコイルの数は、任意の正の整数であり得る。
【0062】
有利なことに、WO2017/079487とは対照的に、本開示による様々な構成では、シムコイルは、それぞれのRFループコイルに関して幾何学的対称に配置される必要はない。すなわち、RFループコイルにより誘導される不要なRF電流が、各隣接対の2つのシムコイルループにおいて反対の極性の磁束を生成するように、シムコイルを順番に接続し配線する必要はない。むしろ、本開示によるシムコイルは、シムコイルに対応付けられた遮断要素により、不要なRF電流の遮断が処理されるため、任意の必要とされる並びで配置され得る。
【0063】
本開示による様々な構成では、シムコイルアレイ内の同一のシムループのサイズは、RFループより大きくても小さくてもよい。また、2つのコイルシステム間の相互インダクタンスをゼロまたは最小化にするように、RFチョークが適切に構成される限り、別個のシムコイルアレイとRFループとの相対的位置は、柔軟に変更可能であり得る。例えば、シムコイルアレイの半分は、RFループの外側にあり得、一方もう半分は、RFループの内側にあり得るが、両コイルシステムは依然として、完全に減結合され得る。
【0064】
さらに、シムコイルアレイ及びRF専用コイルは、物理的に完全に分離している。いくつかの構成では、これらのコイルは、コイル支持構造体の同じ表面を共有し得る。あるいは、これらのコイルは、互いに近接する2つの別個の機械的コイル支持構造体に存在し得る。シムアレイを構成するワイヤ及びRFコイルを構成するワイヤは、最小距離で互いに交差できるが、電気的接触がない絶縁ワイヤを使用する。
【0065】
前述のコイルアセンブリにより、利用可能なRF受信器の数よりも多いシムループの拡張が可能となり、より多くのシミングループのおかげで、シミング性能の向上がもたらされる。結果として得られるアセンブリがMRIシステムで使用されると、例えば重要な脳領域である前頭前皮質及び側頭皮質のfMRIにおいて、並びに心臓/肺の境界の心臓撮像において、画像の忠実度及び解像度が大幅に向上する。
【0066】
記載されるアセンブリは、例えば頭部コイル、頭部頸部脊椎コイル、心臓コイル、身体コイル、胴部コイル、胸部コイル、筋骨格コイル、膝コイル、足/足首コイル、頸動脈コイル、手首コイル、及び頸部/胸部/腰部コイルなど、人または動物の身体の全ての部分を撮像するためのコイルに、一般的に適用され得る。アセンブリはまた、石油、岩石コア、食品、化学系、及び任意の他の材料を含む非組織材料の撮像にも適用され得る。アセンブリは、全ての人または動物のMRIスキャナ、さらにはMRスペクトロメータに通常適用され得、任意の主なB0磁場強度、1.5T、3T、及び7Tに通常適用され得る。アセンブリは、任意の数のRF受信器が装備された任意のMRIシステムに適用され得る。
【0067】
MRIハードウェアアーキテクチャの変更の最小必要要件により、次世代スキャナへの容易な移行が可能となる。従来のRFアレイと比較して、アドオン機能は、RFアレイの半径方向または長手方向の寸法を大きくする必要なく、従来のコイルと同様に見え、スキャナにコイルを統合した後も従来のコイルのように使用されるため、アップグレードが可能となる。
【0068】
RFアレイは、従来のRFコイル/アレイ、受信専用コイル/アレイ、もしくは送信専用コイル/アレイ、または送信/受信コイル/アレイであり得る。これは、任意の設計、隙間のある設計、部分的に重複した設計、または任意の他の設計であり得る。統合コイルシステム内のRF受信器チャネルまたはDCシムチャネルの総数は、任意の正の整数、すなわち1~4、8、16、24、32、48、64、96、128、192、及び256個などであり得る。
【0069】
上記のように、各要素シムループ及びRFループの形状は、任意の閉曲線、任意の多角形、正方形、円形、長方形、菱形、三角形、または任意の他の形状であり得、それらのサイズ及び位置は、柔軟に変更可能であり得る。
【0070】
本明細書で開示される実施態様のうちのいずれにおいても、RFコイルアレイとシムコイルアレイとの距離は通常、最小化される。シムコイルアレイ/シムループ要素にはRF遮断要素が存在するため、シムコイルとRFコイルアレイとの相互インダクタンスがシステムの動作を妨げることなく、シムコイルは、RFコイルアレイの非常に近くに配置することができる。従って、RF遮断要素によりRFコイルアレイとシムコイルアレイを減結合することにより、相互インダクタンスは最小限に抑えられる。いくつかの実施態様では、RFコイルアレイの少なくとも一部がシムコイルアレイの少なくとも一部に物理的に接触するように、RFコイルアレイとシムコイルアレイとの距離は、約0.0ミリメートルである。別の実施態様では、RFコイルアレイとシムコイルアレイとの距離は、約0.0ミリメートル~約5.0ミリメートル、約0.0ミリメートル~約10.0ミリメートル、約0.0ミリメートル~約20.0ミリメートル、約5.0ミリメートル~約10.0ミリメートル、約50.0ミリメートル~約100.0ミリメートル、約0.0ミリメートル~約100.0ミリメートル、または約5.0ミリメートル~約100.0ミリメートルであり得る。RF遮断要素が存在するため、最小限のRF感度損失で、またはRF感度損失なしで、これは達成され得る。
【0071】
図7は、磁気共鳴撮像(MRI)システム1000の一例である。システム1000は、MRI制御システム1004により制御されるMRIスキャナ1002を含む。この例では、MRIスキャナ1002は、患者であり得る対象物体1012を囲む管状支持構造体1010を含む。管状支持構造体1010は、1.5T、3T、または7Tなどの振幅の大きな静磁場(B0)を生成する永久または超伝導(高磁場)磁石を含むボア1014を形成する。対象物体1012は、機械的コイル支持構造体1020により支持されるコイルアレイシステム1020に近接する。制御システム1004は、RF増幅器、勾配増幅器、コントローラ、及びプロセッサなどのスキャナ作動構成要素を含み、これらは通常、パルスシーケンスを送り、対象物体1012の走査平面を選択する。
【0072】
統合コイルアレイシステム1020は、RFコイルアレイとシムコイルアレイとが分離された図1図6などのコイルアセンブリなど、前述のコイルアセンブリのうちのいずれかから、またはそれらの任意の変形から、構成され得る。従って、コイルアレイシステム1020は、複数のコイル要素を有するRFコイルアレイを含み得、コイル要素のそれぞれは、RF送信モードまたはRF受信モードで作動する。コイルアレイシステム1020はまた、直流(DC)モードで作動する複数のコイル要素を有するシムコイルアレイを含み、DCモードでは、DC電流がそれぞれのコイル要素を流れて、Bシミングのための局所B磁場が生成される。図7では、RFコイルアレイ及びシムコイルアレイは、幾何学的に重複し、支持構造体1022の同じ表面または層を共有する。しかしながら、これは単に例示を容易にするためである。むしろ、RFコイルアレイ及びシムコイルアレイの任意の配置を使用することができる。上記のように、RFコイルアレイとシムコイルアレイは、図1図6に関して前述された減結合方法(またはそれらの任意の変形)により減結合され、2つのコイルシステム間のRF相互作用が最小限に抑えられる。
【0073】
MRI制御システム1004は、マルチチャネルDC回路及び電流供給1030と、マルチチャネルRF制御回路1032と、マルチチャネルRF送信器1034と、マルチチャネルRF受信器1036と、制御コンソール1038とを含む。上記で説明されたように、DC回路及び電流供給コントローラ1030は、統合コイルアレイシステム1020のシムコイルアレイと通信し、シムコイルアレイのそれぞれのコイル要素にDC電流を供給する。DCコントローラ1030は、シムコイルアレイと通信するシムコイル回路を含み、シムコイル回路は、Bシミング用の局所B磁場を生成するために、それぞれのコイル要素にDC電流を供給するようにDC電源に指示するように構成される。DCコントローラ1030により、別個のチャネルを介した各シムコイルの別個の制御が可能となる。
【0074】
マルチチャネルRF制御回路1032は、統合コイルアレイシステム1020のRFコイルアレイと通信する。RF制御回路1032は、マルチチャネルRF受信器1036を介して対象物体1012からのMR信号を受信するように構成される。RF制御回路1032はまた、マルチチャネルRF送信器1034から対象物体1012へ、RFパルスを送信するように構成される。
【0075】
制御コンソール1038は、マルチチャネルDC回路及び電流供給1030、マルチチャネルRF制御回路1032、マルチチャネルRF送信器1034、マルチチャネルRF受信器1036を制御して、スキャン機能と併せて、RF信号を送信し、シミングを調整して、RF信号を受信する。通常、RF回路コントローラ1032は、MRIスキャナ1002と通信して、統合コイルアレイシステム1020のRFコイルアレイに送受信を実行させ、一方シムコイルアレイには、シムコイルアレイから生成された局所B磁場を使用して、撮像空間のB0シミング、組織スピンのMRI空間的符号化、または組織スピンのMRI時間的符号化のうちの少なくとも1つを実行させる。複数のシミングコイルにより、コントローラ1030は、局所B磁場を生成して、対象物体1012全体に均一な磁場を提供するように構成されることが可能となる。これにより、MRIスキャナ1002からより良い画像が作成される。スキャンプロセスに対応付けられた他の機能も実行され得る。例えば、コンソール1038は、DCコントローラ1030のシムコイル回路を制御して、生成された局所B磁場に対応付けられたBマップを生成し、B0シミングを実行し得る。コンソール1038はまた、DCコントローラ1030を介してシムコイルアレイのコイル要素内のDC電流を制御して、生成された局所B磁場を測定し得る。
【0076】
図8は、統合コイルアレイシステム1020の一部として前例のうちのいずれかに示されたコイルアセンブリなどのコイルアセンブリの使用のブロック図を示す。図8では、図7と同様の要素には、同様の番号が付けられる。図8に示されるように、コイル支持構造体1020により、4個のコイル要素1102、1104、1106、及び1108を有するRFコイルアレイを、対象物体1012に近接して配置することが可能となる。上記で説明されたように、RFコイル要素1102、1104、1106、及び1108は、受信モード及び送信モードのために、マルチチャネルRF回路1032に接続される。RFコイル要素1102、1104、1106、及び1108のそれぞれは、シムコイルアレイ1112、1114、1116、及び1118から物理的に分離されている。シムコイルアレイ1112、1114、1116、及び1118は、DCコントローラ1030によりシミングのために制御される。図8では、別個のRFコイルアレイ及びシムコイルアレイ1112、1114、1116、及び1118は、幾何学的に重複し、機械的コイル支持構造体1022の同じ表面または層を共有する。ここでも、図7と同様に、この配置は、単に例示を容易にするために提示される。上記のように、様々な構成により、シムコイルアレイに対するRFコイルアレイの任意の配置が可能となる。
【0077】
この例では、4つのRFコイル要素1102、1104、1106、及び1108が存在するため、RF制御回路は、4チャネル回路である。シムコイルは、DCコントローラ1030などのマルチチャネルDCコントローラを介して制御される。もちろん、より多くのまたはより少ないRFコイルが使用されてもよく、より多くのまたはより少ないシムコイルが、対応する制御チャネルと共に使用されてもよい。
【0078】
前述の説明では、RFチョークを遮断要素として使用することに主に焦点を合わせていたが、前述の例にわたるRFチョークは、代替的に、並列に接続された少なくとも1つのインダクタ及び少なくとも1つのコンデンサを使用するRFトラップまたはフィルタであってもよい。このようなトラップまたはフィルタはまた、共鳴周波数を調整してMRIシステムのラーモア周波数に合うように、設定される。上記の例のシムコイルアレイ用のDC電源の代わりに、低周波AC電流を供給する低周波AC電源が使用されてもよい。
【0079】
上記の例は、受信チャネルが少ない(1~8個)筋骨格コイル、バードケージコイル、さらには動物用スキャナを含むほぼ全てのMRコイルシステムに適用され得、fMRI、DTI、及びMRSIなどにおける様々な課題に対応し、頭からつま先までの空気/組織/骨の接触面における画質を大幅に改善する。あるいは、上記の例のシムコイルは、撮像するスピンの空間的符号化のために直流(DC)モードまたは低周波交流(AC)モードで作動する少なくとも1つのコイル要素をそれぞれ有する勾配コイルで置き換えられてもよい。
【0080】
前述のシステムは、RF相互作用をほとんど無視できるレベルにまで著しく低減させる図1図6のような減結合方法(またはそれらの任意の変形)に基づき、これにより、最大Sが維持され、RFチョークはDCループごとに1個に削減され、7TのMRI用途に有利である。より高いシム磁場強度が必要な深部組織シミング及び7TのMRIシステムのシム磁場強度は、複数のターンにより大幅に高められる。
【0081】
図9は、脳撮像用の例示的なアレイ1300を示す。アレイ1300は、RF受信用の7つの大径ループ1302、1304、1306、1308、1310、1312、及び1314を含む。ループ1302、1304、1306、1308、1310、及び1312は、RF/DC共有導体ループである(WO2014/003918A1の説明によるiPRES設計ループであり、参照により本明細書に組み込まれるものとする)。ループ1314は、RF専用ループである。アレイ1300は、4つのシムループ1320、1322、1324、及び1326を含み、これらは、前頭前皮質(PFC)及び側頭葉(TL)のシミングを対象とする別個のシムループである。シムループ1320、1322、1324、及び1326(ループA、B、C、及びD)は、RF専用ループ1314並びにRF/DC共有ループ1302、1304、1306、1308、1310、及び1312の両方から減結合される。これは、前述のような遮断要素(例えばRFチョーク)を使用して行われる。
【0082】
図9では、シムループ1320、1322、1324、及び1326は8字形ループとして示されるが、ループ1320、1322、1324、及び1326に特定の幾何学的形状は必要ではない。むしろ、図1図6に関して前述されたシムコイル配置のうちのいずれか(またはそれらの任意の変形)を使用することができる。
【0083】
全頭部アレイが図10に示され、シムループのサイズは、解剖構造のサイズと合致する。さらに、iPRESループではシングルターンのみに制限されるが、別個のシムループではマルチターンが可能であり、シム磁場強度における別の大きな制限を克服することができる。
【0084】
あるいは、RF専用ループ1314も、iPRESのRF/DCループまたはRF専用ループであってもよい。4対のシム専用ループ1320、1322、1324、及び1326は、B0シミング用の8つの個別制御DCループで構成される。DC供給ワイヤ及び電流源供給は、図10の例示を簡潔にするために示されない。
【0085】
アレイ1300を使用する実施例は、脳fMRIコイルであり得る。このような用途では、4対の8字形シム専用ループが、前頭前皮質及び各側頭葉に対し可能な限り近くに配置され得る。PFCには各円形DCループの直径は4~6cm、側頭葉には各円形DCループの直径は3~5cmとなるように、サイズが調整され得る。32チャネルRF受信器を装備したスキャナには、入れ子にされた大きなRFループは、最大32チャネルになり得る。RFループは、RF専用ループ1314などのRF専用ループ、またはループ1302などのiPRES型RF/DCループであり得る。各iPRESループには2~6個のチョークが必要であるが、各DCループにはより少ないRFチョーク(0、1、またはn個)のみが必要であるため、複雑さは実質的には低減される。さらに重要なことには、シム専用ループは、PFC及び側頭葉のシミングを、効果的に標的とする。
【0086】
図10は、8字形シム専用ループを使用するが、これは単に、便宜のため及び例示を容易にするためである。図10のシム専用ループは、図1図6に示されたシムループ構成のうちのいずれか、またはそれらの任意の変形により、置き換えられてもよい。
【0087】
図10のアレイの脳への適用の概念は、人または動物の身体の他の部分を撮像するための他のコイルにも、通常適用され得る。そのために、シムループの形状は、撮像される体の特定部分に有利となるように選択され得る。さらに、シムループの数は、1より大きい任意の整数であり得る。さらに、ループ1302、1304、1306、1308、1310、1312、及び1314のサイズは、任意の範囲のサイズであり得る。最後に、同様にシングルターンまたはマルチターンのシムループを使用することができる。
【0088】
図10は、31チャネルRF受信及び48チャネルシミングを備える構築中の脳撮像用頭部コイル設計1400を示す。コイル設計アレイ1400を使用して、関心対象である前頭前皮質1404及び側頭葉1406を含む脳1402がスキャンされる。シムループのサイズ及び形状は、解剖構造のサイズ及び形状と合致するように選択される。さらに、iPRESループでは1ターンのみに制限されるが、別個のシムループはマルチターンであり、シム磁場強度における別の大きな制限を克服し得る。
【0089】
頭部アレイ1400は、前頭前皮質に3つの別個のDCシムループ1412、1414、及び1416を含む。この例では、8字形DCシムループは、直径5cmである。2つのシムループグループ1420及び1422は、各側頭葉1404に配置される。シムループグループ1420及び1422のループは、この例では直径4cmである。頭部アレイ1400は、8個のiPRESループグループ1430と、17個のiPRESループグループ1432と、単一のiPRESループ1434とを含み、これらは、脳1402の周りに配置され、RF受信及びB0シミングを同時に行う。この例では、ループ1430、1432は、直径9.5cmである。例示的な頭部アレイ1400はまた、前頭前野皮質1402及び側頭葉1404に近接する5個のRF専用ループ1440を含む。図10では、シムループ1412、1414、1416、1420、及び1422は8字形ループとして示されるが、上記のように、ループ1412、1414、1416、1420、及び1422に特定の幾何学的形状は必要ではない。むしろ、前述のシムコイル配置のうちのいずれかを使用することができる。シムループ1412、1414、1416、1420、及び1422は、代替的に、図1図6に示されるようなシムループのうちのいずれかであり得る。
【0090】
図10の頭部アレイは、前頭前皮質、側頭葉、脊髄、または患者の頭部の金属製インプラントを対象とすることができる。他の実施態様では、頭部だけでなく、他の対象となる解剖構造にサイズを合致させたシムコイルアレイを用いることができる。例えば、サイズを合致させたシムコイルアレイを使用して、体の任意の箇所にある金属製インプラントを対象とすることができる。通常、不均一なB0磁場を生じるいずれの解剖構造も、サイズを合致させたシムコイルアレイを使用して、対象化/撮像化することができる。患者の不快感を生じることなく、RF感度を損なうことなく、任意のサイズを有する任意の数のシムコイルループが、対象解剖構造(側頭葉内側部または眼窩前頭皮質など)に対し物理的に可能な限り近くに配置され得る。対象解剖構造には、前頭前皮質、側頭葉、脊髄、対象物体内の金属製インプラント、心臓、胸部、腹部領域、または対象物体内の任意の他の微細な解剖構造が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0091】
上記のように、様々な構成における減結合は、RFチョークが組み込まれた構成により提供される。RFチョークは通常、コンデンサと並列のインダクタであるが、様々な形態の回路設計であり得る。これは、RF電流は阻止するが、DC電流は許容する。RFチョークの機能により、並列LC回路がMRシステムのラーモア周波数と同じまたは近い共鳴周波数を有することが可能となり、これにより、RFチョークがループまたはワイヤに挿入されると高インピーダンスが生成され、ループまたはワイヤ上のRF電流が阻止され、RFループとのRF相互作用が最小限に抑えられる。
【0092】
さらに、RFチョークは、異なる形態の設計であり得る:1)コンデンサと並列のインダクタであり得る。図11は、コンデンサ(1.2pf)と並列であるトロイドインダクタ(約800nH、33ターン、サイズ1.9cm)を示す。トロイドインダクタは、自己遮蔽し、環境との自身のRF相互作用を最小限に抑える。インダクタは、他の形態、例えばソレノイド形状、または他の幾何学的形状でもあり得る。2)チョークは、例えば800nHを超える大きな値の単独インダクタであり得る。3)単独インダクタであり得るが、インダクタは、MRシステムのラーモア周波数と同じまたは近い独自の自己共鳴周波数を有する。4)RFチョークは、任意の他の電子設計であり得る。
【0093】
図12は、図1の1つのシムループ設計の写真である。シムループ(直径7.5cm)にはチョークはなく、1チャネルDC電流増幅器に接続された1対のねじられたDCワイヤには、2つのチョークが示される。
【0094】
図13は、図2の1つのシムループ設計の写真である。2ターンシムループ(直径7.5cm)に、1つのチョークが使用される。1チャネルDC電流増幅器に接続された1対のねじられたDCワイヤに、2つのチョークが示される。
【0095】
前述のチョーク設計は、単に例として提供され、限定するものではない。本開示は、本開示による様々な構成で他のチョーク設計を使用できることを企図する。例えば、ソレノイド設計を使用することができる。
【0096】
シムコイルアレイにはRF遮断要素があるため、RFコイルとシムコイルとの結合(例えば相互インダクタンス)は最小限に抑えられ、従ってRFコイルとシムコイルとの距離はゼロであり得る。従って、RFコイルがRFシールドを有さない場合でも、RFコイルのRF感度を損なうことなく、RFコイルとシムコイルとが物理的に接触することができる。これにより確実に、RFコイル及びシムコイルの両方が可能な限り対象物の近くに配置され、RF感度及びシミングの両方に関する性能が最大限に高められる。
【0097】
本明細書に開示される実施態様のいずれかにおいて、システムは、任意の数のRFコイル要素を含み得る。各RFコイル要素は、各RFコイル要素に対応付けられたN個のシムコイル要素を有し得、Nは正の整数であり得る。さらに、RFコイル要素のうちのいくつかは、そのRFコイル要素に対応付けられたシムコイル要素を全く有さないため、N=0である。
【0098】
様々な例及び構成が上記で説明されたが、これらは例としてのみ提示されており、限定ではないことを理解されたい。本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書の開示に従って、開示される例及び構成に対し多数の変更を行うことができる。従って、本開示の広さ及び範囲は、上記で開示される例及び構成のいずれによっても制限されるべきではない。むしろ、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従って、定義されるべきである。
【0099】
本開示の範囲は、1つ以上の実施態様に関して例示され説明されているが、本明細書及び添付図面を読んで理解すれば、同等の改変及び変更に当業者は想到するであろう。さらに、いくつかの実施態様のうちの1つのみに関して、特定の特徴が開示されている場合があるが、このような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途にとって望ましく有利であり得る他の実施態様の1つ以上の他の特徴と、組み合わされてもよい。
【0100】
本明細書で使用される用語は、本明細書の例及び構成を説明することのみを目的とし、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、用語「含む(including)」「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、またはこれらの変形が、発明を実施するための形態及び/または特許請求の範囲で使用される限り、このような用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。
【0101】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義される用語などの用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一貫性のある意味を持つと解釈されるべきであり、観念的なまたは過度に形式張った意味に本明細書で明示的に定義されない限り、そのように解釈されないことが、理解されよう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13