(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20240322BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
D06F39/10 E
D06F39/08 331
D06F39/10 B
D06F39/08 311C
(21)【出願番号】P 2020549703
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2019077097
(87)【国際公開番号】W WO2019174501
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】201810214136.0
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】520148792
【氏名又は名称】海爾智家股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAIER SMART HOME CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 Haier Road, Laoshan District Qingdao, Shandong 266101 China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】呂艶芬
(72)【発明者】
【氏名】許升
(72)【発明者】
【氏名】呂佩師
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0036776(US,A1)
【文献】実開昭53-030272(JP,U)
【文献】実開平03-099585(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107475986(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106609438(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 23/04,39/08-39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、回転可能に前記筐体内に設置される洗浄槽を含む洗濯機であって、
前記洗浄槽は、洗浄時に水を蓄える槽体構造をなすよう配置され、前記洗浄槽の内周壁には少なくとも
2つの濾過装置が装着されており、
前記濾過装置は、
洗浄槽の内周壁に位置し、前記洗浄槽内の水を案内して前記洗浄槽の外部へ排出する導水経路と、前記洗浄槽内の水の循環経路を規定する濾過経路を備える装着ベースと、
前記濾過経路内の水がフィルタを通って前記洗浄槽に入って循環するのを可能とするために、前記濾過経路に設けられたフィルタを含み、
前記導水経路と前記濾過経路は離隔して設置され、
前記導水経路の上部は前記装着ベースの側壁に配置された入水端、下部は吐水端となっており、入水口の開口方向は前記洗浄槽の脱水時の回転方向を向いており、
前記洗浄槽の内周壁の上部には、水を前記導水経路に進入させるよう案内する案内部が備えられており、
前記案内部は、前記導水経路の入水口が位置する高さまで上昇してきた洗浄水を周方向に沿って前記入水口まで案内する案内ユニットを含み、
前記導水経路と前記濾過経路は前記装着ベース上で前記洗浄槽の径方向に分布しており、前記導水経路は、前記濾過経路と前記洗浄槽の内周壁との間に設けられ、
前記案内ユニットは、前記洗浄槽の内周壁に周方向沿いに設けられるとともに前記洗浄槽の中心からのサイズが徐々に変化する曲面構造を含み、前記曲面構造は、前記入水口と隣り合う一端と前記洗浄槽の中心との距離が最大となり、且つ、前記洗浄槽の脱水回転時の方向に沿って延伸しており、前記入水口から離れるにつれて曲面と前記洗浄槽の中心との距離が小さくなっており、
前記案内ユニットは前記導水経路の入水口から洗浄槽の脱水回転時の周方向に沿って延び、もう一方の装着ベースまで延伸し、
前記案内ユニットは更に、前記洗浄槽の軸方向に沿って下から上に設けられ、前記洗浄槽の中心からのサイズが徐々に大きくなる傾斜構造を含むことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
筐体と、回転可能に前記筐体内に設置される洗浄槽を含む洗濯機であって、
前記洗浄槽は、洗浄時に水を蓄える槽体構造をなすよう配置され、前記洗浄槽の内周壁には1つの濾過装置が装着されており、
前記濾過装置は、
洗浄槽の内周壁に位置し、前記洗浄槽内の水を案内して前記洗浄槽の外部へ排出する導水経路と、前記洗浄槽内の水の循環経路を規定する濾過経路を備える装着ベースと、
前記濾過経路内の水がフィルタを通って前記洗浄槽に入って循環するのを可能とするために、前記濾過経路に設けられたフィルタを含み、
前記導水経路と前記濾過経路は離隔して設置され、前記導水経路の上部は前記装着ベースの側壁に配置された入水端、下部は吐水端となっており、入水口の開口方向は前記洗浄槽の脱水時の回転方向を向いており、
前記洗浄槽の内周壁の上部には、水を前記導水経路に進入させるよう案内する案内部が備えられており、
前記案内部は、前記導水経路の入水口が位置する高さまで上昇してきた洗浄水を周方向に沿って前記入水口まで案内する案内ユニットを含み、
前記導水経路と前記濾過経路は前記装着ベース上で前記洗浄槽の径方向に分布しており、前記導水経路は、前記濾過経路と前記洗浄槽の内周壁との間に設けられ、
前記案内ユニットは、前記洗浄槽の内周壁に周方向沿いに設けられるとともに前記洗浄槽の中心からのサイズが徐々に変化する曲面構造を含み、前記曲面構造は、前記入水口と隣り合う一端と前記洗浄槽の中心との距離が最大となり、且つ、前記洗浄槽の脱水回転時の方向に沿って延伸しており、前記入水口から離れるにつれて曲面と前記洗浄槽の中心との距離が小さくなっており、
前記案内ユニットは前記導水経路の入水口から洗浄槽の脱水回転時の周方向に沿って延び、前記入水口が配置される装着ベースの反対側の側壁に達するまで延伸し、
前記案内ユニットは更に、前記洗浄槽の軸方向に沿って下から上に設けられ、前記洗浄槽の中心からのサイズが徐々に大きくなる傾斜構造を含むことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
前記導水経路は、上部が入水端、下部が前記洗浄槽の周壁及び/又は底壁の第1排水口と連通する吐水端となっており、上から下へ水を案内して排出し、
前記濾過経路は、下部が前記洗浄槽の内部と連通して下から上へ水を案内する前記入水端となっており、上部が前記フィルタと連通することを特徴とする、請求項1
または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記導水経路は、前記装着ベース単独で規定されるか、或いは、前記装着ベースと前記洗浄槽の内周壁を合わせて規定されることを特徴とする、請求項
1または2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記導水経路と前記濾過経路は前記装着ベース上で前記洗浄槽の周方向に分布しており、前記導水経路における前記濾過経路と同じ高さの水路が前記濾過経路の一方の側に位置していることを特徴とする、請求項1
または2に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記導水経路と前記濾過経路は前記装着ベース上で前記洗浄槽の周方向に分布しており、前記導水経路は、前記濾過経路と同じ高さの位置に、前記濾過経路の両側にそれぞれ位置する2本の分岐路を有することを特徴とする、請求項1
または2に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記導水経路と前記濾過経路は前記洗浄槽の周方向に分布しており、前記濾過経路は、前記導水経路の両側にそれぞれ位置する2本の分岐路を有することを特徴とする、請求項1
または2に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記洗浄槽の周壁の下部には少なくとも1つの第1排水口が設けられており、前記装着ベースは
1つとし、各前記装着ベースの下部は少なくとも1つの前記第1排水口を覆っており、前記導水経路が前記第1排水口と連通することを特徴とする、請求項
2に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記洗浄槽の周壁の下部には複数の第1排水口が設けられており、複数の前記第1排水口は前記洗浄槽の周方向に間隔を隔てて設置され、前記装着ベースは複数とし、且つ前記洗浄槽の周方向に間隔を隔てて設置され、各前記装着ベースは、少なくとも1つの対応する前記第1排水口を覆
っており、前記導水経路が前記第1排水口と連通することを特徴とする、請求項
1に記載の洗濯機。
【請求項10】
更に、前記筐体内に設置されて前記洗浄槽から排出された水を収集する水受装置を含み、前記水受装置は、集水室と、外部に排水するための少なくとも1つの第2排水口を含むことを特徴とする、請求項1
または2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄機器の分野に属し、具体的には、洗濯機及び濾過装置に関し、特に、排水可能な洗濯機の濾過装置及び洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、従来の全自動パルセータ洗濯機は、内槽、外槽、ダンパー及び動力システムから構成される。洗濯時及び脱水時には、内槽が外槽に対し回転することで衣類と洗浄水の間に作用が生じ、衣類を洗浄又は脱水するとの目的が達せられる。外槽は内槽の外部に装着されて内槽を支持する。また、外槽は貯水槽となる。内槽の側壁には排水孔が均一に配置されており、内槽と外槽を連通させている。洗濯過程では衣類が内槽内に投入され、2つの槽の水位が同様の高さとなるが、外槽は衣類と接触しない。また、従来の洗濯機の外槽は内槽よりも体積が大きいため、内槽と外槽の間に洗浄水が大量に蓄えられるが、これらの槽の間の洗浄液は十分に活用することができない。そのため、洗濯時の水の使用量が増加するとともに、洗浄時の洗浄液の濃度が低下するほか、洗濯機全体の体積も過度に大きくなってしまう。また、使用から一定期間が経過すると、外槽の内壁と内槽の外壁に汚れが付着し、ひいてはカビが発生する結果、洗濯物が汚染される。且つ、槽壁はクリーニングが難しい。
【0003】
こうした状況に対し、改良を行っているメーカーもある。水資源の節約のために、多くの洗濯機が孔の無い内槽を採用し、内槽と外槽を分離することで、外槽に水を存在させることなく内槽のみに貯水するようにしている。また、内槽の側壁における上端寄りに排水孔を開設している。この場合、洗濯機の脱水時に、水は遠心力の働きで内槽の内壁へと振り出され、内槽の内壁に沿って上方へ移動したあと、内槽上端の排水孔から排出される。これにより、洗濯機の節水効果が向上するとともに、洗剤の使用量も節約される。
【0004】
しかし、上記の方案には次のような課題がある。即ち、洗濯機は脱水時に高速回転するため、衣類中の水は内槽側壁の排水孔から振り出されると、そのまま外槽の側壁に衝突し、容易に四方へと飛散する。これにより、外槽の内壁には長期にわたって水が存在するため、やはり細菌が繁殖しやすく、環境への配慮には弱い。
【0005】
このほか、洗濯機の洗浄容量を増大させるためには、より大きな内槽が必要となる。即ち、内槽の高さ又は直径を拡大する必要がある。また、内槽がより大きなサイズを有する場合には、内槽を収容する外槽及びハウジングもまた内槽の拡大に伴って大きくせねばならない。
【0006】
しかし、洗濯機のハウジングの拡大は、洗濯機の設置領域のスペースに規制される。一般的なユーザの家では、洗濯機の設置位置に限りがあるため、洗濯機のハウジングを拡大して洗濯槽の容量を増大させるとの目的を達成することはあまり現実的ではない。そこで、洗濯機のハウジングを拡大することなく、如何にして内槽の容量を増大させるかが設計者を悩ませる大きな難題となっている。
【0007】
特許文献1は、一槽式の節水型洗濯機を開示している。当該洗濯機は、洗浄槽の槽口に集水装置が設けられ、集水装置の集水口が洗浄槽に沿って槽口を取り囲んでいる。集水装置のうち槽口部分に位置する集水室は、洗浄槽の外壁に沿って上から下に対称に配置される複数の排水管に接続されている。脱水時には、高速回転により遠心分離された水流を集水装置が収集し、下方に案内して排出する。当該構造では外槽を省略しているが、洗濯機の脱水時に洗浄水はまず集水装置に進入する。ところが、集水装置は環状構造をなしており、内部に溜まった洗浄水の下方への排水速度が異なるため、洗浄槽の高速回転時の平衡が損なわれる。また、洗浄水は集水装置に進入したあと洗浄槽の下部に案内され、中心に集結してから排出されるため、排水には不利である。このことから、遠心力の作用で集水室に集中した水を排出しにくく、洗浄水が洗浄槽の上端に集中する結果、洗浄槽の上部の重量が増大して、更に平衡が損なわれる。特に、洗浄槽に残留した水が多い場合には、大部分の洗浄水が集水室内に集中して排出されなくなるため、洗浄槽と外槽の全体の重心が高くなり、極めて大きな震動及び騒音が発生する。また、脱水モータの動作負荷も増大し、モータが破損しやすくなる。最後に、集水装置は洗浄槽の上部に設置されるが、洗浄槽が脱水時に回転する際の上部の偏心においては径方向の変位が最も大きくなる。そのため、集水装置と洗濯機の筐体との衝突を回避するために、集水装置と筐体の間に安全距離を確保せねばならず、容量を増大するとの目的を真に達することはできない。
【0008】
以上に鑑みて、本発明を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】中国特許出願第99230455.5号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の瑕疵を解消し、水を迅速に案内して排出しつつ、洗浄槽の脱水時における偏心を低減させる洗濯機の濾過装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、当該濾過装置を備えながら容量増大効果を実現する洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的課題を解決するために、本発明で採用する技術方案の基本思想は以下の通りである。即ち、洗濯機の濾過装置であって、洗浄槽の内周壁に位置し、洗浄槽内の水を案内して洗浄槽の外部へ排出する導水経路と、洗浄槽内の水の循環経路を規定する濾過経路を備える装着ベース、及び、前記装着ベースに位置して濾過経路と連通するフィルタを含む。前記導水経路と前記濾過経路は離隔して設置される。
【0013】
更に、前記導水経路は、上部が入水端、下部が洗浄槽の周壁及び/又は底壁の第1排水口と連通する吐水端となっており、上から下へ水を案内して排出する。濾過経路は、下部が洗浄槽の内部と連通して下から上へ水を案内する入水端となっており、上部がフィルタと連通する。
【0014】
更なる方案として、前記導水経路と濾過経路は装着ベース上で洗浄槽の径方向に分布しており、導水経路は、濾過経路と洗浄槽の内周壁との間に設けられる。
【0015】
更に、前記導水経路は、前記装着ベース単独で規定されるか、或いは、前記装着ベースと前記洗浄槽の内周壁を合わせて規定される。
【0016】
或いは、上記の代替方案として、前記導水経路と濾過経路は装着ベース上で洗浄槽の周方向に分布しており、導水経路における濾過経路と同じ高さの水路が濾過経路の一方の側に位置している。
【0017】
或いは、前記導水経路と濾過経路は装着ベース上で洗浄槽の周方向に分布しており、導水経路は、濾過経路と同じ高さの位置に、濾過経路の両側にそれぞれ位置する2本の分岐路を有する。
【0018】
また、或いは、前記導水経路と濾過経路は洗浄槽の周方向に分布しており、濾過経路は、導水経路の両側にそれぞれ位置する2本の分岐路を有する。
【0019】
本発明で記載する洗濯機は、筐体と、回転可能に筐体内に設置される洗浄槽を含む。前記洗浄槽は、洗浄時に水を蓄える槽体構造をなすよう配置され、洗浄槽の内周壁には上記の濾過装置が装着されている。
【0020】
更に、前記洗浄槽の周壁の下部には少なくとも1つの第1排水口が設けられている。また、前記装着ベースは少なくとも1つとする。各装着ベースの下部は少なくとも1つの第1排水口を覆っており、導水経路が第1排水口と連通する。
【0021】
好ましくは、前記第1排水口は複数とし、且つ、洗浄槽の周方向に間隔を隔てて設置される。また、前記装着ベースは複数とし、且つ洗浄槽の周方向に間隔を隔てて設置される。各装着ベースは、少なくとも1つの対応する第1排水口を覆う。
【0022】
更に、前記洗濯機は、筐体内に設置されて洗浄槽から排出された水を収集する水受装置を含む。水受装置は、集水室と、外部に排水するための少なくとも1つの第2排水口を含む。
【0023】
更に、前記洗浄槽の内周壁の上部には、水を導水経路に進入させるよう案内する案内部が備わっている。
【0024】
好ましくは、前記案内部は、導水経路の入水口が位置する高さまで上昇してきた洗浄水を周方向に沿って入水口まで案内する案内ユニットを含む。
【0025】
更に、前記案内ユニットの少なくとも一部と入水口は、洗浄槽の内周壁における同一円周上に位置する。当該部分の案内ユニットは、入水口から洗浄槽の脱水回転時における周方向に沿って延伸しつつ、洗浄槽の中心からの距離が徐々に小さくなっている。
【0026】
更に、前記案内ユニットは、洗浄槽の内周壁に周方向沿いに設けられるとともに洗浄槽の中心からのサイズが徐々に変化する曲面構造を含む。当該曲面構造は、入水口と隣り合う一端と洗浄槽の中心との距離が最大となる。且つ、洗浄槽の脱水回転時の方向に沿って延伸しており、入水口から離れるにつれて曲面と洗浄槽の中心との距離が小さくなる。
【0027】
好ましくは、更に、洗浄槽の軸方向に沿って下から上に設けられ、洗浄槽の中心からのサイズが徐々に大きくなる傾斜構造を含む。
【0028】
更に、前記案内ユニットは、入水口の入水側から洗浄槽の脱水回転時の周方向に沿って延び、もう一方の装着ベースまで延伸するか、当該入水口が配置される装着ベースの反対側の側壁に達するまでほぼ一周延伸する。
【0029】
更に、前記案内ユニットは、洗浄槽の内周壁に装着される補助構造であるか、或いは、洗浄槽の周壁のうち少なくとも導水経路の入水口が配置される円周上の押し型構造である。
【発明の効果】
【0030】
上記の技術方案を用いることで、本発明は従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
【0031】
本発明における洗濯機の洗浄槽は、洗浄過程で貯水に使用可能なため、洗浄槽に「孔の無い洗浄槽」構造を採用している。且つ、外槽の設計を省略し、外槽の代わりに水受装置を使用して水受け及び排水を行う。これにより、本発明は以下のような技術的効果を有する。
【0032】
1.洗濯機の筐体の容積を変えることなく洗浄槽の容量を増大可能なため、洗濯機の容量増大効果が実現される。
【0033】
2.洗浄過程において、水は洗浄槽内にのみ存在するため、従来の洗濯機のように内槽と外槽の間に水が存在し、外槽の内壁と洗浄槽の外壁に「汚れや垢が付着する」との課題が回避される。よって、いっそう良好な洗浄効果を有する。
【0034】
3.外槽を省略し、洗浄槽を貯水槽とすることで、洗浄過程において内槽と外槽の間に水が存在することがないため、洗浄用水量が減少し、洗浄用水量の節約となる。
【0035】
4.濾過装置の内部における上から下に向かう導水経路を利用して、洗浄槽の周壁の下部位置における第1排水口から排水することで、従来技術のように、洗浄槽の外周壁の上部に装着された導水構造が洗浄槽と筐体の間のスペースを占有するとの事態を回避可能となる。また、洗浄槽の内周壁に導水構造を別途装着することで洗浄槽の内部空間を占有するとの事態も回避される。これにより、真の容量増大効果が得られる。
【0036】
5.案内部を設け、脱水及び排水時に洗浄水を導水経路内に案内して排出することで、迅速な脱水が実現される。
【0037】
6.案内ユニットを、洗浄槽の内周壁における洗浄槽の中心からの半径が脱水時の回転方向に沿って徐々に小さくなるよう形成される径変構造として設計する。径変部は、洗浄水を半径が増大した箇所まで案内し、導水経路から排出することで迅速な排水を実現する。
【0038】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に述べる。
【0039】
図面は、本発明の一部として本発明の更なる理解のために用いられる。また、本発明の概略的実施例及びその説明は本発明の解釈のために用いられるが、本発明を不当に限定するものではない。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなくこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明における洗濯機の濾過装置の構造を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明における洗濯機の濾過装置を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるA-A方向の実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2におけるA-A方向の別の実施形態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2におけるA-A方向の別の実施形態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2におけるA-A方向の別の実施形態を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の洗濯機の構造を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明における洗濯機の濾過装置の導水経路を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明における洗濯機の案内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
説明すべき点として、これらの図面及び文字記載は何らかの方式で本発明の構想の範囲を制限するとの意図ではなく、特定の実施例を参照して当業者に本発明の概念を説明するためのものである。
【0042】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明確とすべく、以下では、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0043】
本発明の記載において、説明すべき点として、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、且つ特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0044】
本発明の記載において、説明すべき点として、別途明確に規定及び限定しない限り、「装着する」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体接続であってもよい。また、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【0045】
図1~
図11に示すように、本発明で記載する洗濯機の濾過装置1は、洗浄槽2の内周壁に装着される装着ベース3を含む。装着ベース3は、洗浄槽2内の水を案内して洗浄槽2の外部へ排出する導水経路4と、洗浄槽2内の水の循環経路を規定する濾過経路5を備える。装着ベース3にはフィルタ6が設けられており、濾過経路5と連通している。前記導水経路4と前記濾過経路5は離隔して設置される。また、当該濾過装置が装着される洗浄槽は「孔の無い内槽」構造をなしており、洗浄時には洗浄槽が貯水機能を有する。
【0046】
本発明における前記導水経路4は、上部が入水端41、下部が洗浄槽2の周壁及び/又は底壁の第1排水口21と連通する吐水端42となっており、上から下へ水を案内して排出する(
図8参照)。また、濾過経路5は、下部が洗浄槽2の内部と連通して下から上へ水を案内する入水端51となっており、上部がフィルタ6と連通している。2つの経路は互いに離隔しており(
図1参照)、各々が独立した導水水路と濾過水路を形成している。洗浄槽内の水が、濾過水路に沿って繰り返し循環する過程でフィルタを通過することで、糸屑の濾過が実現される。
【実施例1】
【0047】
図3に示すように、本実施例で記載する導水経路4と濾過経路5は、装着ベース3上で洗浄槽2の径方向に分布している。導水経路4は、濾過経路5と洗浄槽2の内周壁との間に設けられる。即ち、濾過経路5は装着ベースにおける洗浄槽2の中心寄りの位置に設けられ、導水経路4は洗浄槽2の内周壁寄りの位置に設けられる。
【0048】
本実施例で記載する導水経路4は、装着ベース3単独で規定可能である。即ち、装着ベース3の内部に上下に水を案内する経路が設けられる。或いは、導水経路4は、装着ベース3と洗浄槽2の内周壁を合わせて規定される。即ち、装着ベースにおける洗浄槽の内周壁寄りの側壁と洗浄槽の内周壁との隙間によって上下に水を案内する経路が構成される。
【実施例2】
【0049】
図4~
図6に示すように、本実施例で記載する導水経路4と濾過経路5は、装着ベース上で洗浄槽2の周方向に分布している。導水経路4は上から下へ水を案内し、濾過経路5は下から上へ水を濾過するため、導水経路4は必然的に濾過経路5と同じ高さの水路を有することになる。具体的には、以下のように設置すればよい。
【0050】
方案1:導水経路4は濾過経路5と同じ高さの水路を有し、濾過経路5の一方の側に位置する(
図4参照)。
【0051】
方案2:導水経路4は、濾過経路5と同じ高さの位置に、濾過経路5の両側にそれぞれ位置する2本の分岐路43,44を有する(
図5参照)。
【0052】
或いは、更なる構造として、
図6に示すように、前記導水経路4と濾過経路5は洗浄槽の周方向に分布し、濾過経路5が導水経路4の両側にそれぞれ位置する2本の分岐路52,53を有する。
【実施例3】
【0053】
図7~
図8に示すように、本発明の洗濯機は、筐体7と、回転可能に筐体7内に設置される洗浄槽2を含む。前記洗浄槽2は、洗浄時に水を蓄える槽体構造をなすよう配置される。洗浄槽2の内周壁には、上記実施例の濾過装置1が装着されている。洗濯機は、更に、筐体7内に設置されて洗浄槽から排出された水を収集する水受装置8を含む。水受装置8は洗浄槽2の下部に設置され、集水室81と、外部に排水するための少なくとも1つの第2排水口82を含む。前記集水室81は、洗浄槽2から排出された洗浄水を収集可能である。また、集水室を規定する周壁83は、洗浄槽2の少なくとも下部の周壁を取り囲んでいる。容量増大効果を高めるために、集水室を規定する当該周壁83は、排水時に水の飛散及び溢出を生じないとの条件を満たしたうえで、上方への延伸高さが低ければ低いほどよい。なぜなら、洗浄槽は下部の中心を回転時の支点とすることから、洗浄槽の回転が平衡を失ったときに、水受装置の上部の周壁が筐体又は洗浄槽と衝突して破損するとの事態を回避するために、水受装置の周壁と筐体及び洗浄槽は一定の安全距離を有するよう設計される必要があるが、このような設計では容量増大効果を得られないためである。
【0054】
更に、前記洗浄槽2の周壁の下部には少なくとも1つの第1排水口21が設けられている。また、前記装着ベース3は少なくとも1つとする。各装着ベース3の下部は少なくとも1つの第1排水口21を覆っており、導水経路4が第1排水口21と連通する。好ましくは、前記第1排水口21は複数とし、且つ、洗浄槽の周方向に間隔を隔てて設置する。また、前記装着ベース3は複数とし、且つ洗浄槽4の周方向に間隔を隔てて設置する。各装着ベース3は、少なくとも1つの対応する第1排水口21を覆う。
【実施例4】
【0055】
従来の孔の無い内槽は、周方向の直径が等しくなるよう設計されている。そのため、脱水段階において、水は高速の遠心力の作用によって、ほぼ等しい厚さで槽壁上に均一に分布することになり、内槽内の水を迅速に排出するには不利であった。
【0056】
図9に示すように、本実施例で記載する洗浄槽2の内周壁の上部には、水を導水経路4に進入させるよう案内する案内部9が備わっている。前記案内部9は、導水経路4の入水口45が位置する高さまで上昇してきた洗浄水を周方向に沿って入水口45まで案内する案内ユニット91を含む。案内部9を設け、洗浄水を案内部9で案内して迅速に装着ベース上部の入水口45から導水経路4に進入させることで、脱水時に洗浄槽内の洗浄水の迅速な排出を実現する。これにより、脱水効率と脱水効果が向上し、脱水時間が短縮される。
【実施例5】
【0057】
図9~
図11に示すように、本実施例で記載する案内ユニット91の少なくとも一部と入水口は、洗浄槽の内周壁における同一円周上に位置する。当該部分の案内ユニット91は、入水口45から洗浄槽2の脱水回転時における周方向に沿って延伸しつつ、洗浄槽2の中心からの距離が徐々に小さくなっている。
【0058】
更に、前記案内ユニット91は、洗浄槽2の内周壁に周方向沿いに設けられるとともに洗浄槽2の中心からのサイズが徐々に変化する曲面構造を含む。当該曲面構造は、入水口45と隣り合う一端と洗浄槽2の中心との距離Dが最大となる。また、洗浄槽2の脱水回転時の方向に沿って延伸しており、入水口45から離れるにつれて、曲面と洗浄槽45の中心との距離dが小さくなる。
【0059】
好ましくは、更に、洗浄槽2の軸方向に沿って下から上に設けられ、洗浄槽2の中心からのサイズが徐々に大きくなる傾斜構造を含む。洗浄槽2内の洗浄水は、まず遠心力の作用によって洗浄槽2の内周壁に沿って入水口45が位置する高さまで上昇する。そして、周方向に沿って、案内ユニット91のうち洗浄槽の中心からのサイズが大きい側に向かって装着ベース3まで迅速に運動し、入水口45から導水経路4内に進入して排出される。更に好ましくは、入水口45の上縁位置には環状の止水部(図示しない)が設けられている。これにより、洗浄槽の内周壁に沿って入水口まで上昇してきた洗浄水がそれ以上上昇しないよう妨げる。
【0060】
洗浄槽2内に少なくとも2つの装着ベース3が設けられている場合、前記案内ユニット91は、入水口45の入水側から洗浄槽の脱水回転時の周方向に沿って延び、もう一方の装着ベースまで延伸する。
【0061】
洗浄槽内に装着ベースが1つ設けられている場合、前記案内ユニットは、入水口の入水側から洗浄槽の脱水回転時の周方向に沿って延び、当該入水口が配置される装着ベースの反対側の側壁に達するまでほぼ一周延伸する。
【0062】
前記入水口45は、洗浄槽2の脱水時の回転方向と一致する装着ベース3の径方向の側壁に設けられている。入水口45の開口方向は洗浄槽2の脱水時の回転方向を向いている。また、洗浄槽2の周方向に沿って装着ベース3の導水経路4に進入する水流の方向は、洗浄槽2の脱水時の回転方向と逆向きである。
【0063】
本発明で記載する案内ユニット91は、洗浄槽の内周壁に装着される補助構造である。当該補助構造は、洗浄槽の中心を向く内側壁に上記の徐々に変化する曲面構造を有している。或いは、案内ユニット91は、洗浄槽の周壁のうち少なくとも導水経路の入水口が配置される円周上の押し型構造である。少なくとも入水口が配置される円周上の洗浄槽の内壁は、洗浄槽の中心からのサイズが上記の徐々に変化する構造を有している。
【0064】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に限定するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて実施可能なわずかな変形或いは補足は、同等に変形された等価の実施例とみなされ、いずれも本発明の技術方案の内容を逸脱するものではない。また、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる任意の簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲内とされる。