(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】放射性廃棄物固化方法、および、放射性廃棄物固化システム
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20240322BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G21F9/30 511B
G21F9/30 541A
G21F9/30 101
G21F9/36 511E
G21F9/36 511L
(21)【出願番号】P 2021013193
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川内 加苗
(72)【発明者】
【氏名】湯原 勝
(72)【発明者】
【氏名】豊原 尚実
(72)【発明者】
【氏名】赤山 類
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠二
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-174556(JP,A)
【文献】特開2017-067679(JP,A)
【文献】特開2012-167927(JP,A)
【文献】特開2019-156671(JP,A)
【文献】米国特許第05613240(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/0-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオポリマー材料とホウ素化合物とを用いて放射性廃棄物について固化処理を行う放射性廃棄物固化方法であって、
前記ジオポリマー材料と前記ホウ素化合物と前記放射性廃棄物とを廃棄物容器に充填する充填ステップと、
前記廃棄物容器において前記ジオポリマー材料と前記ホウ素化合物と前記放射性廃棄物との混合物を乾燥する乾燥ステップと
を備え
、
前記ジオポリマー材料は、ケイ素またはアルミニウムを含む基材と、アルカリ材とを含むスラリーであり、前記アルカリ材はアルカリ性の水酸化物またはアルカリ性のケイ酸塩である、
放射性廃棄物固化方法。
【請求項2】
前記充填ステップにおいては、前記ジオポリマー材料の重量と前記ホウ素化合物の重量とを合計した合計重量に対して、0質量%を超え5質量%以下の前記ホウ素化合物を添加する、
請求項1に記載の放射性廃棄物固化方法。
【請求項3】
ジオポリマー材料とホウ素化合物とを用いて放射性廃棄物について固化処理を行う放射性廃棄物固化方法であって、
前記ジオポリマー材料と前記ホウ素化合物と前記放射性廃棄物との混合物を圧縮することによって成形体を作成する圧縮ステップと、
前記成形体を廃棄物容器に充填する充填ステップと、
を備え
、
前記ジオポリマー材料は、ケイ素またはアルミニウムを含む基材と、アルカリ材とを含むスラリーであり、前記アルカリ材はアルカリ性の水酸化物またはアルカリ性のケイ酸塩である、
放射性廃棄物固化方法。
【請求項4】
前記充填ステップの実施前に、前記成形体を養生する養生ステップ
を備える、
請求項3に記載の放射性廃棄物固化方法。
【請求項5】
ジオポリマー材料とホウ素化合物とを用いて、放射性廃棄物について固化処理を行う放射性廃棄物固化システムであって、
前記ジオポリマー材料と前記ホウ素化合物と前記放射性廃棄物とが充填された廃棄物容器において、前記ジオポリマー材料と前記ホウ素化合物と前記放射性廃棄物との混合物を乾燥する乾燥部
を備え
、
前記ジオポリマー材料は、ケイ素またはアルミニウムを含む基材と、アルカリ材とを含むスラリーであり、前記アルカリ材はアルカリ性の水酸化物またはアルカリ性のケイ酸塩である、
放射性廃棄物固化システム。
【請求項6】
ジオポリマー材料とホウ素化合物とを用いて、放射性廃棄物について固化処理を行う放射性廃棄物固化システムであって、
前記ジオポリマー材料と前記ホウ素化合物と前記放射性廃棄物との混合物を圧縮することによって成形体を作成する圧縮部
を備え、
前記成形体を廃棄物容器に充填するように構成され
、
前記ジオポリマー材料は、ケイ素またはアルミニウムを含む基材と、アルカリ材とを含むスラリーであり、前記アルカリ材はアルカリ性の水酸化物またはアルカリ性のケイ酸塩である、
放射性廃棄物固化システム。
【請求項7】
前記成形体が前記廃棄物容器に充填される前に、前記成形体を養生する養生部
を備える、
請求項6に記載の放射性廃棄物固化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物固化方法、および、放射性廃棄物固化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマーは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)などの元素で構成された非晶質の重合体であって、セメントと同様に、無機材料である。ジオポリマーは、ケイ素、アルミニウムなどの元素を含む基材(固化材)と、アルカリ材(アルカリ刺激剤)とが原料として用いられる。基材とアルカリ材との間において縮重合反応が生じることによって、ジオポリマーの固化体が形成される。
【0003】
ジオポリマーは、セメントと異なり、固化体の構造に水和物が存在しない。このため、ジオポリマーを用いた場合には、余剰な水を加熱による乾燥で除去した場合であっても、固化体の構造に対して影響が小さい。したがって、ジオポリマーは、たとえば、高線量の放射性廃棄物について固化処理を実施する際に用いる材料として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固化処理された放射性廃棄物は、放射性物質から放射される放射線によって、水素ガスが発生する場合がある。具体的には、水素ガスは、放射性廃棄物に含有する水などの水分が放射線によって分解することで発生する。
【0006】
このため、固化処理された放射性廃棄物を収容する廃棄物容器を密封する場合には、廃棄物容器の内部の空隙に応じて水素ガス発生量の上限を設ける必要がある。そして、廃棄物容器内の内容物の水分量が一定量以下に制限される。さらに、水素ガスに起因した爆発を防止するために、水素ガス濃度を爆発下限値以下に制限する必要がある。
【0007】
このような事情により、廃棄物の減容性を向上させることは容易でない。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、水素発生量を低減可能な、放射性廃棄物固化方法、および、放射性廃棄物固化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態は、ジオポリマー材料とホウ素化合物とを用いて放射性廃棄物について固化処理を行う放射性廃棄物固化方法であって、ジオポリマー材料とホウ素化合物と放射性廃棄物とを廃棄物容器に充填する充填ステップと、廃棄物容器においてジオポリマー材料とホウ素化合物と放射性廃棄物との混合物を乾燥する乾燥ステップとを備える。ジオポリマー材料は、ケイ素またはアルミニウムを含む基材と、アルカリ材とを含むスラリーであり、アルカリ材はアルカリ性の水酸化物またはアルカリ性のケイ酸塩である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素発生量を低減可能な、放射性廃棄物固化方法、および、放射性廃棄物固化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る放射性廃棄物固化システム1を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る放射性廃棄物固化方法を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の実施例において、吸収線量に対する水素発生量の結果を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の実施例において、ホウ素化合物M1の添加割合と、一軸圧縮強度との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る放射性廃棄物固化システム1bを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る放射性廃棄物固化方法を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る放射性廃棄物固化システム1cを模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る放射性廃棄物固化方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
[A]放射性廃棄物固化システム1
図1は、第1実施形態に係る放射性廃棄物固化システム1を模式的に示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態において、放射性廃棄物固化システム1は、ジオポリマー材料貯蔵部11とホウ素化合物貯蔵部12と放射性廃棄物貯蔵部13と混合物作成部20と乾燥部30とを備え、ジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12とを用いて、放射性廃棄物M13について固化処理を行うように構成されている。
【0014】
以下より、放射性廃棄物固化システム1を構成する各部について順次説明する。
【0015】
[A-1]ジオポリマー材料貯蔵部11
ジオポリマー材料貯蔵部11は、ジオポリマー材料M11を貯蔵するためのタンクを含む。
【0016】
ジオポリマー材料M11は、ケイ素、アルミニウムなどの元素を含む基材(固化材)と、アルカリ材(アルカリ刺激剤)とを含むスラリーである。
【0017】
基材は、たとえば、シリカ(二酸化ケイ素)、シリカフューム、アルミナシリカ(メタカオリン、高炉スラグ、焼却灰、飛灰(フライアッシュを含む)、ゼオライト、モルデナイト等)などである。
【0018】
アルカリ材は、たとえば、アルカリ性の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなど)、アルカリ性のケイ酸塩(ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ルビジウム、ケイ酸セシウム)である。ケイ酸塩としては、オルトケイ酸塩、メタケイ酸塩など、さまざまな形態のものを用いることができる。また、アルミン酸塩をアルカリ材としてふくんでいてもよい。
【0019】
この他に、ジオポリマー材料M11として、水を含有させてもよい。
【0020】
[A-2]ホウ素化合物貯蔵部12
ホウ素化合物貯蔵部12は、ホウ素化合物M12を貯蔵するためのタンクを含む。
【0021】
ホウ素化合物M12は、たとえば、ホウ酸(H3BO3)である。この他に、ホウ素化合物M12としては、ホウ素を含むホウ酸塩(メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム)など、さまざまな形態のものを用いることができる。
【0022】
[A-3]放射性廃棄物貯蔵部13
放射性廃棄物貯蔵部13は、放射性廃棄物M13を貯蔵するためのタンクを含む。
【0023】
[A-4]混合物作成部20
混合物作成部20は、ジオポリマー材料貯蔵部11からジオポリマー材料M11が供給され、ホウ素化合物貯蔵部12からホウ素化合物M12が供給されると共に、放射性廃棄物貯蔵部13から放射性廃棄物M13が供給されるタンクを含む。そして、混合物作成部20は、ジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12と放射性廃棄物M13とを混練することによって混合物M20を作成するための撹拌機を含む。
【0024】
また、混合物作成部20は、その混合物M20が廃棄物容器100に投入されるように構成されている。廃棄物容器100は、たとえば、ドラム缶である。
【0025】
[A-5]乾燥部30
乾燥部30は、たとえば、廃棄物容器100に投入された混合物M20を乾燥するためのヒータを含む。
【0026】
廃棄物容器100の内部に投入された混合物M20においては、基材とアルカリ材との反応が進行し、ジオポリマーの固化体が作成される。これと共に、乾燥部30において混合物M20を加熱することによって、混合物M20に含まれる水分を蒸発させる。
【0027】
[B]放射性廃棄物固化方法
図2は、第1実施形態に係る放射性廃棄物固化方法を示すフロー図である。
【0028】
上記の放射性廃棄物固化システム1(
図1参照)を用いて、放射性廃棄物M13について固化処理を行う方法に関して、
図2を用いて説明する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態では、混合物の作成工程(ST10)と混合物の充填工程(ST20)と混合物の乾燥工程(ST30)とを順次行うことによって、放射性廃棄物M13の固化処理を実行する。各工程の詳細について順次説明する。
【0030】
[B-1]混合物の作成工程(ST10)
まず、混合物の作成工程(ST10)では、上述したように、混合物作成部20においてジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12と放射性廃棄物M13とを混練することによって、混合物M20を作成する。
【0031】
混合物M20は、たとえば、下記の割合で各材料を混合することで作成される。なお、下記において「X1~X2質量%」は、「X1質量%を超えX2質量%以下」を意味する。
【0032】
(ジオポリマー材料M11)
・アルミノケイ酸塩 ・・・ 20~40質量%
・シリカ化合物 ・・・ 0~20質量%
・カルシウム化合物 ・・・ 0~35質量%
・アルカリ溶液 ・・・ 25~50質量%
・水 ・・・ 0~30質量%
【0033】
(ホウ素化合物M12)
・ホウ酸化合物 ・・・1~5質量%
【0034】
(放射性廃棄物M13)
・放射性廃棄物 ・・・1~50質量%
【0035】
ここでは、ジオポリマー材料M11の重量と放射性廃棄物M13の重量とを合計した合計重量に対して、1質量%を超え50質量%以下の放射性廃棄物M13を混合することが好ましい。
【0036】
ここでは、ジオポリマー材料M11の重量とホウ素化合物M12の重量とを合計した合計重量に対して、0質量%を超え5質量%以下のホウ素化合物M12を添加することが好ましい。
【0037】
[B-2]混合物の充填工程(ST20)
つぎに、混合物の充填工程(ST20)では、上述したように、混合物作成部20から混合物M20を廃棄物容器100に充填する。
【0038】
[B-3]混合物の乾燥工程(ST30)
つぎに、混合物の乾燥工程(ST30)では、上述したように、乾燥部30において廃棄物容器100に投入された混合物M20を乾燥する。
【0039】
ここでは、たとえば、下記の条件で乾燥を行う(減圧下での乾燥可)。
・乾燥温度:20℃(常温)以上
【0040】
廃棄物容器100の内部において、混合物M20は、基材とアルカリ材との反応が進行し、ジオポリマーの固化体になる。これと共に、乾燥部30において混合物M20が加熱されることで、混合物M20に含まれる水分が蒸発する。
【0041】
[C]実施例
以下より、上記実施形態の実施例および比較例について説明する。
【0042】
[C-1]固化体の形成
実施例および比較例においては、放射性廃棄物M13を用いずに、ジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12とを用いて固化体を作成した。
【0043】
[実施例]
実施例では、まず、下記に示す配合でジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12とを混合した。
【0044】
(ジオポリマー材料M11)
・メタカオリン:29質量%
・水酸化カリウム:17質量%
・ケイ酸カリウム水溶液(濃度30質量%):11質量%
・シリカ粉末:16質量%
・水:22質量%
【0045】
(ホウ素化合物M1)
・ホウ酸:5質量%
【0046】
つぎに、上記のように作成した混合物について乾燥した。
【0047】
[比較例]
比較例では、まず、下記に示す配合でジオポリマー材料M11を混合した。比較例では、実施例の場合と異なり、ホウ素化合物M12を混合していない。
【0048】
(ジオポリマー材料M11)
・メタカオリン:31質量%
・水酸化カリウム:18質量%
・ケイ酸カリウム水溶液(濃度30質量%):12質量%
・シリカ粉末:16質量%
・水:23質量%
【0049】
つぎに、上記のように作成した混合物について、実施例と同じ条件で乾燥した。
【0050】
[C-2]吸収線量に対する水素発生量の結果
図3は、第1実施形態の実施例において、吸収線量に対する水素発生量の結果を示す図である。
【0051】
図3においては、実施例および比較例の固化体にガンマ線(照射線量率7.7kGy/h)を照射する。ここでは、
図3に示す吸収線量になるように、所定の照射時間、ガンマ線の照射を行った。そして、そのときに、固化体から発生した水素の量を測定した。
【0052】
図3に示すように、ホウ素化合物M1を含む実施例の固化体は、ホウ素化合物M1を含まない比較例の固化体よりも、吸収線量に対する水素発生量の上昇割合が低い。
【0053】
[D]まとめ
以上の実施例の結果から判るように、本実施形態では、ジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12と放射性廃棄物M13との混合物M20を乾燥することで、放射性廃棄物M13について固化処理を行っているので、固化処理で得られた固化体において水素が発生する水素発生量を効果的に低減可能である。
【0054】
図4は、第1実施形態の実施例において、ホウ素化合物M1の添加割合と、一軸圧縮強度との関係を示す図である。
【0055】
図4では、実施例(ホウ酸5質量%)および比較例(ホウ酸0質量%)の固化体にについて、一軸圧縮強度の測定を行った結果を示している(JIS A1108:2006コンクリートの圧縮強度試験方法)。これと共に、ホウ酸の添加割合を、1質量%、2.5質量%、7.5質量%、10質量%とした場合の結果を示している。
【0056】
図4に示すように、ホウ酸の添加割合が5質量%以下である場合には、十分な一軸圧縮強度が得られる。なお、ホウ酸の添加割合が7.5質量%以上では、硬化が行われなかった。
【0057】
[E]変形例
上記の実施形態では、混合物作成部20で混練することによって作成した混合物M20を廃棄物容器100に充填する場合(アウトドラム式)について説明したが、これに限らない。混合物作成部20を用いずに、廃棄物容器100に各材料を直接投入し、廃棄物容器100において混合した混合物M20について乾燥してもよい(インドラム式)。
【0058】
<第2実施形態>
[A]放射性廃棄物固化システム1
図5は、第2実施形態に係る放射性廃棄物固化システム1bを模式的に示す図である。
【0059】
図5に示すように、本実施形態の放射性廃棄物固化システム1bは、第1実施形態の場合(
図1参照)と同様に、ジオポリマー材料貯蔵部11とホウ素化合物貯蔵部12と放射性廃棄物貯蔵部13と混合物作成部20とを備えている。本実施形態では、乾燥部30(
図1参照)が設けられておらず、圧縮部40が設けられている。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第1実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0060】
圧縮部40は、圧縮成形機を含み、混合物作成部20から型枠に入れた混合物M20を圧縮することによって成形体M40を作成するように構成されている。圧縮部40で作成された成形体M40は、廃棄物容器100に充填される。
【0061】
[B]放射性廃棄物固化方法
図6は、第2実施形態に係る放射性廃棄物固化方法を示すフロー図である。
【0062】
上記の放射性廃棄物固化システム1b(
図5参照)を用いて、放射性廃棄物M13について固化処理を行う方法に関して、
図6を用いて説明する。
【0063】
図6に示すように、本実施形態では、混合物の作成工程(ST10)を行った後に、混合物の圧縮工程(ST40)と成形物の充填工程(ST50)とを順次行うことによって、放射性廃棄物M13の固化処理を実行する。
【0064】
[B-1]混合物の作成工程(ST10)
混合物の作成工程(ST10)では、第1実施形態の場合と同様に、混合物作成部20においてジオポリマー材料M11とホウ素化合物M12と放射性廃棄物M13とを混練することによって、混合物M20を作成する。
【0065】
混合物M20は、たとえば、下記の割合で各材料を混合することで作成される。
【0066】
(ジオポリマー材料M11)
・アルミノケイ酸塩・・・26~56質量%
・シリカ化合物 ・・・ 12~25質量%
・カルシウム化合物 ・・・ 0~31質量%
・アルカリ溶液 ・・・ 15~23質量%
・アルカリ粉末 ・・・ 7~44質量%
【0067】
(ホウ素化合物M12)
・ホウ酸 ・・・ 1~5質量%
【0068】
(放射性廃棄物M13)
・固体の放射性廃棄物 ・・・1~90質量%
【0069】
この場合においても、第1実施形態の場合と同様に、ジオポリマー材料M11の重量とホウ素化合物M12の重量とを合計した合計重量に対して、1質量%を超え5質量%以下のホウ素化合物M12を添加することが好ましい。
【0070】
この場合においても、第1実施形態の場合と同様に、ジオポリマー材料M11の重量と放射性廃棄物M13の重量とを合計した合計重量に対して、1質量%を超え90質量%以下の放射性廃棄物M13と混合することが好ましい。
【0071】
[B-2]混合物の圧縮工程(ST40)
混合物の圧縮工程(ST40)では、上述したように、圧縮部40の型枠に混合物作成部20から混合物M20を入れ、圧縮することによって成形体M40を作成する。
【0072】
ここでは、たとえば、下記の圧縮条件で圧縮を実行する。
・圧縮圧力: 1~20MPa
【0073】
[B-3]成形物の充填工程(ST50)
成形物の充填工程(ST50)では、上述したように、圧縮部40で作成された成形体M40を廃棄物容器100に充填する。
【0074】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、ホウ素化合物M12を含む混合物M20について固化処理を行っているので、第1実施形態の場合と同様に、固化処理で得られた固化体において水素が発生する水素発生量を効果的に低減可能である。
【0075】
また、本実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、圧縮を行っているので、粉体密度が高くなり、ジオポリマー反応の進行の効果を奏することができる。
【0076】
<第3実施形態>
[A]放射性廃棄物固化システム1
図7は、第3実施形態に係る放射性廃棄物固化システム1cを模式的に示す図である。
【0077】
図7に示すように、本実施形態の放射性廃棄物固化システム1cは、第2実施形態の場合(
図5参照)と同様に、ジオポリマー材料貯蔵部11とホウ素化合物貯蔵部12と放射性廃棄物貯蔵部13と混合物作成部20と圧縮部40とを備えている。本実施形態では、第2実施形態の場合(
図5参照)と異なり、養生部50を更に備えている。この点、および、これに関する点を除き、本実施形態は、第2実施形態と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0078】
養生部50は、養生室を含み、圧縮部40で作成された成形体M40を廃棄物容器100に充填する前に養生するために設けられている。養生部50で養生された成形体M40は、廃棄物容器100に充填される。
【0079】
[B]放射性廃棄物固化方法
図8は、第3実施形態に係る放射性廃棄物固化方法を示すフロー図である。
【0080】
上記の放射性廃棄物固化システム1c(
図7参照)を用いて、放射性廃棄物M13について固化処理を行う方法に関して、
図8を用いて説明する。
【0081】
図8に示すように、本実施形態では、混合物の作成工程(ST10)と混合物の圧縮工程(ST40)とを行った後に、成形物の充填工程(ST50)を行う前に成形物の養生工程(ST41)を行うことによって、放射性廃棄物M13の固化処理を実行する。
【0082】
成形物の養生工程(ST41)では、上述したように、圧縮部40で作成された成形体M40を養生部50において養生する。
【0083】
ここでは、たとえば、下記の養生条件で養生を実行する(加熱養生も可能)。
・室温で1日~91日
【0084】
成形物の充填工程(ST50)では、養生部50で養生された成形体M40を廃棄物容器100に充填する。
【0085】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、ホウ素化合物M12を含む混合物M20について固化処理を行っているので、第1実施形態および第2実施形態の場合と同様に、固化処理で得られた固化体において水素が発生する水素発生量を効果的に低減可能である。
【0086】
また、本実施形態では、第2実施形態の場合と異なり、養生を行っているので、ジオポリマー反応が進行し、機械的強度の向上の効果を奏することができる。
【0087】
<その他>
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することができる。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1:放射性廃棄物固化システム、11:ジオポリマー材料貯蔵部、12:ホウ素化合物貯蔵部、13:放射性廃棄物貯蔵部、20:混合物作成部、30:乾燥部、40:圧縮部、50:養生部、100:廃棄物容器、M11:ジオポリマー材料、M12:ホウ素化合物、M13:放射性廃棄物、M20:混合物、M40:成形体