(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】蒸気弁および蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 17/10 20060101AFI20240322BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240322BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F01D17/10 B
F01D17/10 J
F01D25/00 G
F01D25/00 P
F16K51/00 B
(21)【出願番号】P 2021042480
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 蔵
(72)【発明者】
【氏名】二森 都
(72)【発明者】
【氏名】堀井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】竹丸 竜平
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172976(JP,A)
【文献】実開昭56-171605(JP,U)
【文献】特開2004-301066(JP,A)
【文献】特開2011-137462(JP,A)
【文献】特開2017-180143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10
F01D 25/00
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が流入口から弁室に流入して流出口から流出するように構成されている弁ケーシングと、
前記弁室に設置されている弁座と、
前記弁室において弁棒に連結されている弁体と、
前記弁室において前記弁体の周りを囲うように設置されており、前記蒸気が通過する複数の孔が設けられているストレーナと
を備える蒸気弁であって、
前記ストレーナは、
前記蒸気が前記流入口から前記流出口へ流れるように前記蒸気の流れを整流する整流ガイド
を有
し、
前記整流ガイドは、
前記ストレーナの外周面に設けられた外周整流ガイド板
を含み、
前記弁室は、
前記流入口に連通しており、前記弁体および前記ストレーナを収容している第1の弁室部と、
前記弁棒の軸方向において前記第1の弁室部に並ぶように配置され、前記流出口に連通している第2の弁室部と
を含み、
前記弁体と前記弁座との間が離間した開状態であるときには、前記第1の弁室部と前記第2の弁室部との間が連通し、
前記弁体と前記弁座との間が密着した閉状態であるときには、前記第1の弁室部と前記第2の弁室部との間が遮断されるように構成されており、
前記外周整流ガイド板は、
前記流入口から流入した前記蒸気の流れに沿うように延在している平面板部と、
前記平面板部を通過した前記蒸気を前記第1の弁室部から前記第2の弁室部へ導くように曲がっている曲面板部と
を備える、
蒸気弁。
【請求項2】
前記外周整流ガイド板は、
第1の外周整流ガイド板と、
前記第1の外周整流ガイド板よりも前記第2の弁室部の側に配置された第2の外周整流ガイド板と
を少なくとも含み、
前記第1の外周整流ガイド板において前記流入口の側へ突き出た長さは、前記第2の外周整流ガイド板において前記流入口の側へ突き出た長さよりも長い、
請求項
1に記載の蒸気弁。
【請求項3】
前記ストレーナは、前記第1の弁室部において固定されている、
請求項1または2に記載の蒸気弁。
【請求項4】
前記整流ガイドは
前記ストレーナの内周面に設けられた内周整流ガイド板
を含む、
請求項1から
3のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項5】
前記内周整流ガイド板は、
前記ストレーナの内周面の側に位置する一端部と
前記一端部の反対側に位置する他端部と
を有し、
前記一端部よりも前記他端部が前記第2の弁室部の側に位置するように傾斜している、
請求項
4に記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記内周整流ガイド板は、
第1の内周整流ガイド板と、
前記第1の内周整流ガイド板よりも前記第2の弁室部の側に配置された第2の内周整流ガイド板と
を少なくとも含み、
前記第1の内周整流ガイド板において前記ストレーナの内周面から前記ストレーナの内側へ突き出た長さは、
前記第2の内周整流ガイド板において前記ストレーナの内周面から前記ストレーナの内側へ突き出た長さよりも長い、
請求項
4または
5に記載の蒸気弁。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の蒸気弁を介して、蒸気が作動媒体として流入する蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気弁および蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン発電プラントを構成する蒸気タービンにおいては、主蒸気止め弁などの蒸気弁が入口に設置されている。主蒸気止め弁などの蒸気弁においては、蒸気に異物として混入した固体粒子(酸化物スケール、金属屑、蒸気タービン配管の残留物など)を捕捉するために、ストレーナが弁ケーシングの内部に設置されている。ストレーナは、複数の貫通孔が形成されており、蒸気弁が開けられて蒸気が複数の貫通孔を通過するときに、その蒸気に異物として混入した固体粒子を捕捉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[A]蒸気弁
図8は、関連技術に係る蒸気弁の構成の一例を示す断面図である。
図8において、縦方向は、鉛直方向zであり、横方向は、第1水平方向xであり、紙面に垂直な方向は、鉛直方向zおよび第1水平方向xに直交する第2水平方向yである。
図8では、鉛直方向zおよび第1水平方向xに沿った鉛直面(xz面)について示している。
【0005】
図8に示すように、関連技術の蒸気弁は、弁棒320の一端に設置された弁体321が弁ケーシング312の弁室331に収容されていると共に、弁座314およびストレーナ315が弁室331の内部に設けられている。蒸気弁は、たとえば、蒸気タービンの入口に設置されている主蒸気止め弁である。蒸気弁を構成する各部の詳細について順次説明する。
【0006】
[A-1]弁ケーシング312
蒸気弁において、弁ケーシング312は、
図8に示すように、蒸気Fが流入口310から弁室331に流入して流出口311から流出するように構成されている。
【0007】
弁ケーシング312のうち、流入口310は、管軸310Xが第1水平方向xに沿った円筒状の入口管330に設けられている。流出口311は、管軸311Xが第1水平方向xに沿った円筒状の出口管332に設けられている。
【0008】
弁ケーシング312のうち、弁室331は、第1の弁室部331Aと第2の弁室部331Bとを含み、第1の弁室部331Aおよび第2の弁室部331Bが弁棒320の中心軸AXに沿った鉛直方向z(軸方向)において並ぶように設けられている。第1の弁室部331Aは、流入口310に連通しており、弁体321およびストレーナ315を収容している。第2の弁室部331Bは、鉛直方向zにおいて第1の弁室部331Aの下方に位置しており、流出口311に連通している。第2の弁室部331Bは、弁棒案内片319を収容している。
【0009】
この他に、弁ケーシング312は、鉛直方向zにおいて弁室331を構成する第1の弁室部331Aの上方に開口312Kが形成されている。そして、その開口312Kを塞ぐように、弁蓋317が設置されている。弁蓋317は、ボルト317aを用いて弁ケーシング312に固定されている。
【0010】
[A-2]弁棒320
蒸気弁において、弁棒320は、たとえば、円柱状の棒状体であって、中心軸AXが鉛直方向zに沿っている。弁棒320は、鉛直方向zにおいて移動可能なように弁棒案内片319に挿入されている。ここでは、弁棒320は、小径部と大径部とが鉛直方向zにおいて上方から下方に並んでいる。弁棒320は、蒸気弁が開けられるときには鉛直方向zの上方へ移動して弁棒案内片319から小径部が突き出る長さが増加し、大径部が弁棒案内片319の内部のバックシート部に接触した状態で蒸気弁が全開状態になる。
【0011】
[A-3]弁体321
蒸気弁において、弁体321は、たとえば、鉛直方向zにおいて上側から下側へ向かうに伴って断面積が減少するテーパ形状部が円柱体の下方に設けられた形状である。弁体321は、弁室331を構成する第1の弁室部331Aに収容されており、第1の弁室部331Aの内部において弁棒320に同軸に連結されている。
【0012】
[A-4]弁座314
蒸気弁において、弁座314は、たとえば、リング状の管状体であって、弁室331において弁棒320と同軸に配置されるように固定されている。ここでは、弁座314は、弁室331のうち第1の弁室部331Aと第2の弁室部331Bとの間に介在している。
【0013】
[A-5]ストレーナ315
蒸気弁において、ストレーナ315は、弁室331を構成する第1の弁室部331Aにおいて弁棒320および弁体321の周りを囲うように設置されている。
【0014】
図9は、関連技術に係る蒸気弁において、ストレーナ315の構成の一例を示す斜視図である。
【0015】
図9に示すように、ストレーナ315は、たとえば、円筒形状であって、弁棒320の中心軸AXと同軸に設置されている。ストレーナ315には、孔316が形成されている。孔316は、ストレーナ315において内周面と外周面との間を貫通するように形成されている。孔316は、複数であって、複数の孔316が千鳥状に並ぶように形成されている。複数の孔316は、流入口310から流出口311へ流れる蒸気Fに異物として含まれる固体粒子を除去するために設けられている(
図8参照)。
【0016】
[A-6]その他
蒸気弁は、上記の構成の他に、弁棒320の下端部にアクチュエータ(図示省略)が連結されており、アクチュエータによって弁棒320が鉛直方向に沿って移動する。これにより、蒸気弁では、弁体321と弁座314との間の距離が変動して開度が調整され、蒸気の流れが制御される。
【0017】
具体的には、蒸気弁を全閉状態(実線の場合)にする場合には、弁ケーシング312の弁室331の内部において、弁体321が弁座314に近付いて密着する。これにより、弁室331は、第1の弁室部331Aと第2の弁室部331Bとの間が連通せずに遮断された状態になる。その結果、その蒸気Fの流れが止められる。
【0018】
これに対して、蒸気弁を全開状態(破線の場合)にする場合には、弁ケーシング312の弁室331の内部において、弁体321が弁座314から離れる。これにより、弁室331は、第1の弁室部331Aと第2の弁室部331Bとの間が連通した状態になる。その結果、流入口310に流入した蒸気Fは、弁室331において弁体321と弁座314との間を介して、第1の弁室部331Aから第2の弁室部331Bへ流れ、流出口311から流出する。
【0019】
このとき、蒸気Fは、流入口310に流入した後には、ストレーナ315の外周面に、直接、衝突する。蒸気Fは、ストレーナ315の外周面に衝突した後、第1の弁室部331Aにおいてストレーナ315の外周面と弁ケーシング312の内面と間に位置する環状流路を流れる。そして、蒸気Fは、環状流路からストレーナ315の孔316を通過する。このとき、蒸気Fに異物として含まれる固体粒子は、蒸気Fがストレーナ315の孔316を通過するときに捕捉されて、蒸気Fから除去される。
【0020】
[B]課題
上記したように、関連技術の蒸気弁では、蒸気Fは、第1の弁室部331Aにおいてストレーナ315の外周面に衝突した後に環状流路を流れ、その環状流路からストレーナ315の孔316を通過する。このため、関連技術の蒸気弁では、蒸気Fがストレーナ315の孔316を通過するときに、圧力降下(圧力損失)が生じ、これに伴って振動及び騒音が生ずる等の不具合が発生する場合がある。つまり、ストレーナ315に起因して蒸気Fの流れが乱れるために、上記の不具合が発生する場合がある。
【0021】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、振動及び騒音の発生を効果的に防止可能な、蒸気弁および蒸気タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
実施形態の蒸気弁は、弁ケーシングと弁座と弁体とストレーナとを備える。弁ケーシングは、蒸気が流入口から弁室に流入して流出口から流出するように構成されている。弁座は、弁室に設置されている。弁体は、弁室において弁棒に連結されている。ストレーナは、弁室において弁体の周りを囲うように設置されており、蒸気が通過する複数の孔が設けられている。ストレーナは、蒸気が流入口から前記流出口へ流れるように蒸気の流れを整流する整流ガイドを有する。整流ガイドは、ストレーナの外周面に設けられた外周整流ガイド板を含み。弁室は、流入口に連通しており、弁体および前記ストレーナを収容している第1の弁室部と、弁棒の軸方向において第1の弁室部に並ぶように配置され、流出口に連通している第2の弁室部とを含む。弁体と弁座との間が離間した開状態であるときには、第1の弁室部と第2の弁室部との間が連通し、弁体と弁座との間が密着した閉状態であるときには、第1の弁室部と第2の弁室部との間が遮断されるように構成されている。外周整流ガイド板は、流入口から流入した蒸気の流れに沿うように延在している平面板部と、平面板部を通過した蒸気を第1の弁室部から第2の弁室部へ導くように曲がっている曲面板部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる蒸気タービンプラントを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る蒸気弁の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315を拡大して示す側面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のA-A面から下方へ見た上面図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のB-B面から下方へ見た上面図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のC-C面から下方へ見た上面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る蒸気弁の構成の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315を拡大して示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、第2実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図6のA-A面から下方へ見た上面図である。
【
図7B】
図7Bは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図6のC-C面から下方へ見た上面図である。
【
図8】
図8は、関連技術に係る蒸気弁の構成の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、関連技術に係る蒸気弁において、ストレーナ315の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
[A]蒸気タービン発電プラントの構成
図1は、第1実施形態にかかる蒸気タービンプラントを模式的に示す図である。
【0025】
本実施形態の蒸気タービン発電プラント100においては、
図1に示すように、ボイラ110の過熱器111で加熱された蒸気が、主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとが設置された主蒸気管P10を介して、高圧タービン141に作動流体として導入され、高圧タービン141において仕事を行う。そして、高圧タービン141から排出された蒸気は、逆止弁V11が設置された低温再熱蒸気管P11を経由して、ボイラ110の再熱器112に供給され、再熱器112において再度加熱される。
【0026】
再熱器112で加熱された蒸気は、再熱蒸気止め弁V12aとインターセプト弁V12bが設置された高温再熱蒸気管P12を介して、中圧タービン142に作動流体として導入され、中圧タービン142において仕事を行う。そして、中圧タービン142から排出された蒸気は、クロスオーバ管P13を介して、低圧タービン143に作動流体として導入され、低圧タービン143において仕事を行う。そして、低圧タービン143から排出された蒸気は、復水器150で凝縮される。
【0027】
復水器150で凝縮された水(復水)は、給水ポンプ151において昇圧される。給水ポンプ151で昇圧された水(給水)は、ボイラ110の過熱器111に戻される。
【0028】
蒸気タービン発電プラント100では、高圧タービン141と中圧タービン142と低圧タービン143との間においてタービンロータが連結されており、蒸気の仕事によってタービンロータが回転する。そして、そのタービンロータの回転によって発電機(図示省略)が駆動し、発電が行われる。
【0029】
なお、蒸気タービン発電プラント100では、タービンの運転に係わらずに、ボイラ110の系統単独で循環した運転ができるように、高圧タービンバイパス弁BV1が設置された高圧タービンバイパス管BP1と、低圧タービンバイパス弁BV2が設置された低圧タービンバイパス管BP2とが設けられている。高圧タービンバイパス管BP1は、主蒸気管P10において主蒸気止め弁V10aよりも上流側に位置する部分に一端が接続され、低温再熱蒸気管P11において逆止弁V11よりも下流側に位置する部分に他端が接続されている。低圧タービンバイパス管BP2は、高温再熱蒸気管P12において再熱蒸気止め弁V12aよりも上流側に位置する部分に一端が接続され、他端が復水器150に接続されている。
【0030】
[B]蒸気弁の構成
図2は、第1実施形態に係る蒸気弁の構成の一例を示す断面図である。
図2では、
図8と同様に、鉛直面(xz面)について示している。ここでは、蒸気弁として、たとえば、主蒸気止め弁V10a(
図1参照)に関して説明する。なお、再熱蒸気止め弁V12a(
図1参照)に関しても同様に構成してもよい。
【0031】
図2に示すように、本実施形態の蒸気弁は、上記した関連技術の場合(
図8参照)と同様に、弁棒320の一端に設置された弁体321が弁ケーシング312の弁室331に収容されていると共に、弁座314およびストレーナ315が弁室331の内部に設けられている。しかしながら、本実施形態では、ストレーナ315の構成の一部が関連技術の場合(
図8参照)と異なっている。この点および関連する点を除き、本実施形態は、上記の関連技術の場合と同様であるため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0032】
本実施形態において、ストレーナ315は、関連技術の場合(
図8参照)と同様に、円筒形状であって、
図2に示すように、弁室331を構成する第1の弁室部331Aに設置されている。しかし、本実施形態では、ストレーナ315は、関連技術の場合(
図8参照)と異なり、第1の弁室部331Aで固定されている。
【0033】
具体的には、ストレーナ315は、外周面のうち鉛直方向zにおいて上端に位置する部分にフランジ3151が設けられている。フランジ3151には、ボルト3152が挿入される挿入孔が設けられている。そして、弁蓋317には、雌ネジ部が形成されている。
フランジ3151の挿入孔に挿入されたボルト3152の雄ネジ部が、弁蓋317の雌ネジ部に捻り込まれて取り付けられることによって、ストレーナ315が弁蓋317に固定されている。
【0034】
この他に、本実施形態のストレーナ315は、関連技術の場合(
図8参照)と異なり、整流ガイド50を有する。整流ガイド50は、蒸気Fが流入口310から流出口311へ流れるように蒸気Fの流れを導くために設けられている。
【0035】
【0036】
図3は、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315を拡大して示す側面図である。
図4Aは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のA-A面から下方へ見た上面図である。
図4Bは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のB-B面から下方へ見た上面図である。
図4Cは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のC-C面から下方へ見た上面図である。
図3、
図4A~
図4Cのそれぞれは、ストレーナ315よりも左側が流入口310の側であり、ストレーナ315よりも右側が流入口310の側の反対側である。
図3は、ストレーナ315よりも上側が弁蓋317の側であり、ストレーナ315よりも下側が第2の弁室部331Bの側である。なお、上述したように、ストレーナ315には、複数の孔316が形成されているが(
図9参照)、
図3、
図4A~
図4Cでは都合により図示を省略している。
【0037】
図3に示すように、本実施形態のストレーナ315において、整流ガイド50は、ストレーナ315の外周面に設けられた複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cを含む。
【0038】
複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cは、鉛直方向zにおいて間を隔てて並ぶように配置されている。外周整流ガイド板51Aは、複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cのうち鉛直方向zで最も上方に設けられている。外周整流ガイド板51Bは、鉛直方向zで外周整流ガイド板51Aよりも下側(第2の弁室部331Bの側)に配置されている。さらに、外周整流ガイド板51Cは、鉛直方向zで外周整流ガイド板51Bよりも下側(第2の弁室部331Bの側)に配置されている。
【0039】
複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cのそれぞれは、平面板部511A,511B,511Cと曲面板部512A,512B,512Cとを含む。
【0040】
複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cのそれぞれにおいて、平面板部511A,511B,511Cは、流入口310から流入する蒸気Fの流れに沿うように板面が延在している。つまり、平面板部511A,511B,511Cは、円筒状の入口管330の管軸310Xと同様に、第1水平方向xに板面が沿っている。
【0041】
この一方で、複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cのそれぞれにおいて、曲面板部512A,512B,512Cは、平面板部511A,511B,511Cを通過した蒸気Fを第2の弁室部331Bへ導くように板面が曲がっている。つまり、曲面板部512A,512B,512Cは、流入口310の反対側が流入口310の側よりも下側(第2の弁室部331Bの側)に位置するように板面が曲がっている。
【0042】
また、本実施形態では、
図4A~
図4Cに示すように、外周整流ガイド板51Aの平面板部511Aにおいて流入口310の側へ突き出た長さL51Aは、外周整流ガイド板51B,51Cの平面板部511B,511Cにおいて流入口310の側へ突き出た長さL51B,L51Cよりも長い。
【0043】
[C]蒸気Fの流れについて
本実施形態の蒸気弁における蒸気Fの流れについて説明する。
【0044】
本実施形態において、流入口310に流入した蒸気Fは、ストレーナ315の外周面へ向かって流れる。ストレーナ315の外周面には、上記したように、整流ガイド50が設けられている。このため、本実施形態では、蒸気Fは、整流ガイド50によって、流入口310から流出口311へ流れるように整流される。
【0045】
具体的には、流入口310に流入した蒸気Fは、第1の弁室部331Aにおいて、整流ガイド50を構成する複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cの板面に沿って流れる。
【0046】
ここでは、外周整流ガイド板51Aの平面板部511Aにおいて流入口310の側へ突き出た長さL51Aは、外周整流ガイド板51B,51Cの平面板部511B,511Cにおいて流入口310の側へ突き出た長さL51B,L51Cよりも長い。また、外周整流ガイド板51Aの平面板部511Aは、鉛直方向zにおいて流入口310よりも上方に位置しており、第1水平方向xにおいて流入口310と重複していない。このため、蒸気Fは、第1の弁室部331Aにおいて外周整流ガイド板51Aの平面板部511Aよりも上方に位置する空間へ流れることが抑制されている。
【0047】
その結果、第1の弁室部331Aにおいて、蒸気Fは、外周整流ガイド板51Aと外周整流ガイド板51Bとの間、外周整流ガイド板51Bと外周整流ガイド板51Cとの間などを主に流れる。このとき、平面板部511Aと平面板部511Bとの間および平面板部511Bと平面板部511Cとの間では、流入口310に流入した蒸気Fの流れと同様に、第1水平方向xに沿って蒸気Fが流れる。その後、曲面板部512Aと曲面板部512Bとの間および曲面板部512Bと曲面板部512Cとの間では、蒸気Fは、第2の弁室部331Bの側へ導かれるように流れる。
【0048】
そして、複数の外周整流ガイド板51A,51B,51Cの板面に沿って流れる蒸気Fは、ストレーナ315の孔316(
図9参照)を通過する。このとき、蒸気Fに異物として含まれる固体粒子は、蒸気Fがストレーナ315の孔316を通過するときに捕捉されて、蒸気Fから除去される。
【0049】
[D]まとめ
このように、本実施形態では、整流ガイド50を構成する外周整流ガイド板51A,51B,51Cの作用によって、蒸気Fは、流入口310から流出口311へ安定して流れる。したがって、本実施形態においては、ストレーナ315に起因して振動及び騒音が生ずることを効果的に防止することができる。
【0050】
特に、本実施形態では、ストレーナ315は、第1の弁室部331Aにおいて固定されているので、振動及び騒音の発生を更に効果的に抑制可能である。
【0051】
<第2実施形態>
[A]蒸気弁の構成
図5は、第2実施形態に係る蒸気弁の構成の一例を示す断面図である。
図5では、
図8と同様に、鉛直面(xz面)について示している。ここでは、蒸気弁として、たとえば、主蒸気止め弁V10a(
図1参照)に関して説明する。なお、再熱蒸気止め弁V12a(
図1参照)に関しても同様に構成してもよい。
【0052】
図2に示すように、本実施形態の蒸気弁は、上記した関連技術の場合(
図8参照)と同様に、ストレーナ315が弁室331の内部に設けられている。しかしながら、本実施形態では、ストレーナ315の構成の一部が関連技術の場合(
図8参照)と異なっている。この点および関連する点を除き、本実施形態は、上記の関連技術の場合と同様であるため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0053】
本実施形態において、ストレーナ315は、関連技術の場合(
図8参照)と異なり、整流ガイド50bが設けられている。整流ガイド50bは、蒸気Fが流入口310から流出口311へ流れるように蒸気Fの流れを導くために設けられている。
【0054】
【0055】
図6は、第2実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315を拡大して示す断面図である。
図7Aは、第2実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図6のA-A面から下方へ見た上面図である。
図7Bは、第1実施形態に係る蒸気弁のストレーナ315について、
図3のC-C面から下方へ見た上面図である。
図6、
図7A~
図7Bのそれぞれは、ストレーナ315よりも左側が流入口310の側であり、ストレーナ315よりも右側が流入口310の側の反対側である。
図6は、ストレーナ315よりも上側が弁蓋317の側であり、ストレーナ315よりも下側が第2の弁室部331Bの側である。なお、上述したように、ストレーナ315には、複数の孔316が形成されているが(
図9参照)、
図6、
図7A~
図7Bでは都合により図示を省略している。
【0056】
図6に示すように、本実施形態のストレーナ315において、整流ガイド50bは、ストレーナ315の内周面に設けられた複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dを含む。
【0057】
複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dは、鉛直方向zにおいて間を隔てて並ぶように配置されている。
【0058】
内周整流ガイド板52Aは、複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dのうち鉛直方向zで最も上方に設けられている。内周整流ガイド板52Aは、
図7Aに示すように、リング状の板状体である。内周整流ガイド板52Bは、鉛直方向zで内周整流ガイド板52Aよりも下側(第2の弁室部331Bの側)に配置されている。
【0059】
内周整流ガイド板52Bの上面図については図示を省略しているが、内周整流ガイド板52Aと同様に(
図7A参照)、リング状の板状体であって、内周整流ガイド板52Bの内径は、内周整流ガイド板52Aの内径R52Aと同じである。
【0060】
内周整流ガイド板52Cは、複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dのうち鉛直方向zで内周整流ガイド板52Bよりも下側に配置されている。内周整流ガイド板52Cは、
図7Bに示すように、リング状の板状体である。内周整流ガイド板52Cの内径R52Cは、内周整流ガイド板52Aの内径R52Aよりも小さい(R52C<R52A)。つまり、内周整流ガイド板52A(第1の内周整流ガイド板)においてストレーナ315の内周面からストレーナ315の内側へ突き出た長さL52Aは、内周整流ガイド板52C(第2の内周整流ガイド板)においてストレーナ315の内周面からストレーナ315の内側へ突き出た長さL52Cよりも長い(
図7A,
図7B参照)。
【0061】
さらに、内周整流ガイド板52Dは、鉛直方向zで内周整流ガイド板52Cよりも下側に配置されている。内周整流ガイド板52Dの上面図については図示を省略しているが、内周整流ガイド板52Cと同様に(
図7B参照)、リング状の板状体であって、内周整流ガイド板52Dの内径は、内周整流ガイド板52Cの内径R52Cと同じである。
【0062】
また、本実施形態において、複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dのそれぞれは、ストレーナ315の内周面の側に位置する一端部と、一端部の反対側に位置する他端部とを有し、一端部よりも他端部が第2の弁室部331Bの側に位置するように傾斜している。ここでは、複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dのそれぞれが水平面(xy面)に対して傾斜する角度のそれぞれは、同じであって、たとえば、45°である。
【0063】
[B]蒸気Fの流れについて
本実施形態の蒸気弁における蒸気Fの流れについて説明する。
【0064】
本実施形態において、流入口310に流入した蒸気Fは、ストレーナ315に形成された複数の孔316を介して、ストレーナ315の外側から内側へ流入する。ストレーナ315の内周面には、上記したように、整流ガイド50bが設けられている。
【0065】
第1の弁室部331Aにおいて、ストレーナ315の外側から内側に流入した蒸気Fは、整流ガイド50を構成する複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dの板面に沿って流れる。上述したように、複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dのそれぞれは、ストレーナ315の内周面の側に位置する一端部と、一端部の反対側に位置する他端部とを有し、一端部よりも他端部が第2の弁室部331Bの側に位置するように傾斜している(
図6参照)。このため、本実施形態では、蒸気Fは、複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dによって、第1の弁室部331Aから第2の弁室部331Bへ流れるように整流される。
【0066】
また、上述したように、内周整流ガイド板52A,52Bにおいてストレーナ315の内周面からストレーナ315の内側へ突き出た長さL52A,L52Bは、内周整流ガイド板52C,52Dにおいてストレーナ315の内周面からストレーナ315の内側へ突き出た長さL52C,L52Dよりも長い(
図6参照)。このため、内周整流ガイド板52A,52Bの板面に沿って流れた蒸気Fは、内周整流ガイド板52C,52Dの板面に沿って流れた蒸気Fよりも、ストレーナ315の内側へ流れる。その結果、ストレーナ315の内側において蒸気流れに乱れが生じないため、圧力損失を効果的に低減させることができる。
【0067】
[C]まとめ
したがって、本実施形態では、整流ガイド50bを構成する複数の内周整流ガイド板52A,52B,52C,52Dの作用によって、蒸気Fは、流入口310から流出口311へ安定して流れる。これに伴って、本実施形態においては、ストレーナ315に起因して振動及び騒音が生ずることを効果的に防止することができる。
【0068】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
たとえば、第1実施形態に示した事項と第2実施形態に示した事項との両者を含むように、整流ガイドとして外周整流ガイド板と内周整流ガイド板との両者をストレーナが備えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
50:整流ガイド、50b:整流ガイド、51A:外周整流ガイド板(第1の外周整流ガイド板)、51B:外周整流ガイド板(第2の外周整流ガイド板)、51C:外周整流ガイド板(第2の外周整流ガイド板)、52A:内周整流ガイド板(第1の内周整流ガイド板)、52B:内周整流ガイド板(第1の内周整流ガイド板)、52C:内周整流ガイド板(第2の内周整流ガイド板)、52D:内周整流ガイド板(第2の内周整流ガイド板)、100:蒸気タービン発電プラント、110:ボイラ、111:過熱器、112:再熱器、141:高圧タービン(蒸気タービン)、142:中圧タービン(蒸気タービン)、143:低圧タービン(蒸気タービン)、150:復水器、151:給水ポンプ、310:流入口、310X:管軸、311 流出口、311X:管軸、312:弁ケーシング、312K:開口、314:弁座、315:ストレーナ、316:孔、317 弁蓋、317a:ボルト、319:弁棒案内片、320:弁棒、321:弁体、330:入口管、331:弁室、331A:弁室部、331B:弁室部、332:出口管、511A:平面板部、511B:平面板部、511C:平面板部、512A:曲面板部、512B:曲面板部、512C:曲面板部、3151:フランジ、3152:ボルト、AX:中心軸、BP1:高圧タービンバイパス管、BP2:低圧タービンバイパス管、BV1:高圧タービンバイパス弁、BV2:低圧タービンバイパス弁、F:蒸気、P10:主蒸気管、P11:低温再熱蒸気管、P12:高温再熱蒸気管、P13:クロスオーバ管、V10a:主蒸気止め弁弁、V10b:蒸気加減弁、V11:逆止弁、V12a:再熱蒸気止め弁、V12b:インターセプト弁、x:第1水平方向、y:第2水平方向、z:鉛直方向。