(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】鉄道車両運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20240322BHJP
B61C 17/12 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B61L23/00 A
B61C17/12 Z
(21)【出願番号】P 2021069292
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】二神 拓也
(72)【発明者】
【氏名】浅野 渉
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博章
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀康
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162383(JP,A)
【文献】特表2019-503302(JP,A)
【文献】特開2020-164013(JP,A)
【文献】特許第3160793(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
B61C 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する鉄道車両の進行方向の支障物を検知するセンサと、
前記センサで前記支障物を検知できる最大検知距離を算出する最大検知距離算出部と、
前記鉄道車両の非常ブレーキをかけた際の停止距離を算出する停止距離算出部と、
前記最大検知距離と前記停止距離のうちの小さい距離で前記鉄道車両を前記非常ブレーキによって停止可能な車両速度である臨時制限速度を算出する臨時制限速度算出部と、
通常の走行時における前記鉄道車両の位置に応じた定時制限速度を算出する定時制限速度算出部と、
前記臨時制限速度と、前記定時制限速度と、に基づいて、前記鉄道車両の位置と目標速度の関係を表す走行パターンを算出して設定する走行パターン設定部と、
前記走行パターンに基づいて目標速度を生成し、前記目標速度を前記鉄道車両の制御装置に送信する目標速度生成部と、を備える鉄道車両運転制御装置。
【請求項2】
前記最大検知距離算出部は、外部から取得した所定の気象情報に基づいて前記最大検知距離を算出する、請求項1に記載の鉄道車両運転制御装置。
【請求項3】
前記センサは、前記鉄道車両の進行方向の軌道上を含む領域を撮影する撮影装置であり、
前記最大検知距離算出部は、前記撮影装置による撮影画像に基づいて、前記最大検知距離を算出する、請求項1に記載の鉄道車両運転制御装置。
【請求項4】
前記最大検知距離算出部は、前記センサによる自己診断結果に基づいて、前記最大検知距離を算出する、請求項1に記載の鉄道車両運転制御装置。
【請求項5】
前記センサは、検知した前記支障物の移動速度を計測し、
前記臨時制限速度算出部は、前記鉄道車両と前記支障物との相対速度に基づいて前記臨時制限速度を算出する、請求項1に記載の鉄道車両運転制御装置。
【請求項6】
前記センサは、検知した前記支障物の種別を認識し、
前記臨時制限速度算出部は、前記支障物の種別に応じて前記臨時制限速度を算出する、請求項1に記載の鉄道車両運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道管理者は、列車や電車等の鉄道車両の運行に際して、鉄道車両の安全を確保するために、進路上の支障物の有無を確認する必要がある。そのために、例えば、走行中の鉄道車両の前方の支障物をセンサ(例えばカメラ)によって検知する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3244870号公報
【文献】特開2019-84881号公報
【文献】特開2004-357399号公報
【文献】特許第3160793号公報
【文献】特開2020-62899号公報
【文献】特表2019-537534号公報
【文献】特開2000-264209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の手法では、センサによる支障物の最大検知距離が地理的条件や環境的条件(気象条件など)などによって変わる。したがって、例えば、センサによる支障物の最大検知距離が短いときは、走行速度を遅くしないと、支障物を検知した後に制動を開始したのでは鉄道車両とその支障物との衝突を回避できない場合が発生しえる。しかしながら、従来技術では、このような点について対策ができていない。
【0005】
そこで、本実施形態の課題は、センサによる支障物の最大検知距離に応じて鉄道車両の走行速度を調整することができる鉄道車両運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の鉄道車両運転制御装置は、走行する鉄道車両の進行方向の支障物を検知するセンサと、前記センサで前記支障物を検知できる最大検知距離を算出する最大検知距離算出部と、前記鉄道車両の非常ブレーキをかけた際の停止距離を算出する停止距離算出部と、前記最大検知距離と前記停止距離のうちの小さい距離で前記鉄道車両を前記非常ブレーキによって停止可能な車両速度である臨時制限速度を算出する臨時制限速度算出部と、通常の走行時における前記鉄道車両の位置に応じた定時制限速度を算出する定時制限速度算出部と、前記臨時制限速度と、前記定時制限速度と、に基づいて、前記鉄道車両の位置と目標速度の関係を表す走行パターンを算出して設定する走行パターン設定部と、前記走行パターンに基づいて目標速度を生成し、前記目標速度を前記鉄道車両の制御装置に送信する目標速度生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の鉄道車両の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の速度演算装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態の走行支障物検知センサによる撮影画像の例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の鉄道車両運転制御装置による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照して、実施形態の鉄道車両運転制御装置について説明する。実施形態の鉄道車両運転制御装置の理解を容易にするために、まず、従来技術についてあらためて説明する。
【0009】
(従来技術)
鉄道管理者は、列車や電車等の鉄道車両の運行に際して、鉄道車両の安全を確保するために、進路上の支障物の有無を確認する必要がある。例えば、駅のホームからの旅客や荷物の転落や、踏切での自動車や自転車の立往生等によって、鉄道車両の進路に支障物が発生し易い区間には、例えば、以下のものが設置されていることがある。
・支障物の進入を防止する駅ホーム柵や踏切遮断器
・支障物の存在を検知する感圧式マットや支障物の画像を認識する画像認識装置等の駅ホーム転落検知装置
・踏切内の支障物の存在を検知する光学式やループコイル式等の踏切支障物検知装置
【0010】
また、鉄道車両の進路に支障物が発生し易い区間には、列車や駅等の非常事態の発生を通知するための非常停止警報ボタンが設置されていることがある。
【0011】
しかしながら、これらの設備は、鉄道車両の進路のうち、支障物が発生し易い箇所への設置にとどまり、鉄道車両の進路全体を網羅することは困難である。また、これらの設備は、地上設備と車上設備とが連携して、支障物を検知する必要があるため、システムの複雑化や肥大化を招くことが懸念される。そのため、走行中の鉄道車両の前方の支障物を当該鉄道車両に搭載されたセンサ(例えばカメラ)によって検知する仕組みが開発されている。
【0012】
ところで、鉄道車両は、運転士や上記の設備が支障物を検知して鉄道車両を減速させる行動に移るまでに進む空走距離と、鉄道車両が減速を開始してから停止するまでの制動距離と、を足した停止距離より手前において支障物を検知しなければ、支障物に対する衝突を回避できない可能性が高い。
【0013】
また、鉄道車両は、自動車の衝突回避システムと比較すると、制動距離が長く、また、レール上を走行するという制約によって操舵によって支障物を回避できない、という違いがある。したがって、鉄道車両には、進路上に存在する支障物を遠方から高精度に検知することが求められている。
【0014】
しかしながら、センサ(例えばカメラ)は地理的条件や環境的条件(気象条件など)などにより、検知可能なエリア(距離)の大きさが走行状態に応じて時々刻々変化する。検知可能距離が停止距離より短いという条件下では、支障物に対する衝突を回避できない可能性が高い。しかし、従来技術では、単に区間毎に予め設定された制限速度以下で走行するという制約のみなので、実際に支障物を検知したとしても、衝突を回避できる速度で走行できていない可能性がある。
【0015】
そこで、以下では、センサによる支障物の最大検知距離に応じて鉄道車両の走行速度を調整することができる技術について説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、実施形態の鉄道車両RVの概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の鉄道車両RVは、走行支障物検知センサ10と、位置・速度センサ20と、速度演算装置30と、駆動・制動制御装置40と、を含む。
【0017】
走行支障物検知センサ10は、走行する鉄道車両RVの進行方向の支障物を検知する装置の一例である。なお、走行支障物検知センサ10が支障物を検知する範囲は、軌道上に制限してもよい。
【0018】
位置・速度センサ20は、鉄道車両RVの位置、走行速度を計測する装置の一例である。
【0019】
速度演算装置30は、走行支障物検知センサ10による支障物の検知結果や検知可能距離、位置・速度センサ20によって得られる鉄道車両RVの位置、走行速度などに基づいて目標速度を算出する装置の一例である。
【0020】
駆動・制動制御装置40は、目標速度などに基づいて力行、惰行、制動により鉄道車両RVの走行速度などを制御する装置の一例である。
【0021】
図2は、実施形態の速度演算装置30の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、速度演算装置30は、最大検知距離算出部301、停止距離算出部302、臨時制限速度算出部303、定時制限速度算出部304、走行パターン設定部305、目標速度生成部306、および記憶部307を有する。各部301~306のうち一部若しくは全ては、鉄道車両RVが有するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが記憶部307に記憶されるソフトウェアを実行することによって実現される。
【0022】
また、各部301~306のうち一部若しくは全ては、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路基板であるハードウェアによって実現されても良い。また、各部301~306は、プロセッサによって実行されるソフトウェア、およびハードウェアの協働によって実現されても良い。
【0023】
記憶部307は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SD(Secure Digital)カード等の不揮発性の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶媒体を含む。そして、記憶部307は、鉄道車両RVが有するプロセッサが実行するプログラム等の各種情報を記憶する。
【0024】
最大検知距離算出部301は、走行支障物検知センサ10で鉄道車両RVの進行方向について支障物の検知が可能な最大検知距離を適時算出する。走行支障物検知センサ10は、カメラ画像認識センサ(撮影装置)、ステレオカメラセンサ、ミリ波レーダーセンサ、3D LiDAR(Light Detection And Ranging)センサ等、センサの方式は問わない。ここで、
図3は、実施形態の走行支障物検知センサ10による撮影画像の例を模式的に示す図である。走行支障物検知センサ10がカメラ画像認識センサの場合、
図3に示すような画像データを取得できる。
【0025】
走行支障物検知センサ10が可視光のカメラ映像を用いたセンサの場合、日照環境により検知性能が低下することがある。例えば、カメラ画角内に太陽が写り込んだ場合に、カメラ画像にハレーション(白飛び)が発生したり、画像全体の輝度レベルを調整するために太陽以外の部分で黒つぶれが発生したりする。また、夜間やトンネル内等での低照度の環境下では、鉄道車両RVの前照灯の届く範囲でしか正確な検知ができない場合がある。また、走行支障物検知センサ10の種類によらず、雲、雨・雪・霧・気温・湿度・風・竜巻等の気象条件により、検知性能が低下する場合がある。
【0026】
これらの状況を踏まえて、最大検知距離算出部301は、外部から取得した所定の気象情報に基づいて、走行支障物検知センサ10の最大検知距離を適時算出する。方法としては、例えば、走行支障物検知センサ10の実測データを分析して最大検知距離を算出する方法や、日照条件や環境条件を測定し、それらの条件と走行支障物検知センサ10の最大検知距離の関係を予めデータベースとして記録部307に保存して算出する方法がある。例えば、特開2019-84881号公報(特許文献2)にあるような可視光カメラの映像解析技術により、線路軌道の映像からレール領域の連続性を分析し、遠方で雨や霧等により可視化できない距離を判別し、これを最大検知距離とする。
【0027】
また、カーブ部の内側に生い茂る草木の成長により、一時的な隠蔽によって見通しが悪くなる場合がある。それ自体は、走行の支障とはならないものの、見通し不良によって走行支障物検知センサ10で検知できる距離が小さくなる。この場合も、上述の特許文献2の技術のように、可視光カメラの映像解析の場合に、画像上のレール領域の連続性の分析により、分断された位置までを最大検知距離として算出できる。
【0028】
一方で、走行支障物検知センサ10自身の不具合により、検知性能が低下する場合がある。アクティブセンサの場合には、出力信号の低下や、センサの汚れ等による感度低下や、外部ノイズによる性能低下等について、自己診断機能を搭載している場合がある。その場合、最大検知距離算出部301は、走行支障物検知センサ10による自己診断結果に基づいて、最大検知距離を算出する。
【0029】
停止距離算出部302は、位置・速度センサ20から得られた自車速度などに基づいて非常ブレーキをかけた際の停止距離を算出する。このとき、非常ブレーキ指令が出てブレーキがかかるまでの空走距離も考慮し、また、実際の車体重量やブレーキ特性、レール面の状態を考慮した制動距離から、鉄道車両RVが確実に停止可能な静止距離を適時算出する。
【0030】
臨時制限速度算出部303は、最大検知距離算出部301で算出された最大検知距離値Ldと、停止距離算出部302で算出された停止距離値Lsとから、走行速度の上限値、つまり、鉄道車両RVを非常ブレーキによって停止可能な車両速度である臨時制限速度を算出する。通常の走行時は、Ld>Lsとなり、鉄道車両RVが停止できる距離以上の遠方を検知可能な状態で走行している。
【0031】
一方で、Ld<Lsとなった場合には、走行支障物検知センサ10が検知できる全ての距離において鉄道車両RVが停止できるとは限らないことになる。そこで、支障物との接触を避ける、もしくは被害を低減できる車両速度を算出する。例えば、支障物との接触を避けるようするためには、Ld>Lsとなる速度まで制限する。これを適時、臨時制限速度として算出する。
【0032】
しかし、支障物が鉄道車両RVに接近してくる場合には、停止距離値Lsで鉄道車両RVが停止できたとしても、支障物との接触が避けられない場合がある。走行支障物検知センサ10が、検知した支障物の移動速度も計測できる場合には、支障物の相対速度(相対接近速度)も考慮して、臨時制限速度を通常より小さくして、接触被害を低減させることもできる。
【0033】
また、支障物が鉄道車両RVから遠ざかる場合には、支障物の相対速度(相対離反速度)も考慮して、臨時制限速度を通常より大きくすることもできる。また、検知した支障物の移動方向が、軌道内から退出していく方向の場合には、臨時速度制限をかけないという制御も可能である。
【0034】
また、走行支障物検知センサ10が、検知した支障物の種別を認識できる場合、検知した支障物の種別に応じて臨時制限速度を算出する。支障物の種類が野生動物等で警笛等により退去する可能性が高い場合には、例えば、臨時速度制限しないようにしてもよい。また、支障物の種類が沿線の火災であった場合には、状況によっては鉄道車両RVを停止させずに通過走行させた方が被害を低減できる場合もあり、臨時速度制限しないようにしてもよい。
【0035】
定時制限速度算出部304は、位置・速度センサ20から得られた通常の走行時における自車両(鉄道車両RV)の位置情報に基づき、予め決められた当該区間の制限速度(定時制限速度)を算出する。
【0036】
また、走行支障物検知センサ10が鉄道車両RVの進行方向の軌道上を含む領域を撮影する撮影装置の場合、最大検知距離算出部301は、撮影装置による撮影画像に基づいて、最大検知距離を算出する。例えば、自車両の走行位置に応じて発生するカーブ部の構造物(駅ホーム、柱、分電盤等の周辺設備)による隠蔽や、上り勾配による見通し不良などにより、撮影装置による検知性能が低下する。そして、自車両の種別や位置、進行方向等により、この検知性能の低下を予め把握できる場合も多く、これらを考慮した定時制限速度をデータベースとして記録部307に保存しておいて、自車両の位置情報を基に参照するなどとしてもよい。
【0037】
走行パターン設定部305は、臨時制限速度と、定時制限速度と、に基づいて、鉄道車両RVの位置と目標速度の関係を表す走行パターンを算出して設定する。例えば、走行パターン設定部305は、次に停車する駅到着時刻と現時刻間の車両走行計画として、鉄道車両RVの位置と目標速度の関係を表す走行パターンを算出して設定する。例えば、適時変化する臨時制限速度を加味して、特開2004-357399号公報(特許文献3)や特許第3160793号公報(特許文献4)等の従来技術を用いて走行パターンを生成する。
【0038】
目標速度生成部306は、鉄道車両RVの位置と走行パターンに基づいて目標速度を生成し、目標速度を駆動・制動制御装置40に送信する。
【0039】
駆動・制動制御装置40は、公知の帰還(フィードバック)制御技術により目標速度と実際の車両速度とを比較して、制御系安定化のための補償演算を行い、推力指令を定めて、推力制御装置に与える。その結果、鉄道車両RVは走行パターンに沿って駅間を走行し、次駅に目標時刻通りに到着するができる。
【0040】
図4は、実施形態の鉄道車両運転制御装置1による処理を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、走行支障物検知センサ10は、走行する鉄道車両RVの進行方向の支障物を検知する。
【0041】
次に、ステップS2において、最大検知距離算出部301は、走行支障物検知センサ10で鉄道車両RVの進行方向について支障物の検知が可能な最大検知距離を算出する。
【0042】
次に、ステップS3において、停止距離算出部302は、位置・速度センサ20から得られた自車速度などに基づいて非常ブレーキをかけた際の停止距離を算出する。
【0043】
次に、ステップS4において、臨時制限速度算出部303は、最大検知距離値と、停止距離値と、に基づいて、鉄道車両RVを非常ブレーキによって停止可能な臨時制限速度を算出する。
【0044】
次に、ステップS5において、定時制限速度算出部304は、位置・速度センサ20から得られた通常の走行時における鉄道車両RVの位置情報に基づき、定時制限速度を算出する。
【0045】
次に、ステップS6において、走行パターン設定部305は、臨時制限速度と、定時制限速度と、に基づいて、鉄道車両RVの位置と目標速度の関係を表す走行パターンを算出して設定する。
【0046】
次に、ステップS7において、目標速度生成部306は、鉄道車両RVの位置と走行パターンに基づいて目標速度を生成する。
【0047】
次に、ステップS8において、駆動・制動制御装置40は、目標速度などに基づいて力行、惰行、制動により鉄道車両RVの速度などを制御する。
【0048】
このように、本実施形態の鉄道車両RVによれば、走行支障物検知センサ10による支障物の最大検知距離に応じて鉄道車両RVの走行速度を調整することができる。つまり、鉄道車両RVに搭載した走行支障物検知センサ10の適時変化する検知性能を考慮した、より安全な鉄道車両RVの自動運転制御が可能となる。
【0049】
また、気象情報や、走行支障物検知センサ10による撮影画像や、走行支障物検知センサ10による自己診断結果などに基づいて、最大検知距離をより高精度に算出することができる。
【0050】
また、支障物の移動速度や種別などに基づいて、臨時制限速度をより高精度に算出することができる。
【0051】
本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0052】
例えば、上述の実施形態では、本発明を、目標速度に実際の車両速度を追従させる帰還制御による速度制御技術(自動運転技術)に適用する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、本発明を、目標速度を車上の運転台に表示して運転手の参考に供するガイダンス装置に適用することもできる。
【0053】
また、自車両のデータだけでなく、同じ軌道を走行した他の鉄道車両のデータを使用して各種演算等を行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…鉄道車両運転制御装置、10…走行支障物検知センサ、20…位置・速度センサ、30…速度演算装置、40…駆動・制動制御装置、301…最大検知距離算出部、302…停止距離算出部、303…臨時制限速度算出部、304…定時制限速度算出部、305…走行パターン設定部、306…目標速度生成部、307…記憶部