(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】衝突防止距離構造を備えたレチクルポッド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240322BHJP
G03F 1/66 20120101ALI20240322BHJP
B65D 85/86 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
H01L21/68 T
G03F1/66
B65D85/86 400
(21)【出願番号】P 2021118894
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2021-07-19
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506017182
【氏名又は名称】家登精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUDENG PRECISION INDUSTRIAL CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】邱 銘乾
(72)【発明者】
【氏名】荘 家和
(72)【発明者】
【氏名】李 怡萱
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 星閔
(72)【発明者】
【氏名】薛 新民
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-27949(JP,A)
【文献】特開2013-239643(JP,A)
【文献】特表2008-533512(JP,A)
【文献】特開2006-103795(JP,A)
【文献】特開2009-43862(JP,A)
【文献】特開2000-208603(JP,A)
【文献】国際公開第2007/074757(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/096759(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0155598(US,A1)
【文献】特表2008-531416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
G03F 1/66
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクルを受け入れるレチクルポッドであって、前記レチクルポッドは、
基部と、
前記基部上に設けられていて前記レチクルを支持する複数の支持装置とを有し、第1の距離が前記レチクルの底面の周辺領域と前記基部の上方に向いた頂面との間に定められ、第2の距離が前記レチクルの底面の中央領域と前記基部の前記上方に向いた頂面との間に定められ、前記中央領域は、前記周辺領域によって包囲され、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも長
く、前記基部の前記上方に向いた頂面は撓み曲面を有し、この撓み曲面は機械加工の結果物である、レチクルポッド。
【請求項2】
前記基部は、前記上方に向いた頂面を包囲した支持面を有し、前記支持面は、環状平面である、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項3】
前記第1の距離は、0.18mmから0.30mmまでの範囲にある、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項4】
前記第2の距離は、1.50mmを超える、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項5】
前記基部の前記上方に向いた頂面は、前記レチクルに向き、0.06mm未満の平面度を有する、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項6】
前記第1の距離は、前記レチクルの前記底面の前記周辺領域と前記基部の前記上方に向いた頂面との間の最も短い距離であり、前記第2の距離は、前記レチクルの前記底面の前記中央領域と前記基部の前記上方に向いた頂面との間の最も短い距離である、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項7】
前記レチクルの前記底面の前記中央領域は、少なくとも、前記レチクルのパターン領域を含む、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項8】
前記周辺領域は、外縁および内縁を有し、前記周辺領域は、前記外縁と前記内縁との間に延び、5mm未満の距離が前記外縁と前記内縁との間に定められている、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項9】
前記撓み曲面は連続的な面である、請求項1記載のレチクルポッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容(本発明)は、レチクルポッドであって、レチクルポッド内のレチクルがレチクルポッドの基部に当たりまたはこれに掻き傷をつけるのを阻止することができかつレチクルを保護することができるレチクルポッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来型EUV(極紫外線)プロセス中、運搬中であったり貯蔵中であったりするレチクルをレチクルポッドで保護しなければならない。と言うのは、衝突または摩擦に起因した結果として生じた粒子がレチクルの清浄度に悪影響を及ぼして最終製品の品質を損なうからである。
【0003】
レチクルを汚染しないよう保護するため、レチクルポッドは、レチクルポッドにこすれ当たったりまたはこの中で動いたりするのを阻止するようレチクルを定位置にしっかりと固定しなければならない。この目的のため、レチクルとレチクルポッドとの間の接触領域は、レチクルポッドがレチクルポッド内の固定要素または支持要素と接触しまたはこれらにこすれ当たるのを阻止するよう最小限に抑えられなければならない。さらに、レチクルとレチクルポッドとの間の適切な距離がレチクルとレチクルポッドとの接触を防ぎ、それによりレチクルを保護するよう維持されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、レチクルポッドにレチクルポッドの基部とレチクルポッド内に受け入れられたレチクルとの間に適切な距離を提供し、それによりレチクルがレチクルと基部との相互作用中(例えば、ロボットアームを用いてレチクルを持ち上げまたは置くこと)損傷されまたは汚染されるのを阻止することが必要不可欠である。
【0005】
本発明の目的は、レチクルポッドであって、レチクルポッド内のレチクルがレチクルポッドの基部に当たりまたはこれに掻き傷をつけるのを阻止することができかつレチクルを保護することができるレチクルポッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的および他の目的を達成するため、本発明は、レチクルポッドであって、基部と、基部上に設けられていてレチクルを支持する複数の支持装置とを有し、第1の距離がレチクルの底面の周辺領域と基部の上方に向いた頂面との間に定められ、第2の距離が基部の底面の中央領域と基部の上方に向いた頂面との間に定められ、中央領域は、周辺領域によって包囲され、第2の距離は、第1の距離よりも長いことを特徴とするレチクルポッドを提供する。
【0007】
好ましくは、基部は、上方に向いた頂面を包囲した支持面を有し、支持面は、環状平面である。
【0008】
好ましくは、第1の距離は、0.18mmから0.30mmまでの範囲にある。
【0009】
好ましくは、第2の距離は、1.50mmを超える。
【0010】
好ましくは、基部の上方に向いた頂面は、レチクルに向き、0.06mm未満の平面度を有する。
【0011】
好ましくは、第1の距離は、レチクルの底面の周辺領域と基部の上方に向いた頂面との間の最も短い距離であり、第2の距離は、レチクルの底面の中央領域と基部の上方に向いた頂面との間の最も短い距離である。
【0012】
好ましくは、レチクルの底面の中央領域は、少なくとも、レチクルのパターン領域を含む。
【0013】
好ましくは、基部の上方に向いた頂面は、撓み曲面を有する。
【0014】
好ましくは、周辺領域は、外縁および内縁を有し、周辺領域は、外縁と内縁との間に延び、5mm未満の距離が外縁と内縁との間に定められる。
【0015】
本発明は、非限定的かつ非排他的な実施形態によって示された図面に示されており、これについて以下において説明する。図面は、縮尺通りには描かれていないが、本発明の構造的特徴および原理を開示することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のレチクルポッドの分解組立図である。
【
図2】本発明のレチクルポッドの基部上に設けられたレチクルを示す斜視図である。
【
図3】本発明のレチクルポッドの部分断面側面図である。
【
図4】本発明に従って基部表面が撓みを受けているレチクルポッドの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、特定の実施形態によって示された添付の図面によって描かれており、これについて以下において説明する。しかしながら、本発明においてクレーム請求されている発明内容は、種々の仕方で実施でき、それゆえ、本発明の範囲に含まれまたは本開示内容に基づいてクレーム請求されている発明内容は、本発明の特定の実施形態には限定されない。本発明の特定の実施形態は、例示目的に役立つに過ぎない。同様に、本開示内容の範囲に含まれまたは本開示内容によってクレーム請求されている内容の合理的に広い範囲を定めることを目的としている。さらに、例えば、本開示内容によってクレーム請求されている発明内容は、方法、装置またはシステムによって具体化できる。したがって、特定の実施形態が、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの任意の組み合わせ(既存していないソフトウェア)の形態で提供できる。
【0018】
本明細書で用いられている「一実施形態」という表現は、必ずしも、同一の特定の実施形態を指してはいない。さらに、本明細書に用いられる「他の(2、3の/幾つか)の実施形態」という表現は、必ずしも、互いに異なる特定の実施形態を指してはいない。これら表現は、例えば、クレーム請求されている発明内容が特定の実施形態の全てまたは一部の組み合わせを含むことができるということを意図している。
【0019】
図1を参照すると、本発明のレチクルポッドの分解組立図が示されている。この図は、EUVレチクルポッドの内側ポッドを示しているが、その外側ポッドを示していない。本発明のレチクルポッド100は、レチクル1を受け入れる。レチクルポッド100は、基部10および基部10上に設けられた複数の支持装置20を有する。支持装置20は各々、支持ピン21および2つの位置決め要素22を有する。支持ピン21は、レチクル1を支持する。位置決め要素22は、支持状態でレチクル1を基部10に局限する。
【0020】
一実施形態では、支持装置20の支持高さは、第1の距離d1がレチクル1の底面と基部10の上方に向いた頂面11との間に定めることができるような仕方で選択される(
図3参照)。しかしながら、機械加工の結果として、基部10の上方に向いた頂面11が撓みによって不利益を受けるので、第1の距離d1よりも長い第2の距離d2(
図4に示されている)が基部10とレチクル1の底面との間に定められ、この第2の距離は、位置がレチクル1上に定められた周辺領域13によって包囲されている中央領域15に対応している。第1の距離d1および第2の距離d2は、それぞれ、基部10の頂面11とレチクル1の周辺領域13との間の最も短い距離および基部10の頂面11と周辺領域13によって包囲されている領域(レチクル1の中央領域15)との間の最も短い距離である。
【0021】
本発明のレチクルポッド100は、カバー30をさらに有する。カバー30は、基部10に結合された状態でレチクル1を覆うようになっている。受け入れ空間が基部10とカバー30との間にこれらと接触関係をなして形成されており、この受け入れ空間は、レチクル1を受け入れるようになっている。追加の気密封止手段が受け入れ空間をその外部流体環境から隔絶し、それにより受け入れ空間とその外部流体環境との間のガス交換を阻止するためにレチクルポッド100に利用されるのが良い。したがって、本発明のレチクルポッド100は、レチクル1が汚染および衝突によって引き起こされる損傷が起こらないよう保護する。レチクル1と基部10との関係を本明細書において詳細に説明するが、カバー30は、そうではない。
【0022】
図2を参照すると、本発明のレチクルポッドの基部上に設けられたレチクルを示す斜視図が示されている。
図3を参照すると、本発明のレチクルポッドの断面側面図が示されている。本発明のレチクルポッド100の基部10は、上方に向いた頂面11(以下、頂面11という)および頂面11を包囲した少なくとも支持面12を有する。支持面12は、カバー30の下方に向いた環状面(図示せず)と接触状態にある環状平面である。溝が支持面12と頂面11との間に形成されている。支持装置20は、頂面11と支持面12との間に設けられ、この支持装置は、頂面11を包囲するよう配置されている。この実施形態では、各支持装置20に関し、支持ピン21は、2つの位置決め要素22相互間に設けられている。レチクル1の4つのコーナー部は、位置決め要素22によって定位置に位置決めされている。支持ピン21により、レチクル1が基部10上に平らな状態に位置することができる。第1の距離d1は、レチクル1の底面と基部10の頂面11との間に定められている。支持装置20の支持高さは、レチクル1の底面の一部(レチクル1の底面のこの一部は、支持装置20の近くに位置する)と基部10の頂面11との間の垂直距離が第1の距離d1と同じほどであるような仕方で選択されている。
図2を参照すると、レチクル1の一領域が位置に関して第1の距離d1に相当し、この領域は、レチクル1の包囲周囲のところに位置する実質的に周辺領域13である。この実施形態では、レチクル1の底面(底面は、位置が周辺領域13に対応している)と基部10の頂部11との間に定められた第1の距離d1は、0.18mmから0.30mmまでの範囲にある。周辺領域13は、レチクル1の縁からレチクル1の中央領域まで延び、この周辺領域は、支持装置20の実質的に近くに位置するが、周辺領域13は、必ずしも、長方形のリングの形をしているわけではない。一実施形態では、周辺領域13の外縁131と内縁132との間の距離は、5mm未満である。
【0023】
図4を参照すると、本発明に従って機械加工のゆえに基部表面が撓みを受けるレチクルポッドの略図が示されている。一般に、基部10の頂面11は、
図2に示されているように見た目に平坦である。実際には、基部10の頂面11は、加工プロセス中に低周波数のゆえに撓みを受ける。したがって、基部10の頂面11は、
図3に示されているように下方に向いた凹面14である。レチクル1の底面の中央領域15と基部10の頂面11との間の垂直距離(第2の距離d2)は、レチクル1の底面の周辺領域13と基部10の頂面11との間の垂直距離(第1の距離d1)よりも僅かに長い。レチクル1と基部10の頂面11との間に定められた第2の距離d2は、レチクル1の頂面の中央領域15と基部10の下方に向いた凹面14との間に生じる。レチクル1の一領域が位置に関して第2の距離d2に対応しており、この領域は、周辺領域13によって包囲されている。一実施形態では、支持装置20の高さは、第2の距離d2が1.50mmを超え、すなわち第1の距離d1よりも長いような仕方で選択され、それゆえ、レチクル1は、ロボットアームにより基部10から持ち上げられまたはこの上に置かれている間、十分に保護されるが、その理由は、レチクル1と基部10との間の第1の距離d1および第2の距離d2の存在下において、基部10がレチクル1に当たりまたはこれに掻き傷をつける恐れが低いことにある。
【0024】
位置が第1の距離d1に対応した周辺領域13は、必ずしも、位置が第2の距離d2に対応した中央領域15に隣接して位置するわけではない。換言すると、位置が第2の距離d2に対応した中央領域15は、周辺領域13によって包囲された領域全体よりも小さいのが良い。例えば、位置が第2の距離d2に対応した中央領域15は、少なくとも、レチクル1上のパターン領域を含むのが良い。
【0025】
好ましい実施形態では、基部10の頂面(例えば、
図3に示された上方に向いた頂面11または
図4に示された下方に向いた凹面14)は、レチクル1の底面に向き、0.06mm未満の平面度を有する。被加工物の平面度は、台湾国特許出願第110101422号明細書に開示されているように、理想的な平面(例えば、完全平面)からの被加工物の表面の実際の表面のずれの尺度である。レチクル1が第1の距離d1と第2の距離d2との上述の関係を達成するよう基部10と接触状態にあるとき、基部10の上方に向いた頂面11の平面度は、0.06mm未満であり、それによりレチクル1と基部10の衝突の恐れが低くなる。
【0026】
本発明のレチクルポッドは、上述の利点を有する。レチクルと基部の中央領域相互間に定められた第2の距離は、レチクルおよび基部の周辺領域の底面相互間に定められた第1の距離よりも長く、それによりレチクルがレチクルと基部の相互作用中に当てられまたは掻き傷をつけられる恐れが低くなり、それによりレチクルが保護される。第1の距離および第2の距離により、レチクルを基部から持ち上げて離すプロセスは、もしそのように構成していなければレチクルの底面への粒子の付着を生じさせる深刻な乱流をトリガする恐れが低くなり、それによりレチクルのパターン領域が汚染しないよう保護される。
【0027】
レチクル1の底面と基部10の頂面11との間の上述の垂直距離の測定は、公知の手段によって達成できる。例えば、第1の距離d1の測定では、レチクル1の周辺領域13の範囲を定め、頂面11の領域上の測定点を定め(この場合、頂面1の領域は、位置が、周辺領域13と一致する)、各測定点とレチクル1の底面との間の垂直距離を既知の手段によって定め、そして最終的に、レチクル1の周辺領域13と基部10の頂面11との間の第1の距離d1をこのようにして定められた垂直距離のうちの最も短い1つに設定する。同様に、第2の距離d2の測定では、レチクル1の周辺領域13によって包囲された中央領域15として(例えば、少なくともレチクルのパターン領域を含む)を定め、次に頂面11の領域上の測定点(例えば、35個)を定め(この場合、頂面11の領域は、位置が中央領域15に一致している)、各測定点とレチクル1の底面との間の垂直距離を既知の手段によって定め、そして最後に、レチクル1の中央領域15と基部10の頂面11との間の第2の距離d2をこのようにして定められた垂直距離のうちの最も短い1つに設定する。
【0028】
本発明を細部にわたって上述したが、特定の変更および改造を本発明の特許請求の範囲の記載に対して行うことができる。上述の実施形態は、例示の目的に役立つに過ぎず、本発明を限定するものではなく、したがって、上述の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲またはその均等範囲から逸脱することなく、改造可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 レチクル
10 基部
11 上方に向いた頂面
12 支持面
13 周辺領域
14 下方に向いた凹面
15 中央領域
20 支持装置
21 支持ピン
22 位置決め要素
30 カバー
d1 第1の距離
d2 第2の距離