IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

特許7458395イソキサントフモール含有組成物及びキサントフモール含有組成物、それらの製造方法並びに苦味を低減する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】イソキサントフモール含有組成物及びキサントフモール含有組成物、それらの製造方法並びに苦味を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20240322BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240322BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240322BHJP
   A23L 27/00 20160101ALN20240322BHJP
   A23L 27/20 20160101ALN20240322BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L27/00 Z
A23L27/20 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021526913
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024121
(87)【国際公開番号】W WO2020262232
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019122009
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中原 光一
(72)【発明者】
【氏名】植村 真秀
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝彰
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/150501(WO,A1)
【文献】特開平07-250644(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150499(WO,A1)
【文献】特開2002-027968(JP,A)
【文献】特開平11-243940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソキサントフモールとエチルグリコシドとを含み、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400であるイソキサントフモール含有組成物。
【請求項2】
組成物が飲料である請求項1に記載のイソキサントフモール含有組成物。
【請求項3】
イソキサントフモールの濃度が20~200ppmである請求項2に記載のイソキサントフモール含有組成物。
【請求項4】
エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmである請求項2又は3に記載のイソキサントフモール含有組成物。
【請求項5】
エチルグリコシドがエチルグルコシドである請求項1~4のいずれか一項に記載のイソキサントフモール含有組成物。
【請求項6】
キサントフモールとエチルグリコシドとを含み、キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200であるキサントフモール含有組成物。
【請求項7】
組成物が飲料である請求項6に記載のキサントフモール含有組成物。
【請求項8】
キサントフモールの濃度が25~200ppmである請求項7に記載のキサントフモール含有組成物。
【請求項9】
エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmである請求項7又は8に記載のキサントフモール含有組成物。
【請求項10】
エチルグリコシドがエチルグルコシドである請求項6~9のいずれか一項に記載のキサントフモール含有組成物。
【請求項11】
イソキサントフモールとエチルグリコシドとを含むイソキサントフモール含有組成物の製造方法であって、組成物中のイソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含むイソキサントフモール含有組成物の製造方法。
【請求項12】
イソキサントフモールの苦味を低減する方法であって、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるように、イソキサントフモール及びエチルグリコシドを混合する工程を含む、イソキサントフモールの苦味を低減する方法。
【請求項13】
キサントフモールとエチルグリコシドとを含むキサントフモール含有組成物の製造方法であって、組成物中のキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含むキサントフモール含有組成物の製造方法。
【請求項14】
キサントフモールの苦味を低減する方法であって、キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるように、キサントフモール及びエチルグリコシドを混合する工程を含む、キサントフモールの苦味を低減する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソキサントフモール含有組成物及びその製造方法に関する。また、本発明はイソキサントフモールの苦味を低減する方法に関する。また、本発明は、キサントフモール含有組成物及びその製造方法に関する。さらに、本発明はキサントフモールの苦味を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キサントフモールは、ビールの原料に使用されるアサ科植物のホップ(学名:Humulus lupulus)に含まれるポリフェノールである。イソキサントフモールは、ポリフェノールの一種であり、ビールに含まれる成分である。
【0003】
特許文献1には、キサントフモールが血中中性脂肪値や血糖値を低下させる作用を有することが記載されている。またキサントフモールの作用として、発がん抑制作用、抗炎症作用、抗肥満作用、骨吸収抑制作用等が報告されている。特許文献2には、イソキサントフモールが、炎症刺激を受けたミクログリア細胞の炎症を抑制したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-306800号公報
【文献】特開2018-095580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、イソキサントフモール及びキサントフモールが有用な生理作用を有することが報告されている。しかしながら、イソキサントフモールは苦味が強く、これを含む経口用組成物、特にイソキサントフモールを比較的多く含む飲料においては、イソキサントフモールに起因する苦味(イソキサントフモールに由来する苦味)が顕在化し、飲料の飲みやすさが損なわれることがある。キサントフモールも苦味が強く、その苦味を低減することができる技術が望まれている。
【0006】
本発明は、イソキサントフモールに起因する苦味が低減されたイソキサントフモール含有組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、キサントフモールに起因する苦味が低減されたキサントフモール含有組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、イソキサントフモールの苦味を低減する方法及びキサントフモールの苦味を低減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イソキサントフモールを含有する組成物において、イソキサントフモールに対して所定の割合でエチルグリコシドを含有させることによって、イソキサントフモールに起因する苦味を低減させることができることを見出した。また、キサントフモールを含有する組成物において、キサントフモールに対して所定の割合でエチルグリコシドを含有させることによって、キサントフモールに起因する苦味を低減させることができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の組成物等に関する。
〔1〕イソキサントフモールとエチルグリコシドとを含み、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400であるイソキサントフモール含有組成物。
〔2〕組成物が飲料である上記〔1〕に記載のイソキサントフモール含有組成物。
〔3〕イソキサントフモールの濃度が20~200ppmである上記〔2〕に記載のイソキサントフモール含有組成物。
〔4〕エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmである上記〔2〕又は〔3〕に記載のイソキサントフモール含有組成物。
〔5〕エチルグリコシドがエチルグルコシドである上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のイソキサントフモール含有組成物。
〔6〕キサントフモールとエチルグリコシドとを含み、キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200であるキサントフモール含有組成物。
〔7〕組成物が飲料である上記〔6〕に記載のキサントフモール含有組成物。
〔8〕キサントフモールの濃度が25~200ppmである上記〔7〕に記載のキサントフモール含有組成物。
〔9〕エチルグリコシドの濃度が50~20000ppmである上記〔7〕又は〔8〕に記載のキサントフモール含有組成物。
〔10〕エチルグリコシドがエチルグルコシドである上記〔6〕~〔9〕のいずれかに記載のキサントフモール含有組成物。
〔11〕イソキサントフモールとエチルグリコシドとを含むイソキサントフモール含有組成物の製造方法であって、組成物中のイソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含むイソキサントフモール含有組成物の製造方法。
〔12〕イソキサントフモールの苦味を低減する方法であって、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるように、イソキサントフモール及びエチルグリコシドを混合する工程を含む、イソキサントフモールの苦味を低減する方法。
〔13〕キサントフモールとエチルグリコシドとを含むキサントフモール含有組成物の製造方法であって、組成物中のキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含むキサントフモール含有組成物の製造方法。
〔14〕キサントフモールの苦味を低減する方法であって、キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるように、キサントフモール及びエチルグリコシドを混合する工程を含む、キサントフモールの苦味を低減する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イソキサントフモールに起因する苦味が低減されたイソキサントフモール含有組成物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、キサントフモールに起因する苦味が低減されたキサントフモール含有組成物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、イソキサントフモールの苦味を低減する方法及びキサントフモールの苦味を低減する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<イソキサントフモール含有組成物>
本発明のイソキサントフモール含有組成物は、イソキサントフモールとエチルグリコシドを含み、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400である。
イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合が上記範囲であると、イソキサントフモールに起因する苦味(イソキサントフモールに由来する苦味)をエチルグリコシドによって低減させることができる。
【0011】
本発明に用いられるイソキサントフモールは、特に制限されず、合成品であってもよい。また、イソキサントフモールは、キサントフモールを異性化して調製することができ、例えば、キサントフモール又はこれを含むホップ抽出物から加熱等のプロセスを経て調製することができる。本発明で使用されるイソキサントフモールは、このように調製されたものであってもよい。イソキサントフモールは、市販品を使用することもできる。
【0012】
エチルグリコシドは、還元糖の1位の炭素のヒドロキシ基がエトキシ基で置換された構造の化合物である。エチルグリコシドを構成する還元糖としては単糖が好ましく、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース等が挙げられる。還元糖は、D体、L体及びDL体のいずれであってもよい。好ましくはD体である。
エチルグリコシドとして、例えば、エチルグルコシド、エチルフルクトシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド、エチルキシロシドが挙げられる。エチルグリコシドは、これらの1種であってもよく、2種以上の組合せであってもよい。中でも、エチルグリコシドとして、エチルグルコシドが好ましい。エチルグルコシドとしては、エチル-α-グルコシド、エチル-β-グルコシドのいずれであってもよく、エチル-α-グルコシド及びエチル-β-グルコシドの組合せであってもよい。一態様において、エチルグリコシドとして、エチル-α-グルコシドを使用してよく、エチル-α-D-グルコシドを使用してよい。
【0013】
エチルグリコシドの製造方法は特に限定されない。例えば、還元糖と、エタノールとを反応させることによりエチルグリコシドを得ることができる。エチルグルコシドは、例えば、グルコースとエタノールとを反応させることにより得ることができる。
【0014】
本発明のイソキサントフモール含有組成物は、通常、経口用組成物である。本発明の組成物の形態は特に限定されず、液状、ゲル状、スラリー状、固形状のいずれでもよく、適宜の形態を採り得る。好ましくは液状(液状組成物)である。
【0015】
本発明のイソキサントフモール含有組成物は、好ましくは飲料(イソキサントフモール含有飲料)である。イソキサントフモール含有飲料においてイソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400であると、イソキサントフモールに起因する苦味を効果的に低減することができる。
イソキサントフモール含有組成物が飲料である場合、飲料中のイソキサントフモールの濃度は、20ppm以上が好ましく、また、200ppm以下が好ましい。イソキサントフモール濃度が上記範囲であると、エチルグリコシドによりイソキサントフモールに起因する苦味を効果的に低減することができる。飲料中のイソキサントフモール濃度は、50ppm以上がより好ましく、100ppm以上がさらに好ましく、また、150ppm以下がより好ましい。一態様において、イソキサントフモール含有飲料中のイソキサントフモール濃度は、20~200ppmが好ましく、50~200ppmがより好ましく、100~200ppmがさらに好ましく、100~150ppmが特に好ましい。本明細書中、ppmは、重量/容量(w/v)のppmを意味する。
イソキサントフモール及びエチルグリコシドの濃度は、通常、イソキサントフモール含有組成物が液状である場合のこれらの含有量である。
【0016】
イソキサントフモール含有組成物が飲料である場合、エチルグリコシドの濃度は、50ppm以上が好ましく、また、20000ppm以下であることが好ましい。
エチルグリコシドの濃度が上記範囲であると、イソキサントフモールに起因する苦味の低減により有効である。イソキサントフモール含有飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、100ppm以上がより好ましく、500ppm以上がさらに好ましく、1000ppm以上が特に好ましい。一態様において、イソキサントフモール含有飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、50~20000ppmが好ましく、100~20000ppmがより好ましく、500~20000ppmがさらに好ましく、1000~20000ppmが特に好ましい。
エチルグリコシドの濃度は、エチルグリコシドの合計の濃度を指す。
イソキサントフモール含有組成物中のイソキサントフモールの含有量及びエチルグリコシドの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
【0017】
一態様において、飲料中のイソキサントフモール濃度とエチルグリコシドの濃度の好ましい範囲として以下の範囲が挙げられる。
イソキサントフモール濃度が0ppmを超えて、20ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が50~5000ppm
イソキサントフモール濃度が20ppm以上、50ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が50ppm以上、20000ppm未満(より好ましくは50~10000ppm)
イソキサントフモール濃度が50ppm以上、100ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が500~20000ppm(より好ましくは5000~10000ppm)
イソキサントフモール濃度が100~150ppmの場合に、エチルグリコシド濃度が500~20000ppm(より好ましくは1000~20000ppm、さらに好ましくは5000~20000ppm)
イソキサントフモール濃度が150ppmを超えて、200ppm以下の場合に、エチルグリコシド濃度が500~20000ppm(より好ましくは1000~20000ppm、さらに好ましくは5000~20000ppm)
上記のような範囲であると、エチルグリコシドを含有しない場合に比べてエチルグリコシドを含有することによるイソキサントフモールの苦味低減の効果が大きいため好ましい。
【0018】
<キサントフモール含有組成物>
本発明のキサントフモール含有組成物は、キサントフモールとエチルグリコシドとを含み、キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200である。
キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合が上記範囲であると、キサントフモールに起因する苦味(キサントフモールに由来する苦味)をエチルグリコシドによって低減することができる。
【0019】
本発明に用いられるキサントフモールは、特に制限されず、合成品であってもよく、キサントフモールを含有する植物から抽出したものであってもよい。キサントフモールを含有する植物として、ホップ(Humulus lupulus)の毬花が挙げられる。キサントフモールは、ホップ抽出物又はその濃縮物の形態で含有させることもできる。
キサントフモールは、市販品を使用することもできる。
【0020】
キサントフモール含有組成物におけるエチルグリコシド及びその好ましい態様は、上述したイソキサントフモール含有組成物と同じである。エチルグリコシドとして、エチルグルコシドが好ましい。一態様において、エチルグリコシドとして、エチル-α-グルコシドを使用してよく、エチル-α-D-グルコシドを使用してよい。
【0021】
本発明のキサントフモール含有組成物は、通常、経口用組成物である。本発明の組成物の形態は特に限定されず、液状、ゲル状、スラリー状、固形状のいずれでもよく、適宜の形態を採り得る。好ましくは液状(液状組成物)である。
【0022】
本発明のキサントフモール含有組成物は、好ましくは飲料(キサントフモール含有飲料)である。キサントフモール含有飲料においてキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200であると、キサントフモールに起因する苦味を効果的に低減することができる。
【0023】
キサントフモール含有組成物が飲料である場合、キサントフモールの濃度は、25ppm以上が好ましく、また、200ppm以下であることが好ましい。キサントフモール濃度が上記範囲であると、エチルグリコシドによりキサントフモールに起因する苦味を効果的に低減することができる。飲料中のキサントフモールの濃度は、50ppm以上がより好ましく、100ppm以上がさらに好ましく、また、150ppm以下がより好ましい。一態様において、キサントフモール含有飲料中のキサントフモールの濃度は、25~200ppmが好ましく、50~200ppmがより好ましく、100~200ppmがさらに好ましく、100~150ppmが特に好ましい。
キサントフモール及びエチルグリコシドの濃度は、通常、キサントフモール含有組成物が液状である場合のこれらの含有量である。
【0024】
キサントフモール含有組成物が飲料である場合、エチルグリコシドの濃度は、50ppm以上が好ましく、また、20000ppm以下であることが好ましい。
エチルグリコシドの濃度が上記範囲であると、キサントフモールに起因する苦味の低減により有効である。キサントフモール含有飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、100ppm以上がより好ましく、500ppm以上がさらに好ましく、1000ppm以上が特に好ましく、また、10000ppm以下がより好ましい。一態様において、キサントフモール含有飲料におけるエチルグリコシドの濃度は、50~20000ppmであることが好ましく、100~20000ppmであることがより好ましく、500~20000ppmがさらに好ましく、1000~20000ppmが特に好ましく、1000~10000ppmが最も好ましい。
キサントフモール含有組成物におけるキサントフモールの含有量及びエチルグリコシドの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
【0025】
一態様において、飲料中のキサントフモール濃度とエチルグリコシドの濃度の好ましい範囲として以下の範囲が挙げられる。
キサントフモール濃度が0ppmを超えて、25ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が50ppm以上、5000ppm未満
キサントフモール濃度が25ppm以上50ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が50ppm以上(より好ましくは100ppm以上)、10000ppm未満
キサントフモール濃度50ppm以上、100ppm未満の場合に、エチルグリコシド濃度が100~10000ppm(より好ましくは500~10000ppm、さらに好ましくは1000~10000ppm、特に好ましくは1000~5000ppm)
キサントフモール濃度が100~150ppmの場合に、エチルグリコシド濃度が500~20000ppm(より好ましくは1000~10000ppm)
キサントフモール濃度が150ppmを超えて、200ppm以下の場合に、エチルグリコシド濃度が500~20000ppm(より好ましくは1000~10000ppm、さらに好ましくは5000~10000ppm)
上記のような範囲であると、エチルグリコシドを含有しない場合に比べてエチルグリコシドを含有することによるキサントフモールの苦味低減の効果が大きいため好ましい。
【0026】
本発明のイソキサントフモール含有組成物及びキサントフモール含有組成物を、以下ではまとめて本発明の組成物ともいう。本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含んでいてもよい。本発明の組成物は、水を含んでよい。一態様において、本発明の組成物が液状である場合、本発明の組成物は水を含む。一態様において本発明の組成物が液状の飲料である場合、当該飲料は、水の含有量が85重量%以上であってよく、90重量%以上であってよく、90~99.99重量%であることが好ましい。
【0027】
本発明の組成物が飲料である場合、飲料の例として、茶飲料(緑茶飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料等)、コーヒー飲料、スポーツ飲料、エナジードリンク、ビール、ビールテイスト飲料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明において、飲料は、例えば、液状、ゲル状、スラリー状、固形状のいずれでもよく、適宜の形態を採り得る。好ましくは液状である。固形状飲料は、水等の飲用溶媒で希釈することによって飲料となる固形状の飲料である。
例えば、飲料が液状である場合、飲料の形態は、ストレート飲料でも、濃縮飲料でもよい。中でも、ストレート飲料が好ましい。ストレート飲料とは、希釈せずにそのまま飲用できるものをいう。濃縮飲料とは、水等の飲用溶媒で希釈して飲用する飲料をいう。
飲料が固形状である場合、その形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状等の種々の形状とすることができる。なお、飲料が濃縮飲料又は固形状飲料である場合、飲用時の濃度に水等で希釈したときに、イソキサントフモール又はキサントフモール、及び、エチルグリコシドの濃度が上記の好ましい範囲となることが好ましい。
【0029】
本発明において、飲料の形態は特に限定されないが、容器詰めの飲料とすることができる。飲料が液状の場合は容器詰めの飲料とすることが好ましい。一態様において、飲料は、好ましくは容器詰め飲料である。容器の形態は特に限定されず、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器に充填して、容器詰め飲料等とすることができる。
【0030】
<イソキサントフモール含有組成物の製造方法>
本発明は、以下のイソキサントフモール含有組成物の製造方法も包含する。
イソキサントフモールとエチルグリコシドとを含むイソキサントフモール含有組成物の製造方法であって、組成物中のイソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む、イソキサントフモール含有組成物の製造方法。
エチルグリコシドを配合する方法や順序は特に限定されず、イソキサントフモール含有組成物に含まれるイソキサントフモールの量に合わせて、組成物中のイソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるようにエチルグリコシドを配合すればよい。一態様において、イソキサントフモール含有組成物の製造においてキサントフモール又はこれを含むホップ抽出物を配合し、加熱することによってキサントフモールを異性化して、イソキサントフモールを組成物に含有させることもできる。上記の製造方法により、イソキサントフモールに起因する苦味が低減されたイソキサントフモール含有組成物を製造することができる。
【0031】
<イソキサントフモールの苦味を低減する方法>
以下のイソキサントフモールの苦味を低減する方法も、本発明の一つである。
イソキサントフモールの苦味を低減する方法であって、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400となるように、イソキサントフモール及びエチルグリコシドを混合する工程を含む、イソキサントフモールの苦味を低減する方法。
イソキサントフモールに対してエチルグリコシドを上記の重量割合で使用することによって、イソキサントフモールの苦味を低減することができる。エチルグリコシドは、イソキサントフモールの苦味の抑制に有効である。
一態様において、本発明の方法は、上記の重量割合となるように、イソキサントフモール及びエチルグリコシドを混合することを含む、イソキサントフモール含有組成物におけるイソキサントフモールに起因する苦味を低減する方法であってよい。上記の重量割合でイソキサントフモール及びエチルグリコシドを混合して得られるエチルグリコシドを含むイソキサントフモール含有組成物においては、イソキサントフモールに起因する苦味が低減されている。イソキサントフモール含有組成物において、組成物中のイソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が上記の範囲となるようにエチルグリコシドを配合することによって、イソキサントフモールに起因する苦味を低減させることができる。イソキサントフモール及びエチルグリコシドを混合する方法は特に限定されず、例えば、イソキサントフモール又はこれを含有する組成物と、エチルグリコシドとを混合してもよく、イソキサントフモールと、エチルグリコシド又はこれを含有する組成物とを混合してもよい。
【0032】
上記のイソキサントフモール含有組成物の製造方法及び上記の苦味を低減する方法において、イソキサントフモール含有組成物の好ましい態様などは、上記のイソキサントフモール含有組成物と同じである。イソキサントフモール含有組成物は、好ましくはイソキサントフモール含有飲料である。エチルグリコシド、イソキサントフモール、これらの含有量及びその好ましい態様などは、上記のイソキサントフモール含有組成物と同じである。
【0033】
<キサントフモール含有組成物の製造方法>
本発明のキサントフモール含有組成物の製造方法は、キサントフモールとエチルグリコシドとを含むキサントフモール含有組成物の製造方法であって、組成物中のキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるようにエチルグリコシドを配合する工程を含む。
エチルグリコシドを配合する方法や順序は特に限定されず、キサントフモール含有組成物に含まれるキサントフモールの量に合わせて、組成物中のキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるようにエチルグリコシドを配合すればよい。上記の製造方法により、キサントフモールに起因する苦味が低減されたキサントフモール含有組成物を製造することができる。
【0034】
<キサントフモールの苦味を低減する方法>
以下のキサントフモールの苦味を低減する方法も、本発明に包含される。
キサントフモールの苦味を低減する方法であって、組成物中のキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が2~200となるように、キサントフモール及びエチルグリコシドを混合する工程を含む、キサントフモール含有組成物の苦味を低減する方法。
キサントフモールに対してエチルグリコシドを上記の重量割合で使用することによって、キサントフモールの苦味を低減することができる。エチルグリコシドは、キサントフモールの苦味の抑制に有効である。
一態様において、本発明の方法は、上記の重量割合となるように、キサントフモール及びエチルグリコシドを混合することを含む、キサントフモール含有組成物におけるキサントフモールに起因する苦味を低減する方法であってよい。上記の重量割合でキサントフモール及びエチルグリコシドを混合して得られるエチルグリコシドを含むキサントフモール含有組成物においては、キサントフモールに起因する苦味が低減されている。キサントフモール含有組成物において、組成物中のキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/キサントフモール)が上記の範囲となるようにエチルグリコシドを配合することによって、キサントフモールに起因する苦味を低減させることができる。
キサントフモール及びエチルグリコシドを混合する方法は特に限定されず、例えば、キサントフモール又はこれを含有する組成物と、エチルグリコシドとを混合してもよく、キサントフモールと、エチルグリコシド又はこれを含有する組成物とを混合してもよい。
【0035】
キサントフモール含有組成物の製造方法及び上記の苦味を低減する方法において、キサントフモール含有組成物の好ましい態様などは、上記のキサントフモール含有組成物と同じである。キサントフモール含有組成物は、好ましくはキサントフモール含有飲料である。エチルグリコシド、キサントフモール、これらの含有量及びその好ましい態様などは、上記のキサントフモール含有組成物と同じである。
【実施例
【0036】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
実施例では、エチルグリコシドとしてエチル-α-D-グルコシド(以下EGと表示)を用いた。
【0038】
(調製例1)
乳化剤を使用して、下記の方法でイソキサントフモール乳化物及びキサントフモール乳化物を調製した。
デカグリセリンモノミリステート(HLB15.7)4.23gを200℃まで加熱し、イソキサントフモール0.50gを添加して全体が均一になるように混合した。さらに、大豆レシチン(HLB5未満)0.47gを添加して全体が均一になるように混合した後、80℃まで放冷し、さらに純水4.80gを添加して全体が均一になるように混合した。これにより、イソキサントフモール乳化物を得た。
イソキサントフモールの代わりにキサントフモールを使用した以外は、上記と同様の方法でキサントフモール乳化物を調製した。
【0039】
(実施例1)
調製例1で得たイソキサントフモール乳化物及びEGを水に溶解させて試料を調製した。
イソキサントフモールの濃度を20ppm、50ppm、100ppm、150ppm、200ppmの5段階で変化させ、EGの濃度を0ppm、50ppm、100ppm、500ppm、1000ppm、5000ppm、10000ppm、20000ppmの8段階で変化させた試料を作製した。イソキサントフモール乳化物は、試料中のイソキサントフモール濃度が上記となる量使用した。
各試料の苦味について、官能評価に熟練したパネラー2名が官能評価を行った。官能評価では、試料10mLを口に含み5秒間味わった後、吐き出し、苦味強度を評価した。異なる試料を評価する際には、口の中の味がなくなるまで口を水でゆすいだ。各試料について下記の7段階で苦味強度を評価し、その後パネラーの評点の平均値を求めた。官能評価に際しては、EG濃度が0ppm(EG非添加)でイソキサントフモール乳化物を配合した試料(具体的には、イソキサントフモール濃度が20ppm、100ppm、150ppm、200ppmの試料)を用いて、イソキサントフモールの濃度が同じ場合に苦味強度の評価が同じとなるように、事前にパネラー全体ですり合わせを行った。なお、乳化剤に由来する苦味は感じられなかった。
【0040】
1:苦味を全く感じない
2:苦味を弱く感じる
3:苦味をやや弱く感じる
4:苦味を感じる
5:苦味をやや強く感じる
6:苦味を強く感じる
7:苦味を非常に強く感じる
【0041】
表1には各試料中のイソキサントフモール(IX)に対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/IX)を示した。
表2には、各試料の官能評価の結果(苦味強度の評点の平均)を示した。
表3に、表2に示す結果から算出したEG添加による苦味低減度を示した。表3に示す苦味低減度は、表2に示すイソキサントフモール濃度が同じでEGを含まない試料の評点(X1)から、イソキサントフモール濃度が同じでEGを含む試料の評点(Y1)を引いた値(X1-Y1)である。表2に示す値(X1-Y1)が1以上であると、苦味が低減されたと評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
上記の結果から、イソキサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2.5~400であると、イソキサントフモールの苦味を低減することができることが分かる。
【0046】
(実施例2)
調製例1で得たキサントフモール乳化物及びEGを水に溶解させて試料を調製した。
キサントフモールの濃度を25ppm、50ppm、100ppm、150ppm、200ppmの5段階で変化させ、EGの濃度を0ppm、50ppm、100ppm、500ppm、1000ppm、5000ppm、10000ppm、20000ppmの8段階で変化させた試料を作製した。キサントフモール乳化物は、試料中のイソキサントフモール濃度が上記となる量使用した。
各試料の苦味について、実施例1と同じ方法及び基準で、官能評価に熟練したパネラー2名が官能評価を行った。官能評価に際しては、実施例1と同様に、EG濃度が0ppm(EG非添加)でイソキサントフモール乳化物を配合した試料(具体的には、イソキサントフモール濃度が20ppm、100ppm、150ppm、200ppmの試料)を用いて、イソサントフモールの濃度が同じ場合に苦味強度の評価が同じとなるように、事前にパネラー全体ですり合わせを行った。なお乳化剤に由来する苦味は感じられなかった。
【0047】
表4には各試料中のキサントフモール(XN)に対するエチルグリコシド(EG)の重量割合(EG/XN)を示した。
表5には、各試料の官能評価の結果(苦味強度の評点の平均)を示した。
表6に、表5に示す結果から算出したEG添加による苦味低減度を示した。表6に示す苦味低減度は、表5に示すキサントフモール濃度が同じでEGを含まない試料の評点(X2)から、キサントフモール濃度が同じでEGを含む試料の評点(Y2)を引いた値(X2-Y2)である。表2に示す値(X2-Y2)が1以上であると、苦味が低減されたと評価した。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
上記の結果から、キサントフモールに対するエチルグリコシドの重量割合(エチルグリコシド/イソキサントフモール)が2~200であると、キサントフモールの苦味を低減することができることが分かる。