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特許7458404イズロン酸-2-スルファターゼ免疫グロブリン融合タンパク質の精製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】イズロン酸-2-スルファターゼ免疫グロブリン融合タンパク質の精製
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/36 20060101AFI20240322BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20240322BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20240322BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240322BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240322BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240322BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240322BHJP
   C12P 21/00 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
C07K1/36 ZNA
C07K1/18
C07K1/22
C07K19/00
C12N9/16 Z
C07K16/00
C12N15/62 Z
C12P21/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021535571
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019067868
(87)【国際公開番号】W WO2020132452
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】62/782,834
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508105751
【氏名又は名称】アーマジェン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARMAGEN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】チェリカニ,ラフル
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ベーコン,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イン
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530156(JP,A)
【文献】Bioconjugate Chemistry,2013年,Vol.24, pp.1741-1749
【文献】Biotechnology and Bioengineering,2014年,Vol.111, No.11, pp.2317-2325
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 21/00-21/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびマルチモーダルクロマトグラフィーをこの順序で行うことによって、免疫グロブリンおよびイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)を含む融合タンパク質を不純な調製物から精製することを含む方法であって、
該アフィニティークロマトグラフィーが、プロテインA抗体クロマトグラフィーであり、該プロテインA抗体クロマトグラフィーが、10~100mMの範囲の均一濃度のクエン酸ナトリウムを含むpHが3.3~3.9である溶出緩衝液を用いて行われ
該陽イオン交換クロマトグラフィーカラムが、10~300mMの範囲の均一濃度のNaClを含むpHが5.2~5.8である溶出緩衝液を用いて行われ、及び
該マルチモーダルクロマトグラフィーカラムが、約7.0のpHで実行されるものである、方法
【請求項2】
陽イオン交換クロマトグラフィーが、Capto SP ImpResクロマトグラフィーであり、該マルチモーダルクロマトグラフィーが、Capto Adhereクロマトグラフィーであ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1.0~2.0Mの塩濃度のNaClが、クロマトグラフィーカラムの充填および洗浄において使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ウイルス不活化の工程をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
最後のクロマトグラフィーカラムの後にウイルス濾過の工程をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該融合タンパク質が、既知組成培地中で培養される哺乳類細胞によって産生され、該哺乳類細胞がCHO細胞であり、該哺乳類細胞がバイオリアクター中で培養され、該バイオリアクターが、攪拌槽型灌流バイオリアクタープロセスとして機能する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
不純な調製物が、哺乳類細胞から分泌された該融合タンパク質を含む既知組成培地から調製される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月20日に出願された米国仮特許出願第62/782,834号の利益および優先権を主張し、この内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
2019年12月18日に作成された37196バイトのサイズの「SHR-182-AGT-SequenceListing.txt」という名前のテキストファイルの内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ムコ多糖症II型(MPS II、ハンター症候群)は、イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)という酵素の欠損に起因するX染色体連鎖劣性遺伝のリソソーム蓄積症である。I2Sは、グリコサミノグリカン(GAG)のデルマタン硫酸およびヘパラン硫酸から末端2-O-硫酸部分を切断する。ハンター症候群の患者では、I2S酵素の欠損または欠陥のためにGAGが多様な細胞型のリソソームにおいて徐々に蓄積し、細胞拡張(cellular engorgement)、臓器肥大、組織破壊および臓器系の機能障害をもたらす。
【0004】
一般に、ハンター症候群の人の物理的症状には、身体症状および神経症状の両方が含まれる。例えば、ハンター症候群の一部の症例では、中枢神経系(CNS)の関与により、発達遅延および神経系の障害が生じる。神経変性および精神遅滞などの症状は小児期に現れ、神経作用に苦しむハンター症候群患者は脳への臓器障害のために若年齢で死亡することが多い。同様に、GAGの蓄積は身体の臓器系に悪影響を及ぼし得る。最初に心臓、肺および気道の壁の肥厚ならびに肝臓、脾臓および腎臓の異常な肥大として現れ、これらの重大な変化は最終的に広範囲の壊滅的な臓器不全をもたらし得る。結果として、ハンター症候群は常に重篤で進行性であり、致死的である。
【0005】
酵素補充療法(ERT)はハンター症候群(MPS II)を処置するための承認された治療法であり、外因性の補充用I2S酵素をハンター症候群の患者に投与することを含む。しかし、全身投与されたI2S酵素は血液脳関門(BBB)を容易に通過できないため、この疾患のCNS症状を処置するには不十分であると示されることが多い。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、特に、ハンター症候群に関連するCNS症状の処置のために血液脳関門(BBB)を効果的に通過し得る著しく強力なイズロン酸-2-スルファターゼ融合タンパク質を提供する。さらに、本発明は、酵素補充療法を介してハンター症候群を処置するための改善された方法および組成物を提供する。本発明は、ヒトインスリン受容体抗体-I2S(HIRMab-I2S)融合タンパク質が未処理の生体物質(HIRMab-I2S融合タンパク質を含む細胞培地など)からわずか3つのクロマトグラフィーカラムを含むプロセスを用いて精製され得るという驚くべき発見に部分的に基づく。本発明は、I2S酵素のバイオアベイラビリティおよび/またはリソソーム標的化の促進を増加させ得る2-マンノース-6-リン酸(2-M6PまたはビスM6P)レベルの調節を可能にする。実施例の項に記載されているように、本発明により3つのカラムプロセスを用いて精製されたHIRMab-I2S融合タンパク質は、I2S酵素の活性に重要なCα-ホルミルグリシン(FGly)を高い割合(例えば、70%よりも高く、最大で100%)で保持している。さらに、本発明により精製されたHIRMab-I2S融合タンパク質は、高い純度レベル(<8ppmの宿主細胞タンパク質)を示す。したがって、本発明は、HIRMab-I2S融合タンパク質を精製するためのより効果的で安価かつ迅速なプロセスを提供する。
【0007】
以下に記載される任意の態様および実施態様は任意の所望の方法で組み合わされ得、文脈が他を示している場合を除き、任意の実施態様または実施態様の組合せが以下に記載される各態様に適用され得ることが理解される。
【0008】
ある態様において、免疫グロブリンおよびイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)を含む精製された融合タンパク質を含む組成物が提供され、融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約60%の変換を含み、精製された融合タンパク質は、グリカンマップ上の1%~10%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)ピーク面積を特徴とする。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、グリカンマップ上の4%~9%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)ピーク面積を特徴とする。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、グリカンマップ上の5.2%~7.2%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)ピーク面積を特徴とする。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約60%の変換を含み、精製された融合タンパク質は、分子ごとに平均で約3.0mol/mol~約4.0mol/molのマンノース-6-リン酸(2-M6P)残基を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約70%の変換を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約80%の変換を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約90%の変換を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約95%の変換を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約98%の変換を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、哺乳類細胞に由来する。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、CHO細胞に由来する。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、5.2%~7.2%の2-M6P残基レベルを含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、キメラモノクローナル抗体を含む免疫グロブリンを含む。ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体(HIR)に結合するキメラモノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、I2Sと融合したヒトインスリン受容体モノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号11と少なくとも80%、85%、90%または95%同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号11と同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、キメラモノクローナル抗体は、組換えヒトIgG軽鎖を含む。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%または95%同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号12と同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、リンカーを含まない。ある実施態様において、ヒトインスリン受容体は、内在性脳毛細血管内皮インスリン受容体を介した輸送を媒介する。ある実施態様において、ヒトインスリン受容体は、内在性神経インスリン受容体を介した輸送を媒介する。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、2-M6P残基を含むイズロン酸-2-スルファターゼを含む。ある実施態様において、2-M6P残基は、M6P受容体に結合する。ある実施態様において、2-M6P受容体は、内在性リソソームM6P受容体を介した輸送を媒介する。ある実施態様において、2-M6P残基は、M6P受容体への少なくとも約60%の結合を促進する。ある実施態様において、2-M6P残基は、M6P受容体への少なくとも約70%の結合を促進する。ある実施態様において、2-M6P残基は、M6P受容体への少なくとも約75%の結合を促進する。ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体への少なくとも約70%の結合を促進する。ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体への少なくとも約80%の結合を促進する。ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体への少なくとも約90%の結合を促進する。ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体への少なくとも約95%の結合を促進する。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、プレートに基づく蛍光酵素アッセイによって決定される少なくとも約3U/mgの比活性を有する。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、10ng/mg(ppm)未満のHCPを含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、少なくとも15mol/molのシアル酸含有量を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、少なくとも20mol/molのシアル酸含有量を含む。
【0009】
別の態様において、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびマルチモーダルクロマトグラフィーのうち1つ以上を行うことによって、免疫グロブリンおよびイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)を含む融合タンパク質を不純な調製物から精製することを含む方法を提供する。ある実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインA抗体クロマトグラフィーである。ある実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、Capto SP ImpResクロマトグラフィーである。ある実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーは、Capto Adhereクロマトグラフィーである。ある実施態様において、本方法は、3つのクロマトグラフィーの工程を含む。ある実施態様において、本方法は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびマルチモーダルクロマトグラフィーをこの順序で行う。ある実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーカラムは、均一濃度のクエン酸ナトリウム溶出を含む溶出緩衝液を用いて溶出される。ある実施態様において、均一濃度のクエン酸ナトリウム溶出は、10~100mMの範囲のクエン酸ナトリウムを含む。ある実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーカラムは、3.3~3.9のpHで実行される。ある実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、均一濃度のNaCl溶出を含む溶出緩衝液を用いて溶出される。ある実施態様において、NaCl溶出は、10~300mMの範囲のNaClを含む。ある実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、5.2~5.8のpHで実行される。ある実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーカラムは、フロースルーモードおよび/または結合/溶出モードで操作される。ある実施態様において、1.0~2.0Mの塩濃度のNaClが、クロマトグラフィーカラムの充填および洗浄において使用される。ある実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーカラムは、約7.0のpHで実行される。ある実施態様において、本方法は、ウイルス不活化の工程をさらに含む。ある実施態様において、本方法は、最後のクロマトグラフィーカラムの後にウイルス濾過の工程をさらに含む。ある実施態様において、免疫グロブリンおよびI2Sタンパク質を含む融合タンパク質は、既知組成培地中で培養される哺乳類細胞によって産生される。ある実施態様において、哺乳類細胞はCHO細胞である。ある実施態様において、哺乳類細胞はバイオリアクター中で培養される。ある実施態様において、バイオリアクターは、攪拌槽型灌流バイオリアクタープロセスとして機能する。ある実施態様において、不純な調製物は、哺乳類細胞から分泌された融合タンパク質を含む既知組成培地から調製される。
【0010】
別の態様において、先行請求項のいずれかに記載の方法に従って精製された免疫グロブリンおよびI2Sタンパク質を含む精製された融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体(HIR)に結合するキメラモノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、I2Sポリペプチド、およびヒトインスリン受容体(HIR)に結合するキメラモノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号11と少なくとも80%、85%、90%または95%同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、精製された融合タンパク質は、配列番号11と同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、キメラモノクローナル抗体は、組換えヒトIgG軽鎖を含む。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号12と少なくとも80%、85%、90%または95%同一のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号12と同一のアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の態様において、処置を必要とする対象に本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む、ハンター症候群を処置する方法を提供する。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、図面ならびに以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上記の特徴およびさらなる特徴は、添付の図面と組み合わせた場合に以下の詳細な説明からより明確に理解される。しかし、図面は説明のみを目的とするものであり、制限のためのものではない。
【0014】
図1図1は、既知組成培地中に産生されたHIRMab-I2S融合タンパク質のための例示的な精製スキームを示す。
【0015】
図2図2は、様々な培地条件(既知組成のOptiCHO、Cell boost5添加物を含む既知組成のOptiCHO、ならびに加水分解産物および動物成分を含むSFM4CHO培地を含む)下で得られた初期、中期および後期HIRMab-I2S融合タンパク質回収物質の比活性(U/mg)およびホルミルグリシン含有量(%FG)の分析を示す。
【0016】
図3図3は、様々な培地条件(既知組成のOptiCHO、Cell boost5添加物を含む既知組成のOptiCHO、ならびに加水分解産物および動物成分を含むSFM4CHO培地を含む)下で得られた初期および後期HIRMab-I2S融合タンパク質回収物質の基質クリアランスアッセイ、ヒトインスリン受容体への結合アッセイおよびM6P受容体への結合アッセイの結果の分析を示す。
【0017】
図4図4は、様々な培地条件(既知組成のOptiCHO、Cell boost5添加物を含む既知組成のOptiCHO、ならびに加水分解産物および動物成分を含むSFM4CHO培地を含む)下で得られた初期、中期および後期HIRMab-I2S融合タンパク質回収物質のマンノース-6-リン酸グリカン含有量(1-M6Pおよび2-M6P)のレベルの分析を示す。
【0018】
図5図5は、様々な培地条件(既知組成のOptiCHO、Cell boost5添加物を含む既知組成のOptiCHO、ならびに加水分解産物および動物成分を含むSFM4CHO培地を含む)下で得られた初期、中期および後期HIRMab-I2S融合タンパク質回収物質のシアリル化グリカン含有量(1-、2-、3-および4-SA)のレベルの分析を示す。
【0019】
図6図6は、様々な培地条件(既知組成のOptiCHO、Cell boost5添加物を含む既知組成のOptiCHO、ならびに加水分解産物および動物成分を含むSFM4CHO培地を含む)下で得られた初期、中期および後期HIRMab-I2S融合タンパク質回収物質の中性およびPeak8グリカン含有量のレベルの分析を示す。
【0020】
図7図7は、HIRMab-I2Sの比活性アッセイを示す。第1の段階では、基質であるIdo2S-4-MUがI2SによってIdoA-4-MUおよび硫酸塩に加水分解される。第2の段階では、α-L-イズロニダーゼ(IDUA)の作用により4-MUが放出される。4-MU生成物の蛍光定量が、高pHクエンチ後に行われる。
【0021】
図8図8は、様々な緩衝液条件における2.5ng/mLのHIRMab-I2SのI2S活性を示す。
【0022】
図9図9は、マトリックスフリーの活性を決定するための、線形化した式4への最小二乗適合を示す。
【0023】
図10図10Aは、緩衝液3におけるHIRMab-I2Sの活性を、図に示された希釈範囲にわたる段階希釈の関数として示す(DF:希釈倍率)。図10Bは、緩衝液4におけるHIRMab-I2Sの活性を、図に示された希釈範囲にわたる段階希釈の関数として示す(DF:希釈倍率)。図10Cは、緩衝液6におけるHIRMab-I2Sの活性を、図に示された希釈範囲にわたる段階希釈の関数として示す(DF:希釈倍率)。
【0024】
図11図11は、比活性に対するマトリックスおよび酵素濃度の効果を分離するために、緩衝液3において行った実験の模式図を示す。
【0025】
図12図12は、比活性に対するマトリックスおよび酵素濃度の効果を分離するために図11で行った実験における基質の枯渇を示す。基質の枯渇を、検出した4-MUの濃度および基質の初期濃度から算出した。
【0026】
図13図13Aは、酵素濃度を変動させ、緩衝液濃度を変動させた場合の比活性に対するマトリックスおよび酵素濃度の効果を分離する実験から収集した代表的なデータセットを示す。図13Bは、酵素濃度を変動させ、緩衝液濃度を一定にした場合の比活性に対するマトリックスおよび酵素濃度の効果を分離する実験から収集した代表的なデータセットを示す。図13Cは、酵素濃度を一定にし、緩衝液濃度を変動させた場合の比活性に対するマトリックスおよび酵素濃度の効果を分離する実験から収集した代表的なデータセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本明細書において参照されている特許および科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立している。本明細書において引用されている発行された米国特許、許可された出願、公開された外国出願および参考文献(GenBankまたは他のデータベース配列を含む)は、それぞれが参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において、変数についての数値範囲の記載は、本発明がその範囲内のいずれかの値に等しい変数を用いて実施され得ることを示すことを意図している。したがって、本質的に離散的な変数について、該変数は数値範囲内の任意の整数値(範囲の端点を含む)に等しくなり得る。同様に、本質的に連続的な変数について、該変数は数値範囲内の任意の実数値(範囲の端点を含む)に等しくなり得る。例として、限定されないが、0~2の間の値を有すると記述されている変数は、該変数が本質的に離散的である場合、0、1または2の値を取り得、該変数が本質的に連続的である場合、0.0、0.1、0.01、0.001の値または≧0かつ≦2の他の任意の実数値を取り得る。
【0028】
本明細書において、特に明記されていない限り、単語「または」は「および/または」という包括的な意味で使用され、「いずれか/または」という排他的な意味で使用されない。
【0029】
本明細書において、用語「およそ」または「約」は、それが修飾する値の±10%以内を意味する。例えば、「約1」は「0.9~1.1」を意味し、「約2%」は「1.8%~2.2%」を意味し、「約2%~3%」は「1.8%~3.3%」を意味し、「約3%~約4%」は「2.7%~4.4%」を意味する。文脈から明らかでない限り、本明細書で与えられるあらゆる数値は、用語「約」によって修飾されている。
【0030】
本明細書において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他を示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0031】
用語「1以上」、「少なくとも1つ」、「1よりも大きい」などは、限定されないが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149もしくは150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000またはそれ以上およびそれらの間の任意の数を含むことが理解される。
【0032】
本明細書において、語句「生物学的に活性」は、生体システム(例えば、細胞培養物、生物など)中で活性を有する任意の物質の特性を指す。例えば、生物に投与された場合にその生物に生物学的な影響を与える物質は、生物学的に活性であると考えられる。生物学的活性は、インビトロでのアッセイ(例えば、硫酸塩放出アッセイなどのインビトロでの酵素アッセイ)によって決定され得る。特定の実施態様において、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性である場合、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するタンパク質またはポリペプチドの部分は、典型的に「生物学的に活性な」部分と呼ばれる。いくつかの実施態様において、タンパク質は、対象に投与された場合に生物学的活性を示す細胞培養系から産生および/または精製される。いくつかの実施態様において、タンパク質は、生物学的に活性になるためにさらなる処理を必要とする。いくつかの実施態様において、タンパク質は、生物学的に活性になるために翻訳後修飾(限定されないが、グリコシル化(例えばシアリル化)、ファルネシル化(farnysylation)、切断、フォールディング、ホルミルグリシン変換およびそれらの組合せなど)を必要とする。いくつかの実施態様において、プロフォーム(すなわち未熟な形態)として産生されたタンパク質は、生物学的に活性になるためにさらなる修飾を必要とし得る。
【0033】
本明細書において、用語「陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CI-MPR)」は、リソソームに輸送されることになるゴルジ装置中の酸性ヒドロラーゼ前駆体上のマンノース-6-リン酸(M6P)タグに結合する細胞受容体を指す。CI-MPRは、マンノース-6-リン酸に加えて他のタンパク質(IGF-IIを含む)にも結合する。CI-MPRは、「M6P/IGF-II受容体」、「CI-MPR/IGF-II受容体」、「IGF-II受容体」または「IGF2受容体」としても知られている。これらの用語およびその略語は、本明細書において互換的に使用される。
【0034】
本明細書において、用語「クロマトグラフィー」は、混合物を分離するための技術を指す。通常、混合物は「移動相」と呼ばれる流体に溶解され、「固定相」と呼ばれる別の物質を保持する構造体に運ばれる。カラムクロマトグラフィーは、固定層が管(すなわちカラム)内にある分離技術である。
【0035】
本明細書において、用語「希釈剤」は、再構成された製剤の調製に有用な薬学的に許容され得る(例えば、ヒトへの投与について安全かつ非毒性の)希釈物質を指す。例示的な希釈剤には、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0036】
本明細書において、用語「溶出」は、溶媒で洗浄することによってある物質を別の物質から抽出するプロセスを指す。例えばイオン交換クロマトグラフィーでは、溶出は充填されている樹脂を洗浄して捕捉されているイオンを除去するプロセスである。
【0037】
本明細書において、用語「溶出物」は、典型的に溶出の結果としてクロマトグラフィーから出てくる移動相「担体」および分析物質の組合せを指す。
【0038】
本明細書において、用語「酵素補充療法(ERT)」は、不足している酵素を与えることによって酵素の欠乏を補正する任意の治療戦略を指す。酵素が投与されると、酵素は細胞に取り込まれてリソソームに輸送され、酵素の欠乏のためにリソソーム中に蓄積している物質を除去するように作用する。通常、有効なリソソーム酵素補充療法のために、治療用酵素は貯蔵の欠損が明らかな標的組織の適切な細胞中のリソソームに送達される。
【0039】
本明細書において、クロマトグラフィーに関する用語「平衡化する」または「平衡化」は、一般に液体(例えば緩衝液)の成分の安定かつ均衡した分布を達成するために、第1の液体(例えば緩衝液)と別の液体とのバランスを取るプロセスを指す。例えば、いくつかの実施態様において、1以上のカラム容量の所望の液体(例えば緩衝液)をカラムに通すことによって、クロマトグラフィーカラムは平衡化され得る。
【0040】
本明細書において、用語「改善する」、「増加させる」もしくは「減少させる」または文法上同等の用語は、ベースラインの測定値(本明細書に記載されている処置を開始する前の同一の個体における測定値、または本明細書に記載されている処置を行わない対照の個体(もしくは複数の対照の個体)における測定値など)に対する値を示す。「対照の個体」は処置されている個体と同じ形態のリソソーム蓄積症に罹患している個体であり、(処置されている個体および対照の個体の疾患の段階が同等であることを保証するために)処置されている個体とおよそ同じ年齢である。
【0041】
本明細書において、用語「不純物」は、標的の物質または化合物の化学組成とは異なる、限定された量の液体、気体または固体の内部にある物質を指す。不純物は混入物とも呼ばれる。
【0042】
本明細書において、用語「リンカー」は、融合タンパク質において天然タンパク質の特定の位置に現れるアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を指し、一般に柔軟であるか、または2つのタンパク質部分の間に構造(aヘリックスなど)を介入させるように設計される。リンカーはスペーサーとも呼ばれる。
【0043】
本明細書において、用語「充填」は、クロマトグラフィーにおいて試料を含む液体または固体をカラムに添加することを指す。いくつかの実施態様において、カラム上に充填された試料の特定の成分は、充填された試料がカラムを通過する際に捕捉される。いくつかの実施態様において、カラム上に充填された試料の特定の成分は、充填された試料がカラムを通過する際にカラムに捕捉されないか、またはカラムを「流れる」。
【0044】
本明細書において、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は一般的に、ペプチド結合によって互いに結合している少なくとも2つのアミノ酸の列を指すように互換的に使用される。すなわち、ポリペプチドに関する記載は、ペプチドの記載およびタンパク質の記載に等しく適用され、その逆もまた同様である。いくつかの実施態様において、ポリペプチドは少なくとも3~5個のアミノ酸を含み得、これらの各アミノ酸は少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に結合している。当業者は、ポリペプチドが「非天然」アミノ酸またはポリペプチド鎖に統合できる他の実体を任意で含む場合があることを理解している。
【0045】
本明細書において、クロマトグラフィーに関する用語「プールする」は、カラムを通過した流体の1以上の分画を組み合わせることを指す。例えば、いくつかの実施態様において、クロマトグラフィーによって分離された試料の所望の成分を含む1以上の分画(例えば「ピーク分画」)が「プール」され得、単一の「プールされた」分画を生成し得る。
【0046】
本明細書において、用語「置換酵素」は、処置される疾患において欠損または不足している酵素を少なくとも部分的に置換するように作用し得る任意の酵素を指す。いくつかの実施態様において、用語「置換酵素」は、処置されるリソソーム蓄積症において欠損または不足しているリソソーム酵素を少なくとも部分的に置換するように作用し得る任意の酵素を指す。いくつかの実施態様において、置換酵素は哺乳類リソソーム中に蓄積した物質を減少させることができ、または1以上のリソソーム蓄積症の症状を救助もしくは改善し得る。本発明に適した置換酵素は野生型または修飾されたリソソーム酵素の両方を含み、組換え法および合成法を用いて製造され得、または天然の供給源から精製され得る。置換酵素は、組換え酵素、合成酵素、遺伝子活性化酵素または天然酵素であり得る。
【0047】
本明細書において、用語「可溶性」は、治療物質が均一な溶液を形成する能力を指す。いくつかの実施態様において、治療物質が投与されており、作用の標的部位に輸送される溶液中の治療物質の溶解度は、治療有効量の治療物質が作用の標的部位に送達されることを可能にするのに十分である。治療物質の溶解度にはいくつかの要因が影響し得る。例えば、タンパク質の溶解度に影響を与え得る関連した要因には、イオン強度、アミノ酸配列および他の共可溶性(co-solubilizing)物質または塩(例えばカルシウム塩)の存在が含まれる。いくつかの実施態様において、本発明における治療物質は対応する医薬組成物に可溶である。
【0048】
本明細書において、用語「安定」は、治療物質(例えば組換え酵素)が長期間にわたってその治療効果(例えば、意図された生物学的活性および/または物理化学的完全性のすべてまたは大部分)を維持する能力を指す。治療物質の安定性およびそのような治療物質の安定性を維持する医薬組成物の能力は、長期間(例えば、少なくとも1、3、6、12、18、24、30、36ヶ月またはそれ以上)にわたって評価され得る。製剤の文脈において安定な製剤とは、その中の治療物質が保存により、およびプロセス(凍結/解凍、機械的混合および凍結乾燥など)の間に物理的完全性および/または化学的完全性および生物学的活性を本質的に保持している製剤である。タンパク質の安定性について、これは高分子量(HMW)凝集体の形成、酵素活性の低下、ペプチドフラグメントの生成および電荷プロファイルの変化による尺度であり得る。
【0049】
本明細書において、用語「ウイルス処理」は、ウイルスを単に試料から除去する「ウイルス除去」、またはウイルスが非感染性の形態で試料中に保持される「ウイルス不活化」を指す。いくつかの実施態様において、ウイルス除去は、特にナノ濾過および/またはクロマトグラフィー技術を利用し得る。いくつかの実施態様において、ウイルス不活化は、特に溶媒不活化、界面活性剤不活化、低温殺菌、酸性pH不活化および/または紫外線不活化を利用し得る。
【0050】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本願が属する分野の当業者によって通常理解され、本願が属する分野において通常使用されている意味と同じ意味を有する;このような分野は参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合には、本明細書(定義を含む)が支配的である。
【0051】
詳細な説明
本発明は、特に、酵素補充療法を介してハンター症候群を処置するための組成物を製造および精製する改善された方法を提供する。本発明は、ハンター症候群に関連するCNS症状の処置のために血液脳関門(BBB)を効果的に通過し得る著しく強力なイズロン酸-2-スルファターゼ融合タンパク質(HIRMab-I2S融合タンパク質)を提供する。さらに、本発明は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびマルチモーダルクロマトグラフィーのうち1つ以上に基づくプロセスを用いて、スルファターゼ融合タンパク質(例えばI2S-免疫グロブリン融合タンパク質)を不純な調製物から精製する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、プロテインAクロマトグラフィー、Capto SP ImpResクロマトグラフィーおよびCapto Adhereクロマトグラフィーを行うことにより、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を不純な調製物から精製する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、このような著しく強力なイズロン酸-2-スルファターゼ融合タンパク質を商業的に実行可能な規模で製造できるプロセスを提供する。本発明はさらに、精製されたI2S-免疫グロブリン融合タンパク質およびその使用方法を提供する。
【0052】
本発明の様々な態様が以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明される。サブセクションの使用は、本発明を限定することを意味しない。各サブセクションは、本発明の任意の態様に適用され得る。本願において、「または」の使用は、別段の記載がない限り「および/または」を意味する。
【0053】
イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)
本発明に適したI2Sは、天然に存在するイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)タンパク質の少なくとも部分的な活性を代替し得るか、またはI2Sの欠乏に関連する1以上の表現型もしくは症状を救助し得る任意のタンパク質またはタンパク質の一部である。本明細書において、用語「I2S酵素」および「I2Sタンパク質」ならびに文法上同等の用語は互換的に使用される。
【0054】
通常、ヒトI2Sタンパク質は、前駆体型として産生される。ヒトI2Sの前駆体型は、シグナルペプチド(完全長前駆体のアミノ酸残基1~25)、プロペプチド(完全長前駆体のアミノ酸残基26~33)、ならびに42kDa鎖(完全長前駆体の残基34~455)および14kDa鎖(完全長前駆体の残基446~550)にさらにプロセシングされ得る鎖(完全長前駆体の残基34~550)を含む。通常、前駆体型は、550個のアミノ酸を含む完全長前駆体または完全長I2Sタンパク質とも呼ばれる。典型的な野生型または天然に存在するヒトI2Sタンパク質のシグナルペプチドが除去された成熟型(配列番号1)および完全長前駆体(配列番号2)のアミノ酸配列を表1に示す。シグナルペプチドには下線が引かれている。さらに、ヒトI2Sタンパク質アイソフォームaおよびb前駆体のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3および4として表1に示す。
表1.ヒトイズロン酸-2-スルファターゼ
【表1】
【0055】
いくつかの実施態様において、本発明に適したI2Sは、成熟ヒトI2Sタンパク質(配列番号1)である。本明細書に開示されているように、配列番号1はヒトI2Sタンパク質の標準的なアミノ酸配列を表す。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、I2S遺伝子の5’UTR内の代替開始部位における転写に起因する配列番号1のスプライスアイソフォームおよび/またはバリアントであり得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、成熟ヒトI2Sタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、成熟ヒトI2Sタンパク質の相同体または類似体は、実質的なI2Sタンパク質活性を保持しながら、野生型または天然に存在するI2Sタンパク質(例えば配列番号1)と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含む改変された成熟ヒトI2Sタンパク質であり得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、成熟ヒトI2Sタンパク質(配列番号1)と実質的に相同である。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、成熟ヒトI2Sタンパク質(配列番号1)と実質的に同一である。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、成熟ヒトI2Sタンパク質のフラグメントまたは一部を含む。
【0056】
あるいは、適切なI2Sは完全長I2Sタンパク質である。いくつかの実施態様において、適切なI2Sは、完全長ヒトI2Sタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、完全長ヒトI2Sタンパク質の相同体または類似体は、実質的なI2Sタンパク質活性を保持しながら、野生型または天然に存在する完全長I2Sタンパク質(例えば配列番号2)と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含む改変された完全長ヒトI2Sタンパク質であり得る。したがって、いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、完全長ヒトI2Sタンパク質(配列番号2)と実質的に相同である。例えば、I2Sタンパク質は、配列番号2と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、配列番号2と実質的に同一である。例えば、I2Sタンパク質は、配列番号2と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、完全長ヒトI2Sタンパク質のフラグメントまたは一部を含む。本明細書において、完全長I2Sタンパク質は通常、シグナルペプチド配列を含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、適切なI2SはヒトI2Sアイソフォームaタンパク質である。いくつかの実施態様において、適切なI2Sは、ヒトI2Sアイソフォームaタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、ヒトI2Sアイソフォームaタンパク質の相同体または類似体は、実質的なI2Sタンパク質活性を保持しながら、野生型または天然に存在するヒトI2Sアイソフォームaタンパク質(例えば配列番号3)と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含む改変されたヒトI2Sアイソフォームaタンパク質であり得る。したがって、いくつかの実施態様において、適切なI2Sは、ヒトI2Sアイソフォームaタンパク質(配列番号3)と実質的に相同である。例えば、適切なI2Sは、配列番号3と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施態様において、適切なI2Sは、配列番号3と実質的に同一である。例えば、適切なI2Sは、配列番号3と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施態様において、適切なI2Sは、ヒトI2Sアイソフォームaタンパク質のフラグメントまたは一部を含む。本明細書において、ヒトI2Sアイソフォームaタンパク質は通常、シグナルペプチド配列を含む。
【0058】
いくつかの実施態様において、適切なI2SはヒトI2Sアイソフォームbタンパク質である。いくつかの実施態様において、適切なI2Sは、ヒトI2Sアイソフォームbタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、ヒトI2Sアイソフォームbタンパク質の相同体または類似体は、実質的なI2Sタンパク質活性を保持しながら、野生型または天然に存在するヒトI2Sアイソフォームbタンパク質(例えば配列番号4)と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含む改変されたヒトI2Sアイソフォームbタンパク質であり得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、ヒトI2Sアイソフォームbタンパク質(配列番号4)と実質的に相同である。例えば、I2Sタンパク質は、配列番号4と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、配列番号4と実質的に同一である。例えば、I2Sタンパク質は、配列番号4と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施態様において、I2Sタンパク質は、ヒトI2Sアイソフォームbタンパク質のフラグメントまたは一部を含む。本明細書において、ヒトI2Sアイソフォームbタンパク質は通常、シグナルペプチド配列を含む。
【0059】
当業者は、I2Sポリペプチドにおいて保存的アミノ酸置換がなされ得、前述のポリペプチドの機能的に同等なバリアント(すなわち、バリアントはI2Sポリペプチドの機能を保持している)が提供され得ることを理解する。本明細書において、保存的アミノ酸置換は、ポリペプチドの三次構造および/または活性をあまり変化させないアミノ酸置換を指す。バリアントは、当業者に公知のポリペプチド配列を変化させる方法に従って調製され得、そのような方法をまとめた文献(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New York)において見出されるバリアントを含む。例示的なI2Sポリペプチドの機能的に同等なバリアントは、配列番号2の保存的アミノ酸置換を含む。アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸間でなされる置換が含まれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D。
【0060】
I2S-免疫グロブリン融合タンパク質
本発明は、任意の精製されたスルファターゼ-免疫グロブリン融合タンパク質(例えば、I2S-免疫グロブリン融合タンパク質)を製造するために使用され得る。特に本発明は、介在配列を伴って、または伴わずにI2Sを血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンに融合させた融合タンパク質を製造するために使用され得る。本明細書において、「血液脳関門」または「BBB」は末梢循環と脳および脊髄との間の障壁を指し、これは脳毛細血管内皮細胞の細胞膜内の密着結合によって形成され、脳への分子の輸送を制限する非常に緊密な障壁を形成する;BBBは、分子量60Daの尿素のように小さな分子でさえ制限できるほど緊密である。脳内の血液脳関門、脊髄内の血液脊髄関門および網膜内の血液網膜関門は中枢神経系(CNS)内の隣接した毛細血管関門であり、まとめて血液脳関門またはBBBと呼ばれる。
【0061】
免疫グロブリン
BBBは、血液から脳への高分子の輸送を可能にする特異的な受容体を有することが示されている。例えば、受容体介在性エンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスを誘導し得る任意の免疫グロブリンが使用され得る。本発明において有用な例示的な内在性BBB受容体介在性輸送系には、インスリン、トランスフェリン、インスリン様増殖因子1および2(IGFlおよびIGF2)、レプチンおよびリポタンパク質を輸送する系が含まれる。したがって、いくつかの実施態様において、本発明における適切な免疫グロブリンは、内在性BBB受容体に結合することにより、BBBを通過する。様々な内在性BBB受容体が当分野で公知であり、よく特徴付けられている。例えば、インスリン受容体およびその細胞外インスリン結合ドメイン(ECD)は、構造的および機能的に当分野で広範に特徴付けられている。例えば、Yip et al (2003), J. Biol. Chem, 278(30):27329-27332;およびWhittaker et al. (2005), J. Biol. Chem, 280(22):20932-20936を参照。ヒトインスリン受容体のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、GenBankアクセッション番号NM000208に見出され得る。
【0062】
限定されない例として、本発明における適切な免疫グロブリンは、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、インスリン様増殖因子1および2(IGF1およびIGF2)受容体、レプチン受容体および/またはリポタンパク質受容体に結合する。他の実施態様において、適切な免疫グロブリンは、単一ドメイン抗体(sdAb)(FC5またはFC44など)であり得る。
【0063】
本明細書において、用語「免疫グロブリン」は、抗体または抗体の一部を指す。「抗体」は、特定の標的抗原に対する特異的な結合を与えるのに十分な標準的な免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドである。抗体は2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)を含み、これらは互いに結合して「Y字型」構造と一般に呼ばれる構造をとる。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(可変(VH)ドメインおよび3つの定常ドメイン:CH1、CH2およびCH3)から構成される。各軽鎖は2つのドメイン(可変(VL)ドメインおよび定常(CL)ドメイン)から構成される。(重鎖または軽鎖にかかわらず)各可変ドメインは、「相補性決定領域」として知られる3つの超可変ループ(CDR1、CDR2およびCDR3)およびいくらか不変の4つの「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)を含む。フラグメント結晶化可能(Fc)領域は、2つの重鎖のCH2およびCH3ドメインを含む。天然に存在する抗体のFc領域は、補体系の要素およびエフェクター細胞(例えば細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含む)上の受容体に結合する。したがって、「免疫グロブリン」は、抗体の構造単位(例えば、重鎖または軽鎖)、フラグメント(例えば、Fc、Fab、F(ab’)2、F(ab)2またはFab’)もしくは領域(例えば、可変領域、より具体的にはCDR)、または組換え抗体(限定されないが、scFv、scFv-Fc融合物、二重特異性抗体、三重特異性抗体および四重特異性抗体を含む)を指し得る。「抗体」は、2つの異なる抗体のフラグメントから構成され、結果として2つの異なる種類の抗原に結合する人工タンパク質である二重特異性抗体であり得る。抗体は、アイソタイプまたはクラスと呼ばれる種々の分類であり得る。有胎盤哺乳類には、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMとして知られる5つの抗体アイソタイプが存在する。価数は、抗体の抗原結合部位の数である。したがって、複数の抗原結合部位を含む種々のアイソタイプが存在し得る。例えば、IgMは5つの「Y」字型単量体の5量体である;したがって、完全なIgMタンパク質は10個の重鎖、10個の軽鎖および10個の抗原結合アームを含み、IgMの価数は10である。
【0064】
本発明が、F(ab’)2、Fab、FvおよびFdフラグメント;Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域がヒトまたは非ヒト相同配列に置換されているキメラ抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域がヒトまたは非ヒト相同配列に置換されているキメラF(ab’)2フラグメント抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域がヒトまたは非ヒト相同配列に置換されているキメラFabフラグメント抗体;ならびに、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域がヒトまたは非ヒト相同配列に置換されているキメラFdフラグメント抗体を包含することは、当業者には明らかである。本発明はまた、いわゆる単鎖抗体を含む。いくつかの実施態様において、本発明の抗体は1つのCDRのみを含む。
【0065】
いくつかの実施態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体(Mab)であり、典型的にはマウスモノクローナル抗体のヒト化によって得られるヒト-マウスキメラ抗体である。このような抗体は、例えば抗原投与に応答して特異的なヒト抗体を産生するように「設計」されたトランスジェニックマウスから得られる。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座の要素が、内在性重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的破壊を含む胚性幹細胞株由来のマウスの系統に導入される。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成し得、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを製造するために使用され得る。
【0066】
ヒトに使用される場合、ヒトに投与してもあまり免疫原性ではない程度のヒト配列(例えば、約80%のヒトおよび約20%のマウス、または約85%のヒトおよび約15%のマウス、または約90%のヒトおよび約10%のマウス、または約95%のヒトおよび5%のマウス、または約95%よりも大きいヒトおよび約5%未満のマウス)を含むキメラ抗体(例えば、HIR Ab、BBBを通過できる他の抗体)が好ましい。より高度にヒト化された形態の抗体(例えば、HIR Ab、BBBを通過できる他の抗体)が設計され得、ヒト化抗体(例えばHIR Ab)はマウスHIR Abと同等の活性を有し、本発明の実施態様において使用され得る。例えば、2002年11月27日に出願された米国特許出願公開第2004-0101904号および2005年2月17日に出願された第2005-0142141号を参照。本発明における使用に十分なヒト配列を有するヒトBBBインスリン受容体に対するヒト化抗体は、例えば、Boado et al. (2007), Biotechnol Bioeng, 96(2):381-391に記載されている。
【0067】
HIRMab-I2S-融合タンパク質
ある実施態様において、本開示の抗体は、I2Sと融合させたヒトインスリン受容体モノクローナル抗体(HIRMab-I2S)である。HIRMab-I2Sは、配列番号5と約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列によって規定される。ある実施態様において、HIRMab-I2S配列は配列番号5と同一である。配列番号5は、成熟した525アミノ酸のヒトイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)酵素をキメラヒトインスリン受容体モノクローナル抗体の重鎖(HC)のカルボキシ末端に融合させたIgG HC融合タンパク質(970アミノ酸)をコードしている。HIRMab-I2Sのアミノ酸配列を以下の表2に示す。
【0068】
ある実施態様において、本開示の抗体は、組換えヒトIgG軽鎖のアミノ酸配列を含む。組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号6と約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列によって規定される。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は配列番号6と同一である。
表2:I2Sと融合させたヒトインスリン受容体モノクローナル抗体(HIRMab-I2S)





【表2】
*配列番号5の下線部分は、ヒトイズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)の成熟した525アミノ酸配列に対応している。
【0069】
当業者は、本明細書に提示されているポリペプチド(例えば、HIRMab-I2S、組換えヒトIgG軽鎖および/またはI2S)のいずれかにおいて保存的アミノ酸置換がなされ得、前述のポリペプチドの機能的に同等なバリアント(すなわち、バリアントは機能を保持している)が提供され得ることを理解する。
【0070】
ある実施態様において、HIR抗体またはHIRMab-I2S融合タンパク質は、上述のHIR重鎖およびHIR軽鎖のいずれかに対応する重鎖および軽鎖の両方を含む。
【0071】
いくつかの実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体(HIR)に結合するキメラモノクローナル抗体を含む。HIRは、内在性脳毛細血管内皮インスリン受容体を介して血液脳関門を通過する輸送を媒介し得る。HIRは、内在性神経インスリン受容体を介した輸送を媒介し得る。
【0072】
本発明において使用されるHIR抗体はグリコシル化されていてもよく、非グリコシル化されていてもよい。抗体がグリコシル化されている場合、抗体の機能にあまり影響を与えない任意のグリコシル化のパターンが使用され得る。グリコシル化は抗体が作製される細胞に典型的なパターンで生じ得、細胞の種類によって様々であり得る。例えば、マウス骨髄腫細胞によって産生されるモノクローナル抗体のグリコシル化パターンは、遺伝子導入されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生されるモノクローナル抗体のグリコシル化パターンとは異なり得る。いくつかの実施態様において、抗体は、遺伝子導入されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生されるパターンでグリコシル化される。
【0073】
当業者は、現在の技術が膨大な数の候補抗体(例えば、HIR Ab、BBBを通過できる他の抗体)の配列バリアントを(例えばインビトロで)生成でき、標的抗原(ヒトインスリン受容体のECDまたはその単離されたエピトープなど)への結合についてスクリーニングできることを認識している。例えば、抗体配列バリアントの超ハイスループットスクリーニングの例について、Fukuda et al. (2006) "In vitro evolution of single-chain antibodies using mRNA display," Nuc. Acid Res., 34(19)(オンラインで公開されている)を参照。また、Chen et al. (1999), "In vitro scanning saturation mutagenesis of all the specificity determining residues in an antibody binding site," Prot Eng, 12(4): 349-356も参照。インスリン受容体ECDは、例えばColoma et al. (2000) Pharm Res, 17:266-274に記載されているように精製され得、HIR Abおよび公知のHIR AbのHIR Ab配列バリアントについてスクリーニングするために使用され得る。
【0074】
したがって、いくつかの実施態様において、所望のレベルのヒト配列を有する遺伝子組換えHIR AbをI2Sと融合し、二機能性分子である組換え融合抗体が作製される。HIR Ab-I2S融合抗体は、(i)ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに結合し;(ii)デルマタンおよび/またはヘパラン硫酸における結合の加水分解を触媒し;かつ、(iii)BBB HIR上の輸送を介してBBBを通過でき、末梢投与後に脳内でI2S活性を保持できる。
【0075】
リンカー
本明細書に記載のI2S融合タンパク質(例えばHIRMAb-I2S)は、免疫グロブリンとI2Sとの間に共有結合を含み得る。共有結合は、免疫グロブリン(例えばHIR抗体)のカルボキシ末端またはアミノ末端およびI2Sのアミノ末端またはカルボキシ末端に対する結合であり得、この結合は、免疫グロブリンが受容体のECDに結合して血液脳関門を通過することを可能にし、I2Sがその活性の治療上有用な部分を保持することを可能にする。ある実施態様において、共有結合は抗体の重鎖とI2Sとの間にある。いくつかの実施態様において、共有結合は抗体の軽鎖とI2Sとの間にある。任意の適切な結合(例えば、軽鎖のカルボキシ末端からI2Sのアミノ末端への結合、重鎖のカルボキシ末端からI2Sのアミノ末端への結合、軽鎖のアミノ末端からI2Sのアミノ末端への結合、重鎖のアミノ末端からI2Sのアミノ末端への結合、軽鎖のカルボキシ末端からI2Sのカルボキシ末端への結合、重鎖のカルボキシ末端からI2Sのカルボキシ末端への結合、軽鎖のアミノ末端からI2Sのカルボキシ末端への結合、または重鎖のアミノ末端からI2Sのカルボキシ末端への結合)が使用され得る。いくつかの実施態様において、結合はHCのカルボキシ末端からI2Sのアミノ末端への結合である。
【0076】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の融合タンパク質は、融合アミノ酸配列の一部としてI2Sと免疫グロブリンとの間にリンカーまたはスペーサーを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の融合タンパク質は、融合タンパク質の間にリンカーまたはスペーサーを含まない。通常、適切なリンカーまたはスペーサーはアミノ酸リンカーまたはスペーサー(ペプチドリンカーまたはスペーサーとも呼ばれる)である。アミノ酸(またはペプチド)リンカーまたはスペーサーは、一般に柔軟であるか、または2つのタンパク質部分の間に構造(アルファ-ヘリックスなど)を介入させるように設計される。適切なペプチド配列リンカーは、少なくとも0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーは、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1未満のアミノ酸長である。いくつかの実施態様において、I2Sは標的化抗体に直接結合しており、したがって0アミノ酸長である。いくつかの実施態様において、適切なペプチドリンカーは、例えば10~50(例えば、10~20、10~25、10~30、10~35、10~40、10~45、10~50)アミノ酸長であり得る。
【0077】
いくつかの実施態様において、適切なリンカーは、グリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を任意の組合せまたは順序で含む。いくつかの例において、リンカー中のグリシン、セリンおよびアラニン残基の合計の割合は、リンカー中の残基の総数の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%である。いくつかの実施態様において、リンカー中のグリシン、セリンおよびアラニン残基の合計の割合は、リンカー中の残基の総数の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%である。いくつかの実施態様において、任意の数のアミノ酸(天然または合成アミノ酸を含む)の組合せがリンカーに使用され得る。いくつかの実施態様において、2アミノ酸リンカーが使用される。いくつかの実施態様において、リンカーは配列Ser-Serを有する。いくつかの実施態様において、2アミノ酸リンカーは、グリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を任意の組合せまたは順序で含む(例えば、Gly-Gly、Ser-Gly、Gly-Ser、Ser-Ser、Ala-Ala、Ser-AlaまたはAla-Serリンカー)。いくつかの実施態様において、2アミノ酸リンカーは、1つのグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基と別のアミノ酸からなる(例えば、Ser-X、ここでXは任意の公知のアミノ酸である)。さらに他の実施態様において、2アミノ酸リンカーは、Gly、SerまたはAlaを除く任意の2つのアミノ酸(例えばX-X)からなる。
【0078】
本明細書に記載されているように、いくつかの実施態様において、リンカーは2アミノ酸長よりも長い。そのようなリンカーはまた、本明細書にさらに記載されているように、グリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を任意の組合せまたは順序で含み得る。いくつかの実施態様において、リンカーは、1つのグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を他のアミノ酸とともに含む(例えば、Ser-nX、ここでXは任意の公知のアミノ酸であり、nはアミノ酸の数である)。他の実施態様において、リンカーは、任意の2つのアミノ酸(例えば、X-X)からなる。いくつかの実施態様において、前記の任意の2つのアミノ酸は、任意の組合せまたは順序のGly、SerまたはAlaであり、それらの間に介在する可変数のアミノ酸内にある。いくつかの実施態様において、適切なリンカーは、少なくとも1つのGly、少なくとも1つのSer、および/または少なくとも1つのAlaを含む。いくつかの実施態様において、リンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のGly、Serおよび/またはAla残基を含む。いくつかの実施態様において、適切なリンカーは、反復配列中に任意の組合せまたは数のGlyおよびSer((Gly4Ser)3または他のバリエーションなど)を含む。
【0079】
いくつかの実施態様において、リンカーまたはスペーサーは、配列GGGGGAAAAGGGG(配列番号7)、GAP(配列番号8)またはGGGGGP(配列番号9)を含み得る。いくつかの実施態様において、様々な短いリンカー配列が縦列反復で存在し得る。例えば、適切なリンカーは、縦列反復で存在するGGGGGAAAAGGGG(配列番号7)のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施態様において、適切なリンカーは、GGGGGAAAAGGGG(配列番号7)の配列をフレーム化(frame)する1以上のGAP配列をさらに含み得る。例えば、適切なリンカーは、GAPGGGGGAAAAGGGGGAPGGGGGAAAAGGGGGAPGGGGGAAAAGGGGGAP(配列番号10)のアミノ酸配列を含み得る。
【0080】
いくつかの実施態様において、適切なリンカーまたはスペーサーは、本明細書に記載のリンカー配列のいずれかと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含み得る。
【0081】
追加の例示的なリンカーまたはスペーサー配列がUS8,580,922に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
本発明における使用のためのリンカーは、当分野で公知の任意の方法を用いて設計され得る。例えば、融合タンパク質の設計において最適なアミノ酸リンカーを決定するための複数の公開されているプログラムが存在する。タンパク質の配列およびリンカーの所望の長さについての使用者の入力に基づいて最適なリンカーのアミノ酸配列を自動的に生成する公開されているコンピュータプログラム(LINKERプログラムなど)が、本方法および本組成物のために使用され得る。多くの場合、このようなプログラムは、タンパク質サブドメインに結合する天然に存在するリンカーの観察された傾向を用いてタンパク質工学における使用に最適なタンパク質リンカーを予測し得る。いくつかの例において、そのようなプログラムは、最適なリンカーを予測する他の方法を使用する。本発明のためのリンカーを予測するのに適したいくつかのプログラムの例が当分野において記載されている(例えば、Xue et al. (2004) Nucleic Acids Res. 32, W562-W565(機能的な融合タンパク質を構築するためのリンカー配列の設計を支援するLINKERプログラムへのインターネットリンクを提供するウェブサーバーの発行物);George and Heringa, (2003), Protein Engineering, 15(11):871-879(リンカープログラムへのインターネットリンクを提供し、タンパク質リンカーの合理的な設計を記述している);Argos, (1990), J. Mol. Biol. 211 :943-958;Arai et al. (2001) Protein Engineering, 14(8):529-532;Crasto and Feng, (2000) Protein Engineering 13(5):309-312を参照)。
【0083】
ペプチドリンカー配列はプロテアーゼ切断部位を含み得る;しかし、これはI2S活性を維持するための必要条件ではない。
【0084】
リソソーム標的化部分
いくつかの実施態様において、本発明の適切な融合タンパク質は、リソソーム標的化部分をさらに含む。通常、リソソーム標的化部分は、標的細胞の表面上の受容体に結合して細胞への取り込みおよび/またはリソソーム標的化を促進する部分を指す。例えば、このような受容体は、マンノース-6-リン酸(M6P)残基に結合する陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CI-MPR)であり得る。さらに、CI-MPRは他のタンパク質(IGF-IIを含む)にも結合する。したがって、いくつかの実施態様において、本明細書に記載のI2S融合タンパク質は、タンパク質の表面上にM6P残基を含む。特に、本明細書に記載の融合タンパク質は、CI-MPRに対してより高い結合親和性を有するビスリン酸化オリゴ糖を含み得る。いくつかの実施態様において、リソソーム標的化部分は、マンノース-6リン酸依存的な様式でCI-M6PRに結合する任意のタンパク質、ペプチドまたはそのフラグメントである。いくつかの実施態様において、リソソーム標的化部分は、CI-M6PRの領域、ドメインおよび/または細胞外部分に直接結合する任意のタンパク質、ペプチドまたはそのフラグメントである。いくつかの実施態様において、リソソーム標的化部分は、M6P残基を介してCI-M6PRの領域、ドメインおよび/または細胞外部分に直接結合する任意のタンパク質、ペプチドまたはそのフラグメントである。いくつかの実施態様において、M6P残基は、2-マンノース-6-リン酸残基である。
【0085】
いくつかの実施態様において、リソソーム標的化部分は、マンノース-6-リン酸非依存的な様式でCI-M6PRに結合する任意のタンパク質、ペプチドまたはそのフラグメントである。適切なリソソーム標的化部分は、限定されないが、IGF-II、IGF-I、ApoE、TAT、RAP、p97、プラスミノーゲン、白血病抑制因子ペプチド(LIF)、E1A刺激遺伝子の細胞抑制因子ペプチド(CREG)、ヒトソルチリン(Sortlin)-1プロペプチド(SPP)、ヒトプロサポシンペプチド(SapDC)およびプログラニュリンを含むタンパク質またはペプチドに由来し得る。
【0086】
様々なさらなるリソソーム標的化部分が当分野で公知であり、本発明の実施に使用され得る。例えば、特定のペプチドに基づくリソソーム標的化部分が、米国特許第7,396,811号、第7,560,424号および第7,629,309号;米国出願公開第2003-0082176号、第2004-0006008号、第2003-0072761号、第20040005309号、第2005-0281805号、第2005-0244400号、ならびに国際公開WO03/032913、WO03/032727、WO02/087510、WO03/102583、WO2005/078077、WO/2009/137721に記載されており、これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
いくつかの実施態様において、リソソーム標的化部分は、細胞によってM6Pリン酸化される任意のペプチドである。いくつかの実施態様において、該ペプチドはCI-M6PRに結合できる。いくつかの実施態様において、該ペプチドは、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンL、ベータ-グルクロニダーゼ、ベータ-マンノシダーゼ、アルファ-フコシダーゼ、ベータ-ヘキソサミニダーゼ、アリールスルファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ホスホマンナン(Phosphomannan)、潜在型TGFベータ、白血病抑制因子、プロリフェリン、プロレニン、単純ヘルペスウイルス、PI-LLC切断型GPIアンカー、レチノイン酸、IGFII、プラスミノーゲン、サイログロブリン、TGFベータR-V、CD87、GTP結合タンパク質(Gi-1、Gi-2およびGi-3)、HA-Iアダプチン、HA-IIアダプチン、およびこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質内に見出されるアミノ酸配列である。いくつかの実施態様において、該アミノ酸配列は、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンL、ベータ-グルクロニダーゼ、ベータ-マンノシダーゼ、アルファ-フコシダーゼ、ベータ-ヘキソサミニダーゼ、アリールスルファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ホスホマンナン、潜在型TGFベータ、白血病抑制因子、プロリフェリン、プロレニン、単純ヘルペスウイルス、PI-LLC切断型GPIアンカー、レチノイン酸、IGFII、プラスミノーゲン、サイログロブリン、TGFベータR-V、CD87、GTP結合タンパク質(Gi-1、Gi-2およびGi-3)、HA-Iアダプチン、HA-IIアダプチン、およびこれらの組合せからなる群から選択される1以上のタンパク質のドメイン、フラグメント、領域またはセグメントを含む。いくつかの実施態様において、ポリペプチドは合成により作製される。いくつかの実施態様において、ポリペプチドは組換えにより作製される。両方の手法が当分野で広く使用されており、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。
【0088】
いくつかの実施態様において、適切なリソソーム標的化部分は、M6P受容体への結合を促進するために追加のグリコシル化部位を提供し得る。N結合型グリコシル化部位を有する限り、任意のペプチドが本発明の範囲内で使用され得る。N結合型グリコシル化部位は、コンピュータアルゴリズムおよびソフトウェア(これらの多くは当分野で一般的に知られている)によって予測され得る。あるいは、N結合型グリコシル化は、当分野で一般的に知られている多くのアッセイのいずれかを用いて実験的に決定され得る。
【0089】
I2S免疫グロブリン融合タンパク質の作製
本発明は、様々な手段によって作製されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質を精製するために使用され得る。例えば、I2S免疫グロブリン融合タンパク質は、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を発現するように設計された宿主細胞系を利用することによって作製され得る。本明細書において、用語「宿主細胞」は、本明細書に記載のI2S免疫グロブリン融合タンパク質を作製するために使用され得る細胞を指す。特に、宿主細胞は、本明細書に記載のI2S免疫グロブリン融合タンパク質を大規模に作製するのに適している。適切な宿主細胞は、多様な生物(限定されないが、哺乳類、植物、鳥類(例えば、鳥類系)、昆虫、酵母および細菌を含む)に由来し得る。いくつかの実施態様において、宿主細胞は哺乳類細胞である。
【0090】
哺乳類細胞株
細胞培養およびポリペプチドの発現に感受性のある任意の哺乳類細胞または細胞型が、宿主細胞として本発明に従って利用され得る。本発明に従って使用され得る哺乳類細胞の限定されない例には、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)、HeLa細胞;BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell、Leiden、The Netherlands));SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(浮遊培養での増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸がん細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);buffaloラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳がん(MMT 060562、ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞がん株(Hep G2)が含まれる。いくつかの実施態様において、適切な哺乳類細胞は、エンドソーム酸性化欠損細胞ではない。
【0091】
さらに、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する商業的または非商業的に利用可能な任意の数のハイブリドーマ細胞株が本発明に従って利用され得る。当業者は、ハイブリドーマ細胞株が種々の栄養要求を有し得、かつ/または最適な増殖およびポリペプチドまたはタンパク質の発現のために種々の培養条件を必要とし得ることを理解しており、必要に応じて条件を改変できる。
【0092】
非哺乳類細胞株
細胞培養およびポリペプチドの発現に感受性のある任意の非哺乳類由来細胞または細胞型が、宿主細胞として本発明に従って利用され得る。本発明に従って使用され得る非哺乳類宿主細胞および細胞株の限定されない例には、酵母について、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Pichia angusta、Schizosacccharomyces pombe、Saccharomyces cerevisiae、およびYarrowia lipolytica;昆虫について、Sodoptera frugiperda、Trichoplusis ni、Drosophila melangosterおよびManduca sexta;細菌について、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Bacillus subtilis、Bacillus lichenifonnis、Bacteroides fragilis、Clostridia perfringens、Clostridia difficile;両生類からのXenopus Laevis;ならびに、植物からのDaucus carota、tobacco Nicotiana tabacum、Zizania aquatic、Zizania palustris、Zizania latifoliaおよびLemna(ウキクサ)に由来する細胞および細胞株が含まれる。
【0093】
高活性I2S融合タンパク質の大規模作製
本発明において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を発現するように設計された細胞は、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を商業的に実行可能な規模で作製する能力について選択される。特に、本発明において設計された細胞は、I2S融合タンパク質を高いレベルおよび高い酵素活性で作製できる。
【0094】
上述のように、通常、I2Sの酵素活性は(例えば59番目のアミノ酸における)保存されたシステインのホルミルグリシンへの翻訳後修飾によって影響される。この翻訳後修飾は小胞体におけるタンパク質合成中に生じ、FGEによって触媒される。I2Sの酵素活性は、I2Sがホルミルグリシン修飾を有する程度と正に相関する。例えば、比較的多くの量のホルミルグリシン修飾を有するI2S調製物は通常、比較的高い酵素比活性を有する;一方、比較的少量のホルミルグリシン修飾を有するI2S調製物は通常、比較的低い酵素比活性を有する。
【0095】
I2SとFGEのタンパク質またはmRNAの細胞内比率が、作製されたI2S融合タンパク質上のホルミルグリシン修飾の程度に影響し得ることがさらに想定される。いくつかの実施態様において、所望の細胞中に発現したI2SおよびFGEは、異なるタンパク質および/またはmRNA発現レベルを有する。いくつかの実施態様において、I2S融合タンパク質またはmRNA発現レベルは、FGEのタンパク質またはmRNAレベルよりも少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8、9、10、15、20、25、20、35、30、45、40、50、60、70、80、90または100倍高い。いくつかの実施態様において、組換えFGEタンパク質またはmRNA発現レベルは、I2S融合タンパク質のタンパク質またはmRNAレベルよりも少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8、9または10倍高い。mRNAまたはタンパク質レベルを測定するための様々な方法が当分野で公知であり、本発明を実施するために使用され得る。mRNAレベルを測定するための例示的な方法には、限定されないが、ノーザンブロット、QRTPCR、RNAシークエンシングおよびマイクロアレイが含まれる。タンパク質レベルを測定するための例示的な方法には、限定されないが、ELISA、ウエスタンブロット、Alpha Screen、ECLおよびラベルフリーバイオレイヤーが含まれる。
【0096】
したがって、いくつかの実施態様において、細胞培養条件(例えば、標準的な大規模浮遊または接着培養条件)下で培養された所望の細胞は、約30mg/L/日、35mg/L/日、40mg/L/日、45mg/L/日、50mg/L/日、55mg/L/日、60mg/L/日、65mg/L/日、70mg/L/日、75mg/L/日、80mg/L/日、85mg/L/日、90mg/L/日、95mg/L/日、100mg/L/日、105mg/L/日、110mg/L/日、115mg/L/日、120mg/L/日、125mg/L/日、130mg/L/日、135mg/L/日、140mg/L/日、145mg/L/日、150mg/L/日、200mg/L/日、250mg/L/日、300mg/L/日、350mg/L/日、400mg/L/日、450mg/L/日、500mg/L/日、550mg/L/日、600mg/L/日、もしくは650mg/L/日またはそれ以上の平均回収力価(mg/L)でI2S融合タンパク質を産生し得る。本明細書において、用語「力価」は、細胞培養によって一日に産生される組換えにより発現されたポリペプチドまたはタンパク質の合計時間平均量を、所定の培地容量で割ったものを指す。
【0097】
いくつかの実施態様において、細胞培養条件(例えば、標準的な大規模浮遊または接着培養条件)下で培養された所望の細胞は、約0.1ピコグラム/細胞/日またはそれ以上の量(例えば、約0.1、0.15、0.2、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100ピコグラム/細胞/日よりも多くの量)のI2S融合タンパク質を産生し得る。いくつかの実施態様において、細胞培養条件(例えば、標準的な大規模浮遊または接着培養条件)下で培養された所望の細胞は、約1~10ピコグラム/細胞/日の範囲の量(例えば、約1~9ピコグラム/細胞/日、約1~8ピコグラム/細胞/日、約1~7ピコグラム/細胞/日、約1~6ピコグラム/細胞/日、約1~5ピコグラム/細胞/日、約1~4ピコグラム/細胞/日、約1~3ピコグラム/細胞/日、約2~9ピコグラム/細胞/日、約2~8ピコグラム/細胞/日、約2~7ピコグラム/細胞/日、約2~6ピコグラム/細胞/日、約2~5ピコグラム/細胞/日、約2~4ピコグラム/細胞/日、約2~3ピコグラム/細胞/日)のI2S酵素を産生できる。
【0098】
いくつかの実施態様において、細胞培養条件(例えば、標準的な大規模浮遊または接着培養条件)下で培養された所望の細胞は、配列番号1のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約60%(例えば、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の変換を含むI2S融合タンパク質を産生し得る。
【0099】
FGly変換の割合を決定するための様々な方法が公知であり、使用され得る。一般に、ホルミルグリシン変換の割合(%FG)は、以下の式を用いて算出され得る:
【数1】
【0100】
例えば、50%FGは、精製されたI2S融合タンパク質の半分がいかなる治療効果も有さず、酵素的に不活性であることを意味する。%FGを算出するために様々な方法が使用され得る。例えば、ペプチドマッピングが使用され得る。簡潔に述べると、I2Sタンパク質は、プロテアーゼ(例えば、トリプシンまたはキモトリプシン)を用いて短いペプチドに消化され得る。短いペプチドは、各ペプチド(特に、成熟ヒトI2Sの59位に対応する位置を含むペプチド)の性質および量が対照(例えば、FGly変換を有しないI2Sタンパク質または100%のFGly変換を有するI2Sタンパク質)と比較して決定され得るように、クロマトグラフィー(例えば、HPLC)を用いて分離および特徴付けされ得る。(活性I2S分子の数に対応する)FGlyを含むペプチドの量ならびに(全I2S分子の数に対応する)FGlyおよびCysを有するペプチドの総量が決定され得、%FGを反映する割合が算出され得る。
【0101】
細胞培地および条件
I2S免疫グロブリン融合タンパク質を作製するために様々な細胞培地および条件が使用され得る。例えば、I2S免疫グロブリン融合タンパク質は、血清含有培地または無血清培地中で作製され得る。いくつかの実施態様において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質は、既知組成培地中で作製される。いくつかの実施態様において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質は、動物質を含まない培地(すなわち、動物由来成分を有しない培地)中で作製される。いくつかの実施態様において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質は、既知組成培地中で作製される。本明細書において、用語「既知組成栄養培地」は、実質的にすべての化学成分が公知である培地を指す。いくつかの実施態様において、既知組成栄養培地は、動物由来成分(血清、血清由来タンパク質(例えばアルブミンまたはフェチュイン)および他の成分など)を含まない。いくつかの例において、既知組成培地は、1以上のタンパク質(例えば、タンパク質増殖因子またはサイトカイン)を含む。いくつかの例において、既知組成栄養培地は、1以上のタンパク質加水分解物を含む。他の例において、既知組成栄養培地は、タンパク質を含まない培地(すなわち、タンパク質、加水分解物または未知の組成の成分を含まない無血清培地)である。
【0102】
いくつかの実施態様において、既知組成培地に、1以上の動物由来成分が補充され得る。そのような動物由来成分には、限定されないが、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヤギ血清、ロバ血清、ヒト血清、およびアルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)などの血清由来タンパク質が含まれる。
【0103】
いくつかの実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質を産生する細胞はバイオリアクター中で培養される。I2S免疫グロブリン融合タンパク質を大規模に作製するために、様々な細胞培養条件(限定されないが、ローラーボトル培養、バイオリアクターバッチ培養、バイオリアクターフェドバッチ培養、バイオリアクター波動(wave)灌流培養およびバイオリアクター撹拌槽型灌流培養を含む)が使用され得る。いくつかの実施態様において、I2S融合タンパク質は、浮遊培養された細胞によって産生される。いくつかの実施態様において、I2S融合タンパク質は、接着細胞によって産生される。ある実施態様において、バイオリアクターは、撹拌槽型灌流バイオリアクタープロセスとして機能する。
【0104】
例示的な細胞培地および培養条件が実施例のセクションに記載されている。
【0105】
I2S免疫グロブリン融合タンパク質の精製
いくつかの実施態様において、本発明は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびマルチモーダルクロマトグラフィーのうち1つ以上に基づくプロセスを用いて、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を不純な調製物から精製する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明による本方法は、4つ未満(例えば、4つ未満または3つ未満)のクロマトグラフィー工程を含む。いくつかの実施態様において、本発明による本方法は、2、3または4つのクロマトグラフィー工程を含む。いくつかの実施態様において、本発明による本方法は、3つのクロマトグラフィー工程を含む。いくつかの実施態様において、本発明による本方法は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびマルチモーダルクロマトグラフィーをこの順序で行う。
【0106】
不純な調製物
本明細書において、不純な調製物は、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を含む未処理の生体物質を含む任意の生体物質であり得る。例えば、不純な調製物は、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を産生する細胞(例えば哺乳類細胞)から分泌されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質を含む未処理の細胞培地、またはI2S免疫グロブリン融合タンパク質を含む生の細胞可溶化物であり得る。いくつかの実施態様において、不純な調製物は、部分的に処理された細胞培地または細胞可溶化物であり得る。例えば、細胞培地または細胞可溶化物は、濃縮、希釈、またはウイルス不活化、ウイルス処理もしくはウイルス除去により処理され得る。いくつかの実施態様において、ウイルス除去は、特にナノ濾過および/またはクロマトグラフィー技術を利用し得る。いくつかの実施態様において、ウイルスの不活化は、特に溶媒不活化、界面活性剤不活化、低温殺菌、酸性pH不活化および/または紫外線不活化を利用し得る。いくつかの実施態様において、低pHウイルス不活化の工程は、アフィニティカラムの工程の後、陽イオン交換カラムの工程の前に行われる。ある実施態様において、エンベロープウイルスを不活化するために、アフィニティークロマトグラフィー溶出物試料は低pH(例えば、約3.6~3.8pH)で約30~60分間維持される。いくつかの実施態様において、最後のクロマトグラフィーカラム工程を行った後に、ウイルス濾過工程が行われる。
【0107】
細胞培地または細胞可溶化物はプロテアーゼ、DNaseおよび/またはRNaseで処理され得、宿主細胞タンパク質および/または核酸(例えばDNAまたはRNA)のレベルを低下させ得る。いくつかの実施態様において、未処理または部分的に処理された生体物質(例えば、細胞培地または細胞可溶化物)は凍結され得、所望の温度(例えば、2~8℃、-4℃、-25℃、-75℃)で一定期間保存され得、次いで精製のために解凍され得る。本明細書において、不純な調製物は出発物質または充填物質とも呼ばれる。
【0108】
アフィニティークロマトグラフィー
いくつかの実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーを含む、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を精製する方法が提供される。簡潔に述べると、アフィニティークロマトグラフィーは、(抗原と抗体との間、酵素と基質との間、または受容体とリガンドとの間などの)高度に特異的な相互作用に依存して生化学的混合物を分離するクロマトグラフィー技術である。いくつかの実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーは、抗原および抗体のクロマトグラフィー(特にプロテインAクロマトグラフィー)である。
【0109】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、標的タンパク質が固相(シリカまたはガラスを含む)上に固定化されたプロテインAに吸着され;固相に結合している混入物が疎水性電解質溶媒で洗浄することによって除去され;標的タンパク質が固相から回収される場合に、一般に実施される。適切なプロテインA樹脂は当分野で公知であり、市販されており、限定されないが、MabSelect SuRe(登録商標)、Mab Select(登録商標)およびプロテインA Sepharose(登録商標)を含む。ある実施態様において、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー樹脂は、MabSelect SuRe(登録商標)樹脂である。
【0110】
ある実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィーカラムが均一濃度のクエン酸Na溶出を含む溶出緩衝液を用いて溶出される場合に実施される。いくつかの実施態様において、溶出緩衝液は、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mMまたは60mMのクエン酸Naを含む。ある実施態様において、溶出緩衝液は、50mMのクエン酸Naを含む。ある実施態様において、均一濃度のクエン酸Na溶出は、0~250mMのクエン酸Na、0~200mM、0~150mMのクエン酸Na、0~100mMのクエン酸Na、0~50mMのクエン酸Naまたは0~25mMのクエン酸Naの範囲を含む。
【0111】
いくつかの実施態様において、均一濃度のクエン酸Na溶出を含む溶出緩衝液は、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0のpHを含む。いくつかの実施態様において、溶出緩衝液のpHは、3.0~4.0、3.1~3.9、3.2~3.8、3.3~3.7、3.4~3.6、または3.6~3.7の範囲内である。
【0112】
陽イオン交換クロマトグラフィー
いくつかの実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーを含む、I2S融合タンパク質を精製する方法が提供される。簡潔に述べると、陽イオン交換クロマトグラフィーは、正に帯電した化合物と負に帯電した樹脂との間の電荷-電荷相互作用に依存したクロマトグラフィー技術である。いくつかの実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、強力な陽イオン交換クロマトグラフィーである。
【0113】
陽イオン交換クロマトグラフィーは一般に、スルホニウムイオンを含む強力な、もしくは弱い陽イオン交換カラム、または通常カルボキシメチル(CM)またはカルボン酸(CX)の官能基を有する弱い陽イオン交換体を用いて実施される。多くの適切な陽イオン交換樹脂が当分野で公知であり、市販されており、限定されないが、Capto SP ImpRes(登録商標)、SP-Sepharose(登録商標)、CM Sepharose(登録商標);Amberjet(登録商標)樹脂;Amberlyst(登録商標)樹脂;Amberlite(登録商標)樹脂(例えば、Amberlite(登録商標) IRA120);ProPac(登録商標)樹脂(例えば、ProPac(登録商標) SCX-10、ProPac(登録商標) WCX-10、ProPac(登録商標) WCX-10);TSK-GEL(登録商標)樹脂(例えば、TSKgel BioAssist S;TSKgel SP-2SW、TSKgel SP-5PW;TSKgel SP-NPR;TSKgel SCX;TSKgel SP-STAT;TSKgel CM-5PW;TSKgel OApak-A;TSKgel CM-2SW、TSKgel CM-3SW、およびTSKgel CM-STAT);およびAcclaim(登録商標)樹脂を含む。ある実施態様において、陽イオン交換樹脂はCapto SP ImpRes(登録商標)である。
【0114】
いくつかの実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、均一濃度のNaCl溶出を含む溶出緩衝液を用いて溶出される。ある実施態様において、溶出緩衝液は、0~400mMのNaCl、0~350mMのNaCl、0~300mMのNaCl、0~250mMのNaClまたは0~200mMのNaClの範囲を含む。
【0115】
通常、均一濃度の溶出は緩衝されている。ある実施態様において、均一濃度の溶出は緩衝されていない。ある実施態様において、均一濃度の溶出は、約5~約14の間のpHに緩衝されている。ある実施態様において、均一濃度の溶出は、約5~約10の間のpHに緩衝されている。ある実施態様において、均一濃度の溶出は、約5~約7の間のpHに緩衝されている。ある実施態様において、均一濃度の溶出は、約5.5~約6.0の間のpHに緩衝されている。ある実施態様において、均一濃度の溶出は、約5.2~約5.8の間のpHに緩衝されている。ある実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、5.2~5.8の間のpHで実行される。ある実施態様において、均一濃度の溶出は、約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10のpHに緩衝されている。
【0116】
マルチモーダルクロマトグラフィー
いくつかの実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーを含む、I2S免疫グロブリン融合タンパク質を精製する方法が提供される。簡潔に述べると、マルチモーダルクロマトグラフィーは、中程度に帯電した化合物間のイオン交換相互作用に依存することによって中程度の精製を提供するクロマトグラフィー技術である。標的タンパク質はカラムを流れ得るが、不純物(例えば宿主細胞タンパク質(HCP))はカラムに結合する。いくつかの実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂は、Capto Adhere樹脂である。いくつかの実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーカラムは、フロースルーモードで操作される。ある実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーカラムは、結合/溶出モードで操作される。いくつかの実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーは、フロースルーモードおよび結合/溶出モードの組合せで操作される。
【0117】
いくつかの実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーカラムは、約4.5~約7.5、約5.0~約7.0、または約5.5~約6.5のpHで実行される。ある実施態様において、マルチモーダルクロマトグラフィーカラムは、約7.0のpHで実行される。
【0118】
いくつかの実施態様において、充填および洗浄は、精製プロセスの最初および/または精製プロセス全体にわたって行われる。ある実施態様において、約1.0M~約2.0Mの塩濃度のNaClが、クロマトグラフィーカラムの充填および洗浄において使用される。
【0119】
I2S免疫グロブリン融合タンパク質の特徴付け
精製されたI2S免疫グロブリンタンパク質は、様々な方法を用いて特徴付けされ得る。
【0120】
HIR結合アッセイ;BBB輸送
ある実施態様において、免疫グロブリンは、ヒトインスリン受容体への少なくとも約70%の結合、ヒトインスリン受容体への80%の結合、ヒトインスリン受容体への90%の結合、またはヒトインスリン受容体への95%の結合を促進する。
【0121】
M6P結合アッセイ;リソソーム輸送
いくつかの実施態様において、I2S上に存在する2-M6P残基はM6P受容体に結合し、内在性リソソームM6P受容体を介した輸送を媒介する。ある実施態様において、2-M6P残基は、M6P受容体への少なくとも約60%の結合、M6P受容体への少なくとも約70%の結合、またはM6P受容体への少なくとも約75%の結合を促進する。
【0122】
いくつかの実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質は、グリカンマップ上の1%~9%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)ピーク面積を含み、これは2-アミノベンズアミドグリカン標識プロセスを介して測定される。ある実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質は、グリカンマップ上の5%~8%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)ピーク面積、またはグリカンマップ上の5.2%~7.2%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)ピーク面積を含む。ある実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質は、5.2%~7.2%の2-マンノース-6-リン酸(2-M6P)残基レベルを含む。
【0123】
純度
精製されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質の純度は通常、最終生成物中に存在する様々な不純物(例えば宿主細胞タンパク質または宿主細胞DNA)のレベルによって測定される。例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)のレベルは、ELISAまたはSDS-PAGEによって測定され得る。いくつかの実施態様において、精製されたHIRMab-I2S融合タンパク質は、10ng未満のHCP/mg I2S融合タンパク質(例えば、9、8、7、6、5、4、3ng未満のHCP/mg I2S融合タンパク質)を含む。様々なアッセイ対照(特にFDAなどの規制機関に許容され得るアッセイ対照)が使用され得る。
【0124】
比活性 - 4-MUアッセイ
いくつかの実施態様において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質の酵素活性は、当分野で公知の様々な方法(例えば、4-メチルウンベリフェリル硫酸塩(4-MUS)の硫酸塩および自然蛍光性4-メチルウンベリフェロン(4-MU)への加水分解を測定する4-MUアッセイなど)を用いて決定され得る。いくつかの実施態様において、作製されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質の(インビトロでの4-MUアッセイによって測定される)所望の酵素活性は、少なくとも約0.5U/mg、1.0U/mg、1.5U/mg、2U/mg、2.5U/mg、3U/mg、4U/mg、4.5U/mgまたは5.0U/mgである。インビトロでの4-MUアッセイを行うための例示的な条件を以下に示す。通常、4-MUアッセイは、I2Sタンパク質が4-メチルウンベリフェリル硫酸塩(4-MUS)を硫酸塩および自然蛍光性4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に加水分解する能力を測定する。1ミリユニットの活性は、1ナノモルの4-MUSを4-MUに37℃において1分間で変換するのに必要な酵素の量として定義される。通常、既知の活性を有するI2S試験試料によって生成された平均蛍光単位(MFU)を用いて検量線が生成され得、これは対象の試料の酵素活性を算出するために使用され得る。次いで、酵素活性をタンパク質濃度で割ることによって比活性が算出され得る。
【0125】
いくつかの実施態様において、比活性は、4-メチルウンベリフェリル硫酸塩(4-MUS)の硫酸塩および4-メチルウンベリフェロン(4-MU)への加水分解を測定するプレートに基づく蛍光酵素活性アッセイを用いて測定される。そのような実施態様において、試料は4-MUS基質溶液とともに96ウェルプレート中で37℃、pH5.0において60分間インキュベートされる。次いで、pH10.7のグリシン炭酸停止緩衝液の添加によって、酵素反応が停止され得る。高いpHは蛍光性アニオン型4-MU生成物を生成し、これはそれぞれ360nmおよび460nmの励起波長および発光波長で測定され得る。酵素触媒反応で生成した4-MUの量は、4-MUの検量線から内挿され得る。
【0126】
報告され得る値はDSのU/mgで表され得、ここでUは37℃およびpH5.0で1分間に1マイクロモルの4-メチルウンベリフェロンを放出するのに必要な酵素の量として定義される。
【0127】
いずれの例においても、I2S免疫グロブリン融合タンパク質組成物のタンパク質濃度は、タンパク質濃度を決定するために当分野で公知の任意の適切な方法によって決定され得る。いくつかの例では、タンパク質濃度は、紫外光吸収アッセイによって決定される。いくつかの実施態様において、そのような吸収アッセイは、それぞれ360nmおよび460nmの励起波長および発光波長で測定される。
【0128】
比活性 - IdoA2S-4-MUアッセイ
いくつかの実施態様において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質の酵素活性は、当分野で公知の様々な方法(例えば、IdoA2S-4-MUアッセイなど、これはその概略が図7に示されている)を用いて決定され得る。いくつかの実施態様において、作製されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質の(インビトロでのIdoA2S-4-MUアッセイによって測定される)所望の酵素活性は、少なくとも約1U/mg、2.5U/mg、5U/mg、10U/mg、15U/mg、20U/mg、25U/mg、30U/mg、35U/mg、40U/mg、45U/mg、50U/mg、55U/mg、60U/mg、65U/mg、または70U/mgである。インビトロでのIdoA2S-4-MUアッセイを行うための例示的な条件を以下に示す。通常、IdoA2S-4-MUアッセイは、I2Sタンパク質の能力を2段階の方法を介して測定する。第1の段階では、基質IdoA2S-4-MUがウンベリフェリル-α-L-イドピラノシドウロン酸(IdoA-4-MU)および硫酸塩に加水分解される。第2の段階では、過剰量のIDUAの添加によって、IdoA-4-MUの自然蛍光性4-MUへの完全な変換が達成され得る。通常、既知の活性を有するI2S試験試料によって生成される平均蛍光単位(MFU)を用いて検量線が生成され得、これは対象の試料の酵素活性を算出するために使用され得る。次いで、酵素活性をタンパク質濃度で割ることによって比活性が算出され得る。
【0129】
いくつかの実施態様において、比活性はプレートに基づく蛍光酵素活性アッセイを用いて測定される。いくつかの実施態様において、反応は、温度制御されたサーマルサイクラーを用いて96ウェルPCRプレート中で実施され得る。そのような実施態様において、反応は、各20μLの2mM IdoA2S-4-MU基質溶液および5ng/mL I2S試料溶液を2Xアッセイ緩衝液中で混合することによって開始され得、これは37℃で1時間インキュベートされる。いくつかの実施態様において、緩衝液は、0.03mg/mLのBSAを含む50mMの酢酸緩衝反応混合物、pH5.2を含み得る。いくつかの実施態様において、マッキルベイン緩衝液(0.40Mリン酸ナトリウム、0.20Mクエン酸塩、0.02%アジ化ナトリウム、pH4.5)中の25μg/mL IDUAを40μL添加してI2S反応が停止され得、これは同じ温度でさらに1時間インキュベートされ得る。いくつかの実施態様において、200μLの0.5M炭酸ナトリウム溶液、pH10.7の添加によって第2段階の反応がクエンチされ得る。そのような実施態様において、観察される4-MUの蛍光は、それぞれ365nmおよび450nmのλexおよびλemで測定され得る。
【0130】
グリカンマッピング
いくつかの実施態様において、精製されたI2S融合タンパク質は、そのプロテオグリカン組成(通常、グリカンマッピングと呼ばれる)によって特徴付けられ得る。任意の理論に拘束されることを望むものではないが、グリカン結合は分岐構造の形状および複雑性とともに、インビボでのクリアランス、リソソーム標的化、バイオアベイラビリティおよび/または有効性に影響を与え得ると考えられる。
【0131】
通常、グリカンマップは、酵素消化およびその後のクロマトグラフィー分析によって決定され得る。酵素消化には様々な酵素(限定されないが、適切なグリコシラーゼ、ペプチダーゼ(例えば、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ)、プロテアーゼおよびホスファターゼを含む)が使用され得る。いくつかの実施態様において、適切な酵素はアルカリホスファターゼである。いくつかの実施態様において、適切な酵素はノイラミニダーゼである。グリカン(例えばホスホグリカン)は、クロマトグラフィー分析によって検出され得る。例えば、ホスホグリカンは、パルスアンペロメトリック検出を伴う高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)またはサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出され得る。グリカンマップ上の各ピークによって表されるグリカン(例えばホスホグリカン)の量は、当分野で公知であり、本明細書に開示されている方法に従ってグリカン(例えばホスホグリカン)の検量線を用いて算出され得る。
【0132】
いくつかの実施態様において、本発明における精製されたI2S融合タンパク質は、中性(ピーク群1)、モノシアリル化(ピーク群2)、ジシアリル化(ピーク群3)、一リン酸化(ピーク群4)、トリシアリル化(ピーク群5)、テトラシアリル化(ピーク群6)、二リン酸化(ピーク群7)およびピーク群8のI2S融合タンパク質をそれぞれ示す8個のピーク群を含むグリカンマップを示す。I2S融合タンパク質のグリカン含有量の例示的な分析は、図4、5および6に示されている。いくつかの実施態様において、精製されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質は、8個未満のピーク群を有するグリカンマップ(例えば、7、6、5、4、3または2個のピーク群を有するグリカンマップ)を有する。いくつかの実施態様において、精製されたI2S融合タンパク質は、8個よりも多いピーク群(例えば、9、10、11、12またはそれ以上)を有するグリカンマップを有する。
【0133】
各ピーク群に対応するグリカンの相対量は、所定の参照標準における対応するピーク群の面積と比較したピーク群の面積に基づいて決定され得る。いくつかの実施態様において、ピーク群1(中性)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約40~120%(例えば、約40~115%、約40~110%、約40~100%、約45~120%、約45~115%、約45~110%、約45~105%、約45~100%、約50~120%、約50~110%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。いくつかの実施態様において、ピーク群2(モノシアリル化)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約80~140%(例えば、約80~135%、約80~130%、約80~125%、約90~140%、約90~135%、約90~130%、約90~120%、約100~140%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。いくつかの実施態様において、ピーク群3(ジシアリル化)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約80~110%(例えば、約80~105%、約80~100%、約85~105%、約85~100%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。いくつかの実施態様において、ピーク群4(一リン酸化)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約100~550%(例えば、約100~525%、約100~500%、約100~450%、約150~550%、約150~500%、約150~450%、約200~550%、約200~500%、約200~450%、約250~550%、約250~500%、約250~450%、または約250~400%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。いくつかの実施態様において、ピーク群5(トリシアリル化)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約70~110%(例えば、約70~105%、約70~100%、約70~95%、約70~90%、約80~110%、約80~105%、約80~100%、または約80~95%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。いくつかの実施態様において、ピーク群6(テトラシアリル化)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約90~130%(例えば、約90~125%、約90~120%、約90~115%、約90~110%、約100~130%、約100~125%、または約100~120%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。いくつかの実施態様において、ピーク群7(二リン酸化)は、参照標準における対応するピーク群の面積と比較して約70~130%(例えば、約70~125%、約70~120%、約70~115%、約70~110%、約80~130%、約80~125%、約80~120%、約80~115%、約80~110%、約90~130%、約90~125%、約90~120%、約90~115%、約90~110%)の範囲のピーク群の面積を有し得る。グリカンマッピングのための様々な参照標準が当分野で公知であり、本発明を実施するために使用され得る。通常、ピーク群7(二リン酸化)は、精製されたI2S融合タンパク質の表面上のdi-M6Pのレベルに対応する。
【0134】
精製されたI2Sのグリコシル化パターンは、リソソームおよびニューロン膜の標的化に影響を与えることが想定される。様々なインビトロでの細胞取り込みアッセイが当分野で公知であり、本発明を実施するために使用され得る。例えば、M6P受容体によるI2Sの取り込みを評価するために、M6P受容体をその表面上に発現するヒト線維芽細胞を用いて細胞取り込みアッセイが実施される。取り込まれたI2Sの量は、ELISA法によって測定され得る。いくつかの実施態様において、本発明における精製されたI2S融合タンパク質は、インビトロでの取り込みアッセイによって決定される70%、75%、80%、85%、90%、95%よりも大きい細胞取り込みを特徴とする。
【0135】
ホルミルグリシン変換率
ペプチドマッピングは、FGly変換率を決定するために使用され得る。上述したように、I2S活性化は、以下に示されるホルミルグリシン生成酵素(FGE)による(成熟ヒトI2Sの59位に対応する)システインのホルミルグリシンへの変換を必要とする:
【化1】
【0136】
したがって、ホルミルグリシン変換率(%FG)は、以下の式を用いて算出され得る:
【数2】
【0137】
%FGを算出するために、I2S免疫グロブリン融合タンパク質は、プロテアーゼ(例えば、トリプシンまたはキモトリプシン)を用いて短いペプチドに消化され得る。短いペプチドは、例えばサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分離および特徴付けされ得る。成熟ヒトI2Sの59位に対応する位置を含むペプチドは、59位のCysが対照(例えば、FGly変換を有しないI2Sタンパク質または100%のFGly変換を有するI2Sタンパク質)と比較してFGlyに変換されているか否かを決定するために特徴付けられ得る。(活性I2S分子の数に対応する)FGlyを含むペプチドの量ならびに(全I2S分子の数に対応する)FGlyおよびCysを有するペプチドの総量が対応するピーク面積に基づいて決定され得、%FGを反映する割合が算出され得る。
【0138】
いくつかの実施態様において、本発明における精製されたI2S融合タンパク質は、ヒトI2S(配列番号1)のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への少なくとも約60%(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の変換を有する。いくつかの実施態様において、本発明における精製されたI2S融合タンパク質は、ヒトI2S(配列番号1)のCys59に対応するシステイン残基のCα-ホルミルグリシン(FGly)への実質的に100%の変換を有する。
【0139】
シアル酸含有量
いくつかの実施態様において、精製されたI2S融合タンパク質は、そのシアル酸組成によって特徴付けられ得る。理論に拘束されることを望むものではないが、タンパク質上のシアル酸残基は、肝細胞上に存在するアシアロ糖タンパク質受容体を介したそれらの迅速なインビボでのクリアランスを妨げ、低下させ、または阻害し得ることが想定される。したがって、比較的高いシアル酸含有量を有するI2S融合タンパク質は通常、インビボにおいて比較的長い循環時間を有すると考えられる。
【0140】
いくつかの実施態様において、精製されたI2S融合タンパク質のシアル酸含有量は、当分野で周知の方法を用いて決定され得る。例えば、I2S融合タンパク質のシアル酸含有量は、酵素消化およびその後のクロマトグラフィー分析によって決定され得る。酵素消化は、任意の適切なシアリダーゼを用いて達成され得る。いくつかの例では、消化はグリコシドヒドロラーゼ酵素(ノイラミニダーゼなど)によって行われる。シアル酸は、クロマトグラフィー分析(例えば、パルスアンペロメトリック検出を伴う高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)など)によって検出され得る。精製されたI2S融合タンパク質組成物中のシアル酸の量は、当分野で公知であり、本明細書に開示されている方法に従ってシアル酸の検量線を用いて算出され得る。
【0141】
いくつかの実施態様において、精製されたI2S融合タンパク質のシアル酸含有量は、少なくとも15mol/molであり得る。いくつかの実施態様において、精製されたI2S融合タンパク質のシアル酸含有量は、少なくとも20mol/molであり得る。シアル酸含有量の文脈における単位「mol/mol」は、酵素1モル当たりのシアル酸残基のモル数を指す。いくつかの例において、I2S免疫グロブリン融合タンパク質のシアル酸含有量は、約16.5mol/mol、約17mol/mol、約18mol/mol、約19mol/mol、約20mol/mol、約21mol/mol、約22mol/mol、約23mol/mol、またはそれ以上である。いくつかの実施態様において、精製されたI2S免疫グロブリン融合タンパク質のシアル酸含有量は、約17~20mol/mol、17~21mol/mol、約17~22mol/mol、17~23mol/mol、17~24mol/mol、約17~25mol/mol、約18~20mol/mol、18~21mol/mol、約18~22mol/mol、18~23mol/mol、18~24mol/mol、または約18~25mol/molの範囲であり得る。
【0142】
医薬組成物および投与
本発明におけるI2S融合タンパク質は、I2S欠乏症(例えばハンター症候群)に罹患しやすい、または罹患している対象を処置するために使用され得る。本発明はCNSにおけるI2S欠乏症の処置に特に有用であり、ここでCNSへの直接投与はBBBの物理的な貫通または破壊を含む。受容体を媒介する輸送を介してBBBを通過する能力のために、本発明のいくつかの実施態様は、HIRMab-I2S融合タンパク質を含む医薬組成物の全身投与を提供する。全身投与の経路には、限定されないが、静脈内、動脈内筋肉内、皮下、腹腔内、鼻腔内、経頬、経皮、直腸、経肺胞(transalveolar)(吸入)または経口投与が含まれる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のI2S融合タンパク質の全身投与は、他の直接的なCNS投与(髄腔内送達など)と組み合わせて実施され得る。いくつかの実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質を含む医薬組成物は、I2S欠乏症の身体症状および認知症状の両方を処置し得る。
【0143】
本明細書におけるI2S欠乏症には、ハンター症候群、ハンター病およびムコ多糖症II型として知られる1つ以上の疾患が含まれる。I2S欠乏症は、体内(心臓、肝臓、脳など)で生じるヘパリン硫酸およびデルマタン硫酸の蓄積を特徴とする。
【0144】
いくつかの実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質またはそれを含む医薬組成物は、静脈内投与によって対象に投与される。ある実施態様において、医薬組成物は、配列番号11と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を有するHIRMab-I2S融合タンパク質を含む。ある実施態様において、医薬組成物は、配列番号11と同一のアミノ酸配列を有するHIRMab-I2S融合タンパク質を含む。ある実施態様において、医薬組成物は、組換えヒトIgG軽鎖を有するHIRMab-I2S融合タンパク質を含む。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号12と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を有する。ある実施態様において、組換えヒトIgG軽鎖は、配列番号12と同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様において、HIRMab-I2S融合タンパク質またはそれを含む医薬組成物は、皮下(すなわち皮膚の下)投与によって対象に投与される。そのような目的のために、製剤は注射器を用いて注入され得る。しかし、製剤を投与するための他の装置(注射装置(例えば、Inject-easeTMおよびGenjectTM装置);インジェクターペン(GenPenTMなど);無針装置(例えば、MediJectorTMおよびBioJectorTM);および皮下パッチ送達システムなど)が利用可能である。
【0145】
本発明は、本明細書に記載の治療有効量のHIRMab-I2S融合タンパク質またはそれを含む医薬組成物の単回投与および複数回投与を想定している。HIRMab-I2S融合タンパク質またはそれを含む医薬組成物は、対象の状態の性質、重症度および程度に応じて一定の間隔で投与され得る。いくつかの実施態様において、治療有効量のHIRMab-I2S融合タンパク質またはそれを含む医薬組成物は、一定の間隔(例えば、1年に1回、6ヶ月に1回、5ヶ月に1回、3ヶ月に1回、隔月(2ヶ月に1回)、毎月(1ヶ月に1回)、隔週(2週間に1回)、毎週、毎日または連続的)で定期的に投与され得る。
【0146】
HIRMab-I2S融合タンパク質またはそれを含む医薬組成物は、医薬組成物を調製するために生理的に許容され得る担体または賦形剤とともに製剤化され得る。担体および治療物質は無菌であり得る。製剤は投与方法に適合しているべきである。
【0147】
薬学的に許容され得る適切な担体には、限定されないが、水、塩類溶液(例えばNaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロースまたはデンプンなど)、糖(マンニトール、スクロースまたは他の糖など)、ブドウ糖、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、およびそれらの組合せが含まれる。医薬品は必要に応じて、活性化合物と有害に反応せず、またはその活性を妨げない補助物質(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色料、香味料および/または芳香剤など)と混合され得る。いくつかの実施態様において、静脈内投与に適した水溶性担体が使用される。
【0148】
組成物または薬剤は必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝物質を含み得る。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末であり得る。組成物はまた、従来の結合剤および担体(トリグリセリドなど)とともに坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、標準的な担体(医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。
【0149】
組成物または薬剤は、ヒトへの投与に適合した医薬組成物として通常の手順に従って製剤化され得る。例えば、いくつかの実施態様において、静脈内投与のための組成物は通常、無菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物は、可溶化物質および注射部位の痛みを和らげるための局所麻酔薬を含み得る。一般に、成分は別々に、またはともに混合されて単位用量の剤形で(例えば、密封容器(活性物質の量を示すアンプルまたは小袋など)中の凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として)供給される。組成物が注入によって投与される場合、組成物は無菌の医薬品グレードの水、生理食塩水またはブドウ糖/水を含む輸液ボトルに分注され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0150】
本明細書において、用語「治療有効量」は、本発明の医薬組成物に含まれる治療物質の総量に基づいて主に決定される。一般に、治療有効量は、対象に対して有意義な利益(例えば、基礎疾患または状態の処置、調節、治癒、予防および/または改善)を達成するのに十分である。例えば、治療有効量は、所望の治療効果および/または予防効果を達成するのに十分な量(リソソーム酵素受容体またはその活性を調節することにより、そのようなリソソーム蓄積症またはその症状を処置(例えば、本発明の組成物を対象に投与した後の「ゼブラ小体」または細胞空胞化の存在または発生率の減少または除去)するのに十分な量など)であり得る。一般に、必要とする対象に投与される治療物質(例えば組換えリソソーム酵素)の量は、対象の特徴に依存する。そのような特徴には、対象の状態、疾患の重症度、全身状態、年齢、性別および体重が含まれる。当業者は、これらの要因および他の関連した要因に応じて適切な投与量を容易に決定できる。さらに、最適な投与量の範囲を特定するために、客観的なアッセイおよび主観的なアッセイの両方が任意で利用され得る。
【0151】
治療有効量は通常、複数の単位用量を含み得る投与計画で投与される。任意の特定の治療用タンパク質について、治療有効量(および/または有効な投与計画における適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬品との組合せに応じて様々であり得る。また、任意の特定の患者のための具体的な治療有効量(および/または単位用量)は、様々な要因(処置される障害および障害の重症度;使用される具体的な医薬品の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、全身状態、性別および食生活;使用される具体的な融合タンパク質の投与時間、投与経路および/または排出速度もしくは代謝速度;処置期間;ならびに、医学分野で周知の類似の要因を含む)に依存し得る。
【0152】
任意の特定の対象のために、具体的な投与計画は個々の必要性および酵素補充療法の投与者または監督者の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載されている投与量の範囲は例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲または実施を制限することを意図していないことがさらに理解されるはずである。
【0153】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物(例えばHIRMab-I2S融合タンパク質)は、併用療法の一部として投与され得る。併用療法は、I2S欠乏症に罹患している患者に典型的に見出される症状の処置または軽減のための別の治療と組み合わせた本発明の組成物の投与を含む。本発明の組成物が別のCNS障害の方法または組成物と組み合わせて使用される場合、本発明の組成物および追加の方法または組成物の任意の組合せが使用され得る。したがって、例えば、本発明の組成物の使用が別のCNS障害処置物質と組み合わされる場合、両者は、同時に、連続的に、重複する期間において、類似の頻度で、同じ頻度で、または異なる頻度などで投与され得る。いくつかの例において、本発明の組成物を1以上の他のCNS障害処置物質と組み合わせて含む組成物が使用される。
【0154】
いくつかの実施態様において、組成物(例えばHIRMab-I2S)は、同じ製剤内の、または別個の組成物としての別の薬剤とともに患者に同時投与される。例えば、HIRMab-I2Sは、I2S以外の組換えタンパク質をヒト血液脳関門を越えて送達するように設計されている別の融合タンパク質とともに製剤化され得る。さらに、I2S融合タンパク質は他の巨大分子または小分子と組み合わせて製剤化され得る。
【0155】
さらなる例示的な医薬組成物および投与方法が、「Methods and Compositions for CNS Delivery of Iduronate-2-Sulfatase」という題名のPCT出願公開WO2011/163649;および2012年3月30日に出願された「Subcutaneous administration of iduronate 2 sulfatase」という題名の仮出願番号第61/618,638号に記載されており、両者の開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0156】
任意の特定の対象のために、具体的な投与計画は個々の必要性および酵素補充療法の投与者または監督者の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載されている投与量の範囲は例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲または実施を制限することを意図していないことがさらに理解されるはずである。
【0157】
上記の任意の態様および実施態様は、図面、要約および/または詳細な説明(以下の実施例を含む)に開示されている任意の他の態様または実施態様と組み合わされ得る。
【実施例
【0158】
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは制限として解釈されるべきではない。当業者は、本明細書に記載されている特定の物質および手順に対する多数の等価物を認識し、日常的な実験のみを用いて確認できる。そのような等価物は、以下の実施例に続く特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0159】
実施例1:HIR Mab-I2S融合タンパク質の捕捉および精製プロセス
本実施例は、HIR Mab-I2S融合タンパク質を捕捉および精製するために使用され得る単純化された下流の精製プロセスを示す。例示的な精製スキームを図1に示す。
【0160】
ヒトインスリン受容体モノクローナル抗体-イズロン酸-2-スルファターゼ(HIRMab-I2S)融合タンパク質を安定に発現する細胞株を開発した。HIRMab-I2Sのアミノ酸配列を表2に示す。例示的な細胞株の生成および特徴付けは、2010年10月8日に出願された「Methods and Compositions for Increasing Iduronate-2-sulfatase Activity in the CNS」という題名の米国特許第8,834,874号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
撹拌槽型灌流バイオリアクタープロセスを用いた。細胞密度、より高い生存率、より高い全収率、30日の回収にわたって一貫した生成物の質を増加させるために、既知組成培地(CD OptiCHO)をバイオリアクタープロセスにおいて使用した。
【0162】
下流の精製プロセスを、MabSelect SureプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製される清澄化された回収物質を用いて開始した。低pHウイルス不活化工程の後、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー溶出物の解凍およびプールを行った。陽イオン交換(Capto SP ImpRes)および混合モード(Capto Adhere)クロマトグラフィー工程の連続した工程、ならびにその後のウイルス除去のための濾過、原薬の限外濾過/透析濾過、および5.0±0.5mg/mLでの製剤化により、精製プロセスを進行させた。バルク原薬を生成するために最後の濾過工程を行った。特に、この精製プロセスは、プロテインAアフィニティー、Capto SP ImpRes、およびCapto Adhereのクロマトグラフィー様式を利用した。例示的な工程を表3に示す。
表3:精製プロセスの例示的な工程
【表3】
【0163】
実施例2:模擬DS HIR Mab-I2S融合タンパク質の分析
精製した模擬原薬HIRMab-I2S融合タンパク質を、CHO HCP含有量、CE-SDS(非還元)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC%)によって純度について評価した。酵素比活性、シアル酸含有量およびグリカンマップを標準的な方法を用いて測定した。基質クリアランスアッセイを、%RPを測定することによって行った。例示的な結果を表4に示す。
表4:精製された模擬DS HIRMab-I2S融合タンパク質の分析
【表4】
【0164】
特に、CE-SDSアッセイは、純度/不純物プロファイルおよび抗体の重鎖と軽鎖との間の比率を評価する。4-メチルウンベリフェリル硫酸塩(4-MUS)の硫酸塩および4-メチルウンベリフェロン(4-MU)への加水分解を測定するプレートに基づく蛍光酵素活性アッセイを用いて、比活性を得た。ここで、4-MUをそれぞれ360nmおよび460nmの励起波長および発光波長での蛍光として測定し、触媒反応で生成した4-MUの量を4-MUの検量線から内挿した。報告され得る比活性の値をU/mgで表し、ここでUは37℃およびpH5.0で1分間に1マイクロモルの4-MUを放出するのに必要な酵素の量として定義される。基質クリアランスアッセイでは、細胞取り込みおよび酵素の比活性を測定した。精製されたHIRMab-I2S融合タンパク質のグリカンマップは、シアル酸およびマンノース-6-リン酸残基に由来する負電荷の量の増加に従って溶出する7つのピーク群を含み、これらは溶出順に、中性、モノシアリル化、ジシアリル化、一リン酸化、トリシアリル化および複合型(モノシアリル化およびキャッピングされたM6P)、テトラシアリル化および複合型(ジシアリル化およびキャッピングされたM6P)、ならびに二リン酸化グリカンを示す。
【0165】
まとめると、本実施例は、単純化された3つのカラム精製プロセスを用いて、既知組成培地中に大量に産生されたHIRMab-I2S融合タンパク質をうまく精製できることを示している。
【0166】
実施例3:例示的なHIR Mab-I2S融合タンパク質生成物の質
HIRMab-I2S融合タンパク質を、10Lの規模の撹拌槽型灌流バイオリアクターを用いたプロセスによって作製した。既知組成培地OptiCHOプラスCell boost5を用いた。HIRMab-I2S融合タンパク質を、実施例1に記載されているプロセスによって精製した。
【0167】
精製したHIRMab-I2S融合タンパク質を、ホルミルグリシン含有量、ヒトインスリン受容体への結合(%RS)、グリカンマップ(1-M6Pおよび2-M6P、%ピーク面積)、M6P受容体への結合(%RS)、および基質クリアランスアッセイ(RSに対する%)について評価した。例示的な結果を表5に示す。
表5:例示的な精製したHIRMab-I2S融合タンパク質
【表5】
【0168】
本明細書に記載されているプロセスは、細胞取り込みおよび酵素比活性の組合せを測定する基質クリアランスアッセイからなる。
【0169】
ホルミルグリシン変換率
ペプチドマッピングは、FGly変換率を決定するために使用され得る。I2S活性化は、以下に示すようにホルミルグリシン生成酵素(FGE)による(成熟ヒトI2Sの59位に対応する)システインのホルミルグリシンへの変換を必要とする:
【化2】
したがって、ホルミルグリシン変換率(%FG)は、以下の式を用いて算出され得る:
【数3】
【0170】
例えば、50%FGは、HIRMab-I2S融合タンパク質の半分がいかなる治療効果も有さず、酵素的に不活性であることを意味する。
【0171】
%FGを算出するためにペプチドマッピングを用いた。簡潔に述べると、HIRMab-I2S融合タンパク質を、プロテアーゼ(例えば、トリプシンまたはキモトリプシン)を用いて短いペプチドに消化した。短いペプチドを、HPLCを用いて分離および特徴付けた。成熟ヒトI2Sの59位に対応する位置を含むペプチドを、59位のCysが対照(例えば、FGly変換を有しないI2Sタンパク質または100%のFGly変換を有するI2Sタンパク質)と比較してFGlyに変換されていたか否かを決定するために特徴付けた。(活性I2S分子の数に対応する)FGlyを含むペプチドの量ならびに(全I2S分子の数に対応する)FGlyおよびCysを有するペプチドの総量を対応するピーク面積に基づいて決定し得、%FGを反映する割合を算出した。
【0172】
表6は、既知組成細胞培地(OptiCHO+CB5)を用いて10Lの撹拌槽型灌流バイオリアクタープロセスによって作製したHIRMab-I2S融合タンパク質、ならびにSFM4CHO(加水分解産物および動物成分を含む産生培地)を添加したWAVEバイオリアクターを用いて作製したロットA1~A6およびそれよりも大きな規模のロットの比較を示す。
表6:ロットA1~A6、BおよびCの比較
【表6】
【0173】
典型的に、本明細書に記載のプロセスを使用した場合、2-M6P含有量はロットA1~A6において測定されたものよりもわずかに低く、ホルミルグリシン含有量(%FGly)は高かった。まとめると、本実施例は、単純化された3つのカラム精製プロセスが、ロットA1~A6と比較して調節されたレベルの2-M6Pを伴って既知組成培地中で大量に作製したHIRMab-I2S融合タンパク質をうまく精製するのに使用され得ることを示している。
【0174】
実施例4:HIRMab-I2S融合タンパク質生成物の質に対する培地の分析
本研究の目的は、培地条件を評価し、Cell Boost 5を含む、および含まない既知組成培地(OptiCHO)を用いた動物質を含まない灌流プロセスにおけるHIRMab-I2S融合タンパク質のタンパク質産生の有効性を評価し、加水分解産物および動物成分を含む培地条件(SFM4CHO)と比較して生成物の質を特徴付けることであった。
【0175】
本研究は、既知組成培地のバイオリアクターから得られたHIRMab-I2S産生プロセスの性能および生成物の質を評価した。
【0176】
初期、中期および後期の回収段階からのHIRMab-I2S融合タンパク質回収試料をプールおよび捕捉した。回収物質を、遠心分離保持装置を含む波動灌流10Lバイオリアクターおよび追加のCell boost5を含む既知組成増殖培地(OptiCHO)を用いて細胞株から生成した。回収物質を、遠心分離装置を含む波動灌流10Lバイオリアクターおよび追加のCell boost5を含まない既知組成増殖培地を用いて細胞株から生成した。また、回収物質を、ブリーディングを伴わない遠心分離灌流プロセスならびに加水分解産物および動物成分を含むSFM4CHO培地を用いて細胞株から生成した。
【0177】
図2は、上述の培地条件下で得られた初期、中期および後期のHIRMab-I2S融合タンパク質回収物質の比活性(U/mg)およびホルミルグリシン含有量(%FG)を示している。
【0178】
図3は、基質クリアランスアッセイ(SCA)、ヒトインスリン受容体への結合(%RS)、およびM6P受容体への結合(%RS)を示している。
【0179】
まとめると、本実施例は、既知組成のOptiCHO培地を含む細胞培養条件が、HIRMab-I2S融合タンパク質における2-M6Pレベルをうまく調節し、後期の回収物に対して活性および基質クリアランスを保持するために使用され得ることを示している。本実施例は、生成物の質のデータにより、OptiCHO培地が初期から後期の回収物から活性物質を生成することが確認され、これが加水分解産物および動物成分を含む培地を用いた従来の実行に対する実質的な改善であることを示している。
【0180】
実施例5:HIRMab-I2S融合タンパク質のグリカンマップに対する培地の分析
本研究の目的は、培地条件を評価し、加水分解産物および動物成分を含む培地条件(SFM4CHO)と比較してOptiCHOにより産生されたHIRMab-I2S融合タンパク質生成物の質のグリカンマップを特徴付けることであった。
【0181】
本研究は、既知組成培地のバイオリアクターから得られたHIRMab-I2S融合タンパク質におけるマンノース-6-リン酸およびシアル酸のレベルを評価した。
【0182】
図4は、上述の培地条件下で得られた初期、中期および後期のHIRMab-I2S融合タンパク質回収物質におけるマンノース-6-リン酸グリカン含有量(1-M6Pおよび2-M6P)のレベルを示している。
【0183】
図5は、上述の培地条件下で得られた初期、中期および後期のHIRMab-I2S融合タンパク質回収物質におけるシアリル化グリカン含有量(1-、2-、3-および4-SA)のレベルを示している。
【0184】
図6は、上述の培地条件下で得られた初期、中期および後期のHIRMab-I2S融合タンパク質回収物質における中性およびPeak8グリカン含有量のレベルを示している。
【0185】
典型的に、本明細書に記載のプロセスを使用した場合、OptiCHO培地条件は、SFM4CHO対照よりも低い2-M6Pレベルを生成した。まとめると、本実施例は、既知組成のOptiCHO培地を含む細胞培養条件が、HIRMab-I2S融合タンパク質における2-M6Pレベルをうまく調節するために使用され得ることを示している。
【0186】
グリカンマップ - マンノース-6-リン酸およびシアル酸含有量
初期、中期および後期の回収段階からのHIRMab-I2S融合タンパク質回収試料を、実施例4に記載されているようにプールおよび捕捉した。HIRMab-I2S融合タンパク質回収物質のグリカンおよびシアル酸組成を決定した。陰イオン交換クロマトグラフィーを用いてグリカン組成の定量化を行い、グリカンマップを作成した。以下に記載されているように、本明細書に記載の条件下で精製したI2S融合タンパク質のグリカンマップは、負電荷の量の増加に従って溶出する7つのピーク群からなり、これは酵素消化に起因するシアル酸およびマンノース-6-リン酸のグリコフォームに少なくとも部分的に由来している。簡潔に述べると、OptiCHO、OptiCHO+Cell boost5および対照のSFM4CHO細胞培養物からのHIRMab-I2S融合タンパク質を、(1)シアル酸残基の除去のための精製されたノイラミニダーゼ酵素(Arthrobacter Ureafaciensから単離されている(10mU/μL)、Roche Biochemical (Indianapolis, IN), Cat. # 269 611(1U/100μL))、(2)マンノース-6-リン酸残基の完全な放出のための37±1℃における2時間のアルカリホスファターゼ、(3)アルカリホスファターゼ+ノイラミニダーゼ、または(4)無処理のいずれかで処理した。各酵素消化物を、Dionex CarboPac PA1ガードカラムを備えたCarboPac PA1分析カラムを用いてパルスアンペロメトリック検出を伴う高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)によって分析した。各アッセイのために、0.4~2.0ナノモルの範囲の一連のシアル酸およびマンノース-6-リン酸の標準物質を実行した。各ピークを溶出するために、100mM水酸化ナトリウム中の48mM酢酸ナトリウムを用いた均一濃度の方法を、周囲カラム温度および1.0mL/分の流速で最低でも15分間実行した。図4、5および6に示されているように、無血清培地からのHIRMab-I2S融合タンパク質のグリカンマップは、中性、モノシアリル化、ジシアリル化、一リン酸化、トリシアリル化および複合型(モノシアリル化およびキャッピングされたマンノース-6-リン酸)、テトラシアリル化および複合型(ジシアリル化およびキャッピングされたマンノース-6-リン酸)、ならびに二リン酸化グリカンを(溶出順で)構成する代表的な溶出ピークを示した。
【0187】
実施例6:HIR Mab-I2S融合タンパク質の捕捉および精製プロセス
本実施例は、HIR Mab-I2S融合タンパク質の比活性を正確に測定し、阻害効果を補正する方法を示している。例示的な比活性アッセイを図7に示す。
【0188】
IdoA2S-4-MUをCarbosynth(Compton, Berkshire, UK)によりカスタム合成し、α-L-イズロニダーゼ(IDUA)をShireにより生成した。4-メチル-ウンベリフェロン(4-MU)ナトリウム塩をSigma-Aldrichから入手した。Opti CHO培養培地をThermoFisherから入手した。HIR Mab-I2S融合タンパク質のI2S活性測定を、わずかな修正を伴ってVoznyi YV, Keulemans, JLM, van Diggelen, OP (2001) J. Inherit. Metab. Dis. 24 675-680(これはあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように蛍光検出を伴う2段階のプレートに基づく方法を用いて実施した。HIR Mab-I2S融合タンパク質によって触媒される第1の反応を、等量の基質溶液とプロセス中の希釈した試料を混合することによって開始した;基質であるIdoA2S-4-MUは、ウンベリフェリル-α-L-イドピラノシドウロン酸(IdoA-4-MU)および硫酸塩に加水分解される。第2の反応では、過剰量のIDUAを添加することによって、IdoA-4-MUの4-MUへの完全な変換を達成した。
【0189】
通常、IdoA2S-4-MUアッセイは、2段階の方法によりI2Sタンパク質の能力を測定する(図7)。第1の段階では、基質であるIdoA2S-4-MUを、ウンベリフェリル-α-L-イドピラノシドウロン酸(IdoA-4-MU)および硫酸塩に加水分解した。第2の段階では、過剰量のIDUAを添加することによって、IdoA-4-MUの自然蛍光性4-MUへの完全な変換が達成され得る。通常、既知の活性を有するI2S試験試料によって生成される平均蛍光単位(MFU)が検量線を生成するために使用され得、検量線は対象の試料の酵素活性を算出するために使用され得る。そして、酵素活性をタンパク質濃度で割ることによって比活性が算出され得る。
【0190】
いくつかの実施態様において、比活性はプレートに基づく蛍光酵素活性アッセイを用いて測定される。いくつかの実施態様において、反応は、温度制御されたサーマルサイクラーを用いて96ウェルPCRプレート中で実施される。そのような実施態様において、反応は、各20μLの2mM IdoA2S-4-MU基質溶液および5ng/mL I2S試料溶液を2Xアッセイ緩衝液中で混合することによって開始され得、これは37℃で1時間インキュベートされる。いくつかの実施態様において、緩衝液は、0.03mg/mLのBSAを含む50mMの酢酸緩衝反応混合物、pH5.2を含む。いくつかの実施態様において、マッキルベイン緩衝液(0.40Mリン酸ナトリウム、0.20Mクエン酸塩、0.02%アジ化ナトリウム、pH4.5)中の25μg/mL IDUAを40μL添加してI2S反応が停止され得、これは同じ温度でさらに1時間インキュベートされ得る。いくつかの実施態様において、200μLの0.5M炭酸ナトリウム溶液、pH10.7の添加によって第2段階の反応がクエンチされる。そのような実施態様において、観察される4-MUの蛍光は、それぞれ365nmおよび450nmのλexおよびλemで測定され得る。
【0191】
マトリックスの障害を理解するために、上記のアッセイを必要に応じて改変した。マトリックス効果について試験した緩衝液を表1に示す。
【0192】
基質IdoA2S-4-MUの最終濃度を変動させたことを除いて、HIR Mab-I2S融合タンパク質試料を用いたアッセイと同一の方法で反応を行った。基質溶液をHIR Mab-I2S融合タンパク質と混合する前に段階希釈し、最終的な反応混合物において31.25~2000μMの濃度を与えた。
【0193】
観測された活性の基質濃度に対する依存性を下記の式1に記載されているミカエリスメンテン式にフィットさせることにより、Kを決定した:
【数4】
【0194】
緩衝液マトリックスの存在下におけるアッセイ。緩衝液マトリックスの効果を評価するために、固定量のHIR Mab-I2S融合タンパク質を様々に希釈されたプロセス中の緩衝液と混合した。各10μLの希釈された緩衝液および基質溶液を2Xアッセイ緩衝液中の20μLの酵素溶液と混合して第1の段階の反応を開始し、その後は上述のようにアッセイを進行させた。反応物中の最終酵素濃度は2.5ng/mLであった。
【0195】
酵素比活性(v/[E])対希釈倍率の逆数(1/DF)を、上述のHIR Mab-I2S融合タンパク質のミカエリスメンテン分析から決定されたKm=386μMの値を用いて、式2に示される迅速平衡混合阻害(rapid equilibrium mixed inhibition)の式にフィットさせた
【数5】
ここで、
【数6】
は、阻害成分の見かけの濃度である
isは、阻害剤が遊離の酵素に結合する阻害定数である
iiは、阻害剤がES複合体に結合する阻害定数である
【0196】
基質濃度が固定されている場合、パラメータKiiおよびKisは冗長になるため、阻害が競合的、非競合的、不競合的または混合的のいずれであるかにかかわらず、同一の適合曲線が得られ得る。したがって、必要なパラメータが適合から決定された場合、実際にどの阻害様式が作用しているかにかかわらず、同一の阻害フリーの活性(v/[E])が算出された(式3)。
【数7】
【0197】
式2の速度の線形化によるデータ処理の単純化。阻害フリーの活性はまた、式4により線形化された式を用いて算出され得る。
【数8】
または、
【数9】
ここで、
【数10】
および
【数11】
【0198】
上記の式は以下のように単純化され得る:
【数12】
【0199】
阻害剤の非存在下における活性を、データを線形方程式にフィットさせた後に式6から算出した。
【数13】
【0200】
しかしながら、逆数プロットの単純な線形フィッティングでは、より大きなランダム誤差を伴うより小さなv/[E]の値が大きく重み付けされ、結果を歪め得る。これを回避するために、適切な重み付け係数をデータ点に適用したか、または著しく低い値を単純に適合から除外した。
【0201】
種々のプロセス中の試料の測定された比活性が、アッセイに使用した希釈された試料の濃度に依存し得ることが認識された。いくつかの実施態様において、より高い濃度(より低い希釈倍率)の試料は、より低い比活性値を与えた。この効果がプロセス中の試料緩衝液マトリックスによる阻害によるものであるか否かを決定するために、以下に記載されるようにさらなる実験を行った。
【0202】
測定された比活性値に対する緩衝液マトリックスの効果を評価するために、様々な濃度のプロセス中の6つの緩衝液において固定濃度のHIR Mab-I2S融合タンパク質でアッセイを行った(表1)。緩衝液1、2、3および4を用いたより高い緩衝液濃度において比活性の低下が観察され、緩衝液5および6ではより小さな低下が観察された。実験の結果を図8に示す。
表1.酵素活性の阻害について試験したプロセス中の試料緩衝液
【表7】
【0203】
マトリックスフリーの活性(v/[E])およびパラメータ(Kii=∞での、Kis/C)の値を、プロセス中の各試料緩衝液について観察された比活性(v/[E])対DFの式(4)への適合から決定する。これらの結果を表2Aに示す。非線形適合からのパラメータが既知になった場合、同一の式を用いて単一の濃度点からのデータを用いてマトリックスフリーの活性v/[E]が決定され得る。単一の濃度点から決定した阻害フリーの活性の値は、相対的なランダム誤差がより大きい高い阻害(低い比活性)の場合を除いて、希釈倍率にかかわらず一貫していた。マトリックスフリーの活性はまた、高いランダム誤差のために低い活性値が除外されている場合、データを線形化した式5にフィットさせることによって決定され得る(図9)。算出されたマトリックスフリーの活性値は、非線形適合からのものと同等であった(表2Aおよび2Bを参照)。
表2A.一定の酵素濃度(2.5ng/mL)およびプロセス中の様々な緩衝液濃度(C/DF)で測定した酵素比活性の非線形適合(A)および線形適合(B)による様々な緩衝液中のSH631のマトリックスフリーの活性(v/[E])-非線形適合。
【表8】
表2B.一定の酵素濃度(2.5ng/mL)およびプロセス中の様々な緩衝液濃度(C/DF)で測定した酵素比活性の非線形適合(A)および線形適合(B)による様々な緩衝液中のSH631のマトリックスフリーの活性(v/[E])-線形適合。
【表9】
【0204】
緩衝液3、4および6についての本実験からのデータを、図に示す希釈範囲にわたって水で段階希釈された対応する実際のプロセス中の試料の結果に重ね合わせた(図10A~10C)。結果は、緩衝液3および6について、緩衝液単独(定数[E])よりも実際のプロセス中の試料についての阻害が著しく強いことを示している。これらの結果は、緩衝液3および6での実際の試料において観察された阻害が緩衝液マトリックスのみによるものではないことを示している。
【0205】
いくつかの実施態様において、実際のプロセス中の試料において観察された、緩衝液マトリックスのみに起因するものを超える追加の阻害の起源は以下である:
(1)基質枯渇;より小さなDF(より高い酵素濃度)においてより多くの基質が消費されることにより、v/[E]が低下する
および/または
(2)生成物の阻害;プロセス中の試料のより低いDFにおいて、酵素濃度がより高いため、より多くの生成物が生成し、より大きな阻害を生じる。
【0206】
阻害効果の起源を調べるため、緩衝液3(DS製剤緩衝液)を用いて3セットの試料を作成した。セットA:様々な酵素濃度および様々な緩衝液濃度、セットB:様々な酵素濃度および一定の緩衝液濃度、ならびにセットC:一定の酵素濃度および様々な緩衝液濃度(図11)。
【0207】
[S]≒[S]開始であるように、生成物に変換された基質の量は<6%であったため(図12)、基質の枯渇は観察された阻害の原因ではなかった。
【0208】
試料セットA(様々な[E]、様々な[緩衝液])およびセットB(様々な[E]、一定の[緩衝液])からのデータは、セットC(一定の[E]、様々な[緩衝液])よりも比活性の濃度(1/DFに比例する)に対するより強い依存性を示す。これらの結果(図13A~13C)は、阻害がマトリックスのみによって生じたのではなく、生成物の阻害によるものであったことを示した。
【0209】
これらの結果は、マトリックスおよび生成物の両方が、より低い試料DFにおいてHIR Mab-I2S融合タンパク質の阻害および比活性の低下を引き起こし得ることを示している。いくつかのプロセス中の試料の種類について、生成物の阻害は観察された阻害の主要な起源である。マトリックス対生成物の阻害の相対的な重要性は、アッセイに使用されるマトリックスの性質および希釈倍率によって決定される。
【0210】
プロセス中の試料におけるHIR Mab-I2S融合タンパク質のより低い希釈倍率での比活性の低下は、マトリックスの阻害および生成物の阻害の組合せによるものであり得る。これは、マトリックス成分による阻害(様々な緩衝液マトリックス濃度、一定の酵素濃度)対生成物による阻害(様々な酵素濃度、一定の緩衝液マトリックス濃度)を示す別々の実験において示された。
【0211】
酵素濃度が十分に高く、マトリックス効果がわずかである場合におけるプロセス中の試料の阻害フリーの比活性を決定するために、以下の方法を用いた:
I.精製したSHP631を用いて、比活性の[E]に対する依存性を決定する。[E]/v対1/DFの線形適合を行い、勾配(式4の「a」)を得る。
II.単一の規定された希釈倍率でプロセス中の試料の比活性(v/[E])を測定する。
III.段階(i)の勾配aを用いて、式6から阻害フリーの比活性(v/[E])を算出する。
【0212】
阻害の起源が同定されていないプロセス中の試料の種類について、様々な希釈物においてアッセイを行い、[E]/v対1/DFをプロットし、無限希釈物(1/DF=0)に外挿することによって、阻害フリーの比活性が決定され得る。これは、様々なプロセス中の試料の種類にわたる酵素活性値の直接比較を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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