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特許7458413炭化水素を製造するための方法およびフィードストック
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  • 特許-炭化水素を製造するための方法およびフィードストック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】炭化水素を製造するための方法およびフィードストック
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/36 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
C10G9/36
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021557811
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 FI2019050909
(87)【国際公開番号】W WO2020201614
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】20195271
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤミエソン、ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】オヤラ、アンチ
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522086(JP,A)
【文献】特表2018-522087(JP,A)
【文献】特表2017-537174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを提供する工程であって、前記再生可能な異性化パラフィン組成物が、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンであって、前記パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満であるパラフィンと、
熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサと
を含み、前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と前記化石ナフサのwt-%量との合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である工程、ならびに
b)炭化水素の混合物を含む分解生成物を形成するために前記工程a)で提供された前記熱分解フィードストックを熱分解する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記熱分解フィードストックが、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物と、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の0~50wt-%の化石ナフサと
を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記熱分解フィードストックが、前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含み、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および前記化石ナフサのwt-%量の合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の、前記3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の前記イソパラフィンのwt-%量の総計に対する比が、0.12未満、好ましくは0.10未満、より好ましくは0.05未満である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記イソパラフィンの少なくとも80wt-%、好ましくは少なくとも85wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にある請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記パラフィンの60~95wt-%、好ましくは60~80wt-%、さらに好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンであり、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物は、前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の、好ましくは少なくとも70wt-%、さらに好ましくは少なくとも80wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt-%のパラフィンを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記化石ナフサが、前記化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~35wt-%のオレフィン、10~30wt-%のナフテン、および0~30wt-%の芳香物化合物を含み、前記化石ナフサ中の炭化水素のwt-%量は、前記化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解フィードストックが、重量比で20~300ppm、好ましくは重量比で20~250ppm、より好ましくは重量比で20~100ppm、およびさらにより好ましくは重量比で50~65ppmの硫黄を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程b)が、780℃~890℃、好ましくは800℃~860℃、より好ましくは800℃~840℃、およびさらにより好ましくは800℃~820℃の範囲から選択されるコイル出口温度(COT)で行われる請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、CO、CO2、またはC22の少なくとも一つを除去するために精製処理に付す工程c)を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、または、前記工程c)の前記精製処理に付された分解生成物の少なくとも一部分を、またはこれら両方を、ポリマーを製造するための重合化処理に付す工程d)を含む請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
複数の熱分解炉を提供すること、および、前記複数の熱分解炉の少なくとも一つにおいて前記工程b)を行うことを含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の熱分解炉から分解生成物を得ること、および
混合分解生成物を形成するために、得られた分解生成物を混合すること、および
任意には、前記混合分解生成物の少なくとも一部分をCO、CO2またはC22の少なくとも一つを除去するために精製処理へと、またはポリマーを形成するために重合化処理へと、または、精製処理および重合化処理の両方へと、付すことを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物であって、前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、前記パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、前記イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.12未満である再生可能な異性化パラフィン組成物と、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサと
を含み、前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と前記化石ナフサのwt-%量との合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である熱分解フィードストック。
【請求項15】
前記熱分解フィードストックが、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物と、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の0~50wt-%の化石ナフサと
を含む請求項14記載の熱分解フィードストック。
【請求項16】
前記熱分解フィードストックが、前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含み、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および前記化石ナフサのwt-%量の合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である請求項14または15記載の熱分解フィードストック。
【請求項17】
前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の、前記3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の前記イソパラフィンのwt-%量の総計に対する比が、0.10未満、好ましくは0.05未満である請求項14~16のいずれか1項に記載の熱分解フィードストック。
【請求項18】
前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記イソパラフィンの少なくとも80wt-%、好ましくは少なくとも85wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にある請求項14~17のいずれか1項に記載の熱分解フィードストック。
【請求項19】
前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記パラフィンの60~95wt-%、好ましくは60~80wt-%、さらに好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンであり、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物は、前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の好ましくは少なくとも70wt-%、さらに好ましくは少なくとも80wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも99wt-%のパラフィンを含む請求項14~18のいずれか1項に記載の熱分解フィードストック。
【請求項20】
前記化石ナフサが、前記化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~35wt-%のオレフィン、10~30wt-%のナフテン、および0~30wt-%の芳香物化合物を含み、
前記化石ナフサ中の炭化水素のwt-%量は、前記化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である請求項14~19のいずれか1項に記載の熱分解フィードストック。
【請求項21】
前記熱分解フィードストックが、重量比で20~300ppm、好ましくは重量比で20~250ppm、より好ましくは重量比で20~100ppm、および最も好ましくは重量比で50~65ppmの硫黄を含む請求項14~20のいずれか1項に記載の熱分解フィードストック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解により炭化水素を製造するための方法に主に関する。本発明は、特には、これに限定はされないが、少なくとも部分的に再生可能な原料由来であるフィードストックを熱分解することによって炭化水素を含む分解生成物を製造するための方法、および好ましくはポリマーを製造するために該分解生成物の少なくとも一部分を使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本明細書中に記載されるいかなる技術も従来技術の技術水準を示すものであることを示す意図なく、有用な背景情報を示すものである。
【0003】
蒸気分解は、化石炭化水素から化学品を製造するための重要な方法である。重要度の高い化石ナフサ分解物の貴重な生成物としては例えば、エテン、プロペン、1,3-ブタジエンおよびBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)が挙げられる。蒸気分解は、従来の石油化学のための、とりわけポリマー産業のための原料の主要な供給源である。例えばポリエチレン(PE)、ポリプロペン(PP)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などの主なポリマーは、従来、化石炭化水素を蒸気分解することによって製造される原料から得られている。近年、蒸気分解フィードストックとして従来使用される化石原料の少なくとも一部を、環境問題に取り組むために再生可能な供給源由来のより持続可能性な原料と入れ替えることが提案されている。
【0004】
蒸気分解は主に炭化水素を製造するが、例えばCOおよびCO2などが副生成物として製造される。
【発明の概要】
【0005】
発明の第一の態様にしたがい、
a)熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを提供する工程であって、前記再生可能な異性化パラフィン組成物が、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンであって、前記パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満であるパラフィンと、熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサとを含み、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と化石ナフサのwt-%量との合計が、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である工程、ならびにb)炭化水素の混合物を含む分解生成物を形成するために前記工程a)で提供された熱分解フィードストックを熱分解する工程を含む方法が提供される。分解ステップで形成されるCO、CO2、C22の総計は、再生可能なイソパラフィン組成物であって、再生可能な異性化パラフィン組成物中、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%の、イソパラフィンの総計のwt-%に対する比が0.15未満である再生可能なイソパラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを熱分解する場合、当該基準を満たさない再生可能なパラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを熱分解する場合と比較してより少ない。
【0006】
ある実施態様において、熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックの総計の重量の50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物と、熱分解フィードストックの総計の重量の0~50wt-%の化石ナフサとを含む。ある実施形態において、熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックの総計の重量の50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含む。再生可能な異性化パラフィン組成物は、熱分解化石ナフサと比較して、熱分解ステップにおいて高価値の化学品(エテン、プロペン、1、3-ブタジエン、ベンゼン、トルエン、およびキシレン)の形成を促進する。この効果は、熱分解フィードストック中の再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量が増加するにつれてより明白となり、およびしたがって、少なくとも50wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックが好ましい。再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量を増加させることは、熱分解フィードストック中の、そして結果的に分解生成物中の再生可能な物のwt-%量を増加させる。
【0007】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および化石ナフサのwt-%量の合計は、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、好ましくは少なくとも99wt-%である。主に再生可能な異性化パラフィン組成物および化石ナフサを含む熱分解フィードストックは、熱分解に特に適している。
【0008】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量のイソパラフィンのwt-%量の総計に対する比は、0.12未満、好ましくは0.10未満、より好ましくは0.05未満である。再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量のイソパラフィンのwt-%量の総計に対する比を低下させることは、熱分解ステップで形成されるCO、CO2、C22の総計の量を低下させる。
【0009】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの少なくとも80wt-%、好ましくは少なくとも85wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%は、C14~C18の炭素数範囲にある。熱分解ステップ中で形成されるCO、CO2、C22の総計は、再生可能な異性化パラフィン組成物中の少なくとも80wt-%のイソパラフィンがC14~C18の炭素数の範囲にある再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを熱分解する場合、この基準を満たさない再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを熱分解する場合と比較して低下される。熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2、C22の総計の量は、再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数の範囲にあるイソパラフィンのwt-%量が増加するにしたがってさらに低下される。
【0010】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの60~95wt-%、好ましくは60~80wt-%、さらに好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンである。少なくとも60wt-%のイソパラフィンを含む再生可能な異性化パラフィン組成物は良好な低温特性および化石ナフサとの良好な混和性を有する。
【0011】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の、少なくとも70wt-%、好ましくは少なくとも80wt-%、さらに好ましくは少なくとも90wt-%、より好ましくは少なくとも95wt-%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt-%のパラフィンを含む。高いパラフィン含有量を有する再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックは、熱分解ステップにおいて、共に価値の高い熱分解生成物であるエテンおよびプロペンなどのC2~C3炭化水素の高い収率を促進する。
【0012】
ある実施形態において、化石ナフサは、化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~35wt-%のオレフィン、10~30wt-%のナフテン、および0~30wt-%の芳香物化合物を含む。ある実施形態において、化石ナフサ中の炭化水素のwt-%量は、化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である。
【0013】
ある実施形態において、熱分解フィードストックは、重量比で20~300ppm、好ましくは重量比で20~250ppm、より好ましくは重量比で20~100ppm、およびさらにより好ましくは重量比で50~65ppmの硫黄を含む。硫黄を含む熱分解フィードストックは、熱分解ステップにおけるCOおよびCO2の形成をより低下させる。熱分解フィードストックに含まれる再生可能な異性化パラフィン組成物はすでに熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2、C22の総計の量を低下させているため、熱分解フィードストックが多くの量の硫黄を含む必要はない。熱分解フィードストックの定量の硫黄は、定量の硫黄を含む分解生成物を結果としてもたらす。
【0014】
ある実施形態において、工程b)は、780℃~890℃、好ましくは800℃~860℃、より好ましくは800℃~840℃、およびさらにより好ましくは800℃~820℃の範囲から選択されるコイル出口温度(coil outlet temperature、COT)で行われる。CO、CO2、C22の低い総計の量が幅広い温度範囲から選択されるコイル出口温度(COT)での熱分解ステップを行うことにより得られ得る。800℃~840℃の範囲からCOTを選択することは、熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2、C22の総計の量を減少させる。ある実施形態において、工程b)において行われる熱分解は、蒸気分解である。
【0015】
ある実施形態において、該方法は、工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、CO、CO2、またはC22の少なくとも一つを除去するために精製処理に付す工程c)を含む。第一の態様による方法の有利な点は、CO、CO2、C22の、またはそれらの組み合わせの除去という負荷の減少であり、これは効率的な精製を可能にする。
【0016】
ある実施形態において、該方法は、工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、または、工程c)の精製処理に付された分解生成物の少なくとも一部分を、またはこれら両方を、ポリマーを製造するための重合化処理に付す工程d)を含む。ある実施形態において、重合化処理は、触媒的重合化処理である。ある実施形態において、重合化処理は、工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、または、工程c)の精製処理に付された分解生成物の少なくとも一部分を、またはこれら両方を、ポリマーを形成するために、任意には分子水素の存在下で。重合化触媒と接触させることを含む。工程b)で形成された、および任意には工程c)において精製された分解生成物は、熱分解ステップにおいて形成される重合化触媒毒であるCO、CO2、C22の総計の量が低いため、重合化に特に適している。さらに、工程d)において形成されるポリマーは、少なくとも部分的に再生可能な供給源由来であり、したがって、化石原料からのみ形成されるポリマーと比較してより持続性である。
【0017】
ある実施形態において、該方法は、複数の熱分解炉を提供すること、および、複数の熱分解炉の少なくとも一つにおいて工程b)を行うことを含む。ある実施形態において、該方法は、複数の熱分解炉から分解生成物を得ること、および、混合分解生成物を形成するために、得られた分解生成物を混合すること、および任意には、混合分解生成物の少なくとも一部分をCO、CO2またはC22の少なくとも一つを除去するために精製処理へと、またはポリマーを形成するために重合化処理へと、または、精製処理および重合化処理の両方へと、付すことを含む。
【0018】
本発明の第2の態様にしたがい、熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物であって、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、前記パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満である再生可能な異性化パラフィン組成物と、熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサとを含み、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と化石ナフサのwt-%量との合計が、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である熱分解フィードストックが提供される。再生可能な異性化パラフィン組成物であって、再生可能な異性化パラフィン組成物中、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%の、イソパラフィンの総計のwt-%に対する比が0.15未満である再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを熱分解に付す場合、形成されるCO、CO2、C22の総計は、当該基準を満たさない再生可能なパラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを熱分解に付す場合と比較してより少ない。
【0019】
ある実施形態において、熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックの総計の重量の50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物と、熱分解フィードストックの総計の重量の0~50wt-%の化石ナフサとを含む。ある実施形態において、熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックの総計の重量の50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含む。少なくとも50wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックは、熱分解に付された場合に高価値の化学品(HVCs、すなわちエテン、プロペン、1、3-ブタジエン、ベンゼン、トルエン、およびキシレン)の形成を促進し、および、より低いwt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを比較して、より持続性である。
【0020】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および化石ナフサのwt-%量の合計は、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である。
【0021】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量のイソパラフィンのwt-%量の総計に対する比は、0.12未満、好ましくは0.10未満、より好ましくは0.05未満である。熱分解フィードストック中に含まれる再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量のイソパラフィンのwt-%量の総計に対する比を低下させることは、熱分解フィードストックが熱分解に付される際に形成されるCO、CO2およびC22の総計の量をさらに低下させる。
【0022】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの少なくとも80wt-%、好ましくは少なくとも85wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%は、C14~C18の炭素数範囲にある。再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの少なくとも80wt-%がC14~C18の炭素数範囲にある再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックが熱分解に付される際に形成されるCO、CO2、C22の総計を、この基準を満たさない熱分解フィードストックを熱分解に付す場合と比較して、さらに低下させる。この効果は、熱分解フィードストック中に含まれる再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数の範囲にあるイソパラフィンのwt-%量が増加するにしたがってより明白となる。
【0023】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの60~95wt-%、好ましくは60~80wt-%、さらに好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンである。少なくとも60wt-%のイソパラフィンを含む再生可能な異性化パラフィン組成物は良好な低温特性および化石ナフサとの良好な混和性を有する。
【0024】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、少なくとも70wt-%、好ましくは少なくとも80wt-%、さらに好ましくは少なくとも90wt-%、より好ましくは少なくとも95wt-%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量を含む。熱分解フィードストック中に含まれる再生可能な異性化パラフィン組成物の高いパラフィン含有量は、熱分解フィードストックが熱分解に付される場合に、例えばエテンおよびプロペンなどのC2~C3炭化水素の高い収率を促進する。
【0025】
ある実施形態において、化石ナフサは、化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~35wt-%のオレフィン、10~30wt-%のナフテン、および0~30wt-%の芳香物化合物を含む。ある実施形態において、化石ナフサ中の炭化水素のwt-%量は、化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である。
【0026】
ある実施形態において、熱分解フィードストックは、重量比で20~300ppm、好ましくは重量比で20~250ppm、より好ましくは重量比で20~100ppm、および最も好ましくは重量比で50~65ppmの硫黄を含む。硫黄を含む熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックが熱分解に付される際にCOおよびCO2の形成をさらに低下させる。熱分解フィードストックに含まれる再生可能な異性化パラフィン組成物はすでに熱分解フィードストックが熱分解に付される際に形成されるCO、CO2およびC22の総計の量を低下させているため、熱分解フィードストックが多くの量の硫黄を含む必要はない。
【0027】
本発明の第3の態様にしたがい、第1の態様による方法によって得られ得る炭化水素の混合物を含む分解生成物が提供され、ここで、分解生成物中のCO、CO2およびC22のwt-%量の総計は、分解生成物の総計の重量の1.5wt-%未満、好ましくは1.3wt-%未満、より好ましくは1.1wt-%未満、さらにより好ましくは0.8wt-%未満である。
【0028】
本発明の第4の態様にしたがい、第3の態様による分解生成物の、例えばポリプロペン、ポリエチレン、またはそれら両方などのポリマーを製造するための使用が提供される。ある実施形態において、第3の態様による分解生成物は、触媒的重合化処理によってポリマーを製造するために使用される。第3の態様による分解生成物は、重合化触媒毒であるCO、CO2およびC22の総計の量が低いため、重合化に特に適切である。
【0029】
本発明の第5の態様にしたがい、工程d)を含む、または、混合された分解生成物の少なくとも一部分をポリマーを形成するために重合化処理に付すことを含む、第1の態様による方法によって得られ得るポリマーを含む製造品を提供する。製造品に含まれる該ポリマーは、少なくとも部分的に再生可能な供給源由来であり、およびしたがって、製造品は、化石源を唯一の起源とするポリマーを含む製造品と比べてより持続性である。
【0030】
本発明の種々の非拘束的な態様および実施形態が上記に示されてきた。上述の実施形態は、本発明の実施において利用され得る選択された態様またはステップを説明するためだけに使用される。いくつかの実施形態は、本発明の特定の態様に関連してのみ示され得る。対応する実施形態は、他の態様にも同様に適用され得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施例において使用されるベンチスケールの蒸気分解セットアップの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の記載において、同様の符号は同様の要素またはステップを示している。
【0033】
本発明は、少なくとも部分的に再生可能な供給源由来の熱分解フィードストック、すなわち再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを提供することと、炭化水素の混合物を含む分解生成物を形成するために該熱分解フィードストックを熱分解することとを含む方法に関する。さらに、本発明は、ポリマーを製造するための、炭化水素の混合物を含む分解生成物の使用に関する。
【0034】
本明細書中に使用されるように、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な供給源または複数の再生可能な供給源を起源とする、および、多くの量のパラフィン(非環式アルカン)、線形直鎖状のパラフィン(n-パラフィン)および分岐のイソパラフィン(i-パラフィン)の両方を含む、組成物を意味している。該イソパラフィンは、1分岐のi-パラフィン、2分岐のi-パラフィン、3分岐のi-パラフィン、3つより多くの分岐をもつi-パラフィン、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、イソパラフィンは、メチル置換イソパラフィン、すなわち、側鎖または複数の側鎖、すなわち分岐または複数の分岐がメチル基の側鎖であるイソパラフィンである。理論的には、分岐の数は、始めに最も長い炭素鎖を決定して、その後最も長い炭素鎖に付加されている分岐を数えることによって構造式から決定され得る。しかしながら、実際には、側鎖(分岐)の数は、任意の適切な分析方法、例えば実施例で記載されている分析方法などによって決定され得る。
【0035】
驚くべきことに、熱的に分解された再生可能なパラフィン系フィードストックが、望ましくない副生成物、特にはCO、CO2およびC22の総計の量を、従来の化石フィードストック、特には化石ナフサを熱分解する場合と比較して増加させる傾向があるということが発見された。この不要な効果は、再生可能なパラフィン系フィードストック成分と化石フィードストック成分とのブレンドを熱分解する場合に特に顕著であることが発見された。COおよびCO2は、重合化触媒毒であり、そしてそれゆえ、重合化プロセスへと導かれる分解生成物は、好ましくは、体積当たり15ppmより多い、より好ましくは体積当たり0.2ppmより多い、およびさらにより好ましくは体積当たり0.03ppmより多いCOを含むべきではなく、および、好ましくは、体積当たり10ppmより多い、例えば体積当たり0.09ppmより多い、より好ましくは体積当たり0.1ppmより多いCO2を含むべきではない。C22もまた、重合化触媒毒として、特にはポリエチレン製造における触媒に対する毒として作用し得る。したがって、重合化プロセスに導かれる分解生成物は、好ましくは、体積当たり10ppm未満の、より好ましくは体積当たり2.7ppm未満の、さらにより好ましくは体積当たり1ppm未満のC22しか含まないべきである。したがって、典型的には、再生可能なパラフィン系フィードストック成分を含む熱分解フィードストックからの分解生成物は、重合化プロセスに導かれ得る前に、CO、CO2およびC22の除去という高い負荷が存在する。
【0036】
しかしながら、驚くべきことに、CO、CO2およびC22の総計の増加された量の上述の効果が、熱分解フィードストックとして、または化石ナフサとブレンドされた熱分解フィードストック成分として、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンであって、該パラフィンの10~95%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満であるパラフィンを含む再生可能な異性化パラフィン組成物を選択するまたは提供することによって、ならびに、該熱分解フィードストックを熱分解することによって、軽減され得ることが発見された。3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満である再生可能な異性化パラフィン組成物を含むまたはそれからなる熱分解フィードストックを熱分解することは、当該基準を満たさない再生可能なパラフィン系フィードストック成分を含むまたはそれからなる熱分解フィードストックの場合と比較して、形成されるCO、CO2およびC22の総計の量を低下させる。驚くべきことに、いかなる理論にも縛られることなく、再生可能な異性化パラフィン組成物中の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、熱分解プロセスのあいだのCO、CO2およびC22の形成を制御する重要な因子であるようである。
【0037】
本開示において、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの重量パーセントは、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量に対して決定され、および、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの重量パーセント(イソパラフィンの総計のwt-%)およびノルマルパラフィンの重量パーセントは、それぞれ、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量に対して決定される。さらに、本開示において、1分岐のイソパラフィン、2分岐および3分岐のイソパラフィン、ならびに3つより多くの分岐をもつイソパラフィンの重量パーセントは、それぞれ、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量に対して決定される。3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、本開示において、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量に対して決定されるそれぞれの重量パーセントを基に決定される。
【0038】
再生可能な異性化パラフィン組成物中の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比をさらに低下させることによって、熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2およびC22の総計の量がさらに低下されることが発見された。したがって、ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、0.12未満、好ましくは0.10未満、より好ましくは0.05未満である。再生可能な異性化パラフィン組成物の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、約0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、および0.01から選択され得る。ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、少なくとも0.01である。したがって、再生可能な異性化パラフィン組成物の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、少なくとも0.01かつ0.15未満、好ましくは少なくとも0.01かつ0.12未満、より好ましくは少なくとも0.01かつ0.10未満、およびさらにより好ましくは少なくとも0.01かつ0.05未満であり得る。
【0039】
さらに、熱分解フィードストックとして、熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物であって、再生可能な異性化パラフィン組成物が、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンであり、該パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも80wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満、好ましくは0.12未満、より好ましくは0.10未満、さらにより好ましくは0.05未満である異性化パラフィン組成物と、熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサと、を含み、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と化石ナフサのwt-%量との合計が、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である熱分解フィードストックを提供することによって、熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2およびC22の総計の量は、これらの基準を満たさない再生可能なパラフィン系フィードストック成分を含むまたはそれからなる熱分解フィードストックを熱分解に付す場合と比較してより少ないことが発見された。再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの少なくとも80wt-%がC14~C18の炭素数の範囲にある再生可能な異性化パラフィン組成物を含むまたはそれからなる熱分解フィードストックを熱分解する際、形成されるCO、CO2およびC22の総計の量は、より大きな炭素数分布をもつイソパラフィンを含む再生可能なパラフィン系フィードストック成分を含むまたはそれからなる熱分解フィードストックと比較して、低下される。いかなる理論に縛られることなく、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの炭素数分布が、熱分解ステップにおけるCO、CO2およびC22の形成を制御する因子であるようである。本開示において、C14~C18の炭素数の範囲にあるイソパラフィンの重量パーセントは、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの総計の重量に対して決定される。
【0040】
再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数の範囲にあるイソパラフィンのwt-%量を増加させることは、さらに、熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2およびC22の総計の量を低下させる。したがって、ある実施形態において、異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、ここで、該パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも85wt-%、好ましくは少なくとも90wt-%。より好ましくは少なくとも95wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満である。再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数の範囲にあるイソパラフィンのwt-%量は、約85wt-%、86wt-%、87wt-%、88wt-%、89wt-%、90wt-%、91wt-%、92wt-%、93wt-%、94wt-%、95wt-%、96wt-%、97wt-%、98wt-%、99wt-%、および100wt-%から選択され得る。
【0041】
ある実施形態において、異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、ここで、該パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも90wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.12未満である。より好ましくは、異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、ここで、該パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも95wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.10未満、好ましくは0.05未満である。再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比を低下させると同時に、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、C14~C18の炭素数範囲にあるi-パラフィンのwt-%量を増加させることによって、熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2およびC22の総計の量が特に低くなる。
【0042】
少なくとも60wt-%のイソパラフィンを含む再生可能な異性化パラフィン組成物は、良好な低温特性をもち、および、分解プロセスを妨げることなく、低い周囲温度(0℃またはそれ未満)で、ヒーター無しで、熱分解装置のフィードタンク中にそのまま保管され得る。本明細書中における良好な低温特性とは、曇点の低い温度値を意味する。再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンのwt-%量を増加させることは、再生可能な異性化パラフィン組成物の化石ナフサとの混和性を改良し、これは、熱分解フィードストックが、熱分解フィードストックの総計の重量の100wt-%未満の再生可能な異性化パラフィン組成物と0wt-%より多い化石ナフサとを含む場合に有利点となる。したがって、ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、ここで、該パラフィンの60~95wt-%、好ましくは65~93wt-%、より好ましくは65~90wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%の、イソパラフィンの総計のwt-%に対する比が0.15未満である。
【0043】
上述されたCO、CO2およびC22の増大された総計の量という望ましくない効果は、再生可能なパラフィン系フィードストック成分中のイソパラフィンのwt-%が高い場合により顕著となり得る。したがって、熱分解のあいだに形成されるCO、CO2およびC22の総計の量の減少という有益な効果は、特に、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満であり、再生可能な異性化パラフィン中のイソパラフィンの好ましくは少なくとも80wt-%がC14~C18の炭素数範囲にある再生可能な異性化パラフィン組成物が再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含む場合に、重要である。したがって、ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、前記パラフィンの60~95wt-%、好ましくは65~93wt-%、より好ましくは65~90wt-%がイソパラフィンであり、該イソパラフィンの少なくとも85wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.12未満である。さらに、ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、前記パラフィンの60~95wt-%、好ましくは65~93wt-%、より好ましくは65~90wt-%がイソパラフィンであり、該イソパラフィンの少なくとも90wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.10未満、好ましくは0.05未満である。
【0044】
ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、前記パラフィンの60~80wt-%、好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満であり、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの少なくとも80wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にある。中程度の異性化度、例えばイソパラフィンのwt-%量の80wt-%もしくはそれ未満、または70wt-%もしくはそれ未満、を有する再生可能な異性化パラフィン組成物は、熱分解ステップにおいて、価値の高い熱分解生成物であるエチレンの形成を促進させる。
【0045】
すでに上述したように、熱分解ステップのあいだに形成されるCO、CO2およびC22の総計の量は、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比を低下させることによって減少され得る。結果的に、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンの低いwt-%量が好ましい。好ましくは、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、パラフィン組成物の総計の重量の14wt-%未満、さらに好ましくは12wt-%未満、さらにより好ましくは10wt-%未満、より好ましくは8wt-%未満、さらにより好ましくは5wt-%未満、および、最も好ましくは3wt-%未満、例えば1wt-%未満、または、0.5wt-%未満などの3つより多くの分岐をもつイソパラフィンを含み得る。
【0046】
1分岐のイソパラフィン、特にはモノメチル置換されたイソパラフィンは、熱分解ステップにおいて、価値の高い分解生成物であるプロピレンの形成を促進する。したがって、再生可能な異性化パラフィン組成物が、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量の少なくとも30wt-%、好ましくは少なくとも35wt-%、さらに好ましくは少なくとも40wt-%、より好ましくは少なくとも45wt-%、およびさらにより好ましくは少なくとも50wt-%の1分岐イソパラフィンを含むことが好ましい。任意には、ある実施形態において、1分岐のイソパラフィンのwt-%量の、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は、少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.4、さらに好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.6、さらにより好ましくは少なくとも0.7、および最も好ましくは少なくとも0.8である。再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンは、1分岐のイソパラフィン、2および3分岐のイソパラフィン、3つより多くの分岐をもつイソパラフィン、またはそれらの組み合わせのどれかであるため、イソパラフィンの残りは、2および3分岐のイソパラフィンである。換言すると、再生可能な異性化パラフィン組成物中の、1分岐のイソパラフィンでもなく、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンでもないイソパラフィンは、2および3分岐のイソパラフィンである。
【0047】
再生可能な異性化パラフィン組成物は、好ましくは、高いパラフィン含有量を有する。高いパラフィン含有量は、熱分解ステップにおいて、ともに高価値な分解生成物である例えばエテンおよびプロペンなどのC2およびC3炭化水素の高い収率を促進する。したがって、ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも70wt-%、好ましくは少なくとも80wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%のパラフィンを含み、ここで、該パラフィンの10~95%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比は0.15未満である。再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンのwt-%量は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の約65wt-%、70wt-%、75wt-%、80wt-%、85wt-%。90wt-%、95wt-%、および99wt-%から選択され得る。
【0048】
ある好ましい実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも70wt-%、好ましくは少なくとも80wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%のパラフィンを含み、該パラフィンの60~95wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも80wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満である。熱分解ステップにおいて形成されるCO、CO2およびC22の総計の量は、熱分解フィードストックがこのような再生可能な異性化パラフィン組成物を含むまたはそれからなる場合に小さい。さらに、このような再生可能な異性化パラフィン組成物は、良好な低温特性と化石ナフサとの良好な混和性を有し、そして、熱分解ステップにおいて、例えばプロペンおよびエテンなどの高価値な分解生成物の形成を促進する。
【0049】
上記で記載したように、再生可能な異性化パラフィン組成物は、好ましくは、パラフィンの高いwt-%量を有する。したがって、再生可能な異性化パラフィン組成物は、好ましくは、1.0wt-%またはそれ未満、より好ましくは0.5wt-%またはそれ未満、さらにより好ましくは0.2wt-%またはそれ未満の芳香族化合物(芳香族炭化水素)、ならびに2.0未満、好ましくは1.0wt-%またはそれ未満、より好ましくは0.5wt-%またはそれ未満のオレフィン(アルケン)、5.0wt-%以下、好ましくは2.0wt-%以下のナフテン(環状アルカン)を含む。再生可能な異性化パラフィン組成物中の芳香族化合物、オレフィンおよびナフテンの低いwt-%量は、熱分解ステップにおける高価値な化学品(HVCs)の形成を促進する。本明細書中で使用されるように、高価値な化学品とは、エテン、プロペン、1、3-ブタジエン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンを意味する。ベンゼン、トルエンおよびキシレンは、BTXとして参照され得る。いずれの場合であっても、再生可能な異性化パラフィン組成物は、好ましくは最大で重量当たり50ppmの酸素を含む。低い酸素含有量は、より制御された様式での熱分解を行うことを可能にし、これは、HVCsの形成に好都合である。再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンは、n-パラフィンおよびi-パラフィンである。鎖状のn-パラフィンは、エテン分子に分解しやすい傾向がある。したがって、再生可能な異性化パラフィン組成物が、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量の少なくとも5wt-%、例えば5~90wt-%、のn-パラフィンを含むことが好ましい。ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量の、5~40wt-%以下、好ましくは8~35wt-%、さらに好ましくは10~35wt-%、より好ましくは20~35wt-%、およびさらにより好ましくは30~35wt-%のn-パラフィンを含む。
【0050】
一般的に、上記で規定された任意の再生可能な異性化パラフィン組成物は、本発明の任意の態様または実施形態において使用され得る。そうではあるが、特定の特に好ましい再生可能な異性化パラフィン組成物が以下に記載される。特定の特に好ましい実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも80wt-%のパラフィンを含み、該パラフィンの60~93wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも90wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.12未満である。さらに、ある特定の特に好ましい実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物は、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも90wt-%のパラフィンを含み、該パラフィンの60~90wt-%、好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンであり、および、該イソパラフィンの少なくとも95wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.10未満、好ましくは0.5未満である。これらの再生可能な異性化パラフィン組成物は、熱分解フィードストックとして、または、化石ナフサとのブレンド中の熱分解フィードストック成分として提供された場合に、熱分解ステップにおけるHVCsの形成を促進しながら、特に低いCO、CO2およびC22の総計の量を生じることが発見された。さらに、これらの再生可能な異性化パラフィン組成物は、好ましい低温特性を有し、かつ、化石ナフサと良好にブレンドされる(化石ナフサに良好な混和性を有する)。
【0051】
熱分解フィードストックを提供することは、再生可能な異性化パラフィン組成物を提供すること、および、化石ナフサを提供すること、および、熱分解フィードストックを形成するために再生可能な異性化パラフィン組成物を化石ナフサと併せることと、を含み得る。再生可能な異性化パラフィン組成物は、好ましくは、再生可能な供給源由来のフィードストック(再生可能なフィードストック)、脂肪酸、脂肪酸誘導体、モノ-、ジ-またはトリグリセリド、またはこれらの組み合わせを、n-パラフィンを形成するために水素化処理に付すこと、および、水素化処理において形成されたn-パラフィンの少なくとも一部分を、i-パラフィンを形成するための異性化処理に付すことによって提供される。
【0052】
好ましくは、再生可能なフィードストック、すなわち再生可能な供給源由来のフィードバックは、植物性オイル、植物性脂肪、動物性オイル、または動物性脂肪の少なくとも1つを含む。これらの材料は、天然のオイル(複数のオイル)および/または脂肪(複数の脂肪)の適切な選択および/またはブレンドによって必要に応じて調整され得る予測可能な組成物を有する再生可能なフィードストックを提供することをそれらが可能にしていることから、好ましい。再生可能なフィードストックは、植物性オイル、木材オイル、他の植物ベースのオイル、動物性オイル、動物性脂肪、魚脂、魚油、海藻オイル、微生物オイル、またはそれらの組み合わせを含み得る。任意には、再生可能なフィードストックは、リサイクル可能な廃棄物および/またはリサイクル可能な残渣を含み得る。リサイクル可能な廃棄物は、例えば、使用済み料理オイル、遊離脂肪酸、パーム油副生成物、またはプロセス副流、スラッジ、植物性オイル処理からの副流、またはこれらの組み合わせなどの材料を含み得る。再生可能なフィードストックの、ならびに、その結果の再生可能な異性化パラフィン組成物および形成された分解生成物の全体の持続性は、リサイクル可能な廃棄物、またはリサイクル可能な残渣、またはその両方を含む再生可能なフィードストックを、そのままで、または、例えば植物性オイル、植物性脂肪、動物性オイル、および/または動物性脂肪などの再生可能能なオイルおよび/または再生可能な脂肪とあわせて提供することによって増大させられ得る。新鮮なフィードとは、本明細書中において、リサイクルされていない成分を意味する。再生可能なフィードストックは、再生可能な異性化パラフィン組成物を得るための水素化処理および異性化に付される前に、任意の前処理に付されてもよい。このような前処理は、精製および/または再生可能なフィードストックの、例えばけん化またはエステル交換反応などの化学修飾を含み得る。再生可能なフィードストックが固体材料である場合(環境条件で)、より好ましい液体の再生可能なフィードストックを誘導するために材料を化学的に修飾することが有用である。
【0053】
水素化処理は、典型的には、脂肪酸、脂肪酸誘導体、再生可能なフィードストック中に含まれるグリセリドの水素化、脱窒素化、および脱硫処置として機能する。さらに、再生可能な異性化パラフィン組成物を提供することは、再生可能なフィードストックを、脱炭酸化および脱カルボニル化反応(すなわち、COxの形としての酸素の除去)に、および/または他の触媒的プロセスに、水の形としての有機酸素化合物からの酸素の除去のため、硫化水素(H2S)の形としての有機硫黄化合物からの硫黄の除去のため、アンモニア(NH3)の形としての有機窒素化合物からの窒素の除去のため、有機ハロゲン化合物からのハロゲン(例えば塩酸(HCl)の形としての塩素)の除去のために、付すことを含み得る。このようなプロセスは例えば、塩素を除去するための水素化脱塩素反応および窒素を除去するための水素化脱窒素反応(HDN)などであり得る。
【0054】
好ましくは、水素化処理は、水素化脱酸素(HDO)、または接触水素化脱酸素(接触HDO)である。水素化処理は、好ましくは、2~15MPa、好ましくは3~10MPaの範囲から選択される圧力で、および、200~500℃、好ましくは280~400℃の範囲から選択される温度で行われる。水素化処理は、周期表のVIII群および/またはVIB群からの金属を含む従来の水素化処理触媒の存在下で行われてもよい。好ましくは、水素化処理触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiW、NiMoまたはCoMo触媒であり、ここで、担体はアルミナおよび/またはシリカである。典型的には、NiMo/Al23および/またはCoMo/Al23触媒が使用される。
【0055】
本発明の再生可能な異性化パラフィン組成物は、水素化処理ステップで形成されたn-パラフィンの少なくとも一部分をi-パラフィンを形成するために、および再生可能な異性化パラフィン組成物を製造するために異性化処理に付すことによって提供され得る。異性化処理は、特に限定されるものではない。そうではあるが、接触異性化処理が好ましい。典型的には、再生可能なフィードストックから水素化処理ステップにおいて形成されたn-パラフィンを異性化処理に付すことは、主にメチル置換されたイソパラフィンを形成する。異性化条件の厳しさおよび触媒の選択が形成されるメチル分岐の量と炭素骨格におけるそれらの互いの距離を制御する。異性化ステップは、さらに、例えば精製ステップおよび分留ステップなどの中間ステップを含んでいてもよい。精製および/または分留ステップは、形成される再生可能な異性化パラフィン組成物の特性のより良好な制御を可能にする。
【0056】
異性化処理は、好ましくは、好ましくは、200~500℃、好ましくは280~400℃の範囲から選択される温度で、2~15MPa、好ましくは3~10MPaの範囲から選択される圧力で行われる。異性化処理は、モレキュラーシーブおよび/または周期表のVIII群から選択される金属と担体とを含む触媒などの従来の異性化触媒の存在下で行われてもよい。好ましくは、異性化触媒は、SAPO-11またはSAPO-41またはZSM-23またはフェリエライトおよびPt、PdまたはNiおよびAl23またはSiO2を含む触媒である。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SAPO-11/Al23、Pt/ZSM-22/Al23、Pt/ZSM-23/Al23、および/またはPt/SAPO-11/SiO2である。触媒の不活性化は、異性化処理における分子水素の存在によって低減され得る。したがって、異性化処理において、添加された水素の存在が好ましい。ある実施形態において、水素化処理触媒および異性化触媒は、同時には反応フィード(再生可能なフィードストックおよび/またはそれから導かれるn-パラフィンおよび/またはi-パラフィン)に接触しない。ある実施形態において、水素化処理および異性化処理は、別個のリアクターで行われるか、または、別個に行われる。
【0057】
ある実施形態において、水素化処理ステップにおいて形成されたn-パラフィンの一部分のみが異性化処理に付される。水素化処理ステップにおいて形成されたn-パラフィンの一部分が分離され得、分離されたn-パラフィンがその後i-パラフィンを形成するために異性化処理に付され得る。異性化処理に付された後、分離されたパラフィンは、任意には残りのパラフィンと再統合される。代替的には、水素化処理ステップにおいて形成されたn-パラフィンの全てがi-パラフィンを形成するために異性化処理に付され得る。
【0058】
因みに、異性化処理は、再生可能な異性化パラフィン組成物を異性化するために主に機能するステップである。大部分の熱的または触媒的転換(例えば水素化処理およびHDOなど)が少ない程度の異性化しかもたらさない(通常、5wt-%未満)一方で、本発明で適用される異性化ステップは、再生可能な異性化パラフィン組成物のイソパラフィン含有量において顕著な増加を導くステップである。典型的には、炭素数分布は異性化処理のあいだ実質的に不変である。したがって、C3~C14の炭素数の範囲にあるパラフィンのwt-%量は、異性化処理のあいだに実質的に増大しない。このことは、C14未満の炭素数をもつイソパラフィンが熱分解ステップにおいてCO、CO2およびC22の形成を増加させることが見いだされているため、好ましい。
【0059】
再生可能な異性化パラフィン組成物を提供することは、好ましくは、再生可能なフィードストックをガス化することを含まない。例えばフィッシャー-トロプシュ法のステップを含むプロセスなどの気液(GTL)プロセスを通じて製造されたパラフィン組成物は、C9~C50、特にはC9~C24の炭素数の範囲にあるパラフィン系炭化水素という幅広い分布によって特徴付けられる。
【0060】
水および軽質ガス、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン、エタン、およびプロパンなどは、水素化処理されたおよび/または異性化された再生可能なフィードストックから、例えば蒸留などの任意の従来の手段を用いて、熱分解フィードストックまたは熱分解フィードストック成分として再生可能な異性化パラフィン組成物を提供する前に、分離され得る。水および軽質ガスの除去の後、また除去と共に、水素化されたおよび/または異性化された再生可能なフィードストックは、一または複数のフラクションに分留され得る。分留は、例えば蒸留などの任意の従来の手段によって行われ得る。さらに、水素化されたおよび/または異性化された再生可能なフィードストックは、任意には精製されてもよい。精製および/または分留は、形成される異性化パラフィン組成物の特性のより良好な制御を可能にする。しかしながら、上述のように再生可能なフィードストックの水素化処理および異性化によってえられる再生可能な異性化パラフィン組成物は、熱分解装置または熱分解プロセスに直接導かれてもよい。
【0061】
再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィン含有量およびイソパラフィンのタイプ(イソパラフィンの分岐)は、主に、異性化処理、例えば触媒(またはその欠如)、温度、圧力、滞留時間、および異性化プロセスに添加された水素の量などによって制御される。ある実施形態において、再生可能な異性化パラフィン組成物を提供することは、異性化処理から得られる再生可能な異性化パラフィン組成物を分析すること、および、分析結果に基づいて上述の要件を満たす再生可能な異性化パラフィン組成物を選択すること、および、熱分解フィードストックとして、または熱分解フィードストック成分として選択された再生可能な異性化パラフィン組成物を提供することを含む。上述の基準を満たす再生可能な異性化パラフィン組成物を選択することによって、熱分解のあいだに形成される不要な副生成物、すなわちCO、CO2およびC22の総計の量が低下され得る。好ましくは、再生可能な異性化パラフィン組成物を分析することは、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンのwt-%量を決定すること、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンのwt-%量を決定すること、再生可能な異性化パラフィン組成物中の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%の、イソパラフィンの総計のwt-%に対する比を決定すること、および好ましくは、再生可能な異性化パラフィン組成物中のイソパラフィンの炭素数分布を決定することを含む。再生可能な異性化パラフィン組成物を分析することはさらに、再生可能な異性化パラフィン組成物中のn-パラフィンのwt-%を決定すること、および/または、1分岐のイソパラフィン、2および3分岐のイソパラフィン、および3つより多くの分岐をもつイソパラフィン、それぞれの重量パーセントを決定することを含み得る。パラフィン、イソパラフィン、n-パラフィン、および、1分岐のイソパラフィン、2および3分岐のイソパラフィン、および3つより多くの分岐をもつイソパラフィンの重量パーセントは、例えばGC-FID分析を用いるなどの任意の適切な方法で、例えば実施例に記載される分析方法などで決定され得る。
【0062】
本発明の熱分解フィードストックは、熱分解フィードストックの総計の重量を基本として、1~100wt-%の上述の再生可能な異性化パラフィン組成物、および、0~99wt-%の化石ナフサを含み、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および化石ナフサのwt-%量の合計は、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である。換言すると、再生可能な異性化パラフィン組成物は、熱分解フィードストックとして、または、熱分解フィードストックを形成するために化石ナフサと併せた熱分解フィードストック成分として提供されてもよい。好ましくは、再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および化石ナフサのwt-%量の合計は、熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、およびより好ましくは少なくとも99wt-%である。
【0063】
本明細書中で使用されるように、化石ナフサは、天然のおよび再生可能でない供給源由来である組成物を意味する。このような非再生可能な供給源はまた、「化石供給源(fossil sources)」または「ミネラル供給源(mineral sources)」と称され得る。化石ナフサが起源とし得る非再生可能である供給源の例としては、粗油、石油/石油ガス、シェールオイル/ガス、天然ガス、または、地上/地下の供給源から利用され得る炭化水素に富んだ任意の鉱床を含む石炭鉱床など、およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。このような供給源はまた、「化石オイル(fossil oil)」とも称される。化石ナフサは、主に炭化水素を含む。ある実施形態において、化石ナフサは、化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、好ましくは少なくとも99wt-%の炭化水素を含む。ある実施形態において、化石ナフサは、化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~30wt-%、好ましくは0~5wt-%のオレフィン(アルケン)、5~30wt-%のナフテン(環状アルカン)、および0~30wt-%の芳香族化合物(芳香族炭化水素)を含む。
【0064】
化石ナフサは、例えば重質ナフサ、軽質ナフサ、またはそれらの組み合わせなどの様々なグレードの化石ナフサから選択され得る。好ましくは、化石ナフサの沸点範囲(沸騰開始点から終了点まで)は、25℃~360℃の温度範囲内にある。ある実施形態において、化石ナフサの沸点範囲は、25℃~220℃の範囲内である。さらに、ある実施形態において、化石ナフサの沸点範囲は、30℃~90℃、好ましくは35℃~85℃の範囲内である。さらに、ある実施形態において、化石ナフサの沸点範囲は、50℃~200℃、好ましくは50℃~187℃の範囲内である。さらなる実施形態において、化石ナフサの沸点範囲は、180℃~360℃の範囲内である。沸点範囲は、EN-ISO-3405(2011)にしたがって測定されて与えられる。
【0065】
ある実施形態において、熱分解フィードストックは、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量を基本として、50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物、および、0~50wt-%の化石ナフサを含む。ある好ましい実施形態において、熱分解フィードストックは、再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量を基本として、50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含む。少なくとも50wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む、または主に再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックが好ましい。再生可能な異性化パラフィン組成物は、化石ナフサと比較して、熱分解ステップにおけるHVCsの形成を促進し、そして熱分解フィードストックの持続性を、そして結果的に、形成される分解生成物の持続性を増加させる。ある実施形態において、熱分解フィードストックは、再生可能な異性化パラフィン組成物および化石ナフサを5:1の重量比(化石ナフサに対する再生可能な異性化パラフィン組成物)で含む。
【0066】
本発明の熱分解は、好ましくは、蒸気分解である。蒸気分解施設は、石油化学業界において広く使用されており、および、特にはポリマー産業における原材料供給源として使用されている。蒸気分解のプロセス条件は、よく知られており、本発明の実施はしたがって、確立されているプロセスのわずかな修正のみを必要とする。上述の熱分解フィードストックを熱分解することは、好ましくは、従来のナフサ(蒸気)分解装置、すなわち化石ナフサを熱分解するために通常使用される分解装置内で行われる。熱分解は、好ましくは、触媒なしで行われる。しかしながら、添加物、特には硫黄添加物が熱分解ステップにおいて使用されてもよい。本発明の方法は、コーク形成を減少させるため、およびさらには熱分解ステップにおけるCOおよびCO2の形成を減少させるための硫黄を含む熱分解フィードストックを提供することを含んでいてもよい。熱分解ステップにおけるC22の形成は、熱分解フィードストックの硫黄含有量によって顕著には影響されない。いかなる理論にも縛られずに、硫黄は、分解コイル表面の活性化サイト、特には分解オイル材料のNiサイトを、硫化ニッケルを形成することによって不動態化すると信じられている。硫化ニッケルは、金属のNiおよびNi酸化物と異なり、コークガス化を触媒しない。
【0067】
熱分解ステップにおけるCOおよびCO2の形成をさらに減少されるために、熱分解フィードストックは、硫黄を含んでいてもよい。再生可能なフィードストック、特には植物性オイル/脂肪および/または動物性オイル/脂肪の再生可能なフィードストックの水素化処理および異性化によって提供される再生可能な異性化パラフィン組成物は、非常に少量の硫黄を含む主要なパラフィン系炭化水素の化学的混合物である。硫黄の追加なしに、再生可能な異性化パラフィン組成物は、重量当たり5pp未満の硫黄を含んでいるかもしれない。硫黄は、硫黄含有化合物(硫黄添加物)を熱分解フィードストックに添加することによって、または、再生可能な異性化パラフィン組成物と典型的に硫黄を含む十分な量の化石ナフサとを含む熱分解フィードストックを提供することによって、またこれら両方によって、熱分解フィードストックに添加されてもよい。したがって、ある実施形態において、熱分解フィードストックは、重量当たり20~300ppm、好ましくは重量当たり20~250ppm、より好ましくは重量当たり20~100ppm、さらにより好ましくは重量当たり20~65ppmの硫黄を含む。本発明の再生可能な異性化パラフィン組成物は熱分解ステップのあいだに形成される不要な副生成物(CO、CO2およびC22)の総計の量を既に低減させているため、熱分解フィードストックが多量の硫黄を含む必要はない。熱分解フィードストックの低い硫黄濃度は、分解生成物、特にはそのより重質な炭化水素留分がまた、低い硫黄含有量をもつという有利点を有する。典型的には、分解生成物の重質な炭化水素留分(C4およびそれ以上)は、それらが分解生成物から分離された後に徹底定な精製には付されず、したがって、熱分解ステップを起源とする硫黄は実質的にこれらの留分中に残る。典型的には主にC4~C11の炭化水素、特にはそこからベンゼンが除去されたC5~C9の炭化水素を含む、熱分解ガソリン(PyGas)留分は、典型的には、いわゆる燃料プールへと迂回され、すなわち、燃料成分としてとして使用される。低いまたは非常に低い硫黄燃料または燃料成分は、硫黄含有量が低い燃料または硫黄を含まない燃料は、より高い硫黄含有量を有する燃料または燃料成分と比較して、燃料時により少ない有毒な大気汚染物質を製造するために、好ましい。重量当たり50~65ppmの硫黄を含む熱分解フィードストックが、重量当たり50~65ppmの硫黄含有量が、熱分解ステップにおけるCOおよびCO2の形成をさらに減少させ、および、低い硫黄含有量をもつ(分留後の精製ステップなしで)PyGas留分を形成するため、特に好ましい。
【0068】
適切な硫黄添加剤の例としては、ジメチルジスルフィド(DMDS)、硫化水素(H2S)、および二硫化炭素(CS2)が挙げられる。DMDSは、コーキングを低下するため、特に好ましい硫黄添加剤である。ある実施形態において、熱分解フィードストックを提供することは、重量当たり20~300ppm、好ましくは重量当たり20~250ppm、より好ましくは重量当たり20~100ppm、さらにより好ましくは重量当たり20~65ppmの硫黄を含む熱分解フィードストックを形成するために、硫黄添加剤、好ましくはDMDSを熱分解フィードストックに混合することを含む。ある好ましい実施形態において、熱分解フィードストックを提供することは、重量当たり50~65ppmの硫黄を含む熱分解フィードストックを形成するために、硫黄添加剤、好ましくはDMDSを熱分解フィードストックに混合することを含む。硫黄添加剤は、熱分解フィードストックを熱分解ステップに導く前に熱分解フィードストックと混合されてもよい。任意には、硫黄添加剤は、注入によって熱分解ステップにおいて、硫黄添加剤を含む熱分解炉上記中に添加されてもよい。したがって、ある実施形態において、方法は、硫黄添加剤、好ましくはDMDSを含む熱分解炉蒸気中に、熱分解炉の中の熱分解フィードストックが重量当たり20~300ppm、好ましくは重量当たり20~250ppm、より好ましくは重量当たり20~100ppm、さらにより好ましくは重量当たり20~65ppmの硫黄を含むように、注入することを含む。ある好ましい実施形態において、方法は、硫黄添加剤、好ましくはDMDSを含む熱分解炉蒸気中に、熱分解炉の中の熱分解フィードストックが重量当たり50~65ppmの硫黄を含むように、注入することを含む。
【0069】
ある実施形態において、熱分解フィードストックを提供することは、重量当たり20~300ppm、好ましくは重量当たり20~250ppm、より好ましくは重量当たり20~100ppm、さらにより好ましくは重量当たり20~65ppmの硫黄を含む熱分解フィードストックを形成するために、化石ナフサを再生可能な異性化パラフィン組成物と混合することを含む。ある好ましい実施形態において、熱分解フィードストックを提供することは、重量当たり50~65ppmの硫黄を含む熱分解フィードストックを形成するために、化石ナフサを再生可能な異性化パラフィン組成物と混合することを含む。化石ナフサの硫黄濃度は、化石ナフサの供給源およびそれが付される精製ステップに依存して変わり得る。所定の量の硫黄を含む熱分解フィードストックを提供することは、適切な硫黄含有量をもつ化石ナフサを選択すること、熱分解フィードストック中の化石ナフサのwt-%を調整すること、またはその両方を含む。したがって、所定の量の硫黄を含む熱分解フィードストックは、硫黄添加剤の添加なしで提供されてもよい。それにもかかわらず、硫黄添加剤は、任意には、化石ナフサおよび再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックへと添加されてもよい。
【0070】
熱分解フィードストックとして本発明の熱分解フィードストックを提供することによって、好ましい、少ない量の不純物(CO、CO2、C22)、幅広い温度範囲から選択されるコイル出口温度(COT)で熱分解ステップを行う際に得られ得る。COTは、通常、熱分解装置中の熱分解フィードストックにおける最も高い温度である。熱分解ステップは、好ましくは、780~890℃の範囲から、好ましくは800~860℃の範囲から選択されるCOTにおいて行われる。熱分解ステップにおいて形成される不要な副生成物(CO、CO2およびC22)の総計の量は、COTが800℃~840℃の範囲から選択される場合に特に低い。例えばCOTは、約805℃、810℃、820℃、825℃、830℃、および835℃から選択され得る。約800℃のCOTで熱分解が行われる場合に、特に低い総量の不要な副生成物(CO、CO2およびC22)が形成される。再生可能な異性化パラフィン組成物および化石ナフサの両方を含む熱分解フィードストックは、COTが800℃~820℃の範囲から選択される場合に、特に低い量のCO、CO2およびC22を形成する。
【0071】
熱分解が蒸気分解である、ある実施形態において、蒸気分解は、水と熱分解フィードストックのあいだの流速比(H2O流速[kg/h]/熱分解フィードストック流速[kg/h]が0.05~1.20、好ましくは、0.1~1.00、さらに好ましくは0.20~0.80、より好ましくは0.25~0.70、さらにより好ましくは0.25~0.60、および最も好ましくは0.30~0.50で行われる。熱分解が蒸気分解である、ある好ましい実施形態において、蒸気分解は、水と熱分解フィードストックのあいだの流速比(H2O流速[kg/h]/熱分解フィードストック流速[kg/h]が0.30~0.50で、および、800℃~840℃の範囲から選択されるCOTで行われる。これらの条件下で蒸気分解を行うことは、低い総計の量のCO、CO2およびC22を結果としてもたらす。
【0072】
蒸気分解におけるコイル出口圧力は、0.09~0.3MPaの範囲から選択され得、好ましくは少なくとも0.1MPa、より好ましくは少なくとも0.11MPaまたは0.12MPa、および好ましくは最大で0.25MPa、より好ましくは最大で0.22MPaまたは0.20MPaであり得る。
【0073】
熱分解プロセスは、未転換の反応物を熱分解炉にリサイクルすることを含んでいてもよい。任意には、例えばプロパンおよびエタンなどの分解生成物の特定の価値の少ない一部分が、より価値のある生成物、例えばエテンおよびプロペンなどへと転換されるために熱分解炉へと戻されてリサイクルされてもよい。未転換の反応物、分解生成物のより価値の低い部分、またはこれらの両方をリサイクルすることは、熱分解プロセスの全体的な利益性および全体的な収率および/またはHVCsの全体的な収率を増大させる。
【0074】
熱分解は、複数の熱分解炉で行われてもよい。再生可能な異性化パラフィン組成物を含むまたはそれからなる本発明の熱分解フィードストックは、複数の熱分解炉の一または複数へと導かれ得る。例えば、再生可能な異性化パラフィン組成物の入手可能性は、複数の熱分解炉のうちのいくつが本発明の熱分解フィードストックでフィードされるのかを決定し得る。複数の蒸気分解装置の流出物または分解生成物は、任意には、例えば精製および/または重合などのさらなる処理ステップへと移送されるまたは運ばれる一または複数の流出物流を形成するようにまとめられ得る。任意には、熱分解は、本発明の熱分解フィードストックでフィードされた単一の熱分解炉において行われ得、および、単一の熱分解炉からの流出物または分解生成物が、任意には、例えば精製および/または重合などのさらなる処理ステップへと移送されるまたは運ばれ得る。
【0075】
蒸気分解プロセスは、分解生成物をクエンチングすることおよび冷却することを含んでいてもよい。典型的には、CO、CO2およびC22、またはそれらの組み合わせの少なくとも一部分が、クエンチングまたは冷却のあいだに分解生成物から除去される。ある実施形態において、方法は、炭化水素の混合物を含む分解生成物を分留することを含む。分留は、分解生成物から燃料オイル留分、PyGas留分、水素留分、メタン留分、燃料ガス留分、C2留分(エチレン留分)、C3留分(プロピレン留分)、および/または。C4留分を分離することを含む。したがって、ある実施形態において、方法は、分解生成物からエチレン留分、プロピレン留分、またはこれらの両方を分離すること、および、エチレン留分、プロピレン留分、またはこれらの両方を分離すること、ならびに、エチレン留分、プロピレン留分、またはこれらの両方を重合化処理へと付すことを含む。
【0076】
本発明は、本発明の熱分解フィードストックを熱分解することによって、低い総計の量のCO、CO2およびC22を有する分解生成物を得ることを可能にする。ある実施形態において、分解生成物は、水素、メタン、エタン、エテン、プロパン、プロペン、プロパジエン、ブタン、例えばブテン、イソ-ブテンおよびブタジエンなどのブチレン、例えば芳香族化合物、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのC5+炭化水素、またはC5~C18のオレフィンのうちの一または複数を含む。任意には、分解生成物に含まれている炭化水素の少なくとも一部分はさらに、例えばメタン誘導体または複数のメタン誘導体、エタン誘導体または複数のエタン誘導体、プロペン誘導体または複数のプロペン誘導体、ベンゼン誘導体または複数のベンゼン誘導体、トルエン誘導体または複数のトルエン誘導体、および/またはキシレン誘導体または複数のキシレン誘導体などの、誘導体または複数の誘導体へとさらにプロセスされ得る。
【0077】
メタン誘導体は、例えば、アンモニア、メタノール、ホスゲン、水素、オキソケミカルズ、およびそれらの誘導体、例えばメタノール誘導体などを含む。メタノール誘導体の例としては、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド、フェノール樹脂、ポリウレタン、メチル-t-ブチルエーテル、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0078】
エテン誘導体は、例えば、エチレンオキサイド、エチレンジクロライド、アセトアルデヒド、エチルベンゼン、α-オレフィン、およびポリエチレン、およびこれらの誘導体、例えばエチレンオキサイド誘導体、エチルベンゼン誘導体、およびアセトアルデヒド誘導体などを含む。エチレンオキサイド誘導体としては、例えばエチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エチレングリコールエーテルアセテート、ポリエステル、エタノールアミン、エチルカルボネート、およびそれらの誘導体などが挙げられる。エチルベンゼン誘導体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンーアクリロニトリル樹脂、ポリスチレン、不飽和ポリエステル、およびスチレン-ブタジエンゴム、およびそれらの誘導体が挙げられる。アセトアルデヒド誘導体としては、例えば、酢酸、ビニルアセテートモノマー、ポリビニルアセテートポリマー、およびそれらの誘導体が挙げられる。エチルアルコール誘導体としては、例えば、エチルアミン、エチルアセテート、エチルアクリレート、アクリレートエラストマー、合成ゴム、およびそれらの誘導体が挙げられる。さらに、エテン誘導体としては、例えばポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、およびそれらの誘導体などのポリマーが挙げられる。
【0079】
プロペン誘導体は、例えば、イソプロパノール、アクリロニトリル、ポリプロピレン、プロピレンオキサイド、アクリル酸、塩化アリル、オキソアルコール、クメン、アセトン、アクロレイン、ヒドロキノン、イソプロピルフェノール、4-ヘチルペンテン-1、アルキレート、ブチルアルデヒド、エチレン-プロピレンエラストマー、およびそれらの誘導体などを含む。プロピレンオキサイド誘導体としては、例えば、プロピレンカルボネート、アリルアルコール、イソプロパノールアミン、プロピレングリコール、グリコールエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレンアミン、1,4-ブタンジオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。塩化アリル誘導体としては、例えば、エピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂などが挙げられる。イソプロパノール誘導体としては、例えば、アセトン、イソプロピルアセテート、イソホロン、メチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ブチルアルデヒド誘導体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、イソブタノール、イソブチルアセテート、n-ブタノール、n-ブチルアセテート、エチルヘキサノール、およびそれらの誘導体が挙げられる。アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリレートエステル、ポリアクリレートおよび水分吸収性ポリマー、例えば高吸収性ポリマーなど、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0080】
ブチレン誘導体としては、例えば、アルキレート、メチルt-ブチルエーテル、エチルt-ブチルエーテル、ポリエチレンコポリマー、ポリブテン、バレルアルデヒド、1,2-ブチレンオキサイド、プロピレン、オクテン、sec-ブチルアルコール、ブチレンゴム、メチルメタクリレート、イソブチレン、ポリイソブチレン、置換フェノール、例えばp-t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチルフェノールなど、ポリオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。他のブタジエンブタジエン誘導体は、スチレンブチレンラバー、ポリブタジエン、ニトリル、ポリクロロプレン、アジポニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-ブタジエンコポリマーラテックス、スチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンゴムであり得る。
【0081】
ベンゼン誘導体としては、例えば、エチルベンゼン、スチレン、クメン、フェノール、シクロヘキサン、ニトロベンゼン、アルキルベンゼン、マレイン酸無水物、クロロベンゼン、ベンゼンスルホン酸、ビフェニル、ヒドロキノン、レゾルシノール、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレンブロックコポリマー、ビスフェノールA、ポリカーボネート、メチルジフェニルジイソシアネート、およびそれらの誘導体などが挙げられる。シクロヘキサン誘導体としては、例えば、アジピン酸、カプロラクタム、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ニトロベンゼン誘導体としては、例えば、アニリン、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリイソシアネート、およびポリウレタンなどが挙げられる。アルキルベンゼン誘導体としては、例えば、鎖状アルキルベンゼンなどが挙げられる。クロロベンゼン誘導体としては、例えば、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、およびニトロベンゼンなどが挙げられる。フェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールA、フェノール型アルデヒド樹脂、シクロヘキサノン-シクロヘキサノール混合物(KA-oil)、カプロラクタム、ポリアミド、アルキルフェノール、例えばp-ノノイルフェノールおよびp-デドシルフェノールなど、o-キシレノール、アリールホスフェート、o-クレゾール、およびシクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0082】
トルエン誘導体としては、例えば、ベンゼン、キレン、トルエンジイソシアネート、安息香酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0083】
キシレン誘導体としては、例えば、芳香族ジカルボン酸および無水物、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、およびフタル酸無水物など、およびフタル酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸エステル、例えばジメチルテレフタレートなど、およびポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエステルポリオールなどが挙げられる。フタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、およびPVC可塑剤などが挙げられる。イソフタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートコポリマー、およびポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0084】
本発明の方法を用いて得られる分解生成物の炭化水素は、特に、従来の石油化学のための原料、およびとりわけポリマー産業における原料として適切である。特には、本発明の方法を用いて得られる分解生成物に含まれる炭化水素の混合物は、従来の化石原料、例えば化石ナフサなどの熱分解(蒸気分解)から得られる炭化水素の生成物分布と同様な、あるいはより好ましい(より高いHVCsのwt-%量を含む)生成物分布を示す。したがって、本発明の熱分解フィードストックを熱分解フィードストックとして提供することによって、再生可能な材料に部分的に由来するポリマーなどを製造することが可能である。任意には、再生可能な材料からのみに由来するポリマーが、再生可能な異性化パラフィン組成物からなる本発明の熱分解フィードストックを熱分解フィードストックとして提供することによって製造され得る。
【0085】
ある実施形態において、方法は、分解生成物の少なくとも一部分を、CO、CO2およびC22の少なくとも一つを除去するために精製処理へと付すことを含む。本発明の方法の優位点は、熱分解ステップにおいて形成される分解生成物中のCO、CO2およびC22の低い総計の量であり、および結果的に、分解生成物からのCO、CO2、C22またはそれらの組み合わせの除去における低減された負荷である。このことは、分解生成物の少なくとも一部分が重合化処理に付される実施形態において、特に優位である。上述したように、CO、CO2およびC22は、重合化触媒毒であり、したがって、重合化プロセスにおいて望ましくない。重合化処理へと付される分解生成物の部分からのCO、CO2、C22およびそれらの誘導体の除去という負荷は、大きく低下し、不必要である可能性でさえある。しかしながら、実際には、重合化処理に付される分解生成物の部分は、通常、例えば用心のためまたは標準的な手順からの逸脱を避けるために、最初に精製処理に付される。いずれにしても、分解生成物中のより少ない量のCO、CO2および/またはC22不純物の量は、例えば吸収剤、吸着剤、反応剤、モレキュラーシーブおよび/または精製用触媒などのCO、CO2またはC22のうちの少なくとも一つを除去するための精製処理において使用され得る活性材料の寿命を増大させ、および、活性材料の再生頻度を転生させる。
【0086】
分解生成物の少なくとも一部分が付される精製処理は、CO、CO2またはC22のうちの少なくとも一つを除去するための適切な任意の精製処理であり得る。このような精製処理の例は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、国際公開第2016/023973号、国際公開第2003/048087号、および米国特許出願公開第2010/331502号明細書に記載されており、これらの全ては参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0087】
ある実施形態において、精製処理は、分解生成物の少なくとも一部分を、CO、CO2またはC22のうちの少なくとも一つを除去するための、例えば吸収剤、吸着剤、精製用触媒、反応剤、モレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせなどの活性材料と接触させることを含む。任意には、精製処理は、分解生成物の少なくとも一部分を、分子酸素、分子水素、またはそれ両方の存在下で活性材料と接触させることを含む。ある実施形態において、精製処理は、分解生成物の少なくとも一部分を、活性材料を含む少なくとも一つの精製トレーン、または活性材料床の少なくとも一つを通過させることを含む。接触は、単一の容器に中で行われてもよい。任意には、接触は、好ましくは一連の接続された、すなわち分解生成物の一部分が一つの容器から次の容器へとさらなる精製のために通過させられて精製されることを可能にする複数の容器内で行われてもよい。
【0088】
活性材料は、例えば、銅酸化物または銅酸化物触媒、任意にはアルミナ上に担持されているPt、Pd、Ag、V、Cr、Mn、Fe、Co、またはNiの酸化物、任意にはアルミナ上に担持されているAu/CeO2、ゼオライト、特にはタイプAおよび/またはタイプXのゼオライト、アルミナベースの吸収剤または触媒、例えばSelexsorb COSまたはSelexsord CDなど、アルミナを含むモレキュラーシーブ、アルミナシリケート、アルミノフォスフェート、またはそれらの混合物、またはそれらの任意の組み合わせなどを含み得る。
【0089】
活性材料は、国際公開第03/048087号、p. 11, 11 12 - p. 12, 11. 3; p.12, 11. 18 - p. 15, 11. 29, および/または p. 17, 11. 21 - p. 21, 11. 2に記載されるような吸着剤または複数の吸着剤を含んでいてもよく、国際公開第03/048087号、p. 21, 11. 3 - p. 22 11. 26に記載されるようなモレキュラーシーブまたは複数のモレキュラーシーブを含んでいてもよい。活性材料は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0105]~[0116]に記載されるような精製触媒または複数の精製触媒をふくんでいてもよい。活性材料は、国際公開第2016/023973号、段落[0061]、[0062]、[0063]および/または[0064]に記載されるような精製触媒または複数の触媒を含んでいてもよい。
【0090】
精製処理は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0043]~[0082]に記載されるような精製処理であり得る。精製処理は、米国特許出願公開第2010/331502号明細書、段落[0092]~[0119]、および/または[0126]および/または実施例2に記載されるような精製処理であってもよい。精製処理は、国際公開第2016/023973号、段落[0056]~[0067]に記載されるような精製処理であってもよい。精製処理は、国際公開第03/048087、p. 11, 11. 12 - p. 15, 11. 29, および/または p. 16, 11. 1 - p. 21, 11. 2, および/または、p.23, 11. 14 - p. 24, 11. 13, および/または実施例1および/または実施例2に記載されるような精製処理であってもよい。
【0091】
典型的には、不純物は、精製処理のあいだに活性材料を不活性化または汚染する。したがって、活性材料は、その精製活性を再度得るために少なくとも部分的に再生され得る。活性材料を再活性化させるために適切な任意の再生プロセスが使用され得る。例えば、活性材料は、国際公開第2016/023973号、段落p. 12, 11. 3-10, または、欧州特許出願公開2679656号明細書、段落[0108]~[0118]、または、国際公開第03/048087号、 p. 24, 11. 14 - p. 25 11. 32.に記載されるように再生され得る。例えば、CuO2触媒は、CuO2触媒を分子酸素に接触させることによって再生され得る。ゼオライト系のモレキュラーシーブは、熱を適用し、および、ゼオライト系モレキュラーシーブを不活性なガス流、例えば窒素流などと接触させることによって再生され得る。
【0092】
ある実施形態において、精製処理は、以下の工程のうちの少なくとも一つを含む:i)分解生成物の少なくとも一部分を酸素を除去するためにCuO触媒に接触させる工程、ii)分解生成物の少なくとも一部分を水素化によってC22を除去するためにH2と接触させる工程、iii)分解生成物の少なくとも一部分を参加によってCOを除去するためにCuO2触媒に接触させる工程、または、iv)分解生成物の少なくとも一部分をCO2を除去するためにゼオライト系モレキュラーシーブに接触させる工程。任意には、精製処理は、分解生成物の少なくとも一部分を例えばSelexsorbなどの活性化アルミナ触媒に接触させることによって、例えばCOS、硫化水素、またはCS2のうちの少なくとも一つなどの二次的不純物を除去することを含み得る。
【0093】
ある実施形態において、方法は、分解生成物の少なくとも一部分をポリマーを形成させるために重合化処理に付すことを含む。重合化処理に付される分解生成物の部分は、熱分解プロセスから直接得られていてもよいし、上述のセクションにおいて記載された精製処理から得られていてもよい。任意は、重合化処理に付される分解生成物の部分は、部分的に上述のセクションにおいて記載された精製処理付されていてもよいし、および、部分的に熱分解プロセスから直接得られていてもよい。上述したように、熱分解ステップにおいて形成される分解生成物中の少ない量のCO、CO2およびC22に起因して、重合化の前に分解生成物またはその一部分を精製処理に付すことは、不必要であるかもしれない。ある好ましい実施形態において、重合化処理に付される分解生成物の部分は、エチレン留分、プロピレン留分、またはそれらの組み合わせである。結果的に、ある実施形態において、方法は、分解生成物のエチレン留分をポリエチレンを形成するために重合化処理に付すこと、および任意には、分解生成物のプロピレン留分をポリプロピレンを形成するために重合化処理に付すことを含む。
【0094】
重合化処理は、溶液重合、ガス流動層重合、スラリー相重合、例えばバルク重合など、高圧重合、またはそれらの組み合わせを含む。重合化処理は、一または複数の重合化リアクター内で行われ得る。一または複数の重合化リアクターのそれぞれが、複数の重合化ゾーンを備え得る。重合化ゾーンにフィード導かれたフィードの組成は、ゾーン間で異なっていてもよい、例えば、分解生成物の異なる部分が、異なるゾーンへとフィードされて、そして、コモノマーが任意には一または複数の重合化ゾーンへとフィードされ得る。重合化ゾーンにフィードされるコモノマーは、異なる重合化ゾーンに対して異なるコモノマーであってもよい。重合化リアクターは、例えば、水平構成または鉛直構成の、連続攪拌槽型リアクター、流動床型リアクター、例えばガス流動床リアクター、など、またはガス攪拌型リアクターであり得る。
【0095】
好ましくは、重合化処理は、触媒重合である。ある実施形態において、重合化処理は、ポリマーを形成するために、分解生成物の少なくとも一部分を、任意には分子水素の存在下で、重合化触媒に接触させることを含む。好ましくは、接触は、一または複数の重合化リアクター内で行われる。
【0096】
重合化処理が触媒重合化処理である実施形態において、形成されるポリマーの分子量は、使用される重合化触媒に依存して、例えば、重合化処理における水素の存在によって、または、反応温度を制御することによって、調整され得る。重合化処理が触媒重合化処理である実施形態において、多分散性は主に使用される触媒によって制御される。
【0097】
重合化処理は、一峰性、二峰性、多峰性の分子量分布を有するポリマーを形成している重合化処理であってもよい。二峰性または多峰性は一つの反応媒体(すなわち一つのリアクターまたは重合化ゾーン)において二官能性触媒システムを行うことによって、または、典型的な触媒(すなわち、非二官能性触媒)を用いるが、可変の反応媒体(すなわち、異なるフィードを用いる複数の重合化ゾーンまたは複数の重合化リアクターの組み合わせ)を用いることにより達成され得る。重合化処理において形成されるポリマーの他の特性、例えば極性、不飽和度および/または多分散性などは、反応温度、圧力および滞留時間を制御することによって、または、所定のタイプおよび量のコモノマーおよび/またはテルモノマーを重合化プロセスに所定の位置で(例えば、重合化リアクター内に任意的に備えられている一または複数の重合化ゾーン内などに)の注入することによって制御され得る。
【0098】
任意には、重合化処理において形成されるポリマーの密度、弾性度および他の特性は、重合化処理に、コモノマーまたは複数のモノマーの組み合わせ、例えば少なくとも一つのエチレン(ポリプロピレン製造において)、プロピレン(ポリエチレン製造において)、1-ブテン、1-ヘキセン(同様に1,5-ヘキサジエン)、1-オクタン(同様に1,7-オクタジエン)、および1-デセン(同様に1,9-オクタジエン)または高級アルファオレフィンまたはアルファオメガジエンなどを導入することによって制御され得る。
【0099】
ある実施形態において、重合化処理は、溶液を形成するために、例えばプロパン、プロペン、またはヘキサンなどの希釈剤中に、分解生成物の少なくとも一部分を、分子酸素と共に、および任意にはコモノマーと共に溶解させること、およびポリマーを形成するために溶液を触媒に接触させることを含むスラリー重合化処理である。
【0100】
ある実施形態において、重合化処理は、好ましくはオートクレーブリアクターまたは管状リアクターにおいて行われる高圧重合である。典型的には、高圧重合化は、触媒を利用しない。オートクレーブリアクターおよび管状リアクターの両者は、分解生成物の少なくとも一部分が任意にはコモノマーと一緒にフィードされ得る複数の重合化ゾーンを備え得る。重合化ゾーンに導かれるフィードの組成は、上述したようにゾーン間で異なり得る。高圧重合は、例えば分子酸素、t-アミル有機過酸化物、またはt-ブチルペロキシエーテル、またはこれらのブレンドなどの様々な開始剤を用いて開始され得る。高圧重合において形成されるポリマーの分子量は、任意には、例えばメチルエチルケトン(MEK)、プロピオンアルデヒド、アルファオレフィン、ジオレフィンまたはこれらの組み合わせなどの連鎖移動剤を用いて制御され得る。ある好ましい実施形態において、高圧重合化に付される分解生成物の部分は、エチレン留分である。エチレン留分の高圧重合化において形成され得るポリマーの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、または、ビニルアセテートおよび/または他のエステル、例えばメチル、エチル、もしくはブチルアクリレート、グリシジルメタクリレートなど、および/または、例えばアクリル酸またはメタクリル酸などの酸基、および/または、例えばビニルトリメチルシランなどのシラン、および/または、例えばマレイン酸無水物などの酸無水物とのPDPEコポリマーまたはLDPEテルポリマーなどが挙げられる。
【0101】
重合化処理は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0090]~[0097]に記載される重合化処理であり得る。重合化処理は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0050]-[0066]、および/または段落[0123]~[0125]および/または実施例3に記載される重合化処理であり得る。重合化処理は、国際公開第2016/023973号、段落[0006]~[0020]、および/または段落[0024]~[0043]に記載の重合化処理であり得る。方法は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0092]~[0119]に記載のような精製処理と重合化処理との組み合わせを含んでいてもよい。
【0102】
好ましくは、重合化処理に付される分解生成物の部分は、分解生成物のエチレン留分であり、および、ポリエチレン(PE)またはそのコポリマーまたはテルポリマーが、したがって、重合化処理において形成される。分解生成物のエチレンモノマーが、単独重合されるか、または、一または複数のコモノマー、例えば1-プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、および/または、例えばブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、などの共役または非共役ジオレフィン、および/またはビニルシクロヘキセンなどとコポリマー化され得る。PEまたはそのコポリマーもしくはテルポリマーを形成するために重合化処理の例としては、単一モードのプロセス、および/または、多モードのプロセスが挙げられ、ハイブリッドプロセスも含まれる。超低密度ポリエチレン(ULDPE)、非常に低密度なポリエチレン(VLDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)から高密度ポリエチレン(HDPE)までの範囲の種々の密度の鎖状ポリエチレン、多峰性を通じたホモ/コポリマー、ランダムおよびブロックコ/テルポリマーが、例えばスラリー重合、バルク重合(すなわちスラリープロセスの希釈剤およびモノマーは同じ)、液相重合、気相重合、および/または、並行してまたは連続して(いわゆるカスケード)操作される同じまたはハイブリッドどちらかの技術であって、類似の(すなわち単峰性)または非類似の(すなわち二峰性、三峰性、または多峰性)ポリマーを種々の比で、またはそれぞれのリアクター内で分かれて製造する複数のリアクターの組み合わせなどによってエチレン留分の重合化処理において形成され得る。
【0103】
重合化処理に付される分解生成物の部分は、好ましくは、分解生成物のプロピレン留分であり得、そして、ポリプロピレン(PP)またはそのコポリマーもしくはテルポリマーがしたがって、重合化処理において形成される。種々の密度範囲および生成物クラスのポリプロピレン、例えばホモポリマー、高結晶性ホモポリマー、ランダムコポリマー、インパクトコポリマー、ブロックコ/テルポリマー、異相共重合体、またはこれらの組み合わせなどがポリプロピレン留分の重合化処理において形成され得る。
【0104】
特にはエチレン留分のおよび/またはプロピレン留分の、触媒重合化のための重合触媒の例としては、アルミニウムアルキル化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミニウムオキサン(MAO)またはトリ-n-ヘキシルアルミニウムなどを触媒のチタンまたはバナジウム部位(例えば塩化チタン(IV))を活性化するための共触媒活性化剤として利用するチーグラー触媒である。アルミニウムアルキル化合物は、反応媒体中の重合化毒のスキャベンジャーとして追加で使用され得る。
【0105】
触媒重合のための重合触媒は、望ましい場合、またはプロセスによって必要とされる場合に担持されていてもよい。担持材料は、その上に活性部位および任意には例えばベンゾエート、フタレート、ジエーテルまたはサクシネートなどの内部ドナーが結合されている塩化マグネシウムまたはシリカ担体であり得る。追加で、外部ドナー、例えばエチルp-エトキシベンゾエート(PEEB)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPS)、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン(CHMMS)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DPDMS)、または、例えばMe(EtO)3Si、Ph(EtO)3Si、Ph2(MeO)2Si、Ph2(EtO)2Si、Ph2(EtO)2Si、Ph(EtO)3Siなどの外部ドナーが重合化処理に添加されてもよい。
【0106】
ある実施形態において、重合触媒は、例えばシクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、および/またはシクロヘキシルエチルジメトキシシランなどの立体修飾子である。
【0107】
特にエチレン留分および/またはプロピレン留分の触媒重合化のための重合触媒のさらなる例は、例えばカミンスキータイプ、コンビネーションタイプ、幾何拘束型、後期遷移金属触媒型などの様々なタイプがあるいわゆるシングルサイト触媒である。
【0108】
重合触媒は、
通常、シクロペンタジエニルへの2つのシクロペンタジエニル環またはmonolobal等価物、および、全フッ素置換されたボロンー芳香族化合物、有機アルミニウム化合物、またはメチルアルミノキサンのいずれかを含み、環が種々のアルキル置換基(鎖状および環状の両方)を含む、ジルコニウム、チタン、ハフニウムのメタロセン錯体を含み得る。代替的には、重合触媒は、チタンまたはジルコニウムのモノシクロペンタジエニル誘導体であって、シクロペンタジエニル環の炭素原子の一つが架橋によって金属原子に追加で結合されている誘導体であってもよい。
【0109】
重合触媒に含まれ得るこれらの錯体は、典型的には、該錯体をメチルアルミノキサンと反応させることによって、または、非配位性アニオンとイオン性錯体を形成することによって重合触媒に転換される。他の錯体、例えばシクロペンタジエニルIV属ケチミド錯体、シクロペンタジエニルIV属シロキシル錯体、および非シクロペンタジエニルIV属フォスフィニミド錯体などが重合触媒を形成するために任意には使用され得る。
【0110】
触媒重合のための重合触媒のさらなるタイプは、大きな表面面積、ワイドポアの酸化物担体(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、アルミノフォスフェート、または、クロミウム酸化物およびシリコン酸化物(CrO3/SiO2)が活性部位を作り出すために使用されている組み合わせ)上に担持されている6価のクロミウムを含むフィリップス型触媒である。
【0111】
重合触媒は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0098]~[0107]に記載されているような重合触媒であってもよい。重合触媒は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0098]~[0107]に記載されているような重合触媒であってもよい。重合触媒は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0067]~[0091]および/または実施例1に記載されているような重合触媒であってもよい。重合触媒は、国際公開第2016/023973号、段落[0045]~[0055]に記載されているような重合触媒であってもよい。
【0112】
触媒重合化処理において形成されるポリマーの特性、例えば分子量、分子量分布、長鎖分岐の含有量、密度、粘度、結晶性、アモルファス含有率、シアシニング挙動、他のレオロジーパラメーター、コモノマー分布幅指数(CDBI)、コモノマー分布定数(CDC)、熱安定性、融点、ガラス温度、メルトフローレート(MFR)およびその他などは、触媒タイプまたは複数の触媒タイプ(ハイブリッド型が入手可能であり、そして、一または複数のリアクターに2つまたはそれ以上の異なる触媒をフィードすることが可能である)、コモノマータイプ、コモノマー含有量、追加のモノマーおよびそれらのタイプおよび量の選択によって影響を受け得る。
【0113】
重合プロセスの後、形成されたポリマーはさらにポリマー材料を形成するために修飾されてもよい。形成されたポリマーは、追加の材料が任意には添加される、一または複数の押し出しまたはコンパウンディングステップを介して修飾され得る。このような追加の材料は、例えば、安定化添加剤、例えばプラストマーまたはエラストマーなどの耐衝撃改良剤、通常の他のブレンド成分、タルクなどのフィラー、ガラスファイバー、カーボンファイバー、ナノクレイまたは他のナノ材料、カーボンブラック、造核剤(これは重合化処理または重合触媒の調製のあいだにin-situで添加することも可能である)、UV安定化剤、色素、例えば有機過酸化物などの架橋またはビスブレーキング剤、ステアリン酸カルシウムなどの酸スカベンジャー、例えばフルオロポリマーなどのポリマー処理補助剤などである。追加のコモノマーまたは官能基、例えばシランおよび/またはマレイン酸無水物などが、重合化処理の後に反応性押し出しを介して形成されたポリマーに添加されてもよい。形成されたポリマーは、重合化処理の後で、例えば熱的に開始される有機過酸化物の架橋(例えばPEX-Aプロセス)、例えばシラン架橋反応(例えばPEX-Bプロセス)または放射線によって引き起こされる架橋反応(例えばPEX-Cプロセス)などの凝縮反応を促進させるための触媒の導入などの変換におけるさらなる処理ステップへと付されてもよい。これらの任意的な修飾は、あらゆる領域の化石ベースのポリマー材料、特にはPEおよび/またはPP材料、およびこれらポリマー材料を起源とする他の材料および製品の少なくとも部分的にバイオ-ベース(再生可能な)バージョンの製造を可能にする。
【0114】
重合化処理において形成されるポリマー、または上述のように形成されたポリマー由来のポリマー材料は、フィルム、シート、ファイバー、パイプ、プロファイル、ワイヤ、およびケーブルのための押出プロセス、射出成型プロセス、ホットメルトスピニング、吹込成形または押出吹込成形プロセス、回転成型プロセス、溶融めっき、カレンダー成型、圧縮、化学的および/または物理的発泡プロセスまたはその他のプロセスなどの複数のプロセスによって最終的な部品または製品に転換または形成され得る。重合化処理において形成されるポリマー由来のポリマー材料は、これらの変換プロセスにおいて化石ベースのポリマー材料の直接的な代替物として使用され得る。重合化処理において形成されるポリマー由来のポリマー材料は、任意には、他のタイプのポリマー、フィラー、添加剤、またはそれらの組み合わせとブレンドされ得、および、任意には、例えば化石ベースのポリプロピレン、塩化ポリビニリデン、ポリエステル、エチレンビニルアルコール、アルミニウムなどの例えば他のポリマー材料などの他の材料との複合材料または多層構造体中に含まれていてもよい。
【0115】
上述の最終的な部品または製品は、様々な応用に使用され得る。例えば、該最終的な部品または製品は、食品または非食品包装、フレキシブル放送、ヒートシール、薄壁包装、透過性包装、危険物の包装、洗剤およびパーソナルケア製品の包装、界面活性剤の包装などを含む包装用途において使用され得る。該最終的な部品または製品は、例えば、キャップ、クロージャー、玩具、ボトル、じょうろ、布製家庭用品および白物家電、エンジニアリング部品、クレート、カートリッジ、レジャー用品、家庭用品、パネルおよびプロファイル、蓋、靴のインソール、パイプクランプ、車のトランク/トランクの裏張り、ブラシ、コルク、インクカートリッジ、フリッパー、ブラシ、穿孔機用トレイ、シール、ハンドグリップ、庭園家具、家庭用品、薄壁射出成型部品、共射出成形部品、食品コンテナ、再利用可能なコンテナ、カバン、アイスクリームコンテナ、乳製品コンテナ、飲用コップ、耐衝撃性コンテナ、高剛性コンテナ、DVDボックスなどの消費材用途に使用され得る。該最終的な部品または製品は、例えばエクステリア、インテリア、ボンネットの下、バンパー、車体パネル、トリム、計器盤、ダッシュボード、ドアの被覆材、天候コントロールまたは冷却システム、エアインテークマニホールドまたはバッテリーケース、計器パネルまたはソフトタッチコントロール、エアバッグカバー、ルーフピラーモールディング、ボンネットの下のベルトまたはホース、目張り材、耐振動システム、ロッカーパネルまたはサイドモールディング、計器パネル、構造部品などの車用途に使用され得る。該最終的な部品または製品は、断熱、外被または半導体材料、超高電圧、高電圧および中電圧エネルギートランスミッションおよびACまたはDC配電、データまたはコミュニケーションケーブルまたは外装、ビルディングワイヤまたはケーブル、車用ワイヤまたはケーブル、太陽光発電モジュールなどのワイヤおよびケーブル用途に使用され得る。該最終的な部品または製品は、例えば多層パイプ、圧力パイプ、ガスパイプ、飲用水パイプ、産業用パイプ、排水または下水パイプ、家庭用ポンプまたはヒーティング、単一または多層の陸上またはオフショアオイルまたはガスパイプラインコーティング、サンドレスベッディングのための圧力パイプ、非開削装置パイプ、裏張りおよび裏装、波型産業用パイプ、フィッティング、機械継手圧縮フィッティング、太陽熱吸収材などのパイプ用途に使用され得る。該最終的な部品または製品は、例えば丈夫なバッグ、ライナー、ごみ袋、レジ袋、農業用フィルム、建築または工事用フィルム、丈夫な収縮フィルム、コレーション収縮フィルム、細かな収縮フィルム、食品包装充填シール(FFS)フィルムまたはバッグ、衛生製品のための包装フィルム、冷凍フィルム、衛生フィルム、エンボス加工の遊離フィルム、ラミネートフィルム、ラベルフィルム、クリングフィルム、表面保護フィルム、シーリング層、シリアル包装、シリコンコートフィルム、伸縮フィルムなどのフィルム用途に使用され得る。該最終的な部品または製品は、例えば不織布または工業用繊維、連続フィラメント、長繊維糸、ラフィア、テープ、梱包ネット、バルク繊維などの繊維用途に使用され得る。該最終的な部品または製品が使用され得る他の用途としては、例えば、押出コーティング、溶融接着剤、タイ層接着剤、医療用用途、屋根ふきおよび防水メンブレン、カーペット、ゴム引き表面、人工ターフ、マスターバッチおよび配合のためのベースレジンなどである。
【0116】
再生可能な起源の炭素原子は、化石起源の炭素原子と比較して多くの14C同位体を含む。したがって、再生可能な(バイオ-ベースの)原料由来の炭素化合物と、化石(化石ベースの)起源の炭素化合物とを区別することは、12Cおよび14C同位体比を分析することによって可能である。したがって、該同位体の特定の比が再生可能な炭素化合物を同定し、および、それを非再生可能な炭素化合物から差別化するための「タグ」として使用され得る。同位体比は、化学反応のあいだ変化しない。したがって、同位体比は、再生可能な異性化パラフィン組成物、再生可能な炭化水素、再生可能なモノマー、再生可能なポリマー、ならびに、該ポリマーを起源とする材料および生成物を同定するために、そしてそれらを非再生可能なフィードおよび生成物から区別するために使用され得る。
【実施例
【0117】
以下の実施例は、クレームされた発明をよりよく示すために提供され、そして、発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。特定の材料が記載されているが、これは単に説明を目的とするものであり、発明を限定する意図はない。
【0118】
本発明のある実施形態を示す蒸気分解実験がベンチスケール機器を用いて行われた。これらの実施例において使用された蒸気分解の主な部品、分析機器および較正手順は、刊行物:K.M. Van Geem, S.P. Pyl, M.F. Reyniers, J. Vercammen, J. Beens, G.B. Marin, On-line analysis of complex hydrocarbon mixtures using comprehensive two-dimensional gas chromatography, Journal of Chromatography A. 1217 (2010) 6623-6633 and J.B. Beens, U. A. T. Comprehensive two-dimensional gas chromatography - a powerful and versatile technique. Analyst. 130 (2005) 123-127.に詳細に記載されている。2つの異なる再生可能な異性化パラフィン組成物P1およびP2、ならびに、該再生可能な異性化パラフィン組成物と化石ナフサN1とのブレンドが蒸気分解フィードストックとして試験された。さらに、比較例として、化石ナフサN1、第3の再生可能な異性化パラフィン組成物P3、および第3の再生可能な異性化パラフィン組成物と化石ナフサN1とのブレンドが蒸気分解フィードストックとして試験された。
【0119】
ベンチスケール機器は、図1を参照して記載される。フィードセクションは、蒸気分解フィードストックおよびリザーバー1および2からの水それぞれの、リアクターコイル3への供給を制御する。液体のフローは、高確度:±0.2%の読みを提供するためのBronkhorstCORI-FLOWシリーズのマスフロー測定機器を備えたコリオリ流量計で制御されるpumps4(Bronkhorst、オランダ)によって調整された。CORI-FLOWマスフロー測定機器は、例えば圧力、温度、密度、伝導度および粘度など、変化する操作条件下であっても信頼性のあるパフォーマンスを達成するために高度なコリオリ式のマスフローセンサーを利用する。ポンプ周波数は、CORI-FLOWフロー測定機器のコントローラーによって自動的に調整された。体積流量速度とは異なり、温度または圧力における変化による影響を受けないマスフロー速度が全てのフィードで刻々と、すなわち実質的に連続的に測定された。蒸気が希釈剤として使用され、そして、蒸発されたフィードストックと同じ温度まで加熱された。フィードストックおよび蒸気の両者が電気的に加熱されたオーブン5および6でそれぞれ加熱された。オーブン5および6からのダウンストリーム、フィードストックおよび蒸気が電気的に加熱された、石英ビーズで満たされた(これは、リアクターコイル3に入る前にフィードストックおよび希釈剤との効率的かつ均一な混合を可能にした)オーブン7において混合された。リアクターコリオリ3に入ったフィードストックおよび希釈剤蒸気の混合物は、矩形の電気的に加熱された炉8内に鉛直に配置された。リアクターの軸方向座標に沿って位置されている8個の熱電対Tが異なる位置でプロセスガス温度を測定した。矩形炉8は、それぞれ独立して特定の温度プロファイルをセットするように制御されることのできる8つのセクションに分けられた。リアクターコイル3における圧力は、リアクターコイル3の出口からの軽油に位置するバック圧力レギュレーター(図示せず)によって制御された。リアクターの入口および出口に配置された2つの圧力トランスデューサ(図示せず)は、コイル入口圧力(CIP)およびコイル出口圧力(COP)をそれぞれ示した。リアクターの出口において、窒素が分析的測定のための内部標準として、および、リアクター流出物のクエンチングにある程度寄与するように、リアクター流出物に注入された。リアクター流出物はオンラインで、すなわち蒸気分解セットアップの操作のあいだに、高温(350℃)でサンプリングされた。すなわち、バルブベースのサンプリングシステムおよび均一に加熱された移送ラインを介して、リアクター流出物のガス状サンプルが、水素炎イオン化型検出器(FID)および質量分析計(MS)に連結された総合的な2次元ガスクロマトグラフ(GC×GC)9へと注入された。バルブベースサンプリングシステムの、高温の6ポート2方サンプリングバルブがオーブン中に配置され、ここで、温度は流出サンプルの露点より高く保たれた。さらなる下流のリアクター流出物は、約80℃まで冷却された。水および凝縮されたより重質な生成物(熱分解ガソリン(PyGas)および熱分解燃料オイル(PFO))が、ノックアウト容器およびサイクロン10を用いて除去され、一方、流出物蒸気の残りは、ベント(vent)に直接送られた。ベントに到達する前に、流出物の留分が、Refinery Gas Analyzer(RGA)11での分析のために抜き出された。水冷熱交換機および脱水機を用いた残りの全ての水の除去の後、この流出物留分が、ビルトインのガスサンプリングバルブシステム(80℃)を用いていわゆるRefinery Gas Analyzer(RGA)11上に自動的に注入された。再生可能な異性化パラフィン組成物、すなわちP1、P2およびP3が、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析された。再生可能な異性化パラフィン組成物のサンプルはそのまま、いかなる前処理もなしで、分析された。方法は、C2~C36炭化水素に適切である。N-パラフィンおよびイソパラフィン(C1-、C2-、C3-置換された、およびC3-置換以上)のグループが質量分析計およびC2~C36の範囲の公知のn-パラフィンの混合物を用いて同定された。クロマトグラムは、n-パラフィンのピークの直後のクロマトグラムベースラインへとグループを統合することによってパラフィンの3つのグループに分けられた(C1-、C2-/C3-およびC3-置換以上のイソパラフィン/n-パラフィン)。n-パラフィンは、谷から谷にn-アルカンピークを接線方向に統合することによって、C3-置換以上のイソパラフィンから分離され、および、化合物または化合物グループは、全ての炭化水素に1.0の相対感度を適用して正規化することにより定量化された。それぞれの化合物の定量化限界は、0.01wt-%であった。GCの設定は表1に示されている。
【0120】
【表1】
【0121】
分析結果は、表2にまとめられており、詳細な結果はそれぞれ表3、4および5に示されている。C2~C10の炭素数の範囲にあるパラフィンにおいて、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量に基づいた、n-パラフィンのwt-%量およびi-パラフィンの総計のwt-%量(総計のi-パラフィン)が測定された。C11またそれより多い炭素数を有するパラフィンにおいては、再生可能な異性化パラフィン組成物中のパラフィンの総計の重量に基づいた、n-パラフィン、1分岐のイソパラフィン、2分岐および3分岐のイソパラフィン、および3つより多くの分岐をもつi-パラフィンのwt-%量が測定された。
【0122】
それぞれの再生可能な異性化パラフィン組成物P1、P2およびP3の曇点がASTMD7689-17にしたがって測定された。結果は表2に示されている。
【0123】
【表2】
【0124】
P1は、P1中のパラフィンの総計の重量に基づいて、およそ31wt-%のn-パラフィン、およびおよそ69wt-%のi-パラフィンを含んでいた。P1中のパラフィンの総計の重量は、P1の総重量のおよそ99wt-%であった。該パラフィンは、C6~C24の炭素数範囲にあり、および、該パラフィンのおよそ95wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあった。i-パラフィンのおよそ95wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあった。P1は、パラフィンの総計の重量に基づいて、およそ53wt-%のモノメチル置換イソパラフィン、およそ12wt-%のジ-およびトリ-エチル置換イソパラフィン、およびおよそ3wt-%の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンを含んでいた。
【0125】
【表3】
【0126】
P2は、P2中のパラフィンの総計の重量に基づいて、およそ7wt-%のn-パラフィン、およびおよそ93wt-%のi-パラフィンを含んでいた。P2中のパラフィンの総計の重量は、P2の総重量のおよそ100wt-%であった。該パラフィンは、C4~C36の炭素数範囲にあり、および、該パラフィンのおよそ92wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあった。i-パラフィンのおよそ92wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあった。P2は、パラフィンの総計の重量に基づいて、およそ38wt-%のモノメチル置換イソパラフィン、およそ42wt-%のジ-およびトリ-エチル置換イソパラフィン、およびおよそ10wt-%の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンを含んでいた。
【0127】
【表4】
【0128】
比較例であるP3は、P3中のパラフィンの総計の重量に基づいて、およそ5wt-%のn-パラフィン、およびおよそ95wt-%のi-パラフィンを含んでいた。P3中のパラフィンの総計の重量は、P3の総重量のおよそ97wt-%であった。該パラフィンは、C4~C36の炭素数範囲にあり、および、該パラフィンのおよそ78wt-%がC14~C18の炭素数範囲にあった。i-パラフィンのおよそ79wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にあった。P3は、パラフィンの総計の重量に基づいて、およそ29wt-%のモノメチル置換イソパラフィン、およそ41wt-%のジ-およびトリ-エチル置換イソパラフィン、およびおよそ16wt-%の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンを含んでいた。
【0129】
【表5】
【0130】
実施例および比較例において使用された化石ナフサN1のPiONA(パラフィン、イソパラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物)組成は、水素炎イオン化型検出器に連結された質量分析計(GC-FID)によって測定された。分析結果が表6に示されている。
【0131】
N1は、C4~C7の炭素数範囲にある炭化水素をN1の総重量のおよそ99wt-%含んでいた。N1は、N1の総重量の、およそ34wt-%のn-パラフィン、およそ40wt-%のi-パラフィン、およびおよそ25wt-%のモノナフテンを含んでいた。
【0132】
【表6】
【0133】
N1およびP1およびP2の2つのブレンドB1およびB2がそれぞれ形成された。比較例として、N1とP3のブレンドB3が形成された。ブレンドB1~B3の組成が表7に示されている。
【0134】
N1は重量比で250ppmの硫黄を含んでいた。全ての再生可能な異性化パラフィン組成物P1~P3は初め、実質的に硫黄を含まず、および、重量比で1ppm未満の硫黄しか含んでいなかった。ブレンドされていない蒸気分解フィードストックとして使用される場合、P1およびP2にジメチルスルフィド(DMDS)が重量比で250ppmの硫黄を含むように、すなわちN1の硫黄含有量と適合するように添加された。ブレンドB2にもまた、重量比で250ppmの硫黄を含むようにジメチルスルフィド(DMDS)が添加された。ブレンドされていないP3、およびブレンドB1およびB3には添加されなかった。結果として、ブレンドされていないP3は実質的に硫黄を含まず、一方、N1を起源とするブレンドB1およびB3の硫黄含有量は重量比で65.2ppmであった。結果的に、重量比で250ppmの硫黄がP1およびP2にそれぞれ添加され、そして、既に重量比で65.2ppmのN1を起源とする硫黄を含んでいたB2に重合化で187.5ppmの硫黄が添加された。
【0135】
DMDSは、蒸気中のフィードストックに添加された。換言すると、硫黄の添加は、250mg硫黄/kgフィードストックの硫黄含有量が得られるように、DMDSを蒸気に添加することによって行われ、そして、その後、蒸気が蒸気分解炉(リアクターコイル3)に注入された。フィードストックおよびそれらの硫黄含有量が表7にまとめられている。
【0136】
【表7】
【0137】
上述のフィードストックの蒸気分解が3つの異なるコイル出口温度(COTs)、800℃、820℃、および840℃で行われた。水とフィードストック(希釈)とのあいだの流速比は0.5 gH2O/gフィードストックで一定に維持された。
【0138】
表8は、異なるコイル出口温度での蒸気分解流出物から測定される不純物CO、CO2およびC22の平均のwt-%量を示している。wt-%は、蒸気分解流出物の総計の重量に基づいている。総計の不純物は、CO、CO2およびC22のwt-%量の合計(CO、CO2およびC22の総計の量)である。
【0139】
【表8】
【0140】
表8から理解されるように、驚くべきことに、再生可能な異性化パラフィン組成物および再生可能な異性化パラフィン組成物を含むブレンドは、化石ナフサと比較してより高いwt-%の総計の不純物を含んでいた。しかしながら、さらに表8に見られるように、P1およびP2ならびにそれらのブレンドB1およびB2は、P3およびそのブレンドB3と比較して顕著に少ない量の総計の不純物を形成した。
【0141】
化石ナフサを再生可能な異性化パラフィン組成物と混合することは、COおよびCO2の製造を増加させた。これは、例えば、表8において、P1とB1とを、および、P3とB3とを比較することによって把握され得る。COおよびCO2の両方の製造は、P3がN1とブレンドされた場合(すなわち、P3がB3と比較された)に、フィードストックの硫黄含有量は重量比で1ppm未満から重量比で62.5ppmまで増加しているにも関わらず、顕著に増加したことに留意するべきである。これに対し、P1およびB1を比較すると、重量比で250ppmから重量比で62.5ppmまでフィードストックの硫黄含有量が低下しているのに関わらず、COおよびCO2の製造においてはるかによりわずかな増加しか記録されなかった。P2およびB2をP1およびB1と比較することによって(表8)わかるように、ブレンドにDMDSを添加することは、COおよびCO2の産生を低下させることに寄与した。概して、再生可能な異性化パラフィン組成物中の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比を低下させることは、COおよび特にはCO2の形成を大幅に減少させるとやはり結論づけられ得る。この効果は、同じ量の硫黄を含んでいるB1およびB3を比較することによって(表8)具体的に示され得る。さらに、再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数範囲にあるイソパラフィンのwt-%量を増加させることがまた、COおよびCO2の形成の減少に寄与するということが結論付けられ得る。
【0142】
表8からわかるように、化石ナフサは驚くべきことに、再生可能な異性化パラフィン組成物または再生可能な異性化パラフィン組成物を含むブレンドよりも少ないC22を発生させた。驚くべきことに、C22の発生は、P1をB1と、P2をB2と、およびP3をB3と比較することによって気づかれ得るように、再生可能な異性化パラフィン組成物がそれぞれ化石ナフサと混合された場合に増加された。硫黄含有量は、蒸気分解のあいだのC22の発生に特筆するような影響は与えない。表8からわかり得るように、P2はP1よりもわずかに多いC22を生成させた。しかしながら、P3をP1およびP2と比較すると(表8)、P3は、P1またはP2のどちらかよりは顕著に多いC22を発生させていたことが理解され得る。このことは、P2とP3とのあいだの異性化度における相違(2.29パーセンテージポイント)、および、P1とP2とのあいだの異性化度における相違(23.48パーセンテージポイント)を考慮すると、驚くべきことである。したがって、異性化度はC22の形成を制御する主な因子ではないと結論づけられ得る。同様に、表8からわかるように、B1とB2のあいだのC22発生における増加は、B3とB1またはB2のどちらかのあいだのC22発生における増加よりもはるかによりわずかであり、B1はB2またはB3と比較してより少量のC22を発生し、および、B2はB3と比較してより少量のC22を発生している。したがって、再生可能な異性化パラフィン組成物中の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比を低下させることは、C22の形成を低下させると結論付けられ得る。さらに、再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数範囲に含まれるイソパラフィンのwt-%量を増加させることは、C22の形成を低下させることに寄与する。結果的に、総計の不純物のwt-%はまた、再生可能な異性化パラフィン組成物中の3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比を低下させることによって低下される。この効果は、再生可能な異性化パラフィン組成物中のC14~C18の炭素数範囲に含まれるイソパラフィンのwt-%量を増加させることによってさらに強化され得る。
【0143】
表9~12は、蒸気分解流出物のさらに詳細な分析結果を示している。表11および12からわかるように、800℃および820℃のCOTsで蒸気分解を行うことは、840℃のCOTで蒸気分解を行う場合と比較して、より少ないCOおよびCO2を製造した。これは実施例の全てのフィードストック、すなわちP1、P2、B1およびB2に関して観察された。特に低いCOおよびCO2の製造が、800℃のCOTで実施例の全てのフィードストック(P1、P2、B1およびB2)に関して得られた。
【0144】
驚くべきことに、820℃のCOTは、フィードストックがP1またはP2である場合に、800℃および840℃のCOTで同じフィードストックを蒸気分解した場合と比較して、C22の形成を増加させた。この効果は、蒸気分解ブレンドB1およびB2の場合には見られなかった。C22の形成は、フィードストックがB1またはB2であった場合COTにおいて減少された。最も少ないC22製造が、実施例の全てのフィードストック(P1、P2、B1およびB2)に関して800℃のCOTで得られた。したがって、不純物CO、CO2およびC22の製造は、さらに800℃のCOTで低下された。化石ナフサのP1またはP2とのブレンドを蒸気分解する場合、800~820℃の範囲からのCOTが、840℃のCOTと比較して、不純物CO、CO2およびC22の製造を減少させることが示された。
【0145】
【表9】
【0146】
【表10】
【0147】
【表11】
【0148】
【表12】
【0149】
本発明の実施および実施形態はさらに、以下の番号付けされた項目においてさらに記載される。
【0150】
1.a)熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物を含む熱分解フィードストックを提供する工程であって、前記再生可能な異性化パラフィン組成物が、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンであって、前記パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満であるパラフィンと、
熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサと
を含み、前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と前記化石ナフサのwt-%量との合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である工程、ならびに
b)炭化水素の混合物を含む分解生成物を形成するために前記工程a)で提供された前記熱分解フィードストックを熱分解する工程
を含む方法。
【0151】
2.前記熱分解フィードストックが、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物と、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の0~50wt-%の化石ナフサと
を含む項目1記載の方法。
【0152】
3.前記熱分解フィードストックが、前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含み、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および前記化石ナフサのwt-%量の合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である項目1または2記載の方法。
【0153】
4.前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の、前記3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の前記イソパラフィンのwt-%量の総計に対する比が、0.12未満、好ましくは0.10未満、より好ましくは0.05未満である項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0154】
5.前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記イソパラフィンの少なくとも80wt-%、好ましくは少なくとも85wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にある項目1~4のいずれかに記載の方法。
【0155】
6.前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記パラフィンの60~95wt-%、好ましくは60~80wt-%、さらに好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンであり、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物は、前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の、好ましくは少なくとも70wt-%、さらに好ましくは少なくとも80wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt-%のパラフィンを含む項目1~5のいずれかに記載の方法。
【0156】
7.前記化石ナフサが、前記化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~35wt-%のオレフィン、10~30wt-%のナフテン、および0~30wt-%の芳香物化合物を含み、前記化石ナフサ中の炭化水素のwt-%量は、前記化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である項目1~6のいずれかに記載の方法。
【0157】
8.前記熱分解フィードストックが、重量比で20~300ppm、好ましくは重量比で20~250ppm、より好ましくは重量比で20~100ppm、およびさらにより好ましくは重量比で50~65ppmの硫黄を含む項目1~7のいずれかに記載の方法。
【0158】
9.前記工程b)が、780℃~890℃、好ましくは800℃~860℃、より好ましくは800℃~840℃、およびさらにより好ましくは800℃~820℃の範囲から選択されるコイル出口温度(COT)で行われる項目1~8のいずれかに記載の方法。
【0159】
10.前記工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、CO、CO2、またはC22の少なくとも一つを除去するために精製処理に付す工程c)を含む項目1~9のいずれかに記載の方法。
【0160】
11.前記工程b)で形成された分解生成物の少なくとも一部分を、または、前記工程c)の前記精製処理に付された分解生成物の少なくとも一部分を、またはこれら両方を、ポリマーを製造するための重合化処理に付す工程d)を含む項目1~10のいずれかに記載の方法。
【0161】
12.複数の熱分解炉を提供すること、および、前記複数の熱分解炉の少なくとも一つにおいて前記工程b)を行うことを含む項目1~11のいずれかに記載の方法。
【0162】
13.前記複数の熱分解炉から分解生成物を得ること、および
混合分解生成物を形成するために、得られた分解生成物を混合すること、および
任意には、前記混合分解生成物の少なくとも一部分をCO、CO2またはC22の少なくとも一つを除去するために精製処理へと、またはポリマーを形成するために重合化処理へと、または、精製処理および重合化処理の両方へと、付すことを含む項目12記載の方法。
【0163】
14.熱分解フィードストックの総計の重量の1~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物であって、前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の少なくとも60wt-%のパラフィンを含み、前記パラフィンの10~95wt-%がイソパラフィンであり、および、3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の、前記イソパラフィンの総計のwt-%量に対する比が0.15未満である再生可能な異性化パラフィン組成物と、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の0~99wt-%の化石ナフサと
を含み、前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量と前記化石ナフサのwt-%量との合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも90wt-%である熱分解フィードストック。
【0164】
15.前記熱分解フィードストックが、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~100wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物と、
前記熱分解フィードストックの総計の重量の0~50wt-%の化石ナフサと
を含む項目14記載の熱分解フィードストック。
【0165】
16.前記熱分解フィードストックが、前記熱分解フィードストックの総計の重量の50~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~50wt-%の化石ナフサ、好ましくは、60~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~40wt-%の化石ナフサ、より好ましくは、70~85wt-%の再生可能な異性化パラフィン組成物および15~30wt-%の化石ナフサを含み、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物のwt-%量および前記化石ナフサのwt-%量の合計が、前記熱分解フィードストックの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である項目14または15記載の熱分解フィードストック。
【0166】
17.前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の、前記3つより多くの分岐をもつイソパラフィンのwt-%量の前記イソパラフィンのwt-%量の総計に対する比が、0.12未満、好ましくは0.10未満、より好ましくは0.05未満である項目14~16のいずれかに記載の熱分解フィードストック。
【0167】
18.前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記イソパラフィンの少なくとも80wt-%、好ましくは少なくとも85wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも95wt-%が、C14~C18の炭素数範囲にある項目14~17のいずれかに記載の熱分解フィードストック。
【0168】
19.前記再生可能な異性化パラフィン組成物中の前記パラフィンの60~95wt-%、好ましくは60~80wt-%、さらに好ましくは65~70wt-%がイソパラフィンであり、
前記再生可能な異性化パラフィン組成物は、前記再生可能な異性化パラフィン組成物の総計の重量の好ましくは少なくとも70wt-%、さらに好ましくは少なくとも80wt-%、より好ましくは少なくとも90wt-%、さらにより好ましくは少なくとも99wt-%のパラフィンを含む項目14~18のいずれかに記載の熱分解フィードストック。
【0169】
20.前記化石ナフサが、前記化石ナフサの総計の重量の20~85wt-%のパラフィン、0~35wt-%のオレフィン、10~30wt-%のナフテン、および0~30wt-%の芳香物化合物を含み、
前記化石ナフサ中の炭化水素のwt-%量は、前記化石ナフサの総計の重量の少なくとも95wt-%、より好ましくは少なくとも99wt-%である項目14~19のいずれかに記載の熱分解フィードストック。
【0170】
21.前記熱分解フィードストックが、重量比で20~300ppm、好ましくは重量比で20~250ppm、より好ましくは重量比で20~100ppm、および最も好ましくは重量比で50~65ppmの硫黄を含む項目14~20のいずれかに記載の熱分解フィードストック。
【0171】
22.項目1~13のいずれかに記載の方法によって得られ得る炭化水素の混合物を含む分解生成物であって、前記分解生成物中のCO、CO2およびC22のwt-%量の総計が、前記分解生成物の総計の重量の1.5wt-%未満、好ましくは1.3wt-%未満、より好ましくは1.1wt-%未満、さらにより好ましくは0.8wt-%未満である分解生成物。
【0172】
23.項目22記載の分解生成物の、例えばポリプロペン、ポリエチレン、またはそれら両方などのポリマーを製造するための使用。
【0173】
24.項目11または項目13記載の方法によって得られ得るポリマーを含む製造品。
【0174】
上記の記載は、発明の特定の実施および実施形態の非限定的な例として、発明を実施するために発明者らによって現時点で熟考されたベストモードの十分かつ有益な記載を提供した。しかしながら、発明は上記で示された実施形態の詳細に限定されず、発明の特徴から逸脱することなく、等価な手段を用いた他の実施形態でまたは実施形態の異なる組み合わせで実施され得るということは当該技術分野における当業者には明らかなことである。
【0175】
さらに、本発明の前段で開示されたいくつかの特徴は、他の特徴の対応する使用なしに優位に使用され得る。したがって、前述の記載は、本発明の原則の単なる例示として考慮されるべきであり、限定として考えられるべきではない。したがって、発明の範囲は、添付の特許クレームによってのみ制限される。
図1