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▶ モントレー ブレゲ・エス アーの特許一覧

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  • 特許-回転ベゼルを有する腕時計ケース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】回転ベゼルを有する腕時計ケース
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/28 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G04B19/28 A
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165230
(22)【出願日】2022-10-14
(65)【公開番号】P2023092456
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】21216432.1
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ルネ・ピゲ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・シャピュイ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-181960(JP,A)
【文献】特開2019-113532(JP,A)
【文献】特開2016-099345(JP,A)
【文献】特開2020-024192(JP,A)
【文献】特開2003-270365(JP,A)
【文献】特開2006-126017(JP,A)
【文献】特開2013-253973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ベゼル(1)と、ミドル(3)と、前記回転ベゼル(1)と前記ミドル(3)の間の接続ばね(2)とを備える腕時計ケース(6)であって、前記接続ばね(2)が前記ミドル(3)の外壁(3a)に形成された第1の溝(7)の中に収納され、前記回転ベゼル(1)の内壁(1a)に形成された第2の溝(8)の中に収納され、前記続ばね(2)が形状記憶合金でできており、前記接続ばね(2)が、円形の突起がリングの内面全体にわたって、また、前記リングの外面全体にわたって交互に配置された環状の形を有することを特徴とする、腕時計ケース(6)。
【請求項2】
前記形状記憶合金が、銅をベースとする合金、ニッケルをベースとする合金、ニッケルおよびチタンをベースとする合金、または鉄をベースとする合金であることを特徴とする請求項1に記載の腕時計ケース(6)。
【請求項3】
前記ニッケルおよびチタンをベースとする合金が、重量比で、52.5%と63%の間からなる割合のニッケル、36.5%と47%の間からなる割合のチタン、および0.5%以下の割合の可能な不純物から構成されることを特徴とする請求項2に記載の腕時計ケース(6)。
【請求項4】
前記銅をベースとする合金が、重量比で、可能な不純物の割合が0.5%以下で、以下の組成、すなわち
64.5%と85.5%の間のCu、9.5%と25%の間のZn、および4.5%と10%の間のAl
79.5%と84.5%の間のCu、12.5%と14%の間のAl、および2.5%と6%の間のNi
87%と88.2%の間のCu、11%と12%の間のAl、および0.3%と0.7%の間のBe
を有する合金のうちの1つであることを特徴とする請求項2に記載の腕時計ケース(6)。
【請求項5】
前記第1および第2の溝(7、8)が互いに反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の腕時計ケース(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転ベゼルを備えた腕時計ケースに関し、より詳細には、回転ベゼルにミドルを接続するばねの性質に関する。
【背景技術】
【0002】
ベゼルの溝およびミドルの溝に同時に篏合した多角形のばねを介して回転ベゼルをミドル上に取り付けることは知られている。ばねは、1回転自由度を残してベゼルを垂直方向の所定の位置に保持する。この多角形のばねは、低コストの組立て解決法であるという利点を有し、比較的大きい分解力を受けるベゼルの分解を可能にする。
【0003】
このばねは、ミドルの溝および回転ベゼルの溝の中にばねを組み立てる際に変形する、概して金属のワイヤによって形成される。これらの変形は、著しいものになり、ワイヤが塑性変形する原因になることがある。
【0004】
この点に関して、図3乃至図5は、ベゼル1およびばね2をミドル3上に組み立てる方法を図式化したものである。図3に図式化されている組立ての最初に、ばね2がミドル3の傾斜した平面3cに対して配置され、ベゼル1の溝8の中に収納される。この組立てシーケンスの間、ばねは荷重されない。その後、図4の組立てシーケンスで、ミドル3の傾斜壁3cに続く垂直壁3bに対してばね2が配置される。ばねはこのとき半径方向に強く荷重されてから、その操作のために意図されたミドル3およびベゼル1の溝7、8の中にばねが収納されたとき解放される(図5)。図4のシーケンスで加えられる歪みおよび対応する応力は、製造公差に応じて部分間で変動する。いくつかの製品では、この応力は、ばねを塑性変形させるため深刻である。これは、ベゼルを回転したときの摩擦トルクおよび分解に必要な力の再現性が部分間で変動し得ることを暗示している。これらの塑性変形はベゼルとミドルの間の摩擦トルクを変化させ、したがって顧客によって知覚される感覚上のフィーリングを変化させ、これは大きな欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、塑性変形することなくかなりの応力を加えることができる材料でできたばねを提供することによって上で言及した欠点を克服することである。より詳細には、ばねは、その超弾性特性を利用した形状記憶合金でできている。これらの材料によれば、相転位現象により、残留塑性変形なく広範囲にわたる歪みを許容することができる。したがって必然的に、組立て中にばねを挿入する際の高い応力および大きい歪みにもかかわらず、ユーザによって知覚されるトルクがより再現可能になり、また、ばねを挿入する際の幾何構造に無関係であることになる。したがって本発明によれば、従来の構造および材料ではクリティカルなものになるはずの溝の幾何構造によるベゼルの寸法を小さくすることができ、その一方で安定した触覚トルクを維持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
より詳細には、本発明は、回転ベゼルと、ミドルと、回転ベゼルとミドルの間の接続ばねとを備える腕時計ケースに関しており、前記接続ばねは、ミドルの外壁に形成された第1の溝の中に収納され、また、回転ベゼルの内壁に形成された第2の溝の中に収納され、前記第1の溝および第2の溝は互いに反対側に配置されることが好ましく、腕時計ケースは、接続ばねが形状記憶合金でできていることを特徴としている。
【0007】
形状記憶合金は、銅をベースとする合金、ニッケルおよびチタンをベースとする合金、ニッケルをベースとする合金または鉄をベースとする合金であることが好ましい。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による接続ばねを備えた腕時計ケースを示す図である。
図2】本発明による腕時計ケースに使用される接続ばねを示す図である。
図3】従来技術によるミドルの溝およびベゼルの溝の中にばねを組み立てるシーケンスを示す図である。
図4】従来技術によるミドルの溝およびベゼルの溝の中にばねを組み立てるシーケンスを示す図である。
図5】従来技術によるミドルの溝およびベゼルの溝の中にばねを組み立てるシーケンスを示す図である。
図6】形状記憶合金の応力-歪み曲線を示すグラフである。
図7図2の接続ばねに対する代替を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
腕時計ケース6は、ミドル3上に取り付けられた回転ベゼル1を含む(図1)。ミドル3および回転ベゼル1は、それぞれ溝7および溝8を含む。溝7はミドル3の外壁3aに形成されており、溝8は回転ベゼル1の内壁1aに形成されている。溝7および8は互いに反対側に配置され、本発明による接続ばね2のためのハウジングとして働くことが好ましい。このばね2により、回転ベゼル1はミドル3のショルダ3dに対して下向きに押し付けられる。図2に示されているように、接続ばねは多角形の形を有することができる。図7に示されている変形形態によれば、接続ばねは、円形の突起2aがリングの内面全体にわたって、また、リングの外面全体にわたって交互に配置された環状の形を有することができる。本発明の範囲を逸脱することなく他の形を考慮することも可能である。
【0011】
接続ばねは形状記憶合金でできている。図6は、材料を数パーセントだけ可逆的に変形させることができる応力を加えることによってマルテンサイトに変態されるオーステナイト構造を室温で有する形状記憶合金の超弾性挙動を示したものである。この引張り曲線は、最初は、臨界応力まで弾性直線挙動を有しており、臨界応力ではマルテンサイト変態が超弾性挙動を誘導し、変形はほぼ一定の応力の下で大きくなる。これは図6で観察される水平部である。応力が除去されると、直ちにマルテンサイトからオーステナイトへの逆変態が生じ、合金はその最初の寸法に復帰する。
【0012】
形状記憶合金はニッケルおよびチタンをベースとする合金であることが好ましい。この合金は完全に生体適合性であり、極めて耐食性である。ニッケルおよびチタンをベースとする合金は、重量比で、52.5%と63%の間からなる割合のニッケル、36.5%と47%の間からなる割合のチタン、および0.5%以下の百分率の可能な不純物から構成される。ニッケルおよびチタンをベースとする合金は、55.8重量%のチタン、44重量%のニッケルおよび0.2重量%以下のレベルの可能な不純物を含む合金からなっていてもよいことが有利である。
【0013】
また、形状記憶合金は銅をベースとする合金からなっていてもよい。より詳細には、銅をベースとする合金は、重量比で、可能な不純物の割合が0.5%以下で、総百分率を100%として以下の組成、すなわち
- 64.5%と85.5%の間のCu、9.5%と25%の間のZn、および4.5%と10%の間のAl
- 79.5%と84.5%の間のCu、12.5%と14%の間のAl、および2.5%と6%の間のNi
- 87%と88.2%の間のCu、11%と12%の間のAl、および0.3%と0.7%の間のBe
を有する合金のうちの1つである。
【0014】
また、形状記憶合金は鉄をベースとする合金、例えばFe-Mn-Si合金からなっていてもよい。また、形状記憶合金は、ニッケルをベースとする、チタンがない合金からなっていてもよい。
【0015】
これらの合金は、応力がない状態において、室温でオーステナイト微細構造を有している。
【符号の説明】
【0016】
1 回転ベゼル
1a 内壁
2 ばね
3 ミドル
3a 外壁
3b 垂直壁
3c 傾斜壁
3d ショルダ
4 ジョイント
5 ガラス
6 腕時計ケース
7 第1の溝とも呼ばれるミドルの溝
8 第2の溝とも呼ばれるベゼルの溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7