(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】フレキソ印刷版用原版
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240322BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20240322BHJP
B41N 1/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G03F7/11
G03F7/00 502
B41N1/00
(21)【出願番号】P 2022209173
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2019037985の分割
【原出願日】2019-03-01
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 博司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 秀夫
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013066(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181354(WO,A1)
【文献】特開2020-027171(JP,A)
【文献】特開2020-046568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/00
B41N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(A)と、
感光性樹脂組成物層(B)と、
中間層(C)と、
アブレーション層(D)と、
を、前記順序にて有するフレキソ印刷版用原版であって、
前記中間層(C)が、塩基性窒素原子を含むモノマー単位と、アルキレングリコール構造単位を有するポリアミド共重合体を含
み、
前記中間層(C)が、水分散性ラテックス、水溶性ポリウレタンをさらに含有し、
前記水分散性ラテックス及び水溶性ポリウレタンが極性基を有している、
フレキソ印刷版用原版。
【請求項2】
前記中間層(C)全量に対する前記ポリアミド共重合体の含有割合が、5質量%以上80質量%未満である、
請求項1に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項3】
前記中間層(C)の厚さが、0.5μm以上20μm以下である、
請求項1に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項4】
前記中間層(C)が、シリコーン化合物を、さらに含有する、
請求項1に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項5】
前記アブレーション層(D)が、
カーボンブラック、酸変性したポリマー、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーから構成される共重合体、前記共重合体の水素添加物、及び前記共重合体の変性物、からなる群より選択される少なくとも1種を、さらに含有する、
請求項1に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項6】
支持体(A)と、
感光性樹脂組成物層(B)と、
中間層(C)と、
アブレーション層(D)と、
を、前記順序にて有するフレキソ印刷版用原版であって、
前記中間層(C)が、塩基性窒素原子を含むモノマー単位と、アルキレングリコール構造単位を有するポリアミド共重合体を含み、
前記中間層(C)全量に対する前記ポリアミド共重合体の含有割合が、5質量%以上80質量%未満である、
フレキソ印刷版用原版。
【請求項7】
前記中間層(C)の厚さが、0.5μm以上20μm以下である、
請求項6に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項8】
前記中間層(C)が、シリコーン化合物を、さらに含有する、
請求項6に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項9】
前記アブレーション層(D)が、
カーボンブラック、酸変性したポリマー、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーから構成される共重合体、前記共重合体の水素添加物、及び前記共重合体の変性物、からなる群より選択される少なくとも1種を、さらに含有する、
請求項6に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項10】
支持体(A)と、
感光性樹脂組成物層(B)と、
中間層(C)と、
アブレーション層(D)と、
を、前記順序にて有するフレキソ印刷版用原版であって、
前記中間層(C)が、塩基性窒素原子を含むモノマー単位と、アルキレングリコール構造単位を有するポリアミド共重合体を含み、
前記中間層(C)が、シリコーン化合物を、さらに含有する、
フレキソ印刷版用原版。
【請求項11】
前記中間層(C)の厚さが、0.5μm以上20μm以下である、
請求項10に記載のフレキソ印刷版用原版。
【請求項12】
前記アブレーション層(D)が、
カーボンブラック、酸変性したポリマー、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーから構成される共重合体、前記共重合体の水素添加物、及び前記共重合体の変性物、からなる群より選択される少なくとも1種を、さらに含有する、
請求項10に記載のフレキソ印刷版用原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版用原版に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷方式には、印刷版に三次元形状を施すことで印刷が可能になる方式と、化学的な特徴を付与することで印刷可能な方式とが知られている。
前者の代表例としては、凸版印刷、凹版印刷が挙げられる。
前記凸版印刷では、印刷版の凸部にインキが付着することで印刷が可能となり、一方、凹版印刷では印刷版の凹部にインキが付着することで印刷が可能となる。
フレキソ印刷は凸版印刷の一種であり、樹脂やゴム等、柔軟性を持つ印刷版を用いて印刷を行うため、多様な被印刷体に印刷可能であるという特徴を有している。
【0003】
近年のフレキソ印刷版の材料に使用される樹脂組成物の多くは、リソグラフィー技術を用いて三次元形状の形成を行うため、感光性が付与された感光性樹脂組成物である。
フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物は、熱可塑性エラストマー、エチレン性不飽和化合物、及び光重合開始剤を含有するものが一般的である。
【0004】
感光性樹脂組成物層に印刷形状が付与される前段階の積層体である「フレキソ印刷版用原版」としては、ポリエステルフィルム等を支持体とし、その上に感光性樹脂組成物層、必要に応じて感光性樹脂組成物層の上にネガフィルムとの接触をなめらかにする目的で保護層が設けられ、さらにその上にポリエステルフィルム等のカバーシートを備えた構造のものが知られている。
【0005】
上述した構造のフレキソ印刷版用原版を用いてフレキソ印刷版を製版するためには、まず支持体を通して感光性樹脂組成物層全面に紫外線露光を施し(バック露光)、感光性樹脂組成物を光重合させて薄い均一な硬化層を形成する。
次に、所望の画像を有するネガフィルムを感光性樹脂組成物層上に貼り合わせ、ネガフィルムを介して感光性樹脂組成物層に、画像露光(レリーフ露光)を行い、画像部を硬化させ、その後、未露光部分を現像液で洗い流し、未露光部分を取り除き、印刷用の凹凸が形成された感光性樹脂構成体を得る。
その後に、前記凹凸が形成された感光性樹脂構成体の表面に、後処理露光を行うことにより、フレキソ印刷版が得られる。
【0006】
近年、印刷品質の向上の要求の高まりに対し、従来から行われてきたネガフィルムを用いた製版技術に替えて、赤外レーザーで切除可能なアブレーション層を感光性樹脂組成物層上に設け、レーザーによって前記アブレーション層を所望のパターンに切除し、その後、露光を行うことにより紫外線硬化させる部分と紫外線硬化させない部分とを設ける技術、いわゆるデジタル製版技術が開発されている。
このデジタル製版技術は、従来のネガフィルムを用いた技術に比べ、時間と労力が節約できるという長所がある。例えば、画像の修正が生じた際、新たにネガフィルムを作製し直す必要がなく、デジタル化された画像データをコンピュータ上で修正することにより、画像の修正が容易に可能である。
【0007】
上述したデジタル製版技術を用いてフレキソ印刷版の製版を行う場合、アブレーション層にはピンホールがないことが望ましい。
アブレーション層にピンホールがある場合、レリーフ露光時にピンホールと接した感光性樹脂組成物層が露光されてしまうため、意図しない画像の形成が起こり、良好な印刷物を得ることができないという問題が生じる。
【0008】
アブレーション層を感光性樹脂組成物層上に設ける方法としては、当該アブレーション層を感光性樹脂組成物層に直接塗布する方法の他、カバーシート上にアブレーション層を塗布し、アブレーション層側を感光性樹脂組成物層と貼り合わせ、転写することで積層する方法が挙げられる。
カバーシート上に塗布されたアブレーション層を感光性樹脂組成物層と貼り合わせる方法によりアブレーション層を感光性樹脂組成物層上に設ける場合、カバーシート上にアブレーション層を塗布した際の塗工ムラ、ハジキによって、アブレーション層にピンホールが生じる可能性があり、また、アブレーション層が塗布されたカバーシートの保管、輸送の際の衝撃によって、さらには感光性樹脂組成物層と貼り合わせる際の、ラミネーション温度・圧力や、混錬押出し樹脂との接触によって、ピンホールが生じるおそれがあるという問題点を有している。
【0009】
かかる問題点に鑑み、特許文献1には、カバーシート上にアブレーション層を塗布したのち、アブレーション層に剥離フィルムを貼り合わせた遮蔽層積層体を作製し、当該遮蔽層積層体から剥離フィルムを剥離しながら感光性樹脂組成物層と貼り合わせることにより、アブレーション層にピンホールが発生することを抑制する技術が開示されている。
しかしながら、この特許文献1に開示されている技術では、アブレーション層と剥離フィルムとの接着が十分に低くなければ、剥離フィルムを剥離する際にピンホールが発生してしまうという問題点を有している。また、剥離フィルムの離型剤がアブレーション層に転写されることで、アブレーション層と感光性樹脂組成物層との接着性が低下してしまうことがあるという問題点も有している。
【0010】
また、アブレーション層にピンホールが発生することを防止するための他の方法としては、特許文献2に、アブレーション層と感光性樹脂組成物層との間に中間層を設ける技術が開示されている。
この技術では、中間層がアブレーション層を保護するため、アブレーション層と感光性樹脂組成物層との貼り合わせを行う際に、ピンホールが発生しにくいという利点を有している。
しかしながら、アブレーション層と感光性樹脂組成物層との間に設けられた中間層は、印刷版用原版内に残存することとなるため、ピンホールを抑制するために十分な強度を持つ中間層を設けた場合、版全体の柔軟性が損なわれ、赤外レーザーでの描画時に中間層及びアブレーション層に亀裂が入り、意図しない画像形成が起こるという問題点を有している。
【0011】
また、支持体上に感光性樹脂組成物層、フィルム層、及びアブレーション層を設けた構成の感光性樹脂凸版原版に、赤外レーザーを照射し画像マスクを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
この技術では、形成された画像マスクの上から紫外光を全面露光した後、フィルム層ごと画像マスクを剥離除去し、その後、水現像して樹脂凸版印刷版が得られるため、現像液中に画像マスクを構成するアブレーション層の材料が混入することがなく、現像廃液の処理が行いやすいという利点がある。しかしながら、感光性樹脂組成物層とアブレーション層との間にあるフィルム層の膜厚が厚いと、その分だけ紫外光の屈曲や散乱が起こりやすくなり、指向性の低い紫外光の光源を選択すると、画像が太り、画像形成の精度が低下するなどの不利益を被る場合があるという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第4610132号公報
【文献】特許第2773981号公報
【文献】国際公開第01/18605号パンフレット(第2-3頁、17頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、アブレーション層の樹脂密着性が高く、アブレーション層のピンホールを抑制でき、取扱性に優れたフレキソ印刷版用原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の組成の中間層をフレキソ印刷版用原版内に配置することにより、上述した従来技術の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0015】
〔1〕
支持体(A)と、
感光性樹脂組成物層(B)と、
中間層(C)と、
アブレーション層(D)と、
を、前記順序にて有するフレキソ印刷版用原版であって、
前記中間層(C)が、塩基性窒素原子を含むモノマー単位と、アルキレングリコール構造単位を有するポリアミド共重合体を含み、
前記中間層(C)が、水分散性ラテックス、水溶性ポリウレタンをさらに含有し、
前記水分散性ラテックス及び水溶性ポリウレタンが極性基を有している、
フレキソ印刷版用原版。
〔2〕
前記中間層(C)全量に対する前記ポリアミド共重合体の含有割合が、5質量%以上80質量%未満である、前記〔1〕に記載のフレキソ印刷版用原版。
〔3〕
前記中間層(C)の厚さが、0.5μm以上20μm以下である、
前記〔1〕又は〔2〕に記載のフレキソ印刷版用原版。
〔4〕
前記中間層(C)が、シリコーン化合物を、さらに含有する、
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のフレキソ印刷版用原版。
〔5〕
前記アブレーション層(D)が、
カーボンブラック、酸変性したポリマー、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーから構成される共重合体、前記共重合体の水素添加物、及び前記共重合体の変性物、からなる群より選択される少なくとも1種を、さらに含有する、
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のフレキソ印刷版用原版。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アブレーション層の樹脂密着性が高く、アブレーション層のピンホールを抑制でき、取扱性に優れたフレキソ印刷版用原版が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0018】
〔フレキソ印刷版用原版〕
本実施形態のフレキソ印刷版用原版は、支持体(A)と、感光性樹脂組成物層(B)と、中間層(C)と、アブレーション層(D)とを、前記順序にて有するフレキソ印刷版用原版あって、前記中間層(C)が、水分散性ラテックス及び水溶性ポリウレタンを含有し、前記水分散性ラテックス及び水溶性ポリウレタンが、極性基を有している、フレキソ印刷版用原版である。
【0019】
(支持体(A))
本実施形態のフレキソ印刷版用原版に用いる支持体(A)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリアミドフィルム等が挙げられる。
これらの中でもポリエステルフィルムが好ましい。
支持体(A)の厚みについても特に限定されるものではないが、50~300μmの寸法安定なフィルムが好ましい。
また、支持体(A)と後述する感光性樹脂組成物層(B)との間の接着力を高める目的で、支持体(A)上には接着剤層を設けてもよく、当該接着剤層としては、例えば、国際公開第2004/104701号公報に記載の接着剤層が挙げられる。
【0020】
(感光性樹脂組成物層(B))
感光性樹脂組成物層(B)は、少なくとも1種のエラストマー、光重合性モノマー、光重合開始剤又は光開始剤系(2種類以上の光重合開始剤を使用した系)を含有し、さらに、可塑剤、加工助剤、染料、及びUV吸収剤等の添加剤を1種以上含有することが好ましい。
【0021】
感光性樹脂組成物層(B)に含有されるエラストマーは、感光性樹脂組成物を光重合させたのちに形状を保持し、かつゴム弾性を有するものである。
このようなエラストマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン-ジエンブロックコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリエチレンオキシドポリビニルアルコールグラフトコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、ポリノルボルネンゴム、又はエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等の合成ゴムや、天然ゴム、ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリ酢酸ビニル(部分鹸化ポリビニルアルコール)、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンオキサイドのような親水性基を導入したポリアミド樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びこれらの変性体等、水に分散可能な各種樹脂が挙げられる。
これら樹脂は、版形成性に悪影響を及ぼすことがなければ、2種類以上の混合物を使用することができる。特に、水系洗浄液で高い洗浄性が得られる親水性基をもつラテックスが好ましい。
【0022】
感光性樹脂組成物層(B)中のエラストマーの含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用原版を用いて得られるフレキソ印刷版の耐久性の観点から、感光性樹脂組成物層(B)の全量を100質量%としたとき、30~85質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましく、45~75質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
感光性樹脂組成物層(B)に含有される光重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸等のカルボン酸エステル類;アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体、アリルエステル、スチレン及びその誘導体、N置換マレイミド化合物等が挙げられる。
【0024】
光重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサンジオール、ノナンジオール等のアルカンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールのジアクリレート及びジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート;ペンタエリトリットテトラアクリレート及びテトラメタクリレート等や、N,N'-ヘキサメチレンビスアクリルアミド及びメタクリルアミド;スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステル、フマル酸ジオクチルエステル、フマル酸ジステアリルエステル、フマル酸ブチルオクチルエステル、フマル酸ジフェニルエステル、フマル酸ジベンジルエステル、マレイン酸ジブチルエステル、マレイン酸ジオクチルエステル、フマル酸ビス(3-フェニルプロピル)エステル、フマル酸ジラウリルエステル、フマル酸ジベヘニルエステル、N-ラウリルマレイミド等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
感光性樹脂組成物層(B)における光重合性モノマーの含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用原版を用いて得られるフレキソ印刷版の耐刷性の観点から、感光性樹脂組成物層(B)の製造工程において、感光性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、2質量%~30質量%とすることが好ましく、2質量%~25質量%とすることがより好ましく、2質量%~20質量%とすることがさらに好ましい。
【0026】
感光性樹脂組成物層(B)に含有される光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α-メチロールベンゾイン、α-メチロールベンゾインメチルエーテル、α-メトキシベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェイニルエーテル、α-t-ブチルベンゾイン、2,2-ジメトキシフェニルアセトフェノン、2,2-ジエチキシフェニルアセトフェノン、ベンジル、ピバロイン、アンスラキノン、ベンズアンスラキノン、2-エチルアンスラキノン、2-クロルアンスラキノン等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
感光性樹脂組成物層(B)における光重合開始剤の含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用原版を用いて製造したフレキソ印刷版の耐刷性の観点から、感光性樹脂組成物層(B)の製造工程において、感光性樹脂組成物全量を100質量%としたとき、0.1~10質量%の範囲とすることが好ましく、0.1~5質量%の範囲とすることがより好ましく、0.5~5質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0028】
感光性樹脂組成物層(B)には、その他の成分として、相溶性、柔軟性を高める等の目的で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール類;液状のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアクリル、さらにそれら末端基あるいは側鎖の変性体を含有してもよく、熱安定性を高めるために、従来公知の重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類等が挙げられる。
また、染料、顔料、界面活性剤、シリコーン化合物、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0029】
(中間層(C))
本実施形態のフレキソ印刷版用原版は、上述した感光性樹脂組成物層(B)と、後述するアブレーション層(D)との間に中間層(C)を有している。
中間層(C)は、後述するアブレーション層(D)にピンホールが発生することを抑制するために十分な膜強度を有し、かつ感光性樹脂組成物層(B)とアブレーション層(D)との密着性を十分に確保する機能を発揮し、かつフレキソ印刷版用原版の可撓性を損なわないよう、十分な柔軟性を有することが好ましい。
本実施形態において、中間層(C)は、水分散性ラテックス及び水溶性ポリウレタンを含有する。
【0030】
中間層(C)に含有される水分散性ラテックスは、中間層(C)と感光性樹脂組成物層(B)、中間層(C)と後述するアブレーション層(D)との接着性を良好にする機能を有する。
中間層(C)を設けることにより、中間層(C)と感光性樹脂組成物層(B)及び中間層(C)とアブレーション層(D)の各層間の密着力を向上させることができ、フレキソ印刷版用原版において、アブレーション層(D)上に積層されたカバーシート(E)をアブレーション層(D)から剥離する際の、アブレーション層(D)の破れやキズの発生を防ぐことができる。
【0031】
中間層(C)に含有される水分散性ラテックスとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックス等の水分散ラテックス重合体や、これらの重合体にアクリル酸やメタクリル酸等の他の成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。
これらの中でも、分子鎖中にブタジエン骨格又はイソプレン骨格を含有する水分散ラテックス重合体が、硬度やゴム弾性の観点から好ましい。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。
本実施形態のフレキソ印刷版用原版を構成する中間層(C)に含有される水分散性ラテックスは、極性基を有しているものとし、当該極性基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、リン酸機、スルホン酸基、それらの塩等が好ましいものとして挙げられる。
【0032】
本実施形態のフレキソ印刷版用原版を用いたフレキソ印刷版において、高い洗浄性及び層間の優れた密着性を得る観点から、前記水分散性ラテックスとしては、カルボキシル基又は水酸基を有するものであることが好ましい。
これら極性基を含む水分散性ラテックスは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0033】
カルボキシル基を有する水分散性ラテックスとしては、カルボキシル基不飽和単量体を重合単量体として含むものが挙げられ、当該カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、例えば、一塩基酸単量体、及び二塩基酸単量体等が挙げられる。
一塩基酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、桂皮酸、及びこれらの一塩基酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
二塩基酸単量体としては、例えば、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、ムコン酸、及びこれらの二塩基酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
本実施形態において、カルボキシル基を有する不飽和単量体は、1種類のみを単独で用いてもよく、複数種類のカルボキシル基を有する不飽和単量体を同時に用いてもよい。
【0034】
水酸基を有する水分散性ラテックスとしては、エチレン系モノカルボン酸アルキルエステル単量体が挙げられ以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸1-ヒドロキシプロピル、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
中間層(C)における、水分散性ラテックスの含有割合は、樹脂密着性の観点から、中間層(C)全量に対し、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
また、べたつきを抑制する観点から、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
中間層(C)における水分散性ラテックスの含有割合が3質量%以上であることにより、十分な密着性が得られ、また、含有割合が90質量%以下であることにより、十分な膜強度を有し、タックの少ないフレキソ印刷版用原版が得られる。
【0036】
水分散性ラテックスのトルエンゲル分率は、70質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは70質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上80質量%以下である。
水分散性ラテックスのトルエンゲル分率が70質量%以上90質量%以下の範囲であると、十分なゴム弾性・膜強度を維持しつつ、べたつきの少ないフレキソ印刷版用原版が得られる。
【0037】
ここで、水分散性ラテックスのトルエンゲル分率は、以下の方法で測定することができる。
水分散性ラテックスの乳化重合後の分散液を、130℃で30分間乾燥させた皮膜を0.5g取り、25℃のトルエン30mLに浸漬させ、振とう器を用いて3時間振とうさせた後に320SUSメッシュで濾過し、不通過分を130℃で1時間乾燥させた後、質量X(g)を測定する。
ゲル分率は以下の式より算出される。
ゲル分率(質量%)=X(g)/0.5(g)×100
前記水分散性ラテックスのトルエンゲル分率は、重合温度、モノマー組成、連鎖移動剤
量、粒子径を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0038】
中間層(C)に含有される水溶性ポリウレタンは、ウレタン結合を有するポリマーであれば特に限定されず、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン等が挙げられる。
前記水溶性ポリウレタンを安定的に有機溶剤及び/又は水に、溶解又は分散させるため、ポリオール化合物及びポリイソシアネートに加えて、重合成分として親水基含有化合物を添加することも好ましい。
【0039】
前記ポリオール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリルポリオール等が挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、密着性の観点から、ポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールにイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルポリオール、すなわち、多価アルコールとイオン重合性環状化合物との反応物が挙げられる。
【0040】
前記多価アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフトハイドロキノン、アントラハイドロキノン、1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジオール、及びペンタシクロペンタデカンジメタノール等が挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記イオン重合性環状化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、前記ポリオール化合物としては、前記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β-プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸又はジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。
これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状に結合をしていてもよい。
【0043】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に一般的に用いられるポリイソシアネートを特に限定されることなく使用できる。
ポリイソシアネートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は6)-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。
これらのポリイソシアネートは、一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
中間層(C)に含有される前記水溶性ポリウレタンは、本実施形態のフレキソ印刷版用原版の製造工程で熱押出成形を行う際、フレキソ印刷版用原版のアブレーション層(D)の耐ピンホール性を高め、フレキソ印刷版用原版の柔軟性を維持するため、前記水溶性ポリウレタンで作製した膜の伸度が300%以上であることが好ましく、600%以上であることがより好ましい。
【0045】
また、前記水溶性ポリウレタンの熱軟化温度は、80℃~210℃であることが好ましい。耐ピンホール性の観点から80℃以上であることが好ましく、耐ピンホール性及び接着性の観点から210℃以下であることが好ましい。
また、110℃~180℃であることがより好ましく、120℃~170℃であることがさらに好ましい。
水溶性ポリウレタンの熱軟化温度は、高化式フローテスターにより測定することができる。
また、水溶性ポリウレタンの熱軟化温度は、水溶性ポリウレタンを構成しているジオール成分とジイソシアネート成分の種類・組み合わせを調整することによって上記数値範囲に制御することができる。
アブレーション層(D)の耐ピンホール性(耐PH性)に影響を与える特性は、中間層(C)に含有される水溶性ポリウレタン単独膜の熱溶融温度、伸度、破断強度の3つのパラメータである。
フレキソ印刷版用原版の製造時に、混練後の押し出し樹脂(感光性樹脂組成物層の材料)温度は、120~140℃程度となる。その際に、中間層(C)に含有される水溶性ポリウレタン単独膜の熱軟化温度が混練後の押し出し樹脂温度に近い、あるいは低いものほど、また、水溶性ポリウレタン単独膜の伸度が大きいものほど、混練後の押し出し樹脂のせん断応力に追随するため、アブレーション層及び中間層がシート化しやすくなる。
また、水溶性ポリウレタン単独膜の破断強度は、感光性樹脂組成物層を構成する材料である混錬樹脂(混錬不良のゲル状物質も含有)と、アブレーション層及び中間層との熱ラミネート時に、ゲル状物よる引っ掻きによって、直接混錬樹脂と接している中間層が破断し、アブレーション層(D)にピンホールが発生するため、水溶性ポリウレタン単独膜の破断強度が大きいものほどよい。
【0046】
また、前記水溶性ポリウレタンの数平均分子量は、柔軟性の観点から、1,000~200,000であることが好ましく、30,000~100,000であることがより好ましい。
【0047】
また、中間層(C)に含有される水溶性ポリウレタンは、ポリエーテルポリオールとイソシアネートを反応させたポリエーテルポリウレタンであることが密着性の観点から好ましい。このようなポリエーテルポリウレタンとしては、例えば、スーパーフレックス300(第一工業製薬社製)やハイドランWLS202(DIC社製)等が市販されている。
【0048】
水溶性ポリウレタンは、分子内に、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルエーテルのいずれかの構造を有することが好ましく、さらにポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、さらに接着性の観点からポリエーテル構造を有することが好ましい。
【0049】
樹脂密着力、すなわち中間層(C)と感光性樹脂組成物層(B)との密着力は、中間層(C)に含有される水分散性ラテックスと水溶性ポリウレタンで発現している。
初期の密着性に関しては、水溶性ポリウレタンが主に前記樹脂密着力に寄与し、水溶性ポリウレタンのTgが低い方が、感光性樹脂組成物層に濡れやすいため樹脂密着力が優れたものとなる傾向にある。
また、フレキソ印刷版用原版を長期放置した後の密着力は、水分散性ラテックスのアンカー効果が寄与する。
感光性樹脂組成物層中のスチレンブタジエン系の樹脂は中間層(C)中の水分散性ラテックスと相溶しやすいため、長期保存時に移行することでアンカー効果が発現し、長期保存後でも樹脂密着力が維持される。
【0050】
中間層(C)における、水溶性ポリウレタンの含有割合は、中間層(C)全量に対し、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。
また、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
中間層(C)全量に対する水溶性ポリウレタンの含有割合が10質量%以上であることにより、十分な耐ピンホール性が得られ、また、含有割合が90質量%以下であることにより、十分な密着性が得られる。
【0051】
水溶性ポリウレタンは、洗浄性及び高温時の中間層(C)の強度の観点から、極性基を有することが好ましい。
極性基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒロドキシ基、アルコキシ基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基等のポリエーテル基;カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ウレア基、シアノ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシル基、又は水酸基を有する水溶性ポリウレタンが好ましい。
【0052】
中間層(C)は、水溶性ポリアミドを、さらに含んでもよい。
水溶性ポリアミドとしては、ポリアミド結合を有するポリマーであれば特に限定されず、炭素数4~40のラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸との等モル塩等が挙げられる。
前記ポリアミド結合を有するポリマーとしては、従来公知の可溶性合成高分子化合物を使用でき、たとえばポリエーテルアミド(たとえば特開昭55-79437号公報などを参照)、ポリエーテルエステルアミド(たとえば特開昭58-113537号公報などを参照)、三級窒素含有ポリアミド(たとえば特開昭50-76055号公報などを参照)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(たとえば特開昭53-36555号公報などを参照)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(たとえば特開昭58-140737号公報などを参照)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(たとえば特開平4-97154号公報などを参照)等が挙げられる。
これらの水溶性ポリアミドは、一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも中間層(C)に適度な硬度を付与できる三級窒素原子含有ポリアミド及びアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましく用いられる。
【0053】
中間層(C)における、水溶性ポリアミドの含有割合は、水分散性ラテックス100質量部に対して、10~700質量部であり、好ましくは15~600質量部であることが好ましく、20~500質量部であることがさらに好ましい。
水溶性ポリアミドの含有割合が10質量部以上であると中間層の膜強度を維持できるため、十分な耐ピンホール性が得られる。
また、水溶性ポリアミドの含有割合が700質量部以下であることにより、樹脂密着性を維持できる。
【0054】
(フレキソ印刷版用原版の他の形態)
本実施形態においては、支持体(A)と、感光性樹脂組成物層(B)と、中間層(C)と、アブレーション層(D)と、を、前記順序にて有し、前記中間層(C)が、塩基性窒素原子を含むモノマー単位とアルキレングリコール構造単位とを有するポリアミド共重合体を含む形態のフレキソ印刷版用原版が、好ましい他の形態として挙げられる。
かかる形態のフレキソ版印刷用原版においては、中間層(C)が効果的に感光性樹脂組成物層(B)への酸素の侵入を防止するため、酸素による重合障害を受けることがなく、かつ中間層(C)のHazeが低いため、優れた画像再現性が得られる。
【0055】
前記中間層(C)に含有される前記ポリアミド共重合体は、塩基性窒素を有する単量体と、下記に示すアルキレングリコール構造を有する単量体、及びジカルボン酸等の他の単量体との縮重合、重付加反応等を行うことにより得ることができる。
分子内に塩基性窒素原子を含むモノマー単位を含有するポリアミド共重合体は、主鎖又は側鎖の一部分にアミド基とは別に、塩基性窒素原子を含むモノマー単位を有するポリアミド共重合体であり、そのようなポリアミド共重合体としては、第3級窒素原子を主鎖中に有するポリアミドが好ましい。
塩基性窒素としては、ピペラジンやN,N-ジアルキルアミノ基が好ましく、より好ましくはピペラジンである。
【0056】
これらポリアミド共重合体を得るために用いる塩基性窒素を有する単量体については、例えば、N,N'-ビス(アミノメチル)-ピペラジン、N,N'-ビス(β-アミノエチル)-ピペラジン、N,N'-ビス(γ-アミノベンジル)-ピペラジン、N-(β-アミノエチル)ピペラジン、N-(β-アミノプロピル)ピペラジン、N-(ω-アミノヘキシル)ピペラジン、N-(β-アミノエチル)-2,5-ジメチルピペラジン、N,N-ビス(β-アミノエチル)-ベンジルアミン、N,N-ビス(γ-アミノプロピル)-アミン、N,N'-ジメチル-N,N'-ビス(γ-アミノプロピル)-エチレンジアミン、N,N'-ジメチル-N,N'-ビス(γ-アミノプロピル)-テトラメチレンジアミン等のジアミン類;N,N'-ビス(カルボキシメチル)-ピペラジン、N,N'-ビス(カルボキシメチル)-メチルピペラジン、N,N'-ビス(カルボキシメチル)-2,6-ジメチルピペラジン、N,N'-ビス(β-カルボキシエチル)-ピペラジン、N,N-ビス(カルボキシメチル)-メチルアミン、N,N-ビス(β-カルボキシエチル)-エチルアミン、N,N-ビス(β-カルボキシエチル)-メチルアミン、N,N-ジ(β-カルボキシエチル)-イソプロピルアミン、N,N'-ジメチル-N,N'-ビス-(カルボキシメチル)-エチレンジアミン、N,N'-ジメチル-N,N'-ビス-(β-カルボキシエチル)-エチレンジアミンなどのジカルボン酸類、あるいはこれらの低級アルキルエステル;酸ハロゲン化物、N-(アミノメチル)-N'-(カルボキシメチル)-ピペラジン、N-(アミノメチル)-N'-(β-カルボキシエチル)-ピペラジン、N-(β-アミノエチル)-N'-(β-カルボキシエチル)-ピペラジン、N-カルボキシメチルピペラジン、N-(β-カルボキシエチル)ピペラジン、N-(γ-カルボキシヘキシル)ピペラジン、N-(ω-カルボキシヘキシル)ピペラジン、N-(アミノメル)-N-(カルボキシメチル)-メチルアミン、N-(β-アミノエチル)-N-(β-カルボキシエチル)-メチルアミン、N-(アミノメチル)-N-(β-カルボキシエチル)-イソプロピルアミン、N,N'-ジメチル-N-(アミノメチル)-N'-(カルボキシメチル)-エチレンジアミン等のω-アミノ酸等が挙げられる。
【0057】
前記ポリアミド共重合体を得るために用いる、分子内にアルキレングリコール構造単位を有する単量体としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造に由来するものが好ましく、特に水洗浄性の観点から、ポリエチレングリコールに由来するものが好ましい。
ポリアミド共重合体にポリアルキレン成分を含有させるためには、ポリアルキレングリコールの両末端をジアミンやジカルボン酸に変性したものを用いることが好ましい。ポリアルキレングリコールの両末端をジアミンに変性したものとしては、例えば、ビスアミノプロピルポリエチレングリコールが挙げられ、ポリアルキレングリコールの両末端をジカルボン酸に変性したものとしては、例えば、ビスカルボキシポリエチレングリコールが挙げられる。
この場合、アルキレングリコール構造単位の数平均分子量に関しては、特に限定されないが、水溶性の観点から400~4000が好ましい。
【0058】
これら塩基性窒素を有する単量体成分は、ポリアミド共重合体の全構成成分、すなわちジカルボン酸単位及びジアミン構造単位の和に対して、10~100モル%であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましい。この範囲にすることで、前記他の形態におけるフレキソ印刷版用原版において、中間層(C)の水洗浄性、膜強度を優れたものとすることができる。
【0059】
また、前記ポリアミド共重合体は、当該ポリアミド共重合体の各成分を単独で重合してブレンドする場合、すなわち塩基性窒素を有する単量体とアルキレングリコール構造を有する単量体を別々に、ジカルボン酸の単量体と縮重合、重付加反応して得たポリアミドをブレンドする場合に比べて、海島構造とならず均一層となることから、他の成分との相溶性に優れ、中間層(C)のHazeが低くなり、製版後の版の白抜き深度が確保できる。
【0060】
上述した他の形態のフレキソ印刷版用原版において、中間層(C)における、ポリアミド共重合体の含有割合は、感光性樹脂組成物層(B)からアブレーション層(D)へのモノマー等の移行を防ぐ観点から、中間層(C)全量に対し、5~80質量%であることが好ましい。より好ましくは10~70質量%であり、さらに好ましくは20~60質量%である。
また、上記範囲であることにより、タックが少なく取り扱いに優れ、かつ酸素による重合阻害を受けにくく、画像再現性に優れたフレキソ印刷版用原版が得られる。
【0061】
上述した他の形態のフレキソ印刷版用原版において、中間層(C)は、樹脂密着性及び耐ピンホール性を向上させるため、上記に記載した極性基を有する水分散性ラテックス及び極性基を有する水溶性ポリウレタンをさらに含んでもよい。
【0062】
(中間層(C)のその他の成分)
本実施形態のフレキソ印刷版用原版を構成する中間層(C)には、上述した水溶性ポリウレタン、水分散性ラテックス、水溶性ポリアミド、他の形態のフレキソ印刷版用原版におけるポリアミド共重合体の他、性能を損なわない範囲で他のポリマーを併用してもよい。
他のポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリイミド、シリコンゴム、ブチルゴム、及び、イソプレンゴム等が挙げられる。
水溶性ポリウレタン、水分散性ラテックス、水溶性ポリアミド、ポリアミド共重合体との相溶性の観点から、併用するポリマーも水溶性であることが好ましい。
これらのポリマーは、一種のみを単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
中間層(C)の作製方法としては、例えば、アブレーション層(D)上に塗布する方法が挙げられる。
前記アブレーション層(D)に、中間層(C)形成用の組成物を均一に塗布することを目的として、アブレーション層(D)の表面エネルギーと同等になるように、中間層(C)中にシリコーン化合物や界面活性剤を含有させてもよい。
【0064】
シリコーン化合物としては、特に分子構造が限定されるものではないが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサンを主鎖に有する化合物を好ましい化合物として挙げられる。また、ポリシロキサン構造を分子中の一部に有する化合物であってもよい。
さらに、ポリシロキサン構造に特定の有機基を導入した化合物を用いることができる。
具体的には、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入した化合物、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入した化合物、ポリシロキサンの片末端に有機基を導入した化合物、ポリシロキサンの側鎖と末端の両方に有機基を導入した化合物等が挙げられる。
感光性樹脂組成物層(B)からアブレーション層(D)へのモノマー等の移行を防ぐことができるという観点から、ポリエーテルを導入したシリコーン化合物を用いることが好ましい。
【0065】
ポリシロキサン構造に導入する有機基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、アリール基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、少なくとも1つのアリール基で置換された直鎖状あるいは分岐状アルキル基、ポリオキシアルキレン基(以下、ポリエーテル基ともいう)等が挙げられる。
【0066】
また、中間層(C)には、強度及び柔軟性を損なわない範囲で、その他の成分、例えば、界面活性剤、ブロッキング防止剤、離型剤、UV吸収剤、染料、顔料等を添加してもよい。
【0067】
中間層(C)の厚さは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。0.5μm以上であることにより、十分な中間層の強度が得られ、20μm以下であることによりレリーフ露光時の光の散乱により画像形成性の低下を十分に抑制することができる。0.5μm以上10μm以下がより好ましく、0.5μm以上5μm以下がさらに好ましい。
【0068】
感光性樹脂組成物層(B)は、レリーフ露光時、中間層(C)を介して紫外線に露光されるため、中間層(C)は、紫外線を透過する材料により形成されている必要がある。
中間層(C)の紫外線透過率は365nmの波長において、40%以上であることが好ましい。40%以上である場合、感光性樹脂組成物層(B)の硬化が十分に行われ、十分な画像形成を得ることができる。50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
【0069】
(アブレーション層(D))
本実施形態のフレキソ印刷版用原版のアブレーション層(D)は、紫外光を遮断し、描画時には赤外レーザー光を吸収し、その熱により瞬間的に一部又は融除するものが好ましい。これによって描画加工が可能であり、感光性樹脂組成物層(B)を露光硬化させる際にマスク画像の役割も果たす。前記露光が終了してから感光性樹脂組成物層(B)の未露光部を洗い出しする際に、このアブレーション層(D)も同時に除去される。
【0070】
アブレーション層(D)は、少なくとも、紫外から可視光領域の放射線を遮断し、赤外線領域の光を吸収し熱に変換する機能と紫外から可視領域の光を遮断する機能を有する材料と、その材料の系中への分散を補助する分散剤と、バインダーポリマーとからで構成される。また、これら以外の任意成分として、顔料分散剤、フィラー、シリコーンオイル、界面活性剤又は塗布助剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0071】
前記赤外線吸収機能と紫外光遮断機能を有する材料としては、フタロシアニン、置換フタロシアニン誘導体、シアニン、メロシアニン染料、及びポリメチン染料等の染料や、カーボンブラック、グラファイト、酸化クロム、酸化鉄等の顔料が挙げられる。これらの中でも、光熱変換率、経済性、取扱性の観点からカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの粒径は任意の範囲で選択可能であるが、一般に粒径が小さいほど赤外線に対する感度が高くなり、分散性が悪くなる。かかる観点から、カーボンブラックの粒径は、20nm以上80nm以下であることが好ましく、25nm以上70nm以下であることがより好ましく、30nm以上60nm以下であることがさらに好ましい。
【0072】
アブレーション層(D)におけるカーボンブラックの含有量は、アブレーション層(D)を描画加工する際の、使用レーザー光線による除去が可能な感度を確保する範囲内とすることが好ましい。
レーザー光線の感度は、アブレーション層(D)中に均一に分散しているカーボンブラック量が増加するほど高くなるが、カーボンブラック量が多くなりすぎて凝集等を起こすと逆に低下する傾向にある。このような観点から、アブレーション層(D)全体に対するカーボンブラックの含有割合は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
【0073】
アブレーション層(D)の非赤外線遮蔽効果としては、アブレーション層(D)の光学濃度が2以上となることが好ましく、光学濃度が3以上となることがより好ましい。光学濃度は、D200-II透過濃度計(GretagMacbeth社製)を用いて測定できる。また、光学濃度はいわゆる視感(ISO visual)であり、測定対象の光は400~750nm程度の波長領域である。
【0074】
アブレーション層(D)のバインダーポリマーとしては、特に限定されないが、酸変性したポリマーを用いることで、後述するアルカリ性現像液によって速やかに溶解し、又は分散させて除去することができる。さらに吸湿により皺が発生するのを防ぐことができるので好適に用いられる。
アブレーション層(D)の現像時間を短縮する他の方法としてはアブレーション層(D)を薄くする方法が挙げられる。一方、アブレーション層(D)の強度を十分に確保するためには、アブレーション層(D)の現像速度を向上させ、アブレーション層(D)の厚さを確保する方法がより好ましい。このような観点から、アブレーション層(D)が中性の水には難溶又は不溶で、アルカリ性の水に溶解又は分散する性質が必要となる。
【0075】
また、吸湿による皺の発生を抑制するという観点から前記酸変性したポリマーは非水溶性であることが好ましい。
なお、非水溶性とは、その物質1gを溶解するために100mL以上の水が必要になる特性を表す。
【0076】
酸変性したポリマーの酸性基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。この中でも吸湿性の低さや、合成及び入手の容易さの観点からカルボキシル基が好ましい。
【0077】
アブレーション層(D)に含まれる酸変性したポリマー用のポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂及びこれらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
これらのポリマーは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのポリマーの中でも酸性基による変性のしやすさと吸湿による皺の抑制という観点から、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂が好ましく、特にアクリル系樹脂が好ましい。
【0078】
アブレーション層(D)には、酸変性したポリマーとカーボンブラック以外にも、本発明の目的を逸脱しない範囲で任意の成分を添加することができる。
アブレーション層(D)の吸湿による皺の抑制、硬度向上、アブレーション層(D)と中間層(C)との密着性向上の観点から、前記酸変性したポリマーとは別種のポリマーを添加することが好ましい。
かかる観点から、前記別種のポリマーとしては、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーの共重合体から構成される共重合体、及び前記共重合体の水素添加物、及び前記共重合体の変性物が好ましい。
モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーの比率は任意に設定できる。一般的にはモノビニル置換芳香族炭化水素モノマーの比率が大きくなるほど硬度の向上には有効であり、共役ジエンモノマーの比率が大きくなるほど柔軟性の向上に有効である。かかる観点から、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーの割合は10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
具体的には、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体等が挙げられる。
共重合体としては交互共重合したもの、ランダム共重合したもの、ブロック共重合したもの、グラフト共重合したもののいずれでもよい。
変性剤としては、例えば、無水マレイン酸アミンによる変性等が挙げられる。
これらのポリマーは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのポリマーの添加量は上述した物性の発現という観点から、アブレーション層中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
また、カーボンブラックや酸変性したポリマーの添加割合を十分に確保する観点から80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0079】
(カバーシート(E))
本実施形態のフレキソ印刷版用原版は、アブレーション層(D)を保護してフレキソ印刷版用原版の取扱性を向上させる観点から、アブレーション層(D)の上にカバーシート(E)が積層されていることが好ましい。
本実施形態のフレキソ印刷版用原版に用いるカバーシート(E)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリアミドフィルム;等が挙げられる。
これらの中でも厚みが75~300μmの範囲の寸法安定なポリエステルフィルムが好ましい。
【0080】
〔フレキソ印刷版用原版の製造方法〕
本実施形態のフレキソ印刷版用原版は、以下の工程を含む製造方法によって製造することができる。
支持体(A)上に接着剤層を積層する工程;
カバーシート(E)にアブレーション層(D)を積層する工程;
アブレーション層(D)が積層されたカバーシート(E)の当該アブレーション層(D)の上に中間層(C)を積層する工程;
前記接着剤層の上に感光性樹脂組成物層(B)を積層し、前記カバーシート(E)に積層された中間層(C)が感光性樹脂組成物層(B)と面するように、該感光性樹脂組成物層(B)を支持体(A)とカバーシートとで挟み込む工程;
【0081】
支持体(A)上に接着剤層を積層する工程では、接着剤層の形成材料が支持体(A)にナイフコーター等によって塗布される。
接着剤層の形成材料は、塗布の作業性の観点から、トルエン等の有機溶媒に溶解された溶液であることが好ましく、固形分が5~40%の、有機溶媒に溶解された溶液であることがより好ましい。接着剤層の形成材料を塗布した後、乾燥することによって、接着剤層を有する支持体(A)を得ることができる。
【0082】
カバーシート(E)にアブレーション層(D)を積層する工程では、アブレーション層(D)を形成する材料をカバーシート(E)にナイフコーター等によって塗布する。
アブレーション層(D)の形成する材料は、塗布の作業性の観点から、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶媒に溶解された溶液であることが好ましく、固形分が5~30%の、有機溶媒に溶解された溶液であることがより好ましい。
アブレーション層(D)を形成する材料を塗布した後、乾燥することによって、アブレーション層(D)を有するカバーシート(E)を得ることができる。
【0083】
アブレーション層(D)が積層されたカバーシート(E)の該アブレーション層(D)の上に中間層(C)を積層する工程では、中間層(C)を構成する材料を、上記アブレーション層(D)を有するカバーシート(E)のアブレーション層(D)側にナイフコーター等によって塗布する。
中間層(C)を構成する材料を塗布した後、乾燥することによって、中間層(C)及びアブレーション層(D)を有するカバーシート(E)を得ることができる。
【0084】
感光性樹脂組成物層(B)を支持体(A)とカバーシート(E)とで挟み込む工程では、接着剤層(B)を有する支持体(A)と、中間層(C)及びアブレーション層(D)を有するカバーシート(E)とを、該接着剤層と該中間層(C)が感光性樹脂組成物層(B)と面するように、感光性樹脂組成物層(B)を支持体(A)とカバーシート(E)で挟み込み、加熱、及び圧縮成型し、フレキソ印刷版用原版を得る。
【0085】
〔フレキソ印刷版の製造方法〕
本実施形態のフレキソ印刷版用原版を用いたフレキソ印刷版の製造方法は、支持体(A)と、前記支持体(A)の上に配設される感光性樹脂組成物層(B)と、前記感光性樹脂組成物層(B)の上に配設される中間層(C)と、当該中間層(C)の上に配設されるアブレーション層(D)とを含むフレキソ印刷版用原版に対し、前記支持体(A)側から紫外線照射する工程と、前記アブレーション層(D)に赤外線を照射してパターンを描画加工した後の紫外線照射工程において、中間層(C)を経由して感光性樹脂組成物層(B)に紫外線照射を行い、前記アルカリ性現像液により、アブレーション層(D)、中間層(C)、及び未露光の感光性樹脂組成物層(B)を除去する。
その後、必要に応じて後露光処理する工程を行い、感光性樹脂組成物層(B)の硬化物による版(フレキソ印刷版)が得られる。
なお、剥離性付与の観点から、印刷版の表面をシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する液と接触させてもよい。
【0086】
支持体(A)側から紫外線照射する工程は、慣用の照射ユニットを使用して行うことができる。
紫外線としては、波長150~500nmの紫外線を使用でき、特に波長300~400nmの紫外線を好ましく使用できる。
光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯等を使用できる。
なお、この紫外線照射する工程は、アブレーション層(D)へパターンを描画加工する工程の前に行ってもよく、パターンを描画加工する工程の後に行ってもよい。
フレキソ印刷版用原版がカバーフィルム(E)を有している場合には、まずカバーフィルム(E)を剥離する。その後、アブレーション層(D)に赤外線をパターン照射して、感光性樹脂組成物層(B)上にマスクを形成する。好適な赤外線レーザーの例としては、ND/YAGレーザー(例えば、1064nm)又はダイオードレーザー(例えば、830nm)が挙げられる。
CTP製版技術に適当なレーザーシステムは市販されており、例えば、ダイオードレーザーシステムCDI Spark(ESKO GRAPHICS社)を使用できる。
このレーザーシステムは、フレキソ印刷版用原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザーの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザー装置に直接送信される。
上述したように、パターン描画した後、感光性樹脂組成物層(B)にマスクを介して紫外線を全面照射する。これは、版をレーザーシリンダに取り付けた状態で行うことができるが、一般的には版をレーザー装置から取り外し、慣用の照射ユニットを用いて照射する。照射ユニットは、支持体(A)側からの紫外線照射で用いたものと同様のユニットを使用できる。
本実施形態のフレキソ印刷版用原版の中間層(C)における紫外線の吸収量が多く、パターン露光工程において無視できない場合は、中間層(C)により吸収される紫外線量を予め勘案して適宜紫外線照射量を調整することが好ましい。
【0087】
次に、現像工程を行う。
現像工程においては、従来公知の方法を適用できる。
具体的には、上記のように感光性樹脂組成物層(B)を露光し、その後、現像液に浸漬し、ブラシ等により未露光部分を溶解又は掻き落とす方法、スプレー等により版面に現像液を作用させた後、ブラシ等により未露光部分を溶解又は掻き落とす方法等が挙げられる。
【0088】
未露光部を溶剤現像する場合、現像溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ヘプチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;テトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤にプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合したもの;水;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル類;等を好適に挙げることができる。
【0089】
未露光部を水系現像液で現像する場合、水系現像液は、水を主成分とする現像液であり、水そのものであってもよいし、例えば、水にノニオン性、アニオン性等の界面活性剤、及び、必要に応じてpH調整剤、洗浄助剤等を配合してなるものであってもよい。
【0090】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック附加物等が挙げられる。
【0091】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、平均炭素数8~16のアルキルを有する直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、平均炭素数10~20のα-オレフィンスルフォン酸塩、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が4~10のジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルフォン酸塩、平均炭素数10~20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基を有し、平均0.5~8モルのエチレンオキサイドを附加したアルキルエーテル硫酸塩、平均炭素数10~22の飽和又は不飽和脂肪酸塩等が挙げられる。
【0092】
また、pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、コハク酸ソーダ、酢酸ソーダ等が挙げられる。上記の中でも、水に溶かしやすいことから、ケイ酸ソーダが好ましい。
【0093】
さらに、現像液には洗浄助剤を添加してもよい。「洗浄助剤」とは、上記界面活性剤とpH調整剤とを併用して用いることにより、現像液の洗浄(現像)能力を高めるものを意味する。洗浄助剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアンモニウム塩類、パラフィン系炭化水素等が挙げられる。
【0094】
ノニオン性、アニオン性等の界面活性剤、pH調整剤、及び洗浄助剤からなる群より選択される1種以上は、現像液にそれぞれ、0.1~50質量%、好ましくは、1~10質量%の範囲で添加混合して使用することができる。
【0095】
現像に際しては、補助的に、超音波等で印刷原版に振動を与えたり、ブラシ等の機械的手段を用いて印刷原版の表面をこすったり、ノズルから現像液を噴射したりしてもよい。
【0096】
また、溶剤系及び/又は水系現像液中に、明るい印刷を得ることができ、インキ絡みやインキ転移性に優れるフレキソ印刷版を得る観点から、シリコーン成分を0.01%以上~5%添加してもよい。
シリコーン成分は、中間層(C)におけるシリコーン化合物と同様のものを使用することができる。シリコーン化合物の中でも、現像液に含ませるシリコーン成分としては、好ましくはアミノ基、ポリエーテル基、カルビノール基等で変性されたシリコーンオイルである。
【0097】
後処理露光としては、表面に波長300nm以下の光を照射する方法が挙げられる。必要に応じて、300nmよりも長波長の光を併用してもよい。
【実施例】
【0098】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
〔(1)実施例、比較例において用いた測定方法及び評価方法〕
((a)樹脂密着力の評価)
実施例及び比較例で製造したフレキソ印刷版用原版を、2.54cm×10cmの大きさに切り出した。これを、「感光性樹脂構成体」と称する。
この感光性樹脂構成体のカバーシートを剥離した後、アブレーション層に粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT-15、幅15mm)を互いが約5mm重なるように2列に貼り付け、その後、粘着テープをアブレーション層と感光性樹脂組成物層とが剥離する方向に剥がした。
このときの引っ張り強度を測定し、これを「樹脂密着力」とした。
初期の樹脂密着力を測定し、下記の基準により評価した。
また、感光性樹脂構成体を40℃・80%湿度の恒温槽に入れ、1か月後に同様の測定・評価を行った。
<樹脂密着力の評価基準>
◎:感光性樹脂組成物層の破壊が起きたもの
○:感光性樹脂組成物層の破壊は起きなかったが、引っ張り強度が100g/inch以上のもの ×:感光性樹脂組成物層の破壊が起きず、かつ引っ張り強度が100g/inch未満のもの なお、引っ張り強度の測定試験においては、粘着テープ側を180°の方向へ剥離し、Autograph AGS-100G(島津製作所製)を使用し、クロスヘッドスピード50mm/minで測定した。
【0100】
((b)耐ピンホール性(耐PH性)の評価)
実施例及び比較例で製造したフレキソ印刷版用原版を、10cm×10cmサイズに5枚切り出した。これを「サンプル」と称する。
これらサンプルにおいて、アブレーション層のカバーシートを除去した後、ライトテーブル上に置き、顕微鏡検査を行った。
アブレーション層において、長径20μm以上のサイズのピンホールの個数を数え、平均値を算出し、かつ(個/m2)の値を算出し、下記の1~5により評価した。
下記評価において、〇以上であれば実用上問題なく使用することができる。
<耐ピンホール性の評価基準>
◎:ピンホールの数が、平均2(個/m2)より少ない。
〇:ピンホールの数が、平均2(個/m2)以上で5個(個/m2)より少ない。
△:ピンホールの数が、平均5(個/m2)以上で10(個/m2)より少ない。
×:ピンホールの数が、平均10(個/m2)以上である。
【0101】
((c)べたつき性の評価)
実施例及び比較例で製造したフレキソ印刷版用原版を、2cm×10cmサイズに切り出した。これを「サンプル」と称する。
このサンプルにおいて、アブレーション層のカバーシートを剥離し、測定装置としてピクマタックテスタ(商標登録第5857095号、東洋精機)を用いて、直径5mmのプローブとアブレーション層の表面とを10mm/分の速度で4秒間接触させた後、10mm/分の速度でプローブをアブレーション層の表面から垂直方向に剥離する方法でタック性(べたつき性)を測定し、下記の基準により評価した。
<べたつき性の評価基準>
◎:タック力が、1N以下のもの
○:タック力が、1Nより大きく~2N以下のもの ×:タック力が、2Nより大きいもの
【0102】
〔(2)実施例及び比較例で用いた、支持体(A)と感光性樹脂組成物層(B)との積層体の製造方法〕
支持体(A)は以下の手順で作製した。
ネオペンチルグリコール624g、エチレングリコール93g、セバシン酸485g、イソフタル酸382gを、空気雰囲気中、反応温度180℃、10mmHgの減圧下で、6時間縮合反応させた。
その後、87gのトリレンジイソシアネートを加えて、さらに80℃で5時間反応させ、ポリオールを得た。
このようにして得られたポリオールの数平均分子量をゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定したところ、ポリスチレン換算で約32000であった。
次に、前記ポリオール:100質量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート:2質量部、トリメチロールプロパン(1モル)のトリレンジイソシアネート(3モル)付加物:17質量部、「バリファストイエロー」(オリエンタル化成製、商品名):5質量部、酢酸エチル:300質量部を混合し、均一な溶液を得た。
次に、125μmの膜厚のPETフィルム「A4100」(東洋紡績株式会社製、商品名)上に、乾燥後の塗布量が10~14g/m2となるように、ナイフコーターを用いて上記溶液を塗布した。
これを80℃で2分間乾燥させ、次に40℃雰囲気で3日間放置してウレタン系接着剤層を具備する支持体(A)を得た。
次に、前記支持体(A)と、感光性樹脂組成物層(B)との積層体の製造方法を下記に示す。
後述する<製造例2>で製造した感光性樹脂組成物を、120℃の熱プレス機を使用して、前記支持体(A)と粘着防止フィルム(シリコーン系剥離材が塗布されたPETフィルム)との間に投入し、加熱プレスして、1mmの厚さに成形し、支持体(A)と感光性樹脂組成物層(B)と粘着防止フィルムとの積層体(以下、積層体1と記載する。)を得た。
【0103】
〔参考例1~10、実施例11~13〕、〔比較例1~4〕
実施例及び比較例においては、フレキソ印刷版用原版を製造した。
【0104】
(参考例1)
<製造例1:感光性樹脂組成物層中に含有させる親水性共重合体(B-1)の合成>
撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に、水125質量部と、反応性乳化剤として(α-スルフォ(1-ノニルフェノキシ)メチル-2-(2-プロペニルオキシ)エトキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)のアンモニウム塩「アデカリアソープSE1025」(旭電化工業製)2質量部とを初期仕込みし、内温を80℃に昇温し、スチレン10質量部、ブタジエン60質量部、ブチルアクリレート23質量部、メタアクリル酸5質量部、及び、アクリル酸2質量部からなる単量体混合物とt-ドデシルメルカプタン2質量部の油性混合液と、水28質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、水酸化ナトリウム0.2質量部、(α-スルフォ(1-ノニルフェノキシ)メチル-2-(2-プロペニルオキシ)エトキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)のアンモニウム塩2質量部からなる水溶液を、それぞれ5時間及び6時間かけて一定の流速で添加した。
ついで、80℃の温度をそのまま1時間保って、重合反応を完了し、共重合体ラテックスを生成し、その後、冷却した。
さらに、生成した共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpHを7に調整した後、スチームストリッピング法により未反応の単量体を除去し、200メッシュの金網で濾過し、最終的に、ろ液の固形分濃度が40質量%になるように調整して後述する感光性樹脂組成物層中に含有させる親水性共重合体(B-1)の水分散液を得た。
【0105】
<製造例2:感光性樹脂組成物層(B)を構成する感光性樹脂組成物の合成>
前記<製造例1>で製造した親水性共重合体(B-1)110質量部と、エラストマー:スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体[D-KX405:クレイトン製]75質量部を、加圧ニーダーを用いて140℃の条件下で混合後、液状ポリブタジエン[LBR-352クラレ製]40質量部、液状カルボン酸変性アクリルポリマー[CB-3060:綜研化学製]5質量部、光重合性モノマー:1,9-ノナンジオールジアクリレート10質量部、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート10質量部、光重合開始剤:2,2-ジメトキシフェニルアセトフェノン5質量部、界面活性剤[ポリオキシエチレンアルキルエーテル(NT-12):第一工業製薬製]2質量部、及び、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール5質量部の混合物を、15分掛けて少しずつ加えて、加え終えた後、さらに20分混練し、感光性樹脂組成物を得た。
【0106】
<製造例3:アブレーション層(D)とカバーシートの積層体の作製>
カルボン酸変性アクリルポリマーであるUC-3510(東亞合成株式会社製、商品名、酸価70mgKOH/g、ガラス転移温度-50℃、数平均分子量2000)0.5質量部、赤外線吸収剤であるカーボンブラックの分散液として、ブラック分散液(2)(株式会社昭和インク工業所製、商品名、カーボンブラック40質量%及び分散剤7.5質量%の分散液)7.3質量部、スチレン-ブタジエン-スチレンエラストマーの水素添加物としてタフテック H1051(旭化成株式会社製、登録商標、スチレン含量42質量%)1.3質量部、シリコーン樹脂としてKF-351(信越化学工業株式会社製、商品名)0.4質量部、及びトルエン44質量部を混合し、アブレーション層形成用の塗工溶液を得た。
このアブレーション層形成用の塗工溶液を、カバーシートとなる約100μmの厚さのPETフィルムに、乾燥後の膜厚が3μmとなるようにコーティングし、90℃で2分間の乾燥処理を施して、アブレーション層とカバーシートとの積層体を得た。
【0107】
<中間層(C)とアブレーション層(D)とを有するカバーシートの製造>
水溶性ポリウレタンとしてWLS-202(DIC社製、商品名)を87質量部、水分散性ラテックスとしてXL-006(旭化成社製)を3質量部、離型剤としてKF-351A(信越化学社製)10質量部を、水とエタノールを75対25で混合した混合溶媒に溶解し、固形分濃度10%の均一な溶液を調製した。
この溶液を、上述のようにして製造したアブレーション層(D)とカバーシートの積層体の、アブレーション層形成面上に、乾燥後の厚さが2μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布し、90℃2分間乾燥して、アブレーション層(D)上に前記水溶性ポリウレタン及び水分散性ラテックスを含有する中間層(C)を積層したカバーシートを作製した。
【0108】
<中間層(C)を有するフレキソ印刷版用原版の製造>
次に、上述のようにして製造した「支持体(A)と感光性樹脂組成物層(B)との積層体1」、「中間層(C)とアブレーション層(D)とを有するカバーシート」を用いて、中間層(C)を有するフレキソ印刷版用原版を製造した。
前記「支持体(A)と感光性樹脂組成物層(B)との積層体1」から粘着防止フィルムを剥がし、「中間層(C)とアブレーション層(D)とを有するカバーシート」の中間層(C)側を感光性樹脂組成物層(B)に面するように、支持体(A)とカバーシートで挟み込み、全体が1.5mmになるように、120℃で加熱及び圧縮成型し、フレキソ印刷版用原版を得た。
実施例1で作製したフレキソ印刷版用原版は、柔軟であり、良好な水現像性を示した。
また、耐ピンホール性、樹脂密着力、べたつき性の結果を、表5に示す。
また、印刷パターンを作製したところ、優れた版再現性が得られた。
【0109】
(参考例2-4)、(比較例1)
前記(参考例1)の<中間層(C)とアブレーション層(D)を有するカバーシートの製造>において、水溶性ポリウレタン(WLS-202)と水分散性ラテックス(XL-006)の混合比を変更した。
その他の条件は、(参考例1)と同様にして、表1~表4に示す中間層組成を有するフレキソ印刷版用原版を得た。
【0110】
(参考例5~10)、(比較例2,3)
前記(参考例1)の(中間層(C)とアブレーション層(D)とを有するカバーシートの製造)において、水溶性ポリウレタンの種類、及び水分散性ラテックス(旭化成社製、XL-006)との混合比を変更した。
その他の条件は、(参考例1)と同様にして、表1~表4に示す中間層組成を有するフレキソ印刷版用原版を得た。
【0111】
(実施例11~13)
前記(参考例2)の(中間層(C)とアブレーション層(D)とを有するカバーシートの製造)において、水溶性ポリウレタンの一部を水溶性ポリアミド(東レ社製、AQナイロンT-70)に置換した。
その他の条件は、参考例2と同様にして、表1~表4に示す中間層組成を有するフレキソ印刷版用原版を得た。
【0112】
(比較例4)
前記(参考例2)の(中間層(C)とアブレーション層(D)とを有するカバーシートの製造)において、水分散性ラテックスを、(ZEON社製、LX-111NF)に変更した。
その他の条件は、(参考例2)と同様にして、表1~表4に示す中間層組成を有するフレキソ印刷版用原版を得た。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
下記表5~表8に、参考例1~10、実施例11~13、比較例1~4のフレキソ印刷版用原版の特性の評価結果を示す。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のフレキソ印刷版用原版は、フレキソ印刷版製造用の原版として、産業上の利用可能性がある。