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特許7458477組織と光源の両方を冷却する組織処理システム用冷却システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】組織と光源の両方を冷却する組織処理システム用冷却システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20240322BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20240322BHJP
   A61F 7/10 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61N5/067
A61N5/06 Z
A61F7/10 321
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022516044
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2020050074
(87)【国際公開番号】W WO2021050647
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】16/569,693
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398001791
【氏名又は名称】キャンデラ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】ショーマッカー, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】デュビツキー, ディマ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0182397(US,A1)
【文献】特表2008-529746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0254744(US,A1)
【文献】特表2019-514517(JP,A)
【文献】特開平09-187522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06-5/067
A61F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、冷却流体を収容するためのリザーバと、を有するベースユニットと、
ケーブルを介して前記ベースユニットに接続されたアプリケータであって、処理のために生体組織と係合するように構築及び配置され、それと関連付けられたチャネル構造を備えた組織冷却要素と、前記電源を動力源とし、前記組織冷却要素に導かれることで前記生体組織に導かれる光エネルギーを生成するように構築及び配置された光源と、を備えたアプリケータと、
前記組織冷却要素に冷却流体を第1の温度で送出して、前記生体組織を冷却する、前記リザーバと前記組織冷却要素の前記チャネル構造との間の第1の流体通路であって、前記冷却流体が前記生体組織との熱交換で第2の温度に加熱されるようになっている第1の流体通路と、
前記冷却流体を前記リザーバに戻す、前記チャネル構造と前記リザーバとの間の第2の流体通路であって、前記冷却流体を前記リザーバに戻される前に前記第2の温度で前記光源に導いて前記光源を冷却するように構築及び配置された第2の流体通路と、
を備え、
前記第1及び第2の流体通路は、前記組織冷却要素と前記光源の両方を順次に冷却する単一の冷却流体循環ループを画定し、前記第1及び第2の流体通路の各々の一部は、前記ケーブル内に配置されている組織処理システム。
【請求項2】
前記組織冷却要素は、ライトガイド又は透明窓である請求項1のシステム。
【請求項3】
前記冷却流体は、水又は不凍剤である請求項1のシステム。
【請求項4】
前記光源は、フラッシュランプ、フラッシュランプ及びレーザロッド、又はダイオードレーザである請求項1のシステム。
【請求項5】
前記リザーバから前記冷却流体を圧送するためのポンプを更に備え、前記ポンプによって圧送される前記冷却流体の温度を周囲温度に近い温度に維持するように構築及び配置された熱交換器を更に備えている請求項1のシステム。
【請求項6】
前記熱交換器は、ラジエータを備えている請求項5のシステム。
【請求項7】
前記リザーバから前記冷却流体を圧送するためのポンプを更に備え、前記ポンプによって圧送される前記冷却流体の温度を周囲温度未満の温度に維持するように構築及び配置された冷却モジュールを更に備えている請求項1のシステム。
【請求項8】
前記冷却モジュールは、熱電冷却モジュール又はコンプレッサ冷却装置システムを備えている請求項7のシステム。
【請求項9】
前記光源は、ダイオードレーザであり、前記第2の流体通路は、前記ダイオードレーザ内のチャネルと連通している請求項1のシステム。
【請求項10】
前記光源は、フラッシュランプ及びレーザロッドを備え、前記光源は、前記第2の流体通路によって作られた前記冷却流体の浴槽内に配置されている請求項1のシステム。
【請求項11】
前記第2の流体通路内に設けられ、前記冷却流体を前記光源に至る前に加熱する熱源を更に備えている請求項1のシステム。
【請求項12】
前記熱源は、ヒータ又はラジエータである請求項11のシステム。
【請求項13】
前記組織冷却要素の前記チャネル構造は入口を有し、前記チャネル構造は前記組織冷却要素を貫通して前記チャネル構造の出口まで延び、前記第1の流体通路は前記リザーバと前記チャネル構造の前記入口との間にあり、前記第2の流体通路は前記チャネル構造の前記出口と前記リザーバとの間にある請求項1のシステム。
【請求項14】
電源と、冷却流体を収容するためのリザーバと、を有するベースユニットと、
ケーブルを介して前記ベースユニットに接続されたアプリケータであって、前記電源を動力源とし、光エネルギーを生成するように構築及び配置された光源と、前記光エネルギーを生体組織に導くために前記光源に隣接して配置され、処理のために前記生体組織と係合するように構築及び配置されたライトガイドと、低温側及び高温側を有し、前記低温側が前記ライトガイドと関連付けられている少なくとも1つの熱電クーラと、前記熱電クーラの前記高温側に取り付けられた少なくとも1つの高温側プレートと、を備えたアプリケータと、
前記高温側プレートに冷却流体を送出して、前記冷却流体を第1の温度に冷やすとともに前記熱電クーラの前記低温側を冷やすことで、前記ライトガイドを冷却して前記生体組織を冷却する、前記リザーバと前記高温側プレートとの間の第1の流体通路構造であって、前記冷却流体が前記生体組織との熱交換で第2の温度に加熱されるようになっている第1の流体通路構造と、
前記冷却流体を前記リザーバに戻す、前記高温側プレートと前記リザーバとの間の第2の流体通路構造であって、前記冷却流体を前記リザーバに戻される前に前記第2の温度で前記光源に導いて前記光源を冷却するように構築及び配置された第2の流体通路構造と、
を備え、
前記第1及び第2の流体通路構造は、前記ライトガイドと前記光源の両方を順次に冷却する単一の冷却流体循環ループを画定し、
前記第1及び第2の流体通路構造の各々の一部は、前記ケーブル内に配置されている組織処理システム。
【請求項15】
前記ライトガイドは、プリズムである請求項14のシステム。
【請求項16】
前記熱電クーラの前記低温側は、前記プリズムに直接取り付けられている請求項15のシステム。
【請求項17】
前記熱電クーラの前記低温側に取り付けられた第1の部分と、前記プリズムに取り付けられた第2の部分と、を有する少なくとも1つの低温側プレートを更に備え、前記高温側プレートは、前記光源の一部に取り付けられ、
前記第1の流体通路構造は、前記冷却流体を前記高温側プレートに送出して、前記熱電クーラの前記低温側及び前記低温側プレートを冷やすことで前記ライトガイドを冷却するように構成されている請求項15のシステム。
【請求項18】
2対のプレート及び2つの熱電クーラが設けられ、各対のプレートは、低温側プレート及び高温側プレートを備え、関連付けられている低温側プレートと高温側プレートとの間に1つの熱電クーラが配置された状態になっており、前記第1の流体通路構造は、各高温側プレートに冷却流体を送出して、各低温側プレートを冷やすことで前記ライトガイドを冷却するように前記リザーバと各高温側プレートとの間に配置され、前記第2の流体通路構造は、前記冷却流体を前記リザーバに戻すように各高温側プレートと前記リザーバとの間に配置され、前記第2の流体通路構造は、冷却流体を前記リザーバに戻される前に各高温側プレートから前記光源に導くように前記光源と関連付けられている請求項17のシステム。
【請求項19】
前記冷却流体は、水又は不凍剤である請求項14のシステム。
【請求項20】
2つの熱電クーラ及び2つの高温側プレートが設けられ、前記第1の流体通路構造は、各高温側プレートに冷却流体を送出して、各熱電クーラの前記低温側を冷やすことで前記ライトガイドを冷却するように前記リザーバと各高温側プレートとの間に配置され、前記第2の流体通路構造は、前記冷却流体を前記リザーバに戻すように各高温側プレートと前記リザーバとの間に配置され、前記第2の流体通路構造は、冷却流体を前記リザーバに戻される前に各高温側プレートから前記光源に導くように前記光源と関連付けられている請求項14のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、脱毛処理及び/又はレーザ皮膚処理用などの組織処理システムに関し、より具体的には、処理中の組織と組織処理システムの光源の両方を冷却するための単一の冷却システムを提供する組織処理システム用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
組織処理システム用の従来のアプリケータ又はハンドピースは、そのシステムの光源から、また場合によっては処理パルスを送達する前の前冷却のため又は処理パルスから加えられた熱を除去する後冷却のためなどで処理中の組織から、熱を除去するクーラント流を必要とする。
【0003】
光源と組織の両方を冷却する必要がある従来の処理システムでは、別個のクーラントシステムが使用されている。したがって、これらのシステムは、典型的には、アプリケータとクーラント源との間に接続された単一のアンビリカルケーブル内に4つのクーラントラインを備えている。2つの送りクーラントラインと、2つの戻りクーラントラインと、がある。第1の送りクーラントラインは、クーラントをクーラント源から、被処理組織に係合することでこの組織を冷却する構造に送出する。第1の戻りクーラントラインは、この構造からクーラントをクーラント源に戻す。第2の送りクーラントラインは、クーラントをクーラント源から、フラッシュランプ、フラッシュランプ及びレーザロッド、又はレーザダイオードなどの光源の近くに送出して、光源を冷却して光源を所望の温度に維持する。第2のクーラント戻りラインは、光源を冷却したクーラントをクーラント源に戻す。この4つのクーラントラインを備えた従来のクーラントシステムは、結果的にアンビリカルケーブルが嵩張ってしまい、操作者が取り扱いにくく、またこのようなシステムは、材料コスト及び組立コストが増加する。
【0004】
したがって、被処理組織と光源の両方を冷却することができるクーラントラインを2つだけ有する組織処理システム用冷却システムを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本実施形態の1つの目的は、上記の必要を満たすことである。一実施形態の原理によれば、この目的は、電源と、冷却流体を収容するためのリザーバと、を有するベースユニットを備えた組織処理システムによって達成される。アプリケータがケーブルを介して前記ベースユニットに接続されている。前記アプリケータは、処理のために生体組織と係合するように構築及び配置された組織冷却要素であって、その内部を通るチャネル構造を備えた組織冷却要素と、前記電源を動力源とし、前記組織冷却要素に導かれることで前記生体組織に導かれる光エネルギーを生成するように構築及び配置された光源と、を備えている。第1の流体通路が前記リザーバと前記組織冷却構造の前記チャネル構造との間に設けられて、前記組織冷却構造を通して前記冷却流体を送出する。第2の流体通路が前記チャネル構造と前記リザーバとの間に設けられて、前記冷却流体を前記リザーバに戻す。前記第2の流体通路は、冷却流体を前記リザーバに戻される前に前記光源に導くように前記光源と関連付けられている。前記第1及び第2の流体通路は、前記組織冷却要素と前記光源の両方を冷却する単一の冷却流体循環ループを画定している。前記第1及び第2の流体通路の各々の一部は、前記ケーブル内に配置されている。
【0006】
一実施形態の別の態様によれば、組織処理システムは、電源と、冷却流体を収容するためのリザーバと、を有するベースユニットを備えている。アプリケータがケーブルを介して前記ベースユニットに接続されている。前記アプリケータは、前記電源を動力源とし、光エネルギーを生成するように構築及び配置された光源と、前記光エネルギーを生体組織に導くために前記光源に隣接して配置されたライトガイドと、低温側及び高温側を有し、前記低温側が前記ライトガイドと関連付けられている少なくとも1つの熱電クーラ(熱電冷却器)と、前記熱電クーラの前記高温側に取り付けられた少なくとも1つの高温側プレートと、を備えている。第1の流体通路構造が前記リザーバと前記高温側プレートとの間に設けられて、前記高温側プレート上に冷却流体を送出して、前記熱電クーラの前記低温側を冷やすことで前記ライトガイドを冷却して、前記生体組織を冷却する。第2の流体通路構造が前記高温側プレートと前記リザーバとの間に設けられて、前記冷却流体を前記リザーバに戻す。前記第2の流体通路構造は、冷却流体を前記リザーバに戻される前に前記光源に導くように前記光源と関連付けられている。前記第1及び第2の流体通路構造は、前記ライトガイドと前記光源の両方を冷却する単一の冷却流体循環ループを画定している。前記第1及び第2の流体通路構造の各々の一部は、前記ケーブル内に配置されている。
【0007】
一実施形態の更に別の態様によれば、組織処理システムを冷却する方法が提供される。前記システムは、電源と、冷却流体を収容するためのリザーバと、を有するベースユニットを備えている。アプリケータがケーブルを介して前記ベースユニットに接続されており、前記アプリケータは、前記電源を動力源とし、光エネルギーを生成するように構築及び配置された光源と、前記光エネルギーを生体組織に導くために前記光源に隣接して配置された組織冷却要素と、を備えている。前記組織冷却要素の一部は、前記生体組織と接触するように構成されている。前記方法は、前記リザーバから、前記組織冷却要素と関連付けられるように延在する、第1の流体通路構造を設ける。前記冷却流体は、前記第1の通路構造を通して送出されて、前記組織冷却要素を冷やすことで前記生体組織を冷却する。第2の流体通路構造が前記組織冷却要素から前記リザーバまで設けられて、前記冷却流体を前記リザーバに戻す。前記第2の流体通路構造は、前記光源と関連付けられている。前記冷却流体を前記リザーバに戻す前に、前記冷却流体は、前記第2の通路構造を通して前記光源に導かれて、前記光源を冷却する。前記第1及び第2の流体通路構造は、前記組織冷却要素と前記光源の両方を冷却する単一の冷却流体循環ループを画定している。前記第1及び第2の流体通路構造の各々の一部は、前記ケーブル内に配置されている。
【0008】
本実施形態のその他の目的、特徴及び特性、並びに動作方法及び構造の関係要素の機能、部品の組み合わせ及び製造の経済性は、付属の図面を参照して下記の詳細な説明及び添付の請求項を考慮することでより明らかになり、これらは全て本明細書の一部を成す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に従って提供される組織処理システムの概略説明図である。
図2図1の組織処理システムの冷却システムの一部の拡大図である。
図3図1の組織処理システムのアプリケータの部分断面側面図であり、処理中の組織に係合した様子を示す。
図4A図3のアプリケータにおける冷却流体チャネル群を備えたチルドチップの平面図である。
図4B図4Aのチルドチップの端面図である。
図5】一実施形態のアプリケータのチルドチップ及び光源を通って冷却流体を循環させる経路を示す概略説明図である。
図6図5の冷却流体を循環させる経路内のヒータ又はラジエータを示す概略説明図である。
図7A】熱電クーラ群及びそれらと関連付けられた冷却プレート群を備えた、アプリケータの光源及びライトガイドの一実施形態の概略的な側面説明図である。
図7B図7Aの平面図である。
図8】熱電クーラ群及びそれらと関連付けられた高温側プレート群のみを備えた、アプリケータの光源及びライトガイドの別の実施形態の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、全体的に10で示された、生体組織を処理(処置、治療)するための組織処理システム(組織処置システム、組織治療システム)の一実施形態が示されている。システム10を使用して、皮膚又は髪などの標的生体組織に放射線を非侵襲的に送達することができる。システム10は、ベースユニット12と、全体的に14で示された送達システムと、を備えている。図示の実施形態では、送達システム14は、アンビリカルケーブル16及びアプリケータ18を備えている。アプリケータ18は、ハンドピースなどの手持ち型の装置とすることができ、使用者によって把持又は操作されて、アプリケータ18内に設けられた光源19を介して標的組織に照射することができる。一実施形態では、光源19によって提供される光エネルギーが、送達システム14を介して標的組織に導かれる。
【0011】
ベースユニット12はアンビリカルケーブル16に結合され、アンビリカルケーブル16は送達モジュール14に接続されている。ベースユニット12は、光源19を含む様々なシステム構成要素に電力を供給する電源20を備えている。光源19は、光ビームL(図3)などの光エネルギーを標的組織に放射するための、インテンスパルスライト(超短パルス光)(IPL)システムで使用されるフラッシュランプ、固体レーザシステムで使用されるフラッシュランプ及びレーザロッド、又はダイオードレーザシステムで使用されるダイオードレーザとすることができる。フットペダル(図示せず)、又はアプリケータ18上のフィンガースイッチを採用して光源19を制御することができる。ベースユニット12は、光源19に結合されたコントローラ24も備えており、コントローラ24はユーザインターフェースに結合することができる。コントローラ24はプロセッサ回路25を備えている。
【0012】
ベースユニット12は、水又は不凍剤(不凍液)などのクーラント(冷却液)又は冷却流体30を収容したリザーバ(容器)29を備えた冷却システム26を備えている。不凍剤は、光エネルギーに対する吸収作用が最小限となるものを選ぶべきであり、又は光がサファイアのみを通過し不凍剤を通過しない流体チャネルとともに働くように設計すべきである。図2を参照すると、冷却システム26は、ポンプ31を好ましくはリザーバ29内に備えており、ポンプ31は、熱交換器32を通して冷却流体30を圧送し、冷却流体30は、第1の流体通路34を介してアプリケータ18に送出され、第2の流体通路36を介してポンプ31に戻される。流体通路34及び36の一部はアンビリカルケーブル16内に配置されている。熱交換器32は、好ましくは、冷却流体30を周囲温度(環境温度、気温、室温)に近い温度又は周囲温度より高い温度に維持する、ファンと組み合わされたラジエータである。熱交換器32を設ける代わりに、冷却モジュール32’を設けることもできる。冷却モジュール32’は、周囲温度未満の温度に冷却流体30を維持する熱電冷却モジュール又はコンプレッサ冷却装置システムとすることができる。
【0013】
図3を参照すると、組織処理平面40内に位置する組織38は、処理平面40内に位置する組織38と接触しているアプリケータ18の部分によって冷却される。光(レーザ)エネルギー処理の過程で真皮及びより深い皮膚層を加熱しながら表皮の効果的な冷却が行われなければ、処理対象に不要な痛みを引き起こすおそれがあり、またもしかすると不要な皮膚損傷を引き起こすおそれがある。
【0014】
アプリケータ18は、後述するように、組織38からの熱をこの組織上に直接置かれた組織冷却要素(組織冷却素子)又はチルドチップ(冷却された先端)42に伝導することによって、この組織に接触冷却を提供する。図3に示されるように、アプリケータ18は、基端部(近位端部)46及び先端部(遠位端部)48を有するハウジング44を備えている。支持構造50が、先端部48から延びたフレーム52で終端となるように設けられている。支持構造50は、アプリケータ18の対称軸Aに対して傾いており、又はアプリケータの対称軸Aに対して垂直ではなく(off normal)、皮膚処理平面40又は処理対象の皮膚領域46に対する視線(見通し)を向上させる。支持構造50が傾いている角度56の余角は、10度から30度であってよく、通常この角度は約15度であってよい。
【0015】
チルドチップ42は、好ましくは透明なサファイア又はクオーツから作られた窓の形とすることができる。支持構造50のフレーム52は、チルドチップ42を受容する矩形又はオーバル形(楕円形)のスロット(溝)を備えている。RFエネルギーを光エネルギーと組み合わせて処理効果を得る用途に関しては、支持構造50は、良好な高温又は低温の熱伝導特性、及びRF電気伝導特性を支援する、金属又はその他の材料で作られる。チルドチップ42は、互いに連通した2つの冷却流体チャネル58及び60の形をしたチャネル構造(流路構造)を備えている。典型的には、冷却流体30は、支持構造50の一方の側に配置された第1の通路構造を通して送出され、両チャネル58及び60を通過させられ、その後支持構造50の他方の側に配置された第2の通路構造を介して戻される。あるいは、チャネル58を入口チャネルとみなすこともでき、チャネル60を出口チャネルとみなすこともできる。チルドチップ42を通して設けられた冷却流体チャネル58及び60は、流体通路34及び36と流体連通している。したがって、リザーバ29からの冷却流体30は、ポンプ31によって流体通路34を通してチルドチップ42の冷却流体チャネル58に圧送されて、チルドチップ42を冷却することで、このチルドチップと接触している組織を冷却する。チルドチップ42に入る前は、冷却流体30は約5℃から約20℃の温度である。熱を吸収した冷却流体29は、約20℃から約50℃の温度で冷却流体チャネル60を介してチルドチップ42から出て、流体通路36を介してリザーバ29に戻される。冷却流体チャネル58及び60は、それぞれ流体通路34及び36の一部とみなすことができる。
【0016】
図4A及び図4Bは、概して円形の断面を有する連通冷却流体チャネル58及び60を備えた組織冷却要素又はチルドチップ42の一例を示す。米国特許出願公開第2017/0304645号に開示されているような他の形状のチャネル58、60を採用してもよく、この米国特許出願の内容は参照することにより本明細書に含まれる。冷却流体チャネル58及び60を備えたチルドチップ42は、冷却された又は冷やされた冷却流体30(例えば、水が好ましいが、不凍剤でもよい)を、皮膚(図3を参照)に接触しているチルドチップ42に直接送出し、またそれを通して送出する。冷却された又は冷やされた水が皮膚表面と近接していることで、チルドチップ42の熱抵抗が減少する。チルドチップの設計の最適化によって、1K/W弱の熱抵抗が容易に得られる(比較として、熱電クーラ(TEC)で冷却されるチルドチップの設計では、熱抵抗は典型的には約8K/Wである)。一般に、冷却流体チャネル58、60は、流体と透明窓材料との間の屈折率の不一致による界面でのレンズ効果を回避するために、透過光路の近くではあるがその外側に配置される。
【0017】
チルドチップ42は、組織38と接触するためのサファイアプレートと、より低熱伝導性のガラスプレートと、の2つのプレートを備えており、冷却流体30がこれらの2つのプレートの間に画定されるチャネル構造内を流れるように構成することができる。ガラスプレートは、光源19に面する上面での凝結(結露)を最小限にする。
【0018】
図3を参照すると、光源19とチルドチップ42との間にはライトガイド62を設けることができる。ライトガイド62は、光源19からの光をチルドチップ42へと反射することで組織38へと反射するミラー壁を備えた中空円錐の形とすることができる。あるいは、ライトガイド62は、光学プリズム又は導波路であってもよい。したがって、光源19からの光エネルギーのビームLは、ライトガイド62を通り、チルドチップ42を通って、組織38に導かれて、皮膚処理平面40上の組織38と接触しているチルドチップ42によって画定される領域54において皮膚又は組織に照射される。チルドチップ42は、ライトガイド62の一部とみなすことができる。
【0019】
ケーブル64は、アプリケータハウジング44の基端部46から延びており、アプリケータ18を電源20及びコントローラ24に接続している。
【0020】
使用時は、アプリケータ18を皮膚又は組織処理平面40に当て、光エネルギーのビームLを活性化して、チルドチップ42を通して処理エネルギーを皮膚又は組織処理平面40に印加することができる。チルドチップ42、したがってチルドチップ42に接触している組織38は、上述のようにチルドチップ42を通って循環する冷却流体30を介して冷却される。
【0021】
有利には、本実施形態によれば、2つの流体通路34、36を採用して光源19も冷却することができる。図3に示されるように、また図5に最も良好に示されるように、冷却流体30がチルドチップを通過した後に、光源19の少なくとも一部を通り又は光源19の少なくとも一部に隣接して流体通路36が設けられて、その光源19の一部を通して又はその光源19の一部の上に冷却流体30が導かれる。光源19がフラッシュランプ及びレーザロッドを備えている場合、光源19は、流体通路36によって作られた冷却流体30の浴槽内(冷却流体槽内)に置くことができる。光源がダイオードレーザの場合、冷却流体は、通路36を介して光源19内の小さな流体チャネル群66を通して導かれて、ダイオードレーザバー群及びダイオードレーザスタック群を冷却することができる。図5に示されるように、冷却流体30は、約20℃から約50℃の温度で光源に進入する。したがって、流体通路34及び36は、リザーバ29とチルドチップ42と光源19との間で単一の冷却流体循環ループを画定する。
【0022】
図6は、冷却システムの別の実施形態を示しており、該システムは、図5の実施形態と同様であるが、流体通路36内にヒータ又はラジエータ68などの熱源が設けられている。したがって、組織冷却には5℃、光源冷却には25℃というような、組織冷却と光源冷却との間に大きな温度差が存在するシステムでは、ヒータコイル又はラジエータ68を設けて、光源19に進入する前に冷却流体30の温度を上昇させる又は制御することができる。
【0023】
図7Aは、冷却システムの別の実施形態の側面図であり、該システムは、光源19と、ライトガイド62’の形をした組織冷却要素、好ましくはプリズムの形をした導波路と、を有している。透明窓は設けられていない。図7Bは、図7Aの上面図又は平面図である。光源19の少なくとも1つの側面(側部)に概して隣接して熱電クーラ(TEC)70が設けられている。本実施形態では、TEC70は、光源の反対側の各側面(側部)に概して隣接して設けられている。高温側プレート72と低温側(冷温側)プレート72’とがそれぞれ各TEC70を挟み、高温側プレート72が光源19の各側面(側部)に接触している。また、各高温側プレート72は、各熱電クーラ70の高温側(高温側面)73に接触している。各低温側プレート72’の第1の部分75は、関連付けられた熱電クーラ70の低温側(低温側面)77に取り付けられ、各低温側プレート72’の第2の部分79は、ライトガイド62’(図7A)に直接取り付けられている。図7Bを参照すると、リザーバ29からの冷却流体30は、第1の流体通路構造74を介して各高温側プレート72上に導かれて、低温側プレート72’を冷やす。低温側プレート72’は、ライトガイド62’を冷却して、処理中の組織を冷却する。高温側プレート72から離れると、冷却流体は、第2の流体通路構造76を介して光源19内に導かれて、光源19を冷却する。ここでより高温になった冷却流体30は、次に光源19を出て、第2の流体通路構造76を介してリザーバ29に導かれて戻される。図3の実施形態と同様に、第1の通路構造74及び第2の通路構造76の各々の一部は、ケーブル16を通って延びている。
【0024】
図8は、光源19及びライトガイド62’を冷却するための更に別の実施形態を示す。この場合も同様に、組織冷却要素又はライトガイド62’は、好ましくはプリズムの形をした導波路である。この実施形態では、透明窓は設けられず、低温側プレートも設けられていない。その代わりに、TEC70の低温側(低温側面)80が導波路62’に直接取り付けられている。この構成は、低温側プレートを使用するのと比べて、より低い熱抵抗しか存在しないので、より効率的である。冷却流体30は、リザーバ29から第1の通路構造74を介して送出され、高温側プレート72を通過し、又は高温側プレート72の上を流れて、TEC70の低温側80を冷却して導波路62’を冷却し、これにより処理中の組織を冷却する。その後、冷却流体30は、光源19を通過して光源を冷却する。冷却流体30は、流体通路構造76を介してリザーバ29に戻る。図7の実施形態と同様に、第1の通路構造74及び第2の通路構造76の各々の一部は、ケーブル16(図8には示さず)を通って延びている。
【0025】
システム10は、多様な用途に採用することができるが、好ましくは脱毛に使用される。脱毛での使用に関しては、光源19は、好ましくは、755nmのアレキサンドライトレーザ、約800nm、好ましくは805nm又は810nmで動作させられる半導体ダイオードレーザ、及び、好ましくは約4mmの深さに採用される1064nmのNd:YAGレーザのうちの1つである。光源19の選択は、所望の処理の種類によって決まる。
【0026】
したがって、上述の実施形態の冷却システムを有する組織処理システム10は、アプリケータ18と冷却流体リザーバ29との間で単一の送り流体通路34及び単一の戻り流体通路36を使用して、処理中の組織38と光源19の両方を冷却する効果的な手法を提供する。したがって、アンビリカルケーブル16が嵩張らず、必要な冷却配管が少なくなり、コストが減少する。
【0027】
上述の好適な実施形態は、本発明の構造的かつ機能的な原理を解説するため、並びに好適な実施形態を採用する方法を解説するために図示して説明したものであり、このような原理から逸脱することのない変更の対象となる。したがって、本発明は、下記の請求項の主旨の範囲に包含される全ての変形を含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8