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  • 特許-金属錯体及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】金属錯体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20240322BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240322BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240322BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240322BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240322BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20240322BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240322BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
H05B33/14 B
H05B33/22 B
C09K11/06 660
H10K30/50
H10K10/46
H10K85/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022531550
(86)(22)【出願日】2020-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2020116337
(87)【国際公開番号】W WO2021120741
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】201911291180.2
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】李 慧楊
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-519614(JP,A)
【文献】特開2006-232784(JP,A)
【文献】国際公開第2019/144845(WO,A1)
【文献】特開2013-023500(JP,A)
【文献】特開2006-093542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F、H05B、C09K、H01L、H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する金属錯体であり、
式(I)中、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ、独立して、水素、重水素、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキル基、3~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル基、1~20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルコキシ基、6~30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアリール基、及び3~30個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のヘテロアリール基又はシアノ基から選択され、
Arは、以下に示すHA4、HA9、HA10、HA12及びHA18のうちから選択され、Ar及びArはベンゼンであり、
前記置換は、重水素、ハロゲン又は1~8個の炭素原子のアルキル基による置換である、ことを特徴とする金属錯体。
【請求項2】
前記式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ、水素、重水素、ハロゲン、1~6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキル基、3~6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル基、1~6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルコキシ基、6~12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアリール基、3~12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のヘテロアリール基又はシアノ基から選択され、
前記置換は、重水素又は1~4個の炭素原子のアルキル基による置換である、ことを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
前記式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ、水素、重水素、1~4個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキル基、又は3~6個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル基から選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の金属錯体。
【請求項4】
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は水素である、ことを特徴とする請求項3に記載の金属錯体。
【請求項5】
以下のうちのいずれかの構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項6】
以下の構造を有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の金属錯体のリガンド。
【請求項7】
有機光電子デバイスにおける請求項1~5のいずれか一項に記載の金属錯体の使用であって、前記有機光電子デバイスは、有機エレクトロルミネセンスデバイス、有機薄膜トランジスタ、有機光起電力デバイス、発光電気化学セル及び化学センサを含む、ことを特徴とする使用。
【請求項8】
陰極、陽極及び有機層を含み、前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうちの1つ又は複数の層を有し、前記有機層は、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属錯体を含む、ことを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の金属錯体は、発光層又は電子輸送層に用いられる、ことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項10】
前記有機層の総厚さは1~1000nmであり、前記有機層は、蒸着又は溶液法によって薄膜に形成されたものである、ことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス材料の分野に関し、具体的には、金属錯体、及び有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける発光材料としてのその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光電子デバイスは、有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLEDs)、有機薄膜トランジスタ(OTFTs)、有機光起電力デバイス(OPVs)、発光電気化学セル(LCEs)及び化学センサを含むがこれらに限定されない。
【0003】
近年、OLEDは、アプリケーションの見通しが非常に良好である照明及びディスプレイ技術として、学界や産業界から大きな注目を集めている。OLEDデバイスは、自己発光、広視野角、短い応答時間、及び可撓性デバイスを製造できるなどの特性を有し、次世代のディスプレイ及び照明技術の強力な競争者となっている。しかしながら、現在のOLEDには、効率の低さや寿命の短さなどの問題があり、更なる研究の必要がある。
【0004】
初期の蛍光OLEDは通常、発光するために一重項状態のみを利用することができ、デバイスで生成された三重項励起子は効果的に利用することができず、非放射の方式で基底状態に戻る。そのため、蛍光OLEDsの量子収率は比較的低く、OLEDsの普及と使用を制限している。1998年、香港大学の支志明らは、エレクトロルミネセンス燐光の現象を初めて報告した。同じ年に、Thompsonらは、発光材料として遷移金属錯体を使用して燐光OLEDsを作った。燐光OLEDsは、一重項励起子と三重項励起子を同時に利用して発光し、100%の内部量子効率を実現することができ、それにより、OLEDsの商業化プロセスが大幅に促進されている。OLEDsの発光色の調整は、発光材料の構造設計によって実現することができる。OLEDsは、所望のスペクトルを実現するために、1つの発光層又は複数の発光層を含むことができる。現在、緑色、黄色及び赤色の燐光材料の商業利用は実現された。商業化されたOLEDディスプレイは通常、フルカラー表示を実現するために、青色の蛍光と黄色、又は緑色と赤色のリン光を組み合わせて使用する。より飽和した発光スペクトル、より高い効率、及びより長い使用寿命を備えた発光材料が、業界によって緊急に必要とされている。
【0005】
金属錯体発光材料は業界で使用されているが、色の飽和度、使用寿命などの性能がまだニーズを満たしていない。本発明は、一連の金属錯体を提供する。研究により、このタイプの金属錯体は、暗赤色から近赤外光を放射することができることが分かる。更なる研究により、このタイプの錯体はまた、凝集誘起型発光が増強する性質を有する。
【発明の概要】
【0006】
従来技術における上記の問題に対し、本発明は、有機エレクトロルミネセンスデバイスに適用されて良好な光電的特性及びデバイス寿命を示す金属錯体発光材料を提供する。本発明はまた、本発明の金属錯体を含むエレクトロルミネッセンスデバイスを提供する。
【0007】
有機エレクトロルミネッセンス材料は、式(I)の構造を有する化合物である。
【0008】
ここで、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ、独立して、水素、重水素、ハロゲン、1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換の3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、置換又は非置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、置換又は非置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、置換又は非置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、又はシアノ基から選択され、
Arは、少なくとも2個のN原子及び3~30個の炭素原子を含むヘテロ芳香族基であり、Ar及びArはそれぞれ、独立して、3~30個の炭素原子の芳香族基又はヘテロ芳香族基から選択され、前記ヘテロ芳香族基におけるヘテロ原子は、N、S、O原子から選択され、
前記置換は、重水素、ハロゲン又は1~8個の炭素原子のアルキル基による置換である。
【0009】
一般式(I)では、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ、好ましくは、水素、重水素、ハロゲン、1~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基、3~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル基、1~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルコキシ基、6~12個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール基、3~12個の炭素原子を有する置換又は非置換のヘテロアリール基、又はシアノ基から選択される。
【0010】
Arは、2~4個のヘテロ原子及び3~12個の炭素原子を含むヘテロ芳香族基である。Ar及びArはそれぞれ、独立して、3~12個の炭素原子の芳香族基又はヘテロ芳香族基から選択され、前記ヘテロ芳香族基におけるヘテロ原子は、N、S、O原子から選択される。
前記置換は、重水素又は1~4個の炭素原子のアルキル基による置換である。
【0011】
一般式(I)では、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ、さらに好ましくは、水素、重水素、1~4個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基、3~6個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル基から選択される。Ar及びArはそれぞれ、独立して、5~10個の炭素原子芳香族基又はヘテロ芳香族基から選択される。
【0012】
一般式(I)では、Arは、好ましくは、以下の芳香族構造から選択される。
【0013】
一般式(I)では、Arは、さらに好ましくは、以下の芳香族構造から選択される。
【0014】
一般式(I)では、好ましくは、Ar及びArは、同じ芳香族基である。
【0015】
一般式(I)では、好ましくは、Ar及びArはそれぞれ、ベンゼン又はナフタレンユニットから選択される。
【0016】
好ましくは、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10は水素である。
【0017】
本発明による金属錯体の例は以下にリストされるが、リストされる構造に限定されない。
【0018】
上記の錯体の前駆体、即ち、リガンドの構造式は、以下のとおりである。
【0019】
本発明の金属錯体発光材料がエレクトロルミネッセンスデバイスに適用されると、暗赤色から近赤外までの色を取得することができる。発光波長は、620~1000nmであり、好ましくは、630~900nmであり、さらに好ましくは、630~800nmである。
【0020】
本発明は、有機光電子デバイスにおける上記の金属錯体の用途をさらに提供する。前記光電子デバイスは、有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLEDs)、有機薄膜トランジスタ(OTFTs)、有機光起電力デバイス(OPVs)、発光電気化学セル(LCEs)及び化学センサを含むがこれらに限定されなく、好ましくは、OLEDsである。
【0021】
上記の金属錯体を含む有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLEDs)であって、該錯体は、発光デバイス中の発光材料として機能する。
【0022】
本発明の有機エレクトロルミネセンスデバイスは、陰極、陽極及び有機層を含み、前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層のうちの1つ以上の層である。これらの有機層は、すべての層に存在する必要がない。
【0023】
前記正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、発光層及び/又は電子輸送層のうちの少なくとも1つの層は、式(I)に記載の化合物を含む。
【0024】
好ましくは、構造式(I)に記載の化合物が位置する層は、発光層又は電子輸送層である。
【0025】
本発明のデバイスの有機層の総厚さは、1~1000nm、好ましくは、1~500nmであり、より好ましくは、5~300nmである。
【0026】
前記有機層は、蒸着又は溶液法によって薄膜に形成され得る。
【0027】
本発明の有益な技術効果は、主に以下のとおりである。(1)本発明の金属錯体は、OLEDデバイスに適用され、良好なデバイス性能を有し、発光効率が大幅に向上し、デバイスの使用寿命が明らかに延長される。(2)従来の発光分子は、凝集状態にあるときに、分子間の相互作用が比較的に強いため、発光量子の収率が低下する。本発明の金属錯体は、凝集状態にあるときに、凝集によって発光増強を誘発する性質を有し、デバイスの発光効率を向上させるのに有益である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の有機エレクトロルミネセンスデバイスの構造である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、材料の合成方法を要求するものではなく、本発明をより詳細に説明するために、以下の実施例が特に挙げられるが、これに限定されるものではない。
以下の式の化合物の原料はすべて市販されている。
〈実施例1〉
【0030】
錯体4の合成
【0031】
〈中間体4cの合成〉
化合物4a(3.5g、19.2mmol)、化合4b(4.6g、23.0mmol)、酢酸パラジウム(0.4g、0.2mmol)及びCsF(3.0g、20.0mmol)を、トリフルオロメタンスルホン酸(10mL)と水(30mL)の混合溶液に溶解し、60℃に加熱し、8時間反応させた。室温まで冷却した後、上記の反応液を水に入れ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離して、白色固体を取得した(4.7g、収率71%)。ESI-MS(m/z):339.9(M+1)。備考:反応をスケールアップすると、反応収率が大幅に低下した。
【0032】
化合物4eの合成
窒素の保護下で、化合物4c(17.0g、50.0mmol)をテトラヒドロフラン(100mL)に溶解し、-78℃まで冷却し、n-ブチルリチウムBuLi(1.2eq)を滴下し、30分間撹拌した後、化合物4d(17.3g、50.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30mL)を上記の溶液に滴下し、30分間撹拌した後、室温まで加熱し、1時間撹拌し続けた。上記の反応液を水に入れ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去して、淡黄色固体を取得した。上記の固体を酢酸(50mL)に溶解し、濃硫酸(4mL)を添加し、窒素の保護下で、一晩還流した。室温まで冷却した後、上記の反応液を水に入れ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離して、淡黄色固体を取得した(18.6g、収率63%)。ESI-MS(m/z):588.1(M+1)。
【0033】
化合物4fの合成
窒素の保護下で、化合物4e(5.9g、10.0mmol)、O-ヒドロキシフェニルボロン酸(1.6g、12.0mmol)、Pd(PPh(0.6g、0.5mmol)、KCO(4.0g、30.0mmol)、テトラヒドロフラン(50mL)及び水(5mL)を順にシュレンクチューブに入れた。80℃に加熱し、24時間反応させた。室温まで冷却した後、上記の反応液を水に入れ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離して、灰白色固体を取得した(4.9g、収率81%)。ESI-MS(m/z):600.2(M-1)。
【0034】
化合物4gの合成
窒素の保護下で、化合物4f(4.9g、8.1mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(37mmolmmol、10.0mmol)、酢酸カリウム(2.5g、25.0mmol)、Pd(dppf)Cl(0.3g、0.4mmol)をジオキサン(50mL)に溶解し、窒素で数回置換した後、一晩加熱還流し反応させた。室温まで冷却した後、上記の反応液を水に入れ、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離して、灰白色固体を取得した(4.5g、収率85%)。ESI-MS(m/z):648.4(M-1)。
【0035】
化合物4hの合成
窒素の保護下で、化合物4g(4.2g、6.5mmol)、クロル-s-トリアジン(1.0g、8.5mmol)、Pd(PPh(0.3g、0.3mmol)、KCO(1.3g、10.0mmol)、テトラヒドロフラン(30mL)及び水(5mL)を順にシュレンクチューブに入れた。80℃に加熱し、24時間反応させた。室温まで冷却した後、上記の反応液を水に入れ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離して、淡黄色固体を取得した(2.4g、収率62%)。ESI-MS(m/z):601.3(M-1)。
【0036】
錯体4の合成
化合物4h(2.0g、3.3mmol)、塩化白全酸カリウム(1.7g、4.0mmol)及び250mL酢酸をフラスコに入れ、窒素の保護下で、48時間還流撹拌した。室温まで冷却した後、上記の反応液を水に入れ、濾過して粗生成物を取得し、再結晶して赤色固体を取得した(2.4g、収率90%)。ESI-MS(m/z):796.3(M+1)。
〈実施例2〉
【0037】
錯体29の合成
【0038】
化合物29bの合成
中間体クロル-s-トリアジンを中間体29aに置き換え、化合物4hの合成方法を参照して化合物29bを調製し、淡黄色固体を取得した(3.2g、収率70%)。ESI-MS(m/z):650.3(M-1)。
【0039】
錯体29の合成
中間体4hを中間体29bに置き換え、錯体4の合成方法を参照して化合物錯体29を調製し、赤色固体を取得した(2.9g、収率85%)。ESI-MS(m/z):845.3(M+1)。
〈実施例3〉
【0040】
錯体32の合成

【0041】
化合物32bの合成
中間体クロル-s-トリアジンを中間体32aに置き換え、化合物4hの合成方法を参照して化合物32bを調製し、淡黄色固体を取得した(2.1g、収率55%)。ESI-MS(m/z):639.3(M-1)。
【0042】
錯体32の合成
中間体4hを中間体32bに置き換え、錯体4の合成方法を参照して化合物錯体32を調製し、赤色固体を取得した(2.3g、収率81%)。ESI-MS(m/z):834.3(M+1)。
〈実施例4〉
【0043】
錯体36の合成
【0044】
化合物36bの合成
中間体クロル-s-トリアジンを中間体32aに置き換え、化合物4hの合成方法を参照して化合物32bを調製し、淡黄色固体を取得した(2.1g、収率55%)。ESI-MS(m/z):700.3(M-1)。
【0045】
錯体36の合成
中間体4hを中間体36bに置き換え、錯体4の合成方法を参照して化合物錯体36を調製し、深赤色固体を取得した(1.9g、収率65%)。ESI-MS(m/z):895.5(M+1)。
〈実施例5〉
【0046】
錯体54の合成
【0047】
化合物54bの合成
中間体クロル-s-トリアジンを中間体54aに置き換え、化合物4hの合成方法を参照して化合物54bを調製し、淡黄色固体を取得した(3.5g、収率69%)。ESI-MS(m/z):664.4(M-1)。
【0048】
錯体54の合成
中間体4hを中間体54bに置き換え、錯体4の合成方法を参照して化合物錯体54を調製し、赤色固体を取得した(1.3g、収率81%)。ESI-MS(m/z):859.2(M+1)。
〈実施例6~10〉
【0049】
本発明の錯体発光材料を使用してエレクトロルミネセンスデバイスを製造した。デバイスの構造を図1に示す。
【0050】
まず、透明な導電性ITOガラス基板10(その上に陽極20がある)を洗浄剤溶液及び脱イオン水、エタノール、アセトン、脱イオン水で順次洗浄し、次に、酸素プラズマで30秒間処理した。
【0051】
次に、ITO上に厚さ10nmのHATCNを正孔注入層30として蒸着した。
【0052】
次に、化合物NPBを蒸着して、厚さ40nmの正孔輸送層40を形成した。
【0053】
次に、正孔輸送層上に厚さ20nmの発光層50を蒸着した。発光層は、実施例1~5の錯体4(実施例6)、29(実施例7)、32(実施例8)、36(実施例9)又は54(実施例10)(5%)がそれぞれCBP(95%)と混合しドープすることで構成される。
【0054】
次に、発光層上に厚さ10nmのBAlqを正孔阻止層60としてを蒸着した。
【0055】
次に、正孔阻止層上に厚さ40nmのAlqを電子輸送層70として蒸着した。
【0056】
最後に、1nmのLiFを電子注入層80として、及び100nmのAlをデバイスの陰極90として蒸着した。
〈比較例1〉
【0057】
上記の本発明における化合物の代わりに、(pq)Ir(acac)を使用して、同じ方法に従って有機発光デバイスを調製する。
【0058】
デバイスにおけるHATCN、NPB、CBP、(pq)Ir(acac)、Alq及びBAlqの構造式は、次のとおりである。
【0059】
10mA/cm電流密度での実施例6~10及び比較例の有機エレクトロルミネセンスデバイスのデバイス性能は、表1にリストされる。
【0060】
表1
【0061】
表1のデータからわかるように、同じ条件下で、本発明の化合物を使用して製造された有機エレクトロルミネセンスデバイスの効率はいずれも比較例のものよりも優れている。一般的な赤色光材料(pq)Ir(acac)と比較して、本発明の金属錯体材料は、有機エレクトロルミネセンスデバイスに適用されると、駆動電圧がより低く、デバイス寿命が大幅に延長され、暗赤色又は近赤外光を放射し、発光材料に対するディスプレイ業界の要求にさらにマッチングし、工業化の見通しが良好である
〈実施例11〉
【0062】
PMMA薄膜及びジクロロメタン溶液中の金属錯体4、29、32、36及び54の発光量子収率比(ФPMMA/Ф溶液)は、表2にリストされる。
【0063】
表2
【0064】
表2のデータからわかるように、本発明の金属錯体の凝集状態での量子収率は、溶液中の量子収率よりも高い。凝集状態での白金錯体材料は、濃度消光効果により、通常、発光量子収率が低い。本発明の金属錯体は、凝集によって発光増強を誘発する性質を示す。本発明は予想外の効果を得ることがわかる。
【0065】
上記の様々な実施形態は単なる例であり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の精神から逸脱することなく、本発明の様々な材料及び構造を他の材料及び構造に置き換えることができる。当業者は、創造的な作業なしに、本発明のアイデアに従って多くの修正や変更を行うことができることを理解されたい。従って、既存の技術に基づいて分析、推論、又は部分的な調査を通じて当業者が取得できる技術的解決策は、特許請求の範囲によって制限される保護範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0066】
10はガラス基板、20は陽極、30は正孔注入層、40は正孔輸送層、50は発光層、60は正孔阻止層、70は電子輸送層、80は電子注入層、90は陰極を表す。

図1