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特許7458484抗ヒトサイトメガロウイルス抗体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】抗ヒトサイトメガロウイルス抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240322BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240322BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240322BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/08 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 S
A61P31/22
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022534426
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2020133816
(87)【国際公開番号】W WO2021110126
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】201911226892.6
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522225561
【氏名又は名称】チューハイ トリノマブ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャオ、ホアシン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ユエミン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ウェイホン
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/114106(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/094423(WO,A1)
【文献】特表2011-527902(JP,A)
【文献】特表2013-531991(JP,A)
【文献】特表2013-515469(JP,A)
【文献】特表2011-518123(JP,A)
【文献】特表2010-512736(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101054415(CN,A)
【文献】ENDRESZ, V. et al.,Induction of human cytomegalovirus (HCMV)-glycoprotein B (gB)-specific neutralizing antibody and phosphoprotein 65 (pp65)-specific cytotoxic T lymphocyte responses by naked DNA immunization,Vaccine,Vol.17,1999年12月31日,pp.50-58
【文献】WIEGERS, A. K. et al.,Identification of a neutralizing epitope within antigenic domain 5 of glycoprotein B of human cytomegalovirus,J virol,89(1),2015年01月,pp.361-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00- 7/08
C12P 21/08
A61K 39/395
A61P 31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
(i)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1に示されるHCDR1、SEQ ID NO:5に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:9に示されるHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:21に示されるLCDR1、SEQ ID NO:25に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:29に示されるLCDR3を含み、
或いは、
(ii)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:2に示されるHCDR1、SEQ ID NO:6に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:10に示されるHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:22に示されるLCDR1、SEQ ID NO:26に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:30に示されるLCDR3を含み、
或いは、
(iii)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:3に示されるHCDR1、SEQ ID NO:7に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23に示されるLCDR1、SEQ ID NO:27に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:31に示されるLCDR3を含み、
或いは、
(iv)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:4に示されるHCDR1、SEQ ID NO:8に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:24に示されるLCDR1、SEQ ID NO:28に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR3を含む、
ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
(i)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列で構成され、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列で構成され、或いは、
(ii)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列で構成され、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列で構成され、或いは、
(iii)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列で構成され、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列で構成され、或いは、
(iv)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列で構成され、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列で構成される、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
重鎖及び軽鎖を含み、
(i)前記重鎖は、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列で構成され、前記軽鎖は、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列で構成され、或いは、
(ii)前記重鎖は、SEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列で構成され、前記軽鎖は、SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列で構成され、或いは、
(iii)前記重鎖は、SEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列で構成され、前記軽鎖は、SEQ ID NO:42に示されるアミノ酸配列で構成され、或いは、
(iv)前記重鎖は、SEQ ID NO:43に示されるアミノ酸配列で構成され、前記軽鎖は、SEQ ID NO:44に示されるアミノ酸配列で構成される、
請求項1または2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるエピトープに結合し、前記エピトープは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるN208、L213及びY226からなる群から選ばれる1つ又は複数のアミノ酸残基を含む、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
約50nM以下のKでヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に結合し、
又は、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質の融合ドメインに結合することができ、
又は、フレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列であり、
又は、前記抗体は、ヒトモノクローナル抗体であり、
又は、前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体又は(Fab’) 、ダイアボディ(dAb)又は線形抗体から選ばれ、
又は、前記抗体は、IgG類抗体であり、前記IgG類抗体は、IgG1形態の抗体、IgG2形態の抗体、IgG3形態の抗体、又は、IgG4形態の抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
【請求項7】
発現ベクターである、請求項6に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを含む宿主細胞であって、真核細胞又は原核細胞である、宿主細胞。
【請求項9】
前記宿主細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は、植物細胞である、請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記宿主細胞は、CHO細胞又は293細胞である、請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、請求項6に記載の単離された核酸又は請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞を培養すること、及び
前記宿主細胞又は培地から前記抗体又はその抗原結合フラグメントを回収することを含む、方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び、標識を含む、免疫コンジュゲート。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、又は、請求項12に記載の免疫コンジュゲート、及び、任意の1種又は複数種の医薬補助剤、を含む医薬組成物。
【請求項14】
HCMV感染又はHCMV関連疾患の検出、治療、予防及び/又は軽減において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、又は、請求項12に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項15】
HCMV感染又はHCMV関連疾患の予防及び/又は治療において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項12に記載の免疫コンジュゲート、又は、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
HCMVに感染したヒトの個体の抵抗性の向上、増強、又は刺激において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項12に記載の免疫コンジュゲート、又は、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
個体又はサンプルにおけるHCMVに対する中和において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトサイトメガロウイルスに特異的に高い親和性で結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、並びに、前記抗体を調製する方法に関する。本発明に係る抗体は、感染を中和する高い効力を更に持つ。本発明も、前記抗体に結合するエピトープ、並びに、前記抗体の感染した個体に対する診断、予防及び治療における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトサイトメガロウイルス(human Cytomegalovirus,HCMV)は、広く分布しており、人口における感染率が40%~100%である。臓器移植者、骨髄移植者、HIV患者、妊娠婦、胎児などの免疫不全者では、重篤な合併症ひいて死亡につながり、また、悪性腫瘍や慢性疾患に関与する。米国とヨーロッパでは、出生時のHCMV感染の確率は0.2%~1.2%と推定されている。中国の出産可能年齢の女性において、感染率は95.3%と高く、妊娠婦にいて、一次感染による子宮内感染率は約30.0%~40.0%である。HCMVに対する血清陽性は、発展途上国又は低所得地域において、より蔓延している。
【0003】
HCMV一次感染の後、ウイルスは、宿主に潜伏状態で残存し、複製され、転移し、宿主の免疫系を回避できるため、完全にHCMVを除去することはほとんどできない。通常、多くのヒトは、HCMVに感染した後、無症候である。疾患や免疫不全(例えば、移植者、HIV患者など)の場合、HCMV一次感染又は再活性化は、泌尿器系、中枢神経系、肝臓、肺、血液循環器系などの病理学的変化を引き起こし、これに続き、HCMVは、免疫抑制を引き起こし、感染の確率を高め、罹患及び死亡につながる。また、HCMVは、先天性欠損症(臓器欠損、発達遅延、知能発育不全及び難聴・難視を含む)の主な感染原因であり、妊娠婦によって先天的に感染する。現在、胎児感染を予防・治療する治療法はない。HCMV感染症及び関連疾患を予防するためのPrevymis(MSD)は、15年間において、米国FDAに承認されたHCMV感染症の最初の新薬であるが、成人患者のみに適用する。また、CytogamとCytotectとは、すでに販売されているサイトメガロウイルス免疫グロブリン製剤であるが、臨床で明らかな副作用及び治療効果の不確実性を示している。
【0004】
抗体は、免疫防御に極めて重要な役割を果たし、特に感染への治療に不可欠であるため、ヒトサイトメガロウイルスに対するモノクローナル抗体の研究は、多くの失敗を経たが、それを選択してさらに研究する理由はまだある。従来抗体技術の開発によれば、ヒトB細胞から得られた高い中和能を持つモノクローナル抗体は、より効果的である可能性がより高い。
【0005】
本発明に開示の抗体は、ヒトB細胞に由来し、先行技術の欠陥を補うものである。本発明は、HCMV感染の医学的な治療、予防及び/又は診断に適用し、また、HCMV感染に関連する様々な障害の治療にも適用する、強い特異性及び高い中和力価を有する完全ヒトモノクローナル抗体を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ヒトサイトメガロウイルスに結合する新規の抗体、その抗原結合フラグメント、及び前記抗体が結合する新規な抗原エピトープを提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、高力価でヒトサイトメガロウイルス感染を中和する極めて特異的な抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトサイトメガロウイルスの外被糖タンパク質gBに結合する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明は、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質の融合ドメインに特異的に結合することができる、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明は、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるエピトープに結合し、前記エピトープは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるN208、L213及びY226からなる群から選ばれる1つ又は複数のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるアミノ酸残基L213及びY226を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるアミノ酸残基N208を含むエピトープに結合する。
【0010】
もう一つの態様において、本発明は、高力価でHCMV感染を中和する極めて特異的な抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)に含まれる3つの相補性決定領域CDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべて3つを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VH)に含まれる3つの相補性決定領域CDRの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべて3つを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:13、14、15又は16に示されるVHに含まれる1つ、2つ、又は3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:33、34、35又は36に示されるVLに含まれる1つ、2つ、又は3つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VLを含み、
(a)前記VHは、SEQ ID NO:13、14、15又は16に示されるVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)を含み、及び/又は、
(b)前記VLは、SEQ ID NO:33、34、35又は36に示されるVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、VHは、SEQ ID NO:13、14、15又は16に示されるアミノ酸配列から選ばれるものを含み、又は、前記アミノ酸配列から構成される。
【0016】
好ましい実施形態において、VLは、SEQ ID NO:33、34、35及び36に示されるアミノ酸配列から選ばれるものを含み、又は、前記アミノ酸配列から構成される。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:13、14、15又は16に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び、SEQ ID NO:33、34、35又は36に示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、表Aに示される本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3に例示される組み合せにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:9、10、11又は12に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるHCDR3を含む、
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
HCDR1は、SEQ ID NO:1、2、3又は4に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
HCDR2は、SEQ ID NO:5、6、7又は8に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
HCDR3は、SEQ ID NO:9、10、11又は12に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
及び/又は、
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
LCDR1は、SEQ ID NO:21、22、23又は24に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
LCDR2は、SEQ ID NO:25、26、27又は28に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
LCDR3は、SEQ ID NO:29、30、31又は32に示されるアミノ酸配列から選ばれるものを含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成される。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
(a)前記VHは、
(i) SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:9を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、
(ii) SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:6及びSEQ ID NO:10を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、
(iii) SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:11を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、或いは、前記アミノ酸配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、
(iv) SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:8及びSEQ ID NO:12を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3、を含み、
及び/又は、
(b)前記VLは、
(i) SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:29を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、
(ii) SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:26及びSEQ ID NO:30を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、
(iii) SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:27及びSEQ ID NO:31を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、
(iv) SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:32を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記アミノ酸配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
を含む、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記VLは、(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記抗体又はその抗原結合フラグメントに含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の組み合せを下記の表(表A)に示す、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0022】
【表1】
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含み、
(a)重鎖可変領域VHは、
(i)SEQ ID NO:13、14、15及び16から選ばれるアミノ酸配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(ii)SEQ ID NO:13、14、15及び16から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii)SEQ ID NO:13、14、15及び16から選ばれるアミノ酸配列に対して、1つ又は複数(好ましくは、10個以下、より好ましくは5以下、4以下、3以下、2以下、1以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、好ましくは、CDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされない、アミノ酸配列を含み、
及び/又は、
(b)軽鎖可変領域VLは、
(i) SEQ ID NO:33、34、35及び36から選ばれるアミノ酸配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は
(ii) SEQ ID NO:33、34、35及び36から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii) SEQ ID NO: 33、34、35及び36から選ばれるアミノ酸配列に対して、1つ又は複数(好ましくは、10個以下、より好ましくは5以下、4以下、3以下、2以下、1以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、好ましくは、CDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされない、アミノ酸配列を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントに含まれる重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VLの組み合せを下記の表(表B)に示す、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0025】
【表2】
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE形態の抗体である。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgEの重鎖定常領域から選ばれる重鎖定常領域を含み、特にIgGの重鎖定常領域から選ばれる重鎖定常領域を含み、より具体的に、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の重鎖定常領域、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の重鎖定常領域を含む。一つの実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG3重鎖定常領域である。一つの実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG2又はヒトIgG4重鎖定常領域である。一つの実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域である。もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体分子は、例えば、κ又はλ軽鎖定常領域から選ばれる軽鎖定常領域を有し、好ましくはκ(例えば、ヒトκ)の軽鎖定常領域を有する。
【0027】
もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体分子は、IgG1(例えば、ヒトIgG1)の重鎖定常領域を含む。もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体分子は、IgG3(例えば、ヒトIgG3)の重鎖定常領域を含む。一つの実施形態において、重鎖定常領域は、SEQ ID NO:45に示されるアミノ酸配列を含み、又は、それと80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又はより高い同一性を有する配列を含む、或いは、前記配列から構成される。
【0028】
もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体分子は、κ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ軽鎖定常領域を含む。一つの実施形態において、軽鎖定常領域は、SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含み、又は、それと80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又はより高い同一性を有する配列を含む、或いは、前記配列から構成される。
【0029】
もう一つの実施形態において、本発明に係る抗体分子は、λ軽鎖定常領域,例えば、ヒトλ軽鎖定常領域を含む。一つの実施形態において、軽鎖定常領域は、SEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含み、又は、それと80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又はより高い同一性を有する配列を含む、或いは、前記配列から構成される。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖及び/又は軽鎖を含み、
(a) 重鎖は、
(i) SEQ ID NO:37、39、41又は43から選ばれるアミノ酸配列と85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(ii)SEQ ID NO:37、39、41又は43から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii) SEQ ID NO: 37、39、41又は43から選ばれるアミノ酸配列に対して、1つ又は複数(好ましくは、20以下又は10以下、より好ましくは、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、好ましくは、重鎖のCDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされなく、より好ましくは、重鎖可変領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされない、アミノ酸配列を含み、
及び/又は、
(b)軽鎖は、
(i)SEQ ID NO:38、40、42又は44から選ばれるアミノ酸配列と85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(ii) SEQ ID NO:38、40、42又は44から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii) SEQ ID NO: 38、40、42又は44から選ばれるアミノ酸配列に対して、1つ又は複数(好ましくは、20以下又は10以下、より好ましくは、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、好ましくは、軽鎖のCDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされなく、より好ましくは、軽鎖可変領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされないアミノ酸配列を含む。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明は、重鎖及び軽鎖を含む抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントに含まれる重鎖及び軽鎖の組み合せを下記の表(表C)に示す、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメント、を提供する。
【0032】
【表3】
【0033】
本発明の一つの実施形態において、前記のアミノ酸変更は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含む。好ましくは、前記のアミノ酸変更は、アミノ酸の置換であり、好ましくは保存的置換である。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明に係るアミノ酸変更は、CDR以外の領域(例えば、FRにおいて)に発生されたものである。より好ましくは、本発明に係るアミノ酸変更は、重鎖可変領域外及び/又は軽鎖可変領域以外の領域に発生されたものである。
【0035】
いくつかの実施形態において、置換は、保存的置換である。保存的置換とは、一つのアミノ酸の同じ種類に属する別のアミノ酸への置換を意味し、例えば、一つの酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸への置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸への置換、又は、中性の置換の別の中性アミノ酸への置換が挙げられる。例示される置換を以下の表Dに示す。
【0036】
【表4】
【0037】
いくつかの実施形態において、置換は、抗体のCDR領域に発生されたものである。通常、得られた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、増加の親和性)に修飾(例えば、改変)を有し、及び/又は、親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持する。例示される置換変異体は、親和性成熟の抗体である。
【0038】
いくつかの実施形態において、本願に提供の抗体は、当分野で知られており、容易に入手可能な他の非タンパク質性部分を含むようにさらに修飾することができる。抗体誘導体化に適した部分として、水溶性ポリマーを含むが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、グルカン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、及びグルカン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド-エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びその混合物を含むが、これらに限られない。例えば、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、循環半減期を延長させるように、ポリマーに共有結合することで化学的に修飾してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、本願に提供の抗体は、改変することでグリコシル化の程度を向上/低下させる。抗体のグリコシル化部位の付加/欠失は、アミノ酸配列を改変することで1つ又は複数のグリコシル化部位を発生/除去させ、これにより簡単に達成される。抗体がFc領域を含むと、それに付着する糖類を改変することができる。いくつかの用途では、不要なグリコシル化部位を除去する修飾が有用であり、例えば、フコース単位を除去することで、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を向上させる(Shieldら、(2002)JBC277:26733を参照)。他の用途では、ガラクトシル化修飾を行うことで、補体依存性細胞毒性(CDC)を修飾させる。
【0040】
いくつかの実施形態において、システイン工程により改変された抗体、例えば、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基に置換された「thioMAbs」を生成する必要がある。システインに改変された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように発生することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、本発明に係る抗体と同じ又は類似のHCMVに対する結合親和性及び/又は特異性を示し、及び/又は、本発明に係る抗体のHCMVへの結合を阻害(例えば、競合阻害)し、及び/又は、本発明に係る抗体と同じ又は重複するエピトープに結合し、及び/又は、本発明に係る抗体とHCMVに競合結合し、及び/又は、本発明に係る抗体の1つ又は複数の生物学的特性を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はそのフラグメントは、HCMVを効果的に中和することができる。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、HCMVを中和するEC50が0.15μg/ml以下である。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、HCMVを中和するEC50が0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02μg/ml、又はより低い。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、内皮細胞又は線維芽細胞に極めて低いEC50でHCMVを中和することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、ウイルスの宿主細胞への侵入を直接に阻止することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、gB糖タンパク質に効果的に結合することができ、例えば、下記の平衡解離定数(K)でgB糖タンパク質に結合することができ、前記Kは、約50nM以下であり、好ましくは約40nM以下、より好ましくは約30nM以下、さらに好ましくは約20nM以下、最も好ましくは、前記Kが約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1.5nM以下、約1nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下、又は、約0.7nM以下である。いくつかの実施形態において、抗体結合親和力は、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイにより決定する。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントは、フレームワーク配列の少なくとも一部がヒトコンセンサスフレームワーク配列である。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、IgG形態の抗体であり、例えば、IgG1形態の抗体、IgG2形態の抗体、IgG3形態の抗体、又は、IgG4形態の抗体である。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体はヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、ヒト抗体である。一つの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、その抗体フラグメント、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)又は(Fab’)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)又は線形抗体からなる群から選択された抗体フラグメントをさらに含有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、二重特異性又は多重特異性抗体分子の形をしている。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、自己免疫反応を引き起こさない。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明には、標識にコンジュゲートされた抗体(「免疫コンジュゲート」)も含まれている。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートすることで標的細胞(例えば、HCMVに感染した細胞)を含む部位の画像化を促進する。多種多様な標識を使用する標識抗体は、多種多様な測定に用いられる。抗体に検出可能な物質を連結させることで、本発明に係る抗体と標的エピトープ(HCMVエピトープ)との間に形成された抗体-抗原コンジュゲートの検出を容易にさせる。適切な検出方法として、例えば、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光物質、色原体、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、補欠分子族、ラジカル、粒子、染料などの標識の使用を含む。標識された抗体は、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えば、ELISA)、蛍光イムノアッセイなどの様々な周知のアッセイに使用することができる。適切な標識及び関連方法は、例えば、[15]US3,766,162、US3,791,932、US3,817,837、又は、US4,233,402などを参照する。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明は、本願に係るいずれかの抗体又はそのフラグメント又はそのいずれかの鎖をコードする核酸を提供する。一つの実施形態において、前記核酸を含むベクターを提供する。一つの実施形態において、ベクターは、発現ベクター、例えば、真核生物発現ベクターである。一つの実施形態において、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0053】
例えば、本発明に係る核酸は、SEQ ID NO:13-16及び33-44から選ばれるいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする核酸、又は、SEQ ID NO:13-16及び33-44から選ばれるいずれかに示されるアミノ酸配列と85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0054】
本発明は、下記の核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸、又は、下記の核酸において1つ又は複数の置換(例えば、保存された置換)、欠失又は挿入を有する核酸も含まれている。前記「下記の核酸」は、SEQ ID NO:13-16及び33-44から選ばれるいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする核酸、又は、SEQ ID NO:13-16及び33-44から選ばれるいずれかに示されるアミノ酸配列と85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は、99%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0055】
一つの実施形態において、前記核酸を含む1つ又は複数のベクターを提供する。一つの実施形態において、ベクターは、発現ベクター、例えば、真核生物発現ベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、EFプロモーター及び/又はCMVエンハンサーを含む。例えば、ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージ又は酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限られない。一つの実施形態において、例えば、pCDNA3.1ベクターである。発現用発現ベクター又はDNA配列が調製されると、発現ベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクト/導入することができる。これを達成するために、複数の技術、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベーストによるランスフェクション、又は他の周知技術を使用することができる。プロトプラスト融合の場合、細胞を培地に培養し、適切な活性をスクリーニングする。産生されたトランスフェクト細胞を培養するための方法及び条件や産生された抗体分子を回収するための方法及び条件は、当業者に知られており、使用される特定の発現ベクター及び哺乳動物宿主細胞に応じて、本明細書及び先行技術で知られている方法に基づいて、改変/最適化することができる。また、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ又は複数のマーカーを導入することにより、DNAが安定的に染色体に組み込まれている細胞を選択できる。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に、原栄養性、殺生物薬(例えば、抗生物質)耐性又は重金属(例えば、銅)耐性などを提供することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接に連結すること、又は、同時形質転換することで、同一細胞に導入することができる。mRNAを最適に合成するために、追加のエレメントも必要になる場合がある。これらエレメントとして、スプライシングシグナル、転写プロモーター、エンハンサー、及びターミネーションシグナルが含まれてもよい。
【0056】
一つの実施形態において、1種又は複数種の本発明に係るポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、タンパク質遺伝子等の発現に通常に使用の細胞、特に抗体遺伝子の発現に適する細胞が好ましい。本発明に適用する好適な宿主細胞は、真核微生物、例えば、大腸菌を含む。宿主細胞は、真核微生物、例えば、糸状菌又は酵母、又は、真核細胞、例えば、昆虫細胞又は植物細胞などであってもよい。宿主として、脊椎動物の細胞も用いられる。例えば、懸濁成長に適するように改変された哺乳動物細胞系を使用してもよい。有用な哺乳動物宿主細胞系の例として、SV40形質転換サル腎臓CV1系(COS-7)、ヒト胚性腎臓系(HEK 293又は293F細胞)、293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、CHOK1SV細胞、CHOK1SV GS-KO細胞、CHOS細胞、NSO細胞、骨髄腫細胞系、例えば、Y0、NSO、P3X63及びSp2/0などが挙げられる。タンパク質産生に適する哺乳動物宿主細胞系の概要は、例えば、Yazaki及びWu、Methods in Molecular Biology、Vol.248(B.K.C.Lo編集、Humana Press,Totowa,NJ)、pp.255-268(2003)を参照する。一つの好ましい実施形態において、前記宿主細胞は、CHO細胞、例えば、CHOS細胞、CHOK1SV細胞、又は、CHOK1SV GS-KOであり、又は、前記宿主細胞は、293細胞、例えば、HEK293細胞である。
【0057】
一つの実施形態において、宿主細胞は真核生物細胞である。他の一つの実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞又は293細胞、例えば、HEK293細胞)、又は抗体又はその抗原結合フラグメントの調製に適する他の細胞から選択される。他の一つの実施形態において、宿主細胞は原核細胞である。
【0058】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、例えば、大腸菌細胞、放線菌、酵母、昆虫細胞(SF9など)、哺乳類細胞(293、HEK293、COS-1、CHO、骨髄腫細胞など)である。
【0059】
組換え抗体の工業生産には、一般的に、抗体を高レベルで安定的に産生する組換え動物細胞株、例えば、CHO細胞株を使用する。このような組換え細胞株の生産、クローニング、高発現のための遺伝子増幅及びスクリーニングは、公知の方法を利用することができる(例えば、Omasa T.:J.Biosci.Bioeng.,94,600-605,2002などを参照)。
【0060】
一つの実施形態において、本発明に係る抗体分子を調製する方法を提供する。前記方法は、抗体の発現に適する条件で、前記抗体(例えば、いずれかのポリペプチド鎖及び/又は複数のポリペプチド鎖)をコードする核酸、又は前記核酸を含む発現ベクターを含有する宿主細胞を培養すること、及び、任意に前記宿主細胞(又は宿主細胞培養培地又は上清)から前記抗体を回収することを含む。本発明に係る抗体分子を組換えて生産するために、抗体(例えば、上記に述べられた抗体、例えば、いずれかのポリペプチド鎖及び/又は複数のポリペプチド鎖)をコードする核酸を単離し、それを1つ又は複数のベクターに挿入することで、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現をする。このような核酸は、通常の手順を使用し(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することで)容易に単離及び配列決定を行う。
【0061】
本発明の一つの好ましい実施形態において、本発明に係る抗体は、完全ヒト抗体である。組換えヒト抗体は、公知の方法を使用して取得できる(Nature,312:643,1984、Nature,321:522,1986などを参照)。例えば、本発明に係る抗体は、本発明に係るベクターが導入された宿主細胞を培養し、培養上清等から産生された抗体を精製することで産生することができる。より具体的には、下記の方法で製造される。VH及びVLをコードするcDNAを、それぞれ同一細胞又は異なるヒト細胞に産生されるヒト抗体CH及び/又はヒト抗体CLをコードする遺伝子を含む動物細胞用発現ベクターに挿入することでヒト抗体発現ベクターを構築した後、動物細胞に導入し発現する。いくつかの実施形態において、通常、VHをコードする核酸を組換えた発現ベクター、又は、VLをコードする核酸を組換えた発現ベクターを別々に調製し、その後、宿主細胞にコトランスフェクトするが、単一の発現ベクターに組換えることもできる。
【0062】
いくつかの実施形態において、マウス、ウサギ、ヤギなどの実験動物から、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を獲得することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルスモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、完全ヒト抗体であり、ヒト血液に由来する抗体産生細胞から得ることができる。当該完全ヒト抗体は、抗体医薬品として人体に投与されても免疫原性がなく、免疫応答が見られない。例えば、本発明に係るモノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントは、様々なステップにより健常者の血液から抗体産生細胞クローンを単離し、抗体産生細胞クローンの培養上清から抗体を獲得し、そして得られた抗体をアフィニティー精製することで得られる(例えば、WO2010/114106を参照)。
【0064】
本願に係る調製された抗体分子は、既知の先行技術、例えば、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなによって精製することができる。特定のタンパク質を精製する実際の条件は、正味電荷、疎水性、親水性などの要因にも依存し、これらは当業者に自明である。本発明に係る抗体分子の純度は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどを含むさまざまな周知の分析方法のいずれかによって特定することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明に係る抗体分子を特定/スクリーニングするか、或いは、本発明に係る抗体分子の物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性を表現する方法をさらに提供する。
【0066】
一態様において、本発明に係る抗体に対して、その抗原結合活性を、例えば、ELISA、ウエスタンブロッティングなどの既知の方法によって検出する。当分野で知られている方法を使用してHCMVへの結合を検出することができ、例示される方法は、本明細書に開示されている。いくつかの実施形態において、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、アフィニティー測定)又はELISAアッセイを用いる。
【0067】
上記のアッセイのいずれも、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体の代わり、又は、それに加え、本発明に係る免疫コンジュゲートを使用して実施できると理解すべきである。
【0068】
上記のアッセイのいずれかにおいて、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体を他の活性剤と組み合わせて使用して実施できると理解すべきである。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明に係る抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の抗体分子又はそのフラグメント(好ましくは、その抗原結合フラグメント)又はその免疫コンジュゲートを含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は医薬組成物である。一つの実施形態において、前記組成物は、医薬補助剤をさらに含む。
【0071】
本発明は、本発明に係る抗体又はその免疫コンジュゲートを含む組成物(医薬組成物又は医薬製剤を含む)及び/又は本発明に係る抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物(医薬組成物又は医薬製剤を含む)をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物は、本発明に係る抗体又はそのフラグメントの1種又は複数種、或いは、本発明に係る抗体又はそのフラグメントの1種又は複数種をコードするポリヌクレオチドの1種又は複数種を含む。
【0072】
これらの組成物は、適切な医薬補助剤、例えば、当分野で知られている医薬担体、医薬賦形剤をさらに含んでもよく、緩衝液又は希釈剤を含む。
【0073】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性のあるすべての溶媒、分散媒、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。本発明に適用する医薬用担体として、無菌液体、例えば、水及び石油、動物、植物又は合成に由来する油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであってもよい。医薬組成物を静脈内に投与する場合、担体は、水が好ましい。また、液体担体として、生理食塩水、水溶性デキストロース及びグリセロール溶液が使用され、特に注射可能な溶液に使用される。
【0074】
好適な賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥のスキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。賦形剤の使用及びその用途については、「Handbook of PharmaceuticalExcipients」、第5版、R.C.Rowe,P.J.Seskey及びS.C.Owen,PharmaceuticalPress,London,Chicagoを参照する。
【0075】
前記組成物は、要望に応じて、微量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤をさらに含んでもよい。
【0076】
本発明に係る組成物は様々な形態にすることができる。これら形態は、例えば、液体、半固体、及び固体の製剤、例えば、液体溶液剤(例えば、注射可能な溶液剤及び注入可能な溶液)、分散剤又は懸濁剤、リポソーム及び坐剤を含む。好ましい形態は、期待される投与様式及び治療用途に依存する。通常の好ましい組成物は、注射可能な溶液又は注入可能な溶液の形態にある。好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内(i.p.)、筋肉内)、即ち、注射である。一つの好ましい実施形態において、抗体分子を、静脈内注入/注射によって投与する。もう一つの好ましい実施形態において、抗体分子を、筋肉内、腹腔内、又は皮下注射によって投与する。
【0077】
本発明に係るヒトサイトメガロウイルスに特異的に結合する抗体は、保管しやすいために凍結乾燥し、使用する直前に適切な担体に再構成することができる。この技術は、通常のタンパク質製剤に効果的であると実証されており、また、知られている凍結乾燥及び再構成技術を使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明に係る抗体、医薬組成物、又は免疫コンジュゲートを含むキット、及び、任意に投与を説明するための添付文書をさらに提供する。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明に係る抗体、医薬組成物、免疫コンジュゲートを含む医薬製剤をさらに提供し、任意に、前記医薬製剤は、投与を説明するための添付文書を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明は、有効量の本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメント、その免疫コンジュゲート、又は薬物組成物を投与することを含む、ヒトサイトメガロウイルス感染又はヒトサイトメガロウイルス関連疾患(HCMV関連疾患)の予防又は治療に用いる方法をさらに提供する。
【0081】
「HCMV関連疾患」とは、HCMVが疾患の病態生理学的原因、又は当該疾患の悪化の原因の1つであると示される疾患、或いは、HCMVが疾患の病態生理学的原因、又は当該疾患の悪化の原因の1つであると考えられる疾患を含む、HCMV感染に関連する任意の疾患を指す。例えば、HCMVに引き起こされる様々の疾患もHCMV関連疾患の範囲に含まれる。いくつかの実施形態において、HCMV関連疾患は、(a)AIDS、癌、臓器移植後、骨移植後、血液透析後などの免疫不全状態でのHCMVの再活性化に引き起こされる間質性肺炎、網膜炎、胃腸炎、脳炎などの様々な疾患、(b)妊娠婦から胎児へのHCMV感染の波及に引き起こされる先天性HCMV感染症、(c)前記先天性HCMV感染に引き起こされる流産、死産、及び生後間もない死亡、(d)死亡しない場合、上記の先天性HCMV感染に引き起こされる低出生体重、肝脾腫大、黄疸、血小板減少性紫斑病、小頭症、精神発達障害、知的発達障害、脈絡網膜炎又は聴覚障害、(e)新生児や乳児期において、HCMV感染による肝機能障害、間質性肺炎、又は単核症などを含むが、これらに限られない。例示される疾患について、また、多屋馨子、「感染症の話:サイトメガロウイルス感染症」、Infectiou Diseases Weekly Report Japan.2003;第15週:10-14;Griffiths,P.D.,The treatment of cytomegalovirus infection.J.Anti.Chemo.,2002;49:p243-253;Demmler,G.J.,Congential cytomegalovirus infection and disease.Seminars in Pediatric Infection Diseases.Seminors in Pediatric Infectious Diseases,1999;10:p195-200を参照する。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明は、有効な量の本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメント、又はそれらの免疫コンジュゲート、又は医薬組成物を投与することを含む、ヒトサイトメガロウイルスに感染した人間の個体の抵抗力を向上/増強/刺激する方法に関する。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明に係る方法に適する個体は、HCMV感染者である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明に係る方法に適する個体は、移植患者、妊娠婦、新生児、HIV感染者、癌患者、又は自己免疫疾患の患者である。
【0085】
本発明に係る抗体の置換又は補足として、本発明に係る免疫コンジュゲート又は組成物又はキットを使用することで、いずれかの治療をすることができると理解すべきである。
【0086】
本発明に係る抗体(及びそれを含む医薬組成物又は免疫コンジュゲート)の投与様式は、任意の好適な経路であってもよく、例えば、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内又は皮下、粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸)、又は当分野でよく知られ、当業者の把握する他の様式であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、任意の好適な経路、例えば、静脈内(i.v.)注入又はボーラス注射、筋肉内又は皮下又は腹腔内注射によって非経口的に患者に投与することができる。
【0087】
本明細書では、単回投与,又は,複数の時点での複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限られない、様々な投薬スケジュールが含まれている。
【0088】
疾患の予防又は治療をするために、本発明に係る抗体の好適な用量は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重篤度及び経過、前記抗体が予防を目的として投与されているか又は治療を目的として投与されているかということ、以前の治療、患者の病歴と前記抗体への反応、及び主治医の判断に依存する。前記抗体は、単一の治療で、又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。通常、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に達するまで組成物を投与する。従って、本発明に係る抗体は、単一用量で、又は一定期間にわたる2つ以上の用量(同じ又は異なる量の所望の分子を含んでもよい)で投与することができ、又は、インプラント又はカテーテルにより持続注入し投与することができる。好適な用量は、好適な用量の反応データを使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、延長された期間に患者に投与されてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供の抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントは、生体サンプル中のHCMVの存在を検出したり、HCMV感染を診断したりするために用いられる。本明細書で使用される「検出」という用語は、定量的又は定性的検出を含み、例示される検出方法は、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子と複合した磁気ビーズ、ELISAアッセイ、PCR技術(例えば、RT-PCR)を含み得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液、血清、又は生物に由来する他の液体サンプルである。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、例えば、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、目、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳又は皮膚から採取された組織サンプルであってもよい。
【0090】
診断の方法は、サンプルに抗体又は抗体フラグメントを接触させることを含んでもよい。診断の方法は、抗原/抗体複合体の検出も含んでもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記方法は、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体のHCMVへの結合を可能にする条件で生体サンプルに本明細書に記載の抗ヒトサイトメガロウイルス抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させ、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体とHCMVとの間に複合体が形成されるかどうか検出することを含む。複合体の形成はHCMVの存在を示す。当該方法は、インビトロの方法又はインビボの方法であってもよい。一つの実施形態において、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体は、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体による治療に適する被験者を選択するために使用され、例えば、HCMVは、前記被験者を選択するために使用されるバイオマーカーである。
【0092】
一つの実施形態において、本発明に係る抗体は、本明細書に記載の疾患を診断するために使用され、例えば、個体の本明細書に係る疾患の治療又は進行の評価(例えば、モニターリング)、その診断及び/又は病期分類に使用される。いくつかの実施形態において、マーカーにコンジュゲートされた抗ヒトサイトメガロウイルス抗体を提供する。
【0093】
本明細書に提供の任意の発明に係るいくつかの実施形態において、サンプルは、抗ヒトサイトメガロウイルス抗体による治療をする直前に得られたものである。いくつかの実施形態において、サンプルは、本明細書に記載の医薬組成物による治療をする直前に得られたものである。いくつかの実施形態において、サンプルは、ホルマリンに固定された、又は、パラフィン(FFPE)に包埋されたものである。いくつかの実施形態において、サンプルは、生検(例えば、コア生検)、手術標本(例えば、手術により切除された標本に由来する)、又は細針吸引物である。
【0094】
いくつかの実施形態において、治療する直前、例えば、初期治療の直前、又は、治療を間隔した後、ある治療の直前にHCMVを検出する。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の疾患、例えば、HCMV関連疾患やHCMV感染症の診断に用いられる、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントを含む検出キットを提供する。
【0096】
いくつかの実施形態において、被験者(例えば、サンプル)(例えば、被験者のサンプル)に対してHCMVの存在を検出することでHCMV値を特定し、 HCMV値とコントロールとを比較し、HCMV値がコントロール値に比べて大きい場合、被験者に治療上で有効な量の抗ヒトサイトメガロウイルス抗体(例えば、本明細書に記載の抗ヒトサイトメガロウイルス抗体)又はその抗原結合フラグメントを投与し、本明細書に記載の疾患を治療することを含む本明細書に記載の疾患を治療する方法を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体は、受動免疫に使用される。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体又はそのフラグメントなどは、所望の免疫原性を持つワクチンの生産を監視するためのキットに用いられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明も、個体又はサンプルに本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントを接触させ、前記抗体又はその抗原結合フラグメントの、ヒトサイトメガロウイルスに結合し、中和する能力を検出することを含む、個体又はサンプルにおけるヒトサイトメガロウイルスを中和する方法に関する。
【0100】
従って、本発明も、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントの前記方法における使用、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントの、前記上述方法に用いられる薬物、組成物又はキットの調製における使用、及び/又は、本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントの、本明細書に記載の疾患を診断するためのキットの調製における使用に関する。
【0101】
本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントに適用する方法及び用途は、同様に本発明に係る抗体又はその抗原結合フラグメントを含む免疫コンジュゲート、組成物又はキットに適用することができる。
【0102】
下記の図面を参照しながら、本発明を具体的に説明する。しかしながら、これらの図面及び本発明の具体的な実施態様は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、当業者であれば容易に想到する変更は、本発明の要旨及び請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1A図1は、TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN102の細胞HFFでのHCMVの標準ウイルス株Towne及びウイルス株TB40Eを中和する結果を示す図である。 図1Aは、TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN1020という4種類の抗体のHFF細胞に感染したHCMV標準ウイルス株Towneを中和する結果を示す図である。
図1B】TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN1020という4種類抗体のHFF細胞に感染したHCMVウイルス株TB40Eを中和する結果を示す図である。
【0104】
図2】抗体TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN1020それぞれの抗原gB糖タンパク質への結合親和力を示す図である。
【0105】
図3】gB糖タンパク質の12のグリコシル化部位(N208、N281、N284、N302、N341、N383、N405、N409、N417、N447、N452及びN456)の単一突然変異をした後、本発明に係る抗体の結合活性に対する影響を示す図である。
【0106】
図4】gB糖タンパク質の細胞外セグメントとその融合ドメイン(3つの変異部位を含む)の線形構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
詳細な実施態様
【0108】
I.定義
本明細書に使用される用語は、ただ具体的な実施態様を説明するために使用され、本発明の保護範囲を限定することを意図せず、本発明の保護範囲が添付の特許請求の範囲のみ限定されると理解すべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野において、当業者による通常の理解と同じ意味を有する。
【0109】
本明細書を解釈するために、下記の定義が使用され、適切であれば、単数で使用される用語は、複数も含まれる場合があり、その逆も同様である。本明細書で使用される用語は、ただ具体的な実施態様を説明するためであり、保護範囲を限定することを意図しないと理解すべきである。
【0110】
「約」という用語は、数字・数値と組み合わせて使用される場合、指定の数字・数値より5%小さい下限及び指定の数字・数値より5%大きい上限を有する範囲における数値を包含することを意味している。
【0111】
本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、選択肢のいずれか1項又は2項以上を意味する。
【0112】
本明細書で使用される「含有する」又は「含む」という用語は、記載の要素、整数、又はステップを含むことを意味するが、任意の他の要素、整数、又はステップを排除しない。本明細書において、「含有する」又は「含む」という用語が使用される場合、特に断らない限り、それも、言及された要素、整数又はステップからなる状況を含有する。例えば、ある具体的な配列を「含む」抗体可変領域が言及される場合、当該具体的な配列からなる抗体可変領域を包含すると意図する。
【0113】
「ヒトサイトメガロウイルス」(human Cytomegalovirus、HCMV)は、ヒトヘルペスウイルス5型(human herpersvirus 5、HHV-5)も呼ばれるヘルペスウイルスB亜科に属するサイトメガロウイルス属のDNA二重らせんウイルスである。本明細書で使用される「ヒトサイトメガロウイルス」、「HCMV」、「ヒトヘルペスウイルス5型」、「HHV-5」は、いずれも共通して使用できる。
【0114】
「ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgB糖タンパク質」(又は「HCMVgB糖タンパク質」又は「HCMB-gB糖タンパク質」)は、HCMVのシェルを構成する主な糖タンパク質の1つであり、ウイルスの粒子細胞への侵入、細胞への融合、及びウイルスの細胞間の感染に寄与することが知られている。HCMVgB糖タンパク質のアミノ酸配列は、公開・利用する可能なシーケンスデータベースNCBI GENEから入手できる。
【0115】
「ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgB糖タンパク質の融合ドメイン」又は「HCMVgB糖タンパク質の融合ドメイン」とは、HCMVgB糖タンパク質のアミノ酸配列における150~250位の連続したアミノ酸残基から構成される領域(Heidi G.Burke et al.Crystal Structure of the Human Cytomegalovirus Glycoprotein B.2015)を意味する。
【0116】
「相補性決定領域」、「CDR区」又は「CDR」とは、抗体可変ドメインにおいて、配列が超可変であり、構造の確定されたループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は、抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、主に抗原エピトープへの結合を担う。重鎖及び軽鎖のCDRは、通常にCDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、N-末端から順に番号が付けられる。抗体重鎖の可変ドメイン内にあるCDRは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3と呼ばれ、抗体軽鎖の可変ドメイン内にあるCDRは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3と呼ばれる。特定の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のアミノ酸配列において、各CDRの正確なアミノ酸配列の境界は、多くの公知抗体CDR割り当てシステムのいずれか又はその組み合わせを使用して決定することができる。前記割り当てシステムは、例えば、抗体の3次元構造及びCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothiaら, (1989)Nature 342:877-883,Al-Lazikaniら,“Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat (Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第4版,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987)),AbM(University of Bath),Contact(University College London),国際的ImMunoGeneTics database(IMGT)(imgt.cines.fr)、及び、多量の結晶構造を利用したアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0117】
例えば、異なるCDR決定スキームに従い、各CDRの残基は、以下の通りである。
【表5】
【0118】
また、参照CDR配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか)と同じKabat番号位置を有することでCDRを決定することもできる。
特に断らない限り、本明細書において、「CDR」又は「CDR配列」という用語は、上記のいずれかの方法で決定されるCDR配列を包含する。
【0119】
特に断らない限り、本明細書において、抗体の可変領域における残基位置が言及される場合、Kabat命名方式(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に基づいた命名位置を意味する。
【0120】
一つの実施形態において、本発明に係る抗体は、CDRの境界がIMGT規則によって決定され、例えば、IMGTデータベースを利用して境界を決定する。
【0121】
ただし、異なる割り当てシステムから得られた同一抗体の可変領域のCDRの境界には、差異がある可能性がある。即ち、異なる割り当てシステムで定義された同一抗体の可変領域のCDR配列には違いがある。従って、本発明で定義された具体的なCDR配列により抗体が限定される場合、前記抗体の範囲には、可変領域配列が前記した具体的なCDR配列を含むが、異なる手段(例えば、異なる割り当てシステムのルールまたは組み合わせ)が使用されることにより、かかるCDR境界が本発明で定義された具体的なCDR境界と異なるような抗体も含まれる。
【0122】
本明細書で使用される「中和する」という用語は、病原体の宿主において感染を開始及び/又は維持する能力を中和することを指す。
【0123】
本明細書で使用する「エピトープ」という用語は、抗原(例えば、HCMVのgB糖タンパク質)の抗体分子と特異的に相互作用する部分を指す。タンパク質抗原内のエピトープは、連続しているアミノ酸(通常は線状エピトープ)又はタンパク質の三次折り畳みによって並列された連続していないアミノ酸(通常は配座エピトープ)から形成することができる。連続しているアミノ酸から形成されたエピトープ(ただし、いつでもこれに限らない)は、通常に変性溶媒に暴露されたままであるが、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、通常、変性溶媒で処理されると失われる。
【0124】
参照抗体と「同一又は重複するエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて、前記参照抗体とその抗原との結合の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上を遮断する抗体を指す。言い換えれば、競合アッセイにおいて、当該抗体とその抗原との結合の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上は、参照抗体に遮断される。
【0125】
参照抗体と競合し、その抗原と結合する抗体とは、競合アッセイにおいて、前述の参照抗体とその抗原との結合の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上を遮断する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体は、競合アッセイにおいて、前記抗体とその抗原との結合の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上を遮断する。一つの抗体が別の抗体と競合するかどうか判断するために、さまざまなタイプの競合アッセイを利用でき、これらアッセイとして、例えば、ELISA、SPR、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫アッセイ(EIA)(例えば、Stahliら,1983,Methods in Enzymology 9:242-253を参照する)などがある。
【0126】
参照抗体とその抗原との結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する)抗体とは、前記参照抗体とその抗原との結合の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上を阻害する抗体を指す。言い換えれば、参照抗体は、前記抗体とその抗原との結合の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上を阻害する。抗体とその抗原との結合は、親和力(例えば、平衡解離定数)により評価することができる。親和力の決定方法は当分野で知られているものである。
【0127】
「IgG抗体」とは、抗体の重鎖定常領域が属するIgGである。同じ形態の抗体の重鎖定常領域は、すべて同じであり、異なる形態の抗体同士の重鎖定常領域は異なる。例えば、IgG1抗体とは、その重鎖固定領域のIgドメインは、IgG1のIgG3ドメインであることを意味する。
【0128】
「ヒト」抗体(HuMAb)とは、フレームワーク領域及びCDR領域がともにヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。また、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来することを意味する。
【0129】
「ヒト化」抗体とは、前記抗体における非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)のCDRドメイン以外のアミノ酸の一部、大部分、又は全部が、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置換された抗体を指す。ヒト化形態の抗体の一実施形態において、CDRドメイン以外のアミノ酸の一部、大部分、又は、全部が、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されているが、1つ又は複数のCDRドメインのアミノ酸の一部、大部分、又は、全部が、変更されていない。特定の抗原に結合する抗体の能力を消失しない限り、アミノ酸の小さな追加、削除、挿入、置換又は変更は、許容される。「ヒト化」抗体は、当初の抗体と類似する抗原特異性を保持している。
【0130】
本明細書で使用される「キメラ抗体」とは、可変領域がマウス抗体から由来するものであり、かつ定常領域がヒト抗体由来するものである抗体など、可変領域が1つの種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体を指す。
【0131】
本明細書で使用される「抗体フラグメント」とは、完全抗体の一部を含み、完全抗体が結合する抗原に結合する、完全抗体と異なる分子を指す。本明細書で使用される「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原(例えば、ヒトHCMVのgB糖タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1種又は複数種のフラグメントを意味する。抗体フラグメントの例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、二価又は二重特異性抗体又はそのフラグメント、ラクダ抗体、及び抗体フラグメントから形成された二重特異性又は多重特異性抗体を含むが、これらに限られない。
【0132】
本明細書で使用する「多重特異性」は、少なくとも2つの異なる抗原又は抗原内の少なくとも2つの異なるエピトープ、例えば、3つ、4つ、又は5つの異なる抗原又は異なるエピトープに特異的に結合する抗体を指す。
【0133】
本明細書で使用される「二重特異性」は、2つの異なる抗原又は同じ抗原内の2つの異なるエピトープに特異的に結合する抗体を指す。 二重特異性抗体は、他の関連する抗原と交差反応性があるか、或いは、2つ以上の異なる抗原同士で共有されるエピトープに結合することができる。
【0134】
「免疫コンジュゲート」とは、1つ又は複数の他の物質(標識を含むが、これに限定されない)にコンジュゲートされた抗体である。
【0135】
本明細書で使用される「標識」という用語とは、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブ又は抗体)に直接的又は間接的にコンジュゲート/融合され、それにコンジュゲート/融合された試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を意味する。標識そのものが検出可能であり(例えば、放射性同位元素標識又は蛍光標識)、又は、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変化を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリングする(即ち、物理的に結合する)ことで、プローブ又は抗体に直接的に標識すること、及び直接標識される別の試薬との反応によりプローブ又は抗体に間接的に標識ことを包含することを意図している。間接標識の例としては、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるように、蛍光標識された二次抗体を使用して一次抗体を検出し、並びに、ビオチンを有するDNAプローブの末端標識がある
【0136】
「ベクター」は、生物学的システムで複製することができるか、又はこのようなシステム同士で移動することができるポリヌクレオチドを指す。ベクターポリヌクレオチドは、通常、例えば、複製起点、ポリアデニル化シグナル、又は選択可能なマーカーのエレメントを含み、その機能は、これらのポリヌクレオチドの生物学的システムにおける複製又は維持を容易にすることである。このような生物学的システムの例示として、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製する可能な生物学的構成要素で再構成された生物学的システムを含む。ベクターを含むポリヌクレオチドは、DNA又はRNA分子又はこれらの分子のハイブリッド分子であってもよい。「発現ベクター」は、生物学的システム又は再構成された生物学的システムにおいて、発現ベクターに存在するポリヌクレオチド配列にコードされるポリヌクレオチドの翻訳を指令するために使用することができるベクターを指す。
【0137】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から単離された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体を95%超え又は99%超えの純度に精製し、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により純度を決定する。抗体の純度を評価するために使用される方法の概要については、例えば、Flatmanら,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照する。
【0138】
「単離された」核酸とは、その自然環境の成分から単離された核酸分子を指す。単離された核酸には、通常に核酸分子を含む細胞における核酸分子が含まれるが、当該核酸分子は、染色体以外、又は、その天然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する。
【0139】
配列間の配列同一性は、下記のように計算する。
【0140】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性パーセンテージを決定するために、最適な比較という目的で前記配列をアラインメントする(例えば、最適なアラインメントをするために第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列のいずれか又は両方にギャップを導入することができ、又は比較の便宜上、非相同配列を捨ててもよい。)。一つの好ましい実施形態において、比較の目的で、比較配列の長さは、参照配列の長さの30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、60%以上、さらにより好ましくは70%以上、80%以上、90%以上又は100%である。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1配列の位置は第2配列の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドに占有されている場合、当該分子は当該位置において同一である。
【0141】
数学的アルゴリズムを用いて、2つの配列同士の配列比較及び同一性パーセンテージの算出を実現できる。一つの好ましい実施形態において、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されているNeedlema 及びWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズム(http://www.gcg.comにて入手可能)を使用し、Blossum 62行列又はPAM250行列、ギャップ重み16、14、12、10、8、6、又は4と長さの重み1、2、3、4、5又は6を使用し、2つのアミノ酸配列同士の同一性パーセンテージを決定する。もう一つの好ましい実施形態において、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comにて入手可能)を使用し、NWSgapdna.CMP行列、ギャップの重み40、50、60、70又は80、長さの重み1、2、3、4、5又は6を使用し、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセンテージを決定する。特に好ましいパラメータセット(特に断らない限り、1つのパラメータセットを使用する)は、ギャップペナルティが12、ギャップ拡張ペナルティが4、フレームシフトギャップペナルティが5であるBlossum62スコアリング行列を採用する。
【0142】
また、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に統合されているE.Meyers及びW.Millerアルゴリズム((1989)CABIOS、4:11-17)を利用して、PAM120加重残基表、ギャップ長さペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いて2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列同士の同一性パーセンテージを決定してもよい。
【0143】
追加的又は代替的に、本明細書に記載の核酸配列及びタンパク質配列は、公開データベースに対して検索を実行するための「クエリ配列」としてさらに使用されてもよく、例えば、他のファミリーメンバー配列又は関連配列を同定するために使用されてもよい。
【0144】
本明細書で使用される「低いストリンジェンシー条件、中等度のストリンジェンシー条件、高いストリンジェンシー条件、又は極めて高いストリンジェンシー条件におけるハイブリダイゼーション」という用語は、ハイブリダイゼーションと洗浄の条件を説明している。ハイブリダイゼーション反応の実行に関する手引きは、援用の形で組み込まれたCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出すことができる。参考文献には、含水方法及び非含水方法の方法が記載されており、いずれかの方法も使用できる。本明細書に言及された特異的ハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである。即ち、1)低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件は、約45°Cで6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)において、続いて少なくとも50°C(低いストリンジェントな条件では、洗浄温度を55°Cに上げることができる)で0.2×SSC、0.1%SDSにおいて2回洗浄することである。2)中等度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションの条件は、約45℃で6×SSCにおいて、続いて60℃で0.2×SSC、0.1%SDSにおいて1回又は複数回洗浄することである。3)高いストリンジェンシー条件は、約45°Cで6×SSCにおいて、続いて65°Cで0.2×SSC、0.1%SDSにおいて1回又は複数回洗浄することである。好ましくは、4)極めて高いストリンジェンシー条件は、65℃で0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSにおいて、続いて65℃で0.2×SSC、0.1%SDSにおいて、1回又は複数回洗浄することである。極めて高いストリンジェンシー条件(4)は好ましい条件であり、特に断らない限り、当該条件が適用される。「宿主細胞」、「宿主細胞系」及び「宿主細胞培養」という用語は、共通的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、また、このような細胞の子孫も含まれる。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、継代の数に関係なく、一次形質転換細胞及びそれに由来する子孫も含む。子孫は、核酸組成が親細胞と同一ではなく、突然変異を含んでもよい。本明細書において、最初に形質転換された細胞からスクリーニング/選択された同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体の子孫も含まれる。
【0145】
「医薬補助剤」という用語は、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、担体又は安定剤などを指す。
【0146】
「医薬組成物」という用語は、それに含まれる有効成分の生物学的活性が効果的形態として存在し、かつ、前記組成物が投与される被験者に許容されない毒性を有する他の成分を含まない組成物を指す。
【0147】
「有効量」という用語は、本発明の抗体もしくは断片又は複合体又は組成物の1回分又は複数回分の量を患者に投与した後、治療又は予防が必要な患者に所望の効果が得られるという量又は投与量を指す。有効量は、当業者である主治医が、例えば、哺乳類の生物種、投与対象の大きさ、年齢、健康状態と、かかる具体的な疾患、疾患の程度又は重篤度、個体患者における応答、投与される具体的な抗体、投与方式、投与製剤の生物学的利用能の特徴、選択される投与計画、併用療法の適用の複数種の要因を考慮して容易に決定することができる。
【0148】
「治療的有効量」という用語は、所定の期間に亘って所定の用量で所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。抗体もしくは抗体断片又はその複合体又は組成物の治療有効量は、例えば、疾患の状態、個体の年齢、性別、重量、抗体又は抗体の部分が個体に所望の反応を起こす能力の複数種の要因によって変化する可能性がある。また治療有効量は、抗体もしくは抗体断片又はその複合体又は組成物の任意の毒性又は有害作用が有益な治療効果に及ばないという量であってもよい。治療を受けていない対象に対して、「治療的有効量」により計測可能なパラメータを好ましくは約20%以上、より好ましくは約40%以上、さらにより好ましくは約50%以上、約60%以上、又は約70%以上、さらにより好ましくは約80%以上、又は約90%以上に阻害する。測定可能なパラメータを阻害する化合物の能力は、ヒトの自己免疫疾患又は炎症における有効性を予測する動物モデルシステムで評価することができる。
【0149】
「予防的有効量」は、所定の期間に亘って所定の用量で所望の予防結果を達成するために有効な量を指す。通常に、予防目的の投与量は対象における疾患の早期段階よりも前に又は疾患の早期段階に適用されるため、予防有効量が治療有効量を下回る。
【0150】
本明細書に記載の「個体」又は「被験者」は共通的に使用され、哺乳動物、例えば、ヒトを含む。
【0151】
本明細書で使用される用語「治療」とは、出現している症状、病的状態、病状又は疾患の進行又は重症度に対する軽減、中断、遅延、寛解、停止、低減、又は逆転を指す。
【0152】
本明細書で使用される「予防」は、疾患又は障害の発生又は進行、或いは特定の疾患又は障害の症状の発生又は進行を抑制することを含む。いくつかの実施形態において、免疫系疾患(自己免疫疾患又は免疫不全)の家族歴のある被験者又は妊娠婦は、予防レジメンの候補である。通常に、免疫系疾患(自己免疫疾患又は免疫免疫不全)の場合、「予防」という用語は、免疫系疾患(自己免疫疾患又は免疫不全)の徴候又は症状の発症前、特に免疫系疾患(自己免疫疾患又は免疫不全)のリスクのある被験者が発症する前に薬物を投与すること指す。
【0153】
「被験者/患者サンプル」とは、患者又は被験者より得た細胞又は液体の集まりである。組織又は細胞試料の由来としては、新鮮な、冷凍された及び/又は保存された器官、組織試料、生検試料もしくは穿刺試料などの固形組織、血液もしくは任意の血液成分、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹腔内液(腹水)もしくは間質液などの体液、被験者における妊娠もしくは発育の任意の段階に由来する細胞が挙げられる。組織サンプルは、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などの自然界に存在する組織に混合されていない化合物を含んでもよい。
【0154】
本発明のこれら及び他の態様及び実施形態は、添付の図面及び以下の詳細な説明に記載されており、以下の実施例に例示されている。前記及び本願全体に記載されている特徴のいずれか又は全部は、本発明の様々な実施形態において組み合わせることができる。下記の実施例は、本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、限定ではなく例示として説明されており、当業者は様々な変更をすることができることを理解すべきである。
【実施例
【0155】
実施例1 特異的抗原HCMV糖タンパク質gBの配列設計
NCBI GENGデータベースから56株のヒトサイトメガロウイルス(実験株及び臨床株を含む)糖タンパク質gBの配列情報を取得し、アミノ酸配列アラインメントにより、gB糖タンパク質の同一性は、70%以上に達することが分かる。その標準株TowneのgB糖タンパク質を1つの特異的抗原(gB_Towne strain)として選択し、その配列をSEQ ID NO:19に示し、また、56株のウイルスのgB糖タンパク質の同一性配列を別の特異的抗原(gB_Con.strain)として選択し、その配列をSEQ ID NO:20に示し、広域スペクトルを有する抗ヒトサイトメガロウイルスモノクローナル抗体をスクリーニングするために用いられる。
【0156】
SEQ ID NO:19
【化1】
【0157】
SEQ ID NO:20
【化2】
【0158】
実施例2 HCMV gB糖タンパク質血清抗体のスクリーニング
1、スクリーニング工程
異なる病院に受験者として免疫力の低下する患者を求め、適格な患者から合計272本の全血サンプルを取得した。それをFicollリンパ球分離液(GE)に分離し、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び血漿を得た。設計された2つのHCMVgB糖タンパク質を常法により、濃度が2ug/mlになるように、発現・精製させる。ELISA試験に用いられ、272本の血液サンプル(単離された血漿)の抗体力価(血清抗体力価をEC50で評価する)を検出し、癌の種類を分類した。
【0159】
2、結果
272本の臨床血液サンプルは、17種の異なる癌疾患に属し、その結果、268本のサンプルは、血清陽性であり、陽性率が98.53%であることを示した。これは、研究で報告されたHCMVの人の群れにおける感染率の結論と一致している。これらのサンプルは、それぞれ神経膠芽細胞腫、肺癌、直腸癌、肝臓癌、胃癌、食道癌、結腸癌、腎臓癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、膀胱癌、胆嚢癌、子宮頸癌、エリテマトーデスなどの患者に属し、HCMVが癌患者や自己免疫疾患の患者などの免疫不全人の群れに広く存在していることを示した。これらの患者の体内に抗ヒトサイトメガロウイルス抗体が存在するため、そのB細胞から抗ヒトサイトメガロウイルスモノクローナル抗体をスクリーニングし、得ることができる。
【0160】
実施例3 抗ヒトサイトメガロウイルスモノクローナル抗体遺伝子の単離
1、gB_Towne strain及びgB_Con.Strainタンパク質抗原特異的B細胞の選別
記憶B細胞の選別収率を向上させるために、2つのHCMVgB糖タンパク質(gB_Towne Strain及びgB_Con.Strain)を同時に用い、実施例3における番号Es0018のサンプルに対して特異的選別を行った。選別手順は、以下の通りである。
【0161】
ヒト末梢血におけるgB抗原特異的記憶Bリンパ球は、フローサイトメトリー(BD FACSAria)により、メーカーから提供された取扱説明書に従い、CD3-/CD14-/CD16-/CD235a-/CD19+/SIgD-/標識のgB_Towne及びgB_Con・+を利用し、ロジックゲートを設定し、シングルセルソーティングモードで単独の記憶Bリンパ球を取得した。選別の特異性を向上させるために、標識のgB_Towne及びgB_Conは、いずれも二色蛍光(PE-Cy7及びBV421)で標記され、最終に、対角線上に位置する二重陽性の細胞及び論理ゲート内に位置する単一陽性の細胞を選別した。
【0162】
3、シングルセル抗体可変領域遺伝子の増幅手順
手順は、以下の通りである。全ての既知の7つのヒト抗体重鎖ファミリーと13の軽鎖ファミリーとを増幅するための、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE等の抗体可変領域遺伝子のRT-PCR/PCRプライマー及び実験条件を含む完全なセットは、成功に設計・構築されている(CN 107760690Bを参照する)。
【0163】
4、結果
サンプルから複数の記憶B細胞を単離し、設計されたプライマーを利用してシングルセルに対して抗体可変領域遺伝子の増幅を行って抗体遺伝子配列を得、抗体重鎖VH遺伝子フラグメントは、体細胞変異率が10%~18.5%に分布していた。シングルセル抗体可変領域遺伝子を増幅した後、それぞれ103個の抗体重鎖可変領域遺伝子配列及び109個の抗体軽鎖可変領域遺伝子配列を得、ペアリングした後、抗体の陽性率は、32.4%であり、陽性抗体の重鎖体細胞変異率が7%~16.5%に分布し、軽鎖体細胞変異率は2%~15%に分布していることが検出された。
【0164】
実施例4 抗ヒトサイトメガロウイルスモノクローナル抗体の発現
1、発現ベクターの構築
上記ペアリングした抗体の重鎖可変領域遺伝子配列及び軽鎖可変領域遺伝子配列について、それぞれ線形発現ベクターを構築し、Overlapping PCR法により、単離された重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子をそれぞれの定常領域配列と組み合わせ(Crystal Structure of the Human Cytomegalovirus Glycoprotein B,Heidi G.Burke and Ekaterina E.Heldwein,PLoS Pathog.2015Oct;11(10):e1005227)、全長重鎖及び軽鎖遺伝子を形成し、抗体のスクリーニング及び同定をするために、組換え抗体を発現させた。
【0165】
2、陽性抗体のスクリーニング
トランスフェクション試薬(Quigen)を使用し、上記で得られた重鎖及び軽鎖遺伝子を含む発現ベクター(PCDNA3.1)をHEK293細胞にトランスフェクトし、12ウェルプレートにおいて、FBS含有DMEM培地を用い48時間培養した。48時間後、細胞培養上清を回収し、ELISAを使用して抗体の発現レベル及び抗原HCMVgB糖タンパク質(gB_Towne strain及びgB_Con.Strain)への結合を検出した。標準品は、TRN006(CN 103910796B)であり、初期濃度は0.5ug/mLであり、細胞培養上清の初期濃度は、原液であり、4つの勾配で10倍希釈した。市販されているSuperBlockを用いて1:10000でマウス抗ヒトIgG Fab-HRP(Abcam)を希釈した。反応終了後、450nm(サンプル)と630nm(マイクロプレートプレートのウェル)の2波長測定値を多機能マイクロプレートリーダーで検出し、最終的な計算値はOD450-OD630でした。TRN006 OD450-OD630の値が対応する濃度と良好な線形関係(R2>0.99)を持つプロットを選択し、線形回帰方程式を確立し、線形間隔に該当するサンプル値を使用して抗体濃度を計算した。
【0166】
3、同定結果
最終的に、ペアリングした134個の抗体における重鎖及び軽鎖に対して、それぞれ線形発現ベクターを構築し、HEK293細胞にコトランスフェクトした。42株の陽性結合抗体をスクリーニングし、陽性率は32.3%に達し、そのうち、36株の抗体は、gB_Towne strainに対して強い陽性を示し、24株の抗体はgB_Con.strainとgB_Towne strainに対して強い陽性を示した。
【0167】
スクリーニングされた本発明に係る4個の抗体において、重鎖は、SEQ ID NO:1-4のCDR1、及び/又は、SEQ ID NO:5-8のCDR2、及び/又はSEQ ID NO:9-12のCDR3を含んでもよい。具体的な実施例において、軽鎖は、SEQ ID NO:21-24のCDR1、及び/又はSEQ ID NO:25-28のCDR2、及び/又はSEQ ID NO:29-32的CDR3を有する。
【0168】
TRN1017
対応するDNA調製物のDNAシーケンシング(Invitrogen)により、gB_Con.strain及びgB_Towne strainの両方に強い陽性を示した抗体24株を同定した。抗体の1つは、TRN1017として同定され、
SEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域アミノ酸配列、及びSEQ ID NO:33に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有し、
SEQ ID NO:37に示される重鎖アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:38に示される軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0169】
TRN1018
対応するDNA調製物のDNAシーケンシングにより、gB_Con.strain及びgB_Towne strainの両方に強い陽性を示した抗体24株を、同定した。抗体の1つは、TRN1018として同定され、
SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:34に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有し、
SEQ ID NO:39に示される重鎖アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:40に示される軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0170】
TRN1019
対応するDNA調製物のDNAシーケンシングにより、gB_Con.strain及びgB_Towne strainの両方に強い陽性を示した抗体24株を、同定した。抗体の1つは、TRN1019として同定され、
SEQ ID NO:15に示される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:35に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有し、
SEQ ID NO:41に示される重鎖アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:42に示される軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0171】
TRN1020
対応するDNA調製物のDNAシーケンシングにより、gB_Con.strain及びgB_Towne strainの両方に強い陽性を示した抗体24株を、同定した。抗体の1つは、TRN1020として同定され、
SEQ ID NO:16に示される重鎖可変領域アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:36に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を有し、
SEQ ID NO:43に示される重鎖アミノ酸配列、及び、SEQ ID NO:44に示される軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0172】
上記の可変領域アミノ酸配列を分析し、IMGT命名方式を利用して、これら4つの抗体のCDR配列を次のように決定した。
【0173】
【表6】
【0174】
実施例5 抗ヒトサイトメガロウイルスモノクローナル抗体の抗ウイルス中和能力の評価
1、HFF細胞による抗体の抗ウイルス中和能力の評価
細胞モデルHFF、HCMVの標準ウイルス株Towne及びウイルス株TB40E(いずれもATCCから購入)を使用し、抗体の中和能力を評価した。コントロールは、それぞれ既に報告されたHCMVに対して陽性を示す抗体SM5_1及びSM10(Crystal Structure of the Human Cytomegalovirus Glycoprotein B,Heidi G.Burke and Ekaterina E.Heldwein,PLoS Pathog.2015Oct;11(10):e1005227)である。感染する直前に、細胞密度が約90%に達するように、96ウェルプレートに5.00E+03個/ウェルのHFF細胞を接種する。抗体の初期濃度を100μg/mLとし、PBSにおいて合計8つ勾配で3倍希釈し、各ウェルに10μLを加え、ウイルス対照群に10μLのDMEM培地を加えた。細胞をウイルス量MOI=0.96で感染させ、即ち、40ul/ウェルのウイルスストック溶液を加え、混合した後、インキュベーターにおいて37℃で1時間インキュベートし、ウイルス感染液とした。96ウェルプレートから細胞上清を捨て、PBS 100μLで2回洗浄する。異なる抗体希釈度を有するウイルス感染液50μLを96ウェルプレートに加え、インキュベーターで37℃で4時間感染させた。ウイルス感染液を吸引して廃棄し、PBS 100μLで1回洗浄した。各ウェルにDMEM培地100μLを添加し、5%COインキュベーターにおいて、37℃で96時間培養し、この間、毎日、細胞の状態を観察・記録した。細胞培養上清を廃棄し、PBSで2回洗浄した。各ウェルに4%パラホルムアルデヒド50μLを加え、室温で30min置いて細胞を固定し、PBSで2回洗浄した。10μg/mLのHoechst 100μLで細胞核を15分間染色し、PBS 200μLで3回洗浄し(96ウェルプレートをわずかに振とうさせる)、青色の光で細胞核の染色を観察し、緑色の光でウイルス感染を観察した。485nmの励起光にて535nmの放出光の蛍光強度を測定し、相対蛍光強度を使用し、細胞のウイルス感染程度及び抗体のウイルス感染に対する効果を評価した。結果を計算した(計算式:抗ウイルス感染効果=100-抗体ウイルス複合体群の蛍光強度/ウイルス群の蛍光強度*100)。
【0175】
2、初代HUVEC細胞における抗体の抗ウイルス中和能力の評価
初代HUVEC細胞系において、抗体のウイルスTowneの感染に対する能力を評価した。
【0176】
感染前に、細胞密度が約80%に達するように、96ウェルプレートに4.00E+04個/ウェルのHUVEC細胞を接種する。抗体の初期濃度を100μg/mLとし、8つの勾配で3倍希釈し、各ウェルに10μLを加え、ウイルス対照群に培地10μLを加えた。細胞をウイルス量MOI=5に感染させ、即ち、40ul/ウェルのウイルスストック溶液を加え、混合した後、インキュベーターにおいて、37℃で1時間インキュベートし、ウイルス感染液とした。96ウェルプレートから細胞上清を捨て、PBS 100μLで2回洗浄した。異なる抗体希釈度を有するウイルス感染液50μLを96ウェルプレートに加え、インキュベーターにおいて、37℃で4時間感染させた。ウイルス感染液を吸引して廃棄し、各ウェルにDMEM培地100μLを追加し、5%COインキュベーターにおいて、37℃で7日間培養し、この間、毎日、細胞の状態を観察・記録した。細胞培養上清を廃棄し、PBSで2回洗浄した。各ウェルに4%パラホルムアルデヒド50μLを加え、室温で30min置いて細胞を固定し、PBSで2回洗浄した。10μg/mLのHoechst 100μLで細胞核を15分間染色し、PBS 200μLで3回洗浄し(96ウェルプレートをわずかに振とうさせる)、青色の光ので細胞核の染色を観察し、緑色の光でウイルス感染を観察した。485nmの励起光にて535nmの放出光の蛍光強度を測定し、相対蛍光強度を使用し、細胞のウイルス感染程度及び抗体のウイルス感染に対する効果を評価した。結果を計算した(計算式:抗ウイルス感染効果=100-抗体ウイルス複合体群の蛍光強度/ウイルス群の蛍光強度*100)。
【0177】
3、結果
結果図におけるSM5_1とSM10は、既に報告された抗サイトメガロウイルス抗体であり、陽性対照として用いられた。狂犬病ウイルス抗体であるTRN079(CN201611069303.4)と、HCV抗体であるHCV0082との2種類の関連性なし抗体は、陰性対照として用いられた。図1Aに示されているように、HFF細胞系において、TRN1017、TRN1018、TRN1019、TRN1020という4株の抗体は、HCMV標準ウイルス株Towneに対するEC50が、0.017-0.074ug/mlであった。EC50とは、半数効果濃度、即ち、50%の実験動物において、特定の応答を示す濃度、又は、応答指標が半分に抑制される濃度を指す。EC50が小さいほど、抗体の中和能が強いと示す。図1Bに示されているように、HFF細胞系において、TRN1017、TRN1018、TRN1019、TRN1020という4株の抗体は、HCMVの臨床ウイルス株TB40Eに対するEC50が、0.015-0.091ug/mlであった。前記結果により、本発明の抗体は、HCMVの標準ウイルス株Towneとウイルス株TB40Eとの両方に対して、極めて高い中和活性を有することを示した。
【0178】
また、初代HUVEC細胞系において、TRN1017とTRN1020との2株の抗体のウイルスTowneによる感染に対する能力を評価した。その結果、抗体も、極めて高い中和活性を示し、EC50がそれぞれ0.089ug/ml及び0.041ug/mLであった。
【0179】
HUVECは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells)であり、HFFは、ヒト包皮線維芽(human foreskin fibroblast,HFF)細胞である。上記の結果より、本発明に係る抗体は、異なるHCMVウイルス株に対していずれも高い中和能力を有し、さらに、本発明に係る抗体が異なるタイプの細胞に感染したHCMVを中和する能力を有するため、本発明に係る抗体は、個体における異なる組織部位でのHCMVを中和する潜在力がある。
【0180】
実施例6 抗体の親和力の測定
Biacore(SPR原理)により、抗体のgB糖タンパク質(gB_Towne strain)への結合能をin vitroで測定した。アミノカップリングにより、抗ヒト‐IgG(Fc)をCM5チップの2つのチャネルにカップリングし、最終的に5485.4RUをチャネル1にカップリングされ、5622.4RUをチャネル2にカップリングした。捕捉抗体の濃度は、1ug/mlで、結合時間は、45sであった。結合された抗原タンパク質gB0049の濃度は、1.25ug/ml、2.5ug/ml、5ug/ml、10ug/ml、20ug/mlであり、結合時間は、90sであり、解離時間は、600sであった。再生液は、3M MgClであり、再生時間は、30sであった。
【0181】
結果を図2に示し、抗体のgB糖タンパク質への結合のK値は、いずれもnMオーダーであり、TRN1020のK値は、0.60nMであり、TRN1018のK値は、27.9nMであり、TRN1017のK値は、1.13nMであり、本発明に係る抗体が抗原gB糖タンパク質に対して高い結合力を持っていると示した。
【0182】
実施例7 抗体の抗原結合エピトープに関する研究
1、抗原脱グリコシル化の抗体結合能に対する効果
本発明は、gB糖タンパク質のグリコシル化の抗体に対する効果を研究した。まず、キットを用い、gB_Towneタンパク質の12個のグリコシル化部位(N208、N281、N284、N302、N341、N383、N405、N409、N417、N447、N452及びN456)をグルタミンに単一変異させ(アスパラギンとグルタミンとは、物理的及び化学的特性が近いため、変異の空間構造に対する影響を最小限にする)、間接ELISAによりgB糖タンパク質変異体と、SM10、TRN1017及びTRN1019という3株の抗体との結合活性を検出した。
【0183】
図3に示されているように、gB糖タンパク質N208、N281、N284、N302、N341、N383、N405、N409、N417,N447、N452及びN456のグリコシル化部位をグルタミンに突然変異した後、本発明に係る抗体TRN1017、TRN1019は、gB糖タンパク質N208Q変異体への結合力が顕著に低下したが、他のgB糖タンパク質変異体への結合力の変化が明らかではなかった。また、対照抗体SM10の結合エピトープが空間構造でN208部位に隣接していると考慮すると、SM10のgB糖タンパク質N208Q変異体への結合力の変化が明らかではなく、N208の変異がそれに隣接する空間構造を多すぎ変化させないことを示し、gB糖タンパク質のN208部位は、本発明に記載の抗体における重要な抗原結合エピトープであることを実証した。
【0184】
3、gB糖タンパク質アミノ酸部位の特異的変異
これら抗体のエピトープ情報をさらに特定するために、N208部位を中心とし、上流及び下流のアミノ酸に対してアラニンスキャン(186aa-228aa)を行い、最終的にL213、Y226部位をスクリーニングした。SPR原理により、TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN1020という抗体とこれら2つの部位の変異体との親和性定数を決定した。その結果、抗体のこれらの2つの変異体に対する結合能力は、有意に低下したことを示し(対照抗体1G2の結合が有意に変化しなかった)、L213、Y226は、本発明に係る抗体における重要なエピトープであることを示した。
【0185】
これにより、これら抗体の3つのエピトープアミノ酸の情報(N208、L213、及びY226)が決定され、これら3つのアミノ酸は、いずれも構造でgB糖タンパク質の融合ドメイン(R150-C250アミノ酸という領域は、gB糖タンパク質の膜融合機能を実行するための構造ベースである)に位置している。このドメインを標的とする抗体は、ウイルスの宿主細胞への侵入を直接的に阻害することができることが確認された(図4)。
【0186】
以上より、既に報告されたAD-1、AD-2、AD-4及びAD-5ドメインに対する抗体(Structure of HCMV glycoprotein B in the postfusion conformation bound to a neutralizing human antibody,Sumana Chandramouliら, Nature Communications volume 6,Article number:8176(2015));Germline V-genes sculpt the binding site of a family of antibodies neutralizing human cytomegalovirus,Christy A Thomsonら,The EMBO Journal(2008)27,2592-2602)と異なり、本発明に係る抗体のエピトープは、gB糖タンパク質の融合ドメインに対する。そして、これらの抗体は、いずれも高いウイルス中和活性を示し、高い製薬潜在力を持っている。また、抗体エピトープ情報への同定は、HCMV_gB糖タンパク質構造ワクチンの設計に理論的基礎を提供する。
【0187】
実施例8 抗体抗核耐性試験
Hep-2細胞は、ヒト喉頭癌上皮細胞であり、それの抗原スペクトルが広く、抗原特異性が高く、抗原含有量が高い等の特徴があるため、国際的には、抗核抗体を検出するための標準的な方法として、通常にHep-2細胞を基質とする間接蛍光抗体法が使用されている。本発明において、この方法を利用し、TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN1020という4株の抗体の抗核耐性を検出し、抗核抗体(ANA)検出キットの取扱説明書に従い、検出を実施した。
【0188】
その結果、TRN1017、TRN1018、TRN1019及びTRN1020という4抗体は、100ug/mlの濃度でHep-2細胞に対して免疫蛍光反応を起こさず、抗体がHep-2細胞に対して自己免疫反応を起こさないと示した。
【0189】
上記の実施例の説明は、ただ本発明の方法及び要旨を理解するためである。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に対していくつかの改良及び修飾を行うこともでき、これらの改良及び修飾も本発明の特許請求の範囲に該当することを指摘すべきである。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1> 重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
前記VHは、SEQ ID NO:13、14、15又は16に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRを含み、並びに、
前記VLは、SEQ ID NO:33、34、35又は36に示される軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRを含む、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
<2> 以下の相補性決定領域(CDR)を含む、<1>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
(1)SEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域の3つのCDR、及び、SEQ ID NO:33に示される軽鎖可変領域の3つのCDR、
(2)SEQ ID NO:14に示される重鎖可変領域の3つのCDR、及びSEQ ID NO:34に示される軽鎖可変領域の3つのCDR、
(3)SEQ ID NO:15に示される重鎖可変領域の3つのCDR、及び、SEQ ID NO:35に示される軽鎖可変領域の3つのCDR、
又は、
(4)SEQ ID NO:16に示される重鎖可変領域の3つのCDR,及び、SEQ ID NO:36に示される軽鎖可変領域の3つのCDR
<3> 以下の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、<1>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
(i)前記VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
HCDR1は、SEQ ID NO:1、2、3又は4に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
HCDR2は、SEQ ID NO:5、6、7又は8に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
HCDR3は、SEQ ID NO:9、10、11又は12に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、並びに、
(ii)前記VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
LCDR1は、SEQ ID NO:21、22、23又は24に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
LCDR2は、SEQ ID NO:25、26、27又は28に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
LCDR3は、SEQ ID NO:29、30、31又は32に示されるアミノ酸配列から選ばれる配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成される。
<4> 以下の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、<1>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
(i)前記VHは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:9を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記VLは、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:29を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
或いは、
(ii)前記VHは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:6及びSEQ ID NO:10を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記VLは、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:26及びSEQ ID NO:30を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
或いは、
(iii)前記VHは、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:11を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記VLは、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:27及びSEQ ID NO:31を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
或いは、
(iv)前記VHは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:8及びSEQ ID NO:12を含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は、前記配列から構成されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記VLは、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:32を含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、前記配列から構成されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
<5> 重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VLを含む、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
(a)重鎖可変領域VHは、
(i)SEQ ID NO:13、14、15又は16から選ばれるアミノ酸配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(ii)SEQ ID NO:13、14、15又は16から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii)SEQ ID NO:13、14、15又は16から選ばれるアミノ酸配列に対して1つ又は複数(好ましくは、10つ以下、より好ましくは、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、CDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされないアミノ酸配列を含み、
並びに、
(b)軽鎖可変領域VLは、
(i)SEQ ID NO:33、34、35又は36から選ばれるアミノ酸配列と90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(ii)SEQ ID NO:33、34、35又は36から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii)SEQ ID NO:33、34、35又は36から選ばれるアミノ酸配列に対して1つ又は複数(好ましくは、10つ以下、より好ましくは、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、CDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされないアミノ酸配列を含む、
ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント。
<6> 以下の重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VLを含む、<5>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
(i)前記VHは、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
前記VLは、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
(ii)前記VHは、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
前記VLは、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
(iii)前記VHは、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
前記VLは、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iv)前記VHは、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
前記VLは、SEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成される。
<7> 重鎖及び軽鎖を含む、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
(a)重鎖は、
(i)SEQ ID NO:37、39、41又は43から選ばれるアミノ酸配列と85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
(ii)SEQ ID NO:37、39、41又は43から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii)SEQ ID NO:37、39、41又は43から選ばれるアミノ酸配列に対して1つ又は複数(好ましくは、20つ以下又は10つ以下、より好ましくは、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、好ましくは、重鎖のCDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされなく、より好ましくは、重鎖可変領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされないアミノ酸を含み、
及び/又は、
(b)軽鎖は、
(i)SEQ ID NO:38、40、42又は44から選ばれるアミノ酸配列と85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、
(ii)SEQ ID NO:38、40、42又は44から選ばれるアミノ酸配列を含む、或いは、前記アミノ酸配列から構成され、又は、
(iii)SEQ ID NO:38、40、42又は44から選ばれるアミノ酸配列に対して1つ又は複数(好ましくは、20つ以下又は10つ以下、より好ましくは、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、1つ以下)のアミノ酸変更(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、アミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列であって、好ましくは、軽鎖のCDR領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされなく、より好ましくは、軽鎖可変領域において、前記アミノ酸変更が引き起こされないアミノ酸配列を含む、
ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント。
<8> ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、当該抗体又はその抗原結合フラグメントは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるエピトープに結合し、前記エピトープは、gB糖タンパク質の融合ドメインにおけるN208、L213及びY226からなる群から選ばれる1つ又は複数のアミノ酸残基を含む、ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント。
<9> 以下の相補性決定領域(CDR)を含む、<8>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:15に示される重鎖可変領域のHCDRにおける1つ、2つ又はすべて3つのCDR、及び/又は、
SEQ ID NO:33又はSEQ ID NO:35に示される軽鎖可変領域のLCDRにおける1つ、2つ又はすべて3つのCDR
<10> 以下の相補性決定領域(CDR)を含む、<8>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
SEQ ID NO:1又は3に示されるHCDR1、SEQ ID NO:5又は7に示されるHCDR2、SEQ ID NO:9又は11に示されるHCDR3における1つ、2つ又はすべて3つのCDR、及び/又は、
SEQ ID NO:21又は23に示されるHCDR1、SEQ ID NO:25又は27に示されるHCDR2、SEQ ID NO:29又は31に示されるHCDR3における1つ、2つ又はすべて3つのCDR
<11> 以下の重鎖可変領域、及び/又は、軽鎖可変領域を含む、<8>に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:15に示される重鎖可変領域、
SEQ ID NO:33又はSEQ ID NO:35に示される軽鎖可変領域
<12> 約50nM以下のK でヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質に結合する、<1>~<11>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
<13> ヒトサイトメガロウイルスgB糖タンパク質の融合ドメインに結合することができる、<1>~<11>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
<14> フレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列である、<1>~<11>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
<15> 前記抗体は、ヒトモノクローナル抗体である、<1>~<11>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
<16> 前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)又は(Fab’) 、単一ドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)又は線形抗体から選ばれる、<1>~<11>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
<17> 前記抗体は、IgG類抗体であり、例えば、IgG1形態の抗体、IgG2形態の抗体、IgG3形態の抗体、又は、IgG4形態の抗体である、前項のいずれか一項に記載の抗体。
<18> <1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
<19> 発現ベクターである、<18>に記載の核酸を含むベクター。
<20> <19>に記載のベクターを含む宿主細胞であって、真核細胞又は原核細胞、例えば、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は、植物細胞であり、好ましくは、CHO細胞又は293細胞、例えば、HEK293細胞である、宿主細胞。
<21> 前記項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、<18>に記載の核酸又は<19>に記載の発現ベクターを含む宿主細胞を培養することを含む、方法。
<22> 前記宿主細胞又は培地から前記抗体又はその抗原結合フラグメントを回収することをさらに含む、<21>に記載の方法。
<23> <1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び、標識を含む、免疫コンジュゲート。
<24> <1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、又は、<23>に記載の免疫コンジュゲート、及び、任意の1種又は複数種の、緩衝液又は希釈剤を含む、医薬担体、医薬賦形剤などの医薬補助剤、を含む医薬組成物。
<25> <1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、又は、<23>に記載の免疫コンジュゲートの、HCMV感染又はHCMV関連疾患の検出、治療、予防及び/又は軽減のための医薬組成物又はキットの調製における使用。
<26> 有効量の<1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、<23>に記載の免疫コンジュゲート、又は、<24>に記載の薬物組成物を、治療を必要とする個体に投与することを含む、ヒトの個体のHCMV感染又はHCMV関連疾患を予防又は治療する方法。
<27> 有効量の<1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、<23>に記載の免疫コンジュゲート、又は、<24>に記載の薬物組成物を、必要がある個体に投与することを含む、HCMVに感染したヒトの個体の抵抗性を向上、増強、又は刺激する方法。
<28> 前記個体は、HCMV感染者である、<26>又は<27>に記載の方法。
<29> 前記個体は、移植患者、妊娠婦、新生児、AIDS患者、癌患者、又は、自己免疫疾患患者である、<26>又は<27>に記載の方法。
<30> <1>~<17>のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを個体又はサンプルに接触させ、前記抗体又はその抗原結合フラグメントのHCMVに結合し中和する能力を検出することを含む、個体又はサンプルにおけるHCMVを中和する方法。
【0190】
配列表:
重鎖相補性決定領域CDR配列情報表
【表7】
【0191】
軽鎖相補性決定領域CDR配列情報表
【表8】
【0192】
抗体重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列情報表
【表9】
【0193】
抗体重鎖(HC)、軽鎖(LC)のアミノ酸配列
【表10】

【表11】

【表12】
【0194】
軽鎖λ定常領域:
【化3】

軽鎖kappa(κ) 定常領域:
【化4】

重鎖定常領域:
【化5】
図1A
図1B
図2
図3
図4
【配列表】
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