IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7458494組成物、複合セパレータおよびその作製方法、リチウムイオン電池
<>
  • 特許-組成物、複合セパレータおよびその作製方法、リチウムイオン電池 図1
  • 特許-組成物、複合セパレータおよびその作製方法、リチウムイオン電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】組成物、複合セパレータおよびその作製方法、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20240322BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/454 20210101ALI20240322BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20240322BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/44
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/431
H01M50/434
H01M50/429
H01M50/411
H01M50/451
H01M50/454
H01M50/457
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022549092
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2020085324
(87)【国際公開番号】W WO2021208071
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518279484
【氏名又は名称】シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リュウハオ
(72)【発明者】
【氏名】王金广
(72)【発明者】
【氏名】林陸菁
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/212252(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/042684(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/000164(WO,A1)
【文献】特開2017-208338(JP,A)
【文献】特開2017-135111(JP,A)
【文献】国際公開第2020/060886(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合セパレータを作製する組成物であって、
重量部で、ポリマー樹脂10~100部、高分子粘着剤0.5~10部、無機ナノ粒子粉体0~50部ナノワイヤ0~40部および核剤0.1~10部を含み、
前記ポリマー樹脂は、低融点ポリマーと高融点ポリマーとを含み、
前記低融点ポリマーおよび前記高融点ポリマーは、分子量、分子構造及び結晶化度のうちの少なくとも1つにおいて異なる同一種類の物質からなり、
前記低融点ポリマーと前記高融点ポリマーとの重量比は、(5~90):(10~95)であり、
前記低融点ポリマーの融点は、145℃以下であり、前記高融点ポリマーの融点は、146~500℃である
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記低融点ポリマーの融点は、100~145℃であり、前記高融点ポリマーの融点は、146~200℃であり
記ポリマー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-ジクロロエテン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン、ポリn-ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、アクリルアミドまたはポリメチルアクリレートのうちのいずれか1種を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ナノワイヤは、長いナノワイヤと短いナノワイヤとを含み、前記長いナノワイヤの長さは、30~150μmであり、前記短いナノワイヤの長さは、0.1~29μmであり、
以下(a)~(c):
(a)前記長いナノワイヤと前記短いナノワイヤとの重量比が、(80~95):(20~5)である、
(b)前記長いナノワイヤと前記短いナノワイヤの直径が、いずれも1~100nmである、
(c)前記長いナノワイヤおよび前記短いナノワイヤが、それぞれ互いに独立するものであり、それぞれ、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、炭化ホウ素ナノワイヤ、ナノセルロース、水酸化銅ナノワイヤ、一酸化ケイ素ナノワイヤまたはハイドロキシアパタイトナノワイヤから選択される1種または複数の種である
の特徴のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
以下(a)~(c):
(a)前記核剤が、安息香酸、アジピン酸、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、p-フェノールスルホン酸ナトリウム、p-フェノールスルホン酸カルシウム、ナトリウムフェノラート、窒化ホウ素、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのうちの少なくとも1種を含む、
(b)前記無機ナノ粒子粉体が、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、ベーマイト、酸化チタン、炭酸カルシウムまたは二酸化ジルコニウムのうちの少なくとも1種を含む、
(c)前記高分子粘着剤が、スチレンブタジエンラテックス、スチレンアクリルラテックス、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチルアクリレート、ポリメタクリル酸ブチル、エチレン-酢酸エチル共重合体またはポリウレタンのうちの少なくとも1種を含む
の特徴のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
以下(a)~(c):
(a)前記組成物が、重量部で、分散剤0.5~10部をさらに含み、前記分散剤が、カルボン酸塩類フッ素分散剤、リン酸トリエチル、スルホン酸塩類フッ素分散剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムまたはポリエチレングリコールのうちの少なくとも1種を含む、
(b)前記組成物が、重量部で、帯電防止剤0.1~5部をさらに含み、前記帯電防止剤が、ポリチオフェン、オクタデシルジメチル四級アンモニウムナイトレート、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、N-ヘキサデシルピリジニウム硝酸塩、N-アルキルアミノ酸塩、ベタイン系またはイミダゾリニウム塩類誘導体のうちの少なくとも1種を含む、
(c)前記組成物が、重量部で、孔形成剤0.1~10部をさらに含み、前記孔形成剤は、純水または多価アルコールのうちの少なくとも1種を含む
の特徴のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
基材と、
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物とを含み、
前記組成物が、前記基材の表面に塗布されて硬化している
ことを特徴とする複合セパレータ。
【請求項7】
低融点ポリマーと、高融点ポリマーと、高分子粘着剤と、長いナノワイヤとを均一に混合して、第1混合液を得るステップと、
有機溶剤と孔形成剤とを混合して、第2混合液を得るステップと、
前記第1混合液と、前記第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合して、スラリーを得るステップと、
前記スラリーを基材の表面に塗布して硬化させるステップと、を含み
前記長いナノワイヤの長さは、30~150μmであり、短いナノワイヤの長さは、0.1~29μmであり、
以下(a)~(c)の特徴のうちの少なくとも1つを含み、
(a)前記第1混合液内にさらに核剤が加えられ、
(b)マイクログラビアコート法を利用して不連続塗布を行い、
(c)前記有機溶剤は、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシドまたはN-メチルピロリドンのうちのいずれか1種を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の複合セパレータの作製方法。
【請求項8】
前記第1混合液と、第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合するステップは、
前記第2混合液を2つに分け、まず、一つの第2混合液を第1混合液、短いナノワイヤおよび無機ナノ粒子粉体と混合し、そしてもう一つの第2混合液を加えることを含み、
前記一つの第2混合液と前記もう一つの第2混合液との体積比は、(6~8):(4~2)である
ことを特徴とする請求項7に記載の複合セパレータの作製方法。
【請求項9】
前記第1混合液と、第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合して、分散剤、帯電防止剤をさらに加えて均一に混合して、前記スラリーを得ることを含む
ことを特徴とする請求項7に記載の複合セパレータの作製方法。
【請求項10】
請求項6に記載の複合セパレータを含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウムイオン電池の分野に属し、具体的に、組成物、複合セパレータおよびその作製方法、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3C(コンピュータ、通信、電子製品)市場および電気自動車市場の繁栄に伴い、リチウムイオン電池は、よく使用されるエネルギーデバイスとして、生活に不可欠なものとなっており、世界中で大量生産される工業製品である。セパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成要素の1つとして、正極と負極との間に電子絶縁の役割を果たすとともにリチウムイオン移動のための微細孔通路を提供するように機能し、電池の安全性を確保しかつ電池性能を左右する重要な材料である。
【0003】
現在、3C製品がますます小型化になっており、電池の高いエネルギー密度に対する需要が高まっており、狭い空間でより多くの電極材料を収容する必要があるため、セパレータの厚さも薄くなりつつある。電気自動車の航続距離の向上に伴い、電池のエネルギー密度に対する要求もさらに高まっているので、セパレータの厚さをより薄くする必要がある。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン電池は、セパレータが薄くなると、以下の性能上の問題がある。セパレータは、静電気が大きいため、電池の組み立ての際に、極板とよく接着することができなったり、高温条件下で溶融して縮小したりして、正極と負極とが接触して電池が短絡し、高温下で電池の燃焼や爆発が発生することがある。そして、薄いセパレータの機械的特性が劣るため、リチウムイオン電池製品の性能が低下する。また、現在よく使われるポリオレフィン微多孔質フィルムの電解液吸収性が悪く、充放電過程におけるリチウムイオンの伝導に不利である。
【発明の概要】
【0005】
本出願の実施例は、組成物、複合セパレータおよびその作製方法、リチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【0006】
第1局面において、本出願に係る組成物は、複合セパレータを作製するものであり、重量部で、ポリマー樹脂10~100部、高分子粘着剤0.5~10部、無機ナノ粒子粉体0~50部およびナノワイヤ0~40部を含み、ポリマー樹脂は、低融点ポリマーと高融点ポリマーとを含み、低融点ポリマーおよび高融点ポリマーは、同一の物質からなり、低融点ポリマーと高融点ポリマーとの重量比は、(5~90):(10~95)であり、低融点ポリマーの融点は、145℃以下であり、高融点ポリマーの融点は、146~500℃である。
【0007】
高融点ポリマーは、分子量が高く、膨潤度が低融点ポリマーの膨潤度よりも低いが、低融点ポリマーの界面結合力が高融点ポリマーよりも高い。したがって、高融点ポリマーと低融点ポリマーとの併用により、複合セパレータと極板との界面結合力を高めるとともに膨潤を抑えることができ、複合セパレータの耐熱性を高めることができる。したがって、電解液において複合セパレータと極板との脱離、電池の膨れのリスクを軽減でき、電池短絡などの問題を低減することができる。
【0008】
第2局面において、本出願に係る複合セパレータは、基材と、上記の組成物とを含み、組成物が、基材の表面に塗布されて硬化している。
【0009】
該複合セパレータは、極板との界面結合力が強く、膨潤が発生し難く、耐熱性および機械的特性が優れる。
【0010】
第3局面において、本出願に係る上記の複合セパレータの作製方法は、低融点ポリマーと、高融点ポリマーと、高分子粘着剤と、長いナノワイヤとを均一に混合して、第1混合液を得るステップと、有機溶剤と孔形成剤とを混合して、第2混合液を得るステップと、第1混合液と、第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合して、スラリーを得るステップと、スラリーを基材の表面に塗布して硬化させるステップと、を含み、任意選択で、第1混合液内にさらに核剤が加えられ、任意選択で、マイクログラビアコート法を利用して不連続塗布を行い、任意選択で、有機溶剤は、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシドまたはN-メチルピロリドンのうちのいずれか1種を含む。
【0011】
該方法は、相転換法を利用して複合セパレータを作製し、孔径および空隙が均一な多孔質フィル構造を得ることができる。ナノワイヤを加えることで、硬化で得た塗布層に疎に分散する超大多孔質構造が減少され、構造が強固で、緻密かつ均一な大きい多孔質構造となり、複合セパレータの機械的強度を効果的に向上させることができる。長いナノワイヤ、短いナノワイヤおよび無機ナノ粒子粉体を徐々に加えることで、塗布層の構造は、疎状態→半架橋密状態→密堆積状態のように、漸次に変化し、塗布層の耐熱収縮性および塗布フィルムの機械的特性を著しく向上させる。さらに、パターンマイクログラビアコート法を利用して不連続塗布を行うことで、塗布層の比表面積が高くなり、したがって、塗布層の電解液に対する吸収性能が優れ、充放電過程におけるリチウムイオンの伝導を促進することができる。
【0012】
第4局面において、本出願に係るリチウムイオン電池は、上記の複合セパレータを含む。このようなリチウムイオン電池は、上記の複合セパレータの設置により、リチウムイオン伝導性、機械的特性が向上するとともに、正極板および負極板との結合力が強くなる。
【0013】
本出願の実施形態の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施形態に用いられる図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに他の関連図面を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施例1による複合セパレータの電子顕微鏡写真である。
図2】本開示実施例3による複合セパレータが不連続に塗布された状態の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願の実施形態は、電解液における複合セパレータと極板との脱離、電池の膨れのリスクを軽減でき、電池短絡などの問題を低減することができる複合セパレータを提供する。
【0016】
該複合セパレータは、基材と組成物とを含む。組成物は、基材の表面に塗布されて硬化している。
【0017】
本出願のいくつかの実施形態において、組成物は、重量部で、ポリマー樹脂10~100部、高分子粘着剤0.5~10部、無機ナノ粒子粉体0~50部およびナノワイヤ0~40部を含む。ポリマー樹脂は、低融点ポリマーと高融点ポリマーとを含む。低融点ポリマーと高融点ポリマーとは、同一の物質からなる。低融点ポリマーと高融点ポリマーとの重量比は、(5~90):(10~95)である。低融点ポリマーの融点は、145℃以下であり、高融点ポリマーの融点は、146~500℃である。
【0018】
低融点ポリマーを第1粘着剤とし、高融点ポリマーを第2粘着剤とし、高分子粘着剤を第3粘着剤とする。第1粘着剤が塗布層の接着力を保証するものであり、第2粘着剤が高温下での塗布層の安定性を保証するものであり、第3粘着剤が補助接着の役割を果たするものである。このようにして、相乗効果を得られる。1つまたは2つの粘着剤を用いる場合に比べて、3つの粘着剤を利用する場合、接着効果がより高く、高温下の電池であっても良好な塗布層が保たれ、適用範囲がより広い。
【0019】
さらに、ポリマー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-ジクロロエテン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン、ポリn-ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、アクリルアミドまたはポリメチルアクリレートのうちのいずれか1種を含む。
【0020】
さらに、高融点ポリマー樹脂および低融点ポリマー樹脂が同一の物質を採用すれば、使用の複雑性を軽減することができるとともに、製品の量産、調達およびその後処理に寄与できる。さらに、同一のポリマー樹脂は、分子量、分子構造、結晶化度によって、高融点ポリマーおよび低融点ポリマーに分けられる。
【0021】
また、ポリマー樹脂は、低融点ポリマーと高融点ポリマーとを含む。高融点ポリマーは、分子量が高く、膨潤度が低融点ポリマーよりも低いが、低融点ポリマーの界面結合力が高融点ポリマーよりも高い。したがって、高融点ポリマーと低融点ポリマーとの併用により、塗布層と極板との界面結合力を保証し、よい塗布層の耐熱性を有するとともに、膨潤を低下させることができる。
【0022】
任意選択で、低融点ポリマーと高融点ポリマーとの重量比は、(10~80):(15~90)である。
【0023】
例示的に、低融点ポリマーと高融点ポリマーとの重量比は、44:56または16:84である。
【0024】
さらに、低融点ポリマーの融点は、100~145℃であり、高融点ポリマーの融点は、146~200℃である。
【0025】
例示的に、低融点ポリマーの融点は、130℃であり、高融点ポリマーの融点は、180℃であり、または低融点ポリマーの融点は、135℃であり、高融点ポリマーの融点は、175℃である。
【0026】
さらに、重量部で、組成物は、核剤0.1~10部を含む。
【0027】
核剤を加えることによれば、ポリマー樹脂の結晶化度をさらに向上させ、膨潤を低減できる。また、核剤と高融点ポリマーと低融点ポリマーとを合わせて相乗効果を発揮することができるので、電解液におけるポリマー塗布層の膨潤をさらに低減し、電解液において膨張に起因したセパレータの位置ずれ、変形、電池の膨れなどのリスクを軽減できる。したがって、電解液において塗布層と極板との脱離、電池の膨れのリスクを軽減でき、電池短絡などの問題を低減することができる。
【0028】
さらに、核剤は、安息香酸、アジピン酸、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、p-フェノールスルホン酸ナトリウム、p-フェノールスルホン酸カルシウム、ナトリウムフェノラート、窒化ホウ素、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0029】
本出願のいくつかの実施形態において、ナノワイヤは、長いナノワイヤと短いナノワイヤとを含む。
【0030】
長いナノワイヤと短いナノワイヤをともに使用すれば、塗布層がより緻密になるので、複合セパレータの機械的強度を著しく向上させることができる。
【0031】
さらに、長いナノワイヤの長さは、30~150μmであり、短いナノワイヤの長さは、0.1~29μmである。
【0032】
該複合セパレータにおいてポリマーにナノワイヤが加えられており、一次元のナノオーダーの寸法を有するナノワイヤ材料は、機械的特性および熱安定性が比較的によいため、塗布層の機械的特性および熱安定性を効果的に向上させることができる。さらに、上記範囲内において、2種のナノワイヤの長さが漸減し、長いナノワイヤが骨格として役割を果たし、短いナノワイヤがサポートとして役割を果たし、両方の組合せにより、組成物の構造が疎から密になる。さらに、無機ナノ粒子粉体がポリマー樹脂内に加えられることにより、隙間を充填する。長いナノワイヤと短いナノワイヤとの間の隙間を充填したので、組成物の構造が密に堆積された状態になって、塗布層の耐熱収縮性および塗布フィルムの機械的特性が向上する。
【0033】
いくつかの実施形態において、長いナノワイヤおよび短いナノワイヤは、互いに独立するものであり、それぞれ、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、炭化ホウ素ナノワイヤ、ナノセルロース、水酸化銅ナノワイヤ、一酸化ケイ素ナノワイヤまたはハイドロキシアパタイトナノワイヤから選択される1種または複数の種である。
【0034】
さらに、任意選択で、ナノワイヤのアスペクト比(長さと直径の比)は、60超であり、ナノワイヤは、直径が1~100nmであり、長さが0.1~150μmである。
【0035】
さらに、長いナノワイヤと短いナノワイヤとの重量比は、(80~95):(20~5)である。
【0036】
さらに、任意選択で、長いナノワイヤと短いナノワイヤとの重量比は、(81~94):(19~6)である。さらに、任意選択で、長いナノワイヤと短いナノワイヤとの重量比は、(82~93):(18~7)である。さらに、任意選択で、長いナノワイヤと短いナノワイヤとの重量比は、(85~90):(15~10)である。
【0037】
例示的に、長いナノワイヤと短いナノワイヤとの重量比は、86:14、94:6または64:36である。
【0038】
さらに、長いナノワイヤと短いナノワイヤの直径は、いずれも1~100nmである。
【0039】
さらに、任意選択で、長いナノワイヤと短いナノワイヤの直径は、いずれも10~100nmである。
【0040】
例示的に、長いナノワイヤと短いナノワイヤの直径は、いずれも20nm、30nmまたは50nmである。
【0041】
さらに、長いナノワイヤの長さは、35~145μmであり、短いナノワイヤの長さは、0.2~25μmである。さらに、任意選択で、長いナノワイヤの長さは、40~130μmであり、短いナノワイヤの長さは、0.5~20μmである。さらに、任意選択で、長いナノワイヤの長さは、50~100μmであり、短いナノワイヤの長さは、1~15μmである。
【0042】
例示的に、長いナノワイヤの長さは50μmであり、短いナノワイヤの長さは10μmであり、または、長いナノワイヤの長さは100μmであり、短いナノワイヤの長さは20μmであり、または、長いナノワイヤの長さは120μmであり、短いナノワイヤの長さは24μmである。
【0043】
本出願のいくつかの実施形態において、組成物は、重量部で、ポリマー樹脂20~100部、核剤1~10部、高分子粘着剤1~10部、無機ナノ粒子粉体0.1~50部およびナノワイヤ0.1~40部を含む。
【0044】
さらに、組成物は、重量部で、ポリマー樹脂25~100部、核剤1.5~9部、高分子粘着剤1.5~9部、無機ナノ粒子粉体0.1~45部およびナノワイヤ0.1~35部を含む。
【0045】
さらに、任意選択で、組成物は、重量部で、ポリマー樹脂30~100部、核剤2~8部、高分子粘着剤2~8部、無機ナノ粒子粉体1~45部およびナノワイヤ1~35部を含む。
【0046】
さらに、無機ナノ粒子粉体は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、ベーマイト、酸化チタン、炭酸カルシウムまたは二酸化ジルコニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0047】
さらに、高分子粘着剤は、スチレンブタジエンラテックス、スチレンアクリルラテックス、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチルアクリレート、ポリメタクリル酸ブチル、エチレン-酢酸エチル共重合体またはポリウレタンのうちの少なくとも1種を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、組成物は、重量部で、孔形成剤0.1~10部をさらに含み、さらに、任意選択で、孔形成剤1~6部を含む。
【0049】
孔形成剤を加えることで、ミクロ相分離を誘発し、耐熱性の多孔質層を形成することできるので、セパレータの多孔質構造の実現がより容易になる。
【0050】
本出願のいくつかの実施例において、上記の孔形成剤は、上記のポリマー樹脂に対する貧溶媒である他の溶剤を選択することができる。
【0051】
さらに、孔形成剤は、純水または多価アルコールから選択される少なくとも1種である。純水が好ましい。これによって、形成される塗布層が凝固、水洗の工程において凝固槽や水洗槽内に多くの不純物を放出することがなく、凝固槽や水洗槽内の廃水の回収の難しさを低減できる。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、重量部で、分散剤0.5~10部をさらに含む。分散剤は、カルボン酸塩類フッ素分散剤、リン酸トリエチル、スルホン酸塩類フッ素分散剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムまたはポリエチレングリコールのうちの少なくとも1種を含む。また、任意選択で、分散剤1~5部を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、組成物は、重量部で、帯電防止剤0.1~5部をさらに含む。帯電防止剤は、ポリチオフェン、オクタデシルジメチル四級アンモニウムナイトレート、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、N-ヘキサデシルピリジニウム硝酸塩、N-アルキルアミノ酸塩、ベタイン系またはイミダゾリニウム塩類誘導体のうちの少なくとも1種を含む。また、任意選択で、帯電防止剤0.5~2.5部を含む。
【0054】
帯電防止剤を加えることで、形成されたセパレータの表面で静電気が少なくなり、セパレータと極板とを組み立てる際に平坦に貼り付けることができない問題の発生を抑えることができ、電池の組み立てが容易になる。セパレータは、耐剥離能力が優れ、正極板および負極板との結合力が強いので、電池の硬度が上げられ、電池内部の短絡のリスクが大幅に低減される。
【0055】
本出願に係る複合リチウム電池用セパレータは、基材において孔構造を有するとともに、塗布層においても多孔質構造を有する。また、孔形成剤により、孔構造をよりよく制御することができ、塗布層における孔の数を増やすことができる。これによって、複合リチウム電池用セパレータの性能をさらに向上させることができる。
【0056】
本出願のいくつかの実施形態は、複合セパレータの作製方法をさらに提供する。該複合セパレータの作製方法は、
【0057】
低融点ポリマーと、高融点ポリマーと、高分子粘着剤と、長いナノワイヤとを均一に混合して、第1混合液を得るステップと、
【0058】
有機溶剤と孔形成剤とを混合して、第2混合液を得るステップと、
【0059】
第1混合液と、第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合して、スラリーを得るステップと、
【0060】
スラリーを基材の表面に塗布して硬化させるステップと、を含む。
【0061】
該方法は、相転換法を利用して複合セパレータを作製し、孔径および空隙が均一な多孔質フィル構造を得ることができる。孔形成剤を加えることで、ミクロ相分離を誘発して、塗布層を多孔質構造にすることができる。ナノワイヤの使用により、塗布層に疎に分散する超大多孔質構造が減少され、構造が強固で、緻密かつ均一な大きい多孔質構造となり、複合フィルムの機械的強度を効果的に向上させることができる。長いナノワイヤ、短いナノワイヤおよび無機ナノ粒子粉体を徐々に加えることで、塗布層の構造は、疎状態→半架橋密状態→密堆積状態のように、漸次に変化し、塗布層の耐熱収縮性および塗布フィルムの機械的特性を著しく向上させる。本出願のいくつかの実施形態において、複合セパレータを作製するとき、重量%で、5%~50%の組成物と50%~95%の有機溶剤とを含む。
【0062】
さらに、有機溶剤は、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシドまたはN-メチルピロリドンのうちのいずれか1種を含む。
【0063】
本出願の他の選択可能な実施例において、上記の有機溶剤の代わりに、他の極性溶剤を利用してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、第1混合液内にさらに核剤が加えられる。核剤を加えることで、ポリマー樹脂の結晶化度をさらに向上させ、膨潤を低減できる。
【0065】
いくつかの実施形態において、スラリーを基材の少なくとも1つの表面に塗布して、硬化により塗布層を形成する。
【0066】
さらに、任意選択で、パターンマイクログラビアコート法を利用して不連続塗布を行い、ロール面の彫刻領域を調整することで塗布被覆率(30~95%)を調節する。これによって、塗布層の比表面積が高くなり、塗布層の電解液に対する吸収性能を向上させて、充放電過程におけるリチウムイオンの伝導を促進することができる。
【0067】
さらに、第1混合液と、第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合するステップは、第2混合液を2つに分け、まず一つの第2混合液を第1混合液、短いナノワイヤおよび無機ナノ粒子粉体と混合し、そしてもう一つの第2混合液を加えることを含む。
【0068】
一つの第2混合液ともう一つの第2混合液との体積比は、(6~8):(4~2)である。
【0069】
2つに分けて第2混合液を加えることで、塗布層における孔構造がよりよくなり、塗布層の表面および底部で比較的に大きい孔径が存在するようになる。
【0070】
さらに、任意選択で、一つの第2混合液ともう一つの第2混合液との体積比は、7:3である。
【0071】
さらに、第1混合液と、第2混合液と、短いナノワイヤと、無機ナノ粒子粉体とを均一に混合してから、分散剤、帯電防止剤をさらに加えて均一に混合して、スラリーを得る。
【0072】
さらに、基材として、ポリマーベースフィルム、不織布または有機複合フィルム/無機複合フィルムを選択可能である。ポリマーベースフィルムは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン複合フィルム、ポリイミドフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルムなどであってもよい。不織布は、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリイミド不織布などであってもよい。有機複合フィルム/無機複合フィルムは、セラミック塗布フィルム、アラミド塗布フィルム、ポリフッ化ビニル塗布フィルムなどであってもよい。
【0073】
該方法で作製できた複合リチウム電池用セパレータは、多層の孔構造を有し、密に堆積された無機粒子およびナノファイバが、サポートおよび骨格の役割を果たし、シェーピングするためのものである。また、水洗工程において塗布フィルムにおける高分子粘着剤および分散剤の一部が洗い落とされるリスクを低減できる。したがって、セパレータが優れた低膨潤性、高温耐性および機械的特性を有するようになるので、電池短絡の発生を抑え、セルの硬度および形状保持能力を高めることできる。
【0074】
いくつかの実施形態において、複合セパレータの作製方法は、下記のステップを含む。
【0075】
ステップS1は、秤量した低融点ポリマーと、高融点ポリマーと、高分子粘着剤と、核剤と、長いナノワイヤとを均一に混合、撹拌して、第1混合液を得る。
【0076】
ステップS2は、秤量した有機溶剤と孔形成剤とを均一に撹拌して、第2混合液を得る。
【0077】
ステップS3は、ステップS1で得た第1混合液内に第2混合液、短いナノワイヤおよび無機ナノ粒子粉体を順に加えて均一に撹拌して、第3混合液を得る。任意選択で、第2混合液を2つに分けて、2回に分けて第1混合液内に加え、一つの第2混合液ともう一つの第2混合液との体積比は、7:3である。
【0078】
ステップS4は、ステップS3で得た第3混合液内に分散剤、帯電防止剤を順に加えて均一に撹拌して、ろ過を経てスラリーを得る。任意選択で、先に分散剤を加え、10~20min撹拌し、そして帯電防止剤を加え、30~45min撹拌する。
【0079】
ステップS5は、スラリーを基材の片側または両側に塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て、複合セパレータを得る。
【0080】
上記の塗布方法は、ディップコート法、マイクログラビアコート法、パターンマイクログラビアコート法、スプレーコート法、スライドコート法またはスロットコート法のうちの1種を含み、乾燥温度が40~100℃である。
【0081】
パターンマイクログラビアコート法を利用して不連続塗布を行うことが好ましい。ロール面の彫刻領域を調整することで塗布被覆率(30~95%)を調節することにより、高塗布層の比表面積が高くなり、塗布層の電解液に対する吸収性能を向上させ、充放電過程におけるリチウムイオンの伝導に促進することができる。
【0082】
本出願のいくつかの実施形態は、上記の実施形態による複合セパレータを含むリチウムイオン電池をさらに提供する。このようなリチウムイオン電池は、上記の複合セパレータを利用するので、リチウムイオン伝導性、機械的特性が向上するとともに、正極板および負極板との結合力が強くなる。
【0083】
以下、実施例および比較例を参照しながら、本出願の特徴および性能を詳細に説明する。
【0084】
実施例1
【0085】
下記のステップで複合セパレータを作製した。
【0086】
(1) 秤量した12kgのポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(重量比で、130℃の低融点のもの:153.5℃の高融点のもの=90:10)、1.5kgのスチレンブタジエンラテックス、0.3kgの安息香酸ナトリウムおよび2.4kgの長いナノワイヤ(ナノセルロース、長さが100μm)を大容量ミキンシングタンク内に入れて、30r/minの回転速度で20min撹拌した。
【0087】
(2) 69kgのN-メチルピロリドンおよび1.0kgの超純水を秤量してミキンシングタンク内に入れて、1000r/minの分散速度および20r/minの撹拌速度で20min撹拌して、混合液を得た。
【0088】
(3) (1)の大容量ミキンシングタンク内に(2)で調製できた混合液49kgを加え、35r/minの撹拌速度および3000r/minの分散速度で20min撹拌し、さらに0.6kgの短いナノワイヤ(ナノセルロース、長さが20μm)を加え、35r/minの撹拌速度および3000Rの分散速度で20min撹拌し、さらに13.5kgの水酸化アルミニウム粉体(粒径が0.8μm)を加え、35r/minの撹拌速度および3500Rの分散速度で30min撹拌し、最後、(2)で調製できた混合液21kgを加え、40r/minの撹拌速度および3500r/minの分散速度で20min撹拌した。
【0089】
(4) ミキンシングタンク内に1.0kgのポリアクリル酸ナトリウムを加え、30r/minの撹拌速度および2500r/minの分散速度でスラリーを10min撹拌し、そして0.1kgのポリチオフェンを加え、18r/minの撹拌速度および600r/minの分散速度で30min撹拌し、スラリーを均一に撹拌したあと、200メッシュのナイロン篩で篩分け、固形分が30%、粘度が1000cpであるスラリーを得た。
【0090】
(5)マイクログラビアコート法(マイクログラビアロールのロール面において、彫刻領域の幅:非彫刻領域の幅=800μm:500μm)を利用して、スラリーを厚さが16μmのPEベースフィルムに塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て複合リチウムイオン電池用セパレータを作製でき、複合リチウムイオン電池用セパレータの厚さが24.6μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが4μmであった。
【0091】
実施例2
【0092】
下記のステップで複合セパレータを作製した。
【0093】
(1) 秤量した13.7kgのポリフッ化ビニリデン(重量比で、132.6℃の低融点のもの:166.3℃の高融点=85:15)、0.3kgのポリ酢酸ビニル、0.64kgの窒化ホウ素および1.8kgの長いナノワイヤ(炭化ホウ素ナノワイヤ、長さが95μm)を大容量ミキンシングタンク内に入れて、25r/minの回転速度で20min撹拌した。
【0094】
(2) 78kgのN-メチルピロリドンおよび6.0kgの超純水を秤量してミキンシングタンク内に入れて、1500r/minの分散速度および15r/minの撹拌速度の回転速度で20min撹拌して、混合液を得た。
【0095】
(3) (1)の大容量ミキンシングタンク内に(2)で調製できた混合液58.8kgを加え、30r/minの撹拌速度および3000r/minの分散速度で25min撹拌し、さらに0.2kgの短いナノワイヤ(炭化ホウ素ナノワイヤ、長さが20μm)を加え、35r/minの撹拌速度および3000Rの分散速度で20min撹拌し、最後、(2)で調製できた混合液25.2kgを加え、30r/minの撹拌速度および3500r/minの分散速度で30min撹拌した。
【0096】
(4) ミキンシングタンク内に0.5kgのリン酸トリエチルを加え、30r/minの撹拌速度および2000r/minの分散速度でスラリーを15min撹拌し、そして0.5kgのオクタデシルジメチル四級アンモニウムナイトレートを加え、18r/minの撹拌速度および600r/minの分散速度で30min撹拌し、スラリーを均一に撹拌したあと、200メッシュのナイロン篩で篩分け、固形分が16%、粘度が410.5cpであるスラリーを得た。
【0097】
(5) パターンマイクログラビアコート法(マイクログラビアロールのロール面において、彫刻領域幅:非彫刻領域幅=800μm:350μm)を利用して、スラリーを厚さが22μmのセラミックフィルムに塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て複合リチウムイオン電池用セパレータを作製でき、複合リチウムイオン電池用セパレータの厚さが24.5μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが1μmであった。
【0098】
実施例3
【0099】
下記のステップで複合セパレータを作製した:
【0100】
(1) 秤量した6.65kgのポリフッ化ビニリデン(重量比で、135℃の低融点のもの:170℃の高融点のもの=5:95)、0.15kgのポリエチルアクリレート、0.12kgの炭酸ナトリウムおよび1.0kgの長いナノワイヤ(ハイドロキシアパタイトナノワイヤ、長さが90μm)を大容量ミキンシングタンク内に入れて、35r/minの回転速度で30min撹拌した。
【0101】
(2) 85kgのジメチルアセトアミドおよび7.0kgの超純水を秤量してミキンシングタンク内に入れて、1100r/minの分散速度および20r/minの撹拌速度で25min撹拌して、混合液を得た。
【0102】
(3) (1)の大容量ミキンシングタンク内に(2)で調製できた混合液64.4kgを加え、30r/minの撹拌速度および3000r/minの分散速度で20min撹拌し、さらに0.2kgの短いナノワイヤ(ハイドロキシアパタイトナノワイヤ、長さが10μm)を加え、35r/minの撹拌速度および3000Rの分散速度で20min撹拌し、最後、(2)で調製できた混合液27.6kgを加え、40r/minの撹拌速度および3500r/minの分散速度で20min撹拌した。
【0103】
(4) ミキンシングタンク内に0.5kgのポリエチレングリコールを加え、25r/minの撹拌速度および2000r/minの分散速度でスラリーを20min撹拌し、そして0.6kgのN-アルキルアミノ酸塩を加え、20r/minの撹拌速度および600r/minの分散速度で30min撹拌し、スラリーを均一に撹拌したあと、200メッシュのナイロン篩で篩分け、固形分が8%、粘度が180cpであるスラリーを得た。
【0104】
(5) パターンマイクログラビアコート法(マイクログラビアロールのロール面において、彫刻領域:非彫刻領域=600:600)を利用して、スラリーを厚さが14μmのPPベースフィルムに塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て複合リチウムイオン電池用セパレータを作製でき、複合リチウムイオン電池用セパレータの厚さが16.6μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが1μmであった。
【0105】
実施例4
【0106】
下記のステップで複合セパレータを作製した。
【0107】
(1) 秤量した8.0kgのポリフッ化ビニリデン-ジクロロエテン共重合体(重量比で、129℃の低融点のもの:162.5℃の高融点のもの=60:40)、1.0kgのスチレンアクリルラテックス、0.24kgのp-フェノールスルホン酸ナトリウムおよび1.8kgの長いナノワイヤ(カーボンナノチューブ、長さが75μm)を大容量ミキンシングタンク内に入れて、30r/minの回転速度で20min撹拌した。
【0108】
(2) 78kgのアセトンおよび2.0kgの超純水を秤量してミキンシングタンク内に入れて、1000r/minの分散速度および20r/minの撹拌速度で20min撹拌して、混合液を得た。
【0109】
(3) (1)の大容量ミキンシングタンク内に(2)で調製できた混合液56kgを加え、35r/minの撹拌速度および3000r/minの分散速度で20min撹拌し、さらに0.2kgの短いナノワイヤ(カーボンナノチューブ、長さが5μm)を加え、35r/minの撹拌速度および3000Rの分散速度で20min撹拌し、さらに9.0kgの酸化アルミニウム粉末(粒径が0.75μm)を加え、35r/minの撹拌速度および3500Rの分散速度で30min撹拌し、最後、(2)で調製できた混合液24kgを加え、40r/minの撹拌速度および3500r/minの分散速度で20min撹拌した。
【0110】
(4) ミキンシングタンク内に5kgのカルボン酸塩類フッ素分散剤を加え、30r/minの撹拌速度および2500r/minの分散速度でスラリーを10min撹拌し、そして0.1kgのN-ヘキサデシルピリジニウム硝酸塩を加え、18r/minの撹拌速度および600r/minの分散速度で30min撹拌し、スラリーを均一に撹拌したあと、200メッシュのナイロン篩で篩分け、固形分が20%、粘度が630cpであるスラリーを得た。
【0111】
(5) スロットコート法を利用して、スラリーを厚さが16μmのPP/PE/PP複合ベースフィルムに塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て複合リチウムイオン電池用セパレータを作製でき、複合リチウムイオン電池用セパレータの厚さが20.7μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが2μmであった。
【0112】
実施例5
【0113】
下記のステップで複合セパレータを作製した。
【0114】
(1) 秤量した9.8kgのポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(重量比で、129℃の低融点のもの:162.5℃の高融点のもの=10:90)、0.2kgのポリビニルアルコール、0.3kgのステアリン酸カルシウムを大容量ミキンシングタンク内に入れて、35r/minの回転速度で25min撹拌した。
【0115】
(2) 82kgのNMPおよび8.0kgの超純水を秤量してミキンシングタンク内に入れて、1500r/minの分散速度および20r/minの撹拌速度で20min撹拌して、混合液を得た。
【0116】
(3) (1)の大容量ミキンシングタンク内に(2)で調製できた混合液63kgを加え、30r/minの撹拌速度および3000r/minの分散速度で30min撹拌し、さらに(2)で調製できた混合液27kgを加え、30r/minの撹拌速度および3500r/minの分散速度で30min撹拌した。
【0117】
(4) ミキンシングタンク内に0.5kgのポリアクリル酸カリウムを加え、25r/minの撹拌速度および2600r/minの分散速度でスラリーを15min撹拌し、そして0.5kgのトリメチルオクタデシルアンモニウムアセタートを加え、20r/minの撹拌速度および800r/minの分散速度で25min撹拌し、スラリーを均一に撹拌したあと、200メッシュのナイロン篩で篩分け、固形分が10%、粘度が248.5cpであるスラリーを得た。
【0118】
(5) パターンマイクログラビアコート法(マイクログラビアロールのロール面において、彫刻領域幅:非彫刻領域幅=900μm:300μm)を利用して、スラリーを厚さが11μmのセラミックフィルムに塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て複合リチウムイオン電池用セパレータを作製でき、複合リチウムイオン電池用セパレータの厚さが13.8μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが1μmであった。
【0119】
比較例1
【0120】
下記のステップで複合セパレータを作製した。
【0121】
(1) 秤量した9.8kgのポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(153℃の高融点)、0.2kgのポリビニルアルコールを大容量ミキンシングタンク内に入れて、35r/minの回転速度で25min撹拌した。
【0122】
(2) 82kgのNMPおよび8.0kgの超純水を秤量してミキンシングタンク内に入れて、1500r/minの分散速度および20r/minの撹拌速度で20min撹拌して、混合液を得た。
【0123】
(3) (1)の大容量ミキンシングタンク内に混合液63kgを加え、30r/minの撹拌速度および3000r/minの分散速度で30min撹拌し、さらに混合液27kgを加え、30r/minの撹拌速度および3500r/minの分散速度で30min撹拌した。
【0124】
(4) ミキンシングタンク内に0.5kgのポリアクリル酸カリウムを加え、25r/minの撹拌速度および2600r/minの分散速度でスラリーを15min撹拌し、そして0.5kgのトリメチルオクタデシルアンモニウムアセタートを加え、20r/minの撹拌速度および800r/minの分散速度で25min撹拌し、スラリーを均一に撹拌したあと、200メッシュのナイロン篩で篩分け、固形分が10%、粘度が300.5cpであるスラリーを得た。
【0125】
(5) パターンマイクログラビアコート法(マイクログラビアロールのロール面において、彫刻領域幅:非彫刻領域幅=900μm:300μm)を利用して、スラリーを厚さが11μmのセラミックフィルムに塗布し、凝固、水洗、乾燥、シェーピングを経て複合リチウムイオン電池用セパレータを作製でき、複合リチウムイオン電池用セパレータの厚さが13.6μmであり、各側面塗布層のそれぞれの厚さが1μmであった。
【0126】
比較例2
【0127】
本比較例は、厚さが14.4μmであり、空隙率が47%であるポリプロピレンベースフィルムであるリチウムイオン電池用セパレータを提供し、塗布層処理が施されていなかった。
【0128】
比較例3
【0129】
本比較例は、セラミックスラリー(90%の酸化アルミニウム顆粒+10%のアクリレート樹脂であり、溶剤が超純水であった)により塗布されたリチウムイオン電池用セパレータを提供し、セパレータの厚さが22.3μmであり、ベースフィルムは、厚さが16μmであり、空隙率が51%であるポリエチレンベースフィルムであった。従来のセラミックスラリーを両側に塗布して塗布層を形成し、各側面塗布層のぞれぞれの厚さが3μmであった。
【0130】
以下、試験を通じて実施例と比較例の製品を測定した。
【0131】
一.電子顕微鏡を用いて実施例1と実施例3による複合リチウムイオン電池用セパレータをスキャンした。図1は、電子顕微鏡写真である。
【0132】
図1から分かるように、該複合リチウムイオン電池用セパレータは、多孔質構造を有し、空隙率が非常に高い。したがって、本出願に係る複合リチウムイオン電池用セパレータは、イオン伝導率が高く、膨潤性が低い。
【0133】
図2から分かるように、パターンマイクログラビアによる不連続塗布で作製できたリチウムイオン電池用セパレータは、抵抗が低く、比表面積が高く、電解液の浸漬効率およびリチウムイオン伝導率をよく向上させることができる。
【0134】
二.実施例1~5による複合リチウムイオン電池用セパレータ、比較例1によるリチウムイオン電池用セパレータ、および比較例2によるリチウムイオン電池用セパレータに対して、塗布層空隙率、熱収縮、塗布層と極板との界面結合力、引張り強度および破断伸びを測定し、測定方法は、下記の通りであった。
【0135】
1、熱収縮
【0136】
(1) サンプル:フィルムロールの幅方向において裁断により6枚の50mm×50mmのサンプルを取った。
【0137】
(2) サンプルを平行する紙の間に挟み、所定温度に達した恒温オーブンにおけるステンレス鋼板に置き、ステンレス鋼板が恒温箱の中部に位置した。
【0138】
(3) 150℃の恒温で0.5h加熱して取り出し、環境温度まで冷却させ、縦方向および横方向の長さを測定し、下記の式で縦方向および横方向の熱収縮率をそれぞれ算出し、6つのサンプルの算術平均値を求めた。
【0139】
S=100%*(L1-L2)/L1
【0140】
ただし、S:加熱収縮率/% L1:加熱前の長さ/mm L2:加熱後の長さ/mmである。
【0141】
2、界面結合力
【0142】
GB/T 1040.3の規定に基づいて行われた。1.5cm*15cmの規格で製品から5つのサンプルを取って、サンプルと電池極板のサンプルとを完全に重ねて熱プレス成形機により熱プレスを行った。温度が70℃であり、単位圧力が4Mpaであり、保温時間が1sであり、保圧時間が1sであるように熱プレス成形機のパラメータを設定した。極板がコバルト酸リチウム極板であった。
【0143】
CMTシリーズマイコン制御電子万能(引張力)試験機を用いて測定し、引張速度が300mm/minであり、試験が完成したあと、5つのサンプルの測定値の平均値を求めた。
【0144】
3、引張り強度および破断伸び
【0145】
GB/T 1040[1].3-2006の規定に基づいて行われた。
【0146】
裁断で幅が15mm、長さが150mmである規格で製品から5つのサンプルを取った。(サンプル試験の評点間距離が100mmであった)、試験が完成したあと、5つのサンプルの測定値の平均値を求めた。
【0147】
各項目の測定テータは、下記の表に示された。
【0148】
【表1】
【0149】
上記の表から分かるように、本出願に係る作製方法で作製できた複合リチウムイオン電池用セパレータは、熱収縮性が優れ、極板との結合力が強く、比較例による塗布層がないセパレータおよびセラミックスラリーが塗布されたセパレータよりも、顕著に優れている。
【0150】
そして、実施例1、実施例2と比較例3と(実施例1、実施例2および比較例3がいずれも湿式法でPE基材のセパレータを作製した)、並びに実施例3、実施例4と比較例2と(実施例3、実施例4および比較例2がいずれも乾式法でPP基材のセパレータを作製した)を比較にして、以下のことをから分かるようになる。塗布層内にナノワイヤを加えることで、熱収縮、引張り強度および破断伸びのそれぞれがある程度で向上した。このため、ナノファイバが塗布フィルムの熱収縮性および機械的特性を著しく向上させることができると示された。
【0151】
実施例5と比較例1とを比較にて、塗布層内に高融点ポリマーと低融点ポリマーとを併用し、かつ核剤を加えることで、塗布層と極板との界面結合力が75%向上し、膨れ現象をよく低減でき、セルの安全性を向上させることができることが分かるようになる。
【0152】
本出願に係る複合リチウムイオン電池用セパレータは、膨潤度が低く、ナノワイヤの加入でセパレータのイオン伝導率および高温耐性、機械的特性が著しく向上した。また、パターンマイクログラビアコート法による不連続塗布で作製できたリチウムイオン電池用セパレータは、抵抗が低いとともに、透気性が優れ、比表面積が高く、リチウムイオン伝導率が高く、膨潤度が低い。本出願に係る複合リチウムイオン電池用セパレータの作製方法は、量産に適しているため、その実用性と経済性を向上させた。
【0153】
上記記載は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願に各種の変更や変化を有してもよい。本出願の精神および原理から逸脱しない限り、行ったすべての変更、均等置換、改良などは、いずれも本出願の保護範囲内に属する。
図1
図2