(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】プローブカード用多層配線基板及びプローブカード
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01R1/073 E
(21)【出願番号】P 2022563290
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042859
(87)【国際公開番号】W WO2022107225
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000232405
【氏名又は名称】日本電子材料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004196
【氏名又は名称】弁理士法人ナビジョン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲生
(72)【発明者】
【氏名】原田 勇介
(72)【発明者】
【氏名】堀 真也
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/191726(WO,A1)
【文献】特開2014-089089(JP,A)
【文献】特開平09-330995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブカードの外部端子及びプローブ間の配線経路上に設けられ、ベース絶縁膜が上面に形成されたプローブカード用多層配線基板において、
前記ベース絶縁膜上に形成された薄膜からなり、一対の接続電極が接続された薄膜抵抗体と、
前記ベース絶縁膜を介して前記薄膜抵抗体と対向するように埋設され、前記ベース絶縁膜よりも熱伝導率が高い材料からなる埋設ヒートシンクと、を備え、
前記埋設ヒートシンクは、前記薄膜抵抗体の形成領域外に延伸され、かつ、前記ベース絶縁膜で被覆されない放熱部を有することを特徴とするプローブカード用多層配線基板。
【請求項2】
前記薄膜抵抗体に対応する領域に形成され、前記薄膜抵抗体を覆うとともに前記ベース絶縁膜の一部を露出するように形成されたカバー絶縁膜を更に備え、
前記埋設ヒートシンクの前記放熱部は、前記カバー絶縁膜の形成領域外に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項3】
前記放熱部と前記放熱部に隣接する前記ベース絶縁膜上の所定領域とに
堆積され、前記ベース絶縁膜よりも熱伝導率が高い材料からなる露出ヒートシンクを備え、
前記露出ヒートシンクの前記所定領域が、前記放熱部を介して前記埋設ヒートシンクに接続されることを特徴とする請求項2に記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項4】
前記カバー絶縁膜を介して前記薄膜抵抗体と対向するように形成された保護膜を備え
たことを特徴とする請求項3に記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項5】
前記露出ヒートシンクが、前記放熱部上と、前記カバー絶縁膜上と、前記放熱部及び前記カバー絶縁膜にそれぞれ隣接する前記ベース絶縁膜の前記所定領域上とに
堆積され、前記カバー絶縁膜上において前記薄膜抵抗体と対向する領域である保護領域を有し、
前記保護領域が、前記所定領域上を通って前記埋設ヒートシンクに接続されることを特徴とする請求項3に記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項6】
前記一対の接続電極が、前記薄膜抵抗体の第1方向の両端に設けられ、
前記放熱部が、前記薄膜抵抗体からみて前記第1方向と交差する第2方向に形成されることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項7】
2以上の前記薄膜抵抗体が、前記第2方向に互いに離間して整列配置され、
前記埋設ヒートシンクが、前記第2方向に延び、前記2以上の薄膜抵抗体とそれぞれ対向するように埋設されることを特徴とする請求項
6に記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項8】
前記ベース絶縁膜が、絶縁性樹脂材料からなることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項9】
前記露出ヒートシンクが、
金属材料からなることを特徴とする請求項3~
5のいずれかに記載のプローブカード用多層配線基板。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載の前記プローブカード用多層配線基板上に前記プローブを配設したことを特徴とするプローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカード用多層配線基板及びプローブカードに係り、更に詳しくは、プローブカードの外部端子及びプローブ間の配線経路上に設けられ、薄膜抵抗体を備えるプローブカード用多層配線基板の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブカードは、半導体ウエハに形成された半導体デバイスの電気的特性を検査する際に使用される検査装置であり、半導体ウエハ上の電極パッドにそれぞれ接触させる多数のプローブが多層配線基板上に設けられている。半導体デバイスの電気的特性検査は、プローブ及び多層配線基板を介して、テスト信号の入出力を行うテスター装置と、半導体デバイスとを導通させることにより行われる。
【0003】
多層配線基板の配線回路上には、インピーダンスマッチング、電力制御などを行うための抵抗素子としての薄膜抵抗体が設けられている。薄膜抵抗体は、上下の絶縁層に挟まれるように配置され、薄膜抵抗体には、ニッケル・クロム(Ni-Cr)合金などの金属材料が用いられ、絶縁層には、ポリイミド合成樹脂などの樹脂材料が用いられる。このような薄膜抵抗体は、ヒートサイクル試験などによる環境温度の変化や、検査時における薄膜抵抗体自身の発熱により劣化するという問題があった。
【0004】
一般に、樹脂材料の線膨張係数は、金属材料の線膨張係数よりも大きい。このため、例えば、ヒートサイクル試験で使用した場合に、絶縁膜との線膨張係数の差に起因する熱応力によって薄膜抵抗体が劣化するという問題があった。例えば、薄膜抵抗体に皺が発生し、抵抗値が変動するという問題があった。また、薄膜抵抗体は、熱伝導率の低い樹脂材料からなる絶縁層に挟まれていることから、検査時に発生する熱が、外部に放出されることなく絶縁層間に籠り、薄膜抵抗体が劣化するという問題があった。例えば、薄膜抵抗体が溶断するという問題があった。
【0005】
そこで、プローブカード用多層配線基板において、熱応力による薄膜抵抗体の劣化を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
図11は、従来のプローブカード用多層配線基板6Aの要部を模式的に示した説明図である。図示した多層配線基板6Aは、第1~第3絶縁層611~613が順に積層され、第2絶縁層612上に薄膜抵抗体600が形成されるとともに、薄膜抵抗体600の直下に、第2絶縁層612を介在させて、熱伸縮抑制層601が形成される。金属材料からなる熱伸縮抑制層601の線膨張係数は、樹脂材料からなる絶縁層611~613の線膨張係数よりも小さく、このような熱伸縮抑制層601を設けることにより、絶縁層611~613との線膨張率の差によって薄膜抵抗体600に生じる熱応力を抑制することができる。
【0006】
しかし、熱伸縮抑制層601は、第1絶縁層611及び第2絶縁層612間に埋設されているため、熱伸縮抑制層601により薄膜抵抗体600の放熱が促進されることは期待できない。つまり、検査時の薄膜抵抗体600において発生する熱には対処することができない。このため、熱応力による劣化防止の効果は限定的であり、また、薄膜抵抗体600の溶断等を防止することはできないという問題があった。
【0007】
そこで、検査時の発熱に起因する薄膜抵抗体600の溶断等を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
図12は、従来のプローブカード用多層配線基板6Bの要部を模式的に示した説明図である。図示した多層配線基板6Bでは、薄膜抵抗体600の直下に、第2絶縁膜612を介在させて台座部602が形成されるとともに、薄膜抵抗体600の直上に、第3絶縁膜613を介在させて放熱部603が形成される。また、台座部602及び放熱部603が接続部604により接続される。
【0008】
台座部602、放熱部603及び接続部604は、いずれも金属材料からなり、樹脂材料からなる絶縁層611~613に比べて、線膨張係数が小さく、熱伝導率が高い。つまり、台座部602は、熱伸縮抑制層601に相当し、熱応力による薄膜抵抗体600の劣化を防止する効果を有する。また、薄膜抵抗体600において発生した熱は、台座部602及び接続部604を通って、放熱部603から雰囲気中に放熱することができるため、薄膜抵抗600の溶断等を抑制することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-089089号公報
【文献】特開2017-201263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の多層配線基板6Bでは、台座部602及び放熱部603を接続するために、第2絶縁層612及び第3絶縁層613を貫通する接続部604を設ける必要があり、構造が複雑になるという問題があった。
【0011】
また、第3絶縁層613は厚く形成されることから、このような接続部604を形成することは容易ではないという問題もあった。絶縁層611~613は、上方に形成される層ほど、大きな凹凸を有する面上に形成しなければならず、当該凹凸に対するカバレッジを確保するためにより厚く形成する必要がある。特に、薄膜抵抗体600上には、一対の電極(不図示)と、薄膜抵抗体600の実効長を規定する絶縁層(不図示)とが相互に重複するように形成されている。このため、第3絶縁層613は、大きな凹凸を有する面上に形成されており、第1及び第2絶縁層611,612に比べて厚く形成する必要がある。このような事情から、薄膜抵抗体600の熱は、第3絶縁層613を介して放熱部603に伝わるよりも、第2絶縁層612を介して台座部602に伝わりやすく、台座部602の熱を放熱部603に伝える接続部604が必要になる。同じ理由により、第2絶縁層612及び第3絶縁層613を貫通するビア配線である接続部604を形成することには困難が伴うという問題があった。例えば、空洞を生じさせることなく、貫通孔内に金属材料を充填するのが困難であるという問題があった。
【0012】
つまり、薄膜抵抗体の劣化を防止しようとすれば、プローブカード用多層配線基板の構造が複雑化し、その製造がより困難になり、製造コストの増大、信頼性の低下などを招くという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、薄膜抵抗体の劣化を防止することができるプローブカード用多層配線基板を提供することを目的とする。また、信頼性の高いプローブカード用多層配線基板を安価に提供することを目的とする。さらに、このような多層配線基板を備えたプローブカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、プローブカードの外部端子及びプローブ間の配線経路上に設けられ、ベース絶縁膜が上面に形成されたプローブカード用多層配線基板において、前記ベース絶縁膜上に形成された薄膜からなり、一対の接続電極が接続された薄膜抵抗体と、前記ベース絶縁膜を介して前記薄膜抵抗体と対向するように埋設され、前記ベース絶縁膜よりも熱伝導率が高い材料からなる埋設ヒートシンクと、を備え、前記埋設ヒートシンクが、前記薄膜抵抗体の形成領域外に延伸され、かつ、前記ベース絶縁膜で被覆されない放熱部を有するように構成される。
【0015】
このような構成を採用することにより、薄膜抵抗体で発生した熱は、ベース絶縁膜を介して埋設ヒートシンクに伝わり、さらにベース絶縁膜で被覆されない埋設ヒートシンクの放熱部を介して外部に放出される。このため、埋設ヒートシンクに熱が籠らず、薄膜抵抗体の放熱を行うことができ、薄膜抵抗体の劣化を防止することができる。
【0016】
本発明の第2の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記薄膜抵抗体に対応する領域に形成され、前記薄膜抵抗体を覆うとともに前記ベース絶縁膜の一部を露出するように形成されたカバー絶縁膜を更に備え、前記埋設ヒートシンクの前記放熱部は、前記カバー絶縁膜の形成領域外に形成されているように構成される。
【0017】
このような構成を採用することにより、カバー絶縁膜は、薄膜抵抗体に対応する領域に形成され、埋設ヒートシンクの放熱部は、カバー絶縁膜の形成領域外に形成される。このため、カバー絶縁膜を貫通する貫通孔を形成する必要がなく、簡単な構造からなり、容易に製造することができる。従って、製造コストを抑制しつつ、信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第3の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記放熱部と前記放熱部に隣接する前記ベース絶縁膜上の所定領域とに同時に堆積され、前記ベース絶縁膜よりも熱伝導率が高い材料からなる露出ヒートシンクを備え、前記露出ヒートシンクの前記所定領域が、前記放熱部を介して前記埋設ヒートシンクに接続されるように構成される。
【0019】
このような構成を採用することにより、放熱部よりも大きな表面積を有する露出ヒートシンクを介して、埋設ヒートシンクの熱を外部に効率的に放出することができる。また、所定領域及び放熱部のステップ差は、ベース絶縁膜の厚さに相当することから、露出ヒートシンクを形成する際、所定領域と放熱部間のステップカバレッジを容易に確保することができる。
【0020】
本発明の第4の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記露出ヒートシンクが、前記接続電極と同時に形成されるように構成される。
【0021】
このような構成を採用することにより、接続電極及び露出ヒートシンクが同一の製造工程において形成され、製造工程を複雑化することなく、露出ヒートシンクを形成することができる。
【0022】
本発明の第5の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記カバー絶縁膜を介して薄膜抵抗体と対向するように形成された保護膜を備え、前記露出ヒートシンクが、前記保護膜と同時に形成されるように構成される。
【0023】
このような構成を採用することにより、保護膜及び露出ヒートシンクが同一の製造工程において形成され、製造工程を複雑化することなく、露出ヒートシンクを形成することができる。また、保護膜を備えることにより、例えば、カバー絶縁膜の熱伸縮を抑制し、あるいは、薄膜抵抗体をレーザー光から保護することができる。
【0024】
本発明の第6の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記露出ヒートシンクが、前記放熱部上と、前記カバー絶縁膜上と、前記放熱部及び前記カバー絶縁膜にそれぞれ隣接する前記ベース絶縁膜の前記所定領域上とに同時に堆積され、前記カバー絶縁膜上において前記薄膜抵抗体と対向する領域である保護領域を有し、前記保護領域が、前記所定領域上を通って前記埋設ヒートシンクに接続されるように構成される。
【0025】
このような構成を採用することにより、さらに大きな表面積を有する露出ヒートシンクを介して、埋設ヒートシンクの熱を外部にさらに効率的に放出することができる。また、放熱部及び所定領域間にベース絶縁膜の厚さに相当するステップ差が形成され、さらに所定領域及びカバー絶縁膜間にカバー絶縁膜の厚さに相当するステップ差が形成されることから、ベース絶縁膜及びカバー絶縁膜を貫通するビア配線を形成する場合に比べて、露出ヒートシンクを容易に形成することができる。また、露出ヒートシンクが保護領域を有することにより、例えば、カバー絶縁膜の熱伸縮を抑制し、あるいは、薄膜抵抗体をレーザー光から保護することができる。
【0026】
本発明の第7の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記一対の接続電極が、前記薄膜抵抗体の第1方向の両端に設けられ、前記放熱部が、前記薄膜抵抗体からみて前記第1方向と交差する第2方向に形成される。
【0027】
本発明の第8の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、2以上の前記薄膜抵抗体が、第2方向に互いに離間して整列配置され、前記埋設ヒートシンクが、前記第2方向に延び、前記2以上の薄膜抵抗体とそれぞれ対向するように埋設される。
【0028】
このような構成を採用することにより、2以上の薄膜抵抗体について埋設ヒートシンクを共用化することができ、薄膜抵抗体ごとに放熱部を設ける必要がなくなる。このため、薄膜抵抗体及び接続電極を高密度で配置することが可能になり、プローブを狭ピッチで配置することが可能になる。
【0029】
本発明の第9の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記ベース絶縁膜が絶縁性樹脂材料からなる。
【0030】
本発明の第10の実施態様によるプローブカード用多層配線基板は、上記構成に加えて、前記露出ヒートシンクが、めっき法により形成される金属材料からなる。
【0031】
本発明の第11の実施態様によるプローブカードは、前記プローブカード用多層配線基板上に前記プローブを立設して構成される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、薄膜抵抗体の劣化を防止することができるプローブカード用多層配線基板を提供することができる。また、信頼性の高いプローブカード用多層配線基板を安価に提供することができる。さらに、このような多層配線基板を備えたプローブカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態1によるプローブカード100の概略構成の一例を示した図である。
【
図2】
図1のST基板15の要部の一構成例を示した図である。
【
図3】
図1のST基板15の要部の一構成例を示した図である。
【
図4】
図1のST基板15の製造方法の一例を模式的に示した図である。
【
図5】
図1のST基板15の製造方法の一例を模式的に示した図である。
【
図6】
図1のST基板15の製造方法の一例を模式的に示した図である。
【
図7】
図1のST基板15の要部の他の構成例を示した図である。
【
図8】本発明の実施の形態2によるST基板15の要部の一構成例を示した図である。
【
図9】本発明の実施の形態3によるST基板15の要部の一構成例を示した図である。
【
図10】本発明の実施の形態4によるST基板15の要部の一構成例を示した図である。
【
図11】従来のプローブカード用多層配線基板6Aの要部を模式的に示した説明図である。
【
図12】従来のプローブカード用多層配線基板6Bの要部を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施の形態1.
(1)プローブカード100
図1は、本発明の実施の形態1によるプローブカード100の概略構成の一例を示した図であり、プローブカード100と、ウエハプローバーの可動ステージ21に載置され、プローブカード100と対向して配置された半導体ウエハ20とが示されている。
【0035】
プローブカード100は、検査対象物の電気的特性を検査する際、検査対象物に対する電気的接続を行う検査装置である。検査対象物としての半導体ウエハ20上には、多数の電極パッド22が形成されており、プローブカード100の下面には、各電極パッド22に接触させる多数のプローブ17が当該電極パッド22に対応するように配設されている。図示したプローブカード100は、メイン基板12、補強板13、接続基板14、ST(スペーストランスフォーマ)基板15、支持部材16及び2以上のプローブ17により構成される。
【0036】
メイン基板12は、ウエハプローバーに着脱可能に取り付けられる配線基板であり、例えば、円板状のガラスエポキシ基板が用いられる。メイン基板12は、略水平に配置され、その上面の中央部には、補強板13が取り付けられている。補強板13は、メイン基板12の歪みを抑制するための補強部材であり、例えば、ステンレス鋼からなる金属ブロックが用いられる。メイン基板12の上面の外周縁部には、テスター(不図示)の信号端子が接続される2以上の外部端子120が設けられ、メイン基板12の下面の中央部に設けられた接続端子121と接続されている。
【0037】
接続基板14は、メイン基板12及びST基板15間に配置され、メイン基板12の配線及びST基板15の配線を導通させる基板間の接続手段であり、例えば、多数のポゴピン140を備えている。ポゴピン140は、接続基板14を上下方向に貫通する伸縮自在のプランジャーピンであり、メイン基板12の接続端子121と、ST基板15の接続端子150とを導通させる。
【0038】
ST基板15は、電極ピッチを変換する多層配線基板であり、メイン基板12の下面側に配置される。ST基板15の上面は、接続端子150が設けられ、ST基板15の下面には2以上のプローブ用電極パッド151が設けられている。プローブ用電極パッド151は、プローブ17が接続される電極であり、プローブ17に対応するピッチで配設される。また、プローブ用電極パッド151は、ST基板15内の配線回路を介して、より広ピッチで配設された接続端子150に導通し、さらにポゴピン140及び接続端子121を介して、更に広ピッチで配設されたメイン基板12の外部端子120に導通する。
【0039】
ST基板15は、セラミック基板152及び積層構造体153により構成される。セラミックは、ガラスエポキシなどに比べて歪みが生じにくいため、セラミック基板152を用いることにより、ST基板15の歪みを抑制することができる。また、セラミック基板152は、単一のセラミック板であってもよいが、2以上のセラミック板を貼り合わせた積層板を用いることにより、さらに歪みの発生を抑制することができる。
【0040】
積層構造体153は、セラミック基板152の下面に2以上の絶縁層を積層して形成される。各絶縁層には、例えば、ポリイミドを主成分とする合成樹脂が用いられる。隣接する絶縁層の層間には配線パターンが形成され、配線パターン同士は、絶縁層を貫通するビア配線を介して接続され、接続端子150と、プローブ用電極パッド151とを導通させる配線回路を構成する。
【0041】
支持部材16は、プローブ17をガイドする1又は2以上のガイド板160,161と、ガイド板160,161をST基板15に固定するスペーサ162により構成される。ガイド板160,161には、プローブ17を挿通するための多数の貫通孔(不図示)が形成され、プローブ17の先端が上下動可能に支持されている。
【0042】
プローブ17は、細長い形状を有する垂直型プローブであり、導電性材料からなる。プローブ17の上端は、プローブ用電極パッド151に接触するように配置されている。また、プローブ17の下端は、プローブカード100に半導体ウエハ20を近づけることにより、半導体ウエハ20上の電極パッド22に接触する。
【0043】
(2)ST基板15
図2及び
図3は、
図1のST基板15の要部の一構成例を示した図である。これらの図では、
図1のST基板15の上下を反転させた様子が示されている。このため、ST基板15に関する以下の説明では、
図1における下方を上方として説明する。また、これらの図には、ST基板15を構成する積層構造体153の上面側の一部のみが示され、より下方に位置する積層構造体153のその他の部分及びセラミック基板152は省略している。また、第1方向D1及び第2方向D2は、いずれもST基板15の主面に平行な方向であって互いに直交する。なお、第1方向D1及び第2方向D2は、互いに交差する方向であれば直交していなくてもよい。
【0044】
図2(a)は、ST基板15を平面視したときの各構成要素のレイアウトを示した平面レイアウト図であり、
図2(b)は、
図2(a)におけるA-A切断線により切断したときの断面を示す断面図(A-A断面図)である。A-A切断線は、第1方向D1に延び、薄膜抵抗体30及び一対の接続電極33を通る直線である。以下では、主に
図2(b)を参照しながら説明する。
【0045】
絶縁膜40は、ST基板15の全面に形成されるのに対し、絶縁膜41~43は、薄膜抵抗体30に対応する領域に形成される。これらの絶縁膜40~43は、いずれも絶縁性材料からなる層であり、例えば、ポリイミドを主成分とする合成樹脂を塗布して熱硬化した後、フォトリソグラフィ技術を利用してパターニングすることにより形成される。なお、絶縁膜40~43には、他の絶縁性材料を用いることもでき、また、互いに異なる絶縁性材料を用いることもできる。
【0046】
薄膜抵抗体30は、ベース絶縁膜41上に薄膜として形成された抵抗素子であり、所定の抵抗率を有する導電性金属材料、例えば、ニッケル・クロム(Ni-Cr)合金が用いられ、絶縁膜40~43よりも線膨張係数が低く、熱伝導率が高い。薄膜抵抗体30は、第1方向D1を長手方向とする細長い領域に形成され、長手方向の両端付近には一対の接続電極33が形成される。
【0047】
埋設ヒートシンク31は、ベース絶縁膜41を介して薄膜抵抗体30と対向するように配置された放熱部材であり、例えば、銅(Cu)などの金属材料が用いられ、絶縁膜40~43よりも線膨張係数が低く、熱伝導率が高い。埋設ヒートシンク31は、積層構造体153を構成する下層絶縁膜40に埋設される。下層絶縁膜40の上面には凹部が形成され、埋設ヒートシンク31は、下層絶縁膜40から上面を露出させた状態で当該凹部内に形成される。
【0048】
一対の配線電極32は、ST基板15内の配線回路の一部であり、低抵抗の導電性金属材料、例えば、銅(Cu)が用いられる。配線電極32は、埋設ヒートシンク31から離間して、下層絶縁膜40に埋設される。つまり、埋設ヒートシンク31と同様、配線電極32は、下層絶縁膜40の凹部内に下層絶縁膜40から上面を露出させた状態で形成され、下層絶縁膜40を介在させて埋設ヒートシンク31から分離されている。また、配線電極32は、図示しない配線パターン又はビア配線を介して、接続端子150と導通する。
【0049】
一対の接続電極33は、薄膜抵抗体30の両端を一対の配線電極32にそれぞれ接続する接続手段であり、低抵抗の導電性金属材料、例えば、銅(Cu)が用いられる。接続電極33は、第1方向D1に延びる形状を有し、一端側が薄膜抵抗体30上に形成され、他端側が配線電極32上に形成され、ベース絶縁膜41上及び下層絶縁膜40上を通って、薄膜抵抗体30及び配線電極32を導通させる。
【0050】
保護膜34は、薄膜抵抗体30に生じる熱応力を抑止し、あるいは、薄膜抵抗体30をレーザー光から保護するための薄膜であり、薄膜抵抗体30と対向するようにカバー絶縁膜43上に形成される。保護膜34は、カバー絶縁膜43よりも熱膨張係数が低く、かつ良好な光反射特性を有する金属材料、例えば、金(Au)やニッケル(Ni)が用いられ、薄膜抵抗体30に対応する領域に形成され、薄膜抵抗体30を概ね覆っている。このような保護膜34を設けることにより、カバー絶縁膜43の熱伸縮を抑制し、熱応力による薄膜抵抗体30の劣化を抑制することができる。また、プローブ用電極パッド151に対しプローブ17を接合するためにレーザー光を照射する場合には、照射したレーザー光により薄膜抵抗体30が損傷するのを防止することができる。
【0051】
ベース絶縁膜41は、薄膜抵抗体30の直下及びその周辺領域において埋設ヒートシンク31を覆うように形成され、薄膜抵抗体30及び接続電極33から埋設ヒートシンク31を絶縁する。
【0052】
分離絶縁膜42は、薄膜抵抗体30の実効長を規定する絶縁膜であり、薄膜抵抗体30上に形成される。分離絶縁膜42は、薄膜抵抗体30の長手方向の中央付近を横断するように第2方向D2に沿って延び、一対の接続電極33は、その一端が分離絶縁膜42上に乗り上げ、分離絶縁膜42上において互いに離間されるように配置される。このため、分離絶縁膜42の第1方向D1の幅が薄膜抵抗体30の実効長となり、薄膜抵抗体30の抵抗値は、分離絶縁膜42の形状により規定される。
【0053】
カバー絶縁膜43は、薄膜抵抗体30を覆う絶縁膜であり、薄膜抵抗体30に対応する領域、例えば、薄膜抵抗体30の形成領域及びその周辺領域に形成される。カバー絶縁膜43は、接続電極33、ベース絶縁膜41及び分離絶縁膜42上に形成され、接続電極33は、その一部がカバー絶縁膜43によって覆われ、その他の領域は、カバー絶縁膜43から露出し、プローブ用電極パッド151として利用することができる。薄膜抵抗体30及び分離絶縁膜42は、カバー絶縁膜43により完全に覆われている。
【0054】
図3(a)は、
図2(a)と同一の平面レイアウトを90°回転させて示した平面レイアウト図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるB1-B1切断線により切断したときの断面を示す断面図(B1-B1断面図)である。B1-B1切断線は、第2方向D2に延び、薄膜抵抗体30及び露出ヒートシンク35を通る直線である。
【0055】
放熱部50は、ベース絶縁膜41で被覆されていない埋設ヒートシンク31の領域である。埋設ヒートシンク31は、薄膜抵抗体30と対向するとともに、薄膜抵抗体30の形成領域外において第2方向D2に延び、薄膜抵抗体30から離間した放熱部50においてベース絶縁膜41から露出する。
【0056】
露出領域51は、カバー絶縁膜43によって被覆されていないベース絶縁膜41の領域である。ベース絶縁膜41は、埋設ヒートシンク31に対応して形成され、薄膜抵抗体30と対向するとともに、薄膜抵抗体30の形成領域外において第2方向D2に延び、薄膜抵抗体30から離間した露出領域51においてカバー絶縁膜43から露出する。
【0057】
つまり、ベース絶縁膜41は、カバー絶縁膜43の縁部と交差するように第2方向D2に延び、カバー絶縁膜43の形成領域の外側に露出領域51が形成される。また、埋設ヒートシンク31は、さらにベース絶縁膜41の縁部とも交差するように第2方向D2に延び、ベース絶縁膜41の形成領域の外側に放熱部50が形成される。このため、放熱部50は、カバー絶縁膜43から離間して形成され、露出領域51は、カバー絶縁膜43及び放熱部50のそれぞれに隣接する領域となる。放熱部50及び露出領域51の境界には段差が形成され、その高さはベース絶縁膜41の厚さに相当する。また、放熱部50は、露出領域51とは反対側において下層絶縁膜40の上面と隣接し、その境界は、露出領域51との段差よりも小さな段差が形成され、あるいは、段差が形成されず平坦になっている。
【0058】
露出ヒートシンク35は、埋設ヒートシンク31に接続された放熱部材であり、絶縁膜40~43よりも高い熱伝導率を有する材料、例えば、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)などの金属材料を用いることができる。露出ヒートシンク35は、放熱部50上に形成されるとともに、放熱部50に隣接する露出領域51上及び下層絶縁膜40上にも形成される。つまり、露出ヒートシンク35は、放熱部50を含み、放熱部50よりも広い領域に形成される。このため、放熱部50よりも表面積の広い放熱面を確保することができ、露出ヒートシンク35を設けない場合に比べて、より高い放熱効率を確保することができる。また、放熱部50の外縁には、段差が形成されないか、あるいは、小さな段差しか形成されないため、ステップカバレッジを確保しつつ、放熱部50よりも大きな面積を有する露出ヒートシンク35を容易に形成することができる。放熱部50をカバー絶縁膜43の形成領域外に設けることにより、熱源である薄膜抵抗体30から十分に離間して配置することができるので、放熱効率を向上させることができる。さらに、露出ヒートシンク35は、接続電極33又は保護膜34と同時に形成することができるため、製造工程を複雑化することなく、形成することができる。
【0059】
(3)製造方法
図4~
図6は、
図1のST基板15の製造方法の一例を模式的に示した図である。図中の(a1)~(a11)は、製造工程における
図2(a)のA-A切断線による断面を示した図であり、図中の(b1)~(b11)は、製造工程における
図3(a)のB1-B1切断線による断面を示した図であり、いずれも製造工程における状態が時系列で示されている。
【0060】
(a1)及び(b1)には、下層絶縁膜40の上面に凹部31h,32hが形成された状態が示されている。凹部31h,32hは、下層絶縁膜40の形成後にフォトリソグラフィ技術を利用して形成される。凹部31hは、埋設ヒートシンク31に対応する溝部であり、凹部32hは、配線電極32に対応する溝部であり、互いに分離された溝部として形成される。
【0061】
(a2)及び(b2)には、下層絶縁膜40上に配線材料、例えば、銅(Cu)を堆積させた後、表面を研磨して平坦にした状態が示されている。凹部31h及び32h内には配線材料301が埋め込まれ、埋設ヒートシンク31及び配線電極32が同時に形成される。埋設ヒートシンク31及び配線電極32の上面は、下層絶縁膜40の上面と一致し、下層絶縁膜40から露出する。
【0062】
(a3)及び(b3)には、ベース絶縁膜41が形成された状態が示されている。ベース絶縁膜41は、基板全面に形成された後、フォトリソグラフィ技術を利用してパターニングされる。ベース絶縁膜41は、薄膜抵抗体30及び接続電極33に対応する領域では、埋設ヒートシンク31を覆うように形成される一方、薄膜抵抗体30から第2方向D2に離間した放熱部50上には形成されず、埋設ヒートシンク31を露出させる。
【0063】
(a4)及び(b4)には、抵抗用薄膜302及びフォトレジスト501が形成された状態が示され、(a5)及び(b5)には、薄膜抵抗体30が形成された状態が示されている。薄膜抵抗体30は、フォトレジスト501を用いて抵抗用薄膜302をパターニングすることにより得られる。抵抗用薄膜302は、基板全面に形成される薄膜であり、例えば、ニッケル・クロム(Ni-Cr)合金を堆積させて形成される。また、薄膜抵抗体30上にはフォトレジスト501が形成され、薄膜抵抗体30の形成領域外を開口させるようにパターニングされる。その後、エッチング処理を行って露出している抵抗用薄膜302を除去し、さらにフォトレジスト501を除去すれば、ベース絶縁膜41上に薄膜抵抗体30が形成される。
【0064】
(a6)及び(b6)には、分離絶縁膜42が形成された状態が示されている。分離絶縁膜42は、基板全面に形成した後、フォトリソグラフィ技術を利用してパターニングされる。分離絶縁膜42は、薄膜抵抗体30を横断するように第2方向D2に延び、薄膜抵抗体30の第1方向D1の両端を残すように形成される。
【0065】
(a7)及び(b7)には、シード膜511及びフォトレジスト502が形成された状態が示されている。シード膜511は、接続電極33及び露出ヒートシンク35をめっき法により形成するための下地膜であり、例えば、チタン(Ti)と銅(Cu)の薄膜がスパッタリング法により基板全面に形成される。シード膜511上にはフォトレジスト502が形成され、接続電極33及び露出ヒートシンク35の形成領域を開口させるようにパターニングされる。
【0066】
(a8)及び(b8)には、接続電極33及び露出ヒートシンク35が形成された状態が示されている。接続電極33及び露出ヒートシンク35は、フォトレジスト502の開口内に例えば、銅(Cu)を堆積させた後、フォトレジスト502及びシード膜511を除去することにより形成される。つまり、露出ヒートシンク35は、接続電極33と同一の工程において同時に形成され、工程数を増大させることなく、露出ヒートシンク35を形成することができる。
【0067】
(a9)及び(b9)には、カバー絶縁膜43が形成された状態が示されている。カバー絶縁膜43は、基板全面に形成した後、フォトリソグラフィ技術を利用してパターニングされる。カバー絶縁膜43は、薄膜抵抗体30を覆うように形成される。
【0068】
(a10)及び(b10)には、シード膜512及びフォトレジスト503が形成された状態が示されている。シード膜512は、保護膜34をめっき法により形成するための下地膜であり、例えば、チタン(Ti)と銅(Cu)の薄膜がスパッタリング法により形成される。シード膜512上にはフォトレジスト503が形成され、保護膜34の形成領域を開口させるようにパターニングされる。
【0069】
(a11)及び(b11)には、保護膜34が形成された状態が示されている。保護膜34は、フォトレジスト503の開口内に例えば、金(Au)、ニッケル(Ni)などを堆積させた後、フォトレジスト503及びシード膜512を除去することにより形成される。
【0070】
ベース絶縁膜41は、平坦化された下層絶縁膜40上に形成されるため、比較的薄い層、例えば厚さ5μmの層として形成される。一方、分離絶縁膜42は、例えば厚さ10~15μmに形成され、接続電極33は、例えば厚さ10μmに形成される。しかも、接続電極33は、ベース絶縁膜41、薄膜抵抗体30、分離絶縁膜42と重複して形成されるため、接続電極33の形成後の基板上面には大きな凹凸が形成されている。従って、その上に形成されるカバー絶縁膜43は、カバレッジを確保するために、比較的厚い層として形成され、例えば厚さ20μm以上になる。このため、従来技術のようにカバー絶縁膜43に貫通孔を形成しようとすれば、製造コストが増大し、あるいは、信頼性が低下する。これに対し、埋設ヒートシンク31をカバー絶縁膜43の形成領域外に引き出し、ベース絶縁膜41に被覆されていない放熱部50を設けることにより、製造工程を簡略化することができる。
【0071】
なお、ここでは、露出ヒートシンク35が接続電極33と同時に形成される場合の例について説明したが、露出ヒートシンク35が保護膜34と同一工程において同時に形成されるようにすることもできる。
【0072】
(4)変形例
図7は、
図1のST基板15の要部の他の構成例を示した図である。
図7(a)は、ST基板15を平面視したときの各構成要素のレイアウトを示した平面レイアウト図であり、
図7(b)は、
図7(a)におけるB2-B2切断線により切断したときの断面を示す断面図(B2-B2断面図)である。B2-B2切断線は、薄膜抵抗体30を通って第2方向D2に延びる直線である。なお、A-A切断面は、
図2(b)と同一であるため、重複する説明は省略する。
【0073】
図3に示したST基板15と比較すれば、露出ヒートシンク35を備えておらず、埋設ヒートシンク31の放熱部50が雰囲気に晒され、露出ヒートシンク35を介することなく、埋設ヒートシンク31の熱が、放熱部50から雰囲気へ直接的に排熱される点で異なる。
【0074】
実施の形態2.
実施の形態1では、露出ヒートシンク35及び保護膜34が互いに離間して形成されたST基板15について説明した。これに対し、本実施の形態では、露出ヒートシンク35の一部が保護膜34として機能するST基板15について説明する。
【0075】
図8は、本発明の実施の形態2によるST基板15の要部の一構成例を示した図である。
図8(a)は、ST基板15を平面視したときの各構成要素のレイアウトを示した平面レイアウト図であり、
図8(b)は、
図8(a)におけるB3-B3切断線により切断したときの断面を示す断面図(B3-B3断面図)である。B3-B3切断線は、薄膜抵抗体30を通って第2方向D2に延びる直線である。なお、A-A切断面は、
図2(b)と同一であるため、重複する説明は省略する。
【0076】
図3(実施の形態1)に示したST基板15と比較すれば、露出ヒートシンク35が保護膜34の領域まで延び、薄膜抵抗体30と対向する保護領域52を有し、当該保護領域52が薄膜抵抗体30を熱応力又はレーザー光から保護している点で異なる。つまり、保護膜34を一体化した露出ヒートシンク35を備え、
図3のST基板15よりも、さらに広い表面積を有する点で異なる。
【0077】
露出ヒートシンク35は、薄膜抵抗体30の放熱手段として機能するとともに、薄膜抵抗体30の保護手段としても機能する。このため、絶縁膜40~43よりも低い熱膨張係数及び高い熱伝導率を有し、かつ、良好な光反射特性を有する金属材料、例えば、金(Au)やニッケル(Ni)が用いられ、保護膜34と同様の工程により形成される。
【0078】
露出ヒートシンク35は、放熱部50上、露出領域51上及び下層絶縁膜40上に形成されるとともに、カバー絶縁膜43上にも形成され、カバー絶縁膜43を介して、薄膜抵抗体30と対向する保護領域52を有する。保護領域52は、薄膜抵抗体30を概ね覆うように形成され、カバー絶縁膜43の熱伸縮を抑制することにより薄膜抵抗体30を熱応力から保護し、あるいは、プローブ用電極パッド151に対しプローブ17を接合するために照射するレーザー光から薄膜抵抗体30を保護する。
【0079】
露出ヒートシンク35は、放熱部50を含み、放熱部50よりも広い領域に形成される。特に、カバー絶縁膜43上にまで延びることにより、
図3(実施の形態1)に示した露出ヒートシンク35と比較しても、より広い領域に形成することができる。このため、広い表面積を有する放熱面を確保することができ、より高い放熱効率を確保することができる。
【0080】
また、露出領域51は、放熱部50及びカバー絶縁膜43のそれぞれと隣接する。このため、放熱部50及び露出領域51の境界には段差が形成され、その高さはベース絶縁膜41の厚さに相当し、露出領域51及びカバー絶縁膜43の境界にも段差が形成され、その高さはカバー絶縁膜43の厚さに相当する。このため、
図12の第2絶縁膜612及び第3絶縁膜613に相当するベース絶縁膜41及びカバー絶縁膜43をともに貫通するビア配線を形成しなければならない従来技術に比べて、ステップカバレッジを確保しつつ、大きな面積を有する露出ヒートシンク35を容易に形成することができる。さらに、保護膜34に代えて、保護領域52を有する露出ヒートシンクを備えていることから、保護膜34を有するST基板15と比較して、製造工程を複雑化することなく、製造することができる。
【0081】
実施の形態3.
上記実施の形態では、薄膜抵抗体30ごとに、埋設ヒートシンク31、放熱部50及び露出ヒートシンク35を設ける場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、2以上の薄膜抵抗体30a~30cが、埋設ヒートシンク31、放熱部50及び露出ヒートシンク35を共用する場合について説明する。
【0082】
図9は、本発明の実施の形態3によるST基板15の要部の一構成例を示した図である。
図9(a)は、ST基板15を平面視したときの各構成要素のレイアウトを示した平面レイアウト図であり、
図9(b)は、
図9(a)におけるB4-B4切断線により切断したときの断面を示す断面図(B4-B4断面図)である。B4-B4切断線は、薄膜抵抗体30を通って第2方向D2に延びる直線である。なお、A-A切断面は、
図2(b)と同一であるため、重複する説明は省略する。
【0083】
図8(実施の形態2)に示したST基板15と比較すれば、2以上の薄膜抵抗体30a~30cに対し、共通の埋設ヒートシンク31、放熱部50及び露出ヒートシンク35が設けられている点で異なる。
【0084】
2以上の薄膜抵抗体30a~30cは、等間隔で第2方向D2に整列配置されている。2以上の薄膜抵抗体30a~30cには、それぞれが対応する一対の配線電極32a~32c及び一対の接続電極33a~33cが設けられる一方、共通の絶縁膜41~43、埋設ヒートシンク31、露出ヒートシンク35及び放熱部50が設けられる。
【0085】
つまり、2以上の薄膜抵抗体30a~30cは、共通のベース絶縁膜41上に形成され、当該ベース絶縁膜41を介して、共通の埋設ヒートシンク31と対向する。また、2以上の薄膜抵抗体30上には、共通の分離絶縁膜42が形成され、さらに共通のカバー絶縁膜43が形成されている。また、共通の放熱部50及び露出領域51が、一端側の薄膜抵抗体30aの外側に形成され、当該放熱部50を介して、共通の露出ヒートシンク35が埋設ヒートシンク31に接続される。当該露出ヒートシンク35は、2以上の薄膜抵抗体30a~30cのそれぞれと対向する。
【0086】
2以上の薄膜抵抗体30a~30cについて、埋設ヒートシンク31を共用化することにより、放熱部50も共用化することができる。このため、薄膜抵抗体30ごとに放熱部50を設ける必要がなく、薄膜抵抗体30及び接続電極33を高密度で配置することが可能になり、プローブ用電極パッド151を狭ピッチで配置することが可能になる。
【0087】
実施の形態4.
上記実施の形態では、薄膜抵抗体30の一方の側方に放熱部50及び露出ヒートシンク35が形成される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、薄膜抵抗体30の両側に放熱部50及び露出ヒートシンク35がそれぞれ形成される場合について説明する。
【0088】
図10は、本発明の実施の形態4によるST基板15の要部の一構成例を示した図である。
図10(a)は、ST基板15を平面視したときの各構成要素のレイアウトを示した平面レイアウト図であり、
図10(b)は、
図10(a)におけるB5-B5切断線により切断したときの断面を示す断面図(B5-B5断面図)である。B5-B5切断線は、薄膜抵抗体30を通って第2方向D2に延びる直線である。なお、A-A切断面は、
図2(b)と同一であるため、重複する説明は省略する。
【0089】
埋設ヒートシンク31は、薄膜抵抗体30から第2方向D2の両方向に延び、薄膜抵抗体30の両側に一対の放熱部50及び一対の露出ヒートシンク35が配置されている。露出ヒートシンク35は、対応する放熱部50を介して共通の埋設ヒートシンク31に接続されている。このため、2つの露出ヒートシンク35を用いて薄膜抵抗体30の放熱を行うことができ、雰囲気と接触する放熱面の面積をさらに増大させ、放熱効率をさらに向上させることができる。
【0090】
なお、
図7(実施の形態1)、
図8(実施の形態2)及び
図9(実施の形態3)に示したST基板15についても、本実施の形態の場合と同様にして、薄膜抵抗体30の両側に一対の放熱部50を形成することができる。
【符号の説明】
【0091】
12 メイン基板
120 外部端子
121 接続端子
13 補強板
14 接続基板
140 ポゴピン
15 ST基板
150 接続端子
151 プローブ用電極パッド
152 セラミック基板
153 積層構造体
16 支持部材
17 プローブ
20 半導体ウエハ
21 可動ステージ
22 電極パッド
30,30a~30c 薄膜抵抗体
31 埋設ヒートシンク
32,32a~32c 配線電極
33,33a~33c 接続電極
34 保護膜
35 露出ヒートシンク
40 下層絶縁膜
41 ベース絶縁膜
42 分離絶縁膜
43 カバー絶縁膜
50 放熱部
51 露出領域
52 保護領域
100 プローブカード