(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ベローズ調整方法、及びベローズ調整装置
(51)【国際特許分類】
F16J 3/04 20060101AFI20240322BHJP
F16C 19/10 20060101ALI20240322BHJP
F16C 33/60 20060101ALI20240322BHJP
H02G 5/06 20060101ALI20240322BHJP
H02B 13/045 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16J3/04 C
F16J3/04 Z
F16C19/10
F16C33/60
H02G5/06 341L
H02B13/045 E
(21)【出願番号】P 2023120586
(22)【出願日】2023-07-25
(62)【分割の表示】P 2022051958の分割
【原出願日】2022-03-28
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛騨 隆道
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩平
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 慶
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 一平
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-257776(JP,A)
【文献】特開2000-312423(JP,A)
【文献】特開2000-350316(JP,A)
【文献】特開2002-142340(JP,A)
【文献】実開平03-011127(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109099056(CN,A)
【文献】実開平2-88417(JP,U)
【文献】特開2000-253518(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112038999(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/04
F16C 19/10
F16C 33/60
H02G 5/06
H02B 13/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズ、このベローズの両側に設けられた相対向する一対のフランジ、一方のフランジから立設され他方のフランジを貫通する複数本のスタッドボルト、これら複数本のスタッドボルトそれぞれにおいて前記他方のフランジの内側および外側に設けられ各スタッドボルトに対する前記他方のフランジの位置を固定する内側ナットおよび外側ナット、を有し、各スタッドボルトに対して前記他方のフランジを移動させて前記ベローズの圧縮/拡張を行うベローズ調整方法であって、
周方向に連結、分離可能であり連結された場合に環状となるスラストベアリングを用意するステップと、
前記複数本のスタッドボルトの内から、前記複数本のスタッドボルト本数より少数の前記ベローズの圧縮/拡張作業用のスタッドボルトを選択するステップと、
前記選択されたスタッドボルトにおける内側ナットおよび外側ナット、および、前記ベローズの圧縮または拡張に応じて非選択のスタッドボルトにおける内側ナットまたは外側ナットの一方を緩めるステップと、
前記ベローズの圧縮または拡張に応じて、前記選択されたスタッドボルトにおける内側ナットまたは外側ナットの一方および前記他方のフランジの間のスタッドボルトに、前記スラストベアリングを環状に連結して装着するステップと、
前記選択されたスタッドボルトにおける前記スラストベアリング側のナットを締め付けて前記他方のフランジを移動させるとともに、移動後に前記選択および非選択のスタッドボルトにおける残余の内側ナットおよび外側ナットを締め付けて前記他方のフランジの位置を固定するステップと、
前記選択されたスタッドボルトにおける前記スラストベアリング側のナットを一旦緩め、前記スラストベアリングを分離してスタッドボルトから離脱させるステップと、
前記一旦緩めたナットを締め付けるステップと、
を含むベローズ調整方法。
【請求項2】
前記スラストベアリングは、
周方向に分離可能な複数の軸エレメントからなり連結されて環状を成す軸軌道盤と、
周方向に分離可能な複数のハウジングエレメントからなり連結されて環状を成すハウジング軌道盤と、
転動体を保持し周方向に分離可能な複数の保持器エレメントからなり、前記ハウジング軌道盤に収容されて前記軸軌道盤および前記ハウジング軌道盤の間に介在する環状の保持器と、
を備える請求項1記載のベローズ調整方法。
【請求項3】
ベローズと、
このベローズの両側に設けられた相対向する一対のフランジと、
一方のフランジから立設され他方のフランジを貫通する複数本のスタッドボルトと、
これら複数本のスタッドボルトそれぞれにおいて前記他方のフランジの内側および外側に設けられ各スタッドボルトに対する前記他方のフランジの位置を固定する内側ナットおよび外側ナットと、
前記ベローズの圧縮/拡張を行う際に、前記複数本のスタッドボルトの内から選択され、前記複数本のスタッドボルト本数より少数である前記ベローズの圧縮/拡張作業用スタッドボルトと、
周方向に連結、分離可能であって、連結されて環状を成し、前記ベローズの圧縮または拡張作業に応じて、前記選択された圧縮または拡張作業用スタッドボルトにおける内側ナットまたは外側ナットと前記他方のフランジとの間のスタッドボルトに装着されて前記内側ナットまたは外側ナットの締め付けを補助し、前記ベローズの圧縮または拡張作業後には分離されて前記スタッドボルトから離脱されるスラストベアリングと、
を備えるベローズ調整装置。
【請求項4】
前記スラストベアリングは、
周方向に分離可能な複数の軸エレメントからなり連結されて環状を成す軸軌道盤と、
周方向に分離可能な複数のハウジングエレメントからなり連結されて環状を成すハウジング軌道盤と、
転動体を保持し周方向に分離可能な複数の保持器エレメントからなり、前記ハウジング軌道盤に収容されて前記軸軌道盤および前記ハウジング軌道盤の間に介在する環状の保持器と、
を備える請求項3記載のベローズ調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ベローズ調整方法、及びベローズ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国内変電事業において、電力系統拡充期に納入した高経年機器の更新工事や、分散化電源系統接続の増加に伴う新増設設備の投資の拡大が予想される。現在、新型500kVのガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switchgear)は、一体型のオンベースタイプが主流となるが、輸送制限により、回線間の着脱母線は別送りとなっているため、着脱母線のベローズ(又は、ベロー)の圧縮作業及び拡張作業は現地で作業者が人力により手作業で実施している。
【0003】
着脱装置の取り付け作業では、まず、別送されてきたユニットを簡易防塵エリアの中で蛇腹部分を圧縮して内部導体を組み込んだ後に、重機で吊り上げ主母線に取り付ける。そして、接続導体を取り付けた後にベローズ(蛇腹部分)を拡張し回線間の母線接続が完了する。ベローズの圧縮作業及び拡張作業では、着脱装置に備えられる圧縮作業及び拡張作業用のスタッドボルトで行う。現状は、当該スタッドボルト(4本)に挿通されフランジに接するナットを回してベローズ全体を圧縮方向及び拡張方向に均一に圧縮及び拡張する。この場合、4個のナットを4名の作業者で同期させて回しベローズを均等に圧縮及び拡張する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来工法では、ベローズの圧縮作業及び拡張作業時にフランジに接するナットの抵抗が大きく時間も掛かり作業者にとって体力を消耗する作業である。ベローズの圧縮作業及び拡張作業でのボルトを回すには大口径に成れば成るほどベローズの強度が上昇し、圧縮作業及び拡張作業は多大な力と体力を必要とし作業者を交代させながら実施している。
【0006】
また、スタッドボルトに挿通されるナットには、電動工具や油圧工具が使用できない。さらに、ボックスレンチも使用できず、使用可能なのはスパナのみである。
【0007】
また、フランジに接するナットの摩擦が大きく、4名の作業者で同期させて回転させることは難しい。作業をスタッドボルトに挿通されたナットの締緩でベローズの圧縮作業及び拡張作業を行っており、ベローズ全体を均一に圧縮及び拡張する必要があることから、同時に作業者4名が必要となる。1回線あたりに必要な工数は、ベローズの圧縮における4名/日×2日の8名と、ベローズ拡張における4名/日×1日の4名とを合わせた計12名となっている。
【0008】
通常のガス絶縁開閉装置は、甲及び乙の母線を備える。そして、2回線の場合、各母線において2回線間の1箇所にベローズを備えるため、ガス絶縁開閉装置は甲乙母線で合計2箇所にベローズを備える。また、5回線の場合、各母線において5回線間の4箇所にベローズを備えるため、ガス絶縁開閉装置は甲乙母線で合計8箇所にベローズを備える。その他、着脱装置以外にもブッシングへの母線の寸法調整用にもベローズを用いている。このようにガス絶縁開閉装置は多くのベローズを備えるため、ベローズの調整作業は近代的な装置据付での作業者にとって負荷がかかる仕事であった。ガス絶縁開閉装置は絶縁性を必要とすることから、塵埃や水分を嫌い雨天はもちろん、曇天でも降雨予想が有る場合は作業が中断する場合があり、この作業に時間がかかるため着脱装置の組み立てができず、工事に支障を来していた。
【0009】
ベローズのフランジと拡張操作用ナットの間にベアリングを入れておけば摩擦が軽減され作業性が向上することは想定できるが、機器据え付け後にベアリングを取り外すことができない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、回転させるべきナットの軸方向に力(スラスト、推力)が働いている場合のナットの回転作業、特に作業者によるベローズの圧縮作業や拡張作業を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係るベローズ調整方法は、ベローズ、このベローズの両側に設けられた相対向する一対のフランジ、一方のフランジから立設され他方のフランジを貫通する複数本のスタッドボルト、これら複数本のスタッドボルトそれぞれにおいて前記他方のフランジの内側および外側に設けられ各スタッドボルトに対する前記他方のフランジの位置を固定する内側ナットおよび外側ナット、を有し、各スタッドボルトに対して前記他方のフランジを移動させて前記ベローズの圧縮/拡張を行うものである。そして、当該ベローズ調整方法は、(1)周方向に連結、分離可能であり連結された場合に環状となるスラストベアリングを用意するステップと、(2)前記複数本のスタッドボルトの内から、前記複数本のスタッドボルト本数より少数の前記ベローズの圧縮/拡張作業用のスタッドボルトを選択するステップと、(3)前記選択されたスタッドボルトにおける内側ナットおよび外側ナット、および、前記ベローズの圧縮または拡張に応じて非選択のスタッドボルトにおける内側ナットまたは外側ナットの一方を緩めるステップと、(4)前記ベローズの圧縮または拡張に応じて、前記選択されたスタッドボルトにおける内側ナットまたは外側ナットの一方および前記他方のフランジの間のスタッドボルトに、前記スラストベアリングを環状に連結して装着するステップと、(5)前記選択されたスタッドボルトにおける前記スラストベアリング側のナットを締め付けて前記他方のフランジを移動させるとともに、移動後に前記選択および非選択のスタッドボルトにおける残余の内側ナットおよび外側ナットを締め付けて前記他方のフランジの位置を固定するステップと、(6)前記選択されたスタッドボルトにおける前記スラストベアリング側のナットを一旦緩め、前記スラストベアリングを分離してスタッドボルトから離脱させるステップと、(7)前記一旦緩めたナットを締め付けるステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングの使用状態を示す斜視図。
【
図2】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングの各部品を示す斜視図。
【
図3】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングのハウジング軌道盤に保持器が収容された状態を示す斜視図。
【
図4】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングが適用されるガス絶縁開閉装置の構成を示す上面図。
【
図5】
図4に示すガス絶縁開閉装置のI-I断面図。
【
図6】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングが適用されるガス絶縁開閉装置において、ベローズのフランジを示す図。
【
図7】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングが適用されるガス絶縁開閉装置の据付工事におけるベローズの拡張作業の工程を示す概要図。
【
図8】実施形態に係るボルト用のスラストベアリングが適用されるガス絶縁開閉装置の据付工事におけるベローズの圧縮作業の工程を示す概要図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、ベローズ調整方法、及びベローズ調整装置の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るボルト用のスラストベアリングの使用状態を示す斜視図である。
【0015】
図1は、実施形態に係るボルト用のスラストベアリング(以下、単に「ベアリング」と呼ぶ)10とボルト(例えば、スタッドボルトV)とを示す。
図1に示すベアリング10は、各部品の結合後、つまり、使用状態を示す。ベアリング10は、軸軌道盤1と、ハウジング軌道盤2と、保持器3(
図2に図示)とを部品として備える。軸軌道盤1は、保持器3の機能により、ハウジング軌道盤2に対してZ軸を軸として回転可能である。なお、スタッドボルトVの挿通方向をZ軸方向と定義し、その直交方向を、互いに直交するX軸方向及びY軸方向と定義する。
【0016】
図2(A),(B)は、ベアリング10の各部品を示す斜視図である。
【0017】
図2(A),(B)に示すように、ベアリング10は、k(k=2,3,…)個の軸エレメント(例えば、2個の軸エレメント11,12)と、m(m=2,3,…)個のハウジングエレメント(例えば、2個のハウジングエレメント21,22)と、n(n=2,3,…)個の保持器エレメント(例えば、2個の保持器エレメント31,32)とを備える。なお、各エレメントの個数が3個以上の場合は、後述するベアリング10をスタッドボルトV(
図1に図示)上で作製するためのエレメントの連結作業、部品の結合作業に時間を要するため、各エレメントの個数は、2個(半割れ、2分割)であることが好適である。以下、特に言及しない限り、各エレメントの個数が2個(k=m=n=2)である場合を例にとって説明する。
【0018】
また、ベアリング10の軸受は、単式スラスト玉軸受に限定されるものではなく、複式スラスト玉軸受であってもよい。
【0019】
2個の軸エレメント11,12は、一体となって軸軌道盤1を形作る。2個の軸エレメント11,12は、互いを着脱可能で連結する軸連結部を備える。例えば、軸連結部は、2個の軸エレメント11,12の接触面に形成され、互いに噛み合う凹凸部P11,P12である。当該凹凸部P11,P12が係合することで、2個の軸エレメント11,12が連結される。
【0020】
付加的に、又は、代替的に、2個の軸エレメント11,12はそれぞれ、2個の軸エレメント11,12を一貫する貫通孔Q11,Q12と、貫通孔Q11,Q12を挿通するボルト及びナットとを軸連結部として備える。そして、貫通孔Q11,Q12の一方の開口部からボルトを挿入し、他方の開口部から突出したボルトにナットをねじ込むことで、2個の軸エレメント11,12が連結される。なお、2個の軸エレメント11,12はそれぞれ、ハウジング軌道盤2との結合側に、シャフト受け部エレメントR11,R12を備える。シャフト受け部エレメントR11,R12は一体となってシャフト受け部Rを形作る。
【0021】
2個のハウジングエレメント21,22は、一体となってハウジング軌道盤2を形作る。2個のハウジングエレメント21,22は、互いを着脱可能で連結するハウジング連結部を備える。例えば、ハウジング軌道盤2は、2個のハウジングエレメント21,22の接触面に形成され、互いに噛み合う凹凸部P21,P22である。当該凹凸部P21,P22が係合することで、2個のハウジングエレメント21,22が連結される。
【0022】
付加的に、又は、代替的に、2個のハウジングエレメント21,22はそれぞれ、2個のハウジングエレメント21,22を一貫する貫通孔Q21,Q22と、貫通孔Q21,Q22を挿通するボルト及びナットとをハウジング連結部として備える。そして、貫通孔Q21,Q22の一方の開口部からボルトを挿入し、他方の開口部から突出したボルトにナットをねじ込むことで、2個のハウジングエレメント21,22が連結される。なお、2個のハウジングエレメント21,22はそれぞれ、軸軌道盤1との結合側に、シャフト受け部Rに係合するシャフトエレメントS21,S22を備える。シャフトエレメントS21,S22は一体となってシャフトSを形作る。
【0023】
2個の保持器エレメント31,32は、一体となって複数の転動体(例えば、コロ又はボール)Bを保持する保持器3を形作る。2個の保持器エレメント31,32は、2個のハウジングエレメント21,22が形作るハウジング軌道盤2に収容可能である。
【0024】
図3は、ハウジング軌道盤2に保持器3が収容された状態を示す斜視図である。
図3に示すように、ハウジング軌道盤2に保持器3が収容されると、複数の転動体Bの回転により、保持器3はハウジング軌道盤2に対してZ軸を軸として回転可能である。また、ハウジング軌道盤2に保持器3が収容された状態で、ハウジング軌道盤2のシャフトSは、保持器3からZ軸方向に突出している。ハウジング軌道盤2のシャフトSの突出部は、ハウジング軌道盤2に軸軌道盤1が結合した際に、軸軌道盤1のシャフト受け部R(
図2(B)に図示)に回転可能に係合する。
【0025】
続いて、ベアリング10が適用される例について説明する。
【0026】
図4は、ベアリング10が適用されるガス絶縁開閉装置50を示す。ガス絶縁開閉装置50は、主回路母線が内蔵された一対の母線タンク51,52の間に、フランジF,Gと接続タンク53とが介装されてなる。接続タンク53はベローズからなるとともに、主回路母線同士を接続する接続母線を内蔵している。
【0027】
また、
図5に示すように、ガス絶縁開閉装置50(
図4に図示)の母線タンク51,52の間に介装された接続タンク53の両端は、スタッドボルトVを挿通するフランジF,Gをナット閉めすることによって伸縮しないように固定されている。接続タンク53には、接続母線を構成する一対の接続母線導体51C,52Cが内蔵され、紙面奥行方向に各相の接続母線導体51C,52Cが合計3対並べられている。
【0028】
接続母線導体51Cは、母線タンク51の主回路母線から引き出された引出し導体51Bに固定ボルト62で固定ボルト62を締め付けることにより固定される。接続母線導体52Cは、母線タンク52の主回路母線から引き出された引出し導体52Bに固定ボルト63で固定ボルト63を締め付けることにより固定されている。なお、引出し導体51B,52Bはガス区分用の絶縁スペーサ54によって支持されている。
【0029】
接触子64の両側の内径面には、ベローズ継手H(
図6(B)に図示、例えばリングばね)によって締め付けられ円周方向に複数に分割されたコンタクト65を備え、接触子64がこのコンタクト65を介して一対の接続母線導体51C,52Cを橋絡させている。それによって、一対の接続母線導体51C,52C同士の電気的な接触状態が良好に保たれている。
【0030】
続いて、ベローズのフランジFとナットとを挿通するスタッドボルトVにベアリング10を装着して行うベローズ調整方法について説明する。
図6(A)は、ガス絶縁開閉装置50のフランジFを示す正面図である。
図6(B)は、ガス絶縁開閉装置50のフランジFを示す側面図である。
【0031】
図6(A)に示すように、フランジFには、フランジ軸を中心Oとする外側円周T上に、8個のスタッドボルトV(
図6~
図8に図示)がねじ込まれる8個の貫通孔F1が設けられる。なお、
図6(A)のフランジFでは、スタッドボルトVを挿通する8個の貫通孔F1のみを示し他の構成については図示を省略する。例えば、他の構成として、フランジFは、フランジFと端蓋とを締結するための締結ボルトのための複数の貫通孔を備える。
【0032】
続いて、
図6及び
図7を用いて、ベローズのフランジFとナットとを挿通するスタッドボルトVにベアリング10を装着して行うベローズ調整方法のうち拡張方法について説明する。
図7は、ガス絶縁開閉装置50の据付工事におけるベローズの拡張作業の工程を示す概要図である。なお、
図7において、
図6(B)に示すフランジFの上側のみを示す。
【0033】
図6(B)に示すように、フランジFは、8個のスタッドボルトV(4個×紙面奥行方向の2個)に挿通され、両側をナット(例えば、内側及び外側のダブルナットNi,No)で固定されている。この状態において、フランジFは、
図6(B)の紙面左右方向に圧力を受けていない。
【0034】
図6(B)に示す状態から作業者がダブルナットNiを回してベローズを拡張、つまり、フランジFを外側(
図6(B)の紙面左方向)に移動させようとすると、フランジFはベローズ継手Hにより内側(紙面右方向)に圧力を受けてしまうので、ダブルナットNiを回す作業に労力を費やしてしまう。そこで、ダブルナットNiを回す作業を補助すべく、フランジFとダブルナットNiとの隙間(
図7(A),(B)に示す隙間Ui)にスラストベアリングを装着することを考える。
【0035】
他方、第1スタッドボルトV1の、ベアリング10を装着すべき当該隙間の両側にはダブルナットNiとフランジFとがそれぞれ配置されている。そのため、通常のスラストベアリングの場合、ダブルナットNiをスタッドボルトVから外すことができず、スラストベアリングを当該隙間に装着することはできない。通常のスラストベアリングでは、軸軌道盤と、ハウジング軌道盤と、保持器とが、その円周方向について閉じているからである。しかし、ベアリング10であれば、連結前の各エレメントをスタッドボルトVの当該隙間に嵌め込んで連結することができるし、かつ、エレメントが連結された部品を結合すれば、通常のスラストベアリングとして機能させることもできる。
【0036】
そこで、作業者は、8個のスタッドボルトVのうち4個のスタッドボルトV(好適には、対向する4個のスタッドボルトV)について、フランジFとダブルナットNiとの隙間に連結前のエレメントを嵌め込んで各部品を作製し、作製された部品を結合して、スタッドボルトV上でベアリング10を作製する(
図7(E)参照)。以下、ベアリング10が装着されたスタッドボルトVを第1スタッドボルトV1と称し、ベアリング10が装着されていないスタッドボルトVを第2スタッドボルトV2と称する。
【0037】
第1スタッドボルトV1上でベアリング10を作製する方法について
図7(A)~(E)を用いて具体的に説明する。なお、
図7(B)~(D)は、
図7(A)に示す領域Uを示す。作業者は、
図6(B)に示す状態から、フランジFの内外両側に接しているダブルナットNi,Noを緩める(
図7(A)参照)。作業者は、ベアリング10のハウジングエレメント21を第1スタッドボルトV1の隙間Uiに嵌め込むとともに、ベアリング10のハウジングエレメント22を第1スタッドボルトV1の隙間Uiに嵌め込む(
図7(B)参照)。そして、作業者は、ハウジングエレメント21とハウジングエレメント22とを連結してハウジング軌道盤2を作製する(
図7(C)参照)。例えば、連結するために、ハウジングエレメント21とハウジングエレメント22との間のボルト締めを行う。
【0038】
続いて、作業者は、ベアリング10の保持器エレメント31,32をそれぞれハウジング軌道盤2に収容する(
図7(C)参照)。保持器エレメント31,32が収容された状態で、ハウジング軌道盤2のシャフトSは、紙面左側に突出している。なお、ハウジング軌道盤2に保持器エレメント31,32が収容された状態は
図3に示すとおりである。
【0039】
続いて、作業者は、ベアリング10の軸エレメント11,12をそれぞれ第1スタッドボルトV1の隙間Uiに嵌め込む(
図7(D)参照)。そして、作業者は、軸エレメント11と軸エレメント12とを連結して軸軌道盤1を作製する。例えば、連結するために、軸エレメント11と軸エレメント12との間のボルト締めを行う。
【0040】
続いて、作業者は、連結された軸軌道盤1のシャフト受け部Rを、連結されたハウジング軌道盤2のシャフトSに係合させることで、軸軌道盤1と、ハウジング軌道盤2とを、保持器3を介して回転可能なように結合する。このようにして、スタッドボルトV上でベアリング10が作製される(
図7(E)に示すベアリング10参照)。なお、部品の結合後、つまり、使用状態におけるベアリング10の外観形状は、
図1に示すとおりである。
【0041】
図7(B)~(E)で説明したように、第1スタッドボルトV1上のダブルナットNiとフランジFとの間で、分割された各エレメントを連結して部品を作製し、部品を結合することで、使用状態のベアリング10を作製することができる。なお、部品である軸軌道盤1とハウジング軌道盤2との結合は、シャフト受け部RとシャフトSとにより相対的に回転可能なように係合されていればよく、Z軸方向には自由に脱着が可能である。
【0042】
続いて、作業者は、第1スタッドボルトV1に挿通されている内側のダブルナットNiのうち圧縮用ナットNaを回して締め付ける。つまり、フランジFをフランジGから遠ざかるように移動させ、ベローズを所定の長さまで拡げる(
図7(F)参照)。その際、フランジFから紙面右側の方向に受ける圧力を軸軌道盤1で押さえつつ、ハウジング軌道盤2が圧縮用ナットNaの回転に応じて軸軌道盤1に対して回転する。そのため、接続タンク53のベローズの拡張作業において、作業員は、結合後のベアリング10の補助を受けながら圧縮用ナットNaを回すことができるので、圧縮用ナットNaの締め付け作業を容易に行うことができる。
【0043】
図7(F)に次いで、作業者は、第2スタッドボルトV2に挿通されているダブルナットNiを締め付け、拡張後の位置でフランジFを仮固定する(
図7(G)参照)。作業者は、第1スタッドボルトV1に挿通されているダブルナットNiの圧縮用ナットNaを緩める。そして、作業者は、ベアリング10の部品の結合を解除し、エレメントの連結を解除する。なお、部品の結合の解除、エレメントの連結の解除は、
図7(B)~(D)で説明した部品の結合を解除し、エレメントの連結を解除すればよい。続いて、部品の結合、エレメントの連結が解除されたベアリング10を第1スタッドボルトV1から離脱させる(
図7(H)参照)。
【0044】
第1スタッドボルトV1の、ベアリング10が装着されている位置の両側にはダブルナットNiとフランジFとが配置されている(
図7(G)参照)。そのため、通常のスラストベアリングの場合、ダブルナットNiを第1スタッドボルトV1から外すことができず、スラストベアリングを離脱させることはできない。しかし、ベアリング10であれば、部品の結合解除後、エレメントの連結解除後にベアリング10を第1スタッドボルトV1から離脱させることができる。
【0045】
図7(H)に次いで、作業者は、第1スタッドボルトV1に挿通されているダブルナットNi(Na及びNb)を締め付け、拡張後の位置でフランジFを固定する(
図7(I)参照)。つまり、ダブルナットNiを回して、結合後のベアリング10を介してフランジFを外側に移動させることで、ベローズを拡張することができる。
【0046】
図6及び
図7で説明したように、ベローズの拡張作業においてフランジFとダブルナットNiとの間のスタッドボルトVが閉じている場合であっても通常のスラストベアリングと同様に機能するベアリング10をスタッドボルトVに装着することができるので、小さな力でダブルナットNiを回してフランジFを移動させることができる。そのため、ベローズの拡張作業の際にダブルナットNiを回す作業者の作業負荷を大幅に低減させることができる。
【0047】
続いて、
図6及び
図8を用いて、ベローズの調整方法のうち圧縮方法について説明する。
図8は、ガス絶縁開閉装置50の据付工事におけるベローズの圧縮作業の工程を示す概要図である。なお、
図8において、
図6(B)に示すフランジFの上側のみを示す。
【0048】
図6(B)に示す状態から作業者がダブルナットNoを回してベローズを圧縮、つまり、フランジFを内側(
図6(B)の紙面右方向)に移動させようとすると、フランジFはベローズ継手Hにより外側(紙面左方向)に圧力を受けてしまうので、ダブルナットNoを回す作業に労力を費やしてしまう。そこで、ダブルナットNoを回す作業を補助すべく、フランジFとダブルナットNoとの隙間(
図8(A),(B)に示す隙間Wo)にスラストベアリングを装着することを考える。
【0049】
他方、第1スタッドボルトV1の、ベアリング10を装着すべき当該隙間の両側にはダブルナットNoとフランジFとがそれぞれ配置されている。そのため、通常のスラストベアリングの場合、ダブルナットNoを第1スタッドボルトV1から外さない限り、スラストベアリングを当該隙間に装着することはできない。通常のスラストベアリングでは、軸軌道盤と、ハウジング軌道盤と、保持器とが、その円周方向について閉じているからである。しかし、ベアリング10であれば、連結前の各エレメントを第1スタッドボルトV1の当該隙間に嵌め込んで連結することができるし、かつ、エレメントが連結された部品を結合すれば、通常のスラストベアリングとして機能させることもできる。
【0050】
そこで、作業者は、第1スタッドボルトV1について、フランジFとダブルナットNoとの隙間に連結前のエレメントを嵌め込んで各部品を作製し、作製された部品を結合して、第1スタッドボルトV1上でベアリング10を作製する(
図8(E)参照)。
【0051】
第1スタッドボルトV上でベアリング10を作製する方法について
図8(A)~(E)を用いて具体的に説明する。なお、
図8(B)~(D)は、
図8(A)に示す領域Uを示す。作業者は、
図6(B)に示す状態から、フランジFの内外両側に接しているダブルナットNi,Noを緩める(
図8(A)参照)。そして、作業者は、ベアリング10のハウジングエレメント21を第1スタッドボルトV1の隙間Woに嵌め込むとともに、ベアリング10のハウジングエレメント22を第1スタッドボルトV1の隙間Woに嵌め込む(
図8(B)参照)。そして、作業者は、ハウジングエレメント21とハウジングエレメント22とを連結してハウジング軌道盤2を作製する(
図8(C)参照)。例えば、連結するために、ハウジングエレメント21とハウジングエレメント22との間のボルト締めを行う。
【0052】
続いて、作業者は、ベアリング10の保持器エレメント31,32をそれぞれハウジング軌道盤2に収容する(
図8(C)参照)。保持器エレメント31,32が収容された状態で、ハウジング軌道盤2のシャフトSは、紙面右側に突出している。なお、ハウジング軌道盤2に保持器エレメント31,32が収容された状態は
図3に示すとおりである。
【0053】
続いて、作業者は、ベアリング10の軸エレメント11,12をそれぞれ第1スタッドボルトV1の隙間Woに嵌め込む(
図8(D)参照)。そして、作業者は、軸エレメント11と軸エレメント12とを連結して軸軌道盤1を作製する。例えば、連結するために、軸エレメント11と軸エレメント12との間のボルト締めを行う。
【0054】
続いて、作業者は、連結された軸軌道盤1のシャフト受け部Rを、連結されたハウジング軌道盤2のシャフトSに係合させることで、軸軌道盤1と、ハウジング軌道盤2とを、保持器3を介して回転可能なように結合する。このようにして、スタッドボルトV上でベアリング10が作製される(
図8(E)に示すベアリング10参照)。なお、部品の結合後、つまり、使用状態におけるベアリング10の外観形状は、
図1に示すとおりである。
【0055】
図8(B)~(E)で説明したように、第1スタッドボルトV1上のダブルナットNoとフランジFとの間で、分割された各エレメントを連結して部品を作製し、部品を結合することで、使用状態のベアリング10を作製することができる。なお、部品である軸軌道盤1とハウジング軌道盤2との結合は、シャフト受け部RとシャフトSとにより相対的に回転可能なように係合されていればよく、Z軸方向には自由に脱着が可能である。
【0056】
続いて、作業者は、第1スタッドボルトV1に挿通されている外側のダブルナットNoのうち圧縮用ナットNaを回して締め付ける。つまり、フランジFをフランジGに向かって移動させ、ベローズを所定の長さまで縮める(
図8(F)参照)。その際、フランジFから紙面左側の方向に受ける圧力を軸軌道盤1で押さえつつ、ハウジング軌道盤2が圧縮用ナットNaの回転に応じて軸軌道盤1に対して回転する。そのため、接続タンク53のベローズの圧縮作業において、作業員は、結合後のベアリング10の補助を受けながら圧縮用ナットNaを回すことができるので、圧縮用ナットNaの締め付け作業を容易に行うことができる。
【0057】
図8(F)に次いで、作業者は、第2スタッドボルトV2に挿通されているダブルナットNoを締め付け、圧縮後の位置でフランジFを仮固定する(
図8(G)参照)。作業者は、第1スタッドボルトV1に挿通されているダブルナットNiの圧縮用ナットNaを緩める。そして、作業者は、ベアリング10の部品の結合を解除し、エレメントの連結を解除する。なお、部品の結合の解除、エレメントの連結の解除は、
図8(B)~(D)で説明した部品の結合を解除し、エレメントの連結を解除すればよい。続いて、部品の結合、エレメントの連結が解除されたベアリング10を第1スタッドボルトV1から離脱させる(
図8(H)参照)。
【0058】
第1スタッドボルトV1の、ベアリング10が装着されている位置の両側にはダブルナットNoとフランジFとが配置されている(
図8(G)参照)。そのため、通常のスラストベアリングの場合、ダブルナットNoを第1スタッドボルトV1から外さない限り、スラストベアリングを離脱させることはできない。しかし、ベアリング10であれば、部品の結合解除後、エレメントの連結解除後にベアリング10を第1スタッドボルトV1から離脱させることができる。
【0059】
図8(H)に次いで、作業者は、第1スタッドボルトV1に挿通されているダブルナットNoを締め付け、圧縮後の位置でフランジFを固定する(
図8(I)参照)。つまり、ダブルナットNoを回して、結合後のベアリング10を介してフランジFを内側に移動させることで、ベローズを圧縮することができる。
【0060】
図6及び
図8で説明したように、ベローズの圧縮作業においてフランジFとダブルナットNoとの間のスタッドボルトVが閉じている場合であっても通常のスラストベアリングと同様に機能するベアリング10をスタッドボルトVに装着することができるので、小さな力でダブルナットNoを回してフランジFを移動させることができる。そのため、ベローズの圧縮作業の際にダブルナットNoを回す作業者の作業負荷を大幅に低減させることができる。また、ベローズの圧縮作業においてフランジFとダブルナットNoとの間のスタッドボルトVが閉じている場合に、ダブルナットNoをスタッドボルトVから外すことなくフランジFとダブルナットNoとの間にベアリング10を装着することができる。そのため、ベローズの圧縮作業の際にダブルナットNoを外すという作業者の作業負荷を大幅に低減させることができる。
【0061】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、回転させるべきナットの軸方向に力が働いている場合のナットの回転作業、特に作業者によるベローズの圧縮作業や拡張作業を容易にすることができる。そのため、ベローズの圧縮作業や拡張作業の工数を低減させることができる。
【0062】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…軸軌道盤
2…ハウジング軌道盤
3…保持器
10…ボルト用のスラストベアリング
11,12…2個の軸エレメント
21,22…2個のハウジングエレメント
31,32…2個の保持エレメント
F,G…フランジ
P11,P12,P21,P22…凹凸部
Q12,Q12,Q21,Q22…貫通孔
R…シャフト受け部
R11,R12…シャフト受け部エレメント
S…シャフト
S21,S22…シャフトエレメント
V…スタッドボルト
Ni…内側のダブルナット
No…外側のダブルナット