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特許7458545ポリエステル基材用離型コート剤、離型シート及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ポリエステル基材用離型コート剤、離型シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240322BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240322BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240322BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20240322BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240322BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240322BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240322BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240322BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240322BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/02
C09D133/00
C09D133/06
C08L33/04
C08L75/04
C08G18/42
C08F2/44 C
C09K3/00 R
D21H27/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023144300
(22)【出願日】2023-09-06
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 文弥
(72)【発明者】
【氏名】西村 卓真
(72)【発明者】
【氏名】藤原 早季子
(72)【発明者】
【氏名】枝連 未奈里
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-318525(JP,A)
【文献】特開2001-302714(JP,A)
【文献】特開2016-204571(JP,A)
【文献】特開2014-156518(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067089(WO,A1)
【文献】特開2016-033173(JP,A)
【文献】特開2003-301024(JP,A)
【文献】特開2020-050863(JP,A)
【文献】特開2003-221428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08L 33/04
C08L 75/04
C08G 18/42
C08F 2/44
C09K 3/00
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体を含む、ポリエステル基材用離型コート剤であって、
前記水系分散体は、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキルと官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレートとを構成成分として含む(メタ)アクリル重合体を含み、
前記(メタ)アクリル重合体は、分散質としての樹脂粒子に前記ポリウレタン樹脂とともに含まれており、
前記(メタ)アクリル重合体は、前記(メタ)アクリル酸アルキル100質量部に対して前記ポリ(メタ)アクリレートを0.3~50質量部含む
ポリエステル基材用離型コート剤。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基が直鎖のアルキル基である、請求項1に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
【請求項3】
前記ポリ(メタ)アクリレートは1官能基あたりの分子量であるアクリル当量が80~150である、請求項1に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂100質量部に対する前記(メタ)アクリル酸アルキルの量が40~350質量部である、請求項1に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールを含むポリオールを構成成分として含み、前記ポリエステルポリオールを前記ポリオール100質量%に対して30質量%以上含む、請求項1に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
【請求項6】
ポリエステル基材と、前記ポリエステル基材上に設けられた請求項1~のいずれか1項に記載の離型コート剤からなる離型層と、を含む離型シート。
【請求項7】
請求項に記載の離型シートと、前記離型シートの前記離型層上に剥離可能に設けられた樹脂層と、を含む積層体。
【請求項8】
親水基を持つポリウレタン樹脂と、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキルと、官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレートとを混合し、混合物を水系分散媒に分散させ、前記混合物に含まれる前記(メタ)アクリル酸アルキルと前記ポリ(メタ)アクリレートを重合させてなる水系分散体を含む、ポリエステル基材用離型コート剤であって、
前記(メタ)アクリル酸アルキルと前記ポリ(メタ)アクリレートを重合させてなる(メタ)アクリル重合体は、分散質としての樹脂粒子に前記ポリウレタン樹脂とともに含まれており、
前記(メタ)アクリル重合体は、前記(メタ)アクリル酸アルキル100質量部に対して前記ポリ(メタ)アクリレートを0.3~50質量部含む、ポリエステル基材用離型コート剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリエステル基材に塗布して用いられる離型コート剤、並びに、該離型コート剤を用いて得られる離型シート及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム等のポリエステル基材に離型コート剤を塗布してなる離型層を設けた離型シート(剥離シートとも称される。)が知られている。例えば、特許文献1には、離型ベース基材の表面に塗布されて離型層を形成する離型コート剤として、シリコーン樹脂とアルコキシ基含有シラン変性ポリウレタン樹脂と溶媒を含有する離型剤組成物が開示されている。このような離型コート剤としては、シリコーン系の他、シリコーン移行を回避することを可能にする非シリコーン系の離型コート剤もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-099095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエステル基材に塗布して用いられる離型コート剤においては、ポリエステル基材に対する接着性が求められるとともに、離型シートとして保護すべき粘着剤皮膜や離型シート上に成膜した樹脂皮膜などの樹脂層から剥離しやすいこと、即ち樹脂層に対する剥離性が求められる。その際、離型シートと樹脂層との積層体が加熱雰囲気下に置かれることがあるため、加熱処理後にも剥離できること、即ち耐熱剥離性を持つことが望まれる。
【0005】
本発明の実施形態は、ポリエステル基材に対する接着性に優れるとともに耐熱剥離性を有するポリエステル基材用離型コート剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 水系分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体を含む、ポリエステル基材用離型コート剤であって、前記水系分散体は、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキルと官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレートとを構成成分として含む(メタ)アクリル重合体を含む、ポリエステル基材用離型コート剤。
[2] 前記(メタ)アクリル重合体は、分散質としての個々の樹脂粒子に前記ポリウレタン樹脂とともに含まれている、[1]に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
[3] 前記(メタ)アクリル重合体は、前記(メタ)アクリル酸アルキル100質量部に対して前記ポリ(メタ)アクリレートを0.3~50質量部含む、[1]又は[2]に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
[4] 前記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基が直鎖のアルキル基である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
[5] 前記ポリ(メタ)アクリレートは1官能基あたりの分子量であるアクリル当量が80~150である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
[6] 前記ポリウレタン樹脂100質量部に対する前記(メタ)アクリル酸アルキルの量が40~350質量部である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
[7] 前記ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールを含むポリオールを構成成分として含み、前記ポリエステルポリオールを前記ポリオール100質量%に対して30質量%以上含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリエステル基材用離型コート剤。
【0007】
[8] ポリエステル基材と、前記ポリエステル基材上に設けられた[1]~[7]のいずれか1項に記載の離型コート剤からなる離型層と、を含む離型シート。
[9] [8]に記載の離型シートと、前記離型シートの前記離型層上に剥離可能に設けられた樹脂層と、を含む積層体。
【0008】
[10] 親水基を持つポリウレタン樹脂と、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキルと、官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレートとを混合し、混合物を水系分散媒に分散させ、前記混合物に含まれる前記(メタ)アクリル酸アルキルと前記ポリ(メタ)アクリレートを重合させてなる水系分散体を含む、ポリエステル基材用離型コート剤。
【0009】
[11] 水系分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体であって、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキルと官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレートとを構成成分として含む(メタ)アクリル重合体を含む水系分散体の、ポリエステル基材用離型コート剤としての使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、ポリエステル基材に対する接着性に優れるとともに耐熱剥離性を有するポリエステル基材用離型コート剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るポリエステル基材用離型コート剤(以下、単に離型コート剤ともいう。)は、ポリウレタン樹脂の水系分散体を含む離型コート剤であって、該水系分散体が特定の(メタ)アクリル重合体を含むものである。そのため、該離型コート剤は、水系分散媒と、ポリウレタン樹脂と、(メタ)アクリル重合体と、を含む。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリル重合体」とは、アクリル重合体及び/又はメタクリル重合体を意味する。同様に、「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルを意味し、「ポリ(メタ)アクリレート」とは、ポリアクリレート及び/又はポリメタクリレートを意味する。その他の「(メタ)アクリル」や「(メタ)アクリレート」等も同様である。
【0013】
[水系分散媒]
水系分散媒は、水を含む分散媒であり、水、又は、水と親水性有機溶媒との混合媒体が挙げられる。水系分散体の分散安定性の観点から、水系分散媒は水が好ましく、有機溶媒は含まれてもよいが少量であることが好ましい。一実施形態において、水系分散媒は水を70質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは水を80質量%以上含むことであり、より好ましくは水を90質量%以上含むことであり、水が100質量%でもよい。すなわち、水系分散媒において、水/親水性有機溶媒は、質量比で、70/30~100/0であることが好ましく、より好ましくは80/20~100/0であり、更に好ましくは90/10~100/0である。
【0014】
親水性有機溶媒としては、水に溶解する各種有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級1価アルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0015】
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるものであり、分子内にウレタン結合を有する重合体である。すなわち、ポリウレタン樹脂は、その構成成分として、ポリオールとポリイソシアネートとを含む。ここで、ポリウレタン樹脂について、構成成分として含むとは、ポリウレタン樹脂を合成する原料(モノマー)として用いることをいい、これに由来する構造をポリウレタン樹脂に有する。
【0016】
ポリウレタン樹脂としては、親水基を持つものが挙げられ、例えばアニオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性ポリウレタン樹脂、及びノニオン性ポリウレタン樹脂等の各種水系ポリウレタン樹脂を用いることができる。親水基としては、アニオン性基、カチオン性基、親水性セグメントが挙げられる。
【0017】
アニオン性ポリウレタン樹脂は、アニオン性基を有する水系ポリウレタン樹脂である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン塩が挙げられる。
【0018】
カチオン性ポリウレタン樹脂は、カチオン性基を有する水系ポリウレタン樹脂である。カチオン性基としては、例えば第四級アンモニウム基等が挙げられる。
【0019】
ノニオン性ポリウレタン樹脂は、アニオン性基及びカチオン性基を有しない、非電荷の水系ポリウレタン樹脂である。ノニオン性ポリウレタン樹脂としては、例えばポリオキシエチレン基等の親水性セグメントを持つポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0020】
ポリウレタン樹脂を構成するポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール(例えば、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール)、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリテトラメチレングリコール)、ポリブタジエンポリオール等の重合体ポリオールが挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
重合体ポリオールの分子量は、特に限定されず、例えば、数平均分子量(Mn)が500~5000でもよく、800~4000でもよく、1000~3000でもよい。
【0022】
本明細書において、数平均分子量(Mn)は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)により測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した値である。詳細には、GPCの条件として、カラム:東ソー(株)製「TSKgel G4000HXL+TSKgel G3000HXL+TSKgel G2000HXL+TSKgel G1000HXL+TSKgel G1000HXL」、移動相:THF(テトラヒドロフラン)、移動相流量:1.0mL/min、カラム温度:40℃、試料注入量:50μL、試料濃度:0.2質量%として測定することができる。
【0023】
ポリウレタン樹脂を構成するポリオールとしては、上記の重合体ポリオールとともに、又はこれとは別に、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子の多価アルコール(好ましくは、二価アルコール、三価アルコール)を用いてもよい。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂を構成するポリオールは、ポリエステル基材に対する接着性の向上効果を高めるため、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。すなわち、ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールを含むポリオールを構成成分として含むことが好ましい。ポリオール中におけるポリエステルポリオールの量は、例えば、ポリオール100質量%に対して30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70~99質量%であり、80~95質量%でもよい。
【0025】
本明細書において、ポリオールを構成する各成分の量について、その基準とするポリオール100質量%は、ポリオールが後述するアニオン性基を含む場合、当該アニオン性基を酸型として計算される。アニオン性基含有ポリオールの量についても同様に、アニオン性基を酸型として計算される。また、ポリオールが後述するカチオン性基を含む場合、当該カチオン性基を酸で中和し又は四級化剤で四級化する前のポリオールの量を用いて計算される。
【0026】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂を構成するポリオールは、官能基数が3以上のポリオールを含むことが好ましい。これによりポリウレタン樹脂に架橋構造が導入され、離型層の耐水性を向上することができる。官能基数が3以上のポリオールとしては、例えばトリメチロールプロパン等のヒドロキシ基を3つ以上持つ多価アルコールが挙げられ、あるいはまた、上記の重合体ポリオールのうち分子内にヒドロキシ基を3つ以上有するものが挙げられる。
【0027】
ポリオール中における官能基数3以上のポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して0.1~10質量%でよく、0.5~8質量%でもよく、1~5質量%でもよい。
【0028】
ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0030】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0031】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0032】
また、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、ビュレット体、アロフェネート体、カルボジイミド体などを用いてもよい。また、これらのポリイソシアネートは、いずれか1種用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0033】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂としては、アニオン性基非含有ポリオール及びアニオン性基含有ポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、を反応させることにより得られるアニオン性ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。かかるアニオン性ポリウレタン樹脂としては、例えば、下記(A)及び(B)が挙げられる。このうち、(A)の鎖伸長タイプであると離型層の耐水性向上に有利である。
【0034】
(A) アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長してなるアニオン性ポリウレタン樹脂。
【0035】
(B) アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られるヒドロキシ基含有アニオン性ポリウレタン樹脂。
【0036】
アニオン性ポリウレタン樹脂を合成するために用いられるアニオン性基非含有ポリオールとしては、上記列挙の各種ポリオールのうち、アニオン性基やカチオン性基を有さないポリオールを用いることができる。アニオン性基含有ポリオールとしては、分子内にカルボキシ基を有するカルボキシ基含有ポリオールが好ましく、例えば、ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6-ジオキシ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体並びにそれらの塩が挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ここで、アニオン性基は、酸型(カルボキシ基の場合:-COOH)だけでなく、塩型(カルボキシ基の場合:-COOXで表されるカルボン酸塩基。但し、Xはカルボン酸と塩を形成する陽イオン)も含む概念であり、酸型と塩型が混在してもよい。アニオン性基は中和して塩にすることにより、最終的に得られるポリウレタン樹脂を水分散性にすることができる。そのため、ポリウレタン樹脂の水系分散体において、アニオン性基は塩型として存在してもよい。一方、該水系分散体を乾燥させて得られた塗膜の状態においては、中和剤として不揮発性塩基を用いた場合は塩型として存在し、揮発性塩基を用いた場合は酸型として存在してもよい。
【0038】
アニオン性ポリウレタン樹脂において、ポリオール中におけるアニオン性基非含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して75~99質量%でもよく、80~97質量%でもよく、85~95質量%でもよい。ポリオール中におけるアニオン性基含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して1~25質量%でもよく、3~20質量%でもよく、5~15質量%でもよい。
【0039】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂としては、カチオン性基非含有ポリオール及びカチオン性基含有ポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、を反応させることにより得られるカチオン性ポリウレタン樹脂が用いられてもよい。かかるカチオン性ポリウレタン樹脂として、例えば下記(C)が挙げられる。
【0040】
(C) カチオン性基非含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長してなるカチオン性ポリウレタン樹脂。
【0041】
カチオン性ポリウレタン樹脂を合成するために用いられるカチオン性基非含有ポリオールとしては、上記列挙の各種ポリオールのうち、アニオン性基やカチオン性基を有さないポリオールを用いることができる。カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンが挙げられ、これらを酸や四級化剤で四級化したものも使用することができる。ここで、カチオン性基としては、例えば、三級アミノ基を酸で中和し又は四級化剤で四級化した三級又は四級アンモニウム基が挙げられる。また、カチオン性基含有ポリオールは、三級又は四級アンモニウム基を形成し得る三級アミン基含有化合物であってもよい。
【0042】
カチオン性ポリウレタン樹脂において、ポリオール中におけるカチオン性基非含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して75~97質量%でもよく、80~95質量%でもよい。ポリオール中におけるカチオン性基含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して3~25質量%でもよく、5~20質量%でもよい。
【0043】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂としては、親水性セグメント含有ポリオール及び親水性セグメント非含有ポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、を反応させることにより得られるノニオン性ポリウレタン樹脂を用いてもよい。かかるノニオン性ポリウレタン樹脂として、例えば下記(D)が挙げられる。
【0044】
(D) 親水性セグメント含有ポリオール、親水性セグメント非含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長してなるノニオン性ポリウレタン樹脂。
【0045】
親水性セグメント含有ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン基のようなノニオン性の親水性セグメントを持つポリオールが挙げられる。親水性セグメント非含有ポリオールとしては、上記列挙の各種ポリオールのうち、アニオン性基やカチオン性基、親水性セグメントを有しないポリオールが挙げられる。
【0046】
ノニオン性ポリウレタン樹脂において、ポリオール中における親水性セグメント含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して5~60質量%でもよく、10~50質量%でもよい。親水性セグメント非含有ポリオールの量も特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して40~95質量%でもよく、50~90質量%でもよい。
【0047】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを鎖伸長させる鎖伸長剤としては、特に限定されず、例えば、水が挙げられ、また、脂肪族ポリアミン化合物(例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、芳香族ポリアミン化合物(例えば、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン)、脂環式ポリアミン化合物(例えば、ピペラジン、イソホロンジアミン)、ポリヒドラジド化合物(例えば、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド)等の多価アミン化合物が挙げられる。
【0048】
[(メタ)アクリル重合体]
(メタ)アクリル重合体は、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキル(X)と、官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレート(Y)とを構成成分として含む。ここで、(メタ)アクリル重合体について、構成成分として含むとは、当該重合体を合成する原料(モノマー)として用いることをいい、これに由来する構造を(メタ)アクリル重合体に有する。
【0049】
(メタ)アクリル酸アルキル(X)のアルキル基の炭素数が4以上であることにより、初期の剥離性を向上することができ、該アルキル基の炭素数が22以下であることにより、加熱による剥離性の悪化を抑えることができる。該アルキルの炭素数は、6~20であることが好ましく、より好ましくは8~18であり、更に好ましくは10~16である。(メタ)アクリル酸アルキル(X)は、該アルキル基の炭素数が異なるものの混合物でもよい。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキル(X)のアルキル基は分岐鎖でもよいが、剥離性、耐熱剥離性、及び耐水性の観点から、直鎖のアルキル基であることが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸アルキル(X)の具体例としては、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-ドコシルなどが挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
ポリ(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するエステル化合物を意味する。そのため、官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレート(Y)は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2~6個有する(メタ)アクリル酸エステルである。かかるポリ(メタ)アクリレート(Y)を用いることにより、耐熱剥離性を向上することができる。
【0053】
一実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート(Y)は、1官能基あたりの分子量であるアクリル当量が80~150であることが好ましく、より好ましくはアクリル当量が90~150である。
【0054】
ポリ(メタ)アクリレート(Y)の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
これらの中でも、ポリ(メタ)アクリレート(Y)としては、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、「(ポリ)アルキレングリコール」は、モノアルキレングリコール及び/又はポリアルキレングリコールを意味する。ポリアルキレングリコールの「ポリ」(繰り返し結合数)は2~3であることが好ましく、「アルキレン」の炭素数は2~4であることが好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)との共重合体であり、これら(X)及び(Y)のみで構成されてもよいが、本実施形態の効果を損なわない範囲で他のモノマーを構成成分として含んでもよい。(メタ)アクリル重合体の全構成成分100質量%における(メタ)アクリル酸アルキル(X)及びポリ(メタ)アクリレート(Y)の合計量は80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。
【0057】
(メタ)アクリル重合体における(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)との比率は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸アルキル(X)100質量部に対するポリ(メタ)アクリレート(Y)の量が0.3~50質量部であることが好ましく、より好ましくは1~30質量部であり、更に好ましくは5~20質量部である。ポリ(メタ)アクリレート(Y)の量が50質量部以下であることにより初期剥離性を向上することができ、0.3質量部以上であることにより耐熱剥離性の向上効果を高めることができる。
【0058】
(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)とを含むモノマーの重合は、公知の重合開始剤を添加して行ってもよい。重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤などが使用できる。あるいは、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの過酸化物などの過酸化物系開始剤と、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩、硫酸第一銅、硫酸第一鉄などの金属塩、L-アスコルビン酸などの有機還元剤などの還元剤との組み合わせによるレドックス開始剤を使用してもよい。
【0059】
重合開始剤の量は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を含む全モノマー100質量部に対して0.005~1質量部でもよい。
【0060】
[ポリウレタン樹脂の水系分散体]
ポリウレタン樹脂の水系分散体は、水系分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体であって、上記(メタ)アクリル重合体を含む。
【0061】
該水系分散体において、(メタ)アクリル重合体は、ポリウレタン樹脂の粒子に含まれていることが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル重合体は、分散質としての個々の樹脂粒子にポリウレタン樹脂とともに含まれていることが好ましい。その際、(メタ)アクリル重合体は、粒子内部に存在してもよく、粒子表面に存在してもよく、粒子内部及び表面に存在してもよい。ポリウレタン樹脂が親水基を持つのに対し、(メタ)アクリル重合体は疎水性であるため粒子内部に存在しやすい。そのため、(メタ)アクリル重合体が粒子内部に存在し、これを覆うように親水基を持つポリウレタン樹脂が粒子表面に存在することが好ましく、これにより本実施形態の効果を高めることができる。
【0062】
水系分散体におけるポリウレタン樹脂の含有量は、特に限定されず、水系分散体の全質量に対して、例えば10~50質量%でもよく、15~45質量%でもよく、20~40質量%でもよい。
【0063】
(メタ)アクリル樹脂の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルの含有量として次のように設定されていることが好ましい。すなわち、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルの量が40~350質量部であることが好ましく、より好ましくは45~300質量部であり、更に好ましくは60~200質量部であり、更に好ましくは70~150質量部である。(メタ)アクリル酸アルキルの含有量が40質量部以上であることにより剥離性及び耐水性を向上することができ、350質量部以下であることによりポリエステル基材への接着性を向上することができる。
【0064】
水系分散体における樹脂粒子の大きさは、特に限定されず、例えば平均粒子径が0.001~0.5μmでもよい。ここで、平均粒子径は、日機装(株)製「Microtrac UPA-UZ152」を用いて測定される50%累積の粒子径(d50)である。
【0065】
ポリウレタン樹脂の水系分散体には、その効果が損なわれない限り、他の成分を含んでもよい。例えば、ポリウレタン樹脂を架橋するための架橋剤、ポリウレタン樹脂や(メタ)アクリル樹脂又はそのモノマーを水系分散媒に分散させるための界面活性剤、(メタ)アクリル樹脂を重合させるための重合開始剤などが含まれてもよい。
【0066】
架橋剤としては、ポリウレタン樹脂が有するヒドロキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基及びチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の活性水素含有基と反応し得る反応性基を分子内に2個以上有する化合物が挙げられる。これにより離型コート剤により形成される離型層の耐水性を向上することができる。架橋剤は、ポリウレタン樹脂がカルボキシ基を有する場合、そのカルボキシ基と架橋反応させることもできる。
【0067】
架橋剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物等が挙げられ、これらはいずれか1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
架橋剤の量は特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂100質量部に対して1.0~20質量部でもよい。
【0069】
界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましく用いられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0070】
界面活性剤の量は特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂と(メタ)アクリル重合体の合計量100質量部に対して0.1~5.0質量部でもよい。
【0071】
[水系分散体の製造方法]
ポリウレタン樹脂の水系分散体を製造する方法は特に限定されず、例えば下記工程(1)~(4)を含む方法により製造してもよい。
【0072】
工程(1):ポリオールとポリイソシアネートを反応させる工程。
工程(2):工程(1)により得られた親水基を持つポリウレタン樹脂と、(メタ)アクリル酸アルキル(X)と、ポリ(メタ)アクリレート(Y)とを混合する工程。
工程(3):混合物を水系分散媒に分散させる工程。
工程(4):水系分散媒に分散させた混合物に含まれる(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を重合させる工程。
【0073】
このように親水基を持つポリウレタン樹脂を(メタ)アクリル酸アルキル(X)及びポリ(メタ)アクリレート(Y)と混合してから水系分散媒に分散させ、当該分散した状態で混合物中の(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を重合させることにより、(メタ)アクリル重合体をポリウレタン樹脂粒子の内部に効率よく含ませることができると考えられる。
【0074】
上記工程(1)において、ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、有機溶媒なしで実施してもよく、メチルエチルケトンやアセトン等の活性水素基を有しない有機溶媒中で実施してもよい。工程(1)の反応により得られるポリウレタン樹脂は、鎖伸長等する前のウレタンプレポリマーも包含する概念である。そのため、工程(2)では、かかるウレタンプレポリマーを、上記(X)及び(Y)を含むアクリル系モノマーを混合してもよい。
【0075】
また、ポリウレタン樹脂がアニオン性基又はカチオン性基を有する場合、工程(2)においてポリウレタン樹脂とアクリル系モノマーとを混合する前又は混合した後に、中和剤により当該アニオン性基又はカチオン性基を中和してもよく、四級化剤によりカチオン性基を四級化してもよい。
【0076】
アニオン性基を中和する塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基等が挙げられる。
【0077】
カチオン性基を中和する酸としては、例えば、塩酸、硫酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸などの有機酸が挙げられる。また、カチオン性基を四級化する四級化剤としては、塩化メチル、臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などのジアルキル硫酸が挙げられる。
【0078】
工程(3)において上記混合物を水系分散媒に分散させる方法は特に限定されず、例えば、(i)水系分散媒をホモジナイザーやホモミキサー等によって攪拌しながら、上記混合物又はその樹脂溶液を添加する方法、(ii)上記混合物又はその樹脂溶液をホモジナイザーやホモミキサー等によって攪拌しながら、水系分散媒を添加する方法等が挙げられる。なお、ポリウレタン樹脂及びアクリル系モノマーを含む混合物を水系分散媒に乳化分散させやすくするために界面活性剤を添加してもよい。
【0079】
工程(1)においてウレタンプレポリマーを合成した場合、工程(3)で分散させた後又は分散中に、鎖伸長剤により鎖伸長させてもよい。鎖伸長反応は、工程(4)の重合反応と同時でもよく、工程(4)の重合反応前に実施してもよい。
【0080】
工程(4)の重合は、熱重合でもよいが、重合開始剤を添加して重合反応させることが好ましい。重合温度は、重合開始剤の種類によって調整され、例えば20℃~100℃でもよい。
【0081】
なお、工程(1)においてポリオールとポリイソシアネートとの反応を有機溶媒中で行った場合、工程(3)で水系分散媒に分散させた後、又は工程(4)の重合反応後に、当該有機溶媒を除去してもよい。
【0082】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂として上記(A)のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(a1)~(a6)により製造してもよい。
工程(a1):アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成する工程。
工程(a2):該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのアニオン性基を中和する工程。
工程(a3):該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を混合する工程。
工程(a4):混合物を水系分散媒に分散させる工程。
工程(a5):水系分散媒に分散させた混合物中のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する工程。
工程(a6):水系分散媒に分散させた混合物中の(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を重合させる工程。
【0083】
工程(a1)が上記工程(1)に相当し、工程(a3)が上記工程(2)に相当し、工程(a4)が上記工程(3)に相当し、工程(a6)が上記工程(4)に相当し、工程(a2)及び(a5)は追加の工程である。
【0084】
工程(a1)において、ポリイソシアネートは、ポリオールに含まれるヒドロキシ基の量よりも、イソシアネート基が化学量論的に過剰、例えばヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.05~1.70(より好ましくは1.10~1.60)となるように用いられる。
【0085】
なお、工程(a2)と工程(a3)の順番は問わない。また、工程(a5)において、鎖伸長剤の添加は、工程(a4)におけるポリウレタンプレポリマーの水系分散媒への分散後でもよく、分散中でもよい。鎖伸長剤については、上述したとおりであり、水も鎖伸長剤となる。水を鎖伸長剤とする場合、水系分散媒としての水が鎖伸長剤を兼ねる。
【0086】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂として上記(B)のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(b1)~(b5)により製造してもよい。
工程(b1):アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂を合成する工程。
工程(b2):ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂のアニオン性基を中和する工程。
工程(b3):前記ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂と(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を混合する工程。
工程(b4):混合物を水系分散媒に分散させる工程。
工程(b5):水系分散媒に分散させた混合物中の(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を重合させる工程。
【0087】
工程(b1)が上記工程(1)に相当し、工程(b3)が上記工程(2)に相当し、工程(b4)が上記工程(3)に相当し、工程(b5)が上記工程(4)に相当し、工程(b2)は追加の工程である。
【0088】
工程(b1)において、ポリオールは、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の量よりも、ヒドロキシ基が化学量論的に過剰、例えばヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が0.70~0.95(より好ましくは0.75~0.90)となるように用いられる。なお、工程(b2)及び(b3)の順番は問わない。
【0089】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂として上記(C)のカチオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(c1)~(c6)により製造してもよい。
工程(c1):カチオン性基非含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成する工程。
工程(c2):該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのカチオン性基を酸により中和し又は四級化剤により四級化する工程。
工程(c3):該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を混合する工程。
工程(c4):混合物を水系分散媒に分散させる工程。
工程(c5):水系分散媒に分散させた混合物中のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する工程。
工程(c6):水系分散媒に分散させた混合物中の(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を重合させる工程。
【0090】
工程(c1)が上記工程(1)に相当し、工程(c3)が上記工程(2)に相当し、工程(c4)が上記工程(3)に相当し、工程(c6)が上記工程(4)に相当し、工程(c2)及び(c5)は追加の工程である。
【0091】
なお、工程(c2)と工程(c3)の順番は問わない。工程(c1)におけるヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比、並びに、工程(c5)における鎖伸長剤の添加時機及び水を鎖伸長剤とする場合については、上記工程(a1)及び(a5)と同じである。
【0092】
一実施形態において、ポリウレタン樹脂として上記(D)のノニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(d1)~(d5)により製造してもよい。
工程(d1):親水性セグメント含有ポリオール、親水性セグメント非含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成する工程。
工程(d2):前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を混合する工程。
工程(d3):混合物を水系分散媒に分散させる工程。
工程(d4):水系分散媒に分散させたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する工程。
工程(d5):水系分散媒に分散させた混合物中の(メタ)アクリル酸アルキル(X)とポリ(メタ)アクリレート(Y)を重合させる工程。
【0093】
工程(d1)が上記工程(1)に相当し、工程(d2)が上記工程(2)に相当し、工程(d3)が上記工程(3)に相当し、工程(d5)が上記工程(4)に相当し、工程(d4)は追加の工程である。工程(d1)におけるヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比、並びに、工程(d4)における鎖伸長剤の添加時機及び水を鎖伸長剤とする場合については、上記工程(a1)及び(a5)と同じである。
【0094】
[ポリエステル基材用離型コート剤]
本実施形態に係るポリエステル基材用離型コート剤は、上記水系分散体を含むものであり、従って、水系分散媒と、ポリウレタン樹脂と、(メタ)アクリル樹脂を含む。該離型コート剤は、上記水系分散体のみからなるものでもよく、上記水系分散体とともに、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、表面調整剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0095】
離型コート剤におけるポリウレタン樹脂の含有量は特に限定されず、離型コート剤の全質量に対して、例えば10~50質量%でもよく、15~45質量%でもよく、20~40質量%でもよい。
【0096】
[離型シート]
一実施形態に係る離型シートは、ポリエステル基材と、該ポリエステル基材上に設けられた離型層とを含み、該離型層が上記離型コート剤により形成される。
【0097】
ポリエステル基材としては、ジカルボン酸とジオールとを構成成分(モノマー)とする各種ポリエステルにより形成されたものを用いることができる。ポリエステル基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ポリエチレンナフタレート(PEN)基材、ポリエチレンフラノエート(PEF)基材、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)基材、ポリブチレンテレフタレート(PBT)基材、ポリブチレンナフタレート(PBN)基材等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールとを構成成分とするポリエステルにより形成されたポリエステル基材、具体的にはPET基材、PEN基材、PEF基材等が、より好ましく用いられる。
【0098】
ポリエステル基材は、フィルム状でもよく、板状でもよく、厚みは特に限定されない。また、ポリエステル基材としては、コロナ表面処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0099】
離型層は、ポリエステル基材の表裏少なくとも一方の面に積層された樹脂層であり、ポリエステル基材に離型コート剤を塗布し、乾燥することにより形成することができる。なお、離型コート剤が上記架橋剤を含む場合、離型コート剤を塗布後、乾燥等の熱処理を行うことで、ポリウレタン樹脂は架橋される。
【0100】
離型層の厚み(乾燥膜厚)は特に限定されず、例えば0.01~50μmでもよく、0.05~10μmでもよい。
【0101】
該離型シートは、例えば工程保護フィルムとして用いることができ、粘着性のある又は粘着性のない対象物に貼られて、当該対象物を保護する。離型シートが貼られた対象物は、当該対象物を使用する際に、離型シートが剥がされる。剥がされた離型シートは廃棄されてもよい。
【0102】
[積層体]
一実施形態に係る積層体は、上記離型シートと、その離型層上に剥離可能に設けられた樹脂層とを含む。離型シートは、例えば、(1)粘着剤皮膜を保護するための保護シートとして、あるいはまた、(2)樹脂皮膜を成膜するための支持シートとして用いられる。
【0103】
上記(1)の保護シートの場合、表面に粘着剤皮膜が形成された製品に対して該粘着剤皮膜を保護するために上記離型シートが用いられ、該製品の粘着剤皮膜が設けられた粘着面に離型シートが貼り付けられる。そのため、該粘着剤皮膜が上記樹脂層に相当し、該製品とその粘着面に貼り付けられた離型シートとにより上記積層体が構成される。離型シートは、上記製品の使用時に粘着面から剥がされる。上記製品としては、例えば、液晶の偏光板等が挙げられる。
【0104】
上記(2)の支持シートの場合、上記離型シートの離型層上に、樹脂液を塗布ないし流し込んで乾燥等により硬化させて樹脂皮膜を形成する。そのため、該樹脂皮膜が上記樹脂層に相当し、該樹脂皮膜が設けられた離型シートが上記積層体に相当する。離型シートは、樹脂皮膜を使用する際に該樹脂皮膜から剥がされる。
【実施例
【0105】
以下、実施例及び比較例に基づいて、より詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0106】
実施例で使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
【0107】
[ポリオール]
・ポリエステルポリオール1:芳香族ポリエステルジオール(官能基数:2、数平均分子量:2000)。合成方法は以下のとおり。
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸54.72質量部、アジピン酸8.63質量部、ネオペンチルグリコール23.89質量部、及びエチレングリコール12.76質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応し、芳香族ポリエステルジオールを得た。
【0108】
・ポリエステルポリオール2:芳香族ポリエステルジオール(官能基数:2、数平均分子量:2000)。合成方法は以下のとおり。
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸52.41質量部、アジピン酸8.77質量部、1,6-ヘキサンジオール26.58質量部、及びエチレングリコール12.24質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応し、芳香族ポリエステルジオールを得た。
【0109】
・ポリカーボネートポリオール:ポリカーボネートジオール(官能基数:2、数平均分子量:2000)、UBE(株)製「UH-200」
・ビスフェノール型ポリオール:ビスフェノールAのEO付加物(官能基数:2、数平均分子量:325)、三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-20NK」
・3官能ポリオール:トリメチロールプロパン(官能基数:3)、三井ガス化学(株)製
・POE含有ポリオール:ポリオキシエチレン基含有ノニオン性ポリオール(官能基数:2、数平均分子量:600)、Perstorp社製「Ymer N180」
・カチオン性基含有ポリオール:N-メチルジエタノールアミン、東京化成工業(株)製
・ジメチロールプロピオン酸:Perstorp社製「Bis-MPA(登録商標)」(官能基数:2)
【0110】
[ポリイソシアネート]
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(官能基数:2、分子量:222.3)、エボニック社製「VESTANAT(登録商標)IPDI」
・水添MDI:ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(官能基数:2、分子量:262)、エボニック社製「VESTANAT(登録商標)H12MDI」
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(官能基数:2、分子量:168.2)、旭化成(株)製「デュラネート(登録商標)50M-HDI」
【0111】
[(メタ)アクリル酸エステル]
・アクリル酸n-ブチル:三菱ケミカル(株)製「アクリル酸ブチル」
・アクリル酸n-オクチル:大阪有機化学工業(株)製「NOAA」
・アクリル酸n-ドデシル:大阪有機化学工業(株)製「LA」
・アクリル酸ステアリル:大阪有機化学工業(株)製「STA」
・メタクリル酸n-ドデシル:共栄社化学(株)製「ライトエステルL」
・アクリル酸2-エチルヘキシル:三菱ケミカル(株)製
・アクリル酸エチル:三菱ケミカル(株)製
【0112】
[ポリ(メタ)アクリレート]
・ジメタクリレート1:エチレングリコールジメタクリレート、共栄社化学(株)製「ライトエステルEG」
・ジメタクリレート2:トリエチレングルコールジメタクリレート、共栄社化学(株)製「ライトエステル3EG」
・ヘキサアクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、共栄社化学(株)製「ライトアクリレートDPE-6A」
【0113】
[その他の添加剤]
・界面活性剤:第一工業製薬(株)製「ハイテノール(登録商標)LA-12」
・架橋剤:日清紡ケミカル(株)製「V02-L02」(不揮発分40%、NCN当量385)
・重合開始剤1:tert-ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液)東京化成工業(株)製
・重合開始剤2:亜硫酸ナトリウム、ナカライテスク(株)製
【0114】
離型コート剤の評価方法は以下のとおりである。
【0115】
[剥離性1A(アクリル系粘着剤に対する初期剥離性)]
PET基材としてコロナ放電処理されたPET基材(「ルミラーT-60」、東レ(株)製)を用いた。該PET基材に離型コート剤をバーコーターで乾燥膜厚1μmになるように塗布し、160℃で1分間乾燥して、離型コート剤の塗膜が形成された試験片(コーティングフィルム)を得た。但し、比較例3では、PET基材の代わりに、PP基材(「トレファンBO」、東レ(株)製)を用いた。該試験片の塗膜に日東電工(株)製アクリル系粘着テープ「No.31B」を、2kgローラーを用いて貼付し、3時間後の剥離強度(単位:mN/25mm)を測定した。剥離強度の測定は、JIS Z0237:2009に準拠した180°ピール剥離試験(300mm/分)とした。剥離強度が小さいほど剥離性に優れる。
【0116】
[剥離性1B(アクリル系粘着剤に対する耐熱剥離性、70℃×20時間)]
剥離性1Aと同様に作製した試験片の塗膜に日東電工(株)製アクリル系粘着テープ「No.31B」を、2kgローラーを用いて貼付し、70℃で20時間加熱した。その後、室温まで冷却した後、剥離性1Aと同様にして剥離強度(単位:mN/25mm)を測定した。剥離強度が小さいほど耐熱剥離性に優れる。剥離強度の測定において、塗膜ごと剥がれた場合を「F」と表示した。
【0117】
[1B/1A]
1B/1Aは、剥離性1Aの剥離強度に対する剥離性1Bの剥離強度の比である。この比が小さいほど、加熱による剥離性の悪化が小さい。剥離性1Bにおいて塗膜ごと剥がれたものについては「F」と表示した。
【0118】
[剥離性1C(アクリル系粘着剤に対する耐熱剥離性、150℃×5分間)]
剥離性1Aと同様に作製した試験片の塗膜に日東電工(株)製アクリル系粘着テープ「No.31B」を、2kgローラーを用いて貼付し、150℃で5分間加熱した。その後、室温まで冷却した後、剥離性1Aと同様にして剥離強度(単位:mN/25mm)を測定した。剥離強度の測定において、塗膜ごと剥がれた場合を「F」と表示した。
【0119】
[1C/1A]
1C/1Aは、剥離性1Aの剥離強度に対する剥離性1Cの剥離強度の比である。この比が小さいほど、加熱による剥離性の悪化が小さい。剥離性1Cにおいて塗膜ごと剥がれたものについては「F」と表示した。
【0120】
[剥離性2A(シリコーン系粘着剤に対する初期剥離性)]
剥離性1Aと同様に作製した試験片の塗膜に日東電工(株)製シリコーン系粘着テープ「No.336」を、2kgローラーを用いて貼付し、3時間後の剥離強度(単位:mN/25mm)を測定した。剥離強度の測定は、JIS Z0237:2009に準拠した180°ピール剥離試験(300mm/分)とした。剥離強度が小さいほど剥離性に優れる。
【0121】
[剥離性2B(シリコーン系粘着剤に対する耐熱剥離性、70℃×20時間)]
剥離性1Aと同様に作製した試験片の塗膜に日東電工(株)製シリコーン系粘着テープ「No.336」を、2kgローラーを用いて貼付し、70℃で20時間加熱した。その後、室温まで冷却した後、剥離性2Aと同様にして剥離強度(単位:mN/25mm)を測定した。剥離強度が小さいほど耐熱剥離性に優れる。剥離強度の測定において、塗膜ごと剥がれた場合を「F」と表示した。
【0122】
[2B/2A]
2B/2Aは、剥離性2Aの剥離強度に対する剥離性2Bの剥離強度の比である。この比が小さいほど、加熱による剥離性の悪化が小さい。剥離性2Bにおいて塗膜ごと剥がれたものについては「F」と表示した。
【0123】
[剥離性2C(シリコーン系粘着剤に対する耐熱剥離性、150℃×5分間)]
剥離性1Aと同様に作製した試験片の塗膜に日東電工(株)製シリコーン系粘着テープ「No.336」を、2kgローラーを用いて貼付し、150℃で5分間加熱した。その後、室温まで冷却した後、剥離性2Aと同様にして剥離強度(単位:mN/25mm)を測定した。剥離強度の測定において、塗膜ごと剥がれた場合を「F」と表示した。
【0124】
[2C/2A]
2C/2Aは、剥離性2Aの剥離強度に対する剥離性2Cの剥離強度の比である。この比が小さいほど、加熱による剥離性の悪化が小さい。剥離性2Cにおいて塗膜ごと剥がれたものについては「F」と表示した。
【0125】
[接着性]
剥離性1Aと同様にして離型コート剤の塗膜が形成された試験片を得た。イソプロピルアルコールで湿られた綿棒で試験片の塗膜表面をラビングし、以下の基準で評価した。ここで、ラビングは、綿棒の平らな面を塗膜表面に軽く押し当てた状態で約2cm往復させることにより行い(1往復で1回)、ラビング1回目後及び2回目後の様子を観察した。
◎:2回目のラビングでも剥離なし
○:1回目のラビングで剥離ないが、2回目のラビングで剥離した。
×:1回目のラビングで剥離した。
【0126】
[耐水性]
フッ素樹脂コーティングされたフライパン上に離型コート剤を乾燥膜厚が500μmとなるように注ぎ、次いで40℃で15時間、80℃で6時間、更に120℃で20分間乾燥して、離型コート剤からなる皮膜を作製した。該皮膜を試験片とし、40℃の温水に該試験片を24時間浸漬し、浸漬後の皮膜の質量を測定した。浸漬前の初期質量に対する浸漬後の質量の増加率(%)を求めた。増加率が小さいほど、水による膨潤が小さく、耐水性に優れる。
【0127】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、54.2質量部のポリエステルポリオール1、2.6質量部の3官能ポリオール、8.8質量部のジメチロールプロピオン酸、及びメチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを34.4質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が2.9質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、中和剤としてトリエチルアミン6.64質量部を加えることにより中和した後、100質量部のアクリル酸n-ドデシル、10質量部のジメタクリレート1、2.2質量部の界面活性剤、及びメチルエチルケトン200質量部を添加し攪拌混合した。続いて、ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水600質量部を添加して乳化分散させ、分散液を40℃で1時間攪拌し、水による鎖伸長反応を完了させた。その後、0.16質量部の重合開始剤1と0.15質量部の重合開始剤2をそれぞれ蒸留水で10倍希釈してから添加し、35℃~45℃で3時間反応させて(メタ)アクリル重合体を重合させた。その後、加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、固形分調整用の水を添加し、固形分30質量%の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0128】
[実施例2~18,20~21,25,比較例1~4]
ポリオール、ポリイソシアネート、及びアクリル系モノマーの種類及び仕込み量、並びに、中和剤及び重合開始剤1,2の仕込み量を、下記表1~2に示す通りに変更し、その他は実施例1と同様にして、実施例2~18,20~21,25,比較例1~4の水系分散体からなる離型コート剤を得た。但し、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得る際のウレタン反応終了時の遊離イソシアネート基の量を、実施例2~3,5~18,比較例1~4では2.9質量%、実施例4では3.92質量%、実施例20では5.35質量%、実施例21では1.8質量%、実施例25では2.3質量%とした。また、分散媒としての蒸留水の添加量は、水系分散体の固形分濃度が30質量%になるように調整した。
【0129】
[実施例19]
乳化分散後の分散液に鎖伸長剤としてのエチレンジアミン1.87質量部を添加し40℃で1時間攪拌して鎖伸長反応を完了させ、その他は実施例1と同様にして、実施例19の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0130】
[実施例22]
分散媒としての蒸留水600質量部に代えて、蒸留水550質量部とN-メチルピロリドン(NMP)50質量部を添加し、乳化分散、鎖伸長反応、重合反応及びメチルエチルケトンの留去後に、固形分調整用の水を添加して分散媒組成を蒸留水/NMP=90/10(質量比)とし、その他は実施例1と同様にして、実施例22の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0131】
[実施例23]
界面活性剤を添加せず、その他は実施例1と同様にして、実施例23の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0132】
[実施例24]
(メタ)アクリル重合体を重合させ、メチルエチルケトンを留去した後に、18.7質量部の架橋剤を添加し、その他は実施例1と同様にして、実施例24の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0133】
[実施例26]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、65.6質量部のポリエステルポリオール1、2.6質量部の3官能ポリオール、8.8質量部のジメチロールプロピオン酸、及びメチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを23質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が0.05質量%以下になるまで75℃で反応させて、ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、中和剤としてトリエチルアミン6.64質量部を加えることにより中和した後、100質量部のアクリル酸n-ドデシル、10質量部のジメタクリレート1、2.2質量部の界面活性剤及びメチルエチルケトン200質量部を添加し攪拌混合した。続いて、ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水600質量部を添加して乳化分散させた。その後、0.16質量部の重合開始剤1と0.15質量部の重合開始剤2をそれぞれ蒸留水で10倍希釈してから添加し、35~45℃で3時間反応させて(メタ)アクリル重合体を重合させた。その後、加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分調整用の水を添加し、固形分30質量%の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0134】
[実施例27]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、33.0質量部のポリエステルポリオール1、35.0質量部のPOE含有ポリオール、2.6質量部の3官能ポリオール、及びメチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを29.4質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が2.5質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却した後、100質量部のアクリル酸n-ドデシル、10質量部のジメタクリレート1、2.2質量部の界面活性剤、及びメチルエチルケトン200質量部を添加し攪拌混合した。続いて、ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水600質量部を添加して乳化分散させ、分散液を40℃で1時間攪拌し、水による鎖伸長反応を完了させた。その後、0.16質量部の重合開始剤1と0.15質量部の重合開始剤2をそれぞれ蒸留水で10倍希釈してから添加し、35~45℃で3時間反応させて(メタ)アクリル重合体を重合させた。その後、加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分調整用の水を添加し、固形分30質量%の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0135】
[実施例28]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、47.3質量部のポリエステルポリオール1、2.6質量部の3官能ポリオール、10.5質量部のカチオン性基含有ポリオール、及びメチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを39.6質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が3.2質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、四級化剤としてジメチル硫酸11.11質量部を加えて四級化した後、100質量部のアクリル酸n-ドデシル、10質量部のジメタクリレート1、2.2質量部の界面活性剤、及びメチルエチルケトン200質量部を添加し攪拌混合した。続いて、ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水600質量部を添加して乳化分散させ、分散液を40℃で1時間攪拌し、水による鎖伸長反応を完了させた。その後、0.16質量部の重合開始剤1と0.15質量部の重合開始剤2をそれぞれ蒸留水で10倍希釈してから添加し、35~45℃で3時間反応させて(メタ)アクリル重合体を重合させた。その後、加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分調整用の水を添加し、固形分30質量%の水系分散体からなる離型コート剤を得た。
【0136】
実施例1~28及び比較例1~4の離型コート剤について、剥離性1A,1B,1C、剥離性2A,2B,2C、接着性、及び耐水性を評価した。結果を表1~2に示す。
【0137】
表1~2において、「鎖伸長剤:エチレンジアミン」の欄に「水」とあるのは水を鎖伸長剤としたことを意味し、「無し」とあるのは鎖伸長してないことを意味する。「ポリウレタン樹脂の量」は、最終的に得られた水系分散体におけるポリウレタン樹脂の量であり、原料として使用したポリオールとイソシアネートの合計100質量部に対する質量部である。「インデックス:NCO/OH」は、ウレタンプレポリマーにおけるヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比である。「基材」は、剥離性及び接着性の評価に用いた基材を表し、「PET」はPET基材を意味し、「PP」はPP基材を意味する。剥離性の評価の数値は剥離強度(単位:mN/25mm)である。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
表1~2に示されるように、比較例1では、(メタ)アクリル酸アルキル(X)を配合していないため、初期剥離性及び耐熱剥離性に劣っていた。比較例2では、(メタ)アクリル酸アルキルとしてアルキル基の炭素数が2であるアクリル酸エチルを用いたため、初期剥離性及び耐熱剥離性に劣っていた。比較例3では、PP基材を用いたため、離型層の基材との接着性に劣っていた。比較例4では、ポリ(メタ)アクリレート(Y)を配合していないため、耐熱接着性に劣っていた。
【0141】
これに対し、実施例1~28であると、PET基材に対する接着性に優れるとともに、加熱による剥離性の悪化が抑制され、耐熱剥離性を有するものであった。実施例1,2と実施例3,4の対比より、ポリエステルポリオールを用いることによって初期剥離性が向上した。実施例1,2と実施例5,6の対比より、ポリイソシアネートとしては、接着性の観点から脂肪族よりも脂環式が好ましく、IPDIがより好ましい。実施例1,2と実施例7,8の対比より、(メタ)アクリル酸アルキル(X)のアルキル基の炭素数が多くなることで、初期剥離性及び耐水性が向上する傾向があり、但し、実施例9より炭素数が多すぎると耐熱接着性が低下する傾向があることが分かる。また、実施例10,11の結果から、(メタ)アクリル酸アルキル(X)としては、メタクリル酸アルキルよりもアクリル酸アルキルの方が初期剥離性に優れ、またアルキル基は分岐鎖よりも直鎖の方が初期剥離性に優れることが分かる。
【0142】
実施例23は実施例1に対して界面活性剤を配合しておらず、剥離性、接着性及び耐熱性は実施例1と同等であったが、調製時に濾過残が生じた。実施例24では実施例1に対して架橋剤を添加しており、初期剥離性はやや低下する傾向があったが、耐水性が向上していた。
【0143】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0144】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
【課題】ポリエステル基材に対する接着性に優れるとともに耐熱剥離性を有するポリエステル基材用離型コート剤を提供する。
【解決手段】実施形態に係るポリエステル基材用離型コート剤は、水系分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体を含む。該水系分散体は、炭素数が4~22のアルキル基を持つ単官能の(メタ)アクリル酸アルキルと官能基数が2~6のポリ(メタ)アクリレートとを構成成分として含む(メタ)アクリル重合体を含む。
【選択図】なし