(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/30 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F04D29/30 C
(21)【出願番号】P 2023508350
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012710
(87)【国際公開番号】W WO2022201468
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】小見山 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 成浩
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292026(JP,A)
【文献】特開2003-180051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のベルマウスと、
前記ベルマウスの下流側端に連なる平坦な下流側面と、
前記ベルマウスから空気を吸い込んで前記下流側面に沿う方向へ空気を吹き出す羽根車と、を備え、
前記羽根車は、
前記下流側面に実質的に平行し、かつ放射状に広がる主板部と、
前記主板部から前記下流側面および前記ベルマウスへ向かって突出して環状に配列される開放型の複数の翼部と、を備え、
前記複数の翼部が描く最外径は、前記主板部の最外径より大きく、
前記複数の翼部の突出端は、前記下流側面に近接して配置された第一部位と、前記ベルマウスの前記下流側端よりも前記ベルマウスの上流側端へ向かって突出している第二部位と、を有し、
それぞれの前記翼部の前記主板部に連なる根元端の出口角は、前記根元端の入口角よりも大き
い送風装置。
【請求項2】
それぞれの前記翼部の前記主板部に連なる根元端は、直線形状である請求項
1に記載の送風装置。
【請求項3】
それぞれの前記翼部の肉厚は、前記主板部の肉厚よりも薄い請求項1
または2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記複数の翼部の数量は、素数であり、
前記羽根車の回転中心線に沿う方向から見て、第一翼部の後縁と前記回転中心線とを結ぶ第一線分と、前記第一翼部に隣り合う第二翼部の後縁と前記回転中心線とを結ぶ第二線分とがなす角度が、25度以上である請求項1から
3のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項5】
前記複数の翼部の前記第二部位を連結する補強部材を備える請求項1から
4のいずれか1項に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボファンと、ターボファンの吸込側にベルマウスと、を備える送風装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の送風装置のターボファンは、羽根(ブレード)の先端を連結するシュラウドを備えている。このシュラウドは、ベルマウスの近傍に配置されている。
【0005】
そして、発明者らは、ベルマウスの近傍にターボファンのシュラウドが配置されている従来の送風装置では、ベルマウスの背面側(筐体の内側)、かつシュラウドの径方向外側の領域に渦が発生することを見出した。この渦は、送風装置が吸い込む空気の風量を低下させる。
【0006】
そこで、本発明は、ベルマウスから空気を効率良く吸い込んで、高い効率で送風可能な送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る送風装置は、環状のベルマウスと、前記ベルマウスの下流側端に連なる平坦な下流側面と、前記ベルマウスから空気を吸い込んで前記下流側面に沿う方向へ空気を吹き出す羽根車と、を備えている。前記羽根車は、前記下流側面に実質的に平行し、かつ放射状に広がる主板部と、前記主板部から前記下流側面および前記ベルマウスへ向かって突出して環状に配列される開放型の複数の翼部と、を備えている。前記複数の翼部が描く最外径は、前記主板部の最外径より大きい。前記複数の翼部の突出端は、前記下流側面に近接して配置された第一部位と、前記ベルマウスの前記下流側端よりも前記ベルマウスの上流側端へ向かって突出している第二部位と、を有し、それぞれの前記翼部の前記主板部に連なる根元部の出口角は、前記根元部の入口角よりも大きい。
【0009】
さらに、実施形態に係る送風装置において、それぞれの前記翼部の前記主板部に連なる根元部は、直線形状であることが好ましい。
【0010】
また、実施形態に係る送風装置において、それぞれの前記翼部の肉厚は、前記主板部の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【0011】
さらに、実施形態に係る送風装置において、前記複数の翼部の数量は、素数であることが好ましい。前記羽根車の回転中心線に沿う方向から見て、第一翼部の後縁と前記回転中心線とを結ぶ第一線分と、前記第一翼部に隣り合う第二翼部の後縁と前記回転中心線とを結ぶ第二線分とがなす角度が、25度以上であることが好ましい。
【0012】
また、実施形態に係る送風装置において、前記複数の翼部の前記第二部位を連結する補強部材を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルマウスから空気を効率良く吸い込んで、高い効率で送風可能な送風装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る送風装置を備える冷凍サイクル装置の室内機の模式的な斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る送風装置を備える冷凍サイクル装置の室内機の模式的な縦断面図。
【
図4】本実施形態に係る羽根車を底面側から示す斜視図。
【
図5】本実施形態に係る羽根車およびベルマウスの縦断面図。
【
図7】本実施形態に係る羽根車の特性と比較例の羽根車の特性とを比較する図。
【
図8】本実施形態に係る羽根車の翼部の入口角および出口角の模式図。
【
図9】本実施形態に係る羽根車の特性と比較例の羽根車の特性とを比較する図。
【
図10】本実施形態に係る羽根車の他の例を底面側から示す斜視図。
【
図11】本実施形態に係る羽根車の他の例を底面側から示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る送風装置の実施形態について
図1から
図11を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る送風装置を備える冷凍サイクル装置の室内機の模式的な斜視図である。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る送風装置を備える冷凍サイクル装置の室内機の模式的な縦断面図である。
【0018】
本実施形態に係る冷凍サイクル装置は、
図1に示す、利用側としての室内に設置される室内機1と、熱源側としての室外に設置される室外機(図示省略)と、を備えている。
【0019】
また、冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル(図示省略)を備えている。冷凍サイクルは、熱源側の熱交換器(図示省略)と、圧縮機(図示省略)と、利用側の熱交換器2と、膨張機(図示省略)と、これらの機器に冷媒を流通させる冷媒管(図示省略)と、を備えている。冷凍サイクルは、冷凍サイクル装置の冷却運転と加熱運転とを切り替える四方弁(図示省略)を備えていても良い。
【0020】
室内機1は、冷凍サイクルの利用側の熱交換器2を収容している。室外機は、冷凍サイクルの熱源側の熱交換器、圧縮機、および四方弁を収容している。膨張機は、室内機1に収容されていても良いし、室外機に収容されていても良い。室外機と室内機とは、渡り配管(図示省略)を介して接続されている。渡り配管は、冷媒管の一部である。冷凍サイクル装置は、室外機側の熱交換器と室内機1側の熱交換器2との間で冷媒を循環させて室内の空気を調和させる。
【0021】
室内機1の設置場所は建築物の室内である。室内機1は、室内の天井に埋め込まれたり、天井や梁から吊り下げられたりして設置される。
【0022】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る室内機1は、筐体5と、筐体5内に設けられる熱交換器2と、送風装置6と、を備えている。送風装置6は、筐体5に設けられる環状のベルマウス7と、ベルマウス7から空気を吸い込んで熱交換器2へ空気を吹き付けるターボファン8と、を備えている。
【0023】
また、室内機1は、冷凍サイクルの膨張機である電動膨張弁(図示省略)を備えている。
【0024】
筐体5は、矩形の天面、矩形の4つの側面、および矩形の底面を有する箱体である。筐体5の天面は天板11で塞がれている。天板11の下面には、ターボファン8が設けられている。筐体5の4つの側面は、側板12で塞がれている。側面と側面との間の角部は、面取りのように傾斜している。この面取り部分は、傾斜板13で塞がれている。
【0025】
筐体5の底面は、底板14で覆われている。底板14の中央部には、室内機1の下方から空気を吸い込む円形の吸込口16が設けられている。底板14の外縁部には、空気を下向きに吹き出す複数の矩形の吹出口17が設けられている。それぞれの吹出口17は、筐体5の矩形の底面のそれぞれの辺に沿っている。したがって、室内機1は、筐体5の底面の吸込口16から室内の空気を吸い込み、熱交換器2で冷媒と空気とを熱交換させて、筐体5の底面の吹出口17から調和された空気を吹き出す。
【0026】
熱交換器2は、筐体5の天板11に固定されている。熱交換器2は、本実施形態では、例えばフィンアンドチューブ式であって、整列する多数のアルミニウム合金製のフィンと、ファンを貫通する冷媒管と、を備えている。
【0027】
熱交換器2は、筐体5の内部に設けられてターボファン8の径方向外側を囲んでいる。熱交換器2の内周面は、ターボファン8に対向し、熱交換器2の外周面は、側板12の内面に対向している。熱交換器2は、筐体5のそれぞれの側板12に対向する平板部分2aと、隣り合う2つの側板12の間の傾斜板13に対向して湾曲し、隣り合う2つの平板部分2aを繋ぐ湾曲板部分2bと、を有している。平板部分2aは4つあって、湾曲板部分2bは3つある。つまり、熱交換器2は、一続きの環状ではない。
【0028】
底板14の吸込口16には、環状のベルマウス7が設けられている。ベルマウス7の吸込側の開口縁、つまり、ベルマウス7の上流側端7aは、底板14の外面14aに連なっている。ベルマウス7の吹出側の開口縁、つまり、ベルマウス7の下流側端7bは、底板14の内面14bに連なっている。底板14の内面14bは、平面であって、ベルマウス7の下流側端7bから熱交換器2に達している。なお、底板14の外面14aは、ベルマウス7の上流側端7aに連なる平坦な上流側面18であり、底板14の内面14bは、ベルマウス7の下流側端7bに連なる平坦な下流側面19である。
【0029】
なお、熱交換器2の下方には、熱交換器2の表面で生じる結露水を受けるドレンパン(図示省略)が設けられていても良い。熱交換器2が蒸発器として機能する冷房運転時には、熱交換器2を通過する空気に含まれる水分、つまり室内の湿気が熱交換器2の表面で結露し、結露水として熱交換器2に付着し、熱交換器2から滴り落ちる。ドレンパンは、熱交換器2から落ちる結露水を受ける。ドレンパンに貯留される結露水は、筐体5内に設けられるドレンポンプ(図示省略)によって揚水され、排水管(図示省略)を通じて室内機1の外部に排水される。
【0030】
ドレンパンは、ベルマウス7の下流側端7bから熱交換器2へ広がる平面部分が、熱交換器2に極力接近している箇所に結露水を受ける凹部を有していることが好ましい。ドレンパンは、筐体5の底板14に一体化された断熱材に形成されていることが好ましい。
【0031】
ターボファン8は、筐体5のほぼ中心において、上下方向へ延びる回転軸21を有するファンモーター22と、回転軸21に回転一体に固定される羽根車23と、を備えている。
【0032】
ファンモーター22は、羽根車23を回転駆動する。ファンモーター22は、筐体5の天板11の内面に固定具25を介して固定されている。
【0033】
回転駆動する羽根車23は、筐体5の周囲の空気を吸込口16のベルマウス7から吸い込み、底板14の内面14bに沿う方向へ空気を放射状に吹き出し、吹き出した空気を熱交換器2へ吹きかける。
【0034】
平面視において、実質的に環状な熱交換器2の中心、ターボファン8の回転中心、円形の吸込口16の中心、および環状のベルマウス7の中心は、一致している。ターボファン8の最大外径Aは、ベルマウス7の開口径Bよりも大きい。
【0035】
羽根車23の回転中心線Cは、ファンモーター22の回転軸21に一致し、室内機1を設置した状態で鉛直方向に延びる。
【0036】
空気調和機を冷房運転する場合には、室外機の圧縮機は、高温高圧のガス冷媒を吐出して、室外側の熱交換器(凝縮器)へ送る。室外側の熱交換器は、その内部を流れる冷媒と室外の空気とを熱交換し、冷媒を凝縮させる。凝縮された液冷媒は、冷媒配管を通じて室内機1に送られる。室内機1は、冷媒配管から流れ込む液状の冷媒を、電動膨張弁で膨張させ、低温の気液混合冷媒を熱交換器2(蒸発器)へ送る。熱交換器2は、その内部を流れる低温の冷媒と室内の空気とを熱交換し、冷媒をガス化させる。この際に、室内は室内機1から吹き出る低温の空気によって冷房される。
【0037】
空気調和機を暖房運転する場合には、室外ユニットの圧縮機は、高温高圧のガス冷媒を吐出して、室内機1の熱交換器2(凝縮器)へ送る。熱交換器2は、その内部を流れる冷媒と室内の空気とを熱交換し、冷媒を凝縮させる。この際、室内は室内機1から吹き出る高温の空気によって暖房される。
【0038】
次いで、羽根車23について詳細に説明する。
【0039】
【0040】
図4は、本実施形態に係る羽根車を底面側から示す斜視図である。
【0041】
図5は、本実施形態に係る羽根車およびベルマウスの縦断面図である。
【0042】
図1および
図2に加えて、
図3から
図5に示すように、本実施形態に係る送風装置6の羽根車23は、ベルマウス7に連なる下流側面19に実質的に平行し、かつ放射状に広がる主板部31と、主板部31から下流側面19およびベルマウス7へ向かって突出して環状に配列される複数の翼部32と、主板部31の中心部に設けられるハブ部33と、を備えている。
【0043】
羽根車23は、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)製、アルミニウム合金製、またはマグネシウム金属製の一体成形品である。羽根車23は、例えば繊維強化プラスチック製であって、ハンドレイアップ法で一体成形されている。
【0044】
主板部31は、実質的に厚さの均一な平板状である。主板部31は、ハブ部33から羽根車23の径方向へ放射状に延びる複数の花弁部35の集合である。
【0045】
それぞれの花弁部35は、直線形状の縁を有する第一辺部35aと、直線形状の縁を有する第二辺部35bと、を有して、中心側(ハブ部33側)から三角形状、またはテーパー状に延びている。それぞれの花弁部35の第一辺部35aを、主板部31の第一縁とも呼び、それぞれの花弁部35の第二辺部35bを主板部31の第二縁とも呼ぶ。
【0046】
隣り合う一対の花弁部35について、一方の花弁部35の第一辺部35aは、他方の花弁部35の第二辺部35bに対向している。換言すると、一方の花弁部35の第一辺部35aと他方の花弁部35の第二辺部35bとは、主板部31の周方向において隙間を隔てて向かい合っている。
【0047】
全ての花弁部35の形状は、実質的に同じである。複数の花弁部35の、ターボファン8の径方向内側に位置する端、つまり複数の花弁部35の根元端は、ハブ部33の外周を密に囲んでいる。換言すると、隣り合う一対の花弁部35について、一方の花弁部35の第一辺部35aの根元端は、他方の花弁部35の第二辺部35bの根元端に一致している。複数の花弁部35の、ターボファン8の径方向外側に位置する端、つまり複数の花弁部35の突出端は、仮想円で結ばれる。この仮想円は、主板部31の最外径D1に相当する。
【0048】
複数の翼部32およびハブ部33は、主板部31から同じ方向へ突出している。ハブ部33は、主板部31から離れるほど窄む円錐台形状を有している。主板部31を基準とする複数の翼部32の突出高さは、ハブ部33の突出高さよりも高い。
【0049】
翼部32の数量、つまり枚数は、素数であって、本実施形態では11枚である。
【0050】
全ての翼部32の形状は、実質的に同じである。全ての翼部32は、一様な厚さの板状体である。複数の翼部32は、開放型である。つまり、羽根車23は、複数の翼部32の突出端32aを繋ぐシュラウドを有していない。それぞれの翼部32は、主板部31のみに連接し、ハブ部33に非接触であり、非連結である。
【0051】
それぞれの翼部32の根元端32bは、主板部31に連なるそれぞれの翼部32の縁である。それぞれの翼部32の根元端32bは、それぞれの花弁部35の第一辺部35aに連なっている。それぞれの翼部32は、それぞれの花弁部35の第一辺部35aから突出している。したがって、それぞれの翼部32の根元端32bは、それぞれの花弁部35の第一辺部35aと同じ直線形状を有し、かつ翼弦に一致する直線形状を有している。
【0052】
それぞれの翼部32は、ターボファン8の周方向、かつそれぞれの花弁部35の第二辺部35bから離れる方向へ傾いている。また、それぞれの翼部32は、根元端32bから突出端32aへ向かってターボファン8の径方向外側へ傾いている。そのため、複数の翼部32が描く最外径D2は、主板部31の最外径D1より大きい。
【0053】
羽根車23は、それぞれの花弁部35の第一辺部35aが第二辺部35bより先行する方向Rへ回転して空気を流動させる。つまり、それぞれの翼部32の前縁41は、羽根車23の内周側に位置し、翼部32の後縁42は、羽根車23の外周側に位置している。
【0054】
羽根車23の回転中心線に沿う方向から見て(
図3)、第一翼部32の後縁42と回転中心線Cとを結ぶ第一線分L1と、第一翼部32に隣り合う第二翼部32の後縁42と回転中心線Cとを結ぶ第二線分L2とがなす角度θは、25度以上であることが好ましい。つまり、翼部32の枚数は、13枚以下の素数であることが好ましく、本実施形態では11枚である。
【0055】
それぞれの翼部32の突出端32aは、下流側面19に近接して配置された第一部位45と、ベルマウス7の下流側端7bよりもベルマウス7の上流側端7aへ向かって突出している第二部位46と、を有している。つまり、それぞれの翼部32の突出端32aは、ベルマウス7の内側に入り込む凸部47を有している。凸部47は、ベルマウス7の形状に倣って突出している。第二部位46は、凸部47の稜線である。本実施形態では、翼部32の第一部位45と下流側面19とは、数ミリ程度の間隔を挟んで対面するよう配置されている。羽根車23とベルマウス7との間隔は、羽根車23がベルマウス7に干渉せずに円滑に回転できる範囲で極力近いことが好ましい。
【0056】
それぞれの翼部32の肉厚は、主板部31の肉厚よりも薄い。そのような肉厚の関係は、それぞれの翼部32の肉厚が主板部31の肉厚と同じ場合、またはそれぞれの翼部32の肉厚が主板部31の肉厚より厚い場合に比べると、翼部32に作用する遠心力を低下させる。遠心力の低下は、翼部32の変形を軽減し、翼部32の変形による風量の低下を防ぐ。また、それぞれの翼部32よりも肉厚が厚い主板部31は、遠心力による翼部32の変形を低減し、翼部32の変形による風量の低下を防ぐ。
【0057】
図6は、本実施形態に係る羽根車の翼部の斜視図である。
【0058】
図6に示すように、本実施形態に係る羽根車23の翼部32の平面形は、四角形、例えば平行四辺形に近い。根元端32bは、花弁部35の第一辺部35aに連なる直線形状を有している。
図6の点aと点bとを結ぶ直線が根元端32bである。突出端32aは、非直線形状であり、後縁42の突出端を通り、かつ根元端32bに平行な仮想線VLよりも根元端32bから遠ざかる方向へ突出する凸部47を有している。突出端32aは、
図6の点cと点dと点eとを結ぶ線である。
【0059】
図6の点aと点cとを結ぶ線は、翼部32の前縁41であり、
図6の点bと点eとを結ぶ線は、翼部32の後縁42である。
【0060】
凸部47は、前縁41に連なり、かつ根元端32bに平行、および主板部31に平行する直線縁48と、直線縁48と後縁42とを繋ぐ曲線縁49と、を有している。直線縁48は、
図6の点cと点dとを結ぶ直線であり、曲線縁49は、
図6の点dと点eとを結ぶ曲線である。直線縁48、およびベルマウス7に倣う曲線縁49の一部は、突出端32aの第二部位46であり、曲線縁49の残部は、下流側面19に近接して配置された第一部位45である。つまり、曲線縁49の残部は、実質的に根元端32bに平行している。突出端32aとベルマウス7との間、および突出端32aと下流側面19との間には、羽根車23の回転を阻害しない程度の隙間がある。この隙間は、5ミリメートル以下であることが好ましい。
【0061】
図7は、本実施形態に係る羽根車の特性と比較例の羽根車の特性とを比較する図である。
【0062】
図7は、羽根車の静圧Pと、羽根車の流量Qとの関係を示す図であり、いわゆるP-Q特性である。
【0063】
比較例の羽根車は、本実施形態に係る羽根車23と異なり、それぞれの翼部32に凸部47を有しておらず、下流側面19および主板部31に平行な突出端を有している。比較例の羽根車の突出端は、ベルマウス7内に突出することなく、同一の平面上に配置されてベルマウス7に連なる下流側面19に近接して配置されている。
【0064】
また、本実施形態に係る羽根車23のP-Q特性を曲線α1で表し、比較例の羽根車のP-Q特性を曲線γ1で表す。
【0065】
図7に示すように、本実施形態に係る羽根車23は、比較例の羽根車よりも多くの風量を送風できる。また、本実施形態に係る羽根車23は、ベルマウス7に近接させることで、比較例の羽根車よりも高い静圧を得ることができる。
【0066】
図8は、本実施形態に係る羽根車の翼部の入口角および出口角の模式図である。
【0067】
なお、翼部32の入口角および出口角は、羽根車23の回転方向を基準とする角度で表す。つまり、翼部32の入口角は、翼部32の推進方向uと翼円弧前方向とがなす角であり、翼部32の出口角は、翼部32の推進方向uと翼円弧後ろ方向とがなす角である。
【0068】
図8に示すように、本実施形態に係る羽根車23の翼部32は、根元端32bの入口角β1、根元端32bの出口角β2、突出端32aの入口角β3、および突出端32aの出口角β4を有している。
【0069】
そして、根元端32bの出口角β2は、根元端32bの入口角β1よりも大きい。
【0070】
なお、突出端32aの入口角β3、および突出端32aの出口角β4は、それぞれにおける速度三角形から適宜に設定すれば良い。突出端32aは、羽根車23の径方向外側へ向かって凸の曲線形状を有している。
【0071】
翼部32の翼型は、直線形状の根元端32bから曲線形状の突出端32aへ滑らかに続く三次元形状である。したがって、それぞれの翼部32の翼型は、突出端32aへ近づくほど翼弦からの突出距離が大きくなるよう羽根車23の径方向外側へ凸に湾曲する実質的に一様な厚さの板形状である。
【0072】
図9は、本実施形態に係る羽根車の特性と比較例の羽根車の特性とを比較する図である。
【0073】
図9は、羽根車の静圧Pと、羽根車の流量Qとの関係を示す図であり、いわゆるP-Q特性である。
【0074】
本実施形態に係る羽根車23と異なり、比較例の羽根車の根元端32bの出口角β2は、根元端32bの入口角β1よりも小さい。また、本実施形態に係る羽根車23のP-Q特性を曲線α2で表し、比較例の羽根車のP-Q特性を曲線γ2で表す。
【0075】
図9に示すように、本実施形態に係る羽根車23は、比較例の羽根車より多くの風量を送風できる。また、本実施形態に係る羽根車23は、ベルマウス7に近接させることで、比較例の羽根車よりも高い静圧を得ることができる。
【0076】
図10および
図11は、本実施形態に係る羽根車の他の例を底面側から示す斜視図である。
【0077】
図10および
図11に示すように、本実施形態に係る羽根車23A、23Bは、複数の翼部32の第二部位46を連結する補強部材51A、51Bを備えていても良い。補強部材51A、51Bは、従来の羽根車のシュラウドのように径方向に幅を有して外形寸法と内径寸法との間に大きな寸法差を有するものではなく、線状の部材、例えば鋼線である。
【0078】
補強部材51A、51Bは、隣り合う一対の翼部32の第二部位46を連結し、全ての翼部32の第二部位46を連結する。単一の補強部材51A、51Bで全ての翼部32を連結していても良いし、2以上かつ全数より少ない翼部32を連結する複数の補強部材51A、51Bで全ての翼部32を連結していても良い。
【0079】
また、補強部材51Aは、単純な円形であって、それぞれの翼部32の第二部位46に点接触するように固定されていても良い(
図10)。補強部材51Bは、それぞれの翼部32の第二部位46に沿う第一直線部分52と、隣り合う一対の翼部32の間に架け渡される第二直線部分53と、を有してそれぞれの翼部32の第二部位46に線接触するように固定されていても良い(
図11)。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る送風装置6は、環状のベルマウス7と、ベルマウス7の下流側端7bに連なる平坦な下流側面19と、ベルマウス7から空気を吸い込んで下流側面19に沿う方向へ空気を吹き出す羽根車23と、を備えている。羽根車23は、下流側面19に実質的に平行し、かつ放射状に広がる主板部31と、開放型の複数の翼部32と、を備えている。複数の翼部32が描く最外径D2は、主板部31の最外径D1より大きい。複数の翼部32の突出端32aは、下流側面19に近接して配置された第一部位45と、ベルマウス7の下流側端7bよりもベルマウス7の上流側端7aへ向かって突出している第二部位46と、を有している。そのため、送風装置6は、羽根車23から吹き出す空気に流れに生じる乱れを抑制して、送風効率の低下を防ぐことができる。また、送風装置6は、平坦な下流側面19に連なるベルマウス7から空気を吸い込み、平坦な下流側面19に沿った乱れのない空気の流れを生じさせることができる。さらに、送風装置6は、ベルマウス7の下流側端7bよりもベルマウス7の上流側端7aへ向かって突出している第二部位46、つまり翼部32の凸部47によって、凸部47の無い送風装置に比べて容易に風量を向上できる。
【0081】
また、羽根車23は、シユラウドを有していないので、一体成形が可能である。そのため、羽根車23は、溶接不良、溶着不良など、別体のシュラウドを翼部に接合する場合における不良発生要因を排除し、かつ、別体のシュラウドを翼部32に接合する場合に比べて回転バランスの不均衡量を低減できる。
【0082】
さらに、本実施形態に係る羽根車23は、主板部31のみに連接する複数の翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、シュラウドやフレームを有する従来の羽根車に比べて容易に軽量化可能であり、また、空気の流れの障害を排除できる。
【0083】
さらに、本実施形態に係る羽根車23は、主板部31の縁の一部である、それぞれの花弁部35の第一辺部35aに連なる根元端32bを有する翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、翼部32でエネルギーを与えられた空気の流れを円滑に吹き出すことができる。
【0084】
また、本実施形態に係る羽根車23は、主板部31の周方向において隙間を隔てて向かい合う花弁部35の第一辺部35aと花弁部35の第二辺部35bとを有している。そのため、羽根車23は、翼部32でエネルギーを与えられた空気を隣り合う花弁部35の隙間を通じて吹き出すことができる。このような空気の流れは羽根車23の送風機能を向上させる。また、隣り合う花弁部35の隙間は、羽根車23を一体成形する際の、ハンドレイアップ法における各工程の作業性を高め、かつ離型を容易にする。
【0085】
さらに、本実施形態に係る羽根車23は、ハブ部33の突出高さより突出高さが高い複数の翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、ハブ部33の気流抵抗を低減させて、翼部32で気流を容易に押し出すことができる。
【0086】
また、本実施形態に係る羽根車23のそれぞれの翼部32の根元端32bの出口角β2は、翼部32の根元端32bの入口角β1よりも大きい。そのため、送風装置6の送風量は、出口角β2が入口角β1よりも小さい根元部を有する羽根車を備える送風装置の送風量よりも向上する。また、送風装置6は、出口角β2が入口角β1よりも小さい羽根車を備える送風装置よりも容易に高い静圧を提供できる。
【0087】
さらに、本実施形態に係る羽根車23のそれぞれの翼部32の根元端32bは、直線形状である。そのため、送風装置6は、それぞれの翼部32の根元端32bの出口角β2を翼部32の根元端32bの入口角β1よりも容易に大きく設定できる。
【0088】
また、本実施形態に係る羽根車23のそれぞれの翼部32の肉厚は、主板部31の肉厚よりも薄い。そのため、羽根車23は、翼部32の変形を軽減し、翼部32の変形による風量の低下を防ぐ。
【0089】
さらに、本実施形態に係る羽根車23は、素数の翼部32を有し、かつ、後縁42と回転中心線Cとを結ぶ一対の線分L1、L2が25度以上の角度をなして隣り合う翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、翼ピッチ音と呼ばれる騒音を低減し、隣り合う翼部32の間に発生する通風抵抗を低減させて風量を向上させ、さらに羽根車23を一体成形する場合の製造性を向上させる。
【0090】
また、本実施形態に係る羽根車23は、複数の翼部32の第二部位46を連結する補強部材51を備えていても良い。そのため、羽根車23は、シュラウドを有していなくても、羽根車23全体の重量を低減させ、翼部32への遠心力の影響を減じて風量低下を抑制し、かつ、翼部32の変形によるベルマウス7と翼部32との衝突を防ぐ。
【0091】
したがって、本実施形態に係る送風装置6によれば、ベルマウス7から空気を効率良く吸い込んで、高い効率で送風することができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…室内機、2…熱交換器、2a…平板部分、2b…湾曲板部分、5…筐体、6…送風装置、7…ベルマウス、7a…上流側端、7b…下流側端、8…ターボファン、11…天板、12…側板、13…傾斜板、14…底板、14a…外面、14b…内面、16…吸込口、17…吹出口、18…上流側面、19…下流側面、21…回転軸、22…ファンモーター、23、23A、23B…羽根車、25…固定具、31…主板部、32…翼部、32a…突出端、32b…根元端、33…ハブ部、35…花弁部、35a…第一辺部、35b…第二辺部、41…前縁、42…後縁、45…第一部位、46…第二部位、47…凸部、48…直線縁、49…曲線縁、51A、51B…補強部材、52…第一直線部分、53…第二直線部分。