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特許7458557コーティング組成物特性又は濡れフィルム特性を用いたスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】コーティング組成物特性又は濡れフィルム特性を用いたスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 7/80 20180101AFI20240322BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C09D7/80
C09D201/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023520457
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2021077414
(87)【国際公開番号】W WO2022073985
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】20200110.3
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツ,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコヴスキー,ペギー
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0054767(US,A1)
【文献】特開平6-16996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 7/80
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車分野における新規コーティング配合物を開発するためのコーティング材料組成物をスクリーニングする方法であって、少なくとも工程(1)、(4)、(5)、(8)及び(10)~(13)及び任意の工程(2)、(3)、(6)、(7)及び(9)の少なくとも1つ、すなわち、
(1) 第1のコーティング材料組成物F1を提供する工程であって、
該第1のコーティング材料組成物F1が、
(i) 架橋性官能基を有する、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP1、
(ii) 少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有する、少なくとも1つの架橋剤CA1、
(iii) 水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒、
(iv) 任意に、少なくとも1つの相溶化ポリマーPMP、
(v) 任意に、少なくとも1つの添加剤A、及び
(vi) 任意に、少なくとも1つの顔料PI1及び/又は少なくとも1つのフィラーFI1
を含み、
ここで、構成成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)、及び(v)及び(vi)の各々が互いに異なる、提供する工程、
(2) 第1のコーティング材料組成物F1を、基材の少なくとも1つの任意に事前に被覆された表面上に任意に適用して、基材の前記表面上に濡れたコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 工程(2)の後に得られた濡れたコーティングフィルムを任意に乾燥させて、基材の表面に部分的に乾燥したコーティングフィルムを形成する工程、
(4) 工程(1)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(2)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(3)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの、少なくとも1つの特性を測定する工程、
(5) 第1のコーティング材料組成物F1とは正確に1つ又は多くても2つのパラメータが異なる、少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物を提供する工程であって、
前記パラメータが、(a)ポリマーP1と、ポリマーP1とは異なり且つ少なくとも架橋剤CA1の官能基に対して反応性である架橋性官能基を有するさらなるポリマーとの、部分的又は完全な交換、(b)架橋剤CA1と、架橋剤CA1とは異なり且つ少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有するさらなる架橋剤との、部分的又は完全な交換、(c)ポリマーP1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(a)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用されたポリマーP1とは異なるポリマーの量の低下又は増加、(d)架橋剤CA1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(b)で定義したCA1の部分的又は完全な交換に使用されたCA1とは異なる架橋剤の量の低下又は増加、(e)存在する場合に添加剤Aと、添加剤Aとは異なるさらなる添加剤との部分的又は完全な交換、及び(f)存在する場合に添加剤A、及び/又は存在する場合にさらなるコーティング材料組成物中の(e)で定義した添加剤Aの部分的又は完全な交換に使用された添加剤Aとは異なる添加剤の量の低下又は増加、(g)存在する場合に顔料PI1及び/又はフィラーFI1と、顔料PI1及び/又はフィラーFI1とは異なるさらなる顔料及び/又はフィラーとの部分的又は完全な交換、及び(h)存在する場合に顔料PI1及び/又はフィラーFI1及び/又は存在する場合にさらなるコーティング材料組成物中の(g)で定義した顔料PI1及び/又はフィラーFI1の部分的又は完全に交換に使用された顔料PI1及び/又はフィラーFI1とは異なる顔料の量の低下又は増加、からなる群から選択される、提供する工程、
(6) さらなるコーティング材料組成物を、基材の少なくとも1つの任意に事前に被覆された表面に任意に適用して、基材の前記表面上に濡れたコーティングフィルムを形成する工程、
(7) 工程(6)の後に得られた濡れたコーティングフィルムを任意に乾燥させて、基材の表面に部分的に乾燥したコーティングフィルムを形成する工程、
(8) 工程(5)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(6)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(7)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性を測定する工程であって、前記少なくとも1つの特性が工程(4)で測定したものと同じ特性である、測定する工程、
(9) 任意に、工程(5)及び(8)及び任意に工程(6)及び/又は工程(7)を少なくとも1回繰り返す工程であって、提供されたさらなるコーティング組成物の各々が、互いに異なり、そしてコーティング材料組成物F1とは異なる、繰り返す工程、
(10) 工程(4)及び(8)で測定された特性の結果、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合に測定された特性の結果を、電子データベースに組み込む工程、
(11) 組み込む工程(10)により電子データベースに存在する測定された特性の少なくとも1つを選択する工程、
(12) 工程(4)及び(8)により、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの選択された特性の結果を、評価及び互いに比較する工程、及び
(13) 第1のコーティング材料組成物F1、及び工程(5)の後に得られたさらなるコーティング材料組成物の各々、及び工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に任意に得られた任意のコーティング材料組成物とは異なる、少なくとも1つの新規コーティング配合物を配合及び提供するために、評価及び比較工程(12)から得られた情報を使用する工程であって、少なくとも1つの新規コーティング配合物それ自体、及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムが、工程(4)及び/又は(8)で定義した通り測定した場合に、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性の改善を示す、使用する工程
を含む、方法。


【請求項2】
第1のコーティング材料組成物F1中に構成成分(i)として存在するポリマーP1の架橋性官能基と、ポリマーP1とは異なり且つ工程(5)、及び任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に提供されたさらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する各ポリマーの架橋性官能基とが、同一であり、好ましくは各場合ともヒドロキシル基及び/又は酸基から選択され、より好ましくは各場合とも少なくとも部分的にヒドロキシル基を表し、そして
第1のコーティング材料組成物F1中に構成成分(ii)として存在する架橋剤CA1の官能基と、架橋剤CA1とは異なり且つ工程(5)、及び任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に提供されたさらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する各架橋剤の官能基とが、同一であり、好ましくは各場合ともイミノ基、アルキロール基、エーテル化アルキロール基、及び任意にブロック化イソシアネート基から選択され、より好ましくは各場合とも少なくとも部分的にイミノ基、アルキロール基及び/又はエーテル化アルキロール基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のコーティング材料組成物F1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意が、1成分(1K)又は2成分(2K)コーティング材料組成物であり、好ましくはそれぞれ1成分(1K)コーティング材料組成物であり、より好ましくはベースコート材料組成物として使用するためのものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1のコーティング材料組成物F1中に構成成分(ii)として存在する少なくとも1つの架橋剤CA1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する、任意のさらなる少なくとも1つの架橋剤が、メラミンアルデヒド樹脂、好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1のコーティング材料組成物F1の構成成分(i)として存在する少なくとも1つのポリマーP1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する、任意のさらなる少なくとも1つのフィルム形成ポリマーが、物理的乾燥性ポリマー、化学的架橋性ポリマー、放射線硬化性ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、物理的乾燥性ポリマー、化学的自己架橋性ポリマー、化学的非自己架橋性ポリマー、放射線硬化性ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、化学的非自己架橋性ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1のコーティング材料組成物F1の構成成分(i)として存在する少なくとも1つのポリマーP1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する、任意のさらなる少なくとも1つのフィルム形成ポリマーが、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド及びポリエーテルからなる群から選択され、好ましくは、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン及びポリエーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
構成成分(i)~(iii)及び任意に(iv)及び/又は(v)及び/又は(vi)が、第1のコーティング材料組成物F1の唯一の構成成分であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは構成成分(iii)が少なくとも部分的に水を表す場合、構成成分(iv)が第1のコーティング材料組成物F1中に存在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(5)、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの間に選択されたパラメータ(複数可)が、コーティング材料組成物の各々の総固形分含量に寄与する、好ましくは、コーティング材料組成物の各々の総バインダー固形分含量に寄与する、少なくとも1つの構成成分の量の、部分的又は完全な交換、及び/又は低下又は増加に関連していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(4)及び(8)で測定され、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定され、そして工程(11)で選択された少なくとも1つの特性が、オンセット温度、オフセット時間、収縮率、広がり、表面張力、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度、特に粒度分布に関する分散安定性、膨張係数、及びゼータ電位からなる群から、好ましくはオンセット温度及びオフセット時間からなる群から選択される少なくとも1つの特性であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(4)及び(8)で測定され、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定され、そして工程(11)で選択された少なくとも1つの特性が、コーティング材料組成物及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性と相関し、好ましくは反応性、反応時間、特に架橋反応時間、外観、色安定性及びフロップ、レベリング、濡れ性、付着性、凝集性、霧化性、貯蔵安定性及びリング循環安定性からなる群から選択される特性の少なくとも1つと相関することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
評価及び比較工程(12)及び工程(13)が、好ましくは電子データベースに存在する、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性のあらゆる結果を利用することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(13)で提供された少なくとも1つの新規コーティング配合物が、請求項1の工程(5)内で定義されたパラメータの少なくとも1つにおいて、第1のコーティング材料組成物F1とは異なり、そして工程(5)の後に得られたさらなるコーティング材料組成物のうちの任意とも異なり、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られたコーティング材料組成物のうちの任意とも異なることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(13)で提供された少なくとも1つの新規コーティング配合物それ自体が、工程(4)及び/又は(8)で定義した通り測定した場合に、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性、好ましくは請求項10で定義した少なくとも1つの特性の改善を示すだけでなく、コーティング配合物それ自体及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性の改善も示し、前記特性は、好ましくは請求項11で定義した特性であり、且つ前記少なくとも1つの特性と相関することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法の使用であって、架橋性官能基を有するフィルム形成ポリマー(i)、及び/又は少なくとも前記ポリマーの前記架橋性官能基に対して反応性である官能基を有する架橋剤(ii)、及び/又は添加剤(v)、好ましくは(i)と(ii)との間の架橋反応を触媒する架橋触媒、及び/又は顔料及び/又はフィラー(vi)が、少なくとも構成成分(i)及び(ii)及び任意に(v)及び/又は(vi)を含有するコーティング材料組成物それ自体、及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの特性に及ぼす影響を調査するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車分野で新規コーティング配合物を開発するためのコーティング材料組成物をスクリーニングする方法に関するものであり、前記方法は、以下に定義する少なくとも工程(1)、(4)、(5)、(8)及び(10)~(13)及び任意の工程(2)、(3)、(6)、(7)及び(9)のうちの1つを含み、前記方法は、コーティング材料組成物又はそれから得られた濡れたコーティングフィルムの少なくとも1つの特性の測定、選択を利用し、そしてこれを改善する。そして本発明は、コーティング材料組成物の或る特定の構成成分が、それらの特性又はそれから得られた濡れたコーティングフィルムの特性に及ぼす影響を調査するための、前記方法の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
典型的な自動車コーティングプロセスでは、少なくとも4層を、好適な基材、例えば金属基材の表面に、多層コーティング系(電着被覆(e-コート)、プライマーとシーラーとの少なくとも1つ、少なくとも1つのベースコート、及びトップコート、特にクリアコート)の形態で、適用するのが普通である。
【0003】
自動車産業で使用される塗料には、規制のためだけでなく、自動車産業が設定した品質基準のために、満たす必要のある要件がかなり多く存在する。よって自動車分野でコーティング配合物を使用して得られたコーティングは、これらの要件を満たすために、多くの所望の特性を少なくとも十分な程度に呈する、又は示す必要がある。例えば、ピンホール、斑点などの光学的欠陥及び/又は表面欠陥の回避が望まれる。さらに、コーティングは、例えば、良好な引っかき抵抗性及び良好な耐ストーンチップ性を有することが望まれる。さらに、可能な限り硬化温度を下げることが、特に経済的な理由からだけでなく、温度に敏感な基材、例えばプラスチック基材を使用する場合も同様に、想定されることが多い。しかしながら、上に概説したように、従来の自動車用多層コーティング系には少なくとも4種類の異なるコーティング層が存在し、そして各層は様々な理由で使用されて、コーティング全体の様々な所望の特性を達成する。さらに、コーティング層の各々を調製するために使用されるコーティング配合物は、通常、かなり複雑であり、すなわち、比較的多くの様々な構成成分を含有する。さらに、コーティング配合物のいくつかは、溶媒系配合物、例えばクリアコートの形態で主として提供され、その一方で他のコーティング配合物は、水性配合物、例えばベースコートの形態でかなりの程度提供される。よって、フィルム形成バインダー及び架橋剤などの構成成分が溶媒系への組み込みに最適化されている場合、これらの構成成分は通常、水性系での使用には最適化されていないか、又は適用できないことさえあり、その逆のこともある。
【0004】
従って、実際には、上記に概説したかなり複雑な性質の新規コーティング配合物を、特に自動車製造者の研究施設において開発する場合、通常、使用される又は使用が意図されるあらゆる構成成分が所望の適合性を有するかどうかの試験を含み、新規の複雑なコーティング配合物自体を提供/製造する必要があるだけでなく、通常、これらの複雑なコーティング配合物の各々を基材に適用し、そしてこれらの複雑な系に基づいて達成すべき所望の特性に関する試験又は一連の試験を行う必要もある。
【0005】
よって自動車分野で新規コーティング配合物を開発するためのコーティング材料組成物をスクリーニングする方法を提供することが、そこから得られた、改善された特性を有するコーティングフィルムの提供を可能とするために必要とされ、この方法から、複雑ではない標準的なコーティング材料組成物に基づく開発が可能となるが、特にそこに存在する構成成分、例えば架橋剤のフィルム形成ポリマーに関する限り、可能な限り多くのコーティング組成物がスクリーニングできるように十分な自由度を持つ。同時に、前記方法は、かなり高速でコスト効率がよく持続可能な態様で、且つ資源を節約する態様(より少ない量の材料の使用及びより少ない廃棄物の生成)で、実行できなければならない。特に、そのような標準的なコーティング材料組成物に使用される様々な構成成分、例えばフィルム形成ポリマー及び/又は架橋剤が、コーティング材料組成物それ自体及びそれから調製された濡れたコーティングフィルムの所望の特性に及ぼす影響を調査することができる方法を提供することが必要とされ、これにより、目的指向の態様でオーダーメイドの新規コーティング配合物が提供され、そしてそこから得ることができたコーティングフィルムに改善された特性がもたらされる。この点で、(濡れた)コーティング材料組成物及びそこから得られた濡れたコーティングフィルムの特性を、特定の顧客のニーズ及び/又は要求に基づいて調査及び改善することができ、例えば、エネルギーを節約するために架橋を行うのに必要な温度を下げることができ、そしてそれぞれの顧客の所望されるコーティングプロセスに応じて採用される(濡れた)コーティング材料組成物及び濡れたコーティングフィルムを適応させることができる方法を提供することが、特に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、自動車分野で新規コーティング配合物を開発するためのコーティング材料組成物をスクリーニングする方法を提供し、そこから得られた、改善された特性を有するコーティングフィルムの提供を可能とすることであり、この方法から、複雑ではない標準的なコーティング材料組成物に基づく開発が可能となるが、特にそこに存在する構成成分、例えばフィルム形成ポリマー及び/又は架橋剤に関する限り、可能な限り多くのコーティング組成物が定義された時間枠内でスクリーニングできるように十分な自由度を持つ。同時に、前記方法は、高速でコスト効率がよく持続可能な態様で、且つ資源を節約する態様(より少ない量の材料の使用及びより少ない廃棄物の生成)で実行可能である。従って特に、本発明の目的は、このような標準的なコーティング材料組成物に使用される様々な構成成分、例えばフィルム形成ポリマー及び/又は架橋剤が、コーティング材料組成物それ自体及びそれから得ることができた濡れたコーティングフィルムの所望の特性に及ぼす影響を調査することができる方法を提供することであり、これにより、目的指向の態様でオーダーメイドの新規コーティング配合物が提供され、そしてそこから得ることができたコーティングフィルムに改善された特性がもたらされる。この点で、特に本発明の目的は、(濡れた)コーティング材料組成物及びそこから得られた濡れたコーティングフィルムの特性を、特定の顧客のニーズ及び/又は要求に基づいて調査及び改善することができ、例えば、エネルギーを節約するために架橋を行うのに必要な温度を下げることができ、そしてそれぞれの顧客の所望されるコーティングプロセスに応じて採用される(濡れた)コーティング材料組成物及び濡れたコーティングフィルムを適応させることができる方法を提供することである。
【0007】
この目的は、本願の特許請求の範囲の主題、及び本明細書に開示されたその好ましい実施形態、すなわち本明細書に記載された主題によって、解決された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の主題は、自動車分野における新規コーティング配合物を開発するためのコーティング材料組成物をスクリーニングする方法であり、前記方法は、少なくとも工程(1)、(4)、(5)、(8)及び(10)~(13)及び任意の工程(2)、(3)、(6)、(7)及び(9)の少なくとも1つ、すなわち、
(1) 第1のコーティング材料組成物F1を提供する工程であって、
その第1のコーティング材料組成物F1が、
(i) 架橋性官能基を有する、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP1、
(ii) 少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有する、少なくとも1つの架橋剤CA1、
(iii) 水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒、
(iv) 任意に、少なくとも1つの相溶化ポリマーPMP、
(v) 任意に、少なくとも1つの添加剤A、好ましくは、ポリマーP1の架橋性官能基と架橋触媒CA1の官能基との架橋反応を触媒することができる、添加剤Aとしての少なくとも1つの架橋触媒CLC1、及び
(vi) 任意に、少なくとも1つの顔料PI1及び/又はフィラーFI1
を含み、
ここで、構成成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)、及び(v)及び(vi)は、それぞれ互いに異なる、提供する工程、
(2) 第1のコーティング材料組成物F1を、基材の少なくとも1つの任意に事前に被覆された表面上に任意に適用して、基材の前記表面上に濡れたコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 工程(2)の後に得られた濡れたコーティングフィルムを任意に乾燥させて、基材の表面に部分的に乾燥したコーティングフィルムを形成する工程、
(4) 工程(1)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(2)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(3)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの、少なくとも1つの特性を測定する工程、
(5) 第1のコーティング材料組成物F1とは正確に1つ又は多くても2つ、好ましくは正確に1つのパラメータ(複数可)が異なる、少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物を提供する工程であって、
前記パラメータ(複数可)が、(a)ポリマーP1と、ポリマーP1とは異なり且つ少なくとも架橋剤CA1の官能基に対して反応性である架橋性官能基を有するさらなるポリマーとの、部分的又は完全な交換、(b)架橋剤CA1と、架橋剤CA1とは異なり且つ少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有するさらなる架橋剤との、部分的又は完全な交換、(c)ポリマーP1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(a)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用されたポリマーP1とは異なるポリマーの量の低下又は増加、(d)架橋剤CA1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(b)で定義したCA1の部分的又は完全な交換に使用されたCA1とは異なる架橋剤の量の低下又は増加、(e)存在する場合に添加剤A、例えば架橋触媒CLC1と、添加剤Aとは異なるさらなる添加剤、例えば架橋触媒CLC1とは異なる架橋触媒との部分的又は完全な交換、(f)存在する場合に添加剤A、例えば架橋触媒CLC1、及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(e)で定義した添加剤A、例えば架橋触媒CLC1の部分的又は完全な交換に使用された添加剤Aとは異なる添加剤、例えばCLC1とは異なる架橋触媒の量の低下又は増加、(g)存在する場合に顔料PI1及び/又はフィラーFI1と、顔料PI1及び/又はフィラーFI1とは異なるさらなる顔料及び/又はフィラーとの部分的又は完全な交換、及び(h)存在する場合に顔料PI1及び/又はフィラーFI1及び/又は存在する場合にさらなるコーティング材料組成物中の(g)で定義した顔料PI1及び/又はフィラーFI1の部分的又は完全に交換に使用された顔料PI1及び/又はフィラーFI1とは異なる顔料の量の低下又は増加、からなる群から選択される、提供する工程、
(6) さらなるコーティング材料組成物を、基材の少なくとも1つの任意に事前に被覆された表面に任意に適用して、基材の前記表面上に濡れたコーティングフィルムを形成する工程、
(7) 工程(6)の後に得られた濡れたコーティングフィルムを任意に乾燥させて、基材の表面に部分的に乾燥したコーティングフィルムを形成する工程、
(8) 工程(5)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(6)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(7)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性を測定する工程であって、前記少なくとも1つの特性が工程(4)で測定したものと同じ特性である、測定する工程、
(9) 任意に、工程(5)及び(8)及び任意に工程(6)及び/又は工程(7)を少なくとも1回繰り返す工程であって、提供されたさらなるコーティング組成物の各々が、互いに異なり、そしてコーティング材料組成物F1とは異なる、繰り返す工程、
(10) 工程(4)及び(8)で測定された特性の結果、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合に測定された特性の結果を、好ましくは電子データベースに組み込む工程、
(11) 組み込む工程(10)により好ましくは電子データベースに存在する測定された特性の少なくとも1つを選択する工程、
(12) 工程(4)及び(8)により、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの選択された特性の結果を、評価及び互いに比較する工程、及び
(13) 第1のコーティング材料組成物F1、及び工程(5)の後に得られたさらなるコーティング材料組成物の各々、及び工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に任意に得られた任意のコーティング材料組成物とは異なる、少なくとも1つの新規コーティング配合物を配合及び提供するために、評価及び比較工程(12)から得られた情報を使用する工程であって、少なくとも1つの新規コーティング配合物それ自体、及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムが、工程(4)及び/又は(8)で定義した通り測定した場合に、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性の改善を示す、使用する工程
を含む。
【0009】
好ましくは、工程(5)、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの間に選択されたパラメータ(複数可)は、コーティング材料組成物の各々の総固形分含量に寄与する少なくとも1つの構成成分の量、例えばコーティング材料組成物F1の場合は構成成分(i)及び(ii)、及び存在する場合構成成分(v)及び/又は(vi)の量、より好ましくは、コーティング材料組成物の各々の総バインダー固形分含量に寄与する少なくとも1つの構成成分、例えばコーティング材料組成物F1の場合は構成成分(i)及び(ii)、及び存在する場合構成成分(v)の量の、部分的又は完全な交換、及び/又は低下又は増加に関連している。
【0010】
好ましくは、工程(2)、(3)、(6)及び(7)のいずれも行わない。よって好ましくは、工程(4)及び(8)で測定され、そして工程(11)で選択された少なくとも1つの特性は、コーティング材料組成物それ自体の特性であるので、それから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの特性ではない。
【0011】
本発明のさらなる主題は、自動車分野における新規コーティング配合物を開発し提供するための本発明の方法の使用であり、前記新規コーティング配合物は、好ましくはベースコート組成物、特に水性ベースコート組成物である。
【0012】
本発明のさらなる主題は、架橋性官能基を有するフィルム形成ポリマー(i)、及び/又は少なくとも前記ポリマーの前記架橋性官能基に対して反応性である官能基を有する架橋剤(ii)、及び/又は存在する場合に添加剤(v)、例えば(i)と(ii)との間の架橋反応を触媒する架橋触媒、及び/又は顔料及び/又はフィラー(vi)が、少なくとも構成成分(i)及び(ii)及び任意に(v)及び/又は(vi)を含有するコーティング材料組成物それ自体、及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの特性に及ぼす影響を調査するための、本発明による方法の使用である。添加剤(v)として架橋触媒が使用される場合、これは無論その触媒活性以外のさらなる機能を呈してよい。例えば、ブロック化又は非ブロック化スルホン酸が架橋触媒として使用される場合、これらは界面活性剤として機能してもよく、ひいては測定される特性のさらなる例としての表面張力に影響を有する。
【0013】
驚くべきことに、本発明の方法によって、改善された特性を有する自動車分野における新規コーティング配合物の開発のためのコーティング材料組成物のスクリーニングが利用可能であり、これは高速でコスト効率のよい態様で実施できることが見出された。これは特に、この方法が、好ましくは限られた数の構成成分のみを有する、あまり複雑ではない標準的なコーティング材料組成物のスクリーニングを利用する場合である。よってスクリーニングは、多数の異なる構成成分を有するかなり複雑なコーティング配合物を利用して実施する必要がなく、前記複雑ではない標準的な系に基づくことができる。従って、本発明の方法は、限られた数の構成成分のみを使用しなければならないので、コスト効率のよい態様で実施することができるだけでなく、さらに、使用しなければならない構成成分材料の量が少なく、且つ生成される廃棄物がより少ないので、資源を節約することもできる。従って、本発明の方法はさらに、生態学的観点からも有利である。
【0014】
さらに驚くべきことに、測定された特性のあらゆる結果が、好ましくは電子データベースに組み込まれ、このデータベースはいつでもアクセスすることができ、本発明の方法を実行する間に更新することができるので、本発明の方法はコスト効率がよく持続可能な態様で実施できることが見出された。データベース内にデータが多く存在すればするほど、工程(12)及び(13)をより効率的に、有望に、且つ正確に実行することができる。
【0015】
さらに驚くべきことに、本発明の方法は、従来のスクリーニング方法と同じ時間間隔で、より多くのコーティング組成物をスクリーニングすることを可能にすることが見出された。
【0016】
特に、驚くべきことに、本発明の方法により、使用される標準的なコーティング材料組成物中に存在するフィルム形成ポリマー及び/又は架橋剤などの構成成分が、コーティング材料組成物それ自体及びこれらから得られた濡れたコーティング又は部分的に乾燥したフィルムの所望の特性に及ぼす影響を調査することが可能となり、このようにして、目的指向の態様でオーダーメイドの新規コーティング配合物を提供することができ、そしてこれは改善された特性を有することが見出された。これは特に、フィルム形成ポリマーとしてのヒドロキシル(OH-)及び任意に酸官能性ポリマー及び/又は架橋剤としてのメラミンアルデヒド樹脂、及び/又はこれら2つの構成成分の間の架橋反応を触媒する架橋触媒、及びさらにそれらが所望の特性、例えば硬化に必要な硬化温度及び/又は硬化時間(各場合とも可能な限り低いことが望ましい)に及ぼす影響の調査に適用される。この文脈において、フィルム形成ポリマーとしてOH-及び任意に酸官能性ポリマー及び架橋剤としてメラミンアルデヒド樹脂、及び任意に少なくとも1つの架橋触媒を含有する新規のオーダーメイドのコーティング配合物が、本発明の方法によって目的指向の態様で提供され、これにより、改善された特性を有する新規コーティング配合物及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムがもたらされ、これらは改善された特性、例えばオンセット温度及び/又はオフセット時間に関する改善を有し、これが今度はコーティング配合物及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性の改善につながり、例えばより高い反応性及び/又はより短い反応時間、ひいてはコーティング配合物の適切な処理に必要な、より短い硬化時間及び/又はより低い硬化温度がもたらされることが見出された。
【0017】
さらに、驚くべきことに、本発明の方法により、(濡れた)コーティング材料組成物及びそこから得られた濡れたコーティングフィルムの特性を、特定の顧客のニーズ及び/又は要求に基づいて調査及び改善することができ、例えば、エネルギーを節約するために架橋を行うのに必要な温度を下げることができ、そしてそれぞれの顧客の所望されるコーティングプロセスに応じて採用される(濡れた)コーティング材料組成物及び濡れたコーティングフィルムを適応させることが可能となることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の方法
工程(1)
本発明の方法の工程(1)において、第1のコーティング材料組成物F1が提供される。第1のコーティング材料組成物F1は、少なくとも構成成分(i)、(ii)及び(iii)及び任意に(iv)及び/又は(v)及び/又は(vi)を含む。構成成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)及び(vi)は、互いに異なる。
【0019】
本発明の意味における用語「含む」は、例えば本発明に使用されるコーティング材料組成物の任意、例えばF1、又は新規コーティング配合物の任意と関連して、好ましくは「からなる」の意味を有する。この場合、そこに存在するあらゆる必須の構成成分に加えて、以下に特定されるさらなる構成成分の1つ以上も、そこに任意に含まれることが可能である。あらゆる構成成分は、各場合とも、以下に特定されるように、それらの好ましい実施形態において存在する。
【0020】
コーティング材料組成物のうちの任意に存在する、以下に示す構成成分の任意のwt.-%(質量%)単位の割合及び量は、各場合とも各組成物の総質量に基づいて、加算すると100質量%となる。
【0021】
コーティング材料組成物F1及びさらなるコーティング材料組成物
好ましくは、構成成分(i)~(iii)及び任意に(iv)及び/又は(v)及び/又は(vi)は、第1のコーティング材料組成物F1の唯一の構成成分である。よって好ましくは、第1のコーティング材料組成物F1は、構成成分(i)~(iii)、及び任意に(iv)及び/又は(v)及び/又は(vi)からなる。好ましくは、構成成分(iv)は、第1のコーティング材料組成物F1中に存在する。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物の各々についても好ましくは同様である。
【0022】
好ましくは、第1のコーティング材料組成物F1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意は、1成分(1K)又は2成分(2K)コーティング材料組成物であり、好ましくはそれぞれ1成分(1K)コーティング材料組成物であり、より好ましくはベースコート材料組成物として使用するためのものである。ベースコート材料組成物は、水性(水系)又は有機溶媒ベース(溶媒系、非水性)とすることができ、そしてOEMコーティング材料組成物としても、再仕上げ用途としても使用することができる。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物の各々についても好ましくは同様である。
【0023】
用語「ベースコート」は、当該技術分野で既知であり、例えば、Roempp Lexikon,paints and printing inks,Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、第57頁に定義されている。従ってベースコートは、特に自動車塗装及び一般産業の塗装着色において使用され、ベースコートを中間コーティング組成物として使用することにより着色及び/又は光学的効果をもたらす。これは一般に、任意にプライマー及び/又はフィラー及び/又はシーラーで前処理された金属又はプラスチック基材に適用される。プラスチック基材の場合にはプラスチック基材に直接適用されることがあり、金属基材の場合には金属基材上に被覆された電着コーティング層上(金属基材はリン酸亜鉛層などのリン酸塩層を既に有していてよい)、又はプライマー及び/又はフィラー及び/又はシーラー及び/又は電着コーティングを既に有する金属基材に適用され、又は再仕上げ用途の場合は既に存在するコーティング上に適用され、これらもまた基材として機能できる。ベースコートフィルムを特に環境的影響から保護するために、これに少なくとも1つの追加的なトップコートフィルム、特にクリアコートフィルムが適用される。
【0024】
好ましくは、コーティング材料組成物F1は、総固形分含量(不揮発分含量)を10~85質量%の範囲、より好ましくは15~80質量%、さらにより好ましくは20~65質量%で有する。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物の各々についても好ましくは同様である。総固形分含量は、「方法」のセクションに記載の方法に従って決定される。好ましくは、総固形分含量は各場合とも40質量%を超え、より好ましくは50質量%を超える。
【0025】
フィルム形成ポリマー及び架橋剤
第1のコーティング材料組成物F1は、構成成分(i)として少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP1を含み、該ポリマーP1は、架橋性官能基を有する。第1のコーティング材料組成物F1は、構成成分(ii)として少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有する少なくとも1つの架橋剤CA1をさらに含む。ポリマーP1の架橋性官能基と架橋剤CA1の官能基との間で好ましくは生じる架橋反応は、少なくとも1つの架橋触媒(任意の構成成分(v))によって触媒できるが、必ずしも触媒される必要はない。そのような触媒作用が所望される場合、第1のコーティング材料組成物F1は、少なくとも1つの架橋触媒(v)をさらに含む。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物の各々についても好ましくは同様である。
【0026】
フィルム形成ポリマー
フィルム形成ポリマーP1は、バインダーを表す。本発明の目的では、用語「バインダー」は、DIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)に準拠して、コーティング材料組成物の不揮発性(固体)構成成分であると理解され、フィルム形成に関与する。この用語には、架橋剤(crosslinking agent)(架橋物(crosslinkers))及び触媒などの添加剤が含まれる(これらが不揮発性構成成分を表す場合)。顔料及び/又はフィラーは、フィルム形成に関与しないので、用語「バインダー」に包含されない。しかしながら、好ましくは、顔料及び/又はフィラーは存在しない。好ましくは、構成成分(i)、(ii)、(iv)及び(v)の各々は、コーティング材料組成物F1の総バインダー固形分含量に寄与する。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物の各々についても好ましくは同様である。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP1は、コーティング材料組成物の主要なバインダーである。本発明の意味での主要なバインダーとして、バインダー構成成分は、好ましくは、コーティング材料組成物中に他のバインダー構成成分が存在しない場合、コーティング材料組成物の総質量に基づいてより高い割合で存在するものを指す。
【0028】
「ポリマー」という用語は、当業者には既知であり、本発明の目的では、重付加物及び重合体及び重縮合物を包含する。用語「ポリマー」には、ホモポリマー及びコポリマーの両方が含まれる。
【0029】
フィルム形成ポリマーとして使用できる好適なポリマーは、例えば、EP0228003A1、DE4438504A1、EP0593454B1、DE19948004A1、EP0787159B1、DE4009858A1、WO92/15405A1、WO2005/021168A1、WO2017/097642A1及びWO2017/121683A1から公知である。
【0030】
好ましくは、第1のコーティング材料組成物F1の構成成分(i)として存在する少なくとも1つのポリマーP1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する、任意のさらなる少なくとも1つのフィルム形成ポリマーは、物理的乾燥性ポリマー、化学的架橋性ポリマー、放射線硬化性ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、物理的乾燥性ポリマー、化学的自己架橋性ポリマー、化学的非自己架橋性ポリマー(すなわち外部架橋性ポリマー)、放射線硬化性ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、さらにより好ましくは、化学的非自己架橋性ポリマーからなる群から選択される。
【0031】
放射線硬化性ポリマーは、放射線の誘導により硬化する。好ましくは、このようなポリマーは、炭素-炭素二重結合を含む官能基、例えばビニル基及び/又は(メタ)アクリル基を含有する。物理的乾燥性ポリマーは、物理的乾燥により、主として硬化する、好ましくは硬化する。これらのポリマー内に酸基などの架橋性官能基が存在することは、これらポリマーが物理的乾燥によって主として硬化する又は硬化するという事実と矛盾しない。(主として)物理的乾燥の場合であっても、これらのポリマーは、少なくとも1つの架橋剤との少なくとも部分的な架橋反応をさらに起こすことができる。化学的架橋性ポリマーは特に、化学的自己架橋性ポリマー及び化学的非自己架橋性ポリマー(すなわち外部架橋性ポリマー)である。(主として)自己架橋性反応の場合であっても、これらのポリマーは、少なくとも1つの架橋剤との少なくとも部分的な架橋反応をさらに起こすことができる。しかしながら、化学的非自己架橋性ポリマーが特に好ましい。
【0032】
ポリマーP1は架橋性官能基を有し、これは架橋剤CA1の官能基と架橋反応することができる。当業者に知られている任意の一般的で好適な架橋性反応性官能基が存在できる。好ましくは、ポリマーP1は、ヒドロキシル基(ここではOH基ともいう)、アミノ基、例えば第1級及び/又は第2級アミノ基、チオール基、エポキシド基、ジケト基を含むケト基、酸基、例えばカルボキシル基、及びカルバメート基、シロキサン基、さらには炭素-炭素二重結合を含む官能基、例えばビニル基及び/又は(メタ)アクリル基からなる群から選択される官能性反応基の少なくとも1種類を有する。好ましくは、ポリマーP1は、官能性ヒドロキシル基及び/又は酸基、特にヒドロキシル基及び/又はカルボン酸基、最も好ましくはヒドロキシル基を有する。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用される任意のポリマーについても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、同様である。
【0033】
好ましくは、ポリマーP1はヒドロキシル官能性であり、そしてより好ましくはOH価を5~400mgKOH/gの範囲、より好ましくは7.5~350mgKOH/g、より好ましくは10~300mgKOH/gで有する。好ましくは、ポリマーP1は、追加的又は代替的に酸官能性であり、そしてより好ましくは酸価を0~200mgKOH/gの範囲、より好ましくは1~150mgKOH/g、さらにより好ましくは1~100mgKOH/gで有する。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用される任意のポリマーについても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、同様である。
【0034】
好ましくは、第1のコーティング材料組成物F1に構成成分(i)として存在する少なくとも1つのポリマーP1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する、任意のさらなる少なくとも1つのポリマーは、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド及びポリエーテルからなる群から選択され、好ましくは、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン及びポリエーテルからなる群から選択される。これには、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートなどの当該ホモポリマーの構造単位を含有するコポリマーが含まれる。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在するフィルム形成ポリマーの各々についても、好ましくは同様である。
【0035】
ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、及びポリエーテルが最も好ましく、それぞれ架橋性官能基として少なくともOH基を有し、そして任意に酸基をさらに有する。
【0036】
本発明の文脈における用語「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」又は「(メタ)アクリル酸」は、各場合とも、「メタクリル」及び/又は「アクリル」「メタクリル酸」及び/又は「アクリル酸」又は「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」の意味を含む。従って、一般に「(メタ)アクリル酸コポリマー」は、「アクリル酸モノマー」のみ、「メタアクリル酸モノマー」のみ、又は「アクリル酸及びメタクリル酸モノマー」から形成される。しかしながら、「(メタ)アクリル酸コポリマー」には、アクリル酸及び/又はメタクリル酸モノマー以外の重合性モノマーも含有されていてよい(例えばスチレン等)。換言すれば、(メタ)アクリル酸ポリマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸モノマー単位のみからなっていてよいが、必ずしもそうである必要はない。なお、「(メタ)アクリレートポリマー又はコポリマー」又は「(メタ)アクリル酸ポリマー又はコポリマー」という表記は、ポリマー/コポリマー(ポリマー骨格(skeleton)/主鎖(backbone))が、(メタ)アクリレート基を有するモノマーから主に形成される、すなわち、モノマー単位の50モル%以上又は75モル%以上が使用されることを意味するものである。よって、(メタ)アクリル酸コポリマーの調製において、好ましくは、モノマーの50モル%又は75モル%以上が(メタ)アクリレート基を有する。しかしながら、さらなるモノマーをコモノマーとして(例えば共重合可能なビニルモノマー(例えばスチレン))その調製のために使用することは、除外されない。
【0037】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1の第4頁19行目~第11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願EP0228003A1の第3頁24行目~第5頁40行目、欧州特許出願EP0634431A1の第3頁38行目~第8頁9行目、国際特許出願WO92/15405の第2頁35行目~第10頁32行目に記載されている。
【0038】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の第6欄53行目~第7欄61行目及び第10欄24行目~第13欄3行目又はWO2014/033135A2の第2頁24行目~第7頁10行目及び第28頁13行目~第29頁13行目に記載されている。同様に、好ましいポリエステルは、例えば、WO2008/148555A1に記載されているように、樹枝状構造又は星型構造を有するポリエステルである。
【0039】
好ましいポリエーテルは、例えば、WO2017/097642A1及びWO2017/121683A1に記載されている。
【0040】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー(例えば、(メタ)アクリル化ポリウレタン))及びその調製は、例えば、WO91/15528A1、第3頁21行目~第20頁33行目に記載されている。
【0041】
特に好ましいのは、(メタ)アクリル酸コポリマーであり、特にそれらがOH官能性の場合である。ヒドロキシル含有モノマーには、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが含まれ、これらはコポリマーの調製に使用することができる。ヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル-(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、これらとエプシロン-カプロラクトンとの反応生成物、約10個以下の炭素の分枝又は直鎖アルキル基を有する他のヒドロキシアルキル-(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が含まれる。(メタ)アクリル酸ポリマーなどのビニルポリマー上のヒドロキシル基は、他の手段、例えば、共重合グリシジルメタクリレートからのグリシジル基の、有機酸又はアミンによる開環によって生成することができる。ヒドロキシル官能性はまた、限定するものではないが、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、1-メルカプト-2-プロパノール、2-メルカプトエタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプトベンジルアルコール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、4-メルカプト-1-ブタノール、及びこれらの組み合わせを含むチオ-アルコール化合物を介して導入される。これらの方法の任意を使用して、有用なヒドロキシル官能性(メタ)アクリル酸ポリマーが調製される。使用される好適なコモノマーの例には、限定するものではないが、3~5個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸、及びアクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸のアルキル及びシクロアルキルエステル、ニトリル及びアミド、4~6個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸及びこれら酸の無水物、モノエステル、及びジエステル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、及び芳香族又は複素環式脂肪族ビニル化合物が含まれる。アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸の好適なエステルの代表例には、限定するものではないが、1~20個の炭素原子を含有する飽和脂肪族アルコール、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ドデシル、3,3,5-トリメチルヘキシル、ステアリル、ラウリル、シクロヘキシル、アルキル置換シクロヘキシル、アルカノール置換シクロヘキシル、例えば、2-tert-ブチル及び4-tert-ブチルシクロヘキシル、4-シクロヘキシル-1-ブチル、2-tert-ブチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、3,3,5,5,-テトラメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート、メタクリレート及びクロトネートの反応からのエステル、不飽和ジアルカン酸及び無水物、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸及び無水物及びアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールとのそれらのモノエステル及びジエステル、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチルエステル及びマレイン酸モノヘキシルエステル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエチルエーテル、及びビニルエチルケトン、スチレン、a-メチルスチレン、ビニルトルエン、2-ビニルピロリドン、及びp-tert-ブチルスチレンが含まれる。(メタ)アクリル酸コポリマーは、従来の技術、例えば、重合開始剤及び任意に鎖移動剤の存在下でモノマーを加熱することによって調製してよい。
【0042】
好適なポリ(メタ)アクリレートは、水及び/又は有機溶媒におけるオレフィン性不飽和モノマーの多段階フリーラジカル乳化重合によって調製することができるものでもある。このようにして得られたシードコア-シェルポリマー(SCSポリマー)の例は、WO2016/116299A1に開示されている。
【0043】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP1は、コーティング材料組成物F1中に、10.0~90質量%の範囲、より好ましくは15.0~85質量%、さらにより好ましくは17.5~65質量%、なおより好ましくは20.0~60質量%の量で存在し、各場合ともコーティング材料組成物の総バインダー固形分含量に基づく。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用される任意のポリマーについても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物の任意に関して、同様である。
【0044】
好ましくは、少なくとも1つのポリマーP1は、コーティング材料組成物F1中に、50.0~90質量%の範囲、より好ましくは55.0~85質量%、さらにより好ましくは57.5~80質量%の量で存在し、各場合ともコーティング材料組成物の総固形分含量に基づく。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用される任意のポリマーについても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物の任意に関して、同様である。
【0045】
架橋剤
あらゆる従来の架橋剤を使用することができる。これには、メラミン樹脂、好ましくはメラミンアルデヒド樹脂、より好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂、ブロック化ポリイソシアネート、遊離(非ブロック化)イソシアネート基を有するポリイソシアネート、アミノ基、例えば第2級及び/又は第1級アミノ基を有する架橋剤、及びエポキシド基及び/又はヒドラジド基を有する架橋剤、及びカルボジイミド基を有する架橋剤が含まれる(特定の架橋剤の官能基が、架橋反応においてバインダーとして用いられるフィルム形成ポリマーの架橋性官能基と反応するのに好適である限り)。例えば、ブロックされた又は遊離イソシアネート基を有する架橋剤は、1K配合物の場合には高温で、2K配合物の場合には周囲温度で、架橋性OH基及び/又はアミノ基を有するフィルム形成ポリマーと反応させることができる。さらに可能な組み合わせは、例えばフィルム形成ポリマーのエポキシド基であり、これは架橋剤の酸及び/又はアミノ基と反応させることができ、又はその逆もまた可能である。さらに可能な組み合わせは、例えばフィルム形成ポリマーのケト基であり、これは架橋剤のヒドラジド基と反応させることができ、又はその逆も可能であり、又は例えば架橋剤のカルボジイミド基であり、これはフィルム形成ポリマーの酸基と反応させることができ、又はその逆も可能である。
【0046】
好ましくは、第1のコーティング材料組成物F1中に構成成分(ii)として存在する少なくとも1つの架橋剤CA1、及び工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に得られた、さらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する、任意のさらなる少なくとも1つの架橋剤は、メラミンアルデヒド樹脂、好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂である。これは特に、1Kコーティング材料組成物の場合に適用される。上記に概説した通り、架橋剤は、材料コーティング組成物のフィルム形成不揮発性成分の中に含まれるものであり、従って、上記で述べた通り「バインダー」の一般的な定義に含まれる。
【0047】
好ましくは、メラミンアルデヒド樹脂、好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂は、各場合とも、ポリマーP1の官能基に対して反応性を有するイミノ基、アルキロール基及びエーテル化アルキロール基の少なくとも1つを官能基として有する。アルキロール基の例として、メチロール基が挙げられる。
【0048】
メラミンアルデヒド樹脂に存在するアルキロール基の少なくとも一部は、少なくとも1つのアルコールとのさらなる反応を通じてアルキル化され、窒素結合アルコキシアルキル基(エーテル化アルキロール基)を生成してよい。特に、窒素結合アルキロール基中のヒドロキシル基をアルコールとエーテル化反応させ、窒素結合アルコキシアルキル基を生成してよい。アルコキシアルキル基は、例えば、ポリマーP1の好適な架橋性官能基、例えば、OH基及び/又は酸基との架橋反応に利用可能である。アルデヒド/メラミン反応後に存在する残りのイミノ基は、アルキル化に使用したアルコールと反応しない。
【0049】
上記に概説した通り、メラミンアルデヒド樹脂のアルキロール基は、部分的にアルキル化されてよい。「部分的にアルキル化される」とは、アルキロール基が不完全にアルキル化される結果となるべき反応条件下で、十分に少量のアルコールをメラミンアルデヒド樹脂と反応させて、メラミンアルデヒド樹脂中にアルキロール基の一部を残すことを意味する。メラミンアルデヒド樹脂が部分的にアルキル化される場合、これらは典型的には、アミノプラスト中に存在するアルキロール基を残すのに十分な量の、少なくとも約2%、より好ましくは約10%~約50%、さらにより好ましくは約15%~約40%の量のアルコールでアルキル化され、各場合とも反応前のメラミンに存在する反応部位の総数に基づく。典型的には、メラミンアルデヒド樹脂は部分的にアルキル化され、約40~約98%、より好ましくは約50~約90%、さらにより好ましくは約60~約75%のアルコキシアルキル基が得られ、各場合とも反応前のメラミンに存在する反応部位の総数に基づく。
【0050】
好ましくは、メラミンアルデヒド樹脂のメチロール基などのアルキロール基の少なくとも一部、より好ましくは一部のみが、少なくとも1つのアルコールとの反応によりエーテル化される。任意の一価アルコールをこの目的のために用いることができ、これにはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、さらにはベンジルアルコール及び他の芳香族アルコール、環状アルコール、例えばシクロヘキサノール、グリコールのモノエーテル、及びハロゲン置換又は他の置換アルコール、例えば3-クロロプロパノール及びブトキシエタノールが含まれる。特に、メラミンアルデヒド樹脂のアルキロール基の少なくとも一部は、メタノール及び/又はn-ブタノール及び/又はイソ-ブタノールで部分的に修飾されている。
【0051】
好ましくは、構成成分(ii)は、第1のコーティング材料組成物F1中に、7.5~45質量%の範囲、より好ましくは10.0~40質量%、さらにより好ましくは12.5~35質量%、特に15~40質量%の量で存在し、各場合ともコーティング材料組成物の総バインダー固形分に基づく。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義した架橋剤CA1の部分的又は完全な交換に使用される任意の架橋剤についても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物の任意に関して、同様である。
【0052】
好ましくは、少なくとも1つの架橋剤CA1は、コーティング材料組成物F1中に、10.0~50質量%の範囲、より好ましくは15.0~45質量%、さらにより好ましくは20.5~42.5質量%の量で存在し、各場合ともコーティング材料組成物の総固形分含量に基づく。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義した架橋剤CA1の部分的又は完全な交換に使用される任意の架橋剤についても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物の任意に関して、同様である。
【0053】
好ましくは、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーP1及び少なくとも1つの架橋剤CA1は、コーティング材料組成物中に、それらの固形分に基づく相対質量比9.0:1~1.2:1の範囲、特に8.5:1.5~1.5:1で存在する。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で定義した架橋剤CA1の部分的又は完全な交換に使用される任意の架橋剤についても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物の任意に関して、同様である。
【0054】
構成成分(iii)
第1のコーティング材料組成物F1は、構成成分(iii)として、水及び/又は少なくとも1つの有機溶媒を含む。
【0055】
当業者に既知のあらゆる従来の有機溶媒を有機溶媒として使用することができる。「有機溶媒」という用語は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから、当業者に公知である。そのような有機溶媒の例には、複素環式、脂肪族、又は芳香族炭化水素、一価又は多価アルコール、特にメタノール及び/又はエタノール、エーテル、エステル、ケトン及びアミド、例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコール及びブチルグリコール、またそれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、又はそれらの混合物が含まれる。しかしながら好ましくは、一価又は多価アルコールは使用されない。
【0056】
水及び/又は有機溶媒(複数可)の含量及び量に応じて、コーティング材料組成物は、「溶媒系」(「非水性」)又は「水系」(「水性」)とすることができる。「溶媒系」又は「非水性」という用語は、好ましくは本発明の目的では、溶媒及び/又は希釈剤として使用される有機溶媒(複数可)が、コーティング材料組成物中に存在するあらゆる溶媒及び/又は希釈剤の主構成成分として存在することを意味すると理解される。コーティング材料組成物が溶媒系である場合、構成成分(iii)は、好ましくは少なくとも1つの有機溶媒であり且つ水を表さないか、又は有機溶媒(複数可)の量よりも少ない水の量を含む。溶媒系である場合のコーティング組成物は、好ましくは、水を含まないか、又は本質的に含まない。「水系」又は「水性」という用語は、好ましくは本発明の目的では、水が、本発明のコーティング材料組成物中に存在するあらゆる溶媒及び/又は希釈剤の主構成成分として存在することを意味すると理解される。水系である場合、構成成分(iii)は、少なくとも主溶媒/希釈剤として水を含む。有機溶媒(複数可)がさらに存在してもよいが、それは水よりも少ない量である。
【0057】
好ましくは、本発明の方法の工程(5)により提供された、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物のうちの任意についても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、同様である。
【0058】
構成成分(iv)
第1のコーティング材料組成物F1は、任意に及び好ましくは、構成成分(iv)として少なくとも1つの相溶化ポリマーPMPを含む。相溶化ポリマーPMPは、特に、水及び少なくとも1つの有機溶媒の両方が第1のコーティング材料組成物中に存在する場合に、相媒介剤及び/又は相促進剤として使用される。好ましくは、構成成分(iii)が少なくとも部分的に水を表す場合、構成成分(iv)は第1のコーティング材料組成物F1中に存在する。
【0059】
構成成分(iv)は、好ましくは相溶化特性を示し、すなわち界面活性剤特性を有する。しかしながら、構成成分(iv)は、所望の相溶化特性が構成成分(i)を介してコーティング材料組成物に代替的に導入されるので、任意の構成成分に過ぎない。よってポリマーP1は、フィルム形成ポリマーとして機能するだけでなく、さらに、相仲介剤/相促進剤として機能してもよく、ここで任意の構成成分(iv)の存在は必要ない。さらに、構成成分(iv)の存在は、CA1などの存在する架橋剤が水希釈性メラミンホルムアルデヒド樹脂などの水希釈性架橋剤である場合、特に必要ではないことがある。
【0060】
好ましくは、構成成分(iv)は、非極性部位及び極性部位を有するポリマーである。好ましくは、これら2つの部位は、ポリマーの主鎖内で互いに立体的に分離している。極性部位は親水性特性を有し、一方で非極性部位は疎水性特性を有する。構成成分(iv)は相溶化特性を有し、コーティング材料組成物中に存在する親水性構成成分又は構成成分の部分/基と(その親水性部分を介して)、コーティング材料組成物中に存在する疎水性構成成分又は構成成分の部分/基と(その疎水性部分を介して)の間の、相仲介剤/相促進剤として機能することができる。例えば、ポリマーPMPは、ポリウレタン、ポリエステル、(メタ)アクリル(コ)ポリマー、及びこれらのポリマーの構造単位の少なくとも2つから構成されるポリマーの群から選択される少なくとも1つのポリマーとすることができ、ポリマーPMPとして使用されるこれらのポリマーの各々は、好ましくは少なくとも1つの前述の極性部分と少なくとも1つの前述の非極性部分とを有する。好ましくは、ポリマーPMPは、後続の重合工程における少なくとも2種類の異なるモノマーの共重合により得ることができ、各モノマーは少なくとも1つのエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有し、最初の工程は、非極性モノマーである少なくとも1つのモノマー、例えば水中20℃で低い溶解度(g/l)を有するモノマー、例えばスチレンを伴い、後続する第2の工程は、極性モノマーである少なくとも1つのモノマー、例えば水中20℃で高い溶解度(g/l)を有するモノマー、例えばアクリル酸の重合を伴う。重合は、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有する又は有しない、好ましくは有しないポリウレタンの存在下で実施してよい。構成成分(iv)として使用することができる好適なポリマーは、例えば、DE4437535A1から公知である。特に、構成成分(iv)は、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートである。
【0061】
好ましくは、構成成分(iv)は、第1のコーティング材料組成物F1中に、1.5~20質量%の範囲、より好ましくは2.5~18質量%、さらにより好ましくは3.5~15質量%の量で存在し、各場合ともコーティング材料組成物の総バインダー固形分に基づく。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で提供された、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物のうちの任意についても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、同様である。
【0062】
構成成分(v)
第1のコーティング材料組成物F1は、任意に、構成成分(v)として少なくとも1つの添加剤A、例えばポリマーP1の架橋性官能基と架橋触媒CA1の官能基との架橋反応を触媒することができる、少なくとも1つの架橋触媒CLC1を含む。同様に、本発明の方法で提供されるさらなるコーティング材料組成物の各々は、任意に、添加剤A及び/又は添加剤Aと異なる少なくとも1つの添加剤を含んでよい。上記に概説した通り、例えば、添加剤(v)として架橋触媒が使用される場合、これらはその触媒活性以外にさらなる機能を示すことが可能である。例えば、ブロック化又は非ブロック化スルホン酸を架橋触媒として使用する場合、これらは界面活性剤としても機能し、ひいては測定される特性のさらなる例としての表面張力に影響を有することもある。この原則は、構成成分(v)として使用されるあらゆる添加剤に当てはまる。
【0063】
「添加剤」の概念は、例えば、Roempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」,Thieme Verlag、1998年、第13頁から当業者に公知である。
【0064】
添加剤の例として、反応性希釈剤、光安定剤、架橋触媒、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、界面活性化剤、例えば界面活性剤、湿潤剤及び分散剤、さらには増粘剤、チクソトロピー剤、可塑剤、潤滑剤及びブロッキング防止添加剤、滑剤、重合阻害剤、フリーラジカル重合開始剤、付着促進剤、流動制御剤、フィルム形成助剤、たれ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、乾燥剤、増粘剤、殺生剤及び/又はつや消し剤が挙げられる。
【0065】
好ましくは、構成成分(v)は、存在する場合、コーティング材料組成物F1などのコーティング材料組成物それぞれの総固形分含量に寄与する構成成分であり、より好ましくはコーティング材料組成物F1などのコーティング材料組成物それぞれの総バインダー固形分含量に寄与する構成成分である。
【0066】
好ましい構成成分(v)は、少なくとも1つのレオロジー添加剤及び/又は少なくとも1つの架橋触媒CLC1である。「レオロジー添加剤」という用語も、例えばRoempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」,Thieme Verlag、1998年、第497頁から、当業者には公知である。「レオロジー添加剤」、「レオロジー的添加剤」及び「レオロジー補助剤」という用語は、ここでは互換性がある。構成成分(v)として任意に存在する添加剤は、好ましくは、流動制御剤、界面活性化剤、例えば界面活性剤、湿潤剤及び分散剤、さらには増粘剤、チクソトロピー剤、可塑剤、潤滑性及びブロッキング防止添加剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。これらの用語も同様に、例えばRoempp Lexikon,「Lacke und Druckfarben」,Thieme Verlag、1998年から当業者には公知である。流動制御剤は、粘度及び/又は表面張力を低下させることにより、均一に流れ出るフィルムをコーティング組成物材料が形成するのを助ける成分である。湿潤剤及び分散剤は、表面張力、又は一般的には界面張力を低下させる成分である。潤滑剤及びブロッキング防止添加剤は、相互の粘着性(ブロッキング)を低減する成分である。
【0067】
好ましくは、少なくとも1つのスルホン酸、例えば非ブロック化スルホン酸又はブロック化スルホン酸、より好ましくはブロック化スルホン酸が触媒CLC1として使用される。非ブロック化スルホン酸の例として、パラ-トルエンスルホン酸(pTSA)、メタンスルホン酸(MSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)及びこれらの混合物が挙げられる。ブロッキングは、アンモニウム塩及び/又は有機アミンを利用することによって行うことができる。あるいは、スルホン酸と可逆的に反応するとβ-OH-スルホネートを形成するエポキシドを利用してブロッキングを行ってもよい。
【0068】
あまり複雑ではない標準的なコーティング材料組成物を組成物F1として使用することが望ましいので、コーティング材料組成物F1は、好ましくは、(i)、(ii)、(iii)及び任意に(iv)及び(v)及び(vi)以外の他の構成成分を含有しない。好ましくは、本発明の方法の工程(5)で提供された、F1及び互いと異なるさらなるコーティング材料組成物のうちの任意についても、及び任意の工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合も、同様である。
【0069】
任意に存在する構成成分(v)は、公知慣用の割合で使用することができる。好ましくは、コーティング材料組成物の総質量に基づくそれらの含量は、0.01~20.0質量%、より好ましくは0.05~15.0質量%、特に好ましくは0.1~10.0質量%、最も好ましくは0.1~7.5質量%、特に0.1~5.0質量%、及び最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0070】
構成成分(vi)
第1のコーティング材料組成物F1は、構成成分(vi)として、少なくとも1つの顔料PI1及び/又は少なくとも1つのフィラーFI1を任意に含む。同様に、本発明の方法において提供されるさらなるコーティング材料組成物の各々は、顔料PI1及び/又はフィラーFI1、及び/又は顔料PI1とは異なる少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーFI1とは異なる少なくともフィラーを任意に含んでよい。しかしながら、好ましくは、第1のコーティング材料組成物F1は、いかなる顔料及び/又はフィラーも含まない。
【0071】
「顔料」という用語は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者には公知である。本発明の意味での「顔料」は、好ましくは、粉末又はフレークの形態の成分を指し、これは実質的に、好ましくは完全に、それらを取り囲む媒体、例えばコーティング材料組成物のうちの任意に不溶性である。顔料は、好ましくは、着色剤及び/又はその磁気的、電気的及び/又は電磁気的特性を理由に顔料として使用することができる物質である。顔料は、好ましくは、その屈折率において「フィラー」と異なり、屈折率は顔料については≧1.7である。フィラー」という用語は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者には公知である。フィラーについて、その屈折率は<1.7である。
【0072】
「顔料」という用語には、色顔料及び効果顔料、及び色効果顔料が含まれる。効果顔料は、好ましくは、光学的効果又は色及び光学的効果を有する顔料である。効果顔料の例として、板形状金属効果顔料、例えば板形状アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ、火色付ブロンズ及び/又は酸化鉄-アルミニウム顔料、パーグレーズ(perglaze)顔料及び/又は金属酸化物-雲母顔料(マイカ)が挙げられる。当業者であれば、着色顔料の概念に精通している。「着色顔料」及び「色顔料」という用語は交換可能である。色顔料として、無機顔料及び/又は有機顔料を使用することができる。好ましくは、色顔料は有機色顔料である。使用される特に好ましい色顔料は、白色顔料、色付顔料及び/又は黒色顔料である。好適なフィラーの例は、カオリン、ドロマイト、方解石、チョーク、カルシウムスルフェート、バリウムスルフェート、タルク、ケイ酸、特に焼成ケイ酸、ヒドロキシド、例えばアルミニウムヒドロキシド又はマグネシウムヒドロキシド、又は有機バインダー、例えば布地繊維、セルロース繊維及び/又はポリオレフィン繊維が挙げられ、さらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag、1998年、第250頁以降、「Fillers」を参照されたい。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つの任意のフィラーFI1は、コーティング材料組成物F1中に、1.0~40質量%の範囲、より好ましくは2.0~35質量%、さらにより好ましくは5.0~30質量%の量で存在し、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づく。好ましくは、少なくとも1つの顔料PI1は、コーティング材料組成物FI1中に、1.0~40質量%の範囲、より好ましくは2.0~35質量%、さらにより好ましくは5.0~30質量%の量で存在し、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づく。F1とは異なるさらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する任意の顔料及び/又はフィラーも好ましくは同様である。
【0074】
任意の工程(2)
任意の工程(2)において、第1のコーティング材料組成物F1を、基材の少なくとも1つの任意に事前に被覆された表面上に適用して、基材の前記表面上に濡れたコーティングフィルムを形成する。この工程は、濡れたコーティングフィルムの特性を、工程(4)において測定することが意図されている場合に行われる。
【0075】
本発明の方法は、自動車車体又はその部品、それぞれの金属基材及びさらにプラスチック基材のコーティングに、特に好適である。よって好ましい基材は、自動車車体又はその部品である。
【0076】
本発明により使用される金属基材としての適性は、慣用的に使用され、当業者に知られているあらゆる基材である。本発明によって使用される基材は、好ましくは金属基材であり、より好ましくは鋼からなる群から選択され、好ましくは裸鋼、冷延鋼(CRS)、熱延鋼、亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼(HDG)、合金亜鉛めっき鋼(例えば、Galvalume、Galvannealed又はGalfan)及びアルミめっき鋼、アルミニウム及びマグネシウム、及びさらにはZn/Mg合金及びZn/Ni合金からなる群から選択される鋼であるか、又は代替的に好ましくは、プラスチック基材、例えばポリオレフィン基材、例としてStamylan(登録商標)製品である。特に好適な基材は、自動車の車体の部品又は製造用自動車の完全な車体である。
【0077】
本発明によって使用される金属基材は、好ましくは、亜鉛ホスフェートなどの少なくとも1つの金属ホスフェートで前処理された基材である。リン酸塩処理によるこの種の前処理は通常、基材が洗浄された後、及び基材が電着被覆される前に行われ、特に自動車産業で慣習的に行われている前処理工程である。
【0078】
上記に概説した通り、使用される基材は、事前に被覆された基材、すなわち、少なくとも1つの硬化したコーティングフィルムを有する基材でよい。工程(1)で使用される基材は、硬化した電着コーティング層及び/又は硬化したプライマー層又はフィラー層で事前に被覆することができる。
【0079】
工程(2)による適用は、従来の手段、例えば浸漬、ブラシ、ドクターブレードで、又は好ましくはスプレーで、行うことができる。
【0080】
任意の工程(3)
任意に、本発明の方法は、任意の工程(2)の後且つ工程(4)の前に実施される工程(3)をさらに含む。この工程は、部分的に乾燥したコーティングフィルムの特性を、工程(4)において測定することが意図されている場合に行われる。前記工程(3)において、工程(2)の後に得られた濡れたコーティングフィルムを任意に部分的に乾燥させて、部分的に乾燥したコーティングフィルムを基材の表面上に形成する。部分的な乾燥は、好ましくはフラッシュオフにより、好ましくは1~30分の期間、より好ましくは1.5~25分の期間、特に2~20分の期間、最も好ましくは3~15分の期間行う。好ましくは、工程(3)は、100℃を超えない温度、より好ましくは18~80℃の範囲の温度で行う。
【0081】
本発明の意味での「フラッシングオフ」又は「フラッシュオフ」という用語は乾燥を意味し、硬化が行われる前に、溶媒及び/又は水の少なくとも一部がコーティングフィルムから蒸発する。フラッシュオフにより、意図された、及び特に完全な硬化が行われることはない。
【0082】
工程(4)
工程(4)では、工程(1)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(2)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(3)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの、少なくとも1つの特性を測定する。
【0083】
好ましくは、工程(4)で測定され、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの特性は、オンセット温度、収縮率、広がり、表面張力、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度、特に粒度分布に関する分散安定性、膨張係数及びゼータ電位からなる群から選択される少なくとも1つの特性である。
【0084】
オンセット温度及びオフセット時間は、熱容量に関連する測定された特性であり、後述する「方法」のセクションに記載のDMA IVデルタ測定により決定することができる。これらの特性の改善は、例えば、特に、後続する硬化を低下した温度で可能とするための、オンセット温度及び/又はオフセット時間の低下である。
【0085】
粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度は、レオロジーに関連する特性である。粘度の測定は、Mettler-Toledo社のRheomat RM180などのレオメーターを23℃で使用し、そして装置の測定プレートに試料を供給してから、1000/sのせん断速度で5分間せん断応力を試料に与えることにより行うことができる(高せん断)。その後、せん断応力を1/sのせん断速度で5分間まで減少させ(低せん断)、時間に対するゾル曲線のプロファイルを測定することができる。
【0086】
膨張係数は、線形熱膨張に関連する特性であり、ISO11359-2:1999-10に準拠して測定することができる。
【0087】
分散安定性は、せん断速度及び/又は温度に関する粒度分布に関連する特性であり、ISO13320:2020-01に準拠したレーザー回折による粒径分析によって測定することができる。
【0088】
ゼータ電位は電位に関連する特性であり、ISO13099-2:2012-06に準拠して測定することができる。
【0089】
収縮率とは、濡れ又はコーティングフィルムの部分的な乾燥又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの硬化中に生じる体積の変化を意味する。収縮率は、EP3099423B1の段落[0055]~[0061]項に開示されているように測定することができる。
【0090】
表面張力は、ISO19403-2:2017-06に準拠して測定される。表面張力の測定には、接触角及び電気双極子モーメントの測定、特に濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの極性及び表面エネルギーの関連付けが含まれてよい。この性質は、濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの濡れ挙動にも影響を与える。よってこの性質の測定には、好ましくは、前記濡れ挙動の測定が含まれる。さらに、以下で概説するように、表面張力は濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの濡れ挙動と相関する。
【0091】
広がりは、ISO19403-2:2017-06及びDIN EN ISO19403-5:2020-04に準拠して決定され、濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの広がりを意味する。
【0092】
好ましくは、工程(4)で測定され、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの特性は、工程(1)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(2)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(3)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性と相関し、好ましくは、反応性、反応時間、特に架橋反応時間(両方ともISO11357:2018に準拠してDMA IVデルタ測定によって決定)、外観(DIN EN ISO13803:2015-02に準拠して決定)、色安定性及び特に貯蔵後のフロップ(DIN EN ISO/CIE11664-1:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-2:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-3:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-4:2020-03及びDIN EN ISO11664-5:2011-07に準拠して決定)、レベリング(DIN EN ISO13803:2015-02;ヘーズ試験に準拠して決定)、濡れ性(ISO19403-2:2017-06に準拠して決定)、付着性(DIN EN ISO4624:2016-08に準拠して決定)及び凝集性(DIN EN ISO2409:2019-09;クロスカット試験に準拠して決定)、及びさらに霧化性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性からなる群から選択される特性の少なくとも1つと相関する。コーティング材料組成物の霧化性、すなわちその噴霧性は、濡れ及び/又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの染みの発生を視覚的に調査することによって判定することができる:まず、コーティング材料組成物のミストコートを、任意に事前に被覆された基材上に1.5mの距離から30秒間適用する。室温で2分間のフラッシュオフ時間の後、同じコーティング材料組成物を1.5クロスコートの形態で適用し、その後、得られた濡れたコーティングフィルムを室温で1分間フラッシュオフする。次いで、同じコーティング材料組成物を1つの追加クロスコートの形態で再度適用する。次いで、得られた濡れたコーティングフィルムを室温で1分間フラッシュオフした後、循環空気オーブン中70℃で10分間乾燥させる。それから染みの発生を目視で調査し、0~6までの等級を付与する。ここで「6」は非常に多数の染みを表し(霧化性が不十分)、そして「0」は染みが検出されない(霧化性が優れている)ことを意味する。貯蔵安定性は、最大で360日間にわたる異なる貯蔵時間後に、コーティング材料組成物の粘度を測定することによって決定することができる。粘度は、それぞれのコーティング材料組成物の調製後1時間以内に23℃で回転式粘度計(Mettler-Toledo社のRheomat RM180装置)を用いて1000/sのせん断速度で、及びまた、様々な貯蔵期間後、例えば2、4、8、20、30、50、90、120、150、180、210、240、270、300、330及び360日後に測定される。それぞれの測定とは別に、試料は外部のせん断力の影響を受けずに23℃で全期間にわたり貯蔵され、そして粘度測定の前に1分間振とうされる。循環ライン安定性は、20リットルのコーティング材料組成物を循環ラインシステムに導入することによって決定される。その後、システム動作圧力10バール及び温度21±2℃で77.1分間、コーティング材料組成物を循環中にポンプで汲み上げる。この時間の後、ターンオーバー(1ターンオーバー(TO)=循環ライン中の材料の1循環)の曝露に対応して、1.5リットルのコーティング材料組成物をコーティング目的で取り除く。この手順を2000TOのコーティング材料曝露まで繰り返す。取り除いたコーティング材料組成物から得られたコーティングフィルムの明度値などの色値を、例えばX-Rite社のMA68II分光光度計などの分光光度計を用いて、及び/又は粘度、特に上記で記載した方法に従って高せん断粘度及び/又は低せん断粘度を測定することで、循環ライン安定性を評価することができる。
【0093】
例えば、測定されたオンセット温度は、コーティング材料組成物の反応性、特にそこに含有される少なくとも構成成分(i)及び(ii)、及び任意に(v)の反応性と相関する。これは、コーティング材料組成物が濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムとして適用された場合も同様である。例えば、測定されたオフセット時間は、コーティング材料組成物、特にそこに含有される少なくとも構成成分(i)及び(ii)、及び任意に(v)の、特に所与の温度及び/又は温度プロファイルにおける、反応時間、特に架橋反応時間と相関する。これは、コーティング材料組成物が濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムとして適用された場合も同様である。例えば、収縮率は外観、フロップ、及びレベリングと相関する。例えば、表面張力は、濡れ性、凝集性及び付着性、及びさらに外観(特にオーバースプレーに対する安定性)とも相関する。例えば、広がりは外観(オーバースプレーに対する安定性)と相関する。例えば、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度は、レベリング、濡れ性、外観及び霧化性と相関する。例えば、特に粒度分布に関する分散安定性は、色安定性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性と相関する。例えば、膨張係数はレベリング及び外観と相関する。例えば、ゼータ電位は貯蔵安定性及び外観と相関する。
【0094】
工程(5)
工程(5)において、第1のコーティング材料組成物F1とは正確に1つ又は多くても2つのパラメータが異なる、少なくとも1つ、好ましくは正確に1つのさらなるコーティング材料組成物が提供される。前記パラメータは、(a)ポリマーP1と、ポリマーP1とは異なり且つ少なくとも架橋剤CA1の官能基に対して反応性である架橋性官能基を有するさらなるポリマーとの、部分的又は完全な交換、(b)架橋剤CA1と、架橋剤CA1とは異なり且つ少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有するさらなる架橋剤との、部分的又は完全な交換、(c)ポリマーP1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(a)で定義したポリマーP1の部分的又は完全な交換に使用されたポリマーP1とは異なるポリマーの量の低下又は増加、(d)架橋剤CA1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(b)で定義したCA1の部分的又は完全な交換に使用されたCA1とは異なる架橋剤の量の低下又は増加、(e)存在する場合に添加剤A、例えば架橋触媒CLC1と、添加剤Aとは異なるさらなる添加剤、例えば架橋触媒CLC1とは異なる架橋触媒との部分的又は完全な交換、及び(f)存在する場合に添加剤A、例えば架橋触媒CLC1、及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(e)で定義した添加剤A、例えば架橋触媒CLC1の部分的又は完全な交換に使用された添加剤Aとは異なる添加剤、例えばCLC1とは異なる架橋触媒の量の低下又は増加、(g)存在する場合に顔料PI1及び/又はフィラーFI1と、顔料PI1及び/又はフィラーFI1とは異なるさらなる顔料及び/又はフィラーとの部分的又は完全な交換、及び(h)存在する場合に顔料PI1及び/又はフィラーFI1及び/又は存在する場合にさらなるコーティング材料組成物中の(g)で定義した顔料PI1及び/又はフィラーFI1の部分的又は完全に交換に使用された顔料PI1及び/又はフィラーFI1とは異なる顔料の量の低下又は増加、からなる群から選択される。好ましくは、添加剤Aとして、及び添加剤Aとは異なる任意のさらなる添加剤として、架橋触媒が使用される。
【0095】
好ましくは、工程(5)、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの間に選択されたパラメータ(複数可)は、コーティング材料組成物の総固形分含量に寄与する少なくとも1つの構成成分、例えばコーティング材料組成物F1中の構成成分(i)及び(ii)、及び存在する場合に構成成分(v)及び/又は(vi)、好ましくは、コーティング材料組成物の総バインダー固形分含量に寄与する少なくとも1つの構成成分、例えばコーティング材料組成物F1中の構成成分(i)及び(ii)及び存在する場合に構成成分(v)の量の、部分的又は完全な交換、及び/又は低下又は増加に関連している。
【0096】
例えば、コーティング材料組成物F1中に存在するポリマーP1が、P1とは異なる別のポリマーと完全に交換される場合、この交換は1つのパラメータ変更であると見なされる。しかし、実際には、2つの変更工程を行うことが必要な場合がある。例えば、ポリマーP1が、50質量%の固形分含量を有する第1の水ベースの分散体中で使用され、そしてP1とは異なる他のポリマーが、75質量%の固形分含量を有する第2の水ベースの分散体中で提供される場合、F1の調製に使用された第1の分散体の量と比較して、より少ない量の第2の分散体を使用することが必要である。よって、ポリマーP1を他のポリマーと交換することを除き、全体として両方のコーティング材料組成物が同じ構成成分を同じ総量で含有するように、追加の水を加える必要がある。しかし、全体としては、1つのパラメータのみが変更されている(すなわち、ポリマーP1と他のポリマーとの交換)。
【0097】
好ましくは、工程(5)で提供され、そして任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に提供される少なくとも1つのさらなるコーティング材料組成物は、第1のコーティング材料組成物F1とは正確に1つ又は多くても2つのパラメータ、好ましくは正確に1つのパラメータが異なり、前記パラメータは、(a)ポリマーP1と、ポリマーP1とは異なり且つ少なくとも架橋剤CA1の官能基に対して反応性である架橋性官能基を有するさらなるポリマーとの、部分的又は完全な交換、(b)架橋剤CA1と、架橋剤CA1とは異なり且つ少なくともポリマーP1の架橋性官能基に対して反応性である官能基を有するさらなる架橋剤との、部分的又は完全な交換、及び(e)架橋触媒CLC1と、架橋触媒CLC1とは異なるさらなる架橋触媒との部分的又は完全な交換、及びさらに(f)架橋触媒CLC1及び/又はさらなるコーティング材料組成物中の(e)で定義したCLC1の部分的又は完全な交換に使用されたCLC1とは異なる架橋触媒の量の低下又は増加、からなる群から選択される。
【0098】
好ましくは、
第1のコーティング材料組成物F1中に構成成分(i)として存在するポリマーP1の架橋性官能基と、ポリマーP1とは異なり且つ工程(5)、及び任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に提供されたさらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する各ポリマーの架橋性官能基とは、同一であり、好ましくは各場合ともヒドロキシル基及び/又は酸基から選択され、より好ましくは各場合とも少なくとも部分的にヒドロキシル基を表し、そして
第1のコーティング材料組成物F1中に構成成分(ii)として存在する架橋剤CA1の官能基と、架橋剤CA1とは異なり且つ工程(5)、及び任意に、工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に提供されたさらなるコーティング材料組成物のうちの任意に存在する各架橋剤の官能基とは、同一であり、好ましくは各場合ともイミノ基、アルキロール基、エーテル化アルキロール基、及び任意にブロック化イソシアネート基から選択され、より好ましくは各場合とも少なくとも部分的なエーテル化アルキロール基を表す。
【0099】
任意の工程(6)
任意の工程(6)において、工程(5)で提供されたさらなるコーティング材料組成物を、基材の少なくとも1つの任意に事前に被覆された表面上に任意に適用して、基材の前記表面上に濡れたコーティングフィルムを形成する。この工程は、濡れたコーティングフィルムの特性を、工程(8)において測定することが意図されている場合に行われる。上記で述べた同じ基材は、上述した同じ従来の適用手段によって工程(6)で使用することができる。
【0100】
工程(6)による適用は、従来の手段、例えば浸漬、ブラシ、ドクターブレードで、又は好ましくはスプレーで、行うことができる。
【0101】
任意の工程(7)
任意に、本発明の方法は、工程(6)の後且つ工程(8)の前に実施される工程(7)をさらに含む。この工程は、部分的に乾燥したコーティングフィルムの特性を、工程(8)において測定することが意図されている場合に行われる。前記工程(7)において、工程(6)の後に得られた濡れたコーティングフィルムを任意に部分的に乾燥させて、部分的に乾燥したコーティングフィルムを基材の表面上に形成する。部分的な乾燥は、好ましくはフラッシュオフにより、好ましくは1~30分の期間、より好ましくは1.5~25分の期間、特に2~20分の期間、最も好ましくは3~15分の期間行う。好ましくは、工程(7)は、100℃を超えない温度、より好ましくは18~80℃の範囲の温度で行う。
【0102】
上記に概説した通り、本発明の意味における「フラッシュオフ」という用語は、部分的な乾燥を意味する。意図された硬化、及び特に完全な硬化は、フラッシュオフによって行われない。よって任意の工程(6)の後に得られた濡れたコーティングフィルムも、任意の工程(7)の後に得られた部分的に乾燥したコーティングフィルムも、硬化したコーティングフィルムを表すものではない。
【0103】
工程(8)
工程(8)では、工程(5)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(6)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(7)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性を測定する。少なくとも1つの特性は、工程(4)で測定されたものと同じ特性である。
【0104】
好ましくは、工程(8)で測定され、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの特性は、オンセット温度、収縮率、広がり、表面張力、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度、特に粒度分布に関する分散安定性、膨張係数及びゼータ電位からなる群から選択される少なくとも1つの特性である。
【0105】
これらの特性は、上記で既に定義及び/又は記載されており、そしてこれら特性の測定方法はすでに述べられている。
【0106】
好ましくは、工程(8)で測定され、そして任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの特性は、工程(5)で提供されたコーティング材料組成物、及び/又は工程(6)を行った場合は濡れたコーティングフィルム、及び/又は工程(7)を行った場合は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性と相関し、好ましくは、反応性、反応時間、特に架橋反応時間(両方ともISO11357:2018に準拠してDMA IVデルタ測定によって決定)、外観(DIN EN ISO13803:2015-02に準拠して決定)、色安定性及び特に貯蔵後のフロップ(DIN EN ISO/CIE11664-1:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-2:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-3:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-4:2020-03及びDIN EN ISO11664-5:2011-07に準拠して決定)、レベリング(DIN EN ISO13803:2015-02;ヘーズ試験に準拠して決定)、濡れ性(ISO19403-2:2017-06に準拠して決定)、付着性(DIN EN ISO4624:2016-08に準拠して決定)及び凝集性(DIN EN ISO2409:2019-09;クロスカット試験に準拠して決定)、及びさらに霧化性、貯蔵安定性及びリング循環ライン安定性からなる群から選択される特性の少なくとも1つと相関する。霧化性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性の測定方法は、既に上記で述べたものである。
【0107】
例えば、測定されたオンセット温度は、コーティング材料組成物の反応性、特にそこに含有される少なくとも構成成分(i)及び(ii)、及び任意に(v)の反応性と相関する。これは、コーティング材料組成物が濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムとして適用された場合も同様である。例えば、測定されたオフセット時間は、コーティング材料組成物、特にそこに含有される少なくとも構成成分(i)及び(ii)、及び任意に(v)の、特に所与の温度及び/又は温度プロファイルにおける、反応時間、特に架橋反応時間と相関する。これは、コーティング材料組成物が濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムとして適用された場合も同様である。例えば、収縮率は外観、フロップ、及びレベリングと相関する。例えば、表面張力は、濡れ性、凝集性及び付着性、及びさらに外観(特にオーバースプレーに対する安定性)とも相関する。例えば、広がりは外観(オーバースプレーに対する安定性)と相関する。例えば、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度は、レベリング、濡れ性、外観及び霧化性と相関する。例えば、特に粒度分布に関する分散安定性は、色安定性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性と相関する。例えば、膨張係数はレベリング及び外観と相関する。例えば、ゼータ電位は貯蔵安定性及び外観と相関する。
【0108】
任意の工程(9)
任意の工程(9)において、工程(5)~(8)が任意に少なくとも1回繰り返され、このようにして提供されたさらなるコーティング組成物の各々は、互いに異なり、そしてコーティング材料組成物F1とは異なる。繰り返しの回数は限定されず、例えば、1~1000回の範囲、又は1~100回の範囲の繰り返しとすることができる。
【0109】
工程(10)
工程(10)では、工程(4)及び(8)で測定された特性の結果、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの場合に測定された特性の結果が、好ましくは電子データベースに組み込まれる。好ましくは、工程(10)は、少なくとも1つのソフトウェアの支持により実行される。データベースは、本発明の方法を実行している間、常に更新することができる。
【0110】
工程(11)
工程(11)では、組み込み工程(10)により好ましくは電子データベースに存在する測定された特性の少なくとも1つが選択される。
【0111】
好ましくは、工程(11)で選択される少なくとも1つの特性は、オンセット温度及びオフセット時間、収縮率、広がり、表面張力、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度、特に粒度分布に関する分散安定性、膨張係数、及びゼータ電位からなる群から選択される少なくとも1つの特性である。
【0112】
これらの特性は、上記で既に定義及び/又は記載されており、そしてこれら特性の測定方法はすでに述べられている。
【0113】
好ましくは、工程(11)で選択される少なくとも1つの特性は、コーティング材料組成物、及び/又は濡れたコーティングフィルム、及び/又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性と相関し、好ましくは、反応性、反応時間、特に架橋反応時間(両方ともISO11357:2018に準拠してDMA IVデルタ測定によって決定)、外観(DIN EN ISO13803:2015-02に準拠して決定)、色安定性及び特に貯蔵後のフロップ(DIN EN ISO/CIE11664-1:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-2:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-3:2020-03、DIN EN ISO/CIE11664-4:2020-03及びDIN EN ISO11664-5:2011-07に準拠して決定)、レベリング(DIN EN ISO13803:2015-02;ヘーズ試験に準拠して決定)、濡れ性(ISO19403-2:2017-06に準拠して決定)、付着性(DIN EN ISO4624:2016-08に準拠して決定)及び凝集性(DIN EN ISO2409:2019-09;クロスカット試験に準拠して決定)、及びさらに霧化性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性からなる群から選択される特性の少なくとも1つと相関する。霧化性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性の測定方法は、既に上記で述べたものである。
【0114】
例えば、測定されたオンセット温度は、コーティング材料組成物の反応性、特にそこに含有される少なくとも構成成分(i)及び(ii)、及び任意に(v)の反応性と相関する。これは、コーティング材料組成物が濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムとして適用された場合も同様である。例えば、測定されたオフセット時間は、コーティング材料組成物、特にそこに含有される少なくとも構成成分(i)及び(ii)、及び任意に(v)の、特に所与の温度及び/又は温度プロファイルにおける、反応時間、特に架橋反応時間と相関する。これは、コーティング材料組成物が濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムとして適用された場合も同様である。例えば、収縮率は外観、フロップ、及びレベリングと相関する。例えば、表面張力は、濡れ性、凝集性及び付着性、及びさらに外観(特にオーバースプレーに対する安定性)とも相関する。例えば、広がりは外観(オーバースプレーに対する安定性)と相関する。例えば、粘度、特に高せん断粘度及び/又は低せん断粘度は、レベリング、濡れ性、外観及び霧化性と相関する。例えば、特に粒度分布に関する分散安定性は、色安定性、貯蔵安定性及び循環ライン安定性と相関する。例えば、膨張係数はレベリング及び外観と相関する。例えば、ゼータ電位は貯蔵安定性及び外観と相関する。
【0115】
工程(12)
工程(12)において、工程(4)及び(8)により、及び任意に工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に測定された少なくとも1つの選択された特性の結果を、評価し、そして互いに比較する。好ましくは、これは少なくとも1つのソフトウェアによって実行される。
【0116】
好ましくは、評価及び比較工程(12)及び工程(13)は、電子データベースに存在する、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性のあらゆる結果を利用する。
【0117】
工程(13)
工程(13)において、評価及び比較工程(12)から得られた情報を、第1のコーティング材料組成物F1、及び工程(5)の後に得られたさらなるコーティング材料組成物の各々、及び工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に任意に得られた任意の追加のコーティング材料組成物とは異なる、少なくとも1つの新規コーティング配合物を配合及び提供するために使用する。ここで、少なくとも1つの新規コーティング配合物それ自体、及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムは、工程(4)及び/又は工程(8)で定義した通り測定した場合に、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性の改善を示す。
【0118】
好ましくは、工程(13)で提供された少なくとも1つの新規コーティング配合物は、工程(5)で定義したパラメータのうち少なくとも1つが、第1のコーティング材料組成物F1とは異なり、そして工程(5)の後に得られたさらなるコーティング材料組成物のうちの任意とも異なり、そして工程(9)で定義した少なくとも1回の繰り返しの後に任意に得られた任意のコーティング材料組成物とも異なる。
【0119】
好ましくは、工程(13)で提供された少なくとも1つの新規コーティング配合物それ自体は、工程(4)及び/又は(8)で定義した通り測定した場合に、工程(11)で選択された少なくとも1つの特性、好ましくは上記で定義した少なくとも1つの特性の改善を示すだけでなく、コーティング配合物それ自体及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの少なくとも1つの特性の改善も示し、前記特性は、好ましくは上記で定義した特性であり、且つ前記少なくとも1つの特性と相関する。
【0120】
本発明による使用
本発明のさらなる主題は、自動車分野における新規コーティング配合物を開発し提供するための本発明の方法の使用であり、前記新規コーティング配合物は、好ましくはベースコート組成物、特に水性ベースコート組成物である。
【0121】
本発明の方法に関連して上記で記載したあらゆる好ましい実施形態は、前述の本発明の使用に関しても好ましい実施形態である。
【0122】
本発明のさらなる主題は、架橋性官能基を有するフィルム形成ポリマー(i)、及び/又は少なくとも前記ポリマーの前記架橋性官能基に対して反応性である官能基を有する架橋剤(ii)、及び/又は添加剤(v)、例えば(i)と(ii)との間の架橋反応を触媒する架橋触媒、及び/又は顔料及び/又はフィラー(vi)が、少なくとも構成成分(i)及び(ii)及び任意に(v)及び/又は(vi)を含有するコーティング材料組成物それ自体、及び/又はそれから得られた濡れた又は部分的に乾燥したコーティングフィルムの特性に及ぼす影響を調査するための、本発明による方法の使用である。本発明による使用は、好ましくは、これらの特性の改善を目的とする。
【0123】
本発明の方法に関連して上記で記載したあらゆる好ましい実施形態、及びさらに上記で定義した本発明による使用は、上記で述べた影響を調査するための、本発明による方法の使用に関しても好ましい実施形態である。
【0124】
方法
1. 不揮発性画分の決定
総固形分含量を含む固形分含量(不揮発分、固形画分)は、DIN EN ISO3251:2019-09を介して、110℃、60分間で測定した。
【0125】
2. DMA IVデルタ測定
コーティング組成物から得られた濡れたコーティングフィルムのDMA(動的機械分析)IVデルタ測定を用いて、濡れたフィルムのオンセット温度(反応性に対応するE’進行[℃])及びオフセット時間(反応時間に対応する外挿されたもの[分])を測定した。オンセット温度の測定は、周波数1Hz(振幅:0.2%)及び25℃~200℃(2℃/分)の範囲で行った。オフセット時間測定は、周波数1Hz(振幅:0.2%)、及び25℃~120℃(24℃/分)の範囲、及びさらに25℃~120℃(6℃/分)の範囲で63分間(140℃で等温)で行った。次のパラメータを測定した:オンセット温度(E’進行度からのネットワーク構造の外挿されたオンセット温度及びtanδ進行度からのネットワーク構造の外挿されたオンセット温度)、オフセット時間(線形適用におけるE’進行度からのネットワーク構造の外挿されたオフセット時間[分]、70分後及び20分後の貯蔵弾性率の比を決定した。測定はISO11357:2018に準拠して行った。
【実施例
【0126】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものとして解釈されるものでない。「Pbw」は質量部を意味する。他に定義されていない場合、「部」は「質量部」を意味する。
【0127】
1. コーティング組成物の調製
1.1 いくつかのコーティング組成物(I1、I2及びI3)を調製した。表1aに列挙する構成成分を、当該表に示す順序でディゾルバー中攪拌下で混合して、コーティング組成物を調製した。
【0128】
【表1】
【0129】
バインダー1は、ブタノールの代わりにブチルグリコールを使用したことを除き、DE4009858A1の実施例Dに開示されているように調製した、60質量%の固形分含量を有する水性ポリエステル分散体であった。バインダー2は、WO2017/097642A1の実施例ER1に開示されているように調製した、80質量%の固形分を有するポリエーテル分散体であった。バインダー3は、WO2017/121683A1の実施例ER1に開示されているように調製した、99.9質量%の固形分を有するポリエーテル分散体であった。Luwipal(登録商標)052は、市販のメラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤(BASF SE社)であり、固形分77質量%を有していた。ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート分散体を、追加のバインダーとして使用した。この分散体は、DE4437535A1の実施例Dに開示されているように調製し、40質量%の固形分を有していた。ブチルグリコールは、I1~I3の各々を調製するために使用したバインダー1~3が異なる固形分含量及び異なる量のブチルグリコールを含有するので、I1~I3の各々が同じバインダー固形分含量及び同じ溶媒組成となることを確実とするために単に添加したものであった。
【0130】
1.2 いくつかのさらなるコーティング組成物(I4、I5及びI6)を調製した。表1bに列挙する構成成分を、当該表に示す順序でディゾルバー中攪拌下で混合して、コーティング組成物を調製した。
【0131】
【表2】
【0132】
バインダー1、架橋剤及び追加のバインダーは、1.1項において上記で既に特定されている。触媒1は30.3質量%のイソ-プロパノール、10質量%の脱イオン水、13.6質量%のn-プロパノール、30.3質量%のパラ-トルエンスルホン酸及び15.8質量%の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの脱イオン水溶液(90質量%)の混合物であった。触媒2は、17.2pbwのパラ-トルエンスルホン酸、71.47pbwの水、及び10.95pbwのアンモニアの脱イオン水溶液(15質量%)の混合物であった。イソ-プロパノール、n-プロパノール及び/又は脱イオン水を加えて、I4~I6の各々が同じ溶媒組成を有することを確実にした。
【0133】
2. コーティング組成物の特性調査
2.1 反応性及び反応時間に及ぼすバインダーの影響
コーティング組成物I1~I3の調製に使用したバインダーがオンセット温度及びオフセット時間に及ぼす影響を、「方法」のセクションで上記で特定した方法によるDMA IVデルタ測定によって調査した。結果を表2aにまとめる。
【0134】
【表3】
【0135】
これらの結果は、異なるコーティング組成物I1~I3から得られた反応性(オンセット温度)及び反応時間、例えば架橋時間(オフセット時間)に、差が得られたことを示す。測定されたパラメータの違いは、I1~I3でバインダーとして使用された異なるポリマーに直接関連付けることができる。それは、使用されたコーティング組成物が、その他は同じ構成成分を含有するからである。
【0136】
これらの結果は、系I1~I3よりもはるかに複雑な新規コーティング材料配合物をオーダーメイドで提供するために、使用することができる。
【0137】
例えば、バインダー1及びバインダー2の両方を、例えばWO2017/097642A1(ここで開示されたポリエステルバインダー1を含有するベースコート実施例1対ポリエーテルバインダー2を含有するベースコート実施例E1)に開示されているように、水性ベースコート組成物の調製にそのまま使用することもできる。特に、バインダー1とバインダー2との交換は、改善としてオフセット時間の低下をもたらすことが見出された。コーティング材料組成物の特性としてのオフセット時間のこの改善は、I2対I1のDMA IVデルタ測定によって測定される、より短い反応時間と相関付けることができる。
【0138】
同様の観察が、バインダー1対バインダー3の場合にも当てはまる。バインダー1及びバインダー3の両方を、例えばWO2017/121683A1(ここで開示されたポリエステルバインダー1を含有するベースコート実施例V1対ポリエーテルバインダー3を含有するベースコート実施例E1)に開示されているように、水性ベースコート組成物の調製にそのまま使用することができる。バインダー1とバインダー3との交換は、改善としてオンセット温度及びオフセット時間の両方の低下をもたらすことが見出された。コーティング材料組成物の特性としてのオフセット時間及びコーティング材料組成物の特性としてのオンセット温度のこの改善は、I3対I1のDMA IVデルタ測定によって測定される、より短い反応時間及びより高い反応性と相関付けることができる。
【0139】
2.2 上述の構成成分が反応性及び反応時間に及ぼす影響を調べるだけでなく、構成成分のさらなる影響を求めることもできる。この目的のために、コーティング組成物I1、I2及びI3をそれぞれ同じ高せん断粘度(1000s-1のせん断速度で100mPas)に調整した。脱イオン水の必要量及び得られた固形分含量を次の表2bに示す。
【0140】
【表4】
【0141】
上記で得られた結果は、特性をさらに最適化するために直接使用することもできる。
【0142】
例えば、表2bに示すように、これらの特性を使用して、所望され且つ必要とされる効果に応じて、コーティング配合物の固形分含量をある方向又は別の方向にシフトさせることができる。
【0143】
2.3 反応性及び反応時間に及ぼす触媒の影響
コーティング組成物I4~I6の調製用の触媒の影響を、「方法」のセクションで上記で特定した方法によるDMA IVデルタ測定によって調査した。結果を表2cにまとめる。
【0144】
【表5】
【0145】
これらの結果は、コーティング組成物I4~I6の反応性(より低いオンセット温度)及び反応時間(より短い架橋時間)の違いにより、触媒の有無が検出できることを示している。
【0146】
これらの結果は、系I4~I6よりもはるかに複雑な新規コーティング材料配合物をオーダーメイドで提供するために使用することができる。例えば、これらの結果は、例えば、WO2018/036855A1に開示されているように、ベースコートとして使用することができ、且つ低温、特にI4を使用する場合に必要とされるよりも低い温度で、及び/又はより短い時間で高温で、特に可能な限り低い硬化温度で、及び/又はより短い時間で高温で、硬化を行うことを可能とする、新規コーティング材料配合物を提供するために使用することができる。