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  • 特許-ビトリファイドボンド超砥粒ホイール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ビトリファイドボンド超砥粒ホイール
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/18 20060101AFI20240322BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240322BHJP
   B24D 3/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B24D3/18
B24D3/00 320B
B24D3/02 310C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023554799
(86)(22)【出願日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2023010851
(87)【国際公開番号】W WO2023182264
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2022048144
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佑介
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-062755(JP,A)
【文献】特開2014-061585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超砥粒層を有するビトリファイドボンド超砥粒ホイールであって、
前記超砥粒層は、超砥粒、気孔およびビトリファイドボンドを含み、
前記超砥粒層において、30μm以上の面積を有する粗大なビトリファイドボンド粒が存在し、前記粗大なビトリファイドボンド粒の面積率が10%以下であ
前記超砥粒層は焼結体であり、前記焼結体から切り出したサンプルの1箇所にクロスポリッシャー加工とカーボンコーティングを施し、クロスポリッシャー加工された面においてEDXでSi元素を色付けしてSEMの反射電子像とEDX画像からSiを含む領域と含まない領域の分布状況および各々の領域の大きさに関する数値データを得て、散点状に存在する複数のSiを含む領域の各々が前記ビトリファイドボンド粒である、ビトリファイドボンド超砥粒ホイール。
【請求項2】
前記超砥粒層はフィラーをさらに含み、5体積%以上20体積%以下の前記ビトリファイドボンド、および50体積%以上70体積%以下の前記気孔を含み、残部が前記超砥粒と前記フィラーである、請求項1に記載のビトリファイドボンド超砥粒ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールに関する。本出願は、2022年3月24日に出願した日本特許出願である特願2022-048144号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、たとえば特開2014-61585号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-61585号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、超砥粒層を有し、前記超砥粒層は、超砥粒、気孔およびビトリファイドボンドを含み、前記超砥粒層において、30μm以上の面積を有する粗大なビトリファイドボンド粒の面積率が10%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールの超砥粒層6の切断面の一部分を拡大して示す図である。
図2図2は、実施例の製造工程で得られた焼結体の模式図である。
図3図3は、ビトリファイドボンドを構成するSiに色づけされたサンプルの1視野(80μm×62μm)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
従来のビトリファイド超砥粒ホイールは摩耗しやすいという問題があった。
【0007】
従来のビトリファイド超砥粒ホイールにおいては、摩耗率が大きいという問題があった。
【0008】
本発明者は、摩耗率を低下させるために鋭意検討した結果、ビトリファイド超砥粒ホイールを構成する超砥粒層において、面積が30μm以上の粗大なビトリファイドボンド粒の面積とビトリファイド超砥粒ホイールの摩耗率との間に相関が見られることを見出した。
【0009】
このような知見によりなされた本開示は、超砥粒層を有するビトリファイドボンド超砥粒ホイールであって、前記超砥粒層は、超砥粒、気孔およびビトリファイドボンドを含み、これらが前記超砥粒層において分散しており、前記超砥粒層において、30μm以上の面積を有する粗大な前記ビトリファイドボンド粒の面積率が10%以下である。
【0010】
このように構成されたビトリファイドボンド超砥粒ホイールにおいては、粗大なビトリファイドボンド粒の面積が小さいので、粗大なビトリファイドボンド粒を基点とした摩耗を防止でき、摩耗率を小さくすることができる。
【0011】
図1は、本開示に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールの超砥粒層6の切断面の一部分を拡大して示す図である。図1で示すように、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、超砥粒3をビトリファイドボンド2によって結合した超砥粒層6を有するビトリファイドボンド超砥粒ホイールであって、超砥粒層6は、気孔5、ビトリファイドボンド2、フィラーを構成するAl4を含む。気孔5が50~70体積%であることが好ましい。ビトリファイドボンド2が5~20体積%であることが好ましい。フィラーを構成するAl4が5~30体積%であることが好ましい。
【0012】
なお、超砥粒層6は、気孔5が55~70容量%と、ビトリファイドボンド2が5~15容量%と、Al4が10~30容量%を含むことがより好ましい。Al4を含まなくてもよい。
【0013】
さらに、超砥粒層6は、気孔5が55~70容量%と、ビトリファイドボンド2が5~15容量%と、Al4が10~25容量%を含むことが最も好ましい。
【0014】
超砥粒3、気孔5、ビトリファイドボンド2、Al4の容量%を広範囲に変化させることができるので、工作物の種類、研削条件、および研削装置などの種類に最も適合するホイールの仕様を選択することができる。
【0015】
特に、カップ形ホイール(例えば、JIS B4131で規定されている、タイプ6A2など)によって、ロータリーテーブル方式の縦軸平面研削装置で工作物を平面研削加工する際には、超砥粒層6と工作物の接触面積が大きくなっても良好な切れ味を長期間に渡って持続させることが可能なホイールの仕様を選択することができる。
【0016】
本開示には、公知の組成のビトリファイドボンドを適用することができる。例えば、以下の組成のビトリファイドボンドを適用することが可能である。
【0017】
SiO:30~50質量%、Al:2~10質量%、B:40~60質量%、RO(ROは、CaO、MgO、およびBaOより選ばれる1種類以上の酸化物):1~10質量%、RO(ROは、LiO、NaOおよびKOより選ばれる1種類以上の酸化物):2~5質量%。
【0018】
なお、本開示において上記以外のビトリファイドボンドであっても適用することができる。
【0019】
Al4は、たとえば、α-Alである。α-Alを適用することにより、シリコン、サファイヤ、単結晶SiC、GaNなどのウエハを高精度かつ高能率に研削加工することができる。
【0020】
α-Alを超砥粒層6に添加することで、超砥粒層6の機械的強度を低下させることなく、超砥粒の集中度を低くすることができる。この結果、難削な材質のウエハであっても、研削加工中において研削抵抗を下げることが可能となり、安定した切れ味を長時間に渡って持続させることができる。
【0021】
Al4の平均粒径は、超砥粒3の平均粒径の、たとえば、200%以下である。
(実施例)
提供するビトリファイドボンド超砥粒ホイールはガラスの分散性の良好な超砥粒層を有している。これを製造するために、まず、ダイヤモンド砥粒、ガラスを含むビトリファイドボンド、気孔形成材、フィラー、バインダー、セラミックスボールを様々な組成で配合して混合粉末を得た。混合粉末を一定の回転数(15-150rpm)で、試料番号1および2では10時間、試料番号3から5では120時間以上混合し、乾燥、粉砕して所定の造粒粉を得た。次に、チップ状の成形体にプレスで成形し、大気雰囲気において脱バインダー処理を行い、引き続いて大気雰囲気において温度750℃で焼成を行った。これにより、様々な組成の超砥粒層の焼結体を得た。これらの焼結体の組成を分析した結果を以下に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
各成分の特定方法は、燃焼試験とICP発光分光分析による方法である。焼成体を粉末状に破砕し、1000℃で燃焼する。燃焼前後の質量減少量をダイヤモンド砥粒の減少量として換算する。残った粉末を塩基性溶液に溶解後、ICP発光分光分析により得られたAl、Si等の濃度をAl、SiO等の濃度とし、質量を算出する。得られた各質量から質量%、既知の密度で算出される体積から体積%が得られる。上記の方法により焼結体の組成を特定する。
【0024】
ビトリファイドボンドの主成分はSiOである。
図2は、実施例の製造工程で得られた焼結体の模式図である。試料番号1から5に関して、焼結体100の前面101、上面102および後面103の各々から7mm×5mm×3mmの寸法のサンプルを切り出した。各々のサンプルの1箇所にCP(クロスセクションポリッシャー)加工とカーボンコーティングを施した。CP加工装置は日本電子製CROSSSECTION POLISHER IB-19530である。
【0025】
各々のサンプルのCP加工された面に以下の測定条件でSEM(Scanning Electron Microscope)測定とEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)測定を実施した。これは、EDXでSi元素を色付けし、組織内のガラスを可視化するものである。SEM装置は、日立ハイテクノロジーズ製卓上顕微鏡MiniscopeTM3030である。EDX装置はBRUKER製エネルギー分散型X線分析装置Quantax70である。SEM測定条件は、加速電圧15kV、測定倍率は2000倍である。EDX測定条件は、加速電圧15kV、撮影時間200秒である。
【0026】
これにより、前面101、上面102、後面103の3つの各々のサンプルについてSiに色づけされた8枚の画像(80μm×62μm)が得られた。
【0027】
得られた24枚の画像を画像解析ソフト(システムインフロンティア製MultiImageTool)に取り込み、表2のコマンドで自動2値化した。
【0028】
【表2】
【0029】
これにより、Siを含む領域(ガラス)と含まない領域の分布状況および各々の領域の大きさに関する数値データが得られた。
【0030】
ガラスは、視野において散点状に複数存在している。EDXでマッピングされた領域をガラス面積とする。このガラス面積は散点状に存在する複数のガラス(ビトリファイドボンド粒)の面積の合計である。さらに、1つのガラスにおいて30μm以上の面積を有するガラスを粗大なビトリファイドボンド粒として、その合計の面積を求める。
【0031】
MicrosoftExcelを用いて以下の計算式で粗大ガラス面積率(30μm以上の面積を持つガラスの割合)を算出した。
粗大ガラス面積率=(A/B)×100
A=24枚の画像における30μm以上の面積を持つビトリファイドボンド粒の面積の総和
B=24枚の画像のビトリファイドボンド粒の面積の総和
3つのサンプルにおいて粗大ガラス面積率を求め、平均値を求めた。さらに各試料のビッカーズ硬度を求めた。その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
図3は、ビトリファイドボンドを構成するSiに色づけされたサンプルの1視野(80μm×62μm)の写真である。超砥粒層の視野において、領域201が面積30μm以上の粗大なビトリファイドボンド粒である。空孔202は、写真において黒く示される。この視野200においては1つの粗大ガラスが観測されている。図において、粗大でないビトリファイドボンド粒の領域も特定されている。粗大なビトリファイドボンド粒を構成する領域201には、図1で示すビトリファイドボンド2のほかに、超砥粒3およびAl4が含まれている。
【0034】
焼結体のチップは、接着剤を用いてアルミニウム合金製の台金に接着され、その後、在来砥石を用いてツルーイング・ドレッシングを行い、試料番号1から5の各々についてビトリファイドボンドダイヤモンドホイールを完成させた。
【0035】
ホイールのサイズは外径250mm、超砥粒層の幅は3mmのセグメント型カップホイール(JIS B4131 6A7S型)である。
【0036】
縦軸ロータリー平面研削盤を用いて、ホイールをドレスした後、直径4インチ(10.16cm)のSiCウェーハを被削材とし、8枚16面を連続で加工した。また、加工中の研削抵抗(負荷電流及び法線抵抗)と砥粒層の摩耗率を計測し、連続加工時の推移または平均値で評価した。
【0037】
研削盤:東京精密製HRG300
ワーク:4インチSiC(結晶面方位の(0001)面を研削した後(000-1)面を研削する)
主軸回転速度(min-1):2000
ワーク回転速度(min-1):301
送り速度(μm/秒):0.4
取り代(μm):10
Spark Out(研削加工の最後に切込みがない状態で砥石を回転させる時間)(秒):10
摩耗率は、以下の式において計算した。
【0038】
摩耗率=超砥粒層の高さの変化量/ワークの厚みの変化量×100(%)
これらの結果を表3に示す。
【0039】
この結果から、粗大ガラスの面積率は10%以下である必要があることが確認された。
粗大ガラスの面積率が10%以下であれば、摩耗率が極めて低くなり、摩耗しにくい寿命の長いビトリファイドボンド超砥粒ホイールとなることが分かる。
【0040】
さらに、試料番号3-5においては負荷電流値の値が許容範囲内にあるため、切れ味が悪化していないことが分かる。
【0041】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 ビトリファイドボンド超砥粒ホイール、2 ビトリファイドボンド、3 超砥粒、4 Al、5 気孔、6 超砥粒層、100 焼結体、101 前面、102 上面、103 後面、200 視野、201 領域、202 空孔。
図1
図2
図3