(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】C-MET結合剤
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240325BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240325BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240325BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240325BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240325BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240325BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240325BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240325BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240325BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240325BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240325BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/68
A61P9/10
A61P11/06
A61P19/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2020543219
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2019056178
(87)【国際公開番号】W WO2019175186
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】523473165
【氏名又は名称】センテッサ ファーマシューティカルズ (ユーケー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【氏名又は名称】長谷部 真久
(72)【発明者】
【氏名】フィンレー,ウィリアム ジェームズ ジョナサン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519335(JP,A)
【文献】特表2012-510280(JP,A)
【文献】特表2012-509881(JP,A)
【文献】特開2017-043622(JP,A)
【文献】特表2017-507962(JP,A)
【文献】特表2011-501945(JP,A)
【文献】特表2012-530514(JP,A)
【文献】特表2014-533247(JP,A)
【文献】特表2015-511629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
UniProt/GeneSeq
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗C-MET抗体又はその抗原結合部分であって、当該抗体又はその抗原結合部分は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含有し、
(a)VH領域のアミノ酸配列が、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、及びQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSVSSYAQSYLH(配列番号57)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、及びQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含む、
(b)VH領域のアミノ酸配列が、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、及びQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、及びQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含む、又は
(c)VH領域のアミノ酸配列が、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、及びQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、及びQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含む、
抗C-MET抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
(a)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号2を含む、
(b)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号3を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号4を含む、又は
(c)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号5を含み、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号6を含む、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項1又は2に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項4】
前記VH領域、前記VL領域、又は前記VH領域と前記VL領域との両方が、1つ又は複数のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項5】
前記VH領域、前記VL領域、又は前記VH領域と前記VL領域との両方が、前記CDRが挿入されたヒト可変領域フレームワークスキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項6】
前記VH領域が、前記HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列が挿入されたIGHV1-46ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項7】
前記VL領域が、前記LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列が挿入されたIGKV3-20ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1又は6に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体又は抗原結合部分が、免疫グロブリン定常領域を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項9】
前記免疫グロブリン定常領域が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgYである、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項10】
前記免疫グロブリン定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2である、請求項9に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項11】
前記免疫グロブリン定常領域が、免疫学的に不活性である、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項12】
前記免疫グロブリン定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、L234A、L235A及びG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域、又は野生型ヒトIgG2定常領域である、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項13】
前記免疫グロブリン定常領域が、配列番号11~17のいずれか1つを含有する、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項14】
前記抗体又は抗原結合部分が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又はbis-scFvである、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗体又は抗原結合部分がモノクローナルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項16】
前記抗体又は抗原結合部分が、四量体、四価、又は多特異性である、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項17】
前記抗体又は抗原結合部分が、第一の抗原及び第二の抗原に特異的に結合する二特異性抗体又は二特異性抗原結合部分であり、前記第一の抗原がC-METであり、前記第二の抗原がC-METではない、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項18】
前記抗体又は抗原結合部分が、(a)ヒトC-METに特異的に結合する、又は(b)ヒトC-MET及びカニクイザルC-METに特異的に結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項19】
前記抗体又は抗原結合部分がヒトIgG4形式であり、
前記抗体又は抗原結合部分が、
(a)77℃から81℃の溶融温度(Tm)を有する、及び/又は
(b)p
H7.4を超える等電点(pI)を有する、
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項20】
治療剤に結合された請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分を含有する免疫結合体。
【請求項21】
前記治療剤が、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解性酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、又はアポトーシス促進剤である、請求項20に記載の免疫結合体。
【請求項22】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、又は請求項20又は21に記載の免疫結合体と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と、を含有する、医薬組成物。
【請求項23】
核酸分子であって、
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分のVH領域及びVL領域の両方のアミノ酸配列をコードする、核酸分子。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸分子を含有する発現ベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸分子、又は請求項24に記載の発現ベクターを含有する組換え宿主細胞。
【請求項26】
抗C-MET抗体又はその抗原結合部分を作製する方法であって、
前記核酸分子が発現される条件下で、請求項2
5に記載の組換え宿主細胞を培養し、それにより抗体又は抗原結合部分を作製すること、及び
当該宿主細胞又は培養物から、前記抗体又は抗原結合部分を単離すること、
を含む、方法。
【請求項27】
対象において、免疫反応を強化するために用いられる、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、請求項20又は21に記載の免疫結合体、又は請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項28】
癌、自己免疫性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、又は線維症の治療における使用のための、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、請求項20又は21に記載の免疫結合体、又は請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記癌が、消化管間質癌(GIST)、膵臓癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳腫瘍又は中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌又は子宮内膜癌、口腔又は咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆管癌、小腸癌又は虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、又は血液組織の癌である、請求項28に記載の使用のための抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項30】
前記自己免疫性疾患又は前記炎症性疾患が、関節炎、喘息、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス(lupus)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、又は強直性脊椎炎である、請求項28に記載の使用のための抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項31】
前記心血管疾患が、冠動脈心疾患又はアテローム性動脈硬化症である、請求項28に記載の使用のための抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項32】
前記線維症が、心筋梗塞、狭心症、変形性関節症、肺線維症、嚢胞性線維症、気管支炎又は喘息である、請求項28に記載の使用のための抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項33】
医薬品としての使用のための、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、請求項20又は21に記載の免疫結合体、又は請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月16日に出願された英国特許出願第1816841.9号明細書、2018年7月21日に出願された英国特許出願第1812487.5号明細書、および2018年3月12日に出願された英国特許出願第1803892.7号明細書の利益を主張するものであり、それら各開示内容は、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されるテキストファイルに関する説明
本明細書とともに電子的に提出される以下のテキストファイルの内容は、その全体で参照により本明細書に援用される:コンピューター読み取り可能な形式の配列表のコピー(ファイルの名称:ULSL_001_03WO_SeqList_ST25.txt、データ記録日:2019年3月11日、ファイルサイズは124キロバイト)。
【0003】
本発明は、C-MET(MET、MET癌原遺伝子、受容体型チロシンキナーゼ、AUTS9、HGFR、RCCP2、DFNB97、OSFDとしても知られる)に特異的に結合する抗体分子およびその医療用途に関する。
【背景技術】
【0004】
C-MET(MET、MET癌原遺伝子、受容体型チロシンキナーゼ、AUTS9、HGFR、RCCP2、DFNB97、OSFDとしても知られる)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属して可溶性因子HGF(肝細胞増殖因子)に結合する膜貫通型タンパク質であり、これは主として、間葉細胞で産生される。C-METは、その後に翻訳後に切断して、ジスルフィド結合して成熟受容体を形成するαサブユニットおよびβサブユニットを産生する一次単鎖前駆体タンパク質として発現する単回通過受容体型チロシンキナーゼである。C-METは、主に上皮細胞で発現し、また例えば内皮細胞、ニューロン、肝細胞、造血細胞、メラノサイト、および新生児心筋細胞等である複数の他の細胞型で観察されてきた。HGFに結合すると、この受容体は二量体化して、そのチロシンキナーゼ活性を活性化させる。このキナーゼ活性化により、シグナル伝達分子のさらに下流の活性化が生じる。それら分子は、細胞生存、増殖および分化において役割を果たすことが知られている。
【0005】
C-METの遺伝子の増幅および/または過剰発現は、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌、膵癌、ブドウ膜黒色腫、および乳頭状腎細胞癌等であるいくつかの重要なタイプの癌の進行と強く関連する。前臨床および臨床試験の結果から、C-MET/HGFシグナル伝達を遮断することで複数の癌において明白な治療利益が得られることが示唆されたが、この結果は主にC-METキナーゼ機能の低分子阻害剤を使用して得られたものである。チロシンキナーゼ阻害剤での治療後には抵抗性変異体が広く発生し、そのため治療有効性が失われてしまう。受容体が二量体化する能力を遮断することでC-METシグナル伝達を拮抗する治療用抗体は、以下の2つのメカニズムを介して抗腫瘍効果を介在する可能性がある:1.受容体を、非活性な単量体型へと固定させることにより、METシグナル伝達経路を強力に阻害する。2.抗体エフェクター-機能介在性の免疫細胞の会合。
【0006】
現在承認されている抗体治療剤の大部分は、免疫化されたげっ歯類に由来する。そうした抗体の多くが、マウスの相補性決定領域(CDR)のヒトv-遺伝子フレームワーク配列への「移植」を介した、「ヒト化」として知られるプロセスを経ている(Nelson et al.,2010,Nat Rev Drug Discov 9:767-774を参照のこと)。このプロセスは多くの場合、不正確であり、得られた抗体の標的結合アフィニティの低下が生じる。元の抗体の結合アフィニティに戻すために、通常、移植されたv-ドメインの可変ドメインフレームワーク中の重要な位置にマウス残基が導入される(「復帰突然変異(back-mutation)」としても知られる)。
【0007】
CDR移植および復帰突然変異によりヒト化された抗体は臨床において、完全マウスv-ドメインによるものと比較して低い免疫反応率を誘導することが示されているが、この基礎的な移植法を使用してヒト化された抗体は、物理的に不安定である可能性があり、移植CDRループ内に免疫原性モチーフがいまだ保存されていることから、いまだ重大な臨床開発リスクを負っているままである。例えば抗C-MET等である抗体は、それらの作用機序の一部として免疫エフェクター機能を潜在的にもつものであって、C-MET+標的細胞の食作用を促進し得るために免疫原性のリスクが特に高く、これは標的細胞に加えて抗体の抗原プロセシングを生じる。タンパク質の免疫原性に関する動物実験は、ヒトでの免疫反応の予測とはならないことが多く、治療用途の抗体操作は、予測されるヒトT細胞エピトープ含量、非ヒト生殖細胞系列アミノ酸含量、および精製タンパク質が凝集してしまう可能性を最小化することに焦点が置かれている。
【0008】
ゆえに理想的なヒト化アンタゴニスト性抗C-MET抗体は、v-ドメイン中に、詳細に特徴解析されたヒト生殖細胞系列配列のフレームワークとCDRの両方に存在する残基と同一の残基を可能な限り多く有している抗体である。潜在的患者の最大数において高度に発現される、高い安定性の生殖細胞系列との同一性を高レベルにすることで、臨床で望ましくない免疫原性を有する治療用抗体のリスクが最小化され、または異常に高い製造「原価」が最小化される。
【0009】
Townsendら(2015;PNAS 112:15354-15359)は、抗体の作製方法を記載しており、当該方法においてラット抗体、ウサギ抗体およびマウス抗体に由来するCDRは、好ましいヒトフレームワーク内に移植され、次いで「拡張バイナリー置換(augmented binary substitution)」と呼ばれるヒト生殖細胞系列化(human germ-lining)方法が行われる。この方法は、元の抗体のパラトープにおいては基礎的な柔軟性を示したが、正確性の高い抗体-抗原の共結晶構造データが無い場合には、任意の所与の抗体のCDRループ中のどの個々の残基がどの組み合わせでヒト生殖細胞系列に転換され得るかを確実に予測することは不可能なままである。さらにTownsendらの研究では、ヒト生殖細胞系列中に存在する残基を超えて、開発リスクモチーフの除去が有益となる可能性がある位置に突然変異誘導を加えることには対処していない。これは技術の限界であり、この限界によってプロセスが本質的に非効率的となり、開始抗体配列を改変する余剰な段階が必要となる。さらに現時点では、個々のv-ドメインのタンパク質配列で離れた位置にある改変のいずれが、リスクモチーフを排除しながら、抗原結合のアフィニティと特異性の維持を促進し得るのかは、たとえパートナーv-ドメイン上であったとしても正確に予測することはできない。
【0010】
このようにCDRの生殖細胞系列化および開発クオリティの最適化は複雑で多因子的な課題であるため、本例においては以下をはじめとする複合的な分子の機能特性が維持されることが好ましい:標的結合特異性、ヒトおよび実験動物種(例えばカニクイザルとして知られるcynomolgus monkey、すなわちMacaca fascicularis)の両方に由来するC-METに対するアフィニティ、v-ドメインの生物物理的安定性、ならびに/または研究、臨床および商業で使用されるタンパク質発現プラットフォームからのIgG収率。抗体操作実験から、重要なCDR中のたった1つの残基位置での突然変異であっても、これら望ましい分子特性のすべてに対し劇的な影響を与え得ることが示されている。
【0011】
国際公開第2011151412A1号は、「224G11」と名づけられたアンタゴニスト性マウス抗C-MET IgG分子、ならびにヒト化型(h224G11)の調製を記載している。その224G11のヒト化型は、古典的なヒト化技術、すなわちKabat規定のマウスCDRをヒトの重鎖および軽鎖のフレームワーク配列に移植することにより作製されており、ヒトフレームワーク残基の一部は、対応する位置の224G11マウス残基に復帰突然変異されている可能性がある。上述の理由によって、国際公開第2011151412A1号に記載される224G11のヒト化型は理想的ではない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、多くの抗C-MET抗体、およびその医療用途を提供する。
【0013】
本発明の1つの態様によると、ヒトC-METに、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分が提供され、当該抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-Iまたは任意のアミノ酸(例えば、T等)-F-T-Aまたは任意のアミノ酸(例えば、S等)-Y-Yまたは任意のアミノ酸(例えば、A、SまたはT等)-M-H(配列番号22)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:M-G-Wまたは任意のアミノ酸(例えば、I等)-I-Kまたは任意のアミノ酸(例えば、N)-P-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、S等)-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、G)-G-Lまたは任意のアミノ酸(例えば、S)-Aまたは任意のアミノ酸(例えば、T)-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、S)-Y-A-Q-K-F-Q-G(配列番号23)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Sまたは任意のアミノ酸(例えば、A/E/H/M/Q/T/V等)-E-I-T-T-Eまたは任意のアミノ酸(例えば、D等)-Fまたは任意のアミノ酸(例えば、L等)-D-Yまたは任意のアミノ酸(例えば、A/E/F/I/K/L/M/Q/S/V/W等)(配列番号24)と、を伴う重鎖可変領域を含む。
【0014】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR1は、配列GYIFTAYTMH(配列番号25、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR2は、配列MGWIKPNNGLANYAQKFQG(配列番号26、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR3は、配列SEITTEFDY(配列番号27、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のHCDR3)を除外してもよい。
【0015】
抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR1:R-A-S-Q-S-V-Dまたは任意のアミノ酸(例えば、SまたはE)-S-Y-A-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、Q)-S-Fまたは任意のアミノ酸(例えば、Y)-L-Hまたは任意のアミノ酸(例えば、A)(配列番号28)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR2:Rまたは任意のアミノ酸(例えば、A)-Aまたは任意のアミノ酸(例えば、G)-S-Tまたは任意のアミノ酸(例えば、S)-R-E-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、T)(配列番号29)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR3:Q-Q-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、Y)-Kまたは任意のアミノ酸(例えば、G)-Eまたは任意のアミノ酸(例えば、D、S)-Dまたは任意のアミノ酸(例えば、S、E、R)-P-L-T(配列番号30)と、を伴う軽鎖可変領域をさらに含み得る。
【0016】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR1は、配列KSSESVDSYANSFLH(配列番号31、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のLCDR1)を除外してもよく、および/または、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR2は、配列RASTRES(配列番号32、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のLCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR3は、配列QQSKEDPLT(配列番号33、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のLCDR3)を除外してもよい。
【0017】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)HCDR1は、アミノ酸配列G-Y-X1-F-T-X2-Y-X3-M-Hを含み、式中、X1はIまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はAまたは任意の他のアミノ酸であり、またX3はYまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号22)、
(b)HCDR2は、M-G-X1-I-X2-P-X3-X4-G-X5-X6-X7-Y-A-Q-K-F-Q-Gを含み、式中、X1はWまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はKまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はLまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はAまたは任意の他のアミノ酸であり、またX7はNまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号23)、
(c)HCDR3は、X1-E-I-T-T-X2-X3-D-X4を含み、式中、X1はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はEまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はFまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はYまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号24)、
(d)LCDR1は、R-A-S-Q-S-V-X1-S-Y-A-X2-S-X3-L-X4を含み、式中、X1はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はFまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はHまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号28)、
(e)LCDR2は、X1-X2-S-X3-R-E-X4を含み、式中、X1はRまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はAまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はTまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はSまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号29)、および
(f)LCDR3は、Q-Q-X1-X2-X3-X4-P-L-Tを含み、式中、X1はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はKまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はEまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はDまたは任意の他のアミノ酸である(配列番号30)。
【0018】
一部の態様において、本発明は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を提供するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYAQSYLH(配列番号57)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPSGGLANYAQKFQG(配列番号54)のHCDR2、およびSEITTDFDY(配列番号55)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVDSYANSYLH(配列番号51)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号40)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYAMH(配列番号41)のHCDR1、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号40)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(配列番号42)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(i)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYSMH(配列番号43)のHCDR1、MGWINPSNGLANYAQKFQG(配列番号44)のHCDR2、およびQEITTEFDI(配列番号45)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVESYAQSYLH(配列番号46)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSDPLT(配列番号76)のLCDR3を含み、
(j)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYTMH(配列番号48)のHCDR1、MGWINPNGGLASYAQKFQG(配列番号49)のHCDR2、およびSEITTEQDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVDSYANSYLH(配列番号51)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、または、
(k)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYTMH(配列番号48)のHCDR1、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(配列番号42)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVESYANSYLH(配列番号52)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQYGSEPLT(配列番号53)のLCDR3を含む。
【0019】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
当該VH領域のアミノ酸配列は、
(a)配列番号34、配列番号41、配列番号43、または配列番号48のHCDR1と、
(b)配列番号35、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号49、または配列番号54のHCDR2と、
(c)配列番号36、配列番号45、配列番号50、または配列番号55のHCDR3とを含有し、および
上記VL領域のアミノ酸配列は、
(a’)配列番号37、配列番号46、配列番号51、配列番号52、または配列番号57のLCDR1と、
(b’)配列番号38または配列番号56のLCDR2と、
(c’)配列番号39、配列番号47、配列番号53、または配列番号76のLCDR3とを含有する。
【0020】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含み、または、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含む。
【0021】
さらに本発明により、治療剤に連結された、融合された、または結合された、本明細書に規定される抗体分子またはその抗原結合部分を含有する免疫結合体が提供される。
【0022】
別の態様において、本発明は、本明細書に規定される抗体分子またはその抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。
【0023】
さらに、本発明の核酸分子を含有するベクターが提供される。
【0024】
また、本明細書に規定される本発明の核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も提供される。
【0025】
さらなる態様において、抗C-MET抗体および/またはその抗原結合部分を作製する方法も提供され、当該方法は、当該抗体および/もしくはその抗原結合部分の発現ならびに/または産生が生じる条件下で、本発明の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞または培養物から、当該抗体および/またはその抗原結合部分を単離することと、を含む。
【0026】
本発明の別の態様において、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを含有する医薬組成物が提供される。
【0027】
さらに、対象において免疫反応を強化する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0028】
さらなる態様において、対象において癌を治療または予防する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0029】
さらに、医薬品としての使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。本発明はさらに、癌の治療における使用のための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクター、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物を提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は、例えば抗癌剤などの第二の治療剤との併用において、別個に使用する、連続して使用する、または同時に使用するための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または免疫結合体、または核酸分子、または使用のためのベクター、または治療方法を提供する。
【0031】
さらなる態様において、癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の使用、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の使用、または本明細書に規定される本発明のベクターの使用、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0032】
本発明はさらに、対象において自己免疫性疾患もしくは炎症性疾患を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0033】
例えば、自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節炎、喘息、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス(lupus)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、または強直性脊椎炎であり得る。
【0034】
また、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0035】
さらに、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0036】
本発明はさらに、対象において心血管疾患もしくは線維症を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0037】
また、心血管疾患または線維症の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0038】
さらに、自己免疫性疾患、炎症性疾患、または線維症の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0039】
本発明の任意の態様における心血管疾患は、例えば冠動脈心疾患またはアテローム性動脈硬化症であってもよい。
【0040】
本発明の任意の態様における線維症は、心筋梗塞、狭心症、変形性関節症、肺線維症、嚢胞性線維症、気管支炎および喘息からなる群から選択されてもよい。
【0041】
本発明はさらに、ヒトC-METに特異的に結合し、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する方法を提供するものであり、当該方法は、
(1)非ヒト源由来の抗C-MET CDRをヒトv-ドメインフレームワーク内に移植し、ヒト化抗C-MET抗体分子またはその抗原結合部分を作製する工程、
(2)CDR中に1つまたは複数の変異を含有する当該ヒト化抗C-MET抗体分子またはその抗原結合部分のクローンのファージライブラリーを作製する工程、
(3)ヒトC-METへの結合、および任意でカニクイザルC-METへの結合についても当該ファージライブラリーをスクリーニングする工程、
(4)スクリーニングする工程(3)から、ヒトC-METに特異的に結合する、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合するクローンを選択する工程、ならびに
(5)工程(4)から選択された、ヒトC-METに特異的に結合し、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する工程、を含む。
【0042】
当該方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づき、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDR中の特定の位置でのさらなる探索的な突然変異誘導に基づき、追加のクローンを作製して、ヒト化を強化し、および/またはヒトT細胞エピトープ含量を最小化し、および/または工程(5)で作製された抗体分子もしくはその抗原結合部分の製造特性を改善するさらなる工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1A~
図1B。ヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcタンパク質に対する、ライブラリー由来の抗C-MET Fabの直接結合ELISAおよびAlphascreen競合スクリーニング。複数のファージ選択ブランチからクローンが誘導された。選択ブランチにおいて、ファージ群は、ビオチン化されたヒトまたはカニクイザルのC-METタンパク質に対し各ラウンドII~IVで選択された。各選択ラウンドの後に、ライブラリー由来クローンは、ELISA(
図1A)において、およびAlphascreen(
図1B)によるhuCMETに結合する際の224G11 IgGの結合の遮断において、ヒト(huCMET)およびカニクイザル(cyCMET)の両方に対して、ペリプラズム発現したFabタンパク質としてスクリーニングされた。各ラウンドの平均±SD値は、灰色の棒で表されている。
【
図2A】
図2A~
図2B。生殖細胞系列への変異に関する、CDR残基の寛容の分析。ヒトおよびカニクイザルのCMET交差反応性を示す、ELISA陽性の131個の固有Fabクローン群のCDRにおけるマウスアミノ酸保持頻度の図を、それぞれV
L(配列番号58~60)ドメイン(
図2A)およびV
H(配列番号61~63)(
図2B)ドメインについて示す。HCDR3以外では、ヒト/マウス残基の突然変異誘導の標的とされた残基のみプロットされている。X軸上のカッコ内に記載されるCDR残基は、移植に使用されたヒト生殖細胞系列(IGKV3-20およびIGHV1-46)中に存在する残基と同一である。カッコ内には無いがその値が0に設定されているCDR中の残基は、移植プロセスの間にヒト生殖細胞系列へと変異された。両方の図において、75%での灰色の破線は、ヒト生殖細胞系列によるマウス残基の置換の寛容性に対するカットオフを表している。
【
図3】
図3A~
図3B。ヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcタンパク質へのIgG結合に関する、直接的力価測定ELISA。ヒト化h224G11、移植クローン(Graft)、ヒトIgG4(S228P)形式のライブラリー由来クローンおよびデザインクローンが、ヒト(
図3A)およびカニクイザル(
図3B)のC-MET-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位nM)された。アイソタイプIgG4コントロール以外の全てのクローンは、ほぼ同等または改善されたヒトおよびカニクイザルのC-MET結合をもってC-METのオルソログ両方に対する結合活性を示した。
【
図4】
図4。AlphascreenにおけるIgG4(S228P)タンパク質のエピトープ競合解析。抗C-MET IgG4(S228P)クローンに、Alphascreen技術を使用したエピトープ競合アッセイを行った。このアッセイにおいて、ライブラリー由来IgGおよびデザインIgGは、224G11 IgG4(S228P)に対して、溶液中のヒトC-METタンパク質への結合を競合することにより、親224G11エピトープの保持に関して解析された。解析されたすべてのクローンは、C-METに結合する224G11の、強力で濃度依存性の中和を示した。
【
図5】
図5A~
図5B。ライブラリー由来リードおよび初代デザインリードのヒトおよびカニクイザルのC-MET+CHO-K1細胞に対するフローサイトメトリー結合。ヒトC-METがトランスフェクトされたCHO-K1細胞(
図5A)およびカニクイザルC-METがトランスフェクトされたCHO-K1細胞(
図5B)に対する特異的結合に関して、IgG4 (S228P)形式の抗C-METコントロールh224G11およびGraft、ライブラリー由来リードおよびデザインリードを検証した。IgGは、500~0.08nMの範囲の濃度で検証された。すべてのC-MET特異的抗体で、ヒトおよびカニクイザルの細胞株の両方に対し、濃度依存性の結合が観察された。一方でアイソタイプコントロールIgG4では観察されなかった。
【
図6】
図6A~
図6B。ヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcタンパク質へのIgG結合に関する、直接的力価測定ELISA。ヒト化h224G11、移植クローン(Graft)、ヒトIgG4(S228P)形式のクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3が、ヒト(
図6A)およびカニクイザル(
図6B)のC-MET-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位nM)された。アイソタイプIgG4コントロール以外の全てのクローンは、ほぼ同等または改善されたヒトおよびカニクイザルのC-MET結合をもってC-METのオルソログ両方に対する結合活性を示した。
【
図7】
図7。AlphascreenにおけるIgG4(S228P)タンパク質のエピトープ競合解析。抗ヒト化h224G11、移植クローン(Graft)およびヒトIgG4(S228P)形式のクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3が、Alphascreen技術を用いたエピトープ競合アッセイにおいて力価測定(単位nM)された。このアッセイにおいて、ライブラリー由来IgGおよびデザインIgGは、224G11 IgG4(S228P)に対して、溶液中のヒトC-METタンパク質への結合を競合することにより、親224G11エピトープの保持に関して解析された。解析されたすべてのクローンは、C-METに対する224G11結合の、強力で濃度依存性の中和を示した。
【
図8A】
図8A~
図8C。ライブラリー由来リードおよび初代デザインリードのヒトおよびカニクイザルのC-MET+CHO-K1細胞に対するフローサイトメトリー結合。ヒト化h224G11、移植クローン(Graft)およびヒトIgG4(S228P)形式のクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3について、ヒトC-METでトランスフェクトされたCHO-K1細胞(
図8A)、カニクイザルC-METでトランスフェクトされたCHO-K1細胞(
図8B)および非トランスフェクトCHO-K1細胞(
図8C)に対する特異的な結合に関して検証された。IgGは、500~0.08nMの範囲の濃度で試験した。すべてのC-MET特異的抗体で、ヒトおよびカニクイザルの細胞株の両方に対し、濃度依存性の結合が観察された。一方でアイソタイプコントロールIgG4では観察されなかった。
【
図9】
図9。開発リスクELISA。ヒト化h224G11および、ヒトIgG4(S228P)形式のクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3について、負電荷を帯びた生体分子であるインスリンおよび二本鎖DNA(dsDNA)に対する非特異的(off-target)結合に関して検証した。すべてのリードクローンは、1.0の結合スコアを示し、陰性対照IgG1のウステキヌマブ(Ustekinumab)およびベバシズマブ(Bevacizumab)アナログのいずれかよりも有意に低かった。ボコシズマブ(Bococizumab)およびブリアキヌマブ(Briakinumab)のアナログに観察されるような、インスリンまたはdsDNAに対する強力な非特異的結合は、治療用抗体の貧弱な薬物動態に関する高リスク指標であることがわかっている。
【
図10A】
図10A~
図10C。IgGの電荷バリアントプロファイル。以下のIgG4(S228P)形式の抗体に関するタンパク質の電荷バリアントアッセイのデータを以下に示す:
図10A:(1)h224G11および(2)08G07;
図10B:(3)MH7および(4)MH7-1;
図10C:(5)MH7-2および(6)MH7-3。全ての図において、シグナルは蛍光単位で測定される。
【
図11】
図11。IgGの示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)。IgG4(S228P)形式の以下の抗体に関するDSCアッセイデータを以下に示す:(mAb-1)h224G11、(mAb-2)08G07、(mAb-3)MH7、(mAb-4)MH7-1、(mAb-5)MH7-2および(mAb-6)MH7-3。
【
図12】
図12。等電点電気泳動分析(Isoelectric Focusing analysis)。以下のタンパク質サンプルに関するIEFアッセイデータを、以下に示す:(1)IEFマーカSERVALYT(商標)3-10、(2)ブレンツキシマブIgG1、(3)インフィキシマブ(Infiximab)IgG1、(4)h224G11 IgG4(S228P)、(5)08G07 IgG4(S228P)、(6)MH7 IgG4(S228P)、(7)MH7-1 IgG4(S228P)、(8)MH7-2 IgG4(S228P)および(9)MH7-3 IgG4(S228P)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の第一の態様によると、ヒトC-METに、および任意にカニクイザルC-METにも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分が提供され、当該抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-Iまたは任意のアミノ酸(例えば、T等)-F-T-Aまたは任意のアミノ酸(例えば、S等)-Y-Yまたは任意のアミノ酸(例えば、A、SまたはT等)-M-H(配列番号22)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:M-G-Wまたは任意のアミノ酸(例えば、I等)-I-Kまたは任意のアミノ酸(例えば、N等)-P-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、S等)-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、G等)-G-Lまたは任意のアミノ酸(例えば、S等)-Aまたは任意のアミノ酸(例えば、T)-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、S等)-Y-A-Q-K-F-Q-G(配列番号23)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Sまたは任意のアミノ酸(例えば、A/E/H/M/Q/T/V等)-E-I-T-T-Eまたは任意のアミノ酸(例えば、D等)-Fまたは任意のアミノ酸(例えば、L等)-D-Yまたは任意のアミノ酸(例えば、A/E/F/I/K/L/M/Q/S/V/W等)(配列番号24)と、を伴う重鎖可変領域を含む。
【0045】
一部の態様では、本明細書に提供される抗C-MET抗体または抗原結合部分は、配列番号18または配列番号19を含有する、または配列番号18または配列番号19からなる、C-METタンパク質に特異的に結合する。一部の態様では、本明細書に提供される抗C-MET抗体または抗原結合部分は、配列番号18または配列番号19に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を有するC-METタンパク質に特異的に結合する。
【0046】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR1は、配列GYIFTAYTMH(配列番号25、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR2は、配列MGWIKPNNGLANYAQKFQG(配列番号26、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR3は、配列SEITTEFDY(配列番号27、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のHCDR3)を除外してもよい。
【0047】
抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR1:R-A-S-Q-S-V-Dまたは任意のアミノ酸(例えば、SまたはE)-S-Y-A-Nまたは任意のアミノ酸(例えば、Q)-S-Fまたは任意のアミノ酸(例えば、Y)-L-Hまたは任意のアミノ酸(例えば、A)(配列番号28)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR2:Rまたは任意のアミノ酸(例えば、A)-Aまたは任意のアミノ酸(例えば、G)-S-Tまたは任意のアミノ酸(例えば、S)-R-E-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、T)(配列番号29)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR3:Q-Q-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、Y)-Kまたは任意のアミノ酸(例えば、G)-Eまたは任意のアミノ酸(例えば、D、S)-Dまたは任意のアミノ酸(例えば、S、E、R)-P-L-T(配列番号30)と、を伴う軽鎖可変領域をさらに含み得る。
【0048】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR1は、配列KSSESVDSYANSFLH(配列番号31、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のLCDR1)を除外してもよく、および/または、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR2は、配列RASTRES(配列番号32、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のLCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR3は、配列QQSKEDPLT(配列番号33、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示される224G11マウス/ヒト化抗体のLCDR3)を除外してもよい。
【0049】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)HCDR1は、アミノ酸配列G-Y-X1-F-T-X2-Y-X3-M-Hを含み、式中、X1はIまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はAまたは任意の他のアミノ酸であり、またX3はYまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号22)、
(b)HCDR2は、M-G-X1-I-X2-P-X3-X4-G-X5-X6-X7-Y-A-Q-K-F-Q-Gを含み、式中、X1はWまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はKまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はLまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はAまたは任意の他のアミノ酸であり、またX7はNまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号23)、
(c)HCDR3は、X1-E-I-T-T-X2-X3-D-X4を含み、式中、X1はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はEまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はFまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はYまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号24)、
(d)LCDR1は、R-A-S-Q-S-V-X1-S-Y-A-X2-S-X3-L-X4を含み、式中、X1はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はFまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はHまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号28)、
(e)LCDR2は、X1-X2-S-X3-R-E-X4を含み、式中、X1はRまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はAまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はTまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はSまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号29)、および
(f)LCDR3は、Q-Q-X1-X2-X3-X4-P-L-Tを含み、式中、X1はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はKまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はEまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はDまたは任意の他のアミノ酸である(配列番号30)。一部の態様において、HCDR1のX1はTである。一部の態様において、HCDR2のX3はNの保存的置換である。一部の態様において、HCDR2のX4はNの保存的置換である。一部の態様において、HCDR2のX7はNの保存的置換である。一部の態様において、LCDR1のX2はNの保存的置換である。一部の態様において、LCDR1のX3はFの保存的置換である。一部の態様において、LCDR2のX3はTの保存的置換である。一部の態様において、LCDR2のX4はSの保存的置換である。
【0050】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、この場合において当該抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4を含有する重鎖可変(VH)領域と、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4を含有する軽鎖可変(VL)領域とを含有し、この場合において、HCDR1は配列番号22であり、HCDR2は配列番号23であり、HCDR3は配列番号24であり、LCDR1は配列番号28であり、LCDR2は配列番号29であり、そしてLCDR3は配列番号30であり、当該重鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列は、配列番号127(表2を参照のこと)内の重鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列であり、また当該軽鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列は、配列番号129(表2を参照のこと)内の軽鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列である。
【0051】
本明細書に詳述されるように、本発明者らは、国際公開第2011151412A1号、米国特許出願公開第2013/0216527A1号に開示されるマウス抗C-MET抗体224G11から誘導されたCDR配列を使用し、多数の最適化抗C-MET抗体分子を作製することに初めて成功した。本発明の実施形態において、これら抗体分子は、(適切な動物実験種でのインビボ試験が容易になるように)ヒトC-METならびにカニクイザルC-METの両方に特異的に結合するよう選択された。本明細書に記載される最適化された抗体分子のさらなる改良によって、可変ドメインの安定性の改善、より高い発現収率、および/または免疫原性の低下が提供された。
【0052】
本発明の好ましい最適化抗C-MET抗体分子は、対応するマウスCDRまたはその他(例えばフレームワーク)のアミノ酸の位置で、必ずしも最大数のヒト生殖細胞系列の置換を有するとは限らない。以下の実施例の項に詳述されるように、本発明者らは、「最大限にヒト化された」抗体分子は、抗C-MET結合特性および/または他の望ましい性質に関して、必ずしも「最大限に最適化」されているとは限らないことを見出した。
【0053】
本発明は、本明細書に記載される抗体分子またはその抗原結合部分のアミノ酸配列に対する改変を包含する。例えば本発明は、その性質に大きな影響を与えない、機能的に同等の可変領域およびCDRを含有する抗体分子およびその対応する抗原結合部分、ならびに活性および/もしくはアフィニティが強化された、または低下したバリアントを包含する。例えばアミノ酸配列は、C-METに対し所望の結合アフィニティを有する抗体が得られるように変異されてもよい。1残基から数百以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合を含み、ならびに単一アミノ酸残基または複数のアミノ酸残基の配列間挿入を含む挿入が予期される。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体分子、またはエピトープタグに融合された抗体分子が挙げられる。抗体分子のその他の挿入バリアントとしては、酵素またはポリペプチドの、抗体N末端または抗体C末端への融合が挙げられ、それにより血液循環中の抗体の半減期が延長される。
【0054】
本発明の抗体分子または抗原結合部分は、グリコシル化ポリペプチドおよび非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾を有するポリペプチド、例えば異なる糖類でのグリコシル化、アセチル化およびリン酸化を有するポリペプチドを含んでもよい。例えば1つまたは複数のアミノ酸残基を付加、除去または置換させ、グリコシル化部位を形成または除去させることにより、本発明の抗体分子または抗原結合部分を変異させて、当該翻訳後修飾を変化させてもよい。
【0055】
本発明の抗体分子または抗原結合部分は、例えば抗体中の潜在的なタンパク質分解部位を除去するアミノ酸置換により改変されてもよい。
【0056】
抗体分子またはその抗原結合部分において、HCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-Y-I/T-F-T-A/S-Y-Y/S/T/A-M-H(配列番号64);HCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:M-G-W/I-I-K/N-P-N/S-N/G-G-L/S-A/T-N/S-Y-A-Q-K-F-Q-G(配列番号65);そしてHCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:S/A/E/H/M/Q/T/V-E-I-T-T-E/D-F/L-D-Y/A/E/F/I/K/L/M/Q/S/V/W(配列番号66)。
【0057】
例えば、HCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-Y-T-F-T-S-Y-A/S/T-M-H(配列番号67);HCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:M-G-W/I-I-N-P-S-G-G-S-T-S-Y-A-Q-K-F-Q-G(配列番号68);そしてHCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:S/A/E/Q/T-E-I-T-T-E/D-F-D-Y/I(配列番号69)。
【0058】
抗体分子またはその抗原結合部分において、LCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-A-S-Q-S-V-D/S/E-S-Y-A-N/Q-S-F/Y-L-H/A(配列番号70);LCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R/A-A/G-S-T/S-R-E-T/S(配列番号71);そしてLCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:Q-Q-S/Y-K/G-E/D/S-D/S/E/R-P-L-T(配列番号72)。
【0059】
例えば、LCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-A-S-Q-S-V-D/S/E-S-Y-A-N/Q-S-Y-L-H(配列番号73);LCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-G-S-T-R-E-T/S(配列番号74);そしてLCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:Q-Q-S/Y-K/G-E/S-D/S/E-P-L-T(配列番号75)。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、抗体分子または抗原結合部分は、以下を含有してもよい:
(a)アミノ酸配列RASQSVESYAQSYLH(LCDR1;配列番号46)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSDPLT(LCDR3;配列番号76)、GYIFTSYSMH(HCDR1;配列番号43)、MGWINPSNGLANYAQKFQG(HCDR2;配列番号44)、QEITTEFDI(HCDR3;配列番号45)、[クローン04F09];または、
(b)アミノ酸配列RASQSVDSYANSYLH(LCDR1;配列番号51)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKESPLT(LCDR3;配列番号47)、GYIFTSYTMH(HCDR1;配列番号48)、MGWINPNGGLASYAQKFQG(HCDR2;配列番号49)、SEITTEQDY(HCDR3;配列番号50)、[クローン07A01];または、
(c)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RASTRET(LCDR2;配列番号77)、QQSKESPLT(LCDR3;配列番号47)、GYTFTSYSMH(HCDR1;配列番号78)、MGWINPNGGLTNYAQKFRG(HCDR2;配列番号79)、EEITTEFDY(HCDR3;配列番号80)、[クローン09A12];または、
(d)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSDPLT(LCDR3;配列番号76)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPNNGSTNYAQKFQG(HCDR2;配列番号81)、SEITTDFDY(HCDR3;配列番号55)、[クローン09B08];または、
(e)アミノ酸配列RASQSVESYAQSYLH(LCDR1;配列番号46)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKEEPLT(LCDR3;配列番号82)、GYIFTAYSMH(HCDR1;配列番号83)、MGIIKPSNGSTNYAQKFQG(HCDR2;配列番号84)、AEITTEFDY(HCDR3;配列番号85)、[クローン07C10];または、
(f)アミノ酸配列RASQSVESYANSYLH(LCDR1;配列番号52)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQYGSEPLT(LCDR3;配列番号53)、GYIFTSYTMH(HCDR1;配列番号48)、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号42)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローン09E04];または、
(g)アミノ酸配列RASQSVDSYANSYLH(LCDR1;配列番号51)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPSGGLANYAQKFQG(HCDR2;配列番号54)、SEITTDFDY(HCDR3;配列番号55)、[クローン08G07];または、
(h)アミノ酸配列RASQSVDSYANSYLH(LCDR1;配列番号51)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYIFTSYTMH(HCDR1;配列番号48)、MGWIKPNNGSASYAQKFQG(HCDR2;配列番号86)、SEITTDFDY(HCDR3;配列番号55)、[クローン04E10];または、
(i)アミノ酸配列RASQSVDSYANSYLH(LCDR1;配列番号51)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSKSDPLT(LCDR3;配列番号76)、GYIFTAYSMH(HCDR1;配列番号83)、MGWIKPNNGSTNYAQKFQG(HCDR2;配列番号87)、TEITTEFDY(HCDR3;配列番号88)、[クローン08G12];または、
(j)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号42)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH1];または、
(k)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSGSSPLT(LCDR3;配列番号89)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号42)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH2];または、
(l)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQYGSSPLT(LCDR3;配列番号90)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号42)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH3];または、
(m)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号40)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH4];または、
(n)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSGSSPLT(LCDR3;配列番号89)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号40)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH5];または、
(o)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQYGSSPLT(LCDR3;配列番号90)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号40)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH6];または、
(p)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号35)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH7];または、
(q)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSGSSPLT(LCDR3;配列番号89)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号35)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH8];または、
(r)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQYGSSPLT(LCDR3;配列番号90)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号35)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH9];または、
(s)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRES(LCDR2;配列番号38)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYTFTSYAMH(HCDR1;配列番号41)、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号40)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH10];または、
(t)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSGSSPLT(LCDR3;配列番号89)、GYTFTSYAMH(HCDR1;配列番号41)、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号40)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH11];または、
(u)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQYGSSPLT(LCDR3;配列番号90)、GYTFTSYAMH(HCDR1;配列番号41)、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号40)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH12];または、
(v)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSKSEPLT(LCDR3;配列番号39)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号35)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH7-1];または、
(w)アミノ酸配列RASQSVSSYANSYLH(LCDR1;配列番号37)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSKESPLT(LCDR3;配列番号47)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号35)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH7-2];または、
(x)アミノ酸配列RASQSVSSYAQSYLH(LCDR1;配列番号57)、RGSTRET(LCDR2;配列番号56)、QQSKESPLT(LCDR3;配列番号47)、GYTFTSYTMH(HCDR1;配列番号34)、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(HCDR2;配列番号35)、QEITTEFDY(HCDR3;配列番号36)、[クローンMH7-3]。
【0061】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
一部の態様において、本発明は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を提供するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYAQSYLH(配列番号57)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPSGGLANYAQKFQG(配列番号54)のHCDR2、およびSEITTDFDY(配列番号55)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVDSYANSYLH(配列番号51)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号40)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYAMH(配列番号41)のHCDR1、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号40)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(配列番号42)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、
(i)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYSMH(配列番号43)のHCDR1、MGWINPSNGLANYAQKFQG(配列番号44)のHCDR2、およびQEITTEFDI(配列番号45)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVESYAQSYLH(配列番号46)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSDPLT(配列番号76)のLCDR3を含み、
(j)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYTMH(配列番号48)のHCDR1、MGWINPNGGLASYAQKFQG(配列番号49)のHCDR2、およびSEITTEQDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVDSYANSYLH(配列番号51)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、または、
(k)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYTMH(配列番号48)のHCDR1、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(配列番号42)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSVESYANSYLH(配列番号52)のLCDR1を含む。
【0062】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、この場合において当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において当該VH領域は、表10のVH領域アミノ酸配列のうちのいずれか1つを含有し、当該VL領域は、表10のVL領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有する。
【0063】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含み、または、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含む。
【0064】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)当該VH領域アミノ酸配列は、配列番号1に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、当該VL領域アミノ酸配列は、配列番号2に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(b)当該VH領域アミノ酸配列は、配列番号3に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、当該VL領域アミノ酸配列は、配列番号4に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(c)当該VH領域アミノ酸配列は、配列番号5に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、当該VL領域アミノ酸配列は、配列番号6に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(d)当該VH領域アミノ酸配列は、配列番号7に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、当該VL領域アミノ酸配列は、配列番号8に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;または
(e)当該VH領域アミノ酸配列は、配列番号9に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、当該VL領域アミノ酸配列は、配列番号10に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である。
【0065】
一部の態様において、本明細書に規定される抗体または抗原結合部分は、単離されてもよい。
【0066】
本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、C-METへの結合を、本明細書に開示されるCDRセットを含有する抗体またはその抗原結合部分と交差競合できる。一部の実施形態において、本発明は、単離された抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を提供するものであって、当該抗体または抗原結合部分は、本明細書に開示するCDRのセットを含む抗体または抗原結合部分と、C-METとの結合に関して交差競合し、また(a)完全なヒト生殖細胞系列フレームワークのアミノ酸配列を含み;(b)LCDR1内に「DS」異性化部位を含有せず、(c)LCDR1内に「NS」脱アミド化部位を含有せず、(d)LCDR1内に、酸化リスクを構成する露出「F」側鎖を含有せず、(e)HCDR2内に「NG」脱アミド化部位を含有せず、(e)HCDR2内に「NN」脱アミド化部位を含有せず、(f)HCDR2内に、酸化リスクを構成する露出「W」側鎖を含有せず、および/または、(g)LCDR3内に「DP」酸加水分解部位を含有せず、および/または、(h)LCDR2内にヒトT細胞エピトープ配列を含有せず、および/または、(i)LCDR3内にヒトT細胞エピトープ配列を含有せず、および/または、(j)抗体h224G11の等電点と比較して、より高い等電点を示し、および/または、(k)ヒトIgG4(S228P)形式であるときに、等電点電気泳動により測定された等電点が8.0以上を示す。抗体h224G11のアミノ酸配列は、表2で見ることができる。
【0067】
「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する」、「交差遮断される」、および「交差遮断すること」という用語は本明細書において相互交換可能に使用され、抗体またはその部分がもつ、標的C-MET(例えば、ヒトC-MET)に対する直接結合または本発明の抗C-MET抗体のアロステリック調節を介した間接的結合を干渉する能力を意味する。抗体またはその部分が、別物質による標的結合に干渉することができる度合、つまり本発明により交差遮断する、または交差競合すると言えるかどうかは、競合結合アッセイを使用して決定され得る。結合競合アッセイの一例は、HTRF法(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)である。1つの特に適した定量的交差競合アッセイは、FACS系またはAlphaScreen系の方法を使用して、標識(例えばHisタグ化、ビオチン化、または放射性標識)された抗体またはその部分と、他の抗体またはその部分との間の、標的への結合に関する競合を測定する。概して、交差競合抗体またはその部分は、例えば、アッセイの間に、および第二の抗体またはその部分の存在下で、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録される変位が、所与の量で存在する潜在的に交差遮断する抗体またはその断片による、(例えばFACS系競合アッセイにおける)理論上の最大変位(例えばコールド(例えば非標識)抗体または交差遮断されるために必要なその断片による変位)の100%以下となるように、交差競合アッセイにおいて標的に結合することとなるものである。交差競合抗体またはその部分は、10%~100%、または50%~100%の記録される変位を有することが好ましい。
【0068】
本明細書において規定される抗体分子または抗原結合部分は、熱的に安定であってもよい。一部の場合では、抗体分子または抗原結合部分は、マウス抗C-MET抗体の224G11またはh224G11と実質的に同じ熱的安定性を有してもよい。一部の場合では、抗体分子または抗原結合部分は、マウス抗C-MET抗体の224G11またはh224G11よりも熱的な安定性が高くてもよい。一部の例では、抗体分子または抗原結合部分は、約77℃~約81℃の融解温度(Tm)を有してもよく、およびヒトIgG4形式であってもよい。一部の態様では、抗体分子または抗原結合部分は、約77.2℃~約80.6℃のTmを有してもよく、およびヒトIgG4形式であってもよい。一部の場合において、抗原結合部分は、Fabである。抗体分子またはその抗原結合部分の溶融温度は、示差走査熱量測定(DSC)アッセイにより解析されてもよい。
【0069】
一部の例では、本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、マウス抗C-MET抗体の224G11またはh224G11よりも高い等電点(pI)を有し得る。一部の場合において、抗体分子またはその抗原結合部分は、pH約7.3より大きいかまたはpH約7.4より大きいpIを有し得る。例えば、抗体分子またはその抗原結合部分は、pH約7.3からpH約8.5のpIを有し得る。抗体分子またはその抗原結合部分の等電点は、タンパク質チャージバリアントアッセイで解析できる。
【0070】
本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、1つまたは複数の置換、欠失および/または挿入を含んでもよく、それらにより例えばグリコシル化部位(N結合型またはO結合型)、脱アミノ化部位、リン酸化部位または異性化/断片化部位などの翻訳後修飾(PTM:post-translational modification)部位が除去される。
【0071】
350を超えるタイプのPTMが公知である。重要なPTMの型としては、リン酸化、グリコシル化(N結合型およびO結合型)、SUMO化、パルミトイル化、アセチル化、硫酸化、ミリストイル化、プレニル化、および(K残基およびR残基の)メチル化が挙げられる。特定のPTMの原因となる推定アミノ酸部位を特定するための統計的手法は、当分野に周知である(Zhou et al.,2016,Nature Protocols 1:1318-1321を参照のこと)。例えば置換、欠失および/または挿入によりそうした部位を除去し、次いで任意で(a)結合活性、および/または(b)PTMの消失を検証(実験的に、および/または理論的に)することが予期される。
【0072】
例えば、224G11マウスLCDR3(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列QQSKEDPLT(配列番号33))は、6および7位の残基(DP)で推定酸加水分解部位を有すると特定されている。本発明のLCDR3中の同等の位置にあるこの部位を、Dの置換(例えば、SまたはEへの)により除去することが予期される(例えばクローンMH7、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0073】
さらなる例では、224G11マウスLCDR1(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列KSSESVDSYANSFLH(配列番号31))は、7位の残基(D)で推定異性化部位を有すると特定されている。本発明のLCDR1中の同等の位置にあるこの部位を、Dの置換(例えば、SまたはEへの)により除去することが予期される(例えばクローンMH7、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0074】
さらなる例では、224G11マウスLCDR1(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列KSSESVDSYANSFLH(配列番号31))は、11位の残基(N)で推定脱アミド化部位を有すると特定されている。本発明のLCDR1中の同等の位置にあるこの部位を、Nの置換(例えば、Qへの)により除去することが予期される(例えばクローン04F09、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0075】
さらなる例では、224G11マウスLCDR1(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列KSSESVDSYANSFLH(配列番号31))は、13位の残基(F)で推定酸化部位を有すると特定されており、これはCDRループの溶媒露出領域であることが知られている。本発明のLCDR1中の同等の位置にあるこの部位を、Fの置換(例えば、Yへの)により除去することが予期される(例えばクローンMH7、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0076】
さらなる例では、224G11マウスHCDR2(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列MGWIKPNNGLANYAQKFQG(配列番号26))は、3位の残基(W)で推定酸化部位を有すると特定されており、これはCDRループの溶媒露出領域であることが知られている。本発明のHCDR2中の同等の位置にあるこの部位を、Wの置換(例えば、Iへの)により除去することが予期される(例えばクローンMH7、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0077】
さらなる例では、224G11マウスHCDR2(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列MGWIKPNNGLANYAQKFQG(配列番号26))は、7位の残基(N)で推定脱アミド化部位を有すると特定されており、これはCDRループの溶媒露出領域であることが知られている。本発明のHCDR2中の同等の位置にあるこの部位を、Nの置換(例えば、Sへの)により除去することが予期される(例えばクローンMH7、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0078】
さらなる例では、224G11マウスHCDR2(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列MGWIKPNNGLANYAQKFQG(配列番号26))は、8位の残基(N)で推定脱アミド化部位を有すると特定されており、これはCDRループの溶媒露出領域であることが知られている。本発明のHCDR2中の同等の位置にあるこの部位を、Nの置換(例えば、Gへの)により除去することが予期される(例えばクローンMH7、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0079】
抗体分子またはその抗原結合部分は、ヒト、ヒト化またはキメラであってもよい。
【0080】
抗体分子またはその抗原結合部分は、1つまたは複数のヒト可変ドメインフレームワークスキャホールドを含有してもよく、その中にはCDRが挿入されている。例えば、VH領域、VL領域、またはVH領域およびVL領域の両方が、1つまたは複数のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含有してもよい。
【0081】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV1-46 ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中には対応するHCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV1-46ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域を含有してもよく、その中には対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0082】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGKV3-20ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中には対応するLCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGKV3-20ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域を含有してもよく、その中には対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0083】
抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR配列が挿入されているIGHV1-46ヒト生殖細胞系列スキャホールドと、中に対応するLCDR配列が挿入されているIGKV3-20ヒト生殖細胞系列スキャホールドとを含有してもよい。抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGHV1-46ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域と、中に対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGKV3-20ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域とを含有してもよい。HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列は、表4または表8のクローンのいずれか1つのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列であってもよい(6つすべてのCDR配列が、同じクローン由来である)。
【0084】
一部の態様では、抗体分子またはその抗原結合部分は、免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1またはIgA2である。追加的な実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4(S228P)、IgA1またはIgA2である。抗体分子またはその抗原結合部分は、免疫学的に不活性な定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗MET抗体またはその抗原結合部分は、野生型ヒトIgG1定常領域か、L234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域か、またはL234A、L235A、G237AおよびP331Sのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分は、野生型ヒトIgG2定常領域または野生型ヒトIgG4定常領域を含有する、免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗C-MET抗体は、表11のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。表11のFc領域配列は、CH1ドメインから始まる。一部の態様では、抗C-MET抗体は、ヒトIgG4、ヒトIgG4(S228P)、ヒトIgG2、ヒトIgG1、ヒトIgG1-3MまたはヒトIgG1-4MのFc領域のアミノ酸配列を含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。例えば、ヒトIgG4(S228P)のFc領域は、野生型のヒトIgG4のFc領域と比較して以下の置換を含有する:S228P。例えば、ヒトIgG1-3MのFc領域は、野生型のヒトIgG1のFc領域と比較して以下の置換を含有する:L234A、L235AおよびG237A。一方で、ヒトIgG1-4MのFc領域は、野生型のヒトIgG1のFc領域と比較して以下の置換を含有する:L234A、L235A、G237AおよびP331S。一部の態様では、免疫グロブリン分子の定常領域中のアミノ酸残基の位置は、EUの命名法(Ward et al.,1995 Therap.Immunol.2:77-94)に従って番号付けされる。一部の態様では、免疫グロブリン定常領域は、RDELT(配列番号20)モチーフ、またはREEM(配列番号21)モチーフ(表11の下線部分)を含有してもよい。REEM(配列番号21)アロタイプは、RDELT(配列番号20)アロタイプよりも少ないヒト集団に存在する。一部の態様では、抗C-MET抗体は、配列番号11~17のいずれか1つを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗C-MET抗体は、表4または表8のクローンのいずれか1つの6つのCDRアミノ酸配列、または表11のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有してもよい。一部の態様では、抗C-MET抗体は、表11のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有する免疫グロブリン重鎖定常領域、およびカッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域である免疫グロブリン軽鎖定常領域を含有してもよい。
【0085】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYAQSYLH(配列番号57)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRET(配列番号56)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGIINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号35)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPSGGLANYAQKFQG(配列番号54)のHCDR2、およびSEITTDFDY(配列番号55)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVDSYANSYLH(配列番号51)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号40)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYAMH(配列番号41)のHCDR1、MGWINPSGGSTSYAQKFQG(配列番号40)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTSYTMH(配列番号34)のHCDR1、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(配列番号42)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVSSYANSYLH(配列番号37)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSEPLT(配列番号39)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(i)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYSMH(配列番号43)のHCDR1、MGWINPSNGLANYAQKFQG(配列番号44)のHCDR2、およびQEITTEFDI(配列番号45)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVESYAQSYLH(配列番号46)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKSDPLT(配列番号76)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;
(j)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYTMH(配列番号48)のHCDR1、MGWINPNGGLASYAQKFQG(配列番号49)のHCDR2、およびSEITTEQDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVDSYANSYLH(配列番号51)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQSKESPLT(配列番号47)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含み;または
(k)VH領域のアミノ酸配列は、GYIFTSYTMH(配列番号48)のHCDR1、MGWINPNGGSTSYAQKFQG(配列番号42)のHCDR2、およびQEITTEFDY(配列番号36)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSVESYANSYLH(配列番号52)のLCDR1、RGSTRES(配列番号38)のLCDR2、およびQQYGSEPLT(配列番号53)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含む。
【0086】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、または配列番号1からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、または配列番号2からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含有し、または配列番号3からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含有し、または配列番号4からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含有し、または配列番号5からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含有し、または配列番号6からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、または配列番号7からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、または配列番号8からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、または
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含有し、または配列番号9からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含有し、または配列番号10からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有する。
【0087】
一部の態様において、本明細書は、抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、または配列番号1からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、または配列番号2からなり、および重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含有する;
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含有し、または配列番号3からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含有し、または配列番号4からなり、および重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含有する;
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含有し、または配列番号5からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含有し、または配列番号6からなり、および重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含有する;
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、または配列番号7からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、または配列番号8からなり、および重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含有する;または
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含有し、または配列番号9からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含有し、または配列番号10からなり、および重鎖定常領域は、配列番号11~17のいずれか1つを含有する。
【0088】
抗体分子またはその抗原結合部分は、Fab断片、F(ab)2断片、Fv断片、四量体抗体、四価抗体、多特異性抗体(例えば二特異性抗体)、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、モノクローナル抗体、または融合タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、抗体は、第一の抗原と第二の抗原とに特異的に結合する二特異性抗体であってもよく、この場合において第一の抗原はC-METであり、第二の抗原はC-METではない。抗体分子、ならびにその構築方法および使用方法は、例えばHolliger & Hudson (2005,Nature Biotechnol.23(9):1126-1136)に記載されている。
【0089】
本発明の別の態様では、治療剤に結合された、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分を含有する免疫結合体が提供される。
【0090】
適切な治療剤の例示としては、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、アポトーシス促進剤、ならびに細胞増殖抑制酵素および細胞溶解性酵素(例えば、RNAse)が挙げられる。さらなる治療剤としては、例えば免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤またはアポトーシス促進剤をコードする遺伝子などの治療用核酸が挙げられる。これらの薬剤の記述子は、相互排他的ではなく、ゆえに治療剤は、上述の用語の1つまたは複数を使用して記載されてもよい。
【0091】
免疫結合体における使用に適した治療剤の例としては、タキサン、メイタンシン、CC-1065、およびデュオカルマイシン、カリケアミシンおよび他のエンジイン、ならびにオーリスタチン(auristatin)が挙げられる。他の例としては、抗葉酸剤、ビンアルカロイド、およびアントラサイクリンが挙げられる。植物毒素、他の生物活性タンパク質、酵素(すなわちADEPT)、放射性同位体、光増感剤が、免疫結合体において使用されてもよい。さらに結合体は、細胞毒性剤として二次的な担体、例えばリポソームまたはポリマーなどを使用して作製され得る。適切な細胞毒素としては、細胞の機能を阻害または妨害し、および/または細胞の破壊をもたらす薬剤が挙げられる。代表的な細胞毒素としては、抗生物質、チューブリン重合の阻害剤、DNAに結合し、破壊するアルキル化剤、そしてタンパク質合成を破壊する、または例えばタンパク質キナーゼ、ホスファターゼ、トポイソメラーゼ、酵素およびサイクリンなどの必須の細胞タンパク質の機能を破壊する薬剤が挙げられる。
【0092】
代表的な細胞毒素としては限定されないが、以下に限定されないが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、カルビシン、ノガラマイシン、メノガリル、ピタルビシン(pitarubicin)、バルルビシン、シタラビン、ゲムシタビン、トリフルリジン、アンシタビン、エノシタビン、アザシチジン、ドキシフルジン(doxifluhdine)、ペントスタチン、ブロクスジン(broxuhdine)、カペシタビン、クラドビン(cladhbine)、デシタビン、フロクスジン(floxuhdine)、フルダラビン、グーゲロチン、ピューロマイシン、テガフール、チアゾフン(tiazofuhn)、アダマイシン(adhamycin)、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、メクロレタミン、プレドニゾン、プロカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル(flurouracil)、エトポシド、タキソール、タキソールアナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチンなどのプラチン類、マイトマイシン、チオテパ、タキサン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、タモキシフェン、イダルビシン、ドラスタチン/オーリスタチン(auristatin)、ヘミアステリン(hemiasterlin)、エスペラミシン、ならびにマイタンシノイドが挙げられる。
【0093】
適切な免疫調節剤としては、腫瘍に対するホルモンの作用を遮断する抗ホルモン剤、およびサイトカイン産生を抑制する、自己抗原発現を下方制御する、またはMHC抗原をマスクする免疫抑制剤が挙げられる。
【0094】
さらに、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分をコードする核酸分子も提供される。核酸分子は、本明細書に記載される抗C-MET抗体またはその抗原結合部分の(a)VH領域のアミノ酸配列、(b)VL領域のアミノ酸配列、または(c)VH領域とVL領域の両方のアミノ酸配列をコードしてもよい。一部の態様では、本明細書に規定される核酸分子が単離されてもよい。
【0095】
さらに、本明細書に規定される本発明の核酸分子を含有するベクターが提供される。ベクターは、発現ベクターであってもよい。
【0096】
また、本明細書に規定される本発明の核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も提供される。宿主細胞は、組換え宿主細胞であってもよい。
【0097】
さらなる態様において、抗C-MET抗体および/またはその抗原結合部分を作製する方法も提供され、当該方法は、当該抗体および/もしくはその抗原結合部分の発現ならびに/または産生が生じる条件下で、本発明の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞または培養物から、当該抗体および/またはその抗原結合部分を単離することと、を含む。
【0098】
本発明の別の態様において、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを含有する医薬組成物が提供される。
【0099】
本発明はまた、細胞においてC-METシグナル伝達を阻害する方法を提供し、当該方法は、本明細書に記載の抗C-MET抗体分子またはその抗原結合部分に細胞を接触させることを含む。一部の実施形態では、本発明の抗C-MET抗体分子または抗原結合部分が、C-METを非活性化単量体型に固定する。
【0100】
さらに、対象において免疫反応を強化する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗C-MET抗体分子または抗原結合部分は、抗体エフェクター機能が介在する結合を介して対象の免疫細胞を結合する。
【0101】
さらなる態様において、対象において癌を治療または予防する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0102】
例えば、癌は、胃腸間質性癌(GIST)、膵臓癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳腫瘍または中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆管癌、小腸癌または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、または血液組織の癌であり得る。
【0103】
本発明はさらに、癌の治療における使用のための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクター、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物を提供する。
【0104】
別の態様において、本発明は、例えば抗癌剤などの第二の治療剤と組み合わされる併用において、別個に使用する、連続して使用する、または同時に使用するための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または免疫結合体、または核酸分子、または使用のためのベクター、または治療方法を提供する。
【0105】
さらなる態様において、癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の使用、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の使用、または本明細書に規定される本発明のベクターの使用、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0106】
本発明はさらに、対象において自己免疫性疾患もしくは炎症性疾患を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0107】
例えば、自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節炎、喘息、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス、グレーブス病および橋本甲状腺炎、または強直性脊椎炎であり得る。
【0108】
また、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0109】
さらに、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0110】
本発明はさらに、対象において心血管疾患もしくは線維症を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0111】
また、心血管疾患または線維症の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0112】
さらに、心血管疾患または線維症の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0113】
本発明の任意の態様における心血管疾患は、例えば冠動脈心疾患またはアテローム性動脈硬化症であってもよい。
【0114】
本発明の任意の態様における線維症は、例えば、心筋梗塞、狭心症、変形性関節症、肺線維症、喘息、嚢胞性線維症、または気管支炎であってもよい。
【0115】
一実施形態において、本発明は、治療における使用のための本明細書に開示されるアミノ酸配列を含有する抗C-MET抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0116】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な賦形剤は、二次的な反応を引き起こさない医薬組成物に入れられる化合物または化合物の組み合わせであってもよく、例えば、抗C-MET抗体分子の投与の促進、その持続期間の延長、および/もしくは体内におけるその有効性の増加、または溶液中の可溶度の上昇を可能にする。これら薬学的に許容可能なビヒクルは周知であり、抗C-MET抗体分子の投与形態の効果に応じて当業者により適合される。
【0117】
一部の実施形態では、抗C-MET抗体分子は、凍結乾燥されて提供され、投与前に再構成されてもよい。例えば凍結乾燥された抗体分子は、滅菌水で再構成され、個体への投与前に生理食塩水と混合される。
【0118】
抗C-MET抗体分子は通常、医薬組成物の形態で投与され、当該医薬組成物は、抗体分子に加えて少なくとも1つの構成要素を含有してもよい。したがって医薬組成物は、抗C-MET抗体分子に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、または当業者に周知の他の物質を含有してもよい。そうした物質は、非毒性でなければならず、そして抗C-MET抗体分子の効能に干渉してはならない。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存することとなり、これは、以下に検討されるように、ボーラス、点滴、注射または任意の他の適切な経路であってもよい。
【0119】
例えば注射などによる皮下投与または静脈内投与などの非経口投与に関しては、抗C-MET抗体分子を含有する医薬組成物は、発熱物質を含まず、そして適切なpH、等張性および安定性の非経口に受容可能な水溶液の形態であってもよい。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射溶液、リンゲル注射溶液、乳酸リンゲル注射溶液などの等張ビヒクルを使用して適切な溶液を調製することができる。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤を必要に応じて採用してもよく、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3’-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド;例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;例えばポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの単糖、二糖および他の炭水化物;例えばEDTAなどのキレート剤;例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;例えばナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0120】
抗C-MET抗体分子を含有する医薬組成物は、治療される状態に応じて、単独で投与されてもよく、または他の治療と併用されて、同時に、または連続のいずれかで投与されてもよい。
【0121】
本明細書に記載の抗C-MET抗体分子は、ヒトまたは動物の身体の治療方法に使用されてもよく、治療には、予防的または防止的な治療が含まれる(例えば、個体において症状が発生する前に、当該個体において当該症状が発生するリスクを低下させる、その発生を遅延させる、または発生後の重症度を低下させるための治療)。治療方法は、抗C-MET抗体分子を、その必要のある個体に投与することを含んでもよい。
【0122】
投与は通常、「治療有効量」でされ、これは、患者に対し有益性を示すために充分な量である。そうした有益性は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であってもよい。投与される実際の量、投与速度、および投与の経時変化は、治療されるものの、特に治療される哺乳動物の、性質および重症度、個々の患者の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者がわかっている他の因子に依存することとなる。例えば用量の決定などの治療の指示は、一般開業医および他の医師の責の範囲内にあり、治療される疾患の症状の重症度、および/または治療される疾患の進行に依存し得る。抗体分子の適切な投与量は、当分野に周知である(Ledermann J.A.et al.,1991,Int.J.Cancer 47:659-664;Bagshawe K.D.et al.,1991,Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915-922)。具体的な用量は、本明細書において、またはPhysician’s Desk Reference (2003)において示され、投与される薬剤のタイプに応じた用量が、使用され得る。抗体分子の治療有効量または適切な投与量は、そのインビトロ活性と、動物モデルにおけるインビボ活性とを比較することにより決定され得る。マウスおよび他の被験動物における有効用量を、ヒトに外挿する方法は公知である。正確な投与量は、抗体が予防用または治療用であるか、治療される領域の大きさおよび位置、抗体の正確な性質(例えば全抗体、断片)および抗体に付加された任意の検出可能な標識または他の分子の性質をはじめとする多くの因子に依存することとなる。
【0123】
典型的な抗体投与量は、全身投与に対しては100μg~1g、また局所投与に対しては1μg~1mgの範囲である。初回に高い負荷投与量で、その後は1回または複数回の低投与量が投与されてもよい。典型的には、抗体は、例えばIgG4(S228P)アイソタイプまたはIgG4アイソタイプなどの全抗体である。これは成人患者の単回治療用の投与量であり、小児および幼児に対しては相対的に調整され得、そして分子量に比例して他の抗体形式にも調整され得る。治療は、医師の裁量で毎日、週2回、毎週、または毎月の間隔で繰り返され得る。個々の治療スケジュールは、抗体組成物の薬物動態および薬力学的性質、投与経路、ならびに治療される症状の性質に依存し得る。
【0124】
治療は定期的であってもよく、投与の間の期間は、約2週間またはそれ以上であってもよく、例えば約3週間以上、約4週間以上、約1カ月に1回以上、約5週間以上、または約6週間以上であってもよい。例えば、治療は、2週~4週ごと、または4週~8週ごとであってもよい。治療は、外科手術の前、および/もしくは後に行われてもよく、ならびに/または外科的治療もしくは浸潤的手順の解剖学的位置に直接投与または適用されてもよい。適切な製剤および投与経路は、上記に記載される。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗C-MET抗体分子は、皮下注射として投与されてもよい。皮下注射は、例えば長期間または短期間の予防/治療用の自己注射器を使用して投与されてもよい。
【0126】
一部の実施形態では、抗C-MET抗体分子の治療効果は、血清抗体半減期の数倍の間、持続し得、投与量に依存する。例えば抗C-MET抗体分子の単回投与の治療効果は、個体において、1カ月以上、2カ月以上、3カ月以上、4カ月以上、5カ月以上、または6カ月以上、持続し得る。
【0127】
本発明はさらに、ヒトC-METに特異的に結合し、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する方法を提供するものであり、当該方法は、
(1)非ヒト源由来の抗C-MET CDRをヒトv-ドメインフレームワーク内に移植し、ヒト化抗C-MET抗体分子またはその抗原結合部分を作製する工程、
(2)CDR中に1つまたは複数の変異を含有する当該ヒト化抗C-MET抗体分子またはその抗原結合部分のクローンのファージライブラリーを作製する工程、
(3)ヒトC-METへの結合について、および任意でカニクイザルC-METへの結合についても当該ファージライブラリーを選択する工程、
(4)選択する工程(3)から、ヒトC-METに特異的に結合する、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合するクローンをスクリーニングする工程、ならびに
(5)ヒトC-METに特異的に結合し、および任意でカニクイザルC-METにも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を、工程(4)から選択されたクローンから作製する工程、を含む。
【0128】
当該方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づき、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDR中の特定の位置でのさらなる探索的な突然変異誘導に基づき、追加のクローンを作製して、ヒト化を強化し、および/またはヒトT細胞エピトープ含量を最小化し、および/または工程(5)で作製された抗体分子もしくはその抗原結合部分の製造特性を改善するさらなる工程を含んでもよい。
【0129】
上述の方法に適用可能な改善は、以下の実施例1に記載されるとおりである。
【0130】
本明細書で用いる場合、“C-MET”の語は、METの生物学的活性の少なくとも一部を保持する、METタンパク質およびそのバリアントを指す。一部の場合では、本明細書で用いる場合、C-METは、ヒト、ラット、マウスおよびニワトリを含むすべての哺乳動物種の天然配列C-METを含む。“C-MET”の語は、ヒトC-METのバリアント、アイソフォームおよび種のホモログを含むために使用され得る。本発明の抗体は、ヒト以外の種に由来するC-MET、特にカニクイザル(Macaca fascicularis)由来のC-METと交差反応し得る。ヒトおよびカニクイザルのC-METアミノ酸配列の例を、表12に提供する。ある実施形態では、抗体は、完全にヒトC-METに特異的であってもよく、非ヒトとの交差反応性を呈さなくてもよい。
【0131】
本明細書において使用される場合、本発明の抗体の文脈において使用される場合の「アンタゴニスト」、または「抗C-METアンタゴニスト抗体」(「抗C-MET抗体」と相互交換可能に称される)とは、C-METに結合することができる、ならびにC-METの生物学的活性を阻害することができる、および/またはC-METシグナル伝達により介在される下流経路を阻害することができる抗体を指す。抗C-METアンタゴニスト抗体には、例えばC-METに対する受容体結合および/または細胞反応の惹起など、C-METシグナル伝達により介在される下流経路を含めた、(有意に)C-METの生物学的活性(を含めた)を遮断する、拮抗する、抑制する、または低下させることができる抗体を包含する。本発明の目的に対し、「抗C-METアンタゴニスト抗体」という用語は、C-METそれ自体、およびC-METの生物学的活性、または活性もしくは生物学的活性の結果が、任意の意義のある程度に実質的に無効化される、減少される、または中和されるすべての用語、タイトル、ならびに機能的状態および機能的特性を包含することが明示的に理解されるであろう。
【0132】
他の受容体よりも高いアフィニティ、高いアビディティ、より容易に、および/またはより長い期間、C-METと結合する場合、当該抗体は、C-METに「特異的に結合する」、「特異的に相互作用する」、「優先的に結合する」、「結合する」または「相互作用する」。
【0133】
「抗体分子」は、例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書において使用される場合、「抗体分子」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のみならず、任意の抗原結合断片(例えば「抗原結合部分」)またはその一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、ならびに例えば限定されないが、scFv、単一ドメイン抗体(例えばサメ抗体およびラクダ科抗体)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびbis-scFvを含む抗原認識部位を含有する免疫グロブリン分子の任意の他の改変構造体も包含する。
【0134】
「抗体分子」は、例えばIgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を包含するが、抗体はいずれか特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、様々なクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5種類の主要なクラスがある。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられる場合があり、例えば、lgG1、lgG2、lgG3、lgG4、lgA1およびlgA2がある。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域はそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。このサブユニットの構造、および様々なクラスの免疫グロブリンの三次元構造は周知である。
【0135】
抗体分子の「抗原結合部分」という用語は、本明細書において使用される場合、C-METに特異的に結合する能力を保持する、インタクトな抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体分子の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片により実現され得る。抗体分子の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例示としては、Fab;Fab’;F(ab’)2;VHドメインとCH1ドメインからなるFd断片;抗体の1つのアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;単一ドメイン抗体(dAb)断片、および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0136】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域またはバリアントのFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、またはPro230の位置のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端に及ぶと規定される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにあるEUインデックスの番号である。免疫グロブリンのFc領域は通常、CH2とCH3の2つの定常ドメインを含有する。当分野に知られているように、Fc領域は、二量体型または単量体型で存在し得る。
【0137】
抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域の、いずれか単独または組み合わせを指す。当分野に知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)に繋がる4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRに隣接するFRを選択するとき、例えば抗体のヒト化または最適化を行うとき、同じ基準クラスのCDR配列を含有する抗体由来のFRが好ましい。
【0138】
本出願において使用されるCDRの定義は、当分野で創出された多くの異質的な、しばしば矛盾するスキームにおいて使用されるドメインを組み合わせており、免疫グロブリンレパートリー分析と、遊離状態および抗原との共結晶状態の抗体の構造分析との組み合わせに基づいている(Swindells et al.,2016,abYsis:Integrated Antibody Sequence and Structure-Management,Analysis,and Prediction.J Mol Biol.[PMID:27561707;Epub 22 August 2016]によるレビューを参照のこと)。本明細書において使用されるCDRの定義(「統合(Unified)」定義)は、そうしたすべての過去の洞察の教示を組み込んでおり、潜在的に標的-結合の相補性を介在する完全な残基の状況を抽出するために必要なすべての適切なループ位置を含む。
【0139】
表1は、本明細書に規定される224G11マウス抗C-MET抗体のCDRのアミノ酸配列(「統合」スキーム)を、同じCDRを規定する周知の代替的な系と比較して示している。
【0140】
本明細書において使用される場合、「保存的置換」という用語は、アミノ酸を、機能活性を大きく有害には変化させない別のアミノ酸で置換することを指す。「保存的置換」の好ましい例は、1つのアミノ酸を、以下のBLOSUM 62置換マトリクス(Henikoff&Henikoff,1992,PNAS 89:10915-10919を参照のこと)において0以上の値(≧0)を有する別のアミノ酸で置換することである。
【0141】
【0142】
「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、例えば任意の真核細胞クローン、原核細胞クローンもしくはファージクローンなどの1つのコピーまたはクローンから誘導された抗体またはその抗原結合部分を指し、それが作製された方法ではない。本発明のモノクローナル抗体は、均質、または実質的に均質な集団で存在することが好ましい。
【0143】
「ヒト化」抗体分子とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または他の抗原結合性の抗体下位配列)である、非ヒト(例えばマウス)抗体分子またはその抗原結合部分の形態を指す。ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、アフィニティおよび能力を有する例えばマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であってもよい。
【0144】
「ヒト抗体または完全ヒト抗体」とは、ヒト抗体遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから誘導された、またはヒト細胞から誘導された抗体分子またはその抗原結合部分を指す。
【0145】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列は別の種に由来する抗体分子またはその抗原結合部分を指すことが意図され、例えば、可変領域配列はマウス抗体に由来し、定常領域配列はヒト抗体に由来する抗体分子などである。
【0146】
「抗体-薬剤結合体」および「免疫結合体」とは、C-METに結合する、抗体誘導体を含めた抗体分子またはその抗原結合部分であって、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、および/または治療剤と結合された抗体分子またはその抗原結合部分を指す。
【0147】
本発明の抗体分子、またはその抗原結合部分は、例えば組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、またはそうした技術もしくは当分野に既に公知である他の技術との組み合わせなどの当分野に周知の技術を使用して作製され得る。
【0148】
「単離された分子」(分子が、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体である場合)という用語は、その起源または誘導の源によって、(1)自然状態では付随する天然の関連構成要素と関連していない分子、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まない分子、(3)異なる種由来の細胞により発現された分子、または(4)自然に発生しない分子である。したがって、化学的に合成された分子、または天然での起源である細胞とは異なる細胞系で発現された分子は、その天然の関連構成要素から「単離される」。さらに分子は、当分野に周知の精製技術を使用した単離によって、天然の関連構成要素を実質的に含まない状態にされ得る。分子純度または均質性は、当分野に周知の多くの手段により解析され得る。例えばポリペプチドサンプルの純度は、当分野に周知の技術を使用してポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用し、ゲルを染色してポリペプチドを可視化して解析されてもよい。ある目的に対し、HPLC、または精製分野で周知の他の手段を使用することにより、さらに高い分解能が提供される場合がある。
【0149】
「エピトープ」という用語は、抗体分子の抗原結合領域のうちの1つまたは複数で抗体分子に認識され、結合されることができる分子の部分、またはその抗原結合部分を指す。エピトープは、一次、二次または三次のタンパク質構造の規定領域からなる場合があり、抗体またはその抗原結合部分の抗原結合領域に認識される標的の二次構造単位または二次構造ドメインの組み合わせを含む。同じくエピトープは、例えばアミノ酸または糖側鎖などの規定の化学的に活性な分子の表面群からなる場合があり、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する場合がある。本明細書において使用される場合、「抗原性エピトープ」という用語は、当分野に周知の任意の方法、例えば従来的な免疫アッセイ法、抗体競合結合アッセイ、またはx線結晶法もしくは関連する構造決定法(例えばNMR)により決定されたときに、抗体分子が特異的に結合することができるポリペプチドの部分として規定される。
【0150】
「結合アフィニティ」または「KD」という用語は、特定の抗原-抗体の相互作用の解離速度を指す。KDは、「off-rate(koff)」とも呼ばれる解離速度の、「on-rate(kon)」、すなわち会合速度に対する比率である。ゆえにKDは、koff/konに等しく、モル濃度(M)として表される。従って、KDが小さくなると、結合アフィニティは強くなる。ゆえにKDが1μMであれば、KDが1nMの場合と比較して結合アフィニティが弱いことを示す。抗体のKD値は、当分野に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDの決定方法の1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用するものであり、典型的には、例えばビアコア(Biacore(登録商標))システムなどのバイオセンサーシステムを使用する。
【0151】
「有効性」という用語は、生物活性の測定値であり、本明細書に記載のC-MET活性アッセイにおいて測定される活性の50%を阻害する、抗原C-METに対する抗体または抗体薬剤結合体のIC50すなわち有効濃度として表す場合もある。
【0152】
本明細書において使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という文言は、所望の治療結果を実現するために必要な(用量での、および期間に対する、および投与手段に対する)量を指す。有効量は、活性剤の、対象に治療上有益な影響を与えるために必要な少なくとも最小量であるが、対象に毒性のある量よりは少ない量である。
【0153】
本発明の抗体分子の生物活性に関して本明細書において使用される場合、「阻害する」または「中和する」という用語は、限定されないが、C-METに対する抗体分子の生物活性、または抗体分子とC-METの結合相互作用を含む、阻害されるものの例えば進行または重症度を実質的に拮抗する、妨げる、予防する、抑える、減速させる、破壊する、除去する、停止させる、低下させる、または反転させる抗体の能力を意味する。
【0154】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターに対するレシピエントであってもよく、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫物を含み、当該子孫物は、自然の、偶発的な、または意図的な変異により、元の親細胞と完全に同一(形態において、またはゲノムDNAの相補体において)であるとは限らない場合がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0155】
本明細書において使用される場合、「ベクター」とは、宿主細胞において、関心の1つまたは複数の遺伝子または配列を送達することができる、そして好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては限定されないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNAの発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン縮合剤と会合したDNAまたはRNAの発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAまたはRNAの発現ベクター、および例えば産生細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。
【0156】
本明細書において使用される場合、別段が示唆されない限り、「治療すること」という用語は、そうした用語が適用される障害もしくは症状、またはそうした障害もしくは症状の1つまたは複数症状を反転させる、改善させる、進行を阻害する、進行を遅延させる、発症を遅延させる、または予防することを意味する。本明細書において使用される場合、別段の示唆が無い限り、「治療」という用語は、上述に規定される治療の行為を指す。「治療すること」という用語は、対象のアジュバント療法およびネオアジュバント療法も含む。誤解を避けるために、本明細書において「治療」という言及は、治癒的、緩和的、および予防的な治療に対する言及を含む。誤解を避けるために、本明細書において「治療」という言及は、治癒的、緩和的、および予防的な治療に対する言及もさらに含む。
【0157】
本明細書において、実施形態は、「含む、含有する」という文言で記載されているか、さもなければ「~からなる」および/または「本質的に~からなる」として記載される類似した実施形態も提供されることを理解されたい。
【0158】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の択一的な群で記載されている場合、本発明は、概して列挙される群全体のみならず、当該群の各メンバーを個々に、および当該主要群のうちの可能性のあるすべての亜群、そして当該群メンバーの1つまたは複数を欠いた主要群も包含する。本発明はさらに、請求される本発明の群メンバーのいずれかの1つまたは複数の明白な除外を予期するものである。
【0159】
別段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、本明細書が定義を含めて主導をとるものとする。本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、「含む、含有する」という文言、または例えば「含む、含有する」または「含むこと、含有すること」といった変化形は、記述される整数値の含有、または整数値の群の含有を示唆するが、任意の他の整数値または整数値の群の除外は示唆しないと理解される。文脈により別段であることを要しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形は単数を含むものとする。「例えば」という用語の後に続くあらゆる例示は、包括的または限定であることは意味しない。
【0160】
本発明の実施は、別段の示唆が無い限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来的な技術を採用し、それら技術は当分野の技術範囲内にある。
【0161】
本発明の特定の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照しながら記載することとする。
【実施例】
【0162】
実施例1.最適化抗C-MET治療用抗体の作製
イントロダクション
本実施例において、本発明者らは、アンタゴニスト性の最適化抗C-MET抗体パネルの作製に成功した。これら抗C-MET抗体は良好に発現され、生物物理的に安定であり、溶解度が高く、そして好ましいヒト生殖細胞系列に対し最大のアミノ酸配列同一性を有している。
【0163】
材料及び方法
C-METライブラリーの作製および選択
C-MET Fabレパートリーは、大量オリゴ合成およびPCRにより組み立てられた。次いで増幅されたFabレパートリーを制限酵素-ライゲーションを介してファージミドベクター内にクローニングし、大腸菌TG-1細胞内に形質転換した。ファージレパートリーは、原則として過去に詳述されるようにレスキューされた(Finlay et al.,2011,Methods Mol Biol 681:383-401)。
【0164】
ファージ選択は、ストレプトアビジン磁気マイクロビーズをビオチン化C-MET標的タンパク質(ヒトまたはカニクイザルのいずれか)でコーティングし、ビーズをPBSで3回洗浄して、5%スキムミルクタンパク質を加えたPBS pH7.4中に再懸濁させることにより実施された。これらビーズは、選択のラウンド1では100nMの標的タンパク質でコーティングされており、その後の3回の連続ラウンドでは抗原濃度は減少した。各ラウンドにおいて、ファージはトリプシンを使用して溶出され、その後、TG1細胞内に再感染された。
【0165】
ペリプラズム抽出物の作製(小スケール)
個々の大腸菌クローンにおいて、可溶性Fabの産生が行われた。対数増殖期の大腸菌TG1細胞は、1-チオ-β-D-ガラクトピラノシドイソプロピルを用いて誘導された。可溶性Fabを含有するペリプラズム抽出物は、以下の凍結/融解サイクルにより作製された:細菌細胞沈殿物を一晩、-20℃で凍結させ、その後室温で融解させ、PBS pH7.4中に再懸濁させた。室温で振とうし、遠心分離を行った後に、可溶性Fabを含有する上清を収集した。
【0166】
IgGの発現および精製
h224G11および移植したもの(Graft)を合わせたリードパネルの抗C-MET抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインをコードする哺乳動物コドン最適化合成遺伝子を、IgG4(S228P)(「IgG4(S228P)」;分子の三次構造を安定化させるヒンジ内にS228P変異を含有するヒトIgG4)およびヒトCκドメインをそれぞれ含有する哺乳動物発現ベクター内にクローン化した。哺乳動物発現系において、重鎖および軽鎖を含有するベクターの共トランスフェクションを実施し、次いでプロテインA系のIgG精製、定量、ならびに変性SDS-PAGEおよび非変性SDS-PAGE上でQCを行った。
【0167】
FabおよびIgGに対する直接結合ELISA
組換えタンパク質に対するリードパネルの結合および交差反応性は、最初に結合ELISAにより評価された。ヒトC-METヒトFcタグ化組換えタンパク質、およびカニクイザルC-METヒトFcタグ化組換えタンパク質で、MaxiSorp(商標)平底96ウェルプレートの表面上を1μg/mlでコーティングした。精製されたIgGサンプルは、500nMから始まり0.98nMまでの2倍連続希釈で漸増して、コーティングされた抗原に結合できるようにした。Fabは、マウス抗c-myc抗体、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したロバ抗マウスIgGを使用して検出した。IgGは、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したマウス抗ヒトIgGを使用して検出した。結合シグナルは、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質溶液(TMB)を用いて可視化され、吸光度は450nmで測定された。過去に記載(Avery et al.,2018,MAbs 10(2),244-255を参照のこと)されるように、非特異的結合およびPKリスクを算出する、負電荷を帯びた生物分子表面上でのELISAを介したIgG結合解析が行われた。
【0168】
IgG4(S228P)抗体に対する、Alphascreenエピトープ競合アッセイ
AlphaScreenアッセイ(パーキンエルマー社)は、384ウェルの白色マイクロタイタープレート(グライナー社)において25μlの最終量で実施した。反応緩衝液は、1xPBS pH7.3(Oxoid社、カタログ番号BR0014G)および0.05%(v/v)のTween(登録商標)20(シグマ社、カタログ番号P9416)を含有した。精製したIgGサンプルは、50nMの最終濃度で始まる3倍連続希釈で漸増され、室温で20分間、1nMの最終濃度でビオチン化ヒトC-MET-His(Acrobiosystems社)とともにインキュベートした。親IgGおよび抗ヒトIgG4(S228P)アクセプタービーズを添加し、混合物を室温で1時間インキュベートした。次いで、ストレプトアビジンドナービーズを添加し、室温で30分間インキュベートした。発光は、EnVisionマルチラベルプレートリーダー(パーキンエルマー社)において測定され、EnVisionマネージャーソフトウェアを使用して解析した。値は、1秒当たりのカウント数(CPS:Counts Per Second)として報告され、クロストークに対して補正した。
【0169】
単量体型のヒトおよびカニクイザルのC-MET溶液に対する、IgGアフィニティのビアコア(Biacore(登録商標))解析
精製したIgGのアフィニティ(KD)は、Biacore(登録商標)3000(GE社)上で、抗原溶液を用いてSPRを介して決定された。マウス抗ヒト抗体(CH1特異的)を、2チャンネル用のウィザード指示に従い、pH4.5の酢酸緩衝液中、アミンカップリングを使用してCM5センサーチップ上に2000RUレベルにまで固定した。1つのチャンネルは、バックグラウンドシグナルの補正用に使用した。標準的なランニング緩衝液であるHBS-EP pH7.4を使用した。10μlの10mMグリシンをpH1.5で、20μl/分で単回注入することにより、再生を行った。IgGサンプルは、30μl/分、50nMで2分間注入され、その後、60秒間の解離速度(off-rate)が続いた。単量体抗原(ヒトC-MET HisタグしたまたはカニクイザルC-MET Hisタグ)は、100nMから6nMへと希釈する2倍連続希釈で、2分間、30μl/分で注入され、次いで300秒の解離速度が続いた。得られたセンサーグラム(sensorgram)は、Biacore(登録商標)3000エバリュエーション(BIAevaluation社)ソフトウェアを使用して解析した。KDは、1:1のラングミュア結合モデルに対し、会合相および解離相の同時フィッティングを行うことにより算出した。
【0170】
IgGのフローサイトメトリー
精製したIgGを、CHO-K1安定発現株およびCHO-K1野生型細胞上で発現したヒトならびにカニクイザルのC-METに対する結合に関して、FACにおいて試験した。IgGサンプルは、500nMに始まり0.08nMまでの3倍連続希釈で漸増した。IgGの結合は、FITCに結合したマウス抗ヒトIgGを用いて検出した。結果は、フローサイトメーターのBL-1チャンネル検出器(Attune(商標)NxT Acoustic Focusing Cytometer、Invitrogen/ThermoFisher Scientific社)において、1サンプル当たり10000個の細胞の平均蛍光強度(MFI)を検証することにより解析した。EC50値は、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software社、カリフォルニア州ラホヤ)においてMFI値と、4つのパラメータとを使用して算出した。
【0171】
抗体v-ドメイン T細胞エピトープ含量:インシリコ分析
インシリコ技術(Abzena社(Abzena,Ltd.)は、治療用抗体および治療用タンパク質中のT細胞エピトープの位置の特定に基づいており、抗体v-ドメイン中の潜在的な免疫原性を評価するために使用した。iTope(商標)を使用して、ヒトMHCクラスIIに対して無差別的な高いアフィニティ結合を有するペプチドに関し、重要なリードのVL配列およびVH配列を解析した。無差別的な高いアフィニティのMHCクラスII結合ペプチドは、薬剤タンパク質の臨床免疫原性に関する高いリスク指標であるT細胞エピトープの存在と相関すると考えられている。iTope(商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と、34種のヒトMHCクラスIIアレルの開放末端結合溝(groove)内の特定の結合ポケット(特にポケット位置;p1、p4、p6、p7およびp9)との間の有益な相互作用を予測する。これらアレルは、広く存在する最も普遍的なHLA-DRアレルであり、任意の特定の民族集団で最も多く存在するものによって起こる重み付けはない。当該アレルのうちの20種が、「開いた」p1構造を含有している。そして14種が「閉じた」構造を含有しており、83位のグリシンがバリンで置換されている。重要な結合残基の位置は、被験タンパク質配列にわたり8アミノ酸が重複している9merペプチドのインシリコ生成により取得される。このプロセスによって、MHCクラスII分子に結合する、または結合しないペプチド同士を高い正確性で識別することに成功した。
【0172】
さらに、TCED(商標)(T細胞エピトープデータベース(T Cell Epitope Database(商標)))を使用して配列を解析し、過去にインビトロでの他のタンパク質配列のヒトT細胞エピトープマッピング解析により特定されたT細胞エピトープとの合致を検索した。TCED(商標)を使用して、非関連タンパク質に由来するペプチドの大きな(10,000個を超えるペプチド)データベースに対する任意の被験配列と、抗体配列とを検索する。
【0173】
示差走査熱量測定(DSC)解析
被験物質のTmは、MicroCal PEAQ-DSC(Malvern Instruments社、英国モルバーン)ランニングバージョン1.22ソフトウェアを使用して解析した。20~110℃の範囲にわたり200℃/時の速さでサンプルを加熱した。温度データは、タンパク質濃度に基づき正規化された。タンパク質のTmは、加熱スキャンデータから決定された。
【0174】
電荷バリアントアッセイ
被験物の電荷バリアントのプロファイリングは、LabChip GXII Touch HT(パーキンエルマー社、英国ベコンズフィールド)において、製造元のプロトコルに従って、タンパク質電荷バリアントアッセイにより決定した。
【0175】
等電点電気泳動アッセイ
リードIgG4(S228P)タンパク質について、IEF解析を実行し、pIでの可能性のある差異を評価した。電気泳動は、Invitrogen(商標)Novex(商標)pH 3-10 IEFタンパク質ゲルにより、Novex(商標)IEF サンプル緩衝液pH 3-10、Novex(商標)IEF Anode and Cathode緩衝液を用いて実行した。
pI値は、IEF pIマーカー値(Serva社)に基づいて評価した。ブレンツキシマブおよびインフリキシマブのIgG1を対照として含めた。
【0176】
結果および考察
好ましいヒト生殖細胞系列v-遺伝子へのCDR移植
アンタゴニストマウス抗C-MET IgG 224G11のCDR(224G11;国際公開第2011151412A1号および表2を参照のこと)を、CDR移植法を使用して、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンv-ドメインフレームワーク配列スキャホールドに最初に導入した。最適な薬剤様性能を有する最終リード治療用IgG化合物に向けて、遺伝子操作努力を傾けるために、親抗体のCDRを、「好ましい」生殖細胞系列スキャホールドのIGHV1-46およびIGKV3-20に移植することを選択した。それらスキャホールドは、良好な溶解性、高い物理的安定性を有することが知られており、発現されたヒト抗体レパートリーにおいて高頻度に使用されている。
【0177】
これらスキャホールドおよび移植されたCDRの定義は、表2に概要を掲載した。キメラ抗C-MET抗体m224G11、およびヒト化h224G11の重鎖配列と軽鎖配列も表2に示す。このCDR移植のプロセスは周知であるが、ヒトv-ドメイン配列の所与のセットが非ヒトCDR移植にとって適切なアクセプターフレームワークとして機能するかどうかを予測するのは未だ困難である。不適切なフレームワークの使用は、標的結合機能の減少、タンパク質安定性の問題、さらには最終IgGの発現の低下につながり得る。そこでCDR突然変異誘導の鋳型としてIGHV1-46/IGKV3-20移植が採用され、改善クローンの選択が行われた。
【0178】
ライブラリー作製およびスクリーニング
CDRが移植されたIGKV3-20/IGHV1-46のv-ドメイン配列を、Fabファージディスプレイ形式に組み込み、突然変異誘導ライブラリーカセットを、オリゴ合成およびアセンブリにより作製した。最終Fabライブラリーをファージディスプレイベクター内にライゲートし、エレクトロポレーション法を介して大腸菌内に形質転換して、2.5×109個の独立したクローンを生成した。ライブラリーの構造品質は、96個のクローンを配列解析することにより、両v-ドメインにわたって検証された。この配列解析データにより、マウスまたはヒトいずれかの生殖細胞系列の各相違位置の残基をコードする位置を、効率的におよそ50%の頻度(または例えば、3アミノ酸がコードされている位置の33%)でサンプリングされたことが示された。ライブラリーは、ヘルパーファージM13を使用してレスキューされ、選択はビオチン化されたヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcタンパク質に対し、複数の別個のブランチにおいて実施された。
【0179】
選択後スクリーニングおよびDNAシーケンシングにより、ELISA(
図1A)においてヒトおよびカニクイザルC-METに強い結合と、Alphascreenアッセイ(
図1B)においてヒトC-METへの224G11 IgG4(S228P)の結合の>50%の阻害とを示した、131個の固有のヒトおよびカニクイザルC-MET結合Fabクローンの存在が明らかになった。これら131個のクローンの中で、フレームワーク配列は完全に生殖細胞系列を維持していた一方で、すべてのCDR中におけるヒト化変異も観察された(表3)。リードクローンは、ヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcの両方への結合に対するELISAシグナルと比較したCDR生殖細胞系列化のレベルに基づき格付けされた。次いでこの格付けの上位9個のクローンのv-ドメインをIgG発現ベクターにサブクローニングし、以下のさらなる検証を行った(表4)。
【0180】
生殖細胞系列化変異は、ライブラリー選択から直接誘導されたリードクローンのすべてのCDRにおいて観察されたが、配列解析を行うことで、ヒト化が最大となるようクローンをさらに設計することが可能となる可能性がある。したがって、ヒトおよびカニクイザルのタンパク質に対する結合シグナルを有する131個の配列-固有ヒットを使用して、この機能的に特徴解析された集団のCDRにおけるマウスアミノ酸の保持頻度を解析した。位置的なアミノ酸保持頻度は、V
LドメインおよびV
Hドメインでの百分率として表されている(それぞれ
図2Aおよび2B)。RF<75%を有するマウス残基は、一連のコンビナトリアルデザインにおいて、標的-結合パラトープに必須ではない可能性がある位置とみなされ、生殖細胞系列化に対し開かれている可能性がある(表4)。驚くべき知見では、HCDR1およびHCDR2における10個のマウス残基で、75%より高い保持頻度を呈するものはなかった(
図2A)。この解析は、HCDR3外側のVH配列全体が、IGHV1-46に対して生殖系列同一性を与える可能性があることを強く示唆した。対照的に、V
Lドメインにおいて、h224G11配列由来の16個のマウスCDR残基のうち8個が、>75%の頻度で保持されていた(
図3A)。
【0181】
RF>75%のそれらマウス残基の組合せを含有するデザインには、「MH」という接頭辞(MH=最大限にヒト化(Maximally Humanized))をつけた。トータルで、以下の4個のデザインVHドメインおよび3個のデザインVLドメインが生成された:これら構造は、マトリックス化された手法により共トランスフェクトされて、合計で12個の最終デザインIgGを生成する(表4)。MHおよびライブラリー由来クローンのv-ドメインは、遺伝子合成により生成され、(コントロール抗体に加えて)ヒト発現ベクターにクローニングされ、IgG4(S228P)形式で作製された。すべてのIgGが、哺乳動物細胞の一過性トランスフェクションから容易に発現され、精製された。
【0182】
リードIgGの特異性および有効性の特徴解析
次いで上述の精製IgGを、直接力価測定ELISA形式において、ヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcへの結合に関して試験した(
図3Aおよび3B)。この解析により、全てのライブラリー由来クローンおよびデザイン(MH)クローンが、h224G11 IgG4(S228P)と同等またはh224G11 IgG4(S228P)よりも改善した、ヒトおよびカニクイザルのC-METに対する結合活性を保持することを示した。
【0183】
ビオチン化単量体型ヒトC-METに対するh224G11 IgG結合とのエピトープ競合に関するIgGの試験が可能であるAlphascreenアッセイを確立した。このアッセイにおいて、上位の性能を有するライブラリー由来IgGおよびデザインIgGは、より効率的に識別された。全てのクローンは完全に濃度依存性の中和を示し、また多くのクローンはh224G11に対して同等または改善されたh224G11エピトープに関する競合を示したが(
図4)、いくつかは、以下を含む弱い作用のエピトープ競合を示した:08B12、04E10、09B08、07C10。
【0184】
結合アフィニティのビアコア(Biacore(登録商標))解析は、すべてのIgGに関して、液相の単量体型ヒトおよびカニクイザルのC-METタンパク質に対して実施された。全ての場合において、低いChi
2値を伴う正確な1:1結合アフィニティが得られた(表5)。これらの解析から、FabおよびIgGのELISAならびにAlphascreenアッセイにおいて最も高いEC50値およびIC50値を一貫して与えるライブラリー由来クローンは、ヒトおよびカニクイザルのC-METに対し最も高いアフィニティ結合も示したことが示された。予期せずに、ライブラリー由来クローン08G07、04F09、09E04、07A01およびデザインクローンMH4およびMH7の全てが、h224G11と比較して有意に改善されたヒトC-METへの結合アフィニティを示した(表5)。重要なことは、これらアフィニティにおける改善は、カニクイザルでの結合でも反復され、これらクローンのそれぞれはヒトC-METアフィニティの2倍以内のアフィニティを呈した。ヒトおよびカニクイザルの標的オルソログの間で3倍未満のアフィニティ差であることは、前臨床薬剤開発解析において非常に有益であり、これによって例えばサルの安全性試験、PKおよびPDのモデリング試験などの有意に良好なデザインおよび解釈が可能となる。ビアコア(Biacore(登録商標))解析はまた、Alphascreenアッセイ(
図4)でのクローン08B12、04E10、09B08、07C10で観察されたエピトープの競合能の低下が、結合エピトープでの何らかの変化ではなく、ヒトC-MET結合アフィニティの低下により引き起こされていることを示した。
【0185】
さらに、MHクローンのアフィニティの比較で、結合アフィニティの維持におけるLCDR3の影響が確認されたが、これは3位および4位の残基「SK」の変異がいずれも、ヒトおよびカニクイザルC-METに対して、クローンMH7と比較して、クローンMH8およびMH9に関するKDが約10から20倍低下するという結果を生じたことによる(表5)。クローンMH4およびMH10の比較でもまた、8位のHCDR1残基の変異(TからA)が、クローンMH10におけるヒトC-METへの結合アフィニティの約2倍の低下を導くが、カニクイザルC-METのアフィニティで有意な低下はなかったことが確認された(表5)。しかしながら、重要なことには、このクローンMH10におけるTからAへの変異が、ヒト生殖細胞系列配列IGHV1-3に対して、HCDR1の完全生殖細胞系列を与えた。IGHV1-3およびIGHV1-46は、TからAへの変異からNまたはC末端のいずれかの方へ向けて配列同一の10個のアミノ酸であるため、これによりチミン耐性に起因してヒトT細胞エピトープが完全に脱免疫化したHCDR1配列にさせる(ヒトT細胞エピトープはコア9-merアミノ酸配列に基づく)。
【0186】
上記に概要を示した知見により、MH7クローンは、VHドメインにおける単一の非生殖細胞系列のアミノ酸(HCDR3を除くものであり、それには対応する生殖細胞系列がない)のみを保持しながら、h224G11の結合アフィニティ、エピトープ特異性および種の交差反応性を完全に保持(およびそれよりも改善)することができることが確認された。さらに、MH7の完全に生殖細胞系列化されたHCDR2は、以下のh224G11抗体に存在する3個の潜在的なアミノ酸開発ライアビリティ(development liability)配列を除去した:3位(W)の推定上の酸化リスクに加えて、7および8位(いずれもN)の2つの脱アミド化リスクモチーフ。軽鎖MH7では、h224G11にある以下の3個のさらなる開発ライアビリティ配列が除去される:LCDR1の7位における「DS」アスパラギン酸異性化モチーフ、およびLCDR1の13位(F)における酸化リスク、およびLCDR3の6位における「DP」酸加水分解モチーフ。一次配列におけるこれら改善は、抗体療法の製造および臨床開発の両方における直接の結果であるが、これはそれらがすべて可能性のあるタンパク質分解リスクモチーフであり、内在性の製品不均一性を導くことによる。こうしたリスクモチーフは、開発予算の問題につながり得、そこでインタクトな抗体の収率を最大化し、製品不均一性を最小限にするために、複数のプロセス改変がなされなくてはならない。分解モチーフはまた、臨床開発リスクでもあるが、これは体内で抗体分解が加速すると、分子の半減期と有効性との両方が低下する可能性があるからである。
【0187】
細胞膜でのリードIgG結合特異性のフローサイトメトリー解析
C-METに対する抗体を、フローサイトメトリーを介して、細胞表面での濃度依存性結合に関して分析した。ヒトまたはカニクイザルのいずれかのC-MET全長cDNAを用いてCHO-K1細胞に安定的にトランスフェクトした。次いで抗C-MET IgGおよびアイソタイプコントロールIgG4(S228P)を全て、ヒトCHO-K1細胞(
図5A)およびカニクイザルCHO-K1細胞(
図5B)への結合に関して、500~0.08nMの濃度範囲にわたってIgG4(S228P)形式で試験した。アイソタイプコントロール以外のすべてのIgGが、ヒトおよびカニクイザルのC-MET+細胞に対し、h224G11と同等のまたはh224G11よりも改善された濃度依存性の結合を示した。各ケースにおいて、最大MFIは、アイソタイプIgG4に関して観察されたバックグラウンドシグナルよりも10倍超高かった。MH1、MH4、MH7およびMH10をはじめとするいくつかのクローンが、h224G11と比較して、ヒトおよびカニクイザル+ CHO-K1細胞に対するより強い結合特性および改善されたEC50値を呈した(表6)。
【0188】
抗体v-ドメインT細胞エピトープ解析
インシリコ技術(Abzena社(Abzena,Ltd.))は、治療用抗体および治療用タンパク質中のT細胞エピトープの位置の特定に基づいており、h224G11およびリード抗体のv-ドメインの両方の免疫原性の評価に使用した。v-ドメイン配列の解析は、重複する9merペプチド(各々が最後のペプチドと8残基重複する)を用いて実施され、34種のMHCクラスIIアロタイプの各々に対して試験した。各9merを、MHCクラスII分子との潜在的な「適合」および相互作用に基づいてスコア化した。ソフトウェアにより算出されるペプチドスコアは、0~1の間である。高い平均結合スコアを出したペプチド(iTope(商標)スコアリング機能において>0.55)が強調された。MHCクラスII結合ペプチドの>50%(すなわち34種のアレルのうちの17種)が高い結合アフィニティ(スコア>0.6)を有する場合、そうしたペプチドは、「高アフィニティ」MHCクラスII結合ペプチドとして規定され、CD4+T細胞エピトープを含有するリスクが高いとみなされる。低アフィニティMHCクラスII結合ペプチドは、多くのアレル(>50%)に、>0.55の結合スコア(しかし大部分は>0.6ではない)で結合する。配列のさらなる解析は、TCED(商標)を使用して実施された。この配列を使用して、BLASTサーチによりTCED(商標)をデータ検索し、過去にAbzena Ltd.社で実施されたインビトロT細胞エピトープマッピング研究でT細胞反応を刺激した非関連タンパク質/抗体由来のペプチド(T細胞エピトープ)間で任意の高い配列相同性を特定した。
【0189】
ペプチドを、以下の4つのクラスに分類した:高アフィニティ外来物(「HAF」-高免疫原性リスク)、低アフィニティ外来物(「LAF」-低免疫原性リスク)、TCED+(過去にTCED(商標)データベースにおいて特定されたエピトープ)、および生殖細胞系列エピトープ(「GE」-高いMHCクラスII結合アフィニティを有するヒト生殖細胞系列ペプチド配列)。生殖細胞系列エピトープの9merペプチドは、広範な生殖細胞系列ペプチドを用いた過去の研究により立証されたように、T細胞寛容によって免疫原性である可能性は低い。重要なことは、そうした生殖細胞系列のv-ドメインエピトープ(ヒト抗体定常領域中の類似配列によりさらに補助される)は、抗原提示細胞の細胞膜でのMHCクラスII占有に関しても競合するため、T細胞刺激に必要とされる「活性化閾値」を達成するのに充分な外来性ペプチド提示のリスクを低下させることである。ゆえにGE含量が高いことは、抗体治療剤の臨床開発において有益な性質である。
【0190】
表7に示すように、h224G11 v-ドメインの配列は、生殖細胞系列フレームワーク配列上にヒト化されているにもかかわらず、有意な外来性エピトープリスクを含有することがわかった。VLドメインでは、h224G11が、2つのHAFペプチドモチーフ(「LLIYRASTR」(配列番号91)および「IYRASTRES」(配列番号92)、いずれもLCDR2残基を含有する)と、1つのLAFモチーフ(「VAVYYCQQS」(配列番号93))を含有することがわかった。VHドメインでは、h224G11はまた、2つのHAFペプチドモチーフ(HCDR1残基を含有する「IFTAYTMH」(配列番号94)、およびHCDR3残基を含有する「VYYCARSEI」(配列番号95))と、1つのLAFモチーフ(HCDR2残基を含有する「MGWIKPNNG」(配列番号96))を含有することがわかった。
【0191】
重要なリードv-ドメインは、h224G11と比較してペプチドエピトープ含量において有意に有益な変化を示した(表7)。本明細書において採用したv-ドメインの操作プロセスは、h224G11のCDR中に含有されるマウス残基(表2、表4)を必要とすることなく、抗METの有効性を維持した抗体の選択に成功した。そのため、h224G11のv-ドメインにある複数のHAFおよびLAFのエピトープは、ライブラリー由来リードおよびデザインリードにおいて除かれ、HAFおよび/またはLAFの含量の減少につながった(表7)。GEエピトープ含量もまた、リードクローンのVH領域内で有意に増加しており、またTCED+エピトープは、あらゆるリードクローンにおいて観察されなかった(表7)。これら知見は、クローンMH7で例示されるものであり、VHドメインCDR1およびCDR2のほぼ完全な生殖細胞系列化が、開発ライアビリティ配列(上記に記載したような)を除去するのみならず、フレームワーク、2つのHCDR2(「LEWMGIINP(配列番号97)」および「MGIINPSGG」(配列番号98))にわたる2つの新規のGEを存在させながら、HAFペプチドモチーフ「IFTAYTMHW」(配列番号97)およびLAFモチーフ「MGWIKPNNG」(配列番号96)を除く。したがってクローンMH7は、そのVHドメイン内に、単一の可能性のある外来性エピトープのみを残していた(表7)。
【0192】
重要なことは、いくつかのリード内の開発ライアビリティ配列を除去したLCDR1内で行われる広範囲の突然変異誘発は(表4)、T細胞エピトープリスクモチーフを何も生成しないということが観察されたことである。h224G11 VL配列内にある複数の外来性エピトープも、リードクローンのCDR中に存在する生殖細胞系列化変異によって除去された。例えば、h224G11のLCDR2に存在するHAFペプチド「IYRASTRES」(配列番号92)は、9位でのSからTへの変異を含有するすべてのリードクローン内で除かれたことがわかった(表4)。同様に、h224G11のLCDR3におけるLAFペプチドモチーフは、複数のライブラリー由来クローンおよびデザインクローンに存在するようなLCDR3配列「QQYGSEPLT」(配列番号53)および「QQSKESPLT」(配列番号47)において除かれた(表4)。クローンMH7および07A01の両方が、免疫原性が低くまたh224G11に対して維持されたエピトープ特性および改善されたアフィニティを示す複数のCDR配列を含有する場合(表5、
図4)、上記知見により、第二世代の最大限に脱免疫化されたクローンMH7-1、MH7-2およびMH7-3の設計を可能になる(表7、表8)。クローンMH7-3は、クローンMH7の予測される免疫原性の改善を行うのみならず、モチーフ「QS」でLCDR1の11位および12位のアミノ酸「NS」を置換することによって、最終CDRアミノ酸のライアビリティモチーフ(脱アミド化リスク部位)の除去も行う(表8)。
【0193】
第二世代デザインクローンの解析
クローンMH7-1、MH7-2およびMH7-3は、容易に発現されてIgG4(S22P)として精製され、次いで、直接的力価測定ELISAフォーマットでヒトおよびカニクイザルのC-MET-Fcへの結合を試験した(
図6A、6B)。この解析により、3つのクローン全てが、h224G11、移植したもの(Grafted)、MH7および08G07 IgG4(S228P)のタンパクと同等またはそれらよりも改善した、ヒトおよびカニクイザルのC-METに対する完全結合活性を保持することを示した。
【0194】
次いで上記に記載したようなAlphascreenアッセイを用いて、ビオチン化単量体型ヒトC-METに対するh224G11 IgG結合とのエピトープ競合に関するIgGの試験を可能にした。この解析により、3つのクローン全てが、h224G11と同等の完全エピトープ反応性を保持したことが示された(
図7)。
【0195】
フローサイトメトリー解析で、クローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3、h224G11、移植したもの(Grafted)、およびアイソタイプコントロールIgGをそれぞれ、ヒトCHO-K1細胞(
図8A)、カニクイザルCHO-K1細胞(
図8B)および非トランスフェクトCHO-K1細胞(
図8C)への結合に関して、500~0.08nMの濃度範囲にわたって、IgG4(S228P)形式で試験した。アイソタイプコントロール以外のすべてのIgGが、ヒトおよびカニクイザルのC-MET+細胞に対し、h224G11と同等のまたはh224G11よりも改善された濃度依存性の結合を示した。各ケースにおいて、最大MFIは、アイソタイプIgG4に関して観察されたバックグラウンドシグナルよりも10倍超高かった。非トランスフェクト細胞に対するIgGの結合は何も観察されなかった。
【0196】
ヒトにおける低いPKのリスクを特定するために設計された多反応性(polyreactivity)のELISAにおいて(Avery et al.Mabs,2018)、クローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3およびh224G11の全てが、インスリンおよびdsDNAの両方に対して、ベースラインシグナルを示した(反応性スコアは全て1.0)。これらシグナルは、陰性対照である、臨床的に承認された抗体ベバシズマブおよびウステキヌマブのもの(スコア4.0~6.0)よりも低かった。ヒトにおいてPKが短いことで悩まされる、陽性対照抗体、ブリアキヌマブおよびボコシズマブは、いずれも、>15.0の強い陽性シグナルを呈した。
【0197】
精製した組換え外部ドメインに対する結合親和性のビアコア(Biacore(登録商標))解析において、クローンMH7-1、MH7-2、MH7-3は全て、ヒトおよびカニクイザルのC-METのオルソログに対して高い結合アフィニティを保持した(表9)。
【0198】
電荷バリアント解析
電荷の不均一性解析は、産物の品質、均一性および安定性についての情報を提供するということから、モノクローナル抗体の特徴解析で重要である。組換えタンパク質における不均一性は、酵素的な翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リジン切断)または精製中および保存中における化学修飾(例えば、酸化または脱アミド化)により生じる可能性がある。LabChip(登録商標)GXII Touch HT等のタンパク質電荷バリアントアッセイは、メインピークに対して相対的に塩基性および酸性であるタンパク質バリアントの特定を可能にする。このマイクロ流体チップ技術は、蛍光標識後のタンパク質電荷バリアントを電気泳動的に分離する。IgG4(S228P)形式の6つの抗体(08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3およびh224G11)の電荷バリアントプロファイルは、この方法を用いて解析して、
図10に示す。通常、ヒトIgGでは、IgG4形式のh224G11は、見かけ上の低いpIを有していることに起因して(製造元の推奨では、メインアイソフォームのpI範囲は7.0~9.5である)、利用可能なアッセイでの完全な溶解は達成されず、そのため、このタンパク質が他と同様に解析されたときに3つのアイソフォームのみが特定され、より酸性のアイソフォーム(pI<7.0)は、おそらく溶解が不可能であった(
図10)。対照的に、IgG4形式のクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3は、より均一で、よく溶解し、複合体性が低いことを示し、メインアイソフォームは、総タンパク質のうちの60%以上に値した。
図10に示すプロファイルは、h224G11 IgG4のメインアイソフォームのpIが7.0に近く、一方で、クローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2およびMH7-3のIgG4のpIはすべて、それらの一次CDR配列において負電荷を帯びた残基の数が低下することに起因して、h224G11と比較して有意に高いことを示唆した。さらに、h224G11と比較して、クローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2およびMH7-3のCDRにおいて脱アミド化リスクモチーフの含量の低下が、-ve電荷(酸性の)のバリアントの存在をさらに減少させ得る。このIgG4形式におけるリードクローンのpIがh224G11よりも予期せずに顕著に高かったことは、治験薬において高度に有益である可能性をもつ。抗体液剤で使用する緩衝液のpHは、例えば保存中の脱アミド化事象の進行を最小限にするために、pH6等である酸性のpHであることが好ましい。したがって、溶液中での抗体の凝集リスクを最小限にするために、pH7.4より高い、好ましくはpH8.0を超える塩基性の範囲である主要な機能性のpIを有することが、最終抗体にとって有益である。
【0199】
さらに、IgG4(S228P)形式での抗体08G07、MH7、MH7-1、MH7-2、MH7-3およびh224G11は全て、DSCアッセイで解析し、それらの熱的安定性、分子の全体的な物理的安定性に関する代理測定を確率した(
図11)。6つのIgGは全て、狭い範囲にわたるTm値(77.2~80.6℃)をもつ、高度に類似する、熱的安定なFab構造を有することがわかった。
【0200】
h224G11の電荷アイソフォームの完全な分散が、電荷バリアントアッセイを介して解消されなかったため、h224G11およびリードクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2およびMH7-3のpI特性は、等電点電気泳動(IEF)を介して実験的に調べた。コントロールIgG1タンパク質のブレンツキシマブおよびインフリキシマブはまた含まれており、予測された特性を示した(
図12)。この解析における電荷バリアントアッセイの知見で、クローンh224G11は、08G07、MH7、MH7-1、MH7-2およびMH7-3に関して観察されたよりも有意に低いpI範囲を呈するということが確認された(
図12)。クローンh224G11に関して、そのIgG4(S228P)タンパク質は、7.4から約8.2のpI範囲にわたって可視的な電荷アイソフォーム(IEFにおけるバンド)を示した。7.4の範囲における電荷アイソフォームは、製剤リスクのみならず、血液中の溶解性が低いリスクもまたあり、これはそれらのpIが、哺乳動物の血液のpHと同じであることで、ヒトにおいてインビボ凝集の可能性につながるからである。対照的に、リードクローン08G07は、>7.8から約8.3という可視的なアイソフォームを示した(
図12)。重要なことは、クローンMH7、MH7-1、MH7-2およびMH7-3の全てが、08G07よりもはるかに向上していることである。実際には、クローンのpIにおける飛躍的な進歩は、可視的なアイソフォームのpIが8.0から>8.3の範囲であり、メインアイソフォームは8.3であるような、クローンMH7.3までであることが明らかであった(
図12)。全てのリードクローンのv-ドメインフレームワーク領域が同一である場合、この知見は再び、非ヒト突然変異誘発の付加ならびにCDRにおける負電荷を帯びた残基およびアスパラギンの除去により、CDRループにおける翻訳後修飾のリスクの低減を特異的に導くのみならず、リードクローンの全体的な真のpI値が有意に改善されることで、全てのクローン08G07、MH7、MH7-1、MH7-2およびMH7-3の製剤品質およびインビボでの潜在的な性能が向上することを示した。
【0201】
本明細書に概要される解析を組み合わせると、驚くべきことに、これら抗体のCDRにおいて、生殖細胞系列と非生殖細胞系列のアミノ酸の両方を深くサンプリングすることで、最終分子の有効性または生物物理学的安定性を有意に妥協することなく、最終分子において免疫原性リスクおよび化学的安定性のリスクを同時に最適化することが可能となったことが示された。
【0202】
本発明は好ましい実施形態または例示的実施形態を参照して記載されているが、当業者であれば、本発明の主旨および範囲を逸脱することなくそれらに対する様々な改変および変動を行うことが可能であること、およびそうした改変は本明細書において予期されることが明白であると認識するであろう。本明細書に開示される、および添付の特許請求の範囲に記載される特定の実施形態に関し、限定は意図されておらず、何らの示唆もないものとする。
【0203】
限定されないが特許、特許出願、記事、書誌、および論文を含む本明細書に引用されるすべての書面、または書面の一部は、その全体ですべての目的に対し、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。組み込まれた書面、または書面の一部の1つまたは複数が、本出願の用語定義と矛盾する用語を定義する場合、本出願にある定義が優先される。しかしながら、本明細書に引用されるすべての参照文献、記事、公表文献、特許、公表特許、および特許出願に関する言及は、それらが正当な先行技術を構成する、または世界の任意の国における普遍的で一般的な知識の一部を形成するという承認、または任意の形態の示唆として見なされず、または見なされるべきではない。
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表4-1】
【表4-2】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【配列表】