(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】CD47結合剤
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240325BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240325BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240325BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240325BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240325BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240325BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240325BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240325BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240325BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20240325BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20240325BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240325BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240325BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240325BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240325BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240325BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240325BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K51/10 100
A61K45/00
A61K47/66
A61K47/68
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P9/00
A61P1/00
A61P17/06
A61P11/06
A61P19/08
A61P19/02
A61P9/10 101
A61P9/10
(21)【出願番号】P 2020552716
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2019057723
(87)【国際公開番号】W WO2019185717
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】523473165
【氏名又は名称】センテッサ ファーマシューティカルズ (ユーケー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【氏名又は名称】長谷部 真久
(72)【発明者】
【氏名】フィンレー,ウィリアム ジェームズ ジョナサン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD47抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗体又は抗原結合部分は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含有し、
(a)VH領域のアミノ酸配列が、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2、及びGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2、及びFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含む、又は
(b)VH領域のアミノ酸配列が、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2、及びGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列が、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2、及びFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含む、
抗CD47抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
(a)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含有し、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号2を含む、
(b)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号3を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号4を含む、又は
(c)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号5を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号6を含む、
請求項1記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項1又は2に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項4】
前記VH領域、前記VL領域、又は前記VH領域及び前記VL領域の両方が、1つ又は複数のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項5】
前記VH領域、前記VL領域、又は前記VH領域及び前記VL領域の両方が、前記CDRが挿入されたヒト可変領域フレームワークスキャホールドのアミノ酸配列を含有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項6】
前記VH領域が、前記HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列が挿入された、IGHV5-51又はIGHV1-3のヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項7】
前記VL領域が、前記LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列が挿入されたIGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1又は6に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体又は抗原結合部分が、免疫グロブリン定常領域を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項9】
前記免疫グロブリン定常領域が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgYである、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項10】
前記免疫グロブリン定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2である、請求項9に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項11】
前記免疫グロブリン定常領域が、免疫学的に不活性である、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項12】
前記免疫グロブリン定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、L234A、L235A及びG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域、又は野生型ヒトIgG2定常領域であり、番号付けがKabatにあるEUインデックスに従う、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項13】
前記免疫グロブリン定常領域が、配列番号17~23のいずれか1つを含有する、請求項8に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項14】
前記抗体又は抗原結合部分が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又はbis-scFvである、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗体又は抗原結合部分がモノクローナルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項16】
前記抗体又は抗原結合部分が、四量体、四価、又は多特異性である、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項17】
前記抗体又は抗原結合部分が第一の抗原及び第二の抗原に特異的に結合する二特異性抗体又は二特異性抗原結合部分であり、前記第一の抗原がCD47であり、前記第二の抗原がCD47ではない、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項18】
前記抗体又は抗原結合部分が、(a)ヒトCD47に特異的に結合する、又は(b)ヒトCD47及びカニクイザルCD47に特異的に結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項19】
治療剤に結合された請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分を含有する免疫結合体。
【請求項20】
前記治療剤が、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解性酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、又はアポトーシス促進剤である、請求項19に記載の免疫結合体。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、又は請求項19又は20に記載の免疫結合体と、
薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤と、
を含有する医薬組成物。
【請求項22】
核酸分子であって、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分のVH領域及びVL領域の両方のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸分子を含有する発現ベクター。
【請求項24】
請求項22に記載の核酸分子、又は請求項23に記載の発現ベクターを含有する組換え宿主細胞。
【請求項25】
抗CD47抗体又はその抗原結合部分を作製する方法であって、
核酸分子が発現される条件下で、請求項24に記載の組換え宿主細胞を培養し、それにより抗体又は抗原結合部分を作製することと、
前記宿主細胞又は培養物から、前記抗体又は抗原結合部分を単離することと、
を含む、方法。
【請求項26】
対象における免疫反応を強化するために使用される、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、請求項19又は20に記載の免疫結合体、又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項27】
癌、自己免疫性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、又は線維症の治療における使用のための請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分
、請求項19又は20に記載の免疫結合体、又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記癌が、消化管間質癌(GIST)、膵臓癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳腫瘍又は中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌又は子宮内膜癌、口腔又は咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆管癌、小腸癌又は虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、又は血液組織の癌である、請求項27に記載の
抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項29】
前記自己免疫性疾患又は前記炎症性疾患が、関節炎、喘息、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス(lupus)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、又は強直性脊椎炎である、請求項27に記載の
抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項30】
前記心血管疾患が、冠動脈心疾患又はアテローム性動脈硬化症である、請求項27に記載の
抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項31】
前記線維症が、心筋梗塞、狭心症、変形性関節症、肺線維症、嚢胞性線維症、気管支炎又は喘息である、請求項27に記載の
抗体又は抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項32】
医薬品としての使用のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、請求項19又は20に記載の免疫結合体、又は請求項27に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月22日に出願された英国特許出願第1813693.7号明細書、および2018年3月27日に出願された英国特許出願第1804860.3号明細書の利益を主張するものであり、それら開示内容は、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されるテキストファイルに関する説明
本明細書とともに電子的に提出される以下のテキストファイルの内容は、その全体で参照により本明細書に援用される:コンピューター読み取り可能な形式の配列表のコピー(ファイルの名称:ULTW_001_02WO_SeqList_ST25.txt、データ記録日:2019年3月26日、ファイルサイズは145,923バイト)。
【0003】
本発明は、CD47(分化クラスター47であり、インテグリン関連タンパク質[IAP]としても知られる)に特異的に結合する抗体分子およびその医療用途に関する。
【背景技術】
【0004】
CD47(インテグリン関連タンパク質[IAP]としても知られる)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質であり、また膜インテグリン、トロンボスポンジン1(TSP-1)およびシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)をはじめとするいくつかの公知のパートナーと結合する。CD47は、細胞のアポトーシス、増殖、接着、および遊走をはじめとする細胞内プロセスの範囲と関連し、重要なことには、それが、免疫反応および血管新生反応で重要な役割を果たす。CD47-SIRPαシグナル伝達は、マクロファージおよび他の骨髄性細胞による食作用の活性化を阻害する重要な分子相互作用である。このことが、腫瘍細胞の生存を促進するため、骨髄細胞系列特異的免疫チェックポイントとしての役割を果たす。
【0005】
前臨床エビデンスは、血液および固形の悪性腫瘍の両方についての多数の実験モデルにおいて、CD47-SIRPαシグナル伝達を遮断することにより、マクロファージの貪食作用を高めて、異種移植片の増殖を阻害することが可能であることを示唆している。マクロファージ活性はまた、組織線維化等である炎症関連の組織修復および動脈硬化プラークの形成の生物学において認識される因子であるため、CD47-SIRPαシグナル伝達の軸はまた、非癌性疾患における考慮すべき治療可能性のものでもある。ゆえに、抗CD47 mAbは、癌および他の環境において免疫治療剤として作用し、現在確立されている治療法の有効性を増幅させる可能性を有している。
【0006】
現在承認されている抗体治療剤の大部分は、免疫化されたげっ歯類に由来する。そうした抗体の多くが、マウスCDRのヒトv-遺伝子フレームワーク配列への「移植」を介した、「ヒト化」として知られるプロセスを経ている(Nelson et al.,2010,Nat Rev Drug Discov 9:767-774を参照のこと)。このプロセスは多くの場合、不正確であり、得られた抗体の標的結合アフィニティの低下が生じる。元の抗体の結合アフィニティに戻すために、通常、移植されたv-ドメインの可変ドメインフレームワーク中の重要な位置にマウス残基が導入される(「復帰突然変異(back-mutation)」としても知られる)。
【0007】
CDR移植および復帰突然変異によりヒト化された抗体は臨床において、完全マウスv-ドメインによるものと比較して低い免疫反応率を誘導することが示されているが、この基礎的な移植法を使用してヒト化された抗体は、物理的に不安定である可能性があり、移植CDRループ内に免疫原性モチーフがいまだ保存されていることから、いまだ重大な臨床開発リスクを負っている。例えば抗CD47等である抗体は、それらの作用機序の一部として免疫エフェクター機能を潜在的にもつものであって、CD47+標的細胞の食作用を促進し得るために免疫原性のリスクが特に高く、これは標的細胞に加えて抗体の抗原プロセシングを生じる。患者におけるこれら抗薬剤抗体反応は、臨床使用における薬剤の半減期、有効性および安全性も低下させ得る。タンパク質の免疫原性に関する動物実験は、ヒトでの免疫反応の予測とはならないことが多く、治療用途の抗体操作は、予測されるヒトT細胞エピトープ含量、非ヒト生殖細胞系列アミノ酸含量、および精製タンパク質が凝集してしまう可能性を最小化することに焦点が置かれている。
【0008】
ゆえに理想的なヒト化アゴニスト性抗CD47抗体は、v-ドメイン中に、詳細に特徴解析されたヒト生殖細胞系列配列のフレームワークとCDRの両方に存在する残基と同一の残基を可能な限り多く有している抗体である。Townsendら(2015;PNAS 112:15354-15359)は、抗体の作製方法を記載しており、当該方法においてラット抗体、ウサギ抗体およびマウス抗体に由来するCDRは、好ましいヒトフレームワーク内に移植され、次いで「拡張バイナリー置換(augmented binary substitution)」と呼ばれるヒト生殖細胞系列化(human germ-lining)方法が行われる。この方法は、元の抗体のパラトープにおいては基礎的な柔軟性を示したが、正確性の高い抗体-抗原の共結晶構造データが無い場合には、任意の所与の抗体のCDRループ中のどの個々の残基がどの組み合わせでヒト生殖細胞系列に転換され得るかを確実に予測することは不可能なままである。さらにTownsendらの研究では、ヒト生殖細胞系列中に存在する残基を超えた、開発リスクモチーフの除去が有益となる可能性がある位置に突然変異誘導を加えることには対処していない。これは技術の限界であり、この限界によってプロセスが本質的に非効率的となり、高リスクの開発困難性である抗体のままである。さらに現時点では、個々のv-ドメインのタンパク質配列で離れた位置にある改変のいずれが、リスクモチーフを排除しながら、抗原結合のアフィニティと特異性の維持を促進し得るのかは、たとえパートナーv-ドメイン上であったとしても正確に予測することはできない。
【0009】
このようにCDRの生殖細胞系列化および開発クオリティの最適化は複雑で多因子的な課題であるため、本例においては以下をはじめとする複合的な分子の機能特性が維持されるまたは改善されることが好ましい:標的結合特異性、ヒトおよび実験動物種(例えばカニクイザルとして知られるcynomolgus monkey、すなわちMacaca fascicularis)の両方に由来するCD47に対するアフィニティ、v-ドメインの生物物理的安定性、ならびに/またはIgG発現収率。抗体操作実験から、重要なCDR中のたった1つの残基位置での突然変異であっても、これら望ましい分子特性のすべてに対し劇的な影響を与え得ることが示されている。
【0010】
国際公開第2011143624A2号は、「5F9G4」と名づけられたアンタゴニスト性マウス抗CD47 IgG分子、ならびに5F9G4(h5F9G4)のヒト化型の調製を記載している。その5F9G4のヒト化型は、古典的なヒト化技術、すなわちKabat規定のマウスCDRをヒトの重鎖および軽鎖のフレームワーク配列に移植することにより作製されており、ヒトフレームワーク残基の一部は、対応する位置の5F9G4マウス残基に復帰突然変異されている可能性がある。上述の理由によって、国際公開第2011143624A2号に記載される5F9G4のヒト化型は理想的ではない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、多くの抗CD47抗体、およびその医療用途を提供する。
【0012】
本発明の1つの態様によると、ヒトCD47に、および任意でカニクイザルCD47にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分が提供され、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む。一部の実施形態では、VH領域は、IGHV5-51ベースのまたはIGHV1-3ベースのフレームワークを含む。一部の実施形態では、VL領域は、IGKV2-28ベースのフレームワークを含む。
【0013】
IGHV5-51のバックグラウンドでは、抗CD47抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-S-F-T-NまたはN(例えばS等)-Y-Nの保存的置換またはN(例えばS等)-Mの保存的置換またはM (例えばI等)-Hの保存的置換または任意のアミノ酸(例えばG等)(配列番号28)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:MまたはM(例えばI)-G-Tの保存的置換または任意のアミノ酸(例えばI等)-I-Y-P-G-Nまたは任意のアミノ酸(例えばD等)-Dまたは任意のアミノ酸(例えばS等)-D-T-Sまたは任意のアミノ酸(例えばR等)-Y-Nまたは任意のアミノ酸(例えばS、H等)-Qまたは任意のアミノ酸(例えばP等)-Kまたは任意のアミノ酸(例えば等)-F-Q/K-G/D(配列番号29)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Gまたは任意のアミノ酸(例えばQ等)-G-Yまたは任意のアミノ酸(例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W等)-R-Aまたは任意のアミノ酸(例えばI、T、V、W等)-Mまたは任意のアミノ酸(例えばA、E、K、L、P、Q、R、S、T、V、W等)-D-Y(配列番号30)と、を伴う重鎖可変領域を含んでもよい。
【0014】
IGHV1-3のバックグラウンドでは、抗CD47抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-T-F-T-Nまたは任意のアミノ酸(例えばD等)-Y-Nまたは任意のアミノ酸(例えばA等)-M-H(配列番号31)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:M-G-T-I-Y-P-G-N-D-Dまたは任意のアミノ酸(例えばN等)-T-Sまたは任意のアミノ酸(例えばK等)-Y-Nまたは任意のアミノ酸(例えばS等)-Q-K-F-Q-G(配列番号32)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Gまたは任意のアミノ酸(例えばQ等)-G-Yまたは任意のアミノ酸(例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W等)-R-Aまたは任意のアミノ酸(例えばI、T、V、W等)-Mまたは任意のアミノ酸(例えばA、E、K、L、P、Q、R、S、T、V、W等)-D-Y(配列番号30)と、を伴う重鎖可変領域を含んでもよい。
【0015】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR1は、配列GYTFTNYNMH(配列番号33、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR2は、配列MGTIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号34、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のHCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR3は、配列GGYRAMDY(配列番号35、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のHCDR3)を除外してもよい。
【0016】
抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR1:R-S-S-Q-S-IまたはI(例えばL等)-Vの保存的置換またはV(例えばL等)-Y の保存的置換またはY(例えばH等)-S-Nの保存的置換または任意のアミノ酸(例えばG、S、K等)-Gまたは任意のアミノ酸(例えばA、Y等)-Nまたは任意のアミノ酸(例えばQ、Y等)-Tまたは任意のアミノ酸(例えばN等)-Y-L-Gまたは任意のアミノ酸(例えばD等)(配列番号36)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR2:K-Vまたは任意のアミノ酸(例えばG等)-S-N-R-Fまたは任意のアミノ酸(例えばA、S等)-S(配列番号37)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR3:Fまたは任意のアミノ酸(例えばL、M等)-Q-Gまたは任意のアミノ酸(例えばA等)-Sまたは任意のアミノ酸(例えばT、L、M等)-Hまたは任意のアミノ酸(例えばQ、R等)-Vまたは任意のアミノ酸(例えばI、T等)-P-Y-Tまたは任意のアミノ酸(例えばI等)(配列番号38)と、を伴う軽鎖可変領域をさらに含んでもよい。
【0017】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR1は、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号39、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のLCDR1)を除外してもよく、および/または、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR2は、配列KVSNRFS(配列番号40、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のLCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR3は、配列FQGSHVPYT(配列番号41)を除外してもよい。
【0018】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)HCDR1は、アミノ酸配列G-Y-X1-F-T-X2-Y-X3-X4-X5を含み、式中、X1はSまたはSの保存的置換であり、X2はNまたはNの保存的置換であり、X3はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はMまたはMの保存的置換であり、またX5はHまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号42)、
(b)HCDR2は、アミノ酸配列X1-X2-X3-I-Y-P-G-X4-X5-X6-T-X7-Y-X8-X9-X10-F-Q-Gを含み、式中、X1はMまたはMの保存的置換であり、X2はGまたはGの保存的置換であり、X3はTまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はNまたはNの保存的置換であり、X5はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X7はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X8はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X9はQまたは任意の他のアミノ酸であり、またX10はKまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号43)、
(c)HCDR3は、アミノ酸配列X1-G-X2-R-X3-X4-D-Yを含み、式中、X1はGまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はYまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はAまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はMまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号44)、
(d)LCDR1は、アミノ酸配列R-S-S-Q-S-X1-X2-X3-S-X4-X5-X6-X7-Y-L-X8を含み、式中、X1はIまたはIの保存的置換であり、X2はVまたはVの保存的置換であり、X3はYまたはYの保存的置換であり、X4はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はGまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X7はTまたは任意の他のアミノ酸であり、またX8はGまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号45)、
(e)LCDR2は、アミノ酸配列K-X1-S-N-R-X2-Sを含み、式中、X1はVまたは任意の他のアミノ酸であり、またX2はFまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号46)、
(f)LCDR3は、アミノ酸配列X1-Q-X2-X3-X4-X5-P-Y-X6を含み、式中、X1はFまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はGまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はHまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はVまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はTまたは任意の他のアミノ酸である(配列番号47)。
【0019】
一部の態様において、本発明は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を提供するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGNSDTSYNPSFQG(配列番号61)のHCDR2およびGGVRAMDY(配列番号62)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQASQVPYT(配列番号63)のLCDR3を含み、または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGDSDTRYNPKFQG(配列番号58)のHCDR2およびGGYRAEDY(配列番号59)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQGSHVPY(配列番号60)のLCDR3を含む。
【0020】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
当該VH領域のアミノ酸配列は、
(a)配列番号48、または配列番号57のHCDR1と、
(b)配列番号49、または配列番号61のHCDR2と、
(c)配列番号50、または配列番号62のHCDR3とを含有し、および
当該VL領域のアミノ酸配列は、
(a’)配列番号51、配列番号55、または配列番号56のLCDR1と、
(b’)配列番号52のLCDR2と、
(c’)配列番号53、配列番号54、または配列番号63のLCDR3とを含有する。
【0021】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含有し、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号13を含有し、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号14を含有し、または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号15を含有し、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号16を含有する。
【0022】
さらに本発明により、治療剤に結合された、本明細書に規定される抗体分子またはその抗原結合部分を含有する免疫結合体が提供される。
【0023】
別の態様において、本発明は、本明細書に規定される抗体分子またはその抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。
【0024】
さらに、本発明の核酸分子を含有するベクターが提供される。
【0025】
また、本明細書に規定される本発明の核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も提供される。
【0026】
さらなる態様において、抗CD47抗体および/またはその抗原結合部分を作製する方法も提供され、当該方法は、当該抗体および/もしくはその抗原結合部分の発現ならびに/または産生が生じる条件下で、本発明の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞または培養物から、当該抗体および/またはその抗原結合部分を単離することと、を含む。
【0027】
本発明の別の態様において、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを含有する医薬組成物が提供される。
【0028】
さらに、対象において免疫反応を強化する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0029】
さらなる態様において、対象において癌を治療または予防する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0030】
さらに、医薬品としての使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。本発明はさらに、癌の治療における使用のための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクター、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、例えば抗癌剤などの第二の治療剤との併用において、別個に使用する、連続して使用する、または同時に使用するための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または免疫結合体、または核酸分子、または使用のためのベクター、または治療方法を提供する。
【0032】
さらなる態様において、癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の使用、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の使用、または本明細書に規定される本発明のベクターの使用、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0033】
本発明はさらに、対象において自己免疫性疾患もしくは炎症性疾患を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0034】
自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節炎、喘息、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス(lupus)、グレーブス病、および橋本甲状腺炎、ならびに強直性脊椎炎からなる群からすべての態様において選択されてもよい。
【0035】
また、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0036】
さらに、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0037】
本発明はさらに、対象において心血管疾患もしくは線維症を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0038】
また、心血管疾患または線維症の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0039】
さらに、自己免疫性疾患、炎症性疾患、または線維症の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0040】
本発明の任意の態様における心血管疾患は、例えば冠動脈心疾患またはアテローム性動脈硬化症であってもよい。
【0041】
本発明の任意の態様における線維症は、例えば、心筋梗塞、狭心症、変形性関節症、肺線維症、嚢胞性線維症、気管支炎または喘息、であってもよい。
【0042】
本発明はさらに、ヒトCD47に特異的に結合し、および任意でカニクイザルCD47にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する方法を提供するものであり、当該方法は、
(1)非ヒト源由来の抗CD47 CDRをヒトv-ドメインフレームワーク内に移植し、ヒト化抗CD47抗体分子またはその抗原結合部分を作製する工程、
(2)CDR中に1つまたは複数の変異を含有する当該ヒト化抗CD47抗体分子またはその抗原結合部分のクローンのファージライブラリーを作製する工程、
(3)ヒトCD47への結合、および任意でカニクイザルCD47への結合についても当該ファージライブラリーをスクリーニングする工程、
(4)スクリーニングする工程(3)から、ヒトCD47に特異的に結合する、および任意でカニクイザルCD47にも特異的に結合するクローンを選択する工程、ならびに
(5)ヒトCD47に特異的に結合し、および任意でカニクイザルCD47にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を、工程(4)から選択されたクローンから作製する工程、を含む。
【0043】
当該方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づき、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDR中の特定の位置でのさらなる探索的な突然変異誘導に基づき、追加のクローンを作製して、ヒト化を強化し、および/またはヒトT細胞エピトープ含量を最小化し、および/または工程(5)で作製された抗体分子もしくはその抗原結合部分の製造特性を改善するさらなる工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1-1】
図1A~
図1F。ヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcタンパク質へのh5F9G4 IgG1およびhSIRPα-Fc結合に対する、ライブラリー由来抗CD47 scFvのHTRF系競合スクリーニング。各ラウンドで、ビオチン化ヒトおよび/またはカニクイザルCD47-Fcタンパク質における別個のファージ選択ブランチから、クローンが選択された。2つのブランチにおける複数の選択ラウンドの後に、ライブラリー由来クローン(黒色円)は、ヒトおよびカニクイザルCD47-Fcの両方に対する結合ならびにh5F9G4 IgG1およびhSIRPα-Fcのエピトープ遮断(シグナルの低下を介して測定)についてスクリーニングした。ラウンド2の結果(
図1A、
図1B)。ラウンド3の結果(
図1C、
図1D)。ラウンド4の結果(
図1E、
図1F)。陰性対照(非CD47結合)および陽性対照h5F9G4 scFvを、灰色のバツ印の円と灰色の縁をもつ黒色円でそれぞれ表した。さらに、IGHV5-51/IGKV2-28移植scFvもまた、各図に含めた(灰色の六角形)。
【
図2】
図2A~
図2B。生殖細胞系列に対する変異に関する、CDR残基の寛容の分析。ELISA陽性の269個の固有scFvクローン群のCDRにおけるマウスアミノ酸保持頻度の図を、それぞれV
H(配列番号64~66)ドメイン(
図1A)およびV
L(配列番号67~69)(
図2B)ドメインについて示す。HCDR3以外では、ヒト/マウス残基の突然変異誘導の標的とされた残基のみプロットされている。X軸上のカッコ内に記載されるCDR残基は、移植に使用されたヒト生殖細胞系列(IGKV2-28およびIGHV5-51)中に存在する残基と同一である。カッコ内には無いがその値が0に設定されているHCDR2中の残基は、移植プロセスの間にヒト生殖細胞系列へと変異された。両方の図において、75%での灰色の破線は、ヒト生殖細胞系列によるマウス残基の置換の寛容性に対するカットオフを表している。
【
図3】
図3A~
図3B。ヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcタンパク質へのライブラリー由来リードIgGの結合に関する、直接的力価測定ELISA。キメラ抗CD47(m5F9G4)、およびヒトIgG1ヌル形式のライブラリー由来クローンが、ヒト(
図3A)およびカニクイザル(
図3B)のCD47-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位μg/ml)された。m5F9G4およびライブラリー由来クローンは、CD47の両方のオルソログに対して結合活性を示した。
【
図4】
図4A~
図4B。ライブラリー由来リードに関する、ELISA系CD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合ヒトSIRPαに対するヒト(
図4A)およびカニクイザル(
図4B)のCD47-Fcタンパク質のELISA結合シグナルについて、IgG1ヌル形式での力価測定された競合相手IgG、D-A6 scFv-Fc、それに加えてアイソタイプIgG1、IGHV5-51移植、IgG1ヌル形式でのh5F9G4およびm5F9G4の存在下で検証した。
【
図5】
図5A~
図5B。ライブラリー由来リードに関する、HTRF系の液相、高感度、CD47エピトープ競合アッセイ。ヒトまたはカニクイザルのCD47に対するh5F9G4 IgGのHTRF結合シグナルを、ライブラリー由来リードを含む力価測定された競合相手IgG、それに加えてアイソタイプIgG1および非標識h5F9G4およびm5F9G4の存在下で検証した。全てのライブラリー由来リードが、ヒトCD47に対するh5F9G4結合の濃度依存性阻害を示し、これは共有エピトープを維持するが、結合アフィニティは低下していることを示唆した(
図5A)。D-A6タンパク質(IgGおよびscFv-Fc)の両方が、ヒトCD47(
図5B)に対するh5F9G4結合を完全に阻害する能力を示し、同一のv-ドメインのscFv-Fc融合形態は、IgGよりも高い有効性を有していた。
【
図6-1】
図6A~
図6H。ヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcタンパク質へのデザインリードIgGの結合に関する、直接的力価測定ELISA。キメラ抗CD47(m5F9G4)、およびヒトIgG1ヌル形式のデザインクローンが、ヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位μg/ml)された。m5F9G4およびライブラリー由来クローンは、CD47の両方のオルソログに対して結合活性を示した:VH1.1-VH1.3ファミリー対ヒト(
図6A)およびカニクイザル(
図6B);VH1.4-VH1.6ファミリー対ヒト(
図6C)およびカニクイザル(
図6D);VH1.7、VH1.9およびVH1.10ファミリー対ヒト(
図6E)およびカニクイザル(
図6F)およびVH1.8ファミリー対ヒト(
図6G)およびカニクイザル(
図6H)。
【
図7】
図7A~
図7B。VH1.8ファミリーデザインリードに関する、ELISA系CD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合ヒトSIRPαに対するヒト(
図7A)およびカニクイザル(
図7B)のCD47-Fcタンパク質のELISA結合シグナルについて、IgG1ヌル形式での力価測定された競合相手IgG、それに加えて陽性対照としてのIgG1ヌル形式でのm5F9G4およびh5F9G4の存在下で検証した。
【
図8】
図8。さらなるデザインリードに関する、ELISA系CD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合ヒトSIRPαに対するヒトCD47-FcのELISA結合シグナルについて、IgG1ヌル形式での力価測定された競合相手IgG、それに加えてアイソタイプIgG1およびIgG1ヌル形式でのm5F9G4の存在下で検証した。
【
図9】
図9A~
図9D。デザインリードに関する、HTRF系の液相、高感度、CD47エピトープ競合アッセイ。ヒトまたはカニクイザルのCD47に対するh5F9G4 IgGのHTRF結合シグナルを、ライブラリー由来リードを含む力価測定された競合IgG、それに加えて陽性対照としての非標識h5F9G4およびm5F9G4の存在下で検証した。全てのVH1.8ファミリーデザインリードが、ヒト(
図9A)およびカニクイザル(
図9B)のCD47に対するh5F9G4結合の強い濃度依存性阻害を示した。他の選択されたデザインリードもまた、有効性が低下した状態で、ヒト(
図9C)およびカニクイザル(
図9D)のCD47に対するh5F9G4結合の濃度依存性阻害を示した。
【
図10-1】
図10。デザインリードに関する、HL60、ヒトおよびカニクイザルのCD47+ CHO-K1細胞へのフローサイトメトリー結合。抗CD47コントロールm5F9G4およびh5F9G4、デザインリードならびにアイソタイプコントロール(全てIgG1ヌル)について、野生型(WT、すなわちトランスフェクトしていない)CHO-K1細胞、ヒトCD47トランスフェクトCHO-K1細胞、カニクイザルCD47トランスフェクトCHO-K1細胞およびヒトAML細胞株HL60に対する特異的結合を検証した。IgGは、24~100,000ng/mlの範囲の濃度で検証された。すべてのCD47特異的抗体で、ヒトおよびカニクイザルの細胞株、それに加えてHL60細胞に対し、濃度依存性の結合が観察された。一方でアイソタイプコントロールでは観察されなかった。野生型CHO-K1細胞に対し、バックグラウンドを超える結合シグナルは観察されなかった。
【
図11A】
図11A~
図11C。開発リスクELISA。このアッセイにより、デザインリードである、IgG1形式のh5F9G4抗体およびm5F9G4抗体が、負の電荷を有する生体分子のインスリン(
図11A)、二本鎖DNA(dsDNA)(
図11B)、および一本鎖DNA(ssDNA)(
図11C)に対し、陰性対照のIgG1ウステキヌマブ(Ustekinumab)アナログと同等のまたはそれよりも低い結合(VH1.12/VL8は例外である)を呈することが示された。ボコシズマブ(Bococizumab)およびブリアキヌマブ(Briakinumab)のアナログに観察されるような、これら分子に対する強力な非特異的(off-target)結合は、治療用抗体の貧弱な薬物動態に関する高リスク指標であることがわかっている。
【
図12A】
図12A~
図12C。iTope(商標)を用いたh5F9G4のVHおよびVL配列の概要解析。完全v-ドメイン配列にわたるペプチドを、1アミノ酸の増分における9merペプチドとして試験した。各列は、MHCクラスII結合(コア9mer)に関してスコア化されている9merペプチドのp1アンカー残基の位置を示す。各ボックスは、アラインされた9merとMHCクラスIIとの間の>0.6である結合スコアを示す。無差別に(promiscuous)結合するペプチドは、17以上のアレルを結合するものとして規定した。抗原性ペプチドを含有する可能性がある領域を、「無差別性が高い」(HAF)および「無差別性が中程度」(LAF)のカラムに示し、濃い灰色の縦線はHAF MHCクラスII結合ペプチドを示し、また薄い灰色の縦線はLAF MHCクラスII結合ぺプチドを示す。「TCED」カラムでは、T細胞エピトープデータベースからのほぼ相同なペプチドを示す領域を、灰色の縦線として示す。LCDR1(配列番号70)(
図12A)、HCDR1(配列番号71)(
図12B)およびHCDR3(配列番号72)(
図12C)に存在するキーHAFおよびTCED+エピトープに関して、例示的な解析を示す。
【
図13A】
図13A~
図13B。iTope(商標)を用いた重要なリードのVL配列の概要解析。完全v-ドメイン配列にわたるペプチドを、完全v-ドメイン全体にわたる1アミノ酸の増分における9merペプチドとして試験した(ここではVL1.1を例として示す)。
図13A~
図13Bにデータを示す。LCDR2(配列番号73)(
図13A)およびLCDR3(配列番号74)(
図13B)に存在するキーHAFおよびTCED+エピトープに関して、例示的な解析を示す。
【
図14A】
図14A~
図14C。ヒトのマクロファージおよびジャーカット細胞を用いた食作用有効性アッセイ。IgG4(S228P)形式でのクローンh5F9G4、VH1.8/VL1.1、VH1.8/VL1.6およびVH1.8/VL1.6-DIについて、これらの相対的有効性を、CD47+標的細胞として3人の独立のドナー由来のヒト単核球由来マクロファージと、ヒトのジャーカット癌細胞とを用いた、食作用のフローサイトメトリーアッセイで検証した。食作用は、ドナー1(
図14A)、ドナー2(
図14B)およびドナー3(
図14C)についてのCD11b+集団からのCFSE+細胞の百分率として測定した。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の第一の態様によると、ヒトCD47に、および任意にカニクイザルCD47にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分が提供され、当該抗体分子または抗原結合部分は、
IGHV5-51バックグラウンドでは、以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-S-F-T-NまたはN(例えばS等)-Y-Nの保存的置換またはN(例えばS等)-Mの保存的置換またはM (例えばI等)-Hの保存的置換または任意のアミノ酸(例えばG等)(配列番号28)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:MまたはM(例えばI)-G-Tの保存的置換または任意のアミノ酸(例えばI等)-I-Y-P-G-Nまたは任意のアミノ酸(例えばD等)-Dまたは任意のアミノ酸(例えばS等)-D-T-Sまたは任意のアミノ酸(例えばR等)-Y-Nまたは任意のアミノ酸(例えばS、H等)-Qまたは任意のアミノ酸(例えばP等)-Kまたは任意のアミノ酸(例えば等)-F-Q-G(配列番号29)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Gまたは任意のアミノ酸(例えばQ等)-G-Yまたは任意のアミノ酸(例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W等)-R-Aまたは任意のアミノ酸(例えばI、T、V、W等)-Mまたは任意のアミノ酸(例えばA、E、K、L、P、Q、R、S、T、V、W等)-D-Y(配列番号30)と、を伴う重鎖可変領域を含んでもよい。
【0046】
一部の態様では、本明細書に提供される抗CD47抗体または抗原結合部分は、配列番号24または配列番号25を含有する、または配列番号24または配列番号25からなる、CD47タンパク質に特異的に結合する。一部の態様では、本明細書に提供される抗CD47抗体または抗原結合部分は、配列番号24または配列番号25に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を有するCD47タンパク質に特異的に結合する。
【0047】
IGHV1-3バックグラウンドでは、以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-T-F-T-Nまたは任意のアミノ酸(例えばD等)-Y-Nまたは任意のアミノ酸(例えばA等)-M-H(配列番号31)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:M-G-T-I-Y-P-G-N-D-Dまたは任意のアミノ酸(例えばN等)-T-Sまたは任意のアミノ酸(例えばK等)-Y-Nまたは任意のアミノ酸(例えばS等)-Q-K-F-Q-G(配列番号32)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Gまたは任意のアミノ酸(例えばQ等)-G-Yまたは任意のアミノ酸(例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W等)-R-Aまたは任意のアミノ酸(例えばI、T、V、W等)-Mまたは任意のアミノ酸(例えばA、E、K、L、P、Q、R、S、T、V、W等)-D-Y(配列番号30)と、を伴う重鎖可変領域を含んでもよい。
【0048】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR1は、配列GYTFTNYNMH(配列番号33、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR2は、配列MGTIYPGNDDTSYNQKFKD(配列番号34、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のHCDR1)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR3は、配列GGYRAMDY(配列番号35、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のHCDR3)を除外してもよい。
【0049】
抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR1:R-S-S-Q-S-IまたはI(例えばL等)-Vの保存的置換またはV(例えばL等)-Y の保存的置換またはY(例えばH等)-S-Nの保存的置換または任意のアミノ酸(例えばG、S、K等)-Gまたは任意のアミノ酸(例えばA、Y等)-Nまたは任意のアミノ酸(例えばQ、Y等)-Tまたは任意のアミノ酸(例えばN等)-Y-L-Gまたは任意のアミノ酸(例えばD等)(配列番号36)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR2:K-Vまたは任意のアミノ酸(例えばG等)-S-N-R-Fまたは任意のアミノ酸(例えばA、S等)-S(配列番号37)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR3:Fまたは任意のアミノ酸(例えばL、M等)-Q-Gまたは任意のアミノ酸(例えばA等)-Sまたは任意のアミノ酸(例えばT、L、M等)-Hまたは任意のアミノ酸(例えばQ、R等)-Vまたは任意のアミノ酸(例えばI、T等)-P-Y-Tまたは任意のアミノ酸(例えばI等)(配列番号38)と、を伴う軽鎖可変領域をさらに含んでもよい。
【0050】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR1は、配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号39、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のLCDR1)を除外してもよく、および/または、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR2は、配列KVSNRFS(配列番号40、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1A1号に開示される5F9G4マウス/ヒト化抗体のLCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR3は、配列FQGSHVPYT(配列番号41)を除外してもよい。
【0051】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)HCDR1は、アミノ酸配列G-Y-X1-F-T-X2-Y-X3-X4-X5を含み、式中、X1はSまたはSの保存的置換であり、X2はNまたはNの保存的置換(例えばS)であり、X3はNまたは任意の他のアミノ酸(例えばS、A)であり、X4はMまたはMの保存的置換(例えばI)であり、またX5はHまたは任意の他のアミノ酸(例えばG)であり(配列番号42)、
(b)HCDR2は、アミノ酸配列X1-X2-X3-I-Y-P-G-X4-X5-X6-T-X7-Y-X8-X9-X10-F-Q-Gを含み、式中、X1はMまたはMの保存的置換(例えばI)であり、X2はGまたはGの保存的置換であり、X3はTまたは任意の他のアミノ酸(例えばI)であり、X4はNまたは任意の他のアミノ酸(例えばD)であり、X5はDまたは任意の他のアミノ酸(例えばS)であり、X6はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X7はSまたは任意の他のアミノ酸(例えばR)であり、X8はNまたは任意の他のアミノ酸(例えばS)であり、X9はQまたは任意の他のアミノ酸(例えばP)であり、またX10はKまたは任意の他のアミノ酸(例えばS)であり(配列番号75)、
(c)HCDR3は、アミノ酸配列X1-G-X2-R-X3-X4-D-Yを含有し、式中、X1はGまたは任意の他のアミノ酸(例えばQ)であり、X2はYまたは任意の他のアミノ酸(例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、VまたはW)であり、X3はAまたは任意の他のアミノ酸(例えばI、T、VまたはW)であり、またX4はMまたは任意の他のアミノ酸(例えばA、E、K、L、P、Q、R、S、T、VまたはW)であり(配列番号44)、
(d)LCDR1は、アミノ酸配列R-S-S-Q-S-X1-X2-X3-S-X4-X5-X6-X7-Y-L-X8を含み、式中、X1はIまたはIの保存的置換(例えばL)であり、X2はVまたはVの保存的置換(例えばL)であり、X3はYまたはYの保存的置換(例えばH)であり、X4はNまたは任意の他のアミノ酸(例えばG、SまたはK)であり、X5はGまたは任意の他のアミノ酸(例えばAまたはY)であり、X6はNまたは任意の他のアミノ酸(例えばQまたはY)であり、X7はTまたは任意の他のアミノ酸(例えばN)であり、またX8はGまたは任意の他のアミノ酸(例えばD)であり(配列番号45)、
(e)LCDR2は、アミノ酸配列K-X1-S-N-R-X2-Sを含み、式中、X1はVまたは任意の他のアミノ酸(例えばG)であり、またX2はFまたは任意の他のアミノ酸(例えばAまたはS)であり(配列番号46)、
(f)LCDR3は、アミノ酸配列X1-Q-X2-X3-X4-X5-P-Y-X6を含み、式中、X1はFまたは任意の他のアミノ酸(例えばLまたはM)であり、X2はGまたは任意の他のアミノ酸(例えばA)であり、X3はSまたは任意の他のアミノ酸(例えばT、LまたはM)であり、X4はHまたは任意の他のアミノ酸(例えばQまたはR)であり、X5はVまたは任意の他のアミノ酸(例えばIまたはT)であり、X6はTまたは任意の他のアミノ酸(例えばI)である(配列番号47)。
【0052】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、この場合において当該抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4を含有する重鎖可変(VH)領域と、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4を含有する軽鎖可変(VL)領域とを含有し、この場合において、HCDR1は配列番号42であり、HCDR2は配列番号75であり、HCDR3は配列番号44であり、LCDR1は配列番号45であり、LCDR2は配列番号46であり、そしてLCDR3は配列番号47であり、当該重鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列は、配列番号141(表2を参照のこと)内の重鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列であり、また当該軽鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列は、配列番号144(表2を参照のこと)内の軽鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列である。
【0053】
本明細書に詳述されるように、本発明者らは、国際公開第2011143624A2号、米国特許出願公開第20130142786A1号に開示されるマウス抗CD47抗体5F9G4から誘導されたCDR配列を使用し、多数の最適化抗CD47抗体分子を作製することに初めて成功した。本発明の実施形態において、これら抗体分子は、(適切な動物実験種でのインビボ試験が容易になるように)ヒトCD47ならびにカニクイザルCD47の両方に特異的に結合するよう選択された。本明細書に記載される最適化された抗体分子のさらなる改良によって、可変ドメインの安定性の改善、より高い発現収率、および/または免疫原性の低下が提供された。
【0054】
本発明の好ましい最適化抗CD47抗体分子は、対応するマウスCDRまたはその他(例えばフレームワーク)のアミノ酸の位置で、必ずしも最大数のヒト生殖細胞系列の置換を有するとは限らない。以下の実施例の項に詳述されるように、本発明者らは、「最大限にヒト化された」抗体分子は、抗CD47結合特性および/または他の望ましい性質に関して、必ずしも「最大限に最適化」されているとは限らないことを見出した。
【0055】
本発明は、本明細書に記載される抗体分子またはその抗原結合部分のアミノ酸配列に対する改変を包含する。例えば本発明は、その性質に大きな影響を与えない、機能的に同等の可変領域およびCDRを含有する抗体分子およびその対応する抗原結合部分、ならびに活性および/もしくはアフィニティが強化された、または低下したバリアントを包含する。例えばアミノ酸配列は、CD47に対し所望の結合アフィニティを有する抗体が得られるように変異されてもよい。1残基から数百以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合を含み、ならびに単一アミノ酸残基または複数のアミノ酸残基の配列間挿入を含む挿入が予期される。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体分子、またはエピトープタグに融合された抗体分子が挙げられる。抗体分子のその他の挿入バリアントとしては、酵素またはポリペプチドの、抗体N末端または抗体C末端への融合が挙げられ、それにより血液循環中の抗体の半減期が延長される。
【0056】
本発明の抗体分子または抗原結合部分は、グリコシル化ポリペプチドおよび非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾を有するポリペプチド、例えば異なる糖類でのグリコシル化、アセチル化およびリン酸化を有するポリペプチドを含んでもよい。例えば1つまたは複数のアミノ酸残基を付加、除去または置換させ、グリコシル化部位を形成または除去させることにより、本発明の抗体分子または抗原結合部分を変異させて、当該翻訳後修飾を変化させてもよい。
【0057】
本発明の抗体分子または抗原結合部分は、例えば抗体中の潜在的なタンパク質分解部位を除去するアミノ酸置換により改変されてもよい。
【0058】
抗体分子またはその抗原結合部分において、HCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-Y-T/S-F-T-N/S/D-Y-N/S/A-M/I-H/G(配列番号76);HCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:M/I/V-G/A/S-T/I-I-Y-P-G-N/D-D/S-D/N-T-S/K/R-Y-N/S/H-Q/P/H-K/S-F-K/Q-D/G(配列番号77);そしてHCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G/Q-G-Y/A/C/D/E/F/G/H/I/K/L/M/N/Q/R/S/T/V/W-R-A/I/T/V/W-M/A/E/K/L/P/Q/R/S/T/V/W-D-Y(配列番号78)。
【0059】
例えば、HCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-Y-T/S-F-T-N/D-Y-N/A-M/I-H(配列番号79);HCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:M-G-T-I-Y-P-G-N/D-D/S-D/N-T-S/K/R-Y-N/S-Q/P/H-K/S-F-Q-G(配列番号80);そしてHCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-G-Y/E/F/I/K//N/V-R-A-M/E/Q-D-Y(配列番号81)。
【0060】
抗体分子またはその抗原結合部分において、LCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-S-S-Q-S-L-V/L-Y/H-S-N/G/S/K-G/A/Y-N/Y-T/N-Y-L-G/D(配列番号82);LCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:K-G-S-N-R-F/A-S(配列番号83);そしてLCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:F/M-Q-G/A-S-H/Q-V-P-Y-T/I(配列番号84)。
【0061】
例えば、LCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-S-S-Q-S-L-L-H-S-N/K-G/A/Y-N/Q/Y-T/N-Y-L-G(配列番号85);LCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:K-V/G-S-N-R-F/A/S-S(配列番号86);そしてLCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:F/L/M-Q-G/A-S/T/L/M-H/Q/R-V/I/T-P-Y-T/I(配列番号87)。
【0062】
本発明の特定の実施形態において、抗体分子または抗原結合部分は、以下を含有してもよい:
(a)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.8/VL1.1];または、
(b)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.8/VL1.2];または、
(c)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.8/VL1.3];または、
(d)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.8/VL1.4];または、
(e)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.8/VL1.5];または、
(f)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.8/VL1.6];または、
(g)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.1/VL1.1];または、
(h)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.1/VL1.2];または、
(i)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.1/VL1.3];または、
(j)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.1/VL1.6];または、
(k)アミノ酸配列GYTFTDYNMH(配列番号88;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.5/VL1.1];または、
(l)アミノ酸配列GYTFTNYNIH(配列番号89;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.7/VL1.1];または、
(m)アミノ酸配列GYTFTNYNIH(配列番号89;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.7/VL1.2];または、
(n)アミノ酸配列GYTFTNYNIH(配列番号89;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.7/VL1.3];または、
(o)アミノ酸配列GYTFTNYNIH(配列番号89;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.7/VL1.5];または、
(p)アミノ酸配列GYTFTNYNIH(配列番号89;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.7/VL1.6];または、
(q)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.6/VL1.1];または、
(r)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.6/VL1.2];または、
(s)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTSYSQKFQG(配列番号90;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASHVPYT(配列番号53;LCDR3)、[クローンVH1.9/VL1.1];または、
(t)アミノ酸配列GYTFTNYAMH(配列番号48;HCDR1)、MGTIYPGNDDTKYSQKFQG(配列番号91;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQASQVPYT(配列番号54;LCDR3)、[クローンVH1.9/VL1.2];または、
(u)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGNSDTSYNPSFQG(配列番号61;HCDR2)、GGVRAMDY(配列番号62;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、MQASQVPYT(配列番号63;LCDR3)、[クローンD6];または、
(v)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGNSDTSYNPKFQG(配列番号92;HCDR2)、GGKRAMDY(配列番号93;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、MQASQVPYT(配列番号63;LCDR3)、[クローンF-E5];または、
(w)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGDSDTSYNPKFQG(配列番号94;HCDR2)、GGYRAQDY(配列番号95;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、MQASHVPYT(配列番号96;LCDR3)、[クローンE-C5];または、
(x)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGDSDTSYNPKFQG(配列番号94;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、MQGSHVPYT(配列番号97;LCDR3)、[クローンE-D6];または、
(y)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGDSDTRYNQKFQG(配列番号98;HCDR2)、GGIRAMDY(配列番号99;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、FQGSHVPYI(配列番号100;LCDR3)、[クローンB-A6];または、
(z)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGNSDTRYNPKFQG(配列番号101;HCDR2)、GGFRAMDY(配列番号50;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、MQGSHVPYT(配列番号97;LCDR3)、[クローンD-C12];または、
(zi)アミノ酸配列GYSFTNYNIH(配列番号57;HCDR1)、MGTIYPGDSDTRYNPKFQG(配列番号58;HCDR2)、GGYRAEDY(配列番号59;HCDR3)、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51;LCDR1)、KGSNRFS(配列番号52;LCDR2)、MQGSHVPYT(配列番号97;LCDR3)、[クローンE-A1]。
【0063】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGNSDTSYNPSFQG(配列番号61)のHCDR2およびGGVRAMDY(配列番号62)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQASQVPYT(配列番号63)のLCDR3を含み、または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGDSDTRYNPKFQG(配列番号58)のHCDR2およびGGYRAEDY(配列番号59)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQGSHVPY(配列番号60)のLCDR3を含む。
【0064】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、この場合において当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において当該VH領域は、表7のVH領域アミノ酸配列のうちのいずれか1つを含有し、当該VL領域は、表7のVL領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有する。
【0065】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号13を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号14を含み、または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号15を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号16を含む。
【0066】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域アミノ酸配列は、配列番号1に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号2に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(b)VH領域アミノ酸配列は、配列番号3に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号4に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(c)VH領域アミノ酸配列は、配列番号5に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号6に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(d)VH領域アミノ酸配列は、配列番号7に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号8に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(e)VH領域アミノ酸配列は、配列番号9に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号10に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(f)VH領域アミノ酸配列は、配列番号11に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号12に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(g)VH領域アミノ酸配列は、配列番号13に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号14に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;または
(h)VH領域アミノ酸配列は、配列番号15に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号16に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である。
【0067】
一部の態様において、抗CD47抗体のCDRアミノ酸配列は、列挙される配列中のCDRアミノ酸配列に対して100%の同一性であるが、FRアミノ酸配列は、列挙される配列中のFRアミノ酸配列に対し、100%未満の同一性である。
【0068】
一部の態様において、本明細書に規定される抗体または抗原結合部分は、単離されてもよい。
【0069】
本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、CD47への結合を、本明細書に開示されるCDRセットを含有する抗体またはその抗原結合部分と交差競合できる。一部の実施形態において、本発明は、単離された抗CD47抗体またはその抗原結合部分を提供するものであって、当該抗体または抗原結合部分は、本明細書に開示するCDRのセットを含む抗体または抗原結合部分と、CD47との結合に関して交差競合し、また(a)完全なヒト生殖細胞系列フレームワークのアミノ酸配列を含み、および/または(b)LCDR1内に「NG」高リスク脱アミド化部位を含有せず、(c)LCDR1内に「NT」脱アミド化部位を含有せず、および/または(d)HCDR1および/またはHCDR2内に高いMHCクラスII結合アフィニティをもつヒト生殖細胞系列ペプチド配列を含有し、および/または(e)LCDR1内にヒトT細胞エピトープ配列を含有せず、および/または(f)HCDR1内またはVHドメインのHCDR1/フレームワーク2領域内にヒトT細胞エピトープ配列を含有しない。一部の実施形態では、HCDR2内の高いMHCクラスII結合アフィニティをもつヒト生殖細胞系列ペプチド配列は、FQGQVTISA(配列番号102)またはFQGRVTITA(配列番号103)である。
【0070】
「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する」、「交差遮断される」、および「交差遮断すること」という用語は本明細書において相互交換可能に使用され、抗体またはその部分がもつ、標的CD47(例えば、ヒトCD47)に対する直接結合または本発明の抗CD47抗体のアロステリック調節を介した間接的結合を干渉する能力を意味する。抗体またはその部分が、別物質による標的結合に干渉することができる度合、つまり本発明により交差遮断する、または交差競合すると言えるかどうかは、競合結合アッセイを使用して決定され得る。結合競合アッセイの一例は、HTRF法(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)である。1つの特に適した定量的交差競合アッセイは、FACS系またはAlphaScreen系の方法を使用して、標識(例えばHisタグ化、ビオチン化、または放射性標識)された抗体またはその部分と、他の抗体またはその部分との間の、標的への結合に関する競合を測定する。概して、交差競合抗体またはその部分は、例えば、アッセイの間に、および第二の抗体またはその部分の存在下で、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録される変位が、所与の量で存在する潜在的に交差遮断する抗体またはその断片による、(例えばFACS系競合アッセイにおける)理論上の最大変位(例えばコールド(例えば非標識)抗体または交差遮断されるために必要なその断片による変位)の100%以下となるように、交差競合アッセイにおいて標的に結合することとなるものである。交差競合抗体またはその部分は、10%~100%、または50%~100%の記録される変位を有することが好ましい。
【0071】
本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、1つまたは複数の置換、欠失および/または挿入を含んでもよく、それらにより例えばグリコシル化部位(N結合型またはO結合型)、脱アミノ化部位、リン酸化部位または異性化/断片化部位などの翻訳後修飾(PTM:post-translational modification)部位が除去される。
【0072】
350を超えるタイプのPTMが公知である。重要なPTMの型としては、リン酸化、グリコシル化(N結合型およびO結合型)、SUMO化、パルミトイル化、アセチル化、硫酸化、ミリストイル化、プレニル化、および(K残基およびR残基の)メチル化が挙げられる。特定のPTMの原因となる推定アミノ酸部位を特定するための統計的手法は、当分野に周知である(Zhou et al.,2016,Nature Protocols 1:1318-1321を参照のこと)。例えば置換、欠失および/または挿入によりそうした部位を除去し、次いで任意で(a)結合活性、および/または(b)PTMの消失を検証(実験的に、および/または理論的に)することが予期される。
【0073】
例えば、5F9G4マウスLCDR1(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号39))は、10および11位の残基(NG)で推定「高リスク」脱アミド化モチーフを有すると特定されている。本発明のLCDR1中の同等の位置にあるこの部位を、残基10の置換(例えば、G、SまたはKへの)により除去することが予期される(例えば表3の複数のクローンと同様に)。本発明のLCDR1中の同等の位置にあるこの部位を、残基11の置換(例えば、AまたはYへの)により除去することも予期される(例えばVL1.4 vドメイン配列を含有するクローン、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0074】
さらなる例では、5F9G4マウスLCDR1(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列RSSQSIVYSNGNTYLG(配列番号39))は、12および13位の残基(NT)で推定「高リスク」脱アミド化モチーフを有すると特定されている。本発明のLCDR1中の同等の位置にあるこのリスク部位を、残基12の置換(例えば、Q、Yへの)により除去することが予期される(例えばVL1.4 vドメイン配列を含有するクローン、および表3および表4に見られる他のクローンと同様に)。
【0075】
抗体分子またはその抗原結合部分は、ヒト、ヒト化またはキメラであってもよい。
【0076】
抗体分子またはその抗原結合部分は、1つまたは複数のヒト可変ドメインフレームワークスキャホールドを含有してもよく、その中にはCDRが挿入されている。例えば、VH領域、VL領域、またはVH領域およびVL領域の両方が、1つまたは複数のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含有してもよい。
【0077】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV5-51ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中には対応するHCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV5-51ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域を含有してもよく、その中には対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0078】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV1-3ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中には対応するHCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV1-3ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域を含有してもよく、その中には対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0079】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中に対応するLCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域を含有してもよく、その中には対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0080】
抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR配列が挿入されているIGHV5-51ヒト生殖細胞系列スキャホールドと、中に対応するLCDR配列が挿入されているIGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドとを含有してもよい。抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGHV5-51ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域と、中に対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域とを含有してもよい。HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列は、表4のクローンのいずれか1つのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列であってもよい。一部の実施形態では、6つすべてのCDR配列が、表4の同じクローン由来である。一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2およびHCDR3の配列は、表4の第一のクローン由来であり、またLCDR1、LCDR2およびLCDR3の配列は、表4の第二のクローン由来である。
【0081】
抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR配列が挿入されているIGHV1-3ヒト生殖細胞系列スキャホールドと、中に対応するLCDR配列が挿入されているIGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドとを含有してもよい。抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGHV1-3ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域と、中に対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGKV2-28ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域とを含有してもよい。HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列は、表4のクローンのいずれか1つのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列であってもよい。一部の実施形態では、6つすべてのCDR配列が、表4の同じクローン由来である。一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2およびHCDR3の配列は、表4の第一のクローン由来であり、またLCDR1、LCDR2およびLCDR3の配列は、表4の第二のクローン由来である。
【0082】
一部の態様では、抗体分子またはその抗原結合部分は、免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1またはIgA2である。追加的な実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG1ヌル、IgG4(S228P)、IgA1またはIgA2である。抗体分子またはその抗原結合部分は、免疫学的に不活性な定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗CD47抗体またはその抗原結合部分は、野生型ヒトIgG1定常領域か、L234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域か、またはL234A、L235A、G237AおよびP331Sのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗CD47抗体またはその抗原結合部分は、野生型ヒトIgG2定常領域または野生型ヒトIgG4定常領域を含有する、免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗CD47抗体は、表8のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。表8のFc領域配列は、CH1ドメインから始まる。一部の態様では、抗CD47抗体は、ヒトIgG4、ヒトIgG4(S228P)、ヒトIgG2、ヒトIgG1、ヒトIgG1-3MまたはヒトIgG1-4MのFc領域のアミノ酸配列を含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。例えば、ヒトIgG4(S228P)のFc領域は、野生型のヒトIgG4のFc領域と比較して以下の置換を含有する:S228P。例えば、ヒトIgG1-3MのFc領域は、野生型のヒトIgG1のFc領域と比較して以下の置換を含有する:L234A、L235AおよびG237A。一方で、ヒトIgG1-4MのFc領域は、野生型のヒトIgG1のFc領域と比較して以下の置換を含有する:L234A、L235A、G237AおよびP331S。一部の態様では、免疫グロブリン分子の定常領域中のアミノ酸残基の位置は、EUの命名法(Ward et al.,1995 Therap.Immunol.2:77-94)に従って番号付けされる。一部の態様では、免疫グロブリン定常領域は、RDELT(配列番号26)モチーフ、またはREEM(配列番号27)モチーフ(表8の下線部分)を含有してもよい。REEM(配列番号27)アロタイプは、RDELT(配列番号26)アロタイプよりも少ないヒト集団に存在する。一部の態様では、抗CD47抗体は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗CD47抗体は、表4のクローンのいずれか1つの6つのCDRアミノ酸配列、または表8のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有してもよい。一部の態様では、抗CD47抗体は、表8のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有する免疫グロブリン重鎖定常領域、およびカッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域である免疫グロブリン軽鎖定常領域を含有してもよい。
【0083】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASHVPYT(配列番号53)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNAYNYLG(配列番号56)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNANTYLG(配列番号55)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GYTFTNYAMH(配列番号48)のHCDR1、MGTIYPGNDDTKYNQKFQG(配列番号49)のHCDR2およびGGFRAMDY(配列番号50)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびFQASQVPYT(配列番号54)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGNSDTSYNPSFQG(配列番号61)のHCDR2およびGGVRAMDY(配列番号62)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQASQVPYT(配列番号63)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含み;または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGDSDTRYNPKFQG(配列番号58)のHCDR2およびGGYRAEDY(配列番号59)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQGSHVPY(配列番号60)のLCDR3を含み、また重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含む。
【0084】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、または配列番号1からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、または配列番号2からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含有し、または配列番号3からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含有し、または配列番号4からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含有し、または配列番号5からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含有し、または配列番号6からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、または配列番号7からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、または配列番号8からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含有し、または配列番号9からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含有し、または配列番号10からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含有し、または配列番号11からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含有し、または配列番号12からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号13を含有し、または配列番号13からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号14を含有し、または配列番号14からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号15を含有し、または配列番号15からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号16を含有し、または配列番号16からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有する。
【0085】
一部の態様において、本明細書は、抗CD47抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、または配列番号1からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、または配列番号2からなり、および重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する;
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含有し、または配列番号3からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含有し、または配列番号4からなり、および重鎖定常領域は、配列番17~23 のいずれか1つを含有する;
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含有し、または配列番号5からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含有し、または配列番号6からなり、重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する;
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、または配列番号7からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、または配列番号8からなり、重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する;
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含有し、または配列番号9からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含有し、または配列番号10からなり、および重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する;
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含有し、または配列番号11からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含有し、または配列番号12からなり、および重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する;
(g)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号13を含有し、または配列番号13からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号14を含有し、または配列番号14からなり、および重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する;または
(h)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号15を含有し、または配列番号15からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号16を含有し、または配列番号167からなり、および重鎖定常領域は、配列番号17~23のいずれか1つを含有する。
【0086】
一部の態様では、抗CD47抗体は、免疫エフェクターが無効であってもよい。一部の態様では、抗CD47抗体またはその抗原結合部分は、免疫エフェクター機能を誘導せず、任意で免疫エフェクター機能を抑制する。一部の態様では、抗CD47は、ヒトFcγRI受容体、FcγRIIa受容体、FcγRIIIa受容体、およびFcγRIIIb受容体への測定可能な結合を欠いてもよいが、ヒトFcγRIIb受容体への結合は維持し、任意で、ヒトFcRn受容体への結合も維持する。FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbは、活性化受容体の例示である。FcγRIIbは、阻害性受容体の例示である。FcRnは、リサイクル受容体の例示である。一部の態様では、抗CD47抗体またはその抗原結合部分のヒトFc受容体への結合アフィニティは、ビアコア(BIACORE(登録商標))解析により測定されてもよい。一部の態様では、HTRF法(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)を使用して、ヒトFc受容体への抗CD47抗体の結合を試験することができる。HTRF法の1つの例において、ヒトIgG1(野生型)が標識され、一揃いのFcガンマ受容体も同様にされ、次いで組換えFc断片を含む抗体が、力価測定競合に使用される。一部の態様では、CD47陽性細胞と、ヒト白血球および抗CD47抗体とが混合されてもよく、そしてCDC、ADCCおよび/またはADCPによる細胞殺傷が測定されてもよい。一部の態様では、ヒトIgG1-3M(表8を参照)のFc領域のアミノ酸配列を含有する抗CD47抗体は、エフェクターが無効である。一部の態様では、ヒトIgG1-3M(表8を参照)のFc領域のアミノ酸配列を含有する抗CD47抗体は、エフェクターが無効でない。
【0087】
抗体分子またはその抗原結合部分は、Fab断片、F(ab)2断片、Fv断片、scFv(一本鎖Fv)断片、四量体抗体、四価抗体、多特異性抗体(例えば二価抗体)、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、モノクローナル抗体、または融合タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、抗体は、第一の抗原と第二の抗原とに特異的に結合する二特異性抗体であってもよく、この場合において第一の抗原はCD47であり、第二の抗原はCD47ではない。抗体分子、ならびにその構築方法および使用方法は、例えばHolliger&Hudson(2005,Nature Biotechnol.23(9):1126-1136)に記載されている。
【0088】
一部の態様においては、本発明は、IgG形式におけるよりも一本鎖Fv(scFv)形式でより強力に、CD47-SIRPα相互作用を中和する、重鎖可変(VH)領域配列および軽鎖可変(VL)領域配列を提供する。一部の実施形態では、こうした分子のVH領域は、IGHV5-51フレームワーク内にある。一部の実施形態では、本発明は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有する一本鎖Fv(scFv)を包含するものであって、(a)HCDR1はG-Y-T-F-T-X1-Y-X2-X3-X4を含有し、式中、X1はNまたはNの保存的置換であり、X2はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はMまたはMの保存的置換であり、またX4はHまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号104)、(b)HCDR2はM-G-X1-I-Y-P-G-X2-X3-X4-T-X5-Y-X6-X7-X8-F-Q-Gを含有し、式中、X1はTまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はNまたはNの保存的置換であり、X3はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はDまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X7はQまたは任意の他のアミノ酸であり、またX8はKまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号105)、(c)HCDR3はX1-G-X2-R-X3-X4-D-Yを含有し、式中、X1はGまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はYまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はAまたは任意の他のアミノ酸であり、またX4はMまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号44)、(d)LCDR1はR-S-S-Q-S-X1-X2-X3-S-X4-X5-X6-X7-Y-L-X8を含有し、式中、X1はIまたはIの保存的置換であり、X2はVまたはVの保存的置換であり、X3はYまたはYの保存的置換であり、X4はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はG任意の他のアミノ酸であり、X6はNまたは任意の他のアミノ酸であり、X7はTまたは任意の他のアミノ酸でありまたX8はGまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号45)、(e)LCDR2はK-X1-S-N-R-X2-Sを含有し、式中、X1はVまたは任意の他のアミノ酸であり、またX2はFまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号46)、および(f)LCDR3はX1-Q-X2-X3-X4-X5-P-Y-X6を含有し、式中、X1はFまたは任意の他のアミノ酸であり、X2はGまたは任意の他のアミノ酸であり、X3はSまたは任意の他のアミノ酸であり、X4はHまたは任意の他のアミノ酸であり、X5はVまたは任意の他のアミノ酸であり、X6はTまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号47)、そしてVH領域は、中にHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列が挿入されているIGHV5-51ヒト生殖細胞系列スキャホールドアミノ酸配列を含有する。一実施形態では、本発明のscFVは、(a)VH領域のアミノ酸配列は、GYSFTNYNIH(配列番号57)のHCDR1、MGTIYPGDSDTSYNPKFQG(配列番号94)のHCDR2およびGGYRAEDY(配列番号59)のHCDR3を含むことと、(b)VH領域のアミノ酸配列は、RSSQSLLHSNGNTYLG(配列番号51)のLCDR1、KGSNRFS(配列番号52)のLCDR2およびMQGSHVPYT(配列番号97)のLCDR3を含むこととを含んでもよい。一部の態様では、scFvは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、VH-VLまたはVL-VHを含有する。一部の態様では、scFvは、VH配列とVL配列との間にリンカーを含有する。一部の態様では、scFvは、免疫グロブリン定常領域または免疫グロブリン定常領域の部分をさらに含有する。一部の態様では、本発明は、本明細書に開示される1または複数のscFvを含有する多重特異性(例えば、二特異性)のCD47結合分子を提供する。一部の場合では、免疫グロブリン定常領域は、配列番号17~23のうちのいずれか1つを含有する。
【0089】
本発明の別の態様では、治療剤に結合された、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分を含有する免疫結合体が提供される。
【0090】
適切な治療剤の例示としては、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、アポトーシス促進剤、ならびに細胞増殖抑制酵素および細胞溶解性酵素(例えば、RNAse)が挙げられる。さらなる治療剤としては、例えば免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤またはアポトーシス促進剤をコードする遺伝子などの治療用核酸が挙げられる。これらの薬剤の記述子は、相互排他的ではなく、ゆえに治療剤は、上述の用語の1つまたは複数を使用して記載されてもよい。
【0091】
免疫結合体における使用に適した治療剤の例としては、タキサン、メイタンシン、CC-1065、およびデュオカルマイシン、カリケアミシンおよび他のエンジイン、ならびにオーリスタチン(auristatin)が挙げられる。他の例としては、抗葉酸剤、ビンアルカロイド、およびアントラサイクリンが挙げられる。植物毒素、他の生物活性タンパク質、酵素(すなわちADEPT)、放射性同位体、光増感剤が、免疫結合体において使用されてもよい。さらに結合体は、細胞毒性剤として二次的な担体、例えばリポソームまたはポリマーなどを使用して作製され得る。適切な細胞毒素としては、細胞の機能を阻害または妨害し、および/または細胞の破壊をもたらす薬剤が挙げられる。代表的な細胞毒素としては、抗生物質、チューブリン重合の阻害剤、DNAに結合し、破壊するアルキル化剤、そしてタンパク質合成を破壊する、または例えばタンパク質キナーゼ、ホスファターゼ、トポイソメラーゼ、酵素およびサイクリンなどの必須の細胞タンパク質の機能を破壊する薬剤が挙げられる。
【0092】
代表的な細胞毒素としては、以下に限定されないが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、カルビシン、ノガラマイシン、メノガリル、ピタルビシン(pitarubicin)、バルルビシン、シタラビン、ゲムシタビン、トリフルリジン、アンシタビン、エノシタビン、アザシチジン、ドキシフルジン(doxifluhdine)、ペントスタチン、ブロクスジン(broxuhdine)、カペシタビン、クラドビン(cladhbine)、デシタビン、フロクスジン(floxuhdine)、フルダラビン、グーゲロチン、ピューロマイシン、テガフール、チアゾフン(tiazofuhn)、アダマイシン(adhamycin)、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、メクロレタミン、プレドニゾン、プロカルバジン、メトトレキサート、フルロウラシル(flurouracil)、エトポシド、タキソール、タキソールアナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチンなどのプラチン類、マイトマイシン、チオテパ、タキサン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、タモキシフェン、イダルビシン、ドラスタチン/オーリスタチン(auristatin)、ヘミアステリン(hemiasterlin)、エスペラミシン、ならびにマイタンシノイドが挙げられる。
【0093】
適切な免疫調節剤としては、腫瘍に対するホルモンの作用を遮断する抗ホルモン剤、およびサイトカイン産生を抑制する、自己抗原発現を下方制御する、またはMHC抗原をマスクする免疫抑制剤が挙げられる。
【0094】
さらに、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分をコードする核酸分子も提供される。核酸分子は、本明細書に記載される抗CD47抗体またはその抗原結合部分の、(a)VH領域のアミノ酸配列、(b)VL領域のアミノ酸配列、または(c)VH領域とVL領域の両方のアミノ酸配列をコードしてもよい。一部の態様では、本明細書に規定される核酸分子が単離されてもよい。
【0095】
さらに、本明細書に規定される本発明の核酸分子を含有するベクターが提供される。ベクターは、発現ベクターであってもよい。
【0096】
また、本明細書に規定される本発明の核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も提供される。宿主細胞は、組換え宿主細胞であってもよい。
【0097】
さらなる態様において、抗CD47抗体および/またはその抗原結合部分を作製する方法も提供され、当該方法は、当該抗体および/もしくはその抗原結合部分の発現ならびに/または産生が生じる条件下で、本発明の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞または培養物から、当該抗体および/またはその抗原結合部分を単離することと、を含む。
【0098】
本発明の別の態様において、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを含有する医薬組成物が提供される。
【0099】
さらに、対象において免疫反応を強化する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0100】
さらなる態様において、対象において癌を治療または予防する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0101】
例えば、癌は、胃腸間質性癌(GIST)、膵臓癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳腫瘍または中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆管癌、小腸癌または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、または血液組織の癌であり得る。
【0102】
本発明はさらに、癌の治療における使用のための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクター、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物を提供する。
【0103】
別の態様において、本発明は、例えば抗癌剤などの第二の治療剤と組み合わせた併用において、別個に使用する、連続して使用する、または同時に使用するための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または免疫結合体、または核酸分子、または使用のためのベクター、または治療方法を提供する。
【0104】
さらなる態様において、癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の使用、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の使用、または本明細書に規定される本発明のベクターの使用、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0105】
本発明はさらに、対象において自己免疫性疾患もしくは炎症性疾患を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0106】
例えば、自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節炎、喘息、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス、グレーブス病および橋本甲状腺炎、または強直性脊椎炎であり得る。
【0107】
また、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0108】
さらに、自己免疫性疾患または炎症性疾患の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0109】
本発明はさらに、対象において心血管疾患もしくは線維症を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0110】
また、心血管疾患または線維症の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0111】
さらに、心血管疾患または線維症の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0112】
本発明の任意の態様における心血管疾患は、例えば冠動脈心疾患またはアテローム性動脈硬化症であってもよい。
【0113】
本発明の任意の態様における線維症は、例えば、心筋梗塞、狭心症、変形性関節症、肺線維症、喘息、嚢胞性線維症、または気管支炎であってもよい。
【0114】
一実施形態において、本発明は、治療における使用のための本明細書に開示されるアミノ酸配列を含有する抗CD47抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0115】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な賦形剤は、二次的な反応を引き起こさない医薬組成物に入れられる化合物または化合物の組み合わせであってもよく、例えば、抗CD47抗体分子の投与の促進、その持続期間の延長、および/もしくは体内におけるその有効性の増加、または溶液中の可溶度の上昇を可能にする。これら薬学的に許容可能なビヒクルは周知であり、抗CD47抗体分子の投与形態の効果に応じて当業者により適合される。
【0116】
一部の実施形態では、抗CD47抗体分子は、凍結乾燥されて提供され、投与前に再構成されてもよい。例えば凍結乾燥された抗体分子は、滅菌水で再構成され、個体への投与前に生理食塩水と混合される。
【0117】
抗CD47抗体分子は通常、医薬組成物の形態で投与され、当該医薬組成物は、抗体分子に加えて少なくとも1つの構成要素を含有してもよい。したがって医薬組成物は、抗CD47抗体分子に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、または当業者に周知の他の物質を含有してもよい。そうした物質は、非毒性でなければならず、そして抗CD47抗体分子の効能に干渉してはならない。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存することとなり、これは、以下に検討されるように、ボーラス、点滴、注射または任意の他の適切な経路であってもよい。
【0118】
例えば注射などによる皮下投与または静脈内投与などの非経口投与に関しては、抗CD47抗体分子を含有する医薬組成物は、発熱物質を含まず、そして適切なpH、等張性および安定性の非経口に受容可能な水溶液の形態であってもよい。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射溶液、リンゲル注射溶液、乳酸リンゲル注射溶液などの等張ビヒクルを使用して適切な溶液を調製することができる。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤を必要に応じて採用してもよく、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3’-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド;例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;例えばポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの単糖、二糖および他の炭水化物;例えばEDTAなどのキレート剤;例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;例えばナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0119】
抗CD47抗体分子を含有する医薬組成物は、治療される状態に応じて、単独で投与されてもよく、または他の治療と併用されて、同時に、または連続のいずれかで投与されてもよい。
【0120】
本明細書に記載の抗CD47抗体分子は、ヒトまたは動物の身体の治療方法に使用されてもよく、治療には、予防的または防止的な治療が含まれる(例えば、個体において症状が発生する前に、当該個体において当該症状が発生するリスクを低下させる、その発生を遅延させる、または発生後の重症度を低下させるための治療)。治療方法は、抗CD47抗体分子を、その必要のある個体に投与することを含んでもよい。
【0121】
投与は通常、「治療有効量」でされ、これは、患者に対し有益性を示すために充分な量である。そうした有益性は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であってもよい。投与される実際の量、投与速度、および投与の経時変化は、治療されるものの、特に治療される哺乳動物の、性質および重症度、個々の患者の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者がわかっている他の因子に依存することとなる。例えば用量の決定などの治療の指示は、一般開業医および他の医師の責の範囲内にあり、治療される疾患の症状の重症度、および/または治療される疾患の進行に依存し得る。抗体分子の適切な投与量は、当分野に周知である(Ledermann J.A.et al.,1991,Int.J.Cancer 47:659-664;Bagshawe K.D.et al.,1991,Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915-922)。具体的な用量は、本明細書において、またはPhysician’s Desk Reference(2003)において示され、投与される薬剤のタイプに応じた用量が、使用され得る。抗体分子の治療有効量または適切な投与量は、そのインビトロ活性と、動物モデルにおけるインビボ活性とを比較することにより決定され得る。マウスおよび他の被験動物における有効用量を、ヒトに外挿する方法は公知である。正確な投与量は、抗体が予防用または治療用であるか、治療される領域の大きさおよび位置、抗体の正確な性質(例えば全抗体、断片)および抗体に付加された任意の検出可能な標識または他の分子の性質をはじめとする多くの因子に依存することとなる。
【0122】
典型的な抗体投与量は、全身投与に対しては100μg~1g、また局所投与に対しては1μg~1mgの範囲である。初回に高い負荷投与量で、その後は1回または複数回の低投与量が投与されてもよい。典型的には、抗体は、例えばIgG1またはIgG4アイソタイプなどの全抗体である。これは成人患者の単回治療用の投与量であり、小児および幼児に対しては相対的に調整され得、そして分子量に比例して他の抗体形式にも調整され得る。治療は、医師の裁量で毎日、週2回、毎週、または毎月の間隔で繰り返され得る。個々の治療スケジュールは、抗体組成物の薬物動態および薬力学的性質、投与経路、ならびに治療される症状の性質に依存し得る。
【0123】
治療は定期的であってもよく、投与の間の期間は、約2週間またはそれ以上であってもよく、例えば約3週間以上、約4週間以上、約1カ月に1回以上、約5週間以上、または約6週間以上であってもよい。例えば、治療は、2週~4週ごと、または4週~8週ごとであってもよい。治療は、外科手術の前、および/もしくは後に行われてもよく、ならびに/または外科的治療もしくは浸潤的手順の解剖学的位置に直接投与または適用されてもよい。適切な製剤および投与経路は、上記に記載される。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗CD47抗体分子は、皮下注射として投与されてもよい。皮下注射は、例えば長期間または短期間の予防用/治療用の自己注射器を使用して投与されてもよい。
【0125】
一部の好ましい実施形態では、抗CD47抗体分子の治療効果は、血清抗体半減期の数倍の間、持続し得、投与量に依存する。例えば抗CD47抗体分子の単回投与の治療効果は、個体において、1カ月以上、2カ月以上、3カ月以上、4カ月以上、5カ月以上、または6カ月以上、持続し得る。
【0126】
本発明はさらに、ヒトCD47に特異的に結合し、および任意でカニクイザルのCD47にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する方法を提供するものであり、当該方法は、
(1)非ヒト源由来の抗CD47 CDRをヒトv-ドメインフレームワーク内に移植し、ヒト化抗CD47抗体分子またはその抗原結合部分を作製する工程、
(2)CDR中に1つまたは複数の変異を含有する当該ヒト化抗CD47抗体分子またはその抗原結合部分のクローンのファージライブラリーを作製する工程、
(3)ヒトCD47への結合について、および任意でカニクイザルのCD47への結合についても当該ファージライブラリーを選択する工程、
(4)選択する工程(3)から、ヒトCD47に特異的に結合する、および任意でカニクイザルCD47にも特異的に結合するクローンをスクリーニングする工程、ならびに
(5)ヒトCD47に特異的に結合し、および任意でカニクイザルCD47にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を、工程(4)から選択されたクローンから作製する工程、を含む。
【0127】
当該方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づき、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDR中の特定の位置でのさらなる探索的な突然変異誘導に基づき、追加のクローンを作製して、ヒト化を強化し、および/またはヒトT細胞エピトープ含量を最小化し、および/または工程(5)で作製された抗体分子もしくはその抗原結合部分の製造特性を改善するさらなる工程を含んでもよい。
【0128】
上述の方法に適用可能な改善は、以下の実施例1に記載されるとおりである。
【0129】
本明細書で用いる場合、“CD47”の語は、CD47の生物学的活性の少なくとも一部を保持する、IAP(インテグリン関連タンパク質(Integrin Associated Protein))を指す。本明細書において使用される場合、CD47は、ヒト、ラット、マウスおよびニワトリを含むすべての哺乳動物種の天然配列CD47を含む。「CD47」の語は、ヒトCD47のバリアント、アイソフォームおよび種のホモログを含むために使用される。本発明の抗体は、ヒト以外の種に由来するCD47、特にカニクイザル(Macaca fascicularis)由来のCD47と交差反応し得る。ヒトおよびカニクイザルのCD47アミノ酸配列の例を、表9に提供する。ある実施形態では、抗体は、完全にヒトCD47に特異的であってもよく、非ヒトとの交差反応性を呈さなくてもよい。
【0130】
明細書において使用される場合、本発明の抗体の文脈において使用される場合の「アンタゴニスト」、または「抗CD47アンタゴニスト抗体」(「抗CD47抗体」と相互交換可能に称される)とは、CD47に結合することができる、ならびにCD47の生物学的活性を阻害することができる、および/またはCD47シグナル伝達により介在される下流経路を阻害することができる抗体を指す。抗CD47アンタゴニスト抗体には、例えばCD47に対する受容体結合および/または細胞反応の惹起など、CD47シグナル伝達により介在される下流経路を含めた、(有意に)CD47の生物学的活性(を含めた)を遮断する、拮抗する、抑制する、または低下させることができる抗体を包含する。本発明の目的に対し、「抗CD47アンタゴニスト抗体」という用語は、CD47それ自体、およびCD47の生物学的活性(限定されないが、骨髄細胞系列の細胞による食作用の活性化を促進するする能力を含む)、または活性もしくは生物学的活性の結果が、任意の意義のある程度に実質的に無効化される、減少される、または中和されるすべての用語、タイトル、ならびに機能的状態および機能的特性を包含することが明示的に理解されるであろう。
【0131】
他の受容体よりも高いアフィニティ、高いアビディティ、より容易に、および/またはより長い期間、CD47と結合する場合、当該抗体は、CD47に「特異的に結合する」、「特異的に相互作用する」、「優先的に結合する」、「結合する」または「相互作用する」。
【0132】
「抗体分子」は、例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書において使用される場合、「抗体分子」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のみならず、任意の抗原結合断片(例えば「抗原結合部分」)またはその一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、ならびに例えば限定されないが、scFv、単一ドメイン抗体(例えばサメ抗体およびラクダ科抗体)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびbis-scFvを含む抗原認識部位を含有する免疫グロブリン分子の任意の他の改変構造体も包含する。
【0133】
「抗体分子」は、例えばIgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を包含するが、抗体はいずれか特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、様々なクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5種類の主要なクラスがある。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられる場合があり、例えば、lgG1、lgG2、lgG3、lgG4、lgA1およびlgA2がある。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域はそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。このサブユニットの構造、および様々なクラスの免疫グロブリンの三次元構造は周知である。
【0134】
抗体分子の「抗原結合部分」という用語は、本明細書において使用される場合、CD47に特異的に結合する能力を保持する、インタクトな抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体分子の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片により実現され得る。抗体分子の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例示としては、Fab;Fab’;F(ab’)2;VHドメインとCH1ドメインとからなるFd断片;抗体の1つのアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;単一ドメイン抗体(dAb)断片、および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0135】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域またはバリアントのFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、またはPro230の位置のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端に及ぶと規定される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにあるEUインデックスの番号である。免疫グロブリンのFc領域は通常、CH2とCH3の2つの定常ドメインを含有する。当分野に知られているように、Fc領域は、二量体型または単量体型で存在し得る。
【0136】
抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域の、いずれか単独または組み合わせを指す。当分野に知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)に繋がる4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRに隣接するFRを選択するとき、例えば抗体のヒト化または最適化を行うとき、同じ基準クラスのCDR配列を含有する抗体由来のFRが好ましい。
【0137】
本出願において使用されるCDRの定義は、当分野で創出された多くの異質的な、しばしば矛盾するスキームにおいて使用されるドメインを組み合わせており、免疫グロブリンレパートリー分析と、遊離状態および抗原との共結晶状態の抗体の構造分析との組み合わせに基づいている(Swindells et al.,2016,abYsis:Integrated Antibody Sequence and Structure-Management,Analysis,and Prediction.J Mol Biol.[PMID:27561707;Epub 22 August 2016]によるレビューを参照のこと)。本明細書において使用されるCDRの定義(「統合(Unified)」定義)は、そうしたすべての過去の洞察の教示を組み込んでおり、潜在的に標的-結合の相補性を介在する完全な残基の状況を抽出するために必要なすべての適切なループ位置を含む。
【0138】
表1は、本明細書に規定される5F9G4マウス抗CD47抗体のCDRのアミノ酸配列(「統合」スキーム)を、同じCDRを規定する周知の代替的な系と比較して示している。
【0139】
本明細書において使用される場合、「保存的置換」という用語は、アミノ酸を、機能活性を大きく有害には変化させない別のアミノ酸で置換することを指す。「保存的置換」の好ましい例は、1つのアミノ酸を、以下のBLOSUM 62置換マトリクス(Henikoff & Henikoff,1992,PNAS 89:10915-10919を参照のこと)において0以上の値(≧0)を有する別のアミノ酸で置換することである。
【0140】
【0141】
「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、例えば任意の真核細胞クローン、原核細胞クローンもしくはファージクローンなどの1つのコピーまたはクローンから誘導された抗体またはその抗原結合部分を指し、それが作製された方法ではない。本発明のモノクローナル抗体は、均質、または実質的に均質な集団で存在することが好ましい。
【0142】
「ヒト化」抗体分子とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または他の抗原結合性の抗体下位配列)である、非ヒト(例えばマウス)抗体分子またはその抗原結合部分の形態を指す。ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、アフィニティおよび能力を有する例えばマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であってもよい。
【0143】
「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」とは、ヒト抗体遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから誘導された、またはヒト細胞から誘導された抗体分子またはその抗原結合部分を指す。
【0144】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列は別の種に由来する抗体分子またはその抗原結合部分を指すことが意図され、例えば、可変領域配列はマウス抗体に由来し、定常領域配列はヒト抗体に由来する抗体分子などである。
【0145】
「抗体-薬剤結合体」および「免疫結合体」とは、CD47に結合する、抗体誘導体を含めた抗体分子またはその抗原結合部分であって、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、および/または治療剤と結合された抗体分子またはその抗原結合部分を指す。
【0146】
本発明の抗体分子、またはその抗原結合部分は、例えば組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、またはそうした技術もしくは当分野に既に公知である他の技術との組み合わせなどの当分野に周知の技術を使用して作製され得る。
【0147】
「単離された分子」(分子が、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体である場合)という用語は、その起源または誘導の源によって、(1)自然状態では付随する天然の関連構成要素と関連していない分子、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まない分子、(3)異なる種由来の細胞により発現された分子、または(4)自然に発生しない分子である。したがって、化学的に合成された分子、または天然での起源である細胞とは異なる細胞系で発現された分子は、その天然の関連構成要素から「単離される」。さらに分子は、当分野に周知の精製技術を使用した単離によって、天然の関連構成要素を実質的に含まない状態にされ得る。分子純度または均質性は、当分野に周知の多くの手段により解析され得る。例えばポリペプチドサンプルの純度は、当分野に周知の技術を使用してポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用し、ゲルを染色してポリペプチドを可視化して解析されてもよい。ある目的に対し、HPLC、または精製分野で周知の他の手段を使用することにより、さらに高い分解能が提供される場合がある。
【0148】
「エピトープ」という用語は、抗体分子の抗原結合領域のうちの1つまたは複数で抗体分子に認識され、結合されることができる分子の部分、またはその抗原結合部分を指す。エピトープは、一次、二次または三次のタンパク質構造の規定領域からなる場合があり、抗体またはその抗原結合部分の抗原結合領域に認識される標的の二次構造単位または二次構造ドメインの組み合わせを含む。同じくエピトープは、例えばアミノ酸または糖側鎖などの規定の化学的に活性な分子の表面群からなる場合があり、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する場合がある。本明細書において使用される場合、「抗原性エピトープ」という用語は、当分野に周知の任意の方法、例えば従来的な免疫アッセイ法、抗体競合結合アッセイ、またはx線結晶法もしくは関連する構造決定法(例えばNMR)により決定されたときに、抗体分子が特異的に結合することができるポリペプチドの部分として規定される。
【0149】
「結合アフィニティ」または「KD」という用語は、特定の抗原-抗体の相互作用の解離速度を指す。KDは、「off-rate (koff)」とも呼ばれる解離速度の、「on-rate (kon)」、すなわち会合速度に対する比率である。ゆえにKDは、koff / konに等しく、モル濃度(M)として表される。従って、KDが小さくなると、結合アフィニティは強くなる。ゆえにKDが1μMであれば、KDが1nMの場合と比較して結合アフィニティが弱いことを示す。抗体のKD値は、当分野に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDの決定方法の1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用するものであり、典型的には、例えばビアコア(Biacore(登録商標))システムなどのバイオセンサーシステムを使用する。
【0150】
「有効性」という用語は、生物活性の測定値であり、本明細書に記載のCD47活性アッセイにおいて測定される活性の50%を阻害する、抗原CD47に対する抗体または抗体薬剤結合体のIC50すなわち有効濃度として表す場合もある。
【0151】
本明細書において使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という文言は、所望の治療結果を実現するために必要な(用量での、および期間に対する、および投与手段に対する)量を指す。有効量は、活性剤の、対象に治療上有益な影響を与えるために必要な少なくとも最小量であるが、対象に毒性のある量よりは少ない量である。
【0152】
本発明の抗体分子の生物活性に関して本明細書において使用される場合、「阻害する」または「中和する」という用語は、限定されないが、CD47に対する抗体分子の生物活性、または抗体分子とCD47の結合相互作用を含む、阻害されるものの例えば進行または重症度を実質的に拮抗する、妨げる、予防する、抑える、減速させる、破壊する、除去する、停止させる、低下させる、または反転させる抗体の能力を意味する。
【0153】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターに対するレシピエントであってもよく、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫物を含み、当該子孫物は、自然の、偶発的な、または意図的な変異により、元の親細胞と完全に同一(形態において、またはゲノムDNAの相補体において)であるとは限らない場合がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0154】
本明細書において使用される場合、「ベクター」とは、宿主細胞において、関心の1つまたは複数の遺伝子または配列を送達することができる、そして好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては限定されないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNAの発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン縮合剤と会合したDNAまたはRNAの発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAまたはRNAの発現ベクター、および例えば産生細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。
【0155】
本明細書において使用される場合、別段が示唆されない限り、「治療すること」という用語は、そうした用語が適用される障害もしくは症状、またはそうした障害もしくは症状の1つまたは複数症状を反転させる、改善させる、その進行を阻害する、その進行を遅延させる、発症を遅延させる、または予防することを意味する。本明細書において使用される場合、別段の示唆が無い限り、「治療」という用語は、上述に規定される治療の行為を指す。「治療すること」という用語は、対象のアジュバント療法およびネオアジュバント療法も含む。誤解を避けるために、本明細書において「治療」という言及は、治癒的、緩和的、および予防的な治療に対する言及を含む。誤解を避けるために、本明細書において「治療」という言及は、治癒的、緩和的、および予防的な治療に対する言及もさらに含む。
【0156】
本明細書において、実施形態は、「含む、含有する」という文言で記載されているか、さもなければ「~からなる」および/または「本質的に~からなる」として記載される類似した実施形態も提供されることを理解されたい。
【0157】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の択一的な群で記載されている場合、本発明は、概して列挙される群全体のみならず、当該群の各メンバーを個々に、および当該主要群のうちの可能性のあるすべての亜群、そして当該群メンバーの1つまたは複数を欠いた主要群も包含する。本発明はさらに、請求される本発明の群メンバーのいずれかの1つまたは複数の明白な除外を予期するものである。
【0158】
別段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、本明細書が定義を含めて主導をとるものとする。本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、「含む、含有する」という文言、または例えば「含む、含有する」または「含むこと、含有すること」といった変化形は、記述される整数値の含有、または整数値の群の含有を示唆するが、任意の他の整数値または整数値の群の除外は示唆しないと理解される。文脈により別段であることを要しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形は単数を含むものとする。「例えば」という用語の後に続くあらゆる例示は、包括的または限定であることは意味しない。
【0159】
本発明の実施は、別段の示唆が無い限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来的な技術を採用し、それら技術は当分野の技術範囲内にある。
【0160】
本発明の特定の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照しながら記載することとする。
【実施例】
【0161】
実施例1.最適化抗CD47治療用抗体の作製
イントロダクション
本実施例において、本発明者らは、アンタゴニスト性の最適化抗CD47抗体パネルの作製に成功した。これら抗CD47抗体は良好に発現され、生物物理的に安定であり、溶解度が高く、そして好ましいヒト生殖細胞系列に対し最大のアミノ酸配列同一性を有している。
【0162】
材料及び方法
IgGのクローニング、一過性発現、精製
抗体v-ドメインをコードするDNA配列を、制限酵素-ライゲーションクローニングを介して、別個のプラスミドベクター中の別個のIgG重鎖およびIgG軽鎖の発現カセット内にクローニングした。抗体は、以下の2つのヒトIgG1形式で発現された:IgG4(S228P)およびIgG1ヌル-Fcγ受容体誘導型のエフェクター機能が最小化されている、下位ヒンジ変異L234A/L235A/G237Aを有するIgG1。製造元のプロトコールに従い、エンドトキシンを含まないIgG発現プラスミド調製物を用いた一過性トランスフェクションの後、HEK-293expiまたはCHO細胞において、IgGを発現した。以下の単工程プロトコールを使用してIgGを精製した:馴化培地を、PBS pH7.4で前もって平衡化された1mLのProAセファロースカラム上にロードした(適切に)。カラムを、5カラム体積のPBS pH7.4で洗浄し、その後、タンパク質を100mMのグリシン、pH2.7で溶出させ、30kDaカットオフ透析膜を使用して、PBS pH7.4中で透析を行った。
【0163】
IgG力価測定結合ELISAs
グライナー社のBio-One High bind ELISAプレートをコーティングするために、標的タンパク質を炭酸塩緩衝液中で1μg/mlに希釈し、1ウェル当たり100μlで、4℃で一晩、添加した。コーティングされたプレートを、PBS pH7.4で3回洗浄し、1% BSAのPBS溶液(380μl/ウェル)で1時間、室温でブロッキングし、その後、PBS-Tween20(PBST)で3回洗浄した。次いでCD47抗体(100μl/ウェル;PBST中で希釈)を添加し、次いで1時間、室温でインキュベートした。次いでプレートをPBSTで3回洗浄し、ヤギ抗ヒトカッパ鎖-HRP(100μl/ウェル)を室温で1時間添加した。次いでプレートをPBSTで3回洗浄し、PBSで2回洗浄した後、1ウェル当たり100μlのTMBを添加した。100μlの2MのH2SO4/ウェルを加えることで反応を停止させ、450nmでプレートリーダー上でODを読み取った。
【0164】
抗CD47抗体は、ELISAで多重反応性を試験した。精製された組換えの、標的抗原および非標的抗原を、炭酸塩緩衝液中、1ウェル当たり100ngで96ウェルNunc maxisorpプレートに4℃で一晩、コーティングした。次いでプレートをPBSで3回洗浄し、1%BSAのPBS溶液でブロッキングを行い、次いでPBS-Tween20で3回洗浄した。次いで一次抗体の希釈系列を加え、プレートをPBS-Tween20で3回洗浄し、その後、ヤギ抗ヒトカッパ鎖-HRP 1:4,000の二次抗体を加えた。次いでウェルをPBS-Tween20で3回洗浄し、PBSで2回洗浄して、1ウェル当たり100μlのTMBペルオキシダーゼ基質を加えて、100μlの2MのH2SO4を加えることで反応を停止させて、吸光度を450nmで読み取った。過去に記載(Mouquet et al.,2010,Nature 467:591-595を参照のこと)されるように、負電荷を帯びた生物分子表面上でのELISAを介したIgG結合解析が行われた。
【0165】
CD47ライブラリーの作製および選択
CD47 scFvレパートリーは、大量オリゴヌクレオチド合成およびPCRにより組み立てられた。次いで増幅されたscFvレパートリーを制限酵素-ライゲーションを介してファージミドベクター内にクローニングし、大腸菌TG-1細胞内に形質転換した。ファージレパートリーは、原則として過去に詳述されるようにレスキューされた(Finlay et al.,2011,Methods Mol Biol 681:383-401)。
ファージ選択は、ストレプトアビジン磁気マイクロビーズをCD47-Fcタンパク質(ヒトまたはカニクイザルのいずれか)でコーティングし、ビーズをPBSで3回洗浄して、5%スキムミルクタンパク質(MPBS)を加えたPBS pH7.4中に再懸濁させることにより実施された。これらビーズは、選択のラウンド1では200nMの標的タンパク質でコーティングされており、その後の連続ラウンドでは100、50および10nMでコーティングした。
【0166】
HTRF結合競合アッセイ
移植クローンおよびライブラリー由来クローンによる、ヒトおよび/またはカニクイザルのCD47-Fcへのh5F9G4 IgG結合に対するエピトープ競合を検証するために、競合HTRFアッセイを確立した。精製されたh5F9G4 IgG1を、標識キット(CisBio社)を製造元の説明書に従い使用して、テルビウムで標識した。最終反応混合物は、上述の通り調製された、ビオチン化ヒトまたはカニクイザルのCD47-Fc、SA-XL665(CisBio社)、テルビウム標識された親h5F9G4、および関心の競合scFvまたはIgGを含有した。トータルの反応体積は、1×アッセイ緩衝液[50mMのリン酸ナトリウム、pH 7.5、400mMのフッ化カリウム、および0.1%のBSA(w/v)]中、20μlであった。384ウェルの低体積黒色プレート(Nunc社)に連続して試薬を加えた。室温で1時間、反応を進ませ、その後にプレートをプレートリーダー上で340nmの励起、および615nm(h5F9G4-テルビウムからのインプットドナー蛍光を測定)と665nm(SAXL665からのアウトプットアクセプター蛍光を測定)との2つの発光測定値を用いて読み取った。測定値は、665nm/615nmの比率として表した。
【0167】
CD47-SIRPα結合競合アッセイ
CD47のSIRPαとの結合相互作用を遮断する最適化リードの能力を検証するために、競合ELISAアッセイを確立した。グライナー社のBio-One High bind ELISAプレートをコーティングするために、炭酸塩コーティング緩衝液中10μg/mlのヒトSIRPα-Fcを、ウェル当たり100μlで、4℃で一晩、添加した。コーティングされたプレートを、PBS pH7.4で3回洗浄し、1% BSAのPBS溶液(380μl/ウェル)で1時間、室温でブロッキングし、その後、PBS-Tween20(PBST)で3回洗浄した。次いで、ビオチン化したヒト、マウスまたはカニクイザルのCD47-Fcを、競合scFvまたはIgGを添加して状態でまたは添加しない状態で、PBS中0.2μg/mlで、1ウェル当たり100μlで、室温で60分間添加した。次いでプレートを、PBSTで3回洗浄し、ストレプトアビジンHRPを、室温で1時間添加した(100μl/ウェル)。次いでプレートをPBSTで3回洗浄し、PBSで2回洗浄した後、1ウェル当たり100μlのTMBを添加した。100μlの2MのH2SO4/ウェルを加えることで反応を停止させ、450nmでプレートリーダー上でODを読み取った。
【0168】
抗体v-ドメインT細胞エピトープ含量:インシリコ分析
インシリコ技術(Abzena社(Abzena,Ltd.))は、治療用抗体および治療用タンパク質中のT細胞エピトープの位置の特定に基づいており、抗体v-ドメイン中の潜在的な免疫原性を評価するために使用した。iTope(商標)を使用して、ヒトMHCクラスIIに対して無差別な高アフィニティ結合を有するペプチドに関し、重要なリードのVL配列およびVH配列を解析した。無差別な高アフィニティのMHCクラスII結合ペプチドは、薬剤タンパク質の臨床免疫原性に関する高いリスク指標であるT細胞エピトープの存在と相関すると考えられている。iTope(商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と、34種のヒトMHCクラスIIアレルの開放末端結合溝(groove)内の特定の結合ポケット(特にポケット位置;p1、p4、p6、p7およびp9)との間の有益な相互作用を予測する。これらアレルは、広く存在する最も普遍的なHLA-DRアレルであり、任意の特定の民族集団で最も多く存在するものによって起こる重み付けはない。当該アレルのうちの20種が、「開いた」p1構造を含有している。そして14種が「閉じた」構造を含有しており、83位のグリシンがバリンで置換されている。重要な結合残基の位置は、被験タンパク質配列にわたり8アミノ酸が重複している9merペプチドのインシリコ生成により取得される。このプロセスによって、MHCクラスII分子に結合する、または結合しないペプチド同士を高い正確性で識別することに成功した。
【0169】
さらに、TCED(商標)(T細胞エピトープデータベース(T Cell Epitope Database(商標)))を使用して配列を解析し、過去にインビトロでの他のタンパク質配列のヒトT細胞エピトープマッピング解析により特定されたT細胞エピトープとの合致を検索した。TCED(商標)を使用して、非関連タンパク質に由来するペプチドの大きな(10,000個を超えるペプチド)データベースに対する任意の被験配列と、抗体配列とを検索する。
【0170】
ヒトマクロファージを用いた食作用有効性アッセイ。
末梢血単核球細胞(PBMC)を、密度勾配遠心分離により全血液より単離した。次いでCD14陽性PBMCを、CD14マイクロビーズを用いた磁気細胞単離を介して単離した。並行して、ジャーカット細胞を、グリーンCFSE(カルボキシフルオレスセインジアセテート、サクシニミジルエステル)細胞追跡用色素を用いて標識した。合計で6.25×105個の標識したジャーカット細胞を、5%のCO2を含有する湿気のある環境で、UH2抗体の存在下、96ウェルプレート中、37℃で1時間、予めインキュベートした。インキュベート後、2.5×105個のCD14陽性細胞を各ウェルに添加して、同じ培養条件下で、さらに1時間インキュベートした。
【0171】
細胞は、激しくピペッティングすることで回収し、生死判別色素(viability dye)で染色し、氷冷した4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した。固定後、細胞を、Fc受容体結合阻害モノクローナル抗体で10分間ブロッキングし、次いでAlexa Fluor 647(AF647)を結合させた抗ヒトCD11b抗体と共に、室温で30分間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒド中で5分間、さらなる時間固定した。
【0172】
細胞を、CFSEおよびAF647の蛍光強度データに加えて、前方散乱および側方散乱特性を記録するBD Fortessaフローサイトメーターで解析した。データは、少なくとも1×104個のAF647陽性事象が記録されるまで取得した。データは、FlowJoソフトウェア(バージョン10.4.2)を用いて取得後に解析した。簡潔には、細胞片(cell debris)を、散乱特性でゲートアウトした(SSC-Area by FSC-Area(SSC面積×FSC面積))。単一細胞もまた、SSC-Area by SSC-Height(SSC面積×SSC高さ)でゲートし、次いでFSC-Area by FSC-Height(FSC面積×FSC高さ)でゲートした。残った単一細胞集団から、ビヒクル処置試験でのCD11b陽性細胞の集団に基づいて設定されたQuadrant Gateを用いて、CFSEおよびCD11bの二重陽性細胞をゲートした。CD11b陽性集団からのCFSE陽性細胞の百分率を、算出してプロットした。
【0173】
結果および考察
好ましいヒト生殖細胞系列v-遺伝子へのCDR移植
アンタゴニストマウス抗CD47 IgG 5F9G4のCDR(5F9G4;国際公開第2011143624A2号および表2を参照のこと)を、CDR移植法を使用して、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンv-ドメインフレームワーク配列スキャホールドに最初に導入した。最適な薬剤様性能を有する最終リード治療用IgG化合物に向けて、遺伝子操作の努力を傾けるために、親抗体のCDRを、「好ましい」生殖細胞系列スキャホールドのIGHV5-51およびIGKV2-28に移植することを選択した。それらスキャホールドは、ファージディスプレイにおいてscFv形式で非常に良好に示されて発現され、良好な溶解性、高い物理的安定性を有することが知られており、発現されたヒト抗体レパートリーにおいて高頻度に使用されている。IGHV5-51もまた、VHの移植に関して好ましい生殖細胞系列フレームワークであるが、これはm5F9G4 HCDR2との高度な配列および構造モチーフ相同性を示したからである(
図2)。
【0174】
これらスキャホールドおよび移植されたCDRの定義は、表2に概要を掲載した。キメラ抗CD47抗体m5F9G4、およびヒト化h5F9G4の重鎖配列と軽鎖配列も表2に示す。このCDR移植のプロセスは周知であるが、ヒトv-ドメイン配列の所与のセットが非ヒトCDR移植にとって適切なアクセプターフレームワークとして機能するかどうかを予測するのは未だ困難である。不適切なフレームワークの使用は、標的結合機能の減少、タンパク質安定性の問題、さらには最終IgGの発現の低下につながり得る。そこでCDR突然変異誘導の鋳型としてIGKV2-28/IGHV5-51移植が採用され、改善クローンの選択が行われた。
【0175】
ライブラリー作製およびスクリーニング
CDRが移植されたIGKV2-28/IGHV5-51のv-ドメイン配列を、VL-VH scFv形式に組み込み、突然変異誘導ライブラリーカセットを、オリゴヌクレオチド合成およびアセンブリにより作製した。最終scFvライブラリーをファージディスプレイベクター内にライゲートし、エレクトロポレーション法を介して大腸菌内に形質転換して、6.0×108個の独立したクローンを生成した。ライブラリーの構造品質は、96個のクローンを配列解析することにより検証された。この配列解析データにより、マウスまたはヒトいずれかの生殖細胞系列の各相違位置の残基をコードする位置を、効率的におよそ50%の頻度でサンプリングされたことが示された。ライブラリーは、ヘルパーファージM13を使用してレスキューされ、選択はビオチン化されたヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcタンパク質に対し、複数の別個のブランチにおいて実施された。
【0176】
選択後スクリーニング(
図1A~Fに示すとおり)およびDNAシーケンシングにより、h5F9G4 IgG1とのエピトープ結合競合を保持し、hCD47のhSIRPαに対する結合を遮断し、また有意に増加したCDR内のヒト含量を含有した、269個の固有のヒトおよびマウスCD47結合scFvクローンの存在が明らかになり、一方で、フレームワーク配列は、完全に生殖細胞系列のままであった。これら269個のクローンの中で、生殖細胞系列化変異が、すべてのCDR中で観察された(表3)。リードクローンは、ヒトCD47-Fcおよびh5F9G4の両方への結合に関する、HTRFシグナルに対するCDR生殖細胞系列化のレベルに基づき格付けされた(
図1)。次いでこの格付けの上位11個のクローンのv-ドメインをIgG発現ベクターにサブクローニングし、以下のさらなる検証を行った(表4)。しかしながら、予期せずに、CD47-SIRPαおよびCD47-h5F9G4両方の中和の全ての解析において、ライブラリー由来クローンも、IGKV2-28/IGHV5-51移植scFvも、IGKV2-28/IGHV1-3-移植h5F9G4 scFvと同じ有効性に達したものはなかった(
図1A~F)。
【0177】
生殖細胞系列化変異は、ライブラリー選択から直接誘導されたリードクローンのすべてのCDRにおいて観察されたが、配列解析を行うことで、ヒト化が最大となるようクローンをさらに設計することが可能となり、また最大限のCD47結合アフィニティとアンタゴニズム有効性とを保持する可能性がある。したがって、ヒトおよびマウスのタンパク質に対する結合シグナルを有する269個の配列-固有ヒットを使用して、この機能的に特徴解析された集団のCDRにおけるマウスアミノ酸の保持頻度を解析した。位置的なアミノ酸保持頻度は、V
HドメインおよびV
Lドメインでの百分率として表されている(
図2A、2B)。RF<75%を有するマウス残基は、一連のコンビナトリアルデザインにおいて、標的-結合パラトープに必須ではない可能性がある位置とみなされ、生殖細胞系列化に対し開かれている可能性がある。重要なことに、上記に概要を示したscFvスクリーニングデータで観察されたように、IGHV5-51移植VHドメインの有効性は、IGHV1-3フレームワークのものよりも低そうであるとみなされた。このことが問題であるか否かを検証するために、
図2AおよびBに概要を示したパラトープサンプリング情報を用いて、最初のライブラリー由来の高度にヒト化したクローン(VHドメイン内のIGHV5-51フレームワーク)と並べて比較するためにIGKV2-28およびIGHV1-3のフレームワーク内にデザインクローンを構築した。
【0178】
多くの組み合わせのなかで、RF>75%でそれらマウス残基を主として含有する10種のVHデザインは、VH1.1~VH1.10と示した。6種のVLデザインもまた生成したが(VL1.1~VL1.6)、これらは、scFv配列の高機能性集団において観察された最もヒト化されたCDRと、LCDR1内のさらなるヒト化変異および脱アミド化モチーフ破壊変異を加えて組み合わせて生成された(表4)。これらLCDR1ヒト化変異および安定化変異は、11位、12位および13位(残基GNT)で取得され、これらは可変位置であることが観察されたが(
図2A、表3)、これら潜在的な最適配列(例えば「ANT」および特にデザイン鎖VL1.4に存在する「AYN」モチーフと、表4に概要を示した他のもの)は、標的結合特異性とCD47-SIRPα相互作用を遮断する能力とを保持しながら、忍容され得るということは明確に示されなかった。
【0179】
VHクローンおよびVLクローンは、(上記に概要を示した11個のライブラリー由来クローン、陽性対照のIGHV5-51移植、h5F9G4およびm5F9G4ならびに陰性対照の非CD47反応性v-ドメインとともに)遺伝子合成により生成され、次いで発現ベクターにクローニングされ、ヒトIgG1ヌルとして作製された。機能的に最適化された配列を見出す機会を最大限にするために、VHデザインクローンおよびVLデザインクローンをマトリクス化し、全てのあり得る組み合わせでVH配列およびVL配列を組み合わせた。上記で観察されたIGHV5-51ベースのscFvの観察された有効性の低下が、scFvフォーマッティングに起因するか否か、フレームワーク選択に起因するものではないか否かを検証するために、リードクローンD6のscFvを、IgG1およびscFv-Fcの融合形式の両方としてクローニングした。すべてのIgGおよびD6 scFv-Fc融合タンパク質が、HEK-293細胞の一過性トランスフェクションから容易に発現され、精製された。
【0180】
ライブラリー由来リードIgGの特異性および有効性の特徴解析
次いで上述の精製IgGを、直接力価測定ELISA形式において、ヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcへの結合に関して試験した。この解析により、全てのライブラリー由来クローンが、ヒトCD47に対する結合アフィニティを保持したが、m5F9G4 IgG1の結合を完全に反復するものはなかったことを示した(
図3A)。この結合の減少は、カニクイザルCD47でより顕著であり、クローンF-G3が、特に弱い反応性を示していた(
図3B)。
【0181】
直接ELISA結合シグナルはアビディティに影響を受け、ある特定のエピトープの維持を明らかにしないため、すべてのIgGをその後、CD47に対する5F9G4結合について、CD47-SIRPα結合遮断アッセイ(
図4)および液相HTRF競合アッセイで検証した(
図5)。CD47-SIRPα結合遮断アッセイでは、全てのライブラリー由来IgGが、ヒトCD47(
図4A)への結合であってもカニクイザルCD47(
図4B)への結合であっても、h5F9G4、m5F9G4およびIGHV5-51移植IgGと比較して、有効性の有意な減少を示した。重要なことには、IGHV5-51移植IgGは、SIRPαに対するヒトCD47およびカニクイザルCD47両方の結合を完全に遮断するが、h5F9G4と比較して、明らかに有効性が減少していたことを示した。このことは、IGHV5-51フレームワークに5F9G4 CDRを配置する移植プロセスが、h5F9G4と比較して分子の有効性を特に減少させたが、これはCDR配列が両フレームワークに沿って維持されるためであることを示唆した。さらに予期せぬ知見では、D6 scFv-Fc融合タンパク質が、両オルソログに対する、IGHV5-51移植IgGの開始CD47を遮断する性能を維持した一方で、D-A6 IgGは維持しなかったので、いずれのオルソログも完全に遮断することができなかった(
図4A、4B)。
【0182】
一部のIGHV5-51フレームワーククローンによるCD47遮断性能の観察された損失が、「エピトープシフト」現象によりなされたものではないということを確実にするために、HTRFアッセイを行った。このアッセイで、これらクローンの、CD47に対するh5F9G4の結合を競合する能力を検証した。これら解析では、ほとんど全てのクローン(F-G3を除く)が、h5F9G4と交差競合できて、大部分のクローンでは、最高濃度において結合を完全に阻害することを実証していたことを示した(
図5A)。しかしながらここでまた、阻害性能は、h5F9G4の自己競合と比較して減少していた。この知見により、共有エピトープの維持が示唆されたが、IGHV5-51フレームワーククローンにおける結合アフィニティは低下した。重要なことには、ここでまたD6 IgGよりもD6 scFv-Fcの機能が改善したことが実証されて、D6 scFv-FcはIGHV5-51移植IgGに対して同等の有効性を示していた一方で、D-A6 IgGは明らかに有効性が減少した(
図5B)。
【0183】
D6 IgGに対するD6 scFv-Fcの融合性能に関する知見は、scFvのディスプレイおよびスクリーニングと一体となっている、CDRを再移植するプロセスが、scFv形式で優先的に機能的であるクローンを予期せずに選択して、当該クローンはその後IgG1内に再構成されたときに性能が減少することを強く示唆した。この観察は、scFv断片として、二特性抗体生成において特に魅力的であるこうしたクローンが、多重特異性抗体のモジュラー構築ブロックとしてうまく使用することが可能であることを示す。しかしながら、全体として、これら知見はまた、Townsendらのオリジナルの方法が、改善されたバージョンのh5F9G4の生成を含んでいないことも示している。
【0184】
デザインIgGの特異性および有効性の特徴解析
次いで上述の精製IgGを、直接力価測定ELISA形式において、ヒトおよびカニクイザルのCD47-Fcへの結合に関して試験した。この解析では、多数のクローンがヒトおよびカニクイザルのCD47に対する結合アフィニティを保持したが、結合有効性の範囲は不均一性が高く、一部のクローンでは結合シグナルが有意に減少していたがIgGのサブセットではm5F9G4 IgG1の結合を完全に反復していたということが実証された(
図6A~H)。VL1.1-1.6ドメインと組み合わせたVH1.8 VHドメインを含有するクローンのファミリーが、m59G4の完全な結合性能の最も一貫した反復を実証したので、それらを
図6GおよびHで別個に示している。
【0185】
直接ELISA結合シグナルはアビディティに影響を受け、ある特定のエピトープの維持を明らかにしないため、すべてのIgGをその後、CD47-SIRPα結合遮断アッセイで検証した(
図7、
図8)。CD47-SIRPα結合遮断アッセイでは、全てのVH1.8ファミリーIgGが、高い有効性を示して、ヒトCD47(
図7A)への結合であってもカニクイザルCD47への結合であっても(
図7B)、h5F9G4およびm5F9G4と比較して、VH1.8/VL1.4以外の全てのクローンに関して機能的等価性(functional equivalency)を伴っていた。ELISAで良好に作動したいくつかの他のデザインクローンがまた、hCD47-SIRPα結合を遮断する能力を示したが(
図8)、それにもかかわらず、VH1.8ファミリークローンよりも低い有効性を伴っていた。
【0186】
高機能性デザイン抗体によるCD47遮断性能の観察された維持が、維持されたエピトープ特異性と一体的であることを確実にするために、CD47に対する5F9G4結合の液相HTRF競合アッセイを実施した(
図9)。このアッセイで、重要なデザインクローンの、CD47に対するh5F9G4の結合を競合する能力を検証した。この解析では、全てのVH1.8ファミリークローンが、h5F9G4と交差競合することができ、複数のクローンは、ヒトCD47(
図9A)およびカニクイザルCD47(
図9B)に対して同等の有効性(表5)を実証していたことが示された。しかしながらここでまた、VH1.8/VL1.4に対する阻害性能は、h5F9G4の自己競合と比較して減少していた。この知見により、共有エピトープの維持が示唆されたが、VL1.4ドメイン含有クローンに関する結合アフィニティは低下した。さらなるHTRF解析では、hCD47遮断を示した全ての非VH1.8ファミリークローンもまた(
図8)、h5F9G4と交差競合することができたが、全てのクローンで、ヒトCD47(
図9C)およびカニクイザルCD47(
図9D)に対して有効性が減少していた(表5)ことが示された。VH1.8バックグラウンドでのCDR残基をさらに取得する試みにおいて、VL1.5配列の3種つのさらなるデザインクローンの子孫(VL1.7、VL1.8およびVL1.9)に加えて、2つのさらなるデザインクローン(VH1.11およびVH1.12)を生成した。これらデザインクローンを、あるマトリックス内で共発現し、6つのさらなるIgGを生成し、次いでCD47-SIRPα遮断アッセイで検証した。この解析では、クローンの全てが、VH1.12/VL1.8以外で、拮抗性CD47において全ての有効性を喪失し、VH1.12/VL1.8は10μg/mlで最小限の遮断(<50%)を維持したことが示された。これら知見では、LCDR2の6位におけるFからAへの変異が、またはLCDR3の1位におけるFからMへの変異の両方が、CD47拮抗の完全な排除をもたらしたことが示された。
【0187】
細胞膜でのリードIgG結合特異性のフローサイトメトリー解析
ELISAによってCD47に対する結合を保持することが示された抗体を、フローサイトメトリーを介して、細胞表面での濃度依存性結合に関して分析した。ヒトまたはカニクイザルのCD47のいずれかの全長cDNAを用いてCHO-K1細胞に安定的にトランスフェクトした。次いで抗CD47 IgGおよびアイソタイプコントロールIgG1をすべて、100~0.024μg/mlの濃度範囲にわたり、ヒト、カニクイザルまたは野生型対照(「wt」、すなわち非トランスフェクト)のCHO-K1(
図10)に対する結合に関してIgG1ヌル形式で試験した。アイソタイプコントロール以外のすべてのIgGが、ヒトおよびカニクイザルのCD47+細胞に対して、そして、ヒトAML細胞株HL60に対しても、濃度依存性の結合を示した。各ケースにおいて、最大MFIは、非トランスフェクトCHO-K1に対する結合で観察されたバックグラウンドシグナルよりも50倍超高かった。抗CD47抗体は、非トランスフェクトCHO-K1細胞に対し、測定可能なバックグラウンド結合を示さず、アイソタイプコントロールIgG1と同等であった(
図10)。
【0188】
「開発可能性」ELISAアッセイにおけるリードIgG解析
当分野において、いくつかの指標的生物基質に対する、治療用途目的のIgGの結合は、生体利用効率の貧弱さ、およびインビボ半減期の短さによって、患者での性能が低くなるリスクが高いことの指標となることが知られている。3種のこうした生物基質は、インスリン、dsDNAおよびssDNAである(Avery et al.Mabs;10:2;244-255;2018)。そこでこれら3種の基質を使用してELISAプレートをコーティングし、最適化されたリード抗体のIgG1ヌル型の結合を検証した。これらヒトIgG系抗体の結合シグナルを、多反応性および性能の低さが判明し、臨床試験の進行が停止してしまった「陽性対照」のヒトIgG抗体(ボコシズマブおよびブリアキヌマブのヒトIgG1アナログ)と比較した。陰性対照のヒトIgG1抗体については、ブリアキヌマブと同じ治療標的と反応するが、pKが長く、治療用製品として承認を受けることに成功したIgG1ウステキヌマブアナログを使用した。
図11A、BおよびCに示されるELISA解析において、陽性対照抗体は、3種すべての基質に対し、予測通りの強い反応性を呈した。一方で、陰性対照のウステキヌマブは、低い反応性を示した。重要なことは、検証されたすべてのIgG1リードクローンが、3種すべての基質に対し、陰性対照以下の結合を示したことである。この知見は、最適化されたクローンVH1.8/VL1.1、VH1.8/VL1.2、VH1.8/VL1.3、VH1.8/VL1.4、VH1.8/VL1.5、VH1.8/VL1.6、VH1.7/VL1.4、VH1.6/VL1.9およびVH1.12/VL1.8において高度に特異的な、標的誘導結合が維持されていることを強調していた。
【0189】
抗体v-ドメインT細胞エピトープ解析
インシリコ技術(Abzena,Ltd.社)は、治療用抗体および治療用タンパク質中のT細胞エピトープの位置の特定に基づいており、h5F9G4およびリード抗体のv-ドメイン両方の免疫原性の評価に使用した。v-ドメイン配列の解析は、重複する9merペプチド(各々が最後のペプチドと8残基重複する)を用いて実施され、34種のMHCクラスIIアロタイプの各々に対して試験した。各9merを、MHCクラスII分子との潜在的な「適合」および相互作用に基づいてスコア化した。ソフトウェアにより算出されるペプチドスコアは、0~1の間である。高い平均結合スコアを出したペプチド(iTope(商標)スコアリング機能において>0.55)が強調された。MHCクラスII結合ペプチドの>50%(すなわち34種のアレルのうちの17種)が高い結合アフィニティ(スコア>0.6)を有する場合、そうしたペプチドは、「高アフィニティ」MHCクラスII結合ペプチドとして規定され、CD4+T細胞エピトープを含有するリスクが高いとみなされる。低アフィニティMHCクラスII結合ペプチドは、多くのアレル(>50%)に、>0.55の結合スコア(しかし大部分は>0.6ではない)で結合する。配列のさらなる解析は、TCED(商標)を使用して実施された。この配列を使用して、BLASTサーチによりTCED(商標)をデータ検索し、過去にAbzena Ltd.社で実施されたインビトロT細胞エピトープマッピング研究でT細胞反応を刺激した非関連タンパク質/抗体由来のペプチド(T細胞エピトープ)間で任意の高い配列相同性を特定した。
【0190】
ペプチドを、以下の4つのクラスに分類した:高アフィニティ外来物(「HAF」-高免疫原性リスク)、低アフィニティ外来物(「LAF」-低免疫原性リスク)、TCED+(過去にTCED(商標)データベースにおいて特定されたエピトープ)、および生殖細胞系列エピトープ(「GE」-高いMHCクラスII結合アフィニティを有するヒト生殖細胞系列ペプチド配列)。生殖細胞系列エピトープの9merペプチドは、広範な生殖細胞系列ペプチドを用いた過去の研究により立証されたように、T細胞寛容によって免疫原性である可能性は低い(すなわち、これらペプチドは、宿主において「自己」として認識される)。重要なことは、そうした生殖細胞系列のv-ドメインエピトープ(ヒト抗体定常領域中の類似配列によりさらに補助される)は、抗原提示細胞の細胞膜でのMHCクラスII占有に関しても競合するため、T細胞刺激に必要とされる「活性化閾値」を達成するのに充分な外来性ペプチド提示のリスクを低下させることである。ゆえにGE含量が高いことは、抗体治療剤の臨床開発において有益な性質である。このスケールのもう一方では、TCED+ペプチドが、臨床において免疫原性で非常に高リスクであり、これは当該ペプチドが、MHC分子で提示されて、ヒトT細胞を活性化することが可能であるような、実験で証明されたペプチドエピトープの特性を有するからである。
【0191】
重要なリードv-ドメインは、h5F9G4と比較してペプチドエピトープ含量において有意に有益な変化を示した。したがって、本明細書において採用したv-ドメインの操作プロセスは、抗CD47有効性を維持する抗体の選択に成功し、一方で、TCED+であって、h5F9G4の重鎖および軽鎖の両方のv-ドメインに存在するものである複数のHAFエピトープおよびLAFエピトープを除去した。重要なことは、これら外来性エピトープが、リードクローンのCDR中に存在する生殖細胞系列化変異によって特異的に除去されていたことである。例えば、h5F9G4のLCDR-1に存在するTCED+ペプチド「IVYSNGNTY」(配列番号106)(
図12A)(そのため、CDR移植でヒト化されたh5F9G4のいずれかの形式で)が、表4の全てのリードクローンで見られるように、1位および2位におけるIからLへの変異およびVからLへの変異よって、大部分のリードクローンにおいて除去された。この知見により、LCDR1のみにおける生殖細胞系列化変異および非生殖細胞系列化変異は、アスパラギン脱アミド化リスクモチーフだけでなく試験されたヒトT細胞エピトープも除去するのに十分であることが示された。
【0192】
同様に、h5F9G4配列からのHCDR1/フレームワーク2領域が、HAFおよびTCED+ペプチド「YNMHWVRQA」(配列番号107)をコードした(
図12B)。このエピトープは、表4で見られるいくつかのリード配列で無効にされており、例えば、配列「YAMHWVRQA」(配列番号108)(例えば、VH1.1、VH1.6、VH1.8、VH1.9、VH1.11、VH1.12)または「YNIHWVRQA」(配列番号109)(例えばVH1.7)を含有する抗体等である。重要なことは、2位におけるNからAへの変異および3位におけるMからIへの変異が、TCED+エピトープを無効にするだけでなく、このエピトープを、GEペプチドに変換することである。さらに、表4に記載の全てのリードのHCDR2の最後の残基の生殖細胞系列化(表2で規定される最後のc-末端HCDR2位におけるDからGへの変異)はまた、IGHV5-51(「FQGQVTISA」配列番号102)およびIGHV1-3(「FQGRVTITA」配列番号103)の両方の生殖細胞系列に存在するGEペプチドを回復させた。
【0193】
h5F9G4のVHドメインのHCDR3/フレームワーク4配列において、さらなるTCED+ペプチド「YRAMDYWGQ」(配列番号110)が特定された(
図12C)。このエピトープは、表4で見られるいくつかのリード配列で無効にされており、例えば、配列「YRAEDYWGQ」(配列番号111)(例えば、VH1.1、VH1.2、VH1.3、VH1.6、VH1.9)を含有する抗体等である。
【0194】
詳細には、
図2Aおよび2BのデータによってCD47結合クローンにおいて寛容性でないことが予測されていた非生殖細胞系列変異および生殖細胞系列変異は、いくつかの重要なリードにおいて、試験的に、新規の置換を含んでいた。例えば、h5F9G4のLCDR-1において、軽鎖配列VL1.3、VL 1.4、VL 1.5およびVL 1.6に存在する開発リスクモチーフ除去変異(表4)は、寛容されるべきではない(
図2B)。同様に、VH1.8配列に基づくクローンまたは他のクローンの(表4)HCDR1におけるNからAへの、単一の、脱免疫化の、非保存的である変異は、
図2Aのデータにおいて寛容ではないことが強く予測された)。これら知見は、有益な変異は、文脈上、v-遺伝子フレームワーク依存的であり、この場合においては経験的にもまたはTownsendらの方法によっても完全に予測することができなかったことを示す。
【0195】
最後に、残る2つのHAFペプチドが、VL配列VL1.1~1.9内に存在する。フレームワーク2/LCDR2領域にわたる、はじめのHAFペプチド「LIYKGSNRF」(配列番号112)が、
図13Aに示す解析において特定された。フレームワーク3/LCDR3領域にわたる、次のHAFペプチド「VGVYYCFQA」(配列番号113)が、
図13Aに示す解析において特定された。両HAFペプチドは、1位の残基のアラニンへの変異(それぞれLからAと、VからA)により、完全に無効することができた。これら置換を取得するために、新規クローン「VH1.8/VL1.6-DI」を構築したが、これはVLドメインにおいて両方のアラニン置換を含有した。
【0196】
重要なリードの有効性およびアフィニティの解析
クローンh5F9G4、VH1.8/VL1.1、VH1.8/VL1.6およびVH1.8/VL1.6-DIを、ヒトIgG4(S228P)形式で、容易に発現して精製した。全てのクローンに関して、Fabドメインもまた、結合アフィニティ解析のために、可溶性モノマーとして発現して精製された。次いでこれらFabを、ヒトおよびカニクイザルのCD47に対するアフィニティに関して、定常状態のアフィニティ解析を用いてビアコアで検証した。信頼性のある1:1モデリングのためには、全てのFabの会合速度および解離速度が速過ぎたため、結合アフィニティ解析として定常状態を用いた。表6に示すように、4クローン全てが、非常に低いChi2値で証明されるとおり、正確な良好に当てはめられるデータを示した。全てのクローンは、低nM範囲において、h5F9G4の2倍の範囲内の結合アフィニティを有することが判明した。
【0197】
有効性を保持することについての最後の解析として、IgG4(S228P)形式でのクローンh5F9G4、VH1.8/VL1.1、VH1.8/VL1.6およびVH1.8/VL1.6-DIについて、これらの相対的有効性を、CD47+標的細胞として3人の独立のドナー由来のヒト単核球由来マクロファージと、ヒトのジャーカット癌細胞とを用いた、食作用のフローサイトメトリーアッセイで検証した。ドナー1(
図14A)、ドナー2(
図14B)およびドナー3(
図14C)からの細胞に対して解析された全てのクローンに関して、全てのクローンが、完全に重複する反応曲線で証明されるとおり、h5F9G4の有効性を完全に保持したかまたは当該有効性より改善された。
【0198】
本発明は好ましい実施形態または例示的実施形態を参照して記載されているが、当業者であれば、本発明の主旨および範囲を逸脱することなくそれらに対する様々な改変および変動を行うことが可能であること、およびそうした改変は本明細書において予期されることが明白であると認識するであろう。本明細書に開示される、および添付の請求の範囲に記載される特定の実施形態に関し、限定は意図されておらず、何らの示唆もないものとする。
【0199】
本明細書に開示される、および添付の請求の範囲に記載される特定の実施形態に関し、限定は意図されておらず、何らの示唆もないものとする。限定されないが特許、特許出願、記事、書誌、および論文を含む本明細書に引用されるすべての書面、または書面の一部は、その全体ですべての目的に対し、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。組み込まれた書面、または書面の一部の1つまたは複数が、本出願の用語定義と矛盾する用語を定義する場合、本出願にある定義が優先される。しかしながら、本明細書に引用されるすべての参照文献、記事、公表文献、特許、公表特許、および特許出願に関する言及は、それらが正当な先行技術を構成する、または世界の任意の国における普遍的で一般的な知識の一部を形成するという承認、または任意の形態の示唆として見なされず、または見なされるべきではない。
【0200】
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表4-1】
【表4-2】
【表5】
【表6】
【表7-1】
【表7-2】
【表8】
【表9】
【配列表】