(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】非接触通信媒体
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240325BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240325BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20240325BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240325BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20240325BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G01N27/04 B
G01N27/06 A
G06K19/077 144
G06K19/077 280
H01Q1/38
H01Q1/40
H01Q9/16
(21)【出願番号】P 2020060227
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-201068(JP,A)
【文献】特開2006-258684(JP,A)
【文献】特開2008-052668(JP,A)
【文献】特開2014-142756(JP,A)
【文献】特開2019-124657(JP,A)
【文献】特開2019-015589(JP,A)
【文献】特開2019-175095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06K 19/00 - 19/18
G01N 27/00 - 27/10
G01N 27/14 - 27/24
H01Q 1/00 - 1/10
H01Q 1/27 - 1/52
H01Q 5/00 - 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に形成された通信用アンテナと、
前記ベース基材の他方の面に形成された2本の検知用配線と、
前記通信用アンテナに接続されるとともに前記2本の検知用配線のそれぞれの一方の端部に接続されて前記ベース基材の前記一方の面に設けられ、前記2本の検知用配線間の導通状態を検出し、その検出結果を前記通信用アンテナを介して非接触送信する
検知手段と、
前記ベース基材の前記他方の面にて少なくとも前記検知用配線を覆って積層された絶縁層とを有し、
前記検知用配線は、平面視にて前記通信用アンテナを覆う形状の導電パターンを具備し、前記2本の検知用配線のそれぞれが、その一部が前記絶縁層から表出している、非接触通信媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信媒体において、
前記ベース基材は、少なくとも前記通信用アンテナ及び前記検知手段を覆う保護層が積層されている、非接触通信媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知体に取り付けられ、被検知体にて水分が発生した場合にその旨を非接触送信する非接触通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マンション等の集合住宅や一般的なビル等の建物においては、空調等に用いられる配管が天井裏や壁間に配設されており、この配管を用いて水等の流体の供給や排出が行われている。このような配管は、上述したように天井裏や壁間に配設されるため、建物の構造に応じてジョイント等の接合部材を用いて繋ぎ合わされることになる。ところが、このジョイント等による接合部分においては、シリコン等によってシーリングされているものの、シーリングが不完全な場合、漏水が生じる虞れがある。
【0003】
ここで、特許文献1には、水分が発生した場合にその水分によって一対の導電パターン間を短絡させ、一対の導電パターン間が絶縁状態であるか導通状態であるかをアンテナを介して読み出すことで水分の発生を検知する水分検知センサが開示されている。この技術を用いることで、上述したような漏水を検知することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような水分検知センサのような非接触通信媒体においては、金属からなる被検知体に取り付けられた場合、アンテナが金属の影響を受け、通信距離が短くなってしまう。そこで、金属の影響を避けるために、非接触通信媒体とそれが取り付けられる被検知体との間に磁性体や金属シート等を配置し、非接触通信に対する金属の影響を低減することが考えられる。
【0006】
しかしながら、非接触通信媒体とそれが取り付けられる被検知体との間に磁性体や金属シート等を配置する場合、磁性体や金属シートといった別部材が必要となるため、それらの位置合わせが必要となることで作業が煩雑になるとともに、構造が複雑となって高価なものとなってしまうという問題点がある。また、特許文献1には、アンテナや導電パターンが形成されるベース基材自体を金属からなるものとし、その表面に絶縁膜を介してアンテナや導電パターンを形成する旨が記載されているが、その場合、アンテナや導電パターンとベース基材とが短絡しないように絶縁膜を積層するという精細な技術が必要となり、製造工程等が煩雑になってしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、被検知体に取り付けられ、被検知体にて水分が発生した場合にその旨を非接触送信する非接触通信媒体において、被検知体が金属である場合でも金属による非接触通信への影響を簡易な構造で緩和することができる非接触通信媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に形成された通信用アンテナと、
前記ベース基材の他方の面に形成された2本の検知用配線と、
前記通信用アンテナに接続されるとともに前記2本の検知用配線のそれぞれの一方の端部に接続されて前記ベース基材の前記一方の面に設けられ、前記2本の検知用配線間の導通状態を検出し、その検出結果を前記通信用アンテナを介して非接触送信する検知手段と、
前記ベース基材の前記他方の面にて少なくとも前記検知用配線を覆って積層された絶縁層とを有し、
前記検知用配線は、平面視にて前記通信用アンテナを覆う形状の導電パターンを具備し、前記2本の検知用配線のそれぞれが、その一部が前記絶縁層から表出している。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、ベース基材の一方の面に通信用アンテナが形成されるとともに、ベース基材の他方の面に2本の検知用配線が形成されており、検知用配線が、平面視にて通信用アンテナを覆う形状の導電パターンを具備しているので、ベース基材の他方の面が被検知体と対向するように被検知体に取り付けられれば、被検知体と通信用アンテナとの間に、平面視にて通信用アンテナを覆う導電パターンが介在することとなり、金属からなる被検知体による非接触通信への影響が簡易な構造で緩和される。また、検知用配線が、ベース基材のうち非接触通信媒体が被検知体に取り付けられる場合に被検知体に対向する面に形成されていることで、被検知体に水分が発生した場合に2本の検知用配線が導通しやすくなり、被検知体における水漏れ等の水分の発生を検知しやすくなる。また、検知用配線が、ベース基材のうち非接触通信媒体が被検知体に取り付けられる場合に被検知体に対向する面に形成されていることで、検知用配線がベース基材によって外力等から保護されることとなる。そのため、通信用アンテナ、検知用配線及び検知手段を外力から保護するためにベース基材上に保護層を積層する場合に、通信用アンテナ及び検知手段を覆うように保護層を積層するだけでよく、特に、被検知体への取り付け作業における被検知体との位置合わせを容易にするために検知用配線の長さを長くした場合でも、保護層の大きさが大きくなることが回避される。
【0010】
また、ベース基材に、少なくとも通信用アンテナ及び検知手段を覆う保護層が積層されていれば、通信用アンテナ及び検知手段に外力が直接加わることが回避され、通信用アンテナ及び検知手段が保護される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベース基材の一方の面に通信用アンテナが形成されるとともに、ベース基材の他方の面に検知用配線が形成されており、検知用配線が、平面視にて通信用アンテナを覆う形状の導電パターンを具備しているため、ベース基材の他方の面が被検知体と対向するように被検知体に取り付けられれば、被検知体と通信用アンテナとの間に、平面視にて通信用アンテナを覆う導電パターンが介在することとなり、ベース基材に形成された2本の検知用配線の導通状態を検出することで被検知体にて水分が発生した旨を非接触送信する非接触通信媒体において、被検知体が金属である場合でも金属による非接触通信への影響を簡易な構造で緩和することができる。また、検知用配線が、ベース基材のうち非接触通信媒体が被検知体に取り付けられる場合に被検知体に対向する面に形成されていることにより、被検知体に水分が発生した場合に2本の検知用配線が導通しやすくなり、被検知体における水漏れ等の水分の発生を検知しやすくすることができる。また、検知用配線が、ベース基材のうち非接触通信媒体が被検知体に取り付けられる場合に被検知体に対向する面に形成されていることで、検知用配線がベース基材によって外力等から保護されることとなるため、通信用アンテナ、検知用配線及び検知手段を外力から保護するためにベース基材上に保護層を積層する場合に、通信用アンテナ及び検知手段を覆うように保護層を積層するだけでよく、特に、被検知体への取り付け作業における被検知体との位置合わせを容易にするために検知用配線の長さを長くした場合でも、保護層の大きさが大きくなることを回避できる。
【0012】
また、ベース基材に、少なくとも通信用アンテナ及び検知手段を覆う保護層が積層されているものにおいては、通信用アンテナ及び検知手段に外力が直接加わることが回避され、通信用アンテナ及び検知手段を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の非接触通信媒体の実施の一形態を示す図であり、(a)は積層構造を示す図、(b)は(a)に示したベース基材の一方の面上の構成を示す図、(c)は(a)に示したベース基材の他方の面上の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した水分検知ラベルの使用形態の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した水分検知ラベルが
図2に示したように床面に取り付けられた状態にて配管から水漏れが発生した場合の作用を説明するための図であり、(a)は配管から水漏れが発生していないときの状態を示す図、(b)は配管から水漏れが発生したときの状態を示す図である。
【
図4】
図1に示した水分検知ラベルを用いて配管からの水漏れを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【
図5】
図4に示したシステムにおいて
図1に示した水分検知ラベルが
図2に示したように床面に貼着された場合の配管からの水漏れを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1に示した水分検知ラベルのアンテナとベタパターンとの相対位置を示す図である。
【
図7】本発明の非接触通信媒体の他の実施の形態を示す図である。
【
図8】本発明の非接触通信媒体の他の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の非接触通信媒体の実施の一形態を示す図であり、(a)は積層構造を示す図、(b)は(a)に示したベース基材10の一方の面上の構成を示す図、(c)は(a)に示したベース基材10の他方の面上の構成を示す図である。
【0016】
本形態における非接触通信媒体は
図1に示すように、ベース基材10が封止材30で封止され、その一方の面に粘着剤20が塗布されて構成された水分検知ラベル1である。
【0017】
ベース基材10は、例えばフィルム等の非導電性材料から構成されている。ベース基材10の表面には、通信用のアンテナ12が形成されているとともに、検知手段となるICチップ11が搭載されている。ベース基材10の裏面には、2本の検知用配線13a,13bが形成されている。
【0018】
アンテナ12は、ベース基材10の表面に、2つの二等辺三角形の導体が空隙を介して並ぶようにして形成されている。
【0019】
2本の検知用配線13a,13bは、ベース基材10に表裏貫通して形成されたスルーホール15a,15を介してその一方の端部がICチップ11に接続され、ベース基材10の裏面にて互いに並行して延び、ベース基材10の端辺にて終端している。検知用配線13a,13bのそれぞれは、ベース基材10の裏面に、水分検知ラベル1を平面視した場合にてアンテナ12を覆う形状を有するベタパターン14a,14bを導電パターンとして具備している。
【0020】
ICチップ11は、2つのアンテナ端子(不図示)と、2つの検知用端子(不図示)とが設けられており、これらアンテナ端子及び検知用端子が設けられた面が搭載面となって、ベース基材10の表面に搭載されている。ICチップ11のアンテナ端子はそれぞれ、アンテナ12に接続されており、ICチップ11の検知用端子は、スルーホール15a,15bを介して検知用配線13a,13bのそれぞれの一方の端部に接続されている。ICチップ11は、アンテナ12を介した非接触通信によって得た電力による電流を検知用配線13a,13bに流すことで検知用配線13a,13b間の抵抗値を検出し、その抵抗値に基づいて検知用配線13a,13b間の導通状態を検出し、その検出結果をデジタル情報に変換してアンテナ12を介して非接触送信する。
【0021】
封止材30は、非導電性材料からなり、本願発明にて保護層及び絶縁層となるものである。封止材30は、上記のようにしてアンテナ12及び検知用配線13a,13bが形成されるとともにICチップ11が搭載されたベース基材10を、検知用配線13a,13bが終端した端辺を除いて表裏及び側方から覆って封止している。
【0022】
粘着剤20は、非導電性材料からなり、本願発明にて絶縁層となるものであって、ベース基材10を封止した封止材30のうちベース基材10の裏面側の面に塗布されている。
【0023】
本形態の水分検知ラベル1は上記のように構成されることで、検知用配線13a,13bのICチップ11に接続された端部とは反対側の端部が、ベース基材10の端辺にて封止材30及び粘着剤20から表出している。それにより、検知用配線13a,13bの一部が封止材30及び粘着剤20から表出している。
【0024】
以下に、上記のように構成された水分検知ラベル1の使用方法及びその際の作用について説明する。
【0025】
図2は、
図1に示した水分検知ラベル1の使用形態の一例を示す図である。
【0026】
図1に示した水分検知ラベル1は、例えば
図2に示すように、配管2が設置された金属からなる床面3に取り付けられ、配管2からの水漏れを検知するために使用される。その際、水分検知ラベル1は、後述するように、2本の検知用配線13a,13b間の導通状態を検出することで水分の発生を検知するため、ベース基材10の検知用配線13a,13bが表出した端辺が配管2に近接する向きで水分検知ラベル1が床面3に貼着されることになる。
【0027】
図3は、
図1に示した水分検知ラベル1が
図2に示したように床面3に取り付けられた状態にて配管2から水漏れが発生した場合の作用を説明するための図であり、(a)は配管2から水漏れが発生していないときの状態を示す図、(b)は配管2から水漏れが発生したときの状態を示す図である。
【0028】
図1に示した水分検知ラベル1が
図2に示したように床面3に貼着された状態で配管2から水漏れが発生していない場合は、
図3(a)に示すように、2本の検知用配線13a,13bが導通しておらず、非導通状態となっている。
【0029】
一方、
図1に示した水分検知ラベル1が
図2に示したように床面3に貼着された状態において、配管2において水漏れが発生すると、発生した水漏れによる水分が配管2を伝わり、床面3に溜まることで水分検知ラベル1に付着する。水分検知ラベル1は、上述したように、ベース基材10の検知用配線13a,13bが表出した端辺が配管2に近接する向きで床面3に貼着されているため、
図3(b)に示すように、配管2を伝わって床面3に溜まった水分13cは、ベース基材10の検知用配線13a,13bが表出した端辺に付着する。すると、ベース基材10の端辺にて表出した2本の検知用配線13a,13bの端部間において短絡13dが生じ、それにより、2本の検知用配線13a,13bが導通状態となる。そして、この検知用配線13a,13b間の導通状態を検出することで、配管2から水漏れが発生した旨が検知されることになる。
【0030】
このように、配管2から水漏れが発生していない場合は、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっており、一方、配管2から水漏れが発生している場合は、検知用配線13a,13bが導通状態となるため、検知用配線13a,13bの導通状態を検出することで、配管2から水漏れが発生していることを検知することができる。
【0031】
その際、検知用配線13a,13bが、ベース基材10のうち床面3に対向する面に形成されていることで、配管2から水漏れが発生した場合に、床面3に溜まった水分が検知用配線13a,13bの端部に付着しやすくなり、配管2から水漏れが発生した旨を検知しやすくすることができる。
【0032】
以下に、上述した作用を利用して水分検知ラベル1を用いて配管2からの水漏れの発生を検知する具体的な方法について説明する。
【0033】
図4は、
図1に示した水分検知ラベル1を用いて配管2からの水漏れを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【0034】
図1に示した水分検知ラベル1を用いて
図2に示した配管2からの水漏れを検知するためのシステムとしては、
図4に示すように、水分検知ラベル1に対して非接触通信が可能な読取手段となるリーダライタ5と、リーダライタ5と有線または無線を介して接続された処理手段となる管理用パソコン6とを有するシステムが考えられる。なお、読取手段のみならず処理手段が内蔵されたハンディターミナルをリーダライタとして用いることも考えられ、その場合、管理用パソコンが不要となる。
図5は、
図4に示したシステムにおいて
図1に示した水分検知ラベル1が
図2に示したように床面3に貼着された場合の配管2からの水漏れを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図1に示した水分検知ラベル1においては、リーダライタ5が水分検知ラベル1に近接され、リーダライタ5にて水分検知ラベル1が検出されると(ステップ1)、まず、リーダライタ5から、水分検知ラベル1に電力が供給されるとともに、検知用配線13a,13b間の導通状態の検出及びその検出結果の送信をする旨の命令が水分検知ラベル1に対して送信される(ステップ2)。
【0036】
リーダライタ5から供給された電力が水分検知ラベル1にて得られるとともに、リーダライタ5から送信された命令が水分検知ラベル1のアンテナ12を介してICチップ11にて受信されると(ステップ3)、リーダライタ5から供給された電力によって検知用配線13a,13b間に電流が供給される。
【0037】
ICチップ11においては、供給された電流を用いて検知用配線13a,13b間の抵抗値が検出されることで、検知用配線13a,13b間の導通状態が検出されることになる(ステップ4)。ここで、水分検知ラベル1が
図2に示したように床面3に貼着され、配管2から水漏れが発生していない場合は、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっている。その状態においては、リーダライタ5から供給された電力によって検知用配線13a,13b間に電流が供給されても、検知用配線13a,13b間が非導通状態となっていることから検知用配線13a,13b間には電流が流れず、それにより、ICチップ11において検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0038】
ICチップ11においては、検出された抵抗値がほぼ無限大である場合は、検知用配線13a,13b間が非導通状態になっていると判断され、その判断結果が検知用配線13a,13b間の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ12を介してリーダライタ5に非接触送信される(ステップ5)。なお、検知用配線13a,13b間が導通状態である場合にICチップ11にて検出される抵抗値が、後述するように、検知用配線13aと検知用配線13bとがベース基材10の端辺にて表出した端部にて接続された抵抗値となることから、ICチップ11において、検知用配線13a,13b間が非導通状態であると判断するための抵抗値としてほぼ無限大ではなく、検知用配線13aと検知用配線13bとがベース基材10の端辺にて表出した端部にて接続された抵抗値よりも大きな一定の閾値以上のものを用いてもよい。
【0039】
一方、水分検知ラベル1が
図2に示したように床面3に貼着され、配管2から水漏れが発生している場合は、上述したように、ベース基材10の端辺にて表出した2本の検知用配線13a,13bの端部間において短絡が生じていることによって検知用配線13a,13b間が導通状態となっているため、ICチップ11においては、検知用配線13aと検知用配線13bとがベース基材10の端辺にて表出した端部にて接続された抵抗値が検出されることになる。
【0040】
ICチップ11においては、検出された抵抗値が、検知用配線13aと検知用配線13bとがベース基材10の端辺にて表出した端部にて接続された抵抗値である場合は、検知用配線13a,13間が導通状態にあると判断され、その判断結果が検知用配線13a,13間の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ12を介してリーダライタ5に非接触送信される。なお、検知用配線13a,13間が非導通状態となっている場合にICチップ11にて検出される抵抗値が、上述したようにほぼ無限大となることから、ICチップ11において、検知用配線13a,13間が導通状態にあると判断するための抵抗値として、検知用配線13aと検知用配線13bとがベース基材10の端辺にて表出した端部にて接続された抵抗値ではなく、一定の閾値以下のものを用いてもよい。
【0041】
このように、リーダライタ5においては、水分検知ラベル1にて検出された検知用配線13a,13b間の導通状態を、アンテナ12を介して非接触送信させることになる。
【0042】
上記のようにして水分検知ラベル1からリーダライタ5に非接触送信された検出結果がリーダライタ5にて受信されると(ステップ6)、リーダライタ5にて受信された検出結果は管理用パソコン6に転送される(ステップ7)。
【0043】
リーダライタ5から転送されてきた検出結果が管理用パソコン6にて受信されると(ステップ8)、管理用パソコン6において、水分検知ラベル1からリーダライタ5に非接触送信され、管理用パソコン6に転送されてきた検出結果に基づいて、配管2から水漏れが発生しているかどうかが判断されることになる(ステップ9)。具体的には、リーダライタ5から管理用パソコン6に転送されてきた検出結果において、検知用配線13a,13b間が非導通状態である場合は配管2から水漏れが発生していないと判断され、検知用配線13a,13b間が導通状態である場合は配管2から水漏れが発生していると判断されることになる。
【0044】
ここで、ベタパターン14a,14bを設けたことによる効果について説明する。
【0045】
図6は、
図1に示した水分検知ラベル1のアンテナ12とベタパターン14a,14bとの相対位置を示す図である。
【0046】
図6に示すように、
図1に示した水分検知ラベル1は、ベタパターン14a,14bが水分検知ラベル1を平面視した場合にてアンテナ12を覆う形状を有している。
【0047】
そのため、ベース基材10のベタパターン14a,14bが形成された面が被検知体側となるように被検知体に取り付けられれば、被検知体とアンテナ12との間に、平面視にてアンテナ12を覆うベタパターン14a,14bが介在することとなり、金属に取り付けられた場合に金属による非接触通信への影響を緩和することができる。その際、金属からなる被検知体による非接触通信への影響を緩和するためのベタパターン14a,14bが、検知用配線13a,13bの一部として形成されていることにより、アンテナ12と被検知体との間に介在する金属層を別途設ける必要がなくなり、金属に取り付けられた場合に金属による非接触通信への影響を簡易な構造で緩和することができるとともに、製造工程を容易なものとすることができる。なお、アンテナ12とベタパターン14a,14bとの間隔は、0.5mm~10mmが好ましい。
【0048】
なお、本形態においては、検知用配線13a,13bのICチップ11に接続された端部とは反対側の端部がベース基材10の端辺にて封止材30及び粘着剤20から表出していることで、検知用配線13a,13bの一部が封止材30及び粘着剤20から表出しているが、2本の検知用配線13a,13bが被検知体と短絡しない程度の小さな孔を封止材30及び粘着剤20に開けること等により、検知用配線13a,13bの一部を封止材30及び粘着剤20から表出させる構成としてもよい。
【0049】
(他の実施の形態)
図7及び
図8は、本発明の非接触通信媒体の他の実施の形態を示す図であり、積層構造を示す。
【0050】
本発明の非接触通信媒体としては、
図7に示す水分検知ラベル101も考えられる。
【0051】
本形態における水分検知ラベル101は
図7に示すように、
図1に示した水分検知ラベル1に対して、ベース基材110のうち、アンテナ112が形成されるとともにICチップ111が搭載された面のみが封止材130によって覆われている点が異なるものである。なお、本形態においては、封止材130が本願発明における保護層となり、ICチップ111及びアンテナ112が封止材130によって覆われ、また、粘着剤120が本願発明の絶縁層となり、ベース基材110の検知用配線113a,113bが形成された面の全面に塗布され、検知用配線113a,113bと被検知体とが短絡することが回避される。
【0052】
上記のように構成された水分検知ラベル101においても、検知用配線113a,113bが平面視にてアンテナ112を覆う形状のベタパターン114a,114bを具備するため、ベース基材110のベタパターン114a,114bが形成された面が被検知体側となるように粘着剤120によって被検知体に貼着されれば、被検知体とアンテナ112との間に、平面視にてアンテナ112を覆うベタパターン114a,114bが介在することとなり、被検知体が金属からなるものである場合に金属による非接触通信への影響を緩和することができる。その際、金属からなる被検知体による非接触通信への影響を緩和するためのベタパターン114a,114bが、検知用配線113a,113bの一部として形成されているため、アンテナ112と被検知体との間に介在する金属層を別途設ける必要がなくなり、金属に貼着された場合に金属による非接触通信への影響を簡易な構造で緩和することができるとともに、製造工程を容易なものとすることができる。また、このような構成においても、検知用配線113a,113bが、ベース基材110の被検知体側となる面に形成されていることで、被検知体に水分が発生した場合に、発生した水分が検知用配線113a,113bの端部に付着しやすくなり、被検知体の状態を検知しやすくすることができる。
【0053】
また、ICチップ111及びアンテナ112が、封止材130によって覆われているため、ICチップ111及びアンテナ112に外力が直接加わることが回避され、ICチップ111及びアンテナ112を保護することができる。
【0054】
本発明の非接触通信媒体としては、
図8に示す水分検知ラベル201も考えられる。
【0055】
本形態における水分検知ラベル201は
図8に示すように、
図7に示した水分検知ラベル101に対して、封止材230が、ベース基材210のうち、アンテナ212が形成されるとともにICチップ211が搭載された面の全面を覆って積層されているのではなく、ICチップ211及びアンテナ212を覆うように積層されている点が異なるものである。なお、本形態においては、封止材230が本願発明における保護層となり、ICチップ211及びアンテナ212が封止材230によって覆われ、また、粘着剤220が本願発明の絶縁層となり、ベース基材210の検知用配線213a,213bが形成された面の全面に塗布され、検知用配線213a,213bと被検知体とが短絡することが回避される。
【0056】
上記のように構成された水分検知ラベル201においても、検知用配線213a,213bが平面視にてアンテナ212を覆う形状のベタパターン214a,214bを具備するため、ベース基材210のベタパターン214a,214bが形成された面が被検知体側となるように粘着剤220によって被検知体に貼着されれば、被検知体とアンテナ212との間に、平面視にてアンテナ212を覆うベタパターン214a,214bが介在することとなり、被検知体が金属からなるものである場合に金属による非接触通信への影響を緩和することができる。その際、金属からなる被検知体による非接触通信への影響を緩和するためのベタパターン214a,214bが、検知用配線213a,213bの一部として形成されているため、アンテナ212と被検知体との間に介在する金属層を別途設ける必要がなくなり、金属に貼着された場合に金属による非接触通信への影響を簡易な構造で緩和することができるとともに、製造工程を容易なものとすることができる。また、このような構成においても、検知用配線213a,213bが、ベース基材210の被検知体側となる面に形成されていることで、被検知体に水分が発生した場合に、発生した水分が検知用配線213a,213bの端部に付着しやすくなり、被検知体の状態を検知しやすくすることができる。
【0057】
なお、
図7及び
図8に示したものにおいては、2本の検知用配線113a,113b,213a,213bのそれぞれが、スルーホール115a,115b,215a,215bを介してICチップ111,211に接続された端部とは反対側の端部がベース基材110,210の端辺にて粘着剤120,220から表出していることで、被検知体に発生した水分がこの表出した端部に付着し、2本の検知用配線113a,113b,213a,213b間が導通状態となるが、2本の検知用配線113a,113b,213a,213bが被検知体と短絡しない程度の小さな孔を粘着剤120,220に開けたり、ベース基材110,210のうち検知用配線113a,113b,213a,213bが形成された面の一部に粘着剤120b,220bをライン状またはベース基材110,210の検知用配線113a,113b,213a,213bが終端する端辺側に塗布しないようにしたりすることで検知用配線113a,113b,213a,213bの一部を表出させ、被検知体に水分が発生した場合に、発生した水分をこの表出した部分に付着させることで2本の検知用配線113a,113b,213a,213b間を導通状態としてもよい。ベース基材110,210の検知用配線113a,113b,213a,213bが終端する端辺側に塗布しないようにすることで検知用配線113a,113b,213a,213bの一部を表出させる構成においては、被検知体に水分が発生した場合に、水分の発生を早期に検知することができる。
【0058】
また、粘着剤120,220は、検知用配線113a,113b,213a,213bと被検知体とが短絡することを回避するためには、ベース基材110,210の被検知体との貼着面のうち、少なくとも検知用配線113a,113b,213a,213bを覆っていればよい。
【0059】
また、上述した実施の形態においては、検知用配線13a,13b,113a,113b,213a,213bが、ベース基材10,110,210のうち被検知体に対向する面に形成されていることで、検知用配線13a,13b,113a,113b,213a,213bがベース基材10,110,210によって外力等から保護されることとなる。そのため、通信用アンテナ12a,12b,112a,112b,212a,212b、検知用配線13a,13b,113a,113b,213a,213b及びICチップ11,111,211を外力から保護する目的であれば、
図8に示したもののように、封止材220は、少なくともアンテナ212a,212b及びICチップ211を覆うように積層されていればよい。その場合、特に、被検知体への取り付け作業における被検知体との位置合わせを容易にするために検知用配線213a,213bの長さを長くした場合でも、封止材230による保護層の大きさが大きくなることを回避できる。
【0060】
また、上述した実施の形態においては、2本の検知用配線13a,13b,113a,113b,213a,213bが、ベース基材10,110,210に形成されたスルーホール15a,15b,115a,115b,215a,215bを介してICチップ11,111,211に接続されたものを例に挙げて説明したが、2本の検知用配線とICチップとを接続する手段はスルーホールに限らず、例えば、ベース基材10,110,210の端面に沿って設けられた配線等の適宜な手段を介してこれら2本の検知用配線とICチップとが接続されていればよい。
【符号の説明】
【0061】
1,101,201 水分検知ラベル
2 配管
3 床面
10,110,210 ベース基材
11,111,211 ICチップ
12,112,212 アンテナ
13a,13b,113a,213a 検知用配線
14a,14b,114a,214a ベタパターン
15a,15b,115a,215a スルーホール
20,120,220 粘着剤
30,130,230 封止材