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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】フェノール発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20240325BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C08J9/14 CEZ
C08L61/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021505391
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019070370
(87)【国際公開番号】W WO2020025544
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】1812404.0
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507193412
【氏名又は名称】キングスパン・ホールディングス・(アイアールエル)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】コポック,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】リプリー,リン
(72)【発明者】
【氏名】ゼッヘラール,リュート
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-164343(JP,A)
【文献】特開2018-095865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0072589(US,A1)
【文献】国際公開第2016/152154(WO,A1)
【文献】特開2011-219621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00- 44/60、 67/20
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤、及び、
(a)nを0乃至4とし、かつRをC乃至Cの脂肪族鎖、RをH又はアルキルとして、次式
【化1】
で表されるアルコキシアルコール、又は、
(b)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノペンチルエーテルからなる群から選択されるアルコキシアルコール、
からなるフェノール樹脂発泡性組成物を発泡させ、硬化させることによって形成されるフェノール発泡体であって、
独立気泡含有率が85%以上であり、密度が10kg/m以上、100kg/m以下であるフェノール発泡体。
【請求項2】
前記フェノール樹脂は、含水率が8wt%から16wt%の範囲である、請求項1に記載のフェノール発泡体。
【請求項3】
前記フェノール樹脂発泡性組成物の含水率は、前記フェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいて、7.5wt%から14wt%の範囲、例えば8wt%から11wt%の範囲である、請求項1又は2に記載のフェノール発泡体。
【請求項4】
前記nは0,1又は2であり、好ましくは、前記nは0又は1である、請求項1乃至3のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項5】
前記RはH、又は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシル、もしくはその異性体であるC乃至Cのアルキルであり、例えば前記R はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシル又はその異性体である、請求項1乃至4のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項6】
前記Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びその異性体からなる群から選択され、例えば前記Rは、メチル、エチル、プロピル又はブチルであり、好ましくは、前記Rはブチルである、請求項1乃至のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項7】
前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂100重量部当たり0.5~15重量部の量で、例えば前記フェノール樹脂100重量部当たり0.5~12.5重量部の量で存在し、例えば前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂100重量部当たり1~12重量部の量で、例えば前記フェノール樹脂100重量部当たり1~10重量部の量で存在する、請求項1乃至のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項8】
前記炭素数6以下の炭化水素は、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びその異性体からなる群から選択される1つ又は複数の化合物であり、例えば前記炭素数6以下の炭化水素は、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン及びシクロヘキサンからなる群から選択される1つ又は複数の化合物である、請求項1乃至のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項9】
前記発泡剤は更に炭素数6以下のハロゲン化炭化水素からなり、例えば前記ハロゲン化炭化水素は、塩化プロピル、ジクロロエタン又はその異性体である、請求項1乃至8のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項10】
前記発泡剤は更にハイドロフルオロオレフィンからなり、例えば前記ハイドロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群から選択される、請求項1乃至のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項11】
前記発泡剤は、前記フェノール樹脂100重量部当たり1~20重量部の量で、例えば前記フェノール樹脂100重量部当たり5~15重量部の量で存在する、請求項1乃至10のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項12】
前記フェノール樹脂は、アルデヒド基に対するフェノール基のモル比が1:1~1:3の範囲であり、任意により、アルデヒド基に対するフェノール基の前記モル比は1.5~2.3の範囲であることと、
前記フェノール樹脂は重量平均分子量が700~2000であることと、
前記フェノール樹脂は数平均分子量が330~800,例えば350~700であることと、
前記酸触媒はフェノール樹脂100重量部当たり5~25重量部の量で存在することと、
前記酸触媒はベンゼンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、及びフェノールスルホン酸の少なくとも1つからなり、任意により、前記酸触媒はパラ-トルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸からなることと、
前記フェノール樹脂発泡性組成物は更に可塑剤、無機充填剤、難燃剤、靱性化剤、及びその組合せの少なくとも1つからなることと、
前記界面活性剤はヒマシ油-エチレンオキサイド付加物であり、好適には、ヒマシ油1モル当たり10モル超60モル未満のエチレンオキサイドが加えられていることと、
前記界面活性剤はフェノール樹脂100重量部当たり1~6重量部の量で存在することと、
前記フェノール樹脂発泡性組成物は更に可塑剤からなり、前記可塑剤は、多塩基カルボン酸と多価アルコールとの反応生成物であるポリエステルポリオールであり、前記多塩基カルボン酸は二塩基カルボン酸、三塩基カルボン酸、四塩基カルボン酸、又はそれらの組合せであり、前記多価アルコールは二価アルコール、三価アルコール、四価アルコール、五価アルコール、又はそれらの組合せであり、任意により、前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多塩基カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、及びシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸の少なくとも1つからなり、好ましくは、前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多塩基カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、もしくはテレフタル酸の1つ又は2つ以上からなり、任意により、前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの少なくとも1つからなり、好ましくは、前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多価アルコールは、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、もしくは1,4-ブタンジオールの1つ又は2つ以上からなることと、
前記フェノール樹脂発泡性組成物は更に可塑剤からなり、前記可塑剤はフェノール樹脂100重量部当たり0.1~10重量部の量で存在し、好ましくは、前記可塑剤はフェノール樹脂100重量部当たり5重量部の量で存在することと、
前記フェノール樹脂発泡性組成物は更に無機充填剤からなり、前記無機充填剤は、25℃で測定されるイオン平衡溶解度積が1×10 -8 (Ksp)未満である金属水酸化物又は金属炭酸塩からなり、任意により、前記金属炭酸塩は炭酸カルシウムであり、任意により、前記炭酸カルシウムは平均粒度が100~300μm、好ましくは150~250μmであることと、
前記フェノール発泡体のpHはpH4又はそれ以上であることと、
前記フェノール樹脂発泡性組成物は更に難燃剤からなり、前記難燃剤は、有機リン化合物、及び無機リン化合物、例えばトリエチルホスフェート、ジフェニルホスファイト、ジエチルエチルホスホネート、ポリリン酸アンモニウム、及び赤リンからなる群から選択され、又は、三水和アルミニウム、ほう酸亜鉛、もしくはハロゲン化難燃剤であることと、
前記フェノール樹脂発泡性組成物は更に靱性化剤からなり、前記靱性化剤は尿素、ジシアンジアミド及びメラミンからなる群から選択され、任意により、前記靱性化剤は前記フェノール樹脂100重量部当たり1~10重量部の量で存在し、任意により、前記靱性化剤は尿素であって、前記フェノール樹脂100重量部当たり約5重量部の量で存在することと、
前記フェノール発泡体はその少なくとも一面にフェーシングを有し、任意により、前記フェーシングはガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔、接合不織布、金属シート、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、クラフト紙又は他の紙製品、及び木質ボードの少なくとも1つからなり、任意により、前記少なくとも1つのフェーシングは有孔であり、任意により、前記フェーシングはホルムアルデヒド捕捉剤及び/又は難燃剤で被覆され又は含浸されており、任意により、前記フェーシングは尿素、亜硫酸ナトリウム、カルボヒドラジド、重炭酸アミノグアニジン、アルギニン、オキザリルジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、又はそれらの組合せで含浸されていることと、
前記フェノール発泡体の密度は10~60kg/m であり、好適には、前記フェノール発泡体の密度は20~45kg/m であることと、
前記フェノール発泡体は、圧縮強度が80kPa~220kPaであり、例えば90kPa~180kPaであることと、
のいずれか1つ又は複数を含む、請求項1乃至11のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項13】
前記フェノール発泡体は、経時熱伝導率が、欧州規格BS EN13166:2012に規定される手順に従って、175+/-5日間の70+/-2℃での熱老化後に平均温度10℃で測定して0.025W/m・K以下、例えば0.022W/m・K以下、又は0.020W/m・K以下、又は0.018W/m・K以下、又は0.016W/m・K以下であり、例えば前記フェノール発泡体は、経時熱伝導率が0.025W/m・K~0.016W/m・Kの範囲、例えば0.025W/m・K~0.017W/m・Kの範囲にある、請求項1乃至12のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項14】
前記アルコキシアルコール及び界面活性剤を含む前記フェノール発泡体の粘度は、温度制御水槽を備えたブルックフィールド型粘度計(モデルDV-II+Pro)を用い、スピンドル番号S29を20rpmで回転させ、試験片の温度を25°Cに維持して測定して、25℃で2500~7000mPa・sの範囲、例えば25℃で4000~6000mPa・sの範囲にある、請求項1乃至13のいずれかに記載のフェノール発泡体。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載のフェノール発泡体を製造する方法であって、
フェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤、及び、
(a)nを0乃至4とし、かつRをC乃至Cの脂肪族鎖、RをH又はアルキルとして、次式
【化2】
で表されるアルコキシアルコール、又は、
(b)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノペンチルエーテルからなる群から選択されるアルコキシアルコール、からなるフェノール樹脂発泡性組成物を発泡させ、かつ硬化させる過程からなり、
前記フェノール発泡体は、独立気泡含有率が85%以上であり、密度が10kg/m以上、100kg/m以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール発泡体及びその製造方法に関するものである。本発明のフェノール発泡体は、優れた断熱性能を有し、環境影響の低い発泡剤を用いて形成される。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、フェノール樹脂は、火災状況での低毒性、低発煙性及び自己消火能力を要する発泡断熱材について用いるのに好適な熱硬化性樹脂である。適当なフェーシングを有する平らなボードと湾曲部分の形態をなすフェノール断熱発泡体は、建築物及び輸送の用途に使用される。中空壁、床、屋根、冷蔵庫、及びパイプ断熱のフォーム部分用の断熱発泡ボードが例である。フェノール発泡製品によって優れた断熱性と耐火性の両方が得られる。
【0003】
フェノール発泡体の製造に使用されるフェノールレゾール樹脂は、水性塩基性条件下で過剰なホルムアルデヒドで作られる、フェノールとホルムアルデヒドの縮合ポリマーである。一般に、発泡体の製造で使用されるフェノール樹脂は、約1~25wt%の水濃度を有する粘性液体であり、反応性置換基としてメチロール基を有する。架橋フェノール発泡体は、フェノール樹脂、発泡剤、界面活性剤及び酸触媒の混合物を加熱しかつ硬化させることによって形成することができる。樹脂、発泡剤及び界面活性剤からなる混合物に酸触媒を加えると、メチロール基とフェノール環の間に発熱反応が起こって、ポリマー鎖を架橋するメチレン結合を形成し、縮合重合の水分が生成される。レゾール樹脂組成物と、酸硬化触媒の量及び性質と、発泡剤及び発泡反応物に存在するならばその界面活性剤の科学的及び物理的性能は、前記発熱反応を制御する能力及び独立気泡発泡体を形成する能力に大きく影響する。
【0004】
低熱伝導率を有する発泡剤は、断熱発泡体を形成するのに使用される。発泡体のガス容積は、発泡体の容積の最大約95%まで占め得るので、発泡体内に閉じ込められる発泡剤の量及び性質は、発泡体の断熱性能に大きな影響を及ぼす。断熱発泡体を形成するためには、発泡体の熱性能の主な決定要因の1つが、低熱伝導率を有する発泡剤を留める発泡体の気泡の能力であるので、一般に85パーセントを超える総独立気泡率が必要である。
【0005】
欧州特許第0170357号明細書には、セル安定剤及び、鉱酸の存在下で、好ましくはクロロフルオロカーボン(CFC)類であるハロゲン化炭化水素発泡剤を用いてフェノール樹脂を発泡させかつ硬化させることによりフェノール発泡体を形成する方法が記載されている。前記フェノール樹脂は、好ましくは、約10~27wt%の量で存在する水分からなる。前記フェノール樹脂は、任意で脂肪族又は脂環式ヒドロキシル化合物及びそのエステル、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、又はジプロピレングリコールを含み得る。実施例4には、ガラス繊維のフェーシングを有する連続フェノールフォームラミネートの製造が記載され、フェノール発泡体の独立気泡率は97%、k値は0.015W/m・Kであった。発泡体を形成するのに使用した発泡剤は、フレオン(Freon:登録商標)発泡剤、特に1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンとトリクロロフルオロメタンであった。実施例4Cで形成したフェノール樹脂組成物は、含水量が9.9wt%である。この樹脂はまた、重量比で樹脂の13.6%となるように計算し得る、更により低い粘性への希釈剤としてのモノエチレングリコールを含む。これらの希釈は、25℃で1380センチストークス(密度1.22g/cmの樹脂について25℃で1684mPa・s)の低いフェノール樹脂粘度を達成するのを補助する。これは、工場における導管及びマニホールドを通したフェノール樹脂材料の容易な送り出しを促進するので、有利である。
【0006】
CFC発泡剤は、その低熱伝導率値の故に1980年代には好まれたが、環境に有害な効果を有し、それを発泡体の製造に使用することは、欧州では、モントリオール・プロトコールで義務付けられたことから漸次廃止されていった。水素化クロロフルオロカーボン(HCFC)類及び水素化フルオロカーボン(HFC)類でCFC類を置き換えたが、これらの薬剤もまた、環境問題のために漸次廃止されていった。炭化水素が本質的に高い熱伝導率値を有するにも拘わらず、環境効果の低い炭化水素発泡剤は、代替の発泡剤として発展した。
【0007】
リックル(Rickle)他は、Journal of Cellular Plastics Vol. 24 1988 第73頁において、フェノール樹脂の高含水率が連続気泡発泡体形成の原因になっていると忠告している。上述したように、独立気泡率が高いことは、発泡体の断熱性能を最大化するのに非常に望ましいが、それは、これによって、低熱伝導率の発泡剤を気泡内に留めることが促進されるからである。リックル(Rickle)他は、前記樹脂の低含水率が独立気泡発泡体の形成に望ましいことを教示する一方で、リックル(Rickle)他はまた、前記樹脂の含水率が低過ぎると、発熱が反応物の温度を早く上昇させ過ぎた場合、その結果連続気泡発泡体もまた生じ得ると警告している。更に、酸触媒によって触媒される発熱架橋反応がまた、縮合反応で水分を生じさせる。それ故に、フェノール樹脂発泡性組成物の含水量と硬化温度は、注意深く制御して連続気泡発泡体の形成を回避する必要がある。リックル(Rickle)他は、前記樹脂の粘度はおおよそ3000センチポアズ(発泡体を形成するとき)であるべきこと、及び、これより非常に高い粘度が得られるとき、前記樹脂を混合すること及び取り扱うことが困難になることを指摘している。リックル(Rickle)他の実験セクション(c)で形成された前記発泡性組成物の総含水量はおおよそ4wt%であり、それに対してフェノール樹脂自体の含水量はおおよそ5%であった。
【0008】
リックル(Rickle)他は、そこに記載される発泡体を発泡させるのにCFC発泡体を使用している。その図5は、フレオン(Freon:登録商標)11で発泡させたフェノール樹脂について、含水量4~5%のフェノール樹脂で最小の熱伝導率が達成されたことを示している。リックル(Rickle)他は、フェノールモノマー又はポリグリコール類を希釈剤として用いて、発熱硬化反応において発生する熱の消失及び処理を補助することを主張している。
【0009】
含水量及び希釈剤の含有量を最適化することによって前記発熱硬化反応を制御しているにも拘わらず、リックル(Rickle)他は、アルミニウム箔のフェーシングを被着させない限り、安定した熱伝導率は実現されないと忠告している。リックル(Rickle)他は、その図6において、フェーシングの無い2.54cm(1インチ)厚のフェノール発泡体のサンプルへの8年間に亘る時間の影響を示している。k因子(熱伝導率)は、「空気が気泡内に拡散する」ので、時間と共に上昇しており、リックル(Rickle)他は、アルミニウム箔をフェーシングとして発泡体に用いて、そのような空気の侵入を防止することを提案している。
【0010】
しかしながら、無孔のアルミニウム箔フェーサーを用いることのマイナス面は、処理及び硬化の際に水蒸気を抜くことができないことである。その結果、今や有孔アルミニウムフェーシングを用いて、水蒸気の通気を促進し、フェノール発泡体製品のフェーシングに発生する醜いブリスターを回避している。しかしながら、孔の存在はまた、空気が孔を通して発泡体内に侵入し得ることを意味しており、それは、発泡体が経年して空気が発泡体内の発泡剤に置き換わるに連れて、熱伝導率の増加をもたらし得る。
【0011】
米国特許第4444912号は、均一な気泡構造を有し、気泡壁に破裂及び孔がいずれも実質的に無い独立気泡フェノール発泡体を提供することに関する。同米国特許には、フェノール発泡体の形成時に水分が有し得る気泡構造への影響が記載されている。同米国特許(段落22)は、独立気泡発泡体の形成について、フェノールレゾール発泡性組成物が、該組成物の総重量に基づいて5~20重量パーセントの水分を含むべきことを助言している。また、同米国特許は、フェノール樹脂の重量平均分子量は約950から1500の間にあるべきこと、及び数平均分子量は約400から約600の間にあるべきことを助言している。同米国特許に記載される発泡体は、建築物の断熱用途に現在最も多く使用されているものよりも高い密度(>50kg/m)を有する。発泡体の密度が低下するほど、発泡体の発泡剤含有量は高くなり、その結果、発泡剤が発泡体の熱伝導率に及ぼし得る影響は大きくなる。しかしながら、発泡体の密度が低下するほど、気泡の欠陥が発生する虞は大きくなり、それは、発泡剤の気泡からの喪失による熱伝導率の望まない増加をもたらし得る。
【0012】
また、米国特許第4444912号は、CFC発泡剤を用いており、同米国特許に記載されている発泡体は、低い初期及び経時熱伝導率を有する。同米国特許はまた、発泡体の可塑剤としてジメチルイソフタレートを樹脂の0.5~5重量部で用いて、おそらくは発泡処理の粘性を促進することを示唆している。
【0013】
炭化水素は、CFC類及びHCFC類等のフッ化発泡剤の代替発泡剤として発展してきた。しかしながら、ペンタン(及びその異性体)等の炭化水素を、高含水量の発泡性レゾール樹脂組成物における、そのようなフッ化発泡剤の「ドロップイン」代替発泡剤として用いることは、実際相当大きな熱伝導率を有する発泡体につながる。非極性炭化水素発泡剤が発泡体の気泡から放散して、空気が発泡体の気泡内に侵入するので、熱伝導率に望ましくない増加につながる、と考えられる。
【0014】
国際公開番号WO2006/114777号には、どうしてフェノール樹脂の断熱性能の劣化の潜在的な原因が、フェノール樹脂の気泡壁の柔軟性の経年低下であるのかが記載され、かつどのように可塑剤を用いて気泡壁の柔軟性を増加させ、それによりフェノール発泡体の熱伝導率を長期間に亘って安定させ得るかが記載されている。同国際公開には、この目的を達成するのに使用し得るポリエステルポリオール可塑剤の種類が記載されている。前記ポリエステルポリオール可塑剤を用いて、該可塑剤をフェノール樹脂組成物に組み入れ、かつペンタンを発泡剤として用いることによってフェノール発泡体を製造する。前記発泡体は、優れた断熱性能と長期熱安定性を有することが分かった。
【0015】
国際公開番号WO2007/029222号には、実施例1,2及び3の、全含水量がフェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいておよそ8~9wt%であるフェノール樹脂発泡性組成物を、ポリエステルポリオール可塑剤及びひまし油-エチレンオキサイド付加界面活性剤の存在下で、炭化水素発泡剤と共に用いたフェノール発泡体の製造が記載されている。前記可塑剤は、前記発泡性組成物の粘性を僅かだけ低下させる。その存在は、発泡体の気泡壁をより柔軟にする。同国際公開に記載される発泡体は、低い初期及び経時熱伝導率値を有する。
【0016】
欧州特許第1095970号明細書は、低含水量(8wt%未満)のフェノール樹脂を用いて、炭化水素発泡剤で発泡させた安定した低熱伝導率の発泡体を作ることを提唱している。例示されるフェノールレゾール樹脂は、含水量が約6wt%であり、該樹脂の粘度は40℃で5100mPa・sである。このような樹脂の粘度は、25℃で測定した場合、おそらく25,000mPa・sを超えるであろう。フェノール樹脂の含水量を約8wt%未満まで低下させることは、フェノール樹脂の粘性を実質的に増加させる。このようなフェノール樹脂を工場の導管を通して輸送するためには、該樹脂を加熱しなければならず、それは製造コストの増加と樹脂の貯蔵寿命の減少とを招く。結果得られた発泡性組成物の粘度を更に低下させるためには、フェノール樹脂を加熱する必要性をなくするものではないが、前記発泡性混合物の酸成分にジエチレングリコールを組み入れる。同欧州特許に記載されるフェノール発泡体は、低い初期及び経時熱伝導率値を有すると報告されている。
【0017】
国際公開番号WO97/08230号も、低含水量(4wt%~8wt%の含水量)のフェノール樹脂を、ジエチレングリコール等の有機希釈剤と共に使用しており、同国際公開に記載される発泡体は、n-ペンタンで発泡させたとき、低い初期及び経時熱伝導率値を有すると報告されている。
【0018】
日本国特許出願公開公報第2011-219621号の英文要約は、当該特許出願が、高い独立気泡比及び良好な断熱性能を有する発泡体を生み出すことが可能な発泡性(expandable)樹脂組成物を提供することに関すると言明している。前記発泡性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、発泡剤、シリコン界面活性剤及びグリコール化合物からなる。同日本国公開公報は、主としてフラン樹脂を用いて発泡体を形成することに関する。同日本国公開公報の発泡体は高密度発泡体であり、例えばその表1は、密度が380kg/mである発泡体を開示している。加えて、例示される最大の独立気泡含有率は74.1%である。そのような発泡体は、断熱発泡体であるよりもむしろ、部分的に独立気泡の構造的発泡体として、より正確に特徴付けられる。その上、同日本国公開公報に開示されているようなフラン発泡体は、特により低い密度で脆弱である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
技術水準に拘わらず、混合しかつ処理することが容易で、炭化水素発泡剤を用いて独立気泡フェノール発泡体を形成するのに使用でき、かつ前記発泡体が優れた初期及び経時熱伝導率を有する代わりの低粘性フェノール樹脂系があれば望ましい。これらの要件は、本発明によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、或る側面において、フェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤、及び、nを0乃至4とし、かつRをC乃至Cの脂肪族鎖、RをH又はアルキルとして、次式
【化1】
で表されるアルコキシアルコール、からなるフェノール樹脂発泡性組成物を発泡させ、硬化させることによって形成されるフェノール発泡体であって、
独立気泡含有率が85%以上であり、密度が10kg/m以上、100kg/m以下であるフェノール発泡体が提供される。
【0021】
有利なことに、本発明のフェノール発泡体は、優れた初期及び長期熱伝導率を有する。
【0022】
好適には、前記フェノール樹脂の含水率は8wt%から16wt%の範囲である。好ましくは、前記フェノール樹脂の含水率は8wt%から14wt%の範囲、例えば10wt%から13wt%の範囲である。
【0023】
好ましくは、前記フェノール樹脂発泡性組成物は、該フェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいて7.5wt%から14wt%の範囲、例えば8wt%から11wt%の範囲の含水率を有する。
【0024】
好適には、界面活性剤と、本明細書中に記載される前記アルコキシアルコールを含む前記フェノール発泡体は、25℃で約2500~約7000mPa・sの範囲、例えば25℃で4000~6000mPa・sの範囲の粘度を有する。これによって、前記フェノール樹脂組成物は、発泡体の製造において連続発砲ラミネーターへと、室温で導管の中及び混合ヘッド内を通して容易に送ることができるので、前記フェノール発泡体の製造が簡単になる。
【0025】
前記nは0,1又は2であってよい。好ましくは、前記nは0又は1である。
【0026】
前記RはH、又は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシル、もしくはその異性体であるC乃至Cのアルキルであってよい。
【0027】
好ましくは、前記RはHである。
【0028】
前記Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はその異性体であってよい。好適には、前記Rは、メチル、エチル、プロピル又はブチルである。好ましくは、前記Rはブチルである。
【0029】
前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂100重量部当たり0.5~15重量部の量で存在してよい。好適には、前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂100重量部当たり1~12重量部の量で、例えば前記フェノール樹脂100重量部当たり1~10重量部の量で存在してよい。
【0030】
前記炭素数6以下の炭化水素は、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びその異性体からなる群から選択される1つ又は複数の化合物であってよい。好適には、前記炭素数6以下の炭化水素は、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、イソペンタン、及びシクロペンタンからなる群から選択される1つ又は複数の化合物であってよい。
【0031】
前記発泡剤は更に炭素数6以下のハロゲン化炭化水素から構成することができる。例えば、前記発泡剤は、塩化プロピル、ジクロロエタン、又はその異性体であってよい。好適には、前記ハロゲン化炭化水素は、塩化イソプロピルである。
【0032】
前記発泡剤は更にハイドロフルオロオレフィンから構成することができる。好適には、前記ハイドロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群から選択される。
【0033】
前記発泡剤は、前記フェノール樹脂100重量部当たり1~20重量部の量からなり得る。好適には、前記発泡剤は、前記フェノール樹脂100重量部当たり5~15重量部の量からなる。
【0034】
前記フェノール樹脂は、アルデヒド基に対するフェノール基のモル比が1:1~1:3の範囲であってよい。アルデヒド基に対するフェノール基の前記モル比は1.5~2.3の範囲であり得る。
【0035】
前記フェノール樹脂は、重量平均分子量が700~2000であってよい。
【0036】
前記フェノール樹脂は、数平均分子量が330~800,例えば350~700であってよい。
【0037】
前記酸触媒は、フェノール樹脂100重量部当たり5~25重量部の量で存在し得、好ましくは、前記酸触媒は、ベンゼンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、及びフェノールスルホン酸の少なくとも1つからなる。より好ましくは、前記酸触媒はパラ-トルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸からなる。
【0038】
前記フェノール樹脂発泡性組成物は、更に可塑剤、無機充填剤、難燃剤、靱性化剤及びその組合せの少なくとも1つからなり得る。
【0039】
前記界面活性剤は、シリコーン系の又は例えばヒマシ油-エチレンオキサイド付加物であってよく、好適には、前記界面活性剤は、好適には、ヒマシ油1モル当たり10モル超60モル未満のエチレンオキサイドが存在するヒマシ油-エチレンオキサイド付加物である。
【0040】
前記界面活性剤は、フェノール樹脂100重量部当たり1~6重量部の量で存在し得る。
【0041】
前記可塑剤は、多塩基カルボン酸と多価アルコールとの反応生成物であるポリエステルポリオールであってよく、前記多塩基カルボン酸は二塩基カルボン酸、三塩基カルボン酸、四塩基カルボン酸、又はそれらの組合せであり、前記多価アルコールは二価アルコール、三価アルコール、四価アルコール、五価アルコール、又はそれらの組合せである。
【0042】
前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多塩基カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、及びシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸の少なくとも1つからなり、好ましくは、前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多塩基カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、もしくはテレフタル酸の1つ又は2つ以上からなり得る。
【0043】
前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの少なくとも1つからなり、好ましくは、前記ポリエステルポリオールを合成するのに使用する多価アルコールは、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、もしくは1,4-ブタンジオールの1つ又は2つ以上からなり得る。
【0044】
前記可塑剤は、フェノール樹脂100重量部当たり0.1~10重量部の量で存在し得、好ましくは、前記可塑剤は、フェノール樹脂100重量部当たり5重量部の量で存在する。
【0045】
前記無機充填剤は、25℃で測定されるイオン平衡溶解度積が1×10-8(Ksp)未満である金属水酸化物又は金属炭酸塩からなり得る。好適には、前記金属炭酸塩は炭酸カルシウムである。より好適には、前記炭酸カルシウムは、平均粒度が100~300μm、好ましくは150~250μmである。
【0046】
前記フェノール発泡体のpHはpH4又はそれ以上であってよい。
【0047】
前記難燃剤は、有機リン化合物、及び無機リン化合物、例えばトリエチルホスフェート、ジフェニルホスファイト、ジエチルエチルホスホネート、ポリリン酸アンモニウム、及び赤リンからなる群から選択され、又は、三水和アルミニウム、ほう酸亜鉛、もしくはハロゲン化難燃剤であってよい。
【0048】
前記靱性化剤は、尿素、ジシアンジアミド及びメラミンからなる群から選択することができる。
【0049】
前記靱性化剤は、前記フェノール樹脂100重量部当たり1~10重量部の量で存在し得る。
【0050】
好ましくは、前記靱性化剤は尿素であり、前記フェノール樹脂100重量部当たり約5重量部の量で存在する。
【0051】
前記フェノール発泡体は、その少なくとも一面にフェーシングを有することができ、好ましくは、前記フェーシングは、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔、接合不織布、金属シート、金属箔、合板、珪酸カルシウムボード、石膏ボード、クラフト紙又は他の紙製品、及び木質ボードの少なくとも1つからなる。
【0052】
少なくとも1つのフェーシングは有孔であってよい。前記フェーシングは、ホルムアルデヒド捕捉剤及び/又は難燃剤で被覆され、又は含浸されてよい。
【0053】
前記フェーシングは、尿素、亜硫酸ナトリウム、カルボヒドラジド、重炭酸アミノグアニジン、アルギニン、オキザリルジヒドラジド、又はアジピン酸ジヒドラジドで含浸されてよい。
【0054】
前記フェノール発泡体の密度は10~60kg/mであってよく、好適には、前記フェノール発泡体は、20~45kg/mの密度を有する。
【0055】
前記フェノール発泡体は、圧縮強度が80kPa~220kPa、例えば90kPa~180kPaであってよい。
【0056】
好適には、前記フェノール発泡体は、経時熱伝導率が、欧州規格BS EN13166:2012に規定される手順に従って、175+/-5日間の70+/-2℃での熱老化後に平均温度10℃で測定して、0.025W/m・K以下、例えば0.022W/m・K以下、又は0.020W/m・K以下、又は0.018W/m・K以下、又は0.016W/m・K以下である。例えば、前記フェノール発泡体は、経時熱伝導率が0.025W/m・K~0.016W/m・Kの範囲、例えば0.025W/m・K~0.017W/m・Kの範囲であってよい。
【0057】
好適な実施形態において、本発明のフェノール発泡体は、フェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤、及び、nを0乃至4とし、かつRをC乃至Cの脂肪族鎖、RをH又はアルキルとして、次式
【化2】
で表されるアルコキシアルコール、からなるフェノール樹脂発泡性組成物を発泡させ、かつ硬化させることによって形成され、
前記界面活性剤は、フェノール樹脂100重量部当たり1~6重量部の量で存在し、
前記フェノール樹脂発泡性組成物の含水率は、前記フェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいて7.5wt%から14wt%の範囲であり、
前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂100重量部当たり0.5~12.5重量部の量で存在し、
前記発泡剤は、前記フェノール樹脂100重量部当たり5~15重量部の量で存在し、
前記酸触媒は、前記フェノール樹脂の5~25重量部の量で存在し、
前記炭素数6以下の炭化水素は、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン及びシクロヘキサンからなる群から選択される1つ又は複数の化合物であり、好ましくは、前記炭化水素はペンタン又はその異性体からなり、
前記フェノール樹脂は、アルデヒド基に対するフェノール基のモル比が1:1~1:3の範囲であり、
前記アルコキシアルコール及び、界面活性剤を含む前記フェノール発泡体は、25℃で約2500~約7000mPa・sの粘度、例えば25℃で約4000~約6000mPa・sの粘度を有し、
前記フェノール発泡体は、独立気泡含有率が90%以上であり、密度が10kg/m以上、60kg/m以下であり、
前記フェノール発泡体は、欧州規格BS EN13166:2012に従って14日間の110℃での熱老化後に0.025W/m・K以下の経時熱伝導率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
フェノール樹脂発泡体の製造は、酸触媒の存在下で、フェノール樹脂、界面活性剤、及び発泡剤からなるフェノール樹脂組成物を発泡させかつ硬化させることを要する。工場設定では、フェノール発泡体は、多くの場合、加熱された連続式フォームラミネート機を用いて製造される。界面活性剤を予め混合したフェノール樹脂と発泡剤とからなるフェノール樹脂組成物を混合へッドに送り出し、そこで酸触媒と混合して発泡性組成物を形成し、それを直ちに適当なキャリアフェーシング上に堆積させる。フェノール樹脂組成物に酸触媒を加えたときに発熱が生じて、発泡形成が開始する。発泡組成物は、加熱された連続式フォームラミネート機に搬送され、そこで加熱されて硬化させる。硬化させることによって、フェノール樹脂の架橋結合が生じる。前記発熱を制御することは、高い独立気泡含有率と安定した低熱伝導率を有するフェノール発泡体の形成を確実にするのに必要である。高い含水率は前記発熱のヒートシンクとして機能し得る一方、含水率が高いフェノール樹脂組成物を有することのマイナス面は、水蒸気の発生による気泡の破裂によって連続気泡含有率が大きくなり得ることである。
【0059】
前記フェノール樹脂の含水率は、前記発泡性組成物の粘性とそれを用いて作られる発泡体の熱伝導率とに大きな影響を有する。安定した長期熱伝導率値を有する発泡体は、含水率が低いフェノール樹脂、即ちその総重量に基づいて含水率が8wt%未満のフェノール樹脂を用いて形成し得る一方、そのようなフェノール樹脂は25℃で非常に粘性を有し、そのようなフェノール樹脂の工場のあちこちへの送り出しを容易にするためには、前記フェノール樹脂を加熱しなければならない。これは、製造コストを増大させ、かつ樹脂の貯蔵寿命を低下させる。含水率の高いフェノール樹脂を用いることによって、材料を工場のあちこちへ導管及びマニホールドを通して搬送することの容易性が高まる一方、フェノール樹脂の含水率が増すことは、高含水フェノール樹脂からなるフェノール樹脂発泡性組成物から形成される発泡体の熱伝導率に有害な影響を及ぼし得る。このような含水率の高いフェノール樹脂を用いて独立気泡発泡体を形成することには、より多くの困難が存在する。
【0060】
フェノール発泡体を形成するのに使用する材料は、その親水性及び混和性が様々である。例えば、炭化水素発泡剤が疎水性であるのに、酸触媒は親水性であったり、酸及び樹脂双方の含水率が様々であったりする。本願発明者らは、8wt%から16wt%の範囲の含水率を有するフェノール系レゾール樹脂の粘性を低下させるであろう希釈剤を同定する広範なスクリーニングプログラムを実行し、それによって、プロパン、ブタン、ペンタン又はヘキサン等の炭化水素発泡剤を用いているにも拘わらず、およそ7.5wt%から14wt%の含水率を有するフェノール樹脂発泡性組成物を用いて、優れた長期熱安定性及び低熱伝導率を有するフェノール樹脂発泡体の形成を可能にした。このような炭化水素発泡剤は、CFC類、HCFC類及びHFC類のような従来の発泡剤とは相当異なる親水性を有する。フレオン11及びフレオン113のようなCFC類が、上記欧州特許第0170357号明細書に記載されているような高含水フェノール樹脂組成物における有効な発泡剤であるとはいえ、このような発泡剤を疎水性の炭化水素発泡剤で置き換えたとき、これは、安定した断熱性能を有するフェノール発泡体を製造するのに、前記フェノール樹脂の含水率を低減させることを必要とし、樹脂の粘性を相当に増加させる。
【0061】
本願発明者らは、およそ8~16wt%の含水率を有しかつ界面活性剤を含むフェノール系レゾール樹脂の、炭化水素発泡剤及び酸触媒との混和性を増加させることができる有機希釈剤が、優れた熱伝導率と優れた長期断熱性能を有するフェノール樹脂発泡体の形成を促進し得る、と仮定した。前記有機希釈剤はまた、それを用いて形成される発泡性組成物の粘性を実質的に低下させるであろう。多くの有機化合物を、炭化水素発泡剤及び酸触媒との混和性について評価した。
【0062】
混和性の検討
様々な有機液剤(希釈剤)をシクロペンタンに加えて、それとの混和性を測定した。シクロペンタンと希釈剤との混合物に液体のアリルスルホン酸を加え、その結果物である混合物への影響を観察した。
【0063】
表1は、様々な液体有機希釈剤について混和性検討の詳細を示している。
【0064】
均一溶液の形成即ち分離層が無いこと(前記混合物が単一化学層であること)は、シクロペンタンと選択した有機希釈剤との適合性を示していると考えられる。次に前記シクロペンタン-有機希釈剤混合物に、トルエンスルホン酸/キシレンスルホン酸=重量比65/35の混合物(ブレンド)を加え、得られた混合物を5分間攪拌した。シクロペンタン、希釈剤及び酸の分離の程度・範囲を観察し、以下の表1,第4欄に表示した。
【0065】
試験した希釈剤の中で、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び2-エトキシエタノールだけが、シクロペンタン10gとアリルスルホン酸20gの混合物(ブレンド)を混合したとき、均一な単一層溶液を形成した。
【0066】
【表1】
【0067】
n-ペンタンを用いて同様の混和性検討を行い、結果を表2に示す。
【表2】
【0068】
分離が無いこと(単一層)は、有機希釈剤、n-ペンタンとアリルスルホン酸の混合物(ブレンド)との適合性を示していると考えられた。第9~11列のアルコキシアルコール類のみが、アリルスルホン酸の混合物(ブレンド)とn-ペンタンを特定の量混合したとき、単一層溶液を形成した。
【0069】
また、表1及び表2の第9列~第11列のアルコキシアルコール希釈剤の、フェノール樹脂との混和性を調べたが、驚くことに、含水量約12~13wt%のフェノール系レゾール樹脂と混合したとき、単一層溶液が形成された。
【0070】
アルコキシアルコール類は、水、フェノール樹脂、ペンタン等の炭化水素、及びアリルスルホン酸との良好な混和性を発揮する。従って、希釈剤としてアルコキシアルコール類を用いてフェノール発泡体を形成できること、及びそのような発泡体の性能を調査した。
【0071】
フェノール発泡体の物理的性能を測定するための適当な試験方法を以下に記載する。
(i)発泡体密度:
これは、欧州規格BS EN1602:2013-Thermal insulating products for building applications - Determination of the apparent density に従って測定した。
(ii)熱伝導率:
長さ300mm、幅300mmの発泡体試験片を、熱伝導率試験装置(LaserComp Type FOX314/ASF,Inventech Benelux BV社)内に20°Cの高温プレートと0°Cの低温プレートとの間に配置した。前記試験片の熱伝導率(TC)は、欧州規格EN 12667:“Thermal performance of building materials and products - Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods, Products of high and medium thermal resistance” に従って測定した。
(iii)加速老化後の熱伝導率:
これは、欧州規格BS EN13166:2012-“Thermal insulation products for buildings - Factory made products of phenolic foam (PF)” を用いて測定した。熱伝導率は、発泡体試験片を25週間70°Cに暴露し、かつ23°C、相対湿度50%で一定重量への安定化後に測定する。この熱老化は、環境温度で25年の期間に亘る推定熱伝導率を提供する役割を果たす。これに代えて、試験片は、14日間110°Cで熱老化させることができる。熱老化の詳細及び熱伝導率の測定は、Annex C section C.4.2 に明記されている。平均プレート温度は10°Cであった。
(iv)pH:
pHは、欧州規格BS EN13468に従って測定した。
(v)独立気泡率:
独立気泡率は、規格ASTM D6226の試験方法に従って測定した。
(vi)圧縮強度:
圧縮強度は、試験方法EN 826に従って測定した。
(vi)粘度:
粘度は、温度制御水槽を備えたブルックフィールド型粘度計(モデルDV-II+Pro)を用い、スピンドル番号S29を20rpmで回転させ、前記試験片の温度を25°Cに維持して、測定した。
【0072】
本発明のフェノール発泡体は、フェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤、及び、nを0乃至4とし、かつRをC乃至Cの脂肪族鎖、RをH又はアルキルとして、次式
【化3】
で表されるアルコキシアルコール、からなるフェノール樹脂発泡性組成物を発泡させ、硬化させることによって形成される。Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はその異性体であってよく、好ましくは、Rはブチル、例えばn-ブチルである。Rがアルキルであるとき、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル又はその異性体であってよく、好ましくは、Rは、H又はメチルである。前記フェノール樹脂とアルコキシアルコールとは、混合によって結合される。結果物の混合物に発泡剤を加え、続いて酸触媒を混合で加えると、発泡が開始する。次に、結果物の発泡体を、加熱及び加圧下で硬化させる。
【0073】
好適には、前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいて約0.5wt%~約10wt%の量で存在し、例えば、前記アルコキシアルコールは、前記フェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいて約0.5wt%~約8wt%の量で存在し得る。
【0074】
本発明のフェノール発泡体は、独立気泡含有率が85%以上である。好ましくは、前記フェノール発泡体は独立気泡含有率が90%以上であり、より好ましくは、前記フェノール発泡体は独立気泡含有率が95%以上、例えば98%以上である。
【0075】
前記フェノール発泡体は、密度が10kg/m~100kg/mである。好適には、前記フェノール発泡体は密度が10kg/m~60kg/mであり、好ましくは20kg/m~45kg/mである。
【0076】
前記アルコキシアルコールは、nを0乃至4とし、かつRをC乃至Cの脂肪族鎖、RをH又はメチルとして、次式
【化4】
で表される。
【0077】
例えば、前記アルコキシアルコールは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群から選択し得る。
【0078】
好ましくは、前記アルコキシアルコールは、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される。
【実施例
【0079】
本発明に使用するフェノール樹脂は、フェノール系レゾール樹脂A及びBであり、以下に説明する。
【0080】
実施例(1)-「樹脂A」の調製
重量ベースで、樹脂Aは、フェノール50.7重量部、水2.7重量部、50%水酸化カリウム0.94重量部を20℃で環流しながら混合することにより調整した。還流しながら温度を74~76℃に上昇させ、91%パラホルムアルデヒド35.5重量部を2時間掛けて加えた。次に温度を82~85℃に上昇させ、かつ温度をその範囲に、樹脂の粘度が6500mPa・sに到達するまで維持した。90%蟻酸0.3重量部を加えながら、冷却を開始した。50℃下で、次のもの即ち尿素4.5重量部とエトキシル化ひまし油(界面活性剤)3.2重量部を順次加えた。結果得られたフェノール樹脂組成物(樹脂A)は、水分12.6%、遊離フェノール4%未満、及び遊離ホルムアルデヒド1%未満を含んでいた。前記フェノール樹脂組成物の粘度は、25℃で7000~14000mPa・sであった。
【0081】
実施例(2)-「樹脂B」
樹脂Bはレゾール樹脂であり、より具体的には、樹脂Bは、液体フェノール-尿素-ホルムアルデヒド樹脂である。樹脂Bは、英国Hexion社から「IDP445」の商品名で市販されている。この樹脂は、25℃、pH7.5~8.0で7000~11000mPa・sの粘度を有する。
【0082】
樹脂Bは、遊離フェノール3wt%~4wt%、及び遊離ホルムアルデヒド0.5wt%未満を含んでいた。含水量は、10~11wt%(カール-フィッシャー分析により測定)であった。樹脂Bは、本明細書中に前述した界面活性剤2~4%を含んでいた。
【0083】
実施例及び比較例で使用した発泡剤混合物(ブレンド)を表3に記載する。
【表3】
【0084】
TX酸触媒は、トルエンスルホン酸/キシレンスルホン酸の混合物(重量で65%/35%)である。
【0085】
以下の実施例及び比較例は、本発明の発泡体サンプルがどのように作られるかを示している。
【0086】
実施例(3)-2-エトキシエタノールを前記アルコキシアルコールとして含むフェノール発泡体の調製
様々な量の2-エトキシエタノールを有するフェノール樹脂組成物を、表4に特定される配合に従って調製した。前記フェノール樹脂組成物を用いて発泡体を形成し、該発泡体の密度、初期熱伝導率及び経時熱伝導率を測定した。
【0087】
11~15℃の「樹脂A」113.3重量部に2-エトキシエタノールを、表4に特定される量混合により加えた。次に、この樹脂混合物に1~3℃の発泡剤D8.5重量部を混合した。前記樹脂混合物を2℃~8℃の範囲に冷却した。次に、8℃のTX酸21重量部を前記樹脂混合物に素早く混合した。1000~3000rpmの高速ミキシングを用いた。結果得られた調製樹脂組成物295+/-10gを、400mm×350mm×50mm寸法の閉じた額縁モールド(picture frame mould)内に70℃で10分間移して、50mm厚の硬いフェノール発泡体を形成した。ベースプレートは、硬化した発泡体から容易に取り外し得るポリテンシートを備えるか、ガラス繊維マットのような適当なフェーシングを当てた。同様に、ポリテンシート又はガラス繊維マットフェーシングの表面シートを、隆起するフェノール発泡体の上面に配置した。
【0088】
15kPaの圧力を前記モールドのリッドに印加して、隆起する発泡体を加圧した。次に、発泡体サンプルを前記モールドから取り外し、オーブン内で16時間70℃~75℃でポストキュアした。製造された発泡体ボードは、乾燥硬化密度が約41kg/mであった。
【0089】
経時熱伝導率(λ)の上昇傾向は、2-エトキシエタノールを含む発泡体について著しく低下した。
【0090】
表4に示すようにフェノール樹脂100重量部当たり約0.5~12.5重量部のアルコキシアルコールを加えたとき、優れた経時熱伝導率が達成される。また、2-エトキシエタノールの添加によって、2-エトキシエタノール無しの発泡体に関して初期熱伝導率が改善されている。
【0091】
【表4】
【0092】
実施例(4)-ブチルジグリコールを前記アルコキシアルコールとして含むフェノール発泡体の調製
ブチルジグリコールを含むフェノール樹脂発泡性組成物を、表5に特定される配合に従って調製した。前記フェノール樹脂発泡性組成物を用いて発泡体を形成し、該発泡体の初期熱伝導率及び経時熱伝導率を測定した。
【0093】
11~15℃の前記特定された樹脂110.5重量部にブチルジグリコール6重量部を混合により加えた。次に、100%イソペンタン8~10重量部を1~3℃で混合により加えた。この樹脂混合物を0℃~3℃の範囲に冷却した。次に、8℃のTX酸18~21.5重量部を前記樹脂混合物に素早く混合した。2000~3000rpmの高速ミキシングを用いた。結果得られた調製樹脂組成物約75gを、280mm×235mm×25mm寸法の閉じた額縁モールド内に70℃で10~15分間移して、25mm厚の硬いフェノール発泡体を形成した。前記モールドのベースプレートは、硬化した発泡体から容易に取り外し得るポリテンシートを備えていたが、さもなければガラス繊維マットのような適当なフェーシングを備える。
【0094】
15kPaの圧力を前記モールドのリッドに印加して、隆起する発泡体を加圧した。次に、発泡体サンプルを前記モールドから取り外し、オーブン内で16時間70℃~75℃でポストキュアした。製造された発泡体ボードは、乾燥硬化密度の値がおよそ45kg/mであった。
【0095】
経時熱伝導率(λ)の上昇傾向は、ブチルジグリコールを含む発泡体について著しく低下した。
【0096】
【表5】
【0097】
発泡体比較例
比較例1-エチレングリコール希釈剤
前記アルコキシアルコールを有機希釈剤としてモノエチルグリコールに置き換えて、実施例3に記載したと同様にして発泡体サンプルを調製した。以下の表6は、熱老化後の熱伝導率の値が全て25mW/m・Kを超えており、初期熱伝導率でさえ概ね高いことを示している。
【0098】
【表6】
【0099】
オレイン酸、オリーブ油、ココナツ油、及びTOFAレゾリンBD2等の低粘度の脂肪酸化合物は、それらを個々に混合したとき、シクロペンタン又はn-ペンタン等の炭化水素との完全な混和性(均一な単一層溶液が形成される)を表している。
【0100】
このような炭化水素と脂肪酸化合物との混和溶液を「酸TX」のようなアリルスルホン酸と混合したとき、2層への分離が経時(静置)的に観察されている。
【0101】
希釈剤としての脂肪酸添加物の効能を更に調査し、発泡体の形成において、このような添加物が、シクロペンタン又はn-ペンタン異性体で発泡させたフェノール発泡体について低経時熱伝導率を得ることの補助となるか否かを決定した。
【0102】
比較例2-オレイン酸希釈剤
発泡剤D又は発泡剤Eを用い、かつ前記アルコキシアルコールの代わりに95%オレイン酸2~3重量部を使用して、実施例3に記載したと同様にして発泡体サンプルを調製した。結果得られた発泡体は、初期熱伝導率の値が約25mW/m・Kであったが、前記発泡体を70℃で老化させた後、平均プレート温度10℃で25mW/m・Kを大きく超えていた。
【0103】
これら熱伝導率の結果は、オレイン酸を添加物として用いたとき、熱伝導率が老化時に上昇することを示している。
【0104】
比較例3-脂肪酸添加物
パーフルオロアルカン類の炭化水素発泡剤への添加が、より微細な気泡のフェノール発泡体をもたらすことは、一般に知られている。より微細な気泡を有する発泡体を形成することが、脂肪酸を添加物とした場合に経時熱伝導率性能を改善することになるか否かを考察した。
【0105】
以下の比較例3は、ペンタン発泡剤との共発泡剤(co-blowing agent)としてパーフルオロアルカンを用いた以外、比較例2を繰り返している。加えて、表2からの他の脂肪酸有機希釈剤の効能を調査した。
【0106】
11~15℃の樹脂「A」111重量部に、表2に記載される脂肪酸化合物2.25重量部を混合した。次に、この樹脂に1~3℃の前記特定される発泡剤10~11重量部を混合した。前記樹脂混合物を3℃~8℃の範囲に冷却した。次に、8℃の酸18~20重量部を前記樹脂混合物に素早く混合した。最大3000rpmの高速ミキシングを用いた。結果得られた樹脂エマルジョン110+/-10gを、300mm×300mm×25mm寸法の額縁モールド内に70℃で20分間移して、25mm厚の硬いフェノール発泡体を形成した。ベースプレートは、硬化した発泡体から容易に取り外し得るポリテンシートを備えていた。同様に、ポリテンシートからなる表面シートを、隆起する発泡体の上面に配置した。
【0107】
15kPaの圧力を前記モールドのリッドに印加して、隆起する発泡体を加圧した。次に、発泡体サンプルをオーブン内で12~16時間70℃でポストキュアした。製造された発泡体ボードは、表7に示す乾燥硬化密度の値を有していた。熱老化時、前記発泡体ボードのサンプルの表面にフェーシング材料(アルミニウム箔等)は存在しなかった。
【0108】
以下の表7は、存在する脂肪酸で変性した炭化水素/パーフルオロペンタン発泡のフェノール発泡体について熱伝導率(λ)の結果を要約している。
【0109】
経時熱伝導率(λ)の上昇傾向が明確に示される一方、脂肪酸を含む発泡体は、脂肪酸を含まない発泡体よりも僅かばかり良い。しかしながら、25mW/m・K未満の経時熱伝導率の有用な適用要件は達成されていない。
【0110】
【表7】
【0111】
従来技術のフェノール発泡体は、次のいずれかによってフェノール発泡体について安定した低熱伝導率を実現した。
(i)CFC類、HCFC類又はHFC類等の飽和フッ化発泡剤を、フェノール樹脂の重量に基づいて含水量が8~20wt%の範囲にあるフェノール樹脂に用いること;
(ii)ペンタン等の炭化水素発泡剤を、含水量が低い即ちフェノール樹脂の重量に基づいて8wt%未満である粘性のフェノール樹脂に用いること;又は
(iii)ペンタン等の炭化水素発泡剤を、ポリエステルポリオール類等の希釈剤と共に、フェノール樹脂の重量に基づいて10~16wt%の中程度から高含水量のフェノール樹脂に用いること。
【0112】
本発明は、次世代の手法であり、液体有機希釈剤添加物(即ち、室温で液体)、特に本明細書中に特定されるアルコキシアルコール添加物を使用し、それによって、中程度から高い含水量のフェノール樹脂組成物を用いているにも拘わらず、安定した低熱伝導率を有するフェノール発泡体の形成を容易にしている。有利なことに、これらアルコキシアルコール添加物をフェノール樹脂に組み入れることによって、結果得られるフェノール樹脂発泡性組成物の粘度が低下し、それによって、導管、マニホールド及び混合ヘッドを通した樹脂の容易な送り出しが促進されている。前記アルコキシアルコール添加物は、低い粘度値を有し、例えば従来技術のポリエステルポリオール添加物よりも著しく低く、前記アルコキシアルコール添加物を組み入れたフェノール樹脂の粘度は、ポリエステルポリオール類等の従来技術の添加物からなるそれよりも非常に低い。表8は、発泡体の処理を助ける粘度低減の達成結果を説明している。更に、アルコキシアルコール添加物からなるフェノール樹脂を用いて形成され、炭化水素発泡剤で発泡される発泡体は、低熱伝導率を有し、かつ安定した熱安定性を有する。有利なことに、本発明の発泡体は、従来技術の発泡体よりも脆性が低い。
【0113】
【表8】
【0114】
本発明の好適な実施形態において、アルコキシアルコール及び、界面活性剤を含むフェノール樹脂の粘度は、25℃で約2,500~7,000mPa・s、例えば25℃で約4,000~6,000mPa・sの範囲にある。
【0115】
本明細書中、用語「からなる/備える」(comprises/comprising)及び用語「有する/含む」(having/including)は、本願発明に関連して使用したとき、明記した特徴、整数(integers)、ステップ(過程)又は構成要素の存在を特定するのに使用されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はそれらの組(群)の存在又は追加を排除するものではない。
【0116】
本発明の所定の特徴で、明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載されているものでも、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが分かる。逆に言えば、本発明の様々な特徴で、簡単のために、1つの実施形態の文脈で記載されているものでも、別々に又は任意で適当に部分的に組み合せて提供することができる。