(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】サンプル測定用容器
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
G01N33/543 521
(21)【出願番号】P 2019206885
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】321011240
【氏名又は名称】株式会社タウンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 聡
(72)【発明者】
【氏名】中石 和成
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 和則
(72)【発明者】
【氏名】餅田 勉
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-309233(JP,A)
【文献】特開2015-102421(JP,A)
【文献】特開2004-049803(JP,A)
【文献】特開2015-078000(JP,A)
【文献】特開2021-079961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00-37/00
B65D 81/32ー81/36
B65D 67/00ー79/02
B65D 81/18ー81/38
B65D 85/88
A61J 1/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル
及び液剤を収容して前記サンプルの測定に用いられるサンプルキャビティと、
前記サンプルキャビティの上方から
、前記サンプル、前記液剤、及び前記サンプルと前記液剤との反応産物を洗浄する洗浄液を供給するための供給部と、
前記サンプルキャビティにおける洗浄により生成された前記サンプルキャビティからの廃液を収容する廃液タンクと、
前記サンプルキャビティの底部を当該底部よりも上方で前記廃液タンクと連通させる吸入流路と、
前記廃液タンクと連通し、前記サンプルキャビティに対する負圧を前記廃液タンクの内部に形成することで、前記サンプルキャビティの底部から前記吸入流路を通して前記廃液タンクに向けて
前記廃液を吸引するためのポンプが接続される吸引部と、を備え
、
前記廃液タンクは、前記吸引部に接続された負圧室と、前記負圧室と前記廃液を貯留する貯留室との間を隔て、前記負圧室と前記貯留室とを上方で連通させる仕切り壁とを備える
サンプル測定用容器。
【請求項2】
前記サンプルキャビティと前記廃液タンクとを備えた容器本体と、
前記容器本体の側壁に取り付けられた流路キャップと、を備え、
前記容器本体の側壁には、
前記サンプルキャビティの底部まで貫通する下側貫通孔と、
前記廃液タンクまで貫通する上側貫通孔と、
前記下側貫通孔と前記上側貫通孔とを結ぶ溝と、が形成され、
前記流路キャップが前記溝を閉蓋することによって前記吸入流路を構成する
請求項1に記載のサンプル測定用容器。
【請求項3】
前記サンプルキャビティと前記廃液タンクとを備えた容器本体を備え、
前記容器本体は、
ブランクキャビティと、
前記ブランクキャビティに
前記液剤を供給する液剤供給部と、
前記ブランクキャビティに供給された
前記液剤の一部を前記ブランクキャビティから前記サンプルキャビティに向けて流すためのスロープを有した液剤流路と、をさらに備える
請求項
1または2に記載のサンプル測定用容器。
【請求項4】
前記ブランクキャビティの底部における上下方向の位置は、前記サンプルキャビティの底部における上下方向の位置よりも高い
請求項
3に記載のサンプル測定用容器。
【請求項5】
前記廃液タンクの上部を覆う蓋部を備え、
前記廃液タンクの上部は、当該上部の全周にわたる封止凹部を有し、
前記蓋部の下部は、前記封止凹部の全体にわたり前記封止凹部に嵌合する封止凸部を有する
請求項1から
4のいずれか一項に記載のサンプル測定用容器。
【請求項6】
前記廃液タンクは、
前記廃液を保持する吸収体を収容する
請求項1から
5のいずれか一項に記載のサンプル測定用容器。
【請求項7】
前記サンプルキャビティに供給される
前記液剤は、表面に一次抗体が固相化された多数の磁性ビーズが分散された液である
請求項1から
6のいずれか一項に記載のサンプル測定用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの測定に用いられるサンプル測定用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、医療現場におけるサンプルの洗浄は、サンプルピペットを用いたピペッティング操作により行われることが多い。しかし、ピペッティングによるサンプルの洗浄は、サンプルを吸い上げることによるサンプルの損失や、洗浄すべき試薬を吸い上げ切れないことによる試薬の残留を生じやすい。そのため、試薬の洗浄効率を高めるために、ポンプモーターによって洗浄液を反応液に供給し、加振機構の超音波発振子により反応容器を加振させることで、サンプルの洗浄を行うタンパク質検出装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した試薬の洗浄では、洗浄によって汚染された洗浄液が、反応容器の中から排出されて、反応容器の中から排出された洗浄液の分だけ、反応容器の中に新たな洗浄液が供給されている。一方、汚染された洗浄液を反応容器から排出しながら、清浄な洗浄液を反応容器に供給することは、汚染されていない洗浄液まで排出してしまい、洗浄に使用される洗浄液の量を不要に増大させてしまう。そこで、上述したサンプル測定用容器では、洗浄に使用される洗浄液の量を低減するために、サンプルの洗浄効率を向上させることが強く望まれている。
【0005】
本発明の目的は、サンプルと液剤との反応産物の洗浄効率を向上可能にしたサンプル測定用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのサンプル測定用容器は、サンプル及び液剤を収容して前記サンプルの測定に用いられるサンプルキャビティと、前記サンプルキャビティの上方から、前記サンプル、前記液剤、及び前記サンプルと前記液剤との反応産物を洗浄する洗浄液を供給するための供給部と、前記サンプルキャビティにおける洗浄により生成された前記サンプルキャビティからの廃液を収容する廃液タンクと、前記サンプルキャビティの底部を当該底部よりも上方で前記廃液タンクと連通させる吸入流路と、を備える。そして、サンプル測定用容器は、前記廃液タンクと連通し、前記サンプルキャビティに対する負圧を前記廃液タンクの内部に形成することで、前記サンプルキャビティの底部から前記吸入流路を通して前記廃液タンクに向けて前記廃液を吸引するためのポンプが接続される吸引部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、サンプルキャビティの上方から洗浄液が供給されて、サンプルキャビティの底部から廃液が吸引される。これにより、洗浄液によるサンプルと液剤との反応産物の洗浄は、サンプルキャビティの上方から底部に向けて全体的に進みやすく、また、サンプルキャビティの底部に到達する洗浄液は、反応産物の洗浄に寄与したものとなりやすい。結果として、汚染されていない洗浄液までサンプルキャビティから排出されることが抑えられて、反応産物の洗浄効率を向上させることが可能となる。
【0008】
上記サンプル測定用容器は、前記サンプルキャビティと前記廃液タンクとを備えた容器本体と、前記容器本体の側壁に取り付けられた流路キャップと、を備えてもよい。そして、前記容器本体の側壁には、前記サンプルキャビティの底部まで貫通する下側貫通孔と、前記廃液タンクまで貫通する上側貫通孔と、前記下側貫通孔と前記上側貫通孔とを結ぶ溝と、が形成され、前記流路キャップが前記溝を閉蓋することによって前記吸入流路を構成してもよい。
【0009】
上記構成によれば、容器本体の側壁に形成された溝を流路キャップが閉蓋し、それによって、吸入流路が構成される。容器本体の側壁に形成された溝であれば、容器本体の内部に吸入流路を形成する場合と比べて、より複雑な流路形状に対応することが可能である。特に、サンプルキャビティと廃液タンクとが上下方向に並ぶことのない上述した構成では、吸入流路の形状が、一次元方向に延在した単純な直線状ではなく、様々な方向に曲折した複雑な線状となり得る。それゆえに、容器本体の側壁に形成された溝を吸入流路に用いる構成が、より有益なものとなる。
【0010】
上記サンプル測定用容器は、前記吸引部に接続された負圧室と、前記負圧室と廃液を貯留する貯留室との間を隔てる仕切り壁とを、前記廃液タンクに備え、前記負圧室と前記貯留室とは、前記仕切り壁の上方で連通してもよい。
【0011】
上記構成によれば、ポンプによる吸引力は、吸引部、および、負圧室を通じて、貯留室に作用する。廃液タンクに吸引された廃液は、貯留室から負圧室に向けた吸引力を受ける一方で、負圧室に向けた流動を仕切り壁によって妨げられる。これにより、廃液タンクの廃液が吸引部に流れ込むこと、ひいては、吸引部に接続されたポンプに廃液が流れ込むことが抑制可能となる。
【0012】
上記サンプル測定用容器において、前記サンプルキャビティと前記廃液タンクとを備えた容器本体を備え、前記容器本体は、ブランクキャビティと、前記ブランクキャビティに前記液剤を供給する液剤供給部と、前記ブランクキャビティに供給された前記液剤の一部を前記ブランクキャビティから前記サンプルキャビティに向けて流すためのスロープを有した液剤流路と、をさらに備えてもよい。
【0013】
上記構成によれば、ブランクキャビティに供給された液剤の一部が液剤流路を通じてサンプルキャビティに供給される。そのため、ブランクキャビティに向けた一度の液剤の供給によって、ブランクキャビティとサンプルキャビティとに液剤を供給することが可能である。したがって、ネガティブコントロールの測定を行う場合において、ネガティブコントロールであるブランクキャビティに液剤を供給する手間が省けることで、サンプルの測定がより簡便となる。
【0014】
上記サンプル測定用容器において、前記ブランクキャビティの底部における上下方向の位置は、前記サンプルキャビティの底部における上下方向の位置よりも高くてもよい。この構成によれば、ブランクキャビティの底部がサンプルキャビティの底部よりも高いため、ブランクキャビティからサンプルキャビティに向けて液剤を流す構造、および、ブランクキャビティが収容する液剤の量を抑える構造を採用することが容易となる。
【0015】
上記サンプル測定用容器において、前記廃液タンクの上部を覆う蓋部を備え、前記廃液タンクの上部は、当該上部の全周にわたる封止凹部を有し、前記蓋部の下部は、前記封止凹部の全体にわたり前記封止凹部に嵌合する封止凸部を有してもよい。この構成によれば、廃液タンクの上部が備える封止凹部と、蓋部の下部が備える封止凸部との嵌合によって、廃液タンクの気密性を高めることができる。そのため、廃液タンクに負圧を形成すること、および、廃液タンクに廃液を吸入することが容易となる。
【0016】
上記サンプル測定用容器において、前記廃液タンクは、前記廃液を保持する吸収体を収容してもよい。この構成によれば、廃液タンクに吸入された廃液は、吸収体に吸収された状態で、廃液タンクに留まる。したがって、廃液タンクからサンプルキャビティへの廃液の逆流を抑えることが可能となる。
【0017】
上記サンプル測定用容器において、前記サンプルキャビティに供給される前記液剤は、表面に一次抗体などが固相化された多数の磁性ビーズが分散された液であってもよい。この構成によれば、磁性ビーズを用いた分析において、サンプルの洗浄効率が向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】混合容器の一実施形態における混合容器の構成を示す分解斜視図。
【
図2】混合容器の一実施形態における混合容器の内部構造を示す断面斜視図。
【
図3】混合容器の一実施形態における第1容器と第2容器との関係を示す断面図。
【
図4】混合容器の一実施形態における混合容器の内部構造を示す断面斜視図。
【
図7】混合容器が備える測定用容器の流路構成を示す断面図。
【
図8】混合容器が備える流路を機能的に示す流路系統図。
【
図9】混合容器が行う混合処理での流体の流れを示す作用図。
【
図10】混合容器が行う混合処理での流体の流れを示す作用図。
【
図11】混合容器が行う混合処理での流体の流れを示す作用図。
【
図12】第1容器から測定用容器へ添加された流体の流れを示す作用図。
【
図13】一次抗体含有液が供給されたサンプルキャビティを示す断面図。
【
図15】磁気吸引状態のサンプルキャビティにおける磁性ビーズを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、混合容器の一実施形態を
図1~15を参照して説明する。まず、混合容器の構成を第1容器、第2容器、測定用容器、および、混合容器が備える流路系統の順に説明し、次に混合容器の作用を説明する。
【0020】
[第1容器]
図1は、混合容器の構成を示す構成図である。
図1に示されるように、混合容器は、第1容器10、第2容器30、サンプル測定用容器40、および、流路キャップ60を備えている。第1容器10、および、第2容器30は、液剤を供給する液剤供給部の一例である。以下、サンプル測定用容器40は、測定用容器40とも言う。
【0021】
第1容器10は、第1筒体11、および、第1容器10と一体である第1蓋部20を備える。第1筒体11は、第1頂部開口11a、第1底部開口11b、および、突出部16を備える。第1筒体11は、第1頂部開口11aから第1底部開口11bまでを連通するほぼ円筒形を有する。
【0022】
第1底部開口11bは、第1膜12によって封止されている。第1膜12は、例えば、アルミシールや樹脂シールであって、第1底部開口11bに対する第1膜12の熱溶着によって、第1底部開口11bに接合されている。第1膜12によって第1底部開口11bが封止されることによって、第1容器10は、第1剤33を貯留することが可能となる。第1剤33は、流体であって、例えば、液体、あるいは、粒体の薬剤である。
【0023】
突出部16は、第1筒体11の周方向における一部において、筒内から筒外に向けて突出し、かつ、上下方向において連続するよう延在することで、第1筒体11の筒内面に、上下方向の連続した窪みを形成する。突出部16は、例えば、第1筒体11の周方向において120°ずつ等配されている。
【0024】
図2が示すように、第1容器10の筒内には、破断部材14が位置する。破断部材14は、複数の脆弱部15によって、第1筒体11の筒内面と接続されている。破断部材14の上下方向における位置、および、脆弱部15の上下方向における位置は、突出部16の上下方向における位置と重なる。
【0025】
破断部材14は、第1容器10の中心軸から径方向の外側に向けて放射状に広がる3つの破断刃14Tを備える。各破断刃14Tは、上下方向、および、第1容器10の径方向に広がる板状を有する。各破断刃14Tは、第1容器10の中心軸において、他の破断刃14Tと一体である。3つの破断刃14Tは、第1容器10の周方向に120°ずつ等配されている。破断部材14は、第1容器10の周方向において相互に隣り合う破断刃14Tの間を通じて、破断部材14に対する上側の空間と、破断部材14に対する下側の空間とを連通する。
【0026】
各破断刃14Tは、上端破断部14aと、下端破断部14bとを含む。上端破断部14aは、第1容器10の中心軸から第1容器10の筒内面に向けて徐々に下がる傾斜を有した端面である。下端破断部14bは、第1容器10の中心軸から第1容器10の筒内面に向けて徐々に上がる傾斜を有した端面である。
【0027】
各破断刃14Tは、第1容器10の筒内面と対向する側端面を有する。各破断刃14Tの側面と第1容器10の筒内面との間には、隙間が形成されている。各破断刃14Tの側端面と第1容器10の筒内面との隙間には、1つの脆弱部15が位置する。各破断刃14Tの側端面と第1容器10の筒内面とは、1つの脆弱部15によって連結されている。
【0028】
各脆弱部15は、第1容器10の厚さよりも十分に薄い厚さを有した板状を有する。脆弱部15が有する上下方向での厚さ、および、周方向での厚さは、例えば、破断刃14Tが有する厚さよりも小さい。3つの脆弱部15は、破断刃14Tと同じく、第1筒体11の筒内面において周方向に等配されている。各脆弱部15は、当該脆弱部15に接続された破断刃14Tが周方向に向けた回転力を受けて切断されて、第1筒体11と破断刃14Tとの接続、すなわち、第1筒体11と破断部材14との接続を断つ。
【0029】
図1に戻り、第1蓋部20は、第1容器10の下端部における外周面と一体である四角板状を有する。第1筒体11は、第1蓋部20を貫通し、第1筒体11の下端部は、第1蓋部20の下方に突き出ている。第1蓋部20は、嵌合部22と、サンプル投入部21とを備える。嵌合部22は、第1蓋部20の周縁に点在する。測定用容器40が有する被嵌合部55と嵌合部22との係合は、第1容器10から測定用容器40が離脱することを止める。サンプル投入部21は、第1蓋部20を上下方向に貫通している。サンプル投入部21は、第1容器10が測定用容器40に組み付けられているとき、混合容器の外部から測定用容器40にサンプルの供給を可能とする。
【0030】
[第2容器]
第2容器30は、第2蓋部37を有し、第1容器10よりも小径の有蓋筒状を有した容器である。第2容器30は、第2筒体31と、シールリング34と、上部連結部36とを備える。
【0031】
第2筒体31は、第2底部開口31aを有し、第2底部開口31aは、第2膜32によって封止されている。第2膜32は、例えば、アルミシールや樹脂シールであって、第2底部開口31aに対する第2膜32の熱溶着によって、第2底部開口31aに接合されている。第2膜32によって第2底部開口31aが封止されることによって、第2容器30は、第2剤13を貯留することを可能とする。第2剤13は、流体であって、第1剤33と第2剤13との少なくとも一方は、液剤である。
【0032】
シールリング34は、第2筒体31の外周面における周方向の全体にわたる環状を有する。シールリング34は、第2容器30が第1容器10に挿入されたとき、第2容器30の外周面と第1容器10の内周面との間を封止する。これにより、第2容器30の外周面と第1容器10の内周面との間を通じて、第1頂部開口11aから第1容器10の内部に外気が入ること、および、第1容器10の内部に位置する液体や気体が第1頂部開口11aから出ることを抑制する。
【0033】
上部連結部36は、第2容器30を下方に向けて押圧する押圧機と連結可能に構成されている。上部連結部36は、例えば、第2筒体31の中心軸から放射状に広がる連結片を有するように、押圧機が出力する押圧力や回転力を受けることに適した形状を有する。第2容器30は、第1頂部開口11aから第1膜12に向けて挿入された状態において、押圧機による上方からの押圧力を受けることによって、第1容器10の内部を降下する。第2容器30は、押圧機による回転力を受けることによって、第1容器10の内部で回転して降下しやすくなる。
【0034】
図2が示すように、第2容器30の筒内面は、第2蓋部37から下方に向けて延在する複数の係合突条35を有する。
図3が示すように、係合突条35は、9本の係合突条35が第2筒体31の周方向に一定の間隔を空けるように、第2容器30の筒内面に位置する。係合突条35は一定の間隔をあけて位置していればよいため、本数は9本でなくともよい。
【0035】
第1頂部開口11aから第2容器30が挿入されて、第2容器30の内部に破断部材14が入り込む状態において、破断部材14が備える破断刃14Tは、相互に隣り合う係合突条35の間に位置する。相互に隣り合う係合突条35の間に破断刃14Tが位置するとき、第2容器30と破断部材14とは、第2容器30の周方向で係合する。そして、第2容器30の回転力は、係合突条35と破断刃14Tとの係合を通じて、破断部材14の回転力に変換される。破断部材14に作用する回転力は、破断部材14と第1筒体11の筒内面とを接続している脆弱部15を切断する。
【0036】
なお、各破断刃14Tは、第1膜12と第2膜32とを破断可能な硬さを有する。各破断刃14Tを構成する材料は、例えば、ポリプロピレン、塩化ビニルである。第2容器30を構成する材料は、第1頂部開口11aから挿入されることによって変形可能な柔らかい材料であり、例えば、低密度ポリエチレン、ポリウレタン、および、EVA樹脂である。
【0037】
[サンプル測定用容器]
図2が示すように、測定用容器40は、受け部41、ブランクキャビティ42、サンプルキャビティ43、洗浄液供給部45、および、廃液タンク50を備える。
【0038】
受け部41は、下方に向けて縮径された逆錘筒面状を有する。受け部41は、第1容器10から降下する破断部材14の下端破断部14bを受け止める。受け部41は、第1筒体11から出る第1剤33と、第2筒体31から出る第2剤13との混合物を、第1容器10から受け入れる。第1剤33と第2剤13との混合物は、液剤の一例である。
【0039】
ブランクキャビティ42は、受け部41の下方に位置する。ブランクキャビティ42は、上下方向に延在する有底矩形筒状を有する。ブランクキャビティ42は、透明筒状体であって、例えば、分光測定に用いられる測定光を透過可能にする高い透過率を備える。ブランクキャビティ42を構成する材料は、例えば、アクリル樹脂や、ポリスチレンである。ブランクキャビティ42の上部開口は、受け部41の底部と連通している。ブランクキャビティ42は、第1筒体11から出る第1剤33と、第2筒体31から出る第2剤13との混合物を、受け部41の底部から受け入れる。
【0040】
サンプルキャビティ43は、上下方向に延在する有底矩形筒状を有する。サンプルキャビティ43は、サンプル投入部21の下方に位置する。サンプルキャビティ43は、ブランクキャビティ42と同じく、分光測定に用いられる測定光を透過可能にする高い透過率を備える。サンプルキャビティ43を構成する材料は、ブランクキャビティ42と同じく、例えば、アクリル樹脂や、ポリスチレンである。サンプルキャビティ43は、サンプル投入部21から投入されたサンプルを貯留する。
【0041】
洗浄液供給部45は、測定用容器40の側面に位置する。洗浄液供給部45は、サンプルキャビティ43の上方に連通する流路を形成している。洗浄液供給部45は、洗浄液を供給する供給装置61に接続されて、供給装置61から供給される洗浄液をサンプルキャビティ43の上方からサンプルキャビティ43の内部に向けて流す。
【0042】
図4が示すように、測定用容器40は、ブランクキャビティ42とサンプルキャビティ43との間に液剤流路44を備える。液剤流路44は、ブランクキャビティ42とサンプルキャビティ43とを連通する溝である。液剤流路44は、溝底面としてスロープ44aを備える。スロープ44aは、ブランクキャビティ42からサンプルキャビティ43に向けて下方に傾斜する形状を有する。
【0043】
スロープ44aは、ブランクキャビティ42の上端部と、サンプルキャビティ43の上下方向における上部位置に接続されている。一方、スロープ44aの接続位置は、サンプルキャビティ43からブランクキャビティ42への液体の逆流を抑えられる位置であればよい。スロープ44aは、ブランクキャビティ42に溜められた混合物を、サンプルキャビティ43の上下方向における中間位置に導入する。液剤流路44は、スロープ44aの勾配である傾斜角θを有する。傾斜角θは、例えば、10°以上80°以下である。傾斜角θが10°以上であれば、ブランクキャビティ42からサンプルキャビティ43に向けた液体の流れが円滑となる。また、サンプルキャビティ43からブランクキャビティ42に向けた液体の逆流が抑えられる。
【0044】
図7が示すように、液剤流路44は、液剤流路幅Rを有する。液剤流路幅Rは、スロープ44aの延在方向と直交する方向での液剤流路44の幅である。液剤流路幅Rは、例えば、1mm以上10mm以下である。液剤流路幅Rが2mm以上であれば、ブランクキャビティ42からサンプルキャビティ43に向けた混合物の流れが円滑となる。液剤流路幅Rが10mm以下であれば、液剤流路44のなかに停滞する混合物の容量を抑えることが可能となる。
【0045】
図4に戻り、ブランクキャビティ42の底部42aにおける上下方向の位置は、サンプルキャビティ43の底部43aにおける上下方向の位置よりも高い。ブランクキャビティ42の底部42aと、サンプルキャビティ43の底部43aとの間の、上下方向における距離は、高低差HAである。第1剤33と第2剤13との混合物は、第1膜12から受け部41を介してブランクキャビティ42に供給される。ブランクキャビティ42のなかの上部を満たす混合物の一部は、液剤流路44のスロープ44aを通じてサンプルキャビティ43に流れ込む。仮に、高低差HAを有しない構成においては、ブランクキャビティ42における混合物の容量が、サンプルキャビティ43における混合物の容量よりも大きくなりやすい。この点、高低差HAを有する構成であれば、ブランクキャビティ42における混合物の容量を抑えることが可能となる。ひいては、測定用容器40に要する試薬などの混合物の容量を抑えることが可能となる。
【0046】
図5が示すように、廃液タンク50は、受け部41を囲うような略L字状を有した凹部であってもよい。廃液タンク50は、受け部41、および、サンプルキャビティ43と一体である。廃液タンク50は、吸収体57を収容する貯留室と、負圧室54とを備える。貯留室は、サンプルキャビティ43から出る流体を廃液として貯留する。吸収体57は、廃液を容易に吸収することができる材料であればよく、例えば、他孔質材料、綿布、ガーゼ、不識布、高分子ポリマーなどによって構成される。負圧室54は、サンプルキャビティ43に対する負圧を形成する。
【0047】
貯留室と負圧室54とは、仕切り壁53によって仕切られている。仕切り壁53の左右端、および、仕切り壁53の下端は、廃液タンク50の内側面に接続されている。仕切り壁53は、貯留室の周壁よりも若干低く位置し、かつ、貯留室に貯留される廃液が負圧室54に入り込むことを抑制するための十分な高さを有する。仕切り壁53は、貯留室の周壁よりも若干低く位置することによって、負圧室54と貯留室とを連通し、これによって、サンプルキャビティ43に対する負圧を貯留室にも形成する。また、仕切り壁53を貯留室の周壁と同じ高さにしてもよく、この場合は第1蓋部20に結合している封止凸部23を長くし、貯留室の周壁から遠ざけることで、負圧室54と貯留室を連通することが可能となる。
【0048】
廃液タンク50の上部における周縁には、封止凹部56が形成されている。封止凹部56は、上方に向けて開口した溝状を有して、貯留室、および、負圧室54を含めて、廃液タンク50の周縁における全体にわたり位置する。
【0049】
図4に戻り、第1容器10の第1蓋部20における底面は、封止凹部56と対向する位置に封止凸部23を有する。封止凸部23は、下方に向けた突片状を有し、かつ、下方に向けて先細る先端形状を有する。第1容器10が有する嵌合部22と、測定用容器40が有する被嵌合部55とが嵌合するとき、封止凸部23と封止凹部56とが嵌合して、第1蓋部20が廃液タンク50を閉塞する。封止凹部56と封止凸部23とが嵌合し、かつ、廃液タンク50とサンプルキャビティ43が連通した状態で、サンプルキャビティ43の中に液体が存在している際に、廃液タンク50における気密性を確保することが可能となる。
【0050】
図6が示すように、測定用容器40の側面は、洗浄液供給部45、廃液導出路46、吸入溝47、廃液導入路51、および、吸引部52を備える。
廃液導出路46には、測定用容器40の側面を貫通する円形孔が形成されている。廃液導出路46に形成された貫通孔は、下側貫通孔の一例である。廃液導出路46の開口は、サンプルキャビティ43の側面において、サンプルキャビティ43の底壁が有する厚み分だけ、測定用容器40の底面よりも高く位置する。廃液導出路46の開口は、吸入溝47の溝底面に位置する。廃液導出路46は、吸入溝47の下端部と、サンプルキャビティ43の底部とを連通する。廃液導出路46は、サンプルキャビティ43が収容する流体を、サンプルキャビティ43の底部から吸入溝47の下端部に向けて導出する。
【0051】
廃液導入路51には、測定用容器40の側面を貫通する貫通孔が形成されている。廃液導入路51に形成された貫通孔は、上側貫通孔の一例である。廃液導入路51の開口は、廃液タンク50の底部よりも上方に位置する。廃液導入路51の開口は、吸入溝47の溝底面に位置する。廃液導入路51は、吸入溝47の上端部と、廃液タンク50における貯留室とを連通する。廃液導入路51は、吸入溝47に位置する流体を、吸入溝47の上端部から廃液タンク50の貯留室に向けて導入する。
【0052】
吸入溝47は、測定用容器40の側面において、外方に向けて突き出た凸溝である。吸入溝47は、廃液導出路46から廃液導入路51まで上方に向けて延在している。吸入溝47の溝開口は、流路キャップ60によって閉蓋される。流路キャップ60によって閉蓋された吸入溝47は、サンプルキャビティ43の底部と、廃液タンク50の貯留室とを連通する吸入流路を構成し、廃液導出路46から廃液導入路51に向けて流体を流す。
【0053】
流路キャップ60は、測定用容器40の側面よりも高い弾性率を有した樹脂によって形成されることが望ましい。なお、流路キャップ60は、吸入溝47の溝開口に溶着されたアルミシールであってもよい。また、流路キャップ60と吸入溝47とが割愛された構成であって、廃液導出路46と廃液導入路51とに接続される配管を別途備えた構成とすることも可能である。
【0054】
吸引部52には、測定用容器40の側面を貫通する円形孔が形成されている。吸引部52の開口は、負圧室54の周壁に位置する。吸引部52は、負圧室54に負圧を形成するための吸引ポンプ62に接続される。吸引部52に接続される吸引ポンプ62は、廃液タンク50の気密性が確保されている状態で、サンプルキャビティ43に対する負圧を廃液タンク50の内部に形成し、それによって、サンプルキャビティ43の底部から廃液タンク50に向けて流体を吸引する。
【0055】
[流路系統]
図7を参照して、測定用容器40が備える流路系統を説明する。
図7が示すように、測定用容器40のほぼ中央に位置するブランクキャビティ42の内部は、液剤流路44を通じて、測定用容器40の端に位置するサンプルキャビティ43の内部に連通している。サンプルキャビティ43の底部は、廃液導出路46を通じて、測定用容器40の側面に位置する吸入溝47の下端部に連通している。吸入溝47は、廃液導入路51を通じて、廃液タンク50の貯留部に連通している。
【0056】
廃液導出路46、吸入溝47、および、廃液導入路51が有する流路幅は、液剤流路44のスロープ44aにおける流路幅よりも十分に小さい。これらの流路幅は、廃液タンク50に負圧が形成されている場合に、サンプルキャビティ43のなかの液体を廃液タンク50に吸引できる大きさである。これらの流路幅は、液体の適切な吸引速度を得られるように、廃液タンク50に形成される負圧、サンプルキャビティ43に供給される洗浄液の供給速度、および、洗浄液が有する洗浄能に応じて、適宜選択される。
【0057】
さらに、これらの流路幅は、サンプルキャビティ43から導出された液体がサンプルキャビティ43に戻らないような大きさである。すなわち、廃液タンク50に形成された負圧が解除されるとき、廃液導入路51、吸入溝47、および、廃液導出路46に位置する液体は、廃液タンク50に流れ込む空気による大気圧、および、液体そのものによる水頭圧を受ける。廃液導出路46、吸入溝47、および、廃液導入路51が有する流路幅は、こうした外力を受けて液体が逆流しないような、十分に小さい大きさである。
【0058】
図8を参照して、混合容器が備える流路を説明する。
図8が示すように、ブランクキャビティ42の内部と、第1容器10の内部とは、第1膜12によって隔絶されている。ブランクキャビティ42の内部と、第1容器10の内部とは、第1膜12の破断によって連通する。ブランクキャビティ42の内部と、サンプルキャビティ43の内部とは、液剤流路44を通じて、常に連通している。サンプルキャビティ43の上部は、洗浄液供給部45を通じて、洗浄液の供給装置61に接続されている。供給装置61は、サンプルキャビティ43の上部から底部に向けて、洗浄液を供給する。
【0059】
サンプルキャビティ43と廃液タンク50とは、廃液導出路46、吸入溝47が形成する流路、および、廃液導入路51を通じて、常に連通している。廃液タンク50は、吸引ポンプ62に接続されて、サンプルキャビティ43に対する負圧を内部に形成する。すなわち、廃液タンク50は、サンプルキャビティ43の底部から流体を吸引するための負圧を形成する。
【0060】
[混合容器の作用]
図9~15を参照して混合容器の作用について説明する。まず、第1容器10と第2容器30との作用として、第1剤33と第2剤13とを混合する混合処理について説明する。次に、測定用容器40の作用として、洗浄液を用いた洗浄処理について説明する。次いで、磁性ビーズを用いた目的物の検出方法について説明する。
【0061】
図9が示すように、第2容器30が備える上部連結部36が、押圧機などの外力を受けて下方に向けて押圧されると、第1容器10の筒内を第2容器30が降下し、破断部材14の上端破断部14aによって第2膜32が破断される。この際、第2容器30は、押圧機による回転力を受けながら降下してもよいし、上下方向のみの押圧力を受けながら降下してもよい。第2膜32が破断されると、第2容器30に収容されていた第2剤13が、第2容器30の内部から第1容器10の内部に出る。第1容器10の内部に出た第2剤13は、相互に隣り合う破断刃14Tの間隙を抜けて、第1容器10の底部に位置する第1剤33と混ざる。これにより、第1剤33と第2剤13との混合物が生成される。
【0062】
図10が示すように、第2膜32が破断された後に、さらに、上部連結部36が下方に向けて押圧されると、第1容器10において相互に隣り合う係合突条35の間隙に、破断部材14の破断刃14Tが入り込む。この状態から、押圧機などの外力を受けて第2容器が回転すると、破断部材14と第1容器10とを接続している脆弱部15が切断される。これにより、第1容器10の筒内に位置する破断部材14が、第1容器10の筒内面から離れて、上下方向に移動可能となる。
【0063】
図11が示すように、脆弱部15が切断された後に、さらに、第2容器30が下方に向けて押圧されると、第2容器30と共に破断部材14が降下しはじめる。あるいは、上下方向に移動可能となった破断部材14が第2容器30の内部から降下して第1膜12と当接し、降下する第2容器30が破断部材14をさらに押下しはじめる。
【0064】
この際、第1容器10の筒内面が周方向に等配された窪みを有するため、第2容器30と第1膜12との間に位置する空気が窪みを通して外部に抜ける。これにより、第2容器30が降下する際に生じる内圧の上昇を防ぐことができるため、第2容器30の降下が円滑に進む。そして、破断部材14が第1膜12を押下すると、下端破断部14bによって第1膜12が破断される。これにより、第1剤33と第2剤13との混合物が、第1容器10の第1底部開口11bから出る。
【0065】
図12が示すように、第1剤33と第2剤13との混合物は、ブランクキャビティ42に供給される。ブランクキャビティ42に供給された混合物は、液剤流路44の入口に液面が到達するまで、ブランクキャビティ42に溜められる。液剤流路44の入口に液面が到達すると、ブランクキャビティ42に供給される混合物の一部が、液剤流路44を通じて、サンプルキャビティ43に流れ込む。すなわち、第1剤33と第2剤13との混合物は、ブランクキャビティ42のほぼ全体と、サンプルキャビティ43の一部とに分配される。
【0066】
サンプルキャビティ43に流れ込んだ混合物は、サンプル投入部21から投入されるサンプルと混ぜられることで、サンプルに含まれる抗原などの目的物を検出することが可能となる。また、サンプルキャビティ43に流れ込んだ混合物は、サンプルキャビティ43の上方から供給される洗浄液と混ぜられるように構成されてもよい。そして、吸引ポンプ62が駆動されると、洗浄に用いられた洗浄液を含む液体が、サンプルキャビティ43の底部から廃液タンク50へ吸引される。
【0067】
図13~15を参照して、磁性ビーズを用いた目的物の検出方法を説明する。
図13が示すように、まず、サンプル投入部21や洗浄液供給部45からサンプルキャビティ43に磁性ビーズ70が供給される。磁性ビーズ70は、磁性粉を含有する合成樹脂材料によって形成されている。磁性ビーズ70の直径は、例えば、0.1μm~10μmである。
【0068】
図14が示すように、磁性ビーズの表面70aには、一次抗体71が固相化されている。固相化するものは一次抗体71に限られることなく、ペプチド、アプタマー、DNAやRNAなどの核酸でもよい。サンプルキャビティ43に磁性ビーズ70が供給されると、サンプルに含まれる目的の抗原と一次抗体71とが結合し、複合体を形成する。磁性ビーズ70を含む複合体が、サンプルキャビティ43の内側面へ第1磁石72aまたは第2磁石72bにより吸着されることで、サンプルキャビティ43内を洗浄することが容易となる。この際、サンプルキャビティ43の底部から液剤が吸引されるとしても、サンプルキャビティ43の内側面に第1磁石72aまたは第2磁石72bにより磁性ビーズ70が吸着されていることで、廃液タンク50に吸引されがたい。
【0069】
次に、酵素などの標識物で標識された標識抗体である二次抗体を含む二次抗体含有液がサンプルキャビティ43に供給される。サンプルキャビティ43内において、二次抗体は、一次抗体71に結合した抗原を認識し、認識した抗原に結合する。この際、標識物は酵素でなく、蛍光物質、ラテックス粒子、金属コロイドでもよい。また、標識される物質は抗体でなく、ペプチド、アプタマー、DNAやRNAなどの核酸であってもよい。
【0070】
酵素などの標識物で標識された標識抗体である二次抗体は、予め検出する抗原と結合させ、複合体のかたちでサンプルキャビティ43に供給されてもよい。
図15が示すように、磁性ビーズ70は、サンプルキャビティ43の外周面に設けられた磁石72a,72bによって、サンプルキャビティ43の側面43bに吸着される。磁石72a,72bは、例えば、圧縮コイルばねと接続されて、サンプルキャビティ43の側面43bとの距離を変えることができるように構成されてもよい。
【0071】
例えば、第1磁石72aがサンプルキャビティ43の側面43bに近づき、かつ、第2磁石72bが遠ざかると、磁性ビーズ70は、サンプルキャビティ43のなかで第1磁石72aの側に偏る。また、第2磁石72bがサンプルキャビティ43の側面43bに近づき、かつ、第1磁石72aが遠ざかると、磁性ビーズ70は、サンプルキャビティ43のなかで第2磁石72bの側に偏る。そして、第1磁石72aと第2磁石72bとが交互にサンプルキャビティ43の側面43bに近づくことによって、磁性ビーズ70は、左右方向に移動する。磁性ビーズ70がサンプルキャビティ43のなかで左右に移動することによって、サンプル内の抗原と一次抗体71や二次抗体が結合する効率を高められる。
【0072】
サンプルキャビティ43とブランクキャビティ42とに貯留される液体は、例えば、分光光度計を用いた分光測定によって、目的成分の濃度を測定される。この際、磁性ビーズ70は、磁石72a,72bによって、分光測定における照射光を遮らない位置に吸着される。
【0073】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)洗浄液によるサンプルの洗浄は、サンプルキャビティ43の上方から底部に向けて全体的に進みやすく、また、サンプルキャビティ43の底部に到達する洗浄液は、サンプルの洗浄に寄与したものとなりやすい。結果として、汚染されていない洗浄液までサンプルキャビティ43から排出されることが抑えられて、サンプルの洗浄効率を向上させることが可能となる。
【0074】
(2)吸入溝47を流路キャップ60が閉蓋し、それによって、吸入流路が構成される。測定用容器40の側壁に形成された吸入溝47であれば、測定用容器40の内部に吸入流路を形成する場合と比べて、より複雑な流路形状に対応することが可能である。
【0075】
特に、サンプルキャビティ43と廃液タンク50とが上下方向に並ぶことのない構成では、吸入流路の形状が、一次元方向に延在した単純な直線状ではなく、様々な方向に曲折した複雑な線状となり得る。それゆえに、測定用容器40の側壁に形成された溝を吸入流路に用いる構成が、より有益なものとなる。
【0076】
(3)廃液タンク50に吸引された廃液は、貯留室から負圧室54に向けた吸引力を受ける一方で、負圧室54に向けた流動を仕切り壁53によって妨げられる。これにより、廃液タンク50の廃液が吸引部52に流れ込むこと、ひいては、吸引部52に接続されたポンプに廃液が流れ込むことが抑制可能となる。
【0077】
(4)ブランクキャビティ42に供給された液剤の一部が液剤流路44を通じてサンプルキャビティ43に供給される。そのため、ブランクキャビティ42に向けた一度の液剤の供給によって、ブランクキャビティ42とサンプルキャビティ43の両方に液剤を供給することが可能である。したがって、ネガティブコントロールの測定を行う場合において、ネガティブコントロールであるブランクキャビティ42に液剤を供給する手間が省けることで、サンプルの測定がより簡便となる。
【0078】
(5)ブランクキャビティ42の底部がサンプルキャビティ43の底部よりも高いため、ブランクキャビティ42からサンプルキャビティ43に向けて液剤を流す構造、および、ブランクキャビティ42が収容する液剤の量を抑える構造を採用することが容易となる。
【0079】
(6)廃液タンク50の上部が備える封止凹部56と、第1蓋部20の下部が備える封止凸部23との嵌合によって、廃液タンク50の気密性を高めることができる。そのため、廃液タンク50に負圧を形成すること、および、廃液タンク50に廃液を吸入することが容易となる。
【0080】
(7)廃液タンク50に吸入された洗浄液は、吸収体57に吸収された状態で、廃液タンク50に留まる。したがって、廃液タンク50からサンプルキャビティ43への廃液の逆流を抑えることが可能となる。
【0081】
(8)第2容器30の降下を受けて、破断部材14が第2膜32と第1膜12とをこの順に破断する。それによって、第1剤33と第2剤13との混合物が生成されて、生成された混合物が第1容器10の底部から出される。これにより、第2容器30の降下によって、混合物を生成すること、および、生成された混合物を取り出すことが可能であるから、混合容器から混合物を容易に取り出すことが可能となる。
【0082】
(9)第1容器10の筒内に収容された破断部材14が、第1容器10の筒内面と脆弱部15によって接続されている。そのため、第1容器10の筒内で第2容器30が降下するとき、第2膜32との当接を受けて破断部材14が降下することが抑えられて、破断部材14の上端で第2膜32を破断することが容易となる。すなわち、第2膜32の破断を第1膜12の破断よりも先行させることで、第1剤33と第2剤13とを破断部材14の回転などによって第1容器10で混ぜることが可能ともなる。
【0083】
(10)脆弱部15による第1容器10と破断部材14との接続は、第2容器30と破断部材14との係合を通じて、第2容器30の回転などによって断たれる。そのため、第2膜32を破断された第2容器30を降下させること、ひいては、第2膜32を破断した後に第1膜12を破断させることの実効性を高めることが可能ともなる。
【0084】
(11)第1容器10の周方向に等配された脆弱部15は、第2容器30の回転によって切断されやすく、第2容器30の降下のみによっては切断されにくい。そのため、第2容器30の降下による第2膜32の破断と、第2容器30の降下による第1膜12の破断とを、各別のタイミングで生じさせやすく、ひいては、混合物の生成と、混合物の取り出しとを、各別のタイミングで生じさせやすくなる。
【0085】
(12)第1容器10の中心軸から放射線状に広がる破断刃14Tは、第1容器10の中心軸から放射線状に広がる切り込みを破断の対象に形成する。そのため、第1膜12と第2膜32とは、第1容器10の中心軸から放射線状に広がる切り込みを通じて、各容器の収容物の取り出しを容易とする。
【0086】
(13)係合突条35と係合した破断部材14は、第2容器30の回転を受けて、第1剤33と第2剤13とを混合する。すなわち、第2容器30から第2剤13を出すための破断部材14が、第1剤33と第2剤13とを混ぜるための機能を兼ね備える。そのため、第1剤33に第2剤13を加えて混ぜることを一連の処理として実行させること、および、第1剤33と第2剤13とを混ぜるための部材の点数を低減することが可能ともなる。
【0087】
(14)第1容器10が備える突出部16は、降下する第2容器30のシールリング34と、第1容器10の筒内面との間に、第2容器30と第1膜12との間の空気を抜くための隙間を形成する。これにより、第2容器30と第1膜12との間の空間が第2容器30の降下によって小さくなるとしても、その空間の内圧が昇圧されることを抑えることが可能となる。すなわち、第1膜12に向けて破断部材14を円滑に降下させることが可能となる。
【0088】
(15)封止凸部23と封止凹部56との嵌合は、廃液タンク50に形成される負圧を保ちやすくすると共に、廃液タンク50に貯留される廃液が外部に漏れることを抑える。
(16)受け部41、ブランクキャビティ42、および、サンプルキャビティ43を閉蓋する第1蓋部20は、混合物、サンプル、および、洗浄液が外気に曝されること、および、これらが外部に飛散することを抑制する。これにより、薬剤の劣化を抑制するとともに、薬剤の定量性を保つことが可能となる。
【0089】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・測定用容器40は、第1蓋部20に相当する蓋体を別途備え、第1筒体11や第2筒体31を割愛された状態で、サンプルの測定用に単独で用いることも可能である。こうした構成であっても、サンプルキャビティ43の上方からサンプルキャビティ43の底部に向けて洗浄液を流すべく、サンプルキャビティ43の底部から廃液を吸引する構成であれば、上記(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0090】
・廃液タンク50は、吸収体57を割愛された構成とすることも可能である。こうした構成であっても、廃液タンク50からサンプルキャビティ43への廃液の逆流を抑えることに十分な細さの吸入流路を備えた構成であれば、上記(7)に準じた効果を得ることは可能である。なお、吸収体57を備えた構成であれば、吸収体57を備えていない構成と比べて、吸入流路の流路幅が受ける制約を軽減することが可能でもある。
【0091】
・混合容器は、封止凸部23と封止凹部56とを割愛された構成とすることも可能である。例えば、混合容器は、測定用容器40が有する被嵌合部55と嵌合部22との係合は、第1容器10から測定用容器40が離脱することを止めるため、第1蓋部20と測定用容器40の上端部との間に別途シールリングを備える構成であってもよい。この構成であっても、上記(6),(15)に準じた効果を得ることは可能である。なお、封止凸部23と封止凹部56とを備えた構成であれば、シールリングを備えた構成と比べて、混合容器を構成する部材の点数を低減することが可能でもある。
【0092】
・ブランクキャビティ42の底部における上下方向の位置は、サンプルキャビティ43の底部における上下方向の位置と同じであってもよいし、サンプルキャビティ43の底部における上下方向の位置よりも低くてもよい。ブランクキャビティ42の底部における上下方向の位置は、ネガティブコントロールの測定に求められる容量に応じた位置に適宜変更可能である。
【0093】
・測定用容器40は、ブランクキャビティ42を割愛された構成とすることも可能である。なお、測定用容器40がブランクキャビティ42を備えた構成であれば、上記(4)に記載の通り、ネガティブコントロールの測定を行うことが可能ともなる。
【0094】
・ブランクキャビティ42からサンプルキャビティ43への液剤の供給は、スロープ44aを用いた液剤の流動に限らず、例えば、ブランクキャビティ42の上端から溢れる液剤をサンプルキャビティ43で受け止める構成に変更することも可能である。
【0095】
・廃液タンク50は、負圧室54を割愛された構成とすることも可能である。例えば、廃液タンク50に吸引された廃液が到達しがたい上方位置から、廃液タンク50の内部を吸引する構成であってもよい。なお、仕切り壁53によって貯留室と負圧室54とを区切る構成であれば、廃液の液面よりも下方に吸引部52を配置することが可能であって、吸引部52の位置に対する制約を軽減することも可能である。
【符号の説明】
【0096】
θ…傾斜角、HA…高低差、R…液剤流路幅、10…第1容器、11…第1筒体、11a…第1頂部開口、11b…第1底部開口、12…第1膜、13…第2剤、14…破断部材、14T…破断刃、14a…上端破断部、14b…下端破断部、15…脆弱部、16…突出部、20…第1蓋部、21…サンプル投入部、22…嵌合部、23…封止凸部、30…第2容器、31…第2筒体、31a…第2底部開口、32…第2膜、33…第1剤、34…シールリング、35…係合突条、36…上部連結部、37…第2蓋部、40…測定用容器、41…受け部、42…ブランクキャビティ、42a…ブランクキャビティの底部、43…サンプルキャビティ、43a…サンプルキャビティの底部、43b…サンプルキャビティの側面、44…液剤流路、44a…スロープ、45…洗浄液供給部、46…廃液導出路、47…吸入溝、50…廃液タンク、51…廃液導入路、52…吸引部、53…仕切り壁、54…負圧室、55…被嵌合部、56…封止凹部、57…吸収体、60…流路キャップ、61…供給装置、62…吸引ポンプ、70…磁性ビーズ、71…一次抗体、72a…第1磁石、72b…第2磁石。