IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧 ▶ 有限会社ケイズカンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-動力変換装置 図1
  • 特許-動力変換装置 図2
  • 特許-動力変換装置 図3
  • 特許-動力変換装置 図4
  • 特許-動力変換装置 図5
  • 特許-動力変換装置 図6
  • 特許-動力変換装置 図7
  • 特許-動力変換装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】動力変換装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/04 20060101AFI20240325BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20240325BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F16H37/04
F16H1/16 Z
F16H19/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020147409
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042147
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520337499
【氏名又は名称】有限会社ケイズカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 晃治
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英行
(72)【発明者】
【氏名】上坪 信介
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-044200(JP,A)
【文献】特開2005-132270(JP,A)
【文献】特開2006-266469(JP,A)
【文献】特開2001-154735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/04
F16H 1/16
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向をモータ軸線方向とするサーボモータと、
上記第1方向をギア軸線方向とするウォームと、
上記第1方向に延びるラックと、上記ウォームと上記ラックのそれぞれに噛み合うピニオンと、を有し、上記ウォームのギア軸線まわりの回転運動を、上記ピニオンを介して上記ラックの上記第1方向の直線運動に変換するラックアンドピニオン機構と、
上記サーボモータの回転をギアの噛み合いによって上記ウォームに伝えるギア機構と、
可動体に取付けられ且つ上記ラックと平行に上記第1方向に延びるガイドシャフトと、
上記ラックと上記ガイドシャフトの両方を上記第1方向にスライド可能に支持するベース部材と、
を備え、
上記ラックは、上記可動体に取り付けられており、上記第1方向にスライドすることにより上記ガイドシャフトとともに上記可動体の上記第1方向の動きをガイドし、
上記サーボモータと上記ウォームと上記ラックは、上記第1方向と直交する第2方向に並置されている、動力変換装置。
【請求項2】
上記サーボモータのモータ軸線と上記ウォームの上記ギア軸線を通り上記第2方向に延びる仮想直線上に上記ラックが配置されている、請求項1に記載の動力変換装置。
【請求項3】
上記ラックと上記ガイドシャフトとの間に上記サーボモータ及び上記ウォームが介装されている、請求項に記載の動力変換装置。
【請求項4】
上記サーボモータのモータ軸線と上記ウォームの上記ギア軸線を通り上記第2方向に延びる仮想直線上に上記ラック及び上記ガイドシャフトが配置されている、請求項1または3に記載の動力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力変換装置を構成するアクチュエータとして、圧縮空気のエネルギーを移動体の直線運動に変換するエアシリンダーが知られている。一般的に、エアシリンダーは、圧縮空気のエネルギーを利用してピストンロッドがシリンダ内をスライドするように構成されている。このようなエアシリンダーは、小型で高出力を得ることができる一方で、シリンダ内に導入された圧縮空気を行程毎に捨てているため、エネルギーの利用効率が低いことが知られている。
【0003】
そこで、エアシリンダーに代えて、下記特許文献1に記載のような電動アクチュエータを用いるのが好ましい。この電動アクチュエータは、移動体に機械的に連結されたねじ手段を電動モータで回転させることによって、移動体を直線方向に動かすように構成されている。電動モータを用いれば、熱損失を除いて全てが機械エネルギーに変換されるため、エアシリンダーを用いる場合に比べて高いエネルギー効率が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-351348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、汎用の電動モータを用いると、エアシリンダーを用いる場合に比べて電動アクチュエータ自体が大きくなり、その結果、動力変換装置が大型になるという問題が生じ得る。そこで、電動アクチュエータ自体を小さくするのに小型のサーボモータを用いることができる。このとき、サーボモータの周辺構造を技術的に工夫することによって、サーボモータを含む動力変換装置全体の大きさを、エアシリンダーを用いる場合と同等のレベルまで抑えるのが好ましい。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、サーボモータを使用した小型の動力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
第1方向をモータ軸線方向とするサーボモータと、
上記第1方向をギア軸線方向とするウォームと、
上記第1方向に延びるラックと、上記ウォームと上記ラックのそれぞれに噛み合うピニオンと、を有し、上記ウォームのギア軸線まわりの回転運動を、上記ピニオンを介して上記ラックの上記第1方向の直線運動に変換するラックアンドピニオン機構と、
上記サーボモータの回転をギアの噛み合いによって上記ウォームに伝えるギア機構と、
可動体に取付けられ且つ上記ラックと平行に上記第1方向に延びるガイドシャフトと、
上記ラックと上記ガイドシャフトの両方を上記第1方向にスライド可能に支持するベース部材と、
を備え、
上記ラックは、上記可動体に取り付けられており、上記第1方向にスライドすることにより上記ガイドシャフトとともに上記可動体の上記第1方向の動きをガイドし、
上記サーボモータと上記ウォームと上記ラックは、上記第1方向と直交する第2方向に並置されている、動力変換装置、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上記の動力変換装置において、サーボモータがモータ軸線まわりに回転するとその回転がギア機構を介してウォームに伝わり、ウォームがギア軸線まわりに回転する。そして、ラックアンドピニオン機構において、ウォームのギア軸線まわりの回転運動がピニオンを介してラックの第1方向の直線運動に変換される。これにより、サーボモータの回転に伴ってラックを第1方向にスライドさせることができる。
【0009】
ここで、サーボモータのような電動アクチュエータは、熱損失を除いて全てを機械エネルギーに変換できるため、エアシリンダーのようなアクチュエータを用いる場合に比べて高いエネルギー効率を得ることができる。また、サーボモータは、一般的な電動モータに比べて小型化が可能であり、アクチュエータ自体を小さくできる。それに加えて、サーボモータとウォームとラックを、互いに平行に延びるように設けるとともに、第1方向と直交する第2方向に並べて配置するようにしている。これにより、第1方向と第2方向の両方に直交する方向を第3方向としたとき、動力変換装置の第2方向の寸法と第3方向の寸法をともに小さく抑えることが可能になる。
【0010】
以上のごとく、上記の態様によれば、サーボモータを使用した小型の動力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の動力変換装置の斜視図。
図2図1の平面図。
図3図2のIII-III線矢視断面図。
図4】実施形態1の動力変換装置におけるサーボモータの制御に関するシステム構成図。
図5図2において可動体の動きを説明するための平面図。
図6】実施形態2の動力変換装置について図3に対応した断面図。
図7参考形態の動力変換装置について図1に対応した斜視図。
図8参考形態の動力変換装置について図3に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0013】
上記の動力変換装置において、上記サーボモータのモータ軸線と上記ウォームの上記ギア軸線を通り上記第2方向に延びる仮想直線上に上記ラックが配置されているのが好ましい。
【0014】
この動力変換装置によれば、サーボモータとウォームとラックの全てを第2方向の真横に並置させることができる。これにより、動力変換装置の第3方向の寸法を更に小さく抑えることが可能になる。
【0015】
上記の動力変換装置は、上記ラックに取付けられた可動体と、上記可動体の上記第1方向の動きをガイドするために上記可動体に取付けられ且つ上記第1方向に延びるガイドシャフトと、を備えるのが好ましい。
【0016】
この動力変換装置によれば、可動体の第1方向の動きをガイドシャフトによってガイドすることができるため、可動体の直進性を高めることができる。このとき、ラックは、ガイドシャフトと同様である可動体のガイド機能を兼務している。従って、ガイドシャフトの数を必要以上に増やす必要がなく、可動体をガイドするための構造を簡素化することができる。
【0017】
上記の動力変換装置において、上記ラックと上記ガイドシャフトとの間に上記サーボモータ及び上記ウォームが介装されているのが好ましい。
【0018】
この動力変換装置によれば、ラックとガイドシャフトを離すことによって可動体を安定して支持することができ、可動体のガイド機能を高めることができる。
【0019】
上記の動力変換装置において、上記サーボモータのモータ軸線と上記ウォームの上記ギア軸線を通り上記第2方向に延びる仮想直線上に上記ラック及び上記ガイドシャフトが配置されているのが好ましい。
【0020】
この動力変換装置によれば、サーボモータとウォームとラックとガイドシャフトの全てを第2方向の真横に並置させることができる。これにより、動力変換装置の第3方向の寸法を更に小さく抑えることが可能になる。
【0021】
以下、動力変換装置の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、ラックが直線運動する第1方向を矢印Xで示し、上記第1方向と直交する第2方向を矢印Yで示し、第1方向と第2方向の両方に直交する第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1及び図2に示されるように、実施形態1の動力変換装置101は、ベース部材1と、サーボモータ10と、ウォーム20と、ラックアンドピニオン機構30と、ギア機構40と、可動体50と、ガイドシャフト51と、を備えている。
【0024】
ベース部材1は、第3方向Zを板厚方向とした底板部2と、第1方向Xを板厚方向として底板部2から立設し且つ第1方向Xに離間して設けられた2つの側板部3と、底板部2から延出し底板部2と平行に設けられた上板部4と、を有する。このベース部材1には、可動体50を除いた構成要素の全部或いは一部を収容するためのケース5が取り付けられている。
【0025】
なお、本明細書でいう「平行」とは、比較対象が実質的に平行に設けられていればよく、厳密に平行である場合は勿論、公差や組付け誤差などによって微小の傾きやズレが生じている場合も、ここでいう「平行」の範疇に含まれるものとする。
【0026】
サーボモータ10は、第1方向Xに延びるモータシャフト11a(図2を参照)を有し、第1方向Xをモータ軸線A1に沿ったモータ軸線方向とする電動アクチュエータである。このサーボモータ10は、ベース部材1の2つの側板部3に架け渡された状態で固定されている。このサーボモータ10のモータハウジング10a内には、駆動部11とエンコーダ12が収容されている。
【0027】
駆動部11は、既知のものであるため、具体的な構造についての記載は省略するが、固定子、回転子、コイル等の複数の要素からなる。エンコーダ12は、駆動部11の回転子の回転角度を含む情報を検出する検出器として構成されている。
【0028】
なお、サーボモータ10は、電動のものであればその種類は特に限定されるものではない。このサーボモータ10は、直流モータであってよいし、或いは交流モータであってもよし、或いはパルスモータであってもよい。駆動部11の構成は、サーボモータ10の種類に応じて適宜に変更される。
【0029】
ウォーム20は、第1方向Xをギア軸線A2に沿ったギア軸線方向とする円柱状のネジ歯車として構成されている。このウォーム20の周面に螺旋状のネジ歯20aが設けられている。このウォーム20は、その第1方向Xの両端部がベース部材1の2つの側板部3に回転可能に支持されている。このウォーム20は、サーボモータ10に対して第2方向Yの真横に配置されている。
【0030】
ラックアンドピニオン機構30は、ラック31とピニオン32を有する。
【0031】
ラック31は、第1方向Xに延びる円柱状の部材であり、サーボモータ10及びウォーム20よりも小径となるように構成されている。このラック31のうちピニオン32との対向面には、第1方向Xに沿って複数のラック歯31aが設けられている。このラック31は、ベース部材1の2つの側板部3に設けられた貫通穴(図示省略)に挿通されることによって第1方向Xにスライド可能に支持されている。
【0032】
ピニオン32は、第3方向Zを回転軸線A3に沿った回転軸線方向とし、ウォーム20とラック31のそれぞれに噛み合うホイール歯車として構成されている。このピニオン32は、ウォーム20及びラック31のそれぞれに対して第2方向Yの真横に配置されている。このピニオン32には、ウォーム20に合うように円弧上に複数の係合歯32aが設けられている。このピニオン32は、ベース部材1の底板部2と上板部4によって回転軸線A3まわりに回転可能に支持されている。
【0033】
ピニオン32がウォーム20のギア軸線A2まわりの回転に伴って回転軸線A3まわりに回転すると、ラック31が第1方向Xにスライドするように構成されている。これにより、ラックアンドピニオン機構30は、ウォーム20のギア軸線A2まわりの回転運動を、ピニオン32を介してラック31の第1方向Xの直線運動に変換する機能を果たす。
【0034】
ウォーム20、ラック31及びピニオン32は、推力及び耐久性を高めるために、それぞれの歯(ネジ歯20a、ラック歯31a、係合歯32a)の大きさを大きくして面圧をかせぐように設計されるのが好ましい。
【0035】
なお、ピニオン32は、ウォーム20に対するウォームホイールを構成するものであり、ウォーム20とピニオン32を合わせた機構によって「ウォームギア」が構成される。これにより、ピニオン32は、ラックアンドピニオン機構30の一要素と、ウォームギアの一要素を兼務している。このような構成は、ウォーム20からラック31までの荷重伝達経路を構成する構成要素の数を少なくして、荷重伝達経路の構造を簡素化するのに有効である。
【0036】
ギア機構40は、モータシャフト11aの第1方向Xの一端部に同軸状に設けられたギア41と、ウォーム20の第1方向Xの一端部に同軸状に設けられたギア42と、を有する。2つのギア41,42は、第1方向Xに互いに平行に延びている。2つのギア41,42は、歯すじが第1方向Xの軸に平行な直線である平歯車であり、互いに噛み合うように設けられている。
【0037】
このとき、モータシャフト11aのモータ軸線A1まわりの回転に伴ってギア41が回転することによりギア42が回転するように構成されている。これにより、ギア機構40は、サーボモータ10の回転を2つのギア41,42の噛み合いによってウォーム20に伝える機能を果たす。
【0038】
可動体50は、サーボモータ10を駆動源として第1方向Xに動く部材である。この可動体50の形状は、動力変換装置101の使用用途に応じてプレート状或いはブロック状等に適宜に設定される。この可動体50は、ラック31の第1方向Xの一端部と、ガイドシャフト51の第1方向Xの一端部にそれぞれ取付けられている。
【0039】
ガイドシャフト51は、ラック31と平行となるように第1方向Xに延びている。このガイドシャフト51は、同径の円柱状部材からなる点でラック31と類似している一方で、ラック歯31aを備えていない点でラック31と相違している。
【0040】
このガイドシャフト51は、可動体50の第1方向Xの動きをガイドするために、可動体50の第1方向Xまわりの回転を防ぐ機能を有する。このガイドシャフト51は、ベース部材1の2つの側板部3に設けられた貫通穴(図示省略)に挿通されることによって第1方向Xにスライド可能に支持されている。
【0041】
ガイドシャフト51は、サーボモータ10及びウォーム20を挟んで、ラック31とは反対側の位置に設けられている。このため、ラック31とガイドシャフト51との間にサーボモータ10及びウォーム20が介装されている。
【0042】
図1及び図2に示されるように、動力変換装置101において、サーボモータ10とウォーム20とラック31とガイドシャフト51は、互いに平行に延びるように設けられているとともに、第1方向Xと直交する第2方向Yに並べて配置(並置)するようにしている。この場合、動力変換装置101を第2方向Yについて見たとき、サーボモータ10とウォーム20は、全部或いは一部が互いに重なるとともに、ラック31及びガイドシャフト51に対しても全部或いは一部が重なるように配置されている。
【0043】
図3に示されるように、動力変換装置101を第1方向Xについて見たとき、仮想直線Lと仮想直線Mが互いに平行となるように構成されている。ここで、仮想直線Lは、サーボモータ10のモータ軸線A1とウォーム20のギア軸線A2を通り第2方向Yに延びる仮想の直線である。仮想直線Mは、ラック31の軸心とガイドシャフト51の軸心を通り第2方向Yに延びる仮想の直線である。なお、本構成において、動力変換装置101の第3方向Zの寸法を小さくするためには、仮想直線Lと仮想直線Mの距離が極力小さくなるようにするのが好ましい。
【0044】
図3の場合、仮想直線Lと仮想直線Mとの間にズレはあるが、動力変換装置101を第2方向Yについて見たとき、サーボモータ10とウォーム20とラック31とガイドシャフト51は、全部或いは一部が互いに重なるため、「第2方向Yに並置されている。」という形態に含まれる。
【0045】
サーボモータ10の制御に関するシステム構成については特に限定されるものではないが、一例として、図4に示されるものを使用することができる。
【0046】
図4に示されるように、サーボモータ10は、駆動部11がサーボドライバ13に電気的に接続され、エンコーダ12が制御回路14に電気的に接続されている。電源Bの電力は、サーボドライバ13を介して駆動部11に供給される。エンコーダ12で検出された検出信号は、フィードバック信号として制御回路14に伝送される。制御回路14は、エンコーダ12からの検出信号に基づいて、サーボモータ10の回転速度や回転位置などを正確に判断できる。
【0047】
制御回路14は、エンコーダ12からの検出信号と、コントローラ等の上位ECU15からの指令信号と、に基づいて、サーボドライバ13にサーボモータ10の回転のための制御信号を出力する。これにより、サーボモータ10は、モータシャフト11aの回転方向、回転速度、回転開始時期、回転停止時期などについて制御される。
【0048】
図5に示されるように、サーボモータ10の制御によって、可動体50の第1方向Xのスライド位置が制御される。例えば、実線で示される第1位置P1と、二点鎖線で示される第2位置P2との間で可動体50がスライドすることによって、可動体50とベース部材1との間の距離Dを調節することができる。このとき、サーボモータ10を使用することによって、エアシリンダーのようなアクチュエータを用いる場合に比べて木目細かい制御が可能となり、制御の信頼性を向上させることができる。
【0049】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0050】
上記の動力変換装置101において、サーボモータ10がモータ軸線A1まわりに回転するとその回転がギア機構40を介してウォーム20に伝わり、ウォーム20がギア軸線A2まわりに回転する。そして、ラックアンドピニオン機構30において、ウォーム20のギア軸線A2まわりの回転運動がピニオン32を介してラック31の第1方向Xの直線運動に変換される。これにより、サーボモータ10の回転に伴ってラック31を第1方向Xにスライドさせることができる。
【0051】
ここで、サーボモータ10のような電動アクチュエータは、熱損失を除いて全てを機械エネルギーに変換できるため、エアシリンダーのようなアクチュエータを用いる場合に比べて高いエネルギー効率を得ることができる。とりわけ、エンコーダ12からのフィードバック信号に基づいて数値制御を行うサーボモータ10を使用すれば、エネルギー効率の更なる向上を図ることが可能になる。
【0052】
また、サーボモータ10は、一般的な電動モータに比べて小型化が可能であり、アクチュエータ自体を小さくできる。それに加えて、サーボモータ10とウォーム20とラック31を、互いに平行に延びるように設けるとともに、第1方向Xと直交する第2方向Yに並べて配置するようにしている。これにより、動力変換装置101の第2方向Yの寸法と第3方向Zの寸法をともに小さく抑えることが可能になる。例えば、第2方向Yを幅方向とし、第3方向Zを厚み方向としたとき、動力変換装置101を幅方向と厚み方向の両方について小型化できる。
【0053】
従って、実施形態1によれば、サーボモータ10を使用した小型の動力変換装置101を提供することができる。
【0054】
上記の動力変換装置101によれば、構造を簡素化することによって、重量低減を図ることができる。
【0055】
上記の動力変換装置101によれば、可動体50の第1方向Xの動きをガイドシャフト51によってガイドすることができるため、可動体50の直進性を高めることができる。このとき、ラック31は、ガイドシャフト51と同様である可動体50のガイド機能を兼務している。従って、ガイドシャフト51の数を必要以上に増やす必要がなく、ラック31とガイドシャフト51をそれぞれ1つずつ設けることによって、可動体50をガイドするための構造を簡素化することができる。
【0056】
上記の動力変換装置101によれば、ラック31とガイドシャフト51との間にサーボモータ10及びウォーム20が介装させてラック31とガイドシャフト51を離すことによって可動体50を安定して支持することができ、可動体50のガイド機能を高めることができる。
【0057】
上記の動力変換装置101に特に関連する変更例として、ラック31を挟んでピニオン32とは反対側にガイドシャフト51を配置した構造を採用することもできる。
【0058】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0059】
(実施形態2)
図6に示される、実施形態2の動力変換装置201は、サーボモータ10とウォーム20とラック31とガイドシャフト51の相対的な配置について、実施形態1の動力変換装置101のものと相違している。
【0060】
この動力変換装置201において、サーボモータ10のモータ軸線A1とウォーム20のギア軸線A2を通り第2方向Yに延びる仮想直線L上にラック31及びガイドシャフト51がともに配置されている。即ち、本実施形態は、図3において仮想直線Lと仮想直線Mとの間のズレを無くした形態に相当する。
【0061】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0062】
実施形態2の動力変換装置201によれば、サーボモータとウォームとラックとガイドシャフトの全てを第2方向Yの真横に並置させることで、動力変換装置201の第3方向Zの寸法を、実施形態1の場合に比べて更に小さく抑えることが可能になる。
【0063】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0064】
参考形態
図7及び図8に示される、参考形態の動力変換装置301は、可動体50及びガイドシャフト51を備えていない点と、サーボモータ10とウォーム20とラック31とガイドシャフト51の相対的な配置について、実施形態1の動力変換装置101のものと相違している。
【0065】
この動力変換装置301において、ラック31自体が可動体としての機能を果たす。また、図8に示されるように、サーボモータ10のモータ軸線A1とウォーム20のギア軸線A2を 通り第2方向Yに延びる仮想直線L上にラック31が配置されている。
【0066】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0067】
参考形態の動力変換装置301によれば、可動体50及びガイドシャフト51を省略することによって、実施形態1の場合に比べて部品点数を少なくして構造を簡素化することができる。また、サーボモータ10とウォーム20とラック31の全てを第2方向Yの真横に並置させることで、動力変換装置301の第3方向の寸法を、実施形態1の場合に比べて更に小さく抑えることが可能になる。
【0068】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0069】
上記の動力変換装置301に特に関連する変更例として、ラック31が第1方向Xまわりに殆ど回転しない場合に、可動体50及びガイドシャフト51のうちガイドシャフト51のみを省略した構造を採用することもできる。
【0070】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0071】
上述の実施形態1,2では、可動体50をガイドするためのガイドシャフト51を1つのみ設ける場合について例示したが、これに代えて、2つ以上のガイドシャフト51を設けるようにしてもよい。
【0072】
上述の実施形態1~3では、ギア機構40を構成するギアの数が2つである場合について例示したが、これに代えて、3つ以上のギアを設けるようにしてもよい。例えば、2つのギア41,42の間に1または複数の別のギアを設け、この別のギアが2つのギア41,42のそれぞれに噛み合うようにすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 サーボモータ
20 ウォーム
30 ラックアンドピニオン機構
31 ラック
32 ピニオン
40 ギア機構
41,42 ギア
50 可動体
51 ガイドシャフト
101,201,301 動力変換装置
A1 モータ軸線
A2 ギア軸線
L 仮想直線
X 第1方向
Y 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8