(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】検査用照明装置及び照明光学系及び検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
G01N21/84 E
(21)【出願番号】P 2023204295
(22)【出願日】2023-12-02
【審査請求日】2023-12-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】715007004
【氏名又は名称】マシンビジョンライティング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増村茂樹
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-109520(JP,A)
【文献】特許第6451821(JP,B1)
【文献】特開2022-080224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/958
A61B 3/00-A61B 3/18
A61B 5/00-A61B 5/398
A61B10/00-A61B10/06
G01B 9/00-G01B11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に検査光を照射し、検査対象から返される物体光を観察するための検査用照明装置であって、検査光を射出する面光源と、前記面光源と前記検査対象との間に設けられ、前記面光源から放射された光を前記検査対象に照射する検査光において、前記検査対象の各点に対する照射立体角を形成するためのレンズと、前記照射立体角内に同心円状に配置され、互いに隣接部を持たない複数の環状の立体角度領域を形成する第1の遮光マスク、若しくは該第1の遮光マスクのリレー像が、前記面光源と前記レンズとの間に配置され、前記検査対象の各点に対して、 前記レンズからの距離、及び検査対象の各点の位置に関わらず、 同時に同一の照射立体角を形成することができる検査用照明装置。
【請求項2】
請求項1において、
第1のフィルター手段、若しくは前記第1の遮光マスクと該第1のフィルター手段の機能を統合した第3のフィルター手段、若しくは該第1の遮光マスクと該第1のフィルター手段のリレー像、若しくは該第3のフィルター手段のリレー像が、前記面光源と前記レンズとの間に配置され、前記照射立体角中に特定の光属性を持つ立体角度領域を更に形成することができる検査用照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記面光源と前記レンズの間に、第2の遮光マスクと第4のフィルター手段との少なくとも何れかひとつ、若しくは第2の遮光マスクと第4のフィルター手段の機能を統合した第5のフィルター手段をさらに備え、前記検査対象に対する検査光の照射領域又は照射形状や照射パターン、又は光属性を任意に設定することができる検査用照明装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記検査対象から返される物体光を捕捉して画像を撮像する撮像装置を更に備える検査システムにおいて、前記撮像装置が、前記物体光を捕捉するために、前記検査対象の各点に形成する観察立体角に対して、前記照射立体角が、該観察立体角に対して、 同一の相対角度を有するように設定することができる検査用照明装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記レンズの検査対象側であって前記検査対象に対しては、前記照射光路と前記検査対象から返される反射光の反射光路とを同軸とし、前記レンズに対しては、前記照射光路と前記反射光路とを分けるビームスプリッターを備えた検査用照明装置。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記レンズの反検査対象側であって、前記検査対象に対しては、前記照射光路と前記検査対象から返される反射光の反射光路とを同軸とし、前記第1の遮光マスクに対しては、前記照射光路と前記反射光路とを分けるビームスプリッターを備えた検査用照明装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記ビームスプリッターへ入力する照射光路側に第1の偏光フィルターを設置し、前記ビームスプリッターから出射する反射光路側に第2の偏光フィルターを設置し、第1の偏光フィルターと第2の偏光フィルターの透過容易軸が直行するように設定した検査用照明装置。
【請求項8】
請求項7において、前記レンズの前記検査対象側に、さらに1/4波長板を備えた検査用照明装置。
【請求項9】
請求項1又は2のいずれかに記載の検査用照明装置
を有する照明光学系であって、前記検査対象において反射又は透過または散乱する光を撮像する撮像装置、若しくはその観察光学系に組み込まれた、前記検査対象に検査光を照射する照明光学系。
【請求項10】
請求項1又は2のいずれかに記載の検査用照明装置、
又は、前記検査用照明装置を有する照明光学系であって、前記検査対象において反射又は透過または散乱する光を撮像する撮像装置、若しくはその観察光学系に組み込まれた、前記検査対象に検査光を照射する照明光学系を使用し、前記検査対象において反射又は透過または散乱する光を撮像する撮像装置とからなる検査システムであって、前記検査用照明装置で前記検査対象に照射される検査光において、前記撮像装置の前記検査対象の各点における観察立体角の形状又は大きさや傾きに基づいて、前記検査対象の各点における照射立体角の形状又は大きさや傾きを設定、若しくは相対的に前記照射立体角と前記観察立体角の形状又は大きさや傾き
を略同一に設定することが可能なことを特徴とする検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象に検査光を照射し、その製品の外観や傷、欠陥等の検査を行うために用いられる検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の外観検査等に用いられる検査用照明装置の一例としては、特許文献1に示されるような撮像する方向と、検査対象を照明する方向とを一致させた同軸照明が挙げられる。この同軸照明は、前記検査対象の検査対象面と平行な方向に検査光を射出する光源と、前記検査対象と、当該検査対象の上方に設けられた撮像装置との間において傾けて設けられており、前記検査光を前記検査対象へと反射するとともに、前記検査対象からの反射光は撮像装置側へと透過するように配置されたハーフミラーと、を備えたものがある。
【0003】
同軸照明は、検査対象に対して、照射光の照射方向と検査対象から返される物体光の観察方向を略一致させることができ、検査対象の各点に対して照射条件と観察条件を略均一に設定することができ、検査対象の各点における光物性の変化を、該検査対象の各点から放射される物体光の変化として捕捉しやすくする効果があるが、それでもなお、検査対象における微小な欠陥による光物性の変化を検出捕捉するには、更に各点における照射条件と観察条件をより均一に設定する必要から特許文献1、2、3、4による工夫が施されている。
【0004】
ところで、上述したような検査用照明装置を用いても検出する事が難しい欠陥などの特徴点を、撮像された画像により検出できるようにすることが近年求められている。より具体的には、検査対象である製品の表面性状が完全なマット面で、物体光としてどの方向から観察しても同程度の明るさを示す散乱光を返すものだけではなく、光沢面や金属面などのように、検査光の照射方向や物体光の観察方向によって、大きく明るさの異なる正反射光や正透過光等の直接光を返すような検査対象面の特徴点において、所望の濃淡情報を得るために、検査光の照射光軸や照射立体角の形状等を精密に制御する事が難しく、検査光を照射できたとしても、特徴点が検査対象のどの位置にあるかによって物体光の観察方向が変化し、その結果として明暗差が大きく変化してしまい、特徴点を判別することが難しい事例がある。
【0005】
より具体的には、検査対象上の微小な欠陥等により、照射されている検査光の反射方向がわずかに変化したとしても、撮像装置の観察立体角内に収まる程度の変化の場合には、欠陥の有無に関わらず撮像される画像の明るさとしては変化が生じない。若しくは、検査光の照射立体角が大きく、その光軸の傾きが、検査対象の各点で違っていれば、反射方向のわずかな変化が撮像装置の観察立体角内の光量の変化として捉えられないばかりか、検査対象の各点で、撮像装置の観察立体角内の光量の変化がまちまちとなって、結局、マシンビジョンとしてはこのような微小な欠陥等を、検査対象範囲において正確に捉えられないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5866573号公報
【文献】特許第5866586号公報
【文献】特許第6451821号公報
【文献】特許第7206020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような課題を鑑みてなされたものであり、欠陥などの特徴点が非常に小さかったり微かであったりして、その特徴点で生じる反射や散乱の変化がわずかであっても、検査対象の撮像範囲の各点において、その特徴点が視野内のどこにあっても、撮像装置の観察立体角内における光量を一定量だけ変化させることができ、ひいては、このような微小な特徴点の詳細を検出する事が可能となる検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムを提供することを目的とする。
【0008】
欠陥などの特徴点が非常に小さかったり微かであったりして、その特徴点で生じる反射や散乱の変化がわずかであっても、また、検査対象の撮像範囲の各点において、その特徴点が視野内のどこにあっても、たとえば検査対象の各点に対する照射光の照射立体角と、その検査対象から返される物体光を観察する撮像装置が形成する観察立体角とが、互いに正反射方向にあり、特徴点における反射方向等の光物性の変化に起因して、照射立体角を反映して物体から返される反射や散乱等の物体光自身の放射エネルギーの変化や、該物体光の立体角と観察立体角との相対関係の変化が発生し、観察立体角内に捕捉される該物体光の光エネルギーが変化することによって、物体光の輝度差として特徴点の検出が可能であるが、この物体光の輝度の変化量は、照射光の立体角を反映した物体光の立体角、及びその物体光を捕捉する観察立体角の、それぞれの大きさや、相対角度等の相対関係の変化量によって大きく左右される。
【0009】
より具体的には、物体光の立体角、及び観察立体角のどちらかがどちらかに完全に包含された状態では、両者の立体角の相対関係が変化することによる輝度変化は生じないし、若しくは、物体光の立体角、及び観察立体角が互いに包含さる部分を持たない場合は、物体光の明るさは観察立体角で検出できなくなってしまうし、若しくは、物体光の立体角、及び観察立体角が大きい場合は、物体光の立体角の変化に対する、物体光の明るさの変化は相対的に小さくなってしまい、特徴点を検出することが難しくなってしまう、という問題がある。
【0010】
特に、検査対象が曲面で構成される場合は、特徴点の曲面上の位置によって、照射光の立体角を反映した物体光の立体角、及びその物体光を捕捉する観察立体角の、それぞれの大きさや、相対角度等の相対関係が変化し、同じ特徴点であっても、物体光の明るさの変化量が大きくなったり小さくなったりしてしまい、更には、特徴点による物体光の立体角の傾きの変化が小さい場合は、物体光の立体角の傾きの変化がより大きな明るさの変化となるよう、照射立体角と観察立体角の双方を小さく設定する必要があるが、この場合は、検査対象の面が、照射立体角と観察立体角の平面半角の和の1/2の角度以上傾くと、該観察立体角で、反射に起因する物体光を捕捉できなくなり、その面内にある特徴点による物体光の立体角の変化も検出できなくなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記のように、照射立体角を反映する物体光の立体角と、撮像装置の観察立体角との相対関係の変化量が、検査対象の面の傾きによって、観察立体角で捕捉する光エネルギーの変化による物体光の明るさの変化が小さくなったり、若しくは明るさの変化を捕捉できなかったりする問題を解決し、ひいては、このような微小な特徴点の詳細を検出する事が可能となる検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、検査用照明装置、及び照明光学系から射出される検査光の照射立体角の大きさや、その形状、傾き等の様態を、検査対象の各点に対して均一にし、その照射立体角内で光の伝搬方向以外の変化要素、たとえば異なる波長や偏波面、若しくは光量等を任意に区分して照射し、しかもこれを調節できるようにすることで、検査対象における欠陥等が微小であり、その欠陥等による反射や散乱の変化量がごくわずかであっても、撮像装置が形成する観察立体角内で、区分した異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量の領域毎にそれぞれの光量の変化として捉えることができ、この変化を明暗情報とする画像が得られるようにするという新規な発想に基づいてなされたものである。
【0013】
より具体的には、本発明の検査用照明装置、及び照明光学系は、検査対象に検査光を照射する検査用照明装置、及び照明光学系であって、前記検査対象において反射又は透過又は散乱する光を捕捉する観察光学系とからなる検査システムに適用され、前記検査用照明装置、及び照明光学系において、検査光を射出する面光源と、前記面光源と前記検査対象との間に設けられ、前記面光源から放射された光を前記検査対象に照射する検査光として、前記検査対象に対する照射立体角を形成するためのレンズと、前記面光源と前記レンズとの間であって、前記レンズの焦点位置を中心としてその前後に設けられ、前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角を遮光形成する第1の遮光マスクであって、該照射立体角内に同心円状に配置され、互いに隣接部を持たない複数の環状の立体角度領域を形成する第1の遮光マスクを備えており、前記検査対象の各点に対して、検査用照明装置、及び照明光学系、及び前記レンズから検査対象に至る距離や、検査対象の各点の位置に関わらず、同時に、同一の照射立体角を形成することができる検査用照明装置、及び照明光学系であって、該照射立体角が、前記撮像装置で前記検査対象からの光を、前記観察光学系を通して撮像するときに形成される前記検査対象の各点に対する観察立体角に対して、同時に、同一の相対角度を有するように設定することができる
【0014】
また、本発明の検査用照明装置、及び照明光学系は、 前記第1の遮光マスクに隣接して、 前記検査光を異なる波長帯域の光や異なる偏波面、若しくは異なる光量をもつ光で部分的に異なる光属性をもつ任意の立体角度領域に区分、若しくは該光属性が連続的に変化するように設定することができる第1のフィルター手段を、更に備えてもよく、 また、 前記第1の遮光マスクと前記第1のフィルター手段は、少なくともその何れかの機能を備えた、立体角度領域、及び照射立体角の形成手段として単一化された第3のフィルター手段であってもよい。
【0015】
また、前記第1の遮光マスクと前記面光源との間であって、前記レンズが前記検査対象に対して結像する近傍に、第2の遮光マスク、及び特定の属性をもつ光のみを透過する第4のフィルター手段の少なくともいずれかひとつをさらに備え、前記第2の遮光マスク若しくは第4のフィルター手段によって、前記検査対象に対する検査光の照射領域や照射パターンを任意に生成可能であってもよく、第2の遮光マスク、及び特定の属性をもつ光のみを透過する第4のフィルター手段は、少なくとも、第2の遮光マスク、及び第4のフィルター手段の少なくともいずれかの機能を備えた、第5のフィルター手段であってもよい。
【0016】
また、第1の遮光マスク、及び第1のフィルター手段、及び第3のフィルター手段は、面光源とリレー光学系(例えば、タンデム配置のレンズ)との間に配置し、該リレー光学系によって結像するリレー像を、第1の遮光マスク、及び第1のフィルター手段、及び第3のフィルター手段の代わりとして用いてもよい。該リレー像は、第1の遮光マスク、及び第1のフィルター手段、及び第3のフィルター手段の縮小像とされている。なお、第1の遮光マスク、及び第1のフィルター手段、及び第3のフィルター手段の位置も、照明光路に沿って変更可能とされていてもよい(つまり、第1の遮光マスク、及び第1のフィルター手段、及び第3のフィルター手段のリレー像が前記レンズの焦点位置近傍に配置可能とされる構成である)。また、遮光マスクは、完全に光を遮蔽する手段であってもよいし、一定の低い透過率であってもよいし、若しくは撮像装置側の第6のフィルター手段によって、光が透過しない、或いは透過率が一定以上低い光属性を持つものでもよく、第1の遮光マスク、及び第1のフィルター手段、及び第3のフィルター手段は、透過型とされているが、反射型であってもよい。
【0017】
ところで、前記検査対象の各点の明るさは、
各点に形成される前記観察立体角内に捕捉される光エネルギーによって決まり、
この光エネルギーの量は、各点に対する前記照射立体角によって生成される、該各点から反射又は透過又は散乱する光が形成する立体角と前記観察立体角との包含部分に含まれる光エネルギーによって決まる。
該各点から返される光が、正反射光や正透過光のような直接光である場合は、該直接光の立体角は照射立体角の形状や大きさと同じとなり、散乱光である場合は観察可能な全立体角に対して、各点近傍の分光照度によって決まる光エネルギーが均等に放射される。
【0018】
検査対象の各点から返される光が散乱光の場合、検査対象の各点近傍の面の傾きによって、各点に照射される照射立体角との相対角度で該各点の照度が決まり、その照度に比例して散乱光の全立体角に対する放射エネルギーが変化し、それが観察立体角によって捕捉されて各点の明るさが変化するので、検査対象の各点近傍のより微小な傾きを検出するには、その微小な傾きによって、照度がより大きく変化するように、照射立体角を小さく設定する必要がある。
【0019】
また、検査対象の各点から返される光が直接光の場合、検査対象の各点近傍の面の傾きによって、照射立体角と同一形状の直接光の立体角の傾きが変化し、その結果、観察立体角との包含関係が変化すれば、該各点の明るさが該各点近傍の面の傾きに連動して変化するが、照射立体角や観察立体角の大きさに対して、各点近傍の面の傾きが小さければ、その明るさの変化量は小さくなるので、検査対象の各点近傍のより微小な傾きを検出するには、その微小な傾きによって、直接光の立体角と観察光の立体角の包含部分の大きさが変化するように、照射立体角、及び観察立体角を小さく設定する必要がある。
【0020】
ここで、照射立体角を小さくしても、
検査対象の各点から返される光が散乱光の場合は、
検査対象の各点から放射される光は全立体角に均等に放射されるので、該各点近傍の面が大きく傾いても、照射立体角が形成される範囲であれば、その照度変化を散乱光の明るさとして検出することができるが、
検査対象の各点から返される光が直接光の場合は、
その直接光の立体角も小さくなって、観察立体角によってその光エネルギーが捕捉できる角度範囲が小さくなって、各点近傍の面の傾きが観察立体角で捕捉できる範囲より大きくなると、直接光の光エネルギーを捕捉できなくなって、観察できる検査対象の各点近傍の面の傾きの大きさが限定されてしまう。
【0021】
そこで、このような検査用照明装置、及び照明光学系であれば、検察対象の各点近傍の面の傾きが微小であっても、環状の立体角度領域と観察立体角との包含関係の変化を適切に設定することによってその微小な傾きを、各点の観察輝度の変化として発現させながら、照射立体角の最外郭で決まる角度まで、各点近傍の面の傾きが大きくても、その面における微小な傾きの変化を同じ検出感度で検出することができる。
【0022】
言い換えると、
検査対象の各点において、照射立体角内に形成された環状の立体角度領域と観察立体角との相対関係の変化を保持しながら、照射立体角の最外郭で決まる傾きの範囲まで、検査対象の各点近傍の面の傾きが大きくとも、その傾きからの微小な傾きの変化を検出することができるようになり、特に検査対象が曲面である場合には、これまで、微小な傾きの変化を検出する際には、検出範囲が限られてしまっていたところ、一度に撮像できる検出範囲をより大きくとることができるようになる。
【0023】
さらに、前記検査対象における微小な欠陥等により反射光や透過光又は散乱光の強度や方向がわずかに変化した場合でも、その変化する部分によって前記撮像装置の観察立体角内の異なる光属性をもつ立体角度領域ごとにその光量に変化が生じるように、前記第1の遮光マスク若しくは前記第1のフィルター手段によって、前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角形状及びその角度を、前記撮像装置の観察立体角の大きさや形状及び角度との相対関係で適切に設定し、被写体面の特徴点の表面性状に合わせて適切に設定することができ、微小な欠陥等を検出しやすくしたり、または逆に検出されなくしたりすることができる。
【0024】
また、様々な態様の照射立体角を形成することができると共に、その照射立体角の内部を更に異なる光属性をもつ前記立体角度領域を形成することにより、前記検査対象における反射光や透過光が前記撮像装置の観察立体角内に入らないようにして、散乱光のみを撮像したり、前記反射光や透過光が前記観察立体角との包含関係で、前記検査対象における前記反射光や前記透過光の伝搬方向の変化を前記検査対象の各点の明暗情報として観察し、更に前記撮像装置において、前記反射光や前記透過光の立体角に反映される前記照射立体角内の異なる光属性をもつ前記立体角度領域を選択的に撮像可能な第2のフィルター手段を備えることで、前記任意の立体角度領域ごとに、前記検査対象の特徴点において生じた変化を捕捉することができ、様々な検査対象や検出すべき様々な特徴点で生じる微小な光の変化に応じた的確な様態の照射立体角で検査光を照射することができる。
【0025】
ここでいう第2のフィルター手段としては、前記撮像装置において、たとえば、前記検査対象における前記反射光や前記透過光を、異なる光属性ごとに選択的に分光したあとでそのそれぞれの光量を光センサーで撮像しても良いし、光センサーの各ピクセルごとにそれぞれ異なる光属性の光のみ選択的に透過するフィルターを備えても構わない。
【0026】
本発明による、略均一な照射立体角をもつ検査光を前記検査対象に照射した場合に、欠陥等によりその反射方向又は透過方向が変化する際に生じる前記反射光又は透過光の立体角の変化に関し、ごくわずかであってもその変化を捉えられるようにするには、その立体角の変化に対して、前記観察立体角内の光量変化が最大となり、それ以外の変化に対しては最小となるように、前記検査光の照射立体角内に同心円状に形成される環状の立体角度領域と前記撮像装置の観察立体角との相対関係を、その形状や角度及び大きさに対して調整することにより、前記反射光又は透過光の立体角の変化のみを選択的に捉えることが可能となる。また、さらに前記照射立体角内に異なる光属性をもつ任意の前記立体角度領域を設定することにより、その立体角度領域ごとの光量変化を同時に観察することができ、前記検査対象の様々な特徴点における光の変化に対応して連続的に光の変化を捕捉することが可能となる。したがって、このように微小な欠陥等によるごくわずかな光の変化を捉えることは、その検査光の照射立体角の形状や角度及び大きさが前記検査対象面の各点に対して異なってしまう従来の照明装置では難しかったが、本発明による照明装置においてはそれを捉えることができるようになる。
【0027】
前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角の大きさを略均一に制御するとともに、照射立体角の傾き分布を光軸中心に対して調節できるようにするには、前記第1の遮光マスク、及び前記第1のフィルター手段、若しくは両者の機能を統合した前記第3のフィルター手段、若しくは、前記第1の遮光マスク、及び前記第1のフィルター手段、若しくは両者の機能を統合した前記第3のフィルター手段のリレー像を、前記レンズの焦点位置を中心とする前後の位置に配置すればよい。以降、前記第1の遮光マスクに代表させて記述すると、すなわち、前記第1の遮光マスクの開口部を変化させることで、前記検査対象の各点における照射立体角を所望の形状や大きさに設定することができる。また、前記第1の遮光マスクを、前記レンズの焦点位置に配置すれば、前記検査光の照射立体角の光軸はすべて前記検査光の光軸に平行となり、前記レンズの焦点位置よりレンズ側に配置すれば前記検査光が広がる方向へ、前記レンズの焦点位置より外側に配置すれば前記検査光が狭まる方向へ、それぞれ前記検査光の照射立体角を傾かせることができる。このように、前記第1の遮光マスクの配置と、その開口部を変化させることにより、前記検査対象からの反射光や透過光の立体角に直接影響を及ぼす前記検査光の照射立体角について様々な調節が可能となり、検査対象と検査対象からの反射光又は透過光又は散乱光を観察する前記撮像装置の観察立体角との相対関係を、所望の明暗情報を得るために適した様態とすることができる。すなわち、このようにすれば、使用する観察光学系がテレセントリック光学系ではなく、視野範囲の外側と光軸中心でその観察立体角の光軸傾きが変化するような光学系に対しても、視野全体に対して、その各点に対する照射立体角と観察立体角が正反射方向になるように設定することが可能となる。
【0028】
またさらに、前記照射立体角内に設定された、異なる光属性をもつ任意の前記立体角度領域は、前記検査対象に対して均一に設定された前記照射立体角内をさらに任意の立体角度領域として設定可能であり、単に照射立体角と観察立体角との相対関係で前記検査対象の各点の明るさが決まるだけでなく、前記立体角度領域ごとのさらに微小な光の変化を、別途前記照射立体角と前記観察立体角との形状や光軸等に関する相対関係を設定しなおすことなく、前記検査対象の視野範囲のすべての点で略同じ条件で、前記観察立体角に対する相対関係の変化として同時に観察することが可能となる。
【0029】
このようにして、本発明による検査用照明装置、及び前記検査用照明装置を使用し、前記検査対象において反射又は透過または散乱する光を撮像する撮像装置とからなる検査システムにおいて、微小な特徴点に対する所望の明暗情報を得ることができるのは、前記検査対象の各点における明暗が、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の前記撮像装置に向かう光量で決まっており、その前記光量が前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の立体角と前記撮像装置の観察立体角との包含関係で決まっていることから、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光に直接影響する前記検査光の照射立体角を略均一に調節する機能を備え、なおかつその照射立体角内を異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ任意の立体角度領域に区分し、更には、該照射立体角内に同心円状に配置され、隣接部を持たない複数の環状の立体角度領域を形成することによって、前記検査対象の面の法線が観察光軸と一致していない面に於いても、前記検査対象の面の法線が観察光軸と一致している面に対する検出感度と同じ均一な検出感度として、該検査対象から返される物体光の伝搬方向の変化を含む光物性の変化を、前記撮像装置がその区分領域ごとに選択的にその光量を観察することができるようにしたことによる。
【0030】
前記撮像装置によって撮像される前記検査対象の明暗情報を、その撮像範囲全体に亘って略均一な変化を示すものとするためには、前記撮像装置によって前記検査対象の各点に形成される観察立体角と、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の立体角との包含関係が略一定に保たれなければならない。これは、前記第1の遮光マスク、及び前記第1のフィルター手段を、乃至は前記第3のフィルター手段、若しくは、前記第1の遮光マスク、及び前記第1のフィルター手段を、乃至は前記第3のフィルター手段のリレー像を、前記レンズの焦点位置を中心とする前後の位置で移動させることによって、前記検査光の照射立体角、及びその照射立体角内に形成された前記立体角度領域を、略均一な形状及び大きさとし、その傾き角度を調節して前記検査対象の各点における前記観察立体角の傾きに合わせこむことで実現することができる
【0031】
また、前記検査対象に対する検査光の前記照射立体角、及びその照射立体角内に形成された任意の前記立体角度領域を、その照射範囲の各点に対して前記観察立体角との相対関係を略一定に保ちながら、照射領域又は照射形状や照射パターンを任意に生成可能にするためには、前記第1の遮光マスク、若しくは前記第1のフィルター手段の少なくともいずれかひとつ、若しくは前記第3のフィルター手段に加えて、前記第2の遮光マスク若しくは前記第4のフィルター手段、若しくは前記第2の遮光マスク若しくは前記第4のフィルター手段の少なくとも何れかの機能を備えた前記第5のフィルター手段の少なくともいずれかひとつを備え、前記レンズによって前記検査対象に結像する位置近傍に配置すればよい。このようにすることで、前記検査光の前記照射立体角、及びその照射立体角内に形成された任意の前記立体角度領域の形状や大きさ及び傾きを略均一に保ちながら、前記検査光の前記検査対象に対する照射領域及びその照射領域の光属性と、前記検査対象の各点に対するその照射立体角及び特定の光属性をもつ前記立体角度領域の双方を独立に調節することができる。
【0032】
前記検査対象の立体形状等についても容易に検査できるようにするには、前記第1の遮光マスク及び第1のフィルター手段、若しくは第3のフィルター手段、若しくはそのリレー像に加えて、所定のマスクパターンが形成された前記第2の遮光マスク及び第4のフィルター手段を用い、このパターンを前記検査対象に対して結像させてやればよい。このようなものであれば、前記第1の遮光マスク及び第1のフィルター手段で調節された略均一な照射立体角及び特定の光属性をもつ立体角度領域によって、前記撮像装置で均一な明暗変化をもつ明暗情報を得ることができ、前記検査対象の形状に問題があれば前記撮像装置で明暗情報として得られるパターンに歪みが生じるので、容易に形状不良を検出することができる
【0033】
前記検査対象の各点の反射光又は透過光の立体角と、前記撮像装置が前記検査対象の各点に形成する観察立体角とを、その形状及び大きさ及び傾きに関して略一致させると、前記検査対象に微小な特徴点がある場合でも前記反射光又は透過光の立体角と前記観察立体角との包含関係に変化が生じ、その微小な特徴点に対する明暗情報の変化を得ることできる。この包含関係の変化による明暗情報の変化率は、前記反射光又は透過光の立体角、及び前記観察立体角の大きさを適切に設定することで制御することが可能となるが、このままでは両者の立体角の大きさに依存する一定の明暗情報しか得ることができない。そこで、前記検査対象の各点に対する照射立体角内に異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ任意の立体角度領域を形成すると、それが前記検査対象の各点の前記反射光又は前記透過光の立体角内に、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ立体角度領域として反映されるので、前記特徴点に対する明暗情報の変化が、前記反射光又は前記透過光の立体角内に反映された前記立体角度領域と前記観察立体角との包含関係によって変化するようにすれば、それぞれの前記立体角度領域の分だけの微小な変化量を同時に検知することができる。
【0034】
このようにするための一例としては、 前記検査光が前記検査対象に対して形成する照射立体角の照射光路に対して、 正反射方向、若しくは正透過方向に、 前記撮像装置の観察軸、及び観察立体角を設定し、 前記検査対象の各点からの反射光、又は透過光が形成する立体角の反射・透過光路と、 前記撮像装置の前記検査対象の各点に対する観察立体角の観察光路、すなわち観察光軸を略一致させることで、実現することができる
【0035】
また、このようにするための別の一例として、前記面光源からの前記検査光を反射させ、その照射光路の方向を変えて検査対象に照射し、前記検査対象からの反射光を透過させて反射光路の方向を変えずに、前記観察光学系へと入力する観察光路として前記撮像装置で撮像できるようにするか、若しくは、前記検査光を透過させてその照射光路の方向を変えずに検査対象に照射し、前記検査対象からの反射光を反射させて反射光路の方向を変えて、前記観察光学系へと入力する観察光路として前記撮像装置で撮像できるようにするためのビームスプリッターを備え、前記検査光の前記検査対象の各点に対する照射立体角を適切に調整して、前記撮像装置の前記検査対象の各点に対する観察立体角、及び観察光軸と、その各点から発せられる前記反射光の立体角の光軸を略一致させることで実現できる。なお、このビームスプリッターは、検査対象に対しては、照射光路と観察対象となる反射光路、すなわち照射光軸と観察光路とを一致させて同軸とし、前記第1の遮光マスク及び第1のフィルター手段、若しくは第3のフィルター手段、若しくは、そのリレー像を形成するためのリレー光学系と、前記検査対象の間において、その照射光路と観察光路を分ける機能を果たすように設置すればよい。
【0036】
さらに、前記撮像装置において、前記反射光又は前記透過光の立体角内に反映された、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ前記立体角度領域の光を選択的に撮像可能な第6のフィルター手段を備えることで、それぞれの前記立体角度領域と前記観察立体角との包含関係によって発生する明暗変化を同時に検知することができる。
【発明の効果】
【0037】
このように本発明の検査用照明装置、及び照明光学系によれば、検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角内に同心円状に配置された環状の立体角度領域によって、前記検査対象の各点近傍の傾きを反映した明部と暗部、及びその中間階調の明るさによって、前記検査対象の各点近傍の傾きを検出する感度を一定に保ちながら、その照射立体角内に形成される異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ立体角度領域の大きさや形状を自由に調整することができるので、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の立体角、及びその立体角内に反映された、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ前記立体角度領域と、前記撮像装置で前記検査対象の各点に形成される観察立体角との包含関係を均一に設定することができ、従来検出の難しかった微小な欠陥等であっても同一の検出感度で検出する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る、リレー光学系を含む、検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る、ビームスプリッターを含む、検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る、リレー光学系、及びビームスプリッターを含む、検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図5】本発明の第5実施形態に係る、ビームスプリッターを含む、検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図6】本発明の第6実施形態に係る、リレー光学系、及びビームスプリッターを含む、検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図7】本発明の第6実施形態に係る、リレー光学系、及びビームスプリッターを含む、検査用照明装置、及び照明光学系、及び検査システムの構成要素、及び照射光路と観察光路、照射立体角と反射・透過光の立体角と観察立体角の関係を示す模式図。
【
図8】照明光の照射立体角の比較模式図。((a)面光源が形成する照射立体角(b)本発明での照射立体角)
【
図9】検査対象の傾きによる、照射立体角、及び反射光の立体角と観察立体角との相対関係の変化を示す模式図。 ((a)反射光の立体角変化、(b)反射光の立体角と観察立体角の包含関係の変化)
【
図10】互いに隣接部を持たないように同心円状に配置された複数の環状の立体角度領域を形成するための第1の遮光マスク、及び異なる光属性の立体角度領域を持つ第1のフィルター手段、及び両者を統合した第3のフィルター手段の1実施例。
【
図11】互いに隣接部を持たないように同心円状に配置された複数の環状の立体角度領域を持つ照射立体角の検査対象の傾きによる反射光の立体角と観察立体角との相対関係を示した模式図。
【
図12】互いに隣接部を持たないように同心円状に配置された複数の環状の立体角度領域を持つ照射立と観察立体角を同軸としたときの検査対象の傾きによる反射光の立体角と観察立体角との相対関係、及び検査対象の明るさの変化の関係を示した模式図
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0040】
本発明の検査システム200は、検査用照明装置100、及び照明光学系101によって検査対象Wに照射光路L1によって照射光を照射し、検査対象Wの各点ににおいて照射立体角ISを形成し、検査対象Wから返される反射・透過光L2が撮像装置Cの観察光学系Kに
捕捉されることによって検査対象Wの画像を撮像し、その画像情報によって検査を行う。
図1では、検査対象Wの透過光L2を
捕捉する観察光学系をK1、撮像装置をC1とし、検査対象Wの反射光L2を
捕捉する観察光学系をK2、撮像装置をC2として表示したが、反射光と透過光を
捕捉する撮像装置は、そのどちらかであってもよいし、両方を備えていてもよい。
【0041】
検査用照明装置100、及び照明光学系101は、 検査光を射出する面光源1と、 前記面光源1と前記検査対象Wとの間に設けられ、前記面光源1から放射された光を前記検査対象に照射する検査光L1として、前記検査対象に対する照射立体角ISを形成するためのレンズ2と、 前記面光源1と前記レンズ2との間であって、前記レンズ2の焦点位置を中心としてその前後に設けられ、 前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角ISを遮光形成する第1の遮光マスクM1であって、後述の
図10に示すように該照射立体角IS内に同心円状に配置され、互いに隣接部を持たないように同心円上位配置された複数の環状の立体角度領域を形成する第1の遮光マスクM1を備えており、 前記検査対象Wの各点に対して、 検査用照明装置100、及び照明光学系101から検査対象Wに至る距離や、検査対象Wの各点の位置に関わらず、 同一の照射立体角ISを形成することができる検査用照明装置100、及び照明光学系101であって、 該照射立体角ISが、 前記撮像装置Cで前記検査対象Wからの反射・透過光L2を前記観察光学系Kを通して撮像するときに形成される前記検査対象Wの各点に対する観察立体角OSに対して、 同一の相対角度を有するように設定することができる。
【0042】
また、検査用照明装置100、及び照明光学系101は、 前記第1の遮光マスクM1に隣接して、 前記検査光を異なる波長帯域の光や異なる偏波面、若しくは異なる光量をもつ光で部分的に異なる光属性をもつ任意の立体角度領域に区分、若しくは該光属性が連続的に変化するように設定することができる第1のフィルター手段F1を、更に備えてもよく、 また、 前記第1の遮光マスクM1と前記第1のフィルター手段F1は、少なくともその何れかの機能を備えた、立体角度領域、及び照射立体角の形成手段として単一化された第3のフィルター手段F3であってもよい。
【0043】
また、前記第1の遮光マスクM1と前記面光源1との間であって、前記レンズ2が前記検査対象Wに対して結像する近傍に、第2の遮光マスクM2、及び特定の属性をもつ光のみを透過する第4のフィルター手段F4の少なくともいずれかひとつをさらに備え、前記第2の遮光マスクM2若しくは第4のフィルター手段F4によって、前記検査対象に対する検査光の照射領域や照射パターンを任意に生成可能であってもよく、更に、第2の遮光マスクM2、及び特定の属性をもつ光のみを透過する第4のフィルターF4手段は、少なくとも、第2の遮光マスクM2、及び第4のフィルター手段F4の少なくともいずれかの機能を備えた、第5のフィルター手段F5であってもよい。
なお、
図2の説明、及び
図3、
図4、
図5、
図6、
図7では、第2の遮光マスクM2、第4のフィルター手段F4、及び第5のフィルター手段F5の説明、及び記載を簡単のため省略してあるが、いずれの実施形態においても、第2の遮光マスクM2、第4のフィルター手段F4、及び第5のフィルター手段F5を
図1と同様に設置してもよい。
【0044】
次に、
図2を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図1で説明した第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3は、面光源1とリレー光学系106(例えば、タンデム配置のレンズ)との間に配置し、該リレー光学系106によって結像するリレー像RIを、第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3の代わりとして用いてもよい。該リレー像RIは、第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3の縮小像とされている。なお、第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3の位置も、照明光路L1に沿って変更可能とされていてもよい(つまり、第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3のリレー像RIが前記レンズ2の焦点位置近傍に配置可能とされる構成である)。
【0045】
検査用照明装置100、及び照明光学系101によって検査対象Wの各点に照射される検査光は、検査対象W上での位置や、検査用照明装置100、及び照明光学系101からの距離に拠らず一定の形状であり、照射立体角ISを形成する第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3、若しくは前記リレー光学系106によって結像されたリレー像RIをレンズ2の焦点位置近傍で照射光路L1に添って調整することによって、それぞれの照射立体角ISの検査対象Wに対する傾きは、一定にすることもできるし、照射光軸を中心としてその傾きを調整することも出来る。また、このようにして形成される照射立体角は、レンズ2、及びその焦点位近傍に配置された第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3、若しくは前記リレー光学系106によって結像されたリレー像RIによって、レンズ2から均等な角度で放射される整形された透過光よって形成されており、必ずしも面光源1が検査対象Wに対してレンズ2によって結像する結像光によって形成されているものではない。
【0046】
照射光ISの形状や大きさは、検査対象Wから返される物体光が正反射光や正透過光のような直接光である場合は、その物体光の立体角として維持され、この直接光の立体角DSは照射立体角ISと同一形状となり、その直接光の立体角DS内に含まれる光エネルギーのみが、撮像装置によって検査対象の各点に形成される観察立体角OS内によって捕捉され、各点の明るさとして撮像されることになる。したがって、この立体角の相対関係である立体角要素を均一に保つことで、検査対象の光物性の変化が、定量的にその撮像画像に反映される。その仕組みについては後述する。
【0047】
図3は、
図1で説明した第1実施形態に、面光源1から放射された検査光を反射させてその照射光路L1の方向を変えて検査対象W1に照射し、検査対象W1からの観察対象となる反射光を透過させて反射光路L2の方向を変えずに、前記観察光学系Kへと入力する観察光路L3として前記撮像装置で撮像できるようにするか、若しくは、前記検査光を透過させてその照射光路L1の方向を変えずに検査対象W2に照射し、検査対象W2からの観察対象となる反射光を反射させて反射光路L2の方向を変えて、前記観察光学系Kへと入力する観察光路L3として前記撮像装置で撮像できるようにするためのビームスプリッター4を備え、前記検査光の前記検査対象の各点に対する照射立体角を適切に調整して、前記撮像装置の前記検査対象の各点に対する観察立体角と、その各点から発せられる前記反射光又は前記透過光の立体角の光軸を略一致させることができる本発明の第3の実施形態である
【0048】
図3で説明したビームスプリッター4は、検査対象Wに対しては、照射光路L1と観察対象となる反射光路L2、つまり照射光軸と観察光軸とを一致させて同軸とし、前記第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3、若しくは、そのリレー像RIを形成するためのリレー光学系106と、前記検査対象Wの間において、その照射光路L1と観察光路L3を分ける機能を果たすように設置すればよく、第3の実施形態にリレー光学系106を加えたものが
図4の第4実施形態で、第3の実施形態においてビームスプリッター4をレンズ2と前記第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3との間に配置したものが
図5に示した本発明の第5実施形態で、この第5実施形態において、リレー光学系106を加えたものが、
図6、及び
図7に示す本発明の第6、及び第7実施形態であり、第6実施形態はリレー像RIがビームスプリッター4の反検査対象側に位置する場合であり。第7実施形態は、リレー像RIがビームスプリッター4の検査対象側に位置する場合であって、どちらも本発明実施形態として有効に働くものである。
【0049】
なお、第5、第6、第7の実施形態においては、レンズ2又は3は、撮像装置が検査対象Wの反射光を、その観察立体角によって捕捉するためにも使用されるため、照射立体角を形成するのと同時に観察立体角を形成するのにも使用され、レンズ3を観察光学系の一部として撮像装置に含める場合には、その照射光学系は、面光源1からビームスプリッター4までを含む部分となり、逆にレンズ2を含めて検査用照明装置とした場合には、観察光学系を含む撮像装置もやはりビームスプリッターまでとなる。
【0050】
また、第5、第6、第7の実施形態においては、レンズ2又はレンズ3が、照射光学系と観察光学系の共用となるため、観察光学系側では、照射光学系から照射された照射光の一部がレンズ2又はレンズ3によって観察光学系側に反射されてしまう問題がある。通常の同軸光学系では、開口部全体に対して均一な照射光を照射するので、このレンズからの反射は、検査対象からの反射光に比べて比較的暗く、レンズからの反射が均一であれば無視することができるが、本発明においては、第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3、若しくはリレー光学系106によって照射立体角形成の為のパターンを含む照射光が照射されており、前記レンズ2又はレンズ3から反射されてくる反射迷光にもこのパターンが見えてしまうため、このレンズからの反射迷光のみを遮蔽する必要がある。
【0051】
そこで、第5、第6、第7の実施形態において、照射光がレンズで反射して発生する反射迷光は、照射光路L1上で、ビームスプリッター4の反検査対象側に第1の偏光フィルターPL1を設置し、観察光路L3上で、ビームスプリッター4の反検査対象側に第2の偏光フィルターPL2を設置し、なおかつレンズ2又はレンズ3の検査対象側に波長板WS1又はWS2を設置し、第1の偏光フィルターPL1と第2の偏光フィルターPL2は互いの透過容易軸を直交させてクロスニコルズとしてレンズからの反射迷光をカットし、1/4波長板WS1又はwS2の透過容易軸は第1の偏光フィルターPL1の透過容易軸に対して45度傾けて設置すると、検査対象Wに照射される照射光は円偏光となって照射され、この偏光を保存して返される検査対象からの反射光は、もう一度1/4波長板WS1又はWS2を通ることによって第1の偏光フィルターPL1の透過容易軸に対して90度傾いた直線偏光となって、観察光路上に設置された第2の偏光フィルターPL2を透過することができるので、結果的に第1の偏光フィルターPL1の透過容易軸方向の直線偏光であるレンズからの反射迷光のみをカットして、検査対象からの反射光を観察することができるようになる。また、検査対象Wから返される物体光が散乱光の場合は、照射光が偏光であっても非偏光となるため、やはり、観察光路上に設置された第2の偏光フィルターPL2を透過することができる。また、1/4波長板WS1又はWS2の透過容易軸を第1の偏光フィルターPL1の透過容易軸と同じ方向、若しくは90度傾けて設置すると、第1の偏光フィルタPL1で直線偏光となった照射光がそのまま検査対象Wに照射されることになり、この場合は検査対象Wからの反射光も同じ直線偏光のままとなるので、観察光路上に設置された第2の偏光フィルターで遮蔽されるが、非偏光の散乱光成分は透過するので、この場合は検査対象からの散乱光のみを観察することができる。なお、散乱光のみを観察する場合は、前記1/4波長板を設置しなくてもよい。また、第1の偏光フィルターPL1、第2の偏光フィルターPL2、及び1/4波長板WS1又はWS2は
図5にのみ記載し、
図6、
図7においては簡単のため省略されているが、
図5と同様に設置してもよい。
【0052】
ここで、物体光は一定の比率で偏光を保存する直接光と非偏光の散乱光成分からなっており、非偏光の光を照射した場合の直接光と散乱光の成分比率に比べ、偏光を照射してこの偏光を透過する検光子を通して観察した、偏光を保存して返される直接光と非偏光となって返される散乱光の成分比率は、エネルギー保存則によって、大きくなる。直接光を観察する明視野に於いては散乱光成分がノイズとなることが多く、この成分を減らせることは検査対象Wの光物性の変化を光の明暗情報に変換する上でそのS/N(信号雑音比)を向上させることにつながり、観察輝度そのものは偏光フィルター等によって減ぜられるが、検査対象Wの光物性の変化はより高いS/Nで検出できることは、その変化が微小なものであるほど有利となる。
【0053】
照射立体角IS、及びこの照射立体角ISをそのまま反映して物体から返される正反射光や正透過光等の直接光の立体角DSと観察立体角OSとの相対関係を立体角要素と言い、直接光の明暗を撮像する明視野では、この立体角要素で、その画像の明暗プロファイルが変化する。明視野時の検査対象の傾きに対する明暗は、照射立体角ISの平面半角θiと観察立体角OSの平面半角θoとによって、検査対象Wの検知可能な最大傾き角はθi+θoの1/2となり、この間の傾き角が例えば明暗の階調が8ビットで出力される撮像装置Cを使用すると、θi+θoの1/2の更に1/256が、検査対象Wの傾きに対する理論上の検出感度となり、例えばθi、θoがそれぞれ1度で、1倍のレンズを使用し、1ピクセル3.45μmの正方画素の光センサーを使用して可視光で通常カメラの撮像条件で、本発明に拠る検査用照明で光を照射するだけで、検査対象Wの傾きの理論検知分解能は、0.0039度となり、深さ方向の理論分解能は、0.24nmとなる。これはすでにレーリーの回折限界を超えたとんでもない値で、水平分解能は高々ピクセルサイズの3.45μmで、ノーマルカメラの可視光による観察で、顕微鏡も何も使わずに通常の撮像で、一般の顕微鏡の1000倍以上の分解能となり、これはすでに電子顕微鏡レベルの分解能であることがわかる。
【0054】
したがって、本発明に拠る検査対象Wの観察に当たっては、通常の観察の1000分の1程度の明暗精度が要求されるため、観察光学系内の迷光を極力抑える必要があり、前記偏光フィルターのクロスニコルズと1/4波長板を組み合わせて迷光をカットする仕組みは必須となる。
【0055】
次に、以下、
図8、及び
図9を用いて、照射立体角ISとその照射立体角と同一の立体角をもって検査対象Wから返される物体光の立体角DSである反射光の立体角RSとの関係について説明する。
【0056】
本発明では、互いに隣接部を持たないように同心円状に配置された複数の環状の立体角度領域を形成する、前記第1の遮光マスク及び前記第1のフィルター手段、若しくは第3のフィルター手段によって、しかもその光属性を任意に変化させることが可能で、前記撮像装置Cの撮像する前記検査対象Wの視野範囲全体のすべての位置において、すべて同条件で照射光を照射することができ、しかもその照射光軸や照射立体角を、前記撮像装置の光学特性に好適な状態に設定することができる点にある。
図8の(a)は、一般的な従来照明である面光源1で、検査対象Wを照射したときに、その検査対象Wの異なる位置P、P′におけるそれぞれの照射立体角IS、IS′を示しているが、両者で照射立体角の形状や光軸が異なっていることが分かる。また、
図8の(b)は、本発明による照射光の様態を示しており、検査対象Wの異なる位置P、P′だけではなく、前記検査対象Wの視野範囲全体のすべての位置において、すべて同条件で照射立体角を形成することができる。このようにすることによって、特に前記検査対象Wから返される反射光や透過光の直接光を観察する明視野照明法において、顕著な効果を期待することができる。ここで、反射光とは鏡面などから返される正反射光のことを指し、透過光とは透明物体を透過してくる正透過光を指す。また、散乱光を観察する暗視野照明法においても、その散乱光が照射される光属性や照射立体角に依存して変化するものも多く、従来照明では実現できなかった微小な検査対象Wの光物性の変化を検出することが可能となる。
【0057】
図9の(a)は、前記検査対象W上の点Pに着目して、前記点Pに照射立体角ISなる検査光を照射した場合を考え、前記検査対象の点Pを含む面が部分的にφだけ傾いたときに、点Pの明るさがどのように変化するかを、前記撮像装置Cが点Pに形成する観察立体角OSに対して、点Pからの反射光の立体角RS1が立体角RS2のように変化したときの、各立体角の相対関係がどのようになるかを示している
【0058】
図9の(a)において、点Pからの前記反射光の立体角RS1及びRS2の形状と大きさは、点Pに対する検査光の照射立体角ISに等しい。また、前記反射光の立体角RS1の傾きは、点Pに立てた法線に対して前記検査光の照射立体角ISの線対称となる方向に、前記検査光の照射立体角ISの傾きθと同じだけ傾いている。このとき、前記撮像装置Cが点Pに対して形成する観察立体角OSが、前記反射光の立体角RS1とその光軸が一致しており、なおかつ前記反射光の立体角RS1に比べてその大きさがごく小さいとすると、前記撮像装置Cで捉えられる点Pの明るさは、その観察立体角OSの大きさで制限され、この包含関係が変わらない範囲で前記反射光の立体角RS1が傾いても変化することはない。ただし、照射立体角IS、反射光の立体角RS1及びRS2内の光エネルギーはその立体角内で均一に分布しているもと仮定する。
【0059】
次に、
図9の(a)(b)において、前記検査対象Wの点Pを含む面が部分的にφだけ傾いた場合を考えると、点Pからの反射光の立体角RS1は、図中点線で示したRS2のように2φだけ傾くことになる。このときに、点Pからの反射光の立体角RS2が、前記撮像装置Cが点Pに対して形成する観察立体角OSとなんらの包含関係をもたなければ、前記撮像装置Cから見た点Pの明るさは0となるが、前記撮像装置Cが点Pに対して形成する前記観察立体角OSと部分的に包含関係があれば、両者が重なった立体角部分に含まれる光が点Pの明るさとして反映される。すなわち、点Pからの反射光の立体角RS2の平面半角θiが、前記反射光の傾き角2φから前記観察立体角OSの平面半角θoを差し引いた角度より大きく、なおかつ前記反射光の傾き角2φに前記観察立体角OSの平面半角θoを加えた角度より小さい場合は、点Pの明るさが前記反射光の傾き角2φによって変化する。しかし、もし前記照射立体角ISの平面半角θiが、前記検査対象Wの部分的な傾きによって生じる反射光の傾き角2φに前記観察立体角OSの平面半角θoを加えた角度より大きい場合は、点Pの明るさは変化しない。また、観察立体角OSの平面半角θoが、前記反射光の傾き角2φと前記反射光の立体角RSの平面半角θiを加えたものより大きければ、やはり点Pの明るさは変化しない。このことは、結局、点Pの明るさは、点Pからの反射光の立体角RSと点Pに対する観察立体角OSの包含関係で決まっており、点Pに照射される検査光の照射立体角ISと点Pに対する観察立体角OSとの、形状、及び大きさ、及び傾きに関する相対関係を設定することで、点Pの明るさの変化を制御できる、ということを示している。
【0060】
ここで、照射立体角ISと観察立体角OSの平面半角の和θi+θoが大きければ大きいほど、若しくは照射立体角ISと観察立体角OSの平面半角の差の絶対値|θi―θo|が大きければ大きいほど、検査対象Wの傾きの変化に対する感度、すなわち傾き角を点Pの明るさの変化として捕捉する際の変化量が小さくなってしまう。すなわち、検査対象Wの微少な傾きを高感度で検出する為には、照射立体角ISと観察立体角OSの平面半角θi+θoの和が小さければ小さいほど、若しくは照射立体角ISと観察立体角OSの平面半角の差の絶対値|θi―θo|が小さければ小さいほどよいということになる。ところが、このようにすると、検査対象Wの傾きが照射立体角ISと観察立体角OSの平面半角の和θi+θoの1/2より大きくなる部分では検査対象Wから返される物体光を捕捉することが出来なくなってしまい、検査対象Wの傾きに対する感度は上がっても、検査対象Wに対する検出視野範囲が狭くなってしまう。
【0061】
図9の(b)は、(a)において検査光の照射光軸と点Pの法線及び点Pからの反射光軸を含む面での断面図であり、各要素の傾きとその包含関係がより定量的に把握できる。ただし、
図9の(b)では、観察立体角OSが、照射立体角IS、つまり反射光の立体角RS1より大きい場合を図示した。検査対象Wが傾いて、点Pからの反射光の立体角RS1が点線で示したRS2になると、本図では前記観察立体角OSとの包含関係がなくなり、その観察立体角OS内の光エネルギーは0となるので、この観察立体角OSに含まれる光を再び点に集めて結像させても、点Pは真っ暗にしか見えない。しかし、この場合も前記照射立体角ISと前記観察立体角OSの相対関係を調整することにより、前記反射光の立体角RSと前記観察立体角OSとの包含関係を生じさせると、その重なり部分の大きさの変化に従って、点Pの明るさが変化することになる。
【0062】
図9の(b)において、ここで、もし観察立体角OSの形状及び大きさが照射立体角ISと同じで、点Pからの反射光の立体角RSの傾きと一致しているとすると、その状態から少しでも検査対象Wが傾くと、少なくともその分だけ観察立体角OSと反射光の立体角RSの重なっている部分が減少するので、観察立体角OSを介して見た点Pの明るさはその分変化する。しかもその各立体角が小さければ小さいほど、検査対象Wが同じ角度だけ傾いたときの点Pの明るさの変化量は大きくなり、逆に大きければ大きいほど、検査対象Wが同じ角度だけ傾いたときの点Pの明るさの変化量は小さくなる。また、照射立体角ISと観察立体角OSの形状や大きさや傾き等を、検査対象の所望の特徴点で発生する光の変化に対応して適切に設定すれば、これまで安定に検出できなかった特徴点の検出が精度良くできるようになる。本発明では、この原理に着目し、後述するように、照射立体角の形状を互いに隣接部を持たないように配置された同心円状の複数の環状の立体角度領域を含むものとして、この環状の立体角度領域と観察立体角OSとの包含関係を、検査対象Wの傾きが拠り大きな部分においても、同一に保ち、傾きに対する感度を保持することが出来るようにした。
【0063】
次に、
図10を用いて、第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3の一実施例について説明する。
【0064】
第1の遮光マスクM1は、たとえば
図10の(a)に示したように、ほぼ光を遮断する遮光部M11、M12,M13が、互いに隣接しない環状の開口部T1、T2,T3を形成しており、
図10の(a)では周囲が遮光部M13で中心部か開口部として図示しているが、その逆に中心部が遮光部となっても構わない。また、遮光部が特定の属性をもつ光のみを遮光する部分であってもよい。また、
図10の(b)に示したように、第1のフィルター手段F1では、3種類の光属性の異なる立体角領域を形成するためのパターンF11、F12、F13が設定されている。ここでは光軸を中心として放射状のパターンとなっているが、これも前記検査対象の着目する特徴点によって任意のパターンに最適化してもよい。この第1の遮光マスクM1と前記第1のフィルター手段F1を統合したものが
図10の(c)に示す、第3のフィルター手段F3であり、(a)に示した互いに隣接しない環状の立体角度領域T1、T2、T3が、それぞれ、光属性の異なる3つの部分F11,F12,F13に分割されており、このようにすると、検査対象がどの方向に傾いているのかが判別できるようになる。なお、光属性の異なる3つの部分F11,F12,F13は、その光属性が連続的に変化してよいし、環状の透過部分毎に光属性が変わるものであってもよい。
【0065】
図11は、この互いに隣接部を持たないように配置された同心円状の複数の環状の立体角度領域を有する照射立体角が検査対象W上の点Pに形成されたときの、その反射光RS1、RS2と、撮像装置Cによって点Pに形成されている観察立体角OSとの関係を示しており、検査対象Wに対して照射立体角ISと観察立体角OSが互いに正反射方向にある場合が(a)に示されており、観察立体角OSは照射立体角の中心部の明部と包含関係を持っており、点Pは明るく観察されているが、
図11の(b)で、検査対象Wがφだけ傾くと、照射光の立体角ISをそのまま保持して反射した反射光の立体角RS2は、(a)で正反射方向に反射していた反射光の立体角RS1に対して2φだけ傾くこととなり、その結果、観察立体角OSの光軸に対しても2φだけ傾くことになり、(b)に示した例では、観察立体角OSは、反射光の立体角RS2内に同心円状に形成された環状の立体角度領域の間にその包含部分がかかっており、その分点Pの明るさは暗くなる。
【0066】
図12は、前記ビームスプリッターを使用して、前記互いに隣接部を持たないように配置された同心円状の複数の環状の立体角度領域を有する照射立体角が検査対象W上の点Pに形成されたときに、その照射立体角の照射光軸と、撮像装置Cによって点Pに形成されている観察立体角OSの観察光軸が同軸となるようにしたときに、検査対象Wから返される反射光の立体角RSと観察立体角OSとの関係を示しており、検査対象Wの傾きに対して、点Pの明るさがどのようになるかを示している。なお、
図12では、観察立体角OSの平面半角θoに対して、照射立体角の中心部の明部立体角度領域の平面半角θiを観察立体角OSの平面半角θoと等しく設定し、照射立体角内で同心円状に配置された明部環状立体角度領域、及び隣りあう明部環状立体角度領域との間の暗部環状立体角度領域の幅を、観察立体角OSの平面半角θoの2倍、すなわち2θoとしている。
【0067】
図12の(a)は、検査対象の点P近傍の面の法線が照射光軸、及び観察光軸と一致している状態で、このとき点Pの明るさは最大値で、検査対象Wが傾くと、点Pの明るさは(b)で示したように徐々に暗くなり、検査対象Wの傾きがθoになると、(c)で示したように、観察立体角OSは、照射立体角ISを保持反映した反射光RSの立体角内の暗部環状立体角度領域に重なり、点Pの明るさは最小値となる。更に検査対象Wが傾いていくと、(d)を経てその傾きが2θoになると、(e)に示したように、観察立体角OSは、照射立体角ISを保持反映した反射光RSの立体角内の明部環状立体角度領域に重なり、再び点Pの明るさは最大値に戻る。この間、検査対象Wの傾きに対する点Pの明るさの変化はほぼリニアで、検査対象Wの傾きがθoの整数倍になる度に最大値からから最小値、最小値から最大値へと交互に繰り返し、その傾きが照射立体角の平面半角θiと観察立体角の平面半角θoの和θi+θoの1/2を越えたあとは、照射立体角ISと観察立体角OSとの包含関係が無くなるので、点Pの明るさは最小値のままとなる。
【0068】
以下、各要素について詳細に説明する。
【0069】
面光源1は、1つ以上のチップ型LEDを配置したものや、有機ELや、サイドライトから導光板を導いたものなどであってもよい。なお、面光源1の位置は、照明光軸L1に沿って変更可能としてもよく、レンズ2の焦点位置近傍とその前後に配置される第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、及び第3のフィルター手段F3を介してレンズ2によって、検査対象Wとの距離に拠らず、均一な照射立体角ISを形成することが可能となるが、この照射立体角ISを形成する光は、面光源の各点から放射された光によって構成され、どの点から放射された光であるかは、その照射立体角ISが照射光軸L1上でどれだけレンズ2から離れているかその距離と、照射光軸L1から照射光軸と直交するどの方向にどれだけ離れているか、その距離と方向によって決まり、面光源1とレンズ2との距離に拠っても変化するが、すべての照射立体角ISについて、そのひとつの照射立体角を形成する光線束は、必ずしも面光源の一点から放射された光でない。もし、或る照射立体角を形成する光線束が面光源1の一点から放射された光線束で形成されているとすると、その照射立体角の形成される位置は、面光源1がレンズ2によって結像される位置であり、本発明で利用する照射立体角は、結像位置にあるものだけではなく、それ以外の、面光源も複数の点から放射された光線束を含むものであれば、面光源の輝度ムラを反映することなく、より均一な照射立体角を形成することが出来る。
【0070】
また、照射光路L1上の、面光源1から、第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3に到る部分を、その照射面の発光波長分布や輝度分布、偏光状態分布を動的に変更できるカラー液晶等と白色光源を組み合わせた液晶モニター装置等のフラットパネルディスプレーで構成することにより、さらに様々な種類の検査対象に対応することができ、このようにすると、ディスプレー表示をリアルタイムにコントロールして、様々な照射立体角を形成することが可能になり、より最適化自由度の高い検査用照明、及び照明光学系、ひいては検査システムを構築することが可能となる。
【0071】
リレー光学系116は、例えば、第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3を通過する照明光を通過させる屈折型レンズ系であり、単レンズでもよいが、複数枚のレンズによって構成されていてもよい。なお、レンズとしては、凹凸形状を付けたもののほか、屈折率分布型レンズなども含まれる。
【0072】
レンズ2に対して、照射立体角を形成するための第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3は、照射光学系の開口数を決定する光学素子であり、レンズ2が検査対象W側で略テレセントリック光学系であるので、レンズ2の反検査対象側の焦点位置近傍に配置されるが、第5、第6、及び第7実施形態の場合は、観察光学系の対物レンズとしても機能させるため、照射系と同じレンズ2の反検査対象側の焦点位置近傍に、観察立体角を形成する開口絞りが設置されるので、この焦点位置が、照射光路と観察光路を分離するビームスプリッター4の反検査対象側であれば、照射系の開口数すなわち照射立体角の大きさや形状、パターン等を決める照射立体角を形成するための第1の遮光マスクM1及び第1のフィルター手段F1、若しくは第3のフィルター手段F3とは別に、開口絞りを設置することが出来るが、レンズ2の焦点位置が該ビームスプリッターの検査対象側であれば、リレー光学系を用いて、観察立体角の大きさや形状を決める開口絞りと同じ位置に、開口絞りの内径部に、照射立体角を形成するためのリレー像を結像させれば、その範囲内で照射立体角を自由に形成することが可能である。
【0073】
第1の遮光マスクM1で形成される照射立体角ISは、その中心の開口部となる立体角度領域の平面半角が観察立体角OSの平面半角θoと同一であれば、検査対象Wの傾きに対して、該照射立体角と同一の立体角を持った反射光RSが傾いて、必ず観察立体角OSと反射光RSの中心の立体角度領域との包含部分が変化するので、最も傾きの検出感度が高い条件となる。また、さらに観察立体角の平面半角θoが小さければ小さいほど、その検出感度は高くなる。そして、検査対象Wの傾きに対する観察輝度の明暗変化を最大とするには、該中心の開口部の外側に同心円状に環状の遮光部となる立体角度領域を設け、該遮光部の幅を観察立体角OSの平面半角θoの2倍とすれば、検査対象Wの傾きがθoまで傾いた時に、その傾きがどの方向であっても、観察立体角OSは、遮光部となる立体角度領域に完全に入って、観察立体角で捕捉される光エネルギーは最小となって、その明暗変化が最大となる。更にその遮光部の外側に同心円状に環状の開口部となる立体角度領域を設け、該開口部の幅を観察立体角OSの平面半角θoの2倍とすれば、更に検査対象Wがθoだけ傾いた時に、観察立体角OSは、開口部となる立体角度領域に完全に入って、観察立体角で捕捉される光エネルギーは最大となって、その明暗変化が最大となって、観察立体角OSが反射光の立体角RSの光軸中心と一致していたときと同じ明るさとなる。以降、同じ幅で、遮光部と開口部の環状の立体角度領域を同心円に配置すれば、検査対象Wの傾きが、照射立体角の平面半角θiと観察立体角の平面半角θoの和θi+θoの1/2を越えるまでその明暗の変化が、検査対象Wの傾きに対して同一感度で繰り返され、検査対象Wの傾きが、照射立体角の平面半角θiと観察立体角の平面半角θoの和θi+θoの1/2を越えると、それ以降は検査対象がそれ以上傾いても、観察立体角OSは、検査対象Wからの反射光の立体角RSから光エネルギーを捕捉することが出来ないので、最低輝度となる。したがって、第1の遮光マスクM1の遮光部分である暗部と、遮光されていない開口部分である明部の幅は、観察立体角OSの平面半角θoの2倍として、同心円状に等間隔に環状の開口部、及び環状の遮光部とし、中心部は観察立体角OSの平面半角θoと同じ平面半角を持つ開口部とすれば、その観察立体OSに対して、最も検査対象Wの傾きの検出感度を均一に、しかも最も高感度に設定することが出来る。
【0074】
なお、第1の遮光マスクM1において、中心部を観察立体角OSの平面半角θoと同じ平面半角を持つ遮光部として、その外側を2θoの幅の同心円状の環状の開口部とし、更にその外側を2θoの幅の同心円状の環状の遮光部とし、以降同様に照射立体角ISの平面半角θiまで交互に配置してもよく、更には、遮光部と開口部の間隔を同じとしてその幅を変化させると、傾きによって明暗が変化する領域を変えたり、最小輝度を一定の明るさにまで変化させることが出来、更には、検査対象Wの傾きによる明暗の変化度合いを変えることもできる。更にまた、遮光部と開口部の間隔を変化させてもよく、観察立体角OSとの包含関係を任意の角度範囲で適宜任意に設定してもよい。
【符号の説明】
【0075】
200 :検査システム
100 :検査用照明装置
C :撮像装置
C1 :撮像装置 同図に別条件で使用)
C2 :撮像装置 同図に別条件で使用)
K :観察光学系
K1 :観察光学系(同図に別条件で使用)
K2 :観察光学系(同図に別条件で使用)
1 :面光源
11 :光射出面
2 :レンズ
3 :レンズ(同図に別条件で使用)
4 :ビームスプリッター
L1 :照射光路 (照射光軸)
L2 :反射・透過・観察光路 (物体光路)
L3 :観察光路 (観察光軸)
M1 :第1遮光マスク
M11 :第1遮光マスクの遮光部
M12 :第1遮光マスクの遮光部
M13 :第1遮光マスクの遮光部
F1 :第1フィルター手段
F11 :第1フィルター手段の或る光属性1を持つ光を透過する部分
F12 :第1フィルター手段の或る光属性2を持つ光を透過する部分
F13 :第1フィルター手段の或る光属性3を持つ光を透過する部分
F2 :第2フィルター手段(撮像装置における)
F3 :第3フィルター手段
M2 :第2遮光マスク
F4 :第4フィルター手段
F4 :第5フィルター手段
106 :リレー光学系
RI :リレー像
R1 :リレー像(同図に別条件で使用)
R2 :リレー像(同図に別条件で使用)
W :検査対象
W1 :検査対象 (同図に別条件で使用)
W2 :検査対象 (同図に別条件で使用)
P :検査対象W上の或る点
P′ :検査対象W上の別の点
φ :検査対象の傾き角
IS :照射立体角
IS′ :別の照射立体角
θi :照射立体角の平面半角
OS :観察立体角
θo :観察立体角の平面半角
RS :反射光の立体角
RS1 :反射光の立体角同図に別条件で使用)
RS2 :反射光の立体角同図に別条件で使用)
【要約】
【課題】 光を照射した検査対象から返される物体光は直接光と散乱光で構成され、直接光は、照射立体角と観察立体角との相対関係で決まる立体角要素が均一でなければ、検査対象の光物性の変化を定量的に捕捉することが出来ず、表面形状の微小変化の捕捉には、照射立体角と観察立体角を共に小さくする必要があるが、検査面が傾くと物体光自身が捕捉できなくなるという問題がある。
【解決手段】 これに対して、照射立体角と観察立体角を小さく設定しても、検査対象の傾きに対する検出感度を一定に保ちながら、検査面の一定の傾きまで物体光を捕捉できるようにした。具体的には、立体角要素を一定にして、照射立体角中に、同心円状に複数の環状立体角度領域を作り、検査対象が曲面でも、その傾きを同一感度で明暗情報に変換し、検査対象の一定の傾きまで方向依存性無く、微小な凹凸を検出可能とし、微小な光物性の変化を定量的に撮像することを可能とした。
【選択図】
図1