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特許7458633学習システム、学習方法、及び学習プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】学習システム、学習方法、及び学習プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/04 20060101AFI20240325BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240325BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240325BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G09B7/04
G09B19/00 G
G06Q50/20 300
A61B5/16 120
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020110897
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007770
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 康
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207733(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066451(WO,A1)
【文献】特開2006-023566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
G06Q 50/20
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の第1の問題を取得する問題取得部と、
取得された前記1つ以上の第1の問題を学習者に対して提示する問題提示部と、
提示された前記第1の問題に対する回答を前記学習者から受け付ける回答受付部と、
前記第1の問題に対する回答を受け付けた後に、前記第1の問題の正解を前記学習者に対して提示する正解提示部と、
前記第1の問題に対する前記学習者の回答が誤っている場合に、前記正解を提示した際の前記学習者の脳活動を計測することで生成された計測データを取得し、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出する強度算出部と、
を備え、
前記問題取得部は、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った前記第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得し、
前記問題提示部は、取得された前記1つ以上の第2の問題を前記学習者に対して提示し、
前記回答受付部は、提示された前記第2の問題に対する回答を前記学習者から受け付ける、
学習システム。
【請求項2】
前記問題取得部は、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度が第1閾値を超えている場合、回答を誤った前記第1の問題と同一レベルの他の問題を前記第2の問題として取得する、
請求項1に記載の学習システム。
【請求項3】
前記問題取得部は、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度が第2閾値未満である場合、回答を誤った前記第1の問題と異なるレベルの他の問題を前記第2の問題として取得する、
請求項1又は2に記載の学習システム。
【請求項4】
前記問題提示部による学習者に対する問題の提示が繰り返され、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度が継続的に第3閾値より低い場合に、前記問題の提示の繰り返しを停止する停止部を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の学習システム。
【請求項5】
コンピュータが、
1つ以上の第1の問題を取得するステップと、
取得された前記1つ以上の第1の問題を学習者に対して提示するステップと、
提示された前記第1の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、
前記第1の問題に対する回答を受け付けた後に、前記第1の問題の正解を前記学習者に対して提示するステップと、
前記第1の問題に対する前記学習者の回答が誤っている場合に、前記正解を提示した際の前記学習者の脳活動を計測することで生成された計測データを取得ステップと、
取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出するステップと、
算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った前記第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得するステップと、
取得された前記1つ以上の第2の問題を前記学習者に対して提示するステップと、
提示された前記第2の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、
を実行する、
学習方法。
【請求項6】
コンピュータに、
1つ以上の第1の問題を取得するステップと、
取得された前記1つ以上の第1の問題を学習者に対して提示するステップと、
提示された前記第1の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、
前記第1の問題に対する回答を受け付けた後に、前記第1の問題の正解を前記学習者に対して提示するステップと、
前記第1の問題に対する前記学習者の回答が誤っている場合に、前記正解を提示した際の前記学習者の脳活動を計測することで生成された計測データを取得ステップと、
取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出するステップと、
算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った前記第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得するステップと、
取得された前記1つ以上の第2の問題を前記学習者に対して提示するステップと、
提示された前記第2の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、
を実行させるための、
学習プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習システム、学習方法、及び学習プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の学習システムでは、問題の難易度レベルを学習者自身が選択するか或いは正答率等の行動指標に基づいて選択することで、学習者に提示する問題を適応的に決定する方法が採用されている。しかしながら、この方法では、学習意欲等の学習者の心理的な側面を客観的に評価することは難しい。例えば、回答している問題に対して、学習者が飽きてやる気がないのか或いは学習意欲が高まっているかを客観的に評価することは困難である。そのため、従来の学習システムでは、客観的な指標に基づいて、学習者の学習意欲を高めるような出題戦略をとることは困難であった。
【0003】
これに対して、近年では、脳波等の客観的な指標に基づいて学習者の状態を観測し、得られた観測結果に応じて、学習者の状態に適した問題を選択する方法の開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、学習者の脳波を計測し、脳波パターンから集中度及び熟考度を推定する方法が提案されている。この方法によれば、客観的な指標として脳波を用いて、学習者の学習意欲を高めるような出題戦略を取ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-124483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者らは、特許文献1等で提案される脳波を用いた学習システムには次のような問題点があることを見出した。すなわち、学習者の状態と脳波パターンとの間の対応関係が示されておらず、脳波パターンに基づいて学習者の集中度及び熟考度を適切に評価可能か不明である。また、脳波パターンを正確に分析するために、学習システムが複雑になる(例えば、演算処理が高度になり、ハイパワーの演算装置が求められる)可能性がある。
【0006】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、脳波を用いて簡易かつ適切に学習者の学習意欲を高めるような出題戦略を取ることを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、本発明の一側面に係る学習システムは、1つ以上の第1の問題を取得する問題取得部と、取得された前記1つ以上の第1の問題を学習者に対して提示する問題提示部と、提示された前記第1の問題に対する回答を前記学習者から受け付ける回答受付部と、前記第1の問題に対する回答を受け付けた後に、前記第1の問題の正解を前記学習者に対して提示する正解提示部と、前記第1の問題に対する前記学習者の回答が誤っている場合に、前記正解を提示した際の前記学習者の脳活動を計測することで生成された計測データを取得し、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出する強度算出部と、を備える。前記問題取得部は、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った前記第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得し、前記問題提示部は、取得された前記1つ以上の第2の問題を前記学習者に対して提示し、前記回答受付部は、提示された前記第2の問題に対する回答を前記学習者から受け付ける。
【0009】
本件発明者らは、後述する実験例により、回答を誤った問題の正解を学習者に提示した際に惹起されるフィードバック関連陰性電位(feedback-related negativity;以下、「FRN」とも記載する)の強度が学習者の学習意欲を評価する客観的な指標として有用であることを見出した。FRNの強度は比較的に簡易に計測かつ算出可能である。したがって、当該構成に係る学習システムによれば、この知見に基づいて、脳波を用いて簡易かつ適切に学習者の学習意欲を高めるような出題戦略を取ることができる。
【0010】
上記一側面に係る学習システムにおいて、前記問題取得部は、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度が第1閾値を超えている場合、回答を誤った前記第1の問題と同一レベルの他の問題を前記第2の問題として取得してもよい。当該構成によれば、FRNの強度に基づいて学習者の学習意欲が高いと評価されるレベルの問題を継続して出題することができる。
【0011】
上記一側面に係る学習システムにおいて、前記問題取得部は、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度が第2閾値未満である場合、回答を誤った前記第1の問題と異なるレベルの他の問題を前記第2の問題として取得してもよい。当該構成によれば、FRNの強度に基づいて学習者の学習意欲が低いと評価される問題とは異なるレベルの問題を次に出題することにより、学習意欲の高いレベルの問題を見つけ出すことができる。
【0012】
上記一側面に係る学習システムは、前記問題提示部による学習者に対する問題の提示が繰り返され、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度が継続的に第3閾値より低い場合に、前記問題の提示の繰り返しを停止する停止部を更に備えてもよい。当該構成によれば、FRNの強度に基づいて学習者の学習意欲が継続的に低いと評価される場合に、出題を停止して、休憩を促すことができる。
【0013】
上記各形態に係る学習システムは、1又は複数のコンピュータにより構成されてよい。また、上記各形態に係る学習システムの別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部又はその一部を実現する情報処理方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記憶した、コンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は、化学的作用によって蓄積する媒体である。
【0014】
例えば、本発明の一側面に係る学習方法は、コンピュータが、1つ以上の第1の問題を取得するステップと、取得された前記1つ以上の第1の問題を学習者に対して提示するステップと、提示された前記第1の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、前記第1の問題に対する回答を受け付けた後に、前記第1の問題の正解を前記学習者に対して提示するステップと、前記第1の問題に対する前記学習者の回答が誤っている場合に、前記正解を提示した際の前記学習者の脳活動を計測することで生成された計測データを取得ステップと、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出するステップと、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った前記第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得するステップと、取得された前記1つ以上の第2の問題を前記学習者に対して提示するステップと、提示された前記第2の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、を実行する、情報処理方法である。
【0015】
また、例えば、本発明の一側面に係る学習プログラムは、コンピュータに、1つ以上の第1の問題を取得するステップと、取得された前記1つ以上の第1の問題を学習者に対して提示するステップと、提示された前記第1の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、前記第1の問題に対する回答を受け付けた後に、前記第1の問題の正解を前記学習者に対して提示するステップと、前記第1の問題に対する前記学習者の回答が誤っている場合に、前記正解を提示した際の前記学習者の脳活動を計測することで生成された計測データを取得ステップと、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出するステップと、算出された前記フィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った前記第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得するステップと、取得された前記1つ以上の第2の問題を前記学習者に対して提示するステップと、提示された前記第2の問題に対する回答を前記学習者から受け付けるステップと、を実行させるための、プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脳波を用いて簡易かつ適切に学習者の学習意欲を高めるような出題戦略を取ることを可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明が適用される場面の一例を模式的に例示する。
図2図2は、実施の形態に係る学習システムのハードウェア構成の一例を模式的に例示する。
図3図3は、実施の形態に係る学習システムのソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。
図4図4は、実施の形態に係る問題データベースの構成の一例を模式的に例示する。
図5図5は、実施の形態に係る学習システムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、被験者による学習意欲(高得点を出そうという意欲が高かったか否か)のランク付けの順序別に、回答を誤った問題の正解を被験者にフィードバックした際に惹起されたFRNの強度を比較した結果を示す。
図6B図6Bは、被験者による自己評価(自己のレベルに適しているか否か)のランク付けの順序別に、回答を誤った問題の正解を被験者にフィードバックした際に惹起されたFRNの強度を比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
【0019】
§1 適用例
図1は、本発明を適用した場面の一例を模式的に例示する。学習システム1は、学習者Lに対して問題を提示し、回答を受け付け、かつ正誤をフィードバックする一連の学習プロセスを提供するように構成されたコンピュータである。
【0020】
具体的に、本実施形態に係る学習システム1は、1つ以上の問題を取得し、取得された1つ以上の問題を学習者Lに対して提示する。本実施形態に係る学習システム1は、提示された問題に対する回答を学習者Lから受け付ける。問題に対する回答を受け付けた後、学習システム1は、当該問題の正解を学習者Lに対して提示する。
【0021】
当該問題に対する学習者Lの回答が誤っている場合、学習システム1は、正解を提示した際の学習者Lの脳活動を計測することで生成された計測データを取得する。本実施形態では、脳波を計測するように構成された計測センサSが学習者Lに装着されており、計測センサSは学習システム1に接続されている。学習システム1は、この計測センサSから計測データを取得することができる。
【0022】
学習システム1は、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出する。学習システム1は、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った問題に応じて、1つ以上の次の問題を取得する。そして、学習システム1は、取得された1つ以上の次の問題を学習者Lに対して提示し、提示された問題に対する回答を学習者Lから受け付ける。
【0023】
なお、FRNの測定に供した先の問題が「第1の問題」の一例であり、FRNの強度に基づいて提供された次の問題が「第2の問題」の一例である。第2の問題は、学習者Lに提供された後に第1の問題として取り扱われてよい。すなわち、上記一連の学習プロセスを繰り返す場合に、提供された第2の問題についてFRNの強度が算出され、算出されたFRNの強度及び第2の問題に応じて更に次の問題が取得されてよい。
【0024】
以上のとおり、本実施形態では、回答を誤った問題の正解を学習者Lに提示した際に惹起されるフィードバック関連陰性電位に基づいて、次に提供する問題を決定する。フィードバック関連陰性電位の強度によれば、学習者Lの学習意欲を客観的に評価可能である。また、フィードバック関連陰性電位の強度は、比較的に簡易に計測かつ算出可能である。したがって、本実施形態によれば、脳波を用いて簡易かつ適切に学習者Lの学習意欲を高めるような出題戦略を取ることができる。
【0025】
§2 構成例
[ハードウェア構成]
図2は、本実施形態に係る学習システム1のハードウェア構成の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る学習システム1は、制御部11、記憶部12、外部インタフェース13、入力装置14、出力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。なお、図2では、外部インタフェースを「外部I/F」と記載している。
【0026】
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラム及び各種データに基づいて情報処理を実行するように構成される。記憶部12は、メモリの一例であり、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。本実施形態では、記憶部12は、学習プログラム81、問題データベース125等の各種情報を記憶する。
【0027】
学習プログラム81は、一連の学習プロセスを学習者Lに提供する後述の情報処理(図5)を学習システム1に実行させるためのプログラムである。学習プログラム81は、当該情報処理の一連の命令を含む。問題データベース125には、学習者Lに提供するための問題及び正解が難易度別に蓄積されている。難易度は、「レベル」の一例である。詳細は後述する。
【0028】
外部インタフェース13は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、専用ポート等であり、外部装置と接続するためのインタフェースである。外部インタフェース13の種類及び数は任意に選択されてよい。本実施形態では、学習システム1は、外部インタフェース13を介して計測センサSに接続される。
【0029】
計測センサSは、フィードバック関連陰性電位の強度を導出可能な脳波の計測データを取得可能であれば、その種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。計測センサSは、例えば、導電性のジェルを塗布した皿電極、ドライ電極等であってよい。
【0030】
なお、学習システム1及び計測センサSの接続方法は、このような例に限定されなくてよい。他の一例として、学習システム1及び計測センサS(又は計測センサSの接続された別のコンピュータ)それぞれが通信インタフェースを備える場合、学習システム1及び計測センサSは、通信インタフェースを介して接続されてよい。
【0031】
入力装置14は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルディスプレイ、マイクロフォン等の入力を行うための装置である。また、出力装置15は、例えば、ディスプレイ(一般的なディスプレイ、タッチパネルディスプレイ)、スピーカ等の出力を行うための装置である。入力装置14及び出力装置15は、タッチパネルディスプレイにより一体的に構成されてもよい。学習システム1は、複数の入力装置14及び出力装置15を備えてもよい。入力装置14は、回答の受け付けに利用される。出力装置15は、問題及び正解の提示に利用される。
【0032】
ドライブ16は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であり、記憶媒体91に記憶されたプログラム等の各種情報を読み込むためのドライブ装置である。記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が、記憶されたプログラム等の各種情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。上記学習プログラム81及び問題データベース125の少なくとも一方は、記憶媒体91に記憶されていてもよい。学習システム1は、記憶媒体91から、上記学習プログラム81及び問題データベース125の少なくとも一方を取得してもよい。なお、図2では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限られなくてもよく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。ドライブ16の種類は、記憶媒体91の種類に応じて任意に選択されてよい。
【0033】
なお、学習システム1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(field-programmable gate array)等で構成されてよい。記憶部12は、制御部11に含まれるRAM及びROMにより構成されてもよい。外部インタフェース13、入力装置14、出力装置15及びドライブ16の少なくともいずれかは省略されてもよい。学習システム1は、複数台のコンピュータで構成されてもよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。また、学習システム1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、デスクトップPC(Personal Computer)、モバイル端末(例えば、スマートフォン等の携帯電話、タブレットPC)等であってもよい。学習システム1がサーバ装置である場合、学習システム1は、クライアント装置(ユーザ端末)を介して一連の学習プロセスを学習者Lに対して提供するように構成されてよい。
【0034】
[ソフトウェア構成]
図3は、本実施形態に係る学習システム1のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。学習システム1の制御部11は、記憶部12に記憶された学習プログラム81をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された学習プログラム81に含まれる命令をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これにより、本実施形態に係る学習システム1は、問題取得部111、問題提示部112、回答受付部113、正解提示部114、強度算出部115、及び停止部116をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。
【0035】
問題取得部111は、1つ以上の第1の問題を取得する。問題提示部112は、取得された1つ以上の第1の問題を学習者Lに対して提示する。回答受付部113は、提示された第1の問題に対する回答を学習者Lから受け付ける。正解提示部114は、第1の問題に対する回答を受け付けた後、第1の問題の正解を学習者Lに対して提示する。第1の問題に対する学習者Lの回答が誤っている場合に、強度算出部115は、正解を提示した際の学習者Lの脳活動を計測することで生成された計測データを取得し、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出する。
【0036】
問題取得部111は、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った第1の問題に応じて、1つ以上の第2の問題を取得する。本実施形態では、問題取得部111は、問題データベース125から第1の問題及び第2の問題を取得することができる。問題提示部112は、取得された1つ以上の第2の問題を学習者Lに対して提示する。回答受付部113は、提示された第2の問題に対する回答を学習者Lから受け付ける。停止部116は、問題提示部112による学習者Lに対する問題の提示(すなわち、一連の学習プロセス)が繰り返され、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が継続的に閾値より低い場合に、問題の提示の繰り返しを停止する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る問題データベース125の構成の一例を模式的に例示する。図4の例では、問題データベース125は、テーブル形式の構造を有しており、各レコードは、識別子、難易度、問題、及び正解の各種情報を格納するフィールドを有している。識別子は、各レコードのデータを識別するために利用される。難易度のスケールは、任意に設定されてよい。問題の形式は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。問題の形式は、例えば、計算問題、選択問題、記述問題等であってよい。問題を提供する学習者Lの対象は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。学習者Lは、例えば、学生(小学生~大学生、専門学校生)、資格試験の受験生、語学の訓練者、eラーニング教材の受講者等であってよい。これに応じて、問題の科目も、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。正解のデータは、問題に対する回答の正誤を判定するための情報により構成される。
【0038】
ただし、問題データベース125の構成は、難易度別に問題を取得可能であれば、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。例えば、計算問題、語学の問題等のように、問題が特定されていれば、その問題から正解を特定可能である場合、この正解の情報は省略されてよい。複数種類の問題を含む場合、各レコードは、問題の形式、科目等を識別するフィールドを更に含んでもよい。或いは、問題データベース125は、問題の形式、科目等の種類別に用意されてもよい。
【0039】
学習システム1の各ソフトウェアモジュールに関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、本実施形態では、学習システム1の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUによって実現される例について説明している。しかしながら、上記ソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、学習システム1のソフトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0040】
§3 動作例
図5は、本実施形態に係る学習システム1の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下で説明する学習システム1の処理手順は、学習方法の一例である。ただし、以下で説明する学習システム1の処理手順は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。また、以下の処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が行われてよい。
【0041】
(ステップS101)
ステップ101では、制御部11は、問題取得部111として動作し、1つ以上の問題を取得する。問題を取得する方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。本実施形態では、制御部11は、問題データベース125にアクセスすることで、1つ以上の問題を取得することができる。
【0042】
初期段階では、取得する問題は任意に決定されてよい。一例として、制御部11は、問題データベース125からランダムに1つ以上のレコードを選択することで、1つ以上の問題を取得してもよい。その他の一例として、制御部11は、例えば、学習者Lの指定、学習プログラム81内の設定値等の任意の方法で取得する問題の難易度を決定し、決定された難易度の問題を含むレコードを問題データベース125から任意に選択することで、1つ以上の問題を取得してもよい。学習システム1を以前に利用した実績がある場合、取得する問題の難易度は、直前に提示した問題の難易度に応じて決定されてよい。
【0043】
複数の問題を取得する場合、取得される全ての問題の難易度は同一であってもよいし、或いは、取得される一部の問題の難易度が他の一部の問題と異なっていてもよい。異なる難易度の問題を取得する場合、制御部11は、任意の方法で難易度の範囲を決定し、決定された範囲に属する難易度の問題を含むレコードを問題データベース125から選択することで、1つ以上の問題を取得してもよい。初期段階で取得される問題は、「第1の問題」の一例である。1つ以上の問題を取得すると、制御部11は、次のステップS102に処理を進める。
【0044】
(ステップS102)
ステップS102では、制御部11は、問題提示部112として動作し、取得された1つ以上の問題を学習者Lに対して提示する。
【0045】
問題の提示方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例として、出力装置15がスピーカを含む場合、制御部11は、取得された1つ以上の問題を音声によりスピーカを介して出力することで、取得された1つ以上の問題を学習者Lに対して提示してもよい。他の一例として、出力装置15がディスプレイを含む場合、制御部11は、取得された1つ以上の問題をディスプレイに表示することで、取得された1つ以上の問題を学習者Lに対して提示してもよい。問題の出力先は、自装置に限られなくてもよい。例えば、出力装置を有するユーザ端末を用いて学習者Lが学習システム1にアクセスする場合、制御部11は、ユーザ端末の出力装置を介して、取得された1つ以上の問題を学習者Lに対して提示してもよい。問題を提示すると、制御部11は、次のステップS103に処理を進める。
【0046】
(ステップS103)
ステップS103では、制御部11は、回答受付部113として動作し、提示した問題に対する回答を学習者Lから受け付ける。
【0047】
回答の受付方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例として、入力装置14がマイクロフォンを含む場合、制御部11は、当該マイクロフォンを介して音声により回答を受け付けてもよい。その他の一例として、入力装置14が、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルディスプレイ等の操作デバイスを含む場合、制御部11は、当該操作デバイスの操作を介して回答を受け付けてもよい。回答を受け付ける装置は、自装置に限られなくてもよい。例えば、入力装置を有するユーザ端末を用いて学習者Lが学習システム1にアクセスする場合、制御部11は、ユーザ端末の入力装置を介して、提示した問題に対する回答を間接的に受け付けてもよい。回答の受け付けが終了した後、制御部11は、次のステップS104に処理を進める。
【0048】
(ステップS104)
ステップS104では、制御部11は、正解提示部114として動作し、提供した問題の正解を学習者Lに対して提示する。
【0049】
正解の提示内容は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例として、制御部11は、ステップS101で選択したレコードの正解フィールドの情報をそのまま提示してもよい。その他の一例として、制御部11は、学習者Lから受け付けた回答と正解の情報とを照合することで、学習者Lの回答が正しいか誤っているかを判定してもよい。そして、制御部11は、その判定した結果を正解の情報として学習者Lに対して提示してもよい。正解の情報が解説を含む場合、制御部11は、判定結果と共に解説も学習者Lに対して提示してもよい。正解の提示方法は、ステップS102と同様に、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。正解の出力先は、問題の出力先と同一であってもよいし、或いは異なっていてもよい。正解を提示すると、制御部11は、次のステップS105に処理を進める。
【0050】
(ステップS105)
ステップS105では、制御部11は、ステップS102~ステップS104の一連の学習プロセスで学習者Lの回答が誤った問題があるか否かに応じて、処理の分岐先を決定する。ステップS104において、学習者Lの回答が正しいか誤っているかを判定した場合、制御部11は、その判定の結果を利用して、処理の分岐先を決定してもよい。他の一例として、制御部11は、ステップS104の処理とは別に、学習者Lの回答が正しいか誤っているかを判定し、その判定の結果に応じて、処理の分岐先を決定してもよい。回答の誤った問題が存在する場合、制御部11は、次のステップS106に処理を進める。一方、回答の誤った問題が存在しない場合、制御部11は、次のステップS108に処理を進める。
【0051】
(ステップS106)
ステップS106では、制御部11は、強度算出部115として動作し、ステップS104の処理により正解を提示した際の学習者Lの脳活動を計測することで生成された計測データを取得する。
【0052】
本実施形態では、制御部11は、計測センサSから計測データを取得することができる。ただし、計測データの取得経路は、このような例に限定されなくてよい。計測センサSは別のコンピュータに接続されてよく、制御部11は、当該別のコンピュータから計測データを取得してもよい。計測センサSによる脳活動を計測するタイミングは、ステップS104により正解を提示した瞬間から300msまでの時間を少なくとも含むように適宜決定されてよい。計測データを取得すると、制御部11は、次のステップS107に処理を進める。
【0053】
(ステップS107)
ステップS107では、制御部11は、強度算出部115として動作し、ステップS106の処理により取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出する。フィードバック関連陰性電位の強度を算出する方法には、例えば、複数の計測データを平均する加算平均法、単一試行のデータからその強度を算出する機械学習法等が採用されてよい。フィードバック関連陰性電位の強度を算出すると、制御部11は、次のステップS108に処理を進める。
【0054】
(ステップS108)
ステップS108では、制御部11は、ステップS102~ステップS104の一連の学習プロセスを繰り返すか否かを判定する。
【0055】
繰り返す基準は、任意に設定されてよい。一例として、一連の学習プロセスを繰り返すか否かは学習者Lにより選択されてよい。この場合、制御部11は、学習者Lの選択に応じて、一連の学習プロセスを繰り返すか否かを判定してもよい。その他の一例として、繰り返しの回数が設定されていてもよい。繰り返しの回数は、例えば、学習者Lの指定、学習プログラム81内の設定値等の任意の方法で与えられてよい。この場合、制御部11は、ステップS102~ステップS104の一連の学習プロセスを実行した回数が設定回数に到達したか否かに応じて、当該一連の学習プロセスを繰り返すか否かを判定してもよい。
【0056】
繰り返さないと判定した場合、制御部11は、本動作例に係る処理手順を終了する。なお、上記基準によりステップS104の段階で繰り返さないことが決定している場合、制御部11は、ステップS105~ステップS107の処理を省略して、本動作例に係る処理手順を終了してもよい。一方、繰り返すと判定した場合、制御部11は、ステップS101に処理を戻し、一連の学習プロセスを繰り返し実行する。
【0057】
一連のプロセスを繰り返す際、ステップS106及びステップS107の処理を前のプロセスで実行している場合、現プロセスのステップS101では、制御部11は、前のプロセスで算出されたフィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った問題に応じて、1つ以上の問題を取得してよい。すなわち、制御部11は、フィードバック関連陰性電位に基づいて出題戦略を決定してもよい。前のプロセスで取得される問題が「第1の問題」の一例であり、現プロセスで取得される問題が「第2の問題」の一例である。一連のプロセスが更に繰り返し実行される場合、次のプロセスとの関係において、現プロセスで取得される問題は「第1の問題」として取り扱われてよい。
【0058】
フィードバック関連陰性電位に基づく出題戦略は、任意の規則に従って決定されてよい。後述する実験例に示されるとおり、フィードバック関連陰性電位の強度は、学習意欲の高い問題について大きくなり、学習意欲の低い問題について小さくなる。この観点に基づいて、任意の規則が与えられてよい。
【0059】
一例として、制御部11は、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度を第1閾値と比較してもよい。そして、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が第1閾値を超えている場合、制御部11は、問題データベース125から、前のプロセスで回答を誤った問題と同一難易度の他の問題を現プロセスの問題として取得してよい。算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が第1閾値と等しい場合にも、制御部11は、前のプロセスで回答を誤った問題と同一難易度の他の問題を現プロセスの問題として取得してもよい。この戦略により、フィードバック関連陰性電位の強度に基づいて学習者Lの学習意欲が高いと評価される難易度の問題を継続して出題することができる。
【0060】
他の一例として、制御部11は、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度を第2閾値と比較してもよい。そして、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が第2閾値未満である場合、制御部11は、問題データベース125から、前のプロセスで回答を誤った問題とは異なる難易度の他の問題を現プロセスの問題として取得してもよい。算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が第2閾値と等しい場合にも、制御部11は、前のプロセスで回答を誤った問題とは異なる難易度の他の問題を現プロセスの問題として取得してもよい。フィードバック関連陰性電位の強度に基づいて学習者Lの学習意欲が低いと評価される問題とは異なる難易度の問題を次に出題することにより、学習意欲の高い難易度の問題を見つけ出すことができる。
【0061】
なお、前のプロセスの問題から難易度を上げるか下げるかは任意に決定されてよい。一例として、制御部11は、現プロセスまでの学習者Lの実績(正答率)に応じて、前のプロセスの問題から難易度を上げるか下げるかを決定してもよい。具体的に、制御部11は、現プロセスまでの実績において、前のプロセスで回答を誤った問題の難易度の正答率が閾値を超えている場合、前のプロセスで回答を誤った問題よりも難易度の高い問題を取得してもよい。一方、制御部11は、前のプロセスで回答を誤った問題の難易度の正答率が閾値未満である場合、前のプロセスで回答を誤った問題よりも難易度の低い問題を取得してもよい。正答率が閾値と等しい場合には、いずれかの戦略が適宜選択されてよい。その他の一例として、複数の問題を取得する場合、制御部11は、前のプロセスの問題よりも難易度の高い問題及び難易度の低い問題をそれぞれ1つ以上取得してもよい。
【0062】
一方、ステップS106及びステップS107の処理を前のプロセスで実行していない場合、現プロセスのステップS101では、制御部11は、任意の方法で1つ以上の問題を取得してよい。一例として、制御部11は、前のプロセスのステップS101と同様の方法で、1つ以上の問題を取得してよい。
【0063】
1つ以上の問題を取得した後、制御部11は、取得した問題について、前のプロセスと同様に、ステップS102~ステップS107の処理を実行してよい。すなわち、ステップS102では、制御部11は、現プロセスで取得された1つ以上の問題を学習者Lに対して提示する。ステップS103では、制御部11は、提示した問題に対する回答を学習者Lから受け付ける。回答の受け付けが終了した後、ステップS104では、制御部11は、提供した問題の正解を学習者Lに対して提示する。提示した問題に対する学習者Lの回答が誤っている場合、制御部11は、正解を提示した際の学習者Lの脳活動を計測することで生成された計測データを取得し(ステップS106)、取得された計測データからフィードバック関連陰性電位の強度を算出する(ステップS107)。
【0064】
ステップS108の処理により、上記一連のプロセスが2回以上繰り返されてもよい。この場合、ステップS108では、制御部11は、停止部116として動作し、各プロセスで算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が継続的に第3閾値より低いか否かを判定してもよい。フィードバック関連陰性電位の強度が第3閾値と等しいケースは、第3閾値より低いケース及び第3閾値を超えているケースのいずれのケースに包含されていると取り扱われてよい。また、継続的と認定する基準は任意に決定されてよい。例えば、制御部11は、算出されるフィードバック関連陰性電位の強度が連続して第3閾値より低い回数が設定回数を超える場合に、算出されるフィードバック関連陰性電位の強度が継続的に第3閾値より低いと判定してもよい。そして、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が継続的に第3閾値より低い場合、制御部11は、一連のプロセスを繰り返さない(すなわち、問題の提示の繰り返しを停止する)と判定し、本動作例に係る処理手順を終了してもよい。これにより、フィードバック関連陰性電位の強度に基づいて学習者Lの学習意欲が継続的に低いと評価される場合に、出題を停止して、学習者Lに対して休憩を促すことができる。
【0065】
なお、上記第1閾値、第2閾値及び第3閾値は、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。各規則を同時に採用する場合、各規則が矛盾しないように各閾値が決定されてよい。例えば、第1閾値は、第2閾値以上であってよく、第3閾値は、第1閾値及び第2閾値以下であってよい。また、各閾値は、例えば、学習者Lの指定、学習プログラム81内の設定値等により任意に与えられてよい。算出されたフィードバック関連陰性電位の強度がいずれのケースにも該当しない場合(例えば、第1閾値が第2閾値より大きく、FRNの強度が第1閾値及び第2閾値の間である場合)、ステップS101では、制御部11は、初期段階と同様に、任意の方法で問題を選択してよい。
【0066】
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係る学習システム1は、上記ステップS101~ステップS107の一連のプロセスを繰り返す場合に、回答を誤った問題の正解を学習者Lに提示した際に惹起されるフィードバック関連陰性電位に基づいて、次に提供する問題を決定することができる。フィードバック関連陰性電位の強度によれば、学習者Lの学習意欲を客観的に評価可能である。また、フィードバック関連陰性電位の強度は、異なる被験者間で安定して計測することができ、かつ少数の電極からでも計測することができるため、比較的に簡易に計測かつ算出可能である。したがって、本実施形態によれば、脳波を用いて簡易かつ適切に学習者Lの学習意欲を高めるような出題戦略を取ることができる。
【0067】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0068】
<4.1>
上記実施形態では、問題データベース125は、学習システム1内に存在している。しかしながら、問題データベース125の配置場所は、このような例に限定されなくてよい。その他の一例として、問題データベース125は、例えば、NAS(Network Attached Storage)等の他のコンピュータに存在してもよい。この場合、上記ステップS101では、制御部11は、他のコンピュータに適宜アクセスすることで、問題を取得してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、学習システム1は、問題データベース125から問題を取得している。しかしながら、問題を取得する方法は、このような例に限定されなくてよい。その他の一例として、ステップS101では、制御部11は、任意の方法で問題を生成してもよい。生成方法の一例として、計算問題を出題する場合、制御部11は、テンプレートに数値を適宜入力することで、問題を生成してもよい。この場合、ステップS102では、制御部11は、生成された問題を学習者Lに対して提示してもよい。ステップS104でも同様に、制御部11は、提示した問題を適宜解くことで、提示した問題に対する正解情報を生成し、生成した正解情報を提示してもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、フィードバック関連陰性電位に基づいた出題戦略の決定に、機械学習により生成された訓練済みモデルが使用されてもよい。すなわち、フィードバック関連陰性電位の強度に基づいて決定する出題戦略を、機械学習手法を使用して決定するように構成されてもよい。一例として、上記ステップS101では、制御部11は、訓練済みモデルを使用して、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った問題に応じて、1つ以上の問題を取得してよい。訓練済みモデルは、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度及び回答を誤った問題の難易度から学習者の学習意欲を高める問題の難易度を推定するように適宜生成されてよい。
【0071】
<4.2>
また、上記実施形態において、学習システム1は、回答が誤っているか否かに問わず、正解を提示した際のフィードバック関連陰性電位の強度を算出するように構成されてよい。この場合、上記処理手順において、ステップS105の処理は省略されてよい。
【0072】
更に、上記実施形態において、学習システム1は、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度の履歴情報を生成してもよい。履歴情報によれば、提供された問題に対して学習者Lが高い学習意欲で取り組んだか否かを事後的に検証することができる。
【0073】
<4.3>
上記実施形態において、算出されたフィードバック関連陰性電位の強度が継続的に第3閾値より低いことに応じてプロセスの繰り返しを停止する処理は省略されてよい。この場合、学習システム1のソフトウェア構成において、停止部116は省略されてよい。
【0074】
また、上記実施形態では、1回のプロセスで得られたフィードバック関連陰性電位の強度に基づいて出題戦略が決定されている。しかしながら、フィードバック関連陰性電位の強度を出題戦略の決定に利用する形態は、このような例に限定されなくてよい。学習システム1は、複数回のプロセスで得られたフィードバック関連陰性電位の強度に基づいて出題戦略を決定するように構成されてよい。
【0075】
§5 実験例
回答を誤った問題の正解を学習者に提示した際に惹起されるフィードバック関連陰性電位の強度が学習意欲を評価する客観的な指標として有用であるか否かを検証するために、次の条件で脳波計測実験を行った。
【0076】
<実験条件>
・被験者:11名(20歳~40歳)
・出題問題:計算問題(難易度は5段階、最も簡単な問題は一桁数字の足し算、最も難易度の高い問題は三桁数字の足し算)
・計測センサ:Polymate Mini AP108
・正解の提示方法:音声(回答の正誤を聴覚フィードバック)
【0077】
学習意欲を変えるため、正解毎にポイントを加算する、目標(目標設定時間、目標ポイント)を設定する、連続して正解した回数及び残り時間でボーナスポイントを加算する、及び獲得ポイントに応じてランキングを表示するというゲーム形式で各計算問題を被験者に提供した。そして、回答を誤った問題の正解を学習者に提示した際に惹起されるフィードバック関連陰性電位の振幅を計測した。全ての難易度の計算問題の回答が終了した後、被験者には、(A)高得点を出そうという学習意欲が高かった順番、及び(B)自己のレベルに適していると感じた順番に、各難易度の計算問題をランク付けさせた。
【0078】
図6Aは、被験者による学習意欲(高得点を出そうという意欲が高かったか否か)のランク付けの順序別に、回答を誤った問題の正解を被験者にフィードバックした際に惹起されたフィードバック関連陰性電位の振幅を比較した結果を示す。図6Bは、被験者による自己評価(自己のレベルに適しているか否か)のランク付けの順序別に、回答を誤った問題の正解を被験者にフィードバックした際に惹起されたフィードバック関連陰性電位の振幅を比較した結果を示す。
【0079】
図6Aに示されるとおり、学習意欲が高いと評価した難易度の問題(1位、2位)と学習意欲が低いと評価した難易度の問題(3位以下)との間で、フィードバック関連陰性電位の振幅に有意な差が見られた。一方で、自己評価のランク付けでは、そのような有意な差は見られなかった。この実験結果から、フィードバック関連陰性電位の強度が学習意欲を評価する客観的な指標として有用であることが分かった。また、学習者の自己評価は必ずしも学習意欲と一致するとは限らないことが分かった。したがって、学習者の学習意欲を高める出題戦略を取るためには、自己評価に依存して難易度を決定するのではなく、フィードバック関連陰性電位の強度に基づいて難易度を決定することが有益であることが分かった。
【符号の説明】
【0080】
1…学習システム、
11…制御部、12…記憶部、13…外部インタフェース、
14…入力装置、15…出力装置、16…ドライブ、
81…学習プログラム、91…記憶媒体、
111…問題取得部、112…問題提示部、
113…回答受付部、114…正解提示部、
115…強度算出部、116…停止部、
125…問題データベース、
S…計測センサ、L…学習者
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B