(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】減圧型マイクロ波乾燥装置及び減圧型マイクロ波乾燥方法
(51)【国際特許分類】
F26B 5/04 20060101AFI20240325BHJP
F26B 3/347 20060101ALI20240325BHJP
F26B 21/10 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F26B5/04
F26B3/347
F26B21/10 Z
(21)【出願番号】P 2022155452
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2022-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000165343
【氏名又は名称】兼松エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 恭二
(72)【発明者】
【氏名】平野 隆司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀治
(72)【発明者】
【氏名】中澤 光宏
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/100891(WO,A1)
【文献】特開2008-187139(JP,A)
【文献】特開2020-192511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
F26B 3/347
F26B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料Mの乾燥方法であって、
前記乾燥方法は、
(A)乾燥工程における目標圧力Aおよび目標圧力Bを設定し、目標圧力Aの圧力aの条件で原料Mにマイクロ波を照射し、乾燥を開始する工程、
(B)
以下記載の何れかが、マイクロ波の照射により上昇し、予め定められた条件であるそれぞれのマイクロ波の反射率の上限値、蒸気温度の上限値、及び原料Mの上限温度の値を上回る場合、
(1)マイクロ波の入射/反射エネルギーから算出されるマイクロ波反射率
のみ、
(2)蒸気温度
のみ、
(3)マイクロ波反射率と蒸気温度、
(4)マイクロ波反射率と原料Mの温度、または
(5)マイクロ波反射率と蒸気温度と原料Mの温度、
マイクロ波の出力を低下、マイクロ波の停止、照射されるマイクロ波におけるパルス照射への切り替え、
及び目標圧力Aを目標圧力Bへ変更し、圧力aから目標圧力Bの圧力bの条件に減圧する
ことのうち少なくとも1つを行う工程、
(C)(B)工程の後に、
以下記載の何れかが、予め定められた条件であるそれぞれのマイクロ波の反射率の下限値、蒸気温度の下限値、及び原料Mの下限温度の値を下回る場合、
(1)マイクロ波反射率のみ、
(2)蒸気温度のみ、
(3)マイクロ波反射率と蒸気温度、
(4)マイクロ波反射率と原料Mの温度、または
(5)マイクロ波反射率と蒸気温度と原料Mの温度、
マイクロ波の出力を再び上昇、マイクロ波照射を再始動、照射されるマイクロ波における連続照射への切り替え、
及び目標圧力Bを目標圧力Aに戻し、圧力bから圧力aの条件へ変更する
ことのうち少なくとも1つを行う工程、を含み、
(B)工程において、目標圧力Aを目標圧力Bへ変更し、圧力aから目標圧力Bの圧力bの条件に減圧する場合、及び(C)工程において、目標圧力Bを目標圧力Aに戻し、圧力bから圧力aの条件へ変更する場合の圧力の制御は、PID制御のみ、またはPID制御及びPD制御によって行われ
る、
原料Mの乾燥方法。
【請求項2】
(D)(B)工程と(C)工程を繰り返す工程をさらに含む、請求項1に記載の乾燥方法。
【請求項3】
前記予め定められた条件は、乾燥工程開始からの経過時間、及び/または蒸留量を更に含む、請求項1に記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記予め定められた条件は、乾燥工程開始からの経過時間、及び/または蒸留量を更に含む、請求項2に記載の乾燥方法。
【請求項5】
原料Mを入れる内容物飛散防止容器と、
原料Mを入れた前記内容物飛散防止容器の投入口と排出口とを有する処理タンクと、
前記処理タンク内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、
原料Mを入れた前記内容物飛散防止容器を載せる前記処理タンク内のレールと、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、
前記マイクロ波発生装置により発生したマイクロ波を前記処理タンク内に導く導波管と、
前記導波管に取り付けられ前記処理タンク内に照射されるマイクロ波の入射及び反射エネルギーを検出するマイクロ波検出器と、
マイクロ波による加熱により前記処理タンクから蒸発した原料Mの蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器と、
蒸気の温度を検知する蒸気温度センサと、
原料Mの温度を検知する原料温度センサと、
前記冷却凝縮器により凝縮された蒸留水を回収する回収タンクと、
前記処理タンク内を減圧するための真空ポンプと、
前記処理タンク内を大気開放する電動バルブと、
前記処理タンク内の絶対圧力を検知する圧力センサと、
前記マイクロ波発生装置、前記マイクロ波検出器、前記蒸気温度センサ、前記原料温度センサ、前記真空ポンプ、前記電動バルブ、前記圧力センサと電気的に接続された信号変換器、インバータ、演算部を内蔵する制御盤と、
から構成される、請求項1-4のいずれか1項に記載の乾燥方法を行う減圧型マイクロ波乾燥装置。
【請求項6】
圧力の制御は、真空ポンプの回転数をPID制御すること、及び電動バルブの開度をPD制御することでなる、請求項5に記載の減圧型マイクロ波乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧型マイクロ波乾燥装置及び減圧型マイクロ波乾燥方法に関し、より詳しくは、焦げに至らないよう、効率よく低含水率まで原料を乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥装置及び減圧型マイクロ波乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作物の残渣や木材等からなる原料あるいはバイオマスを有効利用しようとする試みが数多くなされており、その一例として原料を乾燥させる方法が実施されている。
【0003】
近年マイクロ波の照射や圧力を制御することにより様々な原料から水分を除去する装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、より短時間で乾燥対象物を乾燥させるために、増圧工程、マイクロ波加熱工程、減圧低温化工程、を指定サイクル数繰り返した後に凍結乾燥させる乾燥方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、マイクロ波を照射することにより乾燥対象物を乾燥する乾燥機をより適切に制御する技術が提案されており、前記乾燥機にはマイクロ波照射部と、マイクロ波照射部から照射されたマイクロ波の強度を検知するマイクロ波検知部と、マイクロ波照射部を制御するマイクロ波制御部が備わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-042523号
【文献】特開2020-116097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の乾燥装置では、対象を乾燥させる際に乾燥工程の指定サイクル数設定等にてマイクロ波の照射時間を乾燥開始前に事前にプログラムしている。10%台若しくはそれ以下の低含水率まで原料を乾燥させる場合、投入する原料の含水率を予め測定し、原料の種類及びマイクロ波の加熱効率も考慮して、マイクロ波の照射時間を乾燥開始前に決める必要があった。加熱効率は外気温等によっても変化するため、原料を乾燥させる場合、含水率が10%台に至ると推測される少し手前の時間で装置を止め、乾燥体の状態を確認し、乾燥不足であれば、処理タンクへ再投入して再度乾燥させるという作業を繰り返す必要があるため、作業者に過度な負担を強いる。
特許文献2のマイクロ波制御方法では、乾燥対象物が有する水分を直接マイクロ波照射で加熱することにより乾燥させ、乾燥を制御するために反射率の値変化に応じてマイクロ波出力を制御する。乾燥対象物自身のマイクロ波照射による高温化を想定していないため、本発明に用いられる様々な種類の原料の乾燥に前記制御方法を使用すると、原料の温度が品質に影響するところまで上昇する恐れがある。また原料の含水率が高い場合、マイクロ波照射による加熱をしても原料の温度が一定に保たれやすいが、乾燥が進み、低含水率の状態となった原料にマイクロ波を照射し過ぎると、過剰照射により原料自身に焦げが生じてしまう。マイクロ波照射による原料の品質劣化を防止するために、反射率の値変化に応じた制御方法に加え、原料の乾燥状態をリアルタイムで把握するための新たな指標を確立する必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、焦げに至らないよう、効率よく低含水率まで原料を乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥装置及び減圧型マイクロ波乾燥方法を提供することを目的とする。減圧型マイクロ波乾燥装置には、乾燥工程において内容物が突沸により容器外部へ飛散するのを防ぐ構造を有する、内容物飛散防止容器が備えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、原料Mの乾燥方法であって、前記乾燥方法は、(A)乾燥工程における目標圧力Aおよび目標圧力Bを設定し、目標圧力Aの圧力aの条件で原料Mにマイクロ波を照射し、乾燥を開始する工程、(B)以下記載の何れかが、マイクロ波の照射により上昇し、予め定められた条件であるそれぞれのマイクロ波の反射率の上限値、蒸気温度の上限値、及び原料Mの上限温度の値を上回る場合、(1)マイクロ波の入射/反射エネルギーから算出されるマイクロ波反射率のみ、(2)蒸気温度のみ、(3)マイクロ波反射率と蒸気温度、(4)マイクロ波反射率と原料Mの温度、または(5)マイクロ波反射率と蒸気温度と原料Mの温度、マイクロ波の出力を低下、マイクロ波の停止、照射されるマイクロ波におけるパルス照射への切り替え、及び目標圧力Aを目標圧力Bへ変更し、圧力aから目標圧力Bの圧力bの条件に減圧することのうち少なくとも1つを行う工程、(C)(B)工程の後に、以下記載の何れかが、予め定められた条件であるそれぞれのマイクロ波の反射率の下限値、蒸気温度の下限値、及び原料Mの下限温度の値を下回る場合、(1)マイクロ波反射率のみ、(2)蒸気温度のみ、(3)マイクロ波反射率と蒸気温度、(4)マイクロ波反射率と原料Mの温度、または(5)マイクロ波反射率と蒸気温度と原料Mの温度、マイクロ波の出力を再び上昇、マイクロ波照射を再始動、照射されるマイクロ波における連続照射への切り替え、及び目標圧力Bを目標圧力Aに戻し、圧力bから圧力aの条件へ変更することのうち少なくとも1つを行う工程、を含み、(B)工程において、目標圧力Aを目標圧力Bへ変更し、圧力aから目標圧力Bの圧力bの条件に減圧する場合、及び(C)工程において、目標圧力Bを目標圧力Aに戻し、圧力bから圧力aの条件へ変更する場合の圧力の制御は、PID制御のみ、またはPID制御及びPD制御によって行われる、原料Mの乾燥方法に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、(D)(B)工程と(C)工程を繰り返す工程をさらに含む、請求項1に記載の乾燥方法に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記予め定められた条件は、乾燥工程開始からの経過時間、及び/または蒸留量を更に含む、請求項1に記載の乾燥方法に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記予め定められた条件は、乾燥工程開始からの経過時間、及び/または蒸留量を更に含む、請求項2に記載の乾燥方法に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、原料Mを入れる内容物飛散防止容器と、原料Mを入れた前記内容物飛散防止容器の投入口と排出口とを有する処理タンクと、前記処理タンク内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、原料Mを入れた前記内容物飛散防止容器を載せる前記処理タンク内のレールと、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、前記マイクロ波発生装置により発生したマイクロ波を前記処理タンク内に導く導波管と、前記導波管に取り付けられ前記処理タンク内に照射されるマイクロ波の入射及び反射エネルギーを検出するマイクロ波検出器と、マイクロ波による加熱により前記処理タンクから蒸発した原料Mの蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器と、蒸気の温度を検知する蒸気温度センサと、原料Mの温度を検知する原料温度センサと、前記冷却凝縮器により凝縮された蒸留水を回収する回収タンクと、前記処理タンク内を減圧するための真空ポンプと、前記処理タンク内を大気開放する電動バルブと、前記処理タンク内の絶対圧力を検知する圧力センサと、前記マイクロ波発生装置、前記マイクロ波検出器、前記蒸気温度センサ、前記原料温度センサ、前記真空ポンプ、前記電動バルブ、前記圧力センサと電気的に接続された信号変換器、インバータ、演算部を内蔵する制御盤と、から構成される、請求項1-4のいずれか1項に記載の乾燥方法を行う減圧型マイクロ波乾燥装置に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、圧力の制御は、真空ポンプの回転数をPID制御すること、及び電動バルブの開度をPD制御することでなる、請求項5に記載の減圧型マイクロ波乾燥装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、原料Mの乾燥方法であって、前記乾燥方法は、(A)乾燥工程における目標圧力Aおよび目標圧力Bを設定し、目標圧力Aの圧力aの条件で原料Mにマイクロ波を照射し、乾燥を開始する工程、(B)以下記載の何れかが、マイクロ波の照射により上昇し、予め定められた条件であるそれぞれのマイクロ波の反射率の上限値、蒸気温度の上限値、及び原料Mの上限温度の値を上回る場合、(1)マイクロ波の入射/反射エネルギーから算出されるマイクロ波反射率のみ、(2)蒸気温度のみ、(3)マイクロ波反射率と蒸気温度、(4)マイクロ波反射率と原料Mの温度、または(5)マイクロ波反射率と蒸気温度と原料Mの温度、マイクロ波の出力を低下、マイクロ波の停止、照射されるマイクロ波におけるパルス照射への切り替え、及び目標圧力Aを目標圧力Bへ変更し、圧力aから目標圧力Bの圧力bの条件に減圧することのうち少なくとも1つを行う工程、(C)(B)工程の後に、以下記載の何れかが、予め定められた条件であるそれぞれのマイクロ波の反射率の下限値、蒸気温度の下限値、及び原料Mの下限温度の値を下回る場合、(1)マイクロ波反射率のみ、(2)蒸気温度のみ、(3)マイクロ波反射率と蒸気温度、(4)マイクロ波反射率と原料Mの温度、または(5)マイクロ波反射率と蒸気温度と原料Mの温度、マイクロ波の出力を再び上昇、マイクロ波照射を再始動、照射されるマイクロ波における連続照射への切り替え、及び目標圧力Bを目標圧力Aに戻し、圧力bから圧力aの条件へ変更することのうち少なくとも1つを行う工程、を含み、(B)工程において、目標圧力Aを目標圧力Bへ変更し、圧力aから目標圧力Bの圧力bの条件に減圧する場合、及び(C)工程において、目標圧力Bを目標圧力Aに戻し、圧力bから圧力aの条件へ変更する場合の圧力の制御は、PID制御のみ、またはPID制御及びPD制御によって行われる、原料Mの乾燥方法であることを特徴とすることから、乾燥工程を繰り返すことなく焦げに至らないよう低含水率まで原料を乾燥させることができ、原料の乾燥における圧力制御を自動制御することが可能な減圧型マイクロ波乾燥方法を提供することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、(D)(B)工程と(C)工程を繰り返す工程をさらに含む、請求項1に記載の乾燥方法であることを特徴とすることから、加熱乾燥と真空冷却乾燥を繰り返して原料を、焦げ付かせることなく乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥方法を提供することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、前記予め定められた条件は、乾燥工程開始からの経過時間、及び/または蒸留量を更に含む、請求項1に記載の乾燥方法であることを特徴とすることから、より乾燥工程を繰り返すことなく焦げに至らないよう低含水率まで原料を乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥方法を提供することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、前記予め定められた条件は、乾燥工程開始からの経過時間、及び/または蒸留量を更に含む、請求項2に記載の乾燥方法であることを特徴とすることから、より乾燥工程を繰り返すことなく焦げに至らないよう低含水率まで原料を乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥方法を提供することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、原料Mを入れる内容物飛散防止容器と、原料Mを入れた前記内容物飛散防止容器の投入口と排出口とを有する処理タンクと、前記処理タンク内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部と、原料Mを入れた前記内容物飛散防止容器を載せる前記処理タンク内のレールと、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、前記マイクロ波発生装置により発生したマイクロ波を前記処理タンク内に導く導波管と、前記導波管に取り付けられ前記処理タンク内に照射されるマイクロ波の入射及び反射エネルギーを検出するマイクロ波検出器と、マイクロ波による加熱により前記処理タンクから蒸発した原料Mの蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器と、蒸気の温度を検知する蒸気温度センサと、原料Mの温度を検知する原料温度センサと、前記冷却凝縮器により凝縮された蒸留水を回収する回収タンクと、前記処理タンク内を減圧するための真空ポンプと、前記処理タンク内を大気開放する電動バルブと、前記処理タンク内の絶対圧力を検知する圧力センサと、前記マイクロ波発生装置、前記マイクロ波検出器、前記蒸気温度センサ、前記原料温度センサ、前記真空ポンプ、前記電動バルブ、前記圧力センサと電気的に接続された信号変換器、インバータ、演算部を内蔵する制御盤と、から構成される、請求項1-4のいずれか1項に記載の乾燥方法を行う減圧型マイクロ波乾燥装置であることを特徴とすることから、焦げに至らないよう低含水率まで原料を乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥装置を提供することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、圧力の制御は、真空ポンプの回転数をPID制御すること、及び電動バルブの開度をPD制御することでなる、請求項5に記載の減圧型マイクロ波乾燥装置であることを特徴とすることから、原料の乾燥における圧力制御を自動制御することが可能な減圧型マイクロ波乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置の全体構成図である。
【
図2】本発明の実施例に係る減圧型マイクロ波乾燥装置の処理タンク内の概要図である。
【
図3】本発明に係る内容物飛散防止容器の一実施例である、内容物収容容器部に飛散防止蓋部をセットした状態を示す側面断面図である。
【
図4】本発明に係る内容物飛散防止容器の一実施例である、多段式の内容物飛散防止容器を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置及び乾燥方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらの記載によって制限されるべきものではない。
【0022】
図1は、本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置の全体構成図である。
図1を参照すると、減圧型マイクロ波乾燥装置(1)は、原料(M)を入れた内容物飛散防止容器(2)の投入口(17)と排出口(18)とを有する処理タンク(3)と、処理タンク(3)内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部(4)と、原料(M)を入れた内容物飛散防止容器(2)を載せる処理タンク(3)内のレール(5)と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置(6)(電源部含む)と、マイクロ波発生装置(6)により発生したマイクロ波を処理タンク(3)内に導く導波管(7)と、導波管(7)に取り付けられ処理タンク(3)内に照射されるマイクロ波の入射及び反射エネルギーを検出するマイクロ波検出器(8)と、マイクロ波による加熱により処理タンク(3)から蒸発した原料(M)の蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器(9)と、蒸気の温度を検知する蒸気温度センサ(10)と、原料の温度を検知する原料温度センサ(11)と、冷却凝縮器(9)により凝縮された蒸留水を回収する回収タンク(12)と、処理タンク(3)内を減圧するための真空ポンプ(13)と、処理タンク(3)内を大気開放する電動バルブ(14)と、処理タンク(3)内の絶対圧力を検知する圧力センサ(15)と、マイクロ波発生装置(6)、マイクロ波検出器(8)、蒸気温度センサ(10)、原料温度センサ(11)、真空ポンプ(13)、電動バルブ(14)、圧力センサ(15)と電気的に接続された信号変換器、インバータ、演算部を内蔵する制御盤(16)と、から構成される。
【0023】
図1において、マイクロ波発生装置(6)、マイクロ波検出器(8)、蒸気温度センサ(10)、原料温度センサ(11)を制御盤(16)と接続することにより、反射率、蒸気温度及び原料の温度から原料(M)の乾燥状態を把握し、これらのうちのいずれか、あるいは2つ以上の上昇によりマイクロ波の出力を下げる、パルス照射に切り替える、及び/または装置を停止することで、原料(M)の温度上昇を抑えながら焦げ付かせることなく自動で乾燥させることができる。更に反射率蒸気温度及び/または原料の温度が上昇していき、いずれかが一定値以上となった時に、マイクロ波発生装置(6)の出力を停止して原料(M)が焦げに至る前に装置を自動停止することができる。
【0024】
図1において、反射率、蒸気温度及び/または原料(M)が温度上昇し、いずれかの値が上限値を超えた場合、プラズマ防止のためにマイクロ波の出力を抑制あるいは停止し、制御プログラム上の処理タンク(3)内の目標圧力Aの圧力aを下げ、目標圧力Bである圧力bとし、圧力偏差によるPID制御にて真空ポンプ(13)の回転数を制御し、PD制御にて電動バルブ(14)を閉じ、処理タンク(3)内をより高い真空状態として水の沸点を下げ、気化熱により原料(M)を冷却しながら乾燥させる真空冷却乾燥状態とする。反射率、蒸気温度、及び/または原料(M)の温度が下限値を下回れば、予め設定した制御プログラム上の処理タンク(3)内の目標圧力Bである圧力bを所定の目標圧力Aに戻し、PID制御にて真空ポンプ(13)の回転数を制御しながら、大気開放用の電動バルブ(14)を一定時間開とし、所定の圧力状態aに到達させ、再度マイクロ波を発振し、加熱乾燥を開始する。このように加熱乾燥、真空冷却乾燥、加熱乾燥・・・を繰り返すことができ、これにより原料(M)の温度上昇を抑えながら焦げ付かせることなく自動で乾燥させることができる。装置停止時は加熱乾燥後に停止してもよいし、真空冷却乾燥後に停止してもよい。
【0025】
乾燥工程を開始する前に予め設定する条件として、目標圧力A、目標圧力B、反射率の下限値、反射率の上限値、蒸気温度の下限値、蒸気温度の上限値、原料(M)の下限温度、原料(M)の上限温度があり、乾燥工程開始前に制御盤(16)を通して設定することができ、上限値を超えた場合に目標圧力Bへの切り替えや、マイクロ波照射の出力を抑制、パルス照射の切り替え、あるいはマイクロ波照射の停止を自動で行うことができる。予め設定する条件として、パラメータ(反射率、蒸気温度、原料(M)の温度)の下限値を設定すると、下限値を下回った場合に目標圧力Aへの切り替えや、マイクロ波照射の出力を増加、連続照射への切り替え、あるいはマイクロ波照射の発振を自動で行うことができる。
上限値と下限値は、それぞれ2つ以上任意に設定することができる。例として上限値を2つ、下限値を1つ設定した場合(上限値はそれぞれ上限値1、上限値2とし、上限値1<上限値2である)、上限値1を超えた場合にマイクロ波をパルス照射に切り替え、さらに上限値2を超えた場合にマイクロ波照射を停止する、あるいはマイクロ波照射を停止して目標圧力Bへ切り替える、下限値を下回った場合に目標圧力をAに切り替えてマイクロ波を再び発振する、等の設定が可能である。
加熱乾燥及び真空冷却乾燥の切り替えは、前述したような上限値を超える、あるいは下限値を下回る場合に自動切り替えされることに加え、加熱乾燥の維持時間及び/または真空冷却乾燥の維持時間に応じて自動切り替えされるよう設定することもできる。
加熱乾燥及び真空冷却乾燥におけるマイクロ波照射強度、照射時間、パルス波切り替えのタイミング、マイクロ波照射の停止等を、乾燥工程開始から経過時間に応じて、あるいは蒸留量に応じて予め設定することもできる。
【0026】
本発明において、目標圧力Aは加熱乾燥時の目標圧力であり、乾燥工程開始前に予め設定される。目標圧力Aに対する実測値の圧力aは目標圧力Aの±0.2kPaの範囲内であることが好ましい。目標圧力Bは真空冷却乾燥時の目標圧力であり、乾燥工程開始前に予め設定される。目標圧力Bに対する実測値の圧力bは目標圧力Bの±0.2kPaの範囲内であることが好ましい。
圧力の値は、その態様として目標圧力A>目標圧力B、及び圧力a>圧力bである。
目標圧力A及び目標圧力Bの値として、プラズマによる原料の焦げ付きや装置の性能及び故障に至らない範囲であれば特に制限はないが、例えば目標圧力Aの範囲は約6.7kPa~約70.1kPaが好ましい。目標圧力Bの範囲は~約0.66kPaであることが好ましい。
【0027】
本装置に係る、マイクロ波照射される原料(M)を入れる内容物飛散防止容器(2)は基本的に、内容物収容容器部(2a)と、内容物収容容器部(2a)に取り付けられる飛散防止蓋部(2b)からなり、飛散防止蓋部(2b)は、清掃や蓋に付いた乾燥した原料(M)をヘラ等で回収しやすいよう2段の取り外し可能な構造とし、第1飛散防止蓋(2ba)は内容物収容容器部(2a)に被せ、第2飛散防止蓋(2bb)は第1飛散防止蓋(2ba)に被せる。第1飛散防止蓋(2ba)は蓋面が下側に向けて傾いた構造を有し、第2飛散防止蓋(2bb)は飛散防止蓋部(2b)の最上位置に設置され、蒸気逃げ口(21)が設けられる。
【0028】
本発明における原料(M)としては、乾燥されるものであれば特に限定はない。例えば、柚子、文旦、すだち、かぼす、柚香、グレープフルーツ、いよかん、温州、はっさく、夏みかん、甘夏、日向夏、じゃばら、仏手柑、直七、レモン、シークヮーサー、ベルガモット等の柑橘類の果皮、ぶどう、いちご、りんご、マンゴー、パッションフルーツ等の果物、カカオ豆、茶葉(紅茶、緑茶、ほうじ茶)、紫蘇、バニラ豆、長葱、アロエ、生姜、梅、ごぼう、鰹節、煮干、昆布、はちみつ、シナモン、酒粕等の食品素材、杉、ヒノキ等の木材、木の実、珈琲豆、薬草、菌類、海藻、藻類等の植物原料(あるいはバイオマス)が挙げられる。工業分野におけるポリマー乾燥、PET樹脂に含まれる特定成分除去などの目的のために、ポリマー、PET樹脂等を原料(M)として選択し、本発明を使用することもできる。産業廃棄物、家畜の排せつ物、食品廃棄物及び下水汚泥等も適用可能である。
【0029】
処理タンク(3)は、その内部で原料(M)を処理するためのものであって、形状は直方体、円筒形等が挙げられるが、特に限定されない。
処理タンク(3)は、長さ方向の一端(上流端)に原料(M)の投入口(17)を有し、他端(下流端)に原料(M)の排出口(18)を有している。
処理タンク(3)の内部には、原料(M)が収納された内容物飛散防止容器(2)を投入口(17)側から排出口(18)側へ搬送する搬送手段が設けられていてもよい。
搬送手段を設ける場合、上流である投入口(17)側に、2つのシャッターで挟まれた投入側予備室を備えていてもよい。このとき原料(M)が収容された内容物飛散防止容器(2)を投入する際に、2つあるシャッターのうち、上流側の第一シャッターを開放して投入側予備室に原料(M)が収容された内容物飛散防止容器(2)を供給し、第一シャッターを閉じて投入側予備室内を減圧した後、もう一方のシャッターである第二シャッターを開放して投入側予備室内の原料(M)が収容された内容物飛散防止容器(2)を処理タンク(3)内に投入することにより、処理タンク(3)内へ大気が流入するのを防ぐことができる。
搬送手段を設ける場合、下流である排出口(18)側に、2つのシャッターで挟まれた排出側予備室を備えていてもよい。このとき原料(M)が収容された内容物飛散防止容器(2)を排出する際に、2つあるシャッターのうち、上流側の第三シャッターを開放して排出側予備室に原料(M)が収容された内容物飛散防止容器(2)を排出し、第三シャッターを閉じて排出側予備室内を常圧とした後、もう一方のシャッターである第四シャッターを開放して排出側予備室の原料(M)が収容された内容物飛散防止容器(2)を外部に排出することにより、処理タンク(3)内へ大気が流入するのを防ぐことができる。
この投入側予備室及び排出側予備室を備えることで、処理タンク(3)内を一定の減圧下に保持しつつ原料(M)を連続的に乾燥させることができる。
この投入側予備室及び排出側予備室にも、圧力を検出するための圧力センサ(15)を有していてもよい。
処理タンク(3)、投入側予備室、及び排出側予備室の間にそれぞれ配管を設け、それら配管を真空ポンプ(13)につなげることで、1つの真空ポンプ(13)で処理タンク(3)、投入側予備室、及び排出側予備室内を減圧することができる。
第一シャッター乃至第四シャッターを、制御盤(16)を介して自動制御することができ、圧力制御するためのプログラムとして組み込むことができる。
【0030】
搬送手段としては、原料(M)が収納された内容物飛散防止容器(2)を、投入口(17)側から排出口(18)側へ搬送することができるものであればいかなるものでも用いることができる。
たとえば、搬送手段として、具体的には、原料(M)が収納された内容物飛散防止容器(2)を載せて、または吊り下げて搬送できるコンベヤ等が挙げられる。
搬送手段として用いるコンベアは、ローラーコンベヤまたはコンベヤレールであることが望ましい。
搬送手段として、ローラーコンベヤまたはコンベヤレールを用いることにより、原料(M)を収容した内容物飛散防止容器(2)を大量且つ安定に搬送することができる。
搬送手段として、コンベヤレールを用いることにより、レール(5)の下方からマイクロ波を照射して、内容物飛散防止容器(2)の底側からも効果的にマイクロ波を照射することができる。同様に、装置内部の側方、上方にマイクロ波照射部を設置することで、マイクロ波を側方、上方からも内容物飛散防止容器(2)に効果的に照射することができる。
搬送手段は、自走式でなくても良い。例えば、レール(5)やローラを設置して、原料(M)の収容された内容物飛散防止容器(2)を、押出シリンダー等の押出手段で押しながら搬送しても良い。
【0031】
処理タンク(3)の上部、側部および/または底部には、処理タンク(3)内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部(4)が設けられている。
マイクロ波照射部(4)の構成は特に限定されず、処理タンク(3)内にマイクロ波を照射することができるものであればいかなるものでも用いることができる。
上記の通り、マイクロ波照射部(4)の構成は限定されないが、たとえば、マイクロ波照射部(4)は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置(6)と、マイクロ波発生装置(6)により発生したマイクロ波を処理タンク(3)内に導く導波管(7)とを備えている。
【0032】
マイクロ波発生装置(6)の数は、処理タンク(3)内の原料(M)に対して均等にマイクロ波を照射できるよう、それぞれ複数台設置するのが好ましい。
【0033】
マイクロ波発生装置(6)としてはマグネトロンが好適に使用されるが、原料(M)の種類に応じてジャイロトロン、クライストロン、進行波管等の電子管を利用した発振機、水晶振動子等の固有振動を増幅するソリッドステート式発振機等のその他の公知のマイクロ波発生装置(6)を使用することも可能である。
【0034】
マイクロ波発生装置(6)は冷却ファンを備えており、冷却ファンからの温風を排気ダクトによって集めることができ、その温風によって排出口(18)から排出された原料(M)をさらに乾燥させることができるように構成されていても良い。
排気ダクトの材質としてはいずれのものであっても良く、木材、金属、合成樹脂又はそれらの組み合わせを使用しても良いが、耐熱性を有する材質であることが望ましい。
【0035】
処理タンク(3)の上部及び/または側面部には、マイクロ波照射により処理タンク(3)内にて加熱されて蒸発した原料(M)中の成分を含む蒸気(原料成分含有蒸気)を処理タンク(3)外へと取り出して、冷却凝縮器(9)へと導くための通路の一端部が接続されている。蒸気(原料成分含有蒸気)に含まれる原料由来の成分として、精油、低分子化合物、柑橘由来の香料成分等が挙げられる。
通路の他端部は、冷却凝縮器(9)に接続されている。
【0036】
冷却凝縮器(9)内を流れる冷媒は、一旦外部へと取り出されて冷却装置(19)により冷却されて冷媒タンク(21)に貯蔵の後、再び冷却凝縮器(9)に戻される。
通路を通って処理タンク(3)の上方部分から冷却凝縮器(9)内に供給された蒸気(原料成分含有蒸気)は、冷却装置(19)から供給される冷媒により冷却されて液化し、蒸留水(原料成分含有蒸留水)とし、冷却凝縮器(9)の底部に連結された回収タンク(12)内に回収される。
【0037】
冷却凝縮器(9)の冷媒として、水または不凍液を使用することができ、不凍液としてアルコールを主成分とするものを使用しても、エチレングリコール等を主成分とするものを使用しても良い。
特に限定されないが、安価であることから水が好適に冷媒として使用される。
【0038】
回収タンク(12)内には、加熱によって蒸気となり、冷却凝縮器(9)を通過することで液化した、原料成分等を含んだ水が溜まる。
回収タンク(12)の上方部分は、配管を介して減圧手段である真空ポンプ(13)に接続されている。
真空ポンプ(13)を駆動すると、配管、冷却凝縮器(9)および通路を介して処理タンク(3)内が減圧される。
処理タンク(3)内を減圧することで沸点が下がることを利用して、低温で原料(M)を乾燥させることができる。
【0039】
本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置(1)は、圧力を検出するため、処理タンク(3)内に圧力センサ(15)を備える。
圧力センサ(15)は、特に限定されず、たとえば、ダイヤフラム式圧力センサを用いることができる。
また、本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置(1)は、この圧力センサ(15)の検出結果に基づいて、真空ポンプ(13)および電動バルブ(14)である大気開放弁の開閉により処理タンク(3)内の圧力を自動制御する制御手段を有する。
制御手段は、CPUおよびメモリ(RAM、ROM)等を備えたコンピュータからなる。
メモリには真空ポンプ(13)の回転数及び電動バルブ(14)である大気開放弁の開閉により処理タンク(3)内の圧力を自動制御するためのプログラムが記憶されており、制御手段は当該プログラムを実行することにより上記自動制御を実現する。真空ポンプ(13)の回転数をPID制御、電動バルブ(14)の開度をPD制御することにより、乾燥における圧力の自動制御が可能となる。圧力の自動制御は、真空ポンプ(13)の回転数のみ、あるいは真空ポンプ(13)の回転数と電動バルブ(14)の開度を併せて自動制御することで達成されることが多いが、原料(M)の種類に応じて、任意に真空ポンプ(13)及び電動バルブ(14)の制御方法を設定できる。
【0040】
制御手段のメモリには、搬送手段及び/またはマイクロ波発生装置(6)の照射を自動制御するためのプログラムが記憶されており、制御手段は、蒸気温度センサ(10)や原料温度センサ(11)の検出結果に基づいて、当該プログラムを実行することにより上記自動制御を実現する。
【0041】
処理タンク(3)内の温度が所定の温度を超える場合、制御手段は、原料(M)の焦げ付きを防ぐために搬送手段の搬送速度を上げるようプログラムを実行することもできる。
【0042】
処理タンク(3)は、処理タンク(3)内の温度を検出するための蒸気温度センサ(10)、あるいは原料(M)の温度を測定する原料温度センサ(11)、またはその両方を有する。
蒸気温度センサ(10)や原料(M)の温度を測定する原料温度センサ(11)の態様は特に限定されないが、安価で取り付けが容易という理由から熱電対や赤外線放射温度計を使用するのが好ましい。他にも、測温抵抗体、光ファイバ温度計等が挙げられる。
蒸気温度センサ(10)及び/または原料(M)の温度を測定する原料温度センサ(11)を用いて処理タンク(3)内の蒸気温度、及び/または原料(M)の温度が予め設定した値を超えないよう自動制御することにより、温度上昇による原料(M)の焦げ付きを防ぎながら原料(M)を効率よく乾燥させることができる。
原料温度センサ(11)は、処理タンク(3)内で、乾燥される原料(M)が収納された内容物飛散防止容器(2)のうちの1つ、あるいは複数、あるいは全数に取り付けられる。
【0043】
制御手段のメモリには、搬送手段及び/またはマイクロ波発生装置(6)の照射を自動制御するためのプログラムが記憶されており、制御手段は、マイクロ波検出器(8)の検出結果(すなわちマイクロ波の入射及び反射エネルギーから算出される反射率)に基づいて、当該プログラムを実行することにより上記自動制御を実現することもできる。
【0044】
処理タンク(3)内の反射率が予め設定した反射率を超える場合、制御手段は、原料(M)の焦げ付きを防ぐために搬送手段の搬送速度を上げるようにプログラムを実行することもできる。
【0045】
処理タンク(3)は、導波管(7)に取り付けられ処理タンク(3)内に照射されるマイクロ波の入射及び反射エネルギー、及び反射率を検出するためのマイクロ波検出器(8)を有する。
マイクロ波検出器(8)を用いて処理タンク(3)内の原料(M)に照射されるマイクロ波の入射及び反射エネルギーから算出される反射率が、予め設定した値を超えないよう自動制御することにより、温度上昇による原料(M)の焦げ付きを防ぎながら原料(M)を効率よく乾燥させることができる。
【0046】
処理タンク(3)には、内部を視認するためののぞき窓が設けられていても良い。
このようにのぞき窓を備えることで、処理タンク(3)内の原料(M)の状態を確認することができる。
【0047】
制御手段であるコンピュータの態様として、制御盤、リモコン等が挙げられるが特に限定されない。
【0048】
本発明の制御盤(16)は、マイクロ波発生装置(6)、マイクロ波検出器(8)、蒸気温度センサ(10)、原料温度センサ(11)、真空ポンプ(13)、電動バルブ(14)、圧力センサ(15)と電気的に接続された信号変換器、インバータ、演算部を内蔵する。作業者が操作しやすいように、制御盤(16)には、反射率、蒸気温度、原料温度、処理タンク(3)内の圧力がリアルタイムで表示され、作業者はタッチパネルを介して操作・値の確認・値の設定をすることができる。制御盤(16)には安全性を考慮し非常停止ボタンが設けられる。制御盤(16)には真空ポンプ(13)の回転数を制御するための真空ポンプ用インバータが設けられる。
【0049】
本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置(1)において、原料(M)は、原料(M)を搬送するための内容物飛散防止容器(2)に収容された状態で、搬送手段上を搬送される、もしくは搬送されず、内容物飛散防止容器(2)に収容された状態で処理タンク(3)内に乾燥開始から乾燥終了まで静止している。
【0050】
原料(M)は、原型を崩さずに乾燥状態とすることができるため、減圧型マイクロ波乾燥装置(1)はドライフルーツ等の食品乾燥装置として使用することもできる。
【0051】
制御盤(16)は、処理タンク(3)内の圧力と温度を制御するため、真空ポンプ(13)をPID(比例・積分・微分)制御によって回転数制御し、電動バルブ(14)をPD(比例・微分)制御によって開閉制御する機能を有する。
<偏差>
PID制御はフィードバック制御であり、実測値をフィードバックし上限値あるいは下限値と照らし合わせてその差異を算出してアクションをおこす。
そこで上限値あるいは下限値と実測値の引き算が行われ、引き算の結果を偏差としてP(比例)制御、I(積分)制御、D(微分)制御に用いる。
<P制御>
P制御は、目標値との差に比例して出力値を制御する。例えばモーターの位置情報などを入力値とし、目標値との差分から出力値を算出する。
P制御の比例ゲインであるKpが大きいほど出力値が目標値に近づく時間が早くなる。
しかしながら、P制御には、目標値に近づくと安定し、目標値と出力値に偏差(ズレ)が生じてしまうという問題点がある。
<PI制御>
I制御では、偏差を時間で積分することで、P制御の偏差を埋める。
P制御で生じた目標値との偏差を時間で積分して得られた操作量を、P制御で得られた操作量に加算することによって偏差を解消することができる。
P制御にI制御が加えられることからPI制御といわれる。
しかしながら、実際にはPI制御のみだとオーバーシュートが発生することがある。目標値に高速に近づけるために、Pを大きくしすぎると、このオーバーシュートが発生しやすくなる。
<PID制御>
PI制御において発生するオーバーシュートを抑えるために、負成分を追加する。この負成分がD制御である。
PI制御では、時間と共に偏差は減るので、この偏差を微分すると出力は負の値になる。つまり、急速に偏差が減るほど負成分は強く働く。P、I、Dの3つの制御の組み合わせにより、安定して素早く目標値に達するシステムを構築できる。
本実施例では、圧力偏差によって真空ポンプ(13)の回転数をPID制御、電動バルブ(14)の開度をPD制御している。
【0052】
真空ポンプ(13)の回転数におけるPID制御は以下に示す計算式によって行われ、電動バルブ(14)の開度におけるPD制御はこの計算式から積分項を無くした式を用いる。
<計算式>
操作量=Kp×偏差+Ki×偏差の累積値+Kd×前回偏差との差
比例項:Kp×偏差
積分項:Ki×偏差の累積値
微分項:Kd×前回偏差との差
K(ゲイン)については、固定値を用いても、偏差に応じたアクティブゲインとしても良い。
【0053】
従来の乾燥装置では、原料(M)を低含水率まで乾燥させる場合、乾燥工程を繰り返す必要があり、原料(M)の温度が品質に影響する温度まで上昇し、焦げに至る場合があった。本発明により、マイクロ波の反射率、原料(M)の温度及び蒸気温度を監視することで、原料(M)の乾燥状態を把握し、適切な出力やパルスでマイクロ波を照射することにより、原料(M)の過度の温度上昇や焦げを防ぎ、乾燥工程を繰り返す必要がなくなり、原料(M)の乾燥に関する作業効率を上げることができる。また、処理タンク(3)内の圧力やマイクロ波の発振/停止を適切に制御し、加熱乾燥と真空冷却乾燥を適宜切り替えることによって、同様の効果を得ることもできる。原料(M)を内容物飛散防止容器(2)に入れて加熱乾燥または真空冷却乾燥させることで、内容物飛散防止容器(2)の外へ内容物(M)が飛散することによる収率の低下、突沸した内容物(M)が第1飛散防止蓋(2ba)及び第2飛散防止蓋(2bb)へ付着した場合に、蓋を取り外しできることから、容易にヘラ等で付着した内容物(M)を回収でき、かつ清掃することもできることによる収率低下の防止、及び飛散した内容物(M)を清掃することによる作業者への過度な負担の防止を図ることができ、実質的に乾燥に関する作業効率を上げることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、係る実施例によって限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
乾燥開始前の準備として、大麦若葉粉末(株式会社プリンストレーディング社製:JANコード456036108685)に水を入れてよく撹拌し、含水率80%である3.0Kgの原料(M)を6つ用意した。このときの大麦若葉粉末の重量%は3.3wt%である。原料(M)のサンプル名をサンプル1~サンプル6とした。3.0Kgの原料(M)6つは、それぞれ内容物飛散防止容器(2)に入れられた。
【0056】
乾燥開始前の準備として、乾燥工程における条件を設定した。モードを自動乾燥モードに設定し、蒸気温度を40℃、目標圧力Aを7.375kPa、目標圧力Bを約0.66kPaとした。マイクロ波の出力設定を3kWとした。パルス波の切り替え条件を蒸気温度40℃以上、あるいはマイクロ波の反射率が5.0%以上となった場合とした。パルス波は、5秒間照射の後10秒間出力停止の設定とし、蒸気温度40℃以上となった場合はパルス波のディレイタイムを720秒、マイクロ波の反射率が5.0%以上となった場合はディレイタイムを60秒と設定した。
【0057】
マイクロ波照射の自動停止条件を蒸気温度43℃以上、あるいはマイクロ波の反射率が15.0%以上となった場合と設定した。パルス波は、5秒間照射の後10秒間出力停止の設定とし、蒸気温度43℃以上となった場合は自動停止条件のディレイタイムを0秒、マイクロ波の反射率が15.0%以上となった場合はディレイタイムを120秒と設定した。
【0058】
図2に示す如く各サンプルを処理タンク(3)内に搬入した後、乾燥開始した。得られた結果を以下の表1に示す。
【0059】
【0060】
表1に示すように各サンプルにおいて、乾燥終了後の含水率が9.9~16.3%となり、平均12.8%となった。乾燥終了後の各サンプルには焦げつきやマイクロ波過剰照射による変色も見られなかった。乾燥開始から乾燥終了を通して、原料(M)を加熱乾燥及び真空冷却乾燥することによる突沸が生じたが、内容物飛散防止容器(2)の外部へ内容物(M)が飛散することは無かった。乾燥終了後、突沸により第1飛散防止蓋(2ba)及び第2飛散防止蓋(2bb)に付着した内容物(M)をヘラ等で回収することができたため、収率の低下を防止でき、内容物飛散防止容器(2)を容易に清掃できた。
【0061】
(実施例2)
図3は、本発明に係る内容物飛散防止容器(2)を示す側面断面図である。
内容物飛散防止容器(2)は、飛散防止蓋部(2b)と、内容物(M)が収容される内容物収容容器部(2a)から構成される。飛散防止蓋部(2b)は、蓋面が下側に向けて傾き、蓋面の先に蒸気逃げ口(21)が設けられた第1飛散防止蓋(2ba)と、飛散防止蓋部(2b)の最上位置に設置され、蒸気逃げ口(21)が設けられた第2飛散防止蓋(2bb)を形成する。
第1飛散防止蓋(2ba)は、内容物収容容器部(2a)、第1飛散防止蓋(2ba)および第2飛散防止蓋(2bb)に係合可能な構造を有している。この係合可能な構造により、内容物飛散防止容器(2)の清掃が容易となり、蓋に付いた乾燥した原料(M)をヘラ等で回収しやすい。
内容物収容容器部(2a)に取り付けられた第1飛散防止蓋(2ba)の蒸気逃げ口(21)の向きと互い違いとなるように、内容物収容容器部(2a)に取り付けられた第1飛散防止蓋(2ba)に、第2飛散防止蓋(2bb)が積み重なって取付けられることで、内容物飛散防止容器(2)が形成される。
内容物収容容器部(2a)に収容された内容物(M)が、例えばマイクロ波照射部(4)によるマイクロ波照射(点線)により加熱されて蒸発する際、突沸し飛散した内容物(M)(
図3の矢印)が第1飛散防止蓋(2ba)の下側に当たることで、内容物飛散防止容器(2)の外への飛散を防止することができ、蒸気(
図3の破線矢印)は蒸気逃げ口(21)を通り内容物飛散防止容器(2)の外へ抜けることができる。第1飛散防止蓋(2ba)の下側に向けて傾斜した構造(
図3の波線)により、飛散した内容物(M)を効率的に内容物収容容器部(2a)に戻すことができる。
内容物飛散防止容器(2)に原料(M)を収容した状態で処理するため、異なる原料(M)を隣り合う内容物飛散防止容器(2)に入れて混ざり合うことなく同時に処理することが可能である。
内容物飛散防止容器(2)に対するマイクロ波照射部(4)の設置位置は特に限定されるものではない。
【0062】
内容物飛散防止容器(2)、及び内容物飛散防止容器(2)に係る内容物収容容器部(2a)、飛散防止蓋部(2b)の形状や材質は特に限定されず、内容物(M)をその内部に収容することができるものであって、特にマイクロ波の照射に耐性のあるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂、とりわけ電子レンジで使われるタッパ等のポリプロピレン(PP樹脂)は、マイクロ波を透過するため発熱せず、かつ安価で割れにくいため、内容物飛散防止容器(2)の材質として好ましい。
内容物飛散防止容器(2)の形状や材質は、内容物(M)の種類や処理後に得たい内容物(M)の状態に合わせて、適宜選択することができる。特に、酸やアルカリに強いポリプロピレン(PP樹脂)であれば、例えば、柚子の果皮等の低pHの内容物である場合も、内容物収容容器部(2a)や飛散防止蓋部(2b)が変性することなく、長期間安定して使用可能であるため、好ましい。
【0063】
第2飛散防止蓋(2bb)の上部にアルミ板を張り付けてもよい。
図示はしていないが、アルミ板は、第1飛散防止蓋(2ba)の上部にも当然に張り付け可能である。
アルミ板を飛散防止蓋部(2b)の上部に張り付けることで、例えば、マイクロ波照射による、マイクロ波が効率的に拡散される。アルミ板の変わりにステンレス板等を使用しても良いがアルミ板と比較し、マイクロ波による発熱が生じてしまう虞がある。
【0064】
(実施例3)
図4は、本発明に係る内容物飛散防止容器(2)の一実施例である、多段式の内容物飛散防止容器である。
内容物飛散防止容器(2)に備えられた第2飛散防止蓋(2bb)上に無底筒状体(C)を着脱自在に取り付け、この無底筒状体(C)を介して2段目の内容物飛散防止容器(2)を無底筒状体(C)の上縁部(C
e1)に係合させて多段式の内容物飛散防止容器を構成することができる。なお突沸し飛散した内容物(M)を矢印で示し、蒸気の流れは破線矢印で示している。
無底筒状体(C)の下部は第2飛散防止蓋(2bb)に一部閉鎖されていて、第2飛散防止蓋(2bb)の蓋面の先に設けられた蒸気逃げ口(21)を介して、無底筒状体(C)の内部空間と連通している。無底筒状体(C)の側面には、前記蒸気逃げ口(21)近傍に設けられた蒸気逃げ口(C
op1)と、蒸気逃げ口(C
op1)に対向して蒸気逃げ口(C
op2)とを備えている。
縦に重なり合った内容物飛散防止容器(2)をマイクロ波照射(点線で示す)することで、複数の内容物飛散防止容器(2)を横に並べる場合と比較して、マイクロ波照射部(4)のコンパクト化を図ることが可能となる。
多段式は2段に限られず、3段以上の多段式についても同様の構成で、無底筒状体(C)を介在させて内容物飛散防止容器(2)を積み上げることで実現可能である。
第2飛散防止蓋(2bb)は無底筒状体(C)を介在させなくても、第1飛散防止蓋(2ba)だけでなく内容物飛散防止容器(2)や第2飛散防止蓋(2bb)にも互いに、あるいはそれぞれ組み合わせて自在に係合可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る減圧型マイクロ波乾燥装置(1)及び減圧型マイクロ波乾燥方法は、様々な種類の原料(M)を、焦げに至らない、かつ効率よく低含水率まで乾燥させることができる装置及び方法として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 減圧型マイクロ波乾燥装置
2 内容物飛散防止容器
2a 内容物収容容器部
2b 飛散防止蓋部
2ba 第1飛散防止蓋
2bb 第2飛散防止蓋
3 処理タンク
4 マイクロ波照射部
5 レール
6 マイクロ波発生装置
7 導波管
8 マイクロ波検出器
9 冷却凝縮器
10 蒸気温度センサ
11 原料温度センサ
12 回収タンク
13 真空ポンプ
14 電動バルブ
15 圧力センサ
16 制御盤
17 投入口
18 排出口
19 冷却装置
20 冷媒タンク
21 蒸気逃げ口
C 無底筒状体
Ce1 上縁部
Cop1、Cop2 蒸気逃げ口
M 原料(内容物)
【要約】
【課題】焦げに至らないよう、効率よく低含水率まで原料を乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥装置及び減圧型マイクロ波乾燥方法を提供する。
【解決手段】マイクロ波反射率、蒸気温度、及び/または原料温度がマイクロ波照射により上昇し、一定値を超えた場合に自動でマイクロ波の出力を下げる、パルス照射に切り替える、装置を停止する及び/または減圧することで、原料を焦げに至らないよう、効率よく低含水率まで乾燥させる減圧型マイクロ波乾燥装置及び減圧型マイクロ波乾燥方法を提供できる。
【選択図】
図1