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特許7458686抗ネクチン-4抗体、それを含むコンジュゲート、及びその適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】抗ネクチン-4抗体、それを含むコンジュゲート、及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240325BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240325BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240325BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240325BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240325BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240325BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240325BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240325BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240325BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240325BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240325BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240325BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C07K14/725
C07K14/705
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K39/395 Y
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023516174
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 CN2021116651
(87)【国際公開番号】W WO2022057651
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202010972365.6
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011624826.7
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517273308
【氏名又は名称】シチュアン ケルン-バイオテック バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】ワン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, デンニェン
(72)【発明者】
【氏名】リー, フェン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, リャン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ, トントン
(72)【発明者】
【氏名】ガー, ジュンユー
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジンイー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, ラ
(72)【発明者】
【氏名】レン, チー
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215728(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/114666(WO,A1)
【文献】特表2020-522261(JP,A)
【文献】特表2020-510432(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110903395(CN,A)
【文献】特表2019-502650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
C07K 19/00
C07K 14/00
A61K 39/395
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の抗体-薬コンジュゲート
【化1】
(式中、Aは、配列番号57に記載の重鎖可変領域(VH)配列、および、配列番号58に記載の軽鎖可変領域(VL)配列を含む抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体であり、
そしてここで、抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体は、1以上のチオール基を介してコンジュゲートの残基と結合されており、そして、γは、1~10の整数である)。
【請求項2】
抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体が、配列番号61に記載の重鎖定常領域(CH)配列、および、配列番号62に記載の軽鎖定常領域(CL)配列を含む、請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項3】
抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の各軽鎖が0~1つの次式のもので複合体化され、そして、抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の各重鎖が0~4つの次式のもので複合体化される、
【化2】
(式中、*は、抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体のチオール基との接合点である)
請求項1からのいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項4】
1以上の請求項1~のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、及び、1以上の薬学的に許容される賦形剤、を含む医薬組成物。
【請求項5】
薬物と抗ネクチン-4抗体との薬物-抗体比(DAR)が、7.0、7.03、7.1、7.12、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬物と抗ネクチン-4抗体との薬物-抗体比(DAR)が、7.71である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、がんを治療するための医薬組成物。
【請求項8】
がんが、胃がん、肝臓がん、肝臓細胞癌、膀胱がん、尿路上皮がん、尿道がん、腎盂がん、尿管がん、肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、乳管がん、トリプルネガティブ乳がん、膵がん、卵巣がん、頭頸部がん、結腸がん、直腸がん及び食道がんからなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
がんが、胃がんである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
がんが、膀胱がんである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
がんが、非小細胞肺がんである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
がんが、乳がんである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がんが、乳管がんである、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月16日に出願された、「Anti-Nectin-4 antibody,conjugate including same,and application thereof」という表題の中国特許出願第202010972365.6号の優先権及び2020年12月31日に出願された「Anti-Nectin-4 antibody,conjugate including same,and application thereof」という表題の中国特許出願第202011624826.7号の優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物医学の分野に属する。特に、本発明は、抗ネクチン-4抗体及びそれを含むコンジュゲート、並びに、特にネクチン-4関連疾患の処置及び/又は予防におけるその適用に関する。
【背景技術】
【0003】
ネクチン-4は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するPVRLとしても公知のネクチンファミリータンパク質に属し、主にカルシウムイオン非依存性細胞接着結合の媒介において機能する。ネクチンファミリーは、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3及びネクチン-4というメンバーを含み、約510~550アミノ酸のサイズを有し、3つのIg様ドメイン、膜貫通領域及び細胞内尾部領域によって形成される細胞外セグメントを含む構造であるI型膜貫通タンパク質に属する。3つのIg様ドメインはIgVドメイン1つとIgCドメイン2つを有し、細胞内ドメインのC末端はアファディンタンパク質のPDZドメインとの結合に使用されるGlu/Ala-X-Tyr-Valで構成される保存的領域を有する。ネクチン-4はこのタンパク質配列を有さないが、それでもなお細胞内にアファディンタンパク質と結合することができる。
【0004】
ネクチン-4は、アノイキスを阻害すること、及びPI3K-AKTシグナル伝達経路を活性化することにより、腫瘍細胞の生存及び増殖を促進し得る。ネクチン-4は胃がん、肝細胞癌、非小細胞肺がん、膀胱がん、乳がん、膵がん、卵巣がん、頭頸部がん及び食道がんにおいて発現され、非小細胞肺がん、膀胱がん、乳がん及び膵がんでは強力に発現されることが試験により示されている。腫瘍におけるネクチン-4の高発現は患者の予後不良と密接に関連する。したがって、ネクチン-4を腫瘍に対する薬物の開発の理想的な標的として使用することができる。
【0005】
現在のところ、ネクチン-4を標的とするADC薬であるエンホルツマブベドチン(例えば、WO2012/047724を参照されたい)が、尿路上皮癌の処置のためにすでに利用可能である。エンホルツマブベドチンは、抗ネクチン-4完全ヒト抗体とコンジュゲートしたVC-MMAE薬であり、DAR値は4である。第III相臨床試験データから、4名の患者で完全寛解(CR)が実現され、41名の患者で部分奏効(PR)が実現され、客観的奏効率(ORR)は41%であり、OS中央値は13.6カ月に達し、応答の持続時間の中央値は5.75カ月であり、無増悪生存期間(PFS)の中央値は5.4カ月であったことが示された。チェックポイント阻害剤による処置群では89名の患者でORRが40%であり、チェックポイント阻害剤未処置群では23名の患者でORRが44%であり、肝臓転移群では33名の患者でORRが39%であった。エンホルツマブベドチンは優れた抗腫瘍有効性を有する。
【0006】
ネクチン-4は、胎盤において発現され、又、いくつかの正常組織、例えば、皮膚、食道、乳房、及び膀胱などにおいて弱く~中程度に発現されていた。エンホルツマブベドチンの主要な臨床的毒性作用及び副作用は疲労(54%)であり、グレード3以上の副作用は、貧血(8%)、低ナトリウム血症(7%)、尿路感染症(7%)、高血糖(6%)であり、4名の患者が呼吸不全、尿路閉塞症、糖尿病性ケトアシドーシス、及び多臓器不全を含めた重篤な薬物関連副作用を有した。このことから、エンホルツマブベドチンの毒性作用及び副作用があまりにも重篤であることが示される。
【発明の概要】
【0007】
一般的な一態様では、本発明は、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片を提供し、該抗体又はその抗原結合性断片が、
(1a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号3に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号4に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はChothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(1b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号9に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号10に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はAbm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(1c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号11に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号12に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はKabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
若しくは
Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号11に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号63に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はKabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
(1d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号13に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号14に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号15に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はIMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号16に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号17に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(2a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号21に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号22に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はChothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
若しくは
Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号18に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号22に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はChothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
(2b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号27に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号28に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はAbm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
若しくは
Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号36に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号28に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はAbm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
(2c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号29に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号30に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はKabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号44に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号30に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はKabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
(2d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号31に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号32に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号33に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はIMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号34に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号35に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
若しくは
IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号54に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号32に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号33に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はIMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号34に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号35に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
(3a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号39に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号40に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はChothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(3b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号45に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号46に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はAbm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(3c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号47に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号48に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はKabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
若しくは
Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号47に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号64に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はKabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;
又は
(3d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号49に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号50に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号51に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント;及び/又はIMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号52に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号53に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント
を含み、
バリアントが、それが由来する配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有し、置換が、保存的置換であることが好ましい。
【0008】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト又はマウス免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域をさらに含む。
【0009】
一態様では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合性断片及び少なくとも1つの治療剤を含む抗体コンジュゲートを提供する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)及びCARを発現する免疫エフェクター細胞を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、及び追加的な生物活性ポリペプチドを含む融合タンパク質にも関する。
【0012】
本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体又は融合タンパク質、並びに薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物にも関する。
【0013】
さらに別の一般的な態様では、本発明は、がんを処置するための医薬の製造における、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物の使用に関する。
【0014】
本発明は、がんの処置及び/又は予防における、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物の使用にも関する。
【0015】
別の一般的な態様では、本発明は、それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、がんが、ネクチン-4に関連するものである、方法も提供する。当該方法は、対象に、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物を治療有効量で投与するステップを含む。
【0016】
がんは、胃がん、肝臓がん、肝細胞癌、膀胱がん、尿路上皮がん、尿道がん、腎盂がん、尿管がん、肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、乳管がん、トリプルネガティブ乳がん、膵がん、卵巣がん、頭頸部がん、結腸がん、直腸がん及び食道がんから選択されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】A549-ネクチン-4安定細胞株のフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
図1B】T24-ネクチン-4安定細胞株のフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
図2】抗ヒトネクチン-4マウス抗体の親和性検出の結果を示すグラフである。
図3A】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZとヒトネクチン-4タンパク質の間の親和性についてのELISAによる検出の結果を示すグラフである。
図3B】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である74HZとヒトネクチン-4タンパク質の間の親和性についてのELISAによる検出の結果を示すグラフである。
図3C】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZとヒトネクチン-4タンパク質の間の親和性についてのELISAによる検出の結果を示すグラフである。
図3D】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZとカニクイザルネクチン-4タンパク質の間の親和性についてのELISAによる検出の結果を示すグラフである。
図3E】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である74HZとカニクイザルネクチン-4タンパク質の間の親和性についてのELISAによる検出の結果を示すグラフである。
図3F】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZとカニクイザルネクチン-4タンパク質の間の親和性についてのELISAによる検出の結果を示すグラフである。
図4A】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZ、74HZのT47D細胞に対する親和性についてのフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
図4B】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZとNCI-N87細胞の間の親和性についてのフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
図5A】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZ及び74HZのT47D細胞におけるエンドサイトーシス活性の検出結果を示すグラフである。
図5B】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZ及び74HZのMDA-MB-468細胞におけるエンドサイトーシス活性の検出結果を示すグラフである。
図5C】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZ及び74HZのA549-ネクチン-4細胞におけるエンドサイトーシス活性の検出結果を示すグラフである。
図5D】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZのT24-ネクチン-4細胞におけるエンドサイトーシス活性の検出結果を示すグラフである。
図6A】ヒトネクチン-4ドメインを認識する抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZ及び74HZの検出結果を示すグラフである。
図6B】ヒトネクチン-4ドメインを認識する抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZの検出結果を示すグラフである。
図7A】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZ及び74HZの競合活性の検出結果を示すグラフである。
図7B】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZの競合活性の検出結果を示すグラフである。
図8A】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である31HZの特異性の検出結果を示すグラフである。
図8B】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である74HZの特異性の検出結果を示すグラフである。
図8C】抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である56HZの特異性の検出結果を示すグラフである。
図9A】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び74HZ-TL001によるA549-ネクチン-4細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図9B】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び74HZ-TL001によるA549細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図9C】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び56HZ-TL001によるT24-ネクチン-4細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図9D】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び56HZ-TL001によるT24細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図10A】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び74HZ-TL001によるT47D細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図10B】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び74HZ-TL001によるMDA-MB-468細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図10C】抗ヒトネクチン-4 ADCである31HZ-TL001及び56HZ-TL001によるNCI-N87細胞の死滅の結果を示すグラフである。
図11】NOD/SCIDマウスの皮下NCI-H322M細胞異種移植腫瘍モデルにおける、マウスの各群の経時的な腫瘍体積の変化を示すグラフである。
図12】NOD/SCIDマウスの皮下NCI-H322M細胞異種移植腫瘍モデルにおける、マウスの各群の経時的な体重の変化を示すグラフである。
図13】NOD/SCIDマウスの皮下HuPrime(登録商標)胃がんBL9200 PDXモデルにおける、マウスの各群の経時的な腫瘍体積の変化を示すグラフである。
図14】NOD/SCIDマウスの皮下HuPrime(登録商標)胃がんBL9200 PDXモデルにおける、マウスの各群の経時的な体重の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明では、別段の指定がない限り、本明細書で使用される科学技術用語は、当業者に一般に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用される、タンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学に関連する用語及び実験手順は、対応する分野で広く使用されている用語及び常套的な手順である。同時に、本発明のより良い理解のために、関連する用語の定義及び説明を以下に提示する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ(種)の」又は「1つ(種)又は複数(種)」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20(種)又はそれよりも多くを指し得る。
【0020】
「含む(comprising)」という表現又はそれと同等の表現である「含む(including)」、「含有する(containing)」及び「有する(having)」などは、オープンエンドであり、追加的な列挙されていない要素、ステップ又は構成成分は排除されない。「からなる(consisting of)」という表現は、明記されていない要素、ステップ又は構成成分のいずれも排除するものである。「から本質的になる(consisting essentially of)」という表現は、明記されている要素、ステップ又は構成成分、それに加えて、特許請求された主題の基本的な及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない任意選択の要素、ステップ又は構成成分に範囲が限定されることを意味する。「含む(comprising)」という表現は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という表現を包含することが理解されるべきである。
【0021】
「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、その後に記載されている事象又は状況が発生する場合も発生しない場合もあること、及びこの記載にはその事象又は状況が発生する場合及びその事象又は状況が発生しない場合が包含されることを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって連結した2つ以上のアミノ酸で形成されるポリマーを指す。「タンパク質」は、1つ又は複数のポリペプチドで共有結合又は非共有結合により形成され得る。別段の指定のない限り、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、少なくとも1つの抗原結合性部位を通じて抗原エピトープに特異的に結合する免疫グロブリン又はその断片を指す。本明細書では、抗体の定義は抗原結合性断片を包含する。したがって、「抗体」という用語は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、及び抗原結合性断片を含む。抗体は、合成抗体(例えば、化学的に又は生物学的にカップリングすることによって作製された抗体)、酵素により処理された抗体、又は組換えによって作製された抗体であり得る。本明細書に提示される抗体は、任意の免疫グロブリン型(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA、及びIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、マウスモノクローナル抗体である。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「従来の抗体」又は「全長抗体」は、一般には、4つのポリペプチド:2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)を含む。各軽鎖は、N末端からC末端までに「軽鎖可変領域(VL)」及び「軽鎖定常領域(CL)」を含む。各重鎖は、N末端からC末端までに「重鎖可変領域(VH)」及び「重鎖定常領域(CH)」を含む。重鎖定常領域は、N末端からC末端までに、CH1、CH2及びCH3を含み得る。ある特定の免疫グロブリン型(例えば、IgM及びIgE)では、重鎖定常領域は、CH4をさらに含み得る。「Fc」断片は、CH2及びCH3を含み、Fc受容体に対する結合性部位をもたらす断片を指す。「ヒンジ領域」は、免疫グロブリンのFab断片とFc断片を接続する、抗体の一部を指す。一部の場合では、ヒンジ領域は、定常領域と膜貫通ドメインを接続する、T細胞受容体の一部を指す。本明細書では、キメラ抗原受容体に関して使用される場合、ヒンジ領域は、任意の機能的等価物を指すこともある。当業者は、抗体のVH、VL、CL、CH1、CH2、CH3及びヒンジ領域の位置を、公知のアルゴリズム及びソフトウェアに従って判断することができ、適用可能なアルゴリズム及びソフトウェアに関する記載は、例えば、William R.Strohl、Lila M.Strohl、(2012)、Antibody structure-function relationships、In Woodhead Publishing Series in Biomedicine、Therapeutic Antibody Engineering、Woodhead Publishing、37~56頁に見いだすことができる。
【0025】
一般に、VL及びVHは、それぞれ、3つの高度に可変性の「相補性決定領域(CDR)」と4つの比較的保存的な「フレームワーク領域(FR)」を含み得、これらは、N末端からC末端まで、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順に接続している。本明細書では、軽鎖可変領域CDR(CDRL)をCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と称することができ、重鎖可変領域CDR(CDRH)をCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と称することができる。VHとVLの対で構成される6つのCDRによって抗原結合性部位の結合特異性が決定され得るが、一部の場合では、6つ未満(例えば、3つ、4つ、又は5つ)のCDRを含む他の断片(例えば、単一ドメイン抗体、ナノボディとしても公知)も抗原結合能を有すると一般に考えられる。当業者は、当技術分野で周知の方法を使用して、例えば、Kabat、Abm又はChothia番号付け方法を使用してCDRを同定することができる。これに関連して、複数のCDR番号付けシステム、例えば、Chothia、Abm、Kabat及びIMGTを同じ可変領域に対して使用することができる。異なる番号付けシステムによって定義されるCDRは異なる場合があるが、同じ番号付けシステムで同定されるCDRは抗原エピトープに結合することが可能な効率的な抗原結合性部位を表すことが当業者には理解されよう。CDR番号付けシステムに関する記載は、例えば、Kabat番号付けシステムについては:Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S.Department of Health及びHuman Services、NIH Publication No.91-3242;Chothia番号付けシステムについては:Chothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;又はIMGT番号付けシステムについては:Lefranc,M.-P.、2011(6)、IMGT、the International ImMunoGeneTics Information System Cold Spring Harb Protoc.;Abm番号付けシステムについては:Martin,A.C.R.及びJ.Allen(2007)“Bioinformatics tools for antibody engineering”、S.Dubel(編)、Handbook of Therapeutic Antibodies.Weinheim:Wiley-VCH Verlag、95-118頁に見いだすことができる。
【0026】
本明細書では、「フレームワーク領域」及び「フレームワーク」という用語は互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」、「フレームワーク」又は「FR」の残基という用語は、抗体の可変領域内の上で定義されたCDR残基以外のアミノ酸残基を指す。
【0027】
非共有結合性の相互作用を介した1つのVH及び1つのVLからなる「Fv」断片が抗原結合性部位を含有する最小の抗原結合性断片であると一般に考えられる。しかし、重鎖の可変領域のみを含有する単一ドメイン抗体(VHH、sdAb又はナノボディとしても公知)も抗原結合能を有し得る。「単鎖Fv(scFv)」は、VHとVLをペプチドリンカーによって連結することによって得ることができる。「ジスルフィド安定化Fv(dsFv)」又は「ジスルフィド安定化単鎖Fv(scdsFv又はdsscFv)」は、それぞれFv又はscFvにジスルフィド結合を導入することによって得ることができる。一部の実施形態では、例えば、本発明のCARにおける抗体コンジュゲート、多重特異性抗体又は抗原結合性断片にはscFv又はscdsFvが使用されることが好ましい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「Fab」は、1つの完全な抗体軽鎖(VL-CL)及び抗体重鎖可変領域及び1つの重鎖定常領域(VH-CH1、Fdとしても公知)を含む。単鎖「Fab(scFab)」は、「Fab」内のCLとCH1をペプチドリンカーで連結することによって得ることができる。「F(ab’)」は、基本的には、ヒンジ領域においてジスルフィド結合によって連結した2つのFab断片を含む。「Fab’」はF(ab’)の半分であり、F(ab’)のヒンジ領域におけるジスルフィド結合を還元することによって得ることができる。
【0029】
抗体又は抗原結合性断片は、「一価」、「二価」、「三価」又は「四価」又はそれよりも多価であり得る、すなわち、複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ以上)の抗原結合性部位を有する。
【0030】
抗体又は抗原結合性断片が2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)の抗原に結合する場合、「多重特異性抗体」、例えば、二重特異性抗体、三重特異性又は四重特異性抗体と称することもでき、これらは、それぞれ2つ、3つ又は4つの抗原に結合することが可能な多重特異性抗体を表す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ(diabody)」は、2つのscFvを含み、2つの抗原結合性部位を有する(二価)の抗体を指し、各scFvのVHとVLは短いペプチドリンカー(およそ5~10アミノ酸残基)によって連結しており、したがって、VH鎖とVL鎖が対になって(すなわち、第1のscFvのVHと第2のscFvのVLが対になり、第1のscFvのVLと第2のscFvのVHが対になって)抗原結合性部位を形成している。ダイアボディは二重特異性抗体である。
【0032】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合性断片」は、全長よりは短いが、全長抗体の可変領域の少なくとも一部分を含み(例えば、1つ若しくは複数のCDR及び/又は1つ若しくは複数の抗原結合性部位を含む)、したがって、全長抗体の抗原に特異的に結合する能力の少なくとも一部分を保持する、全長抗体の一部を指す。抗原結合性断片としては、例えば、全長抗体を酵素処理することによって作製された抗体誘導体、合成により作製された誘導体、又は組換えによって作製された誘導体を挙げることができる。抗原結合性断片の例としては、これだけに限定されないが、Fv、scFv、dsFv、scdsFv、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)、ダイアボディ、Fd及びFd’断片及び他の断片(例えば、修飾を含む断片)が挙げられる。抗原結合性断片は、例えば、ジスルフィド結合及び/又はペプチドリンカー及び/又は非共有結合性の相互作用によって連結することにより形成された複数のペプチド鎖を含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、高度に均一な抗体の集団を指し、ここで、その中に含まれる抗体分子は、微量で存在することがある可能性のある天然に存在する変異以外は実質的に同一である。モノクローナル抗体は、一般には、単一のエピトープに特異的に結合する。本発明において有用なモノクローナル抗体は、例えば、組換えDNA法を使用したトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)からの産生、不死化B細胞(例えば、B細胞ハイブリドーマ)からの産生、若しくは細菌細胞、真核細胞若しくは植物細胞からの産生、又は、ファージ抗体ライブラリーからの単離など、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体である。一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0034】
「キメラ抗体」は、一部分(例えば、CDR、FR、可変領域、定常領域、又はこれらの組合せ)が、特定の種に由来する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、残りの部分が、別の種に由来する抗体の対応する配列の同一又は相同である抗体を指す。本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」には、異なる抗体クラス又はサブクラスに属する部分を含む抗体も包含される。特定の実施形態では、キメラ抗体は、マウス抗体可変領域とヒト抗体定常領域とを有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体配列とヒト抗体配列とを含む抗体を指す。したがって、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含むキメラ抗体である。非ヒト抗体は、任意の非ヒト種に由来する抗体であってもよく、非ヒト種に由来する部分を含む抗体(例えば、キメラ抗体)であってもよい。非ヒト種としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、アルパカ、又は非ヒト霊長類を挙げることができる。非ヒト抗体からヒト化抗体を得るための技法は当業者には周知である。ヒト化抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体又はキメラ抗体)から、例えば、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)のCDR配列をヒト抗体フレームワーク領域に移植することによって作製することができる。一部の場合では、ヒト化抗体の抗原結合能及び/又は安定性を維持するために、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)のフレームワーク配列の重要なアミノ酸残基をヒト抗体のフレームワーク領域内に保持することができる、すなわち、「復帰変異」を実施する(例えば、Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.81(21):6851-6855;Neubergerら(1984)Nature 312:604-608)を参照されたい。
【0036】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列の「パーセント(%)配列同一性」、「配列同一性」は、当技術分野において広く受け入れられている定義を有し、配列アラインメント(例えば、手動検査又は周知のアルゴリズムによるもの)によって決定される2つのポリペプチド配列間のパーセント同一性を指す。パーセント同一性は、当業者公知の方法を使用して、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal Omega、FASTAソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して決定することができる。
【0037】
「親和性」又は「結合親和性」は、抗体と抗原の間の非共有結合性の相互作用による結合の強度を測定するために使用される。「親和性」の大きさは、通常、平衡解離定数K又はEC50として報告することができる。Kは、平衡会合定数(ka)及び平衡解離定数(kd)を測定することによって算出することができる:K=kd/ka。親和性は、例えば、バイオフィルム干渉法(例えば、Octet Fortebio検出システムを使用することができる)、ラジオイムノアッセイ、表面プラズモン共鳴、酵素結合免疫測定法、又はフローサイトメトリーなどの、当技術分野で公知の従来の技法を使用して決定することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、抗体と抗原の「特異的結合」とは、抗体と抗原の高親和性での結合を指す。一般には、特異的に結合している抗体と抗原の間のK値は、少なくとも約10-6~少なくとも約10-9M未満、例えば、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9Mである。
【0039】
本明細書で使用される場合、参照アミノ酸配列「由来の(from)」又は「に由来する(derived from)」アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列と部分的に又は完全に同一又は相同である。例えば、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それが由来する野生型ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド又はアミノ酸配列の「バリアント」は、それが由来するポリペプチド又はアミノ酸配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の変異又は修飾を有する。アミノ酸変異には、アミノ酸の置換、欠失又は付加が含まれる。ポリペプチド又はタンパク質の非必須領域内のアミノ酸を、一般にそのポリペプチド又はタンパク質生物活性を変更しない適当な保存的アミノ酸で置換することができることが当業者には理解されよう(例えば、Watsonら、Molecular Biology of the Gene、4th Edition、1987、The Benjamin/Cummings Pub.co.、224頁を参照されたい)。適切な保存的置換は当業者には周知である。アミノ酸残基の一般的な保存的置換のいくつかの非限定的な例を下記の表に列挙する。ある特定の場合では、アミノ酸置換は非保存的置換である。抗体又は抗体断片の特性を変更するため、例えば、抗体グリコシル化修飾の型を変更するため、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を変更するため、又は抗体コンジュゲートのための活性な基をもたらすために、抗体又は抗体断片に対してアミノ酸変異又は修飾をなすことができることが当業者には理解されよう。そのようなアミノ酸変異又は修飾を含む抗体又はその抗原結合性断片も本発明の抗体又はその抗原結合性断片の範囲内に包含される。
【表1】
【0041】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」という用語は、一般にデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を構成し得る、少なくとも2つの連結したヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体を含むオリゴマー又はポリマーを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「単離された」とは、材料(例えば、核酸分子又はポリペプチド)が、それが存在する供給源又は環境から分離されていること、すなわち、いかなる他の構成要素も実質的に含まないことを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用されるビヒクルであり、ベクターが適当な宿主細胞に導入されてその宿主細胞が形質転換されると、外因性核酸が増幅又は発現される。ベクターは、一般に、エピソームとして留まるが、遺伝子又はその一部がゲノムの染色体に組み込まれるように設計することもできる。本明細書で使用される場合、ベクターの定義には、プラスミド、直鎖化されたプラスミド、ウイルスベクター、コスミド、ファージベクター、ファージミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体及び哺乳動物人工染色体)などが包含される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、DNAを発現させることが可能なベクターを指し、ここで、DNAは、DNA発現に影響を及ぼすことが可能な調節配列(例えば、プロモーター、リボソーム結合性部位)に作動可能に連結している。調節配列にはプロモーター及びターミネーター配列を含めることができ、任意選択で、複製開始点、選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含めることもできる。発現ベクターは、適当な宿主細胞に導入されると、クローニングされたDNAの発現をもたらす、プラスミド、ファージベクター、組換えウイルス又は他のベクターであり得る。適当な発現ベクターは当業者には周知であり、真核細胞及び/又は原核細胞において複製可能な発現ベクター並びにエピソームとして留まる発現ベクター又は宿主細胞のゲノムに組み込まれる発現ベクターが含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」とは、ベクターを受け入れる、維持する、複製する又は増幅するために使用される細胞である。宿主細胞はまた、核酸又はベクターによってコードされるポリペプチドを発現させるためにも使用することができる。宿主細胞は真核細胞のこともあり、原核細胞のこともある。
【0046】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」という用語は、疾患/症状の好転、例えば、疾患/症状を軽減又は排除すること、疾患/症状の発症、増悪及び/又は悪化を予防する又は遅延させることを指す。したがって、処置には、予防、処置及び/又は治癒が含まれる。
【0047】
「有効量」は、疾患の症状の重症度を低減させる、疾患の無症候性期間の頻度及び持続時間を増大させる、又は疾患への罹患に起因する損傷若しくは能力障害を予防するために十分な用量を指す。「有効量」は、疾患又は症状を予防する、治癒させる、好転させる、遅らせる又は部分的に遅らせるために必要な量を指す。例えば、腫瘍の処置に関しては、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、又は医薬組成物の「有効量」は、処置を受けていない対象と比べて、腫瘍細胞成長又は腫瘍成長を少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%阻害するものであることが好ましい。腫瘍成長の阻害の有効性は、当技術分野における従来の腫瘍の動物モデル、例えば、自然発生腫瘍、誘導された腫瘍、及び移植された腫瘍に関する動物モデルを使用して評価することができる。或いは、細胞成長を阻害する能力を、当技術分野で周知のin vitroアッセイを使用して試験することもできる。本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、又は医薬組成物の有効量は、腫瘍サイズを縮小させる、又は他の点で対象における症状を緩和させる(例えば、転移又は再発を予防及び/又は処置する)ことが可能なものである。当業者は、例えば、対象の年齢、健康状態、性別、症状の重症度、特定の組成物又は投与経路などの因子に基づいて、有効量を決定することができる。有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤」という用語は、対象及び活性成分に対して薬理学的に及び/又は生理的に適合性の担体及び/又は賦形剤を指し、当技術分野において周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences.、Gennaro AR編、第19版、Pennsylvania:Mack Publishing Company、1995を参照されたい)、それらとして、これだけに限定されないが、pH調整剤、界面活性物質、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧を維持するための作用剤、吸収を遅延させるための作用剤、保存剤が挙げられる。例えば、pH調整剤としては、これだけに限定されないが、リン酸緩衝液が挙げられる。界面活性物質としては、これだけに限定されないが、カチオン性、陰イオン性、又は非イオン界面活性物質、例えばTween-80などが挙げられる。イオン強度増強剤としては、これだけに限定されないが、塩化ナトリウムが挙げられる。保存剤としては、これだけに限定されないが、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗細菌剤及び抗真菌剤が挙げられる。浸透圧を維持するための作用剤としては、これだけに限定されないが、糖、NaClなどが挙げられる。吸収を遅延させるための作用剤としては、これだけに限定されないが、モノステアリン酸塩及びゼラチンが挙げられる。希釈剤としては、これだけに限定されないが、水、水性緩衝液(例えば、緩衝生理食塩水)、アルコール及びポリオール(例えば、グリセロール)などが挙げられる。保存剤としては、これだけに限定されないが、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗細菌剤及び抗真菌剤が挙げられる。安定化剤は、当業者に一般に理解される意味を有し、薬物中の活性成分の所望の活性を安定化することができるものであり、これだけに限定されないが、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、ラクトース、グルカン、又はグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエー、アルブミン又はカゼイン)又はその分解生成物(例えば、ラクトアルブミン加水分解産物)などが含まれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、哺乳動物の例としては、これだけに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。本明細書で使用される場合、「対象(object)」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を指す。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象(subject)は、がん患者、ヒト又は動物である。本明細書では、「対象(object)」及び「対象(subject)」という用語は、互換的に使用される。
【0050】
抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片
一般的な一態様では、本発明は、ネクチン-4を特異的に認識し、それに結合する抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0051】
ネクチン-4は、ヒトネクチン-4又は非ヒトネクチン-4の全ての又は部分的なアミノ酸配列を含むタンパク質であり得る。ネクチン-4はヒトネクチン-4であることが好ましい。ヒトネクチン-4は、例えば、Uniprot識別番号(ID):Q96NY8-1によって示されるアミノ酸配列を有し得る。非ヒトネクチン-4は、例えば、非ヒト霊長類カニクイザルネクチン-4などの哺乳動物ネクチン-4であってもよく、例えばUniprot識別番号(ID):L0N6D9によって示されるアミノ酸配列を有し得る。非ヒトネクチン-4はまた、例えば、ラットネクチン-4であってもよく、例えばUniprot識別番号(ID):D3ZET1によって示されるアミノ酸配列を有し得る。非ヒトネクチン-4はまた、例えば、マウスネクチン-4であってもよく、例えばUniprot識別番号(ID):Q8R007によって示されるアミノ酸配列を有し得る。
【0052】
一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、ネクチン-4のIgVドメインに特異的に結合することが可能である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトネクチン-4のIgVドメインに特異的に結合することが可能である。
【0053】
一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、ネクチン-4に特異的に結合し、それとネクチン-1との相互作用を遮断することが可能である。
【0054】
一部の実施形態では、抗ネクチン-4抗体は、3つの重鎖CDR(CDRH):CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3を含む重鎖可変領域(VH)を含む。CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3は、表1のCDRH群から選択される。
【表2】
【0055】
一部の実施形態では、抗ネクチン-4抗体は、3つの軽鎖CDR(CDRL):CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3は、表2のCDRL群から選択される。
【表3】
【0056】
相補性決定領域(CDR)
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号3に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号4に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0057】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号9に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号10に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0058】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号11に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号12又は63に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0059】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号13に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号14に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号15に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号16に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号17に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0060】
特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号3に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号4に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号9に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号10に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号11に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号12若しくは63に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号5に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号6に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号7に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号13に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号14に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号15に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号16に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号17に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント
を含む。
【0061】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号21に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号22に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0062】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号27に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号28に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0063】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号29に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号30に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0064】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号31に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号32に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号33に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号34に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号35に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0065】
特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号21に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号22に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号27に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号28に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号29に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号30に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号31に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号32に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号33に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号34に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号35に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント
を含む。
【0066】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号18に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号22に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0067】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号36に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号28に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0068】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号44に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号30に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0069】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号54に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号32に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号33に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号34に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号35に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、及び配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアントをさらに含む。
【0070】
特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号18に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号22に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号36に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号28に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号44に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号30に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号23に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号24に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号25に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号54に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号32に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号33に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号34に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号35に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号26に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント
を含む。
【0071】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号39に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号40に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0072】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号45に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号46に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Abm番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0073】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号47に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号48又は64に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0074】
一部の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの重鎖CDR:配列番号49に記載の配列を含むCDR-H1又はそのバリアント、配列番号50に記載の配列を含むCDR-H2又はそのバリアント、配列番号51に記載の配列を含むCDR-H3又はそのバリアントを含む。他の特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の3つの軽鎖CDR:配列番号52に記載の配列を含むCDR-L1又はそのバリアント、配列番号53に記載の配列を含むCDR-L2又はそのバリアント、及び配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3又はそのバリアントを含む。
【0075】
特定の実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)Chothia番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号39に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号40に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(b)Abm番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号45に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号46に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(c)Kabat番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号47に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号48若しくは64に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号41に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号42に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号43に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント;又は
(d)IMGT番号付けシステムに従って定義される以下の6つの重鎖及び軽鎖CDR:配列番号49に記載の配列を含むCDR-H1若しくはそのバリアント、配列番号50に記載の配列を含むCDR-H2若しくはそのバリアント、配列番号51に記載の配列を含むCDR-H3若しくはそのバリアント、配列番号52に記載の配列を含むCDR-L1若しくはそのバリアント、配列番号53に記載の配列を含むCDR-L2若しくはそのバリアント、配列番号8に記載の配列を含むCDR-L3若しくはそのバリアント
を含む。
【0076】
上記のネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片の一部の実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する、又はそれが由来する配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1つ、2つ若しくは3つのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有し、置換は、保存的置換であることが好ましい。
【0077】
フレームワーク領域(FR)
一部の実施形態では、VHは、重鎖フレームワーク領域(FR)をさらに含む。他の実施形態では、VLは、軽鎖フレームワーク領域(FR)をさらに含む。重鎖フレームワーク領域及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、それぞれ独立に、任意の種の免疫グロブリンのフレームワーク領域に由来し得る。重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域は、それぞれ独立に、ヒト又はマウス免疫グロブリンの重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域に由来することが好ましい。一実施形態では、重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域は、それぞれ独立に、マウス免疫グロブリンに由来する重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域、ヒト免疫グロブリンの重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域、又はこれらの組合せに由来するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域は、それぞれ独立に、ヒト生殖細胞系列抗体の重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む。
【0078】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片のVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖フレームワーク領域を含み、/又は、抗体又はその抗原結合性断片のVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖フレームワーク領域を含む。したがって、ある特定の好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト化抗体又はその抗原結合性断片である。そのような実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片の重鎖フレームワーク領域及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、1つ又は複数の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基を含むことがあり、例えば、重鎖フレームワーク領域及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含むことがあり、これらの復帰変異には対応するマウスアミノ酸残基が存在する。
【0079】
好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号1に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0080】
好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号1に記載の配列を有するVH又はそのバリアント、及び配列番号2に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0081】
好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号55に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号56に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0082】
好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号55に記載の配列を有するVH又はそのバリアント、及び配列番号56に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0083】
さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号19に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号20に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0084】
さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号19に記載の配列を有するVH又はそのバリアント、及び配列番号20に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0085】
さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号57に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号58に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0086】
さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号57に記載の配列を有するVH又はそのバリアント、及び配列番号58に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0087】
別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号37に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号38に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0088】
別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号37に記載の配列を有するVH又はそのバリアント、及び配列番号38に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0089】
別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号59に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号60に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0090】
別の好ましい実施形態では、ネクチン-4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号59に記載の配列を有するVH又はそのバリアント、及び配列番号60に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0091】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、
(1)配列番号1に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び/又は配列番号2に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント;又は
(2)配列番号19に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び/又は配列番号20に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント;又は
(3)配列番号37に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び/又は配列番号38に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント;又は
(4)配列番号55に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び/又は配列番号56に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント;又は
(5)配列番号57に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び/又は配列番号58に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント;又は
(6)配列番号59に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び/又は配列番号60に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント
を含む。
【0092】
上記のある実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。置換は保存的置換であることが好ましい。
【0093】
定常領域
一部の実施形態では、抗ネクチン-4抗体は、重鎖定常領域をさらに含む。別の実施形態では、抗ネクチン-4抗体は、軽鎖定常領域をさらに含む。重鎖定常領域及び軽鎖定常領域は、それぞれ独立に、任意の種の免疫グロブリンの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域に由来し得る。好ましい実施形態では、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域は、それぞれ独立に、マウス免疫グロブリンの重鎖定常領域若しくはそのバリアント及び軽鎖定常領域若しくはそのバリアントに由来する。より好ましい実施形態では、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域は、それぞれ独立に、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域若しくはそのバリアント及び軽鎖定常領域若しくはそのバリアントに由来する。バリアントは、それが由来する野生型配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、最大20個、最大15個、最大10個、又は最大5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加;例えば、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。
【0094】
重鎖定常領域は、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、又はこれらの組合せの少なくとも一部分から選択されるアミノ酸配列を含み得る。一実施形態では、重鎖定常領域は、CH1を含む。一実施形態では、重鎖定常領域は、CH1-ヒンジ領域-CH2を含む。一実施形態では、重鎖定常領域は、CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、CH4をさらに含む。重鎖定常領域は、任意の亜型(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)、又はこれらの組合せの免疫グロブリンの重鎖定常領域に由来し得る。重鎖定常領域はIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)重鎖定常領域に由来することが好ましい。好ましい実施形態では、重鎖定常領域はヒトIgG1重鎖定常領域に由来する。
【0095】
軽鎖定常領域は、λ(ラムダ)軽鎖又はκ(カッパ)軽鎖定常領域に由来し得る。好ましい実施形態では、軽鎖定常領域はヒトκ軽鎖定常領域である。
【0096】
特定の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号61に記載の配列又はそのバリアントを含む。特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号62に記載の配列又はそのバリアントを含む。これらの実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して最大20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大15個、最大10個、又は最大5個のアミノ酸の保存的置換;例えば、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有する。
【0097】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖及び軽鎖を含み、ここで、
(a)重鎖は、配列番号1に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域若しくはそのバリアントを含み、軽鎖は、配列番号2に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域若しくはそのバリアントを含む;又は
(b)重鎖は、配列番号19に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域若しくはそのバリアントを含み、軽鎖は、配列番号20に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域若しくはそのバリアントを含む;又は
(c)重鎖は、配列番号37に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域若しくはそのバリアントを含み、軽鎖は、配列番号38に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域若しくはそのバリアントを含む;又は
(d)重鎖は、配列番号55に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域若しくはそのバリアントを含み、軽鎖は、配列番号56に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域若しくはそのバリアントを含む;又は
(e)重鎖は、配列番号57に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域若しくはそのバリアントを含み、軽鎖は、配列番号58に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域若しくはそのバリアントを含む;又は
(f)重鎖は、配列番号59に記載の配列を有するVH若しくはそのバリアント及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域若しくはそのバリアントを含み、軽鎖は、配列番号60に記載の配列を有するVL若しくはそのバリアント及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域若しくはそのバリアントを含む。
【0098】
一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ダイアボディ、二重特異性抗体及び多重特異性抗体からなる群から選択される。
【0099】
一部の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である。
【0100】
マウス抗体
一実施形態では、本発明の抗ネクチン-4抗体はマウス抗体であり、VH及びVLを含み、ここで、VHは上記の重鎖CDR及び重鎖フレームワーク領域を含み、VLは上記の軽鎖CDR及び軽鎖フレームワーク領域を含み、重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域は、それぞれ独立に、マウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明の抗ネクチン-4抗体は、マウスハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体である。
【0101】
特定の実施形態では、マウス抗体は、表1の群aに記載されているCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含むVH、及びマウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む。好ましい実施形態では、マウス抗体は、配列番号1に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の特定の実施形態では、マウス抗体は、表2の群aに記載されているCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3を含むVL、及びマウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域をさらに含む。好ましい実施形態では、マウス抗体は、配列番号2に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0102】
別の特定の実施形態では、マウス抗体は、表1の群bに記載されているCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含むVH、及びマウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む。好ましい実施形態では、マウス抗体は、配列番号19に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の特定の実施形態では、マウス抗体は、表2の群bに記載されているCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3を含むVL及びマウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域をさらに含む。好ましい実施形態では、マウス抗体は、配列番号20に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0103】
さらに別の特定の実施形態では、マウス抗体は、表1の群cに記載されているCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含むVH、及びマウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む。好ましい実施形態では、マウス抗体は、配列番号37に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。さらに別の特定の実施形態では、マウス抗体は、表2の群cに記載されているCDRL1、CDR-L2、CDR-L3を含むVL、及びマウス免疫グロブリンフレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域をさらに含む。好ましい実施形態では、マウス抗体は、配列番号38に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。
【0104】
上記のある実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。置換は保存的置換であることが好ましい。
【0105】
特定の実施形態では、マウス抗体は、配列番号1に記載の配列を有するVH及び配列番号2に記載の配列を有するVLを含む。
【0106】
別の特定の実施形態では、マウス抗体は、配列番号19に記載の配列を有するVH及び配列番号20に記載の配列を有するVLを含む。
【0107】
さらに別の特定の実施形態では、マウス抗体は、配列番号37に記載の配列を有するVH及び配列番号38に記載の配列を有するVLを含む。
【0108】
キメラ抗体
一実施形態では、本発明の抗ネクチン-4抗体はキメラ抗体である。一部の実施形態では、キメラ抗体は、上記のマウス抗体の重鎖CDR及び/又は軽鎖CDRを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、上記のマウス抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、上記のマウス抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びに重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含み、ここで、重鎖定常領域は、非マウス免疫グロブリンの重鎖定常領域に由来する、及び/又は、軽鎖定常領域は、非マウス免疫グロブリンの軽鎖定常領域に由来する。好ましい実施形態では、重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域に由来する、及び/又は、軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域に由来する。好ましい実施形態では、重鎖定常領域はヒト免疫グロブリン重鎖定常領域に由来し、軽鎖定常領域はヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域に由来する。
【0109】
一部の実施形態では、キメラ抗体は、表1の群aに記載されているマウス抗体のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、表2の群aに記載されているマウス抗体のCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3をさらに含む。
【0110】
特定の実施形態では、キメラ抗体は、配列番号1に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。特定の実施形態では、キメラ抗体は、配列番号2に記載の配列を有するVL又はそのバリアントをさらに含む。
【0111】
別の特定の実施形態では、キメラ抗体は、配列番号19に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。特定の実施形態では、キメラ抗体は、配列番号20に記載の配列を有するVL又はそのバリアントをさらに含む。
【0112】
さらに別の特定の実施形態では、キメラ抗体は、配列番号37に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。特定の実施形態では、キメラ抗体は、配列番号38に記載の配列を有するVL又はそのバリアントをさらに含む。
【0113】
上記のある実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。置換は保存的置換であることが好ましい。
【0114】
一部の実施形態では、上記のキメラ抗体は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をさらに含む。好ましい実施形態では、重鎖定常領域はヒト免疫グロブリン重鎖定常領域に由来し、軽鎖定常領域はヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域に由来する。一実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域に由来する。一実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する。一実施形態では、軽鎖定常領域は、ヒトλ又はκ軽鎖定常領域に由来する。一実施形態では、軽鎖定常領域は、ヒトκ軽鎖定常領域に由来する。特定の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号61に記載のアミノ酸配列又はそのバリアントを含む。特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号62に記載のアミノ酸配列又はそのバリアントを含む。これらの実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して最大20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大15個、最大10個、又は最大5個のアミノ酸の保存的置換;例えば、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有する。
【0115】
特定の実施形態では、キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号1に記載の配列を有するVH及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域を含み、軽鎖は、配列番号2に記載の配列を有するVL及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域を含む。
【0116】
別の特定の実施形態では、キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号19に記載の配列を有するVH及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域を含み、軽鎖は、配列番号20に記載の配列を有するVL及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域を含む。
【0117】
さらに別の特定の実施形態では、キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号37に記載の配列を有するVH及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域を含み、軽鎖は、配列番号38に記載の配列を有するVL及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域を含む。
【0118】
ヒト化抗体
一実施形態では、本発明の抗ネクチン-4抗体はヒト化抗体であり、VH及びVLを含み、ここで、VHは、上記の重鎖CDR及び重鎖フレームワーク領域を含み、VLは、上記の軽鎖CDR及び軽鎖フレームワーク領域を含み、重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域は、それぞれ独立に、ヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域及び軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む。そのような実施形態では、重鎖フレームワーク領域及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、1つ又は複数の非ヒト(例えば、マウス)アミノ酸残基、例えば、重鎖フレームワーク領域を含むことがあり、及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含むことがあり、これらの復帰変異に対応するマウスアミノ酸残基が存在する。ヒト化抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス又はキメラ抗体)から生成することができる。一実施形態では、ヒト化抗体を本発明の抗ネクチン-4マウス抗体から本発明の実施例に記載の通り調製する。
【0119】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、上記のマウス抗体のCDR-H1又はそのバリアント、CDR-H2又はそのバリアント、CDR-H3又はそのバリアントを含む。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、上記のマウス抗体のCDR-L1又はそのバリアント、CDR-L2又はそのバリアント、CDR-L3又はそのバリアントをさらに含む。
【0120】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、上記のマウス抗体のCDR-H1又はそのバリアント、CDR-H2又はそのバリアント、CDR-H3又はそのバリアントを含むVH、及び、ヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、上記のマウス抗体のCDR-L1又はそのバリアント、CDR-L2又はそのバリアント、CDR-L3又はそのバリアントを含むVL、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域をさらに含む。
【0121】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号3に記載のCDR-H1、配列番号4に記載のCDR-H2、配列番号5に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Chothia番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号6に記載のCDR-L1、配列番号7に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Chothia番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0122】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号9に記載のCDR-H1、配列番号10に記載のCDR-H2、配列番号5に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Abm番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号6に記載のCDR-L1、配列番号7に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Abm番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0123】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号11に記載のCDR-H1、配列番号12又は63に記載のCDR-H2、配列番号5に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Kabat番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号6に記載のCDR-L1、配列番号7に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Kabat番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0124】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号13に記載のCDR-H1、配列番号14に記載のCDR-H2、配列番号15に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、IMGT番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号16に記載のCDR-L1、配列番号17に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、IMGT番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0125】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号56に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。一実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号55に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。
【0126】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号21又は18に記載のCDR-H1、配列番号22に記載のCDR-H2、配列番号23に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Chothia番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号24に記載のCDR-L1、配列番号25に記載のCDR-L2、配列番号26に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Chothia番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0127】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号27又は36に記載のCDR-H1、配列番号28に記載のCDR-H2、配列番号23に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Abm番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号24に記載のCDR-L1、配列番号25に記載のCDR-L2、配列番号26に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Abm番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0128】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号29又は44に記載のCDR-H1、配列番号30に記載のCDR-H2、配列番号23に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Kabat番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号24に記載のCDR-L1、配列番号25に記載のCDR-L2、配列番号26に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Kabat番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0129】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号31又は54に記載のCDR-H1、配列番号32に記載のCDR-H2、配列番号33に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、IMGT番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号34に記載のCDR-L1、配列番号35に記載のCDR-L2、配列番号26に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、IMGT番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0130】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号58に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。一実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号57に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。
【0131】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号39に記載のCDR-H1、配列番号40に記載のCDR-H2、配列番号41に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Chothia番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号42に記載のCDR-L1、配列番号43に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Chothia番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0132】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号45に記載のCDR-H1、配列番号46に記載のCDR-H2、配列番号41に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Abm番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号42に記載のCDR-L1、配列番号43に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Abm番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0133】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号47に記載のCDR-H1、配列番号48又は64に記載のCDR-H2、配列番号41に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、Kabat番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号42に記載のCDR-L1、配列番号43に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、Kabat番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0134】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号49に記載のCDR-H1、配列番号50に記載のCDR-H2、配列番号51に記載のCDR-H3、及びヒト免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域を含む、IMGT番号付けシステムによって定義されるVHを含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号52に記載のCDR-L1、配列番号53に記載のCDR-L2、配列番号8に記載のCDR-L3、及びヒト免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク領域を含む、IMGT番号付けシステムによって定義されるVLをさらに含む。
【0135】
一実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号60に記載の配列を有するVL又はそのバリアントを含む。一実施形態では、ヒト化抗体は、配列番号59に記載の配列を有するVH又はそのバリアントを含む。
【0136】
上記のある実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する。置換は保存的置換であることが好ましい。
【0137】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、上述のヒト化抗体に関して記載されている重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域と比較して、少なくとも1つのCDR及び/又はフレームワーク領域がアミノ酸変異を含み、ここで、アミノ酸変異は、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加、又はこれらの任意の組合せ(例えば、1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、欠失又は付加、又はこれらの任意の組合せ)である。置換は保存的置換であることが好ましい。
【0138】
一部の実施形態では、抗ネクチン-4ヒト化抗体は、重鎖定常領域をさらに含む。一実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域に由来する。一実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する。一実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号61に記載のアミノ酸配列又はそのバリアントを含む。
【0139】
一部の実施形態では、抗ネクチン-4ヒト化抗体は、軽鎖定常領域をさらに含む。一実施形態では、軽鎖定常領域は、ヒトλ又はκ軽鎖定常領域に由来する。一実施形態では、軽鎖定常領域は、ヒトκ軽鎖定常領域に由来する。一実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号62に記載のアミノ酸配列又はそのバリアントを含む。
【0140】
上記のある実施形態では、バリアントは、それが由来する配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。或いは、バリアントは、それが由来する配列と比較して最大20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大15個、最大10個、又は最大5個のアミノ酸の保存的置換;例えば、1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸の保存的置換)を有する。
【0141】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号55に記載の配列を有するVH及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域を含み、軽鎖は、配列番号56に記載の配列を有するVL及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域を含む。
【0142】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号57に記載の配列を有するVH及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域を含み、軽鎖は、配列番号58に記載の配列を有するVL及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域を含む。
【0143】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号59に記載の配列を有するVH及び配列番号61に記載の配列を有する重鎖定常領域を含み、軽鎖は、配列番号60に記載の配列を有するVL及び配列番号62に記載の配列を有する軽鎖定常領域を含む。
【0144】
本発明の抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片は、当技術分野で公知の方法を使用して調製及び作製することができる。そのような方法は、例えば、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、不死化B細胞(例えば、マウスB細胞ハイブリドーマ細胞又はEBV不死化B細胞)から抗体又は抗原結合性断片を調製及び単離することを含み得る。動物を免疫化する、例えば、抗原又は抗原をコードするDNAを用いて動物(例えば、マウス)を免疫化するための方法を使用することもでき、免疫化された動物から抗体を発現するB細胞を単離することができる。抗体を発現するB細胞を不死化すること、例えば、ハイブリドーマ又はEBV不死化B細胞として調製することが好ましい。本発明の抗体又はその抗原結合性断片をコードする核酸分子又は発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、次いで、本発明の抗ネクチン-4又はその抗原結合性断片を宿主細胞から発現させることもできる。一部の実施形態では、本発明の抗ネクチン-4抗体を、免疫化された動物から、例えば、ヒトネクチン-4タンパク質を用いて免疫化されたマウスから得る。
【0145】
多重特異性抗体
一態様では、本発明は、本発明の抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片、及び少なくとも1つの他の抗体又はその抗原結合性断片又は抗体類似体を含み、その結果、ネクチン-4だけでなく少なくとも1つの他の抗原に結合することが可能である、多重特異性抗体を提供する。
【0146】
一実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体、三重特異性抗体又は四重特異性抗体である。一実施形態では、多重特異性抗体は、第1のscFv(又はscdsFv)及び第2のscFv(又はscdsFv)を含む二重特異性ダイアボディであり、ここで、第1のscFv(又はscdsFv)は、短いペプチドリンカーによって連結した本発明のVHと他の抗体のVLとを含み、第2のscFv(又はscdsFv)は、短いペプチドリンカーによって連結した本発明のVLと他の抗体のVHとを含み、他の抗体は、ネクチン-4以外の抗原に結合するものであり、短いペプチドリンカーは、5~10アミノ酸残基を含む。
【0147】
一実施形態では、他の抗原は、細胞表面タンパク質、受容体又は受容体サブユニットである。細胞表面タンパク質は、例えば、免疫細胞受容体であり得る。免疫細胞は、例えば、免疫エフェクター細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、細胞傷害性T(CTL)細胞などであり得る。好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、ネクチン-4とPD-1の両方に結合し得る。
【0148】
多重特異性抗体は、多価抗体であり、例えば、二価、三価、四価又はそれよりも多価であり得る。
【0149】
好ましい実施形態では、多重特異性抗体は、scFv、dsFv、scdsFv、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)からなる群から選択される抗原結合性断片を含む。
【0150】
多重特異性抗体は、抗体重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をさらに含んでもよい。重鎖定常領域は、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、又はこれらの組合せの少なくとも一部分から選択されるアミノ酸配列を含んでもよい。重鎖定常領域は、CH1を有することが好ましい。
【0151】
目的の抗体又は抗体断片を使用して多重特異性抗体を構築するための方法は当業者には周知である(例えば、国際特許出願公開第WO93/08829号;Sureshら、(1986)Methods in Enzymology、121:210;Trauneckerら、(1991)EMBO、10:3655-3659を参照されたい)。
【0152】
多重特異性抗体は、当技術分野で公知の種々の技法を使用して作製及び単離することができる。例えば、組換えDNA技法を使用して、多重特異性抗体をコードする核酸分子を得ることができ、任意選択で、核酸分子を発現ベクターにクローニングし、次いで、宿主細胞を核酸分子又は発現ベクターで形質転換し、形質転換された宿主細胞を適切な条件下で培養して核酸又は発現ベクターを発現させ、最終的に、多重特異性抗体を宿主細胞又はその培養培地から単離及び精製する。
【0153】
融合タンパク質
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、及び追加的な生物活性ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0154】
好ましい実施形態では、追加的な生物活性ポリペプチドは、治療活性、結合活性又は酵素活性を有するポリペプチド又はタンパク質である。生物活性ポリペプチドの非限定的な例としては、これだけに限定されないが、タンパク質毒素(例えば、ジフテリア毒素、リシン)、酵素(例えば、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、サイトカインを挙げることができる。
【0155】
核酸、ベクター及び宿主細胞
別の態様では、本発明は、本発明の抗ネクチン-4抗体又は抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。核酸は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、免疫化された動物、不死化細胞(例えば、マウスB細胞ハイブリドーマ細胞、EBV媒介性不死化B細胞)から単離することによって、又は化学合成によって、得ることができる。本発明の核酸分子を、発現のために使用する宿主細胞に対してコドン最適化することができる。核酸分子を単離することができる。
【0156】
さらに別の態様では、本発明は、核酸分子を含むベクターも提供する。一実施形態では、本発明の核酸分子を組換え核酸として調製する。一実施形態では、本発明の核酸分子を発現ベクターにクローニングする。発現ベクターは、調節配列及び抗生物質耐性遺伝子などの追加的なポリヌクレオチド配列をさらに含んでもよい。本発明の核酸を含む組換え核酸は、例えば、化学合成、組換えDNA技法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法)などの当技術分野で周知の技法を使用して調製することができる(Sambrook,J.、E.F.Fritsch、及びT.Maniatis.(1989)。Molecular cloning:a laboratory manual、2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。発現ベクターは、ポリペプチド又はタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列も含んでもよく、ここで、ポリペプチド又はタンパク質は、発現された抗体又は抗原結合性断片の検出及び/又は単離を容易にすることができるものである。そのようなポリペプチド又はタンパク質としては、これだけに限定されないが、アフィニティータグ(例えば、ビオチン、ポリヒスチジンタグ(His)、又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GSH)タグ)、プロテアーゼ切断部位を含むポリペプチド、及びレポータータンパク質(例えば、蛍光タンパク質)を挙げることができる。本発明の核酸分子は、1つ又は複数のベクター内に存在し得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、DNAプラスミド、例えば、細菌細胞、酵母細胞、又は哺乳動物細胞における発現のためのDNAプラスミドである。他の実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクターである。他の実施形態では、発現ベクターは、ファージベクター又はファージミドベクターである。
【0157】
本発明は、上記の少なくとも1つの核酸又はベクターを含む宿主細胞も提供する。好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞を使用して、本発明の抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片を発現させる。宿主細胞の例としては、これだけに限定されないが、原核細胞(例えば、細菌、例えば、大腸菌(E.coli))、真核細胞(例えば、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞)が挙げられる。
【0158】
細菌(例えば、大腸菌BL21(DE3))は、Fv、scFv、Fab及びFab’断片などの小さな抗原結合性断片の発現に特に有利である。一部の実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸分子を単一のベクターにクローニングし、BL21(DE3)に導入する。抗体発現に適した哺乳動物宿主細胞としては、これだけに限定されないが、骨髄腫細胞、HeLa細胞、HEK細胞(例えば、HEK293細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び抗体発現に適した他の哺乳動物細胞が挙げられる。
【0159】
本発明は、本発明の抗ネクチン-4抗体又は抗原結合性断片を宿主細胞において産生させるための方法であって、
(I)宿主細胞を本明細書に記載の少なくとも1つの核酸又は発現ベクターで形質転換するステップと、
(II)形質転換された宿主細胞を適切な条件下で培養して、核酸又は発現ベクターを発現させるステップと、
(III)本発明の抗体又は抗原結合性断片を宿主細胞又はその培養培地から単離及び精製するステップと
を含む、方法も提供する。
【0160】
一部の実施形態では、重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含む単一のベクターを使用する。一部の実施形態では、2つのベクターを使用し、ここで、一方は抗体軽鎖をコードし、他方は抗体重鎖をコードする。一部の実施形態では、宿主細胞は、抗体又は抗体断片の溶解性、安定性及び/又はフォールディングの増大に役立ち得るパートナープラスミドをさらに含む。抗体を宿主細胞から単離及び精製するための技法は当業者には周知である。
【0161】
抗体コンジュゲート
本発明は、少なくとも1つの治療剤とコンジュゲートした本発明の抗体又はその抗原結合性断片を含む、抗体コンジュゲートも提供する。抗体薬物コンジュゲート(ADC)が抗体コンジュゲートの典型的な型であり、ここで、治療剤は、例えば、細胞傷害作用剤であってもよい。
【0162】
一部の好ましい実施形態では、本発明の抗体コンジュゲートは、ネクチン-4陽性標的細胞を標的とし、標的細胞を追跡する又は死滅させることが可能なものである。一部のより好ましい実施形態では、本発明の抗体コンジュゲートは、ネクチン-4陽性がん細胞を選択的に死滅させるものである。一部の実施形態では、がん細胞は、胃がん細胞、乳がん細胞、膀胱がん細胞、肺がん細胞、肝臓がん細胞、結腸がん細胞、直腸がん細胞、頭頸部がん細胞、及び卵巣がん細胞から選択される。
【0163】
治療剤は、細胞傷害作用剤、治療用抗体(例えば、追加的な抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片)、放射性同位元素、オリゴヌクレオチド及びその類似体(例えば、干渉RNA)、生物学的に活性なペプチド、タンパク質毒素(例えば、ジフテリア毒素、リシン)並びに酵素(例えば、ウレアーゼ)からなる群から選択することができる。細胞傷害作用剤とは、細胞の活性又は機能を阻害する若しくは低下させ、及び/又は細胞を死滅させる物質を指す。細胞傷害作用剤の例としては、これだけに限定されないが、メイタンシノイド(例えば、マイタンシン)、アウリスタチン(auristatin)(例えば、MMAF、MMAE、MMAD)、デュオスタチン、クリプトフィシン、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、コルヒチン、ドラスタチン、タキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エンジイン抗生物質、サイトカラシン、カンプトテシン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドキソルビシン)、細胞傷害性抗生物質(例えば、マイトマイシン、アクチノマイシン、デュオカルマイシン(例えば、CC-1065)、アウロマイシン、デュオマイシン、カリチアマイシン、エンドマイシン、フェノマイシン)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、カリチアマイシン、シスプラチン、臭化エチジウム、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトラマイシン、プラジエノライド、ポドフィロトキシン、エトポシド、ミトキサントロン、5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ネララビン、カルムスチン、ロムスチン、メトトレキサート、メルファラン、テニポシド、グルココルチコイドなどを挙げることができる。
【0164】
放射性同位元素は、例えば、212Bi、213Bi、131I、125I、111In、177Lu、186Re、188Re、153Sm、90Yから選択することができる。放射性同位元素で標識された抗体は、放射性免疫コンジュゲートと称されることもある。
【0165】
一実施形態では、治療剤は、抗腫瘍生物活性を有する分子である。抗腫瘍生物活性を有する分子としては、これだけに限定されないが、細胞傷害作用剤、化学療法剤、放射性同位元素、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍特異的抗原を標的とする抗体、及び他の抗腫瘍薬物が挙げられる。好ましい実施形態では、治療剤は細胞傷害作用剤である。さらに別の好ましい実施形態では、治療剤は放射性同位元素である。特定の実施形態では、治療剤は、
【化1】

である。
【0166】
治療剤と本発明の抗体又は抗原結合性断片を当技術分野で公知の任意の技法を使用してリンカーを通じてコンジュゲートすることができる。リンカーは、共有結合性コンジュゲーションのための反応性基、例えば、アミン、ヒドロキシルアミン、マレイミド、カルボキシル、フェニル、チオール、スルフヒドリル、又はヒドロキシル基を含んでもよい。リンカーは、切断可能であっても切断不可能であってもよい。切断可能なリンカーは、例えば、酵素的に切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼ切断部位を含有するペプチド)、pH感受性リンカー(例えば、ヒドラゾン-型リンカー)、又は還元可能なリンカー(例えば、ジスルフィド結合)である。
【0167】
一実施形態では、リンカーは、アミン、ヒドロキシルアミン、マレイミド、カルボキシル、フェニル、チオール、スルフヒドリル、及びヒドロキシル基からなる群から選択される反応性基を含む。一実施形態では、リンカーは化学結合である。一実施形態では、リンカーは、2~10アミノ酸からなるアミノ酸又はペプチドを含む。アミノ酸は、天然アミノ酸であってもよく、非天然アミノ酸であってもよい。
【0168】
好ましい実施形態では、リンカーは、Val、Cit、Phe、Lys、D-Val、Leu、Gly、Ala、Asn、
【化2】

(式中、位置1及び2のうちの一方は、リンカーが本発明の抗体又はその抗原結合性断片に付着する位置を表し、他方は、リンカーが治療剤に付着する位置である)
からなる群から選択される。
【0169】
一部の実施形態では、治療剤とリンカーをコンジュゲートして中間体を形成した後、本発明の抗体又は抗原結合性断片とのコンジュゲーションを行う。一部の実施形態では、中間体を、本発明の抗体又は抗原結合性断片のスルフヒドリル基とチオエーテル結合を形成することによって連結する。そのような中間体の構造及び調製方法並びにそのような中間体を使用して抗体コンジュゲートを調製する方法は、例えば、関連性のある内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2019/114666号に記載されている。
【0170】
一実施形態では、抗体コンジュゲートは、式(I)、
【数1】

(式中、Aは、本発明の抗体又はその抗原結合性断片であり、Lはリンカーであり、Lは、2~10アミノ酸からなるアミノ酸又はペプチドを含むことが好ましく、Lは、Val、Cit、Phe、Lys、D-Val、Leu、Gly、Ala、Asn、
【化3】

(式中、位置1及び2のうちの一方は、LとAが接続する位置を表し、他方は、LとDが接続する位置を表す)
から選択されることがさらに好ましく、
Dは、治療剤であり、Dは、細胞傷害作用剤、治療用抗体、放射性同位元素、オリゴヌクレオチド及びその類似体、生物学的に活性なペプチド、タンパク質毒素及び酵素からなる群から選択されることが好ましく、Dは、抗腫瘍生物活性分子であることがより好ましく、Dは、
【化4】

であることがさらに好ましく、
γは、Aと連結した(L-D)部分の数であり、1から10までの整数である)
の構造を有する。
【0171】
特定の実施形態では、(L-D)部分は、本発明の抗体又はその抗原結合性断片のスルフヒドリル基と式(1)の化合物との間チオエーテル結合形成ることによって接続した式(1)の構造を有し
【化5】

本発明の抗体コンジュゲートは、式(2):
【化6】

(式中、Aは本発明の抗体又は抗原結合性断片であり、γは、Aのスルフヒドリル基とチオエーテル結合を形成することによってAと連結する(L-D)部分の数であり、1から10までの整数である)
の構造を有する。特定の実施形態では、Aは、本発明の抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体である。
【0172】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体コンジュゲートを含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物中の治療剤と本発明の抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片のモル比(DAR値)は、1から10の間の少数又は整数、例えば、1から8の間の少数又は整数、例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.79、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、6.95、7.0、7.03、7.1、7.12、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0などである。
【0173】
CAR及びCARを発現する免疫エフェクター細胞
本発明の抗体又はその抗原結合性断片を使用して、キメラ抗原受容体(CAR)を構築することができる。したがって、別の態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)も提供する。
【0174】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は、例えば、がん細胞の表面上の抗原に特異的に結合する抗原結合性断片によって標的(例えば、がん細胞の表面に発現される抗原)を特異的に認識し、それに結合し、また、表面にCARを発現する細胞(例えば、免疫エフェクター細胞)に標的特異性を付与することができる、人工的な受容体である。CARにより標的が認識されると、CARを発現する免疫エフェクター細胞の活性化及び/又は増大がもたらされることが好ましい。
【0175】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、ネクチン-4に特異的に結合する本発明の抗体又はその抗原結合性断片(例えば、scFv)、膜貫通ドメイン、及び1つ又は複数の細胞内T細胞シグナルドメインを含む。そのような実施形態では、本発明は、核酸分子も提供し、ここで、核酸分子にキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含めることができ、キメラ抗原受容体のヌクレオチド配列は、本発明の抗体又はその抗原結合性断片(例えば、ScFv)をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、本発明の抗体の抗原結合性断片(例えば、ScFv)を含むキメラ抗原受容体をコードする。核酸分子を単離することができる。
【0176】
さらに別の態様では、本発明は、本発明のCARを表面に発現するように遺伝子改変された免疫エフェクター細胞も提供する。免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球(例えば、細胞傷害性T細胞(CTL))、ナチュラルキラー細胞(NK)及びナチュラルキラーT細胞(NKT)からなる群から選択されることが好ましい。免疫エフェクター細胞は、ネクチン-4陽性疾患細胞(例えば、ネクチン-4陽性がん細胞)を標的とするものであり、活性化されて、例えば、ネクチン-4陽性がん細胞死を引き起こすエフェクター機能を開始する。
【0177】
さらに別の態様では、本発明は、CARをコードする核酸分子、核酸分子を含む発現ベクター、及びCARを発現する免疫細胞(例えば、CTL)にも関する。
【0178】
医薬組成物
本発明は、抗体又は抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、組成物、CARを発現する免疫エフェクター細胞、本発明の多重特異性抗体又は融合タンパク質、並びに薬学的に許容できる担体及び/賦形剤を含む医薬組成物も提供する。
【0179】
本発明で提供される医薬組成物は、これだけに限定されないが、固形、半固形、液体、粉末、又は凍結乾燥形態を含めた種々の剤形をとることができる。
【0180】
剤形に応じて、薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤として、これだけに限定されないが、希釈剤、結合剤及び接着剤、滑沢剤、崩壊剤、保存剤、ビヒクル、分散剤、流動促進剤、甘味剤、コーティング、構造形成賦形剤、保存剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)、可溶化剤、ゲル化剤、軟化剤、溶媒(例えば、水、アルコール、酢酸、及びシロップ)、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、及び酢酸緩衝液)、界面活性物質(例えば、非イオン界面活性物質、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー又はポリエチレングリコールなど)、抗細菌剤、抗真菌剤、等張化剤(例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース)、吸収遅延剤、キレート剤及び乳化剤を挙げることができる。
【0181】
医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入によるもの)に適したものであることが好ましい。抗体又はその抗原結合性断片又は抗体コンジュゲートを含む組成物に関して、好ましい剤形は、一般に、例えば、注射液、凍結乾燥粉末であり得る。抗体又はその抗原結合性断片又は抗体コンジュゲートを含む組成物に関して、適切な担体及び/又は賦形剤は、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩緩衝液)、等張化剤(例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース)、非イオン界面活性物質(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー)又はこれらの組合せから選択することができる。
【0182】
医薬組成物は、一般に、製造及び保管の条件下で滅菌状態及び安定である。所望の量の活性物質(例えば、抗体又は本発明の抗体コンジュゲート)を適切な溶媒中に混合し、上記の担体及び/又は賦形剤のうちの1つ又は組合せを添加し、必要に応じて、その後、滅菌精密濾過を行うことにより、滅菌注射液を調製することができる。一般に、分散は、活性物質を基本的な分散媒及び上に列挙されている必要な他の成分を含有する滅菌担体及び/又は賦形剤に組み入れることによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合では、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液を真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)して、任意の所望の追加的な成分と組み合わさった活性成分の粉末を得ることを含む。
【0183】
本発明で提供される医薬組成物を、対象に、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、全身又は局部投与によって投与することができる。投与経路としては、これだけに限定されないが、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、筋肉内、皮下、又は腔内)、局部、硬膜外、又は粘膜(例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下又は局所投与が挙げられる。投与される厳密な投薬量は、例えば、医薬組成物の代謝特性、処置の持続時間、特定の化合物の排出速度、処置の目的、投与経路、並びに、患者の年齢、健康、体重、性別、食事、病歴などの対象の状態、並びに医学の分野で周知の他の因子などの様々な因子に依存することが当業者には理解されよう。投与方法は、例えば、注射又は注入の場合がある。
【0184】
一般的な指針として、本発明の抗体コンジュゲートは、約0.0001~100mg/kg、より一般には対象の体重1kg当たり0.01~20mgの範囲の投薬量で投与することができる。例えば、投与される投薬量は、体重1kg当たり0.3mg、体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり3mg、体重1kg当たり5mg、体重1kg当たり10mg又は体重1kg当たり20mg、又は体重1kg当たり1~20mgの範囲の場合がある。必要とされる例示的な治療レジメンは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1カ月に1回、3カ月に1回、3~6カ月に1回、又は最初の投薬間隔のわずかな短縮及び後の投薬間隔の延長の場合がある。投与形式は、点滴静注の場合がある。
【0185】
ネクチン-4関連疾患
本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物、又はそれから調製した医薬を疾患の処置及び/又は予防のために使用することができる。疾患は、ネクチン-4に関連するものである。疾患は、ネクチン-4の異常な発現に関連するものであることが好ましい。「異常な発現」という用語は、試料中のタンパク質の発現が、正常な状態にある試料(又は標準試料、例えば、ネクチン-4の異常な発現に関連する疾患に罹患していない対象由来の試料)と比較して、高すぎる又は低すぎることを指す。
【0186】
疾患は、ネクチン-4の高発現を特徴とするものであることが好ましい。例えば、疾患(例えば、膀胱がん)を有する又は疾患(例えば、膀胱がん)を有する疑いがある対象の組織(例えば、膀胱)ではネクチン-4が高度に発現されるが、一方、疾患を有さない対象の組織ではネクチン-4は発現されないか又は低レベルで発現される。
【0187】
疾患は、がんであることが好ましい。がんは、胃がん、肝臓がん、肝細胞癌、膀胱がん、尿路上皮がん、尿道がん、腎盂がん、尿管がん、肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、乳管がん、トリプルネガティブ乳がん、膵がん、卵巣がん、頭頸部がん、結腸がん、直腸がん及び食道がんからなる群から選択されることが好ましい。
【0188】
がん治療は、例えば、これだけに限定されないが、腫瘍退縮の程度、腫瘍の重量又はサイズの変化、増悪時間、生存時間、無増悪生存期間、奏効率、応答の持続時間、生活の質、タンパク質の発現及び/又は活性などによって評価することができる。
【0189】
診断及び処置のための使用
本発明の抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片又は抗体コンジュゲートを、ネクチン-4に関連する疾患及び/又は障害を検出、診断又はモニタリングするために、診断目的で使用することができる。例えば、本発明で提供される抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片又は抗体コンジュゲートを、in situ、in vivo、ex vivo及びin vitroにおける診断アッセイ又はイメージングアッセイに使用することができる。
【0190】
一部の実施形態では、対象におけるネクチン-4の発現レベルを検出するため、及び/又はネクチン-4を発現する細胞を追跡するために、本発明の抗体又は抗原結合性断片を少なくとも1つの標識とコンジュゲートして、標識された抗体を得ることができる。そのような標識された抗体も、本発明の抗体又は抗原結合性断片の範囲内に包含される。標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、蛍光色素、放射性同位元素、ビオチン及びコロイド金からなる群から選択されることが好ましい。標識を抗体とコンジュゲートするための技法は当業者には周知である。
【0191】
一態様では、本発明は、試料中のネクチン-4の存在を検出する又はネクチン-4の発現レベルを決定する方法であって、
(a)試料に、本発明の抗体又は抗原結合性断片又は標識された抗体を接触させるステップと、
(b)試料中の抗体又は抗原結合性断片とネクチン-4の免疫複合体の形成を検出するか又はその量を決定して、試料中のネクチン-4の存在を検出する又はネクチン-4の発現を決定するステップと
を含む、方法を提供する。
【0192】
本発明は、対象におけるネクチン-4に関連する疾患を診断する方法であって、
(a)対象の試料を得るステップと、
(b)本発明の抗体又は抗原結合性断片又は標識された抗体を使用して、試料中のネクチン-4の発現レベルを検出するステップと、
(c)ネクチン-4の発現レベルと参照タンパク質の発現レベルと比較するステップと
を含み、参照タンパク質の発現レベルと比較したネクチン-4の発現レベルの上昇又は低下により、ネクチン-4の異常な発現が示される、方法も提供する。
【0193】
参照タンパク質は、標準試料中のネクチン-4であってもよく、標準試料は、例えば、ネクチン-4の異常な発現に関連する疾患に罹患していない対象由来の試料であってもよい。試料は、細胞、組織、体液などの任意の形態であってもよい。上記の検出は、これだけに限定されないが、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫組織化学的アッセイ(IHC)、ELISAアッセイを含めた、当技術分野で公知の技法を使用して実施することができる。
【0194】
本発明は、疾患の処置及び/又は予防における、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物の使用にも関する。
【0195】
本発明は、疾患の処置及び/又は予防のために使用される医薬の製造における、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物の使用にも関する。一実施形態では、疾患は、本明細書に記載のがんである。
【0196】
本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物を、本明細書に記載の治療剤のうちの少なくとも1つ、又は複数と組み合わせて投与することができる。組合せ投与は限定されない。例えば、上記の治療剤を全て同時に投与することもでき、別々に投与することもできる。別々に投与する場合(投与レジメンが相互に異なる場合)、中断せずに連続的に投与することもでき、所定の間隔で投与することもできる。
【0197】
処置方法
本発明は、それを必要とする対象におけるネクチン-4に関連する疾患を処置する方法も提供する。一実施形態では、疾患は、本明細書に記載のがんである。
【0198】
方法は、対象に、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、組成物、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物を治療有効量で投与するステップを含む。
【0199】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、血管新生阻害、及び緩和ケアからなる群から選択される治療レジメンを施行するステップをさらに含む。
【0200】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、化学療法剤、放射性同位元素、免疫チェックポイント阻害剤、他の抗原を標的とする抗体、及び他の抗腫瘍薬物からなる群から選択される1つ又は複数の治療剤を投与するステップをさらに含む。化学療法剤としては、例えば、代謝拮抗薬、アルキル化剤、細胞傷害作用剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤を挙げることができる。他の抗腫瘍薬物としては、例えば、血管新生阻害剤、脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路遮断薬、mTOR阻害剤、p53/mdm2阻害剤、PARP阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カーフィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブ、オプロゾミブ)及びチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、BTK阻害剤)を挙げることができる。化学療法剤の例としては、これだけに限定されないが、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、クロルメチン、クロラムブシル、ロムスチン、カルムスチン(BCNU)、CCNU、シスプラチン(DDP)、カルボプラチン(CBP)、オキサリプラチン(OXA)、メトトレキサート(MTX)、6-メルカプトプリン(6-MP)、5-フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセルリポソーム、アクチノマイシンD、イダルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシンが挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤としては、これだけに限定されないが、PD-1、PD-L1、CTLA4、LAG-3、TIM-3又はVISTAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片が挙げられる。放射性同位元素としては、例えば、212Bi、213Bi、131I、125I、111In、177Lu、186Re、188Re、153Sm、90Yが挙げることができる。
【0201】
一部の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物を化学療法剤と組み合わせて使用する。一実施形態では、化学療法剤は、シスプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、及びこれらの組合せからなる群から選択される。他の実施形態では、本発明の抗体コンジュゲートを免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用する。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1抗体又はその抗原結合性断片、抗PD-1抗体又はその抗原結合性断片、及びこれらの組合せからなる群から選択される。さらに他の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、多重特異性抗体、融合タンパク質又は医薬組成物を放射性同位元素と組み合わせて使用する。
【0202】
キット
本発明は、発明の抗体又は抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、標識された抗体、多重特異性抗体、融合タンパク質、医薬組成物又は免疫エフェクター細胞、及び使用に関する指示を含むキットも提供する。キットは、適切な容器も含んでもよい。ある特定の実施形態では、キットは、投与用のデバイスをさらに含む。一般には、キットは、キットの内容物の意図された使用及び/又は使用方法を示すために使用されるラベルも含む。「ラベル」という用語は、キット上若しくはキットに伴う、又は他の方法でキットと共に供給される任意の書面の又は記録された材料を含むものとする。
【0203】
有益な効果
特定の態様では、本発明は、抗ネクチン-4抗体又はその抗原結合性断片、特に抗ネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体を提供する。本発明の抗体は、ネクチン-4に対して高い親和性を有する:実施例において、ELISA、バイオフィルム干渉技術及びフローサイトメトリーなどの様々な方法を使用して、本発明の抗体のネクチン-4に対する結合親和性を検出し、結果から、本発明の抗ネクチン-4抗体がin vitroにおける精製されたネクチン-4及び細胞表面ネクチン-4のどちらに対しても高い親和性を有することが示されている。驚いたことに、ヒト化モノクローナル抗体である31HZ、56HZ及び74HZのヒトネクチン-4及びカニクイザルネクチン-4に対する動的親和性は全て先行技術のエンホルツマブよりも良好であり、これにより、本発明の抗体がin vivo結合活性に関して、ネクチン-4に対するより高い親和性を有することが示され、又、これは、抗体である31HZ、56HZ及び74HZのエンドサトーシス活性がより高いことによっても確認される。さらに、本発明の抗体は、ネクチン-4に対して高い特異性を有する:31HZ、56HZ及び74HZは全てヒトネクチン-4を特異的に認識するが、ネクチン-1、ネクチン-2及びネクチン-3は認識しない。さらに、本発明の抗体は、ネクチン-4とネクチン-1の結合を遮断し、31HZ、56HZ及び74HZのネクチン-4に対する競合的な結合能はエンホルツマブのものと同等である。
【0204】
別の特定の態様では、本発明は、ネクチン-4陽性細胞を標的とすることができる抗ネクチン-4抗体コンジュゲートも提供する。本発明の抗体コンジュゲートは、高い親和性及び高い特異性でネクチン-4陽性細胞を標的とすることができ、親和性及び特異性が高いことにより、オフターゲットの毒作用を低減し、副作用を低減することができるので、がんの処置又はin vivo診断に非常に有益である。実施例ではこの点も確認される。本発明のADCは、ヒトネクチン-4を内因性に発現するヒト乳管がん細胞、ヒト胃がん細胞及びヒト乳がん細胞などの種々の腫瘍細胞株に対して強力な死滅活性を有する。さらに、マウス非小細胞肺がん異種移植モデルにおいて、本発明のADCは有意な腫瘍阻害活性を示し、又、良好な安全性を有する。
【実施例
【0205】
以下の実施例は、本発明を単に例示するものであり、したがって、本発明をいかようにも限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例では、特定の条件を伴わない実験方法は、従来の方法及び条件に従って、又は製品の指示に従って行われた。
【0206】
実施例1:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の調製
1.1 ヒトネクチン-4を過剰発現する細胞株の構築
ヒトネクチン-4抗体の特異性及び機能を検証するために、ヒトネクチン-4の完全なコード配列(Uniprot ID:Q96NY8-1)(Nanjing GenScript Biotechnology Co.,Ltd.により合成されたもの)をレンチウイルスベクターpLVX-IRES-puroにクローニングし、文献(Mohammadi Zら、Mol Biotechnol.2015年9月;57(9):793-800)に記載されているレンチウイルスパッケージング系によってウイルスを調製し、得られたウイルスを使用して、A549非小細胞肺がん細胞(ATCC)及びT24ヒト膀胱移行上皮癌細胞(ATCC)それぞれに感染させ、ピューロマイシンスクリーニング及びモノクローナル選択により、ヒトネクチン-4を過剰発現するモノクローナルA549-ネクチン-4安定細胞株及びT24-ネクチン-4安定細胞株を得た。
【0207】
1.2 ヒトネクチン-4を過剰発現する細胞株の検出
A549-ネクチン-4安定細胞株及びT24-ネクチン-4安定細胞株をフローサイトメトリー(フローサイトメーター:Beckman、CytoFlex;検出用抗体エンホルツマブ、国際特許出願公開第WO2012/047724号に記載されている配列を有する)によって同定し、これらの細胞がヒトネクチン-4を正確に発現していることが確認された。図1A及び1Bに示されている通り、フローサイトメトリー結果から、A549-ネクチン-4及びT24-ネクチン-4がどちらも高い陽性率(ほぼ100%)を有し、これにより、A549-ネクチン-4及びT24-ネクチン-4がどちらも、後の実験に使用することができる十分に均一な安定細胞株であることが示された。
【0208】
1.3 抗ヒトネクチン-4マウスモノクローナル抗体の調製
野生型マウスをタンパク質による免疫化によって免疫化して、抗ヒトネクチン-4マウスモノクローナル抗体を得た。完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化されたヒトネクチン-4タンパク質(Sino Biological、Cat:19771-H08H)を使用して、それぞれ5~6週齢のBalb/cマウス2匹及びC57マウス2匹を免疫化した。具体的には、タンパク質50μgを使用して皮下一次免疫を行い、次いで、2週間毎に不完全フロイントアジュバント(IFA)で乳化されたネクチン-4タンパク質25μgを使用して腹腔内追加免疫を行い、追加免疫を3回行った後、ネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞T47D(ヒト乳がん細胞の一種)を細胞5×10個で使用して、最終的な腹腔内追加免疫を行い、3~5日後、脾臓細胞を取得して、ハイブリドーマ融合を行った。マウス脾臓細胞をSp2/0(ATCC、Cat#CRL-1581)マウス骨髄腫細胞株と標準の融合手順を使用してPEGにより融合し、次いで、HATを使用して、加圧スクリーニングを実施し、10~14日後にELISAスクリーニングを実施し、約200の、ネクチン-4タンパク質に結合した陽性クローンを得た。フローサイトメトリーによるさらなるスクリーニングを通じて、T47D腫瘍細胞を認識することができる3つの陽性ハイブリドーマクローンをサブクローニングのために得、最終的に、限界希釈法によってサブクローニング選別を実施して、単クローンを得、それらの番号は、それぞれ31#、56#及び74#であった。
【0209】
1.4 抗ヒトネクチン-4マウス抗体の親和性検出
候補分子のヒトネクチン-4に対する親和性をELISA法によって検出した。ハイブリドーマ単クローン31#、56#及び74#を、血清を伴わずに培養して、上清3~10mLを得、次いで、プロテインA(MabSelect SuRe,GE)によって精製してマウス抗体を得た。
【0210】
ハイブリドーマ細胞株31#、56#及び74#の培養上清から単離され、精製されたマウスモノクローナル抗体の親和性をELISAによって決定した。ヒトネクチン-4(Sino Biological、Cat:19771-H08H)を炭酸(CBS)緩衝液で1μg/mLまで希釈し、96ウェルプレートに100μL/ウェルの体積で添加し、4℃で16~20時間置いた。96ウェルプレート中のCBS緩衝液をピペット操作によって廃棄し、プレートをPBST(pH7.4、0.05%のTween20を含有するPBS)緩衝液で1回洗浄し、2%脱脂粉乳を含有するPBST(ブロッキング溶液)を200μL/ウェルで添加し、ブロッキングのために室温で1時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去し、プレートをPBST緩衝液で3回洗浄した。試験する抗ネクチン-4マウス抗体をPBST/2%脱脂粉乳で適当な濃度まで希釈し、次いで、プレートに100μL/ウェルの体積で添加し、室温で1.5時間インキュベートした。反応系を除去し、プレートをPBSTで3回洗浄し、PBST/1%脱脂粉乳で希釈した(希釈比1:5000)HRP標識されたヤギ抗マウスIgG二次抗体(Jackson Laboratoryから購入したもの)を50μL/ウェルで添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄した後、TMBを100μL/ウェルで添加し、発色のために室温で5~10分間インキュベートした。0.2Mの硫酸を50μL/ウェルで添加することによって発色を停止させた。マイクロプレートリーダーを使用して、光学濃度(O.D.)を二波長450/620nmで検出した。
【0211】
検出結果が図2及び表3に示されている。3つの抗ヒトネクチン-4マウス抗体の全てが、ヒトネクチン-4タンパク質に高い親和性で結合することができ、EC50は30~70pMにわたった。
【表4】
【0212】
1.5 抗ネクチン-4マウスモノクローナル抗体の可変領域の増幅
ハイブリドーマ細胞を細胞約8,000~10,000個まで培養し、次いで、細胞を溶解させ、第1鎖cDNAを、cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Sci.Cat#18080-200)を使用して合成した。VH及びVK遺伝子をcDNAからプライマーを使用してPCRによって増幅し、PCR産物をDNA精製キット(Qiagen、Cat#28104)によって精製し、PUC57ベクターにライゲーションした。各ライゲーション反応についておよそ5つのクローンを選び取り、配列決定を行った。配列をVector NTI 11.5(Thermo Fisher Sci.)及びSequencer 5.4.6(Genecodes)によって解析した。抗ヒトネクチン-4マウス抗体の可変領域配列及びCDR配列をIMGT及びabYsisによって得、それを以下の表4に示した。
【表5】
【0213】
1.6 抗ヒトネクチン-4マウス抗体のヒト化
マウス抗体31#、56#、及び74#を、CDR移植によってヒト化した。手短に述べると、ヒト化は、以下のステップを含むものであった:マウスモノクローナル抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系列抗体のアミノ酸配列とアラインメントして、高い相同性及びヒト生殖細胞系列フレームワーク配列としてより良好な物理化学特性を有する配列を見いだした;HLA-DR親和性を分析及び調査し、低親和性を有するヒト生殖細胞系列フレームワーク配列を選択した;次いで、マウス抗体の6つのCDRを選択された重鎖及び軽鎖フレームワーク配列それぞれに移植した。
【0214】
さらに、コンピュータシミュレーション技術を使用し、及び分子ドッキングを使用して、可変領域及びその周囲の領域のフレームワークアミノ酸配列を解析し、その空間的な3次元結合様式を調査した。静電気力、ファンデルワールス力、親水性及び疎水性、及びエントロピー値を算出することにより、ネクチン-4タンパク質と相互作用し、空間的なフレームワークを維持することができる、マウス抗体アミノ酸配列内の重要なアミノ酸を解析し、これらのマウスアミノ酸を移植された抗体において保持した。つまり、マウス抗体の抗原結合能がヒト化抗体において最大限保持されるように、ヒト化鋳型のFR領域内のアミノ酸残基に対して一連の復帰変異を実施した。
【0215】
上記の方法に従って、マウス抗体31#、56#及び74#のCDRに基づくヒト化抗体を構築し、それらのヒト化抗体を、それぞれ31HZ、56HZ及び74HZと名付けた;各抗体の重鎖定常領域はヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号61)であり、各抗体の軽鎖定常領域はヒトκ軽鎖定常領域(配列番号62)であった。構築されたヒト化抗体31HZ、56HZ及び74HZの軽鎖CDRアミノ酸配列はそれぞれ31#、56#及び74#の軽鎖CDRと同一であった。構築されたヒト化抗体31HZ、56HZ及び74HZの重鎖CDRのアミノ酸配列を表5.1に示す:
【表6】
【0216】
さらに、ヒト化抗体31HZ、56HZ及び74HZの可変領域及び定常領域のアミノ酸配列を表5.2に示す:
【表7】
【0217】
1.7 抗ヒトネクチン-4ヒト化抗体の調製
上記の抗ヒトネクチン-4ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコドン最適化によって合成し、プラスミドptt5(Nanjing GenScript Biotechnology Co.,Ltd.に寄託されたもの)にライゲーションした。重鎖及び軽鎖に対応するプラスミドをCHO-E細胞に同時にトランスフェクトし、上清をプロテインA(MabSelect SuRe、GE)によって精製して、抗ヒトネクチン-4ヒト化抗体を得た。
【0218】
実施例2:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の親和性の検出
2.1 異なる種のネクチン-4タンパク質に対する抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の親和性の検出
異なる種のネクチン-4タンパク質に対する抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の親和性をELISAによって検出した。具体的なステップは以下の通りであった:ヒトネクチン-4又はカニクイザルネクチン-4抗原を、CBSコーティング溶液(NaCOを0.32g及びNaHCOを0.59g秤量し、脱イオン水中に溶解させ、最大200mLにした)で1μg/mLまで希釈し、ELISAプレート上にウェル当たり100μLでコーティングし、4℃で一晩静置した;翌日、ウェル内の液体を廃棄し、PBS 300μLで1回洗浄した;PBS(2%BSA含有、BOVOGENから購入、Cat番号BSAS 1.0)100μLを添加し、37℃で2時間ブロッキングした;31HZ、56HZ、74HZ及びエンホルツマブ抗体をPBS(2%BSA含有)で希釈し(1500ng/mLから出発し、3倍希釈、11の濃度点)、100μLを取り、対応するウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした;PBST 300μLで3回洗浄した;HRP標識されたヤギ抗ヒト二次抗体(Jacksonから購入、109-035-00)をPBS(2%BSA含有)で1:10000に希釈し、100μLを取り、対応するウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした;PBST 300μLで5回洗浄した;TMB発色溶液(InnoReagentsから購入、TMB-S-004)100μLを対応するウェルに添加し、室温で5~20分間にわたって発色を実施した;停止させるために2NのHSO 50μLを添加し、OD450nmの読み取りをマイクロプレートリーダー(MDから購入、SpectraMaxM2)で収集し、カーブフィッティングのためにGraphPad Prismにインポートした。
【0219】
実験結果が図3A~3F及び表6に示されており、それらの結果から、31HZのヒトネクチン-4タンパク質及びカニクイザルネクチン-4タンパク質に対する親和性がエンホルツマブのヒトネクチン-4タンパク質及びカニクイザルネクチン-4タンパク質に対する親和性よりも良好であったこと;並びに、56HZ及び74HZのヒトネクチン-4タンパク質及びカニクイザルネクチン-4タンパク質に対する親和性がエンホルツマブのヒトネクチン-4タンパク質及びカニクイザルネクチン-4タンパク質に対する親和性と基本的に同等であったことが示される。
【表8】
【0220】
2.2 異なる種のネクチン-4タンパク質に対する抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の動的親和性の検出
抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の動的親和性を、オクテットフォルテバイオ(Octet Fortebio)(登録商標)を使用して検出した。主要なステップには以下が含まれた:まず、抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体(濃度5μg/mL)をProAセンサーに固定化し、次いで、ヒト又はカニクイザルネクチン-4(400nM、200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、0nMまで段階希釈したもの)との結合反応に供し、完全な反応によって得られた固相中の固着した産物をPBST緩衝液中での解離反応に供した。実験の完了後、結果を、Data Analysis 11.0ソフトウェアを1:1モードで使用してグローバルフィッティングを実施することによって解析し、それにより、抗体の抗原に対する親和定数を得た。
【0221】
実験結果を表7に示した。31HZ、56HZ及び74HZのヒトネクチン-4タンパク質及びカニクイザルネクチン-4タンパク質に対する動的親和性はエンホルツマブのヒトネクチン-4タンパク質及びカニクイザルネクチン-4タンパク質に対する動的親和性よりも良好であった。
【表9】
【0222】
2.3 腫瘍細胞膜表面上のヒトネクチン-4に対する抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の親和性の検出
T47D細胞を使用して、細胞膜表面上のヒトネクチン-4に対する31HZ及び74HZの親和性を検出した。具体的なステップは以下の通りであった:T47D細胞を消化し、遠心分離によって再懸濁させ、PBSで2回洗浄した;細胞をPBS(1%BSA含有)に再懸濁させ、96ウェルチップボトムプレートに細胞3×10個/ウェル、ウェル当たり50μlの体積で広げた;試験する抗体50μLを、最終濃度15μg/mLから出発して4倍の段階希釈、合計10の濃度点で各ウェルに添加した;ヒトIgGを陰性対照として使用した;十分に混合した後、得られた混合物を暗闇中、4℃で1時間にわたって反応させた;PBSを用いた洗浄を3回行い、FITC標識された抗ヒトFc二次抗体(ブランド:BioLegend、製品番号:409322)を添加し、暗闇中、4℃で0.5時間インキュベートした;PBSを用いた洗浄を3回行い、フローサイトメーター(フローサイトメーターブランド:Beckman、モデル:Cytoflex)を使用して検出を行った。
【0223】
同じ方法を使用して、NCI-N87細胞(ヒト胃がん細胞の一種、ATCC)膜表面上のヒトネクチン-4に対する56HZの親和性を検出した。抗体を3.33μg/mLから出発し、3倍希釈、合計10の濃度点とした。
【0224】
実験結果が図4A、4B及び表8に示されており、それらの結果から、31HZ及び56HZの細胞膜表面上のネクチン-4に対する親和性がエンホルツマブの細胞膜表面上のネクチン-4に対する親和性と同等であったことが示される。
【表10】
【0225】
実施例3:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体のエンドサトーシス活性の検出
抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体のエンドサトーシス活性をフローサイトメトリーによって検出した。具体的なステップは以下の通りであった:T47D、MDA-MB-468(ヒト乳がん細胞の一種、ATCC)又はA549-ネクチン-4細胞をトリプシンによって消化し、計数し、細胞をPBS(1%BSA含有)に再懸濁させ、細胞密度を3×10個/mLに調整した;試験する31HZ、56HZ、又は74HZ抗体を、再懸濁させた細胞100μLに最終濃度10μg/mLで添加し、アイソタイプヒトIgGを陰性対照として使用し、氷上で1時間インキュベートした;インキュベーション後に予冷PBSで3回洗浄した後、細胞を細胞培養培地に再懸濁させ、2つの部分に分け、一方の部分は37℃の細胞インキュベーターに入れ、1時間、2時間及び4時間インキュベートし(エンドサイトーシス群)、他方の部分は氷上で維持し、1時間、2時間及び4時間インキュベートした(親和性群);インキュベーション後、予冷PBS用いた洗浄を3回実施し、細胞をPBS(1%BSA含有)50μLに再懸濁させ、抗ヒト蛍光二次抗体(BioLegend)を添加し、4℃で30分間インキュベートした;インキュベーション後、予冷PBSを用いた洗浄を3回実施し、次いで、細胞における蛍光シグナル(平均蛍光強度(MFI)として表される)をフローサイトメーター(Beckman)によって検出し、抗体エンドサイトーシス率を次式に従って算出した:エンドサイトーシス比(%)=[1-(37℃におけるMFI抗体群-37℃におけるMFI対照群)/(氷上でのMFI抗体群-氷上でのMFI対照群)]×100%。
【0226】
T24-ネクチン-4細胞における56HZのエンドサトーシス活性を同じ方法によって検出した。
【0227】
実験結果が図5A~5Dに示されており、それらの結果から、31HZ、56HZ及び74HZのエンドサトーシス活性がエンホルツマブのエンドサトーシス活性よりも良好であったことが示される。
【0228】
実施例4:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体のヒトネクチン-4に対する結合性ドメインの検出
ヒトネクチン-4は、1つのIgVドメイン及び2つのIgCドメインを含有する。抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の結合性ドメインを決定するために、ネクチン-4 IgVドメインを過剰発現するA549安定細胞株A549-ネクチン-4-IgV、及びネクチン-4の2つのIgCドメインを過剰発現するA549安定細胞株A549-ネクチン-4-IgCCを構築し、試験する抗体の結合性ドメインをフローサイトメトリーによって検出した。具体的なステップは以下の通りであった:A549-ネクチン-4-IgV細胞及びA549-ネクチン-4-IgCC細胞を消化し、遠心分離によって再懸濁させ、PBSで2回洗浄した;細胞PBS(1%BSA含有)に再懸濁させ、96ウェルチップボトムプレートに細胞300.000個/ウェル、ウェル当たり50μlで広げた;試験する抗体50μLを最終濃度40μg/mLで各ウェルに添加し、ヒトIgGを陰性対照として使用した;十分に混合した後、得られた混合物を暗闇中、4℃で1時間にわたって反応させた;PBSを用いた洗浄を3回行い、FITC標識された抗ヒトFc二次抗体(ブランド:BioLegend、製品番号:409322)を添加し、暗闇中、4℃で0.5時間インキュベートした;PBSを用いた洗浄を3回行い、フローサイトメーター(フローサイトメーターブランド:Beckman、モデル:Cytoflex)を使用して検出を行った。
【0229】
実験結果が図6A及び6Bに示されており、それらの結果から、31HZ、56HZ、74HZ及びエンホルツマブがヒトネクチン-4のIgVドメインにのみに結合し、IgCドメインには結合しなかったことが示される。
【0230】
実施例5:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の競合活性の検出
ヒトネクチン-4は、IgVドメインを通じて別のネクチン-4分子又はネクチン-1分子と連結する。31HZ、56HZ及び74HZは全てネクチン-4のIgVドメインに結合するので、これら3つの抗体の競合活性を競合ELISAによって検出した。具体的なステップは以下の通りであった:ネクチン-4タンパク質を、CBSコーティング溶液を用い、ウェル当たり100μL、2μg/mLまで希釈し37℃で2時間インキュベートした;PBST 300μLを用いた洗浄を1回実施し、次いで、PBS(2%BSA)をウェル当たり100μL添加し、37℃で2時間のインキュベーションを実施した;ビオチン標識されたネクチン-1-hFcをPBS(2%BSA)で20μg/mLまで希釈した;検出する抗体をPBS(2%BSA)で希釈し、ここで、31HZ及び74HZの希釈は、3.73μg/mLから出発して3倍希釈、9の濃度点とし、56HZの希釈は1.25μg/mLから出発して、2倍希釈、10の濃度点とした;上記の2つの希釈溶液を等体積で十分に混合し、次いで、対応するウェルに100μL/ウェルで添加し、室温で2時間のインキュベーションを実施した;PBST 300μLを用いた洗浄を3回実施した;HRP-ストレプトアビジンを、PBS(2%BSA)を用いて1:10000比で希釈し、対応するウェルに100μL/ウェルで添加し、室温で1時間のインキュベーションを実施した;PBST 300μLを用いた洗浄を5回実施した;TMB 100μLを対応するウェルに添加し、室温で10分間にわたって発色を実施し、次いで、2NのHSO 50μLを添加することによって終結させ、450nmにおける読み取りの収集のためにマイクロプレートリーダーを使用した。
【0231】
実験結果が図7A及び7Bに示されており、それらの結果から、31HZ、56HZ及び74HZが、ヒトネクチン-4とヒトネクチン-1の結合を競合的に阻害することができ、31HZ、56HZ及び74HZの競合IC50値がそれぞれ27.62ng/mL、26.90ng/mL、及び27.22ng/mLであり、これらのIC50値がエンホルツマブのIC50値(27.11ng/mL)と同等であったことが示される。
【0232】
実施例6:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体の特異性の検出
ネクチンファミリーには、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3及びネクチン-4というメンバーが含まれ、これらのメンバーは、共有する配列同一性は約25%であるが、同様の構造及び機能を有する。本発明の抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体がネクチン-4のみを認識し、ネクチン-1、ネクチン-2及びネクチン-3は認識しないかどうかを検出するために、試験する抗体の特異性をELISAによって検出した。具体的なステップは以下の通りであった:ヒトネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3及びネクチン-4抗原をCBSコーティング溶液で1μg/mLまで希釈し、ELISAプレート上にウェル当たり100μLでコーティングし、4℃で一晩静置した;翌日、ウェル内の液体を廃棄し、PBS 300μLを用いた洗浄を1回実施した;PBS(2%BSA含有)100μLを添加し、37℃で2時間にわたってブロッキングを実施した;31HZ、56HZ、74HZ及びエンホルツマブ抗体をPBS(2%BSA含有)で希釈し、100μLを取り、対応するウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした;PBST 300μLを用いた洗浄を3回実施した;HRP標識されたヤギ抗ヒト二次抗体をPBS(2%BSA含有)を用いて1:10000の比で希釈し、100μLを取り、対応するウェルに添加し、37℃で1時間のインキュベーションを実施した;PBST 300μLを用いた洗浄を5回実施した;TMB発色溶液100μLを対応するウェルに添加し、室温で5~20分間にわたって発色を実施した;停止させるために2NのHSO 50μLを添加し、OD450nmにおける読み取りを収集するためにマイクロプレートリーダーを使用し、データをカーブフィッティングのためにGraphPad Prismにインポートした。
【0233】
実験結果が図8A、8B、及び8Cに示されており、それらの結果から、31HZ、56HZ及び74HZの全てがヒトネクチン-4を特異的に認識し、ネクチン-1、ネクチン-2及びネクチン-3は認識しなかったことが示される。
【0234】
実施例7:抗ヒトネクチン-4 ADCの調製
TL001と抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体をカップリングすることによって抗ヒトネクチン-4 ADCを調製した。ここで、TL001の構造は、式(1):
【化7】

に示される。
【0235】
TL001の調製方法は、関連性のある内容全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2019/114666を参照することができる。
【0236】
抗ヒトネクチン-4抗体コンジュゲート(抗ヒトネクチン-4 ADC)の調製方法は、以下の通りであった:
(1)カップリング:抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体30mgを取り、希釈剤(20mMのPB+105mMのNaCl、pH7.7)で希釈し、エデト酸ナトリウム溶液を最終濃度5mMで添加し、十分に混合した;TCEP溶液を添加し(TCEPと抗体のモル比は4.4:1であった)、十分に混合し、室温で30分間静置した;ジメチルスルホキシドに溶解させたTL001(TL001と抗体のモル比は9:1であった)を上記の溶液系添加し、十分に混合し、室温で2時間静置して、カップリングした試料を得、この試料をそれぞれ31HZ-TL001、56HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001と名付けた。抗ヒトネクチン-4 ADCを緩衝液の交換に供し、次いで、一定分量にして4℃で保管した。
【0237】
(2)検出:
抗ヒトネクチン-4 ADCの分子量を以下の条件下でLC-MSによって分析した:
クロマトグラフィー条件:
液体クロマトグラフィーカラム:Thermo MAbPac RP 3.0×100mm;
移動相A:0.1%FA/98%HO/2%ACN;
移動相B:0.1%FA/2%HO/98%ACN;
流速:毎分0.25mL;試料チャンバー温度:8℃;カラム温度:60℃;サンプルサイズ:1μL;
【表11】

切り換え弁:廃棄のために0~3分、MSのために3~22分、廃棄のために22~30分
質量分析条件:
質量分析計モデル:AB Sciex Triple TOF 5600+;
パラメータ:GS1 35;GS2 35;CUR 30;TEM 350;ISVF 5500;DP 200;CE 10;m/z 600-4000;合計40までのタイムビン。
【0238】
カップリングした抗ヒト31HZ-TL001の軽鎖及び重鎖の理論分子量及び測定された分子量(重鎖を主要なグリコフォームG0Fによって算出した)を以下の表に示す:
【表12】
【0239】
0~1つの毒素とカップリングした31HZ-TL001の軽鎖(LC及びDAR1の割合はそれぞれ0.1%及び99.9%であった)、及び0~4つの毒素とカップリングした重鎖(HC、DAR1、DAR2、DAR3及びDAR4の割合はそれぞれ0.0%、2.0%、10.2%、86.1%、1.8%であった)、したがって、毒素と抗体の薬物-抗体比(DAR)は、算出式:DAR=軽鎖DAR1×2+重鎖(DAR1×1+DAR2×2+DAR3×3+DAR4×4)×2に従って、7.75であると算出された。
【0240】
同じ方法を使用することにより検出された56HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001のDAR値は、それぞれ7.71、7.98及び8.01であった。
【0241】
上記の質量分析の分析結果に従って、抗ヒトネクチン-4 ADCの構造は、以下と決定されるはずである:
【化8】

(式中、Aは抗ヒトネクチン-4ヒト化モノクローナル抗体を表し、γはAのチオール基とチオエーテル結合を形成することによってAと連結したTL001の数を指し、1~10の整数である)。
【0242】
VC-MMAEとエンホルツマブをカップリングすることにより、エンホルツマブ-VC-MMAEを調製した。調製及び検出方法は上記の通りであり、抗体とVC-MMAEのモル比は1:5であった。このエンホルツマブ-VC-MMAEのバッチのDAR値は5.09であった。
【0243】
実施例8:ヒトネクチン-4の高発現を伴う腫瘍細胞株に対する抗ヒトネクチン-4 ADCの死滅活性の検出
ヒトネクチン-4の高発現を伴う細胞株に対する31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001の死滅活性を検出するために、A549-ネクチン-4安定細胞株を選択した。具体的な実験ステップは以下の通りであった:A549-ネクチン-4細胞を消化し、細胞を遠心分離によって収集し、DMEM+4%FBS培地に100,000/mLまで再懸濁させ、100μL/ウェルの細胞を96ウェルプレートに広げた;ADC分子を、DMEM基本培地を用い、最終濃度150μg/mLから出発して、4倍希釈、11の濃度点として勾配で希釈し、対応するウェルにウェル当たり100μLで添加し、最終的な血清濃度を2%とした;37℃、5%COのインキュベーターで72時間のインキュベーションを実施した;CCK8(Rhinogen)を20μL/ウェルで添加し、37℃、5%COのインキュベーターで0.5~2.5時間インキュベートし、30分毎にOD450nmの読み取りをマイクロプレートリーダー(MD)で得、カーブフィッティングのためにGraphPad Prismにインポートした。
【0244】
実験結果が図9A及び9Bに示されており、それらの結果から、31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001の全てが、A549-ネクチン-4細胞を有効に死滅させることができ、EC50値がそれぞれ1390ng/mL、1364ng/mL及び2049ng/mLであったことが示され、31HZ-TL001及び74HZ-TL001のヒトネクチン-4の高発現を伴う腫瘍細胞株に対する死滅活性がエンホルツマブ-TL001のヒトネクチン-4の高発現を伴う腫瘍細胞株に対する死滅活性よりも良好であったことが示された;一方で、ヒトネクチン-4を過剰発現していないA549細胞に対する31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001の死滅活性EC50値は、それぞれ5982ng/mL、6251ng/mL及び5604ng/mLであった。全体として、A549-ネクチン-4細胞及びA549細胞に対する死滅活性に関して、31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001はネクチン-4特異的である。
【0245】
ヒトネクチン-4の高発現を伴うT24-ネクチン-4細胞株に対する31HZ-TL001及び56HZ-TL001の死滅活性を上記と同じ実験方法によって検出した。実験結果が図9C及び9Dに示されており、それらの結果から、31HZ-TL001及び56HZ-TL001がどちらもT24-ネクチン-4細胞を有効に死滅させることができ、EC50値はそれぞれ1277ng/mL及び1568ng/mLであったことが示され、これにより、この2つのADCの死滅活性が実質的に等価であることが示される;ヒトネクチン-4を過剰発現していないT24細胞に対する31HZ-TL001及び56HZ-TL001の死滅活性EC50値はそれぞれ2884ng/mL及び3665ng/mLであり、これらの死滅活性はT24-ネクチン-4細胞に対するものよりも有意に弱く、31HZ-TL001及び56HZ-TL001のどちらの死滅効果もネクチン-4特異的であったことが示される。
【0246】
実施例9:ヒトネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞株に対する抗ヒトネクチン-4 ADCの死滅活性の検出
ヒトネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞株に対する31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001の死滅活性を検出するために、T47D腫瘍細胞株を選択した。具体的な実験ステップは以下の通りであった:T47D細胞を消化し、細胞を遠心分離によって収集し、1640+4%FBS培地に100,000/mLまで再懸濁させ、100μL/ウェルの細胞で96ウェルプレートに広げた;ADC分子を1640基本培地に、最終濃度150μg/mLから出発して、4倍希釈、11の濃度点として勾配で希釈し、対応するウェルにウェル当たり100μLで添加し、最終的な血清濃度を2%とした;37℃、5%COのインキュベーターで72時間のインキュベーションを実施した;CCK8(Rhinogen)を20μL/ウェルで添加し、37℃、5%COインキュベーターで0.5~2.5時間インキュベートし、30分毎にOD450nmの読み取りをマイクロプレートリーダー(MD)で収集し、カーブフィッティングのためにGraphPad Prismにインポートした。
【0247】
実験結果が図10Aに示されており、その結果から、31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001がT47D細胞を有効に死滅させることができ、EC50値がそれぞれ206.1ng/mL、611.3ng/mL及び229.2ng/mLであったことが示され、31HZ-TL001のT47D細胞に対する死滅活性がエンホルツマブ-TL001のT47D細胞に対する死滅活性と同等であったことが示される。
【0248】
ヒトネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞株MDA-MB-468に対する31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001の死滅活性を上記と同じ実験方法によって検出した。実験結果が図10Bに示されており、その結果から、31HZ-TL001、74HZ-TL001及びエンホルツマブ-TL001がMDA-MB-468細胞を有効に死滅させることができ、EC50値はそれぞれ1030ng/mL、2277ng/mL及び1190ng/mLであったことが示され、これにより、31HZ-TL001のMDA-MB-468細胞に対する死滅活性がエンホルツマブ-TL001のMDA-MB-468細胞に対する死滅活性と同等であったことが示される。
【0249】
ヒトネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞株NCI-N87に対する31HZ-TL001及び56HZ-TL001の死滅活性を上記と同じ実験方法によって通り検出した。実験結果が図10Cに示されており、その結果から、31HZ-TL001及び56HZ-TL001のどちらもNCI-N87細胞を有効に死滅させることができ、EC50値はそれぞれ9376ng/mL及び10935ng/mLであったことが示され、これにより、31HZ-TL001と56HZ-TL001の死滅活性が実質的に等しかったことが示される。
【0250】
結論として、31HZ-TL001及び56HZ-TL001のヒトネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞株に対する死滅活性は、エンホルツマブ-TL001のヒトネクチン-4を内因性に発現する腫瘍細胞株に対する死滅活性と実質的に等しい。
【0251】
実施例10:CDXモデルにおける抗ヒトネクチン-4 ADCのin vivo薬力学的性質
ヒト非小細胞肺がん細胞株NCI-H322MのCDXモデルを構築することにより、ADC分子の抗腫瘍効果を評価した。具体的なステップは以下の通りであった:NCI-H322M細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するRPMI1640培地と一緒に37℃及び5%COで培養した。指数関数成長期にある細胞を収集し、PBSに再懸濁させ、雌NOD/SCIDマウス(Biocytogen Jiangsu Gene Biotechnology Co.,Ltd.)に1×10個/マウス(PBS 0.1mLに懸濁)で皮下接種して、皮下異種移植腫瘍モデルを樹立した。平均腫瘍体積が70~100mmに達したら、マウスを腫瘍体積に応じてランダム化し、各群5匹マウスとした。群分けした日を0日目と記録し、群には、ビヒクル群(通常の生理食塩水)(陰性対照)、31HZ-TL001群(3mg/kg及び10mg/kg)、56HZ-TL001群(3mg/kg及び10mg/kg)、エンホルツマブ-TL001群(10mg/kg)並びにエンホルツマブ-VC-MMAE群(10mg/kg)を含めた。全ての試料を週に2回、合計6回の投薬として尾静脈注射によって投与した。
【0252】
腫瘍の直径を週に2回、投与後にノギスによって測定し、腫瘍体積を次式に従って算出した:V=0.5a×b(式中、a及びbはそれぞれ腫瘍の長さ及び短径を表す)。動物の死亡を毎日観察し、記録した。
【0253】
次式を使用して、腫瘍成長阻害率TGI(%)を算出し、その腫瘍成長阻害率TGI(%)を使用して腫瘍阻害有効性を評価した:
【数2】

式中、
T-終了:実験の終了時の処置群の平均腫瘍体積;
T-開始:投与の開始時の処置群の平均腫瘍体積;
C-終了:実験の終了時の陰性対照群の平均腫瘍体積;
C-開始:投与の開始時の陰性対照群の平均腫瘍体積
である。
【0254】
実験結果が表9及び図11及び12に示されており、それらの結果から、31HZ-TL001、56HZ-TL001、エンホルツマブ-TL001及びエンホルツマブ-VC-MMAEがNCI-H322M異種移植腫瘍モデルにおける腫瘍成長に対する有意な阻害効果を用量依存的に有したことが示される。6回の投薬後(21日目)、陰性対照群と比較して、10mg/kgの用量レベルでは、31HZ-TL001、56HZ-TL001、エンホルツマブ-TL001及びエンホルツマブ-VC-MMAEのTGI値はそれぞれ155.79%、163.56%、156.31%及び173.79%であった。観察期間中、処置群の全てにおいて著しい体重減少は認められず、これにより、動物のこのADCに対する忍容性が良好であったことが示される。
【表13】
【0255】
上記の結果から、3mg/kg及び10mg/kgの用量レベルにおける31HZ-TL001及び56HZ-TL001のTGI値を考慮して、31HZ-TL001及び56HZ-TL001のどちらも腫瘍成長を用量依存的に有効に阻害することができたことが示される。10mg/kgの用量レベルでは、31HZ-TL001及び56HZ-TL001のどちらも、群内の5匹のマウス全ての腫瘍を部分的に退縮させることができ、エンホルツマブ-TL001及びエンホルツマブ-VC-MMAEの有効性は基本的に等しかった。さらに、31HZ-TL001及び56HZ-TL001の腫瘍担持マウスによる忍容性は良好であった。
【0256】
実施例11:PDXモデルにおける抗ヒトネクチン-4 ADCのin vivo薬力学的性質
HuPrime(登録商標)膀胱がん異種移植モデルBL9200(Crown Bioscience(Taicang)Co.,Ltd.、ネクチン-4の高発現を伴う、63歳の男性患者に由来する)腫瘍担持マウスから腫瘍組織を収集し、直径3×3×3mmの小片に切り、NOD/SCIDマウス(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltd.)の右前側肩甲骨に皮下接種した。腫瘍担持マウスの平均腫瘍体積が約150~250mmに達したら、マウスを腫瘍サイズに応じた群にランダムに分け、各群7匹のマウスとし、群分けした日を0日目と定義した。群を4つとした:ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体群(IgG1 3mg/kg、陰性対照)、ヒトIgG1-TL001群(IgG1-TL001と略される、3mg/kg;調製方法については実施例7を参照されたい)、56HZ-TL001について1mg/kg群及び3mg/kg群。全ての試料を週に2回、合計6回の投薬として尾静脈注射によって投与した。投与後、マウスの腫瘍体積及び体重を観察し、定期的に測定した。測定及び算出方法は実施例10に記載の通りであった。
【0257】
実験結果が表10及び図13及び14に示されている。6回の投薬後(20日目)、3mg/kgのヒトIgG1(hIgG1)陰性対照群と比較して、3mg/kgの56HZ-TL001では、腫瘍成長に対して105.55%(P<0.05)の阻害TGIが示され、3mg/kgの56HZ-TL001の群のマウス4匹において腫瘍の部分的退縮が観察された;3mg/kgの56HZ-TL001では、同じ用量のアイソタイプ対照ADC(hIgG1-TL001、3mg/kg)よりも有意に改善された、腫瘍成長に対する阻害効果が示された(p<0.001)。hIgG1群のマウス1匹が死亡し、正常な活性を有する他の群では死亡は観察されなかった。投与期間中、各群のマウスの体重はわずかに減少し、その中でもIgG1群では効果的な処置の欠如に起因して体重が最も大きく減少し、これにより、腫瘍担持マウスのADCに対する忍容性が良好であったことが示される。
【0258】
上記の結果から、56HZ-TL001がBL9200膀胱がんPDX異種移植モデルの腫瘍成長に対して有意な阻害効果を示したことが示される。さらに、腫瘍担持マウスの56HZ-TL001に対する忍容性は良好であった。
【表14】
【0259】
本発明の特定の実施形態が詳細に記載されているが、開示された全ての教示を踏まえて種々の改変及び変形を詳細に対してなすことができること、並びに、これらの変化が全て本発明の範囲内に入ることが当業者には理解されよう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及び任意のその等価物によって示される。
【0260】
配列リスト
【表15】


図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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