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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240325BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240325BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240325BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20240325BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
B60C1/00 Z
C08K3/013
C08K5/3477
C08L101/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018545508
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2018015560
(87)【国際公開番号】W WO2018190427
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2017080968
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】北浦 健大
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 昴
(72)【発明者】
【氏名】吉安 勇人
(72)【発明者】
【氏名】山田 宏明
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
【審判官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057758(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021002(WO,A1)
【文献】特開2014-173062(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158509(WO,A1)
【文献】特開2017-046730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、補強性充填剤を3~250質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤及び炭化水素樹脂を含有し、ゴム成分100質量部に対する前記テトラジン系化合物の含有量をX、前記樹脂の含有量をYとしたときに、Y/X=3~100であり、
前記ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が、50質量%以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物(但し、オキシシラン酸素含有量0.1~5.0質量%のエポキシ化パーム油、及び、脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物は含まない)。
【化1】
[式中、R及びRは同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR(Rは水素原子またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R及びRは塩を形成してもよい。]
【化9】
(式(2)中、pは1~3の整数、qは1~5の整数、kは5~12の整数である。)
【請求項2】
前記テトラジン系化合物が、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】
[式(1-1)中、R11は、水素原子、-COOR17(R17は水素原子又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R13及びR14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又はアルキル基を示す。また、R13及びR14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R15及びR16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR18(R18は水素原子又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R15及びR16は塩を形成してもよい。]
【請求項3】
前記テトラジン系化合物が、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化3】
【請求項4】
前記樹脂は、H-NMR測定における化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数が全水素原子数に対して5%以下である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを3~50質量部含む請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物から作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではタイヤの耐摩耗性能向上の要求がますます高まっている。しかし、十分に耐摩耗性能を向上できているとは言い難い状況である。
【0003】
ところで、特許文献1では、耐屈曲疲労性向上のために、ブチル系ゴム配合にテトラジン系化合物を配合することが記載されている。このテトラジン系化合物は、非特許文献1に記載のように、ディールス・アルダー反応の試薬として知られている。また、テトラジン系化合物としては、非特許文献2、3のように種々の化合物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-93928号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】『Tetrazine-Mediated Postpolymerization ModificationSarthak Jain, Kevin Neumann, Yichuan Zhang, Jin Geng, and Mark Bradley』
【文献】http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/aldrich/ald00098?lang=ja&region=JP
【文献】http://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/D3640/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、ブチル系ゴムとテトラジン系化合物との反応機構については記載が無く、耐屈曲疲労性向上のメカニズムは不明であるが、本発明者はブチル系ゴムとテトラジン系化合物とが何らかの反応をしていると考え、テトラジン系化合物によるポリマーの強化ひいては空気入りタイヤの耐摩耗性能向上の可能性を見出した。本発明は、テトラジン系化合物により耐摩耗性能を改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討した結果、テトラジン系化合物はポリマーの2重結合と反応することが考えられた。そして、特許文献1に記載の発明では、ゴム成分としてブチル系ゴムが使用されており、ブチル系ゴムには少量含まれるイソプレン単位を除いて2重結合が存在しないため、テトラジン系化合物と反応性は低いと考えられた。そこで、ゴム成分として、ジエン系ゴムを使用してみると、良好な耐摩耗性能が得られることが分かった。これは、ゴム成分と、テトラジン系化合物とが反応することにより、具体的には、ジエン系ゴムの2重結合に、テトラジン系化合物を反応させることにより、ゴム成分の側鎖が増え、この側鎖と補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との作用により、耐摩耗性能が向上するものと推測された。さらに、側鎖の増加により、ゴム成分と炭化水素樹脂との親和性も向上すると考えられる。よって、炭化水素樹脂と併用する際には、炭化水素樹脂とテトラジン化合物との比率が重要になると考え、本発明の関係式を見出した。これにより、耐摩耗性能だけではなく、低燃費性能およびウェットグリップ性能を含めた総合性能を改善できるようになった。
本発明は、上記知見により完成したものであり、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、補強性充填剤を3~250質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、及び炭化水素樹脂を含有し、ゴム成分100質量部に対する上記テトラジン系化合物の含有量をX、前記樹脂の含有量をYとしたときに、Y/X=3~100であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】
[式中、R及びRは同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR(Rは水素原子またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R及びRは塩を形成してもよい。]
【0008】
上記テトラジン系化合物が、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
[式(1-1)中、R11は、水素原子、-COOR17(R17は水素原子又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R13及びR14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又はアルキル基を示す。また、R13及びR14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R15及びR16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR18(R18は水素原子又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R15及びR16は塩を形成してもよい。]
【0009】
上記テトラジン系化合物が、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
【0010】
上記樹脂は、H-NMR測定における化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数が全水素原子数に対して5%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを3~50質量部、下記一般式(1-1)~(1-4)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部含有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化4】
[式(1-1)中、R11は、水素原子、-COOR17(R17は水素原子又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R13及びR14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又はアルキル基を示す。また、R13及びR14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R15及びR16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR18(R18は水素原子又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R15及びR16は塩を形成してもよい。]
【0012】
本発明はまた、上記ゴム組成物から作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
第一の本発明は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、補強性充填剤を3~250質量部、上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、及び炭化水素樹脂を含有し、ゴム成分100質量部に対する上記テトラジン系化合物の含有量をX、上記樹脂の含有量をYとしたときに、Y/X=3~100であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物であるので、耐摩耗性能を改善できる。
【0014】
第二の本発明は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを3~50質量部、上記一般式(1-1)~(1-4)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部含有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物であるので、耐摩耗性能を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、補強性充填剤と共に、特定のテトラジン系化合物を0.2~10質量部含有する。
【0016】
本発明では、以下の作用効果により、耐摩耗性能が改善されるものと推察される。
ジエン系ゴム成分の合計含有量が80質量%以上のゴム成分に対して、補強性充填剤を配合し、さらに、特定量のテトラジン系化合物を配合することで、テトラジン系化合物とジエン系ゴム成分を充分に反応させた上で、すなわち、ゴム成分の側鎖を充分に増加させた上で、補強性充填剤による補強効果を得ることができるため、耐摩耗性能を向上できる。このように、本発明では、ジエン系ゴムとテトラジン系化合物と補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)の相互作用により、耐摩耗性能を相乗的に改善できる。
【0017】
本発明では、ゴム成分として、ジエン系ゴムが使用され、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)の合計含有量が80質量%以上であれば、どのような組合せであってもよい。
【0018】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、BRのシス含量は95質量%以上が好ましい。
【0020】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0021】
また、BRとしては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBRであればよく、例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
【0022】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0023】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
SBRの結合スチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。下限以上にすることで、優れたウェットグリップ性能が充分に得られる傾向がある。また、該結合スチレン量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。上限以下にすることで、優れた耐摩耗性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRの結合スチレン量は、H-NMR測定により算出される。
【0025】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0026】
また、SBRとしては、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性BRと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0027】
イソプレン系ゴム、BR、SBR以外に使用できるゴム成分としては、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムの他、ブチル系ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
イソプレン系ゴム、BR、SBRの合計含有量は、ゴム成分100質量%中80質量%以上、好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0029】
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、上記BRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0030】
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。また、上記SBRの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記範囲内にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0031】
本発明のゴム組成物は、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を含む。
【化5】
[式中、R及びRは同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)、-COOR(Rは水素原子(-H)またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R及びRは塩を形成してもよい。]
【0032】
上記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
及びRの炭化水素基の炭素数は1~11であり、好ましくは2~9、より好ましくは4~7である。
【0033】
及びRとしては、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な耐摩耗性能が得られるという理由から、-COOR又はヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、R及びRが共にヘテロ原子を有する炭化水素基であることがより好ましい。
【0034】
及びRの炭化水素基としては、特に限定されないが、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な耐摩耗性能が得られるという理由から、単素環基、複素環基が好ましく、少なくとも一方が複素環基であることがより好ましく、双方が複素環基であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、単素環基とは、環構造が炭素原子のみによって構成される基を意味し、複素環基とは、環構造が炭素原子を含む2種類以上の元素によって構成される基を意味する。
【0035】
単素環基としては、例えば、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。なかでも、アリール基が好ましい。
【0036】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。
【0037】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0038】
複素環基としては、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を含有する含窒素複素環基が好ましく、環を構成するヘテロ原子として窒素原子のみを含有する含窒素複素環基がより好ましい。
【0039】
含窒素複素環基としては、例えば、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、イミダゾリジル基、ピペラジニル基、ピラゾリジル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基、ピリミジル基が好ましく、ピリジル基が更に好ましい。
【0040】
上記単素環基、上記複素環基が有する水素原子は、置換基により置換されていてもよい。補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な耐摩耗性能が得られるという理由から、置換基により置換されていることが好ましい。
【0041】
置換基としては、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、スルホン酸基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、更に上記置換基を有していてもよく、上記置換基以外にも例えば、アルキレン基、アルキル基等を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、カルボキシル基、上記-COOR、アミノ基(好ましくは下式(A)で表される基、下式(B)で表される基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【化6】
【0042】
なお、置換基は、上式(A)、(B)で表される基のように、塩を形成してもよい。塩を形成する例としては、例えば、アミノ基とハロゲン原子との塩、カルボキシル基とNa、K等の1価の金属との塩、スルホン酸基と上記1価の金属との塩等が挙げられる。
【0043】
上記-COORのRは水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~3である。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
としては、アルキル基が好ましい。
【0044】
上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物としては、ジエン系ゴムと反応可能なものであれば特に限定されない。テトラジン系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物(特に、下記一般式(1-1)又は(1-4)で表される化合物)が好ましく、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物(特に、下記式(1-1-1)又は(1-4-1)で表される化合物)がより好ましい。
上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成してもよい。
【化7】
[式(1-1)中、R11は、水素原子(-H)、-COOR17(R17は水素原子(-H)又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R13及びR14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)又はアルキル基を示す。また、R13及びR14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R15及びR16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)、-COOR18(R18は水素原子(-H)又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R15及びR16は塩を形成してもよい。]
【化8】
【0045】
11のヘテロ原子としては、R及びRのヘテロ原子と同様の原子が挙げられる。
11の炭化水素基の炭素数はR及びRの炭化水素基と同様であり、好適な態様も同様である。
【0046】
11としては、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な耐摩耗性能が得られるという理由から、-COOR17又はヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましい。
【0047】
11の炭化水素基としては、R及びRの炭化水素基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0048】
上記-COOR17のR17は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基としては、Rのアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
17としては、アルキル基が好ましい。
【0049】
12の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基としては、上記置換基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0050】
12は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、パラ位が好ましい。
【0051】
13及びR14のアルキル基は、Rのアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。R13及びR14としては、アルキル基が好ましい。
【0052】
15及びR16としては、より良好な耐摩耗性能が得られるという理由から、水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基が好ましい。
【0053】
-COOR18のR18は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基としては、Rのアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
18としては、アルキル基が好ましい。
【0054】
15及びR16の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基としては、上記置換基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0055】
15及びR16は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、パラ位が好ましく、R15及びR16共にパラ位がより好ましい。
【0056】
上記テトラジン系化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。下限以上にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。また、上記含有量は、10質量部以下、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。上限以下にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
ここで、本明細書において、上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物の含有量とは、2種以上のテトラジン系化合物を含有する場合はその合計含有量を意味する。
【0057】
本発明のゴム組成物は、補強性充填剤を含む。
補強性充填剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、カーボンブラック、シリカが好ましく、シリカがより好ましい。
【0058】
補強性充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、250質量部以下、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0059】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、5m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記NSAは、300m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0061】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0062】
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0063】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0064】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは90m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる。上記NSAは、好ましくは400m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0065】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0066】
シリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが容易となり、良好な低燃費性能、ウェットグリップ性能が得られる。
【0067】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20~250質量部、より好ましくは40~120質量部、更に好ましくは60~100質量部である。
【0068】
本発明のゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系又はメルカプト系が好ましい。
【0069】
シランカップリング剤としては、式(2)で表されるシランカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、優れた耐摩耗性能、低燃費性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
【化9】
(式(2)中、pは1~3の整数、qは1~5の整数、kは5~12の整数である。)
【0070】
式(2)において、pは1~3の整数であるが、2が好ましい。pが3以下であると、カップリング反応が速い傾向がある。
qは1~5の整数であるが、2~4が好ましく、3がより好ましい。qが1~5であると合成が容易である傾向がある。
kは5~12の整数であるが、5~10が好ましく、6~8がより好ましく、7が更に好ましい。
【0071】
式(2)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0072】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0073】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0074】
本発明では、炭化水素樹脂を含有することが好ましい。
本明細書において、炭化水素樹脂とは、炭化水素系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、炭化水素系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。炭化水素系単量体とは、炭化水素により構成される単量体を意味する。
炭化水素樹脂としては、タイヤ工業において一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、炭化水素樹脂とテトラジン系化合物との反応性を下げ、低燃費性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能をバランス良く向上させるという観点から、炭化水素樹脂は、ベンゼン環以外の構造における不飽和結合の数が少ないことが好ましい。このような樹脂は、H-NMR測定により判別可能である。H-NMR測定によって厳密にベンゼン環以外の不飽和結合を定量することは難しいものの、化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数が全水素原子数に対して5%以下(好ましくは3%以下)である樹脂は、不飽和結合が少ない樹脂といえる。
【0075】
ベンゼン環以外の構造における不飽和結合の数が少ない炭化水素樹脂としては、テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、水添ジシクロペンタジエン系樹脂(水添DCPD系樹脂)、水添C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂が挙げられ、なかでも、H-NMR測定における化学シフト値が4ppm以上9ppm以下の範囲にある水素原子の数が全水素原子数に対して15%以下である樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、水添DCPD系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0076】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。
【0077】
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
【0078】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0079】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0080】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0081】
なかでも、前記性能バランスの観点から、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
【0082】
炭化水素樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましく、100℃以上が特に好ましい。30℃以上であると、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記軟化点は、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。160℃以下であると、炭化水素樹脂の分散性が良好となり、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本発明において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0083】
炭化水素樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0084】
炭化水素樹脂を含有する場合、炭化水素樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。3質量部以上であると、良好なウェットグリップ性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。150質量部以下であると、良好な耐摩耗性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
【0085】
ゴム成分100質量部に対する前記テトラジン系化合物の含有量をX、ゴム成分100質量部に対する炭化水素樹脂(好ましくは上記ベンゼン環以外の不飽和結合を有する炭化水素樹脂)の含有量をYとしたときに、Y/X=3~100であることが好ましく、より好ましくは5~60、更に好ましくは10~30である。Y/Xが上記範囲内であると、良好な耐摩耗性能、ウェットグリップ性能、低燃費性能のバランスが得られる傾向がある。
【0086】
本発明のゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0088】
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0089】
本発明のゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0091】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0092】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
【0093】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0094】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0095】
本発明のゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0096】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0097】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0098】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0099】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0101】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0102】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0103】
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0104】
前記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、可塑剤、滑剤などの加工助剤;オイル以外の軟化剤;硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物);等を例示できる。
【0105】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。本発明のテトラジン系化合物は補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用や分散性への寄与が期待されるため、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)よりも前に、もしくは補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)とともにゴム成分と混練を行い、ゴム成分中にテトラジン系化合物を分散させておくことが好ましい。
【0106】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。
加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0107】
本発明のゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられるが、トレッド以外のタイヤ部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0108】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0109】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤ、冬用タイヤに好適に使用可能である。
【実施例
【0110】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン3830(S-SBR、結合スチレン量:33質量%、ビニル含量:34質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有、非変性)
BR:日本ゼオン(株)製のBR1220(BR、シス含量:97質量%)
ブチルゴム:日本ブチル(株)製のブチル268
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N220、NSA:111m/g)
シリカ:デグッサ社製のUltrasil VN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:モメンティブ社製のNXT(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスP523
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:精工化学(株)製のオゾノン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
テトラジン系化合物A:上記式(1-1-1)で表される化合物
テトラジン系化合物B:上記式(1-2-1)で表される化合物
テトラジン系化合物C:上記式(1-3-1)で表される化合物
テトラジン系化合物D:上記式(1-4-1)で表される化合物
芳香族変性水添テルペン樹脂(下記合成例で得られる炭化水素樹脂)
芳香族変性テルペン樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(軟化点127℃のロット品、化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数:全水素原子数に対して1%、水酸基価(OH価):0mgKOH/g)
スチレン系樹脂:α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体(軟化点:85℃、Mw:700、SP値:9.1、化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数:全水素原子数に対して1%)
ポリテルペン樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4150(軟化点:70~80℃、化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数:全水素原子数に対して3%)
【0111】
(合成例)
充分に窒素置換した撹拌翼つきのオートクレーブに、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、原料樹脂(TO125〔ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125〕の実測軟化点127℃のロット品)、10%パラジウムカーボンを加え、窒素置換した後、圧力が5.0kg/cmとなるように水素置換して、80℃で、接触水素添加反応に付し、芳香族変性水添テルペン樹脂を得た。収率は、ほぼ100%であった。
得られた芳香族変性水添テルペン樹脂を、溶媒としての四塩化炭素に15質量%の濃度で添加し、該混合物について100MHzのH-NMR測定を行ったところ、化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数は、全水素原子数に対して0.3%であった。また、樹脂の水酸基価(OH価)は0mgKOH/g、軟化点は126℃、SP値は、8.70であった。
【0112】
<実施例及び比較例>
表1、2に示す配合内容に従い、各材料を混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、加圧加熱を行って、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記の評価を行い、結果を表1、2に示した。なお、表1における基準例を比較例3、表2における基準例を実施例12とした。また、(耐摩耗性能指数+ウェットグリップ性能指数)/2を算出し、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能のバランスの指標とした。該指標が大きいほど、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能のバランスに優れることを示す。
【0113】
(耐摩耗性能)
各試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、基準例を100とした時の指数で表示した(耐摩耗性能指数)。指数が大きいほど、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離が長く、耐摩耗性能に優れることを示す。
【0114】
(ウェットグリップ性能)
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、基準例を100とした時の指数で表示した(ウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほど制動距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0115】
(低燃費性能)
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準例を100とした時の指数で表示した(低燃費性能指数)。指数が大きいほど、低燃費性能に優れることを示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表1、2から、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、補強性充填剤を3~250質量部、上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部含有した実施例では、耐摩耗性能を改善できた。また、低燃費性能、ウェットグリップ性能も改善でき、更には、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能のバランスも改善できた。
【0119】
また、比較例1~3、実施例1の比較により、ジエン系ゴムと、テトラジン系化合物とを併用することにより、耐摩耗性能を相乗的に改善できるだけではなく、低燃費性能、ウェットグリップ性能も相乗的に改善でき、また、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能のバランスも相乗的に改善できることが明らかとなった。