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特許7458715撮影装置、その制御方法、プログラム、並びに記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】撮影装置、その制御方法、プログラム、並びに記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/67 20230101AFI20240325BHJP
   G03B 17/00 20210101ALI20240325BHJP
   G03B 13/34 20210101ALI20240325BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20240325BHJP
   H04N 23/73 20230101ALI20240325BHJP
   G03B 15/00 20210101ALN20240325BHJP
【FI】
H04N23/67 300
G03B17/00 Q
G03B13/34
G02B7/28 Z
H04N23/73
H04N23/67 100
G03B15/00 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019121811
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021010067
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝幸
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/67
G03B 17/00
G03B 13/34
G02B 7/28
H04N 23/73
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを停止させずに撮像素子の露光及び読み出しを予め設定された回数だけ実施し、設定枚数の撮影画像を生成するフォーカスブラケット撮影を実行する撮像装置において、
前記設定枚数の撮影画像の隣接する撮影画像間のピント位置変化量であるフォーカスステップを設定する第1の設定手段と、
前記フォーカスレンズの駆動を制御するフォーカスレンズ駆動制御手段と、
予め設定された開始ピント位置に同期して前記撮像素子に対する垂直同期信号を発行する発行手段と、
前記フォーカスブラケット撮影により生成される1枚目の撮影画像の、前記開始ピント位置をピント位置とする基準位置を設定する第2の設定手段と、
露光開始ピント位置を決定する第1の決定手段と、
被写体にピントを合わせた際のフォーカス枠を取得する取得手段と、を備え、
前記第2の設定手段は、前記1枚目の撮影画像の前記フォーカス枠に基づいて前記基準位置を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第2の設定手段は、前記1枚目の撮影画像の前記フォーカス枠の中心を前記基準位置に設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の決定手段が、前記撮像素子による1回の読み出しに要する時間、撮影条件により決定された露光時間、ピント変化速度、及び前記基準位置のうちの少なくともいずれかに基づいて前記露光開始ピント位置を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記フォーカスレンズ駆動制御手段が、単位時間あたりのピント変化量が一定となるピント変化速度となるように前記フォーカスレンズの駆動を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記単位時間あたりのピント変化量と、前記設定されたフォーカスステップに基づいて前記垂直同期信号を発行する間隔を決定することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記フォーカスレンズ駆動制御手段の制御により、前記フォーカスレンズが停止した状態から、前記ピント変化速度に到達するまでに必要な前記フォーカスレンズのピント変化量を算出する算出手段と、
前記露光開始ピント位置及び前記算出されたフォーカスレンズのピント変化量に基づき、前記発行手段により最初に前記垂直同期信号が発行されるタイミングにおける、停止した状態にある前記フォーカスレンズの駆動開始ピント位置を決定する第2の決定手段とを更に備えることを特徴とする請求項4または5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記露光開始ピント位置及び前記ピント変化速度に基づき、前記発行手段により最初に前記垂直同期信号が発行されるタイミングにおける、前記ピント変化速度で駆動中の前記フォーカスレンズのピント位置を決定する第2の決定手段とを備えることを特徴とする請求項4または5に記載の撮像装置。
【請求項8】
フォーカスレンズを停止させずに撮像素子の露光及び読み出しを予め設定された回数だけ実施し、設定枚数の撮影画像を生成するフォーカスブラケット撮影を実行する撮像装置の制御方法において、
前記設定枚数の撮影画像の隣接する撮影画像間のピント変化量であるフォーカスステップを設定する第1の設定ステップと、
前記フォーカスレンズの駆動を制御するフォーカスレンズ駆動制御ステップと、
予め設定された開始ピント位置に同期して前記撮像素子に対する垂直同期信号を発行する発行ステップと、
前記フォーカスブラケット撮影により生成される1枚目の撮影画像の、前記開始ピント位置をピント位置とする基準位置を設定する第2の設定ステップと、
露光開始ピント位置を決定する第1の決定ステップと、
被写体にピントを合わせた際のフォーカス枠を取得する取得ステップと、を備え、
前記第2の設定ステップは、前記1枚目の撮影画像の前記フォーカス枠に基づいて前記基準位置を設定することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項8の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置その制御方法プログラム、並びに記録媒体に関し、特に、フォーカスブラケット撮影による全焦点撮影が可能な撮像装置その制御方法プログラム、並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、全焦点撮影を行う撮像装置が知られている。全焦点撮影とは、撮像装置により合焦可能な被写体距離の全域において、合焦位置を変化させた複数の画像を撮影し、各画像から合焦している領域のみを抽出して1枚の画像を合成して撮影領域全体に合焦している画像を得るフォーカスブラケット撮影である。全焦点撮影では、1回の撮影操作で複数の画像を撮影する必要があるため、撮影操作があってから全ての撮影が終了するまでの時間(以下単に「撮影時間」という。)に長い時間を要する場合がある。
【0003】
フォーカスブラケット撮影の撮影時間を短縮するための技術に、ドライビングレリーズがある。ドライビングレリーズとは、撮像素子の露光時間中にフォーカスレンズを駆動する手法である。全焦点撮影の撮影シーケンスでは、露光中フォーカスレンズが停止しており、露光終了後に次のピント位置にフォーカスレンズを駆動させ、レンズの静定を待ち、次の撮影を実行する。ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影では、フォーカスレンズを駆動させながら各ピント位置に到達したタイミングで撮影を行うため、フォーカスレンズの駆動、静定を待つ時間が不要となるため、撮影時間を短縮させることができる。
【0004】
また、撮影時間が長くなるほど手振れ量は徐々に増大する傾向があるため、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影は、撮像装置を手持ちで撮影する際に、全焦点撮影の場合と比べて手振れの少ない画像を得られる。
【0005】
特許文献1には、通常の撮影と、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影の二つの撮影方式を、撮影条件によって切り替える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2017/090233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影では、得られた1枚目の撮影画像を、ユーザが所望するピント位置の撮影画像として選択できないという問題があった。
【0008】
具体的には、従来のドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影では、撮像素子の露光、読み出し期間中もフォーカスレンズが駆動し続ける。したがって、撮像素子の1ライン付近の露光、読み出し時のピント位置と、その最終ライン付近の露光、読み出し時のピント位置は異なる。このため、撮影開始時のピント位置(開始ピント位置)として所望のピント位置をユーザが予め決定していても、1枚目の撮影画像においてその所望のピント位置となる領域は、撮像素子による1ライン付近における読み出し結果を示す領域のみとなってしまう。すなわち、1枚目の撮影画像では、撮像素子の最終ライン付近における読み出し結果を示す領域のピント位置は所望のピント位置とは大きくずれてしまう。よって、ユーザが、全体のピント位置が、開始ピント位置としてユーザ自身で決定した所望のピント位置の近傍である画像を選択したくても、従来のドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影ではそのような画像を撮影できなかった。
【0009】
また、ドライビングレリーズを行う際、フォーカスレンズは静止状態から駆動を開始するため最初から所望のピント変化速度で動作させることはできない。すなわち、フォーカスレンズは、まず所望のピント変化速度より小さいピント変化速度で駆動を開始し、徐々に加速して所望のピント変化速度に移行する。一方、従来のドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影では、フォーカスレンズの駆動開始と同時に撮像素子の露光・読み出しを開始するため、1枚目の撮影画像は、2枚目以降の撮影画像とはピント変化の状態が異なる画像となってしまう。すなわち、従来のフォーカスブラケット撮影では、1枚目の撮影画像をユーザが所望するピント位置の撮影画像として選択することはできなかった。
【0010】
よって本発明は、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影で得られた1枚目の撮影画像をユーザが所望するピント位置の撮影画像として選択できる撮像装置その制御方法プログラム、並びに記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る撮像装置は、フォーカスレンズを停止させずに撮像素子の露光及び読み出しを予め設定された回数だけ実施し、設定枚数の撮影画像を生成するフォーカスブラケット撮影を実行する撮像装置において、前記設定枚数の撮影画像の隣接する撮影画像間のピント位置変化量であるフォーカスステップを設定する第1の設定手段と、記フォーカスレンズの駆動を制御するフォーカスレンズ駆動制御手段と、予め設定された開始ピント位置に同期して前記撮像素子に対する垂直同期信号を発行する発行手段と、前記フォーカスブラケット撮影により生成される1枚目の撮影画像の、前記開始ピント位置をピント位置とする基準位置を設定する第2の設定手段と、露光開始ピント位置を決定する第1の決定手段と、被写体にピントを合わせた際のフォーカス枠を取得する取得手段を備え、前記第2の設定手段は、前記1枚目の撮影画像の前記フォーカス枠に基づいて前記基準位置を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影で得られた1枚目の撮影画像をユーザが所望するピント位置の撮影画像として選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る撮像装置としてのデジタルカメラの外観を示す図である。
図2図1のデジタルカメラのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】実施例1におけるフォーカスブラケット撮影処理のフローチャートである。
図4図3のステップS301における露光開始ピント位置決定処理のフローチャートである。
図5A】フォーカスブラケット撮影の開始ピント位置及び2枚目以降の撮影画像の撮影ピント位置を示す図である。
図5B】従来のフォーカスブラケット撮影を実行した際の、露光、読み出し時間中のピント変化を示す図である。
図5C】実施例1のフォーカスブラケット撮影を実行した際の、露光、読み出し時間中のピント位置を示す図である。
図5D】実施例1に係るフォーカスブラケット撮影のフォーカスレンズの駆動開始ピント位置を示す図である。
図5E】実施例1の変形例に係るフォーカスブラケット撮影のフォーカスレンズの露光開始ピント位置を示す図である。
図5F】撮影画像に設定されたフォーカス枠を示す図である。
図6】実施例1におけるフォーカスブラケット撮影処理のタイミングチャートである。
図7】実施例2におけるフォーカスブラケット撮影処理のフローチャートである。
図8】実施例2におけるフォーカスブラケット撮影処理のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
図1は、本発明に係る撮像装置としてのデジタルカメラ100の外観を示す図である。
【0016】
図1において、デジタルカメラ100は、表示部28、モード切替スイッチ60、シャッターボタン61、操作部70、電源スイッチ72、コントローラホイール73、コネクタ112、記録媒体200、記録媒体スロット201、及び蓋203を備える。
【0017】
表示部28は、画像や各種情報を表示する表示部である。
【0018】
モード切替スイッチ60は、各種モードを切り替えるための操作部である。
【0019】
シャッターボタン61は、撮影指示を行うための操作部である。
【0020】
操作部70は、ユーザからの各種操作を受け付ける各種スイッチ、ボタン、タッチパネル等の操作部材より成る操作部である。
【0021】
電源スイッチ72は、デジタルカメラ100の電源オン、電源オフを切り替える。
【0022】
コントローラホイール73は操作部70に含まれる回転操作可能な操作部材である。
【0023】
コネクタ112は接続ケーブル111とデジタルカメラ100とのコネクタである。
【0024】
記録媒体200はメモリカードやハードディスク等の記録媒体である。
【0025】
記録媒体スロット201は記録媒体200を格納するためのスロットである。記録媒体スロット201に格納された記録媒体200は、デジタルカメラ100との通信が可能となる。
【0026】
蓋203は記録媒体スロット201の蓋である。
【0027】
図2は、図1のデジタルカメラ100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0028】
図2において、デジタルカメラ100は、シャッター101、バリア102、フォーカスレンズ103、撮像部22を含む撮像系を備える。
【0029】
シャッター101は、絞り機能を備えるシャッターである。
【0030】
バリア102は、デジタルカメラ100の撮像系を覆うことにより、撮像系の汚れや破損を防止する。
【0031】
フォーカスレンズ103は、シャッター101及びバリア102の間に配置される不図示のレンズ群に含まれるレンズである。尚、このレンズ群には、ズームレンズ等、他のレンズも存在する。
【0032】
撮像部22は、光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS素子等で構成される撮像素子、及びA/D変換処理機能を備えている。撮像部22の出力データ(撮影画像)は、画像処理部24及びメモリ制御部15を介して、或いは、メモリ制御部15を介してメモリ32に直接書き込まれる。後述するドライビングレリーズによるフォーカスブラケット撮影の際には、設定枚数分の撮影画像が全てメモリ32に書き込まれる。
【0033】
デジタルカメラ100は、更に、AF評価値検出部23、ストロボ90、画像処理部24、メモリ32、D/A変換器13、表示部28、不揮発性メモリ56、システム制御部50、及びシステムタイマー53を備える。
【0034】
AF評価値検出部23は、撮像部22の内部にあってデジタル画像信号から得られるコントラスト情報などからAF評価値を算出し、得られたAF評価値を撮像部22からシステム制御部50に出力する。
【0035】
ストロボ90は、撮影時に発光させることにより低照度シーンでの撮影や逆光シーンでの撮影時に照度を補うことができる。
【0036】
画像処理部24は、撮像部22から出力される画像データ、又は、メモリ制御部15からの画像データに対し所定の画素補間、縮小といったリサイズ処理や色変換処理を行う。また、画像処理部24では、撮像した画像データを用いて所定の演算処理が行われ、得られた演算結果に基づいてシステム制御部50が露光制御、測距制御を行う。これにより、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAE(自動露出)処理、EF(フラッシュ自動調光発光)処理が行われる。また画像処理部24ではAF(オートフォーカス)処理が行われるが、このとき撮像部22に備えるAF評価値検出部23の出力が用いられることもある。画像処理部24では更に、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理も行っている。
【0037】
メモリ32は、撮像部22によって取得およびA/D変換された画像データや、表示部28に表示するための画像データを格納する。メモリ32は、所定枚数の静止画像や所定時間の動画像および音声を格納するのに十分な記憶容量を備えている。また、メモリ32は画像表示用のメモリ(ビデオメモリ)を兼ねている。
【0038】
D/A変換器13は、メモリ32に格納されている画像表示用のデータをアナログ信号に変換して表示部28に供給する。こうして、メモリ32に書き込まれた表示用の画像データはD/A変換器13を介して表示部28により表示される。
【0039】
表示部28は、LCD等の表示器上に、D/A変換器13からのアナログ信号に応じた表示を行う。撮像部22で一度A/D変換されメモリ32に蓄積されたデジタル信号をD/A変換器13においてアナログ変換し、表示部28に逐次転送して表示することで、電子ビューファインダとして機能し、スルー画像表示を行える。
【0040】
不揮発性メモリ56は、電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばフラッシュメモリ等が用いられる。不揮発性メモリ56には、システム制御部50の動作用の定数、プログラム等が記憶される。ここでいう、プログラムとは、後述の実施例1,2にて後述する各種フローチャートを実行するためのプログラムのことである。
【0041】
システム制御部50は、デジタルカメラ100全体を制御する。具体的には、前述した不揮発性メモリ56に記録されたプログラムを実行することで、被写体情報、被写体距離、および、画像のコントラスト情報に基づく後述の実施例1,2におけるドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影を実現する。すなわち、システム制御部50は、かかる撮影の間、フォーカスレンズ103やシャッター101の駆動制御を行うことで、ピント位置が異なる複数の画像が順次撮影される。尚、かかる撮影処理で得られる隣接する撮影画像間のピント位置変化量(フォーカスステップ)は、ユーザが操作部70を介し、あらかじめ設定された複数の値から選択することで設定される。
【0042】
システムメモリ52は、RAM等により構成され、システム制御部50の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ56から読み出したプログラム等を展開する。また、システム制御部はメモリ32、D/A変換器13、表示部28等を制御することにより表示制御も行う。
【0043】
システムタイマー53は、各種制御に用いる時間や、内蔵された時計の時間を計測する計時部である。
【0044】
デジタルカメラ100は、また、モード切替スイッチ60、第1シャッタースイッチ64、第2シャッタースイッチ62、操作部70からなる、システム制御部50に各種の動作指示を入力するための操作手段を備える。
【0045】
モード切替スイッチ60は、システム制御部50の動作モードを静止画記録モード、動画記録モード、再生モード等のいずれかに切り替える。静止画記録モードに含まれるモードとして、オート撮影モード、オートシーン判別モード、マニュアルモード、撮影シーン別の撮影設定となる各種シーンモード、プログラムAEモード、カスタムモード等がある。モード切替スイッチ60で、静止画撮影モードに含まれるこれらのモードのいずれかに直接切り替えられる。あるいは、モード切替スイッチ60で静止画撮影モードに一旦切り換えた後に、静止画撮影モードに含まれるこれらのモードのいずれかに、他の操作部材を用いて切り替えるようにしてもよい。同様に、動画撮影モードにも複数のモードが含まれていてもよい。
【0046】
第1シャッタースイッチ64は、デジタルカメラ100に設けられたシャッターボタン61の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でONとなり第1シャッタースイッチ信号SW1を発生する。第1シャッタースイッチ信号SW1により、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュ自動調光発光)処理等の動作を開始する。尚、ユーザは、上記撮影準備指示により開始するAF処理として中央1点AF処理や顔AF処理を選択することが可能である。ここで、中央1点AF処理とは撮影画面内の中央位置1点に対してAFを行う処理を指し、顔AF処理とは顔検出機能によって検出された撮影画面内の顔に対してAFを行う処理を指す。
【0047】
第2シャッタースイッチ62は、シャッターボタン61の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でONとなり、第2シャッタースイッチ信号SW2を発生する。システム制御部50は、第2シャッタースイッチ信号SW2により、撮像部22からの信号読み出しから記録媒体200に画像データを書き込むまでの一連の撮影処理の動作を開始する。
【0048】
操作部70の各操作部材は、表示部28に表示される種々の機能アイコンを選択操作することなどにより、場面ごとに適宜機能が割り当てられ、各種機能ボタンとして作用する。機能ボタンとしては、例えば終了ボタン、戻るボタン、画像送りボタン、ジャンプボタン、絞込みボタン、属性変更ボタン等がある。例えば、メニューボタンが押されると各種の設定可能なメニュー画面が表示部28に表示される。利用者は、表示部28に表示されたメニュー画面と、上下左右の4方向ボタンやSETボタンとを用いて直感的に各種設定を行うことができる。
【0049】
コントローラホイール73は、操作部70に含まれる回転操作可能な操作部材であり、方向ボタンと共に選択項目を指示する際などに使用される。コントローラホイール73を回転操作すると、操作量に応じて電気的なパルス信号が発生し、このパルス信号に基づいてシステム制御部50はデジタルカメラ100の各部を制御する。このパルス信号によって、コントローラホイール73が回転操作された角度や、何回転したかなどを判定することができる。なお、コントローラホイール73は回転操作が検出できる操作部材であればどのようなものでもよい。例えば、ユーザの回転操作に応じてコントローラホイール73自体が回転してパルス信号を発生するダイヤル操作部材であってもよい。また、タッチセンサよりなる操作部材で、コントローラホイール73自体は回転せず、コントローラホイール73上でのユーザの指の回転動作などを検出する、いわゆる、タッチホイールであってもよい。
【0050】
デジタルカメラ100は、更に、電源制御部80、電源部40、及び記録媒体I/F18を備える。
【0051】
電源制御部80は、電池検出回路、DC-DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成され、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行う。また、電源制御部80は、その検出結果及びシステム制御部50の指示に基づいてDC-DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体200を含む各部へ供給する。
【0052】
電源部40は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、Li電池等の二次電池、ACアダプター等からなる。
【0053】
記録媒体I/F18は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体200とのインターフェースである。記録媒体200は、撮影された画像を記録するためのメモリカード等の記録媒体であり、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される。
【0054】
次に、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影について説明する。
【0055】
ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影とは、フォーカスレンズ103を駆動しながら撮像部22の露光、読み出しを実行する撮影をいう。よって、この撮影の間、システム制御部50は、単位時間あたりのピント変化量(ピント変化速度)が一定の状態で駆動し続け、停止しないようにフォーカスレンズ103を制御する(フォーカスレンズ駆動制御手段)。通常、フォーカスレンズ103を停止させる場合には静定するのを待つ必要があり、また静止状態からフォーカスレンズ103を駆動させる際は、所望の駆動速度で駆動させるまで、徐々にフォーカスレンズ103の駆動を加速する必要がある。これに対して上記制御期間中はフォーカスレンズを停止させないため、フォーカスレンズの静定待ち期間や、フォーカスレンズ静止状態から所定のピント変化量に到達するまでの加速期間が不要となり、高速にフォーカスブラケット撮影を行うことができる。
【0056】
以下の説明においては、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影を単にフォーカスブラケット撮影という。
【0057】
フォーカスブラケット撮影中のピント変化速度は、フォーカスレンズ103の性能と、撮像部22の撮像素子の読み出し時間に基づいて決定される。具体的には、読み出し時間中のピント位置変化量が前記フォーカスステップで決定されたピント変化量を超えないようにピント変化速度を決定する。これにより、撮影画像内のピント変化量がフォーカスステップ範囲内であることを保証することができる。
【0058】
デジタルカメラ100はフォーカスレンズ103を含むレンズ群を搭載したレンズ一体型デジタルカメラの形態となっているが、本発明に係る撮像装置はフォーカスレンズ103を含むレンズ鏡筒が脱着可能なレンズ交換式デジタルカメラの形態であってもよい。
【0059】
以下、図3図8を参照して、本発明の各実施例の動作を説明する。
【0060】
(実施例1)
実施例1では、フォーカスレンズ103を静止させた状態からドライビングレリーズでフォーカスブラケット撮影を実行するシーケンスについて説明する。
【0061】
まず、図5A~Dを用いて、実施例1におけるフォーカスブラケット撮影の際の露光開始ピント位置及びフォーカスレンズ103の駆動開始ピント位置について説明する。
【0062】
図5Aは、フォーカスブラケット撮影の開始ピント位置及び2枚目以降の撮影画像の撮影ピント位置を示す図である。
【0063】
開始ピント位置は、フォーカスブラケット撮影の開始時のAF処理またはユーザ操作によるマニュアルフォーカスで決定した1枚目の撮影画像のピント位置(以下「撮影ピント位置」という)である。開始ピント位置が決定されると、2枚目の撮影画像以降の撮影ピント位置は、隣接撮影画像間のピント位置変化量を示すフォーカスステップ500によって、一意に決定される。フォーカスステップ500は、操作部70のユーザ操作により設定される。
【0064】
図5Bは、従来のフォーカスブラケット撮影を実行した際の、露光、読み出し時間中のピント変化を示す図である。
【0065】
撮影画像502は、フォーカスブラケット撮影により撮影された1枚目の撮影画像であり、その各領域のピント位置を矩形領域として表す。
【0066】
図5Bに示すように従来のフォーカスブラケット撮影では、所定のピント変化速度でのフォーカスレンズ103の駆動開始後、フォーカスレンズ103のピント位置が開始ピント位置となったタイミングで1枚目の撮影画像502の露光を開始する。すなわち従来は、フォーカスブラケット撮影において実際に露光を開始するピント位置である露光開始ピント位置501は、開始ピント位置に一致する。よって、従来のフォーカスブラケット撮影では、1枚目の撮影画像の、開始ピント位置をピント位置とする位置(以下「基準位置」という)は、撮像部22の撮像素子による1ライン目の読み出し結果を示す位置となる。このため、1枚目の撮影画像の、撮像素子による最終ラインの読み出し結果を示す下部のピント位置は、開始ピント位置から大きくずれる。
【0067】
ピント変化量503は、1枚目の撮影画像502の露光、読み出し時間中におけるピント位置の変化量を示している。
【0068】
図5Cは、実施例1のフォーカスブラケット撮影を実行した際の、露光、読み出し時間中のピント変化を示す図である。
【0069】
図5Cに示すように、本実施例では1枚目の撮影画像502の中心部分を基準位置に予め設定する。すなわち、1枚目の撮影画像502の中心部分のピント位置が開始ピント位置となるように、図5Bに示す露光開始ピント位置501を補正する。この基準位置は、初期設定に含めてもよいし、フォーカスブラケット撮影処理の前に予めユーザが指定しておいてもよい。
【0070】
補正量504は、1枚目の撮影画像502の中心部分が開始ピント位置に合うように図5Bに示す露光開始ピント位置501を補正するために必要な補正量を示す。
【0071】
露光開始ピント位置505は、開始ピント位置より補正量504だけ早いタイミングに図5Bに示す従来の露光開始ピント位置501を補正した後のピント位置である。
【0072】
このように、本実施例では、従来の露光開始ピント位置501を露光開始ピント位置505に補正することで、1枚目の撮影画像502の中心部分を開始ピント位置に合わせ、その画像全体のピント位置がその開始ピント位置の近傍である画像とする。これにより、所望のピント位置が、ユーザがマニュアルフォーカスによって決定した開始ピント位置である場合に、ユーザは1枚目の撮影画像をその開始ピント位置における撮影画像として選択することができる。
【0073】
図5Dは、実施例1に係るフォーカスブラケット撮影のフォーカスレンズ103の駆動開始ピント位置を示す図である。
【0074】
補正量507は、フォーカスレンズ103が静止した状態から、所定のピント変化速度に到達するのに要するピント変化量である。
【0075】
駆動開始ピント位置508は、露光開始ピント位置505から補正量507だけフォーカスブラケット撮影時のピント変化方向とは逆方向にずらしたピント位置である。フォーカスブラケット撮影が開始すると、フォーカスレンズ103はこの駆動開始ピント位置にまで移動した後に停止し、最初の垂直同期信号の発行と同時に駆動を開始する。
【0076】
図6は、本実施例におけるフォーカスブラケット撮影処理のタイミングチャートである。
【0077】
図6(a)は撮像部22に対してシステム制御部50が発行する垂直同期信号Vdと、撮像部22の露光、読み出し動作を示している。
【0078】
図6(a)において、タイミング601は、システム制御部50が、静止状態にあるフォーカスレンズ103の駆動を開始すると共に、最初に垂直同期信号Vdを撮像部22に発行するタイミングである。
【0079】
撮影間隔Vtは、システム制御部50が撮像部22に垂直同期信号Vdを発行する間隔であって、予め設定されたフォーカスステップ500を所定のピント変化速度で駆動するフォーカスレンズ103が移動するのに必要な時間に等しい。
【0080】
露光開始タイミング602は、撮像部22において実際に露光が開始する図5Cの露光開始ピント位置505をフォーカスレンズ103が通過するタイミングである。露光開始タイミング602は、タイミング601から撮影間隔Vtだけ経過したタイミング603より露光時間Veだけ早い時間に設定される。すなわち、撮像部22は撮影間隔Vtで垂直同期信号Vdの発行がある毎に、その発行タイミングから期間Ts(=Vt-Ve)が経過したタイミングで露光を開始する。また、フォーカスレンズ103は、露光開始タイミング602以降は、本実施例のフォーカスブラケット撮影が終了するまでの間(レンズ等速区間)は、所定のピント変化速度で駆動する。
【0081】
図6(b)はフォーカスレンズ103の駆動によるピント変化速度を示す図である。
【0082】
斜線で示すピント変化量605は、期間Tsにおいてその始点のタイミング601で静止状態から駆動を開始したフォーカスレンズ103のピント変化量を示す。図6(b)に示すように期間Tsの間にピント変化速度が所定のピント変化速度Sfixに到達していれば、1枚目の撮影画像と2枚目以降の撮影画像のピント変化の状態が同一になる。すなわち、本実施例ではフォーカスレンズ103がタイミング601で駆動を開始してから所定のピント変化速度Sfixに到達するのに必要な時間Tnが、期間Ts内に収まるように期間Tsを設定する(Tn<Ts)。
【0083】
ピント変化量605は、図6(b)の矩形で示す面積であり、図5Dの説明における補正量507に相当する。
【0084】
図6においては、システム制御部50は、撮像部22による撮影開始前の期間Tsの垂直同期信号Vdの発行間隔を、撮像部22による撮影開始後のレンズ等速区間と同様に撮影間隔Vtとしたが、これに限定されない。フォーカスレンズ103の駆動性能が低い場合、もしくは露光時間Veが長く、期間Tsが短い場合、期間Tsではフォーカスレンズ103のピント変化速度が所定のピント変化速度Sfixに到達できないことがある。その場合、期間TsをTn以上の時間となる区間に設定してもよい。また、フォーカスブラケット撮影処理が開始してから最初の垂直同期信号Vdの発行タイミングを、タイミング601よりもさらに撮影間隔Vtだけ遡ったタイミングとし、そのタイミングでフォーカスレンズ103の駆動を開始するようにしてもよい。
【0085】
図3は、実施例1におけるフォーカスブラケット撮影処理のフローチャートである。
【0086】
図3における各ステップは、システム制御部50が、不揮発性メモリ56に格納されたプログラムを、システムメモリ52に展開して実行することにより実現される。
【0087】
シャッターボタン61がユーザにより全押しされ、本処理を開始すると、システム制御部50は、まずステップS301で図5Cの露光開始ピント位置505を決定するための露光開始ピント位置決定処理を実行する。この露光開始ピント位置決定処理の詳細については図4において後述する。
【0088】
次にステップS302でシステム制御部50は、図5Dを用いて説明したフォーカスレンズ103の駆動開始ピント位置508を決定する。
【0089】
ステップS303でシステム制御部50は、フォーカスレンズ103を駆動開始ピント位置508に移動させ、静止状態とした後、ステップS304で撮像部22に対して垂直同期信号Vdを発行すると同時に、フォーカスレンズ103の駆動を開始する。このステップS304の実行タイミングが、図6のタイミング601に相当する。ステップS303,S304により、フォーカスブラケット撮影期間の間、駆動し続けるフォーカスレンズ103のピント位置と、撮像部22の露光、読み出しを行うタイミングを同期させることが可能となる。
【0090】
次にステップS305で撮像部は、直近の垂直同期信号Vdの発行から期間Tsが経過したときに露光を開始し、撮影画像を生成する。これにより、生成された撮影画像の中心部分が基準位置に設定されるので、撮影画像502の中心部分のピント位置が開始ピント位置となる。
【0091】
ステップS306でシステム制御部50は、設定枚数の撮影画像の撮影動作が完了しているか、すなわち、撮像素子の露光及び読み出しを予め設定された回数だけ実施したか判定を行う。この判定の結果、完了していない場合は、直近の垂直同期信号Vdの発行から撮像間隔Vtが経過したタイミングで垂直同期信号Vdを発行した後、ステップS305に戻る。一方、完了している場合、システム制御部50は、ステップS307に進み、フォーカスレンズ103の駆動を停止させ、本処理を終了する。
【0092】
次に、図4のフローチャートを用いて図3のステップS301の露光開始ピント位置決定処理について説明する。
【0093】
本処理ではまず、システム制御部50はステップS401で、撮像部22の1回の読み出しに必要な読み出し時間と、撮影条件により決定された露光時間を取得する。
【0094】
次にシステム制御部50はステップS402で、フォーカスレンズ103のピント変化速度を取得する。このピント変化速度は、図6に示す所定のピント変化速度Sfixに等しい。
【0095】
その後システム制御部50はステップS403で、露光、読み出し時間中のピント変化量503を算出する。
【0096】
システム制御部50はステップS404で、ステップS403で算出したピント変化量503を基に従来の露光開始ピント位置501からの補正量504を算出する。この補正量504は、ステップS403で算出した露光、読み出し時間中のピント変化量503と、予め設定されている撮影画像の基準位置から決定される。例えば基準位置を撮影画像の中心部分とする場合、ピント変化量503の半分を補正量504として算出する。これにより、撮影画像の中心部分の露光タイミングと、フォーカスレンズ103が開始ピント位置を通過するタイミングを合わせることができる。
【0097】
尚、本発明に係る基準位置は、本実施例のような撮影画像の中心部分である場合に限定されない。例えば、基準位置を、撮影の開始時のAF処理またはユーザ操作によるマニュアルフォーカスにより設定された、被写体にピントを合わせた際のフォーカス枠の中心としてもよい。以下、この変形例について、図5E図5Fを用いて説明する。
【0098】
図5Eは、実施例1の変形例に係るフォーカスブラケット撮影のフォーカスレンズ103の露光開始ピント位置を示す図である。
【0099】
この変形例においては、フォーカス枠の中心の位置に応じて、従来の露光開始ピント位置501を補正する。例えば、図5Fのように、撮影画像の垂直画素数をH、フォーカス枠の中心の垂直座標yとした場合、露光開始ピント位置の補正量509は以下のように求められる。
(補正量509)=(露光、読み出し時間中のピント変化量503)×y/H
【0100】
すなわち、本変形例の露光開始ピント位置510は、開始ピント位置より補正量509だけ早いタイミングに図5Bに示す従来の露光開始ピント位置501を補正することにより求めることができる。
【0101】
図4に戻り、システム制御部50はステップS405で、開始ピント位置及びステップS404で算出した補正量504(又は補正量509)から、実際に露光を開始するピント位置を決定し、本処理を終了する。
【0102】
以上の処理により、ドライビングレリーズを用いたフォーカスブラケット撮影において必要な露光開始位置の補正量と露光開始タイミングを決定することができる。
【0103】
(実施例2)
本実施例のフォーカスブラケット撮影処理は、最初の垂直同期信号の発行時のフォーカスレンズ103は、実施例1では静止しているのに対し、既にピント変化速度Sfixで駆動中である点が異なる。よって、以下本実施例において実施例1と同一の構成要素については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0104】
以下、図8のタイミングチャートを用いて、実施例2におけるフォーカスブラケット撮影処理を説明する。
【0105】
図8において、露光開始タイミング801は、撮像部22において実際に露光が開始する図5Cの露光開始ピント位置505をフォーカスレンズ103が通過するタイミングである。実施例1と同様、本実施例においても撮影間隔Vt、露光時間Veでフォーカスブラケット撮影を行う。よって、システム制御部50は、露光開始タイミング801で露光を開始すべく、露光開始タイミング801から期間Ts(=Vt-Ve)だけ早いタイミング802で撮像部22を制御するための垂直同期信号Vdを最初に発行する。
【0106】
本実施例では、フォーカスブラケット撮影処理の開示時においてフォーカスレンズ103はピント変化速度Sfixですでに駆動している。このため、垂直同期信号Vdが最初に発行されるタイミング802におけるフォーカスレンズ103のピント位置(撮像制御開始ピント位置)は、(Ts×Sfix)だけ、露光開始ピント位置505をピント変化方向とは逆方向にずらすことにより求められる。
【0107】
すなわち、本実施例では、フォーカスブラケット撮影処理の開始後、システム制御部50は、ピント変化速度Sfixで駆動するフォーカスレンズ103が撮像制御開始ピント位置に到達したタイミング802で最初に垂直同期信号Vdを撮像部22に発行する。また、この最初の垂直同期信号Vdの発行と同時に、露光開始タイミング801からの露光に必要な設定を行う。また、撮像部22は撮影間隔Vtで垂直同期信号Vdの発行がある毎に、その発行タイミングから期間Tsが経過したタイミングで露光を開始する。
【0108】
図7は、実施例2におけるフォーカスブラケット撮影処理のフローチャートである。
【0109】
図3と同様、図7における各ステップは、システム制御部50が、不揮発性メモリ56に格納されたプログラムを、システムメモリ52に展開して実行することにより実現される。
【0110】
シャッターボタン61がユーザにより全押しされ、本処理を開始すると、システム制御部50は、まずステップS701の露光開始ピント位置決定処理を実行する。この露光開始ピント位置決定処理については、ステップS301およびステップS401~S405と同様のため説明を省略する。
【0111】
次に、ステップS702でシステム制御部50は、撮像部22の撮像素子による撮像制御開始ピント位置を決定する。
【0112】
ステップS703でシステム制御部50は、フォーカスレンズ103の駆動を開始する。その後、ピント変化速度Sfixでフォーカスレンズ103が図8を用いて前述した撮像制御開始ピント位置に到達したときにタイミング802であると判断し、ステップS704に進む。
【0113】
ステップS704でシステム制御部50は、撮像に必要な設定を行い、撮像部22に対して垂直同期信号Vdを発行する。
【0114】
次にステップS705で撮像部22は、直近の垂直同期信号Vdの発行から期間Tsが経過したときに露光を開始し、撮影画像を生成する。
【0115】
ステップS706でシステム制御部50は、設定枚数の撮影画像の撮影動作が完了しているか判定を行う。この判定の結果、完了していない場合は、直近の垂直同期信号Vdの発行から撮像間隔Vtが経過したタイミングで垂直同期信号Vdを発行した後、ステップS705に戻る。一方、完了していた場合、システム制御部50は、ステップS707に進み、フォーカスレンズ103の駆動を停止させ、本処理を終了する。
【0116】
システム制御部50ではなくフォーカスレンズ103が、撮像制御開始ピント位置に到達したタイミングで、撮像部22へ垂直同期信号Vdを撮像部22に直接発行しても良い。これにより、フォーカスレンズ103が撮像制御開始ピント位置に到達した際に、撮像部22への垂直同期信号Vdの発行が迅速に実行することができる。
【0117】
[その他の実施例]
本発明の目的は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、装置に供給することによっても、達成されることは言うまでもない。このとき、供給された装置の制御部を含むコンピュータ(またはCPUやMPU)は、記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。
【0118】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0119】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0120】
また、上述のプログラムコードの指示に基づき、装置上で稼動しているOS(基本システムやオペレーティングシステム)などが処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0121】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、装置に挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれ、前述した実施例の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。このとき、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行う。
【符号の説明】
【0122】
15 メモリ制御部
22 撮像部
24 画像処理部
28 表示部
32 メモリ
50 システム制御部
52 システムメモリ
60 モード切替スイッチ
61 シャッターボタン
70 操作部
100 デジタルカメラ
103 フォーカスレンズ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8