(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】少なくとも1つの特にピン状のコンタクト要素を導体板の導電性経路に取り付ける方法、導体板に取り付けるためのピンヘッダ、接続アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240325BHJP
B23K 26/28 20140101ALI20240325BHJP
【FI】
B23K26/21 L
B23K26/28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019146351
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10 2018 213 639.4
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ドレッセル,アンドレ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クリッツ,ガンサー
(72)【発明者】
【氏名】ハバー,イェンス
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347415(JP,A)
【文献】特開平07-273267(JP,A)
【文献】特開2012-125829(JP,A)
【文献】特開平08-150488(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179656(JP,U)
【文献】特開2018-098102(JP,A)
【文献】特表2004-505457(JP,A)
【文献】中国実用新案第202455653(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのピン状のコンタクト要素(10)を導体板(20)の導電性経路(21)に取り付ける方法であって、
前記コンタクト要素(10)は、レーザビーム(30)により表面実装法で前記導電性経路(21)に溶接され
、
前記少なくとも1つのピン状のコンタクト要素(10)は、互いにずれたいくつかの列(105)に配置されている、いくつかのピン状のコンタクト要素(10)を有するピンヘッダ(100)の一部であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コンタクト要素(10)は前記導電性経路(21)の表面(22)上に溶接される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビーム(30)のレーザはパルス状である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビーム(30)は表面(80)の螺旋経路(70)に沿って案内される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザビーム(30)は材料(60)を局所的にのみ溶融する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザビーム(30)は、前記コンタクト要素(10)の厚さ(111)の10分の1よりも小さい領域(45)に集束される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンタクト要素(10)の溶接されるべき一端部(11)が溶接前に平坦化される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コンタクト要素(10)の溶接すべき端部(11)が型押しまたは圧延される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コンタクト要素(10)の厚さ(111)に対する前記導電性経路(21)の厚さ(121)の割合が、少なくとも0.3である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
導体板(20)に取り付けるためのピンヘッダ(100)であって、少なくとも1つのピン状のコンタクト要素(10)を備え、前記少なくとも1つの
ピン状のコンタクト要素(10)は、前記導体板(20)の導電性経路(21)の表面(22)上に表面実装部品として溶接されて
おり、前記コンタクト要素(10)のいくつかの列(105)を有し、隣接する前記列(105)の前記コンタクト要素(10)は互いにずれている、ピンヘッダ(100)。
【請求項11】
前記コンタクト要素(10)の第1の端部(11)が円板状に構成されている、請求項
10に記載のピンヘッダ(100)。
【請求項12】
請求項
10または11のいずれか一項に記載の前記ピンヘッダ(100)と前記導体板(20)とを備え、
前記ピンヘッダ(100)の前記コンタクト要素(10)が、前記導体板(20)の導電性経路(21)上に表面実装部品として溶接されている接続アセンブリ(200)。
【請求項13】
前記ピンヘッダは、すべて表面実装されているいくつかの前記コンタクト要素を有する、請求項
12に記載の接続アセンブリ(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの特にピン状のコンタクト要素を導体板の導電性経路に取り付ける方法に関する。さらに、本発明は、導体板に取り付けるためのピンヘッダ、および接続アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクト要素をいかに導体板の導電性経路に取り付けることができるかに関して、様々な方法が存在する。例えば、コンタクト要素をはんだ付けにより取り付けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これを行うには、フラックスを使用する必要があるが、フラックスは、製造方法がさらに進行した際に必要に応じて除去しなければならない。さらなる可能性は、スルーホール技術(THT)による製造である。しかしながら、これは孔あけを必要とする。したがって、この特定の方法は複雑なものになる。
本発明の課題は、より複雑でない解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、少なくとも1つの特にピン状のコンタクト要素を導体板の導電性経路に取り付ける方法であって、コンタクト要素は、レーザビームにより表面実装法で導電性経路に溶接される方法により解決される。
【0005】
本発明による、導体板に取り付けるためのピンヘッダは、少なくとも1つの特にピン状のコンタクト要素を備え、少なくとも1つのコンタクト要素は、導体板の導電性経路の表面上に表面実装部品として溶接されている。
【0006】
本発明による接続アセンブリは、本発明によるピンヘッダと導体板とを備え、ピンヘッダのコンタクト要素が、導体板の導電性経路上に表面実装部品として溶接されている。
【0007】
特定の解決策によれば、フラックスを使用する必要がない。さらに、孔あけを省略することができる。これにより、費用が削減される。
【0008】
本発明による解決策を、以下のさらなる発展および構成によりさらに改良することができる。これらの発展および構成は各々有利であり、希望に応じて互いに組み合わせることができる。
【0009】
コンタクト要素を、特に、導電性経路の表面上に溶接することができる。これにより、方法を特に簡単にすることができる。
【0010】
有利な方法の構成の場合、孔あけを完全に省略して、方法を簡単に維持することができる。したがって、有利な接続配置の構成の場合、導体板に孔がなくてよい。すべての部品を、表面実装法(表面実装技術(SMT))で実装することができる。
【0011】
さらなる構成において、レーザはパルス状であってよい。これにより、持続時間および位置の両方に関して制限された加熱を生じさせることができ、隣接する領域、特に導体板が受ける熱応力が小さくなる。
【0012】
レーザビームを表面の螺旋経路に沿って案内することができる。そのようにビームを案内する場合、加熱を経路に沿って十分に分布させることができる。当然、他の形の経路、例えば直線パターンも可能である。表面は、特に、コンタクト要素の表面であってよい。
【0013】
熱応力を小さく維持するために、レーザビームは材料を局所的にのみ溶解することができる。例えば、レーザは、レーザビームの幅の3.0倍に対応する半径を有する領域のみで材料を溶解することができる。有利には、領域がより小さくてもよく、例えば、レーザビームの幅の2倍のみ、または例えば、レーザビームの単一幅のみであってもよい。この場合、レーザビームの幅を、例えば、強度が1/e2まで低下した2つの対向する点間の距離として定義することができる。
【0014】
レーザビームを、コンタクト要素の厚さの10分の1よりも小さい領域に集束させることができる。その後、加熱を局所的に限定することができる。
【0015】
いくつかのコンタクト要素を使用するときに、コンタクト要素間の距離、したがって絶縁距離を大きく維持するために、少なくとも1つの特にピン状のコンタクト要素は、互いにずれたいくつかの列に配置されている、いくつかの特にピン状のコンタクト要素を有するピンヘッダの一部であってもよい。コンタクト要素と隣接するコンタクト要素とを結ぶ2本の線の間の角度は、90度ではなく、特に約60度であってよい。コンタクト要素を六角格子に配置することができる。
【0016】
溶接プロセス中に特に良好な加熱を可能にするために、コンタクト要素の溶接すべき端部を溶接前に平坦化することができる。これにより、溶接すべき端部をレーザビームにより軽く加熱することができる。これに対応して形成される端部は平坦である。
【0017】
例えば、コンタクト要素の溶接すべき端部を、型押しまたは圧延することができる。そのような構成は、特に容易に実施することができる。
【0018】
コンタクト要素と導電性経路との特に良好な溶接を可能にするために、コンタクト要素の厚さに対する導電性経路の厚さの割合が、少なくとも0.3であってよい。この割合は、最大2.0とすべきである。この場合、厚さは、特に平坦な端部で測定することができ、その端部の2つの平坦面、例えば正面と裏面との間の最小寸法であってよい。
【0019】
コンタクト要素の溶接すべき第1の端部を、特に円板状に構成して、加熱を簡単にすることができる。例えば、これは、例として円形の円板であってよい。
【0020】
取付け状態において、溶接すべき端部は導体板の表面の平行に延びて、簡単かつ広範囲にわたる溶接を可能にすることができる。
【0021】
コンタクト要素、特にコンタクト要素の溶接すべき端部を、導電性経路または適切に構成された着地面上に溶接することができる。
【0022】
相手側プラグとの簡単な接触を可能にするために、コンタクト要素の第2の端部を、相手側プラグに接続するように構成することができる。このために、第2の端部は、対応する相手側要素と接合可能な突出ピンまたはソケットとして構成することができる。このために、プラグの社内標準または国内標準または国際標準に従って、コンタクト要素を形成することができる。
【0023】
ピンヘッダは、すべて表面実装されているいくつかのコンタクト要素を有することができる。これにより、特に簡単な実装が可能になる。
【0024】
以下で、図面を参照しながら、本発明について、例として、有利な構成に基づいてより詳細に説明する。この例に示す有利なさらなる発展および構成は、各々互いに独立しており、特定の適用にどのように必要であるかに応じて、希望通りに互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】導体板におけるコンタクト要素の概略側断面図である。
【
図3】コンタクト要素の実施形態の詳細の概略斜視図である。
【
図5】いくつかのコンタクト要素のアセンブリの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1はピンヘッダ100を示す。このようなピンヘッダ100をヘッダとも称する。ピンヘッダ100は、導体板20に取り付けられ、導体板20の導電性経路21に接続されるいくつかのコンタクト要素10を有する。一方、ピンヘッダ100は、導体板20とは反対側に、プラグイン面を有することができ、相手側プラグ(図示せず)に接続できるようになっている。プラグイン面は、内部標準または外部標準に従って構成することができ、そのような標準に従って相手側プラグに差し込むことができるようになっている。
【0027】
コンタクト要素10は、例えば絶縁性プラスチックから形成可能なハウジング90に配置される。
【0028】
図1および
図5に見られるように、コンタクト要素10はいくつかの列105に配置され、隣接する列105は、ずれ106の分だけ互いにずれている。個々のコンタクト要素10は六角格子に配置され、中心のコンタクト要素10は、6つのさらなるコンタクト要素10に囲まれ、各コンタクト要素10からの距離130が同じである。したがって、3つのコンタクト要素がいずれも正三角形を形成する。ベースとしてのコンタクト要素10を含む3つのコンタクト要素間で測定された角度107は、60度である。
【0029】
他の構成において、個々の列105間の距離および列105の個々のコンタクト要素10間の距離130がどのようであるかに応じて、角度はより小さくても大きくてもよい。
【0030】
特に
図2および
図3において、コンタクト要素10の溶接すべき第1の端部11が平坦化されていることが見て取れる。図示した例では、第1の端部11は、例えば円形の円板51として構成される。厚さ方向T(平坦な第1の端部11の平面に垂直かつ導体板20の表面25に垂直に測定される)に測定された第1の端部11の厚さ111は、導体板20の導電性経路21の厚さ121の領域における大きさで表される。これにより、コンタクト要素10と導電性経路21とを互いに良好に溶接することができる。一般に、コンタクト要素10、特に第1の端部11の厚さ111に対する導電性経路21の厚さ121の割合は、少なくとも0.3とすべきである。値2.0を、良好な溶接結果を得るための最大の割合とみなすことができる。
【0031】
例えば、型打ちまたは型押しプロセスにより平坦化を達成することができる。
【0032】
レーザビーム30を使用して、コンタクト要素10を導電性経路21に溶接する。この場合、レーザビーム30はコンタクト要素10の平坦な第1の端部11の裏面14上に向けられる。この裏面14は、導電性経路21に接触する正面13とは反対側の面とみなすべきである。正面13は、導電性経路21の表面22に接触し、この表面22に、より厳密にはこの表面22上に溶接される。
【0033】
レーザビーム30がコンタクト要素10に当たると、加熱、特に溶融が生じるため、コンタクト要素10が導電性経路21に、より厳密には導電性経路21上に溶接される。レーザビーム30の幅131およびレーザビーム30を集束させる領域45は、この場合、非常に小さくなるように選択されて、溶解される領域40の幅140が、コンタクト要素10、特に第1の端部11の幅110と比べて小さくなるようにする。これにより、エネルギー入力および暖気が最小に維持されるため、熱に弱い導体板20が損傷を受けない。レーザビーム30を集束させる領域45の幅および/または加熱領域40の幅140が、コンタクト要素10の厚さ111の10分の1より小さいことが有利である。
【0034】
材料60の局所的な溶解をさらに制限するために、レーザをパルス状にして、短い集中的なレーザパルスのみが表面80に当たるようにしてもよい。
【0035】
図示したコンタクト要素10は、特に、第1の端部11と第2の端部12との間に位置する中央領域15において略ピン状である。コンタクト要素10は、幅方向Wに垂直かつ厚さ方向Tに垂直な長手方向Lに沿って延び、厚さ方向Tは幅方向Wに垂直である。
【0036】
図4に見て取れるように、レーザビーム30を案内する経路70は螺旋状であってよい。これにより、例えば、加熱領域40が十分な冷却時間を取った後に、レーザビーム30によって加熱領域40付近をさらに加熱することができる。
【0037】
ピンヘッダ100は、図示したコンタクト要素10のすべてを表面実装法で導体板20に実装することができるように構成される。特に、導体板20に孔をあける必要がない。したがって、製造に関する費用が削減される。それでも、小さい領域40で局所的にのみ加熱を達成するパルス状レーザを使用することにより、導体板20が高温に晒されることなく、コンタクト要素10と導電性経路21との溶接を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
10 コンタクト要素
11 溶接すべき第1の端部
12 第2の端部
13 正面
14 裏面
15 中央領域
20 導体板
21 導電性経路
25 導体板の表面
30 レーザビーム
40 領域
45 集束領域
51 円板
60 材料
70 経路
71 螺旋経路
80 表面
90 ハウジング
100 ピンヘッダ
105 列
106 ずれ
107 角度
110 コンタクト要素の幅
111 第1の端部の厚さ
121 導電性経路の厚さ
130 距離
131 レーザビームの幅
140 領域の幅
200 接続アセンブリ
L 長手方向
T 厚さ方向
W 幅方向