(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】画像処理方法、画像処理装置、ロボットシステム、ロボットシステムを用いた物品の製造方法、検査方法、制御プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240325BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240325BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G06T1/00 300
G01N21/88 J
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2019180961
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】古澤 俊範
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220497(JP,A)
【文献】特開2007-155610(JP,A)
【文献】特開2015-175706(JP,A)
【文献】特開2005-274157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G01N 21/88
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象物の各々の情報を取得し、
前記複数の対象物の各々の前記情報に基づいて、前記複数の対象物の輝度に関するモデル画像を作成する、画像処理方法において、
前記情報は、前記複数の対象物の各々を該対象物ごとに撮像して取得した複数の対象物画像であり、
前記複数の対象物画像のうちのいずれかの対象物画像を基準画像とし、前記複数の対象物画像のうちの前記基準画像とは別の対象物画像を対象画像とし、前記基準画像と前記対象画像とを比較し、各画素における輝度比を示した輝度比マップを取得し、
前記モデル画像と前記輝度比マップに基づき、前記モデル画像において所定の輝度の値を有する画素の位置の情報を位置情報として取得し、前記輝度比マップにおいて前記位置情報と対応する位置に位置する各画素の輝度比の平均値を取得し、当該平均値を、前記輝度比マップにおいて前記位置情報に対応する位置の各画素に用いて補正レートマップを取得する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理方法において、
撮像装置で撮像された画像に対して、前記モデル画像を用いて輝度補正を行う、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の画像処理方法において、
前記モデル画像は、前記複数の対象物画像の各々における複数の画素の輝度の平均値が用いられた画像である、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1、2または
3に記載の画像処理方法において、
前記位置情報は画素アドレスである、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1、2
、3または
4に記載の画像処理方法において、
前記対象画像の輝度を、前記補正レートマップを用いて補正した輝度補正画像を取得する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の画像処理方法において、
前記輝度補正画像は、前記対象画像における所定の範囲に位置する画素の輝度を補正した画像である、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項
1から
6のいずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記所定の輝度の値が取りうる範囲は0から255である、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項1
から7
のいずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記情報は、前記複数の対象物の各々の形状情報を含む、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の画像処理方法において、
前記形状情報は、前記対象物の所定の部位の傾斜角である、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の画像処理方法を行う処理部と、
前記モデル画像を記憶する記憶部と、を備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の装置と、ロボット装置とを備えたシステム。
【請求項12】
請求項
11に記載のシステムを用いて物品の製造を行うことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項13】
撮像装置と、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の画像処理方法を行う処理部と、を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行可能な制御プログラム。
【請求項15】
請求項
14に記載の制御プログラムを格納した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【請求項16】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の画像処理方法によって画像処理された画像を用いて前記対象物の状態を検査する検査方法。
【請求項17】
複数の対象物を撮像し画像処理を行う画像処理方法であって、
複数の前記対象物を前記対象物ごとに撮像し、複数の対象物画像を取得し、
複数の前記対象物画像の情報に基づいて前記対象物の輝度に関するモデル画像を取得し、
所定の対象物画像と前記モデル画像とを比較し、各画素における輝度比を示した輝度比マップを取得し、
前記モデル画像と前記輝度比マップに基づき、前記モデル画像において所定の輝度の値を有する画素の位置の情報を位置情報として取得し、前記輝度比マップにおいて前記位置情報と対応する位置に位置する各画素の輝度比の平均値を取得し、当該平均値を、前記輝度比マップにおいて前記位置情報に対応する位置の各画素に用いて補正レートマップを取得する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製品の製造ラインの特定の位置で、製品の画像を撮影し、撮像した製品画像と基準画像とを比較し、両者の輝度の差に基づく画像処理を介して検品などの検査処理を行う手法が知られている。しかしながら、製造される製品によっては、その製品の表面に塗装処理や研磨などの表面処理が施される場合がある。その場合、塗装処理や表面処理の実行条件(スプレーの吹き付け方や研磨剤の劣化等)によって、製品の表面状態に変化が生じることがある。製品の表面状態に変化が生じた場合、製品画像の輝度分布において製品ごとに個体差が生じてしまう。そのため、製品画像の輝度分布の個体差により、基準画像との輝度の差にばらつきが生じ、製品の欠陥の有無を精度良く検査することが困難になる。
【0003】
そこで特許文献1に記載の技術では、被検査体を撮像した被検査体輝度画像に所定のエリアを設定し、その被検査体エリアに対応するように基準輝度画像にもエリアを設定する。そして設定したエリアで輝度の比較を行い、補正レートを算出することで、被検査体輝度画像の輝度分布を基準輝度画像の輝度分布に近付ける補正を行い、被検査体輝度画像と基準輝度画像との輝度分布をある程度揃えた上で外観検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、対象となる製品が複雑な3次元形状を有している場合、以下に述べる課題がある。製品が3次元形状を有している場合、製品を照らす照明に対して傾きを有する表面が生じ、照明に対する反射率が異なる表面が複数存在することになる。よって所定のエリアでの輝度の比較から求めた補正レートだけでは、反射率の異なる表面の輝度を正しく補正することができない。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑み、画像処理の対象となる製品が複雑な3次元形状を有する場合でも、正しく画像処理を行うことができる画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明においては、複数の対象物の各々の情報を取得し、前記複数の対象物の各々の情報に基づいて、前記複数の対象物の輝度に関するモデル画像を作成する画像処理方法を採用した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像処理の対象となる製品が複雑な3次元形状を有する場合でも正しく画像処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における画像処理ステム100を示す概略図である。
【
図2】実施形態における画像処理システム100のブロック図である。
【
図3】実施形態における画像処理方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態における基準画像ISに関する図である。
【
図5】実施形態における対象物画像IWに関する図である。
【
図6】実施形態におけるモデル画像IMに関する図である。
【
図7】モデル画像IMを所定の領域に分割した際の図である。
【
図8】実施形態における補正レートマップILに関する図である。
【
図9】実施形態における輝度補正画像IW’に関する図である。
【
図10】実施形態における対象物Wの概略図である。
【
図11】実施形態における画像処理方法を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態におけるモデル画像IMに関する図である。
【
図13】モデル画像IMを所定の領域に分割した際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態につき説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも一例であり、細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更できる。また、本実施形態で取り上げる数値は参考数値であって本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における画像処理システム100を示す概略図である。
図1に示すように、画像処理システム100は、画像処理の対象となる、加工や組立等の処理が施された製品の外観の検査を画像処理により行うものである。画像処理システム100は、ワーク(対象物)Wを保持するワーク保持部101と、ワークWを移動させる移動装置102と、照明103と、撮像装置としての撮像装置104と、レンズ105と、制御装置200と、を備えている。
【0012】
ワークWは、3次元形状を有した金属加工部品であり、表面をサンドブラストにより研磨する表面処理が施されている。画像処理システム100は、ワークW表面のキズ、汚れ等の外観検査を画像処理により行う。なお、ワークWは、金属加工部品以外の部品でもよく、金属加工部品以外の部品、例えば、表面に塗装がなされたカメラの外装部品、更にはそれらの部品で組み立てられたカメラでもよく、工場で製造される製品全般を含むものである。
【0013】
ワークWは、ワーク保持部101の上に載置されている。照明103は、ワークWの上方に配置されている。照明103はリング型のLED照明が用いられている。さらに撮像装置104は、照明103の上方に配置されている。
【0014】
移動装置102は、固定ステージ102Aと、固定ステージ102Aに対して移動する移動ステージ102Bとを有する。移動ステージ102Bには、ワークW、具体的にはワーク保持部101が固定されている。これによりワークWは、撮像装置104、光源103に対して移動することで、ワークWに対して様々な位置で撮像することが可能となる。移動装置102は、例えば、直動する直動ステージや回転する回転ステージ等であってもよい。また、それらの直動ステージや回転ステージが組み合わされ構成された多軸移動ステージであってもよく、さらには、多関節ロボットによりワークWを把持して撮像装置104により撮像してもよい。
【0015】
照明103は、ワークWに光を照射(照明)する照明装置である。照明103は、例えば、LEDやハロゲンランプ等、画像処理に必要な光量の光をワークWに照射するものであればいかなるものでもよく、また、リング照明やスポット照明いかなるものであってもよい。また、照明103の発光面側に拡散板やレンズ等を配置してもよい。
【0016】
撮像装置104は、ワークWからの光を受光して、画像データを生成する撮像素子104Aを有するデジタルカメラである。撮像素子104Aは、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等のエリアセンサである。また、撮像装置104は、レンズ105を有し、レンズ105により倍率が調整され、ワークWの全体が撮像されるように調整されている。
【0017】
照明103によりワークWに照射された光は、ワークWの表面にて反射され、照明103の上方に設置された撮像装置104にて撮像される。
【0018】
制御装置200は、撮像装置104で撮像された画像に対して、あらかじめ記憶しているモデルを用いて撮像した画像に輝度補正を行い、ワークWに存在する欠陥を検出する。
【0019】
図2は、本実施形態における画像処理システム100を示すブロック図である。制御装置200は、処理部(演算部)としてのCPU(Central Processing Unit)201を備えている。また、制御装置200は、記憶部として、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、HDD(Hard Disk Drive)204を備えている。また、制御装置200は、記録ディスクドライブ205及び各種のインターフェース211~214を備えている。
【0020】
CPU201には、ROM202、ROM203、HDD204、記録ディスクドライブ205及び各種のインターフェース211~214が、バス210を介して接続されている。ROM202には、BIOS等の基本プログラムが格納されている。RAM203は、CPU201の演算処理結果等、各種データを一時的に記憶する記憶装置である。HDD204は、CPU201の演算処理結果や外部から取得した各種データ、モデル等を記憶する記憶装置であると共に、CPU201に、後述する各種演算処理を実行させるためのプログラム240を記録するものである。CPU201は、HDD204に記録(格納)されたプログラム240に基づいて画像処理方法の各工程を実行する。記録ディスクドライブ205は、記録ディスク241に記録された各種データやプログラム等を読み出すことができる。
【0021】
移動装置102は、インターフェース211に接続され、CPU201の制御の下、ワークWを移動させる。照明103は、インターフェース212に接続され、CPU201の制御の下で点灯又は消灯する。撮像装置104は、インターフェース213に接続され、CPU201からのトリガ信号により撮像し、撮像結果である画像データをCPU201に出力する。CPU201は、撮像装置104から画像データを取得し、取得した画像に輝度補正などの画像処理を施して、ワークWのキズや汚れ等の欠陥を検出する。また、インターフェース214には、書き換え可能な不揮発性メモリや外付けHDD等の外部記憶装置110が接続可能となっている。
【0022】
なお、本実施形態では、コンピュータで読み取り可能な記録媒体がHDD204であり、HDD204にプログラム240が格納される場合について説明するが、これに限定するものではない。プログラム240は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。例えば、プログラム240を供給するための記録媒体としては、
図2に示すROM202や、記録ディスク241、外部記憶装置110等を用いてもよい。具体例を挙げて説明すると、記録媒体として、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリ、ROM等を用いることができる。
【0023】
次に、本実施形態に係る画像処理方法について説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、本実施形態における画像処理方法を示すフローチャートである。本実施形態では、CPU201がプログラム240に従って、
図3に示す各工程(各処理)を実行する。
【0024】
まず、
図1の画像処理システム100により作業を行う前の処理について
図3(a)を用いて説明する。最初にS1にて、基準となる基準ワークSをワーク保持部101に設置する。基準ワークSとはワークWと同型のワークである。CPU201は、照明103により基準ワークSに光を照射した状態で撮像装置104に基準ワークSを撮像させ、基準画像ISを取得する。
図4にS1にて取得した基準画像ISを示す。
図4(a)は基準ワークSを撮像した基準画像ISであり、
図4(b)は基準画像ISのX軸における輝度プロファイルである。
【0025】
続いてS2にて、ワークWを撮像した、画像処理の対象となる処理対象画像としての対象物画像IWを取得する。ワークWをワーク保持部101に載置する。CPU201は照明103によりワークWに光を照射した状態で、撮像装置104にワークWを撮像させて、対象物画像IWを取得する。
図5にS2にて取得した対象物画像を示す。
図5(a)はワークWを撮像した対象物画像IWであり、
図5(b)は対象物画像IWのX軸における輝度プロファイルである。
【0026】
図4(a)、
図5(a)において、面21、23、25は照明103に対して正対している面であり、面22、24は照明103に対して傾斜を有している面である。
図4(b)、
図5(b)より、対象物画像IWは基準画像ISに対して、表面粗さがより低いため、照明103に正対している面21、23、25においては、基準画像ISに比べ明るくなっている。また、照明103に傾斜を有している面22、24では、基準画像ISより暗くなっている。このように撮像の対象となる対象物が3次元的な形状を有する場合、照明103に対する傾斜により各面において輝度のムラが発生する。
【0027】
次にS3にて、CPU201は、所定数の対象物画像IWを取得したかどうかを判断する。所定数に達していなければ、S3:NOより、S2の直前まで戻り、先ほど撮像したワークWとは異なるが同型のワークWnをワーク保持部101に設置し、再度S2の処理を行う。CPU201は、照明103によりワークWnに光を照射した状態で、撮像装置104に異なるワークWnを撮像させて、異なるワークWnの対象物画像IWnを取得する。以上を繰り返し、照明103による複数の異なるワークを撮像装置104にて撮像し、予め設定された数の複数の異なる対象物画像を取得する。本実施形態では対象物画像を10枚程度取得するものとする。
【0028】
対象物画像が所定数に達すればS3:YESよりS4に進む。CPU201は、複数のワークWnをそれぞれ撮像した各対象物画像IWnそれぞれに対応する各画素での輝度の平均値を算出し、各対象物画像IWnの輝度の平均をとった形状を考慮した輝度のモデル画像であるモデル画像IMを新たに作成する。本実施形態では10枚の対象物画像の輝度の平均を取っている。ここで、
図6(a)に、モデル画像IMを示し、
図6(b)にモデル画像IMのX軸における輝度プロファイルを示す。
図6(a)より、モデル画像IMは、複数の異なるワークWnに対して、各画素において輝度の平均を算出しているため、各面21~25での輝度分布が平滑になっている。また
図6(b)より、ワーク毎の個体差による輝度分布も平準化されている。なお、モデル画像IMの算出においては、基準ワークSを撮像した基準画像ISを用いてもかまわない。
【0029】
そしてS5より、S1で取得した基準画像ISと、S5で作成したモデル画像IMを記憶部としてのROM202またはHDD204に格納する。以上より画像処理システム100によりワークに対して作業を行う前に、モデル画像IMを作成しておく。
【0030】
次に
図3(b)を用いて、モデル画像IMを用いた画像処理システム100の処理について説明する。
【0031】
まずS6にて、CPU201は、基準画像ISと対象物画像IWとの各画素における輝度の比を算出し、各画素の輝度比をマッピングした輝度比マップIRを作成する。なお今回は、対象物画像IWとしてS2で取得した物を使用するが、別途新たにワークを撮像し、対象物画像を取得しても良い。
【0032】
次にS7にて、CPU201は、モデル画像IMの各画素に対して、所定の輝度値から輝度値までの領域を設定し、領域毎に分割する。ここで、本実施形態では輝度値の最大および最小の範囲を0~255まで設定している。そして、輝度値0~50の画素は領域1、輝度値51~100までの画素は領域2、という風に分割する。輝度値の最大および最小の範囲、および各領域に対応する輝度値の範囲は、記憶部であるHDD204等に予め設定(記録)されているものとする。分割の仕方は処理の精度に応じて、輝度値0~1や輝度値0~10のように適宜変更してかまわない。
図7に、モデル画像IMを、所定の輝度値から輝度値毎に分割したモデル画像IMを示す。モデル画像IMの面21、23、25が領域31に、モデル画像IMの面22、24が、それぞれ領域32、33として設定される。これにより、照明103に対する傾斜の違いによって輝度値が異なる領域ごとに所定の領域を設定することができる。
【0033】
次にS8にて、CPU201は、モデル画像IMの分割された領域31~33における画素の位置情報である画素アドレスと同じ画素アドレスを有する画素を輝度比マップIRから選択する。
【0034】
そしてS9にて、輝度比マップIRにおいて、領域31~33毎に、各領域を構成する各画素の輝度比の平均値を算出する。そして各領域で算出した平均値を、各領域の補正レートとして設定した、補正レートマップILを取得する。
図8(a)が補正レートマップILの図である。
図8(b)は補正レートマップILの輝度比のプロファイルである。これにより、照明103に対する傾斜の違いによって輝度値が異なる領域ごとに所定の補正レートを設定することができる。また、各領域の補正レートを、ワーク毎の個体差による輝度分布が平準化されたモデル画像IMを用いて算出しているため、ワーク毎の個体差による輝度ムラを考慮した補正レートを各領域で設定することができる。
【0035】
そしてS10にて、CPU201は、S9で取得した補正レートマップILを対象物画像IWの各画素にかけ合せることで、対象物画像IWの輝度補正を実施し、輝度補正画像IW’を得る。ここで、
図9(a)に輝度補正画像IW’を示し、
図9(b)に輝度補正画像IW’のX軸における輝度プロファイルを示す。
図9(b)より、ワークWの表面粗さによる輝度値を維持しつつ、ワーク毎の個体差を加味した輝度値に補正されている。
【0036】
以上、複数の異なるワークWnの対象物画像IWnから各画素での輝度の平均値を算出し、モデル画像IMを作成することで、ワークWnの個々の表面状態による影響がモデル画像IMにおいて除去される。このモデル画像IMを用いて補正レートを算出することで、ワークの形状に合わせて補正レートの変更が必要な領域毎に補正レートの設定を自動で行うことができ、複雑な3次元形状に応じた輝度補正を容易に実行することが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態における画像処理システムについて説明する。上述した第1の実施形態では、モデル画像IMを複数の対象物画像から作成した。しかしながら本発明は、ワークWの形状モデルから、モデル画像IMを作成する場合でも実施することができる。以下で詳述する。なお以下では、第1の実施形態とは異なるハードウェアや制御系の構成の部分について図示し説明する。また、第1の実施形態と同様の部分については上記と同様の構成ならびに作用が可能であるものとし、その詳細な説明は省略するものとする。
【0038】
本実施形態における画像処理システム100は、第1実施形態で説明した
図1の構成と同じであるが、作業の対象となるワークWが、第1の実施形態とは異なる。
図10は本実施形態で扱うワークWを示した図である。本実施形態のワークWは、半球状の形状をした加工部品であり、その表面は塗装が施されているものとする。また画像処理を実行するプログラム240の内容が、第1の実施形態と異なる。
【0039】
図11は、本実施形態におけるモデル画像IMの作成を行うフローチャートである。本実施形態では、制御装置200のCPU201がプログラム240に従って、
図11に示す各工程(各処理)を実行する。
【0040】
まずS11にて、CPU201は、予めHDD204等に保存されているワークWの形状情報である3次元形状データから、照明103に対するワークWの所定の部位の表面各点における傾斜角を求める。
【0041】
次にS12にて、ワークW表面の各点の座標を撮像装置104の撮像素子104A面に対応する位置にマップ化し、モデル画像IMを作成する。ワークW表面の各点の座標を、撮像素子104A面に対応する位置にマップ化する際、レンズ105の焦点距離などの光学条件からピンホールカメラモデルを用いる。これにより、ワークW表面の各点を撮像素子104A面に投影することでマップ化すればよい。
【0042】
図12(a)に、ワークWの3次元形状データから作成されてモデル画像IMを示し、
図12(b)モデル画像IMのX軸における傾斜角を示す。
図12(a)において、ワークWの輪郭に相当する部分が、モデル画像の輪郭41である。また、撮像素子104A面にてマップ化された照明103に対するワークWの表面各点における傾斜角は、傾斜角の最大値などによって規格化した濃淡値に変換しても良い。以上によりワークWの3次元形状データからモデル画像IMを作成する。
【0043】
そして第1の実施形態の
図3(b)のように、モデル画像IM用いて輝度補正を行う。その際、本実施形態ではモデル画像IMを所定の領域に分割する際、傾斜角を用いて所定の領域に分割する。
図13に、モデル画像IMを所定の領域に分割した際の図を示す。ワークWは、半球状の3次元形状であるため、照明103に対するワークWの表面の傾斜角をもとに所定の領域に分割すると、複数の同心円状の領域31~34が設定される。
【0044】
そして領域31~33毎に、輝度比マップにおける各領域を構成する各画素の輝度比の平均値を算出し、平均値を各領域の補正レートとして設定した、補正レートマップを取得する。そして補正レートマップを対象物画像の各画素にかけ合せることで、対象物画像の輝度補正を実施する。
【0045】
以上により、作業の対象となるワークの3次元形状データから、照明103に対するワークの表面の各点における傾斜角を求めて、モデル画像IMを作成することで、ワークの表面状態に影響されないモデル画像を作成することができる。このモデル画像を用いることで、複数の異なるワークを撮像する必要がなくなり、基準とする基準画像とワークの対象物画像だけがあれば、容易に3次元形状に応じた輝度補正を実行することが可能となる。この結果、作業の対象となるワークの数が少ない場合でも、ワークの表面状態に影響されずに、対象物画像の輝度補正が可能となる。
【0046】
上述した種々の実施形態の画像処理手順は具体的には制御装置200により実行されるものとして説明した。しかし、上述した機能を実行可能なソフトウェアの制御プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を外部入力装置6に搭載させて実施しても良い。
【0047】
従って上述した機能を実行可能なソフトウェアの制御プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体、通信装置は本発明を構成することになる。
【0048】
また、上記実施形態では、コンピュータで読み取り可能な記録媒体がROM或いはRAMであり、ROM或いはRAMに制御プログラムが格納される場合について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0049】
本発明を実施するための制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。例えば、制御プログラムを供給するための記録媒体としては、HDD、外部記憶装置、記録ディスク等を用いてもよい。
【0050】
(その他の実施形態)
また上述した種々の実施形態では、ワークをステージ等の移動装置により移動させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えばワークを移動させる移動装置としてロボット装置が挙げられ、垂直多軸型や、パラレルリンク型、人工筋肉のようなデバイスを用いたロボットなど異なる形式のロボット装置においても上記と同等の構成を実施することができる。
【0051】
また上記のロボットシステムを用いて物品の製造を行う場合も本発明を実施することができる。
【0052】
また上述した種々の実施形態は、移動装置として、制御装置に設けられる記憶装置の情報に基づき、伸縮、屈伸、上下移動、左右移動もしくは旋回の動作またはこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械を適用可能である。
【0053】
また、上述した種々の実施形態では、基準画像ISとして、撮像装置104で撮像した所定の対象物画像IWを用いたが、これに限られない。例えば、モデル画像IMを基準画像ISとして用いても構わない。その場合、画像処理の対象となる対象物画像IWを選択し、選択した対象物画像IWとモデル画像IMとを比較し輝度比マップを取得する。そしてモデル画像IMを、所定の輝度値から輝度値毎に分割する。次に輝度比マップとモデル画像IMとを比較し、モデル画像IMにおける所定の輝度値から輝度値を有する画素の位置情報である画素アドレスと同じ画素アドレスを有する画素を輝度比マップから選択する。そして輝度比マップにおいて、選択した各画素の輝度比の平均値を算出し、算出した平均値を、各領域の補正レートとして設定した、補正レートマップを取得する。以上によりモデル画像IMを基準とした輝度補正を行うことができる。
【0054】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明の効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0055】
21、22、23、24、25 面
31、32、33 領域
100 画像処理システム
101 ワーク保持部
102 移動装置
102A 固定ステージ
102B 移動ステージ
103 照明
104 撮像装置
104A 撮像素子
105 レンズ
200 制御装置
IS 基準画像
IW 対象物画像
IW’ 輝度補正画像
IM モデル画像
IL 補正レートマップ