(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】複数の壁および内部遮熱コーティングを備えるタービン翼形部
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20240325BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D9/02 102
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019194076
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・トロイ・ハフナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ミッシェル・イッツェル
(72)【発明者】
【氏名】スリカンス・カンドゥルドゥ・コッティリンガム
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-098105(JP,U)
【文献】特開2011-226463(JP,A)
【文献】特開平11-062504(JP,A)
【文献】特開2018-096376(JP,A)
【文献】特開2014-080973(JP,A)
【文献】実開昭61-152702(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328212(US,A1)
【文献】米国特許第08608430(US,B1)
【文献】特開2014-163330(JP,A)
【文献】特開2013-124627(JP,A)
【文献】特開2019-183841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
F02C 7/18
F02C 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁(126)、中間壁(128)、および内壁(130)を含む複数の離間壁(122)であって、前記複数の離間壁(122)はそれぞれ、隣接する離間壁(122)と複数の隔離部材(140)によって隔てられている、複数の離間壁(122)と、
前記外壁(126)と前記中間壁(128)との間に画定された複数の外側冷却チャンバ(154)と、
前記複数の外側冷却チャンバ(154)をそれぞれ互いから軸方向に隔てている、前記外壁(126)と前記中間壁(128)との間の外側隔壁(156)と、
前記中間壁(128)と前記内壁(130)との間に画定された複数の中間冷却チャンバ(154)と、
前記複数の中間冷却チャンバ(154)をそれぞれ互いから軸方向に隔てている、前記中間壁(128)と前記内壁(130)との間の中間隔壁(156)と、
前記外壁(126)の外面(168)に配置された第1の遮熱コーティング
(166)であって、前記第1の
遮熱コーティング(166)は、高温の作動流体(116)に暴露されるように構成された外面(170)を有する、第1の
遮熱コーティング(166)と、
前記中間壁(128)の外面に配置された第2の
遮熱コーティング(136)であって、前記第2の
遮熱コーティング(136)は、高温の前記作動流体(116)に暴露されるように構成された外面を有し、前記複数の隔離部材(140)における隔離部材(140)それぞれの外面は前記第2の
遮熱コーティング(136)を施されておらず、また前記外側隔壁(156)の外面は前記第2の
遮熱コーティング(136)を施されていない、第2の
遮熱コーティング(136)と、
前記内壁(130)を貫通している第1の複数のインピンジメント開口部(186)であって、前記第1の複数のインピンジメント開口部(186)は、タービン翼形部(100)の中央チャンバ(172)から前記複数の中間冷却チャンバ(154)の少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給している、第1の複数のインピンジメント開口部(186)と、
前記中間壁(128)を貫通している第2の複数のインピンジメント開口部(186)であって、前記第2の複数のインピンジメント開口部(186)は、前記複数の中間冷却チャンバ(154)の少なくとも1つから前記複数の外側冷却チャンバ(154)の少なくとも1つへと前記冷却媒体を送るための通路を供給している、第2の複数のインピンジメント開口部(186)と、
前記外壁(126)を貫通している複数の冷却通路(174)であって、前記複数の冷却通路(174)は、前記複数の外側冷却チャンバ(154)の少なくとも1つから前記第1の
遮熱コーティング(166)の前記外面(170)へと前記冷却媒体を送るための通路を供給している、複数の冷却通路(174)と
を含む壁構造体(120)を備える、タービン翼形部(100)。
【請求項2】
前記外側隔壁(156)は、前記中間壁(128)の半径方向長さ(L)に沿って、前記中間壁(128)の外面(146)から前記外壁(126)の内面(148)まで延在している、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項3】
前記中間隔壁(156)は、前記中間壁(128)の半径方向長さ(L)に沿って、前記内壁(130)の外面(142)から前記中間壁(128)の内面(144)まで延在している、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項4】
前記外側隔壁(156)と前記中間隔壁(156)とを、前記中間壁(128)の同じ半径方向長さ(L)に沿って位置合わせしている、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項5】
前記外壁(126)の前記外面(168)に配置された複数の台地部(178)をさらに備え、
前記複数の冷却通路(174)における冷却通路はそれぞれ、前記複数の台地部(178)における1つの台地部(178)を通過するように配置されており
前記複数の台地部(178)の台地部(178)それぞれの外面(180)は前記第1の
遮熱コーティング(166)を施されていない、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項6】
前記外壁(126)の厚さを、前記中間壁(128)および前記内壁(130)の少なくとも一方の厚さと実質的に等しくしている、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項7】
前記外壁(126)の厚さを、
0.02インチ~
0.15インチとしている、請求項6に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項8】
前記中間壁(128)は、前記中間壁(128)の外面(146)と前記第2の複数のインピンジメント開口部(186)におけるインピンジメント開口部(186)の側壁(196)との境界面(192)に面取り部(190)を含む、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項9】
前記第1の複数のインピンジメント開口部(186)の前記インピンジメント開口部(186)を、前記第2の複数のインピンジメント開口部(186)と位置合わせしていない、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【請求項10】
複数の隔離部材(140)における前記隔離部材(140)それぞれの断面形状を、円形、長楕円形、8の字、正方形、湾曲側部を有する正方形、および長方形形状からなる群より選択している、請求項1に記載のタービン翼形部(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して構成部品の冷却に関し、より詳細には、複数の壁と遮熱コーティングとを備え、付加製造によって作製され、かつ内部遮熱コーティング(TBC)層を含む高温ガス経路構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高温の作動流体に暴露される高温ガス経路構成部品は、産業機械に広く使用されている。たとえば、ガスタービンシステムは、いくつかの段を有するタービンを備え、これらの段は、支持ロータディスクから外側に延在するブレードを有する。各ブレードは、高温の燃焼ガスの流れに暴露される翼形部を含む。燃焼ガスによって発生する高温に耐えるように、この翼形部を冷却しなければならない。冷却が不十分であると、翼形部に冷却が不十分なことによる応力および酸化が生じ得、疲労および/または損傷を引き起こす恐れがある。このため、翼形部は、いくつかの冷却孔などへと通じる1または複数の内部冷却流回路を有するように、概して中空である。この冷却空気は冷却孔を通って排出され、翼形部の外面にフィルム冷却をもたらす。他のタイプの高温ガス経路構成部品および他のタイプのタービン構成部品も、同様の方法で冷却することができる。
【0003】
所与の構成部品が現場で使用される前に多くのモデルおよびシミュレーションを実行することができるが、その構成部品特有の高温位置および低温位置によって、構成部品またはその任意の領域が到達し得る正確な温度は大きく変化する。具体的には、これらの構成部品は、過熱によって悪影響を受ける恐れのある温度依存特性を有する場合がある。その結果、多くの高温ガス経路構成部品が過冷却されて、これらの構成部品上に発生し得る局所的なホットスポットを補償することができる。しかしながら、このような過度の過冷却は、産業機械による生産および効率全体に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
冷却通路を設けているにもかかわらず、多くの構成部品は、これらの構成部品を保護するためにそれらの外面に施される遮熱コーティング(TBC)にさらに依存している。スポールと呼ばれる破損、亀裂または損耗が高温ガス経路構成部品のTBCで生じると、これら構成部品のスポールにおける局部温度が有害な温度まで上昇する場合がある。たとえば、このスポールによって、高温ガス経路構成部品の外壁が高温流体に暴露され、これによって外面が酸化し、これら高温ガス経路構成部品の耐用年数が短くなる恐れがある。このTBCのスポールに対する1つのアプローチとして、TBCの下の冷却孔にプラグが設けられている。スポールが生じると、このプラグは通常、プラグを溶解するのに十分な熱に暴露されて剥離し、次いで冷却孔が開き、この冷却孔に流体連結された内部冷却回路から冷却媒体が流れ得る。このプラグを、その剥離を補助する目的で多孔質とすることができる。本プロセスにより、過冷却が減少することになる。ただし、このようなプラグの形成は複雑であるため、プラグの形成に使用する材料の精密な機械加工および/または精密な熱加工もしくは化学的加工が必要となる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、外壁、中間壁、および内壁を含む複数の離間壁であって、これら複数の離間壁はそれぞれ、隣接する離間壁と複数の隔離部材によって隔てられている、離間壁と、外壁と中間壁との間に画定された複数の外側冷却チャンバと、これら複数の外側冷却チャンバをそれぞれ互いから軸方向に隔てている、外壁と中間壁との間の外側隔壁と、中間壁と内壁との間に画定された複数の中間冷却チャンバと、これら複数の中間冷却チャンバをそれぞれ互いから軸方向に隔てている、中間壁と内壁との間の中間隔壁と、外壁の外面に配置された第1の遮熱コーティング(TBC)であって、この第1のTBCは、高温の作動流体に暴露されるように構成された外面を有する、第1のTBCと、中間壁の外面に配置された第2のTBCであって、この第2のTBCは、高温の作動流体に暴露されるように構成された外面を有し、複数の隔離部材における隔離部材それぞれの外面は第2のTBCを施されておらず、また外側隔壁の外面は第2のTBCを施されていない、第2のTBCと、内壁を貫通している第1の複数のインピンジメント開口部であって、これら第1の複数のインピンジメント開口部は、タービン翼形部の中央チャンバから複数の中間冷却チャンバの少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給している、第1の複数のインピンジメント開口部と、中間壁を貫通している第2の複数のインピンジメント開口部であって、これら第2の複数のインピンジメント開口部は、複数の中間冷却チャンバの少なくとも1つから複数の外側冷却チャンバの少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給している、第2の複数のインピンジメント開口部と、外壁を貫通している複数の冷却通路であって、これら複数の冷却通路は、複数の外側冷却チャンバの少なくとも1つから第1のTBCの外面へと冷却媒体を送るための通路を供給している、複数の冷却通路とを含む壁構造体を備える、タービン翼形部を提供する。
【0006】
本開示の第2の態様は、外壁、中間壁、および内壁を含む複数の離間壁であって、これら複数の離間壁はそれぞれ、隣接する離間壁と複数の隔離部材によって隔てられている、離間壁と、外壁と中間壁との間に画定された複数の外側冷却チャンバと、これら複数の外側冷却チャンバをそれぞれ互いから軸方向に隔てている、外壁と中間壁との間の外側隔壁と、中間壁と内壁との間に画定された複数の中間冷却チャンバと、これら複数の中間冷却チャンバをそれぞれ互いから軸方向に隔てている、中間壁と内壁との間の中間隔壁と、外壁の外面に配置された第1の遮熱コーティング(TBC)であって、この第1のTBCは、高温の作動流体に暴露されるように構成された外面を有する、第1のTBCと、中間壁の外面に配置された第2のTBCであって、この第2のTBCは、高温の作動流体に暴露されるように構成された外面を有し、複数の隔離部材における隔離部材それぞれの外面は第2のTBCを施されておらず、また外側隔壁の外面は第2のTBCを施されていない、第2のTBCと、内壁を貫通している第1の複数のインピンジメント開口部であって、これら第1の複数のインピンジメント開口部は、タービン翼形部の中央チャンバから複数の中間冷却チャンバの少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給している、第1の複数のインピンジメント開口部と、中間壁を貫通している第2の複数のインピンジメント開口部であって、これら第2の複数のインピンジメント開口部は、複数の中間冷却チャンバの少なくとも1つから複数の外側冷却チャンバの少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給している、第2の複数のインピンジメント開口部と、外壁の外面に配置された複数の台地部であって、これら複数の台地部の台地部それぞれの外面は第1のTBCを施されていない、複数の台地部と、外壁を貫通している複数の冷却通路であって、これら複数の冷却通路における冷却通路はそれぞれ、複数の台地部における1つの台地部を通過するように配置されており、これら複数の冷却通路は、複数の外側冷却チャンバの少なくとも1つから第1のTBCの外面へと冷却媒体を送るための通路を供給している、複数の冷却通路とを含む壁構造体を備える、高温ガス経路(HGP)構成部品を提供する。
【0007】
本開示の第3の態様は、タービン翼形部外皮を付加製造するステップであって、このタービン翼形部外皮は、外壁、および外壁を貫通している複数の冷却通路を含む、ステップと、タービン翼形部外皮の外壁の外面上に第1の遮熱コーティング(TBC)を施すステップであって、この第1のTBCは、高温の作動流体に暴露されるように構成された外面を有する、ステップと、タービン翼形部コアを付加製造するステップであって、このタービン翼形部コアは、第1の複数のインピンジメント開口部が貫通している内壁を含む複数の離間壁、および内壁を貫通している第2の複数のインピンジメント開口部を有する中間壁であって、これら複数の離間壁はそれぞれ、隣接する離間壁と第1の複数の隔離部材によって隔てられている、離間壁および中間壁、内壁と中間壁との間に画定された複数の中間冷却チャンバ、これら複数の中間冷却チャンバをそれぞれ互いから軸方向に隔てている、中間壁と内壁との間の中間隔壁、タービン翼形部コアの最外面に配置された第2の複数の隔離部材、ならびにタービン翼形部コアの最外面に配置された外側隔壁を含む、ステップと、タービン翼形部コアの最外面上に第2のTBCを施すステップであって、この第2のTBCは、高温の作動流体に暴露されるように構成された外面を有し、第2の複数の隔離部材における隔離部材それぞれの外面は第2のTBCを施されておらず、また外側隔壁の外面は第2のTBCを施されていない、ステップと、タービン翼形部コアがタービン翼形部外皮によって包囲されるようにタービン翼形部の壁構造体を形成するために、タービン翼形部外皮とタービン翼形部コアとを組み立てるステップとを含み、タービン翼形部外皮はタービン翼形部コアと第2の複数の隔離部材によって隔てられており、複数の外側冷却チャンバはタービン翼形部外皮とタービン翼形部コアとの間に画定されており、外側隔壁は、これら複数の外側冷却チャンバをそれぞれ互いから軸方向に隔てており、複数の冷却通路は、複数の外側冷却チャンバの少なくとも1つから第1のTBCの外面へと冷却媒体を送るための通路を供給しており、第1の複数のインピンジメント開口部は、タービン翼形部の中央チャンバから複数の中間冷却チャンバの少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給しており、また第2の複数のインピンジメント開口部は、複数の中間冷却チャンバの少なくとも1つから複数の外側冷却チャンバの少なくとも1つへと冷却媒体を送るための通路を供給している、タービン翼形部を製造する方法を提供する。
【0008】
本開示の例示的な態様を、本明細書に記載している課題および/または検討していない他の課題を解決するように構成している。
【0009】
本開示のこれらおよび他の特徴は、本開示の様々な実施形態を示す添付の図面と併せて、本開示の様々な態様に関する以下の詳細な説明から、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ガスタービンシステムの形態を取る高温ガス経路構成部品を備える、例示的な産業機械の概略図である。
【
図2】タービン翼形部の形態を取る既知の高温ガス経路構成部品の斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態による、タービン翼形部の形態を取る高温ガス経路構成部品の斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態による、複数の壁を有するタービン翼形部の壁構造体の一部を表す断面図である。
【
図5】本開示の実施形態による、タービン翼形部の壁構造体が有する複数の壁の間にある、隔離部材の形状を表す断面図である。
【
図6】本開示の実施形態による、タービン翼形部の壁構造体が有する複数の壁の間にある、隔離部材の形状を表す断面図である。
【
図7】本開示の実施形態による、タービン翼形部の壁構造体が有する複数の壁の間にある、隔離部材の形状を表す断面図である。
【
図8】本開示の実施形態による、タービン翼形部の壁構造体が有する複数の壁の間にある、隔離部材の形状を表す断面図である。
【
図9】本開示の実施形態による、タービン翼形部の壁構造体が有する複数の壁の間にある、隔離部材の形状を表す断面図である。
【
図10】本開示の実施形態による、タービン翼形部の壁構造体が有する複数の壁の間にある、隔離部材の形状を表す断面図である。
【
図11】本開示の実施形態による、タービン翼形部の外壁上にTBCのスポールを含む複数の壁を備える、タービン翼形部の壁構造体の一部を表す断面図である。
【
図12】本開示の実施形態による、翼形部の外壁におけるスポールに起因した開口部を含む複数の壁を備える、タービン翼形部の壁構造体の一部を表す断面図である。
【
図13】本開示の実施形態による、タービン翼形部の形態を取る高温ガス経路構成部品を表すコードを記憶している非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む、付加製造プロセスを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、本開示の図面は原寸に比例していない。これらの図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを目的としているため、本開示の範囲を限定するものとみなすべきではない。これらの図面では、図面間で同一の符号を付与することによって同一の要素を表している。
【0012】
初期事項として、本開示について明確に説明するために、ガスタービンシステムなどの産業機械に関連した機械構成部品に言及して説明するときに、特定の専門用語を選択することが必要になる。この選択を行う場合、一般的な業界専門用語を可能な限り、これが受け取られる意味と矛盾しないような方法で使用し、かつ採用する。別途記載のない限り、このような専門用語を、本出願の文脈および添付の特許請求の範囲と矛盾しない程度に広義に解釈すべきである。特定の構成部品に言及する際、いくつかの異なるまたは重複する用語を使用する場合が多いことを、当業者であれば理解するであろう。単一の部品であるとして本明細書に記載され得るものは、複数の構成部品からなるものとして別の文脈を含み、かつ別の文脈で参照されてもよい。あるいは、複数の構成部品を含むものとして本明細書に記載され得るものを、単一の部品として他の場所で参照してもよい。
【0013】
また、本明細書ではいくつかの記述上の用語を繰り返し使用する場合があり、本項の始めでこれらの用語を定義することが有用であるはずである。これらの用語およびその定義は、別途記載のない限り以下の通りである。「半径方向」という用語は、軸線に垂直な移動または位置を指す。このような場合、第1の構成部品が第2の構成部品よりも軸線に近接して位置するときは、この第1の構成部品は第2の構成部品の「半径方向内側」または「内側」にあると本明細書では述べることになる。一方、第1の構成部品が第2の構成部品よりも軸線から遠くに位置する場合、第1の構成部品は第2の構成部品の「半径方向外側」または「外側」にあると本明細書では述べることができる。このような用語を、本タービンの中心軸線に関連して適用してもよいことが理解されよう。「外側」または「外部」という用語は、高温の作動流体に暴露される構成部品の表面に向かう方向を指す。「内側」または「内部」という用語は、高温の作動流体に暴露される構成部品の表面から離間する方向を指す。
【0014】
上述のように、本開示は、複数の壁を備えるタービン翼形部の形態を取る、高温ガス経路(HGP)構成部品を提供する。本タービン翼形部または個々の壁およびそれらの構造部品を、付加製造によって形成してもよい。本タービン翼形部のこれらの壁を、相互間にチャンバを形成するように離間させてもよい。これらのチャンバをそれぞれ、壁の間に延在する隔壁によって、軸方向に複数の冷却チャンバに区画してもよい。本タービン翼形部の外壁は、冷却チャンバの少なくとも1つからタービン翼形部の外面へと冷却流体を流すことができる複数の冷却通路を含んでいてもよい。外壁および他の壁の一部またはすべては、その外面に遮熱コーティング(TBC)をさらに含んでいてもよい。本翼形部における外壁以外の壁はそれぞれ、タービン翼形部の中央チャンバと冷却チャンバの少なくとも1つとの間で冷却流体を流すことができる、複数のインピンジメント開口部を含んでいてもよい。
【0015】
遮熱コーティング(TBC)のスポールによって多壁翼形部の外壁が高温環境に暴露されると、これらの壁の構造により、冷却流体流をタービン翼形部の中央チャンバから冷却チャンバを経て外壁の内面へと送り、露出した外壁の酸化を遅延させている。外壁に及ぶ酸化により、本翼形部におけるその他の壁の少なくとも1つが高温環境に暴露された後、冷却チャンバとインピンジメント開口部とによって冷却流体を流すことで、露出した外壁の開口部を覆うスロットフィルムを形成することができる。露出した他の壁の外面上に施された第2のTBCは、酸化によって外壁を貫通する開口部が形成されている他の壁の侵食を防止、または遅延させることができる。スポールが形成される前に、冷却チャンバとインピンジメント開口部とにより、冷却流体流を流して外壁の内面に接触させ、これによって壁を冷却することができる。本明細書で述べているタービン翼形部壁およびその構造部品により、TBCにスポールが形成される状況で翼形部の耐用年数を延長することができる。
【0016】
ここで図面を参照すると、いくつかの図面を通して同一の符号が同一の要素を指しており、
図1は、ガスタービンシステム2の形態を取る例示的な産業機械の概略図を示す。本開示では、ガスタービンシステム2に関して説明しているが、本開示の開示内容は、冷却を必要とする高温ガス経路構成部品を備えるあらゆる産業機械に適用可能であることを強調しておく。ガスタービンシステム2は圧縮機4を備えていてもよい。圧縮機4は流入空気流8を圧縮し、かつこの圧縮された空気流8を燃焼器10へと送る。燃焼器10はこの圧縮された空気流8を加圧燃料流12と混合し、その混合物に点火して燃焼ガス流16を生成する。単一の燃焼器10のみを示しているが、ガスタービンシステム2は、任意の数の燃焼器10を備えていてもよい。燃焼ガス流16は、次いでタービン18へと送られる。燃焼ガス流16はタービン18を駆動して、機械的作用を発生させる。タービン18で発生した機械的作用は、シャフト20および発電機などの外部負荷24を介して圧縮機4を駆動する。
【0017】
ガスタービンシステム2では、天然ガス、液体燃料、様々なタイプの合成ガス、および/または他のタイプの燃料ならびにそれらの配合物を使用することができる。ガスタービンシステム2は、たとえばニューヨーク州スケネクタディのゼネラルエレクトリック社などが提供する複数の異なるガスタービンエンジンの任意の1つであってもよい。ガスタービンシステム2は異なる構成を有してもよく、他のタイプの構成部品を使用していてもよい。本開示の開示内容は、高温ガス経路を使用する他のタイプのガスタービンシステムおよびまたは産業機械に適用可能とすることができる。複数のガスタービンシステム、または複数の種類のタービン、およびまたは複数のタイプの発電装置もまた、本明細書で共に使用することができる。
【0018】
図2は、タービン18(
図1)などの高温ガス経路(HGP)で使用することができるタービン翼形部32を備える、高温ガス経路(HGP)構成部品30の一例を示す。本開示では、タービン翼形部32に関して、より具体的にはこのタービン翼形部32の壁構造体34に関して説明しているが、本開示の開示内容は、冷却を必要とするあらゆるHGP構成部品に適用可能であることを強調しておく。概略的に説明すると、HGP構成部品30は、翼形部32と、シャンク部36と、翼形部32とシャンク部36との間に配置されたプラットフォーム40とを備えていてもよい。翼形部32は、プラットフォーム40から半径方向外側に概ね延在し、前縁42と後縁44とを備える。翼形部32は、正圧側面48を画定している凹面と、負圧側面46を画定している反対側の凸面とをさらに備えていてもよい。プラットフォーム40は、概ね水平かつ平坦であってもよい。シャンク部36は、プラットフォーム40が翼形部32とシャンク部36との間に境界面を概ね画定するように、プラットフォーム40から半径方向下方に延在していてもよい。シャンク部36はシャンクキャビティ52を含んでいてもよい。シャンク部36は、1または複数のエンゼルウィング54と、ダブテールなどの根元構造体56とをさらに含んでいてもよい。この根元構造体56を、他の構造体と共にHGP構成部品30をシャフト20(
図1)に固定するように構成してもよい。任意の数のHGP構成部品30を、シャフト20(
図1)の周りに円周方向に配置していてもよい。他の構成部品およびまたは構成も同様に、本明細書で使用することができる。
【0019】
タービン翼形部32は、圧縮機4(
図1)または別の供給源からの空気などの冷却媒体62を流すために延在する、1または複数の冷却回路60を備えていてもよい。蒸気および他のタイプの冷却媒体62も同様に、本明細書で使用することができる。冷却回路60および冷却媒体62は、翼形部32、シャンク部36、およびプラットフォーム40の少なくとも一部を通って、任意の順序、方向または経路で循環してもよい。本明細書では、多くの異なるタイプの冷却回路と冷却媒体とを任意の向きで使用してもよい。冷却回路60は、翼形部32または他の場所を中心としたフィルム冷却を行うために、いくつかの冷却通路66または他のタイプの冷却経路に通じていてもよい。他のタイプの冷却方法を用いてもよい。他の構成部品およびまたは構成も同様に、本明細書で使用することができる。
【0020】
図3および
図4は、本明細書で説明することができるタービン翼形部100(以下、翼形部100)の形態を取る、HGP構成部品の一例を示す。
図3は翼形部100の斜視図であり、
図4は、翼形部100の壁構造体120の一部を表す断面図である。
図4には翼形部100の一部を示しているが、壁構造体120およびその構造部品が、翼形部100の外周の一部または外周の全体に沿って延在してもよいことが理解される。
【0021】
本明細書に記載している壁構造体120およびその構造部品は、翼形部100に限定されるものではない。上述のように、本明細書では翼形部100に関して説明しているが、本開示の構造をブレード、ベーン、またはシャンク、プラットフォーム、もしくは任意のタイプの高温ガス経路構成部品を含む、任意のタイプの空冷式構成部品の一部とすることができる。他のタイプのHGP構成部品および他の構成を、本明細書で使用してもよい。本開示の構造を、ノズル(たとえば、ステータノズル、ノズル側壁など)、シュラウド、熱シールドおよび/または燃焼構成部品に同様に適用可能とすることができる。
【0022】
上述のものと同様に、翼形部100は、前縁108と後縁110とを備えていてもよい。同様に、翼形部100は、正圧側面112と負圧側面114とを備えていてもよい。作動流体116は、翼形部100の露出した遮熱コーティング(TBC)166に沿って、前縁から後縁へと流れることができる。作動流体116は高温になる場合がある。本明細書で使用する場合、「高温」は、たとえばガスタービンシステム2などの産業機械の形態によって異なり、ここでの高温を、摂氏100度(℃)よりも高い任意の温度とすることができる。
【0023】
図3および
図4に示すように、翼形部100は、本開示の実施形態による壁構造体120を備えていてもよい。
図4に最良に示しているように、壁構造体120は複数の離間壁122を含む。本明細書でさらに詳述しているように、複数の離間壁122を設けることにより、翼形部100を通って流れる冷却媒体124を使用して壁構造体120および/または翼形部100の冷却効果を向上させることができる。翼形部100の壁構造体120は、外壁126と、中間壁128と、内壁130とを含んでいてもよい。離間壁122それぞれの厚さを、約0.02インチ~約0.15インチとすることができる。2つ以上の離間壁122の厚さが、同じかつ/または異なるように形成してもよい。
図4の実施例では、外壁126の厚さを、中間壁128の厚さT2かつ/または内壁130の厚さT3と実質的に等しいT1とすることができる。ここでは3つの壁を示しているが、壁構造体120が、たとえば2つ以上の中間壁128を有するなど、離間壁122を任意の望ましい数(たとえば、2つの壁、5つの壁、10個の壁、20個の壁など)含んでもよいことが理解される。2つの壁を備える実施形態では、本開示に記載している中間壁128および内壁130(ならびに各壁それぞれの特徴および構造)が、外壁126とは別であるものの、同じ壁を指していることを理解されたい。
【0024】
壁構造体120は、離間壁122をそれぞれ隣接する離間壁から隔てている、複数の隔離部材140を含んでいてもよい。隔離部材140のそれぞれを、たとえば1または複数の金属などの熱伝導性材料で形成してもよい。隔離部材140は、壁構造体120を通して熱を伝導し、動作中に壁構造体120を通して冷却媒体124の流れを方向付けるのを補助している。
図4に示すように、隔離部材140aは、内壁130の外面142から中間壁128の内面144まで延在していてもよい。隔離部材140bは、中間壁128の外面146から外壁126の内面148まで延在していてもよい。隔離部材140は、たとえば翼形部100が使用されている特定のターボ機械および/またはそのターボ機械が使用されている流路の特性に基づいて、任意の間隔だけ離間壁122を隔てていてもよい。たとえば、隔離部材140は、1または複数の離間壁内に形成されるものとして本明細書で後述しているインピンジメント開口部の直径の約2分の1~5倍に等しい間隔で、離間壁122をそれぞれ隔てていてもよい。この間隔で離間壁122を形成することにより、動作中に壁構造体120の壁122間で滞留する可能性のある冷却媒体124の量を減少させることができる。
【0025】
図5~
図10を手短に参照すると、1または複数の隔離部材140の様々な幾何学的プロファイルの断面図が示されている。隔離部材140は、動作中に熱を伝導し、壁構造体120を通して冷却媒体124の流れを方向付けるための任意の望ましい断面形状を有していてもよい。また、この断面形状を、たとえば翼形部100が使用され得る特定のターボ機械および/またはそのターボ機械が使用されている流路の特性に基づいて選択していてもよい。たとえば、
図5および
図6に示すように、隔離部材140は、円形または長楕円形の断面形状を有していてもよい。
図7および
図8に示すように、隔離部材140は、正方形または長方形の断面形状を有していてもよい。
図9に示すように、隔離部材140は、たとえば湾曲側部を有する正方形の断面形状などの、多角形形状を有していてもよい。
図10に示すように、隔離部材140は、曲線かつ/または複合の(すなわち、レーストラックまたは8の字)断面形状を有していてもよい。
図5~
図10には特定の幾何学的形状および向きとなるように隔離部材140を示しているが、これらを任意の望ましい断面形状および/または向きとしていてもよいことが理解される。加えて、これらの隔離部材を壁の間で先細りにしたり、必要に応じて断面積に他の変化を持たせたりしていてもよい。特定のレイアウトかつ数の隔離部材140を
図4に示しているが、本開示の範囲を超えることなく任意の望ましい数および/またはレイアウトの隔離部材を使用して、離間壁122を隔てていてもよい。さらに、これらの任意の数の隔離部材140が、同じかつ/または異なる断面形状を有していてもよいことが理解される。
【0026】
図3および
図4を再度参照すると、壁構造体120の複数の離間壁122により、翼形部100の壁構造体120内に複数のチャンバ152を形成することができている。本明細書で述べているように、複数のチャンバ152により、動作中の壁構造体120および/または翼形部100の冷却効果を向上させることができる。
図4に示すように、離間壁122間の空間150は、チャンバ152を画定していてもよい。たとえば、外壁126と中間壁128との間の第1の空間150aは、第1のチャンバ152aを画定していてもよい。中間壁128と内壁130との間の第2の空間150bは、第2のチャンバ152bを画定していてもよい。上述のように、任意の数の離間壁122を壁構造体120内に含んでいてもよいため、それらの間の空間150によって画定される、任意の数のチャンバ152を壁構造体120内に含んでいてもよい。
【0027】
壁構造体120は、一組の離間壁122間にある各チャンバ152をいくつかの冷却チャンバ154内へと軸方向に隔てている、少なくとも1つの隔壁156をさらに含んでいてもよい。1または複数の隔壁156は、隔離部材140とは対照的に、
図4のページ内に延在していてもよいし、ページ外に延在していてもよい。本明細書でさらに述べているように、スポールに起因した開口部(たとえば、
図12のスポールに起因した開口部210)が壁構造体120の外壁126に形成される状況では、隔壁156は、冷却媒体124が翼形部100に再流入し、また作動流体116が翼形部100に流入するのを防止することができる。
図4に示すように、第1の組の隔壁156aは、第1のチャンバ152aを複数の第1の冷却チャンバ154a内へと軸方向に隔てることができる。第1の組の隔壁156aにおける隔壁156はそれぞれ、中間壁128の外面146から外壁126の内面148まで延在していてもよい。また
図4に示すように、第2の組の隔壁156bは、第2のチャンバ152bを複数の第2の冷却チャンバ154b内へと軸方向に隔てることができる。第2の組の隔壁156bにおける隔壁156はそれぞれ、内壁130の外面142から中間壁128の内面144まで延在していてもよい。
【0028】
隔壁156はそれぞれ、翼形部100の半径方向長さL(
図3)全体に実質的に沿って延在していてもよい。たとえば、隔壁156はそれぞれ、翼形部100の半径方向長さL全体にわたって、
図4のページ内に延在していてもよいし、ページ外に延在していてもよい。別の非限定的な実施例では、隔壁156はそれぞれ、翼形部100の半径方向長さLの異なる部分に沿って延在していてもよい。
図4にさらに示すように、たとえば第1の隣接する組158などの第1および第2の隔壁156a、156b(左側の破線楕円内の)を、実質的に互いに位置合わせさせていてもよい。あるいは、たとえば第2の隣接する組160などの第1および第2の隔壁156a、156b(右側の破線楕円内の)を、互いに位置合わせさせていなくてもよい。
図4の実施例では4つの隔壁156を示しているが、翼形部100の壁構造体120の正圧側面112および/または負圧側面114に沿って、任意の望ましい数の隔壁を含んでいてもよいことが理解される。
【0029】
上述のように、翼形部100は、壁構造体120上に配置され、作動流体116に暴露させることになるTBC166を備えていてもよい。TBC166は、当該構成部品が高温の作動流体116に暴露されている間、翼形部100を保護することができる。たとえば、作動流体116への暴露に耐えるように、TBC166の外面170を構成していてもよい。
図4に示すように、翼形部100の壁構造体120における外壁126の外面168上に、TBC166を配置していてもよい。また、
図4に示すように、中間壁128の外面146上に、第2のTBC136を配置していてもよい。また、第2のTBC136と同様に、内壁130の外面142上に、第3のTBC136b(一点鎖線内の)を配置してもよいことを理解されたい。TBC166、第2のTBC136、および第3のTBC136bの組成を同じとしてもよいし、互いに異なるようにしてもよい。
【0030】
TBC166、136は、熱損傷(たとえば、クリープ、熱疲労、亀裂および/または酸化)から壁構造体120に含まれる離間壁122の外面168、146、142を保護するように構成された、既知または今後開発される材料を含んでいてもよい。TBC166、136は、たとえばセラミックブランケット、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、白金アルミニドなどの貴金属アルミニド、Mがコバルト、ニッケルまたはコバルトニッケル合金であり得、Yがイットリウムまたは別の希土類元素であるMCrAlY合金、および/または既知もしくは今後開発されるTBC材料を含んでいてもよい。
【0031】
TBC166、136は、1または複数の材料組成物のうちの1または複数の層を含んでいてもよい。たとえば、TBC166、136は、遮熱層の下にボンドコートを含んでいてもよい。図示していない別の非限定的な実施例では、TBC166、136は、ボンドコート層と、ボンドコート層上に配置された中間層と、中間層上に配置された外側層または絶縁層とを含んでいてもよい。TBC166、136がボンドコート層(図示せず)を含む実施例では、このボンドコート層は、拡散アルミナイドを含むアルミニウムに富む材料、Mが鉄、コバルト、またはニッケルであり、Yがイットリウムまたは別の希土類元素であるMCrAlY合金、または他の任意の適切なボンドコート材料を含んでいてもよい。TBCが中間層を含む実施例では、この中間層はイットリア安定化ジルコニア、または他の任意のTBC中間層材料を含んでいてもよい。TBC166、136が外側層または絶縁層を含む実施例では、この絶縁層は、たとえばジルコニウムまたはハフニウム基酸化物格子構造(ZrO2またはHfO2)を含む超低熱伝導率セラミック材料、および酸化イッテルビウム(Yb2O3)、酸化イットリウム/イットリア(Y2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)、および酸化ジルコニウム(ZrO2)を1または複数含む酸化安定剤化合物(酸化「ドーパント」と呼ぶ場合がある)、または他の任意の望ましいTBC絶縁材料を含んでいてもよい。
【0032】
堆積および/または表面上にTBCを形成するための既知もしくは今後開発される他のプロセスによって、外面168、146、142上にTBC166、136を形成してもよい。翼形部100を完成させた後に、外壁126の外面168上にTBC166を形成してもよい。外壁126と中間壁128とを組み合わせる前に、中間壁128の外面146上に第2のTBC136を形成してもよい。別の非限定的な実施例では、外壁126内に冷却通路174を形成する前に、外面168上にTBC166を形成してもよい。同様に、別の非限定的な実施例では、中間壁128内にインピンジメント開口部186および/または面取り部190を形成する前に、外面146上に第2のTBC136を形成してもよい。
【0033】
図4に最良に示しており、かつ本明細書でさらに詳述しているように、壁構造体120の離間壁122はそれぞれ、冷却媒体124が翼形部100の中央チャンバ172から壁構造体120を経て、TBC166の外面170へと流れるように方向付ける複数の開口部を、その内部に含んでいてもよい。たとえば、動作中、冷却媒体124が経路A、B、および/またはCに沿って中央チャンバ172から流れるように、これを方向付けてもよい。この冷却媒体124は、高温の作動流体116に暴露されている間、翼形部100を冷却することができる。たとえば、壁構造体120を通って流れる冷却媒体124は、壁構造体120、TBC166、136および/または翼形部100の他の部分から熱を吸収することができる。
【0034】
最初に外壁126を参照すると、その内部に複数の冷却通路174が含まれ得る。この冷却通路174は、TBC166が高温の作動流体116に暴露されると、冷却媒体124を壁構造体120から流出させて、TBC166を冷却できるようにしている。たとえば、冷却媒体124は、経路Cに沿って、複数の第1の冷却チャンバ154aのうちの1または複数からTBC166の外面170まで流れてもよい。たとえば特定のターボ機械および/またはそのターボ機械が使用されている流路の特性に基づいて、冷却通路174のサイズ、形状、または構成を任意に選択してもよい。本明細書では、任意の数の冷却通路174を使用してもよい。冷却通路174は、外壁126の外面168および/またはTBC166の外面170まで、直交または非直交に延在していてもよい。
【0035】
図3および
図4に示すように、外壁126は、外壁126の外面168上に配置された複数の台地部178または隆起特徴部を任意により含んでいてもよい。この台地部178は、外壁126の一部に付加的な厚みをもたらしてもよい。この台地部178を設けることにより、冷却通路174の長さを伸長することができ、その結果として冷却通路174を通過する冷却媒体124の流れを改良することができる。1または複数の冷却通路174は、台地部178を通ってその最外面180まで延在していてもよい。様々な実施形態において、
図4に示す設定では、台地部178それぞれの幅Wを約0.1インチ~1.5インチとし、またその高さHを約0.04インチ~約0.15インチとすることができる。
図3および
図4の実施例には特定数の1または複数の台地部178を示しているが、任意の数の台地部を外壁126の外面168上に含んでいてもよいことが理解される。
図4にさらに示すように、外壁126上に配置された台地部178を含む実施例では、TBC166の厚さを台地部178の高さ以下とすることができる。たとえば、
図3および
図4の両方に示すように、台地部178の最外面180に、TBC166を施さないままであってもよい。表面180を、
図3では正方形形状を有するように示しているが、この表面180の形状を、たとえば円形、菱形、長方形、卵形などの任意の望ましいものとしてもよいことが理解される。
【0036】
次いで、離間壁122の中間壁128および内壁130を参照すると、各壁は複数のインピンジメント開口部186を含み得る。インピンジメント開口部186は、翼形部100の中央チャンバ172から壁構造体120の冷却チャンバ154に流入し、かつこれを通過するように、冷却媒体124の流れを方向付けることができる。たとえば、
図4に示すように、中間壁128は、内部に形成された第1の複数のインピンジメント開口部186aを含んでいてもよい。動作中、冷却媒体124が中央チャンバ172から第2の複数のインピンジメント開口部186bを通り、経路Aに沿って複数の第2の冷却チャンバ154bの1または複数の冷却チャンバへと流入するように、これを方向付けてもよい。内壁130は、内部に形成された第2の複数のインピンジメント開口部186bを含んでいてもよい。動作中、冷却媒体124が複数の第2の冷却チャンバ154bの1または複数の冷却チャンバから経路Bに沿って流れ、第1の複数のインピンジメント開口部186aを通り、かつ複数の第1の冷却チャンバ154aの1または複数の冷却チャンバへと流れるように、これをさらに方向付けてもよい。
図4に示すように、経路Bに沿って流れる冷却媒体124は内面148と接触し、そこから熱を吸収し、かつ外壁126を冷却することができる。
【0037】
たとえば翼形部100が使用され得る特定のターボ機械および/またはそのターボ機械が使用されている流路の特性に基づいて、インピンジメント開口部186のサイズ、形状、または構成を任意に選択してもよい。たとえば、インピンジメント開口部186それぞれの直径を約0.012インチ~約0.10インチとしてもよく、またこれらを当該開口部の約3~約12倍の直径に相当する間隔だけ互いから離間させていてもよい。上述のように、一実施例では、隔離部材140に対して離間壁122を、インピンジメント開口部の直径の約2分の1~5倍となる間隔でそれぞれ隔てていてもよく、これにより、インピンジメント開口部から流出し、動作中に冷却チャンバ内で滞留する可能性のある冷却媒体124の量を減少させることができる。本明細書では、任意の数のインピンジメント開口部186を使用してもよい。インピンジメント開口部186はそれぞれ、内壁130および/または中間壁128の外面142、146まで、直交または非直交に延在していてもよい。隣接する一組のインピンジメント開口部(たとえば、第2の複数のインピンジメント開口部186b)に対する第1の複数のインピンジメント開口部186aの位置を、壁構造体120を通過する冷却媒体124の望ましい流れに基づいて変更してもよい。たとえば、隣接する離間壁122のインピンジメント開口部の相対的位置を、壁構造体120内の冷却媒体124の流れプロファイル、乱流状況などが変更されるように調整してもよい。
図4の実施例に示すように、第1の複数のインピンジメント開口部186aを、第2の複数のインピンジメント開口部186bと位置合わせしていなくてもよい。隣接する離間壁122に位置合わせされないようにインピンジメント開口部を形成することにより、たとえばより長いまたは非線形の経路に沿って冷却媒体124を方向付けることができ、その結果、冷却媒体が壁構造体120からより多くの熱を吸収することが可能となり得る。図示していないが、別の非限定的な実施例では、第1の複数のインピンジメント開口部186aにおける開口部の一部またはすべてを、第2の複数のインピンジメント開口部186bと実質的に位置合わせしていてもよい。
【0038】
図4にさらに示すように、中間壁128および/または内壁130は任意により、インピンジメント開口部186と当該壁の面との境界面192に、ディフューザ部または面取り部190(以下、1または複数の面取り部190と呼ぶ)を含んでもよい。たとえば、中間壁128は、インピンジメント開口部186aの側壁196と中間壁の外面146との境界面192に面取り部190を含んでいてもよい。面取り部190は、チャンバ152a、152bと中央チャンバ172との間で冷却媒体124がより自由に流れるように、これを方向付けることができる。たとえば、壁構造体120の一部に破損が生じて、壁およびその内部のインピンジメント開口部186(たとえば、
図12に示す中間壁128および露出したインピンジメント開口部220)を暴露することになった状況では、ガス経路の流れ方向(たとえば、作動流体116)に対して露出した1または複数のインピンジメント開口部下流側の面取り部は、壁構造体120の露出壁の露出面に沿って、その面を吹き飛ばす代わりに冷却媒体124を強制的に流すことができる。これらの面取り部はたとえば、冷却媒体124の流れを改良している。2つの面取り部190を示しているが、中間壁128および/または内壁130において、任意の数、サイズ、形状、および/または構成の面取り部190を含んでいてもよいことが理解される。たとえば中間壁128および内壁130にそれぞれインピンジメント開口部186a、186bを形成する際に、面取り部190を形成してもよい。たとえば、壁構造体120を付加製造している場合、付加製造プロセス中に面取り部の望ましい位置に材料を堆積かつ焼結しないで面取り部190を形成してもよい。別の非限定的な実施例では、TBCにスポールが発生した場合に、壁構造体120が作動流体116に暴露されている間に、面取り部190を形成してもよい。たとえば、図示していないが、中間壁128および/または内壁130で、冷却媒体124および/または作動流体116に暴露されている間に分解されて、面取り部190を形成するように構成された材料を、その境界面192において含むように、これらを形成してもよい。たとえば、冷却媒体124および作動流体116の一方または両方に暴露された結果として物理的に分解(たとえば、融解)されるように、この材料を設計してもよい。この材料は、暴露されてすぐに、または継続的に暴露される期間にわたって分解されてもよい。また、部分的または完全に分解されるようにこの材料を構成してもよい。作動流体116への暴露中に面取り部190を形成する実施例では、面取り部190をインピンジメント開口部186と共に形成してもよく、その後、付加製造プロセス中に、所定の温度(たとえば、約摂氏980度(℃)~約1150℃)で面取り部を分解し、かつ暴露するように設計された熱特性を有する材料でこれを充填してもよい。たとえば、面取り部を充填する際に使用される材料の融点は、中間壁128および/または内壁130の残部を形成する際に使用される材料の融点よりも低くてもよい。この材料は、たとえば、当技術分野で知られているニッケル、コバルトまたはクロム基合金を含んでいてもよい。
【0039】
また、
図4に示すように、中間壁128の外面146上に、第2のTBC136を配置していてもよい。また、第3のTBC136b(一点鎖線内の)を、内壁130の外面142上に同様に配置してもよいことを理解されたい。隔壁156または隔離部材140が外面146と接触する外面146上の位置に、第2のTBC136を施さないままとしてもよい。インピンジメント開口部186および面取り部190にも同様に、第2のTBC136を施さないままとしてもよい。冷却媒体124および/または作動流体116への暴露中に分解して、面取り部190を形成するように構成された(上述のように)材料を境界面192において含む実施形態では、境界面192には第2のTBC136を施さないままとしている。
【0040】
本明細書で述べている壁構造体120の構造により、従来の翼形部の構造と比較して、翼形部100の全体または一部の冷却効果が向上している可能性がある。
図4に示すように、動作中、冷却媒体124は経路A、B、およびCに沿って移動することにより、その外面上にTBC166が配置された外壁126、および/またはその外面上にTBC136が配置された中間壁128を冷却することができる。壁構造体120における複数の離間壁122は、当該壁の表面積を増大させ、また経路A、B、およびCに沿ってチャンバ152を通って流れる冷却媒体124と接触する表面積を増大させてもよい。この壁構造体120の構造により、当該壁の構造的完全性を維持しながら、離間壁122それぞれの厚さをさらに減少させることができる。壁122の厚さを減少させ、なおかつ冷却媒体124と接触する壁構造体120の表面積を増大させることにより、壁構造体120に及ぶ温度勾配を減少させ、なおかつ冷却媒体124が翼形部100から吸収できる熱量を増加させることができる。壁構造体120の離間壁122を隔てている隔離部材140はさらに、壁構造体120を介して熱を伝導し、かつ壁構造体120を通過する冷却媒体124の望ましい流れを方向付けるのを補助してもよい。
【0041】
動作中、壁構造体120の構造およびこれによってもたらされる冷却効果の向上により、その上にTBC(たとえば、TBC166)を含む翼形部(たとえば、翼形部100)の耐用年数を延長することができる。たとえば、
図11に関して本明細書でさらに述べているように、壁構造体120の構造は、TBC166にスポールが発生して、外壁の一部が暴露されることになった状況で、当該壁の外壁126の酸化を軽減することができる。さらに、第2のTBC136は、外壁126の開口部によって暴露される中間壁128または内壁130の一部の酸化と他の損傷とを軽減することができる。加えて、
図12に関して本明細書でさらに述べているように、壁構造体120の構造は、長時間にわたって動作した後に、1または複数のスポールおよび/またはスポールに起因した開口部を含んでいる場合がある。この壁構造体120は、スポールに起因した開口部を通過する冷却媒体124の流れを冷却スロットフィルム214(
図12)として再ルーティングすることにより、最終的にスポールおよび/またはスポールに起因した開口部を形成するに至る状態に対処することができる。再ルーティングされた冷却媒体124は、さらに作動流体116と接触して、1または複数のスポールに起因した開口部を介して翼形部100に作動流体116が流入するのを防止し、かつ/またはその流入量を軽減することができる。
【0042】
図11は、TBC166内にスポール200を含む翼形部100の壁構造体120の一部を表す断面図を示す。スポール200は、それまで存在していなかった、作動流体116が流れる熱経路が外壁126の外面168まで形成されるというような、TBC166におけるあらゆる変化を含み得る。たとえば、このスポール200は、外壁126の外面168まで熱経路が形成されることになる、TBC166の破損または亀裂、もしくは変位を含み得る。スポール200が発生すると、翼形部100(
図3)における外壁126の外面168の部分202は、高温かつ他の極限環境にある作動流体116に暴露されるが、スポール200が発生する前は、外面168の部分202はTBC166によって保護されている。動作中にスポール200が発生した後、経路A、B、およびCに沿って壁構造体120を通って流れる冷却媒体124は、外壁126の内面148を含む、壁構造体120の離間壁122それぞれとの接触を続ける。上述のように、複数の離間壁122を有する壁構造体120を設けることにより、壁の厚さを減少させ、なおかつ冷却媒体124が接触できる表面積を増大させることができる。したがって、冷却媒体124は、離間壁122のそれぞれに接触し、かつこれらから熱を吸収して、作動流体116に暴露される部分202の下にある部分を含む壁構造体120の温度を低下させることができる。さらに、外壁126の内面148に接触する冷却流体は、薄い外壁の厚さT1全体を、作動流体116に直接暴露される外面168に至るまで実質的に冷却することができる。
【0043】
次いで
図12を参照すると、外壁126に発生するスポールに起因した開口部210a、210bを含む、翼形部100の一部の断面図が示されている。
図11に示す、TBC166に発生するスポール200などのスポールは、壁構造体120の外壁126にスポールに起因した開口部210aまたは210bを生じさせる可能性がある。たとえば、
図11に示す外面168の部分202は、高温の作動流体116への暴露中に最終的に酸化し、スポールに起因した開口部210aまたは210bを形成する場合がある。動作中にスポールに起因した開口部210a、210bが生じると、冷却媒体124は通常、TBC166の外面170に垂直となる方向に、開口部を介して翼形部100のから流出する。これに対して、
図12に示すように、壁構造体120の構造により、たとえば外壁126および中間壁128の部分など、スポールに起因した開口部210によって暴露された表面上に冷却スロットフィルム214を形成することが可能となり得る。したがって、壁構造体120の構造は、TBC166、136などのTBCを有する翼形部の耐用年数を延長することができる。たとえば、冷却スロットフィルム214は、壁構造体120の露出部分を作動流体116の高温から保護し、かつ露出壁の酸化を軽減することができる。
図12に同様に示すように、外壁126のスポールに起因した開口部210a、210bによって暴露された中間壁128の部分は、外面146上に配置された第2のTBC136により作動流体116との接触が発生することから、付加的な保護を受けることができる。
【0044】
図12に示すように、スポールに起因した開口部210a、210bに対処して壁構造体120が適応冷却流216および218を形成するように、これを構成してもよい。適応冷却流216および218は、互いに接触して冷却スロットフィルム214を形成することができる。
図12に示すように、その内部のインピンジメント開口部186aを含む中間壁128が露出すると、出口面積が増大することにより、壁構造体120に及ぶ圧力勾配に変化が生じ、これにより、今度は第1の適応冷却流216が、1または複数のスポールに起因した開口部において、インピンジメント開口部186aの露出部分220へと引き込まれる可能性がある。たとえば、スポールに起因した開口部210における複数の離間壁122の表面積は、増大した冷却媒体124の後方流を中央チャンバ172からインピンジメント開口部186aの露出部分220へと方向付け、第1の適応冷却流216を形成することができる。第1の適応冷却流216は、中間壁128の外面146に垂直となる方向に、中間壁128のインピンジメント開口部186aの露出部分から流出してもよい。また、
図12に示すように、スポールに起因した開口部210に対処して、第2の適応冷却流218は、スポールに起因した開口部のインピンジメント開口部186aにおける露出部分220に隣接する、インピンジメント開口部186aの上流部222から流出してもよい。スポールに起因した開口部発生前の冷却媒体124の流れと同様に、第2の適応冷却流218は第1のチャンバ152aを通って移動し、かつ外壁126の内面148と接触してもよい。したがって、冷却流体流は、外壁126の内面148に平行となる方向に、スポールに起因した開口部210a、210bで当該チャンバから流出してもよい。
図12にさらに示すように、第2の適応冷却流218は、スポールに起因した開口部の第1の適応冷却流216と接触して、第1の適応冷却流216を内面148に平行となる方向に方向付けてもよい。第1の適応冷却流216と接触する第2の適応冷却流218は、スポールに起因した開口部210によって暴露された壁構造体120の部分上に、冷却スロットフィルム214を形成してもよい。第2の適応冷却流218および/または第1の適応冷却流216は、1または複数のスポールに起因した開口部210で作動流体116とさらに接触し、作動流体を露出中間壁128から遠ざけ、かつ1または複数のスポールに起因した開口部210を介して翼形部100に作動流体116が流入するのを防止し、かつ/またはその流入量を軽減することができる。
【0045】
壁構造体120の特定の部分に示しているが、スポールに起因した開口部210は壁構造体120内のあらゆる位置で発生する可能性があり、それでも本明細書に開示している壁構造体120の構造によって、これを緩和できることが理解される。また、スポールに起因した開口部210が壁構造体120の外壁126のみを貫通しているように示しているが、スポールに起因した開口部210は、中間壁128および/または内壁130をさらに貫通し、なおかつこれを壁構造体120によって同様に緩和できることが理解される。
【0046】
図12にさらに示すように、隔壁156は、スポールに起因した開口部210によって暴露された壁構造体120の部分を介して、作動流体116が翼形部100に流入し、また冷却媒体124が翼形部100に再流入するのを防止することができる。たとえば、隔壁156は圧力差を形成することにより、作動流体116が1または複数の第1および/または第2のチャンバ152の下流部226に流入し、かつ/または冷却媒体124が1または複数の第1および/または第2のチャンバ152に再流入するのを防止することができる。隔壁156は、上流のスポールに起因した開口部210aから流出する冷却媒体124の一部が、隣接する下流のスポールに起因した開口部210bおよび/または1または複数の冷却通路174で、1または複数の第1および/または第2のチャンバ152に再流入するのをさらに防止することができる。
【0047】
図13を参照すると、本開示の実施形態によれば、壁構造体120の様々な構造部品が一体構成部品として形成されるように、翼形部100およびその壁構造体120の形態を取るHGP構成部品を付加製造してもよい。また、付加製造により、本明細書に記載している構造の多くを容易に、すなわち非常に複雑な機械加工を必要とせずに形成することができる。本明細書で使用する場合、付加製造(AM)は、従来のプロセスで行う材料の除去ではなく、材料の連続した層形成を通して物体を生成する任意のプロセスを含んでいてもよい。付加製造では、あらゆる種類の工具、金型または器具を使用することなく、かつ廃棄材料をほとんどまたは全く発生させずに複雑な幾何学的形状を形成することができる。その多くは切り取られて廃棄されることになるプラスチックまたは金属の固体ビレットから構成部品を機械加工する代わりに、付加製造に使用される唯一の材料が部品を成形するために必要となる材料である。付加製造プロセスは、3D印刷、ラピッドプロトタイピング(RP)、直接デジタル製造(DDM)、バインダージェッティング、選択的レーザ溶融(SLM)および直接金属レーザ溶融(DMLM)を含み得るが、これらに限定されない。
【0048】
付加製造プロセスの一例を説明するために、
図13は、たとえば外壁126などの物体302を生成するための、例示的なコンピュータ化付加製造システム300の概略/ブロック図を示す。本実施例では、システム300をDMLM用に構成している。本開示の概略的な開示内容は、他の形態の付加製造にも等しく適用可能であることが理解される。AMシステム300は、概してコンピュータ化付加製造(AM)制御システム304と、AMプリンタ306とを含む。記載しているように、AMシステム300は、AMプリンタ306を使用して当該構成部品を物理的に生成するために、その構造部品(たとえば、外壁126、離間壁128、130、隔離部材140a、140b、インピンジメント開口部186a、186bなど)を含む壁構造体120(
図4)の部分を定義しているコンピュータ実行可能命令のセットを含む、コード320を実行している。AMプロセスではそれぞれ、たとえば細粒粉末、液体(たとえば、ポリマー)、シートなどの形態の様々な原材料を使用することができ、そのストックを、AMプリンタ306のチャンバ310に保持することができる。本事例では、翼形部100(
図3および
図4)を金属粉末または同様の材料で作製していてもよい。図示しているように、アプリケータ312は、空白キャンバスとして広がる原材料314の薄層を形成することができ、これから最終物体の各連続スライスを形成する。他の事例では、アプリケータ312は、たとえば材料がポリマーであるか、あるいは金属バインダージェッティングプロセスを用いる場合、コード320によって定義されるように先行の層上に次の層を直接施すか、または印刷してもよい。図示している実施例では、レーザまたは電子ビーム316が、コード320によって定義されるように、各スライスの粒子を融合するが、これは素早く硬化する液体プラスチック/ポリマーを採用している場合には必須としなくてもよい。AMプリンタ306の様々な部品を、新しい層それぞれの追加に対応するように移動させてもよく、たとえば、各層の後でビルドプラットフォーム318を降下させてもよく、かつ/またはチャンバ310および/またはアプリケータ312を上昇させてもよい。
【0049】
AM制御システム304を、コンピュータプログラムコードとしてコンピュータ330に実装した状態で示している。この点に関して、コンピュータ330を、メモリ332、プロセッサ334、入力/出力(I/O)インターフェース336、およびバス338を含むものとして示している。さらに、コンピュータ330を、外部I/O装置340および記憶システム342と通信するように示している。通常、プロセッサ334は、本明細書に記載している、翼形部100(
図3および
図4)の構成部品を表すコード320からの命令下で、メモリ332および/または記憶システム342に記憶されるAM制御システム304などのコンピュータプログラムコードを実行する。コンピュータプログラムコードの実行時に、プロセッサ334は、メモリ332、記憶システム342、I/O装置340および/またはAMプリンタ306からデータを読み出し、かつ/またはこれにデータを書き込むことができる。バス338は、コンピュータ330の構成部品のそれぞれの間の通信リンクを供給し、I/O装置340は、ユーザがコンピュータ330と対話できるようにする任意の装置(たとえば、キーボード、ポインティングデバイス、ディスプレイなど)を備えることができる。コンピュータ330は、ハードウェアとソフトウェアとの想定される様々な組み合わせを表しているに過ぎない。たとえば、プロセッサ334は単一の処理ユニットを備えていてもよく、あるいは、たとえばクライアント上およびサーバ上などの1または複数の位置における、1または複数の処理ユニットにわたって分散していてもよい。同様に、メモリ332および/または記憶システム342は、1または複数の物理的位置に存在していてもよい。メモリ332および/または記憶システム342は、磁気媒体、光学媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などを含む、様々なタイプの非一時的コンピュータ可読記憶媒体の任意の組み合わせを備えることができる。コンピュータ330は、ネットワークサーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、携帯機器、携帯電話、ポケットベル、携帯情報端末などの任意のタイプのコンピューティングデバイスを備えることができる。
【0050】
付加製造プロセスは、非一時的コンピュータ可読記憶媒体(たとえば、メモリ332、記憶システム342など)に翼形部100(
図3および
図4)の構成部品を表すコード320を記憶させることから始まる。上述のように、コード320は、物体302を定義しているコンピュータ実行可能命令のセットを含み、このような命令のセットを用いて、システム300によるコードの実行時に当該物体を物理的に生成することができる。たとえば、コード320は、翼形部100(
図3および
図4)の構成部品の正確に定められた3Dモデルを含んでいてもよく、AutoCAD(登録商標)、TurboCAD(登録商標)、DesignCAD 3D Maxなどの多様な公知のコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアシステムのいずれかから生成することができる。この点において、コード320を、任意の既知または今後開発されるファイルフォーマットとすることができる。たとえば、コード320は、3DシステムのステレオリソグラフィCADプログラム用に生成された標準テッセレーション言語(Standard Tessellation Language、STL)によるものとすることができ、あるいは任意のAMプリンタ上で製造される任意の三次元物体の形状および構成の記述をあらゆるCADソフトウェアにとって可能にするように設計された拡張可能なマークアップ言語(XML)ベースのフォーマットである、米国機械学会(ASME)規格の付加製造ファイル(AMF)によるものとすることができる。コード320は、必要に応じて、異なるフォーマット間で変換すること、データ信号のセットに変換すること、データ信号のセットとして送受信し、かつコードに変換して記憶することなどができる。コード320をシステム300への入力としてもよく、またこれを、部品設計者、知的財産(IP)提供者、設計会社、システム300のオペレータまたは所有者、もしくは他の提供源からもたらされるものとしてもよい。いずれにしても、AM制御システム304はコード320を実行して、翼形部100(
図3および
図4)を一連の薄いスライスに分割し、AM制御システム304は、AMプリンタ306を使用してこれらを液体、粉末、シートまたは他の材料の連続した層として組み立てることになる。DMLMの実施例では、各層を、コード320によって定義された正確な形状に溶融して先行の層に融合している。
【0051】
離間壁122において外壁126以外の外面146および/または142に第2のTBC136を施している実施形態では、別個の構成部品としてこれらを付加製造し、後でこれらを組み立てて壁構造体120を形成してもよい。たとえば、内壁130と中間壁128とを、外壁126(たとえば、翼形部外皮)とは別個の構成部品(たとえば、翼形部コア)として共に付加製造してもよい。第2のTBC136を施した後、内壁130と中間壁128とを外壁126に組み込んでもよい。壁構造体120の組立てを、冶金的手段(たとえば、ろう接または溶接)または機械的手段(たとえば、摩擦嵌めまたは留め具)、もしくはそれらの任意の組み合わせによって達成してもよい。
【0052】
付加製造に続き、翼形部100(
図3および
図4)の構成部品に対して、たとえば軽微な機械加工、封止、研磨、別の部品への組付けなどの任意の様々な仕上げプロセスを行ってもよい。本開示において、壁構造体120における離間壁122の外面168、146、142の一部またはすべてにTBC166、136を施していてもよい。これらのTBC166、136を、既知または今後開発されるコーティング技法を用いて施してもよく、またこれらを任意の数の層で施してもよい。隔離部材140および/または隔壁156の横方向側壁上に、第2のTBC136を施していてもよいし、施していなくてもよい。いくつかの実施形態では、壁構造体120を通過する熱の伝導を促進するために、隔離部材140の外面および/または内面に第2のTBC136を施していなくてもよい。同様に、隔壁156の外面および/または内面に第2のTBC136を施していなくてもよい。上述のようにTBC166、136を施さない部分を残すように、外面168、146、142、隔離部材140、および隔壁156に対してTBC166、136を選択的に施してもよい。または、TBC166、136を施した後に、これらを選択的に除去してもよく、あるいは選択的に施し、かつ選択的に除去するステップを組み合わせることにより、TBC166、136を形成してもよい。
【0053】
動作中、
図11に示すように、外壁126上のTBC166においてスポール200が発生した後、壁構造体120の構造により、冷却媒体124の通過が可能となり、これによって壁構造体および翼形部の耐用年数が延長されることになる。また、動作中、
図12に示すように、外壁126上のTBC166においてスポールに起因した開口部210が発生した後、壁構造体120の構造により、スポールに起因した開口部によって暴露された壁構造体120の部分上に、冷却媒体124から冷却スロットフィルム214を形成することができる。
【0054】
本開示の実施形態による翼形部100は、スポール200に対処して翼形部100を冷却し、かつ翼形部100の耐用年数を延長する壁構造体120をもたらしている。壁構造体120の構造により、公称冷却流が大幅に減少する可能性がある。翼形部100に付加製造を用いることにより、翼形部100の壁構造体120が多層、多壁、多重材料(たとえば、ディフューザ部または面取り部190の場合)、および/または多重冷却チャンバ構造を含むように、これを形成することができる。
【0055】
本明細書で使用している専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、特に明示しない限り、複数形も含むことが意図される。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの組が存在することまたは追加されることを除外しないことが、さらに理解されよう。「任意の(optional)」または「任意により(optionally)」は、後で述べられる事象または状況が起こってもよいし、または起こらなくてもよいことを意味し、またこの説明が、その事象が起こる場合と、起こらない場合とを含むことを意味する。
【0056】
本明細書および特許請求の範囲を通してここで使用している近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく、差し支えない程度に変動し得る任意の量的表現を修飾するために適用してもよい。したがって、「およそ(about)」、「約(approximately)」、および「実質的に(substantially)」などの用語または複数の用語で修飾される値は、明記された厳密な値に限定されるべきものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための計器の精度に対応してもよい。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の限定を組み合わせたり、かつ/または置き換えたりすることが可能であり、文脈および文言が特に指示しない限り、このような範囲は特定され、それらに包含されるすべての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約(approximately)」は、両方の値に適用され、また値を測定する計器の精度に特に依存しない限り、記載された1または複数の値の+/-10%を示してもよい。
【0057】
以下の特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作および均等物は、具体的に請求された他の請求要素と組み合わせてその機能を遂行するための、一切の構造、材料または動作を包含することを意図している。本開示の記述は、例示および説明の目的で提示されたもので、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図していない。当業者には、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの変更および変形が明らかであろう。本開示の原理および実際の応用を最良に説明し、想定される特定の用途に適するように様々な変更を伴う様々な実施形態の開示を他の当業者が理解できるようにするために、本実施形態を選択し、かつ説明した。
【符号の説明】
【0058】
2 ガスタービンシステム
4 圧縮機
8 流入空気流
10 燃焼器
12 加圧燃料流
16 燃焼ガス流
18 タービン
20 シャフト
24 外部負荷
30 高温ガス経路(HGP)構成部品
32 タービン翼形部
34 壁構造体
36 シャンク部
40 プラットフォーム
42 前縁
44 後縁
46 負圧側面
48 正圧側面
52 シャンクキャビティ
54 エンゼルウィング
56 根元構造体
60 冷却回路
62 冷却媒体
66 冷却通路
100 タービン翼形部
108 前縁
110 後縁
112 正圧側面
114 負圧側面
116 作動流体
120 壁構造体
122 離間壁
124 冷却媒体
126 外壁
128 露出中間壁、離間壁
130 内壁、離間壁
136 第2の遮熱コーティング(TBC)
136b 第3の遮熱コーティング(TBC)
140 隔離部材
140a 隔離部材
140b 隔離部材
142 外面
144 内面
146 外面
148 内面
150 空間
150a 第1の空間
150b 第2の空間
152 チャンバ
152a 第1のチャンバ
152b 第2のチャンバ
154 冷却チャンバ
154a 第1の冷却チャンバ
154b 第2の冷却チャンバ
156 隔壁
156a 第1の組の隔壁、第1の隔壁
156b 第2の組の隔壁、第2の隔壁
158 第1の隣接する組
160 第2の隣接する組
166 遮熱コーティング(TBC)
168 外面
170 外面
172 中央チャンバ
174 冷却通路
178 台地部
180 最外面、表面
186 インピンジメント開口部
186a 第1の複数のインピンジメント開口部
186b 第2の複数のインピンジメント開口部
190 面取り部
192 境界面
196 側壁
200 スポール
202 外面の部分
210 スポールに起因した開口部
210a スポールに起因した開口部
210b スポールに起因した開口部
214 冷却スロットフィルム
216 第1の適応冷却流
218 第2の適応冷却流
220 露出部分、露出したインピンジメント開口部
222 上流部
226 下流部
300 コンピュータ化付加製造(AM)システム
302 物体
304 コンピュータ化付加製造(AM)制御システム
306 AMプリンタ
310 チャンバ
312 アプリケータ
314 原材料
316 電子ビーム
318 ビルドプラットフォーム
320 コード
330 コンピュータ
332 メモリ
334 プロセッサ
336 インターフェース
338 バス
340 外部I/O装置
342 記憶システム
A 経路
B 経路
C 経路
H 高さ
L 半径方向長さ
T1 外壁の厚さ
T2 中間壁の厚さ
T3 内壁の厚さ
W 幅