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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240325BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240325BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240325BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 D
G06T7/00 650A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019194693
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021068317
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 玲雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晋
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177098(JP,A)
【文献】特開2016-40644(JP,A)
【文献】特開2018-106255(JP,A)
【文献】特開2009-126483(JP,A)
【文献】特開2011-180683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラが、
信号機の設置位置の情報と前記信号機が設けられた道路の情報とを少なくとも含む地図情報に基づいて、前記信号機により規制される、少なくとも隣接車線を含む複数の車線の各々について、前記信号機に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定し、
自車両に搭載されたカメラの光学情報及び設置情報と前記地図情報とに基づいて、前記複数の車線の各々について、前記カメラの水平方向の画角範囲内に前記信号機が位置しており前記カメラによる撮像画像から前記信号機の現示を判定可能な各々の車線上の領域で前記信号機に最も近い位置を第2停止位置として算出し、
前記複数の車線の各々について、前記第1停止位置及び前記第2停止位置のうち前記信号機から遠い一方を目標停止位置として設定し、
前記撮像画像から前記信号機の現示を判定し、
前記信号機の前記現示が停止を示す場合に前記目標停止位置に停止するように前記自車両を制御する、
ことを特徴とする車両制御方法。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1停止位置で前記撮像画像から前記信号機の前記現示が判定できるか否かを判定し、
前記第1停止位置で前記信号機の前記現示を判定できない場合に、前記第2停止位置を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記車線を規制する複数の信号機の各々について、前記第2停止位置の候補を算出し、
前記第2停止位置の候補の中から前記第2停止位置を選択する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両制御方法。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第2停止位置の候補のうち前記第1停止位置に最も近いものを前記第2停止位置として選択することを特徴とする請求項に記載の車両制御方法。
【請求項5】
前記地図情報は前記信号機に対応する停止線の位置情報をさらに含み、
前記コントローラは、前記停止線の位置情報に基づいて前記第1停止位置を決定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記コントローラは、前記地図情報が前記信号機に対応する停止線の位置情報を含まない場合に、前記車線と交差する地物と前記車線との交差位置に基づいて前記第1停止位置を決定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項7】
自車両に搭載されたカメラと、
信号機の設置位置の情報と前記信号機が設けられた道路の情報とを少なくとも含む地図情報に基づいて、前記信号機により規制される車線において前記信号機に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定し、前記カメラの光学情報及び設置情報と前記地図情報とに基づいて、前記カメラの水平方向の画角範囲内に前記信号機が位置しており前記カメラによる撮像画像から前記信号機の現示を判定可能な前記車線上の領域で前記信号機に最も近い位置を第2停止位置として算出し、前記第1停止位置及び前記第2停止位置のうち前記信号機から遠い一方を目標停止位置として設定し、前記撮像画像から前記信号機の現示を判定し、前記信号機の前記現示が停止を示す場合に前記目標停止位置に停止するように前記自車両を制御するコントローラと、
を備え
前記コントローラは、前記信号機により規制される、少なくとも隣接車線を含む複数の車線の各々について、前記第1停止位置の決定と、前記第2停止位置の算出と、前記目標停止位置の設定と、を行うことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の前方を撮影した画像に基づいて信号機と停止線とを認識し、信号機が赤信号である場合には停止線で停止するように車両を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-123613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に搭載されるカメラの画角や搭載位置、配向によっては、信号機に対応して定められた停止位置(例えば停止線位置)まで車両が進むと、カメラの画角範囲から信号機が外れてしまうことがある。このような場合、車両が停止位置に停止する前に信号機の表示が「進行」に変化しても、それを認識できずに停止位置に車両を停止させてしまうおそれがある。
本発明は、撮像画像による信号機の認識結果に基づく自動運転において、自車両に搭載したカメラの撮像画像から信号機の現示を判定できない停止位置に自車両を停止させるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による車両制御方法では、信号機の設置位置の情報と信号機が設けられた道路の情報とを少なくとも含む地図情報に基づいて、信号機により規制される車線において信号機に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定し、自車両に搭載されたカメラの光学情報及び設置情報と地図情報とに基づいて、カメラによる撮像画像から信号機の現示を判定可能な車線上の領域で信号機に最も近い位置を第2停止位置として算出し、第1停止位置及び第2停止位置のうち信号機から遠い一方を目標停止位置として設定し、撮像画像から信号機の現示を判定し、信号機の現示が停止を示す場合に目標停止位置に停止するように前記自車両を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一形態によれば、撮像画像による信号機の認識結果に基づく自動運転において、自車両に搭載したカメラの撮像画像から信号機の現示を判定できない停止位置に自車両を停止させるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の車両制御装置の概略構成図である。
図2A】実施形態の車両制御方法の一例の説明図である。
図2B】実施形態の車両制御方法の一例の説明図である。
図3】実施形態の車両制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4A】第1停止位置の決定方法の第1例の説明図である。
図4B】第1停止位置の決定方法の第2例の説明図である。
図4C】第1停止位置の決定方法の第3例の説明図である。
図5A】上下方向の画角範囲に信号機が入る条件の説明図である。
図5B】水平方向の画角範囲に信号機が入る条件の説明図である。
図6A】第2停止位置の算出方法の第1例の説明図である。
図6B】第2停止位置の算出方法の第2例の説明図である。
図6C】第2停止位置の算出方法の第3例の説明図である。
図7A】目標停止位置の設定方法の説明図である。
図7B】目標停止位置の設定方法の説明図である。
図8】実施形態の車両制御方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
自車両1は、自車両1の走行を自動的に制御する車両制御装置10を備える。車両制御装置10は、自車両1の現在位置である自己位置を検出し、検出した自己位置に基づいて自車両1の走行を制御することにより、自車両1の運転を支援する。
例えば、車両制御装置10は、検出した自己位置と周囲の走行環境とに基づいて、運転者が関与せずに自車両1を自動で運転する自律走行制御を行うことによって運転を支援する。
【0010】
車両制御装置10は、推定した自己位置と周囲の走行環境に基づいて加減速のみを制御することによって運転を支援してもよい。例えば、車両制御装置10は、自車両1の前方の信号機の現示に応じて、信号機の手前に自車両1を停止させる自動停止制御を行ってよい。なお、信号機の現示とは信号機の点灯色や矢印信号等の進行可/不可や進行可能な方向に関する表示を表し、一般に灯火現示あるいは信号現示とも言われる。
車両制御装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース14と、通信装置15と、ナビゲーションシステム17と、コントローラ18と、アクチュエータ19を備える。図面において地図データベースを「地図DB」と表記する。
【0011】
物体センサ11は、自車両1の周囲の物体を検出する複数の異なる種類のセンサを備える。
例えば物体センサ11は、自車両1に搭載されたカメラ20を備える。カメラ20は、自車両1の前方の所定の画角範囲(撮影範囲)の画像を撮影し、撮像画像をコントローラ18へ出力する。
また物体センサ11は、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)などの測距センサを備えてもよい。
【0012】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、自車両1が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0013】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、自動運転用の地図情報として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という。)を記憶してよい。高精度地図は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という。)よりも高精度の地図データである。
高精度地図が有する道路の情報は、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。以下、高精度地図データに含まれる車線単位の情報を「車線情報」と表記することがある。
【0014】
例えば、高精度地図は、車線情報として、車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報を含む。
車線ノードの情報は、その車線ノードの識別番号、位置座標、接続される車線リンク数、接続される車線リンクの識別番号を含む。車線リンクの情報は、その車線リンクの識別番号、車線の種類、車線の幅員、車線境界線の種類、車線の形状、車線の勾配、車線区分線の形状、車線基準線の形状を含む。
高精度地図は更に、車線上又はその近傍に存在する停止線、標識、建物、電柱、縁石、横断歩道等の地物の種類及び位置座標と、地物の位置座標に対応する車線ノードの識別番号及び車線リンクの識別番号等の地物の情報を含む。
【0015】
高精度地図は更に、車線上又はその近傍に設けられた信号機の情報を含む。高精度地図データに含まれる信号機の情報を「信号機情報」と表記することがある。
信号機情報は、各信号機の設置位置の情報と、信号機に対応する停止線の識別情報を含む。信号機情報は、信号機に対応する停止線の識別情報を介して、この信号機によって交通が規制される車線を特定する。
信号機に対応する停止線が存在しない場合、信号機情報は、例えば信号機が設けられた交差点の車線ノードの情報や、信号機が設けられた横断歩道の情報を含んでよい。信号機情報は、これらの情報を介して、この信号機によって交通が規制される車線を特定する。
【0016】
ここで「信号機によって交通が規制される車線」とは、当該信号機に対応して設けられた停止線よりも先に進行することが、当該信号機の表示によって許可又は禁止される車線、又は当該信号機が設けられた交差点もしくは横断歩道へ進入することが、当該信号機の表示によって許可又は禁止される車線である。
信号機の設置位置の情報は、少なくとも信号機が設置される位置の地図座標系(もしくは世界座標系)の2次元座標を含む。信号機の設置位置の情報は、信号機が設置される位置の2次元座標に加えて、信号機の高さ情報を含んでもよい。
【0017】
通信装置15は、自車両1の外部の通信装置との間で無線通信を行う。通信装置15による通信方式は、例えば公衆携帯電話網による無線通信や、車車間通信、路車間通信、又は衛星通信であってよい。
ナビゲーションシステム17は、測位装置13により自車両1の現在位置を認識し、その現在位置における地図情報を地図データベース14から取得する。ナビゲーションシステム17は、乗員が入力した目的地までの走行経路を設定し、この走行経路に従って乗員に経路案内を行う。
またナビゲーションシステム17は、設定した走行経路の情報をコントローラ18へ出力する。自律走行制御を行う際に、コントローラ18は、ナビゲーションシステム17が設定した走行経路に沿って走行するように自車両1を自動で運転する。
【0018】
コントローラ18は、自車両1の車両制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ18は、プロセッサ21と、記憶装置22等の周辺部品とを含む。プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置22は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置22は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するコントローラ18の機能は、例えばプロセッサ21が、記憶装置22に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0019】
なお、コントローラ18を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ18は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ18はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0020】
アクチュエータ19は、コントローラ18からの制御信号に応じて、自車両1のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両1の車両挙動を発生させる。アクチュエータ19は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、自車両1のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータは、自車両1のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両1のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0021】
次に、コントローラ18による自車両1の走行制御の一例を説明する。コントローラ18は、カメラ20による撮像画像から、自車両1が走行する車線の交通を規制する信号機を認識する。コントローラ18は、認識した信号機の現示にしたがって自車両1を自動的に走行させ又は停止する。
上記のとおり、カメラ20の画角や搭載位置、配向によっては、停止線位置のような交通規則で定められた停止位置まで車両が進むと、カメラ20の画角範囲から信号機が外れてしまうことがある。
【0022】
このような場合には、車両が停止位置で停止する前に信号機の表示が「進行」に変化しても、それを認識できずに停止位置に車両を停止させてしまうおそれがある。
また、車両が停止位置に停止すると、その後に信号機の表示が「進行」に変化しても、それを認識できずに発進できなくなる。
そこでコントローラ18は、信号機が停止を示す場合には、交通規則上の第1停止位置と、カメラによる撮像画像から信号機の現示を判定できる第2停止位置のうち、信号機から遠い一方の停止位置に自車両を停止させる。
【0023】
図2A及び図2Bを参照する。自車両1の前方に信号機30が存在する場合を想定する。信号機30は、複数の車線31及び32の交通を規制する信号機である。車線31及び32の通行方向は同じであり、車線31は自車両1の走行車線、車線32は車線31の隣接車線である。
コントローラ18は、地図データベース14の地図情報に基づいて、信号機30により規制される車線31において信号機30の現示に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定する。
【0024】
例えば、地図情報に含まれる信号機30の信号機情報が、信号機30に対応する停止線の識別情報を含んでいる場合には、コントローラ18は、第1停止位置33として停止線の位置座標を地図情報から取得する。
また、コントローラ18は、自車両1に搭載されたカメラ20の光学情報(例えばカメラ20の画角情報)及び設置情報(例えば自車両1へのカメラの搭載位置と光学系の配向)と地図データベース14の地図情報とに基づいて、カメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定可能な車線31上の領域で、信号機30に最も近い位置34を第2停止位置として算出する。カメラ20の光学情報と設置情報は、例えば予め設定して記憶装置22に格納しておく。
【0025】
そして、コントローラ18は、第1停止位置33及び第2停止位置34のうち信号機30から遠い一方を目標停止位置として設定する。図2Aの場合には、第1停止位置33を目標停止位置に設定する。図2Bの場合には、第2停止位置34を目標停止位置に設定する。
次にコントローラ18は、カメラ20の撮像画像から信号機30の現示を判定し、信号機30の現示が停止を示す場合に、上記のとおり決定した目標停止位置に停止するように自車両1を制御する。
【0026】
この結果、例えば図2Aに示すように、交通規則で定められた第1停止位置33において、カメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定可能である場合には第1停止位置33に自車両1を停止させることができる。
一方で、例えば図2Bに示すように、第1停止位置33においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できない場合には、カメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できる第2停止位置34に自車両1を停止させることができる。
この結果、カメラ20の撮像画像による信号機30の認識結果に基づく自動運転において、自車両1に搭載したカメラ20の撮像画像から信号機30の現示を判定できない停止位置に自車両1を停止させるのを抑制できる。
【0027】
以下、コントローラ18の機能を詳しく説明する。図3を参照する。コントローラ18は、地図取得部40と、信号認識部41と、停止位置設定部42と、自車両経路生成部43と、車両制御部44を備える。
地図取得部40は、地図データベース14から自車両1が走行する道路の地図情報を取得する。地図取得部40は、通信装置15により外部の地図データサーバから地図情報を取得してもよい。
【0028】
地図取得部40により取得される地図情報には、自車両1の進路前方に存在する信号機の信号機情報と、この信号機によって交通が規制される車線の車線情報と、この車線と交差する他の車線の車線情報と、車線上又はその近傍に存在する地物の情報と、を含む。
信号認識部41は、カメラ20による撮像画像を解析して信号機を認識して、その現示を判定する。信号認識部41は、信号機の現示の判定結果を自車両経路生成部43へ出力する。
【0029】
停止位置設定部42は、自車両1の走行車線を規制する自車両1の前方の信号機の現示が「停止」を示す場合に自車両1を停止させる目標停止位置を設定する。
停止位置設定部42は、第1停止位置決定部50と、第2停止位置算出部51と、目標停止位置設定部52を備える。
【0030】
第1停止位置決定部50は、地図取得部40が取得した地図情報に基づいて、自車両1の前方の信号機により規制される車線において信号機の現示に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定する。
図4A~4Cを参照する。自車両1の前方に信号機30が存在する場合を想定する。信号機30は、複数の車線31及び32の交通を規制する信号機である。車線31及び32の通行方向は同一の互いに隣接する車線である。
【0031】
例えば、図4Aに示すように、地図取得部40が取得した地図情報に含まれる信号機30の信号機情報が、信号機30に対応する停止線の識別情報を有する場合には、第1停止位置決定部50は、車線31及び32上の第1停止位置33として停止線の位置座標を地図情報から取得する。
【0032】
信号機30の信号機情報が、信号機30に対応する停止線の識別情報を持たない場合も考えられる。例えば、信号機30に対応する停止線が存在しない場合がある。また、実際には停止線が存在していても、その情報が地図データベース14に記憶されていない場合もある。
図4Bは、車線31及び32と交差する横断歩道60に設けられた信号機30に対応する停止線が存在しない場合の一例を示し、図4Cは、車線31及び32と交差車線62との交差点63に設けられた信号機30に対応する停止線が存在しない場合の一例を示す。
第1停止位置決定部50は、車線31及び32と交差するこれらの地物と車線31及び32との交差位置に基づいて、車線31及び32上の第1停止位置33を決定する。
【0033】
図4Bを参照する。第1停止位置決定部50は、横断歩道60の位置座標を地図情報から取得して、横断歩道60の側端61より所定距離Dだけ手前の位置を第1停止位置33として決定する。
図4Cを参照する。第1停止位置決定部50は、信号機30の信号機情報から信号機30が設けられた交差点63の車線ノードの情報を取得する。第1停止位置決定部50は、この車線ノードに接続される車線リンクの識別番号から交差車線62を識別し、交差車線62の車線情報を地図情報から取得する。第1停止位置決定部50は、交差車線62の側端64より所定距離Dだけ手前の位置を第1停止位置33として決定する。
【0034】
図3を参照する。第2停止位置算出部51は、信号機30の設置位置及び高さ情報と、車線31の道路構造及び勾配と、カメラ20の光学情報及び設置情報に基づいて、第1停止位置33に自車両1が位置する場合にカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できるか否かを判定する。
第2停止位置算出部51は、カメラ20が信号機30を撮影できるか否かに応じて、撮像画像から信号機30の現示を判定できるか否かを判定してよい。
【0035】
例えば第2停止位置算出部51は、カメラ20の上下方向及び水平方向の画角範囲の両方に信号機30が位置する場合に、カメラ20が信号機30を撮影できると判定し、上下方向及び水平方向の画角範囲のいずれかから信号機30が外れる場合に、カメラ20が信号機30を撮影できないと判定してよい。
図5Aを参照する。第2停止位置算出部51は、例えば次式(1)及び(2)を満足する場合に、カメラ20の上下方向の画角範囲に信号機30が位置すると判断する。
【0036】
(xb+x0)tanθ1 > ys1-yc …(1)
(xb+x0)tanθ2 < ys2-yc …(2)
xbは自車両1から信号機30までの水平距離であり、x0は自車両1の前端からカメラ20の搭載位置までの前後方向距離であり、ycはカメラ20の搭載位置の高さであり、ys1か信号機30の上端の高さであり、ys2は信号機30の下端の高さである。
【0037】
θ1はカメラ20の画角範囲の上限65の仰角であり、θ2はカメラ20の画角範囲の下限66の仰角である。
なお、地図情報に信号機30の高さ情報がない場合には、行政機関等によって定められた設置基準に基づいて一般的な信号機の高さとして仮定される値を、信号機30の高さとして用いてもよい。例えば、ys1を5.7mと仮定し、ys2を4.7mと仮定してよい。
【0038】
図5Bを参照する。第2停止位置算出部51は、カメラ20の光学中心20cに対する信号機30の横方向の偏位と、カメラ20から信号機30までの水平距離(xb+x0)と、カメラ20の水平画角θhに基づいて、カメラ20の水平方向の画角範囲に信号機30が位置するか否かを判定する。
このとき、自車両1が車線31の中央に位置すると仮定してもよい。また、地図情報に含まれる信号機30の設置位置情報が、信号機30の支柱37の2次元座標である場合には、支柱37の座標を信号機30の座標として使用してもよい。
【0039】
第1停止位置33においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できないと判定した場合に、第2停止位置算出部51は、カメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できる車線31上の第2停止位置を算出する。
図6Aを参照する。例えば、第2停止位置算出部51は、図5A及び図5Bを参照して説明した方法を用いて信号機30を撮影可能な地点を車線31上で探索することにより、信号機30から所定距離の範囲内で、信号機30の現示を判定可能な車線31上の領域を算出し、この領域で最も信号機30に近い位置を第2停止位置34として算出する。
【0040】
車線32についても同様に、信号機30から所定距離の範囲内で、信号機30の現示を判定可能な車線32上の領域を算出し、この領域で最も信号機30に近い位置を第2停止位置35として算出する。
図6Bを参照する。自車両1の前方に複数の信号機30a及び30bが存在する場合を想定する。信号機30a及び30bは、いずれも複数の車線31及び32の交通を規制する信号機である。
【0041】
この場合に第2停止位置算出部51は、複数の信号機30a及び30bの各々について、車線31上の第2停止位置の候補34a及び34bを算出する。
車線32についても同様に、第2停止位置算出部51は、複数の信号機30a及び30bの各々について、車線32上の第2停止位置の候補35a及び35bを算出する。
第2停止位置算出部51は、これらの候補34a及び34bのいずれかを、車線31上の第2停止位置として選択する。また、第2停止位置算出部51は、候補35a及び35bのいずれかを、車線32上の第2停止位置として選択する。
【0042】
図6Cを参照する。例えば第2停止位置算出部51は、候補34a及び34bのうち第1停止位置33により近い候補34bを、車線31上の第2停止位置として選択してよい。例えば第2停止位置算出部51は、候補35a及び35bのうち第1停止位置33により近い候補35aを、車線32上の第2停止位置として選択してよい。
【0043】
このように第1停止位置33により近い候補を選択することにより、第2停止位置に自車両1を停止させた場合の違和感を軽減できる。
第2停止位置算出部51は、候補34a及び34bのうち第1停止位置33により遠い候補34aを、第2停止位置として選択してもよい。この位置では、信号機30a及び30bの両方をカメラ20で認識できるので、信号機の現示の認識精度が向上する。
【0044】
図3を参照する。目標停止位置設定部52は、信号機30の現示が「停止」を示す場合に自車両1を停止させる目標停止位置を設定する。
図7Aを参照する。第1停止位置33においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できないと第2停止位置算出部51が判定した場合に、目標停止位置設定部52は、第2停止位置34を目標停止位置に設定する。
【0045】
図7Bを参照する。第1停止位置33においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できると第2停止位置算出部51が判定した場合に、目標停止位置設定部52は、第1停止位置33を目標停止位置に設定する。
これにより、目標停止位置設定部52は、第1停止位置33及び第2停止位置34のうち、信号機30からより遠い一方の停止位置を目標停止位置として設定する。
【0046】
図3を参照する。自車両経路生成部43は、物体センサ11による自車両1の周囲の物体の検出結果と、車両センサ12からの車両信号とに基づいて、自車両1の走行車線に沿って他車両と衝突せずに交通規則に従って走行するように、自車両1の目標走行軌道と速度プロファイルを生成する。
自車両1の前方の信号機30の現示が停止を示すと信号認識部41が判定した場合、自車両経路生成部43は、停止位置設定部42により設定された目標停止位置に自車両1を停止させる目標走行軌道と速度プロファイルを生成する。
【0047】
車両制御部44は、自車両経路生成部43が生成した速度プロファイルに従う速度で自車両1が目標走行軌道を走行するようにアクチュエータ19を駆動する。
この結果、第1停止位置33においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定でき、且つ信号機30の現示が停止を示す場合、車両制御部44は、第1停止位置33に自車両1が停止するように自車両1の走行を制御する。
一方で、第1停止位置33においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定できず、且つ信号機30の現示が停止を示す場合、車両制御部44は、第2停止位置34に自車両1が停止するように自車両1の走行を制御する。
【0048】
(動作)
次に、図8を参照して実施形態の車両制御方法の一例を説明する。
ステップS1において地図取得部40は、自車両1が走行する道路の地図情報を取得する。
ステップS2において第1停止位置決定部50は、自車両1の前方の信号機の現示に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定する。
【0049】
ステップS3において第2停止位置算出部51は、第1停止位置に自車両1が位置する場合にカメラ20による撮像画像から信号機の現示を判定できるか否かを判定する。信号機の現示を判定できる場合(ステップS3:Y)に処理はステップS4に進む。信号機の現示を判定できない場合(ステップS3:N)に処理はステップS5に進む。
ステップS4において目標停止位置設定部52は、第1停止位置を目標停止位置に設定する。その後に処理はステップS7に進む。
【0050】
ステップS5において第2停止位置算出部51は、カメラ20による撮像画像から信号機の現示を判定可能な車線上の領域で信号機に最も近い位置を第2停止位置として算出する。
ステップS6において目標停止位置設定部52は、第2停止位置を目標停止位置に設定する。その後に処理はステップS7に進む。
【0051】
ステップS7において信号認識部41は、カメラ20による撮像画像を解析して信号機を認識して、その現示を判定する。
ステップS8において自車両経路生成部43は、現示が停止を指示するか否かを判定する。現示が停止を指示する場合(ステップS8:Y)に処理はステップS9に進む。現示が停止を指示しない場合(ステップS8:N)に処理はステップS10に進む。
【0052】
ステップS9において自車両経路生成部43は、目標停止位置設定部52により設定された目標停止位置に自車両1を停止させる目標走行軌道と速度プロファイルを生成する。
車両制御部44は、自車両経路生成部43が生成した速度プロファイルに従う速度で自車両1が目標走行軌道を走行するようにアクチュエータ19を駆動する。これにより、自車両1は目標停止位置に停止するように制御される。その後に処理は終了する。
【0053】
ステップS10において自車両経路生成部43は、信号機を通過して、走行車線に沿って自車両1を走行させる目標走行軌道と速度プロファイルを生成する。
車両制御部44は、自車両経路生成部43が生成した速度プロファイルに従う速度で自車両1が目標走行軌道を走行するようにアクチュエータ19を駆動する。これにより、自車両1は、信号機を通過してナビゲーションシステム17が設定した走行経路に沿って走行するように制御される。その後に処理は終了する。
【0054】
(実施形態の効果)
(1)第1停止位置決定部50は、信号機の設置位置の情報と信号機が設けられた道路の情報とを少なくとも含む地図情報に基づいて、信号機により規制される車線において信号機に応じて車両を停止すべき交通規則上の第1停止位置を決定する。第2停止位置算出部51は、自車両1に搭載されたカメラ20の光学情報及び設置情報と地図情報とに基づいて、カメラ20による撮像画像から信号機の現示を判定可能な車線上の領域で信号機に最も近い位置を第2停止位置として算出する。目標停止位置設定部52は、第1停止位置及び第2停止位置のうち信号機から遠い一方を目標停止位置として設定する。自車両経路生成部43は、撮像画像から信号機の現示を判定する。自車両経路生成部43と車両制御部44は、信号機の現示が停止を示す場合に目標停止位置に停止するように自車両1を制御する。
【0055】
これにより、交通規則で定められた第1停止位置においてカメラ20による撮像画像から信号機30の現示を判定可能である場合には、第1停止位置に自車両1を停止させることができる。一方で、第1停止位置においてカメラ20による撮像画像から信号機の現示を判定できない場合には、カメラ20による撮像画像から信号機の現示を判定できる第2停止位置に自車両1を停止させることができる。
この結果、カメラ20の撮像画像による信号機の認識結果に基づく自動運転において、自車両1に搭載したカメラ20の撮像画像から信号機の現示を判定できない停止位置に自車両1を停止させるのを抑制できる。
【0056】
(2)第2停止位置算出部51は、第1停止位置で撮像画像から信号機の現示が判定できるか否かを判定する。第1停止位置で信号機の現示を判定できない場合にのみ、第2停止位置算出部51は第2停止位置を算出する。
これにより、第1停止位置で信号機の現示を判定できる場合には第2停止位置の算出を省略できるので、コントローラ18の処理負荷を軽減できる。
【0057】
(3)第1停止位置決定部50は、信号機により規制される複数の車線の各々について、第1停止位置を決定する。第2停止位置算出部51は、信号機により規制される複数の車線の各々について第2停止位置を算出する。目標停止位置設定部52は、信号機により規制される複数の車線の各々について目標停止位置を設定する。
このように自車両1の走行車線だけでなく、同じ信号機により規制される他の車線(例えば隣接車線など)についても目標停止位置を設定することにより、車線変更を行っても、信号機の現示を判定できない停止位置に自車両1を停止させるのを抑制できる。
【0058】
(4)第2停止位置算出部51は、車線を規制する複数の信号機の各々について、第2停止位置の候補を算出し、第2停止位置の候補の中から第2停止位置を選択する。複数の信号機のいずれかの現示を判定できれば足りるので、自車両1の走行制御における選択肢を増やすことができる。
【0059】
(5)第2停止位置算出部51は、第2停止位置の候補のうち第1停止位置に最も近いものを第2停止位置として選択する。これにより、交通規則で定められた第1停止位置以外の第2停止位置に自車両1を停止させた場合の違和感を軽減できる。
【0060】
(6)地図情報は信号機に対応する停止線の位置情報をさらに含み、第1停止位置決定部50は、停止線位置情報に基づいて第1停止位置を決定する。地図情報が信号機に対応する停止線の位置情報を含まない場合に、第1停止位置決定部50は、車線と交差する地物と車線との交差位置に基づいて第1停止位置を決定する。
これにより、交通規則にしたがって第1停止位置を決定することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…自車両、10…車両制御装置、11…物体センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…通信装置、17…ナビゲーションシステム、18…コントローラ、19…アクチュエータ、20…カメラ、21…プロセッサ、22…記憶装置、40…地図取得部、41…信号認識部、42…停止位置設定部、43…自車両経路生成部、44…車両制御部、50…第1停止位置決定部、51…第2停止位置算出部、52…目標停止位置設定部、
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8