(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】光電変換装置、撮像システム及び移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240325BHJP
H04N 25/60 20230101ALI20240325BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240325BHJP
H04N 25/771 20230101ALI20240325BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N25/60
H04N25/70
H04N25/771
(21)【出願番号】P 2019199911
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】関根 寛
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525735(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181582(WO,A1)
【文献】特開2016-136659(JP,A)
【文献】特開2011-239070(JP,A)
【文献】特開2018-113521(JP,A)
【文献】特開2016-040838(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/60
H04N 25/70
H04N 25/771
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に配され、入射光に応じた電荷を各々が生成する第1光電変換部、第2光電変換部及び第3光電変換部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部及び前記第3光電変換部の少なくとも1つから転送された電荷を保持する第1保持部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第1転送部と、
前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第2転送部と、
前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第3転送部と、
前記第1保持部から転送された電荷を受ける入力ノードを含む第1増幅部と、
前記基板に配され、前記第1保持部から前記入力ノードに電荷を転送する第7転送部と、
を有し、
前記基板に対する平面視において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部は、第1方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1保持部は、前記第2光電変換部の光学中心と前記第3光電変換部の光学中心とを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板に配され、入射光に応じた電荷を各々が生成する第1光電変換部、第2光電変換部及び第3光電変換部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部及び前記第3光電変換部の少なくとも1つから転送された電荷を保持する第1保持部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第1転送部と、
前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第2転送部と、
前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第3転送部と、
前記第1保持部から転送された電荷を受ける浮遊拡散領域と、
前記浮遊拡散領域に転送された電荷に応じた信号を出力する第1増幅部と、
を有し、
前記基板に対する平面視において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部は、第1方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1保持部は、前記第2光電変換部の光学中心と前記第3光電変換部の光学中心とを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記第1転送部及び前記第2転送部の各々が前記第1保持部に電荷を転送することにより、前記第1光電変換部及び前記第2光電変換部で生成された電荷が前記第1保持部において加算される第1駆動方式により駆動され得る
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第1転送部、前記第2転送部及び前記第3転送部の各々が前記第1保持部に電荷を転送することにより、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部及び前記第3光電変換部で生成された電荷が前記第1保持部において加算される第2駆動方式により駆動され得る
ことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記基板に配され、電荷を保持する第2保持部及び第3保持部と、
前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第2保持部に電荷を転送する第4転送部と、
前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第3保持部に電荷を転送する第5転送部と、
前記第2保持部から転送された電荷を受ける入力ノードを含む第2増幅部と、
前記第3保持部から転送された電荷を受ける入力ノードを含む第3増幅部と、
を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1転送部が前記第1光電変換部で生成された電荷を前記第1保持部に転送し、前記第4転送部が前記第2光電変換部で生成された電荷を前記第2保持部に転送し、前記第5転送部が前記第3光電変換部で生成された電荷を前記第3保持部に転送する第3駆動方式により駆動され得る
ことを特徴とする請求項
5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1転送部及び前記第2転送部が前記第1保持部に電荷を転送することにより、前記第1光電変換部及び前記第2光電変換部で生成された電荷が前記第1保持部において加算され、前記第5転送部が前記第3保持部に電荷を転送する第4駆動方式により駆動され得る
ことを特徴とする請求項
5又は
6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1保持部に保持され得る電荷の上限は、前記第2保持部又は前記第3保持部に保持され得る電荷の上限よりも大きい
ことを特徴とする請求項
5乃至
7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第1光電変換部、前記第2光電変換部及び前記第3光電変換部の少なくとも1つの近傍に配された、電荷を転送する機能を有しないダミー電極を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第1光電変換部に対応して配された第1カラーフィルタと、
前記第2光電変換部に対応して配された第2カラーフィルタと、
前記第3光電変換部に対応して配された第3カラーフィルタと、
を更に有し、
前記第1カラーフィルタ、前記第2カラーフィルタ及び前記第3カラーフィルタは同一の色を有する
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第1転送部、前記第2転送部及び前記第3転送部が互いに異なる制御信号に基づいて動作する
ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記第2転送部及び前記第3転送部が共通の制御信号に基づいて動作する
ことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第1光電変換部、第2光電変換部及び第3光電変換部の1つに光を導くマイクロレンズをさらに有し、
前記光学中心が、前記マイクロレンズの中心であることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記基板に配され、入射光に応じた電荷を生成する第4光電変換部と、
前記基板に配され、前記第4光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第6転送部と、
を更に有し、
前記平面視において、前記第3光電変換部と前記第4光電変換部とは、前記第1方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第2光電変換部と前記第4光電変換部とは、前記第2方向に沿って隣り合って配されている
ことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記平面視において、前記第1増幅部は、前記第1光電変換部の光学中心と前記第3光電変換部の光学中心とを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
基板と、
前記基板に配され、入射光に応じた電荷を各々が生成する第1光電変換部、第2光電変換部、第3光電変換部及び第4光電変換部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部及び前記第4光電変換部の少なくとも1つから転送された電荷を保持する第1保持部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第1転送部と、
前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第2転送部と、
前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第3転送部と、
前記基板に配され、前記第4光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第4転送部と、
前記第1保持部から転送された電荷を受ける入力ノードを含む第1増幅部と、
前記基板に配され、前記第1保持部から前記入力ノードに電荷を転送する第7転送部と、
を有し、
前記基板に対する平面視において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部は、第1方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第2光電変換部と前記第4光電変換部は、前記第2方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部及び前記第4光電変換部において最近接となる頂点同士によって囲まれる領域に、前記第1保持部の少なくとも一部が配されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項17】
基板と、
前記基板に配され、入射光に応じた電荷を各々が生成する第1光電変換部、第2光電変換部、第3光電変換部及び第4光電変換部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部及び前記第4光電変換部の少なくとも1つから転送された電荷を保持する第1保持部と、
前記基板に配され、前記第1光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第1転送部と、
前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第2転送部と、
前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第3転送部と、
前記基板に配され、前記第4光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第4転送部と、
前記第1保持部から転送された電荷を受ける浮遊拡散領域と、
前記浮遊拡散領域に転送された電荷に応じた信号を出力する第1増幅部と、
を有し、
前記基板に対する平面視において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部は、第1方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第2光電変換部と前記第4光電変換部は、前記第2方向に沿って隣り合って配されており、
前記平面視において、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部及び前記第4光電変換部において最近接となる頂点同士によって囲まれる領域に、前記第1保持部の少なくとも一部が配されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項18】
前記平面視において、前記第1保持部は、前記第1光電変換部の光学中心と前記第4光電変換部の光学中心とを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている
ことを特徴とする請求項
16又は
17に記載の光電変換装置。
【請求項19】
前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って、前記第1増幅部を間に挟むように隣り合って配されている
ことを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項20】
請求項1乃至
19のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項21】
移動体であって、
請求項1乃至
19のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、撮像システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等に用いられる光電変換装置には、低消費電力及び高速読み出しに適したCMOSイメージセンサが広く用いられている。CMOSイメージセンサにおいては、複数の画素の露光タイミングを一致させるグローバル電子シャッタの機能を有するものが提案されている。特許文献1は、グローバル電子シャッタの機能を実現するために、光電変換により生成された電荷を所定の期間保持しておく保持部が設けられている光電変換装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高感度化を実現するため、光電変換装置の複数の画素行の間及び複数の画素列の間で電荷を加算する駆動が行われる場合がある。特許文献1は、このような電荷の加算に対応した光電変換装置に適用され得る具体的なレイアウトを開示していない。したがって、レイアウト設計の適正化により光電変換装置の性能を向上する余地がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、高性能な光電変換装置、撮像システム及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板に配され、入射光に応じた電荷を各々が生成する第1光電変換部、第2光電変換部及び第3光電変換部と、前記基板に配され、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部及び前記第3光電変換部の少なくとも1つから転送された電荷を保持する第1保持部と、前記基板に配され、前記第1光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第1転送部と、前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第2転送部と、前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第3転送部と、前記第1保持部から転送された電荷を受ける入力ノードを含む第1増幅部と、前記基板に配され、前記第1保持部から前記入力ノードに電荷を転送する第7転送部と、を有し、前記基板に対する平面視において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部は、第1方向に沿って隣り合って配されており、前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って隣り合って配されており、前記平面視において、前記第1保持部は、前記第2光電変換部の光学中心と前記第3光電変換部の光学中心とを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されていることを特徴とする光電変換装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別の一観点によれば、基板と、前記基板に配され、入射光に応じた電荷を各々が生成する第1光電変換部、第2光電変換部、第3光電変換部及び第4光電変換部と、前記基板に配され、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部及び前記第4光電変換部の少なくとも1つから転送された電荷を保持する第1保持部と、前記基板に配され、前記第1光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第1転送部と、前記基板に配され、前記第2光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第2転送部と、前記基板に配され、前記第3光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第3転送部と、前記基板に配され、前記第4光電変換部から前記第1保持部に電荷を転送する第4転送部と、前記第1保持部から転送された電荷を受ける入力ノードを含む第1増幅部と、前記基板に配され、前記第1保持部から前記入力ノードに電荷を転送する第7転送部と、を有し、前記基板に対する平面視において、前記第1光電変換部と前記第2光電変換部は、第1方向に沿って隣り合って配されており、前記平面視において、前記第1光電変換部と前記第3光電変換部は、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って隣り合って配されており、前記平面視において、前記第2光電変換部と前記第4光電変換部は、前記第2方向に沿って隣り合って配されており、前記平面視において、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部及び前記第4光電変換部において最近接となる頂点同士によって囲まれる領域に、前記第1保持部の少なくとも一部が配されていることを特徴とする光電変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高性能な光電変換装置、撮像システム及び移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る画素アレイのうちの2行2列分の画素の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る画素の構成を示す等価回路図である。
【
図4】第1実施形態に係る画素レイアウトの例を示す平面模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る制御信号線の配置の例を示す平面模式図である。
【
図6】第2実施形態に係る画素レイアウト及び制御信号線の配置の例を示す平面模式図である。
【
図7】第2実施形態に係る第1転送トランジスタの駆動方法の例を示す表である。
【
図8】第3実施形態に係る画素レイアウト及び制御信号線の配置の例を示す平面模式図である。
【
図9】第3実施形態に係る第1転送トランジスタの駆動方法の例を示す表である。
【
図10】第4実施形態に係るカラーフィルタの配置の例を示す平面模式図である。
【
図11】第5実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図12】第6実施形態に係る撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、複数の図面に渡って同一の要素又は対応する要素には共通の符号が付されており、その説明は省略又は簡略化されることがある。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る光電変換装置の概略構成を表すブロック図である。光電変換装置は、例えば、撮像装置、焦点検出装置、測距装置等であり得るがこれらに限定されるものではない。本実施形態では、光電変換装置は、静止画、動画等の画像を撮影する撮像装置であるものとする。光電変換装置は、画素アレイ110、垂直走査回路120、列増幅回路130、水平走査回路140、出力回路150及び制御回路160を備える。画素アレイ110は、複数の行及び複数の列をなすように配置された複数の画素170を備えている。
【0012】
制御回路160は、垂直走査回路120、列増幅回路130及び水平走査回路140の各部の駆動タイミングを制御する。垂直走査回路120は、画素170に含まれる複数のトランジスタをオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)に制御するための制御信号を供給する。垂直走査回路120は、シフトレジスタ、アドレスデコーダ等の論理回路により構成され得る。画素アレイ110の各列には列信号線180が設けられており、画素170からの信号が列ごとに列信号線180に読み出される。
【0013】
列増幅回路130は、列信号線180に出力された信号の増幅処理、画素170のリセット時の信号及び光電変換時の信号に基づく相関二重サンプリング処理等の処理を行う。水平走査回路140は、列増幅回路130の増幅器に接続されたスイッチをオン又はオフに制御するための制御信号を供給する。これにより、水平走査回路140は、選択した列の信号を出力回路150に出力させる制御を行う。出力回路150は、バッファアンプ、差動増幅器等から構成され、列増幅回路130からの信号を光電変換装置の外部の信号処理部に出力する。なお、列増幅回路130は、偽信号成分の補正などの信号処理を行う信号処理回路等の機能を含んでもよい。また、AD変換回路を更に光電変換装置に設けることにより、光電変換装置がデジタルの信号を出力する構成であってもよい。
【0014】
図2は、本実施形態に係る画素アレイ110のうちの2行2列分の画素の構成を模式的に示すブロック図である。
図3は、本実施形態に係る画素の構成を示す等価回路図である。
図2及び
図3を参照して画素170の構成をより詳細に説明する。
【0015】
図2は、画素アレイ110のうちの連続する2行及び2列に含まれる4つの画素170A、170B、170C、170Dの構成を模式的に示している。画素170Aは、
図2における第1行、第1列に配されている。画素170Bは、
図2における第2行、第1列に配されている。画素170Cは、
図2における第1行、第2列に配されている。画素170Aは、
図2における第2行、第2列に配されている。言い換えると、画素170Aと画素170Bは、Y方向(第1方向)に並んで配されており、画素170Cと画素170DもY方向に並んで配されている。画素170Aと画素170Cは、X方向(第2方向)に並んで配されており、画素170Bと画素170DもX方向に並んで配されている。
【0016】
画素170Aは、第1回路171Aと第2回路172Aを有する。画素170Bは、第1回路171Bと第2回路172Bを有する。画素170Cは、第1回路171Cと第2回路172Cを有する。画素170Dは、第1回路171Dと第2回路172Dを有する。
【0017】
画素170Aの第2回路172Aは、画素170Aの第1回路171Aに加えて、他の画素の第1回路171B、第1回路171C及び第1回路171Dにも接続されている。言い換えると、第2回路172Aは、4つの画素170A、170B、170C及び170Dのいずれの第1回路にも接続されている。また、第2回路172Aは、対応する列の列信号線180に接続されている。これにより、隣接する行及び隣接する列の画素間の信号の加算が可能となる。
【0018】
図3は、画素170Aの構成を示す等価回路図である。画素170Aの回路構成の詳細を説明する。なお、
図2に示されている他の画素の構成は、画素170Aと同様であるため説明を省略する。
【0019】
画素170Aは、第1回路171Aと第2回路172Aを有する。第1回路171Aは、光電変換部PD、4つの第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1D及び排出トランジスタM2を有する。第2回路172Aは、電荷保持部MEM、第2転送トランジスタM3、リセットトランジスタM4、増幅トランジスタM5及び選択トランジスタM6を有する。
【0020】
光電変換部PDは、入射光を光電変換するとともに、光電変換によって生成される電荷を蓄積する。光電変換部PDとしては、例えばフォトダイオードが用いられ得る。以下の説明では光電変換部PDはアノードとカソードを有するフォトダイオードであるものとする。光電変換部PDのアノードは接地電位線に接続されており、カソードは、第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dのソース及び排出トランジスタM2のソースに接続されている。第1転送トランジスタM1Aのドレインは第2転送トランジスタM3のソースに接続されている。第1転送トランジスタM1Aのドレインと第2転送トランジスタM3のソースとの間に寄生する容量は、電荷保持部MEMを構成する。言い換えると、電荷保持部MEMは、第1転送トランジスタM1Aのドレインに接続されている。排出トランジスタM2のドレインは、電位VDDを有する電源電位線に接続されている。
【0021】
また、画素170Aの電荷保持部MEMは、X方向に隣接する画素170Cの第1転送トランジスタM1Dのドレイン及びY方向に隣接する画素170Bの第1転送トランジスタM1Bのドレインにも接続されている。更に、画素170Aの電荷保持部MEMは、2行2列の画素群の対角に位置する画素170Dの第1転送トランジスタM1Cのドレインにも接続されている。
【0022】
第2転送トランジスタM3のドレインは、リセットトランジスタM4のソース及び増幅トランジスタM5のゲートに接続されている。第2転送トランジスタM3のドレイン、リセットトランジスタM4のソース及び増幅トランジスタM5のゲートの接続ノードは、浮遊拡散領域FDである。リセットトランジスタM4のドレインは、電位VDDを有する電源電位線に接続されている。増幅トランジスタM5のソースは、選択トランジスタM6のドレインに接続されている。増幅トランジスタM5のドレインは、電位VDDを有する電源電位線に接続されている。選択トランジスタM6のソースは、列信号線180に接続されている。列信号線180には不図示の電流源が接続されている。
【0023】
画素アレイ110の各行には、X方向に延在して、複数の制御信号線(
図3においては不図示)が配されている。垂直走査回路120は、複数の制御信号線を介して画素170A内の複数のトランジスタのゲートに制御信号を供給する。
【0024】
第1転送トランジスタM1Aが制御信号によりオンに制御されると、光電変換部PDで生成され、蓄積されている電荷は、電荷保持部MEMに転送される。電荷保持部MEMは、光電変換部PDから転送された電荷を保持する。第2転送トランジスタM3が制御信号によりオンに制御されると、電荷保持部MEMに保持された電荷は、浮遊拡散領域FDに転送される。なお、第1転送トランジスタM1B、M1C、M1Dのいずれかが制御信号によりオンに制御されると、光電変換部PDで生成され、蓄積されている電荷は、他の画素の電荷保持部MEMに転送される。
【0025】
リセットトランジスタM4が制御信号によりオンに制御されると、浮遊拡散領域FDの電位はリセットされる。選択トランジスタM6が制御信号によりオンに制御されると、該当行の増幅トランジスタM5から列信号線180に信号が出力される。このとき、増幅トランジスタM5と、列信号線180に接続された電流源は、浮遊拡散領域FDに転送された電荷に応じた信号を出力するソースフォロワ回路を構成することにより、出力部として機能する。また、このとき浮遊拡散領域FDは、電荷保持部MEMから転送された電荷を受けることにより、ソースフォロワ回路の入力ノードとして機能する。排出トランジスタM2が制御信号によりオンに制御されると、光電変換部PDに蓄積されている電荷が排出され、光電変換部PDのカソードの電位がリセットされる。
【0026】
これらの構成により、電荷保持部MEMに電荷が保持されている間に光電変換部PDで電荷が生成され、光電変換部PDに蓄積される構成が実現される。これにより、光電変換装置は、画素アレイ110内の複数の光電変換部PDにおいて電荷蓄積の開始時刻と終了時刻を一致させるグローバル電子シャッタ方式の駆動を行うことができる。グローバル電子シャッタ方式による電荷蓄積の開始は、例えば、画素アレイ110内の複数の排出トランジスタM2を同時にオンからオフに制御して電荷を排出することによって実現することができる。また、グローバル電子シャッタ方式による電荷蓄積の終了は、例えば、画素アレイ110内の複数の第1転送トランジスタM1Aを同時にオフからオンに制御し、再びオフに制御して電荷を転送することによって実現することができる。
【0027】
更に、本実施形態の構成では、グローバル電子シャッタ方式の駆動に加えて、複数の光電変換部PDから1つの電荷保持部MEMに電荷を転送することにより、隣接する行及び隣接する列の画素間の信号を加算することができる。具体的には、画素170A、170Cの第1転送トランジスタM1Aと画素170B、170Dの第1転送トランジスタM1Bとをオンに制御することにより、隣接する2行の画素間で信号を加算することができる。また、画素170A、170Bの第1転送トランジスタM1Aと画素170C、170Dの第1転送トランジスタM1Dとをオンに制御することにより、隣接する2列の画素間で信号を加算することができる。このように、本実施形態では、隣接する行又は隣接する列の2つの画素の光電変換部PDから1つの電荷保持部MEMに電荷を転送することにより、電荷保持部MEMで電荷を加算する列加算又は行加算の駆動が可能である(第1駆動方式)。
【0028】
また、画素170Aの第1転送トランジスタM1A、画素170Bの第1転送トランジスタM1B、画素170Cの第1転送トランジスタM1D及び画素170Dの第1転送トランジスタM1Cをオンに制御することにより、4画素の信号の加算も可能である。このように、本実施形態では、隣接する行及び列の4つの画素の光電変換部PDから1つの電荷保持部MEMに電荷を転送することにより、電荷保持部MEMで電荷を加算する2×2加算の駆動が可能である(第2駆動方式)。
【0029】
更に、画素170A、170B、170C、170Dの各々の第1転送トランジスタM1Aをオンに制御することにより、加算を行わずに信号を出力することもできる。このように、本実施形態では、4つの画素の光電変換部PDから別々の電荷保持部MEMに電荷を転送することにより、加算を行わない非加算の駆動が可能である(第3駆動方式)。
【0030】
また、画素170Aの第1転送トランジスタM1A、画素170Bの第1転送トランジスタM1B及び画素170Cの第1転送トランジスタM1Dをオンに制御することにより、3画素の信号を加算することができる。この場合、画素170Dからの信号は3画素の加算された信号とは別に出力される。3画素分の加算信号と、1画素分の非加算信号と個別に出力することにより、これらの信号を用いてダイナミックレンジを拡張するHDR(High Dynamic Range)処理を行うことができる。このように、本実施形態では、HDR用の2種類の信号を出力する駆動も可能である(第4駆動方式)。なお、HDR用の信号出力方式においては加算信号と非加算信号の出力が可能であればよく、加算信号の画素数は特に限定されない。例えば、2画素分の加算信号を出力してもよい。また、4つの画素のうちどの画素を加算信号用とし、どの画素を非加算信号用とするかは適宜設定可能であり、特に限定されない。以上のように、本実施形態の画素構成は、種々の加算の駆動に対応可能であり、更に、非加算の駆動にも対応可能である。
【0031】
なお、複数の電荷保持部MEMから1つの浮遊拡散領域FDに電荷を転送する構成であっても同様に信号の加算を行うことは可能であるが、本実施形態の電荷保持部MEMにおいて電荷を加算する構成の方がノイズを少なくすることができる利点がある。
【0032】
浮遊拡散領域FDで電荷を加算する構成では、浮遊拡散領域FDに複数の転送トランジスタが接続される。転送トランジスタと浮遊拡散領域FDとが接する領域が長くなるため、寄生容量によって浮遊拡散領域FDの容量が大きくなる。これにより、ダークランダムノイズが大きくなる。これに対し、本実施形態の電荷保持部MEMにおいて電荷を加算する構成では、浮遊拡散領域FDに接続される転送トランジスタの個数は1つであるため、寄生容量が少なくなり、上述の要因によるダークランダムノイズを少なくすることができる。したがって、本実施形態の電荷保持部MEMで電荷を加算する構成では、浮遊拡散領域FDで電荷を加算する構成に比べてノイズを少なくすることができる。
【0033】
図4は、本実施形態に係る画素レイアウトの例を示す平面模式図である。
図4には、画素アレイ110のうちの連続する2行及び2列に含まれる4つの画素170A、170B、170C、170Dの平面模式図が示されている。
図4には、
図3に示されている光電変換部PD、第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1D、排出トランジスタM2、電荷保持部MEM及び第2転送トランジスタM3が模式的に図示されている。
【0034】
また、
図4には、画素170A、170B、170C、170Dの光電変換部PDにそれぞれ対応して設けられたマイクロレンズMLが図示されている。マイクロレンズMLは、その光軸が光電変換部PDの中心と平面視において重複するように設けられる。言い換えると、複数のマイクロレンズMLは、画素170A、170B、170C、170Dの光電変換部PDの光学中心CA、CB、CD、CDをそれぞれ画定する。
【0035】
また、
図4には、読み出し回路部173が図示されている。読み出し回路部173は、
図3に示されているリセットトランジスタM4、増幅トランジスタM5及び選択トランジスタM6を含む。
図4に示されている4つの読み出し回路部173(第1増幅部、第2増幅部、第3増幅部、第4増幅部)は、画素170A、170B、170C、170Dに対応するように設けられている。
【0036】
画素170Aの光電変換部PD(第1光電変換部)と画素170Aの電荷保持部MEM(第1保持部)との間には、画素170Aの第1転送トランジスタM1A(第1転送部)が配されている。画素170Bの光電変換部PD(第2光電変換部)と画素170Aの電荷保持部MEMとの間には、画素170Bの第1転送トランジスタM1B(第2転送部)が配されている。画素170Cの光電変換部PD(第3光電変換部)と画素170Aの電荷保持部MEMとの間には、画素170Cの第1転送トランジスタM1D(第3転送部)が配されている。画素170Dの光電変換部PD(第4光電変換部)と画素170Aの電荷保持部MEMとの間には、画素170Dの第1転送トランジスタM1C(第6転送部)が配されている。これにより、画素170Aの電荷保持部MEMには、4つの画素170A、170B、170C、170Dの光電変換部PDのうちの1つ又は2以上から電荷が転送され得る。これにより、複数の光電変換部PDで生成された電荷を電荷保持部MEMで加算して出力することができる。
【0037】
また、画素170Bの光電変換部PDと画素170Bの電荷保持部MEM(第2保持部)との間には、画素170Bの第1転送トランジスタM1A(第4転送部)が配されている。画素170Cの光電変換部PDと画素170Cの電荷保持部MEM(第3保持部)との間には、画素170Cの第1転送トランジスタM1A(第5転送部)が配されている。画素170Dの光電変換部PDと画素170Dの電荷保持部MEMとの間には、画素170Dの第1転送トランジスタM1Aが配されている。このように、画素170B、170C、170Dの光電変換部PDは、対応する画素の電荷保持部MEMに電荷を転送することも可能である。これにより、複数の光電変換部PDで生成された電荷をそれぞれ加算せずに出力することができる。
【0038】
電荷保持部MEMは、光学中心CAと光学中心CDを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている。また、電荷保持部MEMは、光学中心CBと光学中心CCを結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている。言い換えると、画素170Aの電荷保持部MEMは、2行2列の画素170A、170B、170C、170Dのうちの対角に位置する2つの画素の光電変換部PDの光学中心を結ぶ直線と少なくとも一部が重複する位置に配されている。光電変換部PDの光学中心は、電荷を蓄積する領域として形成された半導体領域の中心位置とみなすことができる。つまり、蓄積する電荷が電子であれば、光電変換部PDの光学中心は電子を蓄積するN型の半導体領域の中心位置とみなすことができる。また、別の見方をすれば、光電変換部PDの光学中心は、実質的に、光電変換部PDに光を導くマイクロレンズMLの中心とみなすこともできる。なお、撮像面の像高が大きくなるにしたがって(つまり画素が中心部から周辺部に向かうにつれて)、マイクロレンズMLの中心と光電変換部PDの中心とをずらす場合がある。このような形態では、撮像面(画素アレイ110)の中心位置における画素170のマイクロレンズMLの中心位置を、その他の各画素170に当てはめることができる。
【0039】
また、別の観点では、画素170A、画素170B、画素170C、画素170Dの各々のPDにおいて最近接となる頂点同士によって囲まれる領域に、電荷保持部MEMの少なくとも一部が配されている。この4つのPDにおいて最近接となる頂点(P1、P2、P3、P4)同士によって囲まれる領域は、
図4において、領域Gとして記載している。この頂点の位置は、例えば、PDに隣接して設けられた素子分離部(STI、DTI、LOCOS法などの各種の方法によって形成される)の位置とすることができる。
【0040】
このように電荷保持部MEMと光電変換部PDとを配置することにより、電荷の転送経路の対称性が高くなり、電荷の転送経路が非対称であることに起因する特性の劣化等を低減することができる。また、光電変換部PDの光学中心から離れた位置に電荷保持部MEMを配することができるため、入射光が電荷保持部MEMの近傍に入射することに起因するノイズを低減することができる。したがって、本実施形態によれば、上述のように電荷保持部MEMと光電変換部PDとを配置することにより、高性能な光電変換装置が提供される。
【0041】
なお、画素170Aの電荷保持部MEMに保持され得る電荷の上限が、画素170B、170C又は170Dの電荷保持部MEMに保持され得る電荷の上限よりも大きくなるように光電変換装置のレイアウトが設計されていてもよい。電荷の加算が行われる電荷保持部MEMは電荷の加算が行われない電荷保持部MEMよりも多くの電荷が転送される。そのため、電荷の加算が行われる画素170Aの電荷保持部MEMに保持され得る電荷の上限を大きくすることにより、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0042】
図5(a)及び
図5(b)は、本実施形態に係る制御信号線の配置の例を示す平面模式図である。
図5(a)は、光電変換部PD及び各トランジスタが配されている半導体基板の上方に位置する第1配線層に配されている制御信号線群174の配置例を示す図である。
図5(b)は、第1配線層の上方に位置する第2配線層に配されている制御信号線群175の配置例を示す図である。制御信号線群174、175は、X方向に延在する複数の制御信号線を含む。本実施形態の光電変換装置は、半導体基板に対して第1配線層及び第2配線層が配されている側から光が入射される表面照射型であるため、平面視において、光電変換部PDを避けるように制御信号線群174、175が配されている。しかしながら、本発明は半導体基板側から光が入射される裏面照射型にも適用可能である。その場合には、制御信号線群174、175が、平面視において光電変換部PDを避けるように配されていることは必須ではない。
【0043】
図5(a)及び
図5(b)に示されている2行2列の画素に制御信号を供給する制御信号線の数は少なくとも23本である。本実施形態では、第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dは独立に制御可能であるため、これらの制御用の制御信号線は16本である。排出トランジスタM2用の制御信号線は1本であり、第2転送トランジスタM3用の制御信号線、リセットトランジスタM4用の制御信号線及び選択トランジスタM6用の制御信号線はいずれも2本ずつである。
【0044】
[第2実施形態]
本実施形態の光電変換装置は、複数の第1転送トランジスタの制御信号の一部を共通化することにより制御信号線の本数を削減している点が第1実施形態と相違する。その他の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0045】
図6(a)は、本実施形態に係る画素レイアウトの例を示す平面模式図である。
図6(a)に示されている各要素の物理的な配置は第1実施形態と同様である。
図6(b)は、光電変換部PD及び各トランジスタが配されている半導体基板の上方に位置する第1配線層に配されている制御信号線群176の配置例を示す図である。なお、本実施形態においては、第2配線層の配置例は図示していないが、第1実施形態と同様にいくつかの制御信号線が第2配線層にも配され得る。
【0046】
図6(a)の第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dを示すブロックには、GS0からGS9までの10種類の符号が付されている。これらの符号は、各トランジスタのゲートに入力される制御信号を示している。第1実施形態では、4つの画素の各々に設けられた4つの第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dは独立に制御可能であるため、制御信号の種類は16種類である。これに対し、本実施形態では、いくつかのトランジスタに共通の制御信号GS0が入力されるため、制御信号の種類は10種類に削減されている。本実施形態では第1実施形態に比べて制御信号の種類を6個削減できるため、制御信号線の必要数は23本から17本に削減される。これにより、光電変換部PDの上方の開口面積を大きくすることができ、感度を向上させることができる。あるいは、光電変換部PDの上方の開口面積を十分に確保しつつ光電変換部PDの間隔を小さくする設計を採用することが可能になり、画素ピッチを小さくすることができる。
【0047】
図7は、本実施形態に係る第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dの駆動方法の例を示す表である。
図7には、「非加算」、「行加算」、「列加算」、「2×2加算」及び「3画素加算」の各モードに対応する制御信号のレベルと読み出される信号の種類が示されている。各トランジスタは、対応する制御信号がハイレベル(HIGH)のときにオンになり、ローレベル(LOW)のときにオフになるものとする。「読み出される信号」の欄の「A」、「B」、「C」、「D」は、それぞれ、画素170A、170B、170C、170Dの光電変換部PDで生成された電荷に基づく信号に対応する。また、「A+B」は、画素170Aと画素170Bの加算信号に対応する。他の表記も同様である。
【0048】
「非加算」モードにおいては、制御信号GS1、GS3、GS7、GS9がハイレベル、その他の制御信号がローレベルとなる。このとき、画素170A、170B、170C、170Dの各々の第1転送トランジスタM1Aがオンに制御される。この場合には、各画素の光電変換部PDで生成された電荷は異なる電荷保持部MEMに転送されるため、加算が行われずに信号が出力される。
【0049】
「行加算」モードにおいては、制御信号GS1、GS3、GS4、GS6がハイレベル、その他の制御信号がローレベルとなる。このとき、画素170A、170Bの第1転送トランジスタM1Aと画素170C、170Dの第1転送トランジスタM1Dとがオンに制御される。この場合には、隣接する2列の画素の光電変換部PDで生成された電荷が同じ電荷保持部MEMに転送されるため、隣接する2列の画素間で信号が加算される。
【0050】
「列加算」モードにおいては、制御信号GS1、GS2、GS7、GS8がハイレベル、その他の制御信号がローレベルとなる。このとき、画素170A、170Cの第1転送トランジスタM1Aと画素170B、170Dの第1転送トランジスタM1Bとがオンに制御される。この場合には、隣接する2行の画素の光電変換部PDで生成された電荷が同じ電荷保持部MEMに転送されるため、隣接する2行の画素間で信号が加算される。
【0051】
「2×2加算」モードにおいては、制御信号GS1、GS2、GS4、GS5がハイレベル、その他の制御信号がローレベルとなる。このとき、画素170Aの第1転送トランジスタM1A、画素170Bの第1転送トランジスタM1B、画素170Cの第1転送トランジスタM1D及び画素170Dの第1転送トランジスタM1Cがオンに制御される。この場合には、隣接する2行、2列の4画素の光電変換部PDで生成された電荷が同じ電荷保持部MEMに転送されるため、隣接する2行2列の4画素間で信号が加算される。
【0052】
「3画素加算」モードにおいては、制御信号GS1、GS2、GS4、GS8がハイレベル、その他の制御信号がローレベルとなる。このとき、画素170Aの第1転送トランジスタM1A、画素170Bの第1転送トランジスタM1B及び画素170Cの第1転送トランジスタM1Dがオンに制御される。また、画素170Dの第1転送トランジスタM1Bがオンに制御される。この場合には、隣接する2行、2列の4画素のうちの3つの光電変換部PDで生成された電荷が同じ電荷保持部MEMに転送され、3画素間で信号が加算される。また、残りの1つの光電変換部PDで生成された電荷は加算されずに別の電荷保持部MEMに転送される。3画素分の加算信号と、1画素分の非加算信号と個別に出力することにより、これらの信号を用いてダイナミックレンジを拡張するHDR処理を行うことができる。
【0053】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に高性能な光電変換装置が提供される。また、本実施形態においては、第1実施形態と同様に種々の加算方式に対応した信号の出力を可能にしつつ、制御信号線の本数を削減することができ、感度向上又は画素ピッチ縮小の効果を得ることができる。
【0054】
なお、
図7に示されているように、制御信号GS0はどのモードにおいても常にローレベルであり、対応する第1転送トランジスタは常にオフである。したがって、オフの状態を実現可能であれば、制御信号GS0を伝送する制御信号線は省略されてもよい。また、制御信号GS0に対応する第1転送トランジスタを省略して光電変換部PDと電荷保持部MEMの間が絶縁された状態にするように画素構成を変形してもよい。また、制御信号GS0に対応する第1転送トランジスタのゲート電極を模して、電荷を転送する機能を有しないダミー電極を光電変換部PDと電荷保持部MEMの近傍に配置するように画素構成を変形してもよい。第1転送トランジスタを省略する構成では、光電変換部PDの周囲の電極の配置が非対称になるため、電極の非対称性が入射光の光電変換特性に影響を与える可能性がある。これに対し、ダミー電極を設ける構成では、電極の配置を対称にすることができるため、第1転送トランジスタを設けないことによる特性への影響を少なくすることができる。
【0055】
[第3実施形態]
本実施形態の光電変換装置は、複数の第1転送トランジスタの制御信号を更に共通化することにより制御信号線の本数を更に削減している点が第2実施形態と相違する。その他の構成は第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0056】
図8(a)は、本実施形態に係る画素レイアウトの例を示す平面模式図である。
図8(a)に示されている各要素の物理的な配置は第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
図8(b)は、光電変換部PD及び各トランジスタが配されている半導体基板の上方に位置する第1配線層に配されている制御信号線群177の配置例を示す図である。なお、本実施形態においては、第2配線層の配置例は図示していないが、第1実施形態と同様にいくつかの制御信号線が第2配線層にも配され得る。
【0057】
図8(a)の第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dを示すブロックには、GS0からGS3までの3種類の符号が付されている。本実施形態では、制御信号の種類は4種類に削減されている。本実施形態では第1実施形態に比べて制御信号の種類を12個削減できるため、制御信号線の必要数は23本から11本に削減される。これにより、光電変換部PDの上方の開口面積を大きくすることができ、感度を向上させることができる。あるいは、光電変換部PDの上方の開口面積を十分に確保しつつ光電変換部PDの間隔を小さくする設計を採用することが可能になり、画素ピッチを小さくすることができる。
【0058】
図9は、本実施形態に係る第1転送トランジスタM1A、M1B、M1C、M1Dの駆動方法の例を示す表である。本実施形態では、画素170Aの電荷保持部MEMに接続される第1転送トランジスタに供給される制御信号の種類を2種類に削減したことにより、対応可能なモードが「非加算」モードと「2×2加算」モードに制限される。各モードの具体的な動作については第2実施形態と概ね同様であるため説明を省略する。
【0059】
本実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様に高性能な光電変換装置が提供される。また、本実施形態においては、第2実施形態と比べてモードの種類が制限されるものの、第2実施形態の構成よりも更に制御信号線の本数を削減することができ、感度向上又は画素ピッチ縮小の効果を更に高めることができる。
【0060】
[第4実施形態]
本実施形態の光電変換装置は、第1乃至第3実施形態のいずれかの光電変換装置にカラーフィルタが設けられたものである。その他の構成は第1乃至第3実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
図10は、本実施形態に係るカラーフィルタの配置の例を示す平面模式図である。本実施形態の光電変換装置は、各々の画素の上方にカラーフィルタを有する。カラーフィルタは、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のいずれかの色を有する。カラーフィルタの色の配列は、
図10に示されているように、4つの画素170A、170B、170C、170Dを同じ色の1単位としたベイヤー配列である。画素170、A170B、170C、170Dの光電変換部PDに対応するカラーフィルタをそれぞれ第1カラーフィルタ、第2カラーフィルタ、第3カラーフィルタ、第4カラーフィルタとすると、第1乃至第4カラーフィルタはいずれも同一の色を有する。すなわち、加算される4つの画素170A、170B、170C、170Dはいずれも同じ色の画素である。
【0062】
このような配列とすることで、「非加算」モード、「2×2加算」モード等の種々のモードのいずれにおいても同じ色の画素の信号が加算され、異なる色の画素の信号が加算されないようにすることができる。したがって、本実施形態の光電変換装置は、いずれのモードにおいてもカラー画像を取得することができる。
【0063】
本実施形態によれば、第1実施形態乃至第3実施形態と同様に高性能な光電変換装置が提供される。また、本実施形態においては、カラー画像を取得することができる光電変換装置が提供される。
【0064】
[第5実施形態]
次に、上述の実施形態による光電変換装置を適用した装置の例を説明する。
図11は、本実施形態による撮像システム500の構成を示すブロック図である。
図11に示す撮像装置10は、上述の第1乃至第4実施形態で述べた光電変換装置のいずれかである。撮像装置10が適用可能な撮像システム500としては、例えば、デジタルカメラ、デジタルカムコーダー、監視カメラなどが挙げられる。
図11に、上述の実施形態に記載の光電変換装置の一例である撮像装置10を適用したデジタルカメラの構成例を示す。
【0065】
図11に例示した撮像システム500は、撮像装置10、被写体の光学像を撮像装置10に結像させるレンズ502、レンズ502を通過する光量を可変にするための絞り504、レンズ502の保護のためのバリア506を有する。レンズ502及び絞り504は、撮像装置10に光を集光する光学系である。
【0066】
撮像システム500は、また、撮像装置10から出力される出力信号の処理を行う信号処理部508を有する。信号処理部508は、必要に応じて入力信号に対して各種の補正、圧縮を行って出力する信号処理の動作を行う。
【0067】
撮像システム500は、更に、画像データを一時的に記憶するためのバッファメモリ部510、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)512を有する。更に撮像システム500は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体514、記録媒体514に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)516を有する。なお、記録媒体514は、撮像システム500に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0068】
更に撮像システム500は、各種演算を行うとともにデジタルカメラ全体を制御する全体制御・演算部518、撮像装置10と信号処理部508に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部520を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム500は、少なくとも撮像装置10と、撮像装置10から出力された出力信号を処理する信号処理部508とを有すればよい。全体制御・演算部518及びタイミング発生部520は、上述の実施形態における制御信号の生成、参照電圧の生成等の光電変換装置の制御に関する機能の一部又は全部を実行するように構成してもよい。
【0069】
撮像装置10は、画像用信号を信号処理部508に出力する。信号処理部508は、撮像装置10から出力される画像用信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。また、信号処理部508は、画像用信号を用いて、画像を生成する。
【0070】
以上のように、本実施形態の撮像システム500は、第1乃至第4実施形態による撮像装置10を含む。これにより、より高品質な撮像が可能な撮像システム500を実現することができる。
【0071】
[第6実施形態]
図12(a)及び
図12(b)は、本実施形態による撮像システム600及び移動体の構成を示す図である。
図12(a)は、車載カメラに関する撮像システム600の一例を示したものである。撮像システム600は、上述の第1乃至第4実施形態のいずれかに記載の光電変換装置の一例である撮像装置10を有する。撮像システム600は、撮像装置10により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部612と、撮像システム600により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差算出部614を有する。また、撮像システム600は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離計測部616と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部618と、を有する。ここで、視差算出部614及び距離計測部616は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部618はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0072】
撮像システム600は、車両情報取得装置620と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム600には、衝突判定部618での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU630が接続されている。すなわち、制御ECU630は、距離情報に基づいて移動体を制御する移動体制御手段の一例である。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置640とも接続されている。例えば、衝突判定部618の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU630はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置640は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与える等によりユーザに警告を行う。
【0073】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム600で撮像する。
図12(b)に、車両前方(撮像範囲650)を撮像する場合の撮像システム600の構成を示す。車両情報取得装置620は、撮像システム600を動作させ撮像を実行させるように指示を送る。第1乃至第4実施形態による撮像装置10を含む本実施形態の撮像システム600は、測距の精度をより向上させることができる。
【0074】
以上の説明では、他の車両と衝突しないように制御する例を述べたが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、産業用ロボット等の移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0075】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。
【0076】
また、上述の実施形態の説明において、光電変換装置を駆動するための電子シャッタの方式は、グローバル電子シャッタ方式であることを前提としているが、これに限定されず、例えば、ローリングシャッタ方式であってもよい。
【0077】
また、上述の実施形態の説明においては、2行2列の4画素分の画素について、レイアウト、駆動方法等を説明したが、これは一例であり、加算される画素の個数は適宜変更可能である。2つの行の間の信号の加算及び2つの列の間の信号の加算の両方を実現するためには加算される画素の個数は少なくとも3つあればよい。また、加算される画素の個数が5つ以上であってもよい。
【0078】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0079】
173 読み出し回路部
CA、CB、CC、CD 光学中心
FD 浮遊拡散領域
M1A、M1B、M1C、M1D 第1転送トランジスタ
MEM 電荷保持部
PD 光電変換部