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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】発泡体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240325BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240325BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240325BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20240325BHJP
   A43B 13/12 20060101ALI20240325BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B32B5/18
B32B27/32 Z
A43B13/04 A
A43B13/12 A
A43B17/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019200086
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070792
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池永 成伸
(72)【発明者】
【氏名】野田 公憲
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達弥
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162386(JP,A)
【文献】特表2019-515816(JP,A)
【文献】特表2018-521170(JP,A)
【文献】特開2018-172673(JP,A)
【文献】特開2016-056337(JP,A)
【文献】特開2010-214720(JP,A)
【文献】特開平07-173317(JP,A)
【文献】特開昭60-187543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B32B 1/00-43/00
A43B 13/04
A43B 13/12
A43B 17/00
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(a1)~(a3)を満たすエチレン系三元共重合体(A)を含有する発泡体。
(a1)エチレン由来の構成単位と、プロピレンまたは1-ブテン由来の構成単位、および炭素数5~20のα-オレフィン由来の構成単位を含有し、エチレンに由来する構成単位(i)を74~92モル%、プロピレンまたは1-ブテンに由来する構造単位(ii)を5~16モル%、かつ、炭素数5~20のα-オレフィンに由来する構造単位(iii)を3~10モル%含(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする)、前記炭素数5~20のα-オレフィンが1-オクテンである。
(a2)ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定したMFRが0.05~20g/10分の範囲にある。
(a3)密度が850~900kg/mの範囲にある。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項3】
請求項1に記載の発泡体または請求項に記載の積層体を有する履物。
【請求項4】
請求項1に記載の発泡体または請求項に記載の積層体を有する、履物のミッドソール、インナーソールまたはソールから選ばれる履物用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系三元共重合体を含有する発泡体および当該発泡体を有する履物、履物用部品などの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン共重合体やエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体は、主鎖に不飽和結合を持たないため、共役ジエン系のゴムと比較して耐候性、耐熱性および耐オゾン性に優れる。これらの共重合体ゴムを含むゴム組成物、該組成物の架橋体、および該組成物の発泡体は、前記性質を利用し、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建材用品およびゴム引布、履物等のゴム製品等に広く用いられている。
【0003】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体からなる発泡体の物性を改良する方法として、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体にポリオレフィン樹脂を配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
しかしながら、発泡体の用途によっては、さらに反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが小さい発泡体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-195227号公報
【文献】特開2002-256095号公報
【文献】国際公開第2009/072553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが小さい、エチレン系共重合体を含有する発泡体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の要件(a1)~(a3)を満たすエチレン系三元共重合体(A)を含有する発泡体に係る。
(a1)エチレン由来の構成単位と、プロピレンまたは1-ブテン由来の構成単位、および炭素数5~20のα-オレフィン由来の構成単位を含有し、エチレンに由来する構成単位(i)を74~92モル%、プロピレンまたは1-ブテンに由来する構造単位(ii)を5~16モル%、かつ、炭素数5~20のα-オレフィンに由来する構造単位(iii)を3~10モル%含む(ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする)
(a2)ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定したMFRが0.05~20g/10分の範囲にある。
(a3)密度が850~900kg/mの範囲にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエチレン系三元共重合体(A)を含有する発泡体は、反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが小さいので、特に、履物、履物のミッドソール、インナーソールまたはソールなどの履物用部品としても好適に使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<エチレンと、プロピレンまたは1―ブテン、及び炭素数5~20のα―オレフィンとのエチレン系三元共重合体(A)>
本発明の発泡体を形成するエチレンと、プロピレンまたは1―ブテン、及び炭素数5~20のα―オレフィンとのエチレン系三元共重合体(A)〔以下、「エチレン系三元共重合体(A)」と略称する場合がある。〕は、下記の要件(a1)~(a3)を満たすエチレン系三元共重合体である。
【0010】
(a1)エチレンに由来する構成単位(i)を74~92モル%、好ましくは76~90モル%、プロピレンまたは1-ブテンに由来する構造単位(ii)を5~16モル%、好ましくは7~16モル%、より好ましくは7~15モル%、さらに好ましくは7~14.5モル%、且つ、炭素数5以上20以下のα-オレフィンに由来する構造単位(iii)を3~10モル%、好ましくは3~8モル%、より好ましくは4~8モル%、さらに好ましくは5~8モル%、含む〔ただし、構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%とする〕。
【0011】
本発明に係るエチレン系三元共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位、プロピレンまたは1-ブテンに由来する構造単位および炭素数5以上20以下のα-オレフィンに由来する構造単位を上記範囲で含むことにより、反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが低い発泡体を得ることができる。
【0012】
本発明に係るエチレン系三元共重合体(A)を構成する炭素数5以上20以下のα-オレフィンとしては、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらの中でも1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましく、特に1-オクテンが好ましい。
【0013】
炭素数5以上20以下のα-オレフィンとして1-オクテンを含むことにより、より反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが低い発泡体を得ることができる。
本発明に係るエチレン系三元共重合体(A)を構成するα-オレフィンの種類は、エチレン系三元共重合体(A)を製造する際のα-オレフィンの種類により明確である。α-オレフィンの含有量は、実施例に記載の方法を用いて定量できる。
【0014】
(a2)メルトフローレート(MFR)
本発明に係るエチレン系三元共重合体(A)は、190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR、ASTM D1238)が、0.05~20g/10分、好ましくは0.1~10g/10分、さらに好ましくは0.5~5g/10分の範囲にある。MFRが上記範囲にあるエチレン系三元共重合体(A)を用いることで、成形性が良好で、反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが低い発泡体を得ることができる。
【0015】
(a3)密度
本発明に係るエチレン系三元共重合体(A)の密度は850~900kg/mの範囲にあり、好ましくは密度の下限が855kg/m3である。密度の上限は、好ましくは895kg/m3、より好ましくは890kg/m3である。エチレン系三元共重合体(A)の密度は、ASTM D1505により23℃で測定される値である。密度の値は、エチレン系三元共重合体(A)中のコモノマーの種類や含有率を選択することにより、調整することが可能である。
密度が前記範囲にあるエチレン系三元共重合体(A)を用いることで、より反発弾性率が高く、圧縮永久歪みが低い発泡体を得ることができる。
【0016】
<エチレン系三元共重合体(A)の製造方法>
本発明に係わる上記エチレン系三元共重合体(A)は、例えば特開平10-273563に記載されているようにメタロセン系触媒の存在下にエチレンと、プロピレン又は1-ブテンのいずれかと、炭素数5~20のα-オレフィンとを共重合させることによって製造することができる。
【0017】
このようなメタロセン系触媒は、メタロセン化合物(a)と、有機アルミニウムオキシ化合物(b)および/またはメタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(c)とから形成されていてもよく、さらに(a)、(b)および/または(c)とともに有機アルミニウム化合物(d)とから形成されていてもよい。
【0018】
本発明では、上記のようなメタロセン化合物(a)と、有機アルミニウムオキシ化合物(b)および/またはイオン化イオン性化合物(c)と、必要に応じて有機アルミニウム化合物(d)とから形成される触媒の存在下に、エチレンと、プロピレンは又は1-ブテンのいずれかと、炭素数5~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンとを通常液相で共重合させる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、α-オレフィンを溶媒として用いてもよい。
【0019】
この共重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。共重合をバッチ法で実施するに際しては、前記触媒成分は以下のような濃度で用いられる。
【0020】
メタロセン化合物(a)と有機アルミニウムオキシ化合物(b)またはイオン化イオン性化合物(c)とからなるメタロセン系触媒が用いられる場合には、重合系内のメタロセン化合物(a)の濃度は、通常0.00005~0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001~0.05ミリモル/リットルである。また有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、重合系内のメタロセン化合物中の遷移金属に対するアルミニウム原子のモル比(Al/遷移金属)で、1~10000、好ましくは10~5000の量で供給される。
【0021】
イオン化イオン性化合物(c)の場合は、重合系内のメタロセン化合物(a)に対するイオン化イオン性化合物(c)のモル比(イオン化イオン性化合物(c)/メタロセン化合物(a))で、0.5~20、好ましくは1~10の量で供給される。また有機アルミニウム化合物を用いる場合には、通常約0~5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0~2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
共重合反応は、通常、反応温度が-20~+150℃、好ましくは0~120℃、さらに好ましくは0~100℃で、圧力が0を超えて7.8MPa(80kgf/cm2、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm2、ゲージ圧)以下の条件下に行われる。
【0022】
エチレン、プロピレン又は1-ブテンのいずれかのα-オレフィン、炭素原子数5~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンは、上記特定組成のエチレン系三元共重合体(A)が得られるような量で重合系に供給される。共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0023】
上記のようにしてエチレンと、プロピレン又は1-ブテンのいずれかのα-オレフィンと炭素原子数5~20の直鎖状または分岐状の高級α-オレフィンとを共重合させると、通常エチレン系三元共重合体(A)を含む重合液として得られる。この重合液は、常法により処理され、エチレン系三元共重合体(A)が得られる。
【0024】
<発泡体>
本発明の発泡体は、上記エチレン系三元共重合体(A)を含有する発泡体であり、好ましくは、下記要件(i)~(iv)の特性を有する。
(i)比重が0.15~0.25の範囲にある。
(ii)圧縮永久歪みが40~80%の範囲にある。
(iii)アスカ―C硬度が20~60の範囲にある。
(iv)引裂強度が1~5MPaの範囲の範囲にある。
【0025】
<発泡体形成用エチレン系三元共重合体組成物>
本発明の発泡体は、上記エチレン系三元共重合体(A)、および上記エチレン系三元共重合体(A))に、有機過酸化物(B)および発泡剤(C)を配合してなるエチレン系三元共重合体組成物(以下、「発泡体形成用組成物」と呼称する場合がある。)を発泡させることにより得られる。
【0026】
〈有機過酸化物(B)〉
本発明に係る有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびt-ジブチルヒドロペルオキシド等を例示できる。これらのうち、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシドおよびジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0027】
〈発泡剤(C)〉
本発明に係わる発泡体形成用組成物に含まれる発泡剤(C)は、種々公知の発泡剤を使用し得る。具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0028】
本発明に係る発泡剤(C)としては、非担持型または無機粉体等に担持されている担持型のいずれを用いてもよいが、担持型を用いた場合と比較して同一比重での吸水率が低く、シール性能(防音性、防水性、防振性)に優れ、かつ混練作業性に優れる等の点で、非担持型の発泡剤が好ましい。
【0029】
本発明に係わる発泡体形成用組成物は、通常、上記エチレン系三元共重合体(A)、および上記エチレン系三元共重合体(A)100質量部に対して、上記有機過酸化物(B)を0.1~2.0質量部、好ましくは0.3~1.8質量部、より好ましくは0.6~1.6質量部、および上記発泡剤(C)を0.1~30質量部、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部の範囲で含む。
【0030】
本発明に係わる発泡体形成用組成物は、上記成分(A)、成分(B)および成分(C)をそれぞれ上記範囲で含むことにより、剛性の高い発泡体を得ることができる。
本発明に係わる発泡体形成用組成物は、前記成分(B)および成分(C)に加え、他の成分としては、例えば、加硫促進剤、加硫助剤、可塑剤、補強剤、無機充填剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、活性剤等の種々の添加剤が挙げられる。
【0031】
〈架橋助剤〉
本発明に係わる発泡体形成用組成物は有機過酸化物に加え、架橋剤(B)とともに必要
に応じて架橋助剤を含有することも好ましい。架橋助剤としては、例えば、硫黄、p-キ
ノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニ
トロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-
N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤;あるいはジビニ
ルベンゼン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAI
C)が挙げられる。
【0032】
また、架橋助剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコー
ルジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパ
ントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー:ビ
ニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる
。中でも、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC
)が好ましい。
【0033】
本発明に係る架橋助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
架橋助剤と架橋剤(B)との質量比[架橋助剤/架橋剤(B)]が1/30~5/1、好ましくは1/20~3/1、さらに好ましくは1/15~2/1になる量、特に好ましくは1/10~1/1になる量で用いられることが望ましい。
【0034】
〈可塑剤〉
本発明に係る可塑剤(軟化剤)としては、通常ゴムに使用される可塑剤が挙げられる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン、コールタール、ヒマシ油、アマニ油、サブ、蜜ロウ、アタクチックポリプロピレン、クマロインデン樹脂などが挙げられる。中でも、特にプロセスオイル、パラフィン油が好ましく用いられる。
【0035】
本発明に係る可塑剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明に係る可塑剤は、本発明に係わる発泡体形成用組成物が、良好な混練性を得るため、エチレン系三元共重合体(A)100質量部に対して、必要に応じて配合される。可塑剤としてプロセスオイルを用いる場合、その配合量は、エチレン系三元共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは10~50質量部、より好ましくは20~50質量部である。
【0036】
〈補強剤および無機充填剤〉
本発明に係わる発泡体形成用組成物には、得られる発泡体の引張強度、引裂強度、耐摩耗性等の機械的性質を向上させ、さらに成形収縮率を小さくするために、補強剤や無機充填剤を配合することが好ましい。
【0037】
本発明に係る補強剤および無機充填剤としては、具体的には、旭#55G、旭#60G(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸等を用いることができる。
【0038】
また、無機充填剤としては軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等を用いることができる。これらのうち、旭#55G、旭#60G、「シーストHAF」カーボンブラックが好ましい。
【0039】
本発明に係る補強剤および/または無機充填剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明に係る補強剤および/または無機充填剤の配合量は、エチレン系三元共重合体(A)100質量部に対し、通常1~200質量部、好ましくは1~100質量部、さらに好ましくは1~50質量部である。補強剤および/または無機充填剤の配合量が前記範囲内であると、得られる発泡体は機械強度に優れるので好適である。
【0040】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明に係わる発泡体形成用組成物に老化防止剤を配合することにより、得られる発泡体の寿命を長くすることが可能である。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等を用いることができる。
【0041】
本発明に係る老化防止剤としては、具体的には、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0042】
本発明に係る老化防止剤は、単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、前記老化防止剤の配合量は、エチレン系三元共重合体(A)100質量部に対して、通常0.01~10質量部、好ましくは0.01~7質量部、さらに好ましくは0.01~5質量部である。老化防止剤の配合量が前記範囲内であると、得られる発泡体の耐熱老化性が優れるので好適である。
【0043】
〈加工助剤〉
本発明に係る加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0044】
本発明に係る加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明に係る加工助剤を発泡体形成用組成物に配合する場合は、エチレン系三元共重合体(A)100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
【0045】
<発泡体形成用組成物を用いた架橋体・架橋発泡体の製造>
本発明では、エチレン系三元共重合体(A)を含む原料として、上述したエチレン系三元共重合体(A)あるいはエチレン系三元共重合体(A)を含む発泡体形成用組成物を用い、溶融成形する工程、架橋させる工程、および必要に応じて発泡させる工程により、架橋体または架橋発泡体を製造する。
【0046】
溶融成形する工程、架橋させる工程、および必要に応じて発泡させる工程は、逐次または連続的に行ってもよく、同時に行ってもよい。
架橋体または架橋発泡体の製造に際して、発泡体形成用組成物は、ペレット化あるいは溶融混練状態とするなど、あらかじめ調製されていてもよく、また、溶融成形を行う際などに、各成分を同時または逐次に同一の供給部に供給するか、また別個の供給口からそれぞれ同時または逐次に供給するかにより、溶融成形などの工程と同時に、成形機内で組成物を調製して用いてもよい。あらかじめ調製された発泡体形成用組成物を使用しない場合には、発泡体形成用組成物の各成分をそれぞれ別個に同一または別々の供給部に供給してもよい。
【0047】
本発明において、溶融成形する工程は、発泡体形成用組成物を溶融させて成形する段階を含む方法であれば特に制限なく採用することができ、従来公知の溶融成形法、たとえば押出成形、回転成形、カレンダー成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、粉末成形、ブロー成形、真空成形などの方法により、種々の形状に成形することができる。また成形工程は、シートやチューブ状とした発泡体形成用組成物を、カレンダー成形、プレス成形、押し出し成形、インフレーション成形などの方法により行ってもよい。これらの成形法のうちでは、射出成形およびトランスファー成形が好ましく、射出成形が特に好ましい。射出成形やトランスファー成形は、架橋体または架橋発泡体である成形体の製造効率に優れるため好ましい。本発明に係る発泡体形成用組成物は、射出成形性に優れ、射出成形体や射出発泡成形体を製造した場合にも、成形性がよく、寸法精度に優れたものとすることができる。
【0048】
また架橋させる工程、必要に応じて行う発泡させる工程は、溶融成形する工程と同時に行ってもよく、溶融成形する工程の後に行ってもよい。さらに、架橋させる工程、必要に応じて行われる発泡させる工程は、成形体を得た後に一度冷却し、改めて当該成形体を加熱して行ってもよい。架橋させる工程は、上述した架橋剤(C)を用いた架橋であっても、電子線等を用いた架橋であってもよい。
【0049】
架橋発泡体を製造する場合には、通常、発泡体形成用組成物を、溶融成形する工程、架橋させる工程、ならびに発泡させる工程を有する。本発明の架橋発泡体の製造方法は、発泡体形成用組成物を、溶融成形する工程と、架橋させる工程と、発泡させる工程とを含む。
【0050】
架橋発泡体の製造に用いる発泡体形成用組成物は、未架橋かつ未発泡の状態であり、溶融状態であってもよいし、また、冷却固化したペレットまたはシートであってもよい。
たとえば、架橋発泡体を、発泡体形成用組成物のペレットを用いて製造する場合、ペレットは、前述したエチレン系三元共重合体(A)、有機過酸化物(B)および発泡剤(C)、その他の添加剤などの各成分を、上述した割合によりヘンシェルミキサーなどで混合し、バンバリ-ミキサー、ロール、押出機等の混練機で有機過酸化物(B)および/または発泡剤(C)が分解しない温度にて溶融可塑化し、均一に混合分散させて造粒機により調製することができる。
【0051】
架橋発泡体を製造する方法としては、後述するように例えば、熱処理による架橋と、電離性放射線架橋とが挙げられる。熱処理による架橋の場合には、発泡体形成用組成物が有機過酸化物(B)および架橋助剤を含有することが好ましい。また、電離性放射線による架橋の場合には、架橋助剤を含有することが好ましい。
【0052】
本発明に係る架橋発泡体は、必要に応じて、フィラー、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、塩酸吸収剤、顔料などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含んでもよく、これらの各種添加剤は、あらかじめ発泡体形成用組成物中に含まれていてもよく、また、架橋発泡体の製造時に添加して用いられてもよい。
【0053】
また架橋発泡体を、発泡体形成用組成物のシートを用いて製造する場合、該シートは、たとえば上記のようにして得られたペレットを押出機あるいはカレンダー成形機を用いて調製することができる。また、発泡体形成用組成物を構成する各成分をブラベンダーなどで混練した後、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート化する方法、または押出機を用いて混練した後Tダイまたは環状ダイを通してシート化する方法などにより、未架橋かつ未発泡状態の発泡性シートを調製することができる。
本発明に係わる架橋発泡体は、具体的には、例えば次のような方法により調製することができる。
【0054】
たとえば、前述した発泡体形成用組成物のシートを用いて架橋発泡体を製造する場合では、前述のようにして得られた発泡体形成用組成物のシートをカレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いて成形することができる。好ましくは前記発泡体形成用組成物のシートを、カレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いて得ることができる。このシート成形時においては、有機過酸化物(B)および発泡剤(C)を含む場合にはその分解温度以下でシート成形することが好ましく、具体的には、発泡体形成用組成物を構成する樹脂成分の溶融状態での温度が例えば100~130℃となる条件に設定してシート成形することが好ましい。
【0055】
上記方法によって得られたシートから一次発泡体を製造する方法を例示すると、例えば、130~200℃に保持された金型に、金型の容積に対して1.0~1.2の範囲に裁断して、金型内に挿入する。金型の型締め圧力は例えば30~300kgf/cm2、保持時間は例えば10~90分の条件下で、一次発泡体(非架橋または架橋発泡体)を作製する。
【0056】
すなわち熱処理により発泡成形体(非架橋または架橋発泡体)を製造する。発泡成形体が非架橋である場合には、さらに加熱あるいは電子線照射等により架橋を行い、架橋発泡体とすることができる。なお保持時間は、金型の厚さに依存するため、この範囲を超えて、適宜増減され得る。
【0057】
上記(架橋)発泡体用金型は、その形状は特に制限はされないが、通常シートが得られるような形状を有している金型が用いられる。この金型は、溶融樹脂および発泡剤分解時に発生するガスが抜けないように、完全に密閉された構造とすることが好ましい。また、型枠としては、内面にテーパーが付いている型枠が樹脂の離型性の面から好ましい。
【0058】
また、上記方法以外にも、例えば発泡体形成用組成物を押出し機から押出し、大気中に解放すると同時に発泡させる押出し発泡法により、非架橋の発泡成形体あるいは本発明に係わる架橋発泡体を製造することもできる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。発泡成形体が非架橋である場合には、さらに加熱あるいは電子線照射等により架橋を行い、架橋発泡体とすることができる。
【0059】
またさらに、発泡体形成用組成物を、有機過酸化物(B)および発泡剤(C)の分解温度以下で金型内に射出して、金型内で例えば130℃~200℃程度の温度に保って架橋発泡させる方法(射出発泡法)も挙げることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。発泡成形体が非架橋である場合には、さらに加熱あるいは電子線照射等により架橋を行い、架橋発泡体とすることができる。
【0060】
上記方法により得られた一次発泡体を、さらに圧縮成形により所定の形状の付与を行うことも好ましい。このときの圧縮成形条件の一例をあげると、金型温度が130~200℃、型締め圧力が30~300kgf/cm2、圧縮時間が5~60分、圧縮比が1.1~3.0、好ましくは1.3~2の範囲である。
【0061】
また、電離性放射線照射による架橋方法により架橋発泡体を得るには、まず、発泡成形体が非架橋である場合には、さらに加熱あるいは電子線照射等により架橋を行い、架橋発泡体とすることができる。好ましくは有機系熱分解型発泡剤である発泡剤(C)を含む発泡体形成用組成物を、発泡剤(C)の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物をたとえばシート状に成形し、未架橋の発泡シートを得る。
【0062】
次いで、得られた未架橋の発泡シートに電離性放射線を所定量照射して発泡シートを架橋させた後、得られた架橋発泡シートを必要に応じてさらに有機系熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、シート状の架橋発泡体を得ることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。
【0063】
電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト-60のγ線、電子線が好ましく用いられる。
架橋発泡体の製品形状としては、たとえばシート状、厚物ボード状、ネット状、型物などが挙げられる。
【0064】
上記のようにして得られた架橋発泡体について、圧縮成形により所定の形状の付与を行うことにより二次発泡体を製造することができる。このときの圧縮成形条件の一例をあげると、金型温度が130~200℃、型締め圧力が30~300kgf/cm2、圧縮時間が5~60分、圧縮比が1.1~3.0の範囲である。
上記のような製造法のうちでも、発泡体形成用組成物を、熱処理して架橋発泡体を得ることが好ましい。
【0065】
《発泡体の用途》
本発明のエチレン系三元共重合体(A)を含有する発泡体(以下、単に「発泡体」と略称する場合がある。)は、自動車用ウェザーストリップ、建築用材料、ホース(自動車用ホース、送水用ホース、ガス用ホース)、防振材(自動車用防振材、鉄道用防振材、産業機械用防振材、建築用免震剤)、ベルト(伝動ベルト、搬送用ベルト)、シール材(自動車用カップ・シール材、産業機械用シール材)、被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電部品、OA機器用ロール、工業用ロールおよび家庭用製品等に好適に用いることができる。
【0066】
さらに、本発明の発泡体は、自動車用内装材、低VOC自動車材料、電子部品、ハードディスクカバー、電磁波シールド、放熱材料、透明ホース、腕時計バンド、半導体封止材料、太陽電池封止材料、建築用低VOC材料、建築ガスケット、建築用シ-ト、建築目地材、などに好適に用いることができる。
【0067】
上記自動車用ウェザーストリップとしては、例えばドアウエザーストリップ、トランクウェザーストリップ、ラゲージウェザーストリップ、ルーフサイドレールウェザーストリップ、スライドドアウェザーストリップ、ベンチレータウェザーストリップ、スライディングループパネルウェザーストリップ、フロントウインドウェザーストリップ、リヤウインドウェザーストリップ、クォーターウインドウェザーストリップ、ロックピラーウェザーストリップ、ドアガラスアウターウェザーストリップ、ドアガラスインナーウェザーストリップ、ダムウインドシールド、クラスランチャネル、ドアミラー用ブラケット、シールヘッドランプ、シールカウルトップなどが挙げられる。
【0068】
上記自動車用ホースとしては、例えばブレーキホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアークリーナーホースなどが挙げられる。
上記自動車用防振材としては、例えばエンジンマウント、液封エンジンマウント、ダ
ンパープーリ、チェーンダンパー、キャブレターマウント、トーショナルダンパー、ストラットマウント、ラバーブッシュ、バンパゴム、ヘルパーゴム、スプリングシート、ショックアブソーバー、空気ばね、ボディマウント、バンパガード、マフラーサポート、ゴムカップリング、センターベアリングサポート、クラッチ用ゴム、デフマウント、サスペンションブッシュ、すべりブッシュ、クッションストラットバー、ストッパ、ハンドルダンパー、ラジエターサポーター、マフラーハンガーなどが挙げられる。
【0069】
上記鉄道用防振材としては、例えばスラブマット、バラスマット、軌道マットなどが挙げられる。
上記産業機械用防振材としては、例えばエキスパンションジョイント、フレキシブルジョイント、ブッシュ、マウントなどが挙げられる。
【0070】
上記伝動ベルトとしては、例えばVベルト、平ベルト、歯付きベルトなどが挙げられる。
上記搬送用ベルトとしては、例えば軽搬送用ベルト、円筒形ベルト、ラフトップベルト、フランジ付き搬送用ベルト、U型ガイド付き搬送用ベルト、Vガイド付き搬送用ベルトなどが挙げられる。
【0071】
上記自動車用カップ・シール材としては、例えばマスタシリンダーピストンカップ、ホイールシリンダーピストンカップ、等速ジョイントブーツ、ピンブーツ、ダストカバー、ピストンシール、パッキン、Oリング、ダイヤフラムなどが挙げられる。
【0072】
上記産業機械用シール材としては、例えばコンデンサーパッキン、Oリング、パッキンなどが挙げられる。
上記自動車用ウェザーストリップスポンジとしては、例えばドアーウェザーストリップスポンジ、ボンネットウェザーストリップスポンジ、トランクルームウェザーストリップスポンジ、サンルーフウェザーストリップスポンジ、ベンチレーターウェザーストリップスポンジ、コーナースポンジなどが挙げられる。
【0073】
上記建築用シールスポンジとしては、例えばガスケット、エアータイト、目地材、戸当たり部のシールスポンジなどが挙げられる。
上記OA機器用ロールとしては、例えば帯電ロール、転写ロール、現像ロール、給紙ロールなどが挙げられる。
【0074】
上記工業用ロールとしては、例えば製鉄用ロール、製紙用ロール、印刷用電線ロールなどが挙げられる。
上記家庭用製品としては、例えば雨具、輪ゴム、靴、ゴム手袋、ラテックス製品、ゴルフボールなどが挙げられる。
【0075】
<積層成形体、履物および履物用部品>
本発明の発泡体は、他素材と、あるいは本発明の発泡体同士で積層された積層体であることも好ましい。
本発明の積層体は、上記した、本発明の発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有する積層体であることが好ましい。
【0076】
本発明に係わる積層体を構成する他素材、好ましくはポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材としては、特に制限されることなく公知のものを用いることができる。このような積層体は履物、および履物用部品として特に好適である。
【0077】
履物用部品としては、たとえば靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダルなどが挙げられる。
本発明に係る履物または履物用部品は、本発明の発泡体または発泡体を含む積層体は、軽量で、長期間の使用による変形を抑えることができるので、スポーツシューズ用などの履物に特に有用である。
【実施例
【0078】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた重合体等の物性は、以下の方法で測定した。
【0079】
〔プロピレンおよび1-オクテンの含有量等〕
日本電子製JNM GX-400型NMR測定装置を用いた。試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は8000回以上とする。得られた13C-NMRスペクトルにより、共重合体中のエチレン含量(モル%)、プロピレン含量(モル%)およびα-オレフィン含量(モル%)を定量した。
【0080】
〔密度〕
密度は、ASTM D1505に従い、23℃にて測定した。
【0081】
〔MFR〕
MFRは、ASTM D1238に従い、190℃、2.16kg荷重にて測定した。
(1)エチレン系三元共重合体(A)
実施例で用いたエチレン系三元共重合体(A)は、以下の製造例1および製造例2で得られたエチレン・プロピレン・1-オクテン三元共重合体(A-1)および(A-2)を用いた。
【0082】
〔製造例1〕
製造例1
撹拌羽根を備えた内容積100Lの連続重合器の一つの供給口に、共触媒としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液を3.1mmol/hr、主触媒としてビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドのヘキサンスラリーを0.03mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を16mmol/hrの割合で供給し、触媒溶液と重合溶媒として用いる脱水精製したノルマルヘキサンの合計が50L/hrとなるように脱水精製したノルマルヘキサンを連続的に供給した。同時に重合器の別の供給口に、エチレンを3.6kg/hr、プロピレンを6.3kg/hr、1-オクテンを7.9kg/hr、水素を2.4NL/hrの割合で連続供給し、重合温度95℃、全圧2MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、重合器の底部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液が150~190℃となるように、ジャケット部が3~25kg/cmスチームで加熱された連結パイプに導いた。なお、連結パイプに至る直前には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設されており、約0.75L/hrの速度でメタノールを注入してエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液に合流させた。スチームジャケット付き連結パイプ内で約190℃に保温されたエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、約4.3MPaGを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた圧力制御バルブの開度の調整によって連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が約0.1MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定が行われた。その後、ダイス温度を180℃に設定した単軸押出機を通し、水槽にてストランドを冷却し、ペレットカッターにてストランドを切断し、ペレットとしてエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(共重合体(A-1)を得た。収量は4.2kg/hrであった。得られた三元共重合体(A-1)の物性を上記記載の方法で測定した。
結果を表1に示す。
【0083】
〔製造例2〕
エチレンを3.3kg/hr、プロピレンを5.0kg/hr、1-オクテンを9.9kg/hr、水素を2.8NL/hrの割合で連続供給し、重合温度を100℃とした以外は、製造例1と同様に合成し、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(共重合体(A-2)を得た。収量は3.4kg/hrであった。得られた三元共重合体(A-2)の物性を上記記載の方法で測定した。
結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
〔エチレン・1-ブテン共重合体(F-1)〕
密度862kg/m、MFR(ASTM D 1238 温度190℃、2.16kg荷重)1.2g/10分。
【0086】
〔エチレン・1-ブテン共重合体(F-2)
密度870kg/m、MFR(ASTM D 1238 温度190℃、2.16kg荷重)1.2g/10分。
実施例および比較例で得られた発泡体の物性は、以下の方法で測定した。
【0087】
〔比重〕
比重は、JIS K7222に従って測定した。サンプルは、発泡体が立方体であれば最大面積の平面の四辺からそれぞれ20mm以上内部、また該平行平面の表面からスキンを残した状態でサンプリングした。例えばミッドソールの場合、端部からそれぞれ20mm以上内部、略平行平面の両表面からスキンを残した状態でサンプルを調製した。
【0088】
〔アスカ―C硬度〕
アスカーC硬度は、JIS K7312-1996付属書2記載の「スプリング硬さ試験タイプC試験方法」に従って、23℃環境下にて測定を行った。
【0089】
〔引裂強度〕
引き裂き強度は、ASTM D3574に従い、23℃環境下にて測定を行った。試験機は引張り試験機を使用し、引っ張り速度は100mm/minとする。引き裂き強度Tr(N/mm)は次式にて計算した。
Tr=T0/T1×9.81
t0:引き裂き応力(kg)
t1:サンプル幅(mm)
【0090】
〔反発弾性〕
反発弾性は、JIS K6255に準じて測定を行った。サンプルは上記(2)圧縮永久歪み(CS)に使用するサンプルと同じ方法で調製したサンプルを準備し、23℃雰囲気下にて測定を行った。
【0091】
〔圧縮永久歪み(CS)〕
圧縮永久歪み(CS)は、JIS K6262に準じて測定を行った。サンプルは、発泡体をφ30mm、厚み15mm以上の円柱形に切り出し、円柱の2つの平行平面のそれぞれについて、該平行平面の表面から抜き出し、片方にスキンを残した状態で厚み10mmとしたものを用いた。
【0092】
なお、サンプル採取対象となる発泡体が、種々の形状の立体である場合でも、φ30mm、厚み15mm以上の円柱形に切り出し、円柱の2つの平行平面のそれぞれについて、該平行平面の表面から抜き出し、片方にスキンを残した状態で厚みを10mmとすることでサンプルとした。
【0093】
発泡体から円柱形への切り出し、および平行平面の表面からの発泡体の切り取りは円柱抜きダンベル型を使用することができる。
このサンプルを、50%圧縮、50℃環境にて6時間静置し、圧縮から解放して30分後に測定した。圧縮永久歪み(CS)(%)は、以下の式により算出した。
CS=(t0-t1)/(t0-t2)×100
t0:サンプル原厚(mm)
t1:サンプルを圧縮装置から取り出し30分後の厚み(mm)
t2:スペーサー厚み(mm)
【0094】
〔実施例1〕
製造例1で得たエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(A-1)100質量部に対し、架橋剤としてジクミルペルオキシド(DCP)を1.05質量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(TAIC)[商品名 M-60(TAIC含有量60%)、日本化成(株)製]0.1質量部(TAIC含量として)、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)3.0質量部、酸化チタン(TiO2)を3質量部、酸化亜鉛(ZnO)を1質量部、およびステアリン酸(St)を1質量部配合して得た組成物を、ロールで、ロール温度100℃で、10分間混練し、シート状の成形体を得た。
【0095】
得られたシートをプレス金型に充填し、150kg/cm2、160℃、12分の条件で加圧、加熱し、発泡体(厚み=24.5mm、縦=150mm、横=200mm)を得た。
得られた発泡体について、比重、圧縮永久歪み、および反発弾性を上記方法に従って測定した。
結果を表2に示す。
【0096】
〔実施例2〕
実施例1で用いた組成物に替えて、アゾジカルボンアミド(ADCA)の配合量を3.5重量部にする以外は、実施例1と同様に行い発泡体を得た。
得られた発泡体の結果を表2に示す。
【0097】
〔実施例3〕
実施例1で用いたエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(A-1)に替えて、製造例2で得たエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(A-2)を用い、且つアゾジカルボンアミド(ADCA)の量を2.3質量部とする以外は、実施例1と同様に行い発泡体を得た。
得られた発泡体の結果を表2に示す。
【0098】
〔比較例1〕
実施例2で用いたエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(A-1)に替えて、エチレン・1-ブテン共重合体(F-1)を用いる以外は、実施例1と同様に行い発泡体を得た。
得られた発泡体の結果を表2に示す。
【0099】
〔比較例2〕
比較例1で用いた組成物に替えて、アゾジカルボンアミド(ADCA)の配合量を2.8質量部とする以外は、比較例1と同様に行い発泡体を得た。
得られた発泡体の結果を表2に示す。
【0100】
〔比較例3〕
実施例1で用いたエチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体(A-1)に替えて、エチレン・1-ブテン共重合体(F-2)を用い、アゾジカルボンアミド(ADCA)の配合量を1.9質量部とする以外は、比較例1と同様に行い発泡体を得た。
得られた発泡体の結果を表2に示す。
【0101】
【表2】