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特許7458752画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240325BHJP
   G06T 5/00 20240101ALI20240325BHJP
   H04N 23/71 20230101ALI20240325BHJP
   H04N 23/76 20230101ALI20240325BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G06T5/00
H04N23/71
H04N23/76
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019208710
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021082937
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】仲田 崇倫
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093474(JP,A)
【文献】特開2019-165401(JP,A)
【文献】特開2016-126750(JP,A)
【文献】特開2006-133874(JP,A)
【文献】特開2014-102614(JP,A)
【文献】特開2018-022232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G06T 5/00
H04N 23/71
H04N 23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像した画像を基に、画像のコントラストに影響を及ぼす現象による影響の度合いを表す影響度を取得する取得手段と、
前記画像を複数の領域に分割する分割手段と、
前記被写体を撮像した撮像装置から前記被写体までの距離を前記領域ごとに検出する距離検出手段と、
前記分割された複数の領域の前記距離を基に、前記画像が、前記コントラストに影響を及ぼす現象により生ずるコントラストの低下が視認性に影響する画像かどうかを判定する影響判定手段と、
前記影響度を基に、画像のコントラストを強調するコントラスト補正係数を取得する係数取得手段と、
前記領域ごとの前記距離を基に、前記コントラスト補正係数を補正する係数補正手段と、
前記画像のコントラストを、前記コントラスト補正係数を基に補正する補正手段と、
を有し、
前記影響判定手段は、前記距離が所定の距離閾値以下の領域が所定の領域数以上である場合、前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定し、
前記係数補正手段は、前記影響判定手段によって前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定された場合、前記コントラスト補正係数の値が所定の値以上であれば、前記コントラスト補正係数の値を設定値だけ低くする補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記影響判定手段によって前記コントラストの低下が視認性に影響する画像であると判定された場合、前記係数補正手段は、前記コントラスト補正係数の補正を行わないことを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記影響判定手段は、前記画像の全ての領域からなる範囲に対する、前記距離が所定の距離閾値以下の各領域からなる範囲の割合が、所定の割合閾値以上である場合に、前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定することを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像の中の特定の領域を選択する選択手段を有し、
前記コントラスト補正係数の値が所定の値以上である場合、前記係数補正手段は、前記特定の領域の前記距離が所定の距離閾値以下であれば前記コントラスト補正係数の値を設定値だけ低くすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像から動き被写体を検出する動き検出手段を有し、
前記コントラスト補正係数の値が所定の値以上である場合、前記係数補正手段は、前記動き被写体の前記距離が所定の距離閾値以下であれば前記コントラスト補正係数の値を設定値だけ低くすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記コントラスト補正係数の値が所定の値以上でない場合、前記係数補正手段は、前記コントラスト補正係数の補正を行わないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
被写体を撮像した画像を基に、画像のコントラストに影響を及ぼす現象による影響の度合いを表す影響度を取得する取得工程と、
前記画像を複数の領域に分割する分割工程と、
前記被写体を撮像した撮像装置から前記被写体までの距離を前記領域ごとに検出する距離検出工程と、
前記分割された複数の領域の前記距離を基に、前記画像が、前記コントラストに影響を及ぼす現象により生ずるコントラストの低下が視認性に影響する画像かどうかを判定する影響判定工程と、
前記影響度を基に、画像のコントラストを強調するコントラスト補正係数を取得する係数取得工程と、
前記領域ごとの前記距離を基に、前記コントラスト補正係数を補正する係数補正工程と、
前記画像のコントラストを、前記コントラスト補正係数を基に補正する補正工程と、
を有し、
前記影響判定工程では、前記距離が所定の距離閾値以下の領域が所定の領域数以上である場合、前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定し、
前記係数補正工程では、前記影響判定工程によって前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定された場合、前記コントラスト補正係数の値が所定の値以上であれば、前記コントラスト補正係数の値を設定値だけ低くする補正を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された画像を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防犯手段の一つとしてネットワークカメラが利用されている。ネットワークカメラは、様々な環境下に設置され、視認性の高い画像を提供することが望まれている。しかし、ネットワークカメラの撮影環境において、霧や霞が発生すると、被写体のコントラストが低下し、視認性が低下した画像となってしまう。この霧や霞が発生している撮影環境においても視認性の高い画像を取得するために、霧や霞が発生している場合にコントラスト強調を行うという手法がある。ただし、霧や霞は、常に一定ではなく、時間経過に伴い、濃度が変化し、したがって画像のコントラスト低下度合いが常に変化する。そのため、ネットワークカメラを設置している撮影環境において、霧や霞の発生有無を判定し、霧や霞が発生している場合のみ、コントラスト強調を行う手法が有効である。特許文献1には、撮像画像中のヒストグラムから霧や霞が発生しているかを推定する事が可能な手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-93474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、ヒストグラムからのみ霧・霞が発生しているかを推定している。このため、例えば霧・霞は生じていないが建物などの人工物によりコントラストが低下している場合などにおいて、霧・霞が発生していると誤認識し、誤補正してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、誤認識を低減して適切な補正を実現可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、被写体を撮像した画像を基に、画像のコントラストに影響を及ぼす現象による影響の度合いを表す影響度を取得する取得手段と、前記画像を複数の領域に分割する分割手段と、前記被写体を撮像した撮像装置から前記被写体までの距離を前記領域ごとに検出する距離検出手段と、前記分割された複数の領域の前記距離を基に、前記画像が、前記コントラストに影響を及ぼす現象により生ずるコントラストの低下が視認性に影響する画像かどうかを判定する影響判定手段と、前記影響度を基に、画像のコントラストを強調するコントラスト補正係数を取得する係数取得手段と、前記領域ごとの前記距離を基に、前記コントラスト補正係数を補正する係数補正手段と、前記画像のコントラストを、前記コントラスト補正係数を基に補正する補正手段と、を有し、前記影響判定手段は、前記距離が所定の距離閾値以下の領域が所定の領域数以上である場合、前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定し、前記係数補正手段は、前記影響判定手段によって前記コントラストの低下が視認性に影響する画像でないと判定された場合、前記コントラスト補正係数の値が所定の値以上であれば、前記コントラスト補正係数の値を設定値だけ低くする補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、誤認識を低減して適切な補正を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態の撮像装置における処理のフローチャートである。
図3】霧霞度算出手法で用いるヒストグラムの一例を示す図である。
図4】コントラスト補正係数のグラフの一例を示す図である。
図5】被写体距離とコントラストの関係の一例を示す図である。
図6】ノイズ量を基に係数補正を行う構成例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
図8】第2の実施形態の撮像装置における処理のフローチャートである。
図9】画像を領域分割する一例を示す図である。
図10】霧霞判定部の処理を説明するイメージ図である。
図11】霧霞判定部の構成の一例を示す図である。
図12】動き検出、領域指定を基に係数補正を行う構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る撮像装置の構成例を示したブロック図である。本実施形態の撮像装置は、撮像部101、画像処理部102、霧霞度算出部103、係数算出部104、補正強度判定部105、距離推定部106、係数補正部107、補正部108、および表示部109等を有して構成されている。本実施形態の撮像装置は、撮像にて取得された画像に生じたコントラストの低下が、霧や霞などによるものなのか、それ以外によるものなのかを推定し、その推定結果を基に、撮像画像に対して適切な霧霞補正処理を行う画像処理装置の機能を有している。本実施形態の場合、画像処理装置の機能は、霧霞度算出部103、係数算出部104、補正強度判定部105、距離推定部、係数補正部107、及び補正部108によって実現されている。また第1の実施形態の場合、撮像画像のコントラスト低下が、霧霞によるものなのか、それ以外によるものなのかを、撮像装置から被写体までの距離を基に推定している。なお、本実施形態の撮像装置は例えばネットワークカメラなどに適用可能である。また、本実施形態に係る画像処理装置は、ネットワークカメラの内部に搭載されていても良いし、ネットワークカメラとは別の構成となされて通信回線等を介してネットワークカメラに接続されているものでもよい。
【0010】
以下、図1に示した各機能について説明する。
撮像部101は、複数枚のレンズ、絞り機構、及びCCDまたはCMOSセンサなどの撮像素子等を有して構成され、不図示の被写体からの光像を撮像してデジタル画像信号に変換して出力する。撮像部101から出力された画像信号は、画像処理部102に入力される。
画像処理部102は、入力された画像信号に対し、ホワイトバランス調整やガンマ補正などの、画像を現像するための種々の処理を施す。画像処理部102による処理後の画像信号(以下適宜、画像とのみ表記する)は、霧霞度算出部103と補正部108に送られる。
【0011】
霧霞度算出部103は、霧霞度取得処理として、画像処理部102による処理後の画像から、被写体等の撮像時に霧や霞など画像のコントラストに影響を及ぼす現象による影響の度合いを表す影響度(以下、霧霞度とする)を取得する。本実施形態では、霧霞度(影響度)を算出によって取得するようになされており、当該霧霞度の算出についての具体的な例は後述する。霧霞度算出部103により取得された霧霞度の情報は係数算出部104に送られる。なお、コントラストの低下に影響を及ぼす現象は、霧や霞に限定されず、例えば煙、ガス、粉塵、黄砂、雨、雪など、他の現象であってもよい。
【0012】
係数算出部104は、係数取得処理として、霧霞度算出部103にて取得された霧霞度に応じて、画像のコントラストを強調するコントラスト補正をどの程度かけるかを決定するコントラスト補正係数を算出する。係数算出部104にて算出されたコントラスト補正係数の情報は、係数補正部107と補正強度判定部105とに送られる。
【0013】
補正強度判定部105は、係数判定処理として、係数算出部104にて算出されたコントラスト補正係数の値が所定の値以上、言い換えるとコントラスト補正係数に基づくコントラスト補正の強度が所定の強度以上になるかどうかを判定する。すなわちコントラスト補正係数の値は、画像に対して行われるコントラスト補正の強度に対応しており、例えばコントラスト補正係数の値が大きくにつれてコントラスト補正の強度が大きくなる。補正強度判定部105による判定結果の情報は、係数補正部107に送られる。
【0014】
距離推定部106は、被写体距離検出処理として、撮像装置から被写体までの距離(被写体距離とする)を推定する。被写体距離は、アクティブ方式やパッシブ方式などの複数の方式の少なくとも何れかの方式に基づく情報を用いて推定することができる。アクティブ方式としては、例えば、発光した光が被写体にて反射された反射光を受光するような計測センサを用い、当該発光から受光までの時間差を基に距離を計測するような手法を挙げることができる。またパッシブ方式としては、例えば、画像の位相差を検出可能な撮像装置にて検出される当該位相差を基に被写体距離を推定する手法を挙げることができる。さらにパッシブ方式の他の例としては、画像のコントラストを基に合焦制御が行われる撮像装置において当該合焦時のフォーカスレンズの位置を基に被写体距離を推定する手法などを挙げることができる。その他にも、画像から距離を推定するような手法も各種考案されており、距離推定部106における被写体距離の推定手法は、距離を推定するという目的を達成できるのであれば、それらどのような手法が用いられてもよい。距離推定部106にて推定された被写体距離の情報は、係数補正部107に送られる。
【0015】
係数補正部107は、補正強度判定部105でコントラスト補正係数の値が所定の値以上と判定された場合に、被写体距離が所定の距離閾値以下であれば、コントラスト補正係数の値を低くするように補正して補正部108に出力する。つまり、係数補正部107は、コントラスト補正係数がコントラスト補正の強度を所定の強度以上にする値である場合に、被写体距離が所定の距離閾値以下であれば、コントラスト補正の強度を弱めるようにコントラスト補正係数の値を低くする。コントラスト補正係数の値を低くように補正する場合には、一例として、予め決められた設定値分だけ値を低くするような係数補正処理が行われる。なお、コントラスト補正係数を低くする際の設定値は、ユーザが任意に変更することも可能である。
【0016】
一方、係数補正部107は、補正強度判定部105でコントラスト補正係数が所定の値未満と判定された場合には、係数算出部104からのコントラスト補正係数の補正を行わずにそのまま補正部108に出力する。つまり、係数補正部107は、コントラスト補正の強度が所定の強度以上にならない場合には、被写体距離が所定の距離閾値以下であっても、係数算出部104からのコントラスト補正係数を補正せずにそのまま補正部108に出力する。
【0017】
また、係数補正部107は、補正強度判定部105でコントラスト補正係数が所定の値以上と判定された場合であっても、被写体距離が所定の距離閾値より大きければ、係数算出部104からのコントラスト補正係数の補正を行わずに補正部108に出力する。つまり、係数補正部107は、コントラスト補正の強度が所定の強度以上になる場合であっても、被写体距離が所定の距離閾値より大きければ、係数算出部104からのコントラスト補正係数を補正せずにそのまま補正部108に出力する。
【0018】
補正部108は、画像処理部102による処理後の画像に対し、係数補正部107から出力されてきたコントラスト補正係数を用いたコントラスト補正を行う。ここで、画像に対するコントラスト補正には、入力画像の階調のうち、出力画像に反映する階調の下限値と上限値を設定して、その範囲を理論的な最大階調まで拡張する補正処理が一般的に含まれる。本実施形態に係るコントラスト補正でも、同じようなコントラスト補正に加えて、入力画像の一部または全部について、階調が拡張されたり縮小されたりするような補正処理も対象としている。補正部108によるコントラスト補正処理後の画像信号は、表示部109に送られる。
【0019】
表示部109は、ディスプレイ装置などの表示装置に出力画像を表示する。表示部109によって画像が表示される表示装置は、撮像装置と一体型の表示装置でもよいし、撮像装置とは別の外部表示装置となされて通信回線等を介して接続されたものでもよい。
【0020】
図2は、本実施形態の撮像装置における画像取得からコントラスト補正までの処理の流れを示したフローチャートである。
まずステップS201において、撮像部101は、被写体等を撮像することで画像を取得する。
【0021】
次にステップS202において、画像処理部102は、撮像部101で取得された画像信号に対し、ホワイトバランス調整、デモザイキングやガンマ処理などの現像処理を実施する。
【0022】
次にステップS203において、霧霞度算出部103は、画像の霧霞度を算出する。本実施形態では、画像の霧霞度を算出する手法として、画像の輝度分布(輝度のヒストグラム)を基に算出する手法や、画像の環境光成分を推定する手法などを用いる。
【0023】
ここでは、画像の輝度分布(輝度のヒストグラム)を用いた霧霞度の算出に関して具体例を説明する。本実施形態の場合、霧霞度算出部103の機能は、大まかに、輝度分布取得機能と霧霞度算出機能とからなる。輝度分布取得機能は、画像処理部102から送られてきた画像の輝度分布を取得(輝度のヒストグラムを計測)する機能である。霧霞度算出機能は、輝度分布取得機能によって取得された輝度分布の中で、第1の輝度閾値以下の分布個数と、第1の輝度閾値よりも大きい第2の輝度閾値以上の分布個数とを基に、霧霞度を算出する機能である。
【0024】
図3は、画像処理部102から霧霞度算出部103に送られる画像の、輝度のヒストグラム(輝度分布)の例を示した図である。図3中に実線で示されたグラフ300は画像の輝度のヒストグラム例を示しており、横軸は画像の輝度、縦軸は当該輝度の度数を示している。また、図中の左側の破線部は第1の輝度閾値としての黒側の閾値301を示し、右側の破線部は第2の輝度閾値としての白側の閾値302を示している。ここで、黒側の閾値301以下の輝度の画素数が多ければ、画像は黒側に十分な階調を持っていると考えられる。一方、白側の閾値以上の輝度の画素数が多ければ、画像は白側に十分な階調を持っていると考えられる。
このため、本実施形態においては、下記式(1)のように輝度が黒側となる画素数と白側となる画素数の分布個数を基に黒側と白側の両霧霞度を定義する。
【0025】
黒側霧霞度=黒側閾値以下の画素数/全画素数
白側霧霞度=白側閾値以上の画素数/全画素数 式(1)
【0026】
そして本実施形態において、全体画像の霧霞度は、下記式(2)のように定義する。
【0027】
霧霞度=α・黒側霧霞度+(1-α)・白側霧霞度 式(2)
【0028】
ここで、式(2)中のαは任意の係数であり、黒側霧霞度と白側霧霞度のどちらを重視するかを調整する項目になる。また同様に、黒側閾値と白側閾値も任意で設定できる値である。なお本実施形態では、ヒストグラムを使った霧霞度の算出手法の例を挙げたが、この例に限定されるものではなく、画像の霧霞の度合いが算出できれば、どのような手法が用いられてもよい。そして、霧霞度算出部103は、算出した霧霞度の情報を係数算出部104に送る。なお、霧霞度算出部103は、霧霞度に付随する情報である、黒側閾値、白側閾値、黒側霧霞度、及び白側霧霞度などの情報も、係数算出部104に出力してもよい。
【0029】
図2のフローチャートに説明を戻す。ステップS204において、係数算出部104は、画像のコントラスト補正処理に用いられるコントラスト補正係数を算出する。この時、係数算出部104は、霧霞度算出部103で算出された霧霞度に応じて、コントラスト補正係数を算出する。なお、係数算出部104は、霧霞度に付随する情報である、黒側閾値、白側閾値、黒側霧霞度、及び白側霧霞度なども用いて、コントラスト補正係数を算出してもよい。
【0030】
図4(A)と図4(B)は、コントラスト補正係数の2つの具体例を示した図である。図4(A)及び図4(B)は共に、横軸が入力輝度、縦軸が出力輝度を表している。ここで本実施形態では、輝度値を便宜上8bitで表される値として考えているので、入力輝度及び出力輝度は0~255の値となるが、例えば輝度値が10bitで表されるのであれば入力輝度及び出力輝度は0~1023の値となる。また、図4(A)及び図4(B)中の破線部は、入力輝度と出力輝度を1:1で設定した時の入出力特性を示している。一方、図4(A)中の実線部400、及び図4(B)中の実線部420は、コントラスト補正係数を基にコントラスト補正処理が行われる場合の入出力特性を示している。
【0031】
図4(A)は、コントラスト補正係数として、入力画素の輝度値の上限値401と下限値402とを設定し、その間を直線で結んだ実線部400の入出力特性となるようにコントラスト補正を行う方式を表している。ここで、下限値402をより小さく、上限値401をより大きくして破線部に示した1:1の入出力特性に近づけることで、コントラスト補正の効果は弱まっていくことになる。
【0032】
一方、図4(B)は、図4(A)の例よりも、より細かくコントラスト補正をかけたい場合に適用される、実線部420のようなトーンカーブ方式の入出力特性となるようにコントラスト補正を行う方式を表している。トーンカーブ方式の場合、予め設定された複数の入力輝度値にそれぞれ対応する複数の出力輝度値がコントラスト補正係数410として設定される。各コントラスト補正係数410の間の輝度値は、スプライン補間や直線補間などにより求められる。この図4(B)の場合も、コントラスト補正係数410を破線部に示した1:1の入出力特性に近づけることで、コントラスト補正の効果を弱めることができる。
【0033】
前述したように、本実施形態では、2つのコントラスト補正係数の例を挙げたが、コントラスト補正に用いられるパラメータであればよく、これら2つのコントラスト補正係数に限定されるものではない。
【0034】
図2のフローチャートに説明を戻す。ステップS205において、補正強度判定部105は、係数算出部104にて算出されたコントラスト補正係数の値が所定の値以上(コントラスト補正の強度が所定の強度以上になる)かどうかを判定する。例えば前述した図4(A)の場合は、コントラスト補正の強度が所定の強度以上かどうかの判定は、上限値401と下限値402を基に行うことができる。つまり図4(A)の場合、上限値401と下限値402が破線部から横軸方向に離れるにしたがってコントラスト補正の強度が大きくなる。このため図4(A)の場合、補正強度判定部105は、上限値401と下限値402が破線部から横軸方向に所定値以上離れるかどうかにより、コントラスト補正の強度が所定の強度以上になるかどうかを判定することができる。また例えば図4(B)の場合、コントラスト補正の強度が所定の強度以上になるかどうかの判定は、破線部の1:1の入出力特性からの距離を最小二乗法などで求め、その距離の値を基に行ってもよい。つまり図4(B)の場合、コントラスト補正係数410が破線部から離れるにしたがってコントラスト補正の強度が大きくなる。このため図4(B)の場合、補正強度判定部105は、コントラスト補正係数410の破線部からの距離の値が所定の値以上になるかどうかにより、コントラスト補正の強度が所定の強度以上になるかどうかを判定することができる。
【0035】
そして、コントラスト補正係数が所定値以上である場合、補正強度判定部105は、取得された画像は霧霞が発生しているシーンを撮像した画像であると判断し、コントラスト補正係数の補正を行うためのステップS206以降に処理を進める。一方、コントラスト補正係数が所定値以上でない(所定値未満)である場合、補正強度判定部105は、取得された画像は霧霞が発生していない(或いは霧霞が少ない)シーンを撮影した画像であると判断して、ステップS209に処理を進める。つまり、コントラスト補正係数が所定値未満である場合、補正強度判定部105は、コントラスト補正係数の補正を行うためのステップS206以降の処理には進めず、ステップS209に処理を進める。
【0036】
ステップS206に進むと、距離推定部106は、被写体距離を推定する。被写体距離の推定には、前述したように様々な手法があるが、ここでは、前述した画像のコントラストに基づく合焦時のフォーカスレンズ位置を用いた被写体距離推定についての具体例を、図5を用いて説明する。
【0037】
図5において、横軸は被写体距離、縦軸は画像のコントラストを示している。図5中に実線部で示したグラフ500は、フォーカスレンズを至近から無限遠に動作させた場合において、被写体が撮像装置の近傍に位置している場合の画像のコントラストの値の変化をプロットしたものである。また図5中に一点鎖線部で示したグラフ501は、フォーカスレンズを至近から無限遠に動作させた場合において、被写体が撮像装置の近傍から無限遠の中間程度の位置にある場合の画像のコントラストの値の変化をプロットしたものである。図5のグラフ500において、画像のコントラストのピークは被写体に対応しており、したがってこのグラフ500からは、被写体距離は撮像装置に近い距離であることが推定される。同様に、図5のグラフ501においても画像のコントラストのピークは被写体に対応しており、したがってこのグラフ501からは、被写体距離は撮像装置の至近から無限遠の中間程度の距離であることが推定される。
【0038】
ここで濃霧状態で撮像が行われたことで画像のコントラストのピークを判別できない場合には、ピーク判別ができるようになるまで、係数算出部104で算出したコントラスト補正係数を所定係数倍(0~1倍)して、ピークを判別し易くすることが考えられる。これにより、濃霧状態で撮像がなされた場合でも被写体距離の推定が可能になる。
【0039】
図2のフローチャートに説明を戻す。ステップS206の後、ステップS207に進むと、係数補正部107は、距離推定部106で推定された被写体距離が所定の距離閾値以下かどうかを判定する。そして係数補正部107は、被写体距離が所定の距離閾値以下である場合には、ステップS208に処理を進め、コントラスト補正係数の値を低くするように補正(コントラスト補正の強度が弱くなるようにコントラスト補正係数を補正)して出力する。一方、係数補正部107は、推定された被写体距離が所定の距離閾値以下でない場合には、ステップS209に進め、ステップS208でのコントラスト補正係数の補正を行わずに、係数算出部104で算出されたコントラスト補正係数をそのまま出力する。
【0040】
ステップS209に進むと、補正部108は、係数補正部107から出力されたコントラスト補正係数を基に、画像処理部102から出力された画像に対してコントラスト補正処理を行う。
【0041】
なお前述の例では、被写体距離に基づいて、コントラスト補正係数の補正を行ったが、被写体距離に限定されるものではない。例えば、被写体距離ではなく、画像のノイズ量などに基づいてコントラスト補正係数の補正を行うようにしてもよい。
図6は、画像のノイズ量に基づいてコントラスト補正係数の補正を行う場合の構成例を示したブロック図である。なお、図6の構成において、図1と同様の各部には図1と同じ参照符号を付してそれらの説明は省略する。図6に示した構成の場合、図1の距離推定部106に代えて、ノイズ量推定部601が設けられている。また図6の構成例の場合、撮像部101は画像を撮像した際の撮像パラメータを出力し、画像処理部102は画像の分散を求める。
【0042】
ノイズ量推定部601は、撮像パラメータや画像の分散を取得し、それらを基に画像のノイズ量を取得する。本実施形態の場合、ノイズ量推定部601は、ノイズ量取得の手法として、撮像パラメータや画像の分散からノイズ量を推定する手法を用いる。これら撮像パラメータと画像の分散からノイズ量を推定する手法ついては、既知の種々の手法のいずれを用いてもよい。ノイズ量推定部601によって推定されたノイズ量の情報は、係数補正部107に送られる。
【0043】
係数補正部107は、ノイズ量を基にコントラスト補正係数の補正を行う。ここで例えばノイズ量が多い場合に、コントラストを高めるようなコントラスト補正処理を行うと、ますますノイズが多く発生するようになってしまう。このため、係数補正部107は、ノイズ量が大きくなるにつれて、コントラスト補正係数の値を低くするように補正する。
【0044】
図6の構成では、通常の撮影時の画像増幅処理などによるノイズ量とコントラスト補正処理によるノイズ量の総量をコントロールすることにより、より認識しやすい画像を得ることが可能になる。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、第2の実施形態に係る画像処理装置の機能を備えた撮像装置の構成例を示したブロック図である。図7の構成において、図1と同様の各部には図1と同じ参照符号を付してそれらの説明は省略する。図7に示した第2の実施形態の構成の場合、図1の距離推定部106に代えて複数距離推定部702が設けられ、さらに領域分割部701と霧霞判定部703とが設けられている。
【0046】
領域分割部701は、撮像部101から入力された画像を複数の領域に分割する。第2の実施形態の場合、画像を複数の領域に分割することで、ぞれぞれの領域ごとに種々の処理を適用することができる。領域分割部701によって複数に分割された各領域の画像は、複数距離推定部702に送られる。
【0047】
複数距離推定部702は、領域分割部701で分割された複数の領域それぞれについて、被写体距離を推定する。被写体距離を推定する方法は、第1の実施形態の距離推定部106で用いられた距離推定方法と同様の方法を用いて行えばよい。例えば、第1の実施形態で説明した画像のコントラストに基づく合焦時のフォーカスレンズ位置を用いた距離推定手法を、それぞれの領域ごとに適用することで、領域ごとの被写体距離の推定が可能である。また、撮像部101の撮像素子が例えば撮像面上で画素ごとに位相差を検出可能なものである場合、それぞれの領域における各画素の位相差検出信号を基に、領域ごとの被写体距離の推定が行われてもよい。複数距離推定部702にて領域ごとに推定された被写体距離の情報は、霧霞判定部703に送られる。
【0048】
霧霞判定部703は、影響判定処理として、複数距離推定部702で推定された領域ごとの被写体距離と、画像処理部102からの画像とを基に、当該画像が、霧や霞などによるコントラストの低下が視認性に影響する画像であるかどうかを判定する。そして、霧霞判定部703は、当該画像が、霧や霞などによるコントラストの低下が視認性に影響する画像(以下、霧霞画像とする)であるかどうかの判定結果を、係数補正部107に送る。霧霞判定部703における影響判定処理等の具体的な手法については後述する。
【0049】
係数補正部107は、霧霞判定部703において霧霞画像でない(霧霞画像以外である)と判定された場合、コントラスト補正係数の値が所定の値以上であれば、コントラスト補正係数の値を設定値だけ低くするように補正して出力する。一方、係数補正部107は、霧霞判定部703で霧霞画像であると判定された場合、コントラスト補正係数の値が所定の値以上であっても、コントラスト補正係数を補正せずにそのまま出力する。
【0050】
図8は、第2の実施形態の撮像装置における画像取得からコントラスト補正までの処理の流れを示したフローチャートである。なお図8のステップS201~ステップS205、ステップS208、及びステップS209は、前述の図2においてそれぞれ同一の参照符号が付された各ステップと同じ処理が行われるため、それらの説明は省略する。図8のフローチャートの場合、ステップS205でコントラスト補正係数が所定値以上と判定されると、ステップS801の処理に進む。
【0051】
ステップS801に進むと、領域分割部701は、撮像部101から取得した画像を複数の領域に分割する。本実施形態では、処理のしやすさから、例えば図9のように画像を格子状に分割する。各領域の大きさに関しては一定であるとする。なお、画像の分割は、格子状の分割に限定されるものではなく、様々な大きさ・形状への分割であってもよい。また、第2の実施形態では、画像を分割する例を挙げているが、必ずしも実際に画像を分割する必要はない。例えば、撮像部101から取得された画像はそのままで、被写体距離の推定や霧霞判定の評価が行われる領域のみを指定領域として限定するというような手法が用いられてもよい。
【0052】
次にステップS802において、複数距離推定部702は、領域分割部701にて複数に分割された各領域のそれぞれに対して、被写体距離を推定する。
次にステップS803に進むと、霧霞判定部703は、画像処理部102による処理後の画像について、霧や霞などによるコントラストの低下が視認性に影響する霧霞画像であるかどうかを判定する影響判定処理を行う。本実施形態の場合、霧霞判定部703は、画像処理部102による処理後の画像について、被写体距離が所定の距離閾値以下になる領域の数が所定の領域数未満であれば霧霞画像であると判定する。一方、霧霞判定部703は、画像処理部102による処理後の画像について、被写体距離が所定の距離閾値以下になる領域の数が所定の領域数以上である場合には霧霞画像以外であると判定する。
【0053】
以下、図10(A)及び図10(B)を用いて、霧霞判定部703における影響判定処理の具体例を説明する。
図10(A)は、第2の実施形態における霧霞判定処理のイメージを示した図である。
図10(A)に示したイメージ例では、実際には霧霞は出ていないが、ビルなどの建物1001やドア1002の部分では画像の差が少なく全体的にコントラストが低いため、霧霞度が高い状態と誤認され易い画像になっているとする。
図10(B)は、図10(A)の画像を複数の領域に分割し、領域ごとに被写体距離の推定を行った状態の画像のイメージを示している。図10(B)中の格子状の破線部は、画像を複数領域に分割した際の各領域の境界を示しているとする。図10(B)の例では、建物1001とドア1002がほぼ同じ被写体距離になっているのに対し、建物1001でない部分では建物1001及びドア1002とは異なる被写体距離になっている。
【0054】
また図11は、霧霞判定部703の構成例を示したブロック図である。霧霞判定部703は、距離判定部1101、領域計測部1102、及び割合算出部1103を有して構成されている。
【0055】
距離判定部1101は、複数距離推定部702にて算出された距離情報を基に、領域ごとに所定の距離閾値以下かどうかを判定する。ここで、図10(B)の例において、所定の距離閾値以下と判定された各領域をプロットすると、図中に網目模様で示した各領域ではほぼ同じ距離で所定の距離閾値以下になっているとする。なお本実施形態において、所定の距離閾値は、数mから10m程度を想定しているが、撮像部101のレンズの開口F値や絞り値などに応じて任意の閾値に設定してもよい。
【0056】
領域計測部1102は、距離判定部1101にて所定の距離閾値以下と判定された各領域からなる範囲を計測する。本実施形態では、領域分割としてすべて同一の大きさを持つ矩形に分割しているので、領域計測部1102は、所定の距離閾値以下と判定された各領域の数を計測して領域範囲とする。図10(B)の例の場合、図中の網目模様部分で示されている各領域が所定の距離閾値以下の領域であり、当該領域範囲を構成している領域の数は42個になっている。なお、領域分割が、矩形や大きさにこだわらずに任意の形状に分割するようになされた場合、領域計測部1102は、例えば所定の距離閾値以下の各領域からなる領域範囲の面積を計測してもよい。
【0057】
割合算出部1103は、画像の全画面範囲(つまり領域分割された全領域の範囲)に対する、領域計測部1102で所定の距離閾値以下とされた近距離被写体の領域範囲の割合を算出する。近距離被写体の領域範囲の割合は、例えば下記の式(3)により算出することができる。
【0058】
近距離被写体の領域範囲の割合=近距離被写体の領域範囲/全画面領域 式(3)
【0059】
図10(B)に示した例の場合、画像の全画面範囲を構成している全ての領域数は54個であり、近距離被写体の領域範囲における領域数は42個であるため、近距離被写体の領域範囲の割合は約0.78となる。霧霞判定部703は、この近距離被写体の領域範囲の割合が、所定の割合閾値未満であれば、霧霞が生じた場合にコントラストが低下する霧霞画像である判定する。一方、霧霞判定部703は、近距離被写体の領域範囲の割合が、所定の割合閾値以上であれば、霧霞が生じてもコントラストの低下の影響が少ない画像である(霧霞画像以外である)と判定する。本実施形態において、所定の割合閾値を0.5とした場合、図10(B)の例では近距離被写体の領域範囲の割合が約0.78であるため、霧霞判定部703は、霧霞の影響を受け難いと判定する。なお、本実施形態では、所定の割合閾値を0.5としたが、この例に限定されず、例えば0~1の間の任意の値をとることができる。
【0060】
図8のフローチャートに説明を戻す。ステップS803において、霧霞判定部703が霧霞画像ではない(霧霞画像以外である)と判定した場合、ステップS208において、係数補正部107は、コントラスト補正係数の値を低くするように補正して出力する。一方、ステップS803において霧霞画像であると判定された場合、係数補正部107は、コントラスト補正係数の補正を行わず、そのままコントラスト補正係数を出力する。
その後、ステップS209において、補正部108は、前述同様にコントラスト係数係数に基づいて画像のコントラスト補正を行う。
【0061】
また第2の実施形態では、霧霞判定部703で霧霞画像かどうかを判定し、コントラスト補正係数の補正を行うかどうかを判定したが、例えば動き被写体又は特定領域における被写体距離を基に、コントラスト補正係数の補正を行うかどうかを判定してもよい。
【0062】
図12は、動き被写体や特定領域における物体との距離を基にコントラスト補正係数の補正を行うかどうかを判定可能な構成例を示した図である。図12の構成において、図1図7と同様の各部には図1図7と同じ参照符号を付してそれらの説明は省略する。図12に示した構成例の場合、動き検出部1201と領域指定部1202とが設けられている。なお、図12には、動き検出部1201と領域指定部1202の両方が設けられているが、それらのいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0063】
動き検出部1201は、領域分割部701で分割されて複数距離推定部702を介して送られてきた画像を基に、動きベクトルなどから被写体の動きを検出する。さらに、動き検出部1201は、検出した動き被写体における被写体距離を取得する。図12の構成例の場合、動き検出部1201は、複数距離推定部702で領域ごとに推定された被写体距離から、動き被写体における被写体距離を取得する。ここで、被写体距離が所定の距離閾値以下である場合には、その近距離被写体に対する霧霞による認識への影響は少ないと考えられる。
【0064】
また領域指定部1202は、画像の中の特定の領域を選択する。図12の構成例の場合、領域指定部1202は、領域分割部701で分割されて複数距離推定部702を介して送られてきた画像を基に、特定の領域を選択することにより領域指定を行う。さらに領域指定部1202は、その特定の領域における被写体距離を取得する。図12の構成例の場合、領域指定部1202は、複数距離推定部702で領域ごとに推定された被写体距離から、特定の領域における被写体距離を取得する。ここで、特定の領域の被写体距離が所定の距離閾値以下である場合には、動き被写体の場合と同様、その近距離被写体に対する霧霞による認識への影響は少ないと考える。
【0065】
このため、図12の構成例において、係数補正部107は、動き検出部1201による動き被写体の被写体距離が所定の距離閾値以下である場合には、コントラスト補正係数の値を低くするように補正する。
また係数補正部107は、領域指定部1202による特定の領域の被写体距離が所定の距離閾値以下である場合には、コントラスト補正係数の値を低くするように補正する。
【0066】
監視カメラなどにより撮影された画像の場合、動いている被写体や、注目する特定の領域の被写体が、一番認識したい被写体であることが多い。このため、図12の構成例のように、それら動き被写体や特定領域の被写体における被写体距離が近い場合に、余計な霧霞補正の影響を少なくすることで、画像の劣化が最小限に抑えられることになる。
【0067】
なお、第2の実施形態で説明した動き被写体や特定の領域に関する各処理は、前述した第1の実施形態のように領域分割を行わない場合にも適用可能である。第1の実施形態のように領域分割されていない画像から、動き被写体の部分や特定の領域を取得し、それら動き被写体や特定領域の被写体の被写体距離が近い場合、余計な霧霞補正の影響を少なくすることで、画像の劣化を最小限に抑えられる。
【0068】
以上説明したように、本発明の前述した各実施形態によれば、画像のコントラストの低下が霧霞によるものなのか、それ以外によるものなのかを判定することができ、画像に対して適切な霧霞補正を行うことが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0069】
本発明に係る制御処理における1以上の機能を実現するプログラムは、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給可能であり、そのシステム又は装置のコンピュータの1つ以上のプロセッサにより読また出し実行されることで実現可能である。
前述の各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
101:撮像部、102:画像処理部、103:霧霞度算出部、104:係数算出部、105:補正強度判定部、106:距離推定部、107:係数補正部、108:補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12