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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】医療情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240325BHJP
   G16H 80/00 20180101ALI20240325BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H80/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019219560
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021089574
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 進
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/073895(WO,A1)
【文献】特開2017-049985(JP,A)
【文献】特開2014-197312(JP,A)
【文献】特開2006-146869(JP,A)
【文献】特開2016-153961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療計画、治療結果及び医事会計を含み患者の病名に関連する複数の治療情報を、治療計画の決定に関する種々の価値観を類型化した複数の価値観類型に分類する分類部と、
前記複数の価値観類型にそれぞれ対応する複数の指標の統計値を前記複数の治療情報各々に属する一以上の治療計画に基づいて算出する算出部と、
前記複数の価値観類型毎に前記複数の指標の統計値を一覧で表示する表示部と、
を具備する医療情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の治療情報を、前記患者の基本情報と禁忌情報と障がい情報との少なくとも一方に基づいて絞り込む絞り込み部を更に備え、
前記算出部は、前記絞り込まれた治療情報について前記複数の指標の統計値を算出する、
請求項1記載の医療情報処理装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記一覧において、入力インタフェースを介して選択可能に前記複数の価値観類型を表示する、請求項1記載の医療情報処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記複数の価値観類型のうちの一の価値観類型が選択された場合、前記選択された価値観類型に分類された一以上の治療計画を前記一覧で表示する、請求項2記載の医療情報処理装置。
【請求項5】
前記表示された一以上の治療計画が選択された場合、前記選択された治療計画に基づいて前記患者の治療計画を作成する治療計画作成部を更に備える、請求項4記載の医療情報処理装置。
【請求項6】
前記複数の価値観類型は、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先及び美容優先の少なくとも二以上を含む、請求項1記載の医療情報処理装置。
【請求項7】
前記複数の価値観類型は、前記複数の指標各々に対する閾値の組合せにより規定される設定優先を含む、請求項6記載の医療情報処理装置。
【請求項8】
前記複数の指標は、治療の成功率、再発率、医療費、治療期間、侵襲度、後遺症度及び傷跡度を含む、請求項1記載の医療情報処理装置。
【請求項9】
前記一覧の表示後、前記分類された治療情報を、入力された条件に基づいて絞り込む絞り込み部を更に備え、
前記算出部は、前記絞り込まれた治療情報に基づいて前記複数の指標の統計値を再計算し、
前記表示部は、前記再計算後の統計値に従い前記一覧を更新する、
請求項1記載の医療情報処理装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記複数の指標のうちの少なくとも一の指標の統計値を、時系列のグラフで表示する、請求項1記載の医療情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータに、
治療計画、治療結果及び医事会計を含み患者の病名に関連する複数の治療情報を、治療計画の決定に関する種々の価値観を類型化した複数の価値観類型に分類する機能と、
前記複数の価値観類型にそれぞれ対応する複数の指標の統計値を前記複数の治療情報各々に属する一以上の治療計画に基づいて算出する機能と、
前記複数の価値観類型毎に前記複数の指標の統計値を一覧で表示する機能と、
を実現させる医療情報処理プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医療情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者毎に治療計画が作成されている。患者毎に最適な治療計画を作成しようとの試みはあるが、患者の価値観は種々様々であり、患者の価値観に合わせた治療計画を簡易に作成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-153961号公報
【文献】特開2018-519115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、患者の価値観に合わせた治療計画を簡易に作成することを支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医療情報処理装置は、治療計画、治療結果及び医事会計を含み患者の病名に関連する複数の治療情報を、治療計画の決定に関する種々の価値観を類型化した複数の価値観類型に分類する分類部と、前記複数の価値観類型を評価する複数の指標の統計値を前記複数の治療情報に基づいて算出する算出部と、前記複数の価値観類型毎に前記複数の指標の統計値を一覧で表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る治療計画システムの構成を示す図である。
図2図2は、図1の医療情報処理装置の構成を示す図である。
図3図3は、医療情報処理装置による治療計画の提示及び作成の典型的な流れを示す図である。
図4図4は、治療計画の提示画面の一例を示す図である。
図5図5は、価値観評価指標の統計値の一覧表の一例を示す図である。
図6図6は、治療計画の表示例を示す図である。
図7図7は、治療優先の時系列グラフの一例を示す図である。
図8図8は、コスト優先の時系列グラフの一例を示す図である。
図9図9は、胃癌のクリニカルパスに派生する各価値観類型に応じたクリニカルパスを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医療情報処理装置及びプログラムを説明する。
【0008】
本実施形態に係る医療情報処理装置は、治療計画の作成を支援するためのコンピュータである。本実施形態に係る治療計画は、病気や怪我に対して施す外科手術や放射線治療等の医学的処置のための計画を指すものとする。本実施形態に係る医療情報処理装置は、治療計画に関するネットワークシステムの一構成要素であるとする。
【0009】
図1は、本実施形態に係る治療計画システムの構成を示す図である。図1に示すように、治療計画システム1は、互いにネットワークを介して接続された電子カルテシステム3、医事会計システム5及び医療情報処理装置7を有する。
【0010】
電子カルテシステム3は、様々な患者に関する治療計画情報、治療結果情報及び患者情報を記憶するコンピュータシステムである。電子カルテシステム3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むサーバ・コンピュータを含む。治療計画情報、治療結果情報及び患者情報は互いに関連付けて記憶及び管理される。患者情報は、患者基本情報、病名及び禁忌情報を含む。患者基本情報は、生年月日、障がい情報、年齢、性別、身長及び体重を含む。病名は、治療対象である病気又は怪我の名称である。禁忌情報は、当該患者がアレルギ体質である等の禁忌に関する情報である。
【0011】
医事会計システム5は、様々な患者に関する医事会計情報及び患者情報を記憶するコンピュータシステムである。医事会計システム5は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むサーバ・コンピュータを含む。医事会計情報は、患者に対する医療費の請求結果を示すデータである。
【0012】
医療情報処理装置7は、治療計画情報、治療結果情報、医事会計情報及び患者情報を処理し、個々の患者の価値観に適合する治療計画を提示するコンピュータである。治療計画情報、治療結果情報、医事会計情報及び患者情報を総称して治療情報と呼ぶこともある。
【0013】
図2は、医療情報処理装置7の構成を示す図である。医療情報処理装置7は、少なくとも処理回路71、通信インタフェース72、表示機器73、入力インタフェース74及び記憶回路75を有する。
【0014】
処理回路71は、CPU及びGPU等のプロセッサを有する。当該プロセッサが記憶回路75等にインストールされたOS(Operating System)等の基本プログラムを実行することにより、処理回路71は、通信インタフェース72、表示機器73、入力インタフェース74及び記憶回路75間でのデータの授受を行う。処理回路71は、各種プログラムの実行により、取得機能711、分類機能712、絞り込み機能713、集計機能714、治療計画作成機能715及び表示制御機能716を実現する。
【0015】
取得機能711は、治療計画情報、治療結果情報、医事会計情報及び患者情報を含む複数の治療情報を電子カルテシステム3及び医事会計システム5等の医療情報システムから取得する。取得機能711は、特定の条件に合致する治療情報を取得してもよいし、無条件で治療情報を取得してもよい。例えば、取得機能711は、対象患者の病名に関連する治療情報を取得する。
【0016】
分類機能712は、患者の病名に関連する治療計画、治療結果及び医事会計を含む複数の治療情報を、治療計画の決定に関する種々の価値観を類型化した複数の価値観類型に分類する。価値観類型は、治療計画を決定するうえでの優先事項とも言うことができる。
【0017】
価値観類型は、具体的には、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先及び美容優先がある。治療優先は、病気又は怪我の治癒を優先する類型である。治療優先は、治癒成功率が高い治療計画や温存機能のある治療計画を優先したり、医療費を無視したりする。コスト優先は、医療費を安く済ませる事を優先する類型である。コスト優先は、包括医療費支払い制度(DPC:Diagnosis Procedure Combination)や保険適用可能な治療計画を優先する。低侵襲優先は、患者身体への侵襲の程度が低い事を優先する類型である。低侵襲優先は、被曝量の低い治療計画、副作用の少ない治療計画を優先する。期間優先は、治療に掛かる期間が短い事を優先する類型である。期間優先は、治療期間が短い治療計画を優先する。低リスク優先は、病気又は怪我が治癒するか否かに関わらず、後遺症の少ない事を優先する類型であり。低リスク優先は、後遺症の少ない治療計画を優先する。美容優先は、治癒後の容姿を優先する類型である。美容優先は、傷跡が少ない治療計画を優先する。価値観類型は、上記のみに限定されず、他の任意の類型が含まれてもよい。
【0018】
絞り込み機能713は、分類機能712による分類後又は分類機能712による分類前、任意の検索条件に従い治療情報を絞り込む。例えば、絞り込み機能713は、対象患者の患者基本情報と禁忌情報との少なくとも一方に基づいて絞り込む。
【0019】
集計機能714は、複数の価値観類型を評価する複数の指標の統計値を、複数の治療情報に基づいて算出する。当該指標を価値観評価指標と呼ぶことにする。価値観評価指標は、治療優先の場合、例えば、治療成功率や再発率であり、コスト優先の場合、医療費であり、低侵襲優先の場合、侵襲度であり、期間優先の場合、治療期間であり、低リスク優先の場合、後遺症度であり、美容優先の場合、傷跡度である。
【0020】
治療計画作成機能715は、対象患者の治療計画を作成する。例えば、治療計画作成機能715は、入力インタフェース74を介して指定された治療計画に基づいて、対象患者の治療計画を作成する。
【0021】
表示制御機能716は、種々の情報を表示機器73に表示する。表示制御機能716は、例えば、集計機能714により算出された価値観評価指標の統計値を一覧で表示する。また、表示制御機能716は、集計機能714により算出された価値観評価指標の統計値を、時系列のグラフで表示する。
【0022】
通信インタフェース72は、他のコンピュータとの間でデータ通信するためのインタフェースである。例えば、通信インタフェース72は、電子カルテシステム3及び医事会計システム5等との間でネットワークを介して種々のデータ通信を行う。
【0023】
表示機器73は、処理回路71の表示制御機能716に従い種々の情報を表示する。表示機器73としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが適宜使用可能である。また、表示機器73は、プロジェクタでもよい。
【0024】
入力インタフェース74は、医師等のユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を操作信号に変換して処理回路71に出力する。具体的には、入力インタフェース74は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の入力機器にケーブルを介して接続されている。また、入力インタフェース74は、通信インタフェース72を介してネットワークに接続された他のコンピュータでもよい。
【0025】
記憶回路75は、種々の情報を記憶するROMやRAM、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Detector)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。記憶回路75は、上記記憶装置以外にも、CD、DVD、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体や、半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。例えば、記憶回路75は、取得機能711により取得された治療計画情報、治療結果情報、医事会計情報及び患者情報等を記憶する。
【0026】
次に、医療情報処理装置7による治療計画の提示及び作成に関する一連の処理について説明する。
【0027】
図3は、医療情報処理装置7による治療計画の提示及び作成の典型的な流れを示す図である。図3に示す処理は、医師と治療計画の作成対象の患者(以下、単に対象患者とも呼ぶ)とが治療計画の方針について話し合う局面において実行される。図3に示すように、まず、取得機能711により、対象患者の病名に関連する治療情報が取得される(ステップS1)。対象患者の病名は、例えば、治療計画の提示画面等に入力することにより指定される。治療情報は、可能な限り多くの情報を取得するため、日本全国又は世界中に分布する医療施設から取得される。なお、治療情報は、医療情報処理装置7の設置施設や診療科等に保存されているものに限定して取得されてもよい。
【0028】
ステップS1が行われると、絞り込み機能713により、治療情報が患者基本情報及び禁忌情報で絞り込まれる(ステップS2)。患者基本情報及び禁忌情報は、例えば、治療計画の提示画面等に入力することにより指定される。
【0029】
図4は、治療計画の提示画面I1の一例を示す図である。図4に示すように、提示画面I1には、患者入力欄IR1、病名入力欄IR2、患者基本情報入力欄IR3及び禁忌情報入力欄IR4を含む。患者入力欄IR1には、対象患者の氏名等の患者を特定可能な情報が入力される。病名入力欄IR2には、対象患者の病名が入力される。患者基本情報入力欄IR3には、対象患者の生年月日、障がい情報、年齢、性別、身長及び体重等の患者基本情報が入力される。禁忌情報入力欄IR4には、アレルギ等の禁忌情報が入力される。
【0030】
病名入力欄IR2に病名が入力されると、ステップS1において取得機能711により、入力された病名に関連する治療情報が取得される。より詳細には、電子カルテシステム3から、入力された病名に関連する治療計画情報及び治療結果情報が取得され、医事会計システム5から、入力された病名に関連する医事会計情報が取得される。また、取得機能711により、電子カルテシステム3から治療計画情報及び治療結果情報に関連付けられた患者情報、医事会計システム5から医事会計情報に関連付けられた患者情報が取得される。同一患者及び同一病名に関する治療計画情報、治療結果情報、医事会計情報及び患者情報は互いに関連付けて管理される。
【0031】
患者基本情報入力欄IR3に患者基本情報が入力されると、ステップS2において絞り込み機能713により、入力された患者基本情報に基づいて、ステップS1において取得された治療情報が絞り込まれる。例えば、患者基本情報として体重「60kg」が入力された場合、体重「60kg」及びそれに近似する体重を有する患者の治療情報に制限される。例えば、禁忌情報として「アレルギ」が入力された場合、アレルギを有する患者の治療情報に制限される。例えば、患者基本情報として年齢「50」が入力された場合、年齢「50」及びそれに近似する年齢の患者の治療情報に制限される。なお、小児科では乳幼児(例えば、6歳以下)の患者を対象にすることもある。乳幼児では日単位で状況が変わりうるので、患者基本情報として生年月日を用いることが有用である。例えば、患者基本情報として年齢「2」且つ生年月日「2017年12月3日」が入力された場合、当該生年月日から前後数ヶ月(例えば、±2ヶ月)に生年月日のある患者の治療情報に制限される。また、患者基本情報として障がい情報が入力されてもよい。障がい情報は、当該患者の先天的であると後天的であるとを問わず、身体や精神に関する障がいの情報を含む。例えば、障がい情報としては、例えば、手足欠損や認知症等が含まれる。例えば、障がい情報「認知症」が入力された場合、「認知症」及びそれに類する障がいを有する患者の治療情報に制限される。
【0032】
ステップS2が行われると、分類機能712により、ステップS2において絞り込まれた治療情報が複数の価値観類型に分類される(ステップS3)。より詳細には、データマイニング(Data Mining)により複数の治療情報が分析され複数の価値観類型に分類される。治療情報各々について各価値観類型の各価値観評価指標の値を探索し、各価値観評価指標の値が分類条件を満足するか否かが判定される。分類条件は、例えば、当該値が、価値観評価指標の種類に応じて、予め設定された閾値よりも高い又は低いことである。分類条件を満足する場合、当該治療情報が当該価値観類型に分類される。各価値観評価指標の値は各治療情報に予め割り当てられているものとする。上記の通り、価値観類型としては、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先及び美容優先がある。例えば、治療優先の場合、価値観評価指標である治癒成功率等が閾値よりも高い治療計画が分類される。例えば、コスト優先の場合、医療費が閾値よりも安い治療計画が分類される。例えば、低侵襲優先の場合、価値観評価指標である侵襲度が閾値よりも低い治療計画が分類される。例えば、期間優先の場合、価値観評価指標である治療期間が閾値よりも短い治療計画が分類される。例えば、低リスク優先の場合、価値観評価指標である後遺症度が閾値よりも低い治療計画が分類される。例えば、美容優先の場合、価値観評価指標である傷跡度が閾値よりも小さい治療計画が分類される。
【0033】
価値観類型として、任意に設定可能な設定優先が設けられてもよい。設定優先は、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先及び美容優先の価値観類型指標に対する任意の閾値の組合せにより規定される。医療情報処理装置7を使用する医療施設や診療科、医師等に特化した治療計画を提示することができる。
【0034】
一の治療計画が二以上の価値観類型の分類条件を満足する場合、その分類条件に対応する全ての価値観類型に分類されてもよいし、二以上の価値観類型のうちの最も値が良好な一の価値観類型に分類されてもよい。
【0035】
ステップS3が行われると、集計機能714により、価値観評価指標の統計値が集計される(ステップS4)。より詳細には、各価値観類型について当該価値観類型に属する一以上の治療計画に基づいて、複数の価値観評価指標の統計値が集計される。例えば、治療優先に100件の治療計画が分類された場合、100件の治療計画に基づいて、治療成功率や再発件数、医療費、治療期間、侵襲度、後遺症度、傷跡度等の価値観評価指標の統計値が集計される。統計値は価値観評価指標の種類に応じて、平均値や最大値、最小値でもよいし、件数や百分率等でもよい。
【0036】
ステップS4が行われると、表示制御機能716により、価値観評価指標の統計値が一覧で表示される(ステップS5)。ステップS5においては、価値観評価指標の統計値の一覧表が、例えば、図4に示す提示画面I1の一覧表示欄IR5に表示される。
【0037】
図5は、価値観評価指標の統計値の一覧表の一例を示す図である。図5に示すように、一覧表の縦に沿って価値観類型である、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先、美容優先及び設定優先が配列される。一覧表の横に沿って、「症例」の他、価値観類型指標である、「成功率」、「再発」、「会計」、「期間」、「侵襲」、「後遺症」及び「傷跡」が配列される。一覧表の各価値観類型は、例えば、GUI(Graphical User Interface)形式で、入力インタフェース74を介して選択可能に表示される。
【0038】
「症例」は、各価値観類型に属する治療計画(症例)の件数を表す。症例に関する情報は、例えば、治療計画及び治療結果に記述されている。「成功率」は、治療優先の価値観類型指標である治癒成功率である。治癒成功率は、当該価値観類型に属する全治療計画の数と成功の治療計画の数との割合に基づいて算出される。例えば、「完治」や「成功」等の文字列が治療結果に入力されている場合、当該治療結果に関連付けられた治療計画は成功の治療計画に計上される。反対に、「再発」や「失敗」等の文字列が治療結果に入力されている場合、当該治療結果に関連付けられた治療計画は成功の治療計画に計上されない。「再発」は、治療優先の価値観類型指標である再発率であり、当該価値観類型に属する全治療計画数のうち再発率が閾値を下回った件数と、その百分率とを表す。例えば、同一病名の再入院等の事例がある場合、当該事例は、失敗又は再発有りに計上される。「会計」は、コスト優先の価値観類型指標である医療費であり、当該価値観類型に属する全治療計画の平均値を表す。医療費は、個人負担分が表示されればよい。医療費は医事会計に入力されている。なお、平均値に限定されず、最大値又は最小値等が表示されてもよい。
【0039】
「期間」は、期間優先の価値観類型指標である治療期間であり、当該価値観類型に属する全治療計画の平均値を表す。期間欄の「入3ヶ月+外3ヶ月後」は入院期間が3ヶ月であり、その後の外来期間が3ヶ月であることを表す。なお、平均値に限定されず、最大値又は最小値等が表示されてもよい。「侵襲」は、低侵襲優先の価値観類型指標である侵襲度であり、当該価値観類型に属する全治療計画の平均値を表す。侵襲度は、例えば、治療計画又は治療結果、より詳細には、術式や撮影方式のオーダ情報の欄に入力されている。侵襲度は、例えば、「大」、「中」、「小」、「なし」の4段階で表されるが、これに限定されず、3段階や10段階等の任意の段階で表されてもよく、また、数値で表されてもよい。なお、平均値に限定されず、最大値又は最小値等が表示されてもよい。
【0040】
「後遺症」は、低リスク優先の価値観類型指標である後遺症度であり、当該価値観類型に属する全治療計画の平均値を表す。後遺症度は、例えば、治療計画又は治療結果、より詳細には、術式や撮影方式のオーダ情報の欄に入力されている。後遺症は、例えば、「大」、「中」、「小」、「なし」の4段階で表されるが、これに限定されず、5段階や10段階等の任意の段階で表されてもよく、また、数値で表されてもよい。なお、平均値に限定されず、最大値又は最小値等が表示されてもよい。「傷跡」は、美容優先の価値観類型指標である傷跡度であり、当該価値観類型に属する全治療計画の平均値を表す。傷跡度は、例えば、治療結果に入力されている。傷跡度は、例えば、「大」、「中」、「小」、「ほぼなし」、「なし」の5段階で表されるが、これに限定されず、3段階や10段階等の任意の段階で表されてもよく、また、数値で表されてもよい。なお、平均値に限定されず、最大値又は最小値等が表示されてもよい。
【0041】
なお、価値観類型指標の統計値の一覧表は、プリンタにより印刷されてもよい。
【0042】
ステップS5が行われると、一の価値観類型の選択が待機される(ステップS6)。対象患者や医師は、一覧表を観察することにより、各価値観類型に基づく治療計画の概要を知ることができる。対象患者は医師と話し合いながら各価値観類型に基づく治療計画の説明を聞き、どの価値観類型に基づく治療計画を選択するかを決定する。医師は、対象患者から要望された価値観類型を、入力インタフェース74を介して選択する。
【0043】
一の価値観類型が選択されると(ステップS6:YES)、表示制御機能716により、選択された価値観類型に属する治療計画が表示される(ステップS7)。
【0044】
図6は、治療計画の表示例を示す図である。図6に示すように、例えば、価値観類型として美容優先が選択された場合、美容優先のレコードの直下に、プルダウン形式で表示される。美容優先に属する治療計画の症例数は15件あるので、15件の治療計画が表示されることとなる。治療計画の表示形式としては、例えば、図6に示すように、各治療計画の価値観類型指標が表示されるとよい。入力インタフェース74を介して治療計画が選択されることを契機として、治療計画の詳細が表示されてもよい。
【0045】
ステップS7が行われると、一の治療計画の選択が待機される(ステップS8)。患者や医師は、各治療計画を観察することにより、各治療計画の概要を知ることができる。対象患者は医師と話し合いながら各治療計画の説明を聞き、自身の価値観に近い治療計画を決定する。医師は、対象患者から要望された治療計画を、入力インタフェース74を介して選択する。
【0046】
一の治療計画が選択されると(ステップS8:YES)、治療計画作成機能715により、選択された治療計画に基づき対象患者の治療計画が作成される(ステップS9)。例えば、治療計画作成機能715は、選択された治療計画をコピーして、対象患者の治療計画に反映する。作成された治療計画は、対象患者の患者情報に関連付けて記憶回路75に記憶される。また、作成された治療計画は、表示機器73に表示されてもよい。
【0047】
以上により、医療情報処理装置7による治療計画の提示及び作成に関する処理が終了する。
【0048】
なお、上記の処理は一例であり、種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、ステップS5において価値観評価指標の統計値の一覧表が表示されるものとしたが、時系列グラフが表示されてもよい。時系列グラフは、一覧表において表示される複数の価値観評価指標のうちの少なくとも一以上の価値観評価指標を模式的に時系列で表示するものである。
【0050】
図7は、治療優先の時系列グラフの一例を示す図である。図8は、コスト優先の時系列グラフの一例を示す図である。図7及び図8に示す時系列グラフは、価値観評価指標である治療期間を時系列で表現している。時系列グラフによれば、入院期間と外来通院期間とが模式的に表示され、また、入院期間及び外来通院期間における、入院、検査、治療、回復、退院等の各種イベント等が時系列で図式的に表示されている。すなわち、時系列グラフによれば、患者や医師が治療期間を容易に理解することができる。なお、時系列グラフが表す価値観類型指標は治療期間に限定されず、治療成功率や再発件数、医療費、侵襲度、後遺症度、傷跡度等でもよい。
【0051】
上記の説明において治療情報の絞り込み(ステップS2)が行われた後、治療情報の分類(ステップS3)が行われるものとした。しかしながら、治療情報の分類が行われた後に治療情報の絞り込みが行われてもよい。
【0052】
ステップS9の治療計画作成処理では、例えば、治療計画の一部としてクリニカルパス(入院診療計画書)が作成される。クリニカルパスは、医療情報処理装置7の設置施設に特化したものが予めテンプレートとして作成及び記憶される。この際、一の症例及び手術に対して、価値観類型に応じて複数のクリニカルパスが作成及び記憶される。
【0053】
図9は、胃癌のクリニカルパスに派生する各価値観類型に応じたクリニカルパスを模式的に示す図である。図9に示すように、胃癌のクリニカルパスは、治療優先のクリニカルパス、コスト優先のクリニカルパス、低侵襲優先のクリニカルパス、期間優先のクリニカルパス、低リスク優先のクリニカルパス、美容優先のクリニカルパス及び設定優先のクリニカルパスに分類される。治療計画作成機能715は、一の治療計画が選択された場合、選択された治療計画が属する価値観類型に対応するクリニカルパスに基づいて、対象患者のためのクリニカルパスを作成するとよい。
【0054】
ステップS2における治療情報の絞り込みは、患者基本情報及び禁忌情報に基づいて行われるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、治療情報は、現時点から遡って一定期間(例えば、3ヶ月等)に生成されたものに絞られてもよい。
【0055】
治療情報の絞り込みは、ステップS5の一覧の表示前に限らず、一覧の表示後に行われてもよい。この際、医師等のユーザは、入力インタフェース74を介して、任意の絞り込み条件を入力可能である。例えば、絞り込み条件として、病院お薦めのクリニカルパスの採用の有無、治療期間が短期又は長期の観点から絞り込みが行われてもよい。絞り込み条件として、更には治療指示内容、実施結果、治療期間結果、医事会計結果、検査結果、禁忌事項、リスク情報、クリニカルパス内容、DPC内容等の詳細に基づいて絞り込みが行われてもよい。絞り込みが行われると集計機能714により、絞り込み後の治療情報に基づいて価値観評価指標の統計値が再計算され、再集計後の統計値に従い一覧表が更新される。対象患者と医師とが話し合い、患者等が希望する価値観類型の症例数が1件になるまで、種々の観点から絞り込みが行われてもよい。
【0056】
上記の説明において一覧の各レコードは、各価値観類型に属する治療計画の統計結果を表すものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、各レコードは、各価値観類型を代表する一の治療計画の統計結果を表すとしてもよい。この場合、図5の治療優先については、会計(医療費)「200万」、期間(治療期間)「入3ヶ月+外3ヶ月後」、侵襲(侵襲度)「大」、後遺症(後遺症度)「なし」及び傷跡度「大」の治療計画が100件あることを意味する。
【0057】
上記の説明において傷跡度や侵襲度は、「大」、「中」、「小」の記号で表されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、傷跡度や侵襲度として、治療部位に対して外科的施術を施す部分を模式的に示す模式図が表示されてもよい。乳癌に対する切除術の場合、乳房の温存を希望する者もいる。この者の価値観類型は、美容優先に分類される。美容優先に分類される者は、手術後において乳房がどのくらい温存されるかが治療計画を決定するうえで重要な因子である。そのため、乳房の切除部位を模式的に表現する模式図は、治療計画の決定についての良い指針となり得る。
【0058】
上記の説明において治療成功率として、成功した症例数が表示されるものとした。しかしながら、表示制御機能716により、例えば、入力インタフェース74を介して、一覧表の成功率(治療成功率)の欄が押下された場合、当該価値観類型に属する治療計画のうちの失敗した事例に関する治療計画及び治療結果が表示されてもよい。治療計画及び治療結果が表示されることにより、再発や死亡等の失敗の原因が明確になる。失敗した事例に関する治療計画及び治療結果が表示されることにより、患者や医師は、リスクを加味して治療計画を決定することができる。
【0059】
価値観類型のうちのコスト優先については、主として、医療費が安いものを優先するとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。良好な入院環境を求める場合、医療費は高い傾向にある。例えば、VIP(Very Important Person)待遇の病室は、個室であり且つセキュリティも高いため、医療費が高額になる傾向にある。例えば、分類機能712により、入力インタフェース74を介して、一覧表の会計(医療費)の欄が押下された場合、更に入院環境の程度に応じて治療情報が分類されてもよい。入院環境の程度としては、例えば、1部屋1病床且つ秘匿性を担保した「VIP待遇」、1部屋1病床の「個室」、1部屋2~3病床の「小部屋」、1部屋4病床以上の「大部屋」のように区分されるとよい。入院環境の程度と医療費とが並べて表示することにより、患者や医師は、入院環境の程度と医療費との関連等を知ったうえで、治療計画を決定することができる。
【0060】
上記の説明において価値観類型として、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先、美容優先及び設定優先があるとした。しかしながら、価値観類型は、これに限定されず、放置優先が設けられてもよい。放置優先は、治療をせずに経過観察をすることを優先する。これにより、放置する事も加味して治療計画を決定することができる。また、使用される価値観類型は、治療優先、コスト優先、低侵襲優先、期間優先、低リスク優先、美容優先及び設定優先の全てである必要はなく、これらのうちの少なくとも2種以上であればよい。
【0061】
上記の治療計画の提示及び作成は、中途まで実行された治療計画を変更するために実行されてもよい。この場合、図3に示す処理開始時点までに要した治療期間、医療費及び侵襲度等を加味して統計値等が計算されるとよい。
【0062】
なお、本実施形態に治療計画システム1の構成は上記に限定されず、更にPACS(Picture Archiving and Communication System)やHIS(Hospital Information)、RIS(Radiology Information System)等を含んでも良い。また、治療計画システム1の幾つかの要素が統合されても良い。例えば、電子カルテシステム3と医療情報処理装置7とが統合されてもよいし、医事会計システム5と医療情報処理装置7とが統合されてもよい。電子カルテシステム3及び医事会計システム5が統合されてもよい。
【0063】
上記の説明の通り、本実施形態に係る医療情報処理装置7は、少なくとも分類機能712、集計機能714及び表示制御機能716を有する。分類機能712は、治療計画、治療結果及び医事会計を含み患者の病名に関連する複数の治療情報を、治療計画の決定に関する種々の価値観を類型化した複数の価値観類型に分類する。集計機能714は、複数の価値観類型を評価する複数の価値観評価指標の統計値を複数の治療情報に基づいて算出する。表示制御機能716は、複数の価値観類型毎に複数の価値観評価指標の統計値を一覧で表示する。
【0064】
上記の構成によれば、種々の価値観類型での価値観評価指標を一覧で参照することができるので、各類型の善し悪し等を把握したうえで、患者の生活に合わせた現実的な治療計画を選択及び作成することができる。
【0065】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、患者の価値観に合わせた治療計画を簡易に作成することを支援することができる。
【0066】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現しても良い。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1及び図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 治療計画システム
3 電子カルテシステム
5 医事会計システム
7 医療情報処理装置
71 処理回路
72 通信インタフェース
73 表示機器
74 入力インタフェース
75 記憶回路
711 取得機能
712 分類機能
713 絞り込み機能
714 集計機能
715 治療計画作成機能
716 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9