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特許7458783発光装置及び有機EL装置、並びにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】発光装置及び有機EL装置、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20240325BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240325BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240325BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20240325BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240325BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240325BHJP
【FI】
H05B33/02
G03F7/027 515
G06F3/041 400
H05B33/04
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019527960
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2018025527
(87)【国際公開番号】W WO2019009360
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2017132640
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宏充
(72)【発明者】
【氏名】石橋 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】田崎 太一
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】井口 猶二
【審判官】廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500647(JP,A)
【文献】特開2014-130417(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161862(WO,A1)
【文献】特開2015-172742(JP,A)
【文献】特開2006-276211(JP,A)
【文献】特開2016-71379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に発光素子と、
前記発光素子上に封止層と、
前記封止層上に硬化樹脂部を有するタッチパネル部材と
を有する発光装置であり、
前記硬化樹脂部は、前記封止層と直接接して形成されており、
前記硬化樹脂部が、粘着層又は接着層を介して、前記基板、前記発光素子、及び前記封止層を有する素子基板に貼りあわされているものではなく、
前記硬化樹脂部が、パターン化硬化樹脂層を含み、
前記パターン化硬化樹脂層が、70質量%2-アミノエタノール水溶液に60℃で5分間浸漬させた場合の、浸漬前の膜厚を100としたときの浸漬後の膜厚が80~120であり、
前記タッチパネル部材が、(1)第1の金属配線層と、(2)第2の金属配線層と、(3)前記第1及び第2の金属配線層の間に形成され、前記第1及び第2の金属配線層を部分的に絶縁し、かつ前記第1及び第2の金属配線層を導通させる配線が形成されたコンタクトホールを有する、パターン化硬化樹脂層と、(4)前記第2の金属配線層を被覆する硬化樹脂層とを有する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子が有機EL素子であり、前記発光装置が有機EL装置である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記パターン化硬化樹脂層が、感放射線性樹脂組成物より形成された層である請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記硬化樹脂部が、前記パターン化硬化樹脂層の前記発光素子側に、配線下地層としての硬化層をさらに含む請求項1~のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に有機EL素子と、
前記有機EL素子を封止する封止層と、
前記封止層付の有機EL素子上にタッチパネル部材と
を有するタッチパネル付き有機EL装置であり、
前記タッチパネル部材が、粘着層又は接着層を介して、前記基板、前記有機EL素子、及び前記封止層を有する有機EL素子基板に貼りあわされているものではなく、
前記タッチパネル部材が、パターン化硬化樹脂層を含み、前記パターン化硬化樹脂層が、70質量%2-アミノエタノール水溶液に60℃で5分間浸漬させた場合の、浸漬前の膜厚を100としたときの浸漬後の膜厚が80~120であり、かつ、前記タッチパネル部材の有機EL素子側の面上にはタッチパネル用支持基板が配置されておらず、
前記タッチパネル部材が、(1)第1の金属配線層と、(2)第2の金属配線層と、(3)前記第1及び第2の金属配線層の間に形成され、前記第1及び第2の金属配線層を部分的に絶縁し、かつ前記第1及び第2の金属配線層を導通させる配線が形成されたコンタクトホールを有する、パターン化硬化樹脂層と、(4)前記第2の金属配線層を被覆する硬化樹脂層とを有する
ことを特徴とするタッチパネル付き有機EL装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び有機EL装置、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進められている発光素子の一つとして、陽極、有機発光層及び陰極を含む積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が知られている。有機EL装置は、前記有機EL素子を有している。ここで、装置全面にタッチパネル部材を有するタッチパネル付き有機EL装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記タッチパネル付き有機EL装置は、例えば、タッチパネル用支持基板上にタッチパネル部材を形成してタッチパネルを製造した後に、タッチパネル用支持基板を、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせて製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-161806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチパネル用支持基板を、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせる場合、有機EL装置全体の厚さが大きくなり有機EL装置を屈曲させた場合に当該装置の破損又は機能低下が起こることがある。
【0006】
タッチパネル用支持基板を、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせるのではなく、有機EL素子上に直接リソグラフィ及びエッチング等の手法によりタッチパネルを作製することで大幅に有機EL装置等の発光装置全体の厚さを小さくすることができる。しかしながら、従来の手法ではタッチパネル内のパターニング樹脂絶縁膜の形成には100℃超の温度でのベークが必要であり、パターン化硬化樹脂層を有機EL素子上に直接形成した際にはEL発光層の劣化を招くという弊害が有った。またパターン化硬化樹脂層を従来の材料で100℃以下の低温で形成した場合にはパターン化硬化樹脂層が配線形成のためのエッチング薬液に耐えられず、タッチパネル構造の作製が不可能であった。
【0007】
本発明は、有機EL装置等の発光装置上のタッチパネル用支持基板を不要とし、発光装置全体の厚さを小さくすることで、より屈曲性の良い発光装置を提供し、しかも薬液耐性の高いパターン化硬化樹脂層を有する発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、100℃以下の温度で薬液耐性の高いパターン化硬化樹脂層を発光素子上に直接形成することにより、タッチパネル用支持基板を不要とし、有機EL装置等の発光装置全体の厚さを小さくすることができ、したがって屈曲性の良い発光装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の[1]~[13]に関する。
【0009】
[1]基板と、前記基板上に発光素子と、前記発光素子上に硬化樹脂部とを有する発光装置であり、前記硬化樹脂部が、パターン化硬化樹脂層を含み、前記パターン化硬化樹脂層が、70質量%2-アミノエタノール水溶液に60℃で5分間浸漬させた場合の、浸漬前の膜厚を100としたときの浸漬後の膜厚が80~120であり、前記発光装置が、前記硬化樹脂部と前記発光素子との間に、ガラス基板、又はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ポリノルボルネン及びトリアセチルセルロース樹脂の群から選ばれる少なくとも1種からなり、厚さ50μmを超える支持体を有さないことを特徴とする発光装置。
【0010】
[2]前記発光素子が有機EL素子であり、前記発光装置が有機EL装置である前記[1]に記載の発光装置。
【0011】
[3]前記パターン化硬化樹脂層が、感放射線性樹脂組成物より形成された層である前記[1]又は[2]に記載の発光装置。
【0012】
[4]前記硬化樹脂部が、前記発光素子を封止する封止層上に形成されており、かつ、前記発光装置が、前記硬化樹脂部と前記封止層との間に、前記ガラス基板又は支持体を有さない前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の発光装置。
【0013】
[5]前記硬化樹脂部が、前記発光素子又はその封止層と直接接している前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の発光装置。
【0014】
[6]前記硬化樹脂部が、粘着層又は接着層を介して、前記基板及び前記発光素子を有する素子基板に貼りあわされているものではない前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の発光装置。
【0015】
[7]前記硬化樹脂部が、前記パターン化硬化樹脂層の前記発光素子側に、配線下地層としての硬化層をさらに含む前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の発光装置。
【0016】
[8]基板と、前記基板上に有機EL素子と、前記有機EL素子上にタッチパネル部材とを有するタッチパネル付き有機EL装置であり、前記タッチパネル部材が、パターン化硬化樹脂層を含み、前記パターン化硬化樹脂層が、70質量%2-アミノエタノール水溶液に60℃で5分間浸漬させた場合の、浸漬前の膜厚を100としたときの浸漬後の膜厚が80~120であり、かつ、前記タッチパネル部材の有機EL素子側の面上にはタッチパネル用支持基板が配置されていないことを特徴とするタッチパネル付き有機EL装置。
【0017】
[9]前記タッチパネル部材が、(1)第1の金属配線層と、(2)第2の金属配線層と、(3)前記第1及び第2の金属配線層の間に形成され、前記第1及び第2の金属配線層を部分的に絶縁し、かつ前記第1及び第2の金属配線層を導通させる配線が形成されたコンタクトホールを有する、パターン化硬化樹脂層と、(4)前記第2の金属配線層を被覆する硬化樹脂層とを有する、前記[8]に記載のタッチパネル付き有機EL装置。
【0018】
[10]基板と、前記基板上に発光素子と、前記発光素子上に硬化樹脂部とを有する発光装置であり、前記硬化樹脂部が、パターン化硬化樹脂層を含む発光装置の製造方法であって、(1)感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成する工程と、(2)前記塗膜に、マスクを介して、第1の放射線を照射する工程と、(3)放射線照射後の前記塗膜を現像する工程と、(4)現像後の前記塗膜に第2の放射線を照射して、前記パターン化硬化樹脂層を形成する工程と(ただし、工程(4)は100℃以下で行い、また、第1の放射線と第2の放射線は同一でも異なっていてもよい。)を有する、発光装置の製造方法。
【0019】
[11]前記工程(4)が、(4-i)前記塗膜を100℃以下で加熱した後、第2の放射線を照射する工程;又は(4-ii)前記塗膜に第2の放射線を照射した後、100℃以下で加熱する工程である、前記[10]に記載の発光装置の製造方法。
【0020】
[12]前記発光装置が、基板と、前記基板上に有機EL素子と、前記有機EL素子上にタッチパネル部材とを有するタッチパネル付き有機EL装置であり、前記タッチパネル部材が、パターン化硬化樹脂層を含み、前記有機EL装置が、前記有機EL素子と前記タッチパネル部材との間に、タッチパネル用支持基板を有さないタッチパネル付き有機EL装置である、前記[10]又は[11]に記載の発光装置の製造方法。
【0021】
[13]前記感放射線性樹脂組成物が、下記式(1)で示される重合体と感放射線性重合開始剤とを含有する前記[10]~[12]のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【0022】
【化1】
[式(1)中、nおよびmは、それぞれ独立に1~30の整数を示す。]
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、100℃以下の温度で薬液耐性の高いパターン化硬化樹脂層を発光素子上に直接形成することで有機EL装置等の発光装置全体の厚さを小さくすることができ、それにより発光装置を屈曲させた場合に当該装置の破損又は機能低下を防止することができる発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1に、本発明の発光装置の一実施態様の断面図を示す。
図2図2に、従来の発光装置の一実施態様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、好適態様も含めて詳細に説明する。本明細書で例示する各成分は、特に言及しない限り、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本明細書において引用される各特許公報に記載されている化合物等は、本明細書に記載されているものとする。
【0026】
[発光装置]
本発明の発光装置は、基板と、前記基板上に発光素子と、前記発光素子上に硬化樹脂部とを有し、前記硬化樹脂部が、パターン化硬化樹脂層を含む。
【0027】
ただし、本発明の発光装置は、硬化樹脂部と発光素子との間に、ガラス基板、又はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ポリノルボルネン及びトリアセチルセルロース樹脂の群から選ばれる少なくとも1種からなり、厚さ50μmを超える支持体を有さない。以下、これらのガラス基板及び前記樹脂からなる支持体を総称して「支持基板」ともいう。また、発光素子が形成された基板を「素子基板」ともいう。
【0028】
このような態様であると、硬化樹脂部が形成された支持基板を、粘着層又は接着層を介して素子基板に貼り合わせて硬化樹脂部を発光素子上に配置した発光装置と比較して、発光装置の厚さを大幅に小さくすることが可能である。
【0029】
本明細書において「AA上のBB」や「AA上に配置されたBB」、「AA上にBBを形成する」という表現において、AAとBBは接していてもよく、AAとBBは接していなくともよく、例えば他の層がAAとBBとの間に存在していてもよい。
【0030】
発光装置は、例えば、有機発光層及び有機半導体薄膜等の有機層を含む積層構造を備えた装置であり、具体的には、有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置、有機トランジスタが挙げられ、有機EL装置が好ましい。有機EL装置としては、例えば、有機EL照明装置、有機EL表示装置が挙げられる。これらの発光装置は、装置前面にパターン化硬化樹脂層を含むパターニング構造(例:タッチパネル部材、光取出し構造、光散乱構造、レンズ構造)を有する。
【0031】
<基板>
基板としては、例えば、ガラス基板及び樹脂基板が挙げられ、一実施態様では、可視光に対して透過率の高い透明基板が挙げられる。屈曲性の観点から、樹脂基板が好ましい。基板の構成材料としては、例えば、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイア等のガラス;ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等の樹脂が挙げられる。その他、基板としては、シリコン基板、窒化シリコン基板、モリブデン基板が挙げられる。
【0032】
基板は、例えば、前記発光素子を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)を有するTFT基板であり、一実施態様では、前記TFTがマトリクス状に配置されている。また、TFT基板は前記TFTを覆う平坦化膜を有してもよい。
【0033】
基板の厚さは、通常は10~500μmである。
【0034】
<発光素子>
発光素子は、通常、基板上に形成されている。
【0035】
発光素子としては、有機EL素子が好ましい。
【0036】
有機EL素子は、その構造の詳細な説明は省略するが、発光材料を含む有機発光層が互いに対向する一対の電極の間に挟持されてなる構造を有すればよく、すなわち有機発光層が互いに対向する陽極と陰極との間に挟持されてなる構造を有すればよく、例えば、陽極/有機発光層/陰極を有する公知の構造をとることができる。
【0037】
有機EL素子は、例えばトップエミッション構造を有することができ、各構成材料の材質は、当該構造に応じて適宜選択することができる。
【0038】
有機発光層は、有機材料である発光材料、すなわち、有機発光材料を含有する。有機発光層は、例えば、素子駆動時に各色を放射する層や、素子駆動時に白色光を放射する層である。前記白色光は、対応するカラーフィルタによって透過選択された色光となって有機EL装置から放出される。
【0039】
有機発光層に含まれる有機発光材料は低分子有機発光材料であっても、高分子有機発光材料であってもよい。例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリネート)ベリリウム(BeBq2)等の基材母体にキナクリドンやクマリンをドープした材料を用いることができる。高分子有機発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン及びその誘導体、ポリ3-ヘキシルチオフェン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等を選択して用いることができる。
【0040】
有機EL素子の陽極及び陰極は、それぞれ導電性の材料からなる。陽極の材料としては、例えば、Indium Tin Oxide(ITO)、Indium Zinc Oxide(IZO)、酸化スズ等の酸化物;アルミニウム(Al)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等の金属が挙げられ、またこれらの金属と透明性の高い電極(例:ITO)との積層膜でもよい。陰極の材料としては、例えば、ITO、IZO、酸化スズ等の酸化物;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、これらの1種又は2種以上を含む合金等の金属が挙げられ、またこれらの金属と透明性の高い電極(例:ITO)との積層膜でもよい。
【0041】
なお、陽極と有機発光層との間に、正孔注入層及び/又は正孔輸送層が配置されていてもよい。陽極と有機発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層が配置される場合、陽極上に正孔注入層が配置され、正孔注入層上に正孔輸送層が配置され、そして正孔輸送層上に有機発光層が配置される。また、陽極から有機発光層へ効率的に正孔を輸送できる限り、正孔注入層及び正孔輸送層は省略されてもよい。また、陰極と有機発光層との間に、電子輸送層及び/又は電子注入層が配置されていてもよい。
【0042】
また、陽極は画素ごとに分離していてもよく、陽極の端部を覆う隔壁(画素規定層)が形成されていてもよい。隔壁は、画素ごとに分離した陽極の端部を覆うことで発光領域を画定する。画素は、例えばカラーフィルタと対応するように配置することができる。
【0043】
発光素子の厚さは、通常は3~10μmである。
【0044】
<封止層>
発光装置は、前記発光素子を封止する封止層を有することが好ましい。前記発光素子が封止されていることで、素子内に水分が侵入することを低減することができる。このため、前記発光装置は、水分に起因する、ダークスポットの発生や、輝度及び発光効率等の発光特性の低下を抑制することができる。
【0045】
封止層は、薄膜封止層であることが好ましい。薄膜封止層の厚さは、通常は50μm以下、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~20μmである。
【0046】
封止層としては、例えば、(1)有機封止層、(2)無機封止層、(3)有機封止層と無機封止層とを例えば交互に有する有機無機封止層が挙げられる。例えば、2つの無機封止層の間に有機封止層を有する有機無機封止層であってもよく、無機封止層と有機封止層とを交互に合計で4層以上有する有機無機封止層であってもよい。有機無機封止層における合計層数は、例えば3層以上、好ましくは3~9層である。ここで、封止層の最外層は無機封止層であることが好ましい。
【0047】
無機封止層としては、例えば、特開2010-160906号公報、特開2016-012433号公報、特開2016-143605号等に記載された層、具体的には窒化シリコン層や酸窒化シリコン層が挙げられ、これらの形成方法としては前記公報に記載された方法、具体的にはスパッタリング法、化学気相成長法が挙げられる。無機封止層の一層の厚さは、通常は10nm~2μmである。
【0048】
有機封止層としては、例えば、硬化性組成物より形成された層が挙げられる。有機封止層の一層の厚さは、通常は1~50μm、好ましくは1~20μm、より好ましくは1~15μmである。
【0049】
硬化性組成物は、例えば、重合性化合物及び重合開始剤を含む組成物である。
【0050】
重合性化合物は、2個以上の重合可能な基を有する化合物が好ましい。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基(エポキシ基)、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基が挙げられる。重合性化合物としては、エポキシ化合物及びオキセタン化合物等の環状エーテル化合物、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0051】
重合開始剤としては、例えば、カチオン又はラジカル重合開始剤が挙げられる。硬化性組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、通常は0.01~20.0質量部、好ましくは0.1~5.0質量部である。
【0052】
硬化性組成物は、対象物の全面に塗布してもよく、対象物の一部に塗布してもよい。硬化性組成物の塗布方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バーコート法、インクジェット法が挙げられる。
【0053】
硬化性組成物が放射線硬化型材料である場合、硬化のための放射線照射には、例えば紫外線及び/又は可視光線が用いられ、波長300~450nmの紫外線及び/又は可視光線がより好ましい。照射量は、好ましくは100~2000mJ/cm2、より好ましくは500~1500mJ/cm2である。波長及び照射量は、有機EL素子への影響を考慮して適宜決定することができる。光源としては、例えば、後述する<工程(2)>に記載のものが挙げられる。
【0054】
また、放射線硬化型の硬化性組成物の硬化を促進させるため、放射線照射と同時に又は放射線照射後に加熱を行ってもよい。また、熱硬化型の硬化性組成物は、加熱により硬化させる。例えば、これらの加熱温度としては、好ましくは80~150℃、より好ましくは80~100℃であり;加熱時間としては、好ましくは1~120分間、より好ましくは1~60分間である。
【0055】
封止層の形成は、酸素及び水分が排除された環境下、例えばN2雰囲気等の不活性ガス雰囲気中又は真空中で行うことが好ましい。
【0056】
<硬化樹脂部>
硬化樹脂部は、パターン化硬化樹脂層を含む。パターン化硬化樹脂層は、パターンを有する硬化樹脂層であり、感放射線性樹脂組成物より形成された層であることが好ましく、具体的には、感放射線性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法により直接形成された層であることが好ましい。
【0057】
前記パターンの形状は特に限定されないが、例えば、硬化樹脂層の非存在部分の形状が例えば円形状、楕円形状、多角形状等のホール状、ライン状である態様が挙げられる。これらの中では、ホールパターンが好ましい。
【0058】
感放射線性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物及び感放射線性重合開始剤を含有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。また、前記感放射線性樹脂組成物としては、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂及び感放射線性重合開始剤を含有する感放射線性樹脂組成物を用いることもでき、この感放射線性樹脂組成物組成物は、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂以外の重合性化合物をさらに含有することができる。低温硬化の観点から、後述する<感放射線性樹脂組成物>記載の組成物が好ましい。前記組成物は、溶媒を配合して、液状組成物として使用することができる。
【0059】
硬化樹脂部は、通常は2層以上の金属配線層を有する。これらの金属配線層は、パターン化硬化樹脂層により互いに絶縁されており、かつ必要な部分についてはパターン化硬化樹脂層に形成されたコンタクトホールに形成された配線により電気的に接続されている。
【0060】
パターン化硬化樹脂層の厚さは、通常は1~5μm、好ましくは1~3μm、より好ましくは1.3~2μmである。金属配線層の厚さは、通常は100~1000nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは200~400nmである。
【0061】
コンタクトホールのホール直径は、通常は1~20μm、好ましくは2~10μm、より好ましくは3~6μmである。
【0062】
パターン化硬化樹脂層を、2-アミノエタノールを70質量%含有する水溶液に、60℃で5分間浸漬させたときの膜厚変化は、浸漬前の膜厚を100としたときの浸漬後の膜厚が80~120であることが好ましく、95~105であることがより好ましい。膜厚変化の測定条件の詳細は、実施例に記載する。なお、膜厚変化は、パターン化硬化樹脂層における非パターン形成部分で測定する。
【0063】
このような薬液耐性の高いパターン化硬化樹脂層は、例えば、重合可能な基の多い重合性化合物やエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることにより架橋密度を上げる、ポスト露光で用いる放射線に対する吸収性が高く重合開始効率に優れる感放射線性重合開始剤(例えば、g線、h線、i線及びj線を含む放射線に対する吸収性が高く重合開始効率に優れる感放射線性重合開始剤の組合せ)を用いることにより、得ることができる。
【0064】
硬化樹脂部は、パターン化硬化樹脂層の前記発光素子側に、配線下地層としての硬化層をさらに含んでもよく、及び/又は、パターン化硬化樹脂層の前記発光素子とは反対側に、上層保護層としての硬化層をさらに含んでもよい。前記硬化層は、パターン形成されていない層であってもよく、金属配線層の配線下地層又は上層保護層として働く。硬化層は、例えば無機膜からなり、スパッタリング法又は化学気相成長法により形成された層でもよいが、感放射線性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物より形成された硬化樹脂層であることが好ましく、感放射線性樹脂組成物より形成された硬化樹脂層であることがより好ましい。
【0065】
配線下地層及び上層保護層の厚さは、それぞれ独立に、通常は0.5~10μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは0.5~3μmである。
【0066】
硬化樹脂部の全体の厚さは、好ましくは15μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。
【0067】
配線下地層としての硬化層の表面における平均粗さRaは、3nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以下、さらに好ましくは0.6nm以下である。Raは、AFM装置等により測定することができる。
【0068】
図1に示すように、硬化樹脂部40の一実施態様は、配線下地層41と、配線下地層41上に形成された第1の金属配線層1aと、第1の金属配線層1aを部分的に被覆するパターン化硬化樹脂層42と、パターン化硬化樹脂層42上に形成され、パターン化硬化樹脂層42のコンタクトホール3に形成された配線3'により第1の金属配線層1aに電気的に接続された第2の金属配線層2aと、パターン硬化樹脂層42及び第2の金属配線層2a上に形成され、第2の金属配線層2aを被覆する上層保護層43とを有する。配線下地層41はなくともよい。図1では、硬化樹脂部40は、基板10、発光素子20及び封止層30からなる素子基板における、封止層30上に直接接して形成されている。
【0069】
第1及び第2の金属配線層が、パターン化硬化樹脂層のコンタクトホールに形成された配線により電気的に相互に接続されているので、例えばタッチパネルの感度が上昇し、また低消費電力で駆動させることができる。
【0070】
硬化樹脂部は、好ましくはタッチパネル部材である。
【0071】
硬化樹脂部は、発光素子又はその封止層(形成されている場合)上に形成されている。本発明の発光装置において、硬化樹脂部と前記発光素子又はその封止層(形成されている場合)との間に、前述した支持基板は配置されていない。
【0072】
前述した支持基板が硬化樹脂部と発光素子との間に存在しなければ、硬化樹脂部は、粘着層又は接着層を介して、素子基板に貼りあわされた態様であってもよいが、硬化樹脂部は、粘着層又は接着層を介して素子基板に貼りあわされているものではないことが好ましい。前記発光素子は封止層により封止されていることが好ましい。
【0073】
「硬化樹脂部は、粘着層又は接着層を介して素子基板に貼りあわされているものではない」とは、本発明の発光装置が、図2に示すように、(1)支持基板70上に硬化樹脂部40を形成し、(2)支持基板70の硬化樹脂部40とは反対側の面に粘着層又は接着層60を形成し、又は基板10及び発光素子20からなる素子基板上に粘着層又は接着層60を形成し、続いて(3)支持基板70を粘着層又は接着層60を介して素子基板に貼り合わせて得られたもの、ではないことを意味する。図2では、素子基板はさらに封止層30を有する。
【0074】
すなわち、硬化樹脂部は、発光素子又はその封止層(形成されている場合)と直接接して形成されていることが好ましい。このような態様であると、硬化樹脂部が形成された支持基板を粘着層又は接着層を介して素子基板に貼り合わせて硬化樹脂部を発光素子上に配置する場合と比較して、発光装置の厚さを大幅に小さくすることが可能になり、それにより発光装置を屈曲させた場合の当該装置の破損・機能低下を防止できるという優れた利点を有する。
【0075】
以下、前記感放射線性樹脂組成物について説明する。
【0076】
<感放射線性樹脂組成物>
〈アルカリ可溶性樹脂〉
アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を有する樹脂が好ましく、カルボキシ基含有重合体がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸及びその部分イミド化物、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミド、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂、ヒドロキシスチレン及びイソプロペニルフェノール等のフェノール性水酸基を有する単量体の単独又は共重合体、1個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられる。
【0077】
アルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和基を有することができる。アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性と硬化膜物性とを高いレベルで両立できる点から、カルボキシ基およびエチレン性不飽和基を有する樹脂である、酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、例えば、それぞれ酸変性された、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
【0078】
酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、下記式(1)で示される重合体が挙げられる。酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂に、アルカリ溶解性のための無水フタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物等の酸無水物を反応させることで得られる。
【0079】
酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の剛直な主鎖骨格と、エチレン性不飽和基と、カルボキシ基とを併せ持つことで、低温での硬化焼成にもかかわらず、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化膜を形成することが可能となる。
【0080】
【化2】
式(1)中、nおよびmは、それぞれ独立に1~30の整数を示す。
【0081】
酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、CCR-1171H、CCR-1291H、CCR-1307H、CCR-1309H(日本化薬社製)を用いることができる。
【0082】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、例えば10~200mgKOH/g、好ましくは30~270mgKOH/g、より好ましくは50~250mgKOH/gである。酸価とは、アルカリ可溶性樹脂の固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を表す。
【0083】
アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、通常は1,000~100,000、好ましくは3,000~50,000である。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0084】
感放射線性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、当該組成物の固形分100質量%中、通常は30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、アルカリ可溶性樹脂の含有量の上限値は、当該組成物の固形分100質量%中、通常は90質量%であり、一実施態様において、70質量%または60質量%である。
【0085】
このような態様とすることで、輝度のより一層の向上に加え、アルカリ現像性、組成物の保存安定性、パターン形状、色度特性を高めることができる。なお、固形分は溶媒以外の全成分である。
【0086】
〈重合性化合物〉
重合性化合物は、上述したエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂以外の重合性化合物であり、重合性化合物は、2個以上の重合可能な基を有する化合物が好ましい。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基(エポキシ基)、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基が挙げられる。重合性化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0087】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物〔多官能(メタ)アクリレート〕、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートとの反応物〔多官能ウレタン(メタ)アクリレート〕、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物〔カルボキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート〕が挙げられる。脂肪族ポリヒドロキシ化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート、多官能イソシアネート及び酸無水物の具体例としては、特開2015-232694号公報の段落[0065]に記載された化合物が挙げられ、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート及びアルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレートとしては、同公報の段落[0066]に記載された化合物が挙げられる。
【0088】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0089】
2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えば、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造、ウレア構造を有する化合物が挙げられ、これらの具体例としては、特開2015-232694号公報の段落[0067]に記載された化合物が挙げられる。
【0090】
感放射線性樹脂組成物が重合性化合物を含有する場合における重合性化合物の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、通常は30~200質量部、好ましくは30~100質量部、より好ましくは45~100質量部である。このような態様とすることで、硬化性及び現像性がより高められ、輝度をより一層向上させることができる。
【0091】
〈感放射線性重合開始剤〉
感放射線性重合開始剤は、可視光線、紫外線、電子線、X線等の放射線、好ましくは可視光線及び/又は紫外線の露光により、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂および重合性化合物の硬化反応を開始し得る活性種を発生する化合物である。感放射線性重合開始剤としては、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物が挙げられる。これらの具体例としては、特開2015-232694号公報の段落[0073]~[0078]に記載された化合物が挙げられる。
【0092】
感放射線性樹脂組成物が重合性化合物を含有する場合における感放射線性重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、通常は0.01~120質量部、好ましくは1~100質量部である。一実施態様では、感放射線性重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、11質量部以上又は13質量部以上である。このような態様とすることで、硬化性及び被膜特性がより高められ、輝度をより一層向上させることができる。
【0093】
一実施態様において、感放射線性樹脂組成物における感放射線性重合開始剤の含有量は、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、通常は1~20質量部、好ましくは5~15質量部である。
【0094】
〈添加剤〉
感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。添加剤としては、例えば、増感剤、分散剤、充填剤、高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、残渣改善剤、現像性改善剤が挙げられる。
【0095】
特に密着促進剤としては、国際公開第2017/094831号に記載のカップリング剤を用いることができる。紫外線吸収剤としては特開2004-190006号公報等に記載の紫外線吸収剤を用いることができる。酸化防止剤としては国際公開第2011/046230号に記載の酸化防止剤を用いることができる。
【0096】
〈感放射線性樹脂組成物の調製〉
感放射線性樹脂組成物は、適宜の方法により調製することができる。例えば、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物及び感放射線性重合開始剤等の各成分を、溶媒や任意に加えられる添加剤と共に混合することにより調製することができる。
【0097】
溶媒としては、例えば、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、乳酸アルキルエステル類、(シクロ)アルキルアルコール類、ケトアルコール類、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、他のエーテル類、ケトン類、ジアセテート類、アルコキシカルボン酸エステル類、他のエステル類、芳香族炭化水素類、アミド又はラクタム類が挙げられ、これらの具体例としては、特開2015-232694号公報の段落[0082]~[0085]に記載された溶媒が挙げられる。
【0098】
溶媒の含有量は特に限定されるものではないが、感放射線性樹脂組成物中の固形分濃度が5~50質量%となる量が好ましく、10~40質量%となる量がより好ましい。
【0099】
一実施態様において、前記感放射線性樹脂組成物より形成された硬化樹脂層は目視において透明である。このような態様であると、良好な光学特性を有する発光装置を得ることができる。
【0100】
<タッチパネル部材>
本発明の発光装置の一例である有機EL装置は、一実施態様において硬化樹脂部としてタッチパネル部材を有する。本発明のタッチパネル付き有機EL装置は、基板と、前記基板上に有機EL素子と、前記有機EL素子上にタッチパネル部材とを有し、前記タッチパネル部材が、パターン化硬化樹脂層を含む。ただし、前記装置において、前記タッチパネル部材の有機EL素子側の面上にはタッチパネル用支持基板は配置されていない。有機EL装置は、前記有機EL素子を封止する封止層を有することが好ましい。
【0101】
タッチパネル部材は、例えば、(1)第1の金属配線層と、(2)第2の金属配線層と、(3)前記第1及び第2の金属配線層の間に形成され、前記第1及び第2の金属配線層を部分的に絶縁し、かつ前記第1及び第2の金属配線層を導通させる配線が形成されたコンタクトホールを有する、パターン化硬化樹脂層と、(4)前記第2の金属配線層を被覆する硬化樹脂層(上層保護層)とを有する。タッチパネル部材は、(5)第1の金属配線層下に硬化樹脂層(配線下地層)をさらに有してもよい。
【0102】
本発明では、第1及び第2の金属配線層が、パターン化硬化樹脂層のコンタクトホールに形成された配線により電気的に相互に接続されているので、タッチパネルの感度が上昇し、また低消費電力で駆動させることができる。
【0103】
タッチパネル用支持基板は、例えば、ガラス基板、又はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ポリノルボルネン及びトリアセチルセルロース樹脂の群から選ばれる少なくとも1種からなり、厚さ50μmを超える支持体である。
【0104】
基板、有機EL素子、封止層、パターン化硬化樹脂層、第1及び第2の金属配線層、上層保護層、並びに配線下地層については前述した。
【0105】
タッチパネルは、静電容量方式が好ましく、投影型静電容量方式がより好ましい。
【0106】
タッチパネル部材は、金属配線層において、例えば、パターニングされた金属膜よりなる、指・タッチパネル用ペンなどの接近を電気的な容量変化により検出する容量パッドを有している。一群の複数の容量パッドが配線によって平面X軸方向(横方向)に連結され、また他の一群の複数の容量パッドが配線によって平面Y軸方向(縦方向)に連結され、それぞれ、配線によってパネル外まで引き出され、タッチパネル駆動又はタッチ検出回路に接続されている。なお、容量パッドの配置構成はこれらに限定されず、従来公知の構成を採用することができる。パネル外まで引き出された配線は、更に周辺部の配線によりタッチパネル駆動回路・検出回路に接続された構造となっている。
【0107】
本発明では、タッチパネル部材を別途製造した後に、タッチパネル部材を有機EL素子上に粘着層又は接着層を介して貼り合わせるのではなく、有機EL素子上にタッチパネル部材を直接形成することができる。このため、本発明の有機EL装置は、タッチパネル部材を別途製造する場合に使用されるタッチパネル用支持基板を有機EL素子とタッチパネル部材との間に有さない構成をとることができ、したがってタッチパネル部材が形成された支持基板を粘着層又は接着層を介して素子基板に貼り合わせてタッチパネル部材を有機EL素子上に配置する場合と比較して、有機EL装置の厚さを大幅に小さくすることが可能になり、それにより有機EL装置を屈曲させた場合の当該装置の破損・機能低下を防止できるという優れた利点を有する。
【0108】
[発光装置の製造方法]
本発明の発光装置の製造方法は、(1)感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成する工程と、(2)前記塗膜に、マスクを介して、第1の放射線を照射する工程と、(3)放射線照射後の前記塗膜を現像する工程と、(4)現像後の前記塗膜に第2の放射線を照射して、前記パターン化硬化樹脂層を形成する工程と(ただし、工程(4)は100℃以下で行い、また、第1の放射線と第2の放射線は同一でも異なっていてもよい。)を有する。工程(1)~(4)により、前述した発光装置及びタッチパネル付き有機EL装置におけるパターン化硬化樹脂層を形成する。
【0109】
<工程(1)>
工程(1)は、上述した感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成する工程である。工程(1)では、基板及び前記基板上に発光素子を有する素子基板上に、感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成することが好ましい。素子基板は、前記発光素子上に封止層を有してもよい。後述するように、素子基板上に感放射線性樹脂組成物を用いてパターン化硬化樹脂層を直接形成するが、本発明では低温硬化が可能であるので、有機EL素子等の発光素子の劣化を防止することができる。
【0110】
感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バーコート法が挙げられる。また、基材上に感放射線性樹脂組成物層が形成されたドライフィルムを用いて組成物層を発光素子又はその封止層上に転写するラミネート法を用いてもよい。これらの中でも、均一な膜厚の塗膜が得られる点から、スピンコート法、スリットダイ塗布法が好ましい。
【0111】
前記組成物の塗膜形成時には、プレベークを行うことができる。プレベークは、減圧乾燥と加熱乾燥とを組み合わせて行うことができる。減圧乾燥は、通常は70~110℃の温度で1~20分間程度であり、好ましくは75~100℃の温度で1~15分間である。また、塗膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常は1.5~8μm、好ましくは1.5~5μmである。
【0112】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られた塗膜に第1の放射線を照射する、すなわちプレ露光する工程である。前記塗膜の少なくとも一部に、所定のパターンを有するマスクを介して露光すればよく、また走査露光を行ってもよい。
【0113】
第1の放射線としては、例えば、g線、h線、i線、j線等の可視光線及び紫外線が挙げられる。これらの中でも、耐溶剤性及び形成対象との密着性の改善の観点から、g線、h線及びi線の少なくとも1種又は全てを含む放射線が好ましく、g線、h線、i線及びj線の少なくとも1種又は全てを含む放射線がより好ましい。なお、分光分布において、436nmのピークがg線であり、405nmのピークがh線であり、365nmのピークがi線であり、313nmのピークがj線である。露光量は、通常は1~1000mJ/cm2、好ましくは5~500mJ/cm2、より好ましくは10~100mJ/cm2である。
【0114】
光源としては、例えば、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、可視及び紫外の各種レーザが挙げられる。
【0115】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)で得られた塗膜を現像する工程である。
【0116】
現像は、現像液を用いて、露光後の非硬化部(ネガ型の場合は非露光部)を溶解除去する。現像液としては、非硬化部を溶解し硬化部を溶解しないものであればいかなるものも使用することができるが、例えば、種々の有機溶媒の組合せ、アルカリ水溶液を用いることができる。これらの中でも、アルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が挙げられる。現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒、消泡剤、界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0117】
現像方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、例えば、常温で5~300秒間とすることができる。
【0118】
なお、現像液としてアルカリ水溶液を使用した場合は、現像後、通常は塗膜を水で洗浄する。また、洗浄後、例えば、圧縮空気や圧縮窒素等で塗膜を風乾させることもできる。
【0119】
<工程(4)>
工程(4)は、工程(3)で得られた塗膜に第2の放射線を照射する工程であり、
好ましくは、
(4-i)前記塗膜を100℃以下で加熱した後、第2の放射線を照射する工程;又は
(4-ii)前記塗膜に第2の放射線を照射した後、100℃以下で加熱する工程
である。
【0120】
工程(4)は、ポストベークとポスト露光を任意の順序で行うことができる。
【0121】
ポストベークは、パターニングされた塗膜を100℃以下で加熱するが、硬化性、耐溶剤性及び形成対象との密着性の向上、並びに基板保護の観点から、好ましくは70~100℃、より好ましくは80~90℃である。ポストベーク温度がこの範囲であれば、塗膜が充分硬化して耐溶剤性に優れる硬化膜を形成することができ、また、発光素子の損傷を防止でき、基板の収縮や変形が少なくなるので好ましい。加熱時間は加熱温度により適宜設定可能であるが、通常は5~120分、好ましくは10~100分、より好ましくは15~60分である。
【0122】
ポスト露光の露光量は、硬化性、耐溶剤性及び形成対象との密着性の向上、並びに基板保護の観点から、200mJ/cm2以上が好ましく、500mJ/cm2以上がより好ましい。なお、露光量は、色材の光劣化抑制等の観点から、10000mJ/cm2以下が好ましく、8000mJ/cm2以下がより好ましく、6000mJ/cm2以下が更に好ましい。ポスト露光に用いる光源としては、プレ露光と同様のものが挙げられる。プレ露光とポスト露光とを分けて行うことにより、高精細な画素やコンタクトホールを形成することができる。
【0123】
第2の放射線としては、プレ露光で使用する第1の放射線と同一でも、異なっていてもよく、例えば、プレ露光と同様に、g線、h線及びi線の少なくとも1種又は全てを含む放射線、あるいはg線、h線、i線及びj線の少なくとも1種又は全てを含む放射線を適用することができる。
【0124】
<タッチパネル部材の製造方法に関して>
本発明のタッチパネル付き有機EL装置の製造方法は、詳細には、タッチパネル部材を形成する工程が、前述した工程(1)~(4)により感放射線性樹脂組成物のパターン化硬化樹脂層を形成する工程を有する。
【0125】
タッチパネル部材の製造方法の一例を以下に記載する。
【0126】
有機EL素子又はその封止層上に感放射線性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物の塗膜を形成し、露光又は熱により硬化させ、配線下地層を形成する。露光による硬化の方が、加熱による効果よりも、有機EL素子の劣化を招きにくい。配線下地層は形成しなくともよい。
【0127】
次いで、スパッタリングにより金属薄膜を形成し、フォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成し、エッチングにより配線を形成し、レジスト剥離により配線を露出させ、タッチパネル部材の第1の金属配線層を形成する。
【0128】
次いで、感放射線性樹脂組成物を用い、上記各工程(1)~(4)に従い、配線下地層及び第1の金属配線層上に、コンタクトホールを含むパターニング形状を有するパターン化硬化樹脂層を形成する。
【0129】
次いで、パターン化硬化樹脂層上に、タッチパネル部材の第2の金属配線層と、第1,第2の金属配線層を導通させる配線とを、第1の金属配線層の形成と同様に、スパッタリング、フォトリソグラフィー、エッチング、レジスト剥離にて形成する。
【0130】
次いで、必要に応じて、パターン化硬化樹脂層及び第2の金属配線層上に感放射線性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物の塗膜を形成し、露光又は熱により硬化させ、上層保護膜を形成する。
【0131】
以上のようにして、配線下地層としての硬化樹脂層、第1の金属配線層、配線間絶縁層としてのパターン化硬化樹脂層、第2の金属配線層、及び上層保護層としての硬化樹脂層を含むタッチパネル部材が素子基板上に配置された有機EL装置が得られる。
【0132】
パターン化硬化樹脂層の厚さは、通常は1~5μm、好ましくは1~3μm、より好ましくは1.3~2μmである。配線下地層及び上層保護層の厚さは、それぞれ独立に、通常は0.5~10μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは0.5~3μmである。硬化層は、耐溶剤性、形成対象との密着性が良好であり、剥がれを効果的に抑制することができる。また、組成物を各層上に重ね塗りしたとしても、溶剤による下層の浸食が無く、また各層は配線形成の際のレジストパターン形成、エッチングプロセス、レジスト剥離プロセスなどの各プロセスに対して耐性を持つ。
【実施例
【0133】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0134】
なお、以下の実施例において各層の厚さ(膜厚)は、触針段差計又は電子顕微鏡による断面観察にて測定した。
【0135】
[調製例1]
CCR-1291H(日本化薬社製)50部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 15部と、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート 15部と、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム) 3部と、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン 2部と、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル 15部と、固形分濃度30質量%となる量のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを加えて撹拌し、0.2μmメンブランフィルターで濾過して、感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0136】
[調製例2~13]
表1に示す種類の原材料、組成割合で混合したこと以外は調製例1と同様に行い、調製例2~13の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0137】
表1中の原材料は以下のとおりである。
【0138】
アルカリ可溶性樹脂A1:CCR-1291H(日本化薬社製)
アルカリ可溶性樹脂A2:前記式(1)に包含される樹脂:
CCR-1309H(日本化薬社製)
重合性化合物B1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
重合性化合物B2:コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート
感放射線性重合開始剤C1:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)
感放射線性重合開始剤C2:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン
感放射線性重合開始剤C3:1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]
添加剤D1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
添加剤D2:イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル
添加剤D3:3-トリメトキシシリルプロピルスルファニルトリエトキシシラン
《物性評価》
<解像性評価>
シリコン基板上に、上記で調製した感放射線性樹脂組成物の溶液をそれぞれスピンナーにより塗布した後、90℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に、直径3~6μmの範囲の異なる大きさの複数の四角状残しパターンを有するフォトマスクを介して、高圧水銀ランプを用いて露光量を30~300mJ/cm2の範囲で変量して放射線照射を行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて23℃で現像時間を変量として液盛り法により現像した後、純水洗浄を1分間行った。次いで、高圧水銀ランプにより600mJ/cm2のポスト露光を行い、さらにオーブン中90℃又は150℃にて60分間ポストベークすることにより、パターン化硬化樹脂層を形成した。このときの膜厚が2μmなるようにした。また、上記フォトマスクにおいて、ホール状のパターンがホール内に残渣等の無い状態で形成されていれば、解像度が良好であると言え、その場合をAAとした。6μm以下のフォトマスクにおいて、ホール状のパターンが形成されているが、ホール内に軽微な残渣が見られる場合をBBとした。6μm以下のフォトマスクにおいて、ホール状のパターンが形成されていない又はホール内に残渣がみられ解像されていない場合は解像度が不良と判断でき、その場合をCCとした。
【0139】
<耐化学薬品性評価>
上記解像性評価で成膜したパターン化硬化樹脂層を、2-アミノエタノールを70質量%含有する水溶液(70質量%2-アミノエタノール水溶液)に、60℃で5分間浸漬させた。その後、90℃で1時間熱処理をした際のそれぞれの膜厚変化率を測定した。浸漬前の膜厚を100とした場合における浸漬後の膜厚を残膜率とし、膜厚変化が100に対し±5%以下の範囲内であればAA、膜厚変化が100に対し±5%超±20%以下の範囲内であればBB、膜厚変化が100に対し±20%超であるか又は膜に剥がれが発生した場合はCCとして評価した。
【0140】
<密着性評価>
上記解像性評価と同様の方法でガラス基板、SiNx基板、Mo基板上に製膜し、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に則って測定した。
【0141】
<透過率測定>
上記解像性評価と同様の方法でガラス基板に製膜し、日本分光株式会社製のUV-vis spectrometer V-670を用い、波長400nmでの透過率を測定した。
【0142】
《素子評価》
<有機EL素子基板の作製>
アレイ状にITO透明電極が形成されたガラス基材(日本電気硝子社製「OA-10」)と、前記ITO透明電極の一部のみが露出したコンタクトホールを有する、膜厚3μmの平坦化層とを有するアレイ基板を複数用意した。
【0143】
所定のパターンのメタルマスクを介して、Alターゲットを用いたDCスパッタ法により、平坦化層上に膜厚100nmのAl膜を形成した。ITOターゲットを用いてRFスパッタリング法により、Al膜上に膜厚20nmのITO膜を形成した。この様にしてAl膜とITO膜とからなる陽極層を形成した。
【0144】
レジスト材料(JSR製「オプトマーNN803」)を用いて陽極層上に塗膜を形成し、i線(波長365nm)照射、現像、流水洗浄、風乾及び加熱処理を含む一連の処理を行い、陽極層の一部を開口領域として持つ画素規定層を形成した。
【0145】
陽極及び画素規定層が形成された基板を真空成膜室へ移動し、成膜室を1E-4Paまで排気した後、前記基板上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、正孔注入性を有する酸化モリブデン(MoOx)を抵抗加熱蒸着法により成膜速度0.004~0.005nm/secの条件で成膜し、膜厚1nmの正孔注入層を形成した。
【0146】
正孔注入層上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、正孔輸送性を有する4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)を抵抗加熱蒸着法により正孔注入層と同様の排気条件で成膜し、膜厚35nmの正孔輸送層を形成した。成膜速度は、0.2~0.3nm/secの条件であった。
【0147】
正孔輸送層上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、緑色の発光材料としてアルキレート錯体であるトリス(8-キノリノラト)アルミニウムを抵抗加熱蒸着法により正孔輸送層と同様の成膜条件で成膜し、膜厚35nmの発光層を形成した。成膜速度は、0.5nm/sec以下の条件であった。
【0148】
発光層上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、フッ化リチウムを抵抗加熱蒸着法により正孔注入層と同様の排気条件で成膜し、膜厚0.8nmの電子注入層を形成した。成膜速度は、0.004nm/sec以下の条件であった。
【0149】
続いて電子注入層上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、Mg及びAgを抵抗加熱蒸着法により正孔注入層と同様の排気条件で同時に成膜し、膜厚5nmの第1陰極層を形成した。成膜速度は、0.5nm/sec以下の条件であった。
【0150】
続いて、別の成膜室(スパッタ室)に上記基板を移送し、第1陰極層上に、所定のパターンのマスクを用いて、ITOターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚100nmの第2陰極層を形成した。
【0151】
以上のようにして、基板上に有機EL素子を形成し、有機EL素子基板を得た。
【0152】
<有機EL素子の薄膜封止>
前記有機EL素子上に、下記手順にて薄膜封止層を形成した。
【0153】
成膜室(スパッタ室)に前記素子基板を移送し、陰極層上に、所定のパターンのマスクを用いて、SiNxターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚100nmの無機封止層(SiNx膜)を形成した。続いて、前記素子基板をN2置換されたグローブボックス中に移送し、ピエゾ方式インクジェットプリンタによって、エポキシ化合物及びオキセタン化合物と重合開始剤とを含む硬化性組成物を所定のパターンに吐出し、続いてウシオ電機社製UniJetE110ZHD 395nm LEDランプを用いて露光量1000mJ/cm2を照射し、製膜された硬化性組成物を硬化させ、膜厚10μmの有機封止層を形成した。成膜室(スパッタ室)に前記素子基板を移送し、有機封止層上に、所定のパターンのマスクを用いて、SiNxターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚100nmの無機封止層(SiNx膜)を形成した。
【0154】
以上のようにして、封止層付き有機EL素子基板を得た。
【0155】
<パターン化硬化樹脂層の作製>
封止層付き有機EL素子基板上に、下記手順でパターン化硬化樹脂層を形成した。
【0156】
調製例で得られた感放射線性樹脂組成物を、スピンコート法により封止層付き有機EL素子基板の封止層上にコーティングし、90℃の温度で2分間プレベークを行い塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に、フォトマスクを介して、高圧水銀ランプを用いて露光量を30~300mJ/cm2の範囲で変量して放射線照射を行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて23℃で現像時間を変量として液盛り法により現像した後、純水洗浄を1分間行った。
【0157】
次いで、得られたパターニング膜に対して、高圧水銀ランプを用いて600mJ/cm2のポスト露光を行った。次いで、90℃で60分間のポストベークを行うことによって、パターニング膜を硬化させ、パターン化硬化樹脂層を形成した(実施例1-1~1-10、比較例1-1~1-2)。又は、上記同条件のUV照射に加えて、150℃で60分間(比較例1-3)のポストベークを行うことによってパターニング膜を硬化させ、パターン化硬化樹脂層を形成した。得られたパターン化硬化樹脂層の厚さは2μmであった。
【0158】
以上のようにして有機EL装置を得た。なお、比較例1-3において220℃で60分間のポストベークを行った場合は有機EL素子が劣化して機能しなくなり、有機EL素子を有する有機EL装置を得ることができなかった。
【0159】
<有機EL素子の点灯評価>
得られたパターン化硬化樹脂層付きの有機EL素子に対して、以下の様な手順で点灯評価を行った。有機EL点灯治具を介して、定電流源により有機EL素子の陽極層と陰極層の間に20mA/cm2の密度で電流を流し有機EL素子を点灯させた。次に、有機EL素子正面方向の輝度を輝度計により測定した。
【0160】
有機EL素子の点灯及び輝度計による正面輝度測定は、パターン化硬化樹脂層付きの有機EL素子、パターン化硬化樹脂層を作成しなかった比較用の有機EL素子それぞれに対して行い、比較用の有機EL素子の正面輝度に対して、95%以上の輝度で点灯した場合に評価をAA、95%未満80%以上の輝度で点灯した場合を評価BB、80%未満の輝度で点灯した場合又は正常に点灯しなかった場合について評価をCCとした。
【0161】
【表1】
<屈曲性有機EL素子基板の作製>
厚さ50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂基材上に、SiNxターゲットを用いたRFスパッタリング法により、膜厚100nmの無機封止層(SiNx膜)を形成した。スピンコート法によってエポキシ化合物及びオキセタン化合物と重合開始剤とを含む硬化性組成物をSiNx膜上に塗布し、続いてウシオ電機社製UniJetE110ZHD 395nm LEDランプを用いて露光量1000mJ/cm2を照射し、製膜された硬化性組成物を硬化させ、膜厚10μmの平坦化層を得た。さらにSiNxターゲットを用いたRFスパッタリング法により、平坦化層上に膜厚100nmの無機封止層(SiNx膜)を形成した。このようにしてバリア性を持つ屈曲性の樹脂基材(バリア性樹脂基材)を得た。
【0162】
上記バリア性樹脂基材上に、所定のパターンのメタルマスクを介して、ITOターゲットを用いたRFスパッタリング法により、膜厚20nmのITO膜を形成した。この様にしてITO膜からなる陽極層を形成した。
【0163】
以降の工程は上記<有機EL素子基板の作製>と同様に行い、画素規定層、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、第1陰極層及び第2陰極層を形成した。以上のようにして、前記バリア性樹脂基板上に有機EL素子を形成し、有機EL素子基板を得た。
【0164】
前記有機EL素子上に、上記<有機EL素子の薄膜封止>と同様に行い薄膜封止層を形成した。以上のようにして、封止層付き有機EL素子基板を得た。
【0165】
<パターン化硬化樹脂層の作製>(実施例2-1)
封止層付き有機EL素子基板上に、下記手順でパターン化硬化樹脂層を形成した。調製例で得られた感放射線性樹脂組成物(調製例1)を、スピンコート法により封止層付き有機EL素子基板の封止層上にコーティングし、90℃の温度で2分間プレベークを行い塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に、フォトマスクを介して、高圧水銀ランプを用いて露光量を30~300mJ/cm2の範囲で変量して放射線照射を行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて23℃で現像時間を変量として液盛り法により現像した後、純水洗浄を1分間行った。次いで、得られたパターニング膜に対して、高圧水銀ランプを用いて600mJ/cm2のポスト露光を行った。次いで、90℃で60分間のポストベークを行うことによって、パターニング膜を硬化させ、パターン化硬化樹脂層を形成した。得られたパターン化硬化樹脂層の厚さは2μmであった。続いて、表面保護層として、裏面に厚さ20μmのゴム系粘着材を有する、厚さ50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂基材を、パターン化硬化樹脂層上に貼りつけた。
【0166】
以上のようにして屈曲性評価用有機EL装置を得た。
【0167】
<樹脂基材の貼付け>(比較例2-1)
上記<パターン化硬化樹脂層の作製>の手順とは別に、樹脂基材をもつ貼り付け型タッチパネルを模した構造として、封止層付き有機EL素子基板上に、表面に実施例2-1の上記<パターン化硬化樹脂層の作製>の手順と同様にして形成されたパターン化硬化樹脂層、裏面に厚さ20μmのゴム系粘着材を有する、厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂基材を貼り付けた。続いて、表面保護層として、裏面に厚さ20μmのゴム系粘着材を有する、厚さ50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂基材を、パターン化硬化樹脂層上に貼りつけた。
【0168】
以上のようにして屈曲性評価用有機EL装置を得た。
【0169】
<有機EL装置の屈曲性評価>
得られた屈曲性評価用有機EL装置に対して、以下の様な手順で屈曲性評価を行った。まず、得られた屈曲性評価用有機EL装置の表面側を、直径5mmの金属製の円筒に押し当て、巻きつけるように180度折り曲げる。その後再び折り曲げた状態から再び直線状の状態まで戻す。上記の動作を1000回繰り返し、屈曲性試験とした。
【0170】
次に、有機EL点灯治具を介して、定電流源により有機EL素子の陽極層と陰極層の間に20mA/cm2の密度で電流を流し有機EL素子を点灯させ、目視での点灯状態を確認した。
【0171】
有機EL素子が正常に点灯した場合をAA(良)とし、
有機EL素子が正常に点灯しなかった場合をBB(不可)とした。
【0172】
実施例2-1及び比較例2-1で得られた屈曲性評価用有機EL装置に対して上記屈曲性評価を実施したところ、実施例2-1では有機EL素子の正常な点灯が得られ(評価:AA)、比較例2-1では、電極の断線により、有機EL素子の正常な点灯が得られなかった(評価:BB)。
【符号の説明】
【0173】
10…基板、20…発光素子、30…封止層、40…硬化樹脂部、41…配線下地層、42…パターン化硬化樹脂層、43…上層保護層、60…粘着層又は接着層、70…タッチパネル用支持基板、1a…第1の金属配線層、2a…第2の金属配線層、3…コンタクトホール、3'…配線
図1
図2