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特許7458791ピペット先端部と一緒に使用するためのピペット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ピペット先端部と一緒に使用するためのピペット
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
B01L3/02 D
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020001046
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2020110793
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】19150808.4
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505404725
【氏名又は名称】エッペンドルフ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン テッシュ
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03918308(US,A)
【文献】特開昭50-010192(JP,A)
【文献】特表2002-542017(JP,A)
【文献】実開平01-132237(JP,U)
【文献】特開昭48-015588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット先端部とともに使用するためのピペットであって、
・棒状のピペットハウジング(2)と、
・前記ピペットハウジング(2)の下端に位置し、ピペット先端部(57)を保持するニップル(4)と、
・前記ニップル(4)上に保持されたピペット先端部(57)へと液体試料を吸い込むため、および前記ピペット先端部(57)から前記試料を排出するための変位要素(70)を変位させるための駆動装置(12)と、
・前記ピペットハウジング(2)内に回転可能に取り付けられた回転支持体(27)と、前記ピペットハウジング(2)内を前記ニップル(4)の長手方向に変位可能位に案内される排出ロッド(39)上に位置し、前記回転支持体(27)の周囲の第1の曲線(36)上を案内される第1のセンサー素子(43)と、前記回転支持体(27)に接続され、前記ピペットハウジング(2)から突出し、前記ピペットハウジング(2)に対して回転可能である操作要素(18)とを備える排出装置(18、27、39)と
を備えており、
前記排出装置は、前記操作要素(18)を回転させることによって前記回転支持体(27)を出発位置から回転させるように設計され、前記第1の曲線(36)は、前記第1のセンサー素子(43)を下方へと変位させることで、前記ニップル(4)上に保持されたピペット先端部(57)を前記排出ロッド(39)によって前記ニップル(4)から押し出す、ピペット。
【請求項2】
前記ニップル(4)は、ピペット先端部(57)への締まり嵌めによる接続のための手段(9)を有し、ピペット先端部(57)を締まり嵌めにて前記ニップル(4)に接続する前に前記ニップル(4)を弾性的に縮めかつ/またはピペット先端部(57)を弾性的に広げつつ、ピペット先端部(57)を前記ニップル(4)へと押し込むことができ、前記ニップルと同心に配置されたロック用スリーブ(46)と、前記ロック用スリーブ(46)から上方に突出する制御ロッド(47)とを備えるロック装置(45)が、前記ピペットハウジング(2)内で前記ニップル(4)に向かって変位できるように案内され、第2のセンサー素子(49)が、前記制御ロッド(47)から突出し、前記回転支持体(27)が、前記操作要素(18)が前記出発位置に配置されているときに、前記ロック用スリーブ(46)が、ロック位置にあるときの内側の前記ニップル(4)に隣接し、かつ/または外側の前記ピペット先端部(57)に隣接することによって、前記ロック用スリーブ(46)が前記ニップル(4)に締まり嵌めにて接続されたピペット先端部の前記ニップル(4)からの解放を防止するように設計された前記第2のセンサー素子(49)を案内する第2の曲線(35)を周囲に有し、前記ロック用スリーブ(46)は、前記ニップル(4)および/または前記ピペット先端部(57)が少なくとも部分的に解放され、前記ピペット先端部が前記排出ロッド(39)によって前記ニップル(4)から押し出されるように、前記操作要素(18)を回転させることによって上方へと変位させることが可能である、請求項1に記載のピペット。
【請求項3】
前記回転支持体(27)は、前記ニップル(4)の長手方向に延びる回転軸を有する回転スリーブ(28)であり、前記駆動装置(12)の少なくとも一部分は、前記回転スリーブ(28)の内側に配置されている、請求項1および2に記載のピペット。
【請求項4】
前記操作要素(18)を前記出発位置から異なる方向に回転させることによって前記ピペット先端部(57)を前記ニップル(4)から押し出すことができるように、前記第1および/または第2のセンサー素子(43、49)が前記出発位置に位置しているとき、前記第1の曲線(34)は、高い地点の両側に位置する互いに対称に配置された部分を有し、さらには/あるいは前記第2の曲線(35)は、低い地点の両側に位置する互いに対称に配置された部分を有する、請求項2に記載のピペット。
【請求項5】
前記第1の曲線(34)は、第1の溝(36)であり、かつ/または前記第2の曲線(35)は、第2の溝(38)である、請求項1~4のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項6】
前記第1の曲線(34)は、逆さにしたV字、U字、またはY字の形状を有し、かつ/または前記第2の曲線(35)は、直立のV字またはU字の形状を有する、請求項4又は請求項5のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項7】
前記第1のセンサー素子(43)および/または前記第2のセンサー素子(49)は、感知ピン(44、49.1)、回転可能に取り付けられたボール、ローラまたはスリーブ、あるいはピン上に取り付けられたローラベアリングを有する、請求項2又は4のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項8】
前記排出装置(18、27、39)を作動させるための前記操作要素(18)は、前記駆動装置(12)を駆動するための操作要素(18)でもある、請求項1~7のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項9】
前記駆動装置(12)を駆動するための前記操作要素(18)は、前記ニップル(4)の長手方向に変位させることが可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項10】
前記駆動装置(12)は、前記操作要素(18)が下方へと順次に変位させられるときに前記駆動装置の駆動要素(13)を交互に下方および上方に変位させるように設計された伝達機構(15)を備え、駆動要素(15)の変位の間に前記操作要素(18)が上方に変位させられる、請求項1、2、4~9のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項11】
前記駆動装置(12)は、前記操作要素(18)が下方へと順次に変位させられるときに前記駆動装置の駆動要素(13)を交互に下方および上方に変位させるように設計された伝達機構(15)を備え、駆動要素(15)の変位の間に前記操作要素(18)が上方に変位させられる、請求項3に記載のピペット。
【請求項12】
前記回転スリーブ(28)は、回転軸に平行な2つの正反対の側面に位置する互いに平行な切り欠き(29、30)を有し、前記操作要素(18)は、支持板(21)上の横方向に突出した操作レバー(19)を備え、前記支持板(21)は、前記回転スリーブ(28)のセクタ(32)を受け入れ、前記セクタ(32)に沿って前記ニップル(4)の長手方向に動かされるように設計された湾曲スロット(22)を有し、前記支持板(21)は、伝達要素(13)を介して前記伝達機構(15)に接続される、請求項11に記載のピペット。
【請求項13】
前記操作要素(18)は、横断方向に延びる第1のハウジングスロット内および前記第1のハウジングスロットの中央から出発して前記ピペットハウジング(2)の長手方向に延びる第2のハウジングスロット内を変位可能であり、したがって第1のハウジングスロットにおいて枢動可能かつ前記第2のハウジングスロットにおいて直線にて移動可能である請求項12に記載のピペット。
【請求項14】
前記回転スリーブ(28)は、前記回転スリーブ(28)の前記2つのセクタ(32、33)を互いに接続する支持リング(50)を上端部に有する、請求項12又は請求項13のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項15】
前記ピペットハウジング(2)および回転支持体(27)は、前記操作要素(18)を前記出発位置へと自主的に変位させるように設計された磁石アセンブリおよび/またはばねアセンブリを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項16】
前記ニップル(4)と同心であり、ばね(54)を介して前記ピペットハウジング(2)に対して留められ、ピペット先端部(57)を前記ニップル(4)へと押し込むことによって予めの緊張を与えることができる第3のセンサー素子(53)が存在し、ピペット先端部(57)が前記ニップル(4)から解放されたとき、前記ばね(54)が緩み、前記第3のセンサー素子(53)が前記ニップル(4)からの前記ピペット先端部(57)の押し出しを助ける、請求項1~15のいずれか一項に記載のピペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット先端部と一緒に使用するためのピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
ピペットは、とくには、科学および産業研究所において、医学、分子生物学、および製薬の応用分野において、選択された量の液体を得るために利用されている。液体は、とくには、単一の液体成分からなる均質な(単相の)液体、または複数の液体成分の均質な混合物(溶液)であってよい。さらに、液体は、液体と別の液体または固体との不均一な(多相の)混合物(乳液または懸濁液)であってもよい。
【0003】
ピペットは、ピペット先端部を固定するためのニップル(取り付け部)を下端に備える棒状のピペットハウジングを有する。ニップルは、多くの場合、円錐形、円筒形、あるいは部分的に円錐形および円筒形の突出部であり、「ワーキングコーン」とも呼ばれる。ピペット先端部は、下端に先端開口部を有し、上部端にはピペット先端部をニップルへと固定することができる取り付け用開口部を有している中空のチューブである。液体は、ピペット先端部へと引き込まれ、ピペット先端部から吐出される。液体の引き込みおよび吐出は、ピペットによって制御される。定量ピペットは、不変の一定の量を得るように機能する。可変ピペットであれば、得られる量を調整することができる。設定量を表示するために、機械式のカウンタが使用される。量を設定するために、駆動装置のストロークを、カウンタに連結された設定装置によって調整することができる。使用後に、ピペット先端部は、取り付け部から取り外され、新しいピペット先端部と交換することが可能である。このようにして、次のピペット使用において、交差汚染が回避される。
【0004】
エアクッションピペットは、ニップル内の貫通穴へとチャネルによって接続されたピペットハウジング内のプランジャ/シリンダシステムを有する。エアクッションピペット用のピペット先端部(エアクッションピペット先端部)には、プランジャが組み込まれていない。シリンダ内の駆動装置によってプランジャを変位させることにより、エアクッションが移動し、ニップルに固定されたピペット先端部へと液体が吸い込まれ、さらにはピペット先端部から液体が排出される。エアクッションピペットの欠点は、吸い込んだ液体の重量、ならびに温度、気圧、および湿度の違いに起因して、エアクッションの長さが変化することで、量の誤差が生じることである。エアロゾルによるピペットの汚染も、問題になる可能性がある。
【0005】
容積式ピペットが、プランジャが組み込まれたピペット先端部(容積式ピペット先端部)と一緒に使用される。この形式のピペットは、ピペット先端部を固定するためのニップルと、組み込まれたプランジャ(先端部プランジャ)に結合してプランジャを動かすことができる駆動装置とを有する。プランジャが液体に直接接触するため、エアクッションの影響は存在しない。容積式ピペットは、とくには、高い蒸気圧、高い粘度、または高い密度の液体を量り取るのに適しており、汚染を避けるためにエアロゾルが存在しないことが重要である分子生物学の用途に適している。
【0006】
使い捨てであり、あるいは再利用されるエアクッションピペット先端部または容積式ピペット先端部は、プラスチックまたはガラスで構成される。
【0007】
Eppendorf AGのBiomaster(登録商標)4830という容積式ピペットにおいては、駆動装置が、ピペット先端部内のプランジャを変位させるためのストロークロッドを有し、ストロークロッドは、中空の下部ストロークロッド部分と、下部ストローク部分へと上部から挿入される上部ストロークロッド部分とを有する。上部ストロークロッド部分は、ピペットハウジングの上端から突出する操作要素に接続されている。Eppendorf AGのMastertip(登録商標)というピペット先端部を、ピペットのニップルに固定することができる。操作要素を押すことによって、ピペット先端部のプランジャのプランジャロッドの上端が下部ストロークロッド部分へと押し込まれるように、ストロークロッドを下方に移動させることができる。ストロークロッドを下方へと下部ストッパまで変位させるとき、ばね装置が蓄勢される。操作要素が解放されると、ばね装置によってストロークロッドが先端部プランジャを伴って上部ストッパへと変位し、液体をピペット先端部へと吸い込む。吸い込まれた液体を、操作要素を再び下部ストッパへと押すことによって吐出することができる。ピペット先端部を解放するためには、ユーザが、操作要素をより大きな力で押すことで、別のばね装置を圧縮し、下部ストロークロッド部分内の上部ストロークロッド部分を下方へと変位させて、プランジャを下部ストロークロッド部分から押し出し、ピペット先端部をニップルから押し出さなければならない。
【0008】
ピペットからピペット先端部を解放するために、ばね装置のばね作用に打ち勝たなければならない。これは、とくにはピペット先端部を頻繁に交換しなければならない場合に、ユーザを疲労させる可能性がある。さらに、粘性の高い液体を送出する場合およびピペット先端部から液体を素早く送出する場合に、先端開口部における流れの抵抗が大きくなるがゆえに、ピペット先端部がニップルから外れる可能性がある。
【0009】
欧州特許第0 992 288号明細書(特許文献1)が、トラクションギア、圧力ギア、またはリンクギアが組み込まれたピペット先端部用の排出装置を備えたピペットを記載している。ギアの伝達比ゆえに、ピペット先端部に作用する排出ロッドは、排出ボタンに接続された駆動ロッドよりも短い経路を移動するため、排出力が、排出装置を作動させる力よりも大きくなる。排出装置は、ピペットハウジング内で、変位装置用の駆動装置に隣接する側に配置され、したがってピペットの全体としての体積が大きい。ピペットが、ユーザがピペット操作後にピペット先端部を排出するために把持しなければならない排出ボタンを、操作ボタンに加えて有している。
【0010】
独国特許第103 55 914号明細書(特許文献2)が、操作ボタンの軸方向運動を取り付け部に対するイジェクタの軸方向および回転運動に変換する排出装置を備えたピペットを記載している。これにより、イジェクタを作動させるために加えられる力が小さくなる。
【0011】
欧州特許第1 689 528号明細書(特許文献3)が、斜面部材を含む先端部取り外し機構を有するピペットを記載しており、斜面要素は、回転可能であり、円を形成する斜面を有し、1つ以上のセグメントを含んでおり、斜面は、各々のセグメントに高い地点および低い地点を有している。斜面を1つのセグメントについて回転させると、排出装置の排出要素が、最初は先端部に向かって動かされ、次いで逆方向に動かされる。この既知の排出装置も、駆動装置に隣接する側に配置されており、ピペットの全体としての体積が大きくなっている。さらに、排出装置が、別個の操作ボタンを有している。これは、斜面要素をギアによって回転させるモータを制御する電気押しボタンとして設計されている。排出装置が構造的にきわめて複雑である。
【0012】
独国特許第27 11 124号明細書(特許文献4)が、バヨネットロックを介してピペット先端部に接続することができるピペットを記載している。ピペット先端部を、手動でピペットから取り外さなければならない。これは、汚染につながる可能性がある。
【0013】
独国特許第10 2006 036 764号明細書(特許文献5)が、取り付けシャフトに係合するラッチ要素と、取り付けシャフトに対するシールのためのシール領域とを有するピペット先端部を記載している。ラッチ要素の領域において、ピペット先端部は、ピペット先端部の軸方向に延びる少なくとも1つのスロットによって弱められた壁を有する。これにより、取り付けシャフトへのピペット先端部の漏れのない固定および取り付けシャフトからのピペット先端部の取り外しを、容易にすることができる。高粘度の液体の送出および迅速な送出の場合に、ピペット先端部が押されてシャフトから外れる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許第0 992 288号明細書
【文献】独国特許第103 55 914号明細書
【文献】欧州特許第1 689 528号明細書
【文献】独国特許第27 11 124号明細書
【文献】独国特許第10 2006 036 764号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような背景に対して、本発明の目的は、少ない構造体積で成功するピペットを備え、ピペット先端部の排出は、わずかな力の行使を要するピペットを提供することである。さらに、ピペットは、高粘性流体をピペット使用しつつおよび素早くピペット使用しつつ、ピペット先端部が付着物から押し出されるのを防止するために、わずかな力の行使でニップル上のピペット先端部を確実に固定するのに適するということである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ピペット先端部とともに使用するためのピペットであって、
・棒状のピペットハウジングと、
・ピペットハウジングの下端に位置し、ピペット先端部を保持するニップルと、
・ニップル上に保持されたピペット先端部へと液体試料を吸い込むため、およびピペット先端部から試料を排出するための変位要素を変位させるための駆動装置と、
・ピペットハウジング内に回転可能に取り付けられた回転支持体と、ピペットハウジング内をニップルの長手方向に変位可能位に案内される排出ロッド上に位置し、曲線支持体の周囲の第1の曲線上を案内される第1のセンサー素子と、回転支持体に接続され、ピペットハウジングから突出し、ピペットハウジングに対して回転可能である操作要素とを備える排出装置とを備えており、排出装置は、操作要素を回転させることによって回転支持体を出発位置から回転させるように設計され、第1の曲線は、第1のセンサー素子を下方へと変位させることで、ニップル上に保持されたピペット先端部を排出ロッドによってニップルから押し出す、ピペット。
【0017】
回転スリーブは、ピペットハウジング内で回転可能であり、ピペットハウジング内をニップルの長手方向に固定して取り付けられている。第1のセンサー素子は、回転支持体の周囲の第1の曲線上に案内される。さらに、第1のセンサー素子は、ハウジング内をニップルの長手方向に変位可能位に案内される排出ロッド上に配置されている。その結果、回転支持体の回転動作は、排出ロッドの直線の動作に変換される。回転動作は、ピペットハウジングから突出し、ピペットハウジングに対して回転可能であり、回転支持体に接続される操作要素によって制作される。ピペットハウジングから突出している操作要素は、使用者によって手動で作動される。従って、操作要素の回転軸を好ましくは360°より小さく(以下は同様に“枢軸”と呼ばれている)手動で回転させることによって、ピペットハウジング内の排出ロッドは、ニップルの長手方向に変位可能である。この下方への変位において、排出ロッドは、ニップル上に保持されたピペット先端部を押し出す。これを達成するために、排出ロッドは、好ましくはピペット先端部の上部に対して、または好ましくは、シリンジピストンのピストンロッドの上部に対して、またはピペット先端部のカラーの上部に対して、その下端によって押し出されることができる。それ故に、ピペット先端部は、操作要素を手動で回転させることによって、ピペットから排出可能である。さらに、回転支持体上の曲線側は、操作要素を作動させるための力が、ピペット先端部を排出させるために必要な力より小さくなるようにすることが可能である。その上、回転可能に取り付けられた回転支持体は、スペースを節約する手段によってハウジング内で受け入れられることが可能である。特に、少なくとも駆動装置の一部が、スペースを節約する手段によって回転支持体に配置されるように、回転支持体は、設計され、配置可能である。これにより、ピペットの構造体積を減少させることができる。
【0018】
本発明に記載の1つの実施形態によれば、排出装置(以下同様に“枢動自在な”と呼ばれている)は、回支持体転が、ニップルからピペット先端部を押し出すために、その回転軸についてすなわち、360°より小さい角度ぐらい、好ましくは180°より小さく、より好ましくは、90°より小さい角度ぐらいで部分的にのみ回転可能になるように設計されている。これにより、回転支持体の周囲の第1の曲線は、対応する360°より小さい角度範囲にのみ、および/または回転支持体の動作のストップリミットによって、および/または操作要素にのみ広げることを達成することができる。しかしながら、本発明はまた、回転支持体がニップルからピペット先端部を押し出すために完全に一回、複数回、またはその回転軸について要求されるたびに回転させることができる実施形態に関する。
【0019】
本発明に記載の別の実施形態によれば、ニップルは、ピペット先端部への締まり嵌めによる接続のための手段を有し、ピペット先端部を締まり嵌めにてニップルに接続する前にニップルを弾性的に縮めかつ/またはピペット先端部を弾性的に広げつつ、ピペット先端部をニップルへと押し込むことができ、ニップルと同心に配置されたロック用スリーブと、ロック用スリーブから上方に突出する制御ロッドとを備えるロック装置が、ピペットハウジング内でニップルに向かって変位できるように案内され、第2のセンサー素子が、制御ロッドから突出し、操作要素が出発位置に配置されているときに、ロック用スリーブが、ロック位置にあるときの内側のニップルに隣接し、かつ/または外側のピペット先端部に隣接することによって、ロック用スリーブがニップルに締まり嵌めにて接続されたピペット先端部のニップルからの解放を防止するように設計された第2のセンサー素子を案内する第2の曲線を回転支持体は周囲に有し、ロック用スリーブは、ニップルおよび/またはピペット先端部が少なくとも部分的に解放され、ピペット先端部が排出ロッドによってニップルから押し出されるように、操作要素を回転させることによって上方へと変位させることが可能である。
【0020】
この実施形態においては、ピペット先端部をニップルに接続させるため、およびピペット先端部をニップルから取り除くために力を減少させることが可能であり、ピペット先端部は、それにもかかわらず高粘性流体をピペット使用しつつおよび素早くピペット使用しつつ、ピペット先端部が、ニップルから開放されないようにニップル上に確実に固く固定される。ピペット先端部をニップルに接続させることにより、ニップルをピペット先端部に押し込むことによって弾性的に縮めることができ、かつ/またはニップルの貫通によってピペット先端部を弾性的に広げることが容易になる。弾性的な圧縮かつ/または拡張は、ピペット先端部の締まり嵌めのための手段とニップル上にピペット先端部を押し込むときのニップルとの間で力を行使することによって実施される。弾性的な圧縮かつ/または拡張は、もし押し込むときに、ピペット先端部の締まり嵌めの接続のための手段がニップルの締まり嵌めの接続のための手段に達するなら、およびピペット先端部が、ニップルの締まり嵌めの接続に入るなら、全体的にまたは部分的に逆方向に動かされる。次いで、少なくとも1つのロック用スリーブは、ロック位置に変位される。これにより、ニップルとピペット先端部との間で締まり嵌めの接続を開放するのに必要であるニップルを弾性的に圧縮することを防止し、かつ/またはピペット先端部を弾性的に広げることを防止するので、ニップル上のピペット先端部は固定される。ピペットからピペット先端部を排出するために、ロック用スリーブは、ニップルかつ/またはピペット先端部を少なくとも部分的に開放し、およびニップルを弾性的に縮めることができ、かつ/またはピペット先端部を弾性的に広げることができるように、ロック位置から取り除かれる。その結果、締まり嵌めの接続は、わずかな力の行使で開放可能であり、およびピペット先端部は、ニップルから開放可能である。その上、ロック用スリーブの変位は、このために第2の回転支持体を有する回転支持体によって制御される。第2の曲線の形状および回転支持体上の第1の曲線に関するその位置は、排出ロッドがピペット先端部に対して押し出す前に、ロック用スリーブが、時宜を得た手段でロック位置から取り除かれることを確実にすることができる。
【0021】
弾性的な圧縮のために、ニップルは、長手方向に延びる少なくとも1つのスロットを有することができる。この場合、ニップルは、金属またはプラスチックのような硬い弾性的または柔らかい弾性的素材から成ることができる。シリコーンゴム、熱可塑性のエラストマーまたはゴムのような柔らかい弾性的素材から製作されるニップルはまた、スロットなしに弾性的な圧縮には十分な弾性を有することができる。弾性的な拡張のために、ピペット先端部は、上方端部上で長手方向に延びる少なくとも1つのスロットを有することができる。この場合、ピペット先端部は、ポリプロピレンまたはポリエチレン、または柔らかい弾性的なプラスチックのような硬い弾性的なプラスチックから成ることができる。さらに、スロットなしに弾性的な拡張には十分な弾性を有するように、少なくとも上方端部に柔らかい弾性的な素材、例えばシリコーンゴム、熱可塑性のエラストマー、またはゴムから成るピペット先端部を製作することが可能である。ピペット先端部は、複数の素材から成る多成分射出成形によって製作されることが可能である。そうすることによって、様々な素材が、互いに物理的にかつ/または化学的に接続されることができる。特に、締まり嵌めかつ/または一体的に(例えば、接着または溶接によって)互いに接続されることができる。ロック用スリーブは、弾性的にニップルを縮める、かつ/またはピペット先端部を弾性的に広げるのに適した半径方向の力で圧力を加えられるときに変形しないように設計されている。ロック用スリーブは、例えば、金属、または硬い弾性ゴム、または硬質プラスチックから成る。
【0022】
本発明に記載の別の実施形態によれば、回転支持体は、回転スリーブ、いわゆる回転可能に取り付けられたスリーブである。回転スリーブとしての実施形態は、回転スリーブ内で駆動装置の少なくとも一部分のとりわけスペースを節約して収めることを可能にする。
【0023】
本発明に記載の別の実施形態によれば、回転支持体は、ニップルの長手方向に延びる回転軸を有する。これにより、回転支持体のスペースを節約して収めるために好都合になる。例えば、これにより棒状のピペットハウジング内の駆動装置上にスペースを節約する手段で配置が可能である。とりわけスペースを節約することの実施形態によれば、曲線支持体は、ニップルの方向に延びる回転軸を持つ回転スリーブであり、駆動装置の少なくとも一部分は、回転スリーブの内側に配置されている。別の実施形態によれば、回転スリーブは、ニップルの長手方向に直角に延びる回転軸を有する。
【0024】
別の実施形態によれば、ニップルの長手方向は、棒状のピペットハウジングの長手方向、またはこれに相当するものでもある。ニップルの長手方向は、ピペット先端部が、ニップルへと押し出され、ニップルから取り除かれることができる方向である。ピペットハウジングの長手方向は、伸長のその主な方向である。
【0025】
別の実施形態によれば、第1の曲線および/または第2の曲線は、回転支持体の外側の周囲上に配置されている。これは例えば、固体円柱または回転スリーブのような回転スリーブを設計する場合である。別の実施形態によれば、回転支持体は、第1の曲線および/または第2の曲線が、回転支持体の内側の周囲上に配置されている。
【0026】
別の実施形態によれば、操作要素を出発位置から異なる方向に回転させることによってピペット先端部をニップルから押し出すことができるように、第1および/または第2のセンサー素子が出発位置に位置しているとき、第1の曲線は、高い地点の両側に位置する互いに対称に配置された部分を有し、さらには/あるいは第2の曲線は、低い地点の両側に位置する互いに対称に配置された部分を有する。これにより、使用者が、ピペット先端部を排出するために操作要素の回転方向を選択することが可能になる。
【0027】
別の実施形態によれば、第1の曲線は、第1の溝であり、かつ/または第2の曲線は、第2の溝である。これは、特に確かなかつ省燃料の回転支持体上の第1のセンサー素子
および/または第2のセンサー素子の導入をもたらす。別の実施形態によれば、第1の曲線および/または第2の曲線は、回転支持体の正面に形成され、それぞれのセンサー素子は、バネ装置によって曲線に対して押し出されることができる。
【0028】
別の実施形態によれば、第1の曲線は、逆さにした、いわゆるV字、U字、またはY字の逆さまの形状を有し、かつ/または第2の曲線は、直立のV字またはU字の形状を有する。これらの実施形態により、ピペット先端部は、2つの異なる方向のうち、1つにおいて操作要素を任意に回転させることによって、排出されることが可能になる。
【0029】
別の実施形態によれば、第1のセンサー素子は、第1の案内ピン、回転可能に取り付けられた第1のボール、ローラまたはスリーブ、あるいはピン上に取り付けられた第1のローラベアリングであり、および/または第2のセンサー素子は、第2の案内ピン、回転可能に取り付けられた第2のボール、ローラまたはスリーブ、あるいはピン上に取り付けられた第2のローラベアリングである。ピンとしての実施形態は、構造的に非常に簡単である。回転可能に取り付けられた要素またはローラベアリングは特に、低摩擦であり、かつ作動および摩擦のために加えられた力を減少させることができる。
【0030】
別の実施形態によれば、排出装置を作動させるための操作要素は、駆動装置を駆動するための操作要素でもある。これにより、把持することなくピペットの片手操作が可能になる。別の実施形態によれば、ピペットは、排出装置を作動させるための操作要素を有し、かつこの操作要素とは異なる駆動装置を駆動するための別の操作要素を有する。
【0031】
別の実施形態によれば、操作要素は、駆動装置を駆動するためにニップルの長手方向に変位させることが可能である。ニップルの長手方向に延びる回転軸を有する曲線支持体によって、ピペッティングは、ニップルの長手方向内で操作要素を変位させることによって制御されることが可能であり、かつピペット先端部の排出は、回転軸周辺の操作要素を回転させることによって制御されることが可能である。
【0032】
別の実施形態によれば、回転支持体が、操作要素の回転に正確に従うように、操作要素は、コンジョイント回転、いわゆる同期自転のために接続される。別の実施形態によれば、操作要素は、歯車装置(歯車列または牽引駆動のような)によって回転支持体に接続される。
【0033】
別の実施形態によれば、駆動装置は、操作要素が下方へと順次に変位させられるときに駆動装置の駆動要素を交互に下方および上方に変位させるように設計された伝達機構を有し、その間に操作要素が上方に変位させられる。この実施形態は、駆動装置を駆動するためにニップルの長手方向に変位可能である操作要素には好都合である。下方へ変位される第1の操作要素において、駆動要素は、上部位置から下部位置に上方へ変位され;次の操作要素の上方への変位において、駆動要素は、その下部位置を保持し、並びに次の操作要素の下方への変位において、駆動要素は、上部位置へと戻り変位される。この連続は、必要に応じて頻繁に繰り返されることが可能である。
【0034】
別の実施形態によれば、伝達機構は、回転スリーブの内で少なくとも部分的に配置される。これによりスペースを節約して収めることが可能になる。
【0035】
別の実施形態によれば、回転スリーブは、回転軸に2つの反対の側面に位置する互いに平行な切り欠きを有し、操作要素は、支持板上の横方向に突出した操作レバーを備え、支持板は、回転スリーブのセクタを受け入れ、セクタに沿ってニップルの長手方向に動かされるように設計された湾曲スロットを有し、支持板は、伝達要素を介して伝達機構の駆動に接続される。別の実施形態によれば、操作要素は、ピペットハウジングの横断方向に延びる第1のハウジングスロット内および第1のハウジングスロットの中央から出発してピペットハウジングの長手方向に下方へ延びる第2のハウジングスロット内を変位可能であり、したがって第2のハウジングスロットの上側端部の出発位置内の第1のハウジングスロットにおいて反対方向に枢動可能かつ第2のハウジングスロットにおいて直線にて移動可能である。
【0036】
この実施形態において、操作要素は、コンジョイント回転のために回転スリーブに接続され、かつニップルの長手方向へ移動可能でもある。これは、湾曲スロット上の回転スリーブのセクタ上で操作要素を案内することによって達成される。さらに、操作要素の動作は、回転スリーブの回転軸周辺の第1のハウジングスロットによって、かつニップルの長手方向において第2のハウジングスロットによって案内されることができる。
【0037】
別の実施形態によれば、回転スリーブは、スリーブの2つのセクタを互いに接続する支持リングを上端部に有する。スリーブは、支持リングによって安定化される。さらに、支持リングは、操作要素がスリーブのセクタから引き剥がされないようにする。
【0038】
別の実施形態によれば、第1の曲線および/または第2の曲線は、回転スリーブの周囲に切り欠きの下方に配置されている。
【0039】
別の実施形態によれば、ピペットハウジングおよび回転支持体は、操作要素を出発位置へと自主的に変位させるように設計された磁石アセンブリおよび/またはばねアセンブリを有する。磁石アセンブリは、例えば、2つの永久磁石を備え、あるいは1つの永久磁石と1つの強磁性部品とを備える。永久磁石または強磁性部品は、ピペットハウジングおよび回転支持体に保持されており、互いに接近したときに操作要素を出発位置へと自主的に変位させる。これを、回転支持体が出発位置から回転させられるときに予め蓄勢され、回転支持体を再び出発位置へと戻そうとするばね装置によって達成することも可能である。
【0040】
別の実施形態によれば、ニップルと同心であり、ばねを介してピペットハウジングに対して支持され、ピペット先端部をニップルへお押し込むことによって蓄勢できる第3のセンサ素子が存在し、したがってピペット先端部がニップルから解放されたとき、ばねが緩み、第3のセンサー素子がピペット先端部のニップルからの押し出しを支援する。第3のセンサ素子は、とくには、欧州特許出願第18 168 763.3号に記載されているように、ピペット先端部のカラーを感知するための感知装置のセンサー素子であってよい。これに関して、上記出願が参照され、その内容は、ここでの言及によって本特許出願に組み込まれる。
【0041】
別の実施形態によれば、ピペット先端部は、容積式ピペットまたはエアクッションピペットである。
【0042】
別の実施形態によれば、(1)容積式ピペットとしての実施形態において、排出ロッドは、ピペット先端部内で先端部プランジャを変位させるためにストロークロッド内の軸方向孔の範囲内に配置され、ニップル上に保持され、ニップル内の貫通内腔における先端部プランジャに係合するピペット先端部の先端部プランジャの下端のためのストロークロッドの座上の下端に配置される、および(2)エアクッションピペットとしての実施形態において、駆動装置の駆動要素によって変位可能な変位要素を持つ変位装置が、ピペットハウジング内に存在し、ニップル内の貫通内腔に接続され、排出ロッドの下端は、ニップルに隣接する側に配置されている。(1)第1のバージョンによれば、容積式ピペットの先端部プランジャを備えるピペット先端部の排出が達成され、(2)第2のバーションでは、エアクッションピペットのピペット先端部の排出が達成される。
【0043】
別の実施形態によれば、ピペット先端部は、単一チャネルピペットまたはマルチチャネルピペットである。マルチチャネルピペットにおいて、回転支持体は、マルチチャネルインジェクタの排出ロッドを制御することができる。
【0044】
本発明は、例示的実施形態の添付図面に基づいて下記で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】ニップル上に取り付けられたピペット先端部を含む容積式ピペットを部分的に切り取った透視図を示す
図2】ピペット先端部に取り付けられた同様の容積式ピペットの内側に隣接したロック用スリーブを含むスロットされたニップルの拡大透視図を示す
図3】同様の配置を側面図で示す
図4】同様の配置を縦断面で示す
図5図1の容積式ピペットを分解図で示す
図6図1のピペットハウジングを除いた容積式ピペットを分解図で示す
図7】排出ロッドを含む回転スリーブおよび出発位置における同様の容積式ピペットのロック用スリーブの透視図を示す
図8】出発位置において部分的に切り取った同様の容積式ピペットを側面図で示す
図9】ピペット使用中に部分的に切り取った同様の容積式ピペットを側面図で示す
図10】排出するとき部分的に切り取った同様の容積式ピペットを側面図で示す
図11】ピペット先端部の外側に横たわるロック用スリーブを含む別の容積式ピペットのニップル上でスロットされたピペット先端部を縦断面で示す
【発明を実施するための形態】
【0046】
本出願において、「上部」および「下部」ならびに「垂直」および「水平」という表現、ならびにこれらから派生した「上方」および「下方」、「直立」および「逆さま」、ならびに「互いに上下に」などの用語は、ニップルを垂直方向に向けてピペットハウジングの下向きの端部に位置させたピペットの配置を参照する。ピペット先端部に関して、これらの表現は、ピペット先端部の中央軸を垂直方向に向け、先端開口部を下部に配置し、取り付け用開口部を上部に配置した状態を参照する。
【0047】
図1によれば、容積式ピペットとして設計されたピペット1は、棒状(例えば、円筒形)のピペットハウジング2を有する。ピペットハウジング2の下端から、中空の円筒状のシャフト3が、下方に突出している。ニップル4が、シャフト3の下端から下方に突出しており、図1および図4によれば、下端に貫通孔を有する貫通内腔5を有している。貫通内腔5の内径は、シャフト3の内径よりも小さい。
【0048】
ニップル4は、中空円筒形の上部ピン部分6を有し、その下方に、中空円錐形の下部ニップル部分7を有する。環状溝8が、上部ニップル部分6と下部ニップル部分7との間のニップル4の外周を巡って延びている。
【0049】
上部ニップル部分6、環状溝8、および下部ニップル部分7は、ピペットをピペット先端部へと締まり嵌めにて接続するための第1の手段9を形成する。
【0050】
さらに、ニップル4は、互いに正反対に位置して長手方向に延びている2つのスロット10、11を有する。スロット10、11は、下端からニップル4の全長にわたって延びている。
【0051】
図1図5、および図6によれば、駆動装置12がピペットハウジング2内に存在し、伝達ロッド14の形態の伝達要素13と、伝達機構15と、ストロークロッド17の形態の駆動要素16とを備えている。さらに、駆動装置12は、バー20を介して支持プレート21にしっかりと接続された操作レバー19の形態の操作要素18を備える。
【0052】
図6によれば、支持プレート21は、幅の広い丸みを帯びた端部と、幅の狭い丸みを帯びた端部とを備える卵形の形状を有し、操作レバー19は、幅の狭い丸みを帯びた端部の縁から突出している。この縁に加えて、支持プレート21は、幅の狭い丸みを帯びた端部の輪郭にほぼ平行に延びる第1の湾曲スロット22を有する。さらに、支持プレート21は、第1の湾曲したスロット22の中央において、幅の狭い丸みを帯びた端部の側に、矩形の第1のエッジ切り欠き23を有する。
【0053】
図1および図5によれば、ストロークロッド17は、上方からシャフト3およびニップル4に挿入される。図4によれば、ストロークロッド17は、中空であり、下端から始まって長手方向に延びている長手方向のスロット24を備えている。長手方向のスロット24ゆえに、ストロークロッド17は、C字形の断面を有する。ストロークロッド17の下端は、プランジャロッドの上端のための座25を形成している。
【0054】
伝達機構15は、操作レバー19の順次の下方変位(これらの下方変位の間に、操作レバー19は上方に変位させられる)の際に、ストロークロッド17が交互に下方および上方に変位するように設計されている。結果として、操作レバー19を下方に押すことによって、ストロークロッド17を上方位置から下方位置へと変位させることができ、続く操作レバー19の上方変位において、ストロークロッド17は下方位置にとどまり、その後に操作レバー19を押すことによって、ストロークロッド17は上方へと再び変位する。これを、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。
【0055】
図1図5、および図6によれば、ピペット1は、排出装置26を備える。排出装置26は、ピペットハウジング2に回転可能に取り付けられ、中空円筒形の回転スリーブ28として設計された回転支持体27を備える。回転スリーブ28は、例えば、その外周によってピペットハウジング2の内周上を回転できるように取り付けられ、上端および下端が、ピペットハウジング2内での軸方向の変位が不可能であるように、ピペットハウジング2の内周の段差の出っ張りに当接している。回転スリーブ28の回転軸は、ピペットハウジング2の長手軸およびニップル4の長手軸に一致する。
【0056】
回転スリーブ28は、その回転軸に平行な2つの正反対を向いた側面に、回転スリーブ28の上縁から延び、下縁から距離を置いて終わる平行な切り欠き29、30を有する。したがって、切り欠きの下方において、回転スリーブ28は環状のベース31で構成され、さらに、回転スリーブ28は、側面の2つの切り欠き29、30に接する2つの正反対を向いた環セクタ32、33で構成される。
【0057】
第1の曲線34および第2の曲線35が、回転スリーブ28の円形のベース31の外周に配置されている。第1の曲線34は、反転させた(逆さまの)Y字の形態の第1の溝36として設計されている。Y字の垂直部分37は、セクタ32をセクタ32の上縁の直前まで上方へと延びている。第2の曲線35は、回転スリーブ28のベース31の外周に位置する直立なV字の形態の第2の溝38である。第1の曲線34および第2の曲線35は、回転スリーブ28の周囲において、互いに90°ずらして配置されている。第1の曲線34および第2の曲線35の各々は、回転スリーブ28の周囲において90°未満の角度範囲にわたって延びている。
【0058】
図1図5、および図6によれば、排出装置26は、ストリップ状の上部排出ロッド部分40と、円筒状の下部排出ロッド部分41とを備える排出ロッド39を備える。上部および下部排出ロッド部分40、41は、互いに平行であり、互いに横方向にずらして配置されている。上部排出ロッド部分40の下端が、下部排出ロッド部分41の上端に、2つの排出ロッド部分に対して斜めに傾斜したストリップ状の接続ロッド部分42によって接続されている。第1の感知ピン44の形態の第1のセンサー素子43が、上部排出ロッド部分40の内側から直角に延びている。排出ロッド39は、好ましくは、例えば硬質プラスチックからの単一の部品として設計される。
【0059】
図1図4、および図7によれば、排出ロッド39は、感知ピン44によって第1の溝36へと案内され、接続ロッド部分42は、ストロークロッド17の長手方向のスロット24を通り、下部排出ロッド部分41は、ストロークロッド17内をほぼ下端まで延びる。
【0060】
図1図4図5、および図6によれば、ピペット1は、ロック用スリーブ46と、ロック用スリーブ46に平行なストリップ状の制御ロッド47とを備えるロック装置45を備える。ロック用スリーブ46の上端と制御ロッド47の下端とが、ロック用スリーブ46および制御ロッド47に対して斜めに傾斜した第2の接続ロッド部分48によって互いに接続されている。第2の感知ピン49.1の形態の第2のセンサー素子49が、制御ロッド47の内側から延びている。
【0061】
図1および図7によれば、第2の感知ピン49.1は、第2の溝38で案内される。図1および図4によれば、ロック用スリーブ46は、シャフト3へと上方から挿入され、ニップル4の内側に当接する。ストロークロッド17および排出ロッド39は、ロック用スリーブ46へと上方から挿入される。
【0062】
第1の湾曲スロット22により、操作要素19は、第1の溝36が延びている回転スリーブ28のセクタ32へと押し込まれる。図1図6、および図7によれば、回転スリーブ28は、上部において、2つのセクタ32、33を橋渡しして回転スリーブ28を安定化させる支持リング50に接続される。支持リング50は、外縁に、2つのセクタ32、33の外縁を横から囲む下向きに突出する面51を有する。さらに、支持リング50は、溝36、38が設けられていないセクタ33の上縁を収容する第2の湾曲スロット52を有する。第2の湾曲スロット52の正反対の側において、矩形の第2のエッジ切り欠き52.1がケーシング51に存在し、第2のエッジ切り欠き52.1は、下部が開いており、操作レバー19と支持プレート21との間のウェブ20を収容するように設計されている。
【0063】
支持リング50は、例えば、接着によって回転スリーブ28に接続される。
【0064】
回転スリーブ28およびロック用スリーブ46ならびに操作要素18は、例えば、1つ以上の硬質プラスチックおよび/または金属で製作される。回転スリーブ28、支持リング50、操作要素18、および/またはロック用スリーブ46は、好ましくは各々が単一の部品として設計される。操作要素18の操作ボタンを、弾性があり、あるいは柔らかくて弾性があるプラスチックまたはゴムから製造することもできる。
【0065】
外部からの操作が可能であるように、操作レバー19は、ピペットハウジング2の長手軸を横切って延び、ピペットハウジング2の円周の一部について延びる第1のハウジングスロットを通って、ピペットハウジング2の外へと延びる。第1のハウジングスロットは、中央において、ピペットハウジング2の長手方向に延びる第2のハウジングスロットにつながっている。
【0066】
ばね装置の作用とは反対に、操作レバー19を支持リング50から出発して下方へと第2のハウジングスロットに沿って変位させることができ、ここで、操作レバー19は、第1の湾曲スロット22で回転スリーブ28のセクタ32上をスライドする。解放されると、ばね装置が単独で操作レバー19を上方に戻して変位させる。
【0067】
スリーブ状の第3のセンサー素子53が、シャフト3の外側で案内される。シャフト上を案内されるコイルばね54の形態のばね装置が、ピペットハウジング2の下側および第3のセンサ素子53の上側に当接する。コイルばね54によって、センサー素子53は、シャフト3上のストッパ要素またはニップル4へと上方から押し付けられる。
【0068】
計量容積を調整するための調整ノブ55が、ピペットハウジング2の上側において配置される。調整ノブ55を回転させることによって、計量容積を調整することができる。ピペットハウジング2内で調整ノブ55の下方に配置されたカウンタ56が、それぞれの場合で調整された計量容積を示す。調整ノブ55および/またはカウンタ56は、伝達機構15に連結されている。伝達機構15は、個々の調整された計量容積に対応してストロークロッド17のストロークを変更するように設計されており、このストロークが、操作要素18の下方への変位によって実行される。
【0069】
図1および図4によれば、ピペット先端部57がニップル4に取り付けられる。ピペット先端部57は、下端に先端開口部59を有する管状の本体58と、上端に取り付け用開口部60を有するカラー61と、カラー61の内周のニップル4への固定のための座領域62とを備える。座領域62は、ニップル4に対して相補的な輪郭を有しており、下部に位置し、円錐形の下部ニップル部分7を受け入れる円錐形の下部座部分63と、その上方に位置し、ニップル4の環状溝8に係合する周状ビード64と、その上方に位置し、円筒形の上部ニップル部分6を受け入れる円筒形の上部座部分65とを有している。下部座部分63、ビード64、および上部座部分65は、ピペット先端部57をピペット1に締まり嵌めにて接続するための第2の手段66を形成する。
【0070】
座領域62の下方に、管状の本体58は、円筒形のプランジャ移動領域67を有する。プランジャ移動領域67の下方に、管状の本体58は、円錐台の形状を有する下方へと先細りの先端部分68を有する。先端部分68は、図4に示されており、簡略化の理由で他の図では省略されている。先端部プランジャ69が、管状の本体58に挿入されている。先端部プランジャ69は、プランジャ移動領域67内を案内されるプランジャ70を備える。プランジャロッド71が、プランジャ70から上方に突出し、プランジャ70よりも小さい直径を有する。プランジャロッド71は、上端にプランジャヘッド72を有している。図4によれば、プランジャヘッド72は、ストロークプランジャ17の座25へと押し下げられている。
【0071】
ピペット1を、次のように使用することができる。
【0072】
図1および図8によれば、開始状態において、ピペット先端部57がピペット1に保持されている。座領域62は、とくには、ビード64を環状溝8に係合させることにより、形状によるはまり合いでニップル4に接続されている。操作要素18は、第2のハウジングスロットの上端の開始位置に位置しており、第1のハウジングスロットへと両方向にねじ込むことが可能である。最大の回転角度は、円周方向における第1および第2の溝36、38の範囲あるいは第1のハウジングスロットの範囲のうち、小さい方によって制限される。
【0073】
ロック用スリーブ46は、ピペット先端部57のニップル4からの意図せぬ解放を防止するように、図4による最も下方の位置に配置されている。形状によるはまり合いでの接続を解除するためには、ニップル4を半径方向に縮めることが実際には必要であると考えられるが、これは、この位置においては、ロック用スリーブ46によって阻止されている。図4とは異なり、開始位置の先端部プランジャ69は、プランジャヘッド72がストロークロッド17の座25にまだ押し込まれていない。
【0074】
先端部プランジャ69をストロークロッド17に接続するために、操作要素18が下方へと押される。この運動が、伝達機構15によってストロークロッド17に伝達されることで、座25がプランジャヘッド72に押し付けられる。これが図4に示されている。
【0075】
解放後に、操作要素18は、図8に従ってばね装置によって開始位置へと戻される。ストロークロッド17および先端部プランジャ69は、図4による位置を維持する。
【0076】
液体を引き込むために、ピペット1上に保持されたピペット先端部57の下端が液体に浸される。次いで、操作要素18が、再び下方へと押される。この動きが、伝達装置15によって、ストロークロッド17のストローク運動に変換される。結果として、先端部プランジャ69が上方に変位する。このとき、プランジャヘッド72は排出ロッド39を一緒に移動させ、第1のガイドピン44がY字形の第1の溝36の垂直部分37を上方にスライドする。この際に、ロック用スリーブ46は自身の位置を保持する。これが図9に示されている。
【0077】
ひとたび操作要素18が設定されたストロークを実行すると、ピペット先端部57は、特定の量の液体で満たされる。次いで、操作要素18が解放され、ばね装置によって上方へと支持リング50上のストッパまで戻される。この量の液体を吐出するために、ピペット1のピペット先端部57を別の容器の上方に向けることができる。操作要素18を再び下方へと押すことにより、ストロークロッド17が下方に変位し、液体が吐出される。このとき、第1のガイドピン44は、第1の溝36の結節点まで下方へとスライドする。
【0078】
液体の引き込みおよび吐出時に操作要素18によって実行されるストロークは、液体の設定量に依存する。
【0079】
液体の引き込みおよび吐出を、数回行うことが可能である。
【0080】
ピペット先端部57を排出するために、開始位置にある操作レバー18を右方または左方へと回転させる。これにより、回転スリーブ28が回転し、したがって第2の溝38が第2のガイドピン49.1、すなわちロック用スリーブ46を、ロック用スリーブ46がピン4を解放してピン4が半径方向内側へと変形することができるまで、上方に変位させる。これを達成するために、好ましくは、ロック用スリーブ46は、貫通内腔5から引き出される。さらに、回転スリーブ28を回転させることにより、第1の感知ピン44は、第1の溝36の下部の2つの横部分のうちの一方を下方に変位し、したがって排出ロッド39が、下部において先端部分68に当接している先端部プランジャ69を押す。このようにするとき、ビード64が、ピンに半径方向の力を作用させてピンを収縮させ、ピペット先端部57とニップル4との間の形状によるはまり合いの接続が解除される。これにより、ピペット先端部57がニップル4から解放される。これが図10に示されている。ニップル4からのピペット先端部57の取り外しを、予め蓄勢されたコイルばね54によってピペット先端部57の上縁に押し付けられるセンサー素子53によって助けることができる。
【0081】
ひとたび使用済みのピペット先端部57がニップル4から解放されると、新しいピペット先端部57をニップル4に接続することができる。これを達成するために、ピペット1のニップル4を、支持体に設けられたピペット先端部57の座開口部68へと挿入することができる。そのようにする際に、センサー素子53が上方に変位し、コイルばね54が蓄勢される。さらに、プランジャヘッド72が排出ロッド39の下部側を押し、したがって第1の感知ピン44が第1の溝36の第1の分岐点までスライドする。そのようにする際に、操作要素18が開始位置に位置するまで、回転スリーブ28がピペットハウジング2内で回転する。同時に、第2の感知ピン49.1が、第2の溝38内を下方の地点へとスライドする。これにより、ロック用スリーブ46が、ピペット先端部57のニップル4からの解放を防止する図4のロック位置に移動する。
【0082】
先端部プランジャ69のストロークロッド17への接続およびピペットの使用を、上述のやり方で実行することができる。
【0083】
図1の典型的な実施形態は、ロック用スリーブ46がピペット先端部57のカラー61の外周の外側のロック位置へと押し込まれる点で、上述した実施形態から相違する。この容積式ピペットにおいては、上端部から続く少なくとも1つの長手方向のスロットを有するピペット先端部57が使用される。長手方向のスロットは、ピペット先端部57とニップル4との形状によるはまり合いの接続を確立させるために、ピペット先端部57を径方向に広げることを可能にする。図11に示されるように、ロック用スリーブ57がロック位置にあるとき、形状によるはまり合いの接続の解除が防止される。ピペット先端部57をニップル4から解放するために、ロック用スリーブ46が、上述の典型的な実施形態と同様に回転スリーブ28によって上方へと変位させられ、次いで、ピペット先端部57が、先端部プランジャ69の上面を押すことによってニップル4から解放される。
【符号の説明】
【0084】
1 ピペット
2 ピペットハウジング
3 シャフト
4 ニップル
5 貫通内腔
6 上部ニップル部分
7 下部ニップル部分
8 環状溝
9 締まり嵌めにて接続するための第1の手段
10 スロット
11 スロット
12 駆動装置
13 伝達要素
14 伝達ロッド
15 伝達機構
16 駆動要素
17 ストロークロッド
18 操作要素
19 操作レバー
20 バー
21 支持プレート
22 第1の湾曲スロット
23 第1のエッジ切り欠き
24 長手方向のスロット
25 座
26 排出装置
27 回転支持体
28 回転スリーブ
29 切り欠き
30 切り欠き
31 ベース
32 セクタ
33 セクタ
34 第1の曲線
35 第2の曲線
36 第1の溝
37 垂直部分
38 第2の溝
39 排出ロッド
40 上部排出ロッド部分
41 下部排出ロッド部分
42 接続ロッド部分
43 第1のセンサー素子
44 感知ピン
45 ロック装置
46 ロック用スリーブ
47 制御ロッド
48 第2の接続ロッド部分
49 第2のセンサー素子
49.1第2の感知ピン
50 支持リング
51 面
52 第2の湾曲スロット
52.1第2のエッジ切り欠き
53 第3のセンサー素子
54 コイルばね
55 調整ノブ
56 カウンタ
57 ピペット先端部
58 本体
59 先端開口部
60 取り付け用開口部
61 カラー
62 座領域
63 下部座部分
64 ビード
65 上部座部分
66 形状によるはまり合いによって接続される第2の手段
67 プランジャ移動領域
68 先端部分
69 先端部プランジャ
70 プランジャ
71 プランジャロッド
72 プランジャヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11