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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】微粉炭バーナ装置およびその燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F23D 1/02 20060101AFI20240325BHJP
   F23K 3/02 20060101ALI20240325BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F23D1/02 Z
F23K3/02 301
F23L15/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020003418
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110510
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082832
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 邦章
(72)【発明者】
【氏名】清水 正也
(72)【発明者】
【氏名】横路 尚人
(72)【発明者】
【氏名】福永 史樹
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】下田 勝
(72)【発明者】
【氏名】宇山 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】北野 裕樹
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-092135(JP,A)
【文献】特開2015-148393(JP,A)
【文献】特開昭62-091709(JP,A)
【文献】特開平07-063307(JP,A)
【文献】特開2010-106188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D1/00-1/06,17/00-99/00
F23K3/02
F23L15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、
前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させる外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に導入して微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにし、
前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、前記吸引ダクトより吸引する微粉炭圧送空気を前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設した微粉炭ノズル側に供給可能に配管接続したことを特徴とする微粉炭バーナ装置。
【請求項2】
外気導入ノズルを微粉炭ノズルの両側に対してそれぞれ接線方向から連結し、外気導入ノズルに外気の流速を調整自在に外気流速調整装置を設け、バーナ燃焼量に応じて導入外気の流速を増減調整して微粉炭を安定燃焼するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の微粉炭バーナ装置。
【請求項3】
前記スロートの外周部の全幅にわたって微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設してスロート表面を冷却可能に設け、前記吸引ダクトを介して熱交換して予熱を有する微粉炭圧送空気を吸込可能に前記微粉炭ノズルの圧送フアンの吸込口に配管接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の微粉炭バーナ装置。
【請求項4】
一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナ燃焼方法であって、
前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、
前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させる外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に導入して微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにすると共に、
前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、スロート表面を冷却可能に設けた前記吸引ダクトを介して熱交換して予熱を有する微粉炭圧送空気を前記微粉炭ノズルの圧送フアンの吸込口より吸引して前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設した微粉炭ノズルに供給して噴射することを特徴とする微粉炭バーナの燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の一般廃棄物の炭化処理物の微粉炭を燃料とする微粉炭バーナ装置およびその燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却処理していた一般廃棄物(都市ゴミ等)を低酸素、あるいは無酸素下で炭化処理して炭化物を得て、該炭化物を化石燃料の一部と代替させることで化石燃料の使用量を減らし、環境負荷の低減を図るといったことが行われている。
【0003】
しかし、一般廃棄物を原料とする前記炭化物中には塩素が含有しており、燃料として燃焼させる際にはダイオキシンを発生させる懸念があるため、例えば、生成した炭化物を水槽内に投入し、流水にて水洗して塩素分を洗い出すといった脱塩処理が行われる。そして、脱水機(フィルタープレス等)にてある程度(例えば、含水率で約30%程度)まで脱水した後、乾燥機にて絶乾状態まで乾燥処理される。
【0004】
そして、前記脱塩処理を経た炭化物は、例えばペレット状にして焼却炉等に投入して補助燃料として使用したり、粉砕機(ミル等)にて微粉炭化してバーナ燃料として使用したりしている。
【0005】
しかし、前記脱塩処理後、脱水した後に、敢えて乾燥処理せず、ある程度水分を残した湿潤状態に保てば、粉塵爆発や自然発火等の不具合を防げてハンドリング性を高められる可能性がある。
【0006】
そこで、本出願人らは、一般廃棄物由来の微粉炭を脱塩処理した後、粉塵爆発等の不具合を防げてハンドリング性を高められる可能性があることから、敢えて乾燥処理せずにそのまま利用可能とするために、微粉炭ノズルの噴射口付近に外気導入ノズルを連結し、微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態にて火炎中に吹き込む構成の微粉炭バーナ装置を研究してきて、これにより微粉炭が湿潤状態であっても、ノズル内壁等への付着・閉塞の問題もなく、火炎中に分散状態で吹き込められて適正に燃焼可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特願2019-091157号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、微粉炭が湿潤状態(含水率:約30%程度)であるが故に、例え旋回流として分散性を高めても、通常の乾燥状態(絶乾状態)のものと比較すると燃焼効率で劣る部分があり、場合によっては微粉炭がバーナ火炎中で燃え切らず、未燃分が発生する可能性もある。
【0009】
バーナ火炎温度を高めるようにすれば燃焼効率を改善でき、バーナ火炎温度を高める手段としては、例えば空気比を下げるといったことが一般的に行なわれる。
【0010】
しかし、その場合、バーナ先端部の火炎形成用のスロート内に供給される二次燃焼用空気量も減少することとなる。前記二次燃焼用空気は、バーナ火炎からの輻射熱によって高温に晒されるスロート内壁の冷却・保護機能も兼ねているため、その供給量が減少すると、場合によってはスロートが過熱され、その表面が赤熱したり、歪みや割れ等の熱変形をきたす可能性がある。
【0011】
そのため、湿潤状態の微粉炭の分散性を高められて、適正に燃焼させるために、微粉炭ノズル内に外気を導入して混合気を旋回流としつつ、空気比を下げた状態でも支障なく燃焼可能にすることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の点に鑑み、上記の課題を解決するために、請求項1に記載のように湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させる外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に導入して微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにし、前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、前記吸引ダクトより吸引する微粉炭圧送空気を前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設したことを特徴とする微粉炭バーナ装置を提供するにある。
【0013】
また、請求項2に記載のように外気導入ノズルを微粉炭ノズルの両側に対してそれぞれ接線方向から連結し、外気導入ノズルに外気の流速を調整自在に外気流速調整装置を設け、バーナ燃焼量に応じて導入外気の流速を増減調整して微粉炭を安定燃焼するようにしたことを特徴とする微粉炭バーナ装置を提供するにある。
【0014】
また、請求項3に記載のように前記スロートの外周部の全幅にわたって微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設してスロート表面を冷却可能に設け、前記吸引ダクトを介して熱交換して予熱を有する微粉炭圧送空気を供給可能に前記微粉炭ノズルの圧送フアンの吸込口に配管接続したことを特徴とする微粉炭バーナ装置を提供するにある。
【0015】
さらに、請求項4に記載のように一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナ燃焼方法であって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させる外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に導入して微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにすると共に、前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、スロート表面を冷却可能に設けた前記吸引ダクトを介して熱交換して予熱を有する微粉炭圧送空気を前記微粉炭ノズルの圧送フアンの吸込口より吸引して前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設した微粉炭ノズルに供給して噴射することを特徴とする微粉炭バーナの燃焼方法を提供するにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る微粉炭バーナ装置は、請求項1に記載のように湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させる外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に導入して微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにし、前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、前記吸引ダクトより吸引する微粉炭圧送空気を前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設したことによって、一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭であっても、微粉炭ノズルを微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状なので、微粉炭が微粉炭ノズルに付着したり、閉塞することなく、外気導入ノズルからの外気を外気流速調整装置で外気の流速を調整して重油ノズルの前方に形成される保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に分散状態で適正に吹き込められて微粉炭バーナで適正に燃焼することができる。
たとえば、外気流速が速い程微粉炭ノズル内の混合気に旋回力が付与され、分散性が増して微粉炭噴射時の噴射角度が広がり、逆に、外気流速が遅いと分散力が低下し、微粉炭噴射時の噴射角度が狭くなり、導入外気の流速を増減調整して微粉炭噴射角度を調整することで常に微粉炭を火炎中に適正に吹き込められて、微粉炭を未燃分なく安定してガス化燃焼することができる。
また、微粉炭が湿潤状態であれば、粉塵爆発や自然発火等の微粉炭特有の問題を解消できるとともにハンドリング性を高められ、上記のように燃焼処理することができる。
そして、吸引ダクトを通過する空気が微粉炭の火炎バーナの燃焼により輻射熱等として受けるスロート部の表面との間で熱交換されてスロート部の冷却・保護ができて、空気比を下げた状態で高火炎温度下での微粉炭燃焼が可能となって、微粉炭圧送空気の予熱も図れ、湿潤状態の微粉炭も加熱乾燥でき、微粉炭の付着の抑制と噴射時の分散性の向上が図れて適正に燃焼することができる。
【0017】
また、微粉炭バーナ装置は、請求項2に記載のように、外気導入ノズルを微粉炭ノズルの両側に対してそれぞれ接線方向から連結し、外気導入ノズルに外気の流速を調整自在に外気流速調整装置を設け、バーナ燃焼量に応じて導入外気の流速を増減調整して微粉炭を安定燃焼するようにしたことによって、微粉炭ノズルの両側の接線方向から外気導入ノズルで外気の流速を調整自在に導入して、微粉炭ノズル内の混合気を旋回流として微粉炭噴射角度を適正に調整できてバーナ燃焼量に応じて火炎中に適正に吹き込められて、上記のように微粉炭を安定して燃焼することができる。
【0018】
また、微粉炭バーナ装置は、請求項3に記載のように、前記スロートの外周部の全幅にわたって微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設してスロート表面を冷却可能に設け、前記吸引ダクトを介して熱交換して予熱を有する微粉炭圧送空気を吸込可能に前記微粉炭ノズルの圧送フアンの吸込口に配管接続したことによって、上記のように吸引ダクトを通過する空気でスロート部の冷却・保護が可能となって、圧送フアンから予熱された微粉炭圧送空気を微粉炭ノズルに供給できて湿潤状態の微粉炭を加熱乾燥でき、微粉炭の付着の抑制と噴射時の分散性の向上が図れ、微粉炭を安定して燃焼することができる。
【0019】
またさらに、微粉炭バーナ燃焼方法は、請求項4に記載のように一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナ燃焼方法であって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記微粉炭ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させるために外気導入ノズルを外気の流速を調整可能に連結して、微粉炭ノズル内の混合気を旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにすると共に、前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、スロート表面を冷却可能に設けた前記吸引ダクトを介して熱交換して予熱を有する微粉炭圧送空気を前記微粉炭ノズルの圧送フアンの吸込口より吸引して前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設した微粉炭ノズルに供給して噴射することによって、一般廃棄物を炭化処理して得られる炭化物を脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭であっても、上記のように微粉炭が微粉炭ノズルに付着したり、閉塞することなく、所要の外気の流速を調整して重油ノズルの前方に形成される火炎中に分散状態で適正に吹き込められて微粉炭バーナで適正に燃焼することができる。また、微粉炭が湿潤状態であれば、粉塵爆発や自然発火等の微粉炭特有の問題を解消できるとともにハンドリング性を高められ、上記のように燃焼処理することができる。
そして、吸引ダクトを通過する空気が微粉炭の火炎バーナの燃焼により輻射熱等として受けるスロート部の表面との間で熱交換されてスロート部の冷却・保護ができて、空気比を下げた状態で高火炎温度下での微粉炭燃焼が可能となって、微粉炭圧送空気の予熱も図れ、湿潤状態の微粉炭も加熱乾燥でき、微粉炭の付着の抑制と噴射時の分散性の向上が図れて適正に燃焼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例の概略系統図、
図2】同上のバーナ本体部の拡大断面図、
図3】同上の微粉炭バーナ部のA-A断面図、
図4】同上のスロート部のB-B断面図、
図5】同上の一部切欠した斜視断面図、
図6】同上のための試験設備の概略説明図、
図7】同上の噴射角度測定説明図、
図8】同上の導入外気の流速と噴射角度の関連図、
図9】同上の微粉炭ノズルの管内付着状態説明図(a)、(b)、
図10】同上の微粉炭噴射後の粒径分布図、
図11】同上のバーナスロート部の冷却試験説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の微粉炭バーナ装置およびその燃焼方法は、湿潤状態の微粉炭を微粉炭ノズルから噴射してバーナ燃料とする微粉炭バーナであって、前記微粉炭バーナのバーナ本体の先端部にスロートを接続して、その中心部に微粉炭を噴射する微粉炭ノズルをその後方の微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設して、その側部に重油ノズルを並設し、前記ノズルの前方のスロート内にバーナ本体の内径より大径で環状の保炎板を備えて、前記微粉炭ノズルの噴射口付近に旋回流を発生させる外気導入ノズルを連結し、前記外気導入ノズルからの外気の流速を調整可能に導入して微粉炭ノズル内の混合気を所要の旋回流として分散状態に前記微粉炭ノズルから保炎板の前方のスロートに形成される火炎領域の火炎中に吹き込むようにし、前記スロートの外周部に微粉炭圧送空気の吸引ダクトを周設して、前記吸引ダクトより吸引する微粉炭圧送空気を前記微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状に配設した微粉炭ノズル側に供給して噴射することを特徴としている。
【0022】
微粉炭バーナ装置1は、図1のように微粉炭バーナ2の円筒状のバーナ本体3の先端部に切頭円錐形状のスロート4を接続し、その中心部に微粉炭を噴射する所定径の微粉炭ノズル5を直管状として配設し、その両側部等に重油ノズル6を設けて所要の火力で燃焼できるようにしている。
【0023】
これらのノズル5、6の前方のスロート4内には、図2のようにバーナ本体3の内径より若干大径で環状の保炎板7を備え、前記の各ノズル5、6から微粉炭を保炎板7の前方のスロート4内に形成される火炎領域に吹き込めるようにしている。
【0024】
前記微粉炭ノズル5の後端部の基端部には、図1のように微粉炭を貯蔵する微粉炭貯蔵ビン8から微粉炭を切り出し可能にロータリーバルブ9を接続するとともに微粉炭圧送用の微粉炭送風機10を配設し、ロータリーバルブ9で切り出す微粉炭を前記微粉炭送風機10の送風によって微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状とした微粉炭ノズル5に圧送して供給するようにしている。
【0025】
このような先端を逆テーパ形状とした微粉炭ノズル5の前方部の噴射口付近には、図2図3のように微粉炭ノズル5の両側の接線方向から左右または上下対称状に旋回流を発生させるために外気導入ノズル11をそれぞれ連結し、外気の導入によって微粉炭ノズル5内の混合気を旋回状態として噴射時に分散状態で火炎に吹き込めるようにしている。12はインバータの送風量調整装置で、前記微粉炭貯蔵ビン8からの微粉炭の切り出し量に応じて前記微粉炭送風機10の送風量を調整可能にしている。
【0026】
なお、外気導入ノズル11の接続位置は、ノズル先端からの距離が遠くなると旋回力が減衰してしまい、逆に近すぎても十分な旋回効果が得られず、ノズル先端から100~200mm程度の位置が好ましい。また、外気導入ノズル11からは70~120m/s程度の外気流入速度として、微粉炭ノズル5内の混合気の流速を10~20m/s程度として旋回状態で火炎中に吹き込めるようにしている。
【0027】
微粉炭ノズル5には、外気導入ノズル11をその接線方向からこれらの内周面に段差がなく接続できるようにして連結すると、図3のように外気が微粉炭ノズル5内をその内壁面にそってスムーズに旋回し、圧送される微粉炭を旋回流として噴射時に効果的に分散状態として噴射でき、適正な火炎にできて好ましい。なお、外気導入ノズル11は、微粉炭ノズル5の長手方向に対し、図1図3に示すように、略直交状態に連結することで混合気に最も効率よく旋回力を付与できて好ましいが、旋回流を生じさせられる範囲で前後方向に数十度程度傾斜状態に連結することもできる。
【0028】
そして、図1図4のように前記微粉炭ノズル5の両側に備えた重油ノズル6には、それぞれ重油タンクから供給される重油燃料を重油供給ポンプ13と流量調整バルブ14とで所要量を供給自在とし、上記のように各重油ノズル6前方に形成される火炎領域に前記微粉炭ノズル5から噴射する微粉炭を吹き込んでガス化して着火燃焼できるようにしている。
【0029】
そして、微粉炭ノズル5の先端側の前記スロート4部の外周部には、図1図2図4図5のように微粉炭圧送空気吸引用の吸引ダクト15を周設し、吸引ダクト15を介して吸引する微粉炭圧送空気を前記微粉炭送風機10の吸引口16から吸引するように空気吸引管17を接続し、微粉炭ノズル5に送給するようにしている。
【0030】
前記吸引ダクト15は、図4図5のようにスロート4の外周の略全幅にわたった幅で、所要の高さとして所要量の空気を吸引可能としていて、その側部に矩形状の吸込口18を設け、スロート4の略4分の3周部のところに閉塞板19を設けて吸出口20に前記空気吸引管17を接続している。
【0031】
前記吸引ダクト15を通過する空気は、微粉炭の火炎バーナの燃焼により輻射熱等として受けるスロート4部の表面との間で熱交換され、スロート4部が加熱されて表面が赤熱したり、歪みや割れ等の変形をきたさないように過熱防止と保護が図れ、空気比を下げた状態で高火炎温度下での微粉炭燃焼が可能としている。また、同時に微粉炭圧送空気の予熱が図れて微粉炭ノズル5に送給でき、湿潤状態の微粉炭を加熱乾燥できて、微粉炭の付着の抑制と噴射時の分散性の向上が図れるようにしている。
【0032】
前記バーナ本体3の後端部には、図1のように送風ダクト21を介して燃焼用空気供給用の燃焼用空気送風機22を配設し、インバータの風量調整装置23を介して前記燃焼用空気送風機21の送風量を調整してバーナ燃焼量に見合った燃焼用空気量をバーナ本体3に供給できるようにしている。24は前記外気導入ノズル11に外気を供給する外気送風機、25はそのインバータの風量調整装置である。
【0033】
因みに、バーナ燃焼量の全開時では、燃焼用空気送風機22からの送風量が増加して保炎板7裏面の背圧が高くなる結果、重油ノズル6の前方に形成される火炎は保炎板7側に強く吸い寄せられ、保炎板7に近接する(図2中のf1)。一方、バーナ燃焼量が落ちると、前記燃焼用空気送風機22からの送風量が減少して保炎板7裏面の背圧が低下する結果、重油ノズル6の前方の火炎の位置が保炎板7から離間する(図2中のf2)。
【0034】
また、外気流速が速い程、微粉炭ノズル5内の混合気に旋回力が付与され、分散性が増して微粉炭噴射時の噴射角度が広がる(図2中のα1)。逆に、外気流速が遅いと分散力が低下し、微粉炭噴射時の噴射角度が狭くなる(図2中のα2)。このように外気流速と微粉炭噴射角度とには相関性があり、バーナ燃焼量に応じてスロート4内を前後(図2中では左右)に移動する火炎に対し、外気導入ノズル11からの導入外気の流速を増減調整して微粉炭噴射角度を調整することで、常に微粉炭を火炎中に適正に吹き込められて、微粉炭を未燃分なく安定してガス化燃焼することができる。なお、本実施例では、微粉炭噴射角度を約45~75度程度の範囲で調整可能としている。
【0035】
また、上記微粉炭バーナ装置1は、燃焼制御器26等を設けて、前記したロータリーバルブ9、微粉炭送風機10、重油供給ポンプ13、燃焼用空気送風機22、外気送風機24等の稼働及び出力を装置の運転に際して所要のバーナ燃焼に対応し、増減等を適正に調整制御可能としている。
【0036】
なお、微粉炭バーナ2から排出される高温ガスを微粉炭ノズル5の後端側の基端部に導入するようにして微粉炭を加熱するようにし、排出される高温ガスで湿潤状態の微粉炭を加熱して乾燥させることもできる。
【0037】
本発明では、特に、都市ごみ等の一般廃棄物を炭化処理した炭化物を脱塩処理し、脱水後、未乾燥の湿潤状態(例えば、含水率30%程度)の微粉炭を対象とすることができる。脱塩処理後、乾燥処理せずに、30%程度の含水状態に維持することで、粉塵爆発や自然発火等の問題が生じなく、かつハンドリング性を向上でき、その上でバーナ燃料として支障なく利用できて用途を広げられて有効である。
【実施例
【0038】
図1以下は、本発明の実施例を示すものである。微粉炭バーナ装置1は、図1図2のように微粉炭バーナ2の円筒状のバーナ本体3の先端部に切頭円錐形状のスロート4を接続し、その中心部に微粉炭を噴射する所定径の微粉炭ノズル5を微粉炭の切り出し送給部からノズル先端部にわたって直管状として配設し、図3図4のようにその両側部に重油ノズル6を設け、各ノズル5、6から保炎板7の前方のスロート4内に形成される火炎領域に吹き込めるようにしている。








【0039】
微粉炭ノズル5の先端を逆テーパ形状とし、前方部の噴射口付近のノズル先端から100~200mm程の位置に図1図3のように微粉炭ノズル5の両側の接線方向から左右対称状に旋回流を発生させるための外気導入ノズル11を微粉炭ノズル5の長手方向に対してそれぞれ直交状に連結し、外気の導入によって微粉炭ノズル5内の混合気を旋回状態として、バーナ燃焼量に応じて噴射時に所要の分散状態で火炎に吹き込めるようにしている。
【0040】
そして、図1図2図4図5のように微粉炭ノズル5の先端側の前記スロート4部の外周部に、スロート4の外周の略全幅にわたった幅で、所要の高さに吸引ダクト15を周設し、吸引ダクト15を介して吸引する微粉炭圧送空気を前記微粉炭送風機10の吸引口16から吸い込むように空気吸引管17を接続して微粉炭ノズル5に送給するようにし、火炎バーナの燃焼により輻射熱等を受けるスロート4部の表面を吸引ダクト15を通過する空気で冷却して、スロート4部の過熱防止と保護等を果たし、吸引ダクト15を通過する空気が予熱されて微粉炭ノズル5に送給されるようにしている。
【0041】
上記微粉炭バーナ装置1について、図6の試験設備で試験した。図6中の101は本試験装置、105は微粉炭ノズル、108は微粉炭投入用の投入ホッパ、109はロータリーバルブ、110は微粉炭送風機、111は外気導入ノズル、118は外気送風機、121はスクリューコンベア、122及び123は風量センサ、124は温度センサ、125はカメラである。
【0042】
なお、本試験装置101では、微粉炭の噴射状態を確認するため、実際に燃焼までは行わず、微粉炭の噴射試験のみを行った。前記試験において、微粉炭送風機110や外気送風機118からの送風量を前記風量センサ122、123にて検出して各流速を演算し、前記温度センサ124にてノズル先端部から噴射直後(1mの地点)の出口空気温度を検出し、前記カメラ125にて微粉炭の噴射状態を撮影してその画像データを基に噴射角度を測定した。なお、微粉炭噴射角度αは図7のように微粉炭ノズル105の先端中心部から250mmの地点での噴射域外縁部を結んだ角度とした。
【0043】
湿潤状態(含水率約31~33%)の微粉炭の炭化燃料を投入ホッパ108からスクリューコンベア121を介してロータリーバルブ109で切り出して直管状の微粉炭ノズル105内に送給し、微粉炭送風機110での所要量の圧送空気で圧送し、微粉炭を下記条件下で噴射した。
【0044】
外気導入ノズル111の連結位置はノズル先端から150mm位置、微粉炭供給量は90Kg/h、微粉炭圧送空気流速は15m/sとし、導入外気流速を50m/s(低速)または100m/s(高速)の2パターン、また微粉炭ノズル105の出口空気温度を10℃(常温)または90℃(高温)の2パターンで試験した。その結果は図8に示す。
【0045】
微粉炭ノズル105の出口空気温度が10℃の場合、導入外気の風速が50m/sのときに微粉炭の噴射角度はおよそ38°(No.1)で、導入外気の流速が100m/sのときには微粉炭の噴射角度はおよそ61°(No.2)となり、導入外気の流速を速めるほど微粉炭の噴射角度は大きくなることが確認できた。
【0046】
また、出口空気温度が90℃の場合、導入外気の風速が50m/sのときに微粉炭の噴射角はおよそ49°(No.3)で、導入外気の風速が100m/sのときには微粉炭の噴射角はおよそ72°(No.4)となり、出口空気温度を高めることで微粉炭の噴射角が若干大きくなることも確認できた。このとき、微粉炭ノズル105から噴射した微粉炭の含水率を確認したところ、出口空気温度10℃の場合が約29~30%であるのに対し、90℃の場合では約21~23%で含水率が7~8%程度下がっており、高温の圧送空気による加熱乾燥に伴って微粉炭の分散性が向上したことによるものと予想される。
【0047】
また、図9は、微粉炭ノズル105管内での微粉炭の付着状態を表したもので、微粉炭ノズル105の出口空気温度が10℃の場合、図9(a)のように外気導入口付近に微粉炭付着物が僅かに確認され、出口空気温度を90℃にすると、図9(b)のように付着物は確認されなかった。これも、高温の圧送空気による加熱乾燥に伴って微粉炭の付着性が軽減したことによるものと予想される。
【0048】
また、図10は、微粉炭ノズル105から噴射直後の微粉炭の粒径の分布図であって、微粉炭ノズル105の出口空気温度が90℃(No.4)の場合、10℃(No.2)の場合と比較して500~600μmのピークが無くなる。これも、前記同様に、高温の圧送空気による加熱乾燥に伴って微粉炭同士の付着力(表面張力)が低下し、粒子径が細かくなったことによるものと予想される。
【0049】
表1 バーナスロート部の冷却試験表

【表1】










【0050】
また、上記噴射試験を踏まえ、別途用意した燃焼テスト機のスロート4部に吸引ダクト15の冷却手段を設置する前後でのスロート4部の表面温度変化及び赤熱状態の有無を確認した。略同等のバーナ燃焼量(150L/h)での運転条件下で、スロート4部に冷却手段を設置しない場合(データ1))には空気比が比較的高くても(テストでは2.1に調整)、表1、図11のようにスロート4部の表面温度は500℃を超えて(テストでは855℃まで上昇)、赤熱を生じた。しかし、吸引ダクトの冷却手段を設置した場合(データ2)、4)~7))、スロート部の表面温度は表1、図11のように大幅に低下し(テストでは約400~500℃程度)、赤熱は生じなかった。なお、空気比を下げるほどスロート表面温度は上昇する傾向にあり、燃焼効率が上昇する。
【0051】
ただし、冷却手段を設置した場合でも、空気比を約1.4未満まで下げると(データ3))、表1、図11のようにスロート表面温度は500℃を超えて(テストでは570℃まで上昇)、赤熱を生じた。
このように本テスト結果より、冷却手段を設置した上で、空気比を約1.4を下限としながらも(空気比約1.4以上に維持しながらも)、湿潤状態の微粉炭の燃焼効率を高めるためにはできるだけ低く抑える方が(空気比1.4に近い方が)好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、都市ごみ等の一般廃棄物を炭化処理した微粉炭、特に脱塩処理後、未乾燥の湿潤状態の微粉炭を燃料とする微粉炭バーナに対して広く利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…微粉炭バーナ装置 2…微粉炭バーナ 4…スロート 5…微粉炭ノズル 10…微粉炭送風機 15…吸引ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11