(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240325BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R17/00 330L
H04R17/00 332A
(21)【出願番号】P 2020006893
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四方 浩之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
(72)【発明者】
【氏名】都築 健太郎
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-014916(JP,A)
【文献】国際公開第2016/175050(WO,A1)
【文献】特開平08-103443(JP,A)
【文献】特開平01-006858(JP,A)
【文献】特開平03-106348(JP,A)
【文献】米国特許第05820564(US,A)
【文献】特開平11-285496(JP,A)
【文献】特開平06-254100(JP,A)
【文献】特開2015-080671(JP,A)
【文献】特開2019-141580(JP,A)
【文献】特開2015-105914(JP,A)
【文献】実開昭60-076908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向に複数の振動子が配列されたアレイ素子と、
少なくとも前記アレイ素子の第1面を覆う音響レンズと、
前記音響レンズにおける前記アレイ素子と反対側に、通過する超音波の音速が、前記音響レンズを通過する超音波の音速よりも生体を通過する超音波の音速に近い材質よりなるオフセット部材と、を備え、
前記音響レンズは、通過する超音波の音速が生体を通過する超音波の音速より早い材質よりなり、
前記音響レンズの第1断面における、前記音響レンズの前記アレイ素子と反対側の端線は、中央部が前記生体側を向いて凹となり、前記第1方向に関する両端部の方が前記中央部よりも曲率が小さく、前記両端部と前記中央部が滑らかに連続している、
超音波プローブ。
【請求項2】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向に複数の振動子が配列されたアレイ素子と、
少なくとも前記アレイ素子の第1面を覆う音響レンズと、
前記アレイ素子と前記音響レンズとの間に介在され、通過する超音波の音速が前記音響レンズを通過する超音波の音速より遅い材質よりなる中間材と、
前記音響レンズにおける前記アレイ素子と反対側に、通過する超音波の音速が、前記音響レンズを通過する超音波の音速よりも生体を通過する超音波の音速に近い材質よりなるオフセット部材と、を備え、
前記音響レンズの第1断面における、前記音響レンズの前記アレイ素
子側の端線は、
前記アレイ素子と反対側に向けて凸となり、前記第1方向に関する両端部の方が中央部よりも曲率が小さく、前記両端部と前記中央部が滑らかに連続している、
超音波プローブ。
【請求項3】
前記端線の両端部は直線状に形成されており、前記中央部は円弧状に形成されている、
請求項1または2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記複数の振動子は、前記端線の中央部に対応する第1群の第1アレイ素子と、前記端線の両端部に対応する第2群の第2アレイ素子と、を含み、
前記第1群及び第2群の双方を動作させる第1モードと、前記第1群を単独で動作させる第2モードと、を実行する制御部、を更に備える、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記アレイ素子は、前記第1方向と交差し、前記第2方向に沿う第2断面において、前記音響レンズ側に凸となる曲線形状に沿って延在し、
前記第1断面は、前記アレイ素子が延在する方向と直交する平面で切った断面である、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記アレイ素子は、前記第2方向に直線的に延在し、
前記第1断面は、前記第2方向と直交する平面で切った断面である、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記オフセット部材の第1断面における、前記アレイ素子と反対側の端線は、前記アレイ素子と反対側に向けて凸となる曲線形状に形成されている、
請求項1または2に記載の超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
生体に接触させて使用する超音波プローブは、振動子により発振する超音波を収束させるための音響レンズ部材を備える。音響レンズ部材は、曲率を調整することにより、音響を収束させる。また、複数の振動子を備える振動子アレイをエレベーション方向に多列に配列した多列式超音波プローブがある。多列式超音波プローブは、エレベーション方向の全域で浅部から深部までの音場の均一化を図る。多列式超音波プローブでは、例えば、浅部の検査を行う際に、一部の超音波アレイのみを駆動することがあるが、この場合の音響収束の位置を浅部に合わせにくく、サイドローブを低減させることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、音響収束を効果的に行うことができる超音波プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の超音波プローブは、アレイ素子と、音響レンズと、を持つ。アレイ素子は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向に複数の振動子が配列される。音響レンズは、少なくとも前記アレイ素子の第1面を覆う。前記音響レンズの第1断面における、前記音響レンズの前記アレイ素子と反対側の端線は、前記第1方向に関する両端部の方が中央部よりも曲率が小さく、前記両端部と前記中央部が滑らかに連続している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の超音波プローブ1の一部破断斜視図。
【
図2】第1の実施形態の超音波プローブ1の断面図。
【
図3】第1の実施形態の超音波プローブ1の断面を説明するための図。
【
図4】第1の実施形態の超音波プローブ1の遅延形状を示す図。
【
図5A】従来の超音波プローブにおける音響収束効果を示すグラフ。
【
図5B】従来の超音波プローブにおける音響収束効果を示すグラフ。
【
図6A】第1の実施形態の超音波プローブ1における音響収束効果を示すグラフ。
【
図6B】第1の実施形態の超音波プローブ1における音響収束効果を示すグラフ。
【
図7】第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2の断面図。
【
図8】第1の実施形態の第2の変形例の超音波プローブ3の断面図。
【
図9】第2の実施形態の超音波プローブ4の断面図。
【
図10】形状の異なる超音波プローブの断面を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の超音波プローブを、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の超音波プローブ1の一部破断斜視図、
図2は、第1の実施形態の超音波プローブ1の断面図、
図3は、第1の実施形態の超音波プローブ1の断面を説明するための図である。
図1及び
図2に示すように、超音波プローブ1は、例えば、ケース10と、支持台12と、アレイ素子14と、音響レンズ16と、制御部100と、を備える。
【0009】
図1に示すように、超音波プローブ1は、超音波を送受信する方向(ラスター方向)D1に見て短辺と長辺とを備える形状を有する。短辺に沿った方向をエレベーション方向D2といい、長辺に沿った方向をアレイ方向D3という。超音波プローブ1は、例えば、エレベーション方向D2と、エレベーション方向D2に交差するアレイ方向D3に複数の振動子が配列されたアレイ素子を備える多列式超音波プローブである。エレベーション方向D2は、「第1方向」の一例であり、アレイ方向D3は「第2方向」の一例である。第1の実施形態の超音波プローブ1は、いわゆるコンベックス型であり、アレイ方向D3は湾曲しており、アレイ素子14は湾曲面に配列されている。なお、リニアセクタ型の超音波プローブは、アレイ方向D3が直線方向となる。
【0010】
図2に示すように、ケース10は、例えば、超音波プローブ1の外側に配置される部材である。ケース10の内側には、支持台12と、アレイ素子14と、音響レンズ16と、が収容される。支持台12は、アレイ素子14を支持する。
【0011】
アレイ素子14は、例えば、複数の振動子を備える。複数の振動子は、エレベーション方向D2の中央部に配置された第1群の第1アレイ素子22と、エレベーション方向D2の両端部に配置された第2群の第2アレイ素子24と、を含む。第1アレイ素子22と第2アレイ素子24は、いずれも、エレベーション方向D2と交差、ここでは直交し、アレイ方向D3に沿う断面において、音響レンズ16側に凸となる曲線形状に形成される。複数の振動子は、例えば、それぞれ圧電体及び電極を備え、超音波を発生させて外部へ送信するとともに、送信した超音波の反射波を受信して、超音波を送受信する。複数の振動子は、受信した反射波に応じた信号を制御部100に出力する。エレベーション方向D2と交差し、アレイ方向D3に沿う断面は、「第2断面」の一例である。
【0012】
第1アレイ素子22と第2アレイ素子24は、互いに同時に超音波の送受信を行うこともできるし、第1アレイ素子22のみが超音波の送受信を行うこともできる。なお、第2アレイ素子24のみが超音波の送受信を行うことができるようにしてもよいし、上記の各例で、第2アレイ素子24のうち一方のみが超音波の送受信を行うことができるようにしてもよい。
【0013】
音響レンズ16は、アレイ素子14における超音波の送受信側の第1面を覆って設けられる。音響レンズ16は、例えばシリコンゴムによって形成される。シリコンゴムは、通過する超音波の音速が、生体を通過する超音波の音速より遅い材質であるため、音響レンズ16は、通過する超音波の音速が、生体を通過する超音波の音速より遅い材質よりなる。音響レンズ16は、例えば、第1アレイ素子22に相対する位置に配置され、第1アレイ素子22に対応する第1音響レンズ部32と、第2アレイ素子24に相対する位置に配置され、第2アレイ素子24に対応する第2音響レンズ部34と、を備える。第1音響レンズ部32と第2音響レンズ部34とは、一体的に形成されて音響レンズ16を構成する。
【0014】
アレイ方向D3と直交する平面で切った音響レンズ16の断面(以下「第1断面」という)における、アレイ素子14と反対側(以下、「生体側」という)の端線(以下、「レンズ端線」という)は、生体側に向けて凸となる形状をなす。
図3に示すように、第1断面C1は、超音波プローブ1のレンズ端線の凹んだ側の一点と、レンズ端線の一点を含む直線をエレベーション方向D2に伸ばして形成される面を含む面である。
【0015】
第1音響レンズ部32のレンズ端線の形状(以下、「レンズ形状」という)は、生体側に向けて凸となるR形状であり、第2音響レンズ部34のレンズ形状は直線状である。音響レンズ16のレンズ形状は、エレベーション方向D2に関する両端部に位置する第2音響レンズ部34の方が、中央部に位置する第1音響レンズ部32より曲率が小さい。実施形態における第2音響レンズ部34のレンズ形状の曲率は0である。第2音響レンズ部34は、第1音響レンズ部32の曲率より小さく0でないR形状をなしてもよい。この場合、音響レンズ16のレンズ形状は、第1音響レンズ部32と第2音響レンズ部34とで異なるR形状を接続した複合R形状となる。
【0016】
また、第1音響レンズ部32と第2音響レンズ部34のレンズ端線は、滑らかに連続している。第1の実施形態において、滑らかに連続しているとは、第1音響レンズ部32における第2音響レンズ部34との接続部分の接線(以下、「第1接線」という)と、第2音響レンズ部34における第1音響レンズ部32との接続部分の接線(以下、「第2接線」という)となす角度が、例えば数度以下である関係をいう。具体的には、第1接線と第2接線とが重なる場合でもよいし、第1接線と第2接線とのなす角度が数度以下となる関係であってもよい。
【0017】
音響レンズ16のレンズ形状は、音響レンズ16による遅延形状が、
図4に示すように、第1音響レンズ部32で円弧状(単純R形状)となり、第2音響レンズ部34で直線状となる形状に調整されている。
図4における横軸は、音響レンズ16におけるエレベーション方向D2の位置を示し、縦軸は遅延時間を示す。
【0018】
図4に示す例では、一方の第2音響レンズ部34における音響レンズ16による遅延形状は、エレベーション方向D2の中央に向かうにしたがって直線的に増加する形状をなす。第1音響レンズ部32における音響レンズ16による遅延形状は、上記した一方の第2音響レンズ部34と接続される端部から、エレベーション方向D2の中央に向かうにしたがって、増加割合が減少するように増加する形状をなし、エレベーション方向D2の中央を超えた後は、エレベーション方向D2の中央から離れるにしたがって、減少割合が増加するように減少する形状をなす。他方の第2音響レンズ部34は、エレベーション方向D2の外側に向かうにしたがって直線的に減少する形状をなす。
【0019】
制御部100は、制御信号をアレイ素子14における複数の振動子に送信し、複数の振動子を振動させたり複数の振動子の振動を停止させたりしてアレイ素子14を制御する。制御部100は、アレイ素子14を制御するにあたり、アレイ素子を動作させるモードとして、第1群及び第2群を動作させる第1モードと、第1群を動作させるモードとを実行する。制御部100は、第1モードを実行する際には、第1アレイ素子22及び第2アレイ素子24における振動子に制御信号を送信し、アレイ素子14の全体の振動子によって超音波を送受信させて生体の検査を行う。制御部100は、第2モードを実行する際には、第2アレイ素子24における振動子に制御信号を送信することなく第1アレイ素子22における振動子に制御信号を送信させ、第1アレイ素子22振動子のみによって超音波を送受信させて生体の検査を行う。制御部100は、反射波を受信した振動子が出力する信号を受信する。制御部100は、受信した信号に基づいて、生体の検査を行う。
【0020】
制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(コンピュータ)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め制御部100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで制御部100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0021】
以上のような構成によれば、第2音響レンズ部34におけるレンズ形状の曲率の方が第1音響レンズ部32におけるレンズ形状の曲率より小さい。このため、例えば、アレイ素子14における第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方を動作させる場合には生体の深部に音響を収束させ、第1アレイ素子22を単独で動作させる場合には生体の浅部に音響を収束させることができる。したがって、第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方を動作させる場合でも、第1アレイ素子22を単独で動作させる場合でも、音響収束を効果的に行うことができる。
【0022】
例えば、生体の深部の検査等を行う場合、制御部100は、第1モードを実行して第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方の振動子(アレイ素子14全体の振動子)に超音波を送受信させる。また、制御部100は、生体の浅部の検査等を行う場合、第2モードを実行して第1アレイ素子22のみに超音波を送受信させる。第1の実施形態の超音波プローブ1では、制御部100が第1モードを実行して第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方を動作させる場合、及び制御部100が第2モードを実行して第1アレイ素子22を単独で動作させる場合のいずれの場合でも音響収束を効果的に行うことができる。したがって、生体の深部や浅部のいずれの検査等を行う場合でも、効果的な音響収束を可能とし、サイドローブの低減を図ることができる。
【0023】
また、第1の実施形態の超音波プローブ1では、第1音響レンズ部32と第2音響レンズ部34とが滑らかに連続している。このため、第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方を動作させた場合の検査結果における不連続性を抑制することができる。したがって、適切な検査を得やすくすることができる。
【0024】
また、第1の実施形態の超音波プローブ1では、音響レンズ16による遅延形状が第1音響レンズ部32で円弧状となり、第2音響レンズ部34と直線状となるように、音響レンズ16のレンズ形状が調整されている。これに対して、例えば、従来の超音波プローブでは、
図4に破線で示すように、遅延形状が円弧状となるように音響レンズのレンズ形状が調整されている。
【0025】
従来の超音波プローブでは、遅延形状が円弧状となるように音響レンズのレンズ形状が調整されることで、音響収束効果を高いものとしている。これに対して、第1の実施形態の超音波プローブ1では、音響レンズ16による遅延形状が第1音響レンズ部32で円弧状となり、第2音響レンズ部34と直線状となるように、音響レンズ16のレンズ形状が調整されている。
【0026】
ここで、第1実施形態の超音波プローブ1における音響収束効果についての検証について説明する。第1実施形態の超音波プローブ1では、例えば、第1アレイ素子22を単独で動作させた場合の生体の浅部に対する音響収束を高められている。この場合に、第1アレイ素子22及び第2アレイ素子24の双方を動作させる場合の音響収束効果について、従来の超音波プローブとの比較による検証を行った。
【0027】
検証において、従来の超音波プローブにおける音響収束効果と、第1の実施形態の超音波プローブ1のアレイ素子14における第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方を動作させる場合の音響収束効果を測定した。
図5A,
図5Bは、従来の超音波プローブにおける音響収束効果を示すグラフ、
図6A,
図6Bは、第1の実施形態の超音波プローブ1における音響収束効果を示すグラフである。
図5A,
図6Aでは、第1アレイ素子22を駆動し、第2アレイ素子24を駆動しない場合の音響収束効果を示す。
図5B,
図6Bでは、第1アレイ素子22及び第2アレイ素子24を駆動した場合の音響収束効果を示す。
図5A,
図5B,
図6A,
図6Bにおいて、縦軸は、音響レンズ16におけるエレベーション方向D2の位置を示し、横軸は、レンズ表面からラスター方向D1に離間した距離を示す。
【0028】
第1アレイ素子22を駆動した場合の音響収束効果は、
図5Aに示す従来の超音波プローブにおける場合と
図6Aに示す第1の実施形態の超音波プローブ1場合とで非常に近似した結果となった。第1アレイ素子22と第2アレイ素子24を駆動した場合の音響収束効果は、
図5Bに示す従来の超音波プローブの場合と、
図6Bに示す第1の実施形態の超音波プローブ1の場合とで非常に近似した結果となった。この結果により、アレイ素子14における第1アレイ素子22と第2アレイ素子24の双方を動作させる場合の音響収束効果は、従来の超音波プローブにおける音響収束効果と比較して見劣りしないことが分かった。
【0029】
(第1の実施形態の第1の変形例)
図7は、第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2の断面図である。
図7に示すように、第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2は、音響レンズ16における生体側にオフセット部材50が設けられる。その他の点は、第1実施形態の超音波プローブ1と共通の構成を有する。
【0030】
オフセット部材50は、通過する超音波の音速が、音響レンズ16を通過する超音波の音速よりも生体を通過する超音波の音速に近い素材によって構成される。オフセット部材50は、例えば、ブタジエンゴムなどのゴム、樹脂、純水や生理食塩水などを収容した水ブクロなどにより構成される。オフセット部材50の生体側におけるアレイ方向D3に直交する断面の形状(以下、「オフセット部材形状」という)は、円弧状である。
【0031】
以上のような構成によれば、第1の実施形態の超音波プローブ1と同様の作用効果を得ることができる。また、第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2では、音響レンズ16における生体側にオフセット部材50が設けられる。このため、音響レンズ16が生体と接触することはなく、音響レンズ16と生体の接触に関する制約を受けないようにできるので、音響レンズ16の設計の自由度を高めることができる。
【0032】
また、オフセット部材50のオフセット部材形状は円弧状である。このため、オフセット部材50を生体に接触させて超音波プローブ2によって検査を行う場合に、超音波プローブ2と生体との接触性を高めることができるとともに、超音波プローブ2と生体との間に気泡などが発生しにくくなるようにすることができる。
【0033】
(第1の実施形態の第2の変形例)
図8は、第1の実施形態の第2の変形例の超音波プローブ3の断面図である。
図8に示すように、第1の実施形態の第2の変形例の超音波プローブ3は、音響レンズ60のレンズ形状が凹型のR形状である。第1の実施形態の第2の変形例の超音波プローブ3の音響レンズ60は、通過する超音波の音速が生体を通過する超音波の音速より早い材質によって構成される。その他の点は、第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2と共通の構成を有する。
【0034】
第1の実施形態の第2の変形例の超音波プローブ3における音響レンズ60は、第1アレイ素子22に相対して第1アレイ素子22に対応する第1音響レンズ部62と、第2アレイ素子24に相対して第2アレイ素子24に対応する第2音響レンズ部64と、を備える。第1音響レンズ部62と第2音響レンズ部64とは、一体的に形成される。
【0035】
第1音響レンズ部62のレンズ形状は、生体側を向いて凹となるR形状であり、第2音響レンズ部64のレンズ形状は直線状である。音響レンズ60のレンズ形状は、エレベーション方向D2に関する両端部に位置する第2音響レンズ部64の方が、中央部に位置する第1音響レンズ部62より曲率が小さい。第1の実施形態の第2の変形例における第2音響レンズ部64のレンズ形状の曲率は0である。第2音響レンズ部64は、第1音響レンズ部62の曲率より小さく0でないR形状をなしてもよい。この場合、音響レンズ60のレンズ形状は、第1音響レンズ部62と第2音響レンズ部64とで異なるR形状を接続した複合R形状となる。また、第1音響レンズ部62と第2音響レンズ部64のレンズ端線は、滑らかに連続している。
【0036】
以上のような構成によれば、第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2と同様の作用効果を得ることができる。また、第1の実施形態の第2の変形例の超音波プローブ3では、音響レンズ60のレンズ形状が生体側を向いて凹型である。このため、例えばオフセット部材50が設けられていない場合には、超音波プローブ3と生体との接触性が低くなるが、オフセット部材50が設けられることにより、超音波プローブ2と生体との接触性を高めることができるとともに、超音波プローブ2と生体との間に気泡などが発生しにくくなるようにすることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態の超音波プローブ4の断面図である。
図9に示すように、第2の実施形態の超音波プローブ4の音響レンズ70は、第1アレイ素子22に相対して第1アレイ素子22に対応する第1音響レンズ部72と、第2アレイ素子24に相対して第2アレイ素子24に対応する第2音響レンズ部74と、を備える。第1音響レンズ部72と第2音響レンズ部74とは、一体的に形成される。音響レンズ70は、通過する超音波の音速が生体を通過する超音波の音速より早い材質によって構成される。その他の点は、第1の実施形態の第1の変形例の超音波プローブ2と共通の構成を有する。
【0038】
音響レンズ70の生体側におけるアレイ方向D3に直交する断面の端辺の形状(以下、「第1レンズ形状」という)が円弧状である。音響レンズ70のアレイ素子14側におけるアレイ方向D3に直交する断面の端辺の形状(以下「第2レンズ形状」のうち、第1音響レンズ部72の第2レンズ形状は、アレイ素子14側から見て凹(アレイ素子14と反対側に向けて凸)となるR形状であり、第2音響レンズ部74における第2レンズ形状は、直線状である。音響レンズ70の第2レンズ形状は、エレベーション方向D2に関する両端部に位置する第2音響レンズ部74の方が、中央部に位置する第1音響レンズ部72より曲率が小さい。第2の実施形態における第2音響レンズ部74の第2レンズ形状の曲率は0である。第2音響レンズ部74は、第1音響レンズ部72の曲率より小さく0でないR形状をなしてもよい。この場合、音響レンズ70の第2レンズ形状は、第1音響レンズ部72と第2音響レンズ部74とで異なるR形状を接続した複合R形状となる。音響レンズ70の第2レンズ形状により、アレイ素子14により発振される超音波の収束性能が調整される。
【0039】
音響レンズ70とアレイ素子14との間には、中間材80が介在される。中間材80は、通過する超音波の音速が音響レンズ70を通過する超音波の音速よりも遅い素材により構成される。音響レンズ70と中間材80とは密着しており、及び中間材80とアレイ素子14とは、密着している。
【0040】
以上のような構成によれば、第1の実施形態の超音波プローブ1と同様の作用効果を得ることができる。また、第2実施形態の超音波プローブ4では、アレイ素子14により発振される超音波の収束性能を調整するためのレンズが、音響レンズ70のアレイ素子14側におけるアレイ方向D3に直交する断面の端辺に形成される。このため、音響レンズ70のうち、超音波の収束性能を調整するためのレンズの部分が生体と接触することはなく、音響レンズ70と生体の接触に関する制約を受けないようにできるので、音響レンズ70の収束性能に関する設計の自由度を高めることができる。その一方で、音響レンズ70の生体側は、円弧状であるので、生体との接触性を高めることができる。
【0041】
(形状の異なる超音波プローブ)
上記各実施形態では、アレイ素子14が湾曲面に配列されたコンベックス型の超音波プローブについて説明したが、超音波プローブは、アレイ素子が平面に配列されたリニアセクタ型(リニア型、セクタ型)の超音波プローブであってもよい。リニアセクタ型の超音波プローブは、アレイ方向D3と直交する方向で切った断面は、コンベックス型と共通するので、その構成について、
図2及び
図10を参照して説明する。
【0042】
リニアセクタ型の超音波プローブにおいては、例えば、エレベーション方向D2の中央部において、第1アレイ素子22がアレイ方向D3に直線的に延在し、エレベーション方向D2の両端部において、第2アレイ素子24がアレイ方向D3に直線的に延在する。超音波プローブは、音響レンズ16を備え、音響レンズ16は、アレイ素子14における超音波の送受信側の第1面を覆って設けられる。
【0043】
音響レンズ16の第1断面におけるレンズ端線は、生体側に向けて凸となる形状をなす。
図10に示すように、リニアセクタ型の超音波プローブ5における第1断面C5は、アレイ素子14(第1アレイ素子22及び第2アレイ素子)が延在するアレイ方向D3に直交する面である。
【0044】
以上のような構成によれば、リニアセクタタイプの超音波プローブにおいても、第1の実施形態の超音波プローブ1と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1~5…超音波プローブ、10…ケース、12…支持台、14…アレイ素子、16,60,70…音響レンズ、22…第1アレイ素子、24…第2アレイ素子、32,62,72…第1音響レンズ部、34,64,74…第2音響レンズ部、50…オフセット部材、80…中間材、100…制御部、C1,C5…第1断面