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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20240325BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240325BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W40/04
G08G1/16 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020009418
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021115922
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】辻 正文
(72)【発明者】
【氏名】田家 智
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴都
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健文
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-310745(JP,A)
【文献】特開2019-209902(JP,A)
【文献】特開2010-083314(JP,A)
【文献】特開2017-220028(JP,A)
【文献】特開2017-224163(JP,A)
【文献】特開2018-097648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
B60W 10/00 ~ 10/30
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行を制御するコントローラを備えた走行支援装置の走行支援方法において、
前記自車両が走行する自車線と対向する対向車線を走行する他車両の挙動を検出し、
前記挙動に基づいて、前記他車両が、前記対向車線に接続する接続道路に進入するか否かを判定し、
前記挙動に基づいて、前記他車両が、前記接続道路に進入するのに伴って前記自車線に進入するか否か判定し、
前記他車両が前記自車線に進入すると判定した場合に、前記自車両の予定走行軌道を生成するとともに、前記挙動に応じて前記他車両の予想走行軌道を生成し、
前記自車両の予定走行軌道と前記他車両の予想走行軌道が交錯するか否か判定し、
前記自車両の予定走行軌道と前記他車両の予想走行軌道が交錯すると判定した場合に、前記自車両の予定走行軌道と前記他車両の予想走行軌道が交錯する交錯地点よりも前記自車両の進行方向に対して手前の地点に停止目標線を設定し、前記停止目標線を基準に前記自車両を減速させ、
前記他車両の車長又は車幅が長いほど、前記自車両の進行方向に対してより手前の地点に前記停止目標線を設定する、
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
自車両の周辺の物体を検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、前記自車両が走行する自車線と対向する対向車線を走行する他車両の挙動を検出し、前記挙動に基づいて、前記他車両が、前記対向車線に接続する接続道路に進入するか否かを判定し、前記挙動に基づいて、前記他車両が、前記接続道路に進入するのに伴って前記自車線に進入するか否か判定し、前記他車両が前記自車線に進入すると判定した場合に、前記自車両の予定走行軌道を生成するとともに、前記挙動に応じて前記他車両の予想走行軌道を生成し、前記自車両の予定走行軌道と前記他車両の予想走行軌道が交錯するか否か判定し、前記自車両の予定走行軌道と前記他車両の予想走行軌道が交錯すると判定した場合に、前記自車両の予定走行軌道と前記他車両の予想走行軌道が交錯する交錯地点よりも前記自車両の進行方向に対して手前の地点に停止目標線を設定し、前記停止目標線を基準に前記自車両を減速させる、コントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記他車両の車長又は車幅が長いほど、前記自車両の進行方向に対してより手前の地点に前記停止目標線を設定することを特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両に対する対向車両の自車線への進入を妨げないようにして、対向車線における交通を円滑にするために、自車両と先行車両との間の目標車間距離を取得し、対向車両が自車線に進入するか否かを判定し、対向車両が自車線に進入すると判定された場合に、目標車間距離を修正する車両走行支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-096361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自車両と先行車両との間の車間距離を修正するだけでは、自車線への対向車両の進入を許容するという意図を対向車両が気づきにくく、対向車線における交通を円滑にするという課題が解決されないという問題があった。
本発明は、対向車線に接続する接続道路に進入する対向車両が存在する場合に、接続道路への対向車両の進入を円滑にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による走行支援方法では、自車両の走行を制御するコントローラを備えた走行支援装置の走行支援方法において、自車両が走行する自車線と対向する対向車線を走行する他車両の挙動を検出し、挙動に基づいて、他車両が、対向車線に接続する接続道路に進入するか否かを判定し、挙動に基づいて、他車両が、対向車線に接続する接続道路に進入するのに伴って自車線に進入するか否か判定し、他車両が自車線に進入すると判定した場合に自車両を減速させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、対向車線に接続する接続道路に進入する対向車両が存在する場合に、接続道路への対向車両の進入を円滑にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の走行支援装置の概略構成図である。
図2A】実施形態の挙動予測方法の一例の説明図である。
図2B】実施形態の挙動予測方法の他の一例の説明図である。
図3】実施形態における走行支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】対向車両が自車線を横切って接続道路に進入する場合を示す図である。
図5】対向車両が自車線へはみ出して接続道路に進入する場合を示す図である。
図6A】対向車両が自車線へはみ出して接続道路に進入する場合の自車両の運転行動の第1例を示す図である。
図6B】対向車両が自車線へはみ出して接続道路に進入する場合の自車両の運転行動の第2例を示す図である。
図6C】対向車両が自車線へはみ出して接続道路に進入する場合の自車両の運転行動の第3例を示す図である。
図7A】対向車両が自車線へはみ出して接続道路に進入する場合の減速量の説明図である。
図7B】対向車両が自車線へはみ出して接続道路に進入する場合の減速量の説明図である。
図8】実施形態の走行支援方法の一例のフローチャートである。
図9】運転行動決定ルーチンの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1を参照する。自車両1は、自車両1の走行支援を行う走行支援装置10を備える。走行支援装置10による走行支援には、自車両1の周辺の走行環境に基づいて、運転者が関与せずに自車両1を自動で運転する自動運転制御や、運転者による自車両1の運転を支援する運転支援制御を含んでよい。
運転支援制御には、自動操舵、自動ブレーキ、定速走行制御、車線維持制御、合流支援制御などの走行制御のほか、運転者に操舵操作や減速操作を促すメッセージを出力することを含んでよい。
【0010】
走行支援装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース14と、通信装置15と、コントローラ16と、アクチュエータ17とを備える。図面において地図データベースを「地図DB」と表記する。
物体センサ11は、自車両1に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周辺の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
【0011】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の走行速度(車速)を検出する車速センサ、自車両1が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0012】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、自動運転用の地図として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という。)を記憶してよい。高精度地図は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という。)よりも高精度の地図データであり、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。
【0013】
例えば、高精度地図は車線単位の情報として、車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報を含む。
車線ノードの情報は、その車線ノードの識別番号、位置座標、接続される車線リンク数、接続される車線リンクの識別番号を含む。車線リンクの情報は、その車線リンクの識別番号、車線の種類、車線の幅員、車線境界線の種類、車線の形状、車線区分線の形状、車線基準線の形状を含む。高精度地図は更に、車線上又はその近傍に存在する信号機、停止線、標識、建物、電柱、縁石、横断歩道等の地物の種類及び位置座標と、地物の位置座標に対応する車線ノードの識別番号及び車線リンクの識別番号等の地物の情報を含む。
【0014】
高精度地図は、車線単位のノード及びリンク情報を含むため、走行ルートにおいて自車両1が走行する車線を特定可能である。高精度地図は、車線の延伸方向及び幅方向における位置を表現可能な座標を有する。高精度地図は、3次元空間における位置を表現可能な座標(例えば経度、緯度及び高度)を有し、車線や上記地物は3次元空間における形状として記述されてもよい。
通信装置15は、自車両1の外部の通信装置との間で無線通信を行う。通信装置15による通信方式は、例えば公衆携帯電話網による無線通信や、車車間通信、路車間通信、又は衛星通信であってよい。
【0015】
コントローラ16は、自車両1の走行支援制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。コントローラ16は、プロセッサ21と、記憶装置22等の周辺部品とを含む。プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置22は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置22は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0016】
以下に説明するコントローラ16の機能は、例えばプロセッサ21が、記憶装置22に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ16を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ16は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ16はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0017】
アクチュエータ17は、コントローラ16からの制御信号に応じて、自車両のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両の車両挙動を発生させる。アクチュエータ17は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。
アクセル開度アクチュエータは、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、自車両1のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0018】
次に、コントローラ16による走行支援制御の一例を説明する。図2A及び図2Bは、自車両1が走行する走行路100が自車線101と対向車線102とを含み、自車線101上を自車両1が走行し、自車線101と対向する対向車線102上を他車両103が走行する場面を示している。以下、対向車線102上を走行する他車両103を「対向車両103」と表記する。
図2Aに示す場面では、対向車両103が、走行軌道104aに沿って対向車線102に接続する接続道路105aに進入しようとしている。
【0019】
接続道路105aは、対向車線102を挟んで自車線101と反対側から対向車線102へ(走行路100へ)接続する道路である。
対向車両103が接続道路105aへ進入する際に、走行軌道104aに示すように、対向車両103が、いったん対向車線102から自車線101へはみ出してから(すなわち、自車線101へ進入してから)接続道路105aへ進入することがある。
【0020】
例えば、対向車両103の運転者は、いったん接続道路105aへ曲がる方向とは反対方向に操舵してから、操舵方向を反転して接続道路105aへ曲がる方向へ操舵するという操舵操作をすることがある。
このような場合に自車両1が走行し続けると、対向車両103は自車両1との過度の接近を避けるために減速又は停止することがある。このため、接続道路105aへの対向車両103の進入が阻害され、対向車線102の円滑な通行が阻害される。
【0021】
また、図2Bに示す場面では、対向車両103が、走行軌道104bに沿って対向車線102に接続する接続道路105bに進入しようとしている。
なお、以下の説明において、走行軌道104a及び104bを総称して「走行軌道104」と表記することがある。また、接続道路105a及び105bを総称して「接続道路105」と表記することがある。
【0022】
接続道路105bは、自車線101を挟んで対向車線102と反対側から対向車線102へ(走行路100へ)接続する道路である。対向車両103が接続道路105bへ進入する際には、自車線101を横断する必要がある。
このような場合に自車両1が走行し続けると、対向車両103は自車両1との過度の接近を避けるために減速又は停止することがある。このため、接続道路105bへの対向車両103の進入が阻害され、対向車線102の円滑な通行が阻害される。
【0023】
そこでコントローラ16は、対向車両103の挙動を検出し、対向車両103の挙動に基づいて、対向車両103が、対向車線102に接続する接続道路105に進入するか否かを判定し、対向車両103が接続道路105に進入すると判定した場合に、対向車両103の挙動に応じて自車両1を減速させる。
【0024】
これにより、対向車両103の運転者(又は対向車両103の走行を支援する走行支援装置など)に、もはや自車両1が対向車両103の走行を阻害しないことを認識させることができる。
この結果、接続道路105への対向車両103の進入を円滑にすることができ、対向車線102の円滑な通行を確保できる。
【0025】
続いて図3を参照して、コントローラ16の機能を詳しく説明する。コントローラ16は、物体検出部30と、自車両位置推定部31と、地図取得部32と、検出統合部33と、物体追跡部34と、地図内位置演算部35と、運転行動決定部36と、軌道生成部37と、車両制御部38を備える。
物体検出部30は、物体センサ11の検出信号に基づいて、自車両1の周辺の物体、例えば車両やバイク、歩行者、障害物などの位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。物体検出部30は、例えば自車両1を空中から眺める天頂図(平面図ともいう)において、物体の2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを表現する検出結果を出力する。
【0026】
自車両位置推定部31は、測位装置13による測定結果や、車両センサ12からの検出結果を用いたオドメトリに基づいて、自車両1の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両1の位置、姿勢及び速度を計測する。
地図取得部32は、地図データベース14から自車両1が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図取得部32は、通信装置15により外部の地図データサーバから地図情報を取得してもよい。
【0027】
検出統合部33は、複数の物体検出センサの各々から物体検出部30が得た複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。
具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。
具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
【0028】
物体追跡部34は、物体検出部30によって検出された物体を追跡する。具体的には、検出統合部33により統合された検出結果に基づいて、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の速度などの挙動を予測する。
【0029】
地図内位置演算部35は、自車両位置推定部31により得られた自車両1の絶対位置、及び地図取得部32により取得された地図情報から、地図上における自車両1の位置及び姿勢を推定する。
また、地図内位置演算部35は、自車両1が走行している走行路100、さらに走行路100のうちで自車両1が走行する自車線101と、自車線101と対向する対向車線102を特定する。
【0030】
運転行動決定部36は、検出統合部33及び物体追跡部34により得られた検出結果と、地図内位置演算部35により特定された自車両1の位置に基づいて、走行支援装置10により実行する自車両1の概略的な運転行動を決定する。
運転行動決定部36が決定する運転行動は、例えば、自車両1の停止、一時停止、走行速度、減速、加速、進路変更、右折、左折、直進、合流区間や複数車線における車線変更、車線維持、追越、障害物への対応などの行動が含まれる。
【0031】
運転行動決定部36は、地図内位置演算部35が推定した自車両1の位置及び姿勢と、自車両1の周囲の物体の位置及び姿勢と、高精度地図とに基づいて、自車両1の周辺の経路や物体の有無を表現する経路空間マップと、走行場の危険度を数値化したリスクマップを生成する。運転行動決定部36は、経路空間マップ及びリスクマップに基づいて、自車両1の運転行動計画を生成する。
【0032】
運転行動を決定する際に、運転行動決定部36は、対向車線102を走行する対向車両103の挙動に基づいて、対向車両103が、対向車線102に接続する接続道路に進入するか否かを判定する。
対向車両103が接続道路に進入すると判定した場合に、運転行動決定部36は、減速、停止、対向車両103を回避する等の運転行動を決定する。
【0033】
このため、運転行動決定部36は、先行車両検出部40と、対向車両検出部41と、後続車両検出部42と、目標車間距離取得部43と、進入判定部44と、到達予定位置推定部45と進入妨害判定部46と、停止位置設定部47と、回避可否判定部48と、車線変更判定部49と、自車両速度制御部50を備える。
先行車両検出部40は、自車線101を走行する自車両1の先行車両106が存在するか否かを判定する。
【0034】
図4及び図5を参照する。図4は、対向車両103が自車線101を横切って接続道路105bに進入する場面を示し、図5は、対向車両103が自車線101へはみ出して接続道路105aに進入する場面を示す。
先行車両106は、自車線101上において自車両1の前方を走行している。また、自車両1の後方には、自車線101上において自車両1の後続車両107が走行している。
【0035】
図3を参照する。先行車両106が存在する場合、先行車両検出部40は、先行車両106の位置、自車両1と先行車両106との間の距離、及び相対速度を検出する。
対向車両検出部41は、対向車線102を走行する対向車両103の位置、自車両1と対向車両103との間の距離、及び相対速度を検出する。
【0036】
後続車両検出部42は、自車線101を走行する自車両1の後続車両107の位置、自車両1と後続車両107との間の車間距離D、及び相対速度を検出する。
先行車両106が存在する場合、目標車間距離取得部43は、自車両1と先行車両106との間の目標車間距離を取得する。例えば、目標車間距離取得部43は、車両センサ12から入力された自車両速度、及び先行車両検出部40で検出した相対速度に基づき、先行車両106に安全に追従することのできる目標車間距離を取得する。
【0037】
自車両速度制御部50は、目標車間距離取得部43で取得した目標車間距離を確保するように自車両1の目標車速を決定する。
一方で、先行車両106が存在しない場合、自車両速度制御部50は、予め設定された設定速度や、法定の制限速度を自車両1の目標車速として決定する。自車両速度制御部50は、制限速度自体を設定するのに代えて、「制限速度で走行すべき」という決定や、「制限速度よりも低速度で走行すべき」という決定を行ってもよい。
【0038】
進入判定部44は、対向車両検出部41の検出結果と高精度地図とに基づいて、対向車両103が接続道路105へ進入するか否かを判定する。
例えば、進入判定部44は、対向車両103の挙動に基づいて、対向車両103が接続道路105へ進入するか否かを判定してよい。
例えば、対向車両103が接続道路105へ進入する方向の方向指示器(ウインカー)を点灯させ、対向車両103から所定距離内に接続道路105が存在する場合に、対向車両103が接続道路105へ進入すると判定してよい。
【0039】
例えば、対向車両103から所定距離内において対向車線102に接続する接続道路が接続道路105b(図4)しか存在せず、かつ対向車両103が減速又は停止している場合に、対向車両103が接続道路105bへ進入すると判定してもよい。
同様に、対向車両103から所定距離内において対向車線102に接続する接続道路が接続道路105a(図5)しか存在せず、かつ対向車両103が減速又は停止している場合に、対向車両103が接続道路105aへ進入すると判定してもよい。
また、例えば対向車両103の走行軌跡に基づいて対向車両103の予想走行軌道を算出し、予想走行軌道に基づいて接続道路105へ進入するか否かを判定してもよい。
【0040】
対向車両103が接続道路105へ進入すると判定した場合、進入判定部44は、対向車両103の予想走行軌道104を算出する。
進入判定部44は、図4に示すように、自車両1の予定走行軌道108と対向車両103の予想走行軌道104bとに基づいて、自車両1の予定走行軌道108と対向車両103の予想走行軌道104bとが交錯する交錯地点109bを算出する。自車両1の予定走行軌道108としては、例えば、前回決定した運転行動に基づいて軌道生成部37が生成した自車両1の目標走行軌道を利用できる。
図5の場面においても同様に、進入判定部44は、自車両1の予定走行軌道108と対向車両103の予想走行軌道104aとが交錯する交錯地点109aを算出する。なお、以下の説明において交錯地点109a及び109bを総称して「交錯地点109」と表記することがある。
【0041】
到達予定位置推定部45は、対向車両103が、交錯地点109に到達する時点に自車両1が到達する予定の位置(到達予定位置)を推定する。例えば、到達予定位置推定部45は、対向車両103の速度に基づいて対向車両103が、交錯地点109に到達する時点を推定する。到達予定位置推定部45は、自車両1の速度と予定走行軌道108に基づいて到達予定位置を推定する。
【0042】
進入妨害判定部46は、交錯地点109に到達した対向車両103と、到達予定位置に到達した自車両1とが干渉するか否かを判定する。例えば、進入妨害判定部46は、交錯地点109に到達した場合の対向車両103の占有領域に所定のマージンを加えた領域と、到達予定位置に到達した自車両の占有領域とが、少なくとも一部分重複する場合に、対向車両103と自車両1とが干渉すると判定する。
【0043】
さらに進入妨害判定部46は、対向車両103が自車線101を横切って接続道路105bに進入しようとしているのか(図4)、対向車両103が自車線101へはみ出して接続道路105aに進入しようとしているのか(図5)を判定する。すなわち進入妨害判定部46は、対向車両103が、対向車線102を挟んで自車線101と反対側に接続する接続道路105bに進入する際に、自車線101にはみ出すか否かを判定する。
【0044】
図4に示す場面のように、対向車両103が自車線101を横切って接続道路105bに進入しようとしている場合、停止位置設定部47は、交錯地点109bよりも自車両1の進行方向に対して手前の地点に停止目標線110bを設定する。
自車両速度制御部50は、停止目標線110bを基準に自車両1を減速させることを決定する。例えば、自車両速度制御部50は、停止目標線110bに自車両1を停止させることを決定してよい。また例えば、自車両速度制御部50は、停止目標線110bにおいて自車両1を所定の比較的低い速度まで減速させることを決定してよい。自車両速度制御部50は、停止目標線110bにおける自車両1の目標車速自体を決定してもよい。
【0045】
図5に示す場面のように、対向車両103が自車線101へはみ出して接続道路105aに進入しようとしている場合、回避可否判定部48は、自車両1が自車線101の範囲内において横位置を変化させて対向車両103から横方向に遠ざかることにより、自車線101へはみ出す対向車両103を回避可能であるか否かを判定する。
例えば、回避可否判定部48は、対向車両103が横方向に自車線101へはみ出すはみ出し量Pを推定する。
【0046】
回避可否判定部48は、はみ出し量Pが所定値以下であるか否かを推定する。はみ出し量Pが所定値以下である場合に、回避可否判定部48は、図6Aに示す軌道111のように、自車線101の範囲内で自車両1を横方向に回避させることを決定する。
一方で、はみ出し量Pが所定値より大きい場合に、車線変更判定部49は、自車線101を挟んで対向車線102の反対側に隣接車線113が存在するか否かを判定する。
隣接車線113が存在する場合、車線変更判定部49は、図6Bに示す軌道112のように、自車線101の自車両1を隣接車線113へ車線変更させることにより、自車両1を横方向に回避させることを決定する。
【0047】
これらの場面のように自車両1を横方向へ回避させる際に、自車両速度制御部50は、自車両1を減速させることを決定してもよい。自車両速度制御部50は、低下させた目標車速自体を決定してもよく、車速の低減量を決定してもよく、車速を低減させるレベル「大」、「中」及び「小」を決定してもよく、「制限速度未満で走行すべき」という決定を行ってもよい。
【0048】
また、図7Aに示すように自車線101の範囲内で自車両1を横方向に回避させる場合には、回避可否判定部48は、横方向への回避量Aを決定してもよい。また、図7Bに示すように自車線101の自車両1を隣接車線113へ車線変更させる場合には、車線変更判定部49が横方向への回避量Aを決定してもよい。
自車両速度制御部50は、回避量Aが大きいほど自車両1を回避させる自車両1の減速量を小さくしてもよい。
【0049】
回避量Aに代えて、回避可否判定部48及び車線変更判定部49は、自車両1を回避させた際の自車両1と対向車両103との間のクリアランスを推定してもよい。例えば、予想走行軌道104aを走行する対向車両103が占有する領域の軌跡である走行領域と、回避軌道111又は112を走行する自車両1が占有する領域の軌跡である走行領域と、を算出し、これらの走行領域間の最短距離をクリアランスとして推定する。
自車両速度制御部50は、クリアランスが大きいほど、自車両1を回避させる自車両1の減速量を小さくしてもよい。
【0050】
図6Cを参照する。はみ出し量Pが所定値より大きく且つ隣接車線113が存在しない場合、停止位置設定部47は、交錯地点109bよりも自車両1の進行方向に対して手前の地点に停止目標線110aを設定する。なお、以下の説明において停止目標線110a及び110bを総称して「停止目標線110」と表記することがある。
【0051】
自車両速度制御部50は、停止目標線110aを基準に自車両1を減速させることを決定する。例えば、自車両速度制御部50は、停止目標線110aに自車両1を停止させることを決定してよい。また例えば、自車両速度制御部50は、停止目標線110aにおいて自車両1を所定の比較的低い速度まで減速させることを決定してよい。自車両速度制御部50は、停止目標線110aにおける自車両1の目標車速自体を決定してもよい。
【0052】
なお、図4及び図6Cに示す場面のように停止目標線110を設定する場合、停止位置設定部47は、交錯地点119の横位置に応じて、自車線の前後方向に停止目標線110をオフセットしてもよい。
例えば、停止位置設定部47は、交錯地点119が自車線101の中央に近いほど、自車両1の進行方向に対して、交錯地点119から、より手前の地点に停止目標線110を設定する。
これにより、交錯地点119が、自車線101の中央に近い場合には、より手前に停止目標線110を設定することにより、自車両1の乗員の緊張をより低減できる。
【0053】
自車両速度制御部50は、対向車両103の車長又は車幅が長いほど、自車両1の進行方向に対してより手前の地点に停止目標線110を設定してもよい。これにより、自車両1の乗員の恐怖心をより低減できる。また、図6Cに示す場面のように対向車両103が自車線101にはみ出す場面では、対向車両103の車長や車幅が長いほどはみ出し量Pが大きくなるため、対向車両103の車長又は車幅が長いほど、より手前に停止目標線110aを設定することにより、自車両1の乗員の緊張をより緩和できる。
【0054】
また、自車両速度制御部50は、停止目標線110を基準に自車両1を減速させる場合、自車両1と後続車両107との間の車間距離Dが短いほど、自車両を減速させる減速開始時期として、より早い時期を設定してもよい。減速開始時期自体を設定するのに代えて、通常より早く減速を開始させる決定を行ってもよい。自車両1と後続車両107との間の車間距離Dが短いほどより早く減速させることにより、自車両1の急な減速を回避して、後続車両107の乗員に与える緊張を緩和できる。
【0055】
図3を参照する。軌道生成部37は、運転行動決定部36が決定した運転行動、自車両1の運動特性、経路空間マップに基づいて、自車両1を走行させる走行軌道及び速度プロファイルの候補を生成する。
軌道生成部37は、リスクマップに基づいて各候補の将来リスクを評価して、最適な走行軌道及び速度プロファイルを選択し、自車両1に走行させる目標走行軌道及び目標速度プロファイルとして設定する。
【0056】
例えば、自車両速度制御部50が目標車速に関する決定を行った場合には、軌道生成部37は、自車両速度制御部50の決定結果に応じた車速を実現する目標速度プロファイルを生成する。
また、自車両速度制御部50が停止目標線110に自車両1を停止させることを決定した場合には、軌道生成部37は、停止目標線110に自車両1を停止させる目標走行軌道及び目標速度プロファイルを生成する。
また、自車両速度制御部50が自車両1を減速させることを決定した場合には、軌道生成部37は、自車両1を減速させる目標速度プロファイルを生成する。
【0057】
また、回避可否判定部48及び車線変更判定部49が、自車両1を横方向へ回避させることを決定した場合には、軌道生成部37は、回避量Aに応じて自車両1を横方向へ回避させる目標速度プロファイルを生成する。
また、自車両速度制御部50が、自車両1と後続車両107との間の車間距離Dに応じて減速開始時期を早めた場合には、軌道生成部37は、自車両速度制御部50の決定結果に応じて減速を開始する目標速度プロファイルを生成する。
車両制御部38は、軌道生成部37が生成した目標速度プロファイルに従う速度で自車両1が目標走行軌道を走行するように、アクチュエータ17を駆動する。
【0058】
(動作)
次に、図8を参照して、実施形態における走行支援装置10の動作の一例を説明する。
ステップS1において物体検出部30は、複数の物体検出センサを用いて、自車両1の周辺における物体の位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。
ステップS2において検出統合部33は、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。物体追跡部34は、検出及び統合された各物体を追跡し、自車両1の周辺の物体の挙動を予測する。
【0059】
ステップS3において自車両位置推定部31は、測位装置13による測定結果や、車両センサ12からの検出結果を用いたオドメトリに基づいて、所定の基準点に対する自車両1の位置、姿勢及び速度を計測する。
ステップS4において地図取得部32は、自車両1が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。
ステップS5において地図内位置演算部35は、ステップS3で計測された自車両1の位置、及びステップS4で取得された地図データから、地図上における自車両1の位置及び姿勢を推定する。
【0060】
ステップS6において運転行動決定部36は、ステップS2で得られた検出結果(自車両1の周辺の物体の挙動)と、ステップS5で特定された自車両1の位置に基づいて、走行支援装置10により実行する自車両1の運転行動を決定する。
運転行動決定部36による運転行動決定ルーチンは図9を参照して後述する。
【0061】
ステップS7において軌道生成部37は、ステップS6で運転行動決定部36が決定した運転行動の決定結果に基づいて、自車両1の目標走行軌道や速度プロファイルを生成する。
ステップS8において車両制御部38は、ステップS7で生成された目標走行軌道や速度プロファイルに従って自車両1が走行するように自車両1を制御する。
【0062】
図9を参照して、運転行動決定部36による運転行動決定ルーチンを説明する。
ステップS10において進入判定部44は、対向車線102に接続する接続道路105を検出したか否かを判定する。接続道路105を検出した場合(ステップS10:Y)に処理はステップS11へ進む。接続道路105を検出しない場合(ステップS10:N)に処理はステップS23へ進む。
ステップS11において進入判定部44は、対向車両103が接続道路105へ進入するか否かを判定する。対向車両103が接続道路105へ進入する場合(ステップS11:Y)に処理はステップS12へ進む。対向車両103が接続道路105へ進入しない場合(ステップS11:N)に処理はステップS23へ進む。
【0063】
ステップS12において進入判定部44は、対向車両103の挙動に基づいて、対向車両103が、接続道路105へ進入するのに伴って自車線101へ進入するか否かを判定する。対向車両103が自車線101へ進入すると判定した場合(ステップS12:Y)に処理はステップS13へ進む。対向車両103が自車線101へ進入しないと判定した場合(ステップS12:N)に処理はステップS23へ進む。
ステップS13において進入判定部44は、自車両1の予定走行軌道108と対向車両103の予想走行軌道104とが交錯する交錯地点109を算出する。
到達予定位置推定部45は、対向車両103が、交錯地点109に到達する時点に自車両1が到達する予定の到達予定位置を推定する。
ステップS14において進入妨害判定部46は、交錯地点109に到達した対向車両103と、到達予定位置に到達した自車両1とが干渉するか否かを判定する。
【0064】
対向車両103と自車両1とが干渉する場合(ステップS14:Y)に処理はステップS15へ進む。対向車両103と自車両1とが干渉しない場合(ステップS14:N)に処理はステップS23へ進む。
ステップS15において進入妨害判定部46は、対向車両103が、自車線101にはみ出して、対向車線102を挟んで自車線101と反対側に接続する接続道路105bに進入するか否かを判定する。対向車両103が接続道路105bに進入する場合(ステップS15:Y)に処理はステップS16へ進む。
【0065】
対向車両103が自車線101を横切って接続道路105bに進入する場合(ステップS15:N)に処理はステップS20へ進む。
ステップS16において回避可否判定部48は、対向車両103が自車線101へはみ出すはみ出し量Pが所定値以下であるか否かを推定する。はみ出し量Pが所定値以下である場合(ステップS16:Y)に処理はステップS17へ進む。はみ出し量Pが所定値より大きい場合(ステップS16:N)に処理はステップS18へ進む。
【0066】
ステップS17において回避可否判定部48は、自車両1の運転行動として、自車線101の範囲内で自車両1を横方向に回避させることを決定する。
また、自車両速度制御部50は、自車両1の運転行動として、自車両1を減速させることを決定する。その後に処理はステップS27へ進む。
【0067】
一方で、ステップS18において車線変更判定部49は、自車線101を挟んで対向車線102の反対側の隣接車線113へ、自車両1が車線変更できるか否かを判定する。自車両1が車線変更できる場合(ステップS18:Y)に処理はステップS19へ進む。自車両1が車線変更できない場合(ステップS18:N)に処理はステップS20へ進む。
【0068】
ステップS19において車線変更判定部49は、自車両1の運転行動として、自車線101の自車両1を隣接車線113へ車線変更させることを決定する。その後に処理はステップS27へ進む。
ステップS20において停止位置設定部47は、交錯地点109よりも自車両1の進行方向に対して手前の地点に停止目標線110を設定する。
【0069】
ステップS21において自車両速度制御部50は、対向車両103が交錯地点109を既に通過して、自車線101にいなくなっているか否かを判定する。対向車両103が交錯地点109をまだ通過していない場合(ステップS21:N)に処理はステップS22へ進む。既に通過した場合(ステップS21:Y)に処理はステップS23へ進む。
ステップS22において自車両速度制御部50は、自車両1の運転行動として、停止目標線110に自車両1を停止させることを決定する。その後に処理はステップS27へ進む。
【0070】
一方で、ステップS23において先行車両検出部40は、自車線101を走行する先行車両106が存在するか否かを判定する。先行車両106が存在する場合(ステップS23:Y)に処理はステップS24へ進む。先行車両106が存在しない場合(ステップS23:N)に処理はステップS26へ進む。
ステップS24において先行車両検出部40は、先行車両106の位置、自車両1と先行車両106との間の距離、及び相対速度を検出する。
【0071】
ステップS25において目標車間距離取得部43は、自車両1と先行車両106との間の目標車間距離を取得する。
ステップS26において自車両速度制御部50は、自車両1の運転行動として、自車両1の目標車速を決定する。先行車両106が存在する場合、自車両速度制御部50は、目標車間距離取得部43で取得した目標車間距離を確保するように目標車速を決定する。先行車両106が存在しない場合、自車両速度制御部50は、予め設定された設定速度や、法定の制限速度を自車両1の目標車速として決定する。自車両速度制御部50は、制限速度自体を設定するのに代えて、「制限速度で走行すべき」という決定や、「制限速度よりも低速度で走行すべき」という決定を行ってもよい。
【0072】
ステップS27において運転行動決定部36は、ステップS17、S19、S22又はS26のいずれかにおいて行った運転行動の決定結果を、軌道生成部37へ出力する。その後に処理は終了する。
なお、ステップS23~S26の処理は、必ずしも本願発明に必須の処理ではない。ステップS23~S26の処理を終了する場合、運転行動決定部36の先行車両検出部40と、目標車間距離取得部43を省略してもよい。
また、対向車両103が接続道路105へ進入するか否かを判定するステップS11の前に、対向車両103が、接続道路105へ進入するのに伴って自車線101へ進入するか否かを判定するステップS12を実行してもよい。この場合、例えば進入判定部44は、対向車両103の走行軌跡に基づいて対向車両103の予想走行軌道を算出し、接続道路105へ進入するのに伴って自車線101へ進入するか否かを予想走行軌道に基づいて判定してよい。
【0073】
(実施形態の効果)
(1)自車両1の走行を制御する走行支援装置10は、運転行動決定部36として動作するコントローラ16を備える。運転行動決定部36は、自車両1が走行する自車線101と対向する対向車線102を走行する対向車両103の挙動を検出し、対向車両103の挙動に基づいて、対向車両103が、対向車線102に接続する接続道路105に進入するか否かを判定し、対向車両103が接続道路105に進入すると判定した場合に、対向車両103の挙動に応じて自車両1を減速させる。
【0074】
これにより、対向車両103の運転者(又は対向車両103の走行を支援する走行支援装置など)に、もはや自車両1が対向車両103の走行を阻害しないことを認識させることができる。
この結果、接続道路105への対向車両103の進入を円滑にすることができ、対向車線102の円滑な通行を確保できる。
【0075】
また、運転行動決定部36は、対向車両103の挙動に応じて、対向車両103が接続道路105に進入するのに伴って対向車両103が自車線101に進入するか否かを判定し、対向車両103が自車線101に進入すると判定した場合に、自車両1を減速させる。
これにより、対向車両103が接続道路105に進入するのに伴って対向車両103が自車線101に進入する必要がある場合に、対向車両103の運転者(又は対向車両103の走行を支援する走行支援装置など)に、もはや自車両1が対向車両103の走行を阻害しないことを認識させることができる。
この結果、接続道路105への対向車両103の進入を円滑にすることができ、対向車線102の円滑な通行を確保できる。
【0076】
(2)運転行動決定部36は、対向車両103の挙動に応じて、自車両1の予定走行軌道108と対向車両103の予想走行軌道104との交錯地点109を推定し、交錯地点109よりも自車両1の進行方向に対して手前の地点に停止目標線110を設定し、停止目標線110を基準に自車両1を減速させる。
これにより、対向車両103が自車線101に進入してくるおそれがある場合に、自車両1が対向車両103と交錯することなく減速又は停止させることができる。
【0077】
(3)運転行動決定部36は、自車線101における交錯地点109の横位置に応じて、自車線101の前後方向に停止目標線110をオフセットする。
これにより、交錯地点109に応じて停止目標線110を設定することができるため、自車両1と対向車両103との間の適切な距離を保つことができ、極端に近づいたり、極端に離れていたりすることを抑制できる。
【0078】
(4)運転行動決定部36は、交錯地点109が自車線101の中央に近いほど、自車両1の進行方向に対してより手前の地点に停止目標線110を設定する。
これにより、交錯地点119が、自車線101の中央に近い場合には、より手前に停止目標線110を設定することにより、自車両1の乗員の緊張をより低減できる。
【0079】
(5)運転行動決定部36は、対向車両の車長又は車幅が長いほど、自車両1の進行方向に対してより手前の地点に停止目標線110を設定する。
れにより、自車両1の乗員の恐怖心をより低減できる。また、対向車両103が自車線101にはみ出して接続道路105aに進入する場面では、対向車両103の車長や車幅が長いほどはみ出し量Pが大きくなるため、対向車両103の車長又は車幅が長いほど、より手前に停止目標線110aを設定することにより、自車両1の乗員の緊張をより緩和できる。
【0080】
(6)運転行動決定部36は、自車線101を走行する後続車両107と自車両1との距離が短いほど、自車両1を減速させる時期を早める。
後続車両107からは、対向車線102やはみ出してくる対向車両103が死角に入ることが多い。このため自車両1が急に減速を開始すると、後続車両107の乗員に大きな緊張を与えてしまうおそれがある。減速時期を早くすることで、後続車両107の乗員に与える緊張を緩和できる。
【0081】
(7)運転行動決定部36は、対向車両103が、対向車線102を挟んで自車線101と反対側に接続する接続道路105aに進入する際に、自車線101にはみ出すか否かを判定し、対向車両103が自車線101にはみ出すと判定した場合には、自車両1を自車線101の横方向に回避させる。
これにより、横方向に自車両1と対向車両103との間の適切な距離を確保することができる。
【0082】
(8)運転行動決定部36は、対向車両103が自車線101にはみ出す場合のはみ出し量Pが所定値以下であるか否かを推定し、はみ出し量Pが所定値以下であると推定した場合には、自車線101の範囲内で自車両1を回避させる。
これにより、はみ出し量Pに応じて、自車線101の範囲内で対向車両103を回避できるか否かを判定できる。
【0083】
(9)はみ出し量Pが所定値より大きいと推定し、且つ自車線101を挟んで対向車線102の反対側に隣接車線113がある場合に、隣接車線113へ車線変更する。
これにより、対向車両103と自車両1との間のマージンをより大きく確保できる。
(10)運転行動決定部36は、対向車両103が自車線101にはみ出すと推定した場合には、対向車両103の挙動に応じて自車両1を減速させるのに代えて、自車両1を自車線101の横方向に回避させる。
これにより、減速が不要なシーンでは、横方向の移動で対向車両103を回避して余計な減速を抑制できる。
【0084】
(11)運転行動決定部36は、自車両1を横方向に回避させる回避量Aを決定し、回避量Aが大きいほど、対向車両103の挙動に応じて自車両1を減速させる減速量を小さくする。
これにより、回避量Aが大きく対向車両103と自車両1との間のマージンをより大きく確保できる場合に、余計な減速を抑制できる。
(12)運転行動決定部36は、自車両1を自車線101の横方向に回避させた場合の対向車両103と自車両1との間のクリアランスを推定し、クリアランスが大きいほど、対向車両103の挙動に応じて自車両1を減速させる減速量を小さくする。
これにより、対向車両103と自車両1との間のクリアランスをより大きく確保できる場合に、余計な減速を抑制できる。
【符号の説明】
【0085】
1…自車両、10…走行支援装置、11…物体センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…通信装置、16…コントローラ、17…アクチュエータ、21…プロセッサ、22…記憶装置、30…物体検出部、31…自車両位置推定部、32…地図取得部、33…検出統合部、34…物体追跡部、35…地図内位置演算部、36…運転行動決定部、37…軌道生成部、38…車両制御部、40…先行車両検出部、41…対向車両検出部、42…後続車両検出部、43…目標車間距離取得部、44…進入判定部、45…到達予定位置推定部、46…進入妨害判定部、47…停止位置設定部、48…回避可否判定部、49…車線変更判定部、50…自車両速度制御部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9