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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20240325BHJP
   G03B 17/18 20210101ALI20240325BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20240325BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240325BHJP
   G02B 7/10 20210101ALI20240325BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20240325BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20240325BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G03B17/18
G03B17/14
G03B13/36
G02B7/10 D
H04N23/66
H04N23/67
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020014224
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120720
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和音
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219584(JP,A)
【文献】特開2003-337277(JP,A)
【文献】特開2019-219583(JP,A)
【文献】特開平06-167648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 7/28-7/40
G03B 17/04-17/17
H04N 23/66
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体に着脱可能なレンズ装置であって、
フォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する制御手段と、
前記カメラ本体と通信が可能な通信手段と、を有し、
前記制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において制限され、
前記第二の駆動領域は、前記フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する機能の全てが無効となるMF専用領域を含み、
前記通信手段は、前記制御手段によって制限される前記フォーカスレンズの駆動領域であるAFリミット領域に関する情報を前記カメラ本体に対して送信することが可能であり、
前記通信手段は、光学部材の状態の変化に応じた前記第二の駆動領域の変化に関する情報を前記カメラ本体へ送信し、
前記通信手段は、前記カメラ本体が前記MF専用領域の表示に対応していない場合、前記MF専用領域に関する情報を、前記AFリミット領域に関する情報として前記カメラ本体へ送信することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
記通信手段は、前記光学部材の状態の変化に応じた前記AFリミット領域の変化に関する情報を前記カメラ本体に対して送信することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記光学部材の状態は、ズーム位置であることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記光学部材の状態は、絞り値であることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ装置。
【請求項5】
撮像素子と、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のレンズ装置と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
表示部を更に有し、
前記表示部は、前記第二の駆動領域の変化に関する情報に基づいて、前記第二の駆動領域を表示することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記フォーカスレンズが前記第二の駆動領域に位置していることを通知することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記フォーカスレンズが前記第二の駆動領域に位置している場合、前記表示部の少なくとも一部は点滅することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスレンズを駆動して焦点調節が可能なレンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスレンズを駆動して焦点調節を行う方法として、オートフォーカス(AF)およびマニュアルフォーカス(MF)が知られている。AFは、AFセンサから生成されるAF評価値に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を算出して焦点調節を行う方法である。MFは、ユーザが手動でフォーカスリングを操作して焦点調節を行う方法である。ここで、AFとMFの両方で焦点調節が可能なフォーカスレンズの駆動領域をAF可能領域、MFでのみ焦点調節が可能な駆動領域をMF専用領域という。
【0003】
特許文献1には、レンズから被写体までの距離に関する距離指標表示をデジタル的に表現する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-74598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された撮像装置の距離指標表示では、MF専用領域が表示されず、ユーザがMF専用領域を把握することができない。また、カメラ本体の表示部が交換レンズのMF専用領域の表示に対応していない場合にも、ユーザがMF専用領域を把握することができない。
【0006】
そこで本発明は、カメラ本体がMF専用領域の表示に対応していない場合でも、現在のフォーカスレンズの位置がMF専用領域であることを容易に把握することが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、カメラ本体に着脱可能なレンズ装置であって、フォーカスレンズと、前記フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する制御手段と、前記カメラ本体と通信が可能な通信手段とを有し、前記制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において制限され、前記第二の駆動領域は、前記フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する機能の全てが無効となるMF専用領域を含み、前記通信手段は、前記制御手段によって制限される前記フォーカスレンズの駆動領域であるAFリミット領域に関する情報を前記カメラ本体に対して送信することが可能であり、前記通信手段は、光学部材の状態の変化に応じた前記第二の駆動領域の変化に関する情報を前記カメラ本体へ送信し、前記通信手段は、前記カメラ本体が前記MF専用領域の表示に対応していない場合、前記MF専用領域に関する情報を、前記AFリミット領域に関する情報として前記カメラ本体へ送信する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カメラ本体がMF専用領域の表示に対応していない場合でも、現在のフォーカスレンズの位置がMF専用領域であることを容易に把握することが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各実施例における撮像装置のブロック図である。
図2】各実施例における被写体距離ごとの電子カムデータを示す図である。
図3】各実施例におけるAF可能領域およびMF専用領域を示す図である。
図4】各実施例におけるズームレンズ位置と最短撮影距離との関係を示す図である。
図5】各実施例におけるMF専用領域を含まない距離指標表示を示す図である。
図6】実施例1における距離指標表示方法を示すフローチャートである。
図7】実施例1におけるMF専用領域を含む距離指標表示を示す図である。
図8】実施例2におけるAFリミット領域を含む距離指標表示を示す図である。
図9】実施例2における距離指標表示方法を示すフローチャートである。
図10】実施例2におけるAFリミット領域とMF専用領域とを含む距離指標表示を示す図である。
図11】実施例2におけるMF専用領域が可変である距離指標表示を示す図である。
図12】実施例3における距離指標表示方法を示すフローチャートである。
図13】実施例3におけるAFリミット領域でMF専用領域を表現する距離指標表示を示す図である。
図14】変形例におけるMF専用領域を含む距離指標表示方法を示す図である。
図15】変形例における距離指標表示方法の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
まず、各実施例における撮像装置の構成について説明する。図1は、撮像装置10のブロック図である。撮像装置10は、カメラ本体(撮像装置本体)200と、カメラ本体200に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)100とを備えて構成される。ただし各実施例の撮像装置は、これに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成されていてもよい。
【0013】
交換レンズ100は、カメラ本体200に不図示のマウントを介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、前述したマウントに設けられた不図示の電源端子を介して、カメラ本体200から電力の供給を受ける。そして交換レンズ100は、カメラ本体200から受けた電力を用いて、後述する各種アクチュエータやレンズマイコン(レンズマイクロコンピュータ)111を制御する。カメラ本体200は、前述したマウントに設けられた不図示の通信端子部を介して、交換レンズ100と通信を行い、交換レンズ100に制御コマンドを送信することで交換レンズ100を制御する。
【0014】
カメラ本体200は、位相差AFセンサ機能を有する撮像素子201と、信号処理回路202と、記録処理部203と、表示部204と、操作部205と、カメラマイコン(カメラマイクロコンピュータ)206とを有する。撮像素子201は、CMOSセンサやCCDセンサを有し、交換レンズ100内の撮像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換して電気信号(アナログ信号)を出力する。撮像素子201から出力されたアナログ信号は、不図示のA/D変換回路によりデジタル信号に変換される。
【0015】
信号処理回路202は、A/D変換回路からのデジタル信号に対して各種画像処理を行い、映像信号を生成する。また信号処理回路202は、映像信号から被写体像のコントラスト状態、すなわち撮像光学系の焦点状態を示すフォーカス情報や露出状態を表す輝度情報を生成する。また信号処理回路202は、映像信号を表示部204に出力し、表示部204は映像信号を構図やピント状態等の確認に用いられるライブビュー画像として表示する。また信号処理回路202は、映像信号を記録処理部203に出力する。記録処理部203は、映像信号を静止画像や動画像データとして外部メモリ等に記憶する。
【0016】
カメラ制御部としてのカメラマイコン206は、操作部205に含まれる撮像指示スイッチおよび各種設定スイッチ等の入力に応じて、カメラ本体200を制御する。またカメラマイコン206は、カメラ通信部(通信手段)207を介して、輝度情報に応じた絞りユニット103の光量調節動作やフォーカス情報に応じたフォーカスレンズ105の焦点調節動作に関する制御コマンドをレンズマイコン111に送信する。またカメラマイコン206は、カメラ通信部207を介して交換レンズ100と通信を行い、交換レンズ100から、第二の駆動領域を表示部204に表示するための表示情報を取得する。ここで表示情報とは、例えば、フォーカスレンズ105の全駆動領域を100分割した各位置が含まれる駆動領域(第一の駆動領域、第二の駆動領域)や、表示する数値位置などである。
【0017】
交換レンズ100は、撮像光学系と、撮像光学系を駆動する各アクチュエータを制御する各制御部と、フォーカスレンズ105を操作するための操作リング110と、レンズマイコン111とを有する。
【0018】
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するレンズ制御部(制御装置)である。レンズマイコン111は、カメラ本体200と通信が可能なレンズ通信部(通信手段)112を介して、カメラ本体200から送信された制御コマンドを受信し、レンズデータの送信要求を受ける。またレンズマイコン111は、制御コマンドに対応するレンズ制御を行い、送信要求に対応するレンズデータをカメラ本体200に送信する。またレンズマイコン111は、制御コマンドのうち光量調節に関するコマンドやフォーカシングに関するコマンドに応答して、絞り制御部107およびフォーカスレンズ制御部109に指令を出力する。絞り制御部107およびフォーカスレンズ制御部109は、レンズマイコン111からの指令に従って、絞りユニット103およびフォーカスレンズ105をそれぞれ駆動する。これにより、絞りユニット103およびフォーカスレンズ105による光量調節処理、および焦点調節動作を制御するオートフォーカス処理を行うことができる。またレンズマイコン111は、操作リング110の操作量に応じて、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力してフォーカスレンズ105を駆動し、焦点調節動作を制御する。
【0019】
各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、および、第三の制御手段111cを有する。第一の制御手段111aは、フォーカスレンズ105を合焦位置に自動で調整する(すなわち第一の制御手段111aはAF制御を実現する機能を有する)。第二の制御手段111bは、フォーカスレンズ105を手動で(ユーザの操作量に基づいて)調整する(すなわち第二の制御手段111bはMF制御を実現する機能を有する)。第三の制御手段111cは、フォーカスレンズ105を駆動する(ズームトラッキング制御など)。第一の制御手段111aおよび第二の制御手段111bはフォーカスレンズ105の第一の駆動領域(AF可能領域)において有効であり、第一の制御手段111aはフォーカスレンズ105の第二の駆動領域(MF専用領域)において無効である。第三の制御手段111cは、第二の駆動領域の変化(全駆動領域における前記第二の駆動領域の割合の増減変化)に基づいてフォーカスレンズ105を駆動する機能を有する。
【0020】
なお、本実施例ではレンズマイコン111が第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、第三の制御手段111cを有する例について説明した。これは、レンズマイコン111が第一の制御手段111aの機能に相当する機能、第二の制御手段111bの機能に相当する機能、第三の制御手段111cの機能に相当する機能を有することと等価としてとらえることもできる。
【0021】
また各実施例において、表示部204は、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報(現在のフォーカスレンズ位置に限定されるものではなく、合焦距離などでもよい)と第二の駆動領域とを表示する。
【0022】
撮像光学系は、フィールドレンズ101と、変倍を行うズームレンズ102と、光量を調節する絞りユニット103と、像振れ補正レンズ104と、焦点調節を行うフォーカスレンズ105とを含む。ズームレンズ102は、図中に破線で示される光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動可能であり、不図示のズーム機構に連結されたズーム操作部がユーザに操作されることで光軸方向に駆動される。これにより、ズームレンズ102の移動によって撮影光学系の焦点距離が変更される変倍(ズーム)が行われる。
【0023】
ズームレンズ位置検出部106は、可変抵抗等の位置検出センサを用いてズームレンズ位置を検出し、ズームレンズ102の位置データをレンズマイコン111に出力する。ズームレンズ位置検出部106から出力された位置データは、レンズマイコン111にて後述するズームトラッキング制御などに用いられる。
【0024】
絞りユニット103は、絞り羽根やホール素子等のセンサを備えて構成される。絞り羽根の状態は、前述のセンサにより検出され、レンズマイコン111に出力される。絞り制御部107は、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力してステッピングモータやボイスコイルモータ等のアクチュエータを駆動する。これにより、絞りユニット103による光量調節を行うことができる。
【0025】
像振れ補正レンズ104は、撮像光学系の光軸OAに直交する方向に移動することで、手振れ等に起因する像振れを低減する。像揺れ補正レンズ制御部108は、振動ジャイロ等の不図示の振れセンサにより検出された振れに応じて、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力して防振アクチュエータを駆動する。これにより、像揺れ補正レンズ104のシフト動作を制御する防振処理を行うことができる。
【0026】
フォーカスレンズ105は、光軸方向に移動可能であり、フォトインタラプタ等の位置検出センサを用いてフォーカスレンズ105の位置を検出し、位置データをレンズマイコン111に出力する。フォーカスレンズ制御部109は、レンズマイコン111からの指令に従って、駆動信号を出力してステッピングモータ等のアクチュエータを駆動し、フォーカスレンズ105を移動させることで焦点調節を行う。
【0027】
またフォーカスレンズ105は、ズームレンズ102による変倍に伴う像面変動を補正する。リアフォーカス式の変倍光学系において、ズームレンズ102を移動させて変倍を行う際に生じる像面変動を、フォーカスレンズ105を移動させることによって補正し、合焦状態を維持するズームトラッキング制御を行う。
【0028】
ここで、図2を参照して、ズームトラッキング制御について説明する。図2は、被写体距離ごとの電子カムデータを示す図である。図2において、横軸はズームレンズ102の位置(ズームレンズ位置)、縦軸はフォーカスレンズ105の位置(フォーカスレンズ位置)をそれぞれ示す。ズームトラッキング制御を行うため、レンズマイコン111に搭載された不図示のメモリ(内部メモリ)には、電子カムデータ(トラッキング曲線)の情報が記憶されている。電子カムデータは、図2に示されるように、被写体距離に応じて合焦状態を保持するように設定されたズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置との関係を示すデータである。レンズマイコン111は、電子カムデータに基づいて、フォーカスレンズ制御部109に制御指令を出力し、フォーカスレンズ105を駆動してトラッキング制御を行う。
【0029】
各実施例において、電子カムデータは、フォーカスレンズ105の単位駆動量に対する像面移動量であるフォーカス敏感度に基づいて作成される。ただし、図2に示されるように、実際にメモリに記憶されている電子カムデータは、代表的な複数の被写体距離A~Dに対応するデータであり、かつ代表的なズームレンズ位置(代表点)に対するフォーカスレンズ位置を示すデータである。代表点以外のズームレンズ位置に近い複数の代表点に対する距離の比率を算出し、その比率に応じて線形補完を行うことによりフォーカスレンズ位置を算出することができる。
【0030】
次に、図3を参照して、AF可能領域およびMF専用領域について説明する。図3は、AF可能領域およびMF専用領域を示す図である。ここで、AF可能領域はAFとMFの両方で焦点調節が可能な領域であり、MF専用領域はMFでのみ焦点調節が可能な領域である。本実施例において、AF可能領域はAF・MF無限端とAF資金端との間の領域であり、MF専用領域はMF至近端とAF至近端との間の領域である。また本実施例において、AF可能領域とMF専用領域とを合わせた領域が全駆動領域である。
【0031】
各実施例の撮像装置10は、自動で焦点調節を行うオートフォーカス(AF)と、手動で焦点調節を行うマニュアルフォーカス(MF)とでフォーカスレンズ105を駆動して焦点調節を行うことが可能である。AFにおいて、カメラマイコン206は、撮像素子201で生成される映像信号に応じたAF評価値に基づいてフォーカスレンズ105の合焦位置を算出し、フォーカシングに関する制御コマンドをカメラ通信部207を介してレンズマイコン111へ送信する。レンズマイコン111は、カメラマイコン206から送信された制御コマンドに応答して、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力し、フォーカスレンズ105を駆動して焦点調節動作を制御する。MFにおいて、レンズマイコン111は、操作リング110の操作量に応じて、フォーカスレンズ制御部109に指令を出力して、フォーカスレンズ105を駆動して焦点調節動作を制御する。
【0032】
図3に示されるAF可能領域は、AFおよびMFの両方により焦点調節が可能な領域である。このため、AF可能領域に存在する被写体Bは、AFおよびMFの両方で合焦させることが可能である。一方、図3に示されるMF専用領域は、AF評価値を正確に算出することができないため、AFによる焦点調節を行うことができず、MFによる焦点調節のみが可能な領域である。このため、MF専用領域に存在する被写体Aは、MFにおいてのみ合焦させることが可能である。
【0033】
次に、図4を参照して、ズームレンズ位置と最短撮影距離との関係について説明する。図4は、ズームレンズ位置と最短撮影距離との関係を示す図である。図4において、縦軸はズームレンズ位置(ズームレンズ102の位置)、横軸は最短撮影距離をそれぞれ示す。図4に示されるように、最短撮影距離はズームレンズ102の位置に応じて変化し、WIDE側でAF可能領域であった撮影距離位置はTELE側でMF専用領域となる。このように本実施例では、ズーム位置に応じてAF可能領域(AF・MF可能領域)とMF専用領域とが切り替わる。
【0034】
各実施例のカメラ本体200は、表示部204を有し、表示部204にフォーカスレンズ105の距離指標表示を行う。図5は、MF専用領域を含まない距離指標表示を示す図である。図5に示されるように、距離指標表示は、被写体距離を示す距離目盛、レンズ位置、レンズ駆動領域、レンズ駆動不可領域、および、レンズ駆動可能領域に関する表示を含む。レンズ駆動領域は、フォーカスレンズ105の駆動範囲を示す。レンズ位置は、フォーカスレンズ105の位置を示す。レンズ駆動領域は、焦点距離などに応じて変化し、レンズ駆動不可領域とレンズ駆動可能領域とを含む。図5の例では、0.2mから無限距離の被写体にピントを合わせることができるようにフォーカスレンズ105を駆動することが可能である。また、ズームなどの設定により、0.2mから0.5mの被写体にピントを合わせる領域はレンズ駆動不可領域である。また、現在のレンズ位置は、1.0mの被写体にピントが合う位置にあることを示している。
【0035】
以下、各実施例における距離指標表示方法に関して詳述する。
【実施例1】
【0036】
まず、図6および図7を参照して、本発明の実施例1について説明する。図6は、本実施例における制御方法(MF専用領域を含む距離指標表示方法)を示すフローチャートである。図7は、本実施例におけるMF専用領域を含む距離指標表示を示す図である。
【0037】
まずステップS601において、カメラ本体200のカメラマイコン206は、表示部204に距離指標バーを表示する。続いてステップS602において、カメラマイコン206は、交換レンズ100のレンズマイコン111と通信を行い、被写体距離数値(表示する距離目盛の数値)、および、表示位置(数値を表示する位置)に関する情報を取得する。続いてステップS603において、カメラマイコン206は、表示部204に被写体距離(距離目盛)を表示する。
【0038】
続いてステップS604において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、レンズ駆動不可領域に関する情報を取得する。続いてステップS605において、カメラマイコン206は、交換レンズ100にレンズ駆動不可領域が存在するか否かを判定する。交換レンズ100にレンズ駆動不可領域が存在する場合、ステップS606へ進む。一方、交換レンズ100にレンズ駆動不可領域が存在しない場合、ステップS607へ進む。
【0039】
ステップS606において、カメラマイコン206は、表示部204にレンズ駆動不可領域を表示する。ステップS607において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、現在のレンズ位置に関する情報を取得する。続いてステップS608において、カメラマイコン206は、表示部204にレンズ位置を表示する。
【0040】
続いてステップS609において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、MF専用領域の位置情報を取得する。続いてステップS610において、カメラマイコン206は、交換レンズ100にMF専用領域があるか否かを判定する。交換レンズ100にMF専用領域がある場合、ステップS611へ進む。ステップS611において、カメラマイコン206は、表示部204にMF専用領域を表示し、本フローを終了する。一方、ステップS610にて交換レンズ100にMF専用領域がない場合、本フロー(距離指標表示方法)を終了する。本フローを所定の周期で繰り返すことにより、レンズ位置などの表示を更新することができる。
【0041】
図7は、本実施例におけるMF専用領域を含む距離指標表示を示す図であり、距離指標バー上に距離目盛の数値、駆動不可領域、およびMF専用領域を加えた図である。図7に示されるように、表示部204は、最短撮影距離から所定の被写体距離までを表示するとともに、フォーカスレンズ105のAF可能領域、MF専用領域、および、現在の駆動可能領域を表示する。図7の例では、被写体距離が0.2mから0.5mの範囲がMF専用領域となっている。ユーザは、フォーカスレンズ105がこのMF専用領域のレンズ駆動可能領域に位置している場合にはMFのみでフォーカスレンズ105を駆動可能であることを、表示部204を介して知ることができる。このように距離指標表示にMF専用領域に関する情報を加えて表示することで、ユーザは、MF専用領域とAF可能領域との切り替わり位置を視覚的に知ることができ、操作性が向上する。
【0042】
なお本実施例では図7に示される表示を例に説明を行ったが、距離目盛はメートル表の他にヤードポンド法などの他の表記方法を用いてもよい。また、本実施例にて説明した数値以外の数値の距離目盛を表示してもよい。また図7では、距離指標バーの色や模様を変化させることでMF専用領域を表現しているが、これに限定されるものではない。すなわち表示部204は、AF可能領域とMF専用領域とを区別して表示するように構成されていればよい。このため、AF可能領域とMF専用領域とを互いに異なる色や模様で表示するだけでなく、太さ、縁取り、または線種を互いに異ならせてもよい。また表示部204は、フォーカスレンズ105がMF専用領域に位置していることを通知するように構成してもよい。例えば、距離表示バーを含む表示部204の少なくとも一部を点滅させることや、メッセージやアイコンなどを表示することでユーザにMF専用領域にいることを通知することができる。また、距離指標に関する各情報は、図6のフロー通りに表示しなくてもよい。
【実施例2】
【0043】
次に、図8乃至図11を参照して、本発明の実施例2について説明する。本実施例の撮像装置10は、交換レンズ100のAF可能領域にリミットを設ける機能を有する。例えば、撮像装置10から近い被写体距離のAF可能領域にリミットを設けることで、遠方の被写体に素早くピントを合わせることが可能となる。
【0044】
図8は、本実施例におけるリミット領域(AFリミット領域)を含む距離指標表示を示す図であり、AF可能領域にAFリミットを設けた場合の距離指標表示を示す。図8の例では、被写体距離が0.2mから1.0mの範囲がAFリミット領域であることをユーザが知ることができる。
【0045】
ここで、AFリミット領域とMF専用領域との違いについて説明する。MF専用領域では全てのAF動作を行うことができないが、AFリミット領域ではAFを開始することは可能である。AFリミット領域でAFを開始した場合、交換レンズ100は、AFリミット領域を抜ける方向へのみフォーカスレンズ105を駆動することができる。また、フォーカスレンズ105をAFリミット領域へ抜ける方向へ駆動している間、撮像装置10が被写体に合焦した場合、AFを完了させることも可能である。このようにMF専用領域とAFリミット領域とは互いに異なる領域であり、距離指標表示上では異なる表示をする必要がある。
【0046】
図9は、本実施例における制御方法(AFリミット領域とMF専用領域とを含む距離指標表示方法)を示すフローチャートである。図10は、本実施例におけるAFリミット領域とMF専用領域とを含む距離指標表示を示す図である。図9および図10を参照して、AFリミット領域とMF専用領域を含む距離指標表示方法を説明する。なお図9において、ステップS601~S611は図6と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0047】
ステップS901において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、AFリミット領域に関する情報を取得する。続いてステップS902において、カメラマイコン206は、交換レンズ100にAFリミット領域があるか否かを判定する。交換レンズ100にAFリミット領域がある場合、ステップS903に進む。ステップS903において、カメラマイコン206は、表示部204にAFリミット領域を表示し、本フロー(距離指標表示方法)を終了する。一方、ステップS902にて交換レンズ100にAFリミット領域がない場合、本フロー(距離指標表示方法)を終了する。
【0048】
図10は、リミット領域(AFリミット領域)とMF専用領域とを含む距離指標表示を示す図である。図10に示されるように距離指標バー上にAFリミット領域を加えた場合、被写体距離が0.2mから0.5mの範囲がMF専用領域であり、ユーザはAFリミット領域が0.5mから1.0mの範囲であることを知ることが可能である。このように距離指標表示にAFリミット領域とMF専用領域とを表示することで、ユーザは、AFリミット領域とMF専用領域とAF可能領域との切り替わりを視覚的に知ることができ、操作性が向上する。
【0049】
図9のフローでは、所定の周期ごとに繰り返すことにより、レンズ位置などの表示を更新する。図11は、MF専用領域が可変である距離指標表示を示す図である。図9のステップS609において、交換レンズ100は周期的にMF専用領域を変更することにより、図11に示されるようにMF専用領域の表示範囲を変更してもよい。また図11では、変更する領域をMF専用領域のみとしているが、AFリミット領域や距離目盛の情報を更新してもよい。このとき、交換レンズ100の光学部材(ズームレンズ102や絞りユニット103)の状態(ズーム位置や絞り値(F値))の変更に連動して領域に関する表示情報を変更してもよい。
【実施例3】
【0050】
次に、図12および図13を参照して、本発明の実施例3について説明する。距離指標にMF専用領域を表示するには、MF専用領域の表示に対応するカメラ本体200を用いる必要がある。図12は、本実施例における制御方法(距離指標表示方法)を示すフローチャートであり、MF専用領域の表示に対応していないカメラ本体(MF専用領域を表示する機能を有しないカメラ本体)について、MF専用領域を含む距離指標表示を行う方法を示す。図13は、AFリミット領域でMF専用領域を表現する距離指標表示を示す図である。なお図12において、ステップS601~S611は図6と同様であるため、それらの説明を省略する。また図12において、ステップS901~S903は図9と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0051】
ステップS1201において、レンズマイコン111は、カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応しているか否かを判定する。カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応している場合、ステップS609へ進む。一方、カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応していない場合、ステップS1202へ進む。カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応していないとは、カメラ本体200がMF専用領域を表示する機能を有しないことを意味する。例えば、カメラ本体200がMF専用領域に関する通信に対応していない場合や、カメラ本体200がMF専用領域とAFリミット領域を区別して表示できない場合を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ステップS1202において、レンズマイコン111は、AFリミット領域に関する情報を現在のMF専用領域に応じて変更し、ステップS901へ進む。すなわち、レンズマイコン111は現在のMF専用領域がAFリミット領域に関する情報としてカメラ本体200に送信されるように、AFリミット領域に関する情報を変更する。
【0053】
以上のように、本実施例において、第一の制御手段111aは、フォーカスレンズ105の第一の駆動領域において有効であり、フォーカスレンズ105の第二の駆動領域において制限される。レンズ通信部(通信手段)112は、光学部材の状態(ズーム位置や絞り値(F値)など)の変化に応じた第二の駆動領域の変化に関する情報をカメラ本体200へ送信する。カメラ本体200に送信される第二の駆動領域の変化に関する情報としては、第二の駆動領域の変化量であっても良いし、刻々と変化する第二の駆動領域そのものの情報であっても良い。好ましくは、第二の駆動領域は、第一の制御手段111aの機能の全てが無効になるMF専用領域、および、第一の制御手段111aの機能の一部が制限されるAFリミット領域を有する。レンズ通信部112は、カメラ本体200の表示部204にMF専用領域を表示可能な場合、MF専用領域の表示情報をカメラ本体200へ送信する。一方、レンズ通信部112は、表示部204にMF専用領域を表示不可能な場合、MF専用領域の表示情報をAFリミット領域の表示情報としてカメラ本体200へ送信する。また好ましくは、AFリミット領域の表示情報は、光学部材の状態に基づいて変化する。
【0054】
このようにカメラ本体がMF専用領域の表示に対応していない場合、AFリミット領域に関する情報を変更することで、AFリミット領域表示を疑似的にMF専用領域のように表示することができる。AFリミット領域とMF専用領域とは互いに異なる領域であるが、AF可能領域との違いを表すことができるため、ユーザの操作性の向上を図ることが可能である。また、図12のフローは所定の周期ごとに繰り返すことにより、レンズ位置などの表示を更新する。図12のステップS1201において、交換レンズ100は、周期的にAFリミット領域に関する情報を変更することにより、AFリミット領域の表示範囲を変更してもよい。
【0055】
(変形例)
次に、図14および図15を参照して、各実施例の変形例について説明する。前述の各実施例にて説明した距離指標においては、距離指標バー上のレンズ位置が動き、現在のフォーカスレンズの被写体距離を表す。また、距離指標表示方法として、レンズ位置は中央に固定し、フォーカスレンズの駆動により、レンズ位置ではなく距離目盛が動く表示方法がある。
【0056】
図14は、本変形例におけるMF専用領域を含む距離指標表示方法を示す図である。図15は、本変形例における距離指標表示方法の動作を示す図である。図14および図15は、図7と同様のフォーカスレンズを距離目盛が動いて距離指標を表示する例で表現したものである。図14は、現在のフォーカスレンズ位置が被写体距離1.0mに存在するときの表示を示す。図15は、現在のレンズ位置が被写体距離0.5mに存在するときの表示を示す。図14および図15の両方の例において、図7と同様に、MF専用領域を表示することが可能である。また、この例ではバーを用いて領域を表現しているが、距離目盛の色を変更することにより領域の表現を行ってもよい。
【0057】
このように距離指標の表示方法の形態は限定されるものではなく、どのような形態でもMF専用領域を表示してもよい。また、距離指標の表示方法は、カメラ本体200の設定や交換レンズ100の設定で切り替え可能としてもよい。これにより、どのような形態の表示方法においても、ユーザはフォーカスレンズが位置する領域を知ることができ、操作性の向上が可能である。
【0058】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0059】
各実施例によれば、カメラ本体がMF専用領域の表示に対応していない場合でも、現在のフォーカスレンズの位置がMF専用領域であることを容易に把握することが可能なレンズ装置、撮像装置、制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0061】
各実施例において、表示部204はカメラ本体200に設けられているが、これに限定されるものではなく、交換レンズ100に表示部を設けてもよい。また各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、および第三の制御手段111cとしての機能を実行するが、これに限定されるものではない。例えば、カメラマイコン206が、第一の制御手段、第二の制御手段、または第三の制御手段の少なくとも一つの機能を実行するように構成してもよい。また各実施例において、表示部204は、第二の制御手段111bでフォーカスレンズ105が調整された場合に、MF専用領域を表示するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 交換レンズ(レンズ装置)
105 フォーカスレンズ
111a 第一の制御手段(制御手段)
112 レンズ通信部(通信手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
図12
図13
図14
図15